(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】帽子用インナー
(51)【国際特許分類】
A42B 1/08 20060101AFI20240319BHJP
A42C 1/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A42B1/08 B
A42C1/00 B
(21)【出願番号】P 2020104667
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500125593
【氏名又は名称】株式会社特殊衣料
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 真裕子
(72)【発明者】
【氏名】村上 信吉
(72)【発明者】
【氏名】倉田 功
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3187008(JP,U)
【文献】特開2019-167655(JP,A)
【文献】特開2007-138319(JP,A)
【文献】特開昭63-062715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/08
A42C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽子の内部に着脱自在に装着される帽子用インナーであって、
繊維強化樹脂材によって形成され、帽子側に配置される椀形状の外殻部材と、
弾性変形可能なシート状の発泡樹脂材によって形成され、前記外殻部材の内側を覆って着用者側に配置される共に、周縁端部が前記外殻部材の下縁から外側に露出する大きさを有する内側部材と、
前記発泡樹脂材によって形成され、前記外殻部材と前記内側部材との間に挟み込まれると共に、前記外殻部材及び前記内側部材よりも小さい中間部材と、
を備えることを特徴とする帽子用インナー。
【請求項2】
請求項1に記載された帽子用インナーにおいて、
前記外殻部材は、重量が30gから100gで、開口率が20%から60%の網状の繊維強化樹脂材によって形成されている
ことを特徴とする帽子用インナー。
【請求項3】
請求項2に記載された帽子用インナーにおいて、
前記内側部材は、前記発泡樹脂材を貫通する複数の第1貫通孔を有し、
前記中間部材は、前記発泡樹脂材を貫通すると共に、前記第1貫通孔に重複する複数の第2貫通孔を有している
ことを特徴とする帽子用インナー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された帽子用インナーにおいて、
前記外殻部材の頂点は、前記内側部材の頂点よりも着用者の後頭部側にオフセットしている
ことを特徴とする帽子用インナー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載された帽子用インナーにおいて、
前記内側部材は、周縁端部から延びる複数の切込みを有し、
前記中間部材は、前記外殻部材の頂点に対向する中央部と、前記中央部の周縁から延びる複数の延伸部と、を有する
ことを特徴とする帽子用インナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帽子用インナーに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、炭素繊維を使用した繊維強化樹脂材で形成された椀形状の外殻部材と、外殻部材の内側に配置された立体編物のクッション部材と、外殻部材及びクッション部材を覆う布生地製のカバーシートと、を備えた帽子用インナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の帽子用インナーでは、カバーシートが布生地によって形成されており、衝撃吸収性を備えていない。そのため、この帽子用インナーを取り付けた帽子をかぶった際、頭部への外殻部材の下縁の当たりを緩和することができず、頭痛や違和感が発生することがあった。また、外殻部材に入力された衝撃力が着用者にダイレクトに伝わるおそれもあった。
【0005】
そこで、本発明は、外殻部材の下縁の頭部への当たりを緩和し、外殻部材に入力された衝撃力の伝達を抑えることができる帽子用インナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の帽子の内部に着脱自在に装着される帽子用インナーは、繊維強化樹脂材によって形成され、帽子側に配置される椀形状の外殻部材と、弾性変形可能なシート状の発泡樹脂材によって形成され、前記外殻部材の内側を覆って着用者側に配置される共に、周縁端部が前記外殻部材の下縁から外側に露出する大きさを有する内側部材と、前記発泡樹脂材によって形成され、前記外殻部材と前記内側部材との間に挟み込まれると共に、前記外殻部材及び前記内側部材よりも小さい中間部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の帽子用インナーでは、外殻部材の下縁の頭部への当たりを緩和し、外殻部材に入力された衝撃力の伝達を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の帽子用インナーを帽子に装着した状態を示す斜視図である。
【
図2】実施例1の帽子用インナーの分解斜視図である。
【
図3A】実施例1の帽子用インナーを示す縦断面図である。
【
図3B】実施例1の帽子用インナーを装着した状態の帽子を示す縦断面図である。
【
図4】実施例1の内側部材の展開状態の平面図である。
【
図5】実施例1の中間部材の展開状態の平面図である。
【
図6】(a)は、実施例1の中間部材を貼り付けた内側部材の展開状態の平面図であり、(b)は、
図6(a)におけるA-A断面図である。
【
図7A】第1変形例の中間部材を貼り付けた内側部材の展開状態の平面図である。
【
図7B】第2変形例の中間部材を貼り付けた内側部材の展開状態の平面図である。
【
図7C】第3変形例の中間部材を貼り付けた内側部材の展開状態の平面図である。
【
図7D】第4変形例の中間部材を貼り付けた内側部材の展開状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の帽子用インナーを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
以下、実施例1の帽子用インナー10の構成を、
図1~
図6に基づいて説明する。なお、以下の説明において、実施例1の帽子用インナー10を装着した帽子1の着用者の顔側を「前方」とし、実施例1の帽子用インナー10を装着した帽子1の着用者の後頭部側を「後方」とする。また、実施例1の帽子用インナー10を装着した帽子1の着用者の左側を「左側方」とし、実施例1の帽子用インナー10を装着した帽子1の着用者の右側を「右側方」とする。
【0011】
実施例1の帽子用インナー10は、帽子1のクラウン2の内部に着脱自在に装着され、着用者の頭部への衝撃を緩和するものである。この帽子用インナー10は、
図1及び
図2に示すように、外殻部材11と、内側部材12と、中間部材13と、を備えている。なお、
図1では、後述する第1貫通孔14a及び第2貫通孔14bを省略している。
【0012】
外殻部材11は、帽子用インナー10を帽子1に装着した際、帽子1側に配置される網状の繊維強化樹脂材であり、クラウン2に嵌り込む椀形状を呈している。繊維強化樹脂材は、パンチングメタル状やエキスパンドメッシュ状のようなものであっても使用することはできるが、重量や通気性や加工性、開口部の均一性などの面では網状基材を用いたものであることが好ましい。網状基材は、強化繊維による複数の編み組織と、前記編み組織を結束する挿入糸による3次元構造である。このため、前記パンチングメタル状のように複数のプリプレグを積層して穴あけ加工をしたような場合に比べ、層間剥離による強度低下がなく、開口率が大きくても、適度な強度と剛性を有しているため、外力に対して抵抗体となり、頭部との間に装着する衝撃吸収材に応力を分散させながら伝達することができる。
【0013】
外殻部材11となる繊維強化樹脂材は、そのマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のいずれも使用することができるが、耐衝撃性や成形性などの面から熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、若しくは、ポリフェニレンサルファイド樹脂などが好ましく使用され、フェノキシ樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂の使用が賦形性も良好であることから特に好ましい。
【0014】
また、使用される強化繊維についても特に限定は無く、ガラス繊維や炭素繊維、バサルト繊維などの無機系強化繊維、アラミド繊維やビニロン繊維などの有機系強化繊維から1種以上を適宜選択して使用することができるが、2種以上の強化繊維を併用する場合、少なくとも一種は炭素繊維を使用することが軽量化と強度を両立できるので好ましい。
【0015】
外殻部材11は、網状の繊維強化樹脂材を椀型に成形することで形成されており、ここでは重量が30~100g、開口率が20~60%に設定され、軽量で高い通気性を有している。重量及び開口率を前記範囲内とすることにより、外郭部材11が必要とする強度と通気性の確保や装着時の違和感の軽減ができて好ましい。なお、「開口率」とは、素材を投影した際に、材料ではなく空間の占める割合のことであり、より好ましい開口率は20~50%である。また、外殻部材11として適する網状の繊維強化樹脂材の強度の目安としては、圧縮試験時における荷重値が0.5kN以上あれば良い。
【0016】
内側部材12は、外殻部材11の内側の全面を覆い、帽子用インナー10を帽子1に装着した際、着用者側に配置される。この内側部材12は、弾性変形可能なシート状の発泡樹脂材(例えば、ウレタンフォームやスチレンフォーム等)によって形成され、実施例1では、厚みW1が2mmに設定されている。内側部材12は、外殻部材11に沿う椀形状を呈しており、
図3Aに示すように、外殻部材11の下縁11a(開口縁)から周縁端部12aがはみ出して露出する大きさを有している。
【0017】
ここで、帽子用インナー10を帽子1に装着した際、
図3Bに示すように、内側部材12の頂点12bは、天ボタン4にほぼ対向した位置に配置される。一方、外殻部材11の頂点11bは、内側部材12の頂点12bよりも後方に位置する。つまり、外殻部材11の頂点11bは、内側部材12の頂点12bよりも着用者の後頭部側(後方)にオフセットしている(
図3A参照)。これにより、内側部材12の周縁端部12aが着用者の前方側の下縁11aから露出する長さの方が、この周縁端部12aが着用者の後方側の下縁11aから露出する長さよりも長くなる。
【0018】
また、内側部材12は、
図4に示すように、周縁端部12aから延びる複数(ここでは六カ所)の切込み12cを有している。各切込み12cは、シート状の発泡樹脂材を外殻部材11に沿って椀形状に変形させた際に重なり合う領域を切り欠く形状である。
【0019】
さらに、内側部材12には、発泡樹脂材を貫通する複数の第1貫通孔14aが形成されている。第1貫通孔14aは、内側部材12の全面に適宜の間隔で形成されている。さらに、内側部材12のほぼ中心位置には、発泡樹脂材を貫通すると共に、第1貫通孔14aよりも開口面積が広い第1中央貫通孔15aが形成されている。
【0020】
しかも、ここでは、内側部材12の着用者に対向する内面12dの全面に、吸汗速乾性を有する布生地16が貼り付けられている。なお、吸汗速乾性を有する布生地16としては、例えば、太さの異なる繊維を組み合わせて形成された布地や、吸水性素材と撥水素材の二層構造の布地等を、メッシュ生地、天竺生地、鹿の子生地、ワッフル生地等にしたものを用いることができる。
【0021】
中間部材13は、弾性変形可能なシート状の発泡樹脂材(例えば、ウレタンフォームやスチレンフォーム等)によって形成され、外殻部材11と内側部材12との間に挟み込まれている。ここで、中間部材13は、内側部材12と同一の素材によって形成されている。また、中間部材13の厚みW2は、内側部材12の厚みW1よりも厚く、実施例1では5mmに設定されている。
【0022】
また、中間部材13は、外殻部材11及び内側部材12よりも小さい。すなわち、この中間部材13は、外殻部材11に臨む外面13aの外形の投影面積が、外殻部材11の外形の投影面積よりも小さく、内側部材12に臨む内面13bの外形の投影面積が、内側部材12の外形の投影面積よりも小さい。さらに、中間部材13は、外面13a及び内面13bのいずれにも接着剤(不図示)が塗布されている。中間部材13は、この接着剤によって外面13aが外殻部材11に固定され、内面13bが内側部材12に固定されている。つまり、内側部材12は、中間部材13を介して外殻部材11に取り付けられている。なお、接着剤は、中間部材13の外面13a及び内面13bの全面に塗布されていてもよいし、外面13aや内面13bの一部に塗布されるものでもよい。
【0023】
さらに、この中間部材13は、
図5に示すように、外殻部材11の頂点11bに対向する中央部17aと、中央部17aの周縁から延びる複数の延伸部17bと、を有している。実施例1では、複数の延伸部17bのうちの二つが前方に向かって延び、複数の延伸部17bのうちの二つが後方に向かって延び、複数の延伸部17bのうちの一つが左側方に向かって延び、複数の延伸部17bのうちの一つが右側方向に向かって延びている。また、中間部材13は、
図6(a)に示すように、各延伸部17bの間に内側部材12の切込み12cが位置するように配置されている。
【0024】
そして、中間部材13には、発泡樹脂材を貫通する複数の第2貫通孔14bが形成されている。第2貫通孔14bは、中間部材13の全面に適宜の間隔で形成されると共に、全ての第2貫通孔14bが複数の第1貫通孔14aのいずれかに重複する(
図6(b)参照)。なお、第1貫通孔14aと第2貫通孔14bの開口面積は同じ大きさに設定されている。さらに、中間部材13の中央部17aには、発泡樹脂材を貫通すると共に、第2貫通孔14bよりも開口面積が広い第2中央貫通孔15bが形成されている。第2中央貫通孔15bは、内側部材12に形成された第1中央貫通孔15aと同じ大きさの開口面積を有する穴であり、第1中央貫通孔15aに重複している。
【0025】
以下、実施例1の帽子用インナー10の作用効果を説明する。
【0026】
実施例1の帽子用インナー10を使用するには、まず、帽子用インナー10を外殻部材11から帽子1に押し込む。次に、内側部材12の周縁端部12aをクラウン2とスベリ3との間に差し込む。これにより、帽子用インナー10は、帽子1からの脱落が規制され、帽子1に装着される。そして、この帽子用インナー10を帽子1に装着することで、帽子1の着用時に外部からの衝撃が頭部に向けて加わった際、外殻部材11により斬撃力を防御し、中間部材13及び内側部材12が弾性変形して打撃力を吸収して、衝撃から頭部を保護することができる。
【0027】
さらに、外殻部材11と内側部材12の間に、これらよりも小さい中間部材13を挟み込んだことで、外殻部材11と内側部材12の間に隙間が生じる。この外殻部材11と内側部材12の間の隙間によって外殻部材11に入力された衝撃力を緩和でき、衝撃力が内側部材12にダイレクトに伝達されにくくなり、防護性を向上させることができる。
【0028】
なお、実施例1では、内側部材12の厚みW1は2mmに設定され、中間部材13の厚みW2は5mmに設定されており、内側部材12の厚みW1の方が中間部材13の厚みW2よりも薄く設定されている。このため、必要な防護性能を確保しつつ、帽子用インナー10の全体の厚みが厚くなりすぎることを防止して、帽子1の被り心地の悪化を抑えることができる。
【0029】
しかも、この実施例1の帽子用インナー10では、内側部材12には、周縁端部12aから延びる複数の切込み12cが形成されている。一方、中間部材13は、外殻部材11の頂点11bに対向する中央部17aと、中央部17aの周縁から延びる複数の延伸部17bと、を有している。そして、中間部材13は、内側部材12に対して、各延伸部17bの間に内側部材12の切込み12cが位置するように配置されている。
【0030】
これにより、内側部材12は、頭部の大きさに応じて切込み12cが広がるため、内側部材12が着用者の頭部の形状に沿う形となり、内側部材12と頭部との間に隙間を生じにくくできる。この結果、帽子1の浮き上がりを抑制し、被り心地の悪化を防止することができる。また、中間部材13が複数の延伸部17bを有すると共に、各延伸部17bの間に内側部材12の切込み12cが位置することで、切込み12cが広がることによる内側部材12の変形を阻害することなく、中間部材13の表面積の拡大を図り、耐衝撃性を向上させることができる。
【0031】
そして、実施例1の帽子用インナー10では、内側部材12が、外殻部材11の下縁11aから周縁端部12aが露出する大きさを有している。これにより、外殻部材11の下縁11aは、全周にわたって内側部材12に覆われる。すなわち、帽子1を被った着用者の頭部と外殻部材11の下縁11aとの間には、弾性変形可能な内側部材12が挟み込まれる。この結果、外殻部材11の下縁11aが着用者の頭部に直接的に接触することを防止し、内側部材12が変形することで外殻部材11の下縁11aの頭部への当たりを緩和することができる。そして、外殻部材11に衝撃力が入力された場合にも、内側部材12が弾性変形して衝撃力を吸収することができる。これにより、外殻部材11に入力された衝撃力の頭部への伝達を抑えることができる。
【0032】
また、実施例1の帽子用インナー10では、外殻部材11が、網状の繊維強化樹脂材によって形成され、開口率を20~60%、より好ましくは20~50%に設定したことにより、通気性を有している。そのため、帽子用インナー10を装着した帽子1を着用したときの通気性を確保でき、不快感を軽減することができる。また、例えば、繊維強化樹脂製のプレートを椀形状に成形した外殻部材では重量が120g程度になるのに対して、実施例1の帽子用インナー10は、重量を60g程度(30~100g)にすることができ、軽量化を図ると共に、外殻部材11の全体を撓みやすくできる。そのため、外殻部材11が撓むことで衝撃力を吸収することが可能となり、防護性をさらに高めることができる。
【0033】
さらに、実施例1の帽子用インナー10では、内側部材12が、発泡樹脂材を貫通する複数の第1貫通孔14aを有し、中間部材13が、発泡樹脂材を貫通すると共に、第1貫通孔14aに重複する複数の第2貫通孔14bを有している。そのため、発泡樹脂材によって形成された内側部材12及び中間部材13に通気性を持たせることができ、帽子用インナー10内の蒸れや熱のこもり等をさらに緩和することができる。
【0034】
しかも、ここでは、内側部材12のほぼ中心位置に、発泡樹脂材を貫通すると共に、第1貫通孔14aよりも開口面積が広い第1中央貫通孔15aが形成されている。また、中間部材13の中央部17aには、発泡樹脂材を貫通すると共に、第2貫通孔14bよりも開口面積が広い第2中央貫通孔15bが形成され、この第2中央貫通孔15bは、第1中央貫通孔15aに重複している。そのため、帽子用インナー10内の蒸れや熱のこもり等をさらに緩和することができる。
【0035】
また、この実施例1では、内側部材12の内面12dの全面に、吸汗速乾性を有する布生地16が貼り付けられている。そのため、布生地16によって着用者の頭部の汗を速やかに吸い取って蒸発させることができ、さらに不快感の軽減を図ることができる。
【0036】
また、実施例1の帽子用インナー10では、外殻部材11の頂点11bが、内側部材12の頂点12bより着用者の後頭部側にオフセットしている。これにより、着用者の頭部は、後頭部側を中心とした領域を外殻部材11によって覆うことができる。そのため、保護要求の高い後頭部側の防護性を高めつつ、帽子用インナー10による防護領域を着用者の前後方向に拡大することができる。
【0037】
以上、本発明の帽子用インナーを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0038】
上記実施例1では、中間部材13が、
図5に示すように、外殻部材11の頂点11bに対向する中央部17aと、中央部17aの周縁から延びる複数の延伸部17bと、を有する例を示した。しかしながら、中間部材13の形状はこれに限らない。例えば、
図7Aに示す第1変形例の中間部材13Aのように、中央部17aの周縁から延びる複数の延伸部17bの先端を鋭角的とし、中間部材13Aの周縁を直線としてもよい。
【0039】
また、中間部材13は、延伸部17bを必ずしも有していなくてもよい。すなわち、
図7Bに示す第2変形例の中間部材13Bのように、内側部材12に形成された切込み12cに重複しない、内側部材12の中心領域を覆うほぼ矩形状に形成してもよい。
【0040】
さらに、
図7Cに示す第3変形例の中間部材13Cや、
図7Dに示す第4変形例の中間部材13Dのように、第1中央貫通孔15aの周囲を取り囲むリング形状を呈するものであってもよい。この場合、中間部材13C、13Dの径の大きさは任意に設定することができる。また、第2貫通孔14bは必ずしも形成する必要はなく、第3変形例や第4変形例の中間部材13C、13Dでは、第2貫通孔14bを形成していない。この場合、内側部材12に中間部材13C、13Dを貼り付けることで、一部の第1貫通孔14aが封鎖されることもある。
【0041】
さらに、実施例1では、内側部材12の厚みW1を2mmに設定し、中間部材13の厚みW2を5mmに設定する例を示した。しかしながら、これに限らず、例えば、内側部材12の厚みW1を3mmに設定したり、中間部材13の厚みW2を10mmに設定したりしてもよい。厚みW1、W2は、内側部材12や中間部材13の大きさや形状等に応じて任意の値に設定することができる。
【0042】
また、実施例1では、内側部材12と中間部材13とを、同一素材の発泡樹脂材によって形成する例を示した。しかしながら、内側部材12及び中間部材13は、弾性変形可能な発泡樹脂材であればよいため、内側部材12を形成する発泡樹脂材の素材と、中間部材13を形成する発泡樹脂材の素材とを異ならせてもよい。
【0043】
また、実施例1では、内側部材12に複数(六ケ所)の切込み12cを形成した例を示した。しかしながら、内側部材12が頭部に沿って湾曲すればよいため、切込み12cの数や形状については任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 帽子用インナー
11 外殻部材
11a 下縁
12 内側部材
12a 周縁端部
12c 切込み
13 中間部材
14a 第1貫通孔
14b 第2貫通孔
17a 中央部
17b 延伸部
1 帽子
2 クラウン
3 アオリ