(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】基板を処理する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240319BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/78 M
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142765
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10 2021 209 979.3
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カール, プリーヴァッサー
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059766(JP,A)
【文献】特表2018-526826(JP,A)
【文献】特開2021-027336(JP,A)
【文献】特開2017-050536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0247870(US,A1)
【文献】特開2015-149385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(4)と、前記一面(4)の反対側にある面(14)とを有する基板(2)の処理方法であって、
表の面(18)と、前記表の面(18)の反対側の裏の面(20)とを有する保護フィルム(16)を準備するステップと、
前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)の少なくとも中央領域に水溶性材料(22)の被覆を加えるステップ、および/または、前記基板(2)の前記一面(4)の少なくとも中央領域に水溶性材料(22)
の被覆を加えるステップと、
前記保護フィルム(16)に前記被覆を加えるステップ、および/または、前記基板(2)に前記被覆を加えるステップの後、前記基板(2)の前記一面(4)に前記保護フィルム(16)を加えるステップであって、前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)が前記基板(2)の前記一面(4)に面し、前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)の少なくとも中央領域と前記基板(2)の前記一面(4)との間に接着材が存在しないように前記保護フィルム(16)を加える、ステップと、
前記基板(2)の前記一面(4)に前記保護フィルム(16)を加える間および/または加えた後に、前記保護フィルム(16)に外部刺激を加え、前記保護フィルム(16)を前記基板(2)の前記一面(4)に付けるステップと、
前記基板(2)の前記一面(4)および/または前記基板(2)の前記一面(4)の反対側にある前記基板(2)の前記面(14)を処理するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
一面(4)と、前記一面(4)の反対側にある面(14)とを有する基板(2)を処理する方法であって、
表の面(18)と、前記表の面(18)とは反対側の裏の面(20)とを有する保護フィルム(16)を準備するステップであって、前記保護フィルム(16)は、前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)の少なくとも中央領域に水溶性材料(22)の被覆が加えられる、ステップと、
前記基板(2)の前記一面(4)に前記保護フィルム(16)を加えるステップであって、前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)が前記基板(2)の前記一面(4)に面し、前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)の少なくとも中央領域と前記基板(2)の前記一面(4)との間に接着材が存在しないように前記保護フィルム(16)が加えられる、ステップと、
前記基板(2)の前記一面(4)に前記保護フィルム(16)を加える間および/または加えた後に、前記保護フィルム(16)に外部刺激を加えて、前記保護フィルム(16)を前記基板(2)の前記一面(4)に付けるステップと、
前記基板(2)の前記一面(4)および/または前記基板(2)の前記一面(4)の反対側にある前記面(14)を処理するステップと、
を含む、方法。
【請求項3】
前記保護フィルム(16)および/または前記基板(2)に加えられる被覆は、0.5~5μmの範囲の厚さを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基板(2)の前記一面(4)および/または前記一面(4)の反対側にある前記基板(2)の面(14)を処理した後に、前記基板(2)から前記保護フィルム(16)を除去するステップを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基板(2)から前記保護フィルム(16)を除去した後、前記基板(2)の一面(4)を水で洗浄するステップを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記保護フィルム(16)には接着層(24)が準備され、
前記接着層(24)は、前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)の周辺領域のみに設けられ、前記周辺領域は、前記保護フィルム(16)の前記表の面(18)の前記中央領域を囲み、
前記基板(2)の前記一面(4)に前記保護フィルム(16)を加え、前記接着層(24)を前記基板(2)の前記一面(4)の周縁部分のみに接触させる、方法。
【請求項7】
前記保護フィルム(16)に外部刺激を加えるステップは、前記保護フィルム(16)を加熱する工程および/または前記保護フィルム(16)を冷却する工程および/または前記保護フィルム(16)に圧力を加える工程および/または前記保護フィルム(16)に光もしくは紫外線を照射する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記保護フィルム(16)は、高分子で作られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子は、ポリオレフィンである、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面と、その一面の反対側にある面とを有するウェハなどの基板を処理する方法に関する。
【0002】
【技術背景】
【0003】
ウエハのような基板の処理は、一般に、高い効率および信頼性で行われなければならない。たとえば、例えば半導体デバイスを製作するためのデバイス製作プロセスにおいて、複数のデバイスを備えたデバイス領域を有するウェハなどの基板は、通常、複数の分割ラインによって分割され、個々のダイに分割される。この製作プロセスは、一般に、基板の厚さを調整する研削ステップと、分割ラインに沿って基板を切断して個々のダイを得る切断ステップとを含む。研削工程は、デバイス領域が形成された基板表面とは反対側の基板裏面から行われる。さらに、研磨および/またはエッチングのような他の処理ステップも、基板の裏面で実行することができる。基板は、その表面または裏面から分割ラインに沿って切断されてもよい。
【0004】
基板の処理中、基板上に形成されたデバイスを、例えば、破壊、変形および/または破片、研削水または切削水による汚染から保護するために、保護フィルムまたはシートを、処理前に基板の表面に加えてもよい。
【0005】
デバイスの、このような保護は、デバイス領域が不均一な表面構造を有する場合に特に重要である。たとえば、ウエハレベルチップスケールパッケージ(Wafer Level Chip Scale Package:WLCSP)のような公知の半導体デバイス製作プロセスにおいて、基板のデバイス領域は、基板の平坦面から突出するバンプのような複数の突出部で形成される。これらの突出部は、たとえば、個々のダイにおけるデバイスとの電気的接触を確立するために、例えば、ダイを携帯電話機およびパーソナルコンピュータなどの電子機器に組み込む場合に使用される。
【0006】
このような電子機器の小型化を実現するためには、半導体デバイスを小型化する必要がある。したがって、デバイスが形成された基板は、上述した研削ステップにおいて、μmの範囲、例えば20~100μmの範囲の厚さに研削される。
【0007】
既知の半導体デバイス製作プロセスでは、バンプなどの突出部がデバイス領域に存在する場合、例えば研削ステップなどの処理中に問題が生じることがある。特に、これらの突出部の存在により、処理中に基板が破損する危険性が著しく増大する。さらに、基板が薄い厚さ、例えばμmの範囲の厚さに研削される場合、基板の表面のデバイス領域の突出は、基板の裏面の変形を引き起こし、結果として得られるダイの品質を損なう可能性がある。
【0008】
したがって、保護フィルムまたはシートの使用は、そのような不均一な表面構造を有するデバイス領域を有する基板を処理する場合に特に重要である。
【0009】
しかしながら、特に、微小電気機械システム(MEMS)のような敏感なデバイスの場合には、保護フィルムまたはシート上に形成された接着層の接着力によって形成された接着層の接着力によって基板上のデバイス構造が損傷されるか、またはデバイス上の接着残留物によって汚染される可能性があるという問題がある。
【0010】
基板を保護するために、例えば、基板を切断するステップの間に、基板の破損、変形および/または破片による汚染から基板を保護するために、処理前に基板の裏面に保護フィルムまたはシートを加えることができる。
【0011】
この場合にも、フィルムやシートを基板から引き剥がされる際に、保護フィルムやシート上に形成された接着層の接着力によって基板が損傷したり、基板上の接着剤残留物によって基板が汚染されたりするという問題がある。
【0012】
この問題に対処するために、保護フィルムの少なくとも中央領域がウエハと直接接触するように保護フィルムをウエハに加えることが、DE 102018 200 656 A1において提案されている。保護フィルムをウエハ上のその位置に保持する保護フィルムとウエハとの間の付ける力は、外部刺激を加えることによって発生される。しかしながら、このようにしてもウエハ上の接着材の残留物は回避されるが、保護フィルムを引き剥がした後に保護フィルム材料の残留物が基板上に残留する可能性を排除することはできない。また、保護フィルムとウエハとの間の付ける力が強い場合には、保護フィルムをウエハから引き剥がすことが困難な場合がある。
【0013】
このため、基板の汚染および損傷の危険性を最小限に抑えることができる、信頼性があり効率的な基板処理方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明の目的は、基板の汚染および損傷のリスクを最小限に抑えることができる、基板を処理する信頼性が高く効率的な方法を提供することである。この目標は、請求項1の技術的特徴を有する基板処理方法と、請求項2の技術的特徴を有する基板処理方法とによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に続く。
【0015】
本発明は、第1の態様によれば、一面と、この一面に対して反対側にある面とを有する基板を処理する方法を提供する。この方法は、表の面および表の面の反対側の裏の面を有する保護フィルムを準備するステップと、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域に水溶性材料の被覆を加えるステップと、さらに/または、基板の一面の少なくとも中央部分に水溶性材料の被覆を加えるステップとを含む。この方法は、保護フィルムに被覆を加えた後、さらに/または、基板に被覆を加えた後、基板の一面に保護フィルムを加えるステップを更に含み、保護フィルムの表の面は基板の一面に面し、保護フィルムは、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域と基板の一面との間に接着材が存在しないように加えられる。さらに、この方法は、保護フィルムを基板の一面に加えている間および/または加えた後に、保護フィルムに外部刺激を加えて保護フィルムを基板の一面に付けるステップと、基板の一面および/または基板の一面の反対側にある基板の面を処理するステップとを含む。
【0016】
保護フィルムは、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域と基板の一面との間に接着材が存在しないように、基板の一面に加えられる。したがって、例えば、基板上の接着層の接着力または接着残留物による基板の汚染または損傷の可能性のリスクを、大幅に低減または排除することさえできる。保護フィルムの表の面と基板の一面の少なくとも中央部分との間には、接着材が存在しなくてもよい。
【0017】
基板の一面に保護フィルムを加えている間および/または加えた後に、保護フィルムに外部刺激を加えて、保護フィルムを基板の一面に付ける。保護フィルムを基板上の位置に保持する保護フィルムと基板との間の付ける力は、外部刺激を加えることによって発生される。したがって、保護フィルムを基板の一面に付けるための追加の接着材料は不要である。
【0018】
特に、保護フィルムに外部刺激を加えることにより、保護フィルムと基板との間に、積極嵌合のような形態嵌合及び/又は接着結合のような材料結合が形成されてもよい。用語「材料結合」と「接着結合」は、保護フィルムと基板との間を、これら2つのコンポーネント間に作用する原子及び/又は分子力によって付けること又は接続することを定める。
【0019】
用語「接着結合」は、これらの原子及び/又は分子力の存在に関し、これらが、保護フィルムを基板に付ける又は接着するように作用し、保護フィルムと基板との間に追加の接着の存在を意味しない。むしろ、上述したように、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域と基板の一面との間には接着材が存在しない。
【0020】
保護フィルムを基板の一面に加える前に、水溶性材料の被覆が、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域および/または基板の一面の少なくとも中央部分に加えられる。水溶性材料の被覆は、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域にのみ加えることができる。水溶性材料の被覆は、基材の一面の少なくとも中央部分にのみ加えることができる。水溶性材料の被覆は、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域および基板の一面の少なくとも中央部分に加えることができる。
【0021】
保護フィルムの表の面の中央領域は、基板の一面の中央部分に対応していてもよい。保護フィルムの表の面の中央領域は、基板の一面の中央部分と一致していてもよい。
【0022】
水溶性材料の被覆は、保護フィルムの表の面全体に加えられてもよい。水溶性材料の被覆は、基板の一面と接触するようになる保護フィルムの表の面の全体部分に加えられてもよい。水溶性材料の被覆は、基材の一面全体に加えることができる。水溶性材料の被覆は、保護フィルムの表の面と接触するようになる基板の一面の全体部分に加えられてもよい。
【0023】
水溶性材料は、接着材ではない。上述したように、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域と基板の一面との間には接着材は存在しない。
【0024】
保護フィルムと基板との間に、少なくとも中央領域または部分に水溶性材料の被覆を設けることによって、基板からの保護フィルムの除去が著しく促進される。特に、水溶性材料は、保護フィルムを剥がすのに要する剥離力を低下させることができる。これにより、保護フィルムを除去する際の基板への損傷の危険性がさらに低減される。
【0025】
さらに、水溶性材料が存在するため、保護フィルムを除去した後に保護フィルム材料の残留物が基板上に残る危険性が最小限に抑えられる。水溶性材料の残留物が保護フィルム除去後に基板上に残る場合、そのような残留物は、材料の水溶性の性質のために、基板の一面を水で洗浄することによって、単純で信頼性があり効率的な方法で除去することができる。
【0026】
水溶性材料の被覆を保護フィルムに加えることによって、特に完全で均質な被覆を達成することができる。さらに、被覆は、例えば目視検査によって、特に単純で、信頼性があり、効率的な方法で検査することができる。
【0027】
したがって、本発明の第1の態様の方法は、基板の汚染および基板に対する損傷の危険性を最小にしながら、基板の信頼性があり効率的な処理を可能にする。
【0028】
さらに、本発明は、第2の態様に従って、一面と、その一面の反対側にある面とを有する基板を処理する方法を提供する。本発明は、表の面および表の面の反対側の裏の面を有する保護フィルムであって、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域に水溶性材料の被覆が加えられた保護フィルムを準備するステップと、保護フィルムを基板の一面に加えるステップを含む方法であって、保護フィルムの表の面が基板の一面に面し、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域と基板の一面との間に接着材が存在しないように保護フィルムを加える方法である。この方法は、基板の一面に保護フィルムを加える間および/または加えた後に、保護フィルムに外部刺激を加えて、保護フィルムが基板の一面に付けられるようにし、基板の一面および/または基板の一面の反対側にある面を処理するステップを更に含む。
【0029】
保護フィルムは、例えば、保護フィルムの製造中または製造直後に、予め水溶性材料の被覆が準備されてもよい。
【0030】
第2の態様に係る基板処理方法は、第1の態様に係る基板処理方法に対して、既に詳細に説明した技術的効果及び利点を提供する。
【0031】
第1の発明に係る基板処理方法について説明した特徴は、第2の発明に係る基板処理方法についても同様である。特に、基板、保護フィルム、水溶性材料および外部刺激は、上述したものと同じでよい。
【0032】
したがって、また、本発明の第2の態様の方法は、基板の汚染および基板に対する損傷の危険性を最小にしながら、基板の信頼性があり効率的な処理を可能にする。
【0033】
以下の特徴、定義、技術的効果および利点が、第1および第2の態様による方法に適用される。
【0034】
基板の一面は、基板の表面または裏面であってよい。基板の一面と反対側の面は、基板の表面または裏面であってもよい。
【0035】
基板の一面または表面および基板の一面または表面の反対側にある基板の面又は表面は、互いに実質的に平行であってもよい。
【0036】
基板は、たとえば、半導体、ガラス、サファイア(Al2O3)、アルミナセラミックなどのセラミック、石英、酸化ジルコニウム、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、ポリカーボネート、光学結晶材料などから作られてもよい。
【0037】
特に、基板は、たとえば、シリコンカーバイド(SiC)、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、ガリウム窒化物(GaN)、ガリウムリン化物(GaP)、インジウム砒素(InAs)、インジウムリン化物(InP)、シリコン窒化物(SiN)、リチウムタンタル酸塩(LT)、リチウムニオブ酸塩(LN)、アルミニウム窒化物(AlN)、シリコン酸化物(SiO2)などから作られてもよい。
【0038】
基板は、単結晶基板、ガラス基板、化合物半導体基板(例えば、SiC、SiN、GaNまたはGaAs基板)などの化合物基板、またはセラミック基板などの多結晶基板とすることができる。
【0039】
基板はウエハであってもよい。たとえば、基板は半導体サイズのウエハであってもよい。ここで、「半導体サイズのウエハ」という用語は、半導体ウエハの寸法(標準寸法)、特に直径(標準直径)、即ち、外径を有するウエハを指す。半導体用ウェハの寸法、特に直径、即ち、外径はSEMI規格で定義されている。たとえば、研磨された単結晶シリコン(Si)ウエハースの寸法は、SEMI規格M1およびM76で定義されている。半導体サイズのウエハは、3インチ、4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、12インチまたは18インチのウエハとすることができる。
【0040】
基板は、半導体ウェハであってもよい。たとえば、基板は、上述の半導体材料のいずれかで構成されてもよい。
【0041】
ウェハのような基板は、単一の材料から作られてもよいし、異なる材料の組合せ、例えば、上述の材料の2つ以上から作られてもよい。たとえば、基板は、Siからなるウエハ素子がガラスから作られるウエハ素子に接合されたSi-ガラス接合ウエハであってもよい。
【0042】
基板は、任意のタイプの形状を有してよい。上面視において、基板は、例えば、円形状、楕円形状、長円形状、矩形状、正方形状等の多角形状等を有していてもよい。
【0043】
基板は、一面および/または一面の反対側にある面に、複数のデバイスを有するデバイス領域を有してもよい。デバイス領域を有する基板の面は、基板の表面であってもよい。
【0044】
デバイス領域内のデバイスは、例えば、半導体デバイス、パワーデバイス、光学デバイス、医療デバイス、電気コンポーネント、MEMSデバイス、またはそれらの組み合わせとすることができる。デバイスは、たとえば、MOSFETまたは絶縁ゲートバイポーラトランジスター(IGBT)のようなトランジスタ、またはショットキーバリアダイオードのようなダイオードを含むことができ、または、それらであってもよい。
【0045】
また、基板は、デバイス領域を有する面に、デバイスを有さずデバイス領域の周囲に形成された周辺限界領域を更に有していてもよい。
【0046】
一つ又は複数の分割ラインが、基板の一面および/または基板の一面と反対側の基板の面に形成されてもよい。基板が、基板の一面および/または一面の反対側にある基板の面に、複数のデバイスを有するデバイス領域を有する場合、デバイスは、一つ又は複数の分割ラインによって分割されてもよい。一つ又は複数の分割ラインの幅は、30~200μm、好ましくは、30~150μm、より好ましくは、30~100μmである。
【0047】
保護フィルムは、デバイス領域に形成されたデバイスを覆って、例えば、汚染や損傷からエバ椅子を保護するように、基板の一面に加えられてもよい。
【0048】
基板の一面の表面は、実質的に平坦で、表面又は平坦であってもよいし、表面であってもよい。あるいは、平坦な基板面から基板の厚み方向に沿って突出する突出部および/または突起、および/または、平坦な基板面から基板の厚み方向に沿って後退する凹部が、基板の一面に存在してもよい。基板の厚み方向は、基板の一面から、基板の一面の反対側にある面に向かって延びる。
【0049】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムを加熱する工程、および/または保護フィルムを冷却する工程、および/または保護フィルムに圧力を加える工程、および/または保護フィルムに真空を加える工程、および/または、例えばレーザービームを使用することにより、保護フィルムに光またはUV線などの放射線を照射する工程からなることができる。
【0050】
外部刺激は、化合物および/または電子またはプラズマ照射および/または機械的処理(例えば、真空、圧力、摩擦または超音波を加えること、および/または静電気)を含んでもよく、またはそれらであってもよい。
【0051】
保護フィルムに外部刺激を与えるステップは、保護フィルムを加熱する工程からなる、又は、この工程を含むことが特に好ましい。たとえば、保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムを加熱する工程と、保護フィルムに真空を加える工程とからなっていてもよいし、保護フィルムに真空を加える工程とからなっていてもよい。この場合、保護フィルムの加熱中および/または加熱前および/または加熱後に、保護フィルムに真空を加えてもよい。
【0052】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが、保護フィルムを加熱する工程からなる場合、または加熱する工程を含む場合、この方法は、加熱プロセス後に保護フィルムを冷却させる工程を更に含んでもよい。特に、保護フィルムは、その初期温度、即ち、加熱プロセス前のその温度まで冷却されてもよい。保護フィルムは、基板の一面、および/または、一面の反対側にある面を処理する前に、例えば、その初期温度まで冷却されてもよい。
【0053】
保護フィルムと基板との間の付ける力は、加熱プロセスによって発生する。保護フィルムの基板への付着は、加熱プロセス自体および/またはその後の保護フィルムを冷却する工程において生じさせることができる。
【0054】
保護フィルムは、例えば、基板の一面の基板面に適合するように、たとえば、基板トポグラフィを吸収するように、加熱プロセスによって軟化されてもよい。例えば、その初期温度まで冷却すると、保護フィルムは、例えば、再硬化して、形状適合および/または基板への材料結合を生成することができる。
【0055】
保護フィルムは、180℃以上まで、好ましくは、220℃以上まで、より好ましくは、250℃以上まで、さらに好ましくは、300℃以上まで耐熱性であってもよい。
【0056】
保護フィルムは、30℃~250℃、好ましくは、50℃~200℃、より好ましくは、60℃~150℃、さらに好ましくは、70℃~110℃の範囲の温度に加熱されてもよい。保護フィルムを80℃程度の温度に加熱することが特に好ましい。
【0057】
保護フィルムは、基板の一面に保護フィルムを加えている間および/または加えた後に、30秒~10分、好ましくは、1分~8分、より好ましくは、1分~6分、さらにより好ましくは、1分~4分、もっとより好ましくは、1分~3分の範囲の持続時間にわたって加熱することができる。
【0058】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが、保護フィルムを加熱する工程である場合には、保護フィルムを直接および/または間接的に加熱してもよい。
【0059】
保護フィルムの加熱は、例えば加熱ローラや加熱スタンプ等の加熱手段や放熱手段を用いて直接加熱することにより行うことができる。保護フィルムおよび基板は、真空チャンバなどのレセプタクルまたはチャンバ内に置かれてもよく、レセプタクルまたはチャンバの内部容積は、保護フィルムを加熱するように加熱されてもよい。レセプタクルまたはチャンバは、放熱手段を備えることができる。
【0060】
保護フィルムは、例えば、保護フィルムを基板の一面に加える前および/または加える間および/または加えた後に基板を加熱することによって、間接的に加熱されてもよい。たとえば、基板をチャックテーブルのような支持体またはキャリア上に置き、支持体またはキャリアを加熱することによって基板を加熱してもよい。
【0061】
たとえば、チャックテーブルのような支持体またはキャリアを、30℃~250℃、好ましくは、50℃~200℃、より好ましくは、60℃~150℃、さらに好ましくは、70℃~110℃の範囲の温度に加熱することができる。特に好ましくは、支持体またはキャリアを約80℃の温度に加熱することができる。
【0062】
これらの手法は、たとえば、加熱ローラ等の加熱手段や、保護フィルムを直接加熱したり、基板を介して間接的に加熱したりする放熱手段を用いて組み合わせてもよい。
【0063】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが保護フィルムを加熱する工程からなる又はその工程を含む場合、保護フィルムは、加熱された状態にあるときに、しなやかであり、弾性があり、柔軟性があり、伸ばすことができ、柔らかく、さらに/または、圧縮性があるのが好ましい。これにより、保護フィルムが基板の一面上の基板面に適合し、例えば、基板のトポグラフィを吸収することが特に信頼性良く確保することができる。これは、基板の厚み方向に沿って突出する表面ムラ、粗さ、バンプ、光学素子などのような突出部、および/または基板の厚み方向に沿って凹む凹部が基板の一面に存在する場合に、特に有利である。
【0064】
好ましくは、保護フィルムは、冷却の際、ある程度まで硬くされ、或いは、堅くされ、冷却状態で、より剛性があり、さらに/または頑丈になる。このように、基板の後処理中に、特に信頼性の良い基板の保護が確保できる。
【0065】
この方法は、基板の一面に保護フィルムを加える間および/または加えた後に、保護フィルムの裏の面に圧力を加えるステップを更に含むことができる。これにより、保護フィルムの表の面が基板の一面に押し付けられる。そのため、特に効率よく保護フィルムを基板に確実に付けることができる。
【0066】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが、保護フィルムを加熱する工程を含む場合には、保護フィルムの加熱前および/または加熱中および/または加熱後に、保護フィルムの裏の面に圧力を加えてもよい。基板の一面および/または基板の一面の反対側にある面を処理する前に、保護フィルムの裏の面に圧力を加えてもよい。
【0067】
保護フィルムの裏の面には、ローラ、スタンプ、メンブレン等の圧力を加える手段により圧力を加えてもよい。
【0068】
特に好ましくは、加熱されたローラまたは加熱されたスタンプのような熱および圧力の組合せを加える手段を使用することができる。この場合、保護フィルムを加熱しながら保護フィルムの裏の面に圧力を加えることができる。
【0069】
圧力は、以下に更に詳細に説明するように、真空チャンバ内で保護フィルムの裏の面に加えることができる。
【0070】
保護フィルムは、減圧雰囲気中、特に真空下で、基板の一面に加えられ、さらに/または、付けることができる。これにより、保護フィルムと基板との間に空洞及び/又は気泡が存在しないことを確実にすることができる。このため、基板の処理中に、例えば、加熱プロセス中に拡張する気泡に起因する基板上のいかなる応力または歪みも回避される。
【0071】
たとえば、保護フィルムを基板の一面に加えるステップおよび/または付けるステップは、真空チャンバ内で行うことができる。特に、保護フィルムは、真空ラミネート装置を用いて基板の一面に加え、さらに/または、付けることができる。このような真空ラミネート装置では、真空チャンバ内のチャックテーブル上に、基板の一面の反対側にある面がチャックテーブルの上面に接し、基板の一面が上方を向いた状態で基板が置かれる。チャックテーブルは、たとえば、加熱チャックテーブルであってもよい。
【0072】
基板の一面に加えられる保護フィルムは、その周辺部分が環状フレームによって保持され、真空チャンバ内で基板の一面の上方に載置される。チャックテーブルおよび環状フレームの上方に位置する真空チャンバの上部には、拡張可能なゴム膜によって閉じられた空気入口ポートが設けられている。
【0073】
基板および保護フィルムが真空チャンバ内にロードされた後、チャンバは排気され、空気が空気入口ポートを通してゴム膜に供給され、ゴム膜を真空チャンバ内に拡張させる。これにより、真空チャンバ内でゴム膜を下方に移動させて保護フィルムを基板の一面に押し付けるとともに、周辺基板部分を保護フィルムで密封して基板の一面に押し付ける。従って、保護フィルムは、基板の一面に、例えば、突出部又は突起の輪郭に追従するように密着して加えることができる。
【0074】
保護フィルムは、基板の一面に保護フィルムを加える間および/または加えた後に、例えば、チャックテーブルを加熱することによって加熱されてもよい。
【0075】
その後、真空チャンバ内の真空を解除し、加熱過程で発生した付ける力と真空チャンバ内の正圧とによって保護フィルムを基板の一面の位置に保持する。
【0076】
あるいは、ゴム膜は、ソフトスタンプまたはソフトローラ、例えば、加熱されたソフトスタンプまたは加熱されたソフトローラで置き換えることができる。
【0077】
保護フィルムは、どのような種類の形状を有してもよい。上面視において、保護フィルムの平面形状は、たとえば、円形状、楕円形状、長円形状、矩形状、正方形状等の多角形状等であってよい。
【0078】
保護フィルムは、基板と実質的に同じ形状であってもよいし、同じ形状であってもよい。
【0079】
保護フィルムは、基板の外径よりも大きい外径を有していてもよい。このようにして、基板の処理、取り扱いおよび/または運搬を容易にすることができる。具体的には、以下に詳述するように、保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けることができる。
【0080】
保護フィルムは、基板の外径よりも小さい外径を有していてもよい。
【0081】
保護フィルムは、基板の外径と実質的に同じ外径を有してもよい。
【0082】
保護フィルムの外径は、基板のデバイス領域の外径と実質的に同じであってもよいし、それより大きくてもよい。
【0083】
この方法は、保護フィルムを切断するステップをさらに含むことができる。保護フィルムは、基板の外径よりも大きい外径、若しくは基板の外径よりも小さい外径、又は基板の外径と実質的に同じ外径を有するように切断されてもよい。保護フィルムは、基板のデバイス領域の外径と実質的に同一またはそれよりも大きい外径を有するように切断することができる。
【0084】
保護フィルムを切断するステップは、保護フィルムを基板に加える前でも加えた後でもよい。
【0085】
保護フィルムを切断するステップは、保護フィルムを基板に付ける前でも後でもよい。
【0086】
この方法は、保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップを更に含むことができる。特に、保護フィルムの外周部分は、保護フィルムが環状フレームの中央開口部、すなわち、環状フレームの内径の内側領域を閉鎖するように環状フレームに付けられていてもよい。このようにして、保護フィルム、特にその中央部分に付けられた基板は、保護フィルムを介して環状フレームによって保持される。そのため、基板、保護フィルムおよび環状フレームを備える基板ユニットが形成され、基板の加処理、取り扱いおよび/または運搬を容易にする。
【0087】
保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップは、保護フィルムを基板に加える前または加えた後に行ってもよい。
【0088】
保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップは、保護フィルムを基板に付ける前または付けた後に行われてもよい。
【0089】
保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップは、基板の一面および/または基板の一面の反対側にある面を処理する前または後に行われてもよい。
【0090】
保護フィルムは、保護フィルムの表の面が基板の一面に接する領域全体において、保護フィルムの表の面と基板の一面との間に接着材が存在しないように、基板の一面に加えられてもよい。
【0091】
このようにして、例えば、基板上の接着層の接着力または接着材残留物による基板の汚染または損傷の可能性の危険性を、確実に排除することができる。
【0092】
また、保護フィルムの表の面全体に接着材が存在していなくてもよい。
【0093】
また、保護フィルムに接着層を設け、この接着層を保護フィルムの表の面の周辺領域、保護フィルムの表の面の中央領域を囲む周辺領域のみに設け、接着層が基板の一面の周辺部分のみに接触するように保護フィルムを基板の一面に加えてもよい。基板の一面の周辺部分は、基板の一面の中央部分を囲むことができる。基板の一面の周辺部分は、存在する場合には、基板の周辺限界領域に対応してもよいし、そうであってもよい。
【0094】
保護フィルムの表の面の周辺領域のみに接着層を設けることにより、保護フィルムを基板に付けることをさらに向上させることができる。接着層は、保護フィルムの表面の周辺領域にのみ設けられているので、保護フィルムの表の面全体に接着層を設けた場合に比べて、保護フィルムと基板とが接着層によって接着される領域が著しく小さくなる。これにより、保護フィルムを基板からより容易に剥離することができ、基板、特に一面に形成された突出部に対する損傷の危険性が大幅に低減される。
【0095】
接着層の接着材は、熱、UV線、電場および/または化学剤などの外部刺激によって硬化することができる。このようにして、処理後の基板から保護フィルムを特に容易に除去することができる。接着材に外部刺激を加えて接着力を低下させ、保護フィルムの除去を容易にすることができる。
【0096】
たとえば、接着層は、実質的に環状の形状、開口された長方形の形状、または開口された正方形の形状、すなわち、それぞれ長方形または正方形の形状を有し、開口部が接着層の中心にある。
【0097】
保護フィルムは、拡張可能であってもよい。保護フィルムは、基板の一面に加えられたときに拡張してもよい。基板の一面に突出部が存在する場合には、保護フィルムは、基板の一面に加えられる際に、これらの突出部の輪郭に近接して、または少なくとも部分的に追従するように、拡張されてもよい。
【0098】
特に、保護フィルムは、その元の大きさの2倍以上、好ましくは、3倍以上、より好ましくは、4倍以上に拡張可能であってもよい。これにより、特に、元の大きさの3~4倍以上に拡張した場合に、保護フィルムが突出部の輪郭に追従することを確実にすることができる。
【0099】
保護フィルムは、基板の一面を保護するように構成され、特に、基板の一面および/または基板の一面の反対側にある基板の面を処理する際に保護するように構成される。
【0100】
保護フィルムは、単一の材料、特に単一の均質な材料から作ることができる。保護フィルムは、たとえば、シートやフォイルであってもよい。
【0101】
保護フィルムは、高分子等のプラスチック材料から形成されてもよい。特に好ましくは、保護ポリオレフィンから作られることが好ましい。たとえば、保護フィルムは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)等から作ることができる。
【0102】
ポリオレフィンフィルムは、本発明の基板処理方法で使用するのに特に有利な材料特性を有し、特に、保護フィルムに外部刺激を加えるステップが保護フィルムを加熱する工程からなる又はこの工程を含む場合に有利である。ポリオレフィンフィルムは、加熱状態にあるとき、例えば60℃~150℃の範囲の温度に加熱されたときに、しなやかで、伸ばすことができ、柔らかい。これにより、保護フィルムが基板の一面の基板面に適合し、例えば基板のトポグラフィを吸収することを特に確実に確保することができる。これは、基板の一面に、基板の平坦面から突出する突出部が形成されている場合に特に有利である。
【0103】
さらに、ポリオレフィンフィルムは、冷却された状態で、より剛性があり、頑丈になるように、冷却の際に硬化し堅くなる。従って、その後の処理中の基板の特に確実な保護を確保することができる。
【0104】
保護フィルムの膜厚は、5~500μm、好ましくは、5~200μm、より好ましくは、8~100μm、さらに好ましくは、10~80μm、もっと更に好ましくは、12~50μmである。保護フィルムの膜厚は、80~150μmが特に好ましい。
【0105】
このようにして、保護フィルムは、基板の一面に形成された突出部が存在する場合には、その突出部の輪郭に十分適合する程度の柔軟性を有するとともに、処理時に基板を確実かつ効率的に保護するために十分な厚さを有するようにすることができる。
【0106】
保護フィルムの裏の面には、クッション層が付けられてもよい。また、保護フィルムの裏の面にクッション層の表の面を付けてもよい。
【0107】
このアプローチは、表面ムラまたは粗さ、バンプ、光学素子(例えば、光学レンズ、他の構造など)などの突出部または突起が、基板の厚さ方向に沿って基板の一面から突出、拡大または出っ張っている場合に、特に有利である。この場合、突出部又は突起は、基板の一面のトポグラフィ又は表面構造体を定め、この面を不均一にする。
【0108】
クッション層が保護フィルムの裏の面に付けられる場合、そのような突出部はクッション層に埋め込まれ得る。このため、基板の後処理における突出部の存在から生じる表面ムラの否定的影響を排除することができる。特に、クッション層は、処理中、圧力の、特に一様かつ均質な分布を達成する為に著しく役立ち得る。
【0109】
クッション層に突出部を埋め込むことによって、たとえば、光学素子または他の構造体のような突出部は、基板処理中、どんな損傷からも信頼性良く保護される。
【0110】
クッション層の材料は、特に限定されない。特に、基板の厚さ方向に沿って突出する突出部が内部に埋め込まれることを可能にする材料の種類からクッション層が形成されてもよい。たとえば、クッション層は、樹脂、接着材、ゲルなどから形成されてもよい。
【0111】
クッション層は、UV線、熱、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。この場合、クッション層は、外部刺激を加える際、少なくとも一定の程度まで硬くなる。たとえば、クッション層は、硬化性樹脂、硬化性接着材、硬化性ゲルなどで形成されてもよい。
【0112】
クッション層は、硬化後、ある程度の圧縮性、弾性および/または柔軟性を呈するように、即ち、圧縮性、弾性および/または柔軟性を持つように構成されてもよい。たとえば、クッション層は、硬化によってゴムのような状態にもたらされるものでもよい。あるいは、クッション層は、硬化後、剛性があり、硬い状態に達するように構成されてもよい。
【0113】
本発明の方法においてクッション層として使用されるUV硬化性樹脂の好ましい実施例は、DISCO株式会社によるResiFlatとDENKAによるTEMPLOCである。
【0114】
本発明の方法は、基板の処理前に、クッション層を硬化させるようにクッション層に外部刺激を加えるステップを更に含んでもよい。このように、処理中の基板の保護および処理精度を更に改善できる。
【0115】
クッション層は、180℃以上の温度まで、好ましくは220℃以上の温度まで、より好ましくは250℃以上の温度まで、更により好ましくは300℃の温度まで耐熱性があってもよい。
【0116】
クッション層は、10~300μm、好ましくは20~250μm、より好ましくは50~200μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0117】
クッション層は、基板の一面に保護フィルムを加える前に保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。この場合、保護フィルムおよびクッション層は、最初に積層され、クッション層と、クッション層に付けられた保護フィルムとを備える保護シーティングを形成してもよい。このように形成された保護シーティングは、例えば、基板の平坦面から突出する突出部又は突起が保護フィルムによって覆われ、保護フィルム及びクッション層に埋め込まれるように、基板の一面に後で付けられてもよい。保護シーティングは、基板の一面の反対側にある面に対して、クッション層の表の面の反対側のクッション層の裏の面が実質的に平行になるように加えられてもよい。保護フィルムの表の面は、保護シートが基板の一面に加えられるときに、基板の一面に加えられる。
【0118】
このようにして、基板処理方法を特に簡単かつ効率的に実行することができる。たとえば、保護シーティングは、予め準備され、後の使用の為に貯蔵され、必要なときに基板処理の為に使用できる。そのため、保護シーティングは、大量に製造されてもよく、その生産を、時間および費用の点で特に効率良くさせる。
【0119】
クッション層は、基板の一面に保護フィルムを加えた後、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0120】
この場合、まず基板の一面に保護フィルムを加えた後、保護フィルムが加えられた基板の一面を例えばクッション層の表の面に付けることにより、基板の平坦面から突出する突出部又は突起が保護フィルムおよびクッション層に埋め込まれ、クッション層の裏の面は基板の一面の反対側にある面に略平行となる。このアプローチによれば、保護フィルムを基板の一面に、特に基板の平坦面から突出する突出部又は突起に対して、高い精度で付けることができる。
【0121】
クッション層は、保護フィルムを基板の一面に付ける前および/または付ける間および/または付けた後に、保護フィルムの裏の面に付けてもよい。
【0122】
クッション層の裏の面には、ベースシートが付けられていてもよい。ベースシートの表の面は、クッション層の裏の面に付けられていてもよい。
【0123】
ベースシートの材料は、特に限定されない。ベースシートは、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)またはポリオレフィンなどの高分子材料のような柔らかく、しなやかな材料で作ることができる。
【0124】
あるいは、ベースシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはシリコンおよび/またはガラスおよび/またはステンレス鋼(SUS)のような剛性又は硬い材料で形成されてもよい。
【0125】
たとえば、ベースシートがポリエチレンテレフタレート(PET)またはガラスで形成され、クッション層が外部刺激によって硬化可能である場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はガラスを透過可能な放射線(例えば、UV線)でクッション層が硬化されてもよい。ベースシートがシリコン又はステンレス鋼(SUS)で形成される場合、費用効果に優れたベースシートが設けられる。
【0126】
また、ベースシートは、前述した材料の組合せで形成されてもよい。
【0127】
ベースシートは、180℃以上の温度まで、好ましくは220℃以上の温度まで、より好ましくは250℃以上の温度まで、更により好ましくは300℃以上の温度まで、耐熱性があってもよい。
【0128】
ベースシートは、30~1500μm、好ましくは40~1200μm、より好ましくは50~1000μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0129】
クッション層およびベースシートは、保護フィルムをウェハの裏面に加える前または加えた後に、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。特に、保護フィルムおよびクッション層およびベースシートを最初に積層し、ベースシート、クッション層、クッション層に付けられた保護フィルムを備える保護シーティングを形成してもよい。このように形成された保護シーティングは、その後、基板の一面に加えられてもよい。
【0130】
ベースシートの表の面は、クッション層の裏の面に接触してもよく、ベースシートの表の面に対して反対側にあるベースシートの裏の面は、基板の一面の反対側にある基板の面に対して実質的に平行であってもよい。したがって、基板の一面の反対側の面を処理するとき、例えば、この裏の面をチャックテーブル上に置くことによって、適切なカウンタ圧力をベースシートの裏の面に加えることができる。
【0131】
この場合、ベースシートの平坦な裏の面は基板の一面の反対側にある面に実質的に平行であるので、処理中に基板に加えられる圧力は、基板上により均一かつ均質に分散され、基板の破損の危険性を最小にする。また、ベースシートの平らで均一な裏の面と基板の一面の反対側にある面とを略平行に整列させることにより、高い精度で基板処理を実行することができる。
【0132】
水溶性材料は、水溶性樹脂からなるものであってもよいし、水溶性樹脂を含んでもよい。
【0133】
特に、水溶性材料は、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリビニルピロリドン(PVP)のうちの一つ又は複数からなり、又は、これらを含むことができる。
【0134】
水溶性樹脂、特にPVA、PEGおよびPVPの一つ又は複数からなる又はこれらを含む水溶性材料を用いることにより、例えば、水溶性材料の粘度および/または希釈、特に液状水溶性材料の粘度および/または希釈などの材料特性を適宜選択することにより、基板から保護フィルムを除去するために必要な剥離力を、特に簡便かつ確実に制御することができる。
【0135】
水溶性材料の材料特性は、水溶性材料の被覆と保護フィルムとの間の付ける力が、水溶性材料の被覆と基板との間の付ける力よりも大きくなるように選択することができる。このようにして、基板から保護フィルムを除去した後に水溶性材料の残留物が基板上に残る可能性を最小限に抑えることができる。
【0136】
水溶性材料は、熱、UV線、電場および/または化学剤などの外部刺激によって硬化することができる。水溶性材料を硬化させることにより、例えば硬化条件を適宜選択するなどして、基板から保護フィルムを除去するために必要な剥離力を低下させるように、材料の特性を調整することができる。また、水溶性材料は、外部刺激が加えられたときに少なくともある程度硬化するように構成されていてもよい。
【0137】
この方法は、水溶性材料の被覆を保護フィルムおよび/または基板に加えた後に、水溶性材料を硬化させるステップを更に含むことができる。水溶性材料は、基板の一面および/または基板の一面の反対側にある面を処理した後に硬化されてもよい。
【0138】
水溶性材料は、実質的にシリコーンを含まないものであってもよいし、シリコーンを含まないものであってもよい。このようにして、基板から保護フィルムを除去した後の基板の一面において、特に高い基板面品質を達成することができる。このような水溶性材料を使用することは、基板が半導体ウエハなどの半導体基板である場合に特に有利である。
【0139】
保護フィルムに加えられる水溶性材料の被覆および/または基板に加えられる水溶性材料の被覆は、0.5~5μm、好ましくは、0.5~4μm、より好ましくは、0.5~3μm、さらに好ましくは、0.5~2μmの範囲の厚さを有してよい。このような被覆の厚さを選択することによって、基板上の水溶性材料の残留の可能性を最小にしながら、基板からの保護フィルムの除去を特に効率的かつ信頼性のある方法で促進することができる。
【0140】
水溶性材料は、保護フィルムおよび/または基板に液状で加えることができる。このようにして、保護フィルムおよび/または被覆される基板の所望の部分が、基板の一面の突起および/または凹部の場合にも、水溶性材料で完全かつ均質に被覆されることを、特に確実に確保することができる。特に完全で均質な被覆は、水溶性材料を液体形態で保護フィルムに加えることによって達成することができる。たとえば、水溶性材料は、スプレーコーティングまたはスピンコーティングによって、保護フィルムおよび/または基板に加えることができる。さらに、水溶性材料は、保護フィルムおよび/または基板にスクリーン印刷によって加えてもよい。水溶性材料を保護フィルムおよび/または基板に加えた後、水溶性材料を硬化させてもよい。このようにして、上述したように、水溶性材料を硬化させることができる。このアプローチは、保護フィルムおよび/または基板上への水溶性材料の特に信頼できる配置または位置決めを可能にする。さらに、水溶性材料の厚さを、特に正確かつ確実に制御することができる。
【0141】
水溶性材料は、保護フィルムおよび/または基板に固体の形態で加えることができる。このようにして、水溶性材料を特に簡単な方法で加えることができる。たとえば、水溶性材料は、フィルムまたはシート、特に薄膜またはシートの形態で、保護フィルムおよび/または基板に加えることができる。
【0142】
基板の一面の反対側にある面を処理するステップは、基板の厚さ方向に沿って基板を切断する工程を含む又はこの工程から成ることができる。基板は、基板を完全に分割するようにその厚さ全体に沿って切断されてもよいし、基板の厚さの一部のみに沿って切断されてもよい。基板は、存在する場合、一つ又は複数の分割ラインに沿って切断されてもよい。基板は、複数の別個の要素に分割されてもよい。別個の要素は、例えば、チップ又はダイとすることができる。
【0143】
基板の厚さ方向に沿って基板を切断するステップは、基板を機械的に切断するっ工程および/または基板をレーザ切断する工程および/または基板をプラズマ切断する工程からなることができ、またはこれらの工程を含むことができる。たとえば、基板は、ブレードダイシング又は鋸によって機械的に切断することができる。
【0144】
基板は、単一の機械的切断工程、単一のレーザ切断工程または単一のプラズマ切断工程で切断することができる。あるいは、基板は、一連の機械的切断および/またはレーザー切断および/またはプラズマ切断工程によって切断されてもよい。
【0145】
レーザ切断は、たとえば、アブレーションレーザ切断および/またはステルスレーザ切断によって、即ち、以下にさらに詳細に説明するように、レーザビームを照射することにより基板内に改質された領域を形成することによって、および/またはレーザビームを照射することにより基板内に複数のホール区域を形成することによって行うことができる。これらのホール区域の各々は、改質区域と、基板の表面に開口する改質区域内の空間とから構成されてもよい。
【0146】
ステルスレーザ切断プロセスでは、基板を通してレーザビームの透過を可能にする波長を有するレーザビームが基板に照射される。従って、基板は、レーザビームに対して透過性のある材料から作られる。レーザビームは、基板内に複数の改質区域を形成するように、少なくとも複数の位置で(例えば大半の基板の内側または内部に)基板に照射される。特に、レーザビームは、少なくとも1つの分割ラインに沿って少なくとも複数の位置で基板に照射されて、少なくとも1つの分割線に沿って基板内に複数の改質区域を形成してもよい。
【0147】
レーザビームは、パルスレーザビームであってもよい。パルス化されたレーザビームは、例えば1fs~1000nsの範囲のパルス幅を有してよい。
【0148】
改質区域は、レーザビームの照射によって改質された基板の領域である。改質区域は、基板材料の構造が改質された基板の領域であってもよい。改質区域は、基板が損傷されている基板の領域でもよい。改質区域は、クラックが形成された非晶質領域または領域を含んでもよく、或いは、クラックが形成された非晶質領域または領域であってもよい。
【0149】
これらの改質区域を形成することにより、改質区域が形成される領域における基板の強度が低下する。従って、複数の改質領域が形成された基板の分割、例えば、少なくとも1つの分割ラインに沿った分割が非常に容易になる。
【0150】
基板は、例えば、基板内の亀裂が改質区域から基板の一面および基板の一面の反対側にある面に延びる場合、ステルスレーザ切断プロセスにおいて完全に分割されてもよい。基板がステルスレーザ切断プロセスにおいて完全に分割されていない場合、この方法は、例えば、基板に外力を加えることによって基板を完全に分割するステップを更に含んでもよい。
【0151】
基板の一面の反対側にある面を処理するステップは、基板の厚さを減少させるように基板を薄くする工程を含むか、またはその工程からなり得る。基板を薄くする工程は、基板の一面の反対側にある面から基板を研削すること、および/または基板の一面の反対側にある面から基板を研磨すること、および/または基板の一面の反対側にある面から基板をエッチングすることから構成されてもよいし、これらを含んでもよい。
【0152】
基板の一面を処理するステップは、例えばステルスレーザ切断プロセスを用いることによって、保護フィルムを通して基板の一面を処理する工程を含むか、またはその工程らなり得る。このような工程では、保護フィルムを介してレーザビームが基板に照射される。この場合、レーザビームの波長は、レーザビームが保護フィルムを透過するように、即ち、保護フィルムがレーザビームに対して透過性を有するように選択される。
【0153】
基板は、例えば、基板内の亀裂が改質区域から基板の一面および一面の反対側にある面に延びる場合、ステルスレーザ切断プロセスにおいて完全に分割されてもよい。基板がステルスレーザ切断プロセスにおいて完全に分割されていない場合、この方法は、例えば、基板に外力を加えることによって基板を完全に分割するステップを更に含み得る。
【0154】
この方法は、基板の一面および/または基板の一面の反対側にある面を処理した後に、基板から保護フィルムを除去するステップを更に含むことができる。保護フィルムと基板との間の少なくとも中央領域又は一部分に水溶性材料の被覆を設けることにより、上述したように、基板からの保護フィルムの除去が著しく促進される。特に、水溶性材料は、保護フィルムを剥がすのに要する剥離力を低下させることができる。これにより、保護フィルムを除去する際の基板への損傷の危険性がさらに低減される。さらに、水溶性材料が存在するため、保護フィルムを除去した後に保護フィルム材料の残留物が基板上に残る危険性が最小限に抑えられる。
【0155】
この方法は、保護フィルムおよびクッション層を基板から除去するステップを更に含むことができる。保護フィルムおよびクッション層は、基板の一面および/または基板の一面の反対側にある面を処理した後に、基板から除去することができる。
【0156】
クッション層および保護フィルムは、個別に、すなわち順次に除去されてもよい。たとえば、最初にクッション層を除去した後、保護フィルムを除去してもよい。また、クッション層と保護フィルムとを同時に除去してもよい。
【0157】
この方法は、保護フィルム、クッション層およびベースシートを基板から除去するステップを更に含むことができる。保護フィルム、クッション層およびベースシートは、基板の一面および/または基板の一面の反対側の面を処理した後に、基板から除去することができる。
【0158】
なお、基材シート、クッション層および保護フィルムは、個別に、すなわち順次に除去してもよい。たとえば、ベースシートを最初に除去した後、クッション層を除去し、続いて保護フィルムを除去してもよい。また、ベースシートをクッション層とともに除去した後、保護フィルムを除去してもよい。また、ベースシート、クッション層および保護フィルムを共に除去してもよい。
【0159】
この方法は、基板から保護フィルムを除去した後、基板の一面を洗浄するステップ、特に、基板の一面を水で洗浄するステップを更に含むことができる。水溶性材料の残留物が保護フィルム除去後に基板上に残る場合、そのような残留物は、基板の一面を洗浄することによって、特に基板の一面を水で洗浄することによって、材料の水溶性の性質に起因して、単純で信頼性があり効率的な方法で除去することができる。従って、基板の一面に、いかなる残留物又は他のタイプの汚染物質も含まない基板面を達成することができる。たとえば、基板の一面を脱イオン水で洗浄してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0160】
以下、本発明の非限定的な実施例を、図面に関して説明する。
【
図1】
図1は、本発明の方法により処理される基板であるウエハを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る方法において、ウエハの一面に保護フィルムを加えるステップを例示する横断面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る方法において、ウエハの一面に保護フィルムを加えるステップの結果を示す横断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の変形例に係る方法において、ウエハの一面に保護フィルムを加えるステップを例示する横断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の変形例に係る方法において、保護フィルムをウエハの一面に加えるステップの結果を示す横断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る方法において、水溶性材料の被覆をウェハに加えるステップの結果を示す横断面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る方法において、ウエハに付けられたマウントテープを切断するステップを例示する横断面図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る方法において、ウエハの一面に保護フィルムを付けるステップの結果を示す横断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る方法において、ウエハに付けられた保護フィルム、クッション層およびベースシートを切断するステップを例示する横断面図である。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0161】
次に、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。好ましい実施形態は、基板を処理する方法に関する。
【0162】
第1~第3の実施形態では、基板としてのウエハ2に対して、本発明の処理方法を行う(
図1参照)。ウエハ2は、たとえば、一面4の表面(即ち、表面)にMEMSデバイスが形成されたMEMSウエハとすることができる。しかしながら、ウエハ2は、MEMSウエハに限定されるものではなく、好ましくは固体撮像デバイスであるCMOSデバイスが表の面4に形成されたCMOSウエハや、他の種類のデバイスが表面4に形成されたウエハであってもよい。
【0163】
ウエハ2は、例えば、シリコン(Si)などの半導体から作られる。このようなシリコンウエハ2は、シリコン基板上にIC(集積回路)やLSI(大規模集積)等のデバイスを含むことができる。また、ウエハ2は、たとえば、セラミック、ガラス、サファイアなどの無機材料基板上にLED(発光ダイオード)などの光学デバイスを形成して構成された光学デバイスウエハであってもよい。なお、ウエハ2は、これに限定されるものではなく、他の方法で形成することができる。さらに、上述の例示的なウエハ設計の組み合わせも可能である。
【0164】
ウエハ2の厚さは、μmの範囲、好ましくは30~1000μmの範囲とすることができる。
【0165】
ウエハ2は、円形であることが好ましい。ただし、ウエハ2の形状は特に限定されない。
【0166】
他の実施形態において、ウエハ2は、たとえば、楕円形、長円形または多角形、例えば、矩形または正方形などを有してもよい。
【0167】
ウエハ2は、その表面4に形成された複数の(ストリートとも呼ばれる)交差分割ライン6(
図1参照)を備え、これにより、ウエハ2を、上述したようなデバイス8がそれぞれ形成される複数の矩形領域に分割する。これらのデバイス8は、ウェハ2のデバイス領域10に形成される。円形のウェハ2の場合、このデバイス領域10は、好ましくは実質的に円形であり、ウェハ2の外周と同心に配列される。
【0168】
ウエハ2のデバイス領域10には、ウエハ2の平面から突出する複数の突出部11が形成されている(
図2参照)。突出部11は、たとえば、デバイス領域10のデバイス8との電気的接触を確立するためのバンプであってもよい。突出部11のウエハ2の厚み方向の高さは、20~500μmの範囲とすることができる。
【0169】
デバイス領域10は、
図1に概略的に示すように、環状の周辺限界領域12によって囲まれている。この周辺限界領域12に、デバイスは形成されていない。周辺限界領域12は、好ましくは、デバイス領域10および/またはウエハ2の外周に同心的に配列される。周辺限界領域12の径方向延長部は、mmの範囲にすることができ、好ましくは1~3mmの範囲である。
【0170】
ウェハ2はさらに、表面4とは反対側の面14、即ち、裏面を有する(
図1参照)。
【0171】
以下、本発明の第1の実施形態を、
図1~
図5を参照して説明する。
【0172】
表の面18と、表の面18の反対側の裏の面20とを有する保護フィルム16が準備される(
図2参照)。
【0173】
保護フィルム16は、高分子等のプラスチック材料で形成されてもよい。たとえば、保護フィルム16は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)等のポリオレフィンで作ることができる。保護フィルム16の膜厚は、5~500μm、好ましくは、5~200μm、より好ましくは、8~100μm、更に好ましくは、10~80μm、もっと更に好ましくは12~50μmである。本実施形態では、保護フィルム16は、その上面視において、略円形を有し、その外径はウエハ2の外径と略同一である。他の実施形態において、保護フィルム16の外径は、ウエハ2の外径よりも小さくてもよく(例えば、僅かに小さくてもよく)、または大きくてもよい(例えば、僅かに大きくてもよい)。たとえば、保護フィルム16の外径は、ウエハ2の外径よりも小さくてもよいが、ウエハ2のデバイス領域10の外径と実質的に同じであってもよいし、それよりも大きくてもよい。
【0174】
水溶性材料22の被覆が、保護フィルム16の表の面18全体に加えられる(
図2参照)。水溶性材料22は、PVA、PEGおよび/またはPVPなどの水溶性樹脂から構成されていてもよいし、水溶性樹脂を含んでいてもよい。水溶性材料22の被覆の厚さは、0.5~5μm、好ましくは、0.5~4μm、より好ましくは、0.5~3μm、更に好ましくは、0.5~2μmである。本実施形態において、水溶性材料22は、保護フィルム16に液状で、例えばスプレーコート、スピンコート、スクリーン印刷等により加えられる。
【0175】
たとえば、水溶性材料22の被覆は、保護フィルム16をウェハ2の表面4に加える直前に、例えば、直ちに、または保護フィルム16をウェハ2の表面4に加える前に、あるいは前もって、例えば、保護フィルム16の製造中または製造後すぐに、保護フィルム16の表の面18に加えることができる。
【0176】
保護フィルム16に水溶性材料22の被覆を加えた後、
図2の矢印で示すように、保護フィルム16をウェハ2の表面4に加える。保護フィルム16の表の面18はウエハ2の表面4に面しており、保護フィルム16は、保護フィルム16の表の面18全体とウエハ2の表面4全体との間に接着材が存在しないようにウエハ2に加えられている。保護フィルム16の表の面18全体には接着材が存在しない。したがって、保護フィルム16とウエハ2とが接触している領域全体において、保護フィルム16とウエハ2との間には水溶性材料22のみが存在している。保護フィルム16は、デバイス領域10に形成されたデバイス8を覆うように、ウエハ2の表面4に加えられ、例えば汚染や損傷からデバイス8を保護する。
【0177】
ウエハ2の表面4に保護フィルム16を加えた後、保護フィルム16に外部刺激を加え、ウエハ2の表面4に保護フィルム16を付ける。この付けるステップの結果を
図3に示す。
【0178】
保護フィルム16に外部刺激を加えるステップは、上述したように、保護フィルム16を加熱する工程、および/または保護フィルム16を冷却する工程、および/または保護フィルム16に圧力を加える工程、および/または保護フィルム16に真空を加える工程、および/または保護フィルム16に光またはUV線などの放射線を、例えばレーザービームを使用して照射する工程からなるものでもよいし、これらを含んでもよい。特に、本実施形態において、保護フィルム16に外部刺激を加えるステップは、保護フィルム16を加熱する工程からなるものでもよいし、加熱する工程を含んでもよい。保護フィルム16とウエハ2との間の付ける力は、加熱プロセスによって発生させることができる。保護フィルム16は、その加熱された状態にあるときに、しなやかであり、弾性があり、柔軟性があり、伸ばすことができ、柔らかく、さらに/または圧縮性があってもよい。これにより、保護フィルム16がウエハ2の表面4においてウェハ面に適合し、例えば、ウエハのトポグラフィを吸収して突出部11の輪郭に追従することを特に確実にすることができる(
図3参照)。突出部11は、保護フィルム16に少なくとも一部が埋め込まれていてもよい。
【0179】
ウエハ2の表面4に保護フィルム16を付けた後、ウエハ2の表面4および/またはウエハ2の裏面14を、ウエハ2に保護フィルム16を付けた状態で処理する。従って、ウェハ2の処理中、ウェハ2、特にデバイス領域10に形成されたデバイス8は、例えば、汚染や損傷から確実に保護される。
【0180】
ウエハ2の裏面14を処理するステップは、ウエハ2を裏面14から、例えば、分割ライン6に沿って切断する工程を含むか、またはその工程から成る(
図1参照)。たとえば、ウェハ2を完全に分割するようにウェハ2の厚さ全体に沿って切断してもよいし、ウェハ2の厚さの一部のみに沿って切断してもよい。ウエハ2は、チップやダイなどの複数の別個の素子が得られるように切断することによって、分割ライン6に沿って完全に分割されてもよい。このようにして得られたチップまたはダイの各々は、一つ又は複数のデバイス8を備えることができる。
【0181】
ウエハ2を裏面14から切断するステップは、上述したように、ウエハ2を機械的に切断する工程、および/またはウエハ2をレーザ切断する工程、および/またはウエハ2をプラズマ切断する工程から成ってもよいし、それらを含んでもよい。
【0182】
ウエハ2の裏面14を処理するステップは、ウエハ2の厚さを減少させるようにウエハ2を薄くする工程を含むか、またはその工程からなるものでもよい。ウエハ2を薄くする工程は、上述したように、ウエハ2を裏面14から研削すること、および/またはウエハ2を裏面14から研磨すること、および/またはウエハ2を裏面14からエッチングすることからなるものでもよいし、それらを含んでもよい。
【0183】
ウエハ2の表面4を処理するステップは、例えばステルスレーザ切断プロセスを使用することによって、保護フィルム16を通して表面4を処理する工程を含むか、またはその工程からなるものでもよい。このような処理において、上述したように、保護フィルム16を介してウエハ2にレーザ光が加えられる。
【0184】
ウエハ2の表面4および/またはウエハ2の裏面14を処理した後、保護フィルム16をウエハ2から除去する。保護フィルム16とウエハ2とが接する区域全体において、保護フィルム16とウエハ2との間に水溶性材料22が存在するので、ウエハ2からの保護フィルム16の除去が非常に容易になる。特に、水溶性材料22は、保護フィルム16をウエハ2から剥離するのに必要な剥離力を低下させる。これにより、保護フィルム16を除去する際にウエハ2が損傷を受ける危険性がさらに低減される。さらに、水溶性材料22の存在により、保護フィルム16を除去した後に保護フィルム材料の残留物がウエハ2上に残る危険性が最小限に抑えられる。
【0185】
ウエハ2から保護フィルム16を除去した後、ウエハ2の表面4を脱イオン水などの水で洗浄してもよい。例えば、ウエハ2上の突出部11の存在により、保護フィルム除去後にウエハ2上に水溶性材料22の残留物が残っている場合、そのような残留物は、水溶性材料22の水溶性の性質のために、表面4を水で洗浄することによって、単純で、信頼性があり、効率的な方法で除去することができる。従って、残留物または他のタイプの汚染物質を含まないウエハ面を、ウエハ2の表面4において達成することができる。
【0186】
図4は、第1の実施形態の変形例に係るウエハ2の表面4に保護フィルム16を加えるステップを示す図である。本変形例の方法は、保護フィルム16の外径がウエハ2の外径よりも大きく、水溶性材料22の被覆が保護フィルム16の表の面18の中央領域のみに加えられ、保護フィルム16の表の面18の周辺領域のみに存在する接着層24が保護フィルム16に設けられている点で(
図4参照)、第1実施形態の方法と異なる。
【0187】
図4にさらに示すように、保護フィルム16の外周部分は環状フレーム26に付けられている。特に、保護フィルム16の外周部分は、保護フィルム16が環状フレーム26の中心開口部、即ち、環状フレーム26の内径よりも内側の領域を塞ぐように環状フレーム26に付けられている。本実施形態において、保護フィルム16をウエハ2に付ける前に、保護フィルム16の外周部分を環状フレーム26に付けるステップを行う。これにより、保護フィルム16の取り扱い、特に保護フィレウム16をウエハ2に加えて付ける際の取り扱いが容易になる。また、保護フィルム16をウエハ2に付けた後、保護フィルム16を介してウエハ2を環状フレーム26に保持することができる。このようにして、ウエハ2、保護フィルム16および環状フレーム26からなるウエハユニットが形成され、ウェハ2の処理、取扱いおよび/または運搬が容易にされる。
【0188】
保護フィルム16は、以下に詳述するように、接着材、例えば、接着層24の一部分によって環状フレーム26に付けられてもよい。また、保護フィルム16は、保護フィルム16に外部刺激を加えて環状フレーム26に付けてもよい。この場合、保護フィルム16と環状フレーム26との間に接着材が存在しなくてもよい。保護フィルム16に外部刺激を加えるステップは、上述したように、保護フィルム16を加熱する工程、および/または保護フィルム16を冷却する工程、および/または保護フィルム16に圧力を加える工程、および/または保護フィルム16に真空を加える工程、および/または保護フィルム16に光またはUV線などの放射線を、例えばレーザービームを使用して照射する工程からなってもよいし、これらを含んでもよい。特に、保護フィルム16に外部刺激を加えるステップは、保護フィルム16を加熱する工程からなってもよいし、または加熱する工程を含んでもよい。保護フィルム16と環状フレーム26との間の付ける力は、加熱処理によって発生されてもよい。
【0189】
水溶性材料22が加えられる保護フィルム16の表の面18の中央領域は、ウエハ2のデバイス領域10に対応し、実質的に一致する。接着層24が設けられた保護フィルム16の表の面18の周辺領域は、保護フィルム16の表の面18の中央領域を囲む。接着層24が設けられた保護フィルム16の表の面18の周辺領域は、ウエハ2の周辺限界領域12にに対応し、実質的に一致する。接着層24は、略環状の形状を有している。保護フィルム16は、接着層24がウエハ2の周辺限界領域12のみと接触するように、ウエハ2の表面4に(
図4の矢印で示すように)加えられる。保護フィルム16の表の面18の中央領域とウエハ2のデバイス領域10との間には、水溶性材料22のみが存在する。
【0190】
図4に例示された実施形態は、様々な方法で更に修正することができる。特に、接着層24は、保護フィルム16の表の面18の外側、即ち、保護フィルム16の表の面18の中央領域の径方向外側の区域全体に設けられてもよい。この場合、接着層24は、保護フィルム16の表の面18の中央領域の外周縁から保護フィルム16の外周縁まで延在している。あるいは、たとえば、接着層24は、保護フィルム16の表の面18のうち、ウエハ2の周辺限界領域12(
図4および
図5参照)および環状フレーム26と接触する区域にのみ設けられてもよい。
【0191】
図4に示す実施形態において、水溶性材料22は、保護フィルム16の表の面18の中央領域にのみ加えられる。このようにして、水溶性材料22は、接着層24の内周縁まで、径方向に延在する。水溶性材料22は、接着層24の内周縁の外側、即ち、径方向外側には存在しない。この配列は、たとえば、保護フィルム16の表の面18のうち接着層24の内周縁よりも外側の区域、すなわち保護フィルム16の表の面18の中央部よりも外側の区域を、例えばマスクを用いて保護フィルム16の表の面18に水溶性材料22を加えることにより、特に確実に実現することができる。水溶性材料22は、たとえば、スクリーン印刷またはスプレーコートによって保護フィルム16の表の面18に加えることができる。
【0192】
あるいは、たとえば、水溶性材料22の被覆を保護フィルム16の表の面18全体に加えてもよい。水溶性材料22の被覆は、保護フィルム16の表の面18のうちウエハ2の表面4と接触する部分全体に加えられてもよい。接着層24が存在する保護フィルム16の表の面18の区域において、水溶性材料22は、接着層24の上、すなわち、保護フィルム16と接触する接着層24の面とは反対側の接着層24の面に設けられてもよい
【0193】
ウエハ2の表面4に保護フィルム16を加えた後、保護フィルム16に外部刺激を加え、ウエハ2の表面4に保護フィルム16を付ける。この付けるステップの結果を
図5に示す。
【0194】
保護フィルム16には、第1の実施形態の方法と同様にして外部刺激を加え、保護フィルム16の表の面18の中央領域をウェハ2のデバイス領域10に付ける。また、保護フィルム16の表の面18の周辺領域は、接着層24によってウエハ2の周辺限界領域12に接着されている。接着層24を設けることにより、保護フィルム16のウエハ2への付着性をさらに向上させることができる。接着層24は保護フィルム16の表の面18の周辺領域にしか存在しないので、保護フィルム16とウエハ2とが接着層24によって接着される領域は、保護フィルム16の表の面18全体に接着層を設けた場合に比べて大幅に小さくなる。これにより、保護フィルム16をウエハ2からより容易に剥がすことができ、ウエハ2の損傷の危険性を大幅に低減することができる。また、接着層24は、デバイスが形成されていないウエハ2の周辺限界領域12のみに接触するので、デバイス領域10内のデバイス8が接着残留物によって汚染されることを確実に防止することができる。
【0195】
接着層24の接着材は、熱、UV放射、電場および/または化学剤などの外部刺激によって硬化することができる。このようにして、処理後のウエハ2から保護フィルム16を特に容易に除去することができる。接着材に外部刺激を与えて接着力を低下させ、保護フィルム16の除去を特に容易にすることができる。
【0196】
ウエハ2の表面4に保護フィルム16を付けた後、ウエハ2の表面4および/または裏面14を処理し、ウエハ2から保護フィルム16を除去し、ウエハ2の表面4を、例えば、脱イオン水などの水で洗浄するステップは、第1の実施形態に係る方法と同様に行うことができる。
【0197】
保護フィルム16の表の面18の中央領域とウエハ2のデバイス領域10との間には水溶性材料22が存在するので、ウエハ2からの保護フィルム16の除去が著しく容易になる。特に、水溶性材料22は、保護フィルム16をウエハ2から剥がすのに必要な剥離力を低下させる。これにより、保護フィルム16を除去するステップ、特にデバイス領域10において、ウエハ2が損傷を受ける危険性がさらに低減される。さらに、水溶性材料22の存在により、保護フィルム16を除去した後に、保護フィルム材料の残留物がウエハ2上、特にデバイス領域10内に残留する危険性が最小限に抑えられる。上述したように、接着層24の接着材に外部刺激を加えて硬化させることにより、ウエハ2から保護フィルム16を除去するステップをさらに容易にすることができる。
【0198】
以下、本発明の第2の実施形態を、
図6~
図8を参照して説明する。
【0199】
第2の実施形態に係る方法が第1の実施形態に係る方法と異なる点は、保護フィルム16の表の面18ではなくウエハ2の表面4に水溶性材料22のコーティングが施されている点と、保護フィルム16の外径がウエハ2の外径よりも大きい点である。さらに、第2の実施形態の方法は、ウエハ2をマウントテープ28に付ける任意のステップを含む(
図6参照)。第1実施形態の方法の残りのステップは、第2実施形態の方法と同様に行われる。そのため、重複する詳細な説明は省略する。
【0200】
特に、第2の実施形態の方法において、ウエハ2の裏面14を、例えば接着材によってマウントテープ28に付けるようにしてもよい。接着材は、ウエハ2の裏面14に接触するマウントテープ28の表面全体に存在してもよいし、この表面の周辺領域にのみ存在してもよい。代替的に、マウントテープ28とウエハ2の裏面14との間に接着材が存在しなくてもよい。この場合、上述した外部刺激などの外部刺激をマウントテープ28に加えることにより、マウントテープ28をウエハ2の裏面14に付けることができる。
【0201】
さらに
図6に示すように、マウントテープ28の外周部分は環状フレーム30に付けられている。特に、マウントテープ28の外周部は、マウントテープ28が環状フレーム30の中心開口部、即ち、環状フレーム30の内径内側の領域を塞ぐように環状フレーム30に付けられている。本実施形態において、ウエハ2の表面4に水溶性材料22を加える前に、マウントテープ28の外周部分を環状フレーム30に付けるステップを行う。これにより、ウエハ2、特に水溶性材料22の被覆を加える際の取扱いが容易になる。
【0202】
マウントテープ28をウェハ2の裏面14に付けた後、水溶性材料22の被覆がウェハ2の表面4全体に加えられる。この加えるステップの結果を
図6に示す。水溶性材料22の被覆は、突出部11の表面を含むウェハ2の表面4全体を覆う。ウエハ2の表面4に加えられる水溶性材料22の被覆の厚さは、0.5~5μm、好ましくは、0.5~4μm、より好ましくは、0.5~3μm、さらに好ましくは、0.5~2μmである。
【0203】
ウエハ2の表面4に加えられる水溶性材料22は、第1の実施形態の方法で説明したものと同じ水溶性材料である。特に、水溶性材料22は、PVA、PEGおよび/またはPVPなどの水溶性樹脂から成るものでもよいし、水溶性樹脂を含んでもよい。
【0204】
本実施形態において、ウエハ2の表面4に、水溶性材料22を液状で、たとえば、スプレーコート、スピンコート、スクリーン印刷等により加える。この加える処理において、ウエハ2を保持できるチャックテーブルのような支持体またはキャリアは、マウントテープ28の存在により、液体水溶性材料22による汚染から保護される。
【0205】
水溶性材料22の被覆をウエハ2の表面4に加えた後、例えば、切断ブレードを用いてウエハ2の外周に沿ってマウントテープ28を切断する任意のステップが、
図7の破線で示すように、行われる。マウントテープ28は、ウェハ2の外径と実質的に同じ外径を有するように切断される(
図7および8参照)。この切断ステップは、特に、保護フィルム16が環状フレームすなわち環状フレーム26(
図8参照)によっても保持されるので、その後、保護フィルム16をウエハ2に加えるステップを容易にする。
【0206】
代替の任意のステップとして、マウントテープ28を切断するのではなく、ウエハ2の表面4に水溶性材料22の被覆を加えた後、ウエハ2に保護フィルム16を加える前に、マウントテープ28をウエハ2から除去してもよい。
【0207】
マウントテープ28を切断するかまたはマウントテープ28をウェハ2から除去する任意のステップの後に、保護フィルム16が加えられ、ウェハ2の表面4に付けられる。
【0208】
【0209】
保護フィルム16をウエハ2に加えて付けるステップは、第1の実施形態の方法で説明したのと同様である。保護フィルム16の外周部分は、第1実施形態の変形例に係る方法と同様にして、環状フレーム26に付けられている。
【0210】
特に、保護フィルム16をウェハ2に加える際には、保護フィルム16の表の面18がウェハ2の表面4に面し、保護フィルム16がウェハ2に加えられて、保護フィルム16の表の面18全体とウェハ2の表面4全体との間に接着材が存在しないようにする。保護フィルム16の表の面18全体には接着材が存在しない。したがって、保護フィルム16とウエハ2とが接触している領域全体において、保護フィルム16とウエハ2との間には水溶性材料22のみが存在している。保護フィルム16は、デバイス領域10に形成されたデバイス8を覆うように、ウエハ2の表面4に加えられ、例えば、汚染や損傷からデバイス8を保護する。
【0211】
ウエハ2の表面4に保護フィルム16を加えた後、保護フィルム16に外部刺激を加え、ウエハ2の表面4に保護フィルム16を付ける。保護フィルム16に外部刺激を与える方法は、第1の実施形態に係る方法について説明したのと同様である。
【0212】
ウエハ2の表面4に保護フィルム16を付けた後、ウエハ2の表面4および/または裏面14を処理し、ウエハ2から保護フィルム16を除去し、ウエハ2の表面4を、例えば脱イオン水などの水で洗浄するステップは、第1の実施形態に係る方法と同様に行うことができる。
【0213】
第2の実施形態の変形例に係る方法において、ウエハ2の外径と略同一の外径を有する保護フィルム16を用いてもよい(
図2および
図3参照)。この変形例において、水溶性材料22の被覆が保護フィルム16の表の面18ではなくウエハ2の表面4に加えられている点のみが、第1の実施形態の方法と実質的に異なる。
【0214】
他の実施形態において、水溶性材料22の被覆をウエハ2の表面4に加えてもよく、水溶性材料22の被覆を保護フィルム16の表の面18に加えてもよい。
【0215】
また、第1の実施形態の変形例に係る方法(
図4参照)と同様に、保護フィルム16の表の面18の周辺領域のみに存在する接着層24を保護フィルム16に設けてもよい。さらに、接着層24の配列および/または水溶性材料22の配列は、例えば、第1の実施形態の変形例に関連して上述したように変形することができる。
【0216】
以下、本発明の第3の実施形態を、
図9および
図10を参照して説明する。
【0217】
第3の実施形態に係る方法は、保護フィルム16の裏の面20にクッション層32及びベースシート34が付けられている点で、第2の実施形態に係る方法と異なる(
図9及び
図10参照)。さらに、ウエハ2に付けられた保護フィルム16、クッション層32およびベースシート34を切断する任意のステップを行う。第2の実施形態の方法の残りのステップは、第3の実施形態の方法と同様に行われる。そのため、重複する詳細な説明は省略する。
【0218】
特に、第3の実施形態の方法において、保護フィルム16をウエハ2の表面4に加えて付ける前に、保護フィルム16の裏の面20にクッション層32およびベースシート34を付けるようにしてもよい。保護フィルム16の裏の面20には、クッション層32の表の面が付けられ、クッション層32の裏の面には、ベースシート34の表の面が付けられている。クッション層32の裏の面は、クッション層32の表の面の反対側にある。クッション層32およびベースシート34は、上述した機能、特性および特徴を有することができる。
【0219】
クッション層32とベースシート34とが付けられた保護フィルム16は、第2の実施形態の方法と同様にして、ウエハ2の表面4に付けられる。
【0220】
クッション層32およびベースシート34が付けられた保護フィルム16をウエハ2の表面4に加えて付ける際には、上述したように、突出部11が保護フィルム16およびクッション層32に埋め込まれているので、ウエハ処理時の損傷から特に確実に保護される。
【0221】
保護フィルム16にクッション層32およびベースシート34を付けた状態でウエハ2の表面4に付けた後、
図9の矢印および破線で示すように、保護フィルム16、クッション層32およびベースシート34をウエハ2の外周に沿って、例えば切断ブレードを用いて切断する任意のステップを行う。この切断ステップの結果を
図10に示す。保護フィルム16、クッション層32およびベースシート34は、それぞれウエハ2の外径と実質的に同じ外径を有するように切断される(
図9および
図10参照)。この切断ステップは、特に、ウエハ2の表面4および/またはウエハ2の裏面14を処理するときに、ウエハ2のその後の取り扱いを容易にすることができる。
【0222】
保護フィルム16、クッション層32およびベースシート34を切断する任意のステップの後、ウエハ2の表面4および/または裏面14を処理するステップ、ウエハ2から保護フィルム16を除去するステップ、およびウエハ2の表面4を水、例えば脱イオン水で洗浄するステップは、第1および第2の実施形態に係る方法について上述したのと同様にして行うことができる。
【0223】
ベースシート34、クッション層32および保護フィルム16は、ウエハ2から個別に、すなわち順次に除去されてもよい。たとえば、ベースシート34を最初に除去し、次にクッション層32を除去し、続いて保護フィルム16を除去してもよい。また、ベースシート34を最初にクッション層32とともに除去した後、保護フィルム16を除去してもよい。また、ベースシート34、クッション層32及び保護フィルム16を共に除去してもよい。
【0224】
第3の実施形態による方法は、水溶性材料22の被覆を、ウエハ2の表面4ではなく、保護フィルム16の表の面18に加えることによって変形することができる。あるいは、水溶性材料22の被覆をウェハ2の表面4に加え、水溶性材料22の被覆を保護フィルム16の表の面18に加えてもよい。
【0225】
また、第1の実施形態の変形例に係る方法(
図4参照)と同様に、保護フィルム16の表の面18の周辺領域のみに存在する接着層24を保護フィルム16に設けてもよい。さらに、接着層24の配列および/または水溶性材料22の配列は、例えば、第1の実施形態の変形例に関連して上述したように変形することができる。
以上説明した第1実施形態~第3の実施形態に係る方法では、基板の表面4すなわちウエハ2に保護フィルム16を加えて付ける。しかしながら、本発明の他の実施形態では、保護フィルムを基板の裏面に加えて付けることができる。