(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】透明熱可塑性樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 51/00 20060101AFI20240318BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20240318BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08L51/00
C08F265/06
C08L33/10
(21)【出願番号】P 2022520266
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2021009219
(87)【国際公開番号】W WO2022035072
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0100369
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0091422
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウンジ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ボン・クン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジャンウォン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジユン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】セヨン・キム
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013382(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/004670(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0142493(KR,A)
【文献】特開2019-006865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/00
C08F 265/06
C08L 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体50~100重量%と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂0~50重量%とを含み、
厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定したヘイズ値は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定したヘイズ値は4以下であり、
アルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、
下記数式1で計算されるブチルアクリレートカバレッジ値(X)は50以上であり、
前記(A)グラフト共重合体は、前記(A)グラフト共重合体の総100重量%を基準として、(a-1)DLS平均粒径40~120nm又はTEM平均粒径25~100nmであるアルキルアクリレートゴム25~50重量%と、(a-2)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体50~75重量%とを含んでなり、(a-2)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体は、(a-1)アルキルアクリレートゴムのグラフトシェルであり、
前記(a-2)共重合体は、前記(a-2)共重合体の総100重量%を基準として、アルキルメタクリレート80~99.9重量%及びアルキルアクリレート0.1~20重量%を含んでな
り、
前記(A)共重合体のグラフト率は60~200%であり、前記(a-2)共重合体の重量平均分子量は40,000~120,000g/molであることを特徴とする、熱可塑性樹脂。
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、熱可塑性樹脂100重量%を基準として、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの重量%を示す。)
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、アセトン下でゾル(sol)とゲル(gel)との屈折率(ASTM D542に準拠する)の差が0.02以下であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、アセトン下でブチルアクリレートの溶出量が0.01重量%以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂、前記(a-1)ゴム、またはこれらいずれものガラス転移温度が-50~-20℃であることを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項5】
前記(a-1)ゴムは、アルキルメタクリレートをさらに含んでなることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項6】
前記アルキルメタクリレートは、前記(a-1)ゴムの総100重量%中に0.1~25重量%で含まれることを特徴とする、請求項
5に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項7】
前記(a-1)ゴムと前記(B)マトリックス樹脂との屈折率(ASTM D542に準拠する)の差は0.02以上であることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項8】
厚さ0.15mmのフィルムとして押出し、ガードナー衝撃試験機(gardner impact tester)を用いて23℃の温度下で重量1kgの錘を100mmの高さから前記フィルム上に垂直に落下させたとき、前記錘によって衝撃を受けた衝撃部の衝撃前後のASTM D1003-95に準拠して測定したヘイズ値の差が10以下であることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項9】
(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体50~100重量%と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂0~50重量%とを含んで混練及び押出するステップを含み、
熱可塑性樹脂の厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定したヘイズ値は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定したヘイズ値は4以下であり、
熱可塑性樹脂のアルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、
熱可塑性樹脂の下記数式1で計算されるブチルアクリレートカバレッジ値(X)は50以上であり、
前記(A)グラフト共重合体は、前記(A)グラフト共重合体の総100重量%を基準として、(a-1)DLS平均粒径40~120nm又はTEM平均粒径25~100nmであるアルキルアクリレートゴム25~50重量%と、(a-2)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体50~75重量%とを含んでなり、(a-2)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体は、(a-1)アルキルアクリレートゴムのグラフトシェルであり、
前記(a-2)共重合体は、前記(a-2)共重合体の総100重量%を基準として、アルキルメタクリレート80~99.9重量%及びアルキルアクリレート0.1~20重量%を含んでな
り、
前記(A)共重合体のグラフト率は60~200%であり、前記(a-2)共重合体の重量平均分子量は40,000~120,000g/molであることを特徴とする、熱可塑性樹脂の製造方法。
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、熱可塑性樹脂100重量%を基準として、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの重量%を示す。)
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項11】
前記成形品は仕上げ材であることを特徴とする、請求項1
0に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年08月11日付の韓国特許出願第10-2020-0100369号及びこれに基づいて2021年07月13日付で再出願された韓国特許出願第10-2021-0091422号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、透明熱可塑性樹脂に係り、より詳細には、透明度、衝撃強度、光沢、流動性及び耐候性が同時に優れ、かつ折り曲げ時や打撃時に白化が発生しないため無白化特性に優れた透明熱可塑性樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
共役ジエン系ゴムをベースとするアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」という)は、加工性、機械的物性及び外観特性に優れるため、電気・電子製品の部品、自動車、小型玩具、家具、建築資材などに広範囲に利用されている。しかし、ABS樹脂は、化学的に不安定な不飽和結合を含むブタジエンゴムをベースとするため、紫外線によってゴム重合体が容易に老化してしまい、耐候性が非常に脆弱であり、そのため、室外用材料として適していないという問題がある。このような問題点を解決するために、ABS樹脂を塗装処理した後に使用する方法が提案されたが、塗装処理時に環境の汚染が問題となり、また、塗装された製品は再利用が難しいだけでなく、耐久性が低下するという問題がある。
【0004】
上記のABS樹脂の問題点を克服するために、エチレン系不飽和結合が存在しないアクリレート-スチレン-アクリロニトリルグラフト共重合体(以下、「ASA樹脂」という)に代表されるアクリル系共重合体を使用する。ASA樹脂は、加工性、耐衝撃性、耐化学性及び耐候性などの物性に優れるため、建築用資材、自動車及びオートバイなどの車両類の内外装材、電気電子製品だけでなく、船舶、レジャー用品、園芸用品などの様々な分野で広範囲に使用されており、その需要は急激に増加している。しかし、ASA樹脂は、ABS樹脂塗装製品に比べて着色性などの外観特性が劣り、市場で求められる耐候性のレベルが日増しに高まっているため、これを満たすには不十分である。
【0005】
一方、市場で感性品質に対するニーズとそのレベルが高くなるにつれ、ABS、PVC、鉄板などの基材の外面を熱可塑性樹脂で仕上げ処理することによって高級な外観、優れた着色性及び耐候性を実現しようとする研究が進められている。このような仕上げ材は、主にフィルム状に製造された後、適用される基材の形状に沿って曲げたり折ったりするなどの折り曲げ加工工程を経て最終製品として製造される。しかし、熱可塑性であるASA樹脂の特性上、常温で前記の仕上げ処理を加える場合、白化現象が発生してしまい、本来の色を失って美観が低下するという問題がある。
【0006】
このような白化現象は、折り曲げ時に熱可塑性樹脂の内部に発生するクラックによる空隙のため発生するものと分析される。これを解決するために、熱可塑性樹脂中のゴム含量を調節するか、または熱可塑性樹脂とエラストマーを混合して熱可塑性樹脂を軟質化して白化特性を改善する方法が提案された。しかし、これを通じて白化の発生は改善できるが、その他の機械的特性、着色性、表面光沢度などの低下が発生するという問題があるため、このような物性が全て優れた熱可塑性樹脂組成物に対する開発は十分でない実情であり、無白化特性も満足できない実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、透明度、衝撃強度、光沢、耐候性及び流動性が同時に優れ、かつ折り曲げ時や打撃時にも白化の発生が抑制されることによって無白化特性に優れた透明熱可塑性樹脂及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記熱可塑性樹脂で製造された成形品を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体を含むか、または(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂とを含み、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、アルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、下記数式1で計算されるブチルアクリレートカバレッジ値(X)は50以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂を提供する。
【0011】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
(前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの重量%を示す。)
【0012】
また、本発明は、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体を含むか、または(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂とを含み、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、アルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、アセトン下でゾル(sol)とゲル(gel)との屈折率(ASTM D542に準拠する)の差は0.02以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂を提供する。
【0013】
また、本発明は、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体を含むか、または(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂とを含み、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、アルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、アセトン下でブチルアクリレートの溶出量が0.01重量%以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂を提供する。
【0014】
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、アセトン下でゾル(sol)の屈折率(ASTM D542に準拠する)とゲル(gel)の屈折率との差が0.02以下であってもよい。
【0015】
前記熱可塑性樹脂は、前記(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体を好ましくは50~100重量%、前記(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂を好ましくは0~50重量%含むことができる。
【0016】
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、アセトン下でブチルアクリレートの溶出量が0.01重量%以上であってもよい。
【0017】
前記(A)共重合体は、好ましくは、前記(A)共重合体の総100重量%を基準として、(a-1)DLS平均粒径40~120nm又はTEM平均粒径25~100nmであるアルキルアクリレートゴム25~50重量%と;(a-2)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体50~75重量%と;を含んでなるものであってもよい。
【0018】
前記(A)共重合体のグラフト率は、好ましくは60~200%であり、前記(a-2)共重合体の重量平均分子量は40,000~120,000g/molであってもよい。
【0019】
前記熱可塑性樹脂、前記(a-1)ゴム、またはこれらいずれものガラス転移温度は、好ましくは-50~-20℃であってもよい。
【0020】
前記(a-1)ゴムは、好ましくはアルキルメタクリレートをさらに含むことができ、この場合、前記アルキルメタクリレートは、好ましくは、前記(a-1)ゴムの総100重量%中に0.1~25重量%で含まれてもよい。
【0021】
前記(a-2)共重合体は、好ましくは、前記(a-2)共重合体の総100重量%を基準として、アルキルメタクリレート80~99.9重量%、及びアルキルアクリレート0.1~20重量%を含んでなる共重合体であってもよい。
【0022】
前記(a-1)ゴムの屈折率(ASTM D542に準拠する)と前記(B)マトリックス樹脂の屈折率は、好ましくは差が0.02以上であってもよい。
【0023】
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、前記熱可塑性樹脂を厚さ0.15mmのフィルムとして押出し、23℃の温度下でガードナー衝撃試験機(gardner impact tester)を用いて重量1kgの錘を100mmの高さから前記フィルム上に垂直に落下させたとき、前記錘によって衝撃(打撃)を受けた衝撃部の衝撃前後のASTM D1003-95に準拠して測定したヘイズ値の差が10以下であってもよい。
【0024】
また、本発明は、前記(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体、または(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂とを含んで混練及び押出するステップを含み、製造された熱可塑性樹脂の厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、前記熱可塑性樹脂に含まれるアルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、前記熱可塑性樹脂の下記数式1で計算されるブチルアクリレートカバレッジ値(X)は50以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂の製造方法を提供することができる。
【0025】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
【0026】
前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの重量%を示す。
【0027】
前記(A)グラフト共重合体は、好ましくは、DLS平均粒径40~120nm又はTEM平均粒径25~100nmであるアルキルアクリレートゴム25~50重量%と、アルキルアクリレート化合物及びアルキルメタクリレート化合物50~75重量%とを含む単量体混合物の総100重量部を乳化重合するステップを含んで製造されたものであってもよい。
【0028】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする成形品を提供することができる。
【0029】
前記成形品は、好ましくは仕上げ材であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、樹脂に含まれるゴムの粒径、ゴムの含量、グラフト率と分子量、樹脂のゲル含量、樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差などを調節することによって、透明度、衝撃強度、耐候性、光沢及び流動性が同時に優れ、かつ折り曲げ時や打撃時にも白化が発生しないため無白化特性に優れた熱可塑性樹脂及びその製造方法を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施例(左側の写真)及び比較例(右側の写真)で製造されたフィルムを、白化の有無を確認するために、それぞれMd及びTd方向に折り曲げた後に撮影した写真である。
【
図2】実施例(左側の写真)及び比較例(右側の写真)で製造されたフィルムを、白化の有無を確認するために、それぞれガードナー衝撃試験機で打撃した後に撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の熱可塑性樹脂を詳細に説明する。
【0033】
本発明者らは、高級な外観を有する仕上げ材を提供できる透明熱可塑性樹脂を研究する中で、ゾルとゲルとの屈折率の差を調節することによって透明度が改善され、ゴム粒子間の距離を狭め、グラフト率を所定の範囲まで高める場合、クラックの発生による空隙の形成を最小化し、無白化特性が大きく改善されることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0034】
本発明において、樹脂は、単一の(共)重合体のみを意味するものではなく、2種以上の(共)重合体を主成分として含むことができる。
【0035】
本発明において、(共)重合体の組成比は、前記(共)重合体を構成する単位体の含量を意味するか、または前記(共)重合体の重合時に投入される単位体の含量を意味することができる。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂は、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体を含むか、または(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂とを含み、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、アルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、下記数式1で計算されるブチルアクリレートカバレッジ値(X)は50以上であることを特徴とし、この場合、透明度、耐衝撃性、耐候性及び成形加工性に優れながら、折り曲げや打撃に対する白化が発生しないため無白化特性に優れるという効果がある。
【0037】
[数式1]
X={(G-Y)/Y}×100
【0038】
前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの重量%を示す。
【0039】
本発明の熱可塑性樹脂は、他の一例として、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体50~100重量%と;(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂0~50重量%と;を含み、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、下記数式1で計算されるX値が50%以上であることを特徴とし、この場合、透明度、耐衝撃性、耐候性及び成形加工性に優れながら、折り曲げに対する白化が発生しないため無白化特性に優れるという利点がある。
【0040】
[数式1]
X(%)={(G-Y)/Y}×100
【0041】
前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの重量%を示す。
【0042】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、更に他の例として、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体50~100重量%と;(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂0~50重量%と;を含み、アルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、アセトン下でゾル(sol)とゲル(gel)との屈折率(ASTM D542に準拠する)の差は0.02以下であることを特徴とし、この場合、透明度、耐衝撃性、耐候性及び成形加工性に優れながら、折り曲げに対する白化が発生しないため無白化特性に優れるという利点がある。
【0043】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、更に他の例として、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体50~100重量%と;(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂0~50重量%と;を含み、アルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下であり、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下であり、アセトン下でブチルアクリレートの溶出量が0.01重量%以上であることを特徴とし、この場合、透明度、耐衝撃性、耐候性及び成形加工性に優れながら、折り曲げに対する白化が発生しないため無白化特性に優れるという利点がある。
【0044】
本発明において、ゲル含量は、熱可塑性樹脂の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けていない不溶分のみを採取した後、強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後の重量を測定し、下記数式2で計算して求めることができる。
【0045】
[数式2]
ゲル含量(%)={不溶分(ゲル)の重量/試料の重量}×100
【0046】
本発明において、グラフト率は、グラフト重合体の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けていない不溶分のみを採取した後、強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後の重量を測定し、下記数式3で計算して求めることができる。
【0047】
[数式3]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
【0048】
前記数式3において、グラフトされた単量体の重量(g)は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離して得た不溶分(gel)の重量からゴム質の重量(g)を引いた重量であり、ゴム質の重量(g)は、グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴム成分の重量である。
【0049】
本発明において、DLS平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering)を用いて測定することができ、詳細には、ラテックス状態で粒度分布分析器(Nicomp CW380、PPS社)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定することができる。具体例として、固形分含量35~50重量%のラテックス0.1gを脱イオン水100gで希釈させて試料を準備した後、23℃で粒度分布分析器(Nicomp CW380、PPS社)を用いて、測定方法は自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)として求めることができる。
【0050】
本発明において、TEM平均粒径は、TEM(透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope))分析を用いて測定することができ、具体例として、TEMの高倍率イメージ上の粒子サイズを数値的に測定して算術平均を出した値を意味する。このとき、具体的な測定例は、次の通りである。
【0051】
-試料(sample)の準備:押出混練機で製造された熱可塑性樹脂ペレット
-試料の前処理:トリミング(Trimming)(23℃)→ヒドラジン処理(72℃、5日)→セクショニング(Sectioning)(-120℃)→OsO4 揮発染色(vapor staining)(2時間)
-分析機器:TEM(JEM-1400、Jeol社)
-分析条件:Acc.Volt 120kV、SPOT Size 1(×10K、×25K、×50K)
-サイズ(平均粒径)の測定:直径の大きさが上位10%である粒子の最長直径の平均
ここで、直径の大きさが上位10%である粒子の最長直径の平均というのは、一例として、TEMイメージから100個以上の粒子を無作為に選定し、その最長直径を測定した後、測定された直径の上位10%の算術平均値を意味する。
【0052】
以下、本発明の熱可塑性樹脂を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0053】
(A)共重合体
前記(A)共重合体は、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートを含んでなるもので、前記熱可塑性樹脂の総100重量%中に50~100重量%含まれる。
【0054】
前記(A)共重合体は、一例として、前記(A)共重合体の総100重量%を基準として、(a-1)DLS平均粒径40~120nm又はTEM平均粒径25~100nmであるアルキルアクリレートゴム25~50重量%、好ましくは30~50重量%、より好ましくは35~50重量%、及び(a-2)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体50~75重量%、好ましくは50~70重量%、より好ましくは50~65重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、透明度、光沢及び無白化特性に優れながら、耐衝撃性に優れるという効果がある。前記(a-1)ゴムのDLS平均粒径は、好ましくは45~110nm、より好ましくは50~100nmであってもよく、TEM平均粒径は、好ましくは27~95nm、より好ましくは30~90nmであってもよく、この範囲内で、機械的強度の低下なしに透明度及び耐候性に優れるという効果がある。
【0055】
本発明において、(a-1)アルキルアクリレートゴムと、(a-2)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体とを含んでなるグラフト共重合体(A)は、アルキルアクリレートゴム(a-1)と、前記アルキルアクリレートゴム(a-1)を囲むアルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体(a-2)とを含むグラフト共重合体(A)を意味する。また、(a-1)アルキルアクリレートゴムにアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートがグラフト重合されたグラフト共重合体(A)として表現され得る。
【0056】
前記(A)共重合体は、一例として、グラフト率が60~200%であってもよく、前記(a-2)共重合体の重量平均分子量が40,000~120,000g/molであってもよく、この範囲内で、成形加工性及び無白化特性がいずれも優れるという利点がある。前記(A)共重合体のグラフト率は、好ましくは60~150%、より好ましくは65~130%であってもよく、この範囲内で、耐衝撃性及び成形加工性の低下なしに無白化特性に優れるという効果がある。前記(a-2)共重合体の重量平均分子量は、好ましくは40,000~110,000g/mol、より好ましくは50,000~100,000g/molであってもよく、この範囲内で、耐衝撃性の低下なしに成形加工性及び無白化特性に優れるという効果がある。
【0057】
本発明において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPCを通じて、標準PS(標準ポリスチレン(standard polystyrene))試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/min、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装置名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0058】
前記(a-1)ゴムは、一例として、ガラス転移温度が-50~-20℃であってもよく、好ましくは-48~-21℃であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに、衝撃強度がさらに優れるという効果がある。
【0059】
本発明において、ガラス転移温度は、ASTM D 3418に準拠して、示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント社製、Q100)を用いて10℃/分の昇温速度で測定することができる。
【0060】
前記(a-1)ゴムは、一例としてアルキルメタクリレートをさらに含むことができ、この場合、耐化学性及び耐衝撃性がさらに優れるという効果がある。この場合、前記(a-1)ゴム中に含まれるアルキルメタクリレートの含量は、一例として前記(a-1)ゴムの総100重量%を基準として0.1~25重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは2~15重量%であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに所望の効果を十分に得ることができる。
【0061】
前記アルキルアクリレートゴムは、一例として、アルキルアクリレート系化合物を乳化重合して製造することができ、具体的な一例として、アクリレート系化合物、乳化剤、開始剤、グラフト剤、架橋剤、電解質及び溶媒を混合して乳化重合して製造することができ、この場合、グラフティング効率が優れるため耐衝撃性などの物性に優れるという効果がある。
【0062】
前記(a-2)共重合体は、一例として、前記(a-2)共重合体の総100重量%を基準として、アルキルメタクリレート80~99.9重量%及びアルキルアクリレート0.1~20重量%を含んでなるものであってもよく、好ましくは、アルキルメタクリレート85~99.5重量%及びアルキルアクリレート0.5~15重量%、より好ましくは、アルキルメタクリレート85~99重量%及びアルキルアクリレート1~15重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、衝撃強度及び耐候性がさらに優れるという効果がある。
【0063】
前記(a-1)ゴムは、一例として、ゴムシードを含んでなるものであってもよい。
【0064】
前記ゴムシードは、一例として、アルキルアクリレート及び選択的にアルキルメタクリレートを重合させて製造することができ、アルキルメタクリレートを含む場合、前記ゴムシード100重量%を基準として0.1~25重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは2~15重量%を含んで重合させて製造することができ、この範囲内で、衝撃強度、耐候性、物性バランスなどに優れるという効果がある。
【0065】
具体例として、前記ゴムシードは、アルキルアクリレートに、前記(A)共重合体を構成する単位体100重量部に対して、架橋剤0.01~3重量部、開始剤0.01~3重量部及び乳化剤0.01~5重量部を含んで重合させて製造することができ、前記範囲内で、短時間に大きさの均一な重合体を製造することができ、耐候性、衝撃強度などの物性をさらに向上させることができる。
【0066】
他の具体例として、前記ゴムシードは、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートを含む単量体に、前記(A)共重合体を構成する単位体100重量部に対して、架橋剤0.1~1重量部、開始剤0.01~1重量部及び乳化剤0.1~3.0重量部を含んで重合させて製造することができ、前記範囲内で、短時間内に大きさの均一な重合体を製造することができ、耐候性、衝撃強度などの物性がさらに向上することができる。
【0067】
前記(A)共重合体は、一例として、前記(A)共重合体を構成する単位体100重量部を基準として、A-1)アルキルアクリレート及び選択的にアルキルメタクリレート1~15重量部に、電解質0.001~1重量部、架橋剤0.01~5重量部、開始剤0.01~3重量部及び乳化剤0.01~5重量部を含む混合物を重合してゴムシードを製造する段階と;A-2)前記ゴムシードの存在下で、アルキルアクリレート及び選択的にアルキルメタクリレート20~50重量部、架橋剤0.01~1重量部、開始剤0.01~3重量部及び乳化剤0.01~5重量部を含む混合物を重合してゴムコアを製造する段階と;A-3)前記ゴムコアの存在下で、アルキルアクリレートとアルキルメタクリレートとの和40~75重量部、架橋剤0.01~3重量部、開始剤0.01~3重量部、乳化剤0.1~2重量部及び活性化剤0.01~1重量部を混合してグラフトシェルを製造する段階と;を含んで製造することができる。この場合、耐衝撃性、耐候性、成形加工性及び無白化特性の物性バランスに優れるという効果がある。
【0068】
本発明において、アルキルアクリレート化合物は、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルアクリレートであってもよく、具体例として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート及びラウリルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、炭素数1~4個の鎖アルキル基を含むアルキルアクリレートであってもよく、より好ましくはブチルアクリレートであってもよい。
【0069】
本発明において、アルキルメタクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートであってもよく、具体例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、炭素数1~4個の鎖アルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、より好ましくはメチルメタクリレートである。
【0070】
本発明において、架橋剤は、別途に定義しない限り、本発明の属する技術分野で通常用いられる架橋剤であれば、特に制限されず、一例として、不飽和ビニル基を含み、架橋剤の役割を行える化合物、または2以上の異なる反応性を有する不飽和ビニル基を含む化合物を1種以上用いることができ、具体例として、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールプロポキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチルプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシレートトリアクリレート、ビニルトリメトキシシラン、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン及びジアリルアミンからなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0071】
本発明において、電解質は、一例として、KCl、NaCl、KHCO3、NaHCO3、K2CO3、Na2CO3、KHSO3、NaHSO3、K4P2O7、Na4P2O7、K3PO4、Na3PO4、K2HPO4、Na2HPO4、KOH、NaOH及びNa2S2O7からなる群から選択される1種または2種以上を混合して用いることができるが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0072】
本発明において、開始剤としては、本発明の属する技術分野で通常用いられる開始剤であれば、特に制限されずに用いることができ、一例として、水溶性開始剤、脂溶性開始剤などのラジカル開始剤を用いることができ、これらの開始剤は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
前記水溶性開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物からなる群から選択された1種以上を用いることができるが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0074】
前記脂溶性開始剤としては、ジアルキルペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジペルオキシケタール、ヒドロペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、アゾ化合物などからなる群から選択された1種以上を用いることができる。
【0075】
より具体的な一例として、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-アミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5―ジ(t-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)-シクロヘキサン、エチル3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)-ブチレート、ジイソプロピルベンゼンモノ-ヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート,t-アミルペルオキシネオデカノエート、t-アミルペルオキシピバレート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイン酸、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-2-エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルペルオキシネオデカノエート、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、及びアゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルからなる群から選択された1種以上を用いることができるが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0076】
前記ゴムシードの製造段階、ゴムコアの製造段階及び共重合体シェル(グラフトシェル)の製造段階では、前記開始剤と共に、開始反応をさらに促進させるために、選択的に酸化-還元系触媒をさらに用いることができ、前記酸化-還元系触媒は、一例として、ピロリン酸ナトリウム、デキストロース、硫化第一鉄、亜硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、スルホナト酢酸金属塩及びスルフィナト酢酸金属塩からなる群から選択された1種以上を用いることができ、これに限定されるものではない。
【0077】
前記ゴムシードの製造段階、ゴムコアの製造段階及び共重合体シェル(グラフトシェル)の製造段階のうち少なくとも一つ以上の段階において、前記重合開始剤と共に、過酸化物の開始反応を促進させるために、好ましくは活性化剤を用いることができ、前記活性化剤としては、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、スルホナト酢酸金属塩及びスルフィナト酢酸金属塩からなる群から選択された1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0078】
前記活性化剤は、前記(A)共重合体の製造時に投入される単量体の総和100重量部に対して0.01~3重量部、または0.01~1重量部投入されてもよく、この範囲内で、高い重合度を達成できるという利点がある。
【0079】
前記シード及びコアを製造する段階において、単量体の投入方法としては、一括投入及び連続投入をそれぞれ単独で用いるか、または2つの方法を併合して用いてもよい。
【0080】
本発明において、「連続投入」ということは、「一括投入」されないことを意味し、一例として、重合反応時間の範囲内で10分以上、30分以上、1時間以上、好ましくは2時間以上、一滴ずつ(drop by drop)、少しずつ(little by little)、多段階(step by step)または連続フロー(continuous flow)で投入されることを指す。
【0081】
本発明において、乳化剤は、本発明の属する技術分野で通常用いられる乳化剤であれば、特に制限されず、一例として、ロジン酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩などを含む炭素数20個以下又は10~20個の低分子量カルボン酸塩(carboxylate);炭素数20個以下又は10~20個のアルキルスルホコハク酸塩又はその誘導体;炭素数20個以下又は炭素数10~20個のアルキル硫酸又はスルホネート;炭素数が20~60個、20~55個又は30~55個であり、構造内にカルボキシル基を少なくとも2個以上、好ましくは2個~3個含む多官能カルボン酸又はその塩;及びモノアルキルエーテルホスフェート及びジアルキルエーテルホスフェートからなる群から選択される1種以上のリン酸系塩;からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0082】
他の例として、前記乳化剤は、スルホエチルメタクリレート(sulfoethyl methacrylate)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(2-acrylamido-2-methylpropane sulfonic acid)、ナトリウムスチレンスルホネート(sodium styrene sulfonate)、ナトリウムドデシルアリルスルホサクシネート(sodium dodectyl allyl sulfosuccinate)、スチレンとナトリウムドデシルアリルスルホサクシネートの共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアンモニウムスルフェート類(polyoxyethylene alkylphenyl ether ammonium etc.)、アルケニルC16-18コハク酸ジカリウム塩(alkenyl C16-18 succinic acid、di-potassium salt)及びメタリルスルホン酸ナトリウム(sodium methallyl sulfonate)から選択された反応型乳化剤;及びアルキルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルスルフェート、スルホン化アルキルエステル、脂肪酸の石鹸及びロジン酸のアルカリ塩からなる群から選択される非反応型乳化剤;からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0083】
更に他の例として、前記乳化剤は、C12~C18のアルキルスルホサクシネート金属塩の誘導体、C12~C20の炭素数を有するアルキル硫酸エステルまたはスルホン酸金属塩の誘導体を用いることができる。前記C12~C18のアルキルスルホサクシネート金属塩の誘導体としては、ジシクロヘキシルスルホネート、ジヘキシルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネートのナトリウムまたはカリウム塩などが挙げられ、C12~C20の硫酸エステルまたはスルホン酸金属塩としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、オクタデシル硫酸カリウムなどのアルキル硫酸金属塩などが使用可能である。前記乳化剤は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0084】
本発明において、ある化合物の誘導体とは、その化合物の水素及び官能基のうち1つ以上がアルキル基やハロゲン基などの他の種類の基で置換された物質を意味する。
【0085】
本発明において、前記(A)共重合体の製造時に選択的に分子量調節剤をさらに含んで乳化重合させることができ、前記分子量調節剤は、前記(A)共重合体を構成する単位体100重量部に対して、0.01~2重量部、0.05~2重量部または0.05~1重量部使用されてもよく、この範囲内で、目的とする分子量を有する重合体を容易に製造することができる。
【0086】
前記分子量調節剤は、一例として、α-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;及びテトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有硫黄化合物;からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、3級ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類化合物を使用することができるが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0087】
前記乳化重合時の重合温度は、特に限定されないが、一般には50~85℃、好ましくは60~80℃で重合が行われてもよい。
【0088】
前記段階を通じて製造された(A)共重合体ラテックスは、一例として、凝固物の含量が1%以下であることを特徴とすることができ、好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。上述した範囲内で、樹脂の生産性が優れ、機械的強度及び外観特性が向上するという効果がある。
【0089】
本発明において、凝固物の含量(%)は、反応槽内に生成された凝固物の重量、ゴム及び単量体の総重量を測定し、下記の数式4により計算することができる。
【0090】
【0091】
前記(A)共重合体のラテックスは、一例として、凝集、洗浄、乾燥などの通常の工程を経て粉末状になり得、具体例として、金属塩又は酸を添加して、60~100℃の温度条件で凝集し、熟成、脱水、洗浄及び乾燥工程を経て粉末状に製造できるが、これに限定されるものではないことを明示する。
【0092】
前述した(A)共重合体の製造方法において明示していない他の条件、すなわち、重合転化率、反応圧力、反応時間、ゲル含量などは、本発明の属する技術分野で通常使用される範囲内であれば、特に制限されず、必要に応じて適宜選択して実施できることを明示する。
【0093】
本発明において、%は、別途の定義がない限り、重量%を意味する。
【0094】
(B)マトリックス樹脂
本発明の熱可塑性樹脂は、前記熱可塑性樹脂の総100重量%を基準として、アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含むマトリックス樹脂を0~50重量%含む。前記熱可塑性樹脂中に前記(B)マトリックス樹脂を含む場合、機械的物性及び成形加工性がさらに向上するという利点がある。
【0095】
前記(B)マトリックス樹脂は、前記(A)共重合体の乾燥粉末(dry powder、DP)と溶融混練可能な硬質マトリックスであって、ガラス転移温度が最小60℃以上である硬質重合体形成単量体を含んでなるものである。前記(B)マトリックス樹脂のガラス転移温度は、好ましくは80~160℃、より好ましくは90~150℃であってもよく、この範囲内で、成形加工性がさらに向上することができる。
【0096】
前記(B)マトリックス樹脂は、アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択される1種以上を含み、好ましくはアルキルメタクリレート重合体であってもよく、この場合、他の物性の低下なしに透明度がさらに優れるという効果がある。
【0097】
前記(B)マトリックス樹脂に含まれ得るアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体は、前記(A)グラフト共重合体とは異なるものである。
【0098】
前記マトリックス樹脂に含まれるアルキルメタクリレート及びアルキルアクリレートは、それぞれ前記(A)共重合体で言及されたものと同じ範囲内で適宜選択され得る。
【0099】
前記マトリックス樹脂に含まれるアルキルメタクリレートは、好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0100】
前記マトリックス樹脂に含まれるアルキルアクリレートは、好ましくはメチルアクリレート及びエチルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0101】
前記(B)マトリックス樹脂は、一般に公知された方法を採択して製造することができ、必要に応じて、開始剤、架橋剤及び分子量調節剤などから選択された1種以上を含むことができ、懸濁重合、乳化重合、塊状重合または溶液重合方法により製造することができる。
【0102】
前記重合方法に応じて追加又は変更されなければならない、溶媒、乳化剤などの反応に必要な物質や、重合温度、重合時間などの条件は、それぞれのマトリックス樹脂の製造時に選択する重合方法に応じて一般に適用可能な物質や条件であれば、特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。
【0103】
他の一例として、前記(B)マトリックス樹脂は、市販の製品を用いることができる。
【0104】
熱可塑性樹脂
本発明の熱可塑性樹脂は、前記熱可塑性樹脂の総100重量%を基準として、(A)共重合体50~100重量%及び(B)マトリックス樹脂0~50重量%を含むことができ、好ましくは(A)共重合体60~100重量%及び(B)マトリックス樹脂0~40重量%、より好ましくは(A)共重合体60~90重量%及び(B)マトリックス樹脂10~40重量%を含むことができ、この範囲内で、耐衝撃性、流動性及び無白化特性に優れるという効果がある。
【0105】
前記熱可塑性樹脂の総100重量%中に含まれるアルキルアクリレートの総含量は20~50重量%であり、好ましくは22~50重量%、より好ましくは25~50重量%であってもよく、この範囲内で、耐候性の低下なしに衝撃強度及び無白化特性に優れるという効果がある。
【0106】
本発明において、前記熱可塑性樹脂の総100重量%中に含まれるアルキルアクリレートの総含量は、前記(A)共重合体及び(B)マトリックス樹脂のそれぞれに含まれるアルキルアクリレート化合物の重量の総和を意味し、一例として、前記熱可塑性樹脂の製造時に投入されたアルキルアクリレート化合物の重量部を合わせて計算することができる。他の一例として、前記熱可塑性樹脂をNMR(核磁気共鳴)分析又はFT-IR(フーリエ変換赤外線分光)分析を通じて定量的に測定することができる。
【0107】
本発明において、NMR分析は、別途に限定しない限り、1H NMRによる分析を意味する。
【0108】
本発明において、NMR分析は、本技術分野で通常行われる方法を用いて測定することができ、具体的な測定例は、次の通りである。
-装置名:Bruker 600MHz NMR(AVANCE III HD) CPP BB(1H 19F tunable and broadband、with z-gradient) Prodigy Probe
-測定条件:1H NMR(zg30):ns=32、d1=5s、TCE-d2、at 室温(room temp.)
【0109】
本発明において、FT-IR分析は、本技術分野で通常行われる方法を用いて測定することができ、具体的な測定例は、次の通りである。
-装置名:Agilent Cary 660
-測定条件:ATRモード
【0110】
前記熱可塑性樹脂は、前記の限定された組成を通じて下記数式1により計算されるブチルアクリレートカバレッジ値(X)が50%以上、好ましくは50~250%、より好ましくは55~200%であってもよく、この範囲内で、無白化特性がさらに優れるという効果がある。
【0111】
[数式1]
X(%)={(G-Y)/Y}×100
【0112】
前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの含量(重量%)を示す。
【0113】
前記数式1において、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの含量は、上述したゲル含量を求める過程で採取した不溶分(ゲル)中のブチルアクリレートの含量(投入された熱可塑性樹脂の総100重量%基準)を示す。ここで、ゲル含量は、熱可塑性樹脂の総100重量%を基準とした不溶分の含量(重量%)を示す。
【0114】
前記熱可塑性樹脂は、アルキルアクリレート化合物を1種または2種以上含むことができ、その中でも、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの含量に対する、総ゲル含量とゲル中のブチルアクリレートの含量との差を特定の範囲に限定することによって、耐衝撃性などの機械的物性、成形加工性、光沢度と共に、無白化特性に優れた熱可塑性樹脂を提供することができる。
【0115】
また、前記熱可塑性樹脂は、前記の限定された組成を通じて、厚さ0.15mmの条件でASTM D-1003に準拠して測定した透明度(ヘイズ値)は2以下、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.5以下であってもよく、厚さ3mmの条件で測定した透明度は4以下、好ましくは3.8以下、より好ましくは3.5以下であってもよく、この範囲内で、熱可塑性樹脂の透明度が優れるため、外観品質に優れた仕上げ材を提供するという効果がある。
【0116】
前記熱可塑性樹脂のヘイズは、関連分野で透明度の測定における公知された方法を用いて測定することができ、詳細には、ASTM D1003に従って測定することができる。具体例として、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装置を用いて、ASTM D1003に従って23℃の温度下でヘイズ値(haze)を測定することができる。このとき、厚さ0.15mmの試験片は、押出温度230℃で厚さ0.15mmに押出したフィルム試験片を用いることができ、厚さ3mmの試験片は、バレル温度220℃で厚さ3mmに射出した試験片を用いることができる。
【0117】
前記熱可塑性樹脂は、好ましくは、アセトン下でブチルアクリレートの溶出量が0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、好ましい実施例としては0.1~15重量%、より好ましい実施例としては0.5~15重量%であり、この範囲内で、無白化特性に優れるという効果がある。
【0118】
本発明において、アセトン下でアルキルアクリレートの溶出量は、熱可塑性樹脂の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、その後、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離し、不溶分が分離されたアセトン溶液を強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させて樹脂ゾル(Sol)を得、これをNMR分析又はFT-IR分析して定量的に測定することができる。
【0119】
前記熱可塑性樹脂のアセトン下でのゾル(sol)とゲル(gel)との屈折率(ASTM D542に準拠する)の差が、一例として0.02以下であってもよく、好ましくは0.005~0.02、より好ましくは0.009~0.019であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに透明度がさらに優れるという効果がある。
【0120】
本発明において、前記ゾルとゲルとの屈折率の差は、前記熱可塑性樹脂の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して得た、アセトン溶液中に溶解された部分を、強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させてゾルとして得、不溶分は、強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させてゲルとして得た後、前記ゾル及びゲルのそれぞれの屈折率をASTM D542に準拠して測定して求めることができる。本発明は、ゾルとゲルとの屈折率の差を前記の範囲以内に制御することによって、透明度がさらに優れた熱可塑性樹脂を提供できる。
【0121】
本発明において、屈折率は、ASTM D542に準拠して、アッベ屈折計を用いて25℃で測定することができる。
【0122】
前記熱可塑性樹脂が前記(B)マトリックス樹脂を含む場合、前記熱可塑性樹脂に含まれる(A)共重合体中の(a-1)ゴムと前記(B)マトリックス樹脂との屈折率の差は、一例として0.02以上であってもよく、好ましくは0.02~0.04、より好ましくは0.02~0.03であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに所望の効果を十分に示すという効果がある。
【0123】
本発明は、前記のようにゴム粒子とマトリックスとの屈折率の差が0.02以上である場合にも、熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差を0.02以下に調節することで、熱可塑性樹脂の透明度がさらに改善される効果を提供することができる。
【0124】
前記熱可塑性樹脂、前記(a-1)ゴム、またはこれらいずれものガラス転移温度は、一例として-50~-20℃であってもよく、好ましくは-48~-21℃であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに衝撃強度がさらに優れるという効果がある。
【0125】
本発明の熱可塑性樹脂は、曲げや折れのような折り曲げに対する耐白化性に優れたもので、一例として、前記熱可塑性樹脂を縦100mm×横100mm、厚さ0.15mmのフィルムとして押出し、23℃の温度下で180°に折り曲げた際に白化が発生しないため、無白化特性に優れることを特徴とする。
【0126】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、外部からの衝撃(打撃)に対する耐白化性に優れたもので、一例として、前記熱可塑性樹脂を厚さ0.15mmのフィルムとして押出し、23℃の温度下でガードナー衝撃試験機を用いて重量1kgの錘を100mmの高さから前記フィルム上に垂直に落下させたとき、前記錘によって打撃された部分の衝撃前後のASTM D1003-95に準拠して測定したヘイズ値の差が10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下であってもよい。この場合、折り曲げや外部衝撃に対する白化の発生が大きく低減されることによって、白化によって固有の色相が阻害されて望みの色を発現し難くなり、外観品質が均一でなく高級感が低下する問題を防止し、優れた外観品質を有する成形品を提供するという効果がある。
【0127】
本発明において、衝撃前後のヘイズの差は、具体的に縦100mm×横100mm、厚さ0.15mmのフィルム試験片に対して、ガードナー衝撃試験機としてBYK Gardner社のImpact Tester 5545を用い、打撃錘としてCat No.1249(Falling Weight 1kg)を用いてフィルムの中央に衝激を加え、衝撃前後のフィルムの中央部分のヘイズを測定し、その差から求める。
【0128】
前記衝撃前後のヘイズは、関連分野で透明度の測定における公知された方法を用いて測定することができ、詳細には、ASTM D1003に従って測定することができる。具体例として、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装置を用いて、押出温度230℃で押出したフィルム試験片に対して、ASTM D1003に従って23℃の温度下でヘイズ値(haze)を測定することができる。
【0129】
前記熱可塑性樹脂は、一例として、ASTM D528に準拠して入射角60°で測定された光沢度が110以上、好ましくは110~150、より好ましくは115~150、さらに好ましくは120~140であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに光沢度に優れることで、外観品質に優れた成形品を提供することができる。
【0130】
前記熱可塑性樹脂は、一例として、ASTM D1238に準拠して測定された流動指数(melt flow index、MI)が3g/10分以上、好ましくは3~20g/10分、より好ましくは5~20g/10分、さらに好ましくは7~15g/10分であってもよく、この範囲内で、他の物性の低下なしに成形加工性に優れるという効果がある。
【0131】
本発明において、流動指数は、220℃で錘の重量10kg、基準時間10分に設定し、ASTM D1238に準拠して測定することができる。より具体的な例として、GOETTFERT社の溶融指数(melting index)測定装置を用いて、試験片を220℃の温度に加熱し、メルトインデクサー(melt indexer)のシリンダーに入れ、ピストンで10kgの負荷を加え、10分間溶融されて出た樹脂の重量(g)を測定して求めることができる。
【0132】
熱可塑性樹脂の製造方法
本発明の熱可塑性樹脂の製造方法は、(A)アルキルアクリレート-アルキルメタクリレートグラフト共重合体50~100重量部と、(B)アルキルメタクリレート重合体及びアルキルメタクリレート-アルキルアクリレート共重合体からなる群から選択された1種以上を含むマトリックス樹脂0~50重量部とを含んで混練及び押出するステップを含み、下記数式1で計算されるX値が50%以上であることを特徴とし、この場合、機械的物性を従来のASA系樹脂と同等に維持しながら、成形加工性に優れると同時に、透明度、光沢度及び無白化特性に優れることで、優れた外観品質を提供することができる。
【0133】
[数式1]
X(%)={(G-Y)/Y}×100
【0134】
前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、前記熱可塑性樹脂のゲル中のブチルアクリレートの含量(重量%)を示す。
【0135】
前記熱可塑性樹脂の製造時に使用される(A)共重合体は、前記(A)共重合体の製造方法により製造されたものであってもよく、この場合、グラフト率及び分子量が適切に制御されることで、成形加工性及び無白化特性に優れるという利点がある。
【0136】
本発明の熱可塑性樹脂の製造時に、混練及び押出過程において、必要に応じて選択的に滑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、染料、顔料、着色剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、相溶化剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、発泡剤、可塑剤、補強剤、充填剤、艶消し剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、前記(A)共重合体及び(B)マトリックス樹脂の総和100重量部に対して0.01~5重量部、0.05~3重量部、0.05~2重量部または0.05~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、ASA系樹脂本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0137】
前記滑剤は、一例として、エチレンビスステアロアミド、酸化ポリエチレンワックス、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアロアミド、及びステアリン酸から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0138】
前記酸化防止剤は、一例として、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0139】
前記光安定剤は、一例として、HALS系光安定剤、ベンゾフェノン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0140】
前記帯電防止剤は、一例として、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤などを1種以上用いることができ、これに限定されるものではないことを明示する。
【0141】
前記離型剤は、一例として、グリセリンステアレート、ポリエチレンテトラステアレートなどから選択された1種以上を用いることができ、これに限定されるものではないことを明示する。
【0142】
成形品
本発明の成形品は、本発明の無白化特性に優れた熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする。この場合、耐候性及び耐衝撃性に優れながら成形加工性に優れ、同時に光沢度及び耐白化性に優れることで、優れた外観品質を提供できるので、フィルムやシート製品に適用できる。
【0143】
前記成形品は、一例として仕上げ材であってもよく、この場合、無白化特性に優れるため、外観品質に優れるという利点がある。
【0144】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0145】
[実施例]
実施例1
<ゴムシードの製造段階>
窒素置換された反応器に、ブチルアクリレート5重量部、ドデシル硫酸ナトリウム1.0重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.1重量部、アリルメタクリレート0.1重量部、炭酸水素ナトリウム0.1重量部及び蒸留水60重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、過硫酸カリウム0.1重量部を入れて反応を開始させた。以降、重合を1時間行った。
【0146】
<ゴムコアの製造段階>
前記ゴムシードに、ブチルアクリレート35重量部、ドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部、エチレングリコールジメタクリレート0.5重量部、アリルメタクリレート0.8重量部、蒸留水40重量部及び過硫酸カリウム0.1重量部を混合した混合物を、70℃で2.0時間連続投入し、投入終了後、重合を1時間さらに行った。前記反応終了後、収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは80nmであった。
【0147】
<共重合体シェルの製造段階>
前記ゴムコアが収得された反応器に、蒸留水40重量部、メチルメタクリレート57重量部、ブチルアクリレート3重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0重量部及び3級ドデシルメルカプタン0.05重量と、開始剤としてt-ブチルヒドロペルオキシド0.1重量部とを均一に混合した混合物と、活性化剤としてエチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム0.015重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.1重量部、硫化第一鉄0.002重量部の混合液を、それぞれ75℃で3.0時間連続投入しながら重合反応を行った。連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに重合した後、60℃まで冷却させて重合反応を終了し、グラフト共重合体ラテックスを製造した。
【0148】
反応終了後、収得したグラフト共重合体のグラフト率は85%であり、シェルの重量平均分子量は71,000(g/mol)を示した。
【0149】
<グラフト共重合体粉末の製造>
前記製造されたグラフト共重合体ラテックスに塩化カルシウム水溶液1.0重量部を適用して60~85℃で常圧凝集を行った後、70~95℃で熟成させ、脱水及び洗浄して、85℃の熱風で2時間乾燥させた後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0150】
<熱可塑性樹脂の製造>
前記グラフト共重合体粉末70重量部、マトリックス樹脂としてメチルメタクリレート(BA611、LGMMA社製)30重量部、滑剤1.5重量部、酸化防止剤1.0重量部、紫外線安定剤1.5重量部を添加して混合した。耐候性評価用試験片の製造時には、前記グラフト共重合体及びマトリックス樹脂の和100重量部に、追加的にブラック着色剤1重量部を添加して混合した。これを220℃のシリンダー温度で36ファイの押出混練機を用いてペレットに製造した。製造されたペレットを、射出機を用いてバレル温度220℃下で射出して、衝撃強度などの物性試験片を製造した。
【0151】
製造された熱可塑性樹脂中のBA(ブチルアクリレート)含量は30.1%(重量%)であり、ゴムのガラス転移温度は-47℃であり、BAカバレッジ値は77.5%であり、樹脂ゾル(Sol)中のBA溶出量は1.89%であった。
【0152】
熱可塑性樹脂のゾルの屈折率とゲルの屈折率との差は0.016であり、ゴム(前記ゴムシード及びこれを含むゴムコア)の屈折率とマトリックス樹脂の屈折率との差は0.03を示した。
【0153】
<熱可塑性樹脂フィルムの製造>
前記熱可塑性樹脂ペレットを、230℃のシリンダー温度でTダイが装着された20ファイの一軸押出混練機を用いて、厚さ150μmのフィルムとして製造した。
【0154】
実施例2
前記実施例1において、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート25重量部を使用し、共重合体シェルの製造時にメチルメタクリレート66.5重量部、ブチルアクリレート3.5重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0155】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は130%であり、シェルの重量平均分子量は62,000を示した。
【0156】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は23.5%であり、BAカバレッジ値は116%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は2.1%である。
【0157】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.013であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0158】
実施例3
前記実施例1において、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート45重量部を使用し、共重合体シェルの製造時にメチルメタクリレート47.5重量部、ブチルアクリレート2.5重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0159】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は62%であり、シェルの重量平均分子量は79,000を示した。
【0160】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は36.8%であり、BAカバレッジ値は57.1%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.54%である。
【0161】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.019であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0162】
実施例4
前記実施例1において、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム2.0重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0163】
収得したゴム重合体(ゴムコア)の粒子の平均サイズは50nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は79%であり、シェルの重量平均分子量は50,000を示した。
【0164】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は30.1%であり、BAカバレッジ値は72.2%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.99%である。
【0165】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.017であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0166】
実施例5
前記実施例1において、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.4重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0167】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは100nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は89%であり、シェルの重量平均分子量は80,000を示した。
【0168】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は30.1%であり、BAカバレッジ値は80.9%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.81%である。
【0169】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.016であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0170】
実施例6
前記実施例1において、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.3重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0171】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは110nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は92%であり、シェルの重量平均分子量は100,000を示した。
【0172】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は30.1%であり、BAカバレッジ値は83.6%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.76%である。
【0173】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.016であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0174】
実施例7
前記実施例1において、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート33.25重量部、メチルメタクリレート1.75重量部を使用し、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.95重量部、ブチルアクリレート4.75重量部、メチルメタクリレート0.25重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0175】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは80nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は97%であり、シェルの重量平均分子量は68,000を示した。
【0176】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は28.7%であり、ゴムのガラス転移温度は-41℃であり、BAカバレッジ値は97.3%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.65%である。
【0177】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.015であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.029を示した。
【0178】
実施例8
前記実施例1において、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート29.75重量部、メチルメタクリレート5.25重量部を使用し、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.9重量部、ブチルアクリレート4.25重量部、メチルメタクリレート0.75重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0179】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは80nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は103%であり、シェルの重量平均分子量は52,000を示した。
【0180】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は25.9%であり、ゴムのガラス転移温度は-30℃であり、BAカバレッジ値は125.2%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.52%である。
【0181】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.013であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.026を示した。
【0182】
実施例9
前記実施例1において、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート26.25重量部、メチルメタクリレート8.75重量部を使用し、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.8重量部、ブチルアクリレート3.75重量部、メチルメタクリレート1.25重量部を使用し、シェルの製造時にはメチルメタクリレート59.7重量部、ブチルアクリレート0.3重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0183】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは80nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は140%であり、シェルの重量平均分子量は41,000を示した。
【0184】
製造された熱可塑性樹脂中のBA含量は21.2%であり、ゴムのガラス転移温度は-21℃であり、BAカバレッジ値は217.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0.04%である。
【0185】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.009であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.023を示した。
【0186】
実施例10
前記実施例1において、共重合体シェルの製造時にメチルメタクリレート54重量部、ブチルアクリレート6重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0187】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は81%であり、シェルの重量平均分子量は76,000を示した。
【0188】
樹脂中のBA含量は32.2%であり、BAカバレッジ値は67.4%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は3.92%である。
【0189】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.017であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0190】
実施例11
前記実施例1において、共重合体シェルの製造時にメチルメタクリレート48重量部、ブチルアクリレート12重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0191】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は76%であり、シェルの重量平均分子量は95,000を示した。
【0192】
樹脂中のBA含量は36.4%であり、ゴムのガラス転移温度は-35℃であり、BAカバレッジ値は52.8%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は8.17%である。
【0193】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.017であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0194】
実施例12
前記実施例2において、熱可塑性樹脂の製造時にマトリックス樹脂を使用せず、前記グラフト共重合体を100重量部使用した以外は、同様に製造した。
【0195】
樹脂中のBA含量は33.5%であり、BAカバレッジ値は116.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は5.00%である。
【0196】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.012を示した。
【0197】
比較例1
前記実施例1において、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート55重量部を使用し、共重合体シェルの製造時にメチルメタクリレート40重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0198】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは85nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は38%であり、シェルの重量平均分子量は82,000を示した。
【0199】
樹脂中のBA含量は42.0%であり、ゴムのガラス転移温度は-47℃であり、BAカバレッジ値は38.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0%である。
【0200】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.022であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.03を示した。
【0201】
比較例2
前記実施例2において、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート20重量部を使用し、共重合体シェルの製造時にメチルメタクリレート75重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0202】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは75nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は100%であり、シェルの重量平均分子量は71,000を示した。
【0203】
樹脂中のBA含量は17.5%であり、ゴムのガラス転移温度は-47℃であり、BAカバレッジ値は100.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0%である。
【0204】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.015であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.029を示した。
【0205】
比較例3
前記実施例3において、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.11重量部を使用し、シェルの製造時にメチルメタクリレート50重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0206】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは150nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は98%であり、シェルの重量平均分子量は126,000を示した。
【0207】
樹脂中のBA含量は35.0%であり、BAカバレッジ値は98.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0%である。
【0208】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.015であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.030を示した。
【0209】
比較例4
前記実施例1において、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.75重量部、ブチルアクリレート3.5重量部、メチルメタクリレート1.5重量部を使用し、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート24.5重量部、メチルメタクリレート10.5重量部を使用し、シェルの製造時にメチルメタクリレート60重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0210】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は120%であり、シェルの重量平均分子量は32,000を示した。
【0211】
樹脂中のBA含量は19.6%であり、ゴムのガラス転移温度は-14℃であり、BAカバレッジ値は214.3%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0%である。
【0212】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.01であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.021を示した。
【0213】
比較例5
前記実施例1において、シェルの製造時にメチルメタクリレート45重量部、ブチルアクリレート15重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0214】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は59%であり、シェルの重量平均分子量は121,000を示した。
【0215】
樹脂中のBA含量は38.5%であり、BAカバレッジ値は38.6%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は11.48%である。
【0216】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.018であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.030を示した。
【0217】
比較例6
前記実施例1において、熱可塑性樹脂の製造時に前記グラフト共重合体粉末40重量部、マトリックス樹脂60重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0218】
樹脂中のBA含量は17.2%であり、BAカバレッジ値は77.5%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0.74%である。
【0219】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.017であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.030を示した。
【0220】
比較例7
前記比較例1において、熱可塑性樹脂の製造時に前記グラフト共重合体粉末85重量部、マトリックス樹脂15重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0221】
樹脂中のBA含量は51.0%であり、BAカバレッジ値は38.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0%である。
【0222】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.022であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.030を示した。
【0223】
比較例8
前記比較例1において、シェルの製造時にメチルメタクリレート38重量部、ブチルアクリレート2重量部を使用し、熱可塑性樹脂の製造時には前記グラフト共重合体粉末85重量部、マトリックス樹脂15重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0224】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は35.0%であり、シェルの重量平均分子量は98,000を示した。
【0225】
樹脂中のBA含量は52.7%であり、BAカバレッジ値は32.7%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は2.59%である。
【0226】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.022であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.030を示した。
【0227】
比較例9
前記実施例1において、ゴムシードの製造時にドデシル硫酸ナトリウム0.7重量部、ブチルアクリレート3.75重量部、スチレン1.25重量部を使用し、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート26.25重量部、スチレン8.75重量部を使用し、シェルの製造時にはスチレン47重量部、アクリロニトリル13重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0228】
収得したゴム重合体の粒子の平均サイズは80nmであり、グラフト共重合体のグラフト率は107.0%であり、シェルの重量平均分子量は98,000を示した。
【0229】
樹脂中のBA含量は21.0%であり、ゴムのガラス転移温度は-21℃であり、BAカバレッジ値は176.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0%である。
【0230】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.021であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.002を示した。
【0231】
比較例10
前記実施例1において、熱可塑性樹脂の製造時にマトリックス樹脂としてスチレン-アクリロニトリル樹脂(S85RF、LG化学社製)を30重量部使用した以外は、同様に製造した。
【0232】
BAカバレッジ値は77.5%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.89%である。
【0233】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.064であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.107を示した。
【0234】
比較例11
前記実施例1において、熱可塑性樹脂の製造時にマトリックス樹脂としてスチレン-アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体(XT500、LG化学社製)を30重量部使用した以外は、同様に製造した。
【0235】
BAカバレッジ値は77.5%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は1.89%である。
【0236】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.031であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.054を示した。
【0237】
比較例12
前記実施例1において、ゴムシードの製造時にブチルアクリレート4.25重量部、メチルメタクリレート0.75重量部を使用し、ゴムコアの製造時にブチルアクリレート34重量部、メチルメタクリレート6重量部を使用し、共重合体シェルの製造時にメチルメタクリレート52.25重量部、ブチルアクリレート2.75重量部を使用した以外は、同様にグラフト共重合体を製造した。
【0238】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は103%であり、シェルの重量平均分子量は61,000を示した。
【0239】
熱可塑性樹脂の製造時には、前記製造されたグラフト共重合体50重量部、マトリックス樹脂としてα-メチルスチレン-スチレン-アクリロニトリル共重合体(S99UH、LG化学社製)を50重量部使用した以外は、同様に製造した。
【0240】
樹脂中のBA含量は20.5%であり、ゴムのガラス転移温度は-30℃であり、BAカバレッジ値は125.2%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は0.4%である。
【0241】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.087であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.106を示した。
【0242】
比較例13
前記実施例1において、シェルの製造時にメチルメタクリレート45.6重量部、ブチルアクリレート14.4重量部を使用した以外は、同様に製造した。
【0243】
収得したグラフト共重合体のグラフト率は62%であり、シェルの重量平均分子量は118,000を示した。
【0244】
樹脂中のBA含量は38.1%であり、BAカバレッジ値は41.0%であり、樹脂ゾル中のBA溶出量は10.82%である。
【0245】
熱可塑性樹脂のゾルとゲルとの屈折率の差は0.018であり、ゴムとマトリックス樹脂との屈折率の差は0.030を示した
【0246】
[試験例]
前記実施例1~12、比較例1~13で製造された物性試験片及びフィルムを用いて下記の方法により各物性を測定し、その結果を下記の表1及び表2に示した。
【0247】
*DLS平均粒径:前記製造されたゴムラテックス(固形分含量35~50重量%)0.1gを脱イオン水100gで希釈させて試料を準備した後、23℃で粒度分布分析器(Nicomp CW380、PPS社)を用いて、動的光散乱法により強度加重ガウス分析(強度-荷重ガウス分析(Intensity-weighted Gaussian Analysis))モードでインテンシティ値300kHz下で粒子の直径を測定し、散乱強度分布から求めた流体力学的直径の平均値をDLS平均粒径として求めた。
【0248】
*グラフト率(%):グラフト重合体の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温(23℃)で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けていない不溶分のみを採取した後、強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後の重量を測定し、下記数式3で計算して求めることができる。
【0249】
[数式3]
グラフト率(%)=[グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)]×100
【0250】
前記数式3において、グラフトされた単量体の重量(g)は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させ、遠心分離して得た不溶分(gel)の重量からゴム質の重量(g)を引いた重量であり、前記ゴム質の重量(g)は、グラフト共重合体粉末中の理論上投入されたゴム成分の重量部である。ここで、前記ゴムの重量部は、ゴムシード及びコアの製造時に投入された単位体成分の重量部の総和を意味する。
【0251】
*シェルの重量平均分子量(g/mol):前記グラフト率の測定時に得たアセトンに溶けた部分(sol)をTHF溶液に溶かした後、GPCを用いて、標準PS(standard polystyrene)試料に対する相対値として求めた。具体的な測定条件は、下記の通りである。
-溶媒:THF(テトラヒドロフラン;tetrahydrofuran)
-カラム温度:40℃
-流速:0.3mL/分
-試料の濃度:20mg/mL
-注入量:5μl
-カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)
-装置名:Agilent 1200シリーズシステム
-屈折率検出器:(Refractive index detector:Agilent G1362 RID)
-RI温度:35℃
-データの処理:Agilent ChemStation S/W
-試験方法:OECD TG 118に従って測定
【0252】
*BA含量(重量%):1H NMR分析又はFT-IR分析を通じて定量的に測定した。具体的な測定条件は、下記の通りである。
1
H NMR
-装置名:Bruker 600MHz NMR(AVANCE III HD) CPP BB(1H 19F tunable and broadband、with z-gradient) Prodigy Probe
-測定条件:1H NMR(zg30):ns=32、d1=5s、TCE-d2、at room temp.
FT-IR
-装置名:Agilent Cary 660
-測定条件:ATRモード
【0253】
*ゲル含量:製造された熱可塑性樹脂の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離して、アセトンに溶けていない不溶分のみを採取した後、強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後の重量を測定し、下記数式2で計算した。
【0254】
[数式2]
ゲル含量(%)=[不溶分(ゲル)の重量/試料の重量]×100
【0255】
*ブチルアクリレート(BA)カバレッジ(%):下記数式1で計算した。
【0256】
[数式1] X(%)={(G-Y)/Y}×100
【0257】
前記数式1において、Gは、前記熱可塑性樹脂の総ゲル含量(%)、Yは、前記ゲル中のブチルアクリレートの重量%を示す。ここで、ゲル中のブチルアクリレートの含量(重量%)は、1NMR分析器又はFT-IRを用いて定量的に測定した。
【0258】
*ブチルアクリレートの溶出量(重量%):熱可塑性樹脂の乾燥粉末0.5gにアセトン30gを加えた後、常温で210rpmで12時間撹拌(SKC-6075、Lab companion社)し、その後、これを遠心分離機(Supra R30、ハンイル科学社)を用いて0℃で18,000rpmで3時間遠心分離し、不溶分が分離されたアセトン溶液を強制循環方式で85℃で12時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させて樹脂ゾル(Sol)を得、これを1H-NMR分析器又はFT-IR分析で定量的に測定した。
【0259】
*ゴムの屈折率:製造されたゴムコアを強制循環方式で90℃で24時間乾燥(OF-12GW、Lab companion社)させた後、ASTM D542に準拠してアッベ屈折計を用いて25℃で測定した。
【0260】
*マトリックス樹脂の屈折率:マトリックス樹脂を190℃でプレス(Press)加工した後、ASTM D542に準拠してアッベ屈折計を用いて25℃で測定した。
【0261】
*ゾル及びゲルの屈折率:前記ゲル含量の測定方式で得たゲル、及び前記アルキルアクリレートの溶出量の測定方式で得たゾルを用いて、それぞれの屈折率をASTM D542に準拠してアッベ屈折計を用いて25℃で測定し、その差(ΔRI)を求めた。
【0262】
*ガラス転移温度:ASTM D 3418に準拠して、示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント社製、Q100)を用いて10℃/分の昇温速度下で測定した。
【0263】
*衝撃強度(1/4”;kgf・cm/cm):ASTM D256に準拠して23℃の温度下で測定した。
【0264】
*流動指数(MI:melt flow index):ASTM D-1238に準拠して220℃、10kg下で測定した。具体的には、GOETTFERT社の溶融指数(melting index)測定装置を用いて、試験片を220℃の温度に加熱し、メルトインデクサー(melt indexer)のシリンダーに入れ、ピストンで10kgの負荷を加え、10分間溶融されて出た樹脂の重量(g)を測定して求めた。
【0265】
*耐候性(ΔE):前記熱可塑性樹脂100重量部に1重量部のブラック着色剤を添加して製造された試験片を、促進耐候性試験装置(weather-o-meter、ATLAS社のCi4000、キセノンアークランプ、Quartz(inner)/S.Boro(outer)フィルター、照射(irradiance) 0.55W/m2 at 340nm)を適用して、SAE J2527の条件で6,000時間測定した後、下記数式5で計算されるΔEとして評価した。下記ΔEは、促進耐候性試験の前後に測定されたHunter Lab(L,a,b)値の算術平均値であり、ΔE値が0に近いほど耐候性が優れることを示す。
【0266】
【0267】
*表面光沢度(%):グロスメーター(VG7000、NIPPON DENSHOKU社)を用いて、23℃の温度及び入射角60°の角度でASTM D528に準拠して測定した。
【0268】
*透明度(Haze):0.15mmの厚さに押出したフィルム及び3mmの厚さの射出試験片を準備し、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装置を用いて23℃の温度下でASTM D-1003に準拠してそれぞれのヘイズ値(haze value)を測定した
【0269】
*白化:製造されたフィルムを縦方向(MD)と横方向(TD)に180°折り曲げたとき、白化現象が発生したか否かを目視で判定した(折り曲げ白化)
【0270】
また、縦100mm×横100mm、厚さ0.15mmのフィルム試験片を準備し、ガードナー衝撃試験機(BYK Gardner社のImpact Tester 5545)を用いて23℃の温度下で重量1kgの錘(Cat No.1249、Falling Weight 1kg)を100mmの高さからフィルム上に垂直に落下させたとき、前記錘によって衝撃を受けた衝撃部(フィルムの中央)の衝撃前後のヘイズをASTM D1003-95に準拠して測定した後、下記数式6で計算した(落球白化)。
【0271】
[数式6]
ヘイズの差=落球後のヘイズ値-落球前のヘイズ値
【0272】
下記表1及び表2において、折り曲げ白化は、白化の発生時に○、白化が発生しなかった時に(無白化)×と表示し、落球白化は、前記数式6により求められたヘイズの差で示した。
【0273】
このとき、ヘイズは、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装置を用いて、ASTM D1003-95に準拠して23℃の温度下で測定した。
【0274】
【0275】
【0276】
前記表1及び表2を参照すると、本発明に係る熱可塑性樹脂(実施例1~12)は、流動指数と衝撃強度とのバランスが適切に維持されながら、透明度、光沢度及び耐候性に優れ、特に折り曲げ白化が発生せず、落球衝撃前後のヘイズの差が10以下と示され、無白化特性が非常に優れることが確認できた。反面、本発明の範囲を外れる熱可塑性樹脂(比較例1~13)の場合には、流動指数と衝撃強度とのバランスが低下し、透明度、光沢度及び耐候性が概ね低下したり、折り曲げ時に白化が発生したりし、落球衝撃前後のヘイズの差が10を超えるものと示され、透明度、光沢度、耐候性及び無白化特性の物性バランスが非常に劣ることが確認できた。
【0277】
下記の
図1は、実施例(左側の写真)及び比較例(右側の写真)で製造されたフィルムを、白化の有無を確認するために、それぞれMd及びTd方向に折り曲げた後に撮影した写真であって、本発明に係る実施例は、折り曲げ部位に白化が発生せず無白化特性を確認したが、本発明の範囲を外れる比較例は、折り曲げ部位に白化がひどく発生したことが確認できた。
【0278】
また、下記の
図2は、実施例(左側の写真)及び比較例(右側の写真)で製造されたフィルムを、白化の有無を確認するために、それぞれガードナー衝撃試験機で打撃した後に撮影した写真であって、ここでも同様に、本発明に係る実施例は、衝撃部に白化が発生せず無白化特性を確認したが、本発明の範囲を外れる比較例は、衝撃部に白化がひどく発生したことが確認できた。