(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】熱交換器の連結構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240319BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240319BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240319BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240319BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240319BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240319BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240319BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/653
H01M10/6563
H01M10/6568
(21)【出願番号】P 2020109575
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061262(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033412(WO,A1)
【文献】特開2015-109322(JP,A)
【文献】特開2021-022517(JP,A)
【文献】特開2021-038895(JP,A)
【文献】特開2021-027020(JP,A)
【文献】特開2020-085418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 10/6568
H01M 10/653
H01M 10/625
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/6563
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成された外装体の内部に、出入口を有する樹脂製の補強部材が収容された熱交換器と、連結口を有し、かつその連結口が前記出入口に接合される連結部材とを備え、前記外装体に対し前記連結口および前記出入口を介して流出入される熱交換媒体が前記外装体の内部を循環するように構成された熱交換器の連結構造であって、
前記連結部材が前記補強部材に機械的接合手段によって固定されていることを特徴とする熱交換器の連結構造。
【請求項2】
前記機械的接合手段は、前記連結部材および前記補強部材のいずれか一方の部材に設けられた係合部と、他方の部材に設けられた被係合部とを備え、前記係合部が前記被係合部に係合することによって前記連結部材が前記補強部材に固定されている請求項1に記載の熱交換器の連結構造。
【請求項3】
前記係合部は前記一方の部材に一体に形成されるとともに、前記被係合部は前記他方の部材に一体に形成されている請求項2に記載の熱交換器の連結構造。
【請求項4】
前記係合部は、フックによって構成されるとともに、前記被係合部は前記フックに対応して設けられたフック受部によって構成され、
前記フックが、前記フック受部に弾性係合することによって前記連結部材が前記補強部材に固定されている請求項2または3に記載の熱交換器の連結構造。
【請求項5】
前記係合部は圧入ピンによって構成されるとともに、前記被係合部は前記圧入ピンに対応して設けられたピン受凹部によって構成され、
前記圧入ピンが前記ピン受凹部に圧入固定されることによって前記連結部材が前記補強部材に固定されている請求項2または3に記載の熱交換器の連結構造。
【請求項6】
前記圧入ピンは、前記外装体における出入口の周縁部外側に、周方向に間隔をおいて複数形成されている請求項5に記載の熱交換器の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の伝熱層に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成された外装体が熱交換器に連結パイプ等の連結部材を連結するようにした熱交換器の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)等においては、電動機を駆動するための電力を供給するバッテリー装置が搭載されている。このようなバッテリー装置としては、リチウム二次電池等の各種の二次電池からなる複数個の小型単電池が直列または並列に多数接続されて組電池の形態としたものが一般に用いられている。特に近年になって電気自動車の航続距離を延長させるために、複数の組電池が直列または並列に組み合わされて、バッテリー装置のさらなる大容量化が進められている。
【0003】
一方、バッテリー装置として多く用いられるリチウム二次電池は、使用温度によって性能や寿命が大きく変化するため、長期間にわたって効率良く使用するには適正な温度に管理するのが好ましい。しかしながら、上記のような複数の組電池の形態で使用した場合、複数の組電池が密接して配置されているため、各組電池や各単電池から発生する熱を効果的に放出させることは困難であり、各組電池毎の温度が上昇してしまい、性能や寿命が低下してしまうおそれがある。
【0004】
そこで下記特許文献1に示すような薄型の熱交換器を用いて、複数の組電池を冷却するようにした技術が開発されている。この熱交換器は、2枚の金属製皿状プレートを対向合致させて熱交換器(扁平チューブ)を形成し、複数の組電池の各間に扁平チューブがそれぞれ配置されることによって、組電池の各単電池から発せられる熱を、扁平チューブ内を流通する冷媒(冷却水)を介して外部に放出させるようにしている。
【0005】
このような技術背景の下、自動車バッテリー装置としての複数の組電池を冷却するための熱交換器は、他の自動車部品と同様、薄型化、小型軽量化、低コスト化が可及的に求められ、その一環として、柔軟性の高いラミネート材を用いた熱交換器の採用が検討されている。
【0006】
ラミネート材を用いた熱交換器は、金属製の伝熱層の両面に樹脂製の被覆層が積層されたラミネート材によって構成された外装体を備えている。外装体には出入口が設けられており、この出入口に冷媒導入/導出用の配管としての連結パイプの連結口が溶着されて、連結パイプを介して外装体の内部に冷却液が循環できるように構成されている。そして、複数の組電池の各間に外装体がそれぞれ配置されて、組電池の単電池から放出される熱と、外装体内を循環する冷却液との間で熱交換されることによって、組電池を冷却するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなラミネート材を用いた熱交換器において、外装体の出入口と連結パイプの連結口との溶着部に応力が集中するため、その溶着部に破損や劣化が生じ易く、液漏れ等が生じて耐久性が低下するおそれがあった。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、ラミネート材を用いた熱交換器の外装体における連結パイプ等の連結部材の連結口との溶着部等の取付部に、破損、劣化、液漏れ等の不具合が発生するのを防止できて、十分な耐久性を得ることができる熱交換器の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0011】
[1]金属製の伝熱層の少なくとも片面に樹脂層が積層されたラミネート材によって形成された外装体の内部に、出入口を有する樹脂製の補強部材が収容された熱交換器と、連結口を有し、かつその連結口が前記出入口に接合される連結部材とを備え、前記外装体に対し前記連結口および前記出入口を介して流出入される熱交換媒体が前記外装体の内部を循環するように構成された熱交換器の連結構造であって、
前記連結部材が前記補強部材に機械的接合手段によって固定されていることを特徴とする熱交換器の連結構造。
【0012】
[2]前記機械的接合手段は、前記連結部材および前記補強部材のいずれか一方の部材に設けられた係合部と、他方の部材に設けられた被係合部とを備え、前記係合部が前記被係合部に係合することによって前記連結部材が前記補強部材に固定されている前項1に記載の熱交換器の連結構造。
【0013】
[3]前記係合部は前記一方の部材に一体に形成されるとともに、前記被係合部は前記他方の部材に一体に形成されている前2に記載の熱交換器の連結構造。
【0014】
[4]前記係合部は、フックによって構成されるとともに、前記被係合部は前記フックに対応して設けられたフック受部によって構成され、
前記フックが、前記フック受部に弾性係合することによって前記連結部材が前記補強部材に固定されている前項2または3に記載の熱交換器の連結構造。
【0015】
[5]前記係合部は圧入ピンによって構成されるとともに、前記被係合部は前記圧入ピンに対応して設けられたピン受凹部によって構成され、
前記圧入ピンが前記ピン受凹部に圧入固定されることによって前記連結部材が前記補強部材に固定されている前項2または3に記載の熱交換器の連結構造。
【0016】
[6]前記圧入ピンは、前記外装体における出入口の周縁部外側に、周方向に間隔をおいて複数形成されている前項5に記載の熱交換器の連結構造。
【発明の効果】
【0017】
発明[1]の熱交換器の連結構造によれば、連結部材の連結口と補強部材の出入口とが溶着等によって接合されるとともに、連結部材と補強部材とが機械的接合手段によって固定されるものであるため、連結部材の補強部材に対する位置固定を確実に図ることができる。このため連結部材の連結口と補強部材の出入口との溶着等の取付部に応力が集中するのを防止でき、その取付部に早期の破損や劣化が発生するのを防止できるとともに、液漏れも防止でき、耐久性を向上させることができる。
【0018】
発明[2]の熱交換器の連結構造によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0019】
発明[3]の熱交換器の連結構造によれば、部品点数が増加するのを防止でき、構造の簡素化を図ることができる。
【0020】
発明[4]~[6]の熱交換器の連結構造によれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器の連結構造が適用された電池冷却装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は第1実施形態の電池冷却装置の端部を示す断面図である。
【
図3】
図3は第1実施形態の電池冷却装置の端部を分解して示す断面図である。
【
図4】
図4は第1実施形態の電池冷却装置に適用された熱交換器の端部を示す斜視図である。
【
図5】
図5はこの発明の第2実施形態である熱交換器の連結構造が適用された電池冷却装置を示す斜視図である。
【
図6】
図6は第2実施形態の電池冷却装置の端部を示す断面図である。
【
図7】
図7は第2実施形態の電池冷却装置の端部を分解して示す断面図である。
【
図9】
図9は第2実施形態の電池冷却装置に適用された熱交換器の端部を示す斜視図である。
【
図10】
図10は第2実施形態の熱交換器に適用された補強部材を示す斜視図である。
【
図11】
図11は第2実施形態の熱交換器に適用された補強部材を裏面側から見た状態の斜視図である。
【
図12】
図12は第2実施形態の電池冷却装置の機械的接合手段を説明するための断面図であって、図(a)はピン圧入前の状態を示す断面図、図(b)は固定直前の状態を示す断面図、図(c)は固定後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である熱交換器の連結構造が適用された電池冷却装置を示す斜視図、
図2~
図4はその電池冷却装置の端部を説明するための図である。
【0023】
これらの図に示すように本第1実施形態の電池冷却装置は、冷却器を構成する2本の熱交換器1と、各熱交換器1に対し、熱交換媒体である冷媒を導入または導出するための2本の連結パイプ5とを備えている。
【0024】
熱交換器1は、熱交換パネルや熱交換チューブ等とも称されており、ケーシングを構成する外装体2と、外装体2の端部に設けられる補強部材3とを備えている。
【0025】
外装体2は、平坦なベースシート21と、ベースシート21の上面を覆うように設けられるカバーシート22とで構成されている。
【0026】
両シート21,22は、アルミニウム箔等の金属箔製の伝熱層と、その伝熱層の両面に積層一体化された熱融着樹脂製の樹脂層とで構成されたラミネート材によって構成されている。なお本発明において用いられるラミネート材は、伝熱層の少なくとも片面側に樹脂製の層が形成された2層以上の構造であれば良く、本実施形態のように3層構造であっても良く、4層以上の構造であっても良い。
【0027】
カバーシート22は、その両端部が上方に大きく隆起するようにして、平面視矩形状の補強部材収容部23が形成されるとともに、両端の補強部材収容部23間が上方に少量隆起するようにして、伝熱部24が形成されている。
【0028】
このカバーシート22の外周縁部下面が、ベースシート21の外周縁部上面に熱融着等によって溶着されて、袋状の外装体(ケーシング)2が形成されている。
【0029】
この外装体2において、補強部材収容部23はその内部に後に詳述する補強部材3が収容されている。
【0030】
伝熱部24は、その内部が冷媒等の熱交換媒体を流通できるように構成されており、一方側の補強部材収容部23に導入された冷媒が伝熱部24を通って他方側の補強部材収容部23に移動できるように構成されている。
【0031】
また外装体2の補強部材収容部23の上壁には、冷媒を導入または導出させるための円形の貫通口20が形成されている。
【0032】
補強部材3は、外装体2の補強部材収容部23に対応して平面視矩形状に形成された合成樹脂の一体成形品によって構成されている。この補強部材3は、その内部に下方に向けて開口する中空部31が形成されており、上壁には中空部31内に連通する円形の出入口30が形成されている。この出入口30の上端周縁は上方に少量突出するように形成されている。
【0033】
この補強部材3がその出入口30の周縁突出部が外装体2の貫通口20に挿入されて上方に突出した状態で、外装体2の補強部材収容部23に収容されて、補強部材3の上面が外装体2におけるカバーシート22の内面側に熱融着等によって溶着されるとともに、下面が外装体2におけるベースシート21の内面側に熱融着等によって溶着されて、補強部材3が外装体2内に固定されている。
【0034】
なお補強部材3には、内部の中空部31と外装体2の伝熱部24とを連通する連通部32が形成されており、出入口30を介して中空部31内に導入された冷媒が連通部32を介して伝熱部24に導入される一方、伝熱部24から連通部32を介して中空部31内に導入された冷媒が出入口30を介して流出されるように構成されている。
【0035】
また
図2および
図3に示すように補強部材3の両側壁、つまり伝熱部24側の側壁(一側壁)と、その反対側の側壁(他側壁)の上端部に、外方に張り出すように張り出し部33が形成されて、その張り出し部33よりも下側が係合段部(フック受部)34として構成されている。
【0036】
本実施形態においては、この構成の2本の熱交換器1が並列に配置されている。言うまでもなく、本発明において熱交換器1の設置数は2本に限定されるものではなく、1本であっても、3本以上であっても良い。さらに熱交換器の形状は特に限定されるものではない。
【0037】
連結パイプ5は、連結部材を構成するものであり、合成樹脂の一体成形品によって構成されている。連結パイプ5は2本設けられており、一方側の連結パイプ5は、隣り合う2本の熱交換器1の一方側の出入口30同士を連結するように、両熱交換器1の一端部間にまたがって配置されるとともに、他方側の連結パイプ5は、隣り合う2本の熱交換器1の他方側の出入口30同士を連結するように、両熱交換器1の他端部間にまたがって配置されている。
【0038】
図1~
図3に示すように連結パイプ5は上側部が扁平な中空パイプ状の冷媒流通部51として形成されている。この連結パイプ5の両側部には、上記補強部材3の両側壁における係合段部34に対応して、弾力性を有する一対のフック52が一体に形成されている。さらに一対のフック52の下端(先端)には内側に突出するように係合凸部53が一体に形成されている。なおフック52は、連結パイプ5の長さ方向に連続して形成されている。
【0039】
また連結パイプ5における冷媒流通部51の下壁には、熱交換器1の出入口30に対応して、冷媒流通部51内に連通する連結口50が形成されている。
【0040】
ここで本第1実施形態においては、フック52および係合段部(フック受部)34のいずれか一方が係合部として構成されるとともに、残り一方が被係合部として構成される。さらにフック52および係合段部34によって機械的接合手段が構成されている。
【0041】
この連結パイプ5の各連結口50が、熱交換器1の対応する各出入口30に溶着されるとともに、連結パイプ5の一対のフック片52が、各熱交換器1の両側係合段部34に嵌め込まれて係合されることによって、連結パイプ5が熱交換器1に取り付けられている。
【0042】
詳細に説明すると、連結パイプ5における連結口50の周縁部表面と、補強部材3の出入口30の端面(周縁突出部表面)とを赤外線加熱等により溶融して、その状態で両者を互いに圧接することによって、連結パイプ5の連結口50を補強部材3の出入口30に溶着接合する。さらに連結パイプ5の一対のフック52を外側に弾性変形させつつ、補強部材3の両側に嵌め込んでいき、一対のフック52を、その先端係合凸部53が補強部材3の張り出し部33を乗り越えたところで弾性復帰させて、係合凸部53を係合段部34に弾性係合させることによって、一対のフック52を補強部材3に機械的に接合する。
【0043】
このように連結パイプ5の連結口50を補強部材3の出入口30に溶着接合するのに際し、フック式による機械的接合手段を併用することによって連結パイプ5を熱交換器1に取り付けるようにしている。
【0044】
この構成の電池冷却装置においては、各熱交換器1の一方側の出入口30に配置される一方側の連結パイプ5が、冷媒導入管として機能するとともに、他方側の連結パイプ5が冷媒導出管として機能する。すなわち一方側の連結パイプ5に導入された冷媒が連結口50および出入口30を介して一方側の補強部材3の中空部31内に導入される。補強部材3内に導入された冷媒は、連通部32を通って伝熱部24内に導入されて、伝熱部24の一端側(一方側)から他端側(他方側)に流通していき、他方側の補強部材3内に導入される。こうして他方側の補強部材3に導入された冷媒は出入口30および連結口50を介して他方側の連結パイプ5に導入されて、その連結パイプ5を通って流出される。
【0045】
こうして熱交換器1の伝熱部24に冷媒を循環させて、その循環する冷媒と、伝熱部24の外面に接触配置された電池との間で熱交換させることによって、電池を冷却するものである。
【0046】
以上のように構成された本実施形態の電池冷却装置によれば、連結パイプ5の連結口50と補強部材3の出入口30とが溶着接合されるとともに、連結パイプ5のフック52を補強部材3の係合段部34に弾性係合させて機械的に接合するものであるため、連結パイプ5の補強部材3に対する位置固定を確実に図ることができる。このため連結パイプ5の連結口50と補強部材3の出入口30との溶着部(取付部)に応力が集中するのを防止でき、その溶着部に早期の破損や劣化が発生するのを防止できるとともに、液漏れも防止でき、耐久性を向上させることができる。
【0047】
また第1実施形態の電池冷却装置においては、連結パイプ5に設けた一対のフック52を、補強部材3の両側から抱持するように係合させているため、連結パイプ5をより安定した状態で補強部材3に取り付けることができ、溶着部への応力集中をより確実に回避することができる。
【0048】
また本第1実施形態の電池冷却装置においては、補強部材3の出入口30と連結パイプ5の連結口50との間の液漏れを防止できるため、Oリングのような面倒な水密構造を採用する必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0049】
また本第1実施形態の電池冷却装置においては、機械的接合手段としてのフック52およびフック受(係合段部)34を連結パイプ5および補強部材3に一体に形成しているため、部品点数が増加するのを防止することができる。
【0050】
なお上記実施形態においては、連結パイプ5の連結口50を補強部材3の出入口30に溶着するに際して、赤外線加熱を利用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、溶着方式は特に限定されるものではない。例えば超音波を利用したり、熱板や熱風を利用したり、溶剤を利用して溶着(融着)しても良い。さらに本発明においては、連結パイプ5の連結口50を補強部材3の出入口30に溶着接合するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては接着剤を用いて接着接合するようにしても良い。これらの接合方式は、外装体2におけるベースシート21とカバーシート22とを接合する場合や、外装体2と補強部材3とを接合する場合も同様に採用でき、さらに以下の第2実施形態においても同様に採用することができる。
【0051】
<第2実施形態>
図5は第2実施形態である熱交換器の連結構造が適用された電池冷却装置を示す斜視図、
図6~
図9は第
2実施形態の電池冷却装置に適用された熱交換器の端部を示す図である。
【0052】
これらの図に示すように本第2実施形態の電池冷却装置は、熱交換器1と、連結パイプ5とを備え、熱交換器1は外装体2と、外装体2の端部に設けられる補強部材4とを備えている。
【0053】
外装体2は、第1実施例と同様のラミネート材によって構成されたベースシート21と、カバーシート22とで構成されている。
【0054】
カバーシート22は、中間部の一端側から他端側にかけて上方に隆起するように形成されて、平面視長円状の隆起部が形成されている。その隆起部の両端部が平面視略半円状の補強部材収容部23として構成されるとともに、隆起部における補強部材収容部23間が両補強部材収容部23を連通する伝熱部24として構成されている。
【0055】
このカバーシート22の外周縁部下面が、ベースシート21の外周縁部上面に熱融着等によって溶着されて袋状の外装体(ケーシング)2が形成されている。
【0056】
この外装体2において、伝熱部24の内部を冷媒等の熱交換媒体が流通できるように構成されており、一方側の補強部材収容部23に導入された冷媒が伝熱部24を通って他方側の補強部材収容部23に移動できるように構成されている。
【0057】
また外装体2の補強部材収容部23の上壁には、冷媒を導入または導出させるための円形の貫通口20が形成されている。
【0058】
補強部材4は、外装体2の補強部材収容部23に対応して平面視半円弧状に形成された合成樹脂の一体成形品によって構成されている。
図6~
図11等に示すように補強部材4は、平面半円形の上壁45と、上壁45の外周縁部における半円弧部に沿って一体に形成された半周壁46とを備え、上壁45および半周壁46によって囲まれた中空部41を有している。さらに補強部材4の上壁45には、中空部41内に連通する円形の出入口40が形成されている。
【0059】
この補強部材4がその出入口40が外装体2の貫通口20に対応した状態で、外装体2の補強部材収容部23に収容されて、補強部材4の上面および下面が外装体2の内面に熱融着等によって溶着されて、補強部材4が外装体2内に固定されている。
【0060】
また補強部材4は、外装体2の伝熱部24に対応する領域は開放されており、その開放部(連通部)42を介して中空部41が伝熱部24に連通している。さらに補強部材4の中空部41における連通部42側には、補強突起47が設けられている。
【0061】
なお補強部材4の上壁45の上面側における出入口40の外側に周方向に等間隔おきに4つのピン受凹部44が形成されている。
【0062】
連結パイプ5は第1実施形態と同様、合成樹脂の一体成形品によって構成されており、2本の連結パイプ5が、並設される熱交換器1の一端部間および他端部間にそれぞれ掛け渡されるように配置されている。
【0063】
各連結パイプ5における下壁には、熱交換器1の各出入口40にそれぞれ対応して連結口50が形成されている。さらに連結パイプ5の下面における連結口50の外側には、補強部材4のピン受凹部44に対応して圧入ピン55が下方に突出するように一体に形成されている。言うまでもなく、圧入ピン55は、ピン受凹部44に対応して各連結口50の外側に、周方向に等間隔おきに4つずつ形成されている。
【0064】
ここで本第2実施形態においては、圧入ピン55およびピン受凹部44のいずれか一方が係合部として構成されるとともに、残り一方が被係合部として構成される。さらに圧入ピン55およびピン受凹部44によって機械的接合手段が構成されている。
【0065】
この連結パイプ5の連結口50が、熱交換器1の対応する出入口40に溶着されるとともに、連結パイプ5の圧入ピン55が、熱交換器1のピン受凹部44にそれぞれ圧入固定されることによって、連結パイプ5が熱交換器1に取り付けられている。
【0066】
詳細に説明すると、連結パイプ5における
連結口50の周縁部表面と、補強部材4の出入口40の周縁部表面とを外装体2のカバーシート22を介して溶着接合する。さらに
図12(a)に示すように連結パイプ5の圧入ピン55を、対応するピン受凹部44にそれぞれ対向配置して、同図(b)に示すように圧入ピン55をカバーシート22を介してピン受凹部44内に挿入する。さらに同図(c)に示すように連結パイプ5を補強部材4側に圧接して、圧入ピン55をピン受凹部44内で膨出させるように塑性変形させて、圧入ピン55を補強部材4のピン受凹部44に機械的に接合する。
【0067】
このように連結パイプ5の連結口50を補強部材4の出入口40に溶着接合するに際して、ピン留め式による機械的接合手段を併用することによって連結パイプ5を熱交換器1に取り付けるようにしている。
【0068】
この第2実施形態の電池冷却装置において他の構成は、上記第1実施形態の電池冷却装置と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0069】
この第2実施形態の電池冷却装置においても上記第1実施形態と同様、一方側の連結パイプ5に導入された冷媒が連結口50および出入口40を介して各熱交換器1の一方側の補強部材4内に導入され、その冷媒が伝熱部24を通って各熱交換器1の他方側の補強部材4に導入されて出入口40および連結口50を介して他方側の連結パイプ5に導入されて流出される。
【0070】
こうして熱交換器1の伝熱部24を循環する冷媒と、伝熱部24に接触配置された電池との間で熱交換させるようにしている。
【0071】
以上のようにこの第2実施形態の電池冷却装置においても、連結パイプ5の連結口50と補強部材4の出入口40とが溶着接合されるとともに、連結パイプ5の圧入ピン55を補強部材4のピン受凹部44に圧入固定して機械的に接合するものであるため、連結パイプ5を補強部材4に安定状態に確実に固定することができる。このため連結パイプ5の連結口50と補強部材4の出入口40との溶着部に応力が集中することがなく、溶着部に早期の破損や劣化、液漏れ等の不具合が発生するのを有効に防止でき、耐久性を十分に向上させることができる。
【0072】
さらに第2実施形態の電池冷却装置においては上記第1実施形態と同様、液漏れを確実に防止できるため、Oリングのような面倒な水密構造を採用する必要がなく、構造の簡素化を図ることができる。
【0073】
また本第2実施形態の電池冷却装置においても、機械的接合手段としての圧入ピン55およびピン受凹部44を連結パイプ5および補強部材4に一体に形成しているため、部品点数が増加するのを防止することができる。
【0074】
また本第2実施形態においては、圧入ピン55を、連結口50の外側に周方向に等間隔おきに4つ形成しているため、連結パイプ5の連結口50を全周にわたって均等に固定でき、より一層安定した状態で連結パイプ5を補強部材4に取り付けることができ、溶着部への応力集中をより一層確実に回避することができる。
【0075】
なお上記実施形態においては、機械的接合手段として、フック式、ピン留め式の接合手段を用いるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、機械的接合手段であればどのような手段で固定するようにしても良い。例えばねじ留め式、リベット留め式、ピンチ留め式、バンド留め式等の機械的接合手段を用いるようにしても良い。
【0076】
さらに本発明において、機械的接合手段の形成数は限定されるものではなく、1つ以上であればいくつでも良い。
【0077】
また上記実施形態においては、この発明の連結構造に採用される熱交換器を冷却装置(冷却器)として使用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明に採用される熱交換器は、加熱装置(加熱器)として使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明の熱交換器の連結構造は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等に採用される電動機駆動用バッテリー装置等の発熱体を冷却するための冷却装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
1:熱交換器
2:外装体
3:補強部材
30:出入口
34:係合段部(フック受部)
4:補強部材
40:出入口
44:ピン受凹部
5:連結パイプ(連結部材)
50:連結口
52:フック
55:圧入ピン