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特許7455973熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-15
(45)【発行日】2024-03-26
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20240318BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
C08L33/06
C08L51/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022529071
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2021009238
(87)【国際公開番号】W WO2022059896
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0118528
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093004
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スク・ジョ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジュン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-521308(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0049324(KR,A)
【文献】特表2022-550104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と、
A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と、
B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と、
C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを共重合したポリメタクリレート樹脂を除く)6~30重量%とを含み、
ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記A-1)グラフト共重合体は、アクリレートゴム30~50重量%、芳香族ビニル化合物30~60重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記A-2)グラフト共重合体は、アクリレートゴム30~60重量%、芳香族ビニル化合物20~60重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記A-1)グラフト共重合体は、前記A-2)グラフト共重合体よりも少ない量で含まれることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記B)共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物30~55重量%、α-メチルスチレン25~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記B)共重合体は、重量平均分子量が50,000~200,000g/molであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを共重合したポリメタクリレート樹脂を除く)は、メタクリレート単量体を55重量%以上含んでなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを共重合したポリメタクリレート樹脂を除く)は、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体、またはメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体とポリメチルメタクリレート樹脂との混合物であることを特徴とする、請求項7に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、メチルメタクリレート55~82重量%、スチレン10~35重量%及びアクリロニトリル1~20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、滑剤、熱安定剤、UV安定剤及びスリップ剤からなる群から選択された1種以上を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO 179に準拠して、ノッチ付き試験片で測定したシャルピー衝撃強度(23℃)が9kJ/m以上であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO 1133に準拠して、220℃、10kg下で測定した溶融流れ指数が5g/10分以上であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と、A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と、B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と、C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを共重合したポリメタクリレート樹脂を除く)6~30重量%とを混合した後、200~300℃下で10~100ファイ規格で押出混練機を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造するステップを含み、
製造された熱可塑性樹脂組成物は、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2020年09月15日付の韓国特許出願第10-2020-0118528号及びこれに基づいて2021年07月15日付で再出願された韓国特許出願第10-2021-0093004号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れ、特に、面衝撃強度(Multi-axial impact strength)が高いながらも、その標準偏差が低いため大型製品を射出成形することができ、ディープブラック(deep black)色相の実現が可能であると共に、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たす熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車外装材を無塗装で使用するためには、優れた射出外観品質と共に、自動車の信頼性評価を満たし得る物性が求められる。特にラジエーターグリルに適用するためには、大型射出製品の成形が可能なように樹脂の流れ性、高いレベルの耐熱度及び衝撃強度が必要であり、主要な信頼性評価と関連する面衝撃強度特性が求められる。このために、ディープブラック色相の実現のためのMMA系樹脂と、耐熱度の実現のための耐熱性樹脂とを混合しなければならないが、2つの樹脂の相溶性が良くないため、所望のレベルの射出外観品質及び均一な物性の実現が難しい。相溶性が良くない2つの樹脂を混用する場合、ゴニオクロミズム現象が発生し、物性のばらつきが大きくなる。特に自動車の主要な信頼性評価の項目である面衝撃強度の標準偏差値が高くなるという問題がある。
【0004】
したがって、耐熱度及び耐衝撃性を有すると共に、高黒色の実現及び大型射出製品の成形が可能であり、射出外観品質を改善させることができる熱可塑性樹脂組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許第10-0417066号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術の問題点を解決するために、本発明は、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れ、特に平均面衝撃強度が高いながらも、その標準偏差が低いため大型製品を射出成形することができ、ディープブラック色相の実現が可能であると共に、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たす熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と;A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と;B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と;C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量%と;を含み、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と;A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と;B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と;C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量%と;を含み、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であり、前記B)共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物30~55重量%、α-メチルスチレン系化合物25~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0010】
また、本発明は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と;A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と;B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と;C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量%と;を含み、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であり、前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)は、メタクリレート単量体を55重量%以上含んでなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0011】
また、本発明は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と、A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と、B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と、C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量%とを混合した後、200~300℃下で10~100ファイ規格で押出混練機を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造するステップを含み、製造された熱可塑性樹脂組成物は、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と、A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と、B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と、C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量%とを混合した後、200~300℃下で10~100ファイ規格で押出混練機を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造するステップを含み、製造された熱可塑性樹脂組成物は、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であり、前記B)共重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物30~55重量%、α-メチルスチレン系化合物25~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【0013】
また、本発明は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と、A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と、B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と、C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量%とを混合した後、200~300℃下で10~100ファイ規格で押出混練機を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造するステップを含み、製造された熱可塑性樹脂組成物は、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上であり、標準偏差が6.5以下であり、前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)は、メタクリレート単量体を55重量%以上含んでなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【0014】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れ、特に平均面衝撃強度が高いながらも、その標準偏差が低いため大型製品を射出成形することができ、ディープブラック色相の実現が可能であると共に、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たす熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を詳細に説明する。
【0017】
本発明者らは、耐熱樹脂とMMA系樹脂との相溶性を改善するために、平均粒径が異なる2種のASA樹脂を所定の含量に調整し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体及びポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)を所定の含量に調整する場合、ゴニオクロミズム現象が発生せず、ディープブラック色相を実現することができ、面衝撃強度が向上し、その標準偏差が減少する効果を確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と;A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と;B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と;C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量%と;を含み、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J/mm以上であり、標準偏差が6.5以下であることを特徴とする。このような場合、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れるため大型製品を射出成形することができるだけでなく、ディープブラック色相の実現が可能であり、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たすという効果がある。
【0019】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成別に詳細に説明する。
【0020】
A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体
前記グラフト共重合体のアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が200~400nm、好ましくは220~350nm、より好ましくは250~330nmであるが、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、優れた耐候性、着色性、光沢性、衝撃強度及び表面特性を付与することができる。
【0021】
本記載において、平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、粒子測定器(製品名:Nicomp380、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定する。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈し、すなわち、強度セットポイント(Intensity Setpoint) 300kHzを大きく外れないように適切に希釈し、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity) 300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width) 10μsecとして測定することができる。
【0022】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として3~22重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは7~15重量%であり、この範囲内で、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れ、特に平均面衝撃強度が高いながらも、その標準偏差が減少して大型製品を射出成形することができるだけでなく、ディープブラック色相の実現が可能であり、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たすという効果がある。
【0023】
本記載において、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象は、樹脂間に相溶性が低下して、ペレット又は射出試験片に虹色又は真珠色が現れる現象を指す。前記現象が発現する場合、染料又は顔料の着色性が低下して射出品の外観の色相が不均一であり、顔料又は染料の着色に対して黒色度(L)の数値が増加し、高黒色の発現が難しいという問題がある。
【0024】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、アクリレート系ゴム30~60重量%、芳香族ビニル化合物20~60重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでなるものであり、この範囲内で、耐衝撃性、面衝撃強度及びその標準偏差が改善され、射出外観品質に優れるという効果がある。
【0025】
好ましい例として、前記A-1)グラフト共重合体は、アクリレート系ゴム35~55重量%、芳香族ビニル化合物35~55重量%及びビニルシアン化合物7~17重量%を含んでなることができ、この範囲内で、面衝撃強度及びその標準偏差が改善され、射出外観品質に優れるという効果がある。
【0026】
本記載において、ある化合物を含んでなる重合体とは、その化合物を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0027】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、耐衝撃性、耐化学性、耐候性及び着色性に優れるという効果がある。
【0028】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0029】
本発明のアクリレートは、一例として、アルキル基の炭素数が2~8個であるアルキルアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、アルキル基の炭素数が4~8個であるアルキルアクリレートであり、さらに好ましくは、ブチルアクリレートまたはエチルヘキシルアクリレートであってもよい。
【0030】
本発明の芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、ρ-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ο-ブロモスチレン、ρ-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、ο-クロロスチレン、ρ-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくはスチレンであってもよい。
【0031】
本発明のビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリロニトリル及びイソプロピルアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルである。
【0032】
A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体
前記グラフト共重合体のアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が50~199nm、好ましくは70~180nm、より好ましくは90~150nmであるが、この範囲内で、最終製造される熱可塑性樹脂組成物に、優れた耐候性、着色性、光沢性、衝撃強度及び表面特性を付与することができる。
【0033】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、17~40重量%、好ましくは20~35重量%、より好ましくは25~30重量%であり、この範囲内で、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れ、特に平均面衝撃強度が高いながらも、その標準偏差が減少して大型製品を射出成形することができ、ディープブラック色相の実現が可能であると共に、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たすという効果がある。
【0034】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として、アクリレート系ゴム30~60重量%、芳香族ビニル化合物20~60重量%及びビニルシアン化合物5~20重量%を含んでなるものであり、この範囲内で、高黒色の発現に優れ、面衝撃強度の標準偏差が減少して物性が安定化されるという効果がある。
【0035】
好ましい例として、前記(A-2)グラフト共重合体は、アクリレート系ゴム35~55重量%、芳香族ビニル化合物35~55重量%及びビニルシアン化合物7~17重量%を含んでなることができ、この範囲内で、高黒色の発現に優れ、面衝撃強度の標準偏差が減少して物性が安定化されるという効果がある。
【0036】
前記A-2)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、耐衝撃性、耐化学性、耐候性及び着色性に優れるという効果がある。
【0037】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化グラフト重合方法による場合、特に制限されない。
【0038】
前記A-1)グラフト共重合体は、一例として、前記A-2)グラフト共重合体よりも少ないかまたは同じ量で含まれてもよく、好ましくは、前記A-1)グラフト共重合体とA-2)グラフト共重合体は、重量比が1:1~1:7.5、より好ましくは1:1~1:7、さらに好ましくは1:2~1:4、より一層好ましくは1:2~1:3であってもよく、この範囲内で、面衝撃強度及びその標準偏差が改善されて大型射出成形品に適用可能であり、高黒色の発現が可能であるという利点がある。
【0039】
本記載において、AとBの重量比は、A:Bの重量比を意味する。
【0040】
B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体
前記B)共重合体は、一例として30~60重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは42~54重量%、より一層好ましくは45~50重量%であり、この範囲内で、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れ、特に平均面衝撃強度が高いながらも、その標準偏差が減少して大型製品を射出成形することができ、ディープブラック色相の実現が可能であると共に、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たすという効果がある。
【0041】
前記B)共重合体は、一例として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物30~55重量%、α-メチルスチレン系化合物25~50重量%及びビニルシアン化合物10~30重量%を含んでなるものであり、この範囲内で、後述するC)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)との相溶性が改善されてゴニオクロミズム現象が発生しないようにし、射出外観品質に優れるという効果がある。
【0042】
前記B)共重合体は、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物35~50重量%、α-メチルスチレン系化合物30~45重量%及びビニルシアン化合物12~27重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、後述するC)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)との相溶性が改善されてゴニオクロミズム現象が発生しないようにし、射出外観に優れるという効果がある。
【0043】
前記B)共重合体は、より好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物40~45重量%、α-メチルスチレン系化合物35~40重量%及びビニルシアン化合物17~22重量%を含んでなるものであってもよく、この範囲内で、後述するC)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)との相溶性が改善されてゴニオクロミズム現象が発生しないようにし、射出外観に優れるという効果がある。
【0044】
前記B)共重合体は、一例として重量平均分子量が50,000~200,000g/mol、好ましくは70,000~150,000g/mol、より好ましくは80,000~120,000g/molであってもよく、この範囲内で、面衝撃強度に優れ、射出成形性を確保するという効果がある。
【0045】
本記載において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を通じて、標準PS(標準ポリスチレン:standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/分、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装置名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率検出器(Refractive index detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0046】
前記B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル重合体は、一例として、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、及び(メタ)アクリル酸ラウリルエステルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルエステルであるメチルメタクリレートであってもよい。
【0047】
前記α-メチルスチレン系化合物は、一例として、α-メチルスチレン及びその誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、耐熱性に優れるという効果がある。
【0048】
前記α-メチルスチレンの誘導体は、好ましくは、その水素のうち1又は2以上が炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン基などの置換基で置換された化合物であってもよく、より好ましくは、その芳香族環(aromatic ring)中の水素のうち1又は2以上が炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン基などの置換基で置換された化合物であってもよい。
【0049】
前記B)共重合体に含まれたビニルシアン化合物の種類は、本記載のA-1)グラフト共重合体に含まれるビニルシアン化合物の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0050】
前記B)共重合体は、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により製造されてもよく、好ましくは塊状重合であってもよく、前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0051】
C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)
前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)は、一例として6~30重量%、好ましくは8~25重量%、より好ましくは9~22重量%、より一層好ましくは10~16重量%であってもよく、この範囲内で、高黒色の発現性に優れ、溶融流れ指数に優れるため、大型製品の射出が容易であるという効果がある。
【0052】
前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)は、好ましくはメタクリレート単量体を55重量%以上含み、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65重量%以上含み、この範囲内で、高黒色の発現性に優れ、溶融流れ指数に優れるため、大型製品の射出が容易であるという効果がある。
【0053】
前記メタクリレート単量体は、一例として、アルキル基の炭素数が1~15であるアルキルメタクリレートであってもよく、具体例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート及びラウリルメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、炭素数1~4個のアルキル基を含むアルキルメタクリレートであってもよく、より好ましくはメチルメタクリレートであってもよい。
【0054】
前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)は、好ましくはメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体、またはポリメチルメタクリレート樹脂とメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体との混合物であってもよく、この範囲内で、高黒色の発現性に優れ、溶融流れ指数に優れるため、大型製品の射出が容易であるという効果がある。
【0055】
一例として、前記C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)として、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体とポリメチルメタクリレートを混合して使用する場合、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、ポリメチルメタクリレート樹脂よりも多いかまたは同じ量で含むことができ、好ましくは、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、ポリメチルメタクリレートよりも多い量で含むことができ、この場合に、流動性、面衝撃強度及びその標準偏差に優れるという効果がある。
【0056】
具体的な例として、前記熱可塑性樹脂組成物100重量%中にメチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体3~15重量%及びポリメチルメタクリレート3~15重量%で含まれてもよく、好ましくは、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体5~12重量%及びポリメチルメタクリレート4~11重量%で使用されてもよく、この場合に、耐熱性、黒色度、及び面衝撃強度及びその標準偏差に優れ、溶融流れ指数に優れるため、大型製品の射出が容易であるという効果がある。
【0057】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として、メチルメタクリレート55~82重量%、スチレン10~35重量%及びアクリロニトリル1~20重量%を含んでなり、好ましくは、メチルメタクリレート60~77重量%、スチレン15~30重量%及びアクリロニトリル1~15重量%を含んでなり、より好ましくはメチルメタクリレート67~72重量%、スチレン20~25重量%及びアクリロニトリル5~10重量%を含んでなり、この範囲内で、溶融流れ指数が改善されて大型製品を容易に射出成形することができ、物性が安定化されるという利点がある。
【0058】
前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体は、一例として重量平均分子量が100,000~180,000g/mol、好ましくは110,000~160,000g/mol、より好ましくは120,000g/mol~140,000g/molであってもよく、この範囲内で、面衝撃強度に優れ、射出成形性を確保するという効果がある。
【0059】
前記ポリメチルメタクリレート樹脂は、一例として重量平均分子量が35,000~200,000g/molであってもよく、好ましくは50,000~200,000g/mol、より好ましくは80,000~150,000g/molであってもよく、この範囲内で、面衝撃強度に優れ、射出成形性を確保するという効果がある。
【0060】
前記ポリメチルメタクリレート樹脂は、一例としてメチルメタクリレート及びメチルアクリレートを含んでなり、好ましくはメチルアクリレートを1~15重量%、より好ましくは2~7重量%含んでなるものであってもよく、この範囲内で、メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体との相溶性に優れるため、着色性、溶融流れ指数及び機械的物性が向上するという利点がある。
【0061】
前記C)ポリメタクリレート樹脂は、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合により製造されてもよく、前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0062】
本発明は、好ましくは、前記B)共重合体と前記C)ポリメタクリレート樹脂との組み合わせ、より好ましくは、前記B)共重合体と前記メチルメタクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体との組み合わせによって、耐熱性、黒色度及び衝撃強度などの機械的物性に優れると共に、面衝撃強度及びその標準偏差がいずれも優れるシナジー効果が発現される。
【0063】
添加剤
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、滑剤、熱安定剤、UV安定剤及びスリップ剤からなる群から選択された1種以上を含むことができ、この範囲内で、本記載の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0064】
前記滑剤は、一例として、熱可塑性樹脂組成物の総100重量部に対して0.1~3重量部、好ましくは0.5~2重量部、より好ましくは0.5~1.5重量部含むことができ、この場合に、衝撃強度及び溶融流れ指数がいずれも優れるという効果がある。
【0065】
前記滑剤は、一例として、エステル系滑剤、金属塩系滑剤、カルボン酸系滑剤、炭化水素系滑剤及びアミド系滑剤からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアミド系滑剤であり、より好ましくはステアルアミド系滑剤であり、さらに好ましくはアルキレンの炭素数が1~10であるアルキレンビス(ステアルアミド)であり、この場合、樹脂の機械的物性及び熱安定性を低下させないながらも、滑剤本来の効果が良好に発現されるという利点がある。
【0066】
本記載において、ステアルアミド系滑剤は、ステアルアミド(stearamide)及びその水素のうち1以上が他の置換基で置換されたステアルアミド置換体を含むことができる。
【0067】
前記エステル系滑剤、金属塩系滑剤、カルボン酸系滑剤、炭化水素系滑剤及びアミド系滑剤は、それぞれ、本発明の属する技術分野で一般的に当該種類の滑剤として使用される物質であれば、特に制限されない。
【0068】
前記熱安定剤は、一例として熱可塑性樹脂組成物の総100重量部に対して0.1~2重量部、好ましくは0.2~1.5重量部であってもよく、この範囲内で、耐熱度が改善されるという効果がある。
【0069】
前記熱安定剤は、一例として、フェノール系熱安定剤、ホスファイト系熱安定剤及びチオエーテル系熱安定剤からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、フェノール系熱安定剤及びホスファイト系熱安定剤である。
【0070】
前記フェノール系熱安定剤は、一例として、テトラキスメチレン3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、1,3,5-トリス-(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、及び1,3,5-トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0071】
前記ホスファイト系熱安定剤は、一例として、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、またはこれらの混合物であってもよい。
【0072】
前記チオエーテル系熱安定剤は、一例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジメチルチオジプロピオネート、2-メルカプトベンゾイミダゾール、フェノチアジン、オクタデシルチオグリコレート、ブチルチオグリコレート、オクチルチオグリコレート及びチオクレゾールからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0073】
前記UV安定剤は、一例として、熱可塑性樹脂組成物の総100重量部に対して0.1~3重量部、好ましくは0.5~1.5重量部であってもよく、この場合、耐候性が改善されるという効果がある。
【0074】
前記UV安定剤は、一例として、ヒンダードアミン系UV安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)であってもよく、好ましくは、1,1-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシナート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-N-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジ-クロロ-1,3,5-トリアジンとの線状又は環状縮合生成物、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,1’-(1,2-エタンジイル)-ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、4-ベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-モルホリノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの線状又は環状縮合生成物、7,7,9,9-テトラメチル-2-シクロウンデシル-1-オキサ-3,8-ジアザ-4-オキソスピロ-[4,5]デカンとエピクロロヒドリンとの反応生成物、及びポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0075】
前記UV安定剤は、より好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl)sebacate)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol)、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]、またはこれらの混合物であってもよく、より一層好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl)、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]、またはこれらの混合物であってもよく、このような場合、衝撃強度及び流動性を阻害しないと共に、耐候性を大きく改善させるという利点がある。
【0076】
前記スリップ剤は、一例として熱可塑性樹脂組成物の総100重量部に対して0.1~3重量部、好ましくは0.5~2重量部であってもよく、この範囲内で、耐摩擦性が改善されるという効果がある。
【0077】
本記載において、滑剤は、射出加工時の成形性(加工性)を改善させるために使用され、スリップ剤は、射出成形後の完成された製品の表面特性を向上させるために使用されるものを指す。
【0078】
前記スリップ剤は、一例としてポリエステル変性シロキサンであってもよく、この場合、熱可塑性樹脂組成物との相溶性に優れるという利点がある。
【0079】
具体的に前記ポリエステル変性シロキサンは、主鎖がポリジメチルシロキサンであり、前記ポリジメチルシロキサンの有機基(organic group)がポリエステルで置換されて、ポリジメチルシロキサンを主鎖とし、ポリエステルを側鎖として含むことができ、この場合、熱可塑性樹脂組成物との相溶性がさらに向上して組成物の物性バランスが高く維持されながらも、耐摩擦性がさらに改善されるという利点を提供する。
【0080】
前記ポリエステル変性シロキサンは、末端にヒドロキシ基を有するポリエステル変性シロキサンであってもよく、この場合、熱可塑性樹脂組成物との相溶性がさらに優れるため、全体的な物性バランスを高く維持しながらも耐摩擦性を大きく向上させることができる。
【0081】
前記ポリエステル変性シロキサンは、融点が、一例として50~55℃、好ましくは52~55℃であってもよく、この範囲内で、前記熱可塑性樹脂組成物とのコンパウンディングが容易であるという利点がある。
【0082】
本記載において、融点は、TA社で製造した示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 2920)を用いて測定できる。具体的な測定例として、融点は、DSCを温度0℃で平衡に達するようにした後、1分当たり20℃ずつ増加させて180℃まで上げた後、1分当たり20℃ずつ減少させて-60℃まで下げた後、1分当たり10℃ずつ増加させて180℃まで温度を増加させる方法により測定できる。ここで、融点は、二番目の温度が上昇する間、吸熱曲線の頂点領域を取って得られる。
【0083】
前記ポリエステル変性シロキサンはペレット状であることを特徴とすることができ、この場合、熱可塑性樹脂組成物とのコンパウンディングが容易であるため生産性を向上させることができる。
【0084】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に染料、顔料、難燃剤及び無機充填剤からなる群から選択された1種以上を、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、それぞれ0.01~5重量部、好ましくは0.05~3重量部、より好ましくは0.1~2重量部、より一層好ましくは0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本記載の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0085】
熱可塑性樹脂組成物
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J以上、より好ましくは23J以上、さらに好ましくは23~27J、より一層好ましくは24~27Jであってもよく、このとき、その標準偏差は、好ましくは6.5以下、より好ましくは6以下、さらに好ましくは5以下、より一層好ましくは3~5であってもよく、この範囲内で、自動車外装材において求められる主要な信頼性評価を満たすという効果がある。
【0086】
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくはISO 179に準拠して、ノッチ付き試験片で測定したシャルピー衝撃強度(23℃)が9kJ/m以上、より好ましくは10kJ/m~17kJ/m、さらに好ましくは12~15kJ/mであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れ、大型射出成形品に求められる衝撃強度を満たす。
【0087】
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくはISO 1133に準拠して、220℃、10kg下で測定した溶融流れ指数が5.5g/10分以上、より好ましくは6~10g/10分、さらに好ましくは6~9g/10分であってもよく、この範囲内で、流れ性に優れるため、大型製品の射出成形が容易であるという利点がある。
【0088】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくはISO 75/Beに準拠して1.8MPa下で測定した熱変形温度が77℃以上、より好ましくは78~85℃、さらに好ましくは80~85℃であってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0089】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、カーボンブラック顔料としてBK56(ムイル化成社製)3重量部及びBK57(ムイル化成社製)0.5重量部を含んで、射出温度240℃及び金型温度60℃で100×100×3mmのサイズの試験片を製造し、カラーメータ(Colormeter)を用いてSCIモードで測定した黒色度(L;顔料)が26.5以下、より好ましくは20~26.5、さらに好ましくは22~26.2であってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れると共に、ディープブラック色相を実現するという効果がある。
【0090】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、染料としてBK39(ムイル化成社製)0.6重量部を含んで、射出温度240℃及び金型温度60℃で100×100×3mmのサイズの試験片を製造し、カラーメータ(Colormeter)を用いてSCIモードで測定した黒色度(L;染料)が26以下、より好ましくは20~26、さらに好ましくは23~26であってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れると共に、ディープブラック色相を実現するという効果がある。
【0091】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくはISO 527に準拠して測定した引張強度が44MPa以上、より好ましくは45MPa以上、さらに好ましくは45~55MPaであってもよく、この範囲内で、全ての物性バランスに優れるという効果がある。
【0092】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、熱可塑性樹脂組成物から射出成形された試験片の表面を目視で観察してゴニオクロミズム現象が発生しなかったものであってもよく、この場合、表面品質に優れるという効果がある。
【0093】
以下では、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びその組成物を含む成形品に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びその組成物を含む成形品を説明するにおいて、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容をすべて含む。
【0094】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、A-1)平均粒径200~400nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体3~22重量%と、A-2)平均粒径50~199nmであるアクリレート系ゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含んでなるグラフト共重合体17~40重量%と、B)(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、α-メチルスチレン系化合物及びビニルシアン化合物を含んでなる共重合体30~57重量%と、C)ポリメタクリレート樹脂(但し、α-メチルスチレンを除く)6~30重量と;を混合した後、200~300℃下で10~100ファイ規格で押出混練機を用いて熱可塑性樹脂組成物を製造するステップを含み;前記熱可塑性樹脂組成物は、ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定した平均面衝撃強度が22J/mm以上であり、標準偏差が6.5以下であることを特徴とする。このような場合、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れるため大型製品を射出成形することができ、ディープブラック色相の実現が可能であると共に、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たすという効果がある。
【0095】
前記混練及び押出は、一例として、一軸押出機、二軸押出機、またはバンバリーミキサーを介して行われてもよく、この場合、組成物が均一に分散して相溶性に優れるという効果がある。
【0096】
前記混練及び押出は、一例としてバレル温度200~300℃、好ましくは210~280℃、より好ましくは220~250℃の範囲内で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であり、かつ十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという効果がある。
【0097】
前記混練及び押出は、一例として、スクリュー回転数が100~500rpm、150~400rpm、100~350rpm、200~310rpm、好ましくは250~350rpmである条件下で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であるため、工程効率に優れながらも、過度の切断を抑制するという効果がある。
【0098】
成形品
本記載の成形品は、一例として、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことができ、この場合、耐衝撃性、耐熱度及び流動性に優れるため大型製品を射出成形することができ、ディープブラック色相の実現が可能であると共に、ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象の発生を抑制して射出外観品質及び自動車の信頼性評価を満たすという効果がある。
【0099】
前記成形品は、一例として自動車外装材であってもよく、具体的にラジエーターグリルのような大型射出成形品であってもよく、この場合、本記載の熱可塑性樹脂組成物によって、市場で求められる品質以上の高品質で提供可能であるという利点がある。
【0100】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0101】
[実施例]
(A-1)ASAグラフト共重合体:平均粒径300nmのブチルアクリレートゴム40重量%、スチレン43.8重量%、アクリロニトリル16.2重量%
(A-2)ASAグラフト共重合体:平均粒径130nmのブチルアクリレートゴム50重量%、スチレン36.5重量%、アクリロニトリル13.5重量%
(A-3)ASAグラフト共重合体:平均粒径450nmのブチルアクリレートゴム50重量%、スチレン36.5重量%、アクリロニトリル13.5重量%
(B-1)塊状重合方式のMMA系耐熱SAN樹脂:メチルメタクリレート45重量%、α-メチルスチレン36重量%、アクリロニトリル19重量%
(B-2)塊状重合方式の耐熱SAN樹脂:α-メチルスチレン72重量%、アクリロニトリル28重量%
(B-3)塊状重合方式のPMI耐熱樹脂:Denka社のMSNJ
(C-1)MMA-SAN樹脂:メタクリレート71重量%、スチレン22重量%、アクリロニトリル7重量%
(C-2)懸濁重合方式のPMMA樹脂:ポリメチルメタクリレート樹脂(重量平均分子量101,000g/mol)
(D)滑剤:エチレンビスステアロアミド(EBA、SUNKOO社製)
(E-1)熱安定剤:IR1076(BASF社製)
(E-2)熱安定剤:IF168(BASF社製)
(F-1)UV安定剤:Tin-700(BASF社製)
(F-2)UV安定剤:Chimassorb-944(グローバルプランニング社製)
(G)スリップ剤:H-Si 6441P(EVONIK社製)
【0102】
実施例1~6及び比較例1~11
それぞれ、下記表1~表3に記載された成分及び含量を、押出機(SM Twin screw extruder、25Φ)にて押出温度240℃、供給量(Feed rate) 20kg/hr、スクリュー回転数(Screw speed)300rpm下で混練及び押出してペレットを製造した。製造されたペレットを用いて溶融指数を測定した。また、製造されたペレットをもって、射出機(ENGEL社、120MT)にて射出温度240℃、金型温度60℃及び射出速度30mm/分の条件下で射出試験片を作製した。
【0103】
[試験例]
前記実施例1~6及び比較例1~11で製造されたペレット及び射出試験片の特性を下記の方法により測定し、その結果を下記の表1~表3に示した。
【0104】
*シャルピー衝撃強度(kJ/m):ノッチ付き試験片(厚さ4mm)を用いてISO 179/1eAに準拠して23℃で測定した。
【0105】
*溶融流れ指数(Melt flow rate、MFR;g/10分):製造されたペレットをISO 1133に準拠して220℃、10kgの条件下で測定した。
【0106】
*引張強度(Tensile strength:MPa):ISO 527に準拠して測定した。
【0107】
*熱変形温度(Hear deflection temperature、HDT;℃):ISO 75/Beに準拠して1.8MPa下で測定した。
【0108】
*平均面衝撃強度(Multi-axial impact strength;J)及び面衝撃強度の標準偏差:ISO 6603-2に準拠して、速度4.4m/s下で試験片の厚さ2.0mmで最大荷重エネルギーを10回測定して平均値及び標準偏差値を求めた。
【0109】
*黒色度(L):100×100×3mmのサイズの射出された顔料試験片及び染料試験片をもって、カラーメータ(Colormeter)を用いてSCIモードで黒色度(L)を測定した。
【0110】
黒色度(L)の値が低いほど、高黒色が発現されたものである。
【0111】
顔料試験片は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、カーボンブラック顔料としてBK56(ムイル化成社製)3重量部及びBK57(ムイル化成社製)0.5重量部を混練及び押出してペレットを製造した後、射出温度240℃及び金型温度60℃で射出して100×100×3mmのサイズの顔料試験片を製造した。
【0112】
染料試験片は、熱可塑性樹脂組成物100重量部に対して、染料としてBK39(ムイル化成社製)0.6重量部を混練及び押出してペレットを製造した後、射出温度240℃及び金型温度60℃で射出して100×100×3mmのサイズの染料試験片を製造した。
【0113】
*ゴニオクロミズム(Goniochromism)現象:NP色相、顔料及び染料のそれぞれの押出ペレット及び射出試験片の外観を目視で観察し、虹色又は真珠色が発生したか否かを確認した。この中で一つでもゴニオクロミズム現象が発生した場合に“発生”と表示し、発生しない場合に“未発生”と表示する。
【0114】
前記NP色相は、着色していない樹脂固有の色であって、顔料あるいは染料を適用していないことを意味する。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
前記表1~表3に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~6)は、比較例1~11と比較して、流動性、耐熱度、面衝撃強度及びその標準偏差がいずれも優れると共に、ゴニオクロミズムが発生せず、高黒色度が実現される効果があった。比較例1~11はいずれも、平均面衝撃強度が22J未満であり、標準偏差が6.5を超えて自動車の信頼性評価を満たさないため、自動車用途に適用が難しいことが確認できた。具体的には、(B-1)共重合体を含まないか、または少量含む比較例1、2及び10は、ゴニオクロミズム現象が発生し、特に比較例1及び10は、面衝撃強度の標準偏差が大幅に高くなった。
【0119】
また、平均粒径が130nmであるASA樹脂のみを含む比較例3は、シャルピー衝撃強度が劣悪となり、(B-1)共重合体と(C-1)共重合体との組み合わせを含まない比較例5~7及び9は、耐熱度が低下した。
【0120】
また、(C-2)PMMA樹脂を単独で含む比較例11は、面衝撃強度が低く、その標準偏差は高くなった。