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  • 特許-熱転写記録媒体及び転写物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】熱転写記録媒体及び転写物
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/44 20060101AFI20240319BHJP
   B41M 5/395 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B41M5/44 310
B41M5/395 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019237746
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021104651
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 岐
(72)【発明者】
【氏名】土村 悠
(72)【発明者】
【氏名】日吉 好彦
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-288779(JP,A)
【文献】特開平07-089253(JP,A)
【文献】特開平05-032062(JP,A)
【文献】特開2001-205940(JP,A)
【文献】特開平04-156387(JP,A)
【文献】特開2002-212361(JP,A)
【文献】特開平08-217930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/44
B41M 5/395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた剥離層と、前記剥離層上に設けられた熱溶融性インク層と、を有する熱転写記録媒体であって、前記剥離層が、ワックス及びエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムを含有することを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記熱溶融性インク層が、ワックス及び着色剤を含有する請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記剥離層のエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムのエチリデンノルボルネン含有量が4.5質量%以上である請求項1から2のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記剥離層のエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムの含有量が、前記剥離層中の前記ワックス100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である請求項1から3のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記剥離層の前記ワックスの融点が70℃以上120℃以下である請求項1から4のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記剥離層の前記ワックスが、針入度3以下である請求項1から5のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
【請求項7】
前記剥離層の平均厚みが、0.2μm以上1.0μm以下である請求項1から6のいずれかに記載の熱転写記録媒体。
【請求項8】
被転写体の表面に熱溶融性インク層と、ワックス及びエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムを含有する層とを、この順で有することを特徴とする転写物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写記録媒体及び転写物に関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッド等を用いる熱転写記録方式が、無騒音であること、装置が比較的安価でかつ小型化できること、保守が容易であること、印字画像が安定であることなどの利点を有することから広く用いられている。
【0003】
このような熱転写記録方式に用いられる熱転写記録媒体において、転写する画像は、耐摩擦性や耐スクラッチ性などの画像耐性が求められることから、高い画像耐性が必要となっている。
【0004】
画像耐性は剥離層の材料が大きく寄与しており、これまでに画像耐性を向上させる技術としては、例えば、支持体(基材)上に、少なくともポリエチレンワックスを主成分としてなる剥離層と、着色剤及びワックスを含有してなるインク層(熱溶融性インク層)との積層を有する熱転写記録媒体において、該ポリエチレンワックスの数平均分子量が655以上1000以下、149℃における溶融粘度が5cp以上12cp以下、融点が99℃以上113℃以下であり、該剥離層及びインク層のワックスが、横軸に温度を、縦軸に単位時間当りの吸熱量を示す示差熱曲線により表される吸熱ピークを有し、この吸熱量ピークの極大値を示す温度(以下、「融点」と記載する。)が、剥離層中のポリエチレンワックスの融点>インク層中のワックスの融点であり、且つこれにより求められるインク層中のワックスの融解熱量[Q]が、21<Q<38[mj/mg]である熱転写記録媒体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、支持体(基材)上に剥離層を設け、その上に単層の熱転写層(熱溶融性インク層)を設けた熱転写記録媒体において、剥離層がモンタンロウをエステル化したワックスを主成分とするものであり、単層の熱転写層における結着用樹脂がガラス転移点50℃以下の熱可塑性樹脂よりなるものである熱転写記録媒体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
これらの提案された技術により、耐スクラッチ性を向上させることは可能であるが、基材と剥離層との結着性が悪くなり、熱溶融性インク層の材料が基材へ移行する問題がある。
【0007】
また近年では、基材との結着性を適当な強さにするため、基材と、基材の一方の面上に設けられた離型層(剥離層)と、前記離型層上に設けられた転写層(熱溶融性インク層)と、を有する熱転写シートであって、前記転写層は、前記離型層から剥離可能に設けられ、前記離型層が、熱硬化樹脂、及び剥離力調整剤を含有しており、前記剥離力調整剤が、ガラス転移温度(Tg)が30℃以上130℃以下の熱可塑性樹脂、及び水酸基価が3mgKOH/g以上31mgKOH/g以下の水酸基含有樹脂の何れか一方、又は双方であり、前記ガラス転移温度(Tg)が30℃以上130℃以下の熱可塑性樹脂が、熱可塑性アクリル樹脂、ロジンエステル樹脂、スチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びスチレン-ブタジエンゴムの群から選択される少なくとも1種であり、前記離型層の総質量に対する前記剥離力調整剤の含有量が10質量%以上45質量%以下である、熱転写シート(熱転写記録媒体)が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
この提案された技術により、基材と剥離層との適切な結着性は確保できるが、耐スクラッチ性は悪くなることから、全ての品質を満たす熱転写記録媒体は未だ提供されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐スクラッチ性に優れる転写画像を形成でき、基材と剥離層との結着性に優れる熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として本発明の熱転写記録媒体は、基材と、前記基材上に設けられた剥離層と、前記剥離層上に設けられた熱溶融性インク層と、を有する熱転写記録媒体であって、前記剥離層が、ワックス及びエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムを含有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、耐スクラッチ性に優れる転写画像を形成でき、基材と剥離層との結着性に優れる熱転写記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の熱転写記録媒体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(熱転写記録媒体)
本発明の熱転写記録媒体は、基材と、前記基材上に設けられた剥離層と、前記剥離層上に設けられた熱溶融性インク層と、を有する熱転写記録媒体であって、前記剥離層が、ワックス及びエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムを含有する。
【0013】
<基材>
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、セルロースアセテートフィルム等の各種プラスチックフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、強度、耐熱性、及び熱伝導性に優れる点で、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
前記基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上10μm以下が好ましい。
【0014】
<剥離層>
前記剥離層は、印字の際に、前記基材と前記熱溶融性インク層との剥離性を向上させる機能を有し、サーマルヘッドで加熱されると熱溶融して低粘度の液体となり、加熱部分と非加熱部分との界面近傍にて、前記熱溶融性インク層の切断を容易にする。
前記剥離層は、ワックス、及びバインダとしてエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムを含有し、その他のバインダ、及び分散剤を含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0015】
-バインダ-
前記バインダとしては、基材への結着性、画像耐性に優れる点から、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムを含有し、必要に応じてその他のバインダを含有する。前記エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムのエチリデンノルボルネン含有量が4.5質量%以上であることが好ましい。4.5質量%以上であると、基材と剥離層との結着性が向上するとともに耐スクラッチ性に優れる転写画像を形成することが出来る。
前記その他のバインダとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、部分ケン化エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリアクリル酸、イソブチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムの含有量としては、前記剥離層中のワックス100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下が好ましく、10質量部以上25質量部以下がより好ましい。前記エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムの含有量が5質量部以上30質量部以下であると、基材と剥離層との結着性が強くなりすぎないことから、熱感度の低下を防げるとともに、熱溶融性インク層の材料が基材へ移行する問題を防げる。
【0017】
-剥離層のワックス-
前記剥離層の前記ワックスとしては、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスターワックス、牛脂硬化油、ラノリン、木ロウ、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ステアリルアルコール、ポリアミドワックス、オレイルアミド、ステアリルアミド、ヒドロキシステアリン酸、合成エステルワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、カルナバワックスが好ましい。
【0018】
前記ワックスの平均粒子径は、1.0μm以上6.0μm以下が好ましく、2.0μm以上4.0μm以下がより好ましい。前記ワックスの平均粒子径が1.0μm以上6.0μm以下であると、熱感度が向上し、高精細な印字画像が得られる。
【0019】
前記平均粒子径は、例えば、熱転写記録媒体の剥離層の断面より観察されるワックスの粒形態から求めることができる。前記断面観察は、常法により試料を作製し透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。前記TEM観察でのワックスの粒子径測定値と剥離層を形成するために用いる剥離層用塗布液のワックスの粒子径測定値とは実質的に一致するので、剥離層用塗布液のワックスの粒径分布によって、剥離層形成後のワックスの粒径分布を設定することができる。なお、前記剥離層用塗布液中のワックスの体積平均粒子径は、例えば、レーザー拡散方式による株式会社堀場製作所製LA-960などにより測定することができる。
【0020】
前記ワックスの融点としては、70℃以上120℃以下が好ましく、80℃以上100℃以下がより好ましい。前記ワックスの融点が70℃以上120℃以下であると、熱感度、耐摩擦性、及び耐スクラッチ性がより優れる。
前記ワックスの針入度としては、3以下が好ましい。3以下であると耐摩擦性、耐スクラッチ性がより優れる。
【0021】
-分散剤-
前記剥離層が、水系エマルション又は水分散塗布液により形成される場合には、ワックスを小粒径化する必要があるため、分散剤を添加することが好ましい。
前記分散剤としては、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、分散性の観点から、ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0022】
前記ノニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等の脂肪酸系;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルや、アルキルグルコシド等の高級アルコール系;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシエチレンジアルキルエステル類;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、分散性の点から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキエチレン(POE)脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテルがより好ましい。
【0023】
前記ノニオン界面活性剤の前記剥離層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記剥離層中のワックス100質量部に対して、2質量部以上10質量部以下が好ましく、3質量部以上6質量部以下がより好ましい。前記含有量が2質量部以上であると、前記ワックスを水系エマルション又は水分散液化する際の小粒径を実現できる。また、前記含有量が10質量部以下であると、低平滑紙への転写性が良好となり、画像耐摩擦性が向上する。
【0024】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分散助剤、溶剤、などが挙げられる。
【0025】
前記剥離層は、前記ワックス、前記バインダ、前記分散剤、及び必要に応じて前記その他の成分を含む剥離層用塗布液を前記基材上に、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター等の塗布方法により塗布し、乾燥させることにより、形成することができる。
【0026】
前記剥離層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.2μm以上1.0μm以下が好ましく、0.3μm以上0.8μm以下がより好ましい。前記剥離層の平均厚みが0.2μm以上1.0μm以下であると、熱感度、耐摩擦性、及び耐スクラッチ性がより優れる。
【0027】
<熱溶融性インク層>
前記熱溶融性インク層は、ワックス、及び着色剤を含有することが好ましく、有機脂肪酸及び長鎖アルコールを含有することがより好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0028】
-熱溶融性インク層のワックス-
前記熱溶融性インク層の前記ワックスとしては、特に制限なく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、カスターワックス、牛脂硬化油、ラノリン、木ロウ、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテート、ステアリルアルコール、ポリアミドワックス、オレイルアミド、ステアリルアミド、ヒドロキシステアリン酸、合成エステルワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルナバワックスが好ましい。
前記カルナバワックスは針入度1以下の硬質ワックスであるため、前記熱溶融性インク層の耐摩擦性が向上する。また、前記カルナバワックスの融点が80℃と低いので、感度特性に優れる。更に、前記カルナバワックスは熱特性がシャープであり、溶融粘度が低いため、印字特性にも優れるという利点がある。
【0029】
前記ワックスは、有機脂肪酸、及び長鎖アルコールの少なくともいずれかと共に、水系エマルションの形態で含有することが好ましい。この場合、サーマルヘッドで加熱された際、エマルションを形成していた各粒子の境界で優先的に切断されて剥離し、被転写体表面に移行するため、被転写体への印字のエッジ部分が非常にシャープになる。また、水系であるので、環境への負荷が小さいという利点がある。
前記ワックスの水系エマルションの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有機脂肪酸と後述する有機塩基とを液中に添加して生成した塩を乳化剤とすることにより、前記ワックスを乳化することができる。
【0030】
-着色剤-
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、アゾ系染顔料、フタロシアニン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、キノフタロン、アニリンブラック、酸化チタン、亜鉛華、酸化クロムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。
【0031】
-有機脂肪酸-
前記有機脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モンタン酸、オレイン酸、ベヘン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機脂肪酸の酸価は、90mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、140mgKOH/g以上200mgKOH/g以下がより好ましい。
前記酸価が、90mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であると、アルカリと反応してアニオン系乳化剤となり、感度及び耐スミア性に悪影響を及ぼすことなく、前記ワックスを乳化することができる。
前記有機脂肪酸の融点は、70℃以上90℃以下であることが好ましい。前記融点が、前記好ましい数値範囲であると、前記ワックスの融点と近いため、感度特性が良好となる。
【0032】
前記有機脂肪酸の前記熱溶融性インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ワックス100質量部に対して、1質量部以上6質量部以下が好ましい。
前記含有量が、前記ワックス100質量部に対して、1質量部以上6質量部以下であると、前記ワックスを効率よくエマルション化でき、前記ワックスのブルーミングの発生を抑制することができる。
【0033】
-長鎖アルコール-
前記長鎖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、脂肪族アルコールが好ましい。
前記長鎖は、直鎖のみからなるものであってもよいし、分岐鎖を有するものであってもよい。
前記長鎖アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(1)及び下記一般式(2)の少なくともいずれかで表されるものが好ましい。
【0034】
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、Rは、炭素数28以上38以下のアルキル基を表す。
【0035】
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、Rは、炭素数28以上38以下のアルキル基を表す。
【0036】
前記Rのアルキル基の炭素数が、28以上38以下であると、ブルーミング抑制効果が得られる。
ここで、前記ワックスは、水系エマルション形成時に、一度完全溶融されるが、冷却後も過冷却性を有することにより、時間経過に伴い、前記熱溶融性インク層表面にブルーミングすることがある。このことにより、前記熱転写記録媒体をロール状に保管すると、バック層表面を汚すという問題があった。前記一般式(1)及び前記一般式(2)中、前記Rにおける炭素数が、28以上38以下である前記長鎖アルコールを用いると、前記ワックスのブルーミングを抑制することができる点で、有利である。
【0037】
前記一般式(1)で表される長鎖アルコール及び前記一般式(2)で表される長鎖アルコールの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70℃以上90℃以下が好ましい。
前記融点が、前記数値範囲内であると、前記ワックスの融点と近いため、感度特性が良好となる。
【0038】
前記一般式(1)で表される長鎖アルコール及び前記一般式(2)で表される長鎖アルコールの少なくともいずれかの前記熱溶融性インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ワックス100質量部に対して、6質量部以上12質量部以下が好ましい。
前記含有量が、6質量部以上12質量部以下であると、ブルーミング抑制効果が得られ、感度特性が良好となる。
【0039】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機塩基、分散剤、バインダ、分散助剤、溶剤などが挙げられる。
【0040】
--有機塩基--
有機塩基は、前記ワックスを乳化する際に、前記有機脂肪酸と共に使用することが好ましい。
前記有機塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾燥後に揮発しやすい点から、モルホリンが好ましい。
前記有機塩基の前記熱溶融性インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ワックス100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0041】
--分散剤--
前記分散剤を添加すると、前記ワックスの水系エマルションを小粒径化することができ、前記熱溶融性インク層の凝集力が向上し、地汚れを防止することができる。
前記分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ノニオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン(POE)オレイルエーテルがより好ましい。
前記分散剤の前記熱溶融性インク層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ワックス100質量部に対して、2質量部以上7質量部以下が好ましい。
【0042】
--バインダ--
前記バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリレート共重合体、ウレタン樹脂、セルロース、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、石油樹脂、ロジン樹脂、又はこれらの誘導体、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
前記バインダとしては、耐摩擦性、耐薬品性などに優れた品質を有するものが好ましいが、従来の熱転写プリンタによって印加される熱量では不足する場合もあり、感度を阻害しない程度の添加が好ましい。
【0043】
前記熱溶融性インク層は、前記ワックス、前記着色剤、前記有機脂肪酸、及び前記長鎖アルコール、及び更に必要に応じて前記その他の成分を含む熱溶融性インク層用塗布液を前記剥離層上にグラビアコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター等の塗布方法により、塗布し、乾燥させることにより、形成することができる。
【0044】
前記熱溶融性インク層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0μm以上2.0μm以下が好ましく、1.2μm以上1.8μm以下がより好ましい。前記熱溶融性インク層の平均厚みが1.0μm以上2.0μm以下であると、熱感度、画像転写性が優れる。
【0045】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーバー層、バック層などが挙げられる。
【0046】
-オーバー層-
前記熱転写記録媒体は、地汚れの防止性付与のため、前記熱溶融性インク層上にオーバー層を設けてもよい。ただし、前記オーバー層を設ける場合には、全体のインク面の厚みが増えることになるため、サーマルヘッドによって効率的に前記熱溶融性インク層に熱が印加されるのを阻害しない範囲が好ましい。
前記オーバー層は、ワックスを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記ワックスとしては、前記熱溶融性インク層と同様のワックスを用いることができ、耐摩擦性及び感度の点から、カルナバワックスが好ましい。
前記その他の成分としては、バインダ、分散剤、溶剤などが挙げられる。
前記オーバー層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上1.5μm以下が好ましい。
【0047】
-バック層-
前記バック層は、前記基材の前記熱溶融性インク層が形成されている面とは反対側の面に設けることが好ましい。前記反対面には、転写時に、サーマルヘッド等で画像に合わせて熱が直接印加されため、前記バック層には、高熱への耐性、サーマルヘッド等との摩擦への耐性を有することが好ましい。
前記バック層は、バインダを含有し、更に必要に応じて粒子、滑剤を含有する。
前記バインダとしては、例えば、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ニトロセルロースなどが挙げられる。
前記粒子としては、例えば、タルク、シリカ、オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。
前記バック層の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
【0048】
ここで、図1は、本発明の熱転写記録媒体の一例を示す概略図である。この図1の熱転写記録媒体10は、基材1と、前記基材1上に設けられた剥離層2と、前記剥離層2上に設けられた熱溶融性インク層3を有している。また、基材1の熱溶融性インク層3を設けていない側の面にバック層4を有している。なお、図示を省略しているが、熱溶融性インク層3上にオーバー層を設けることもできる。
【0049】
<熱転写方法>
本発明の熱転写記録媒体の熱転写方法は、被転写体に、本発明の熱転写記録媒体の熱溶融性インク層を熱転写する方法である。
前記被転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリスチレンフィルム等のフィルム;合成紙、耐洗紙、軽量コート紙、キャストコート紙、アート紙等の紙;ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、厚紙等の厚みがあるカード;ナイロン、ポリエステル、綿、不織布に代表される布帛;前記フィルムを積層したもの、前記フィルムにマット処理、コロナ処理、金属蒸着等の表面処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記熱転写は、加熱手段により行われることが好ましい。
前記加熱手段としては、例えば、シリアルサーマルヘッド、ライン型サーマルヘッドなどが挙げられる。
【0050】
(転写物)
本発明の転写物は、本発明の熱転写記録媒体から被転写体に熱転写されることにより得られる。
前記被転写体は、前記熱転写方法の前記被転写体と同様のものを用いることができる。
前記熱転写は、前記熱転写方法の前記熱転写と同様のものを用いることができる。
【実施例
【0051】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0052】
<剥離層の熱溶融性材料(ワックス)の平均粒子径>
前記平均粒子径は、熱転写記録媒体の剥離層の断面より観察される熱溶融性材料(ワックス)の粒形態から求めた。前記断面観察は、常法により試料を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-210、日本電子株式会社製))により、断面TEM写真を撮影し、5個の熱溶融性材料(ワックス)を測定し、その平均値を熱溶融性材料(ワックス)の平均粒子径とした。
【0053】
<剥離層の平均厚み>
透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-210、日本電子株式会社製)により3箇所の剥離層の厚みを測定し、その平均値を剥離層の平均厚みとした。
【0054】
<ワックスの融点>
示差走査熱量計(DSC、DSC-6220、日立ハイテク株式会社製)により測定した。昇温速度は10℃/min、サンプル量は10mgとした。
【0055】
<ワックスの針入度>
針入度計(安田精機製作所製)により、環境温度22℃、60%にて測定した。
【0056】
(実施例1)
<熱転写記録媒体の作製>
-熱溶融性インク層用塗布液の調製-
カルナバワックスパウダー(株式会社加藤洋行製)100質量部、モンタン酸(酸価132mgKOH/g、融点80℃)2質量部、及び前記一般式(1)で表される長鎖アルコール(Rは炭素数28~38のアルキル基、融点75℃)9質量部を、120℃で溶解した後、攪拌下にモルホリン5質量部を投入した。
次に、90℃の熱水を固形分30質量%になる量滴下し、水中油型のエマルションを形成した後、冷却して固形分30質量%のカルナバワックスの水系エマルションを得た。
得られた水系エマルションの体積平均粒子径を、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(「LA-960」、株式会社堀場製作所製)を用いて測定したところ、0.4μmであった。
次に、前記カルナバワックスの水系エマルション(固形分30質量%)80質量部と、カーボンブラック(#44、三菱化学株式会社製)の固形分30質量%の水分散体20質量部とを混合し、熱溶融性インク層用塗布液を得た。
【0057】
-剥離層用塗布液の調製-
ワックスとしてパラフィンワックス(HNP-3、日本精蝋株式会社製、融点60℃、針入度3)100質量部、バインダとしてエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴム(EP51、JSR株式会社製、エチリデンノルボルネン含有量5.8質量%)10質量部に、トルエン及びメチルエチルケトンを固形分10質量%になるまで混合して分散させ、剥離層用塗布液を得た。
【0058】
-バック層用塗布液の調製-
シリコーンゴム(SD7226、東レダウコーニング株式会社製)16.8質量部、塩化白金酸触媒0.2質量部、及びトルエン83質量部を混合し、バック層用塗布液を得た。
【0059】
次に、基材としての平均厚み4.5μmのポリエステルフィルムの片面に、前記バック層用塗布液を塗布し、80℃で10秒間乾燥して、平均厚み0.02μmのバック層を形成した。
次に、前記ポリエステルフィルムにおける前記バック層が形成された面とは反対側の面に、前記剥離層用塗布液を塗布し、45℃で15秒間乾燥して、平均厚み0.5μmの剥離層を形成した。
次に、前記剥離層上に、前記熱溶融性インク層用塗布液を塗布し、70℃で10秒間乾燥して、平均厚み1.7μmの熱溶融性インク層を形成した。以上により、熱転写記録媒体を作製した。
次に、以下の表1に示す剥離層用塗布液のワックス及びバインダを用いて、実施例2~19及び比較例1~5の熱転写記録媒体を作製した。
なお、以下の実施例及び比較例において、平均厚みは、すべて断面TEM観察により測定した値である。また融点はDSC、針入度は針入度計により測定した値である。
【0060】
(実施例2)
剥離層用塗布液のワックスとして、キャンデリラワックス(株式会社加藤洋行製、融点70℃、針入度2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0061】
(実施例3)
剥離層用塗布液のワックスとして、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製、融点85℃、針入度2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0062】
(実施例4)
剥離層用塗布液のワックスとして、ポリエチレンワックス(4052E、三井化学株式会社製、融点120℃、針入度2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0063】
(実施例5)
剥離層用塗布液のワックスとして、ポリエチレンワックス(400PF、三井化学株式会社製、融点130℃、針入度2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0064】
(実施例6)
剥離層用塗布液のワックスとして、パラフィンワックス(HNP-51、日本精蝋株式会社製、融点85℃、針入度3)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0065】
(実施例7)
剥離層用塗布液のワックスとして、フィッシャートロプシュワックス(SX-80、日本精蝋株式会社製、融点85℃、針入度4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0066】
(実施例8)
剥離層用塗布液のバインダとして、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴム(EP93、JSR株式会社製、エチリデンノルボルネン含有量2.7質量%)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0067】
(実施例9)
剥離層用塗布液のバインダとして、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴム(EP22、JSR株式会社製、エチリデンノルボルネン含有量4.5質量%)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0068】
(実施例10)
剥離層用塗布液のバインダとして、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴム(EP33、JSR株式会社製、エチリデンノルボルネン含有量8.1質量%)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0069】
(実施例11)
剥離層用塗布液のバインダとして、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴム(EP331、JSR株式会社製、エチリデンノルボルネン含有量11.3質量%)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0070】
(実施例12)
剥離層用塗布液のワックス100質量部に対するバインダ含有量を4質量部とした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0071】
(実施例13)
剥離層用塗布液のワックス100質量部に対するバインダ含有量を5質量部とした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0072】
(実施例14)
剥離層用塗布液のワックス100質量部に対するバインダ含有量を30質量部とした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0073】
(実施例15)
剥離層用塗布液のワックス100質量部に対するバインダ含有量を31質量部とした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0074】
(実施例16)
剥離層の平均厚みを0.1μmとした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0075】
(実施例17)
剥離層の平均厚みを0.2μmとした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0076】
(実施例18)
剥離層の平均厚みを1.0μmとした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0077】
(実施例19)
剥離層の平均厚みを1.1μmとした以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0078】
(比較例1)
剥離層用塗布液にバインダを添加しなかった以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0079】
(比較例2)
剥離層用塗布液のバインダとして、エチレン-プロピレンゴム-エチリデンノルボルネンゴム(EP11、JSR株式会社製、エチリデンノルボルネン含有量0質量%)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0080】
(比較例3)
剥離層用塗布液のバインダとして、スチレン-ブタジエンゴム(SBN-215SL、JSR株式会社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0081】
(比較例4)
剥離層用塗布液のバインダとして、ブタジエンゴム(BR810、JSR株式会社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0082】
(比較例5)
剥離層用塗布液のバインダとして、エチレン-酢酸ビニル(REV-523、三井・デュポン・ケミカル社製)を用いた以外は、実施例3と同様にして、熱転写記録媒体を作製した。
【0083】
【表1】
表1中、バインダ種の符号は以下を示す。
A:エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴム
B:スチレン-ブタジエンゴム
C:ブタジエンゴム
D:エチレン-酢酸ビニル
【0084】
次に、作製した各熱転写記録媒体について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表2に示す。なお、受容紙のベック平滑度は、王研式平滑度試験機(熊谷理機株式会社製)を用いて測定した値である。
【0085】
<耐スクラッチ性>
ベック平滑度が2,000秒間の受容紙(C6、OSP社製)に下記条件で印字し、バーコード評価はラブテスターを用い、ペン(先端部:ガラス球体)で、200g加重の条件で500回(250往復)こすり、下記基準で評価した。
・プリンタ:Zebra105SL Plus(ゼブラテクノロジー社製)
・印字スピード:100mm/sec
・プリンタ設定エネルギー:14
-評価基準-
◎:画像の削れが全くなし
〇:画像の削れが一部あり
△:画像の削れが半分程度あり
×:画像の削れが80%以上あり
【0086】
<基材結着性>
熱転写記録媒体を重ねて6kgの荷重をかけた状態で、50℃で3日間保存した後、常温に戻して引き剥がした時の基材と剥離層との間での剥がれやすさを下記評価基準で評価した。
-評価基準-
◎:剥がれが全くない
〇:剥がれが微小にある
△:剥がれが一部ある
×:剥がれが半分以上ある
【0087】
<熱感度>
ベック平滑度が2,000秒間の受容紙(C6、OSP社製)に、下記条件で印字した画像のバーコード部のANSI グレード値[バーコードの読取り率(エラーの出ない率)を0、1、2、3、4の5段階で表示したもの]が2.5以上になるときのプリンタの設定エネルギーを下記基準で評価した。
[印字条件]
・印字プリンタ:Zebra105SL Plus(ゼブラテクノロジー社製)
・印字スピード:100mm/sec
[評価基準]
◎:設定エネルギーが10未満
〇:設定エネルギーが10以上12未満
△:設定エネルギーが12以上14未満
×:設定エネルギーが14以上16未満
××:設定エネルギーが16以上
【0088】
【表2】
【0089】
表2の結果から、実施例1~19の熱転写記録媒体は、比較例1~5の熱転写記録媒体に比べて、耐スクラッチ性及び基材結着性に優れ、かつ高い熱感度特性が得られることがわかった。
【0090】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 基材と、前記基材上に設けられた剥離層と、前記剥離層上に設けられた熱溶融性インク層と、を有する熱転写記録媒体であって、前記剥離層が、ワックス及びエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムを含有することを特徴とする熱転写記録媒体である。
<2> 前記熱溶融性インク層が、ワックス及び着色剤を含有する前記<1>に記載の熱転写記録媒体である。
<3> 前記剥離層のエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムのエチリデンノルボルネン含有量が4.5質量%以上である前記<1>から<2>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<4> 前記剥離層のエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネンゴムの含有量が、前記剥離層中の前記ワックス100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<5> 前記剥離層の前記ワックスの融点が70℃以上120℃以下である前記<1>から<4>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<6> 前記剥離層の前記ワックスが、針入度3以下である前記<1>から<5>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<7> 前記剥離層の平均厚みが、0.2μm以上1.0μm以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の熱転写記録媒体である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の熱転写記録媒体から被転写体に熱転写されたことを特徴とする転写物である。
【0091】
前記<1>から<7>に記載の熱転写記録媒体、及び前記<8>の転写物は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 基材
2 剥離層
3 熱溶融性インク層
4 バック層
10 熱転写記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】
【文献】特許第4907397号公報
【文献】特許第3021475号公報
【文献】特許第6402840号公報
図1