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特許7456390曲面スクリーン印刷装置、および、曲面スクリーン印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】曲面スクリーン印刷装置、および、曲面スクリーン印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/30 20060101AFI20240319BHJP
   B41F 15/20 20060101ALI20240319BHJP
   B41F 15/42 20060101ALI20240319BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B41F15/30
B41F15/20
B41F15/42
B41M1/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020571223
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004194
(87)【国際公開番号】W WO2020162469
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019020698
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】立山 優貴
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-114257(JP,A)
【文献】米国特許第4664029(US,A)
【文献】特開2005-88577(JP,A)
【文献】特開2000-309080(JP,A)
【文献】特開2002-234131(JP,A)
【文献】特開2018-1518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/00-15/46
B41M 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有する板状の基材に所定のパターンを印刷する曲面スクリーン印刷装置であって、
前記基材を保持する保持面を有する台座と、
スクリーン版と、
前記スクリーン版を介して前記台座に保持された前記基材にインクを塗布するよう構成されたスキージと、
前記台座における前記保持面の反対面側に位置する回転軸を中心にして前記台座を回転させるとともに、前記台座と前記スクリーン版と前記スキージとを前記回転軸の直交方向に相対移動させることで、前記基材の印刷を行うよう構成された印刷制御ユニットとを備え、
前記印刷制御ユニットは、
前記回転軸の水平な直交方向の一方側、または、前記回転軸に、前記台座を回転させる力を付与するよう構成された回転角度制御ユニットと、
前記回転軸の水平な直交方向の他方側に、前記台座を回転させる力を付与するよう構成された荷重制御ユニットとを備え、
前記回転角度制御ユニットは、互いに噛み合う構成要素間にバックラッシュが存在する回転力付与機構を備え、
前記荷重制御ユニットは、空圧式のシリンダまたは油圧式のシリンダまたはウェイトを備え、前記スキージの印圧により生じる前記回転軸周りのモーメントよりも大きいモーメントを、前記スキージが初期位置から印刷終了位置に移動する間は前記互いに噛み合う構成要素の接触状態が変化しないように、常に前記回転軸周りに負荷するよう構成されている、曲面スクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記回転力付与機構は、ねじ軸とナットとボールとの相対移動によって、前記反対面における前記一方側に力を付与するボールねじである、請求項に記載の曲面スクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記印刷制御ユニットは、前記回転軸の両端側を保持するよう構成された回転軸保持ユニットを備えている、請求項1又は2に記載の曲面スクリーン印刷装置。
【請求項4】
曲面を有する板状の基材に所定のパターンを印刷する曲面スクリーン印刷方法であって、
前記基材を保持する保持面を有する台座と、スクリーン版と、スキージとを用い、前記台座における前記保持面の反対面側に位置する回転軸を中心にして前記台座を回転させるとともに、前記台座と前記スクリーン版と前記スキージとを前記回転軸の直交方向に相対移動させることで、前記基材の印刷を行うに際し、
互いに噛み合う構成要素間にバックラッシュが存在する回転力付与機構で、前記回転軸の水平な直交方向の一方側、または、前記回転軸に、前記台座を回転させる力を付与するとともに、
前記回転軸の水平な直交方向の他方側に、空圧式のシリンダまたは油圧式のシリンダまたはウェイトを備えた荷重制御ユニットによって、前記スキージの印圧により生じる前記回転軸周りのモーメントよりも大きいモーメントを、前記スキージが初期位置から印刷終了位置に移動する間は前記互いに噛み合う構成要素の接触状態が変化しないように、常に前記回転軸周りに負荷しながら、前記台座を回転させる、曲面スクリーン印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面スクリーン印刷装置、および、曲面スクリーン印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、曲面を有する基材に印刷を施す、曲面スクリーン印刷装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の曲面スクリーン印刷装置は、基材を保持する台座とスクリーン版とスキージとを印刷方向に相対移動させるとともに、台座を印刷方向に直交する回転軸を中心にして回転させることで、基材の印刷を行う。
【0003】
特許文献1の曲面スクリーン印刷装置は、台座を水平方向に移動させつつ回転させる基材移動機構を備えている。
第1実施形態の基材移動機構は、水平駆動モータで駆動されるボールねじ機構と、ボールねじ機構の駆動で水平方向に移動する水平移動台とを備えている。水平移動台には、垂直駆動モータの駆動で垂直方向に移動する垂直移動台が設けられている。垂直移動台には、揺動駆動モータの駆動で印刷方向に直交する回転軸を中心にして回転する揺動台が設けられている。揺動台は、L字形に形成されている。揺動台の上部から突出する突出部には、台座が取り付けられている。
そして、印刷時には、水平駆動モータおよび垂直駆動モータの駆動で、台座を水平方向および垂直方向に移動させつつ、揺動駆動モータの駆動で回転させる。
【0004】
第2実施形態の基材移動機構は、アクチュエータの駆動で水平方向に移動する基板を備えている。基板には、垂直方向に延びる一対のリニアガイドが固定されている。一対のリニアガイドにそれぞれ嵌合する軸の下端には、駆動部材が固定されている。駆動部材の下部には、前後面に同一形状のカム溝が形成された台座ホルダが固定されている。カム溝は、基材の被印刷面とほぼ同じ形状に曲がっている。各カム溝には、上下駆動機構の駆動で昇降する可動基台に固定され、左右に水平配置された一対のカムフォロアが前後面から嵌合している。
駆動部材と台座ホルダとは、これらの間に交差して架け渡された2本のチェーンで連結されている。第1のチェーンは、駆動部材の一方の移動方向端部と、台座ホルダの他方の移動方向端部とを連結し、第2のチェーンは、駆動部材の他方の移動方向端部と、台座ホルダの一方の移動方向端部とを連結している。
台座ホルダには、前方に延びる一対のアームで台座が取り付けられている。
そして、印刷時には、アクチュエータの駆動に伴い駆動部材が移動すると、台座は、チェーンで引っ張られて水平方向に移動しつつ、カム溝の形状に沿って回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/086197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の第1実施形態の構成では、当該特許文献1には記載がないが、揺動駆動モータに直接台座を固定すると、台座を回転させるためのトルクが足りなくなるおそれがあるため、減速機を介して揺動駆動モータに台座が取り付けられていると考えられる。複数のギアで構成される減速機において、一のギアのギア歯と、他のギアのギア歯との噛み合い部分には、バックラッシュと呼ばれる隙間が設けられている。
【0007】
このような構成において、例えば、台座の回転軸の一端側から見て、基材を右方向に回転させる場合、基材における回転軸よりも右側の印刷を行っている状態では、スキージの印圧で基材を右方向に回転させる力が作用するため、台座に直接固定された従動ギアの従動ギア歯の回転方向前方側の面と、従動ギアを回転させる駆動ギアの駆動ギア歯の回転方向後方側の面とが接触する。その後、基材における回転軸よりも左側の印刷を行うと、スキージの印圧で基材を左方向に回転させる力が作用するため、従動ギア歯の回転方向前方側の面と駆動ギア歯の回転方向後方側の面とが離れて、今度は、従動ギア歯の回転方向後方側の面と駆動ギア歯の回転方向前方側の面とが接触する。
このように従動ギア歯と駆動ギア歯との接触面が変わるとき、これらのギア歯の噛み合い部分にはバックラッシュが存在するため、両者が接触しない期間が発生する。この両者が接触しない期間では、ギア歯の噛み合いで台座が回転しないため、設定速度と異なる速度で回転するおそれがある。その結果、印刷が台座の回転方向にずれてしまうおそれがある。
【0008】
特許文献1の第2実施形態の構成では、台座ホルダを駆動部材に接続されたチェーンで引っ張るため、長期間の使用によってチェーンが弛んでしまうと、台座の移動を開始するために駆動部材が移動しても、台座ホルダが移動しない期間が発生してしまうおそれがある。その結果、印刷が台座の回転方向にずれてしまうおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、印刷の台座の回転方向へのずれを抑制できる曲面スクリーン印刷装置、および、曲面スクリーン印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の曲面スクリーン印刷装置は、曲面を有する板状の基材に所定のパターンを印刷する曲面スクリーン印刷装置であって、前記基材を保持する保持面を有する台座と、スクリーン版と、前記スクリーン版を介して前記台座に保持された前記基材にインクを塗布するよう構成されたスキージと、前記台座における前記保持面の反対面側に位置する回転軸を中心にして前記台座を回転させるとともに、前記台座と前記スクリーン版と前記スキージとを前記回転軸の直交方向に相対移動させることで、前記基材の印刷を行うよう構成された印刷制御ユニットとを備え、前記印刷制御ユニットは、前記回転軸の水平な直交方向の一方側、または、前記回転軸に、前記台座を回転させる力を付与するよう構成された回転角度制御ユニットと、前記回転軸の水平な直交方向の他方側に、前記台座を回転させる力を付与するよう構成された荷重制御ユニットとを備え、前記回転角度制御ユニットは、互いに噛み合う構成要素間にバックラッシュが存在する回転力付与機構を備え、前記荷重制御ユニットは、前記スキージの印圧により生じる前記回転軸周りのモーメントよりも大きいモーメントを前記回転軸周りに負荷するよう構成されている。
【0011】
本態様によれば、台座を回転させながら基材の印刷を行うに際し、回転力付与機構で、台座における回転軸の直交方向の一方側または回転軸に、台座を回転させる力を付与するとともに、回転軸の直交方向の他方側に、スキージの印圧により生じる回転軸周りのモーメントよりも大きいモーメントを回転軸周りに負荷する。このような構成によって、回転力付与機構の互いに噛み合う構成要素の接触状態が、一定の状態のままで変化しない。また、回転力付与機構を互いに噛み合う複数の構成要素で構成しているため、チェーンのような弛みが生じない。その結果、台座が設定速度と同じ速度で回転し、印刷の台座の回転方向へのずれが抑制される。
【0012】
上記曲面スクリーン印刷装置において、前記回転力付与機構は、ねじ軸とナットとボールとの相対移動によって、前記反対面における前記一方側に力を付与するボールねじであることが好ましい。
この態様では、入手が容易なボールねじを用いるだけの簡単な方法で、印刷の台座の回転方向へのずれを抑制できる。歯車機構やラックピニオン機構に比べて、送りまたは回転精度をより精密に制御できる。
【0013】
上記曲面スクリーン印刷装置において、前記荷重制御ユニットは、空圧式のシリンダまたは油圧式のシリンダまたはウェイトを備えていることが好ましい。
この態様では、入手が容易な空圧式または油圧式のシリンダあるいはウェイトを用いるだけの簡単な方法で、印刷の台座の回転方向へのずれを抑制できる。
【0014】
上記曲面スクリーン印刷装置において、前記印刷制御ユニットは、前記回転軸の両端側を保持するよう構成された回転軸保持ユニットを備えていることが好ましい。
この態様では、印刷中に台座が傾くことを抑制でき、印刷精度が向上する。
【0015】
本発明の一態様の曲面スクリーン印刷方法は、曲面を有する板状の基材に所定のパターンを印刷する曲面スクリーン印刷方法であって、前記基材を保持する保持面を有する台座と、スクリーン版と、スキージとを用い、前記台座における前記保持面の反対面側に位置する回転軸を中心にして前記台座を回転させるとともに、前記台座と前記スクリーン版と前記スキージとを前記回転軸の直交方向に相対移動させることで、前記基材の印刷を行うに際し、互いに噛み合う構成要素間にバックラッシュが存在する回転力付与機構で、前記回転軸の水平な直交方向の一方側、または、前記回転軸に、前記台座を回転させる力を付与するとともに、前記回転軸の水平な直交方向の他方側に、前記スキージの印圧により生じる前記回転軸周りのモーメントよりも大きいモーメントを前記回転軸周りに負荷しながら、前記台座を回転させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る曲面スクリーン印刷装置の模式図である。
図2図2は、前記曲面スクリーン印刷装置を構成する台座移動機構の側面図である。
図3図3は、前記台座移動機構の正面図である。
図4図4は、前記台座移動機構を構成するボールねじの一部を示す断面図である。
図5A図5Aは、前記曲面スクリーン印刷装置を用いた曲面スクリーン印刷方法の動作説明図である。
図5B図5Bは、前記曲面スクリーン印刷装置を用いた曲面スクリーン印刷方法の動作説明図である。
図5C図5Cは、前記曲面スクリーン印刷装置を用いた曲面スクリーン印刷方法の動作説明図である。
図6図6は、前記曲面スクリーン印刷方法における前記台座移動機構の動作状態を示す側面図である。
図7図7は、前記曲面スクリーン印刷方法における前記ボールねじの動作状態を示す側面図である。
図8図8は、本発明の第2実施形態に係る曲面スクリーン印刷装置を構成する台座移動機構の側面図である。
図9図9は、前記台座移動機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。なお、各構成の配置位置を説明するときには、図1のXYZ軸を基準にして方向を定義し、+X方向を右、-X方向を左、+Y方向を前、-Y方向を後ろ、+Z方向を上、-Z方向を下と表現する。
【0018】
〔曲面スクリーン印刷装置の構成〕
図1に示すように、曲面スクリーン印刷装置1は、曲面を有する板状の基材Gに所定のパターンを印刷する。
基材Gとしては、ガラスや、セラミクス、樹脂、木材、金属などの板が挙げられる。ガラスとしては、無色透明の非晶質ガラスの他、結晶化ガラスや色ガラスなどが挙げられる。基材Gの平面形状は、特に限定されず、多角形、円形、楕円形、その他のいかなる形状であってもよい。
曲面とは、曲率半径が5000mm以下の面を意味する。基材Gに設けられる曲面は、一方の主面側が他方の主面側に突出する凸面のみで構成されている。曲面は、凸面形状であれば曲率が異なる部分が存在してもよい。また、平坦部分と屈曲部分が両方存在していてもよいし、ねじれを伴った屈曲部が存在してもよい。
本実施形態の基材Gは、平面視で長方形に形成されており、その長辺方向の中心を中心にして一方向に曲がっているが、この構成に限定されず、他の形状であってもよい。
曲面スクリーン印刷装置1は、台座2と、スクリーン版3と、スキージ4と、印刷制御ユニット5とを備えている。印刷制御ユニット5は、台座2を移動させる台座移動機構6と、スクリーン版3を移動させるスクリーン版移動機構8と、スキージ4を移動させるスキージ移動機構7とを備えている。
【0019】
台座2には、基材Gが載置される。図2および図3に示すように、台座2の表面21は、基材Gの平面形状よりも大きく形成されている。表面21の一部は、基材Gの目標曲げ形状と同じ形状を有する保持面21Aを構成している。本実施形態では、保持面21Aは、凸状に形成されている。
台座2の反対面としての裏面22は、平面状に形成されている。裏面22には、軸固定部材23を介して回転軸24が固定されている。回転軸24は、裏面22の左右方向中央において、当該裏面22に対して平行かつ前後に延びるように固定されている。
台座2には、保持面21Aに基材Gを吸着する図示しない吸着ユニットが設けられている。
【0020】
台座移動機構6は、ベース61と、回転軸保持ユニット62と、回転角度制御ユニット63と、荷重制御ユニット64と、ベース移動機構65とを備えている。
【0021】
回転軸保持ユニット62は、回転軸24を中心にして台座2を回転可能に保持する。回転軸保持ユニット62は、ベース61の上面611から上方に延びる一対の支柱621を備えている。この一対の支柱621の上端には、回転軸24の端部をそれぞれ支持する軸受622が設けられている。軸受622は、曲面スクリーン印刷装置1を前から見たときに、回転軸24の中心が台座2の中心を通る仮想中心線Cと重なるように、回転軸24を支持する。なお、軸受622は、回転軸24の中心が仮想中心線Cと重ならないように回転軸24を支持してもよい。
【0022】
回転角度制御ユニット63は、台座2の裏面22における回転軸24よりも右側の部分に、台座2を回転させる力を付与する。回転角度制御ユニット63は、回転力付与機構としてのボールねじ631と、ボールねじ駆動ユニット632と、第1の垂直ガイド633と、第1の運動方向変換ユニット634とを備えている。
【0023】
ボールねじ631は、ベース61の上面611における回転軸保持ユニット62よりも右側において、ボールねじ駆動ユニット632で支持されている。ボールねじ631は、図4に示すように、ねじ軸631Aと、ナット631Bと、複数のボール631Cとを備えている。
ねじ軸631Aの外周面には、螺旋状の軸溝631Dが形成されている。
ナット631Bの内周面の一部には、螺旋状のナット溝631Eが形成されている。ナット溝631Eと軸溝631Dとで形成される空間は、ボール631Cが転動する転動経路631Fを構成している。ねじ軸631Aを回転させるトルクをなるべく小さくするために、転動経路631Fを構成する軸溝631Dおよびナット溝631Eとボール631Cとの間には、隙間が設けられている。つまり、ボールねじ631には、互いに噛み合う構成要素間に、バックラッシュが存在している。ナット631Bには、転動経路631Fの上端と下端とを連結して、ボール631Cを循環させる循環経路631Gが設けられている。
【0024】
ボールねじ駆動ユニット632は、ベース61の上面に固定されたモータ632Aと、モータ632Aのモータ軸632Cの上端とねじ軸631Aの下端とを接続するカップリング632Bとを備えている。
【0025】
第1の垂直ガイド633は、ベース61の上面611における回転軸保持ユニット62よりも右側かつボールねじ631よりも左側に設けられている。第1の垂直ガイド633は、支持部材633Aと、上方に延びるように支持部材633Aの上端に固定された第1の垂直レール633Bと、第1の垂直レール633Bに沿って昇降する第1の昇降スライダ633Cとを備えている。
第1の昇降スライダ633Cの側面には、当該第1の昇降スライダ633Cの移動方向と、ナット631Bの軸方向とが平行になるように、ナット631Bの側面が固定されている。
【0026】
第1の運動方向変換ユニット634は、第1の水平ガイド634Aおよび第1の変換軸受634Bを備えている。
第1の水平ガイド634Aは、左右に延びるように台座2の裏面22に固定された第1の水平レール634Cと、第1の水平レール634Cに沿って左右に移動する第1の水平スライダ634Dとを備えている。第1の水平レール634Cは、曲面スクリーン印刷装置1を右から見たときに、その幅方向中心が仮想中心線Cと重なるように固定されている。第1の水平スライダ634Dの下端側には、前後に延びる回転軸634Eが固定されている。
第1の変換軸受634Bは、ナット631Bの上面に固定されている。第1の変換軸受634Bは、第1の水平スライダ634Dの下端側に固定された回転軸634Eの両端をそれぞれ支持する。
【0027】
荷重制御ユニット64は、台座2の裏面22における回転軸24よりも左側の部分に、台座2を回転させる力を付与する。荷重制御ユニット64は、エアシリンダ641と、第2の垂直ガイド642と、昇降部材643と、第2の運動方向変換ユニット644と、エアシリンダ641を駆動するシリンダ駆動ユニット645とを備えている。
【0028】
エアシリンダ641は、ベース61の上面611における回転軸保持ユニット62よりも左側において、出力軸641Aが上下に移動するように固定されている。
【0029】
第2の垂直ガイド642は、第1の垂直ガイド633の支持部材633A、第1の垂直レール633Bおよび第1の昇降スライダ633Cとそれぞれ同じ構成を有する、支持部材642A、第2の垂直レール642Bおよび第2の昇降スライダ642Cを備えている。
【0030】
昇降部材643は、第2の昇降スライダ642Cに固定され、上方に延びる基部643Aと、基部643Aの上端からエアシリンダ641の上方に延びる延出部643Bとを備えている。延出部643Bは、板状に形成されている。延出部643Bの下面は、エアシリンダ641の出力軸641A上端に連結部材643Cを介して固定されている。
【0031】
第2の運動方向変換ユニット644は、第1の運動方向変換ユニット634の第1の水平ガイド634Aおよび第1の変換軸受634Bとそれぞれ同じ構成を有する、第2の水平ガイド644Aと、第2の変換軸受644Bとを備えている。
第2の水平ガイド644Aの第2の水平レール644Cは、左右に延びるように台座2の裏面22に固定されている。第2の水平レール644Cは、曲面スクリーン印刷装置1を左から見たときに、その幅方向中心が仮想中心線Cと重なるように固定されている。第2の水平レール644Cは、前から見たときに、仮想中心線Cに対して第1の水平レール634Cと線対称となる位置に固定されている。第2の水平スライダ644Dの下端側には、前後に延びる回転軸644Eが固定されている。
第2の変換軸受644Bは、昇降部材643の延出部643Bの上面に固定されている。第2の変換軸受644Bは、回転軸644Eの両端をそれぞれ支持する。
【0032】
ベース移動機構65は、ベース61を下方から支持する一対のベース支持部材651と、一対のベース支持部材651を上下左右に移動させる図示しない支持部材移動ユニットとを備えている。一対のベース支持部材651は、曲面スクリーン印刷装置1を左から見たときに仮想中心線Cに対して線対称となる位置に設けられている。
【0033】
〔曲面スクリーン印刷装置を用いた印刷方法〕
次に、上記曲面スクリーン印刷装置1を用いた印刷方法について説明する。なお、台座2、スクリーン版3およびスキージ4の移動方向や動作順序などは、以下の内容に限定されず、基材Gに印刷できるいかなる移動方向や動作順序などを適用してもよい。
【0034】
まず、作業者または図示しない搬送ユニットが基材Gを台座2に載置する。次に、図示しない位置決めユニットが基材Gを台座2上の所定の保持位置に位置決めした後、図示しない吸着ユニットが保持面21Aに基材Gを吸着する。
そして台座移動機構6のベース移動機構65は、図5Aに示すように、台座2を右方に移動させてスクリーン版3の直下に位置させる。
この台座2の移動の際、回転角度制御ユニット63のモータ632Aを駆動して、ナット631Bが上昇するようにねじ軸631Aを回転させるとともに、荷重制御ユニット64のシリンダ駆動ユニット645がエアシリンダ641を駆動して、出力軸641Aを下降させる。
【0035】
図6に示すように、ナット631Bが上昇するとき、ナット631Bに固定された第1の昇降スライダ633Cが第1の垂直レール633Bにガイドされるため、ナット631Bは、直進性を保った状態で鉛直方向に上昇する。ナット631Bとともに第1の変換軸受634Bが上昇するとき、第1の水平スライダ634Dは、第1の変換軸受634Bで支持された回転軸634Eを中心にして、左回りに回転しつつ、第1の水平レール634Cにガイドされて左に移動する。
出力軸641Aとともに昇降部材643が下降するとき、昇降部材643に固定された第2の昇降スライダ642Cが第2の垂直レール642Bにガイドされるため、昇降部材643は、直進性を保った状態で鉛直方向に下降する。昇降部材643とともに第2の変換軸受644Bが下降するとき、第2の水平スライダ644Dは、第2の変換軸受644Bで支持された回転軸644Eを中心にして、左回りに回転しつつ、第2の水平レール644Cにガイドされて左に移動する。
以上のように回転角度制御ユニット63および荷重制御ユニット64の各構成を駆動して、基材Gの右端が最もスクリーン版3に近づくように、台座2を左回りに回転させる。
【0036】
次に、台座移動機構6もしくはスクリーン版移動機構8の駆動によって、スクリーン版3と基材Gとを接近させた後、スキージ移動機構7がスキージ4を下降させて、スクリーン版3の下面を基材Gの上面に押し当てる。この後、スクリーン版3を固定したまま、図5B図5Cに示すように、スキージ移動機構7がスキージ4を左に移動させるとともに、このスキージ4の移動に同期させて、台座移動機構6が台座2を左および上下に移動させつつ、右回りに回転させる。このスキージ4および台座2の動きによって、スキージ4がインクをスクリーン版3から押し出し、基材Gの印刷範囲全体に塗布する。
その後、印刷制御ユニット5は、台座2、スクリーン版3およびスキージ4を図1に示す初期位置に復帰させる。
【0037】
図5A図5Cに示す印刷動作において、回転角度制御ユニット63のナット631Bを下降させるとともに、荷重制御ユニット64の出力軸641Aを上昇させて、台座2を右回りに回転させる。台座2を右回りに回転させるとき、荷重制御ユニット64は、常にスキージ4の印圧FSよりも大きい押圧力FTで、台座2の中心よりも左側を押圧する。
【0038】
図5Aの状態から図5Bの状態に移行する間、印圧FSおよび押圧力FTの両方が、台座2の右側を下げるように作用する。この力で、ナット631Bは下方に押される。上述のように、転動経路631Fを構成する軸溝631Dおよびナット溝631Eとボール631Cとの間には、隙間が設けられている。このため、図7に示すように、ボール631Cの中心よりも上側がナット溝631Eに接触するが軸溝631Dに接触せず、下側が軸溝631Dに接触するがナット溝631Eに接触しない状態になる。
【0039】
図5Bの状態では、印圧FSが台座2の仮想中心線Cと重なる位置を押圧するため、押圧力FTのみが台座2の右側を下げるように作用する。その結果、ボール631Cと、軸溝631Dおよびナット溝631Eとの接触状態は、図7に示す状態のままとなる。
【0040】
図5Bの状態から図5Cの状態に移行する間、印圧FSが台座2の左側を下げるように作用する一方で、押圧力FTが、台座2の右側を下げるように作用する。しかし、押圧力FTが印圧FSよりも大きいため、台座2には右側を下げる力が作用する。その結果、ボール631Cと、軸溝631Dおよびナット溝631Eとの接触状態は、図7に示す状態のままとなる。
【0041】
以上のように、印刷動作中、荷重制御ユニット64が常にスキージの印圧FSよりも大きい押圧力FTで台座2を押圧し、スキージの印圧FSにより生じる回転軸24周りのモーメントよりも大きいモーメントを回転軸24周りに負荷することで、ボール631Cと、軸溝631Dおよびナット溝631Eとの接触状態は、図7に示す状態のままで変化しない。その結果、台座2が設定速度と同じ速度で回転し、印刷の台座2の回転方向へのずれが抑制される。
【0042】
また、回転軸保持ユニット62で回転軸24の両端部を保持しているため、台座2が傾くことを抑制でき、印刷精度が向上する。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0044】
〔曲面スクリーン印刷装置の構成〕
図8および図9に示すように、第1実施形態の曲面スクリーン印刷装置1と第2実施形態の曲面スクリーン印刷装置1Aとの相違点は、台座移動機構6の回転角度制御ユニット63の代わりに、回転角度制御ユニット66Aを設けたことである。
回転角度制御ユニット66Aは、回転軸24に台座2を回転させる力を付与する。このような回転角度制御ユニット66Aとしては、回転軸24の例えば前端に固定された歯車661Aと、当該歯車661Aに噛み合う噛合部材662Aと、当該噛合部材662Aを駆動する噛合部材駆動ユニット663Aとを備えた構造が例示できる。歯車661Aと噛合部材662Aとは、回転力付与機構を構成している。噛合部材としては、歯車やラックが例示できる。噛合部材は、1個で構成されていてもよいし、複数で構成されていてもよい。噛合部材が複数で構成されている場合、同じ種類の部材で構成されていてもよいし、異なる種類の部材で構成されていてもよい。
歯車661Aと噛合部材662Aとの間には、バックラッシュと呼ばれる隙間が存在している。噛合部材662Aが複数の部材で構成されている場合には、当該複数の部材の間にも、隙間が存在している。
【0045】
〔曲面スクリーン印刷装置を用いた印刷方法〕
次に、上記曲面スクリーン印刷装置1Aを用いた印刷方法について説明する。なお、第1実施形態と同様の動作については、説明を省略あるいは簡略にする。
【0046】
まず、図5Aに示すように、台座2の左端が右端よりも下がっている状態において、スクリーン版3と基材Gとを接近させた後、スキージ4を下降させて、スクリーン版3の下面を基材Gの上面に押し当てる。この後、スクリーン版3を固定したまま、図5B図5Cに示すように、スキージ4を左に移動させるとともに、台座2を左および上下に移動させつつ、右回りに回転させ、インクを基材Gの印刷範囲全体に塗布する。
【0047】
図5A図5Cに示す印刷動作において、回転角度制御ユニット66Aの噛合部材駆動ユニット663Aを駆動して、歯車661Aを右回りに回転させる。このとき、荷重制御ユニット64は、常にスキージ4の印圧FSよりも大きい押圧力FTで、台座2の中心よりも左側を押圧する。
【0048】
図5Aの状態から図5Bの状態に移行する間、印圧FSおよび押圧力FTの両方が、台座2の右側を下げるように作用する。この力で、歯車661Aは右回りに付勢される。歯車661Aと噛合部材662Aとの間には、隙間が設けられている。このため、歯車661Aの歯の回転方向前方側の面と噛合部材662Aとが接触するが、歯車661Aの歯の回転方向後方側の面と噛合部材662Aとが接触しない状態になる。
【0049】
図5Bの状態では、押圧力FTのみが台座2の右側を下げるように作用する。その結果、歯車661Aの歯と噛合部材662Aとの接触状態は、図5Aの状態から図5Bの状態に移行する間と同じ状態となる。
【0050】
図5Bの状態から図5Cの状態に移行する間、押圧力FTが印圧FSよりも大きいため、台座2には右側を下げる力が作用する。その結果、歯車661Aの歯と噛合部材662Aとの接触状態は、図5Aの状態から図5Bの状態に移行する間と同じ状態となる。
【0051】
以上のように、印刷動作中、荷重制御ユニット64がスキージの印圧FSにより生じる回転軸24周りのモーメントよりも大きいモーメントを回転軸24周りに負荷することで、歯車661Aの歯と噛合部材662Aとの接触状態は、同じ状態のままで変化しない。その結果、台座2が設定速度と同じ速度で回転し、印刷の台座2の回転方向へのずれが抑制される。なお、噛合部材662Aが複数の部材で構成されている場合には、印刷動作中、当該複数の部材の接触状態も、同じ状態のままで変化しない。
【0052】
[変形例]
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更などが可能である。
【0053】
例えば、回転角度制御ユニット63のボールねじ631の代わりに、互いに噛み合う構成要素間にバックラッシュが存在する回転力付与機構を用いてもよく、回転力付与機構としては、複数の歯車が噛み合う歯車機構、ラックピニオン機構、ローラーピニオン機構などが例示できる。
荷重制御ユニット64のエアシリンダ641の代わりに、印刷動作中、スキージの印圧FSよりも大きい押圧力FTで台座2を押圧できる構成を適用してもよく、このような構成としては、油圧シリンダ、ばね、ウエイトなどが例示できる。
荷重制御ユニット64の出力軸641Aを上昇させるように台座2を回転させたが、出力軸641Aを下降させるように台座2を回転させてもよい。この場合でも、荷重制御ユニット64が、常にスキージの印圧FSにより生じる回転軸周りのモーメントよりも大きいモーメントを回転軸24の周りに負荷することで、ボール631Cと、軸溝631Dおよびナット溝631Eとの接触状態の変化を抑制できる。
回転軸24を一対の支柱621に固定して、台座2に回転軸24を回転可能に保持する軸受を設けてもよい。
回転角度制御ユニット63および荷重制御ユニット64が、それぞれ前後あるいや左右に並んで複数ずつ設けられていてもよいし、一方が複数設けられて、他方が1個だけ設けられてもよい。
第1,第2の垂直ガイド633,642のうち、少なくとも一方を設けなくてもよい。
上記実施形態では、印刷動作中、荷重制御ユニットが常にスキージの印圧Fよりも大きい押圧力FTで台座を押圧する。しかしながら、荷重制御ユニットは、少なくとも図5Bの状態から図5Cの状態に移行する間、スキージの印圧Fよりも大きい押圧力FTで台座を押圧すればよい。言い換えると、少なくともスキージの印圧FSが台座の回転方向に対して反対方向の回転モーメントを与える間、荷重制御ユニットはスキージの印圧Fよりも大きい押圧力FTで台座を押圧すればよい。
【0054】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2019年2月7日出願の日本特許出願2019-020698に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0055】
1,1A…曲面スクリーン印刷装置、2…台座、21A…保持面、22…裏面(反対面)、24…回転軸、3…スクリーン版、4…スキージ、5…印刷制御ユニット、62…回転軸保持ユニット、63,66A…回転角度制御ユニット、631…ボールねじ(回転力付与機構)、631A…ねじ軸、631B…ナット、64…荷重制御ユニット、641…エアシリンダ、G…基材。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9