(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】銅表面の加工装置
(51)【国際特許分類】
C25D 5/34 20060101AFI20240319BHJP
C23C 22/63 20060101ALI20240319BHJP
C23C 22/83 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C25D5/34
C23C22/63
C23C22/83
(21)【出願番号】P 2019089118
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-01-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】小鍛冶 快允
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 牧子
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-071348(JP,A)
【文献】特開平05-247666(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133164(WO,A1)
【文献】特公昭40-015327(JP,B1)
【文献】特表2013-534054(JP,A)
【文献】特開昭61-094756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00-7/12
C23C 22/00-22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅で覆われた表面を有する物体に対する、前記表面の加工装置であって、
前記表面を酸化
し、SERAで測定した酸化物層の厚さを平均400nm以下にするための第1の槽と、
酸化された前記表面に電解めっき処理(銅を用いた電解めっき処理を除く)をするための第2の槽と、
を備える加工装置
(ただし、銅を用いた電解めっき処理をするための槽を備える加工装置を除く)。
【請求項2】
前記第2の槽が、アノードと、電源と、を備える、請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
前記表面を酸化する前にアルカリ水溶液を用いて前記表面にアルカリ処理を行うための第3の槽を備える、請求項1または2に記載の加工装置。
【請求項4】
前記表面を酸化した後で、電解めっき処理をする前に、酸化された前記表面を還元剤で還元するための第4の槽および/または酸化された前記表面を溶解剤で溶解するための第5の槽を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の加工装置。
【請求項5】
前記物体が、銅箔、銅粒子、銅粉、銅線、銅板、銅製リードフレームまたは銅めっきされた物体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅表面の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板に使用される銅箔は、樹脂との密着性が要求される。この密着性を向上させるため、エッチングなどで銅箔の表面を粗面化処理し、物理的接着力を上げる方法が用いられてきた。しかし、プリント配線板の高密度化や高周波帯域での伝送損失の観点から、銅箔表面の平坦化が要求されるようになってきた。それらの相反する要求を満たすため、酸化工程と還元工程を行うなどの銅表面処理方法が開発されている(特許文献1参照)。それによると、銅箔をプリコンディショニングし、酸化剤を含有する薬液に浸漬することで銅箔表面を酸化させて酸化銅の凹凸を形成した後、還元剤を含有する薬液に浸漬し、酸化銅を還元することで表面の凹凸を調整して表面の粗さを整える。さらに、酸化・還元を利用した銅箔の処理における密着性の改善方法として、酸化工程において表面活性分子を添加する方法(特許文献2参照)や、還元工程の後にアミノチアゾール系化合物等を用いて銅箔の表面に保護皮膜を形成する方法(特許文献3参照)が開発されている。また、絶縁基板上の銅導体パターンの表面を粗化し、酸化銅層を形成した表面上に、化学めっきによって離散的に分布する金属粒子を有するめっき膜を形成する方法(特許文献4参照)が開発されている。
【0003】
一般に金属の酸化物は酸化されていない金属と比べると電気抵抗が大きい。例えば、純銅の比抵抗値が1.7×10-8(Ωm)なのに対して、酸化銅は1~10(Ωm)、亜酸化銅は1×106~1×107(Ωm)であり、酸化銅、亜酸化銅ともに純銅に比べて通電性が劣る。そのため、銅箔表面を粗化するために酸化処理を用いた場合、そのめっき方法は、電解めっきではなく、化学めっきが用いられていた(特許文献4参照)。一方、銅箔に電解めっきで銅粒子を付着させることによって銅箔表面を粗面化した場合には、銅箔表面に酸化物が存在しないため、再度電解めっきすることにより、銅箔の粗化処置面に他の金属をめっきすることができる(特許文献5及び6)。
【0004】
めっき皮膜はその使用や環境に耐え、実用上支障がないレベルの密着性を有することが求められている。その手法として金属表面の酸化物層の除去することで金属結合を強め、且つ表面粗化することで応力を分散させ密着性を確保することが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2014/126193公開公報
【文献】特表2013-534054号公報
【文献】特開平8-97559号公報
【文献】特開2000-151096号公報
【文献】特許5764700号公報
【文献】特許4948579号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】森河務、中出卓男、横井昌幸著「めっき被膜の密着性とその改善方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な銅表面の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
通常、金属表面に酸化物層が存在する場合、通電性が劣ることや金属箔とめっき金属層の密着性が得られにくいなどの理由から、直接電解めっきを行う事はなく、酸処理等で酸化物を取り除いてから行う。なぜなら、一般的に金属とめっき金属層の密着性は、金属結合によって密着性を確保することが知られており、金属の界面に酸化物層が存在すると、金属とめっき金属の金属結合を阻害し密着性が得られにくくなるからである。また、金属が平滑であると金属とめっき金属の界面に応力が集中するように伝搬し、界面剥離が起こりやすい。
一方、凹凸のある界面においては、平滑な表面とは異なり、応力を伝達する明瞭な面は存在しない。エネルギーの伝搬にあたって、その一部がめっき金属あるいは金属を変形するように働くことが考えられ、それにエネルギーが消費され密着力は高くなる。
本発明者らは鋭意研究の結果、本開示の加工装置により銅表面に形成する酸化物層を平均400nm以下にすることにより、その酸化物層表面に電解めっきで金属を被膜することに成功し、それによって、通電性の劣りや、金属結合の阻害の影響を最小限に抑え、且つ微細凹凸形状を有することでアンカー効果によって金属とめっき金属の密着力を高めることが可能となった。従来、銅表面に対して、酸化処理や還元処理、または電解めっき処理を行う技術及び装置は既に存在するが、酸化処理を行った後に電解めっき処理を行う処理技術は存在せず、またその加工装置も存在しない。こうして、本発明者らは、新規な銅表面の加工装置の発明の完成に至った。
本発明の一実施態様は、銅で覆われた表面を有する物体に対する、前記表面の加工装置であって、前記表面を酸化するための第1の槽と、酸化された前記表面に電解めっき処理をするための第2の槽と、を備える。前記第2の槽が、アノードと、電源と、を備えてもよい。前記表面を酸化する前にアルカリ水溶液を用いて前記表面にアルカリ処理を行うための第3の槽を備えてもよい。前記表面を酸化した後で、電解めっき処理をする前に、酸化された前記表面を還元剤で還元するための第4の槽および/または酸化された前記表面を溶解剤で溶解するための第5の槽を備えてもよい。前記物体が、銅箔、銅粒子、銅粉または銅めっきされた物体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における、表面を酸化するための第1の槽と、酸化された表面に電解めっき処理をするための第2の槽を表す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の加工装置全体の模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態において、各槽間に設けた搬送用ロールの模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態において、搬送用ロールに設けたスクイズロールの模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態において、搬送用ロールに設けたガイドロールの模式図である。
【
図6】
図6は、実施例及び比較例における、酸化物層の厚さとピール強度の関係を示す図である。
【
図7】
図7は、実施例及び比較例における、酸化物層の厚さと耐熱劣化率の関係を示す図である。
【
図8】
図8は、実施例及び比較例における、酸化物層の厚さと耐熱変色ΔE
*abの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。なお、本発明の目
的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0011】
==銅表面を加工するための装置の構成==
本発明の一実施形態は、銅で覆われた表面を有する物体に対する、その表面の加工装置(100)であって、少なくとも、表面を酸化するための第1の槽(4)と、酸化された表面に電解めっき処理をするための第2の槽(7)と、を備える。第1の槽(4)の前に、アルカリ水溶液を用いて銅表面にアルカリ処理を行うための第3の槽(1)を設けてもよい。さらに、第3の槽(1)に続いて、酸による洗浄処理を行うための第6の槽(2)および弱いアルカリ処理を行うための第7の槽(3)を設けてもよい。そして、第1の槽(4)が続き、その後、第2の槽(7)までの間に、酸化された銅表面を還元剤で還元するための第8の槽(5)および/または酸化された銅表面を溶解剤で溶解するための第9の槽(6)を設けてもよい。各槽の間および/または全処理の最初と最後には、1つ以上の水洗槽を設けてもよい。さらに、各槽には、加熱部およびタイマーを備えているのが好ましく、それらによって、各槽における処理の温度や時間が設定できる。以下、水洗槽以外の全ての槽を1つずつ備え、ロール・ツー・ロール搬送システムを用いた場合の装置全体の模式図である
図2を参照しながら、銅表面の加工における各槽の役割を説明する。なお、この装置構成は一例であって、当業者が本開示から理解できる構成は、全て本発明の技術的範囲に含まれるものとする。例えば、
図2では、各種類の槽を1つ設けたが、それぞれ複数個設けても構わない。
【0012】
また、ロール・ツー・ロール搬送システムなどのように銅部材を連続して処理をする場合、電解めっきのために銅部材への通電はロールから行うが、その通電箇所は電解めっき処理をするための第2の槽(7)の直前直後に限定されず、その他の槽のロールから通電しても良い。
【0013】
第3の槽(1)では、アルカリ水溶液を用いて銅表面に対するアルカリ処理が行われる。そのため、第3の槽(1)は、用いられるアルカリに耐性のある材料で作製されている。このアルカリ処理は脱脂を目的として行われる。
【0014】
第6の槽(2)では、自然酸化被膜を除去して処理ムラを軽減するため、銅表面に対して酸による洗浄処理が行われる。そのため、第6の槽(2)は、用いられる酸に耐性のある材料で作製されている。
【0015】
第7の槽(3)では、処理ムラを軽減し、洗浄処理に用いた酸の酸化剤への混入を防ぐため、弱いアルカリ溶液を用いて、銅表面に対してアルカリ処理が行われる。そのため、第3の槽(1)は、用いられるアルカリに耐性のある材料で作製されている。
【0016】
第1の槽(4)では、酸化剤を含有したアルカリ溶液を用いて銅表面を酸化し、銅表面に酸化物を形成する酸化処理が行われる。そのため、第1の槽(4)は、用いられる酸化剤及びアルカリに耐性のある材料で作製されている。第1の槽(4)は銅部材の一部表面のみが酸化処理される仕組みを有してもよい。たとえば、溶液面に対して水平に銅部材を搬送し、非処理面が液に触れないようにしてもよい。あるいは、第1の槽(4)内に酸化剤を含有したアルカリ溶液を含むことが可能な保液部材(たとえばスポンジ)を配置し、銅部材が、溶液に直接浸潤することなく、銅部材の一部表面のみ保液部材に接触し、酸化処理されるようにしてもよい。
【0017】
第8の槽(5)では、還元剤を含有したアルカリ溶液を用い、酸化された銅表面に対して還元処理が行われる。これは、銅箔に形成された酸化銅を還元し、凹凸の数や長さを調整するためである。そのため、第8の槽(5)は、用いられる還元剤及びアルカリに耐性のある材料で作製されている。
【0018】
第9の槽(6)では、酸化した銅表面を溶解剤で溶解する溶解処理が行われる。そのため、第9の槽(6)は、用いられる溶解剤に耐性のある材料で作製されている。溶解処理の目的は、酸化された銅表面の凸部を調整することである。
【0019】
第2の槽(7)では、銅表面に対し、銅以外の金属で電解めっきが行われる。第2の槽(7)は、電気分解のためのアノードと電源を備える。アノードの種類は特に限定されず、pB板、貴金属酸化皮膜Ti等の不溶性アノードでもよいが、それ自体が溶解し、銅箔などに電着する溶解性アノードでもよい。
【0020】
水洗槽の水は、前後の槽と同じか、近い温度にまで加温してもよく、それによって熱膨張差によるシワを防止できる。
【0021】
第2の槽以外の槽で用いる溶液は、槽内に貯めて銅表面を浸漬してもよく、槽に設けられたシャワー装置によって銅表面に噴霧してもよい。溶液を槽内に貯める場合、槽には液循環装置を設けることが好ましい。それによって、溶液による処理ムラを減らすことができる。
【0022】
図2では、銅箔などの銅表面を加工する場合を想定し、銅箔の槽間の搬送は、ロール・ツー・ロール搬送システムを利用している。
図3にロール(11)の拡大図を示す。この場合の搬送条件は特に限定されないが、例えば、銅箔のライン速度を50~3000m/hrとし、銅箔のテンションを1~130kgf/mとしてもよい。このシステムにおい
て、
図4に示すようなスクイズロール(12)を設けてもよい。これによって、銅箔から液体を搾り取ることができ、次の槽への液体の持ち込みが減少する。また、
図5に示すようなガイドロール(13)を設けてもよい。これによって、縦しわの発生や銅箔の破断を防止することができる。
【0023】
処理する銅表面を有する物体の槽間の搬送は、ロール・ツー・ロール搬送システムに限定されず、手動で行ってもよく、ベルトコンベアなどのコンベアで行ってもよい。
全工程を終えた銅表面を乾燥させるための乾燥装置を設けてもよい。乾燥温度は特に限定されないが、室温~約230℃で銅表面を乾燥してもよい。
【0024】
==銅表面の加工方法==
上述した加工装置を用いて、銅表面を加工する方法を述べる。ここで、加工する必要のある部分だけ銅表面を加工するためには、その部分だけを各液体に浸すなどによって、その部分だけを処理すればよい。また、銅箔などの片面だけを電解めっき処理するためには、公知の方法を用いればよい(特開2010-236037;特開2004-232063)。
【0025】
まず、第3の槽(1)において、アルカリ水溶液を用いて銅表面に対してアルカリ処理を行う。アルカリ処理の方法は特に限定されないが、好ましくは30~50g/L、より
好ましくは40g/Lのアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液で、30~50
℃、0.5~2分間程度処理すればよい。この後、銅表面を水洗することが好ましい。
【0026】
次に、第6の槽(2)において、アルカリ処理した銅表面に対して酸による洗浄処理を
行ってもよい。たとえば、銅表面を液温20~50℃、5~20重量%の硫酸に1~5分間浸漬すればよい。この後、銅表面を水洗することが好ましい。
【0027】
次に、第7の槽(3)において、銅表面に対して弱いアルカリ処理を行ってもよい。このアルカリ処理の方法は特に限定されないが、好ましくは0.1~10g/L、より好ま
しくは1~2g/Lのアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液で、30~50℃
、0.5~2分間程度、銅表面を処理すればよい。この後、銅表面を水洗することが好ましい。
また、銅表面を酸化する前に、前処理としてエッチングなどの物理的に銅表面を粗面化してもよい。
【0028】
その後、第1の槽(4)において、酸化剤を用いて、一部又は全部の銅表面を酸化し、銅表面に酸化物を形成する酸化処理を行う。酸化剤は特に限定されず、例えば、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム等の水溶液を用いることができる。酸化剤には、各種添加剤(たとえば、リン酸三ナトリウム十二水和物のようなリン酸塩)や表面活性分子を添加してもよい。表面活性分子としては、ポルフィリン、ポルフィリン大員環、拡張ポルフィリン、環縮小ポルフィリン、直鎖ポルフィリンポリマー、ポルフィリンサンドイッチ配位錯体、ポルフィリン配列、シラン、テトラオルガノ‐シラン、アミノエチル‐アミノプロピルートリメトキシシラン、(3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(1‐[3‐(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア)((l-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]urea))、(3‐アミノプロピル)トリエトキシシラン、((3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)、(3‐クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3‐(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2‐メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン‐トリメトキシシラン、アミン、糖などを例示できる。また、酸化剤にはアルコール、ケトン、カルボン酸などの溶媒を併用することができる。酸化反応条件は特に限定されないが、酸化剤の液温は40~95℃であることが好ましく、40~90℃であることがより好ましい。反応時間は0.5~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
【0029】
この酸化処理によって、平均400nm以下にする。好ましくは平均200nm以下にし、より好ましくは平均160nm以下にする。さらに酸化物層の厚さは、好ましくは平均20nm以上にし、より好ましくは平均30nm以上にし、さらに好ましくは平均40nm以上にする。なお、酸化物層の厚さが400nm以下である領域の割合は特に限定されないが、50%以上が400nm以下であることが好ましく、70%以上が400nm以下であることがより好ましく、90%以上が400nm以下であることがさらに好ましく、95%以上が400nm以下であることがさらに好ましく、ほぼ100%が400nm以下であることがさらに好ましい。
酸化物層の厚さの割合は、例えば、10×10cmの面積中の10測定点における連続電気化学還元法(SERA)により算出することができる。
【0030】
酸化銅の算術平均粗さ(Ra)は0.02μm以上が好ましく、0.04μm以上がより好ましく、また、0.20μm以下であることが好ましく、0.060μm以下であることがより好ましい。
酸化銅の最大高さ粗さ(Rz)は0.2μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましく、また、1.0μm以下であることが好ましく、0.50μm以下であることがより好ましい。
ここで、最大高さ粗さ(Rz)とは基準長さlにおいて、輪郭曲線(y=Z(x))の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値の和を表す。
算術平均粗さ(Ra)とは基準長さlにおいて、以下の式で表される輪郭曲線(y=Z(x))におけるZ(x)(すなわち山の高さと谷の深さ)の絶対値の平均を表す。
【0031】
[数1]
表面粗さRa、RzはJIS B 0601:2001(国際基準ISO4287-1997準拠)に定められた方法により算出できる。
【0032】
次に、第8の槽(5)において、還元剤を用い、酸化された銅表面に対して還元処理を行ってもよい。還元剤としては、DMAB(ジメチルアミンボラン)、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等を用いることができ、還元剤、アルカリ性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、及び溶媒(例えば、純水や緩衝液)を含む溶液を用いて、周知の方法で還元処理できる。
【0033】
次に、第9の槽(6)において、酸化した銅表面を溶解剤で溶解する溶解処理を行う。溶解剤は特に限定されないが、キレート剤、生分解性キレート剤などが例示でき、具体的には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DHEG(ジエタノールグリシン)、GLDA(L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム)、EDDS(エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸)、HIDS(3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸ナトリウム)、MGDA(メチルグリシン2酢酸3ナトリウム)、ASDA(アスパラギン酸ジ酢酸4Na)、HIDA(N-2-hydroxyethyliminodiacetic acid disodium salt)、グルコン酸ナトリウム、エチドロン酸(ヒドロキシエタンジホスホン酸)などが例示できる。本工程で用いる溶解剤にはアルコール、ケトン、カルボン酸などの溶媒を併用することができる。溶解剤のpHは特に限定されないが、酸性では溶解量が大きいため、処理のコントロールが難しいこと、処理ムラが生じやすいこと、最適なCu/O比からなる凸部が形成されないことなどからアルカリ性であることが好ましく、pH9.0~14.0であることがより好ましく、pH9.0~10.5であることがさらに好ましく、pH9.8~10.2であることがさらに好ましい。第9の槽(6)において、酸化銅の溶解率が35~99%、好ましくは77~99%かつCuOの厚さが4~150nm、好ましくは8~50nmになるまで、銅表面を溶解することが好ましい。
【0034】
その後、第2の槽(7)において、銅表面に対し、銅以外の金属で電解めっき処理をする。電解めっき処理方法は、公知の技術を使うことができるが、例えば、銅以外の金属として、Sn、Ag、Zn、Al、Ti、Bi、Cr、Fe、Co、Ni、Pd、Au、Pt、またはそれらの合金を用いることができる。特に、銅で覆われた表面を有する物体が銅箔の場合、耐熱性を有するためには銅よりも耐熱性の高い金属、例えばNi、Pd、AuおよびPtあるいはその合金が好ましい。なお、銅箔などの場合、めっきされるのは、片面でも両面でも構わない。
【0035】
電解めっきで形成される金属層の垂直方向の平均の厚さは特に限定されないが、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。そして、100nm以下であることが好ましく、70nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。
あるいは、電解めっきで形成される金属層の金属量を単位面積あたりの金属の重量として表した場合、15μg/cm2以上であることが好ましく、18μg/cm2であることがより好ましく、20μg/cm2以上であることがさらに好ましい。また、100μg/cm2以下であることが好ましく、80μg/cm2以下であることがより好ましく
、50μg/cm2以下であることがさらに好ましい。
金属層の垂直方向の平均の厚さは、金属層を形成する金属を、酸性溶液で溶解し、ICP分析によって金属量を測定し、その測定量を物体の面積で除して算出できる。あるいは、物体そのものを溶解し、金属層を形成する金属の量のみを検出測定することにより、算出できる。
【0036】
電解めっきは、酸化物層の酸化物を一部還元するのにも電荷が必要であるため、例えばニッケルめっきを銅箔に施す場合、その厚さを好ましい範囲に収めるためには電解めっき処理する物体の面積あたり、15C/dm2以上~90C/dm2以下の電荷を与えるこ
とが好ましい。
また、電流密度は5A/dm2以下が好ましい。電流密度が高すぎると、凸部にめっき
が集中するなど、均一めっきが困難である。なお、酸化物層の酸化物を一部還元するまでと、めっきを被覆中の電流を変えてもよい。また、被覆する金属により所定の厚さになるよう適宜調整する。
ニッケルめっきを及びニッケル合金めっきは、純ニッケル、Ni-Cu合金、Ni-Cr合金、Ni-Co合金 、Ni-Zn合金、Ni-Mn合金、Ni-Pb合金、Ni-
P合金等が挙げられる。
めっきイオンの供給剤として、例えば、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酸化亜鉛、塩化亜鉛、ジアンミンジクロロパラジウム、硫酸鉄、塩化鉄、無水クロム酸、塩化クロム、硫酸クロムナトリウム、硫酸銅、ピロリン酸銅、硫酸コバルト、硫酸マンガン、次亜リン酸ナトリウム、などが用いることができる。
pH緩衝剤や光沢剤などを含むその他添加剤として、例えば、ほう酸、酢酸ニッケル、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、ギ酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、塩化アンモニウム、シアン化ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、チオシアン酸カリウム、硫酸、塩酸、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、チオシアンナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、臭酸カリウム、ピロリン酸カリウム、エチレンジアミン、硫酸ニッケルアンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、ケイフッ酸、ケイフッ化ナトリウム、硫酸ストロンチウム、クレゾールスルホン酸、β-ナフトール、サッカリン、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸、ナフタレン(ジ、トリ)、スルホン酸ナトリウム、スルホンアミド、スルフィン酸など1-4ブチンジオール、クマリン、ラウリル硫酸ナトリウムが使用される。
ニッケルめっきにおいて、その浴組成は、例えば、硫酸ニッケル(100g/L以上~350g/L以下)、スルファミンニッケル(100g/L以上~600g/L以下)、塩化ニッケル(0g/L以上~300g/L以下)及びこれらの混合物を含むものが好ましいが、添加剤としてクエン酸ナトリウム(0g/L以上~100g/L以下)やホウ酸(0g/L以上~60g/L以下)が含まれていてもよい。
【0037】
銅以外の金属層における金属の割合は特に限定されないが、深さ6nmにおける全金属量に対するCuの割合が80重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。また、酸素を含まない深さにおける全金属量に対するCuの割合が重量90%以上であることが好ましく、重量95%以上であることがより好ましく、99%重量%以上であることがさらに好ましい。また、Cuの原子組成の割合が40%である深さにおけるCu/O比は、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。所定の深さにおける全金属量に対するCuの割合は、例えば、イオンスパッタリングとX線光電子分光法(XPS)を用いて測定することができる。
【0038】
金属層は、粒子のない一様な層であることが好ましい。ここで、一様とは、95%以上の面で、好ましくは98%以上の面で、より好ましくは99%以上の面で、その層の厚さ
が、層の平均の厚さの5倍を超えないか、好ましくは3倍を超えないか、より好ましくは2倍を超えないものをいうこととする。粒子のない一様な金属層を形成することで、熱処理後の密着性を高めることができる。
なお、これらの工程の後にシランカップリング剤などを用いたカップリング処理やベンゾトリアゾール類などを用いた防錆処理を行ってもよい。
【0039】
これら一連の工程によって酸化物の使用目的に好適な酸化物の層が得られるように、予めパイロット実験を行い、温度、時間などの条件を設定するのが好ましい。
【0040】
==物体とその表面形状==
加工すべき銅表面を有する物体は、銅からなる物体でもよく、銅以外の物からなる物体の表面に、銅の層を設けたものでもよく、銅めっきを施したものでもよいが、この物体の形状は特に限定されないが、例えば、箔状でも、粒子状でも、粉状でもよく、銅を主成分とした電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔、銅粒子、銅粒、銅線、銅板、銅製リードフレームであってもよい。
【0041】
この銅表面を上述した加工装置で加工することにより、少なくとも一部の金属層の表面に凸部が形成される。
この凸部の高さの平均が、10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましく、また1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。この凸部の高さは、例えば、集束イオンビーム(FIB)によって作成された複合銅箔の断面を観察した走査型電子顕微鏡(SEM)像において、凸部を挟んで隣り合う凹部の極小点を結んだ線分の中点と、凹部の間にある凸部の極大点との距離とすることができる。
【0042】
物体の表面に、高さ50nm以上の凸部が3.8μmあたり、平均15個以上であることが好ましく、30個以上であることがより好ましく、50個以上であることがさらに好ましい。また、100個以下であることが好ましく、80個以下であることがより好ましく、60個以下であることがさらに好ましい。凸部の数は、例えば、集束イオンビーム(FIB)によって作成された複合銅箔の断面を観察した走査型電子顕微鏡(SEM)像において、高さが50nm以上のものの3.8μmあたりの数を計測することによって数えることができる。
【0043】
金属層の算術平均粗さ(Ra)は0.02μm以上が好ましく、0.04μm以上がより好ましく、また、0.20μm以下であることが好ましく、0.060μm以下であることがより好ましい。
金属層の最大高さ粗さ(Rz)は0.2μm以上が好ましく、0.4μm以上がより好ましく、また、1.4μm以下であることが好ましく、0.50μm以下であることがより好ましい。
【0044】
また、酸化処理後のRaと金属めっき処理後のRaの比(酸化処理後のRa/金属めっき処理後のRa)は0.7以上~1.3以下が好ましく、酸化処理後のRzと金属めっき処理後のRzの比(酸化処理後のRz/金属めっき処理後のRz)は0.8以上~1.2以下が好ましい。この比の値が1に近いほど、電解めっきで形成された金属層の厚さの均一性を示している。
【0045】
==粗面化処理された銅表面を有する物体の利用方法==
本開示の加工装置を用いて粗面化処理された銅表面を有する物体は、プリント配線板に使用される銅箔、基板に配線される銅線、LIB負極集電体用の銅箔などに用いることが
できる。
例えば、プリント配線板に使用される銅箔の表面を本開示の加工装置を用いて粗面化処理し、樹脂と層状に接着させることによって積層板を作製し、プリント配線板を製造するのに用いることができる。この場合の樹脂の種類は特に限定されないが、ポリフェニレンエーテル、エポキシ、PPO、PBO、PTFE、LCP、またはTPPIであることが好ましい。
また、例えばLIB負極集電体用に使用される銅箔の表面を本開示の加工装置を用いて粗化することで、銅箔と負極材料の密着性が向上し、容量劣化の小さい良好なリチウムイオン電池を得ることができる。リチウムイオン電池用の負極集電体は公知の方法に従って製造することができる。例えば、カーボン系活物質を含有する負極材料を調製し、溶剤もしくは水に分散させて活物質スラリーとする。この活物質スラリーを銅箔に塗布した後、溶剤や水を蒸発させるため乾燥させる。その後、プレスし、再度乾燥した後に所望の形になるよう負極集電体を成形する。なお、負極材料には、カーボン系活物質よりも理論容量の大きいシリコンやシリコン化合物、ゲルマニウム、スズ、鉛などを含んでもよい。また、電解質として有機溶媒にリチウム塩を溶解させた有機電解液だけでなく、ポリエチレンオキシドやポリフッ化ビニリデンなどからなるポリマーを用いたものであってもよい。本開示の加工装置を用いて表面を加工した銅箔は、リチウムイオン電池だけでなく、リチウムイオンポリマー電池にも適用できる。
【実施例】
【0046】
<1.粗面化処理された銅表面を有する物体の製造>
実施例1~9及び比較例1~4は、DR-WS(古河電工株式会社製、厚さ:18μm)の銅箔を用いた。なお、実施例及び比較例について、各々同じ条件で複数の試験片を作製した。
【0047】
(1)前処理
[アルカリ脱脂処理]
銅箔を、液温50℃、40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬した後、水洗を行った。
[酸洗浄処理]
アルカリ脱脂処理を行った銅箔を、液温25℃、10重量%の硫酸水溶液に2分間浸漬した後、水洗を行った。
[プレディップ処理]
酸洗浄処理を行った銅箔を、液温40℃、水酸化ナトリウム(NaOH)1.2g/Lのプレディップ用薬液に1分間浸漬した。
【0048】
(2)酸化処理
アルカリ処理を行った銅箔を、表1に記載の条件に基づき、酸化処理用水溶液を用いて酸化処理を行った。これらの処理後、銅箔を水洗した。
評価方法は<2.酸化処理後の試料の評価>で後述する。
【0049】
(3)電解めっき処理
酸化処理を行った銅箔に対し、表1に記載の条件に基づき、電解めっき処理を行った。比較例2及び3は、3分間電解めっきを行ってもニッケルは析出しなかった。
【0050】
(4)カップリング処理
電解めっき処理を行った銅箔に対し、表1に記載の条件に基づき、カップリング処理を行った。
【0051】
<2.酸化処理後の試料の評価>
(1)酸化銅の厚さの測定
銅箔表面の酸化銅の厚さを、QC-100(ECI製)を用い、以下の電解液を用いて連続電気
化学還元法(SERA)法により測定を行った。
電解液(pH=8.4)
ほう酸 6.18g/L;四ほう酸ナトリウム 9.55g/L
具体的には、ガスケット径:0.32cmを用いて電流密度:90μA/cm2にて上
記電解液を用いたとき、電位が-0.85V以上から-0.6Vまでを酸化銅(CuO)のピークと判断した。
【0052】
(2)Ra及びRzの算出
酸化処理後の銅箔を、共焦点走査電子顕微鏡 OPTELICS H1200(レーザーテック株式会社製)を用いて銅箔の表面形状を測定し、JIS B 0601:2001に定められた方法によりRa及びRzを算出した。測定条件として、スキャン幅は100μm、スキャンタイプはエリアとし、Light sourceはBlue、カットオフ値は1/5とした。オブジェクトレンズはx100、コンタクトレンズはx14、デジタルズームはx1、Zピッチは10nmの設定とし、3箇所のデータを取得し、それらの平均値を各実施例及び比較例のRa、Rzとした。実施例6及び比較例1~3は算出できなかったため、表にはN.D.と記載した。
【0053】
<3.電解めっき及びカップリング処理後の試料の評価>
(1)ニッケル量の算出
ニッケルの垂直方向の平均の厚さの測定方法としては、例えば、12%硝酸に銅部材を溶解させ、得た液をICP発光分析装置5100 SVDV ICP-OES(アジレント・テクノロジー社製)を用いて金属成分の濃度を測定し、金属の密度、金属層の表面積を考慮することで層状としての金属層の厚さを算出した。
【0054】
(2)Ra及びRzの算出
電解めっき及びカップリング処理後の銅箔を、共焦点走査電子顕微鏡 OPTELICS H1200(レーザーテック株式会社製)を用いて銅箔の表面形状を測定し、JIS
B 0601:2001に定められた方法によりRa及びRzを算出した。測定条件として、スキャン幅は100μm、スキャンタイプはエリアとし、Light sourceはBlue、カットオフ値は1/5とした。オブジェクトレンズはx100、コンタクトレンズはx14、デジタルズームはx1、Zピッチは10nmの設定とし、3箇所のデータを取得し、Ra、Rzは3箇所の平均値とした。
【0055】
(3)積層体の熱処理前後のピール強度の測定
電解めっき及びカップリング処理後の銅箔について、積層体を作製し熱処理前後のピール強度を測定した。また、ピール強度測定時に剥離面を目視で確認し、めっき層の剥離の有無を確認した。まず、各銅箔に対し、PPEを樹脂として含むMEGTRON6(パナソニック社製)を真空中でプレス圧2.9MPa、温度210℃、プレス時間120分の条件で加熱圧着して積層し、各々2つの測定試料を得た。各々1つの測定試料に対し、熱に対する耐性を調べるため、耐熱処理(177℃10日)を行った。その後、各々熱処理を行った試料と行っていない試料に対して90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)を行い、ピール強度(kgf/cm)を求めた。耐熱劣化率は測定された耐熱試験前後のピール強度の差を耐熱試験前のピール強度で除した割合として算出された。
MEGTRON6をプリプレグとして用いたが、MEGTRON4など、その他市販プリプレグにおいても銅箔起因の劣化はほとんどなく、同様な熱処理前後の密着性が得られる。
【0056】
(4)銅箔の熱処理前後の色変化の算出
電解めっき及びカップリング処理後の銅箔の耐熱性は色変化でも評価した。具体的には225℃のオーブンで30分熱処理を行い、前後の色変化をΔE*abにて評価した。熱処理前の銅箔の色差(L*、a*、b*)を測定後、225℃のオーブンに30分投入し、熱処理後の銅箔の色差を測定し、以下の式に従い、ΔE*abを算出した。
[数2]
ΔE*ab = [(ΔL*)2 + (Δa*)2 + (Δb*)2 ]1/2
【0057】
【0058】
このように、酸化銅の厚さが502nm以上の場合、電解めっきをすることができない(比較例2,比較例3)。また、電解めっきが可能な酸化銅の厚さであっても、酸化銅の厚さが400nmより厚い場合、めっき層と金属部材の密着性が得られずに剥離が発生する(比較例1)。それに対して、酸化銅の厚さが400nm以下である実施例1~9では、めっき層と金属部材の密着性が得られており、且つ、樹脂との密着性並びに耐熱性が優れている。
また、電流密度が5A/dm2より大きい場合、耐熱性が低い(比較例4)のに対して電流密度が5A/dm2以下である実施例1~9では樹脂との密着性並びに耐熱性が優れている。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によって、新規な銅表面の加工装置を提供することができるようになった。