(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】アクリル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/48 20060101AFI20240319BHJP
C07C 57/07 20060101ALI20240319BHJP
B01D 11/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C07C51/48
C07C57/07
B01D11/04 C
B01D11/04 102
(21)【出願番号】P 2020050696
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 寧之
(72)【発明者】
【氏名】西尾 拓真
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062512(JP,A)
【文献】特開2013-193970(JP,A)
【文献】特開2009-263351(JP,A)
【文献】特開昭60-069053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸濃度が60重量%以上であるアクリル酸水溶液と溶媒相Aとを、混合部A及
び分離部Aを含む静的抽出装置Aの該混合部Aに供給し、混合液Aとし、該混合液Aを該
分離部Aにより、水相Aと粗アクリル酸を含む溶媒相に分離し、該粗アクリル酸を含む溶
媒相を連続的に回収する抽出工程を含むアクリル酸を製造する方法において、
該溶媒相Aは、該水相Aと抽出液とを、混合部B及び分離部Bを含む静的抽出装置Bの
該混合部Bに供給し、混合液Bとし、該混合液Bを該分離部Bにより、水相Bを分離して
得られたものであり、
該抽出液は、該水相Bと溶媒を含む液とを動的抽出塔に供給し、該動的抽出塔により抽
出して得られたものであり、
該溶媒を含む液は、該粗アクリル酸を含む溶媒相から粗アクリル酸を分離して得た液を
含み、
該抽出液中のアクリル酸濃度が15重量%以上45重量%以下であり、
該静的抽出装置Bの混合部Bへの該抽出液中の溶媒供給量は、該静的抽出装置Aの混合
部Aへの該アクリル酸水溶液中のアクリル酸供給量に対して、2.5重量倍以下であり、
且つ
該溶媒が非極性溶媒であるアクリル酸の製造方法。
【請求項2】
前記抽出液中の水の含有量が10重量%以下である請求項
1に記載のアクリル酸の製造
方法。
【請求項3】
前記静的抽出装置の混合部が、スタティックミキサである請求項1
又は2に記載のアク
リル酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸水溶液から、抽出溶媒を用いてアクリル酸を回収する方法に関す
る。
【背景技術】
【0002】
プロパンやプロピレン、又はアクロレインの接触気相酸化反応により得られたアクリル
酸含有ガスは、捕集塔で冷却及び水等により吸収されて、アクリル酸水溶液と残ガスに分
離される。アクリル酸水溶液は次いで、抽出または蒸留により水等とアクリル酸に分離さ
れる。
当該技術の開発当初は、該捕集塔で得られるアクリル酸水溶液から効率良くアクリル酸
を抽出する方法として、アクリル酸の分配係数の大きい溶媒を用いた抽出法が広く用いら
れた。ここでいう分配係数とは、液々平衡状態における水中のアクリル酸濃度に対する抽
出溶媒中のアクリル酸濃度の比である。例えば特許文献1には、20重量%のアクリル酸
水溶液に対して重量比0.4倍(アクリル酸に対して2倍)のメチルイソブチルケトンを
抽出溶媒に用い、99%以上のアクリル酸を抽出する方法が示されている。
【0003】
技術が改良されると、捕集塔で得られるアクリル酸水溶液の濃度が上昇し、精製に要す
る総熱量のより小さい蒸留法、具体的には共沸溶媒を用いた脱水蒸留や、アクリル酸水溶
液をそのまま蒸留する直接蒸留などが用いられるようになった。例えば、特許文献2には
、55重量%のアクリル酸水溶液に対して重量比2.6倍(アクリル酸に対して4.7倍
)のトルエンを共沸溶媒として用いる方法、特許文献3には、反応ガスから約80重量%
のアクリル酸水溶液を得て、これを溶媒無しで蒸留精製する方法が示されている。
【0004】
これらとは異なり、動的撹拌能力と高い理論段数を有する抽出装置を用いることで、所
要熱量や未回収アクリル酸を低減する方法も検討されている。特許文献4には、往復動プ
レート式向流抽出装置を用い、59重量%のアクリル酸水溶液に対して重量比2.3倍(
アクリル酸に対して3.9倍)のトルエンを抽出溶媒に用いることで、溶媒が0.45重
量%のアクリル酸を含有する場合でも98.1%のアクリル酸を抽出できる方法が示され
ている。特許文献5には、オットー-ヨーク振動棚段抽出装置を用い、40~60重量%
のアクリル酸水溶液に対し、重量比1.9倍(アクリル酸に対して3.2~4.8倍)の
酢酸イソプロピル-シクロヘキサン混合溶媒を用いることで、高い容積効率と99.7%
程度のアクリル酸を抽出する方法が示されている。抽出塔内のフラッディングを防止して
安定運転を継続する方法として、特許文献6には、多孔板抽出塔における一段以上の分散
板を挟んだ上下の差圧をキャピラリー式差圧計で計測する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭46-30493号公報
【文献】特開平8-40974号公報
【文献】特開2013-107894号公報
【文献】特開2009-242285号公報
【文献】特開2003-183221号公報
【文献】特開2008-173563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アクリル酸水溶液よりアクリル酸と水を分離する方法は、水分を蒸留で分離する方法(
蒸留法)と、アクリル酸を溶媒で抽出する方法(抽出法)の二つの方法が一般的である。
蒸留法に比べて抽出法は、適当な抽出溶媒を選択すれば、抽出により水と共に反応副生物
であるマレイン酸やアクリル酸重合物もアクリル酸と分離が可能であるため、抽出後の精
製工程においてこれら反応副生物に起因する機器の汚れや閉塞が緩和又は解消される、と
いう利点を有する。但し、抽出操作の規模を極力小さくすることが、経済的理由から求め
られる。
【0007】
抽出法の所要熱量は、抽出に用いられる溶媒量に概略比例するため、経済性向上のため
には、アクリル酸に対してより少ない溶媒量で抽出を行うことが重要である。
特許文献1に記載の「抽出法」では、アクリル酸の分配係数の大きい溶媒を用いており
、アクリル酸水溶液中のアクリル酸濃度が低い場合には優れた方法であるが、アクリル酸
と共に水を多量に抽出してしまうため、抽出液から多量の水を分離するのに要する熱量は
多大となる。また、該分配係数の大きい溶媒は水への溶解度も大きいため、抽出後の水(
以下「抽残水」と称する場合がある。)に含まれる抽出溶媒の回収も必要となる。
【0008】
特許文献4に記載の「抽出法」では非極性溶媒を用いており、抽出液に取り込まれる水
分濃度が低く、水分離の点で効率的であり、また抽残水に含まれる抽出溶媒濃度も低いた
め、その回収工程も不要であるが、アクリル酸の分配係数が小さいため、充分なアクリル
酸の抽出回収率を得るには、多量の抽出溶媒が必要となり、加えて、抽出に使用する抽出
塔等の抽出装置の理論段数を多くする必要がある。非極性溶媒の場合、アクリル酸の分配
係数の小ささは特に水中のアクリル酸濃度が低い領域で顕著であり、抽残水中のアクリル
酸を減らすため、多くの理論段が必要となる。特許文献4には、動的撹拌を有する抽出塔
(動的抽出塔)を用いることで、高い理論段数を得やすくなると記載されているが、撹拌
の強度を上げる程、塔内を下降する水滴径が縮小してその沈降速度が低下する為、一部の
水滴が塔内を下降出来ず、抽出溶媒と共に塔頂から流出する状態(以下「フラッディング
」と称する場合がある。)が発生し易くなるという問題があり、より慎重な運転が求めら
れる。
【0009】
特許文献5に記載の「抽出法」では非極性溶媒と極性溶媒の混合溶媒を抽出溶媒とし、
動的抽出塔を使用しており、水相と溶媒相の相互溶解度を高めることで、比較的低い撹拌
強度においても必要な理論段数が得られ、フラッディングの発生を回避できるが、反応副
生物であるマレイン酸やアクリル酸重合物等が溶媒相に抽出される割合も増加するため、
抽出後の精製工程において汚れや閉塞が増加し、また、抽残水に溶解する極性溶媒も少な
くないため、その回収も必要となる、等の問題を有している。
【0010】
特許文献6に記載の抽出塔内の差圧を測定する方法は、フラッディングの発生を早期に
発見できるため、抽出塔の過剰設計の抑制に有効と考えられるが、フラッディングの発生
を抑制するものではない。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解決し、アクリル酸水溶液よりアクリル酸を抽出装置によ
り抽出する方法において、少量の溶媒により、安定的かつ経済的にアクリル酸の抽出が可
能となるアクリル酸の抽出方法を含むアクリル酸を製造する方法を提供すること、を目的
とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決すべく検討を始め、動的抽出装置における抽出液中のアクリ
ル酸濃度が高くなるほど、動的撹拌に伴って急激にフラッディングが発生し易くなり、ま
たフラッディングに至らずとも二液の分離に要する時間が大幅に増大することを確認した
。これが二液間の界面張力の低下によるものであることを見出し、つまり本質的なフラッ
ディング発生の回避は困難との認識の元、フラッディングの発生を許容しつつ高い理論段
数が得られる抽出について検討を重ねた結果、最もアクリル酸濃度の高い水溶液からアク
リル酸の抽出を静的抽出装置にて実施すると共に、該静的抽出装置で微細水滴の分離も兼
ねる仕様とすること、更には動的抽出塔内の状態を常時監視することで、少ない溶媒を用
い、アクリル酸水溶液から効率良くアクリル酸を抽出回収する方法を見出した。
【0013】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0014】
[1]アクリル酸濃度が60重量%以上であるアクリル酸水溶液と溶媒相Aとを、混合部
A及び分離部Aを含む静的抽出装置Aの該混合部Aに供給し、混合液Aとし、該混合液A
を該分離部Aにより、水相Aと粗アクリル酸を含む溶媒相に分離し、該粗アクリル酸を含
む溶媒相を連続的に回収する抽出工程を含むアクリル酸を製造する方法において、
該溶媒相Aは、該水相Aと抽出液とを、混合部B及び分離部Bを含む静的抽出装置Bの
該混合部Bに供給し、混合液Bとし、該混合液Bを該分離部Bにより、水相Bを分離して
得られたものであり、
該抽出液は、該水相Bと溶媒を含む液とを動的抽出塔に供給し、該動的抽出塔により抽
出して得られたものであり、
該溶媒を含む液は、該粗アクリル酸を含む溶媒相から粗アクリル酸を分離して得た液を
含み、
該抽出液中のアクリル酸濃度が15重量%以上45重量%以下であり、
該静的抽出装置Bの混合物Bへの該抽出液中の溶媒供給量は、該静的抽出装置Aの混合
部Aへの該アクリル酸水溶液中のアクリル酸供給量に対して、2.5重量倍以下であり、
且つ
該溶媒が非極性溶媒であるアクリル酸の製造方法。
[2]前記抽出液の水の含有量が10重量%以下である[1]に記載のアクリル酸の製造
方法。
[3]前記静的抽出装置の混合部がスタティックミキサである[1]又は[2]に記載の
アクリル酸の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アクリル酸水溶液から、少量の溶媒により、フラッディングを発生す
ることなく、安定かつ経済的なアクリル酸の抽出を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のアクリル酸水溶液の抽出工程を示す模式図である。
【
図2】本発明のアクリル酸水溶液の抽出工程を示す別の模式図である。
【
図3】
図1、
図2における動的抽出塔の形態を示す模式図である。
【
図4】
図1、
図2における静的抽出装置及び分離装置と付帯設備を示す模式図である。
【
図5】水-アクリル酸-トルエンの液々平衡線図である。
【
図6】アクリル酸濃度と密度及び粘度の相関図である。
【
図7】アクリル酸濃度と界面張力及び二液相の分離時間の相関図である。
【
図9】動的抽出塔の振幅数と一理論段当たりの層高(HETP)の相関図である。
【
図10】アクリル酸濃度と抽出溶媒量に対する抽出回収率と抽出濃度の相関図である。
【
図11】アクリル酸含トルエンによるアクリル酸水溶液からアクリル酸の抽出回収率算出図である。
【
図12】
図11における抽出を12理論段で実施した各段における、各種物性値を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について、図を参考にして詳細に説明するが、本発明は何ら以下の説明に
限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変更して実施することが出来る。
【0018】
図1は本発明のアクリル酸水溶液の抽出工程を示す模式図である。反応器(図示無し)
にて製造されたアクリル酸含有ガスは、捕集塔(図示無し)にてアクリル酸水溶液となり
、配管11を経て混合部及び分離部を含む静的抽出装置の該混合部であるスタティックミ
キサAに供給される。該スタティックミキサAには、該アクリル酸水溶液に加えて、動的
抽出塔Cの塔頂より得られた抽出液21が配管12を経て供給される。該アクリル酸水溶
液のアクリル酸濃度は60重量%以上であり、好ましくは65重量%以上、さらに好まし
くは70重量%以上である。アクリル酸濃度が60重量%未満の場合、粗アクリル酸の抽
出回収(例えば≧95%)に必要な溶媒量が、回収される粗アクリル酸量に対し増大し、
デカンタDより回収された粗アクリル酸を含む溶媒相から、粗アクリル酸と溶媒を分離す
る溶媒分離工程が過大なものとなる可能性がある。該アクリル酸水溶液のアクリル酸濃度
は高いほど好ましいが、捕集塔で必要な熱量や設備を含めて考慮すれば、アクリル酸濃度
は85重量%以下が好ましく、より好ましくは80重量%以下である。高濃度のアクリル
酸水溶液と抽出液の混合は容易なため、混合部は高性能なスタティックミキサに限らず、
流路内に渦を発生させる構造を有するもの、例えばオリフィスプレート、異径配管、バタ
フライ弁等を用いることができる。効率と精度、及び汎用性の点で、流路に規則的に充填
物の配された高性能のスタテックミキサが好ましく、設備費削減や閉塞回避の点では、配
管のフランジ接続部に挿入するオリフィス型スタティックミキサがより好ましい。
【0019】
スタティックミキサAにおいて該アクリル酸水溶液から粗アクリル酸を連続的に抽出し
て混合液とし、該混合液は、配管13を経て、分離部であるデカンタD(二液分離槽)に
送液される。該デカンタDにおいて該混合液は、水相と粗アクリル酸を含む溶媒相とに分
離される。尚、該混合液の分離を加速するため、例えばコアレッサや遠心分離器等の機器
をスタティックミキサAとデカンタDの間に設けることが好ましい。該機器の導入により
、スタティックミキサAによる混合で混合液中にアクリル酸水溶液の微細な水滴が発生し
ても、該水滴の合一を促進し、液々分離を加速することが可能となる。コアレッサの閉塞
対策として、コアレッサの上流側に固形物除去用のフィルタを設ける、あるいはコアレッ
サを複数基並列とし、切り替えて使用することが好ましい。デカンタDで分離された水相
中の油滴及び溶媒相中の水滴ともに、1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.5重
量%未満である。尚、分離部としては内部に仕切板を有さない縦型ないし横型槽、溶媒相
がオーバーフローする為の垂直仕切板を有する槽、更に水相を分離するための垂直仕切板
と下部連結配管を有する槽、等が挙げられるが、流量変動などが次工程に与える影響を最
小化する観点から、溶媒相用の仕切板を1つ以上有するオーバーフロー型のデカンタが好
ましい。
分離された粗アクリル酸を含む溶媒相は配管15を経て回収され、回収された粗アクリ
ル酸を含む溶媒相は溶媒分離塔(図示無し)等により粗アクリル酸と溶媒に分離される。
デカンタDの設置位置を充分に高くすることで、配管15から次工程への送液ポンプを省
略することも可能である。分離された粗アクリル酸は蒸留や晶析などの更なる精製工程に
供給され、アクリル酸が精製される。
【0020】
前記抽出液は、前記水相と溶媒を含む液とを動的抽出塔Cに供給し、動的期抽出塔Cで
抽出することにより、動的抽出塔Cの塔頂より得られる。該水相はデカンタDにより分離
、排出され、配管14を経て動的抽出塔Cの上部に供給される。該水相に含まれる固形物
を除去するため、フィルタを、動的抽出塔Cへの供給ラインに設けることができる。デカ
ンタDの設置位置を充分に高くすることで、配管14から動的抽出塔Cへの送液ポンプを
省略することも可能であるが、フィルタ等により固形分除去を実施する場合は加圧が必要
となるため、ポンプによる送液が好ましい。該溶媒を含む液は、デカンタDにより分離、
回収された粗アクリル酸を含む溶媒相から粗アクリル酸を分離して得た液を含み、配管1
7を経て、動的抽出塔Cの下部に供給される。動的抽出塔Cにおいて水相22から粗アク
リル酸の抽出率を高めるため、溶媒を含む液23中のアクリル酸濃度は1重量%以下であ
ることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3重量%以下
である。動的抽出塔Cの塔頂より得られた抽出液21中のアクリル酸濃度は20重量%以
上45重量%以下である。下限は好ましくは25重量%であり、より好ましくは30重量
%である。アクリル酸濃度が低すぎると、静的抽出装置(スタティックミキサA及びデカ
ンタD(二液分離槽))において、粗アクリル酸を含む溶媒相中に充分なアクリル酸の回
収ができない可能性がある。アクリル酸濃度の上限は、好ましくは40重量%である。ア
クリル酸濃度が高すぎると、動的抽出塔Cの上部でフラッディングが発生し易くなり、運
転を継続するため撹拌強度を小さくする必要があり、動的抽出塔Cの抽出効率が低下する
可能性がある。動的抽出塔Cの塔底からは抽残水24が配管16を経て排出される。
【0021】
該スタティックミキサAへの該抽出液中の溶媒供給量は、該スタティックミキサAへの
該アクリル酸水溶液中のアクリル酸供給量に対して、2.5重量倍以下であり、好ましく
は2.2重量倍以下、より好ましくは2.0重量倍以下である。溶媒供給量が多すぎると
、デカンタDより回収された粗アクリル酸を含む溶媒相から、粗アクリル酸と溶媒を分離
する溶媒分離工程が過大なものとなる可能性がある。
【0022】
尚、本発明の製造法で使用する溶媒は、非極性溶媒である。非極性溶媒としては炭素数
6~8の飽和ないし不飽和の脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素が挙げられ、アクリル酸と
の蒸留分離の容易性の観点より、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、トル
エン、キシレンが好ましく、ヘキセン、トルエンがより好ましく、トルエンがさらに好ま
しい。
【0023】
更に抽出液21中の水の含有量は10重量%以下であることが好ましく、より好ましく
は5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。又、水の含有量の下限は0.3重
量%であることが好ましく、0.5重量%であることがより好ましく、1.0重量%であ
ることがさらに好ましい。尚、ここでいう水の含有量とは、抽出液中に溶解している水分
を含まず、水滴として分散しているものに含まれる水を意味する。水の含有量が多すぎる
と、動的抽出塔Cの上部におけるフラッディングの発生が過大となる可能性がある。水の
含有量が少なすぎると、動的抽出塔Cの撹拌動力が小さく、抽出塔の機器性能が充分に発
揮されず、つまり撹拌動力を上げて理論段数を上げた場合に比べてアクリル酸の抽出回収
率が劣る可能性がある。抽出液21における水の含有量の調整は、動的抽出塔の撹拌動力
を調整することで可能となる。
【0024】
図2は本発明のアクリル酸水溶液の抽出工程を示す別の模式図である。反応器(図示無
し)にて製造されたアクリル酸含有ガスは、捕集塔(図示無し)にてアクリル酸水溶液と
なり、配管11を経て、混合部及び分離部を含む静的抽出装置の該混合部であるスタティ
ックミキサA1に供給される。該スタティックミキサA1には、該アクリル酸水溶液に加
えて、デカンタD2にて水相Bと分離された溶媒相が配管20を経て供給される。該アク
リル酸水溶液のアクリル酸濃度は60重量%以上であり、好ましくは65重量%以上、さ
らに好ましくは70重量%以上である。アクリル酸濃度が60重量%未満の場合、粗アク
リル酸の抽出回収(例えば≧95%)に必要な溶媒量が、回収される粗アクリル酸量に対
し増大し、デカンタD1より回収された粗アクリル酸を含む溶媒相から、粗アクリル酸と
溶媒を分離する溶媒分離工程が過大なものとなる可能性がある。該アクリル酸水溶液のア
クリル酸濃度は高いほど好ましいが、捕集塔で必要な熱量や設備を含めて考慮すれば、ア
クリル酸濃度は85重量%以下が好ましく、より好ましくは80重量%以下である。尚、
静的抽出装置の混合部としてはスタティックミキサ、オリフィスプレート、異径配管、バ
タフライ弁等が挙げられるが、効率と精度、及び汎用性の観点でスタティックミキサが好
ましい。
【0025】
スタティックミキサA1において該アクリル酸水溶液から粗アクリル酸を連続的に抽出
して混合液Aとし、該混合液Aは、配管13を経て、分離部であるデカンタD1(二液分
離槽)に送液される。該デカンタD1において該混合液Aは、水相Aと粗アクリル酸を含
む溶媒相とに分離される。尚、該混合液Aの分離を加速するため例えばコアレッサや遠心
分離器等の機器をスタティックミキサA1とデカンタD1の間に設けることが好ましい。
該機器の導入により、スタティックミキサA1による混合で混合液A中にアクリル酸水溶
液の微細な水滴が発生しても、該水滴の合一を促進し、液々分離を加速することが可能と
なる。コアレッサの閉塞対策として、コアレッサの上流側に固形物除去用のフィルタを設
ける、あるいはコアレッサを複数基並列とし、切り替えて使用することが好ましい。デカ
ンタD1で分離された水相A中の油滴及び粗アクリル酸を含む溶媒相中の水滴ともに、1
重量%未満が好ましく、より好ましくは0.5重量%未満である。尚、分離部としては、
内部に仕切板を有さない縦型ないし横型槽、粗アクリル酸を含む溶媒相がオーバーフロー
する為の垂直仕切板を有する槽、更に水相Aを分離するための垂直仕切板と下部連結配管
を有する槽、等々が挙げられるが、流量変動などが次工程に与える影響を最小化する観点
から溶媒相用の仕切板を1つ以上有するオーバーフロー型のデカンタが好ましい。
【0026】
分離された粗アクリル酸を含む溶媒相は配管15を経て回収され、回収された粗アクリ
ル酸を含む溶媒相は溶媒分離塔(図示無し)等により粗アクリル酸と溶媒に分離される。
分離された粗アクリル酸は蒸留や晶析などの更なる精製工程に供給され、アクリル酸が精
製される。
【0027】
前記溶媒相は、前記デカンタD1により分離された水相Aと抽出液とをスタティックミ
キサA2に供給して混合液Bとし、該混合液BをデカンタD2に供給し、該デカンタD2
で水相Bと分離して得られたものである。
【0028】
該抽出液は、該水相Bと溶媒を含む液とを動的抽出塔C1に供給し、該動的抽出塔C1
の塔頂より得られ、配管12を経てスタティックミキサA2に供給される。
該水相BはデカンタD2により分離、排出されたものであり、配管19を経て動的抽出
塔C1の上部に供給される。該水相Bに含まれる固形物を除去するため、フィルタを、動
的抽出塔C1への供給ラインに設けることができる。該溶媒を含む液は、デカンタD1に
より分離、回収された粗アクリル酸を含む溶媒相から粗アクリル酸を分離して得た液を含
み、配管17を経て、動的抽出塔C1の下部に供給される。動的抽出塔C1において該水
相Bから粗アクリル酸の抽出率を高めるため、溶媒を含む液中のアクリル酸濃度は1重量
%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以下、更に好ましくは0.3
重量%以下である。
【0029】
抽出液21中のアクリル酸濃度は15重量%以上45重量%以下である。下限は好まし
くは20重量%であり、より好ましくは25重量%である。アクリル酸濃度が低すぎると
、直列二基の静的抽出装置(スタティックミキサA1、A2、及びデカンタD1、D2)
において、粗アクリル酸を含む溶媒相中に充分なアクリル酸の回収ができない可能性があ
る。アクリル酸濃度の上限は、好ましくは40重量%である。アクリル酸濃度が高すぎる
と、動的抽出塔C1の上部でフラッディングが発生し易くなり、運転を継続するため撹拌
強度を小さくする必要があり、動的抽出塔Cの抽出効率が低下する可能性がある。
該スタティックミキサA2への該抽出液中の溶媒供給量は、該スタティックミキサA1
への該アクリル酸水溶液中のアクリル酸供給量に対して、2.5重量倍以下であり、好ま
しくは2.2重量倍以下、より好ましくは2.0重量倍以下である。溶媒供給量が多すぎ
ると、デカンタD1より回収された粗アクリル酸を含む溶媒相から、粗アクリル酸と溶媒
を分離する溶媒分離工程が過大なものとなる可能性がある。
【0030】
尚、本発明の製造法で使用する溶媒は、非極性溶媒である。非極性溶媒としては炭素数
6~8の飽和ないし不飽和の脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素が挙げられ、アクリル酸と
の蒸留分離の容易性の観点より、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、トル
エン、キシレンが好ましく、ヘキセン、トルエンがより好ましく、トルエンがさらに好ま
しい。
更に抽出液中の水の含有量は10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5
重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。又、水の含有量の下限は0.3重量%
であることが好ましく、0.5重量%であることがより好ましく、1.0重量%であるこ
とがさらに好ましい。尚、ここでいう水の含有量とは、抽出液中に溶解している水分を含
まず、水滴として分散しているものに含まれる水を意味する。水の含有量が多すぎると、
動的抽出塔の上部におけるフラッディングの発生が過大となっている可能性がある。水の
含有量が少なすぎると、動的抽出塔の撹拌動力が小さく、抽出塔の機器性能が充分に発揮
されず、つまり撹拌動力を上げて理論段数を上げた場合に比べてアクリル酸の抽出回収率
が劣る可能性がある。抽出液における水の含有量の調整は、動的抽出塔の撹拌動力を調整
することで可能となる。
【0031】
図3は
図1、
図2における動的抽出塔の形態を示す模式図である。左図はロッドで連結
された多数の多孔板を上下に振幅させる構造で、カールカラム(KARR(R)、Koch
-Glitsch)などが挙げられる。連続相、分散相共に移動が垂直方向に限られるた
め、半径方向の撹拌強度に差がなく、塔断面積当たりの処理液量が最も多い抽出塔の一つ
だが、抽出塔の上から吊るされた多孔板を上下させるという独特の仕様ゆえ、大型化に伴
う制約は多く、効率も低下する。右図は中心の回転軸に取り付けられた多数の撹拌翼とそ
の上下に配されたバッフルからなる多段のミキサーセトラーであり、シャイベル(She
ibel(R)、Koch-Glitsch)などに代表される高理論段用の抽出塔である
。大型化に際してKARR(R)のような機械的強度や精度の問題は少ないが、塔径を増す
ほど流体の水平方向の移動距離が増すことで効率が低下する。つまりこれら動的抽出塔で
は、処理流体量の削減は、抽出塔の径縮小に伴う機器費の低減に加え、より高い分離が期
待される。
【0032】
動的抽出塔C内では、分散相の液滴が多孔板や撹拌翼で叩かれて細化することでその表
面積が増え、2液相間の物質移動が促進されるが、細化が進み過ぎると、分散相の移動が
遅くなり、フラッディングが発生する。液中のアクリル酸濃度が高いほど二液相間の界面
張力は低下し、分散相の液滴は細化しやすくなるため、動的抽出塔Cの上部ほどフラッデ
ィングが発生しやすい。動的抽出塔Cの上部において、多孔板や撹拌翼の設置間隔を広く
したり、多孔板の開孔率を上げたり、或いは撹拌翼の面積を小さくすることで、動的抽出
塔Cの上部における界面張力が動的抽出塔Cの下部における界面張力に対して1/10程
度ないしそれ以上であれば、、動的抽出塔Cの上部におけるフラッディングの起こりやす
さを緩和できる可能性がある。しかし、抽出に用いる溶媒を含む液23の量がアクリル酸
に対して2.5倍以下になると、これらだけでは不十分となり、多孔板の振幅速度や撹拌
翼の回転速度を大幅に下げることでフラッディングの緩和を図ると、動的抽出塔Cの性能
低下を引き起こした結果、抽出溶媒を削減したにも関わらず所要機器は返って大型化する
場合がある。更に界面張力が0.001N/m以下の領域では、微細な液滴による白濁が
発生し、該白濁が一旦発生すると、その解消には数十分から数時間を要するため、動的抽
出塔Cの上部に過大な付帯設備となる液保持部を設ける必要が生じる。
【0033】
本発明ではフラッディングの発生する条件を回避する、という従来の課題解決法とは相
違し、現行の動的抽出塔Cの能力を最大限に活用し、動的抽出塔Cの上部に供給された水
相22から、下部に供給された溶媒を含む液23によりアクリル酸を抽出し、動的抽出塔
Cの塔頂より抽出液21として排出し、該抽出液21と、アクリル酸濃度が60重量%以
上のアクリル酸水溶液とを混合装置により連続的に混合し、水相と溶媒相に分離すること
で、少量の溶媒で、安定かつ経済的なアクリル酸の抽出が可能となるのである。すなわち
、アクリル酸濃度が高くなる部分を動的抽出塔Cとは独立してアクリル酸を抽出、分離す
ることで、動的抽出塔Cの塔頂液中のアクリル酸濃度が低下し、動的抽出塔内の上方と下
方における界面張力の比を縮小すると共に、動的抽出塔塔頂から流出した水滴やこれに含
まれる不純物が下流工程に行くことを防いでいる。
【0034】
動的抽出塔Cの上部がフラッディングした状態で運転を行うと、動的抽出塔Cの上部に
供給された水相22に含まれる水分が塔底に到達できず塔内に溢れ、動的抽出塔Cの運転
停止となる可能性がある。動的抽出塔Cの運転停止は、上流の酸化反応工程及び下流の分
離、精製工程に影響を与え、経済的損失が大きいため回避することが必須である。フラッ
ディングが発生しやすいのはアクリル酸濃度の高い動的抽出塔Cの上部であり、フラッデ
ィングの進行に伴って連続相中に分散するアクリル酸水溶液の割合が増大するため、動的
抽出塔Cの上部の液密度が上昇する。よって、動的抽出塔Cの側面に複数のノズルを設け
、その差圧を連続的に測定することで、動的抽出塔Cの状況を間接的に監視することが可
能となる。動的抽出塔C全体では密度変化が小さいため、差圧の測定範囲は動的抽出塔C
全体ではなく、動的抽出塔Cの上部に限ることが好ましく、垂直方向の長さにして5m以
下が好ましい。また、0.5m以上であることが好ましい。0.5mより短いと、圧力の
測定値の振れ幅が大きい場合、差圧であるか測定値の振れであるかの判別ができない可能
性があり、又、フランジやノズル等付帯設備用に充分なスペースが確保できないことがあ
る。
【0035】
該差圧の経時的な上昇が確認された、すなわちフラッディングが進行していると解され
る場合は、動的抽出塔Cの負荷を下げる必要がある。例えば、供給される水相22や溶媒
を含む液23の流量を低下させる方法も対策の一つではあるが、上流や下流の工程に与え
る影響を抑えるため、また動的抽出塔Cより排出される抽出液21中のアクリル酸の濃度
の変化を抑えるため、動的抽出塔Cの振幅数や回転数を下げる方法が簡便且つ確実であり
好ましい。
反対に該差圧の経時的な上昇が確認されない場合、抽出溶媒の低減による溶媒分離工程
の負荷低減や、動的抽出塔Cの多孔板の振幅数の上昇や撹拌翼の回転数の上昇による抽出
回収率の向上を適宜試みることが可能である。
【実施例】
【0036】
[三液平衡]
ジャケット式の二重構造を有し、側面の上下二か所から内液のサンプリングが可能なノ
ズルを備えたガラス製容器を用い、トルエン、水、及びアクリル酸を重量比でおよそ7:
3:0.01~15の範囲で該容器に加え、マグネチックスターラーで内液を撹拌し、0
.5から2時間静置した。次いで、ガラス製容器の側面のノズルから水相及びトルエン相
をサンプリングし、ガスクロマトグラフィ及びカールフィッシャー水分計で分析を行った
。サンプリング後、容器内の二液相を分離し、各々浮子密度計を用いて密度を、振動式粘
度計を用いて粘度を測定した。
図5は分析結果を全濃度域で再現するよう、三成分の濃度
相関を関数化したものに基づく。液々平衡組成の計算に一般的に用いられるNRTLやU
NIUQAC等の活量計算モデルでは、特にアクリル酸の希薄濃度域の再現性が悪く、用
いていない。
図6はトルエン相中のアクリル酸濃度に対する密度及び粘度の相関図を示す
。
図8はトルエン相中のアクリル酸濃度に対する分配係数を示す。アクリル酸濃度の低下
に伴い、急激に分配係数が低下することが確認できる。
【0037】
[分離時間と界面張力]
100mlのサンプル瓶に、水相とトルエン相が各々30ml程度になるよう、トルエ
ン、水、及びアクリル酸を加え、蓋をして手で1分間振ってから静置し、二液分離に要す
る時間を測定した。手で振る前の界面高さ(瓶底から界面までの距離)に対し、95%の
高さまで界面位置が上昇するのに要する時間を分離時間とした。トルエン相中のアクリル
酸濃度が35重量%を超える系では、該分離時間となってもトルエン相は白濁しており、
分離時間の倍の時間まで静置したが、トルエン相の白濁は解消しなかった。肉眼では液滴
として確認出来ないが可視光を散乱出来る程度の水滴径、つまり1~50μm程度の微細
な水滴が分散していたと考えられる。
トルエン、水、及びアクリル酸をトルエン相の高さが6cm以上になるようにビーカー
に加え、輪環法により界面張力の測定を行った。
図7は分離時間と界面張力の、トルエン相中のアクリル酸濃度に対する相関を示す。尚
、上記何れの分析においても、その液組成は仕込み液組成と三成分の濃度相関式より算出
した。アクリル酸の濃度上昇に伴い、二液分離に要する時間が大幅に増大すること、及び
該分離時間が、二液の界面張力と高い相関を有することが確認された。
【0038】
[動的抽出塔]
内径3cmのガラス製カールカラム(R)を用い、連続抽出試験を行った。開孔率50%
のPTFE製多孔板を用い、板間隔50~100mm、層高1.8~3m、振幅±25m
m、振幅数100~500/分、空筒速度10~55m/時、の条件下で、濃度35~6
5重量%のアクリル酸水溶液に対し、0.5重量%のアクリル酸を含むトルエンで抽出を
行った。抽出液及び抽残水の組成はガスクロマトグラフィで分析し、三成分の濃度相関式
に基づいて理論段数を算出した。
図9は、抽出液中のアクリル酸濃度が32~35重量%、板間隔が50mmの解析結果
を纏めたもので、一理論段当たりの層高(HETP)は空筒速度(10~50m/時)に
依存せず、振幅数に反比例する(
図9の点線)ことが確認された。また、板間隔のみ10
0mmに変更した際の解析結果は、HETP換算で平均2.2倍であった。
図10は空筒速度とフラッディング限界が観測された振幅数との関係を纏めたもので、
〇は抽出液中のアクリル酸濃度が約16重量%のもの、△は約26重量%のもの、◇は3
3重量%のものである。更に、板間隔を100mmに広げることで、アクリル酸33重量
%及びアクリル酸26重量%(空筒速度50m/h)のフラッディング限界における振幅
数は約300/分まで上昇した。
【0039】
[計算]
図11は、十分に大きな理論段数(15段)を有する抽出塔にて、0.5重量%のアク
リル酸を含有するトルエンを用いて、種々のアクリル酸濃度を有するアクリル酸水溶液の
抽出を行った場合の回収率について算出したものである。アクリル酸水溶液の濃度が十分
に高くないと、高い抽出回収率と抽出溶媒の削減は達成出来ないことが確認できる。
図12は、70重量%のアクリル酸水溶液に対して0.5重量%のアクリル酸を含有す
るトルエンを1.8重量倍用い、12理論段で抽出した際の各段における、トルエン中の
アクリル酸濃度、アクリル酸の抽出回収率、及び塔内液流量と界面張力の各々最大値を1
とした相対値、を示したもので、一段目にアクリル酸水溶液、12段目にトルエンが供給
される前提で、回収率は99.1%である。何れの項目においても、一段目が最もフラッ
ディングを生じやすいことが確認できる。
【符号の説明】
【0040】
11~20 配管
21 抽出液
22 水相
23 溶媒を含む液
24 抽残水
A、A1、A2 スタティックミキサ
B コアレッサ
C、C1 抽出塔
D、D1、D2 デカンタ
L-11、L-12 液面計
P-11~P-17 ポンプ
V-11、V-12 バルブ