(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】芳香族ポリカーボネート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240319BHJP
C08G 64/06 20060101ALI20240319BHJP
C08K 3/014 20180101ALI20240319BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G64/06
C08K3/014
(21)【出願番号】P 2020555576
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2019043620
(87)【国際公開番号】W WO2020095981
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018210621
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】西野 陽平
(72)【発明者】
【氏名】小西 範和
(72)【発明者】
【氏名】矢山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】門田 敏樹
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/038500(WO,A1)
【文献】特開2017-178977(JP,A)
【文献】特開2017-179331(JP,A)
【文献】特開2016-141722(JP,A)
【文献】特開2016-155957(JP,A)
【文献】特開2012-214620(JP,A)
【文献】特開2017-052867(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125896(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/125903(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08G
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、紫外線吸収剤(B)を0.01~1.80質量部含有し、
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)と、下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)とを、モル比で、(X)/(Y)=10/90~40/60の割合で含み、式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するクレゾール性水酸基量が、60~160ppmであ
り、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のその他の樹脂を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、前記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と、前記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を含む請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)が、ジフェニルカーボネート(DPC)と2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(BPC)のモル比DPC/BPCを1.053~1.074とし、溶融エステル交換法で得られたポリカーボネート樹脂である請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基量が、100~250ppmである請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
JASOM346に準拠し、照射強度70W/m
2(300-400nm)、BPT温度89±3℃、相対湿度50±5%、内側が石英フィルタ、外側がソーダ石灰フィルタ、連続照射の条件でキセノン耐光性試験を500時間照射した際、ASTM E313に準拠し測定した2mm厚のプレートの耐光性試験前後のYIの差(ΔYI)が、2.5以下である請求項1乃至
4の何れか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
【請求項7】
表示装置用部材、表示装置用カバー、保護具、又は車載用部品である請求項
6に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関し、詳しくは、表面硬度、強度に優れ、さらには意匠性、耐光性にも優れる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、機械的物性、寸法安定性に優れた樹脂であり、例えば自動車材料、電気電子機器材料、住宅材料、その他の工業分野における部品製造用材料等に幅広く利用されており、なかでも近年、自動車内装部品や各種携帯端末機器における筐体や各種表示機器装置用部材への採用が盛んに進んでいる。一方で、芳香族ポリカーボネート樹脂は、傷が付きやすい性質があるため、上述のような分野においてはその改善が強く望まれている。
【0003】
これに対し、例えば特許文献1~3では、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン骨格を有する芳香族ポリカーボネート樹脂が表面硬度に優れていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-105931号公報
【文献】特開2011-105932号公報
【文献】特開2017-052867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン骨格を有する芳香族ポリカーボネート樹脂は、表面硬度に優れるものの、ビスフェノールA型ポリカーボネートに代表される一般的な芳香族ポリカーボネート樹脂と比較し、強度や耐光性に劣るという欠点を有していた。このため、例えば自動車内装部材や各種携帯端末の筐体や表示パネルに応用しようとした場合に安全面、製品強度や意匠性、耐光性に懸念があり、好適に用いることができなかった。本発明で、意匠性とは、樹脂成形体の初期色相を示す。
このため、ビスフェノールA型のポリカーボネートと、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン骨格を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を適度に配合することによって、硬度と強度のバランスを図っている公知例があるが、このような組成物は、上述のように十分な耐光性を満足することはできなかった。
【0006】
また、一般に耐光性を改良するために紫外線吸収剤を配合することが検討されているが、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン骨格を有する芳香族ポリカーボネート樹脂において紫外線吸収剤を配合しても、紫外線吸収剤だけでは改善効果が低く、大幅に改良しようと紫外線吸収剤の配合量を多くすると、色相の顕著な低下や、耐衝撃性の低下を招くといった課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、表面硬度、強度、意匠性、耐光性が同時に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン骨格と、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン骨格とを含む芳香族ポリカーボネート樹脂に、紫外線吸収剤を特定量含有させた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン骨格と、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン骨格とを特定の割合に制御し、さらには2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン由来のクレゾール性水酸基量に注目し、このクレゾール性水酸基量を特定の範囲にコントロールすることにより、表面硬度、強度に優れ、さらには意匠性、耐光性も著しく改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の要旨は、以下のポリカーボネート樹脂組成物に存する。
【0009】
[1]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)と、下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)とを、モル比で、(X)/(Y)=10/90~40/60の割合で含み、式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するクレゾール性水酸基量が、60~160ppmであることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【0010】
[2]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、紫外線吸収剤(B)を0.01~1.80質量部含有する上記[1]に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[3]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、前記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と、前記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)を含む上記[1]または[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[4]前記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基量が、100~250ppmである上記[1]乃至[3]の何れかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[5]JASOM346に準拠し、照射強度70W/m2(300-400nm)、BPT温度89±3℃、相対湿度 50±5%、内側が石英フィルタ、外側がソーダ石灰フィルタ、連続照射の条件でキセノン耐光性試験を500時間照射した際、ASTM E313に準拠し測定した2mm厚のプレートの耐光性試験前後のYIの差(ΔYI)が、2.5以下である上記[1]乃至[4]の何れかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[6]上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形体。
[7]表示装置用部材、表示装置用カバー、保護具、又は車載用部品である上記[6]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物によれば、高い表面硬度、強度、意匠性を有し、さらには耐光性もが大幅に改善された組成物を提供することができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、自動車内装部品や各種携帯端末機器における筐体や各種表示機器装置用部材へ応用した場合、操作時や清掃時にも傷が付きにくく、製品強度にも優れるため、高い商品価値を維持することが可能となる。また、耐光性にも優れるため屋外環境下で使用された場合、もしくは太陽光が当たる車内環境下においても耐光変色を引き起こすことが抑制されるため、長期にわたり商品価値を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明における製造方法の一例を示したフローシート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
【0014】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を含む。最初に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)について詳細に説明する。
【0015】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、少なくとも下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)と、下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)とをモル比で、(X)/(Y)=10/90~40/60の割合で含むことを特徴とする。このように下記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)と、上述の割合で含むことで、はじめて本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の表面硬度と強度、耐光性が同時に向上する。
【化3】
【化4】
【0016】
上述のカーボネート構造単位(X)と、カーボネート構造単位(Y)の割合(X)/(Y)において、(X)の割合が下限を下回る場合(カーボネート構造単位(Y)との合計に対し、10モル%未満の場合)は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の表面硬度が低下するため好ましくない。また、(X)の割合が上限を上回る場合(カーボネート構造単位(Y)との合計に対し、40モル%を上回る場合)は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の強度、耐光性のみならず耐熱性も低下するため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、カーボネート構造単位(X)と、カーボネート構造単位(Y)の割合(X)/(Y)の割合は、12/88~38/62であることがより好ましく、14/86~36/64であることがさらに好ましく、15/85~35/65であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる芳香族ポリカーボネート(A)は、上述の式(1)で表される上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)と、上記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)の他に、式(1)、式(2)以外の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する1種または2種以上のカーボネート構造単位(Z)を含んでいてもよい。このような芳香族ジヒドロキシ化合物は、特に制限はなく、種々の特性付与の為に、N(窒素)、S(硫黄)、P(リン)、Si(ケイ素)等のヘテロ原子やヘテロ結合が導入された芳香族ジヒドロキシ化合物であってもよい。このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0018】
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0019】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0020】
1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0021】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;等が挙げられる。
【0022】
これらのうち特に好ましいのは、色相、耐衝撃性、耐熱性の点からビス(ヒドロキシアリール)アルカン類である。
【0023】
上記式(1)、式(2)以外のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Z)の割合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない範囲で任意であるが、カーボネート構造単位(X)と、カーボネート構造単位(Y)を含む全カーボネート構造単位中、50モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることがさらに好ましく、20モル%以下であることが特に好ましく、10モル%以下であることが最も好ましい。
【0024】
本発明において芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中の、カーボネート構造単位(X)、カーボネート構造単位(Y)、及びカーボネート構造単位(Z)の割合は、NMR(核磁気共鳴分光法)やHPLC(高速液体クロマトグラフ)を用いて容易に分析可能である。好ましくは、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を可溶な溶媒を選択し、NMRにて分析することであるが、適切な溶媒が選択できない場合、他の樹脂、添加剤の影響によりNMRで分析が困難な場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物またはポリカーボネート樹脂(A)を水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリで加水分解後、得られたジヒドロキシ化合物をHPLCにて分析することも可能である。
【0025】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、上記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)、上記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)と、任意で式(1)、式(2)以外の1種または2種以上のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Z)とを含む共重合体(コポリマー)であってもよく、式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(X)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と、式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Y)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)、及び任意で式(1)、式(2)以外の1種または2種以上のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位(Z)を含む芳香族ポリカーボネート樹脂(a3)からなる組成物(いわゆるポリマーアロイ)であってもよい。
【0026】
なお、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)は、カーボネート構造単位(X)の他に、カーボネート構造単位(Y)、カーボネート構造単位(Z)を含んでいてもよいが、全カーボネート構造単位中、カーボネート構造単位(X)を50モル%以上含んでいることが好ましく、50モル%超含んでいることがより好ましく、70モル%以上含んでいることがさらに好ましく、90モル%以上含んでいることが特に好ましく、100モル%(いわゆるホモポリマー)であることが最も好ましい。
【0027】
また、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)は、カーボネート構造単位(Y)の他に、カーボネート構造単位(X)、カーボネート構造単位(Z)を含んでいてもよいが、全カーボネート構造単位中、カーボネート構造単位(Y)を50モル%以上含んでいることが好ましく、50モル%超含んでいることがより好ましく、70モル%以上含んでいることがさらに好ましく、90モル%以上含んでいることが特に好ましく、100モル%(いわゆるホモポリマー)であることが最も好ましい。
【0028】
さらに、芳香族ポリカーボネート樹脂(a3)は、カーボネート構造単位(Z)の他に、カーボネート構造単位(X)、カーボネート構造単位(Y)を含んでいてもよいが、全カーボネート構造単位中、カーボネート構造単位(Z)を40モル%以上含んでいることが好ましく、50モル%以上含んでいることがより好ましく、70モル%以上含んでいることがさらに好ましく、90モル%以上含んでいることが特に好ましく、100モル%(いわゆるホモポリマー)であることが最も好ましい。
なお、上記において、芳香族ポリカーボネート樹脂(a3)としては、上記した芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)あるいは上記した芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)に該当するものは除かれる。
【0029】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の表面硬度、及び流動性をより高めることが可能となるため、なかでも上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とからなることが好ましく、カーボネート構造単位(X)100モル%(いわゆるホモポリマー)の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と、カーボネート構造単位(Y)100モル%(いわゆるホモポリマー)の芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とからなることがさらに好ましい。
【0030】
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)などの芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、市販されている芳香族ポリカーボネート樹脂を購入してもよいし、上述の式(1)、(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物、及び/又は任意で選択されるその他のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物とを、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって製造してもよい。
カーボネート形成性化合物の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
【0032】
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(3)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類やジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【化5】
【0033】
式(3)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数1~30のアルキル基またはアリール基、アリールアルキル基を表す。以下、R
1及びR
2が、アルキル基、アリールアルキル基のときジアルキルカーボネートと称し、アリール基のときジアリールカーボネートと称すことがある。なかでもジヒドロキシ化合物との反応性の観点よりR
1及びR
2は、共にアリール基であることが好ましく、下記式(4)で表されるジアリールカーボネートでることがより好ましい。
【化6】
【0034】
式(4)中、R3及びR4は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基であり、p及びqはそれぞれ独立に0~5の整数を表す。
【0035】
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4-メチルフェニル)カーボネート、ビス(4-クロロフェニル)カーボネート、ビス(4-フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2-クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4-ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4-ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2-ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0037】
これらカーボネートエステル(前記の置換したジカルボン酸又はジカルボン酸エステルを含む。以下同じ。)は、通常、ジヒドロキシ化合物と重合させる際に、原料のジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いられる。すなわち、カーボネートエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、1.01~1.30倍量(モル比)、好ましくは1.02~1.20倍量(モル比)で用いられる。
【0038】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)及び芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)などの芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
以下、これらの方法のうち特に好適な重合法である、界面重合法、溶融エステル交換法について具体的に説明する。
【0039】
界面重合法
界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料のジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによって芳香族ポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
原料のジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、上述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法はホスゲン法と呼ぶこともある。
【0040】
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0041】
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10~12にコントロールするために、5~10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10~12、好ましくは10~11になる様にコントロールするために、原料のジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
【0043】
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’-ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’-ジメチルアニリン、N,N’-ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0044】
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。
【0045】
このような芳香族フェノールとしては、具体的には例えば、フェノール、o-n-ブチルフェノール、m-n-ブチルフェノール、p-n-ブチルフェノール、o-イソブチルフェノール、m-イソブチルフェノール、p-イソブチルフェノール、o-t-ブチルフェノール、m-t-ブチルフェノール、p-t-ブチルフェノール、o-n-ペンチルフェノール、m-n-ペンチルフェノール、p-n-ペンチルフェノール、o-n-ヘキシルフェノール、m-n-ヘキシルフェノール、p-n-ヘキシルフェノール、p-t-オクチルフェノール、o-シクロヘキシルフェノール、m-シクロヘキシルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、o-n-ノニルフェノール、m-ノニルフェノール、p-n-ノニルフェノール、o-クミルフェノール、m-クミルフェノール、p-クミルフェノール、o-ナフチルフェノール、m-ナフチルフェノール、p-ナフチルフェノール;2、5-ジ-t-ブチルフェノール;2、4-ジ-t-ブチルフェノール;3、5-ジ-t-ブチルフェノール;2、5-ジクミルフェノール;3、5-ジクミルフェノール;p-クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12~35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9-(4-ヒドロキシフェニル)-9-(4-メトキシフェニル)フルオレン;9-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-9-(4-メトキシ-3-メチルフェニル)フルオレン;4-(1-アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。
これらのなかでは、p-t-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール及びp-クミルフェノールが好ましく用いられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0046】
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料のジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。この分子量調整剤の使用量制御することにより芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
【0047】
溶融エステル交換法
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。
溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料のジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
原料のジヒドロキシ化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
【0048】
原料のジヒドロキシ化合物とカーボネートエステルとの比率は所望のポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、ジヒドロキシ化合物1モルに対して、カーボネートエステルを等モル量以上用いることが好ましく、中でも1.01モル以上用いることがより好ましい。なお、上限は通常1.30モル以下である。このような範囲にすることで、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量を好適な範囲に調整できる。
【0049】
溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に限定されず、従来から公知のものを使用できる。例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0050】
溶融エステル交換法において、反応温度は、特に限定されないが、通常100~320℃である。また、反応時の圧力は、特に限定されないが、通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
【0051】
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0052】
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体、リン含有賛成化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0053】
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、また、通常10当量以下、好ましくは8当量以下である。さらには、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1ppm以上であり、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下である。
【0054】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない範囲であれば任意であるが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、10,000以上35,000以下であることが好ましい。粘度平均分子量(Mv)を前記範囲下限以上とすることで耐衝撃性に優れるというメリットがあり、前記範囲以下とすることで成形性が良いというメリットがある。
このような観点より、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、11,000以上33,000以下であることがより好ましく、12,000以上32,000以下であることがさらに好ましく、13,000以上31,000以下であることが特に好ましく、14,000以上30,000以下であることが最も好ましい。
【0055】
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、前記範囲の粘度平均分子量(Mv)に制御してもよい。
【0056】
特に、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)とからなる場合、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の粘度平均分子量(Mv)は、芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の分子量が、10,000以上35,000以下であることが好ましく、11,000以上33,000以下であることがより好ましく、12,000以上32,000以下であることがさらに好ましく、13,000以上31,000以下であることが特に好ましく、14,000以上30,000以下であることが最も好ましい。このような範囲とすることで、成形性が良く、且つ機械的強度を損なわないというメリットがある。
また、芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)の分子量は、10,000以上35,000以下であることが好ましく、12,000以上33,000以下であることがより好ましく、13,000以上32,000以下であることがさらに好ましく、14,000以上31,000以下であることが特に好ましく、15,000以上30,000以下であることが最も好ましい。このような範囲とすることで、成形性が良く、且つ機械的強度を損なわないというメリットがある。
【0057】
なお、本発明において、芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)とは、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10
-4Mv
0.83、から算出される値を意味する。
また極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0058】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の特徴を損なわない範囲であれば任意であるが、好ましくは50~500質量ppm(以下、単にppmと記す。)である。末端水酸基量が、前記範囲の下限値以上であれば、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相、強度をより向上させることができる。また前記範囲の上限値以下であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐光性、熱安定性が向上するというメリットがある。
このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基量は、より好ましくは70ppm以上であり、さらに好ましくは80ppm以上であり、特に好ましくは100ppm以上である。また、より好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下、特に好ましくは250ppm以下である。
【0059】
なお、本発明のポリカーボネート樹脂(A)は末端水酸基量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、末端水酸基量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、前記範囲の末端水酸基量に制御してもよい。
【0060】
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基量とは、下記式(5)で表される末端水酸基の総量Mを表し、末端水酸基量の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。またその測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
【化7】
式(5)中、R
5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基であり、rはそれぞれ独立に0~2の整数を表す。
【0061】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のクレゾール性水酸基量
上述の本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基としては、前記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するフェノール性水酸基と前記式(1)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に由来するクレゾール性水酸基を必須に含む。
【0062】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のクレゾール性水酸基は、60~160ppmであることを特徴とする。クレゾール性水酸基量を、前記範囲とすることで、驚くべきことに本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐光性が顕著に向上し、さらには強度、色相、熱安定性、湿熱安定性にも優れるようになる。
このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)中のクレゾール性水酸基量は、61~150ppmであることが好ましく、65~140ppmであることがより好ましく、65~130ppmであることが更に好ましく、65~120ppmであることが特に好ましく、65~110ppmであることが最も好ましい。
【0063】
なお、本発明のポリカーボネート樹脂(A)はクレゾール性水酸基量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、クレゾール性水酸基量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、前記範囲のクレゾール性水酸基量に制御してもよい。
【0064】
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のクレゾール性水酸基量は、NMR分析によってクレゾール性水酸基量と、非クレゾール性水酸基量(フェノール性水酸基量)との割合を算出し、上記式(5)で表される末端水酸基の総量Mに、算出されたクレゾール性水酸基量の割合を乗じることにより求める。
【0065】
また本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(a1)、及びポリカーボネート樹脂(a2)における末端水酸基量は、公知の任意の方法によって上記範囲に調整することができる。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂をエステル交換反応によって重縮合して製造する場合は、カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を上記範囲に調整することができる。なお、この操作により、得られるポリカーボネート樹脂の分子量を調整することもできる。
カーボネートエステルとジヒドロキシ化合物との混合比率を調整して末端水酸基量を調整する場合、その混合比率は前記の通りである。
【0066】
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明のポリカーボネート樹脂を界面重合法にて製造する場合には、分子量調整剤(末端停止剤)の配合量を調整することにより、末端水酸基量を任意に調整することができる。
【0067】
紫外線吸収剤(B)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上述の芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と共に、好ましくは紫外線吸収剤(B)を含有する。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と紫外線吸収剤(B)とを組み合わせると、高い耐光性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる。但し、カーボネート構造単位(X)とカーボネート構造単位(Y)の割合及び、クレゾール性水酸基量を共に特定の範囲とした芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と紫外線吸収剤(B)とを組み合わせることではじめて特段高い耐光性を得ることが可能となることはいうまでもない。
【0068】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物、トリアジン化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0069】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0070】
このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、ADEKA社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、BASF社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0071】
トリアジン化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(6)で表される化合物が例示される。
【化8】
【0072】
上記式(6)中、R6は、炭素数1~30の炭化水素基を示す。炭素数1~30の炭化水素基としては、炭素数1~30のアルキル基、アリール基、アリールアルキル基等が挙げられ、これらは直鎖であっても分岐鎖であっても環状鎖であってもよい。また、骨格中に、エーテル残基(-O-)、エステル残基(-COO-)、カルボニル残基(-CO-)、アミド残基(-CONH-)、イミド残基(-CONRCO-)、チオスルフィド残基(-S-)等の残基を有していてもよく、またヒドロキシ基(-OH)、シアノ基(-CN)、ニトロ基(-NO2)、カルボキシ基(-COOH)等の置換基を有していてもよい。
上記炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、オクチルドデシル基等が挙げられる。このとき、エーテル残基(-O-)、エステル残基(-COO-)を有することが好ましく、また、ヒドロキシ基(-OH)で置換されていることも好ましい。このようにエーテル残基、エステル残基、ヒドロキシ基を有することで、本発明のトリアジン系紫外線吸収剤の耐熱性が向上する傾向があり、また芳香族ポリカーボネート樹脂への相溶性が向上し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を滞留熱安定性が向上する傾向にある。
【0073】
また、炭素数1~30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。また、炭素数1~30のアリールアルキル基としては、ベンジル基等が挙げられる。また、上記フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ベンジル基等の芳香環の一部は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0074】
上記式(6)中、R7、R8、R9、R10、R11、R12及びR13は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~30の炭化水素基からなる群より選ばれる少なくとも1種を示す
上記、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。このようにハロゲン原子を含有することで、本発明のヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤の耐熱性が向上する傾向にあるほか、紫外線吸収特性が主に、長波長側にシフトし、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性がより向上する傾向にある。
また、上記炭素数1~30の炭化水素基としては、R6における炭素数1~30の炭化水素基の説明と同様のものである。
【0075】
このようなトリアジン系紫外線吸収剤としては、ADEKA社製「LA-46」、BASF社製「チヌビン1577ED」、「チヌビン400」、「チヌビン405」、「チヌビン460」、「チヌビン477-DW」、「チヌビン479」等が例示できる。
【0076】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM-40」、BASF社製「ユビヌルMS-40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、ADEKA社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA-51」等が挙げられる。
【0077】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
【0078】
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN-35」、「ユビヌルN-539」等が挙げられる。
【0079】
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
【0080】
マロン酸エステル化合物としては、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「PR-25」、BASF社製「B-CAP」等が挙げられる。
【0081】
紫外線吸収剤(B)を用いる場合の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上であり、より好ましくは0.10質量部以上、さらに好ましくは0.15質量部以上、特に好ましくは0.20質量部以上である。また、1.80質量部以下、好ましくは1.50質量部以下、より好ましくは1.20質量部以下、さらに好ましくは1.00質量部以下、特に好ましくは0.80質量部以下である。
紫外線吸収剤(B)の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐光性の改良効果が不十分となりやすく、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、耐光性改良効果が頭打つばかりでなく、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす傾向を示す。なお、紫外線吸収剤(B)は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0082】
光安定剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐光性を向上させるために紫外線吸収剤(B)とは別に光安定剤を含有することも好ましい。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ヘキサノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-オクタノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアオイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、コハク酸-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、セバシン酸-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)、セバシン酸-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジン)、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]デカン-2,4-ジオン、N-メチル-3-ドデシル-1-(-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)、及びトリメシン酸-トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)が挙げられる。
なお、光安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0083】
熱安定剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、成形時等における分子量の低下や透明性の悪化を防止するために、熱安定剤を含有することも好ましい。
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、ヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。
リン系熱安定剤としては、例えば、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’-ビフェニレンジホスホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0084】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-ネオペンチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。
これらの中でも、ペンタエリスリト-ルテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つのヒンダードフェノール系熱安定剤は、BASF社より「イルガノックス1010」及び「イルガノックス1076」の名称で市販されている。
【0085】
離型剤
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、離型剤を含有することも好ましい。離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸及びアルコールからなる脂肪酸エステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物及びポリシロキサン系シリコーンオイル等が挙げられ、この中でも特に、脂肪族カルボン酸及びアルコールからなる脂肪酸エステルがより好ましい。
【0086】
脂肪酸エステルを構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族1価、2価若しくは3価カルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸とは、脂環式のカルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6~36の1価又は2価カルボン酸であり、炭素数6~36の脂肪族飽和1価カルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、モンタン酸、テトラリアコンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0087】
脂肪酸エステルを構成するアルコールとしては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール、又は多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。
【0088】
脂肪族カルボン酸及びアルコールからなる脂肪酸エステルの具体例としては、蜜ロウ(ミリスチルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアレート、ベヘン酸ベヘネート、ベヘン酸ステアレート、パルミチン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸ステアレート及びステアリン酸モノグリセリドから選ばれる少なくとも1種の離型剤を使用することがより好ましい。
【0089】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上述したもの以外にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のその他の樹脂、各種樹脂添加剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0090】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のその他の樹脂としては、例えば、脂肪族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂等が挙げられる。
なお、その他の樹脂は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0091】
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のその他の樹脂を含有する場合、その含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、20質量部以下とすることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、さらには5質量部以下、特には3質量部以下とすることが好ましい。
【0092】
樹脂添加剤としては、例えば、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、染料、顔料などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【0093】
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用できる。
具体例を挙げると、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に、必要に応じて配合される紫外線吸収剤(B)やその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。
また、例えば、各成分を予め混合せずに、または、一部の成分のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練して、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
【0094】
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造時に、重合終了後の溶融樹脂に直接添加剤を添加し、混練してもよい。このように添加する際には、重合終了後、溶融樹脂を押出機に直接導入し、添加剤を配合し、溶融混練しペレット化する方法が好ましい。
また、例えば、一部の成分を予め混合し押出機に供給して溶融混練することで得られる樹脂組成物をマスターバッチとし、このマスターバッチを再度残りの成分と混合し、溶融混練することによって本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造することもできる。
また、例えば、分散し難い成分を混合する際には、その分散し難い成分を予め水や有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液と混練するようにすることで、分散性を高めることもできる。
【0095】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、耐光性に優れており、そのため耐光性試験において、試験前後の黄変度の差ΔYIを小さくすることを可能とする。
すなわち、JASOM346に準拠し、照射強度70W/m2(300-400nm)、BPT温度89±3℃、相対湿度50±5%、内側が石英フィルタ、外側がソーダ石灰フィルタ、連続照射の条件で、キセノン耐光性試験を500時間照射した際に、ASTM E313に準拠し測定した2mm厚のプレートの黄変度YIと、試験前のYIとの差ΔYIが、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、さらに好ましくは2.5以下とすることが可能である。
【0096】
成形体
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、溶融加工して成形体を得ることができる。前記成形体は、なかでも射出成形または押出成形して得られる成形体であることが好ましい。
【0097】
また、本発明の成形体の形状、模様、色彩、寸法などに制限はなく、その成形体の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等、また特殊な形状のもの等、各種形状のものが挙げられる。また、例えば表面に凹凸を有していたり、三次元曲面を有する立体的な形状のものであってもよい。
【0098】
成形体の製造方法は、特に限定されず、ポリカーボネート樹脂について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法などが挙げられる。また、ホットランナー方式を使用した成形法を用いることもできる。
【0099】
成形体の例を挙げると、表示装置用部材または表示装置用カバー、保護具、車載用部品、単層または多層シート等に用いて好適である。
表示装置用部材としては、例えば、各種表示(ディスプレイ)装置(液晶パネル、タッチパネル)の構成部材等、また表示装置用カバーとしては、これら各種表示装置或いは、多機能携帯、スマートホン、PDA、タブレット型端末、パソコン等々の保護カバーや前面パネル等が、また例えば次世代電力計の表示部のカバー等も挙げられる。
保護具としては、例えば、ヘルメット等のフェイスカバー(フェイスガード)や透明シールド等が挙げられる。
また、車載用部品としては、例えば、グレージング、樹脂窓、ヘッドランプレンズ、カーナビ(カーオーディオ、カーAV等)の前面(外側)部材、筐体等、またコンソールボックス、センタークラスター、メータークラスターの前面部材等の自動車内装部品が挙げられる。
さらに、単層または多層の押出成形により単層または多層シートとして、硬度・耐衝撃性・透明性が求められる用途(液晶表示装置部材、透明シート、建材等)に好適である。
【実施例】
【0100】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0101】
[芳香族ポリカーボネート樹脂(a1)の製造]
図1に従って、本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法の一例である実施態様を説明する。
図1は、本発明における製造方法の一例を示したフローシート図である。図中、1はDPC(ジフェニルカーボネート)の貯槽、2は撹拌翼、3は芳香族ジヒドロキシ化合物ホッパー、4a、bは原料混合槽、5はDPC流量制御弁、6は芳香族ジヒドロキシ化合物の流量制御弁、7はポンプ、8は触媒流量制御弁、10はポンプ、11は触媒貯槽、12は副生物排出菅、13a、b、cは竪型重合槽、14は撹拌翼、15は横型重合槽、16は撹拌翼である。
【0102】
<芳香族ポリカーボネート樹脂(a1-1)~(a1-5)の製造>
窒素ガス雰囲気下140℃で調整されたDPC融液をDPC貯槽(1)から、また2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、BPCという)を、芳香族ジヒドロキシ化合物ホッパー(3)から、後述の表1に記載のモル比割合(DPC/BPC)で、窒素雰囲気下140℃で調整された原料混合槽(4a)にそれぞれ連続的に供給し、続いて原料混合液を原料混合槽(4b)に、さらにポンプ(7)を介して、第1竪型重合槽(13a)に連続的に供給した。一方、上記混合物の供給開始と同時に、触媒として2質量%炭酸セシウム水溶液を、触媒導入菅を介して、BPC1molに対し、3.5μmolとなる量連続供給した。
【0103】
第1竪型重合槽(13a)は、温度215℃、圧力11kPaになるように液面レベルを一定に保ち、想定より排出された重合液は、引き続き第2、第3の竪型重合槽及び第4の横型重合槽に逐次連続供給された。なお、第2重合槽(13b)は温度250℃、圧力3kPa、第3重合槽(13c)は温度268℃、圧力100Pa、第4重合槽(15)は温度280℃、圧力は、50~200Pa(目標分子量見合いで適宜制御)の反応条件で反応させた。反応中、副生したフェノールは、副生物排出菅(12)より除去した。
さらに、第4重合槽底部のポリマー排出口から抜き出された芳香族ポリカーボネート樹脂は、溶融状態のまま、3段ベント口を具備した二軸押出機に導入され、p-トルエンスルホンブチルを、触媒の理論中和量に対し、4倍モル量となるように添加し、脱揮した後、ペレット化した。
下記表1にDPC/BPCモル比と、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(a1-1)~(a1-5)の粘度平均分子量とクレゾール性水酸基量を示す。
【0104】
【0105】
芳香族ポリカーボネート樹脂(a2)及び紫外線吸収剤(B)として、以下の表2に記載のものを使用した。
【0106】
【0107】
[実施例1~8、比較例1~5]
上述した各成分を、以下の表3に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30α」)を用いて、シリンダー温度280℃で溶融混練し、ストランドカットによりポリカーボネート樹脂材料のペレットを得た。
【0108】
<耐光性評価>
上記で得られたペレットを100℃で6時間乾燥させた後、射出成形機(住友重機械工業社製SE50DUZ)を用いて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃で射出成形し、平板状試験片(60mm×60mm×2mm厚)を成形した。
平板状試験片を用い、キセノンウエザオ試験機(アトラスCi4000)を用い、JASOM346に準拠し、照射強度70W/m2(300-400nm)、BPT温度89±3℃、相対湿度50±5%、内側が石英フィルタ、外側がソーダ石灰フィルタ、連続照射の条件で、キセノン耐光性試験を500時間照射した際に、ASTM E313に準拠し測定した2mm厚のプレートの黄変度YIと、試験前の初期YIとの差ΔYIを求めた。
YI色相測定は、日本電色工業社製分光色差計SE6000を用い、透過法、C光源、2°視野に設定した。
【0109】
<シャルピー衝撃強度>
上記で得られたペレットを、熱風乾燥機を用いて100℃で6時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J55AD」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度70℃、成形サイクル45秒の条件で、ISO179-1、2に基づく3mm厚の耐衝撃性試験片を作製した。得られた試験片を用い、23℃の温度環境下において、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(単位:kJ/m2)を測定した。
【0110】
<鉛筆硬度>
上記で得られた平板状試験片(60mm×60mm×2mm厚)の表面硬度を、JIS K5600-5-4に準拠し、鉛筆硬度試験機(東洋精機製作所社製)を用いて、1000g荷重にて、求めた。
【0111】
<総合評価>
上記初期YI値、ΔYI値、シャルピー衝撃強度、及び、鉛筆硬度の結果に基づき、以下の通り評価した。
A:初期YI値が1.0以下で、ΔYI値が1.5以下で、かつ、シャルピー衝撃強度が3.0以上の全てを満たす。
B:上記Aおよび下記C以外である。
C:Aの要件のうち2つ以上満たさないもの、初期YI値が1.5以上であるもの、ΔYI値が2.5を超えるもの、又は、鉛筆硬度がB以下であるもの、のいずれかである。
【0112】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、表面硬度、強度に優れ、さらには意匠性、耐光性にも優れる樹脂材料であるので、表示装置用各種部材、保護具、車載用部品、単層または多層シート等に好適に使用でき、産業上の利用性は高い。