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特許7456671リチウム二次電池用正極材、これを含む正極及びリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極材、これを含む正極及びリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極材、これを含む正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240319BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240319BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240319BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 E
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022549517
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 KR2021003342
(87)【国際公開番号】W WO2021187907
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0033435
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ラム・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・オム
(72)【発明者】
【氏名】ナ・リ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドン・リュン・カン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・グン・キム
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/103460(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057078(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/020354(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/151834(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163483(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、C01G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径(D50)が異なる第1正極活物質及び第2正極活物質を含む正極材であり、
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、それぞれ独立して、遷移金属中のニッケルのモル比が80モル%以上であるリチウム遷移金属酸化物であり、
前記第1正極活物質の平均粒径(D50)が前記第2正極活物質の平均粒径(D50)より大きく、
下記式(1)を満たし、
式(1):0<{(B-A)/B}×100≦10
前記式(1)中、前記Aは、前記第1正極活物質の粒子強度値であり、前記Bは、前記第2正極活物質の粒子強度値であり、
前記第1正極活物質の粒子強度値は、前記第1正極活物質に圧力をかけて前記第1正極活物質にクラックが発生する時点におけるMPa単位での圧力の値であり、前記第2正極活物質の粒子強度値は、前記第2正極活物質に圧力をかけて前記第2正極活物質にクラックが発生する時点におけるMPa単位での圧力の値である、正極材。
【請求項2】
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、それぞれ独立して、下記[化学式1]で表されるリチウム遷移金属酸化物であり、
[化学式1]
Li1+aNiCo
前記化学式1中、
0≦a≦0.3、0.8≦x<1.0、0<y<0.2、0<z<0.2、0≦w≦0.1であり、
は、Mn及びAlよりなる群から選択される1種以上であり、
は、W、Mo、Cr、Zr、Ti、Mg、Ta及びNbよりなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の正極材。
【請求項3】
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、それぞれ独立して、下記[化学式2]で表されるリチウム遷移金属酸化物であり、
[化学式2]
Li1+aNiCoMnz1Alz2
前記化学式2中、
0≦a≦0.3、0.8≦x<1.0、0<y<0.2、0<z1<0.2、0<z2<0.2、0≦w≦0.1であり、
は、W、Mo、Cr、Zr、Ti、Mg、Ta及びNbよりなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の正極材。
【請求項4】
前記第1正極活物質の全遷移金属中のニッケルのモル比が85モル%以上であるリチウム遷移金属酸化物であり、
前記第2正極活物質の全遷移金属中のニッケルのモル比が80モル%から85モル%であるリチウム遷移金属酸化物である、請求項1に記載の正極材。
【請求項5】
前記第1正極活物質の粒子強度Aが50MPaから500MPaである、請求項1に記載の正極材。
【請求項6】
前記第2正極活物質の粒子強度Bが50MPaから500MPaである、請求項1に記載の正極材。
【請求項7】
前記正極材は、バイモーダル粒度分布を有する、請求項1に記載の正極材。
【請求項8】
前記第1正極活物質の平均粒径(D50)は、8μm超50μm以下である、請求項1に記載の正極材。
【請求項9】
前記第2正極活物質の平均粒径(D50)は、0.1μmから8μmである、請求項1に記載の正極材。
【請求項10】
前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、50:50から99:1の重量比で含まれる、請求項1に記載の正極材。
【請求項11】
請求項1に記載の正極材を含む正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年3月18日に出願された韓国特許出願第10-2020-0033435号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極材及び前記正極材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に対する技術の開発と需要の増加につれて、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加している。かかる二次電池の中でも、高いエネルギー密度及び電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く用いられている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、この中でも、作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoO等のリチウムコバルト複合金属酸化物が主に用いられている。しかし、LiCoOは、脱リチウムによる結晶構造の不安定化のため熱的特性が劣悪である。また、前記LiCoOは高価であるため、電気自動車等のような分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
前記LiCoOを代替するための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnO又はLiMn等)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO等)又はリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiO等)等が開発された。この中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を有して大容量の電池の具現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に対する研究と開発がより活発に行われている。しかし、前記LiNiOは、LiCoOに比べて熱安定性が劣り、充電状態で外部からの圧力等により内部短絡が発生すると、正極活物質自体が分解されて電池の破裂及び発火を招くという問題があった。これにより、前記LiNiOの優れた可逆容量は維持しながらも低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をCo、Mn又はAlで置換したリチウム遷移金属酸化物が開発された。
【0006】
このようなリチウム遷移金属酸化物、特に、高含量のニッケル(Ni‐rich)を含むリチウム遷移金属酸化物を正極活物質として用いるリチウムイオン電池の場合、電池の容量、高出力有無及び高温におけるガス発生の有無は、正極活物質の組成、不純物の含量、表面に存在するリチウム副産物の含量のような化学的特性だけでなく、正極活物質粒子の大きさ、表面積、密度及び形状などの物理的特性にも影響を受ける。
【0007】
一般に、電池の体積エネルギー密度(volumetric energy density)を最大に高めるために、大粒径を有する正極活物質と小粒径を有する正極活物質を混合して用いることで、小粒径の正極活物質が大粒径の正極活物質粒子の間の空隙を埋めることにより電池の体積エネルギー密度を向上する方法が使用され、より一層緻密な構造の正極活物質層を製造するためにロールプレスを用いて正極活物質層を圧延する方法が用いられていた。この際、大粒径を有する正極活物質と小粒径を有する正極活物質との間の粒子強度の差により、圧延時に相対的に粒子強度が弱い粒子に過度なクラック(crack)が発生し、粒子が本来の形状を失うだけではなく、電解液との接触面積が過度に広くなるのに伴い、これを電池に適用する場合、寿命特性が低下するという問題点があった。
【0008】
したがって、体積エネルギー密度を改善し、この際、正極活物質の圧延時の粒子割れを抑制して寿命特性を改善することができる正極材の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6601500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1技術的課題は、平均粒径が異なる2種の正極活物質を含む正極材における圧延時の粒子割れを抑制することができる正極材を提供することである。
【0011】
本発明の第2技術的課題は、前記正極材を含む正極を提供することである。
【0012】
本発明の第3技術的課題は、前記正極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一側面において、本発明は、平均粒径が異なる第1正極活物質及び第2正極活物質を含み、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、それぞれ独立して、遷移金属中のニッケルのモル比が80モル%以上であるリチウム遷移金属酸化物であり、前記第1正極活物質の平均粒径が前記第2正極活物質の平均粒径より大きく、下記式(1)を満たす正極材を提供する。
式(1):0<{(B-A)/B}×100≦10
【0014】
前記式(1)中、前記Aは、第1正極活物質の粒子強度値であり、前記Bは、第2正極活物質の粒子強度値を意味する。
【0015】
他の側面において、本発明は、前記正極材を含むリチウム二次電池用正極、及びこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る正極材は、小粒径正極活物質粒子と大粒径正極活物質粒子の粒子強度の差が小さいため、正極圧延時の正極活物質粒子の割れ現象を効果的に抑制することができる。
【0017】
また、本発明は、大粒径正極活物質より粒子強度が高い小粒径正極活物質粒子を用いることにより、寿命特性をさらに改善できるようにした。
【0018】
したがって、本発明の正極材を用いる場合、活物質粒子の割れにより発生する電解液との副反応の発生を最小化することができ、優れた寿命特性を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で製造した正極材を用いて製造された正極の断面を示すSEMイメージである。
図2】比較例1で製造した正極材を用いて製造された正極の断面を示すSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈されるべきである。
【0022】
本明細書の全体において、「平均粒径(D50)」は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に相当する粒径として定義することができる。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。前記レーザー回折法は、一般的に数nm領域から数mm程度の粒径の測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0023】
正極材
本発明者達は、平均粒径が異なる2種の正極活物質を混合して用い、ただし、相対的に平均粒径が大きい大粒径の第1正極活物質と、相対的に平均粒径が小さい小粒径の第2正極活物質との粒子強度の差を最適化することにより、高い体積エネルギー密度を有しながらも粒子割れ(crack)を抑制することができ、これにより、電池への適用時に高温寿命特性を改善することができることを見出し、本発明を完成した。
【0024】
以下、本発明に係る正極材に対して具体的に説明する。
【0025】
本発明に係る正極材は、平均粒径が異なる第1正極活物質及び第2正極活物質を含む正極材であり、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、それぞれ独立して、全遷移金属中のニッケルのモル比が80モル%以上であるリチウム遷移金属酸化物であり、前記第1正極活物質の平均粒径が前記第2正極活物質の平均粒径より大きく、第1正極活物質及び第2正極活物質の粒子強度が下記式(1)を満たすものである。
式(1):0<{(B-A)/B}×100≦10
【0026】
前記式(1)中、前記Aは、第1正極活物質の粒子強度値であり、前記Bは、第2正極活物質の粒子強度値である。
【0027】
具体的に、本発明に係る正極材は、平均粒径が異なる第1正極活物質及び第2正極活物質を含み、バイモーダル粒度分布を有する。
【0028】
この際、前記第1正極活物質は、相対的に平均粒径が大きい大粒径粒子であり、前記第2正極活物質は、相対的に平均粒径が小さい小粒径粒子である。
【0029】
より具体的には、前記第1正極活物質は、平均粒径(D50)が8μm超50μm以下、好ましくは8.5μmから30μm、より好ましくは8.5μmから25μmであってよく、前記第2正極活物質は、平均粒径(D50)が0.1μmから8μm、好ましくは1μmから8μm、より好ましくは2μmから8μmであってよい。
【0030】
前記第1正極活物質及び第2正極活物質の平均粒径(D50)が前記範囲を満たす場合、前記第1正極活物質の粒子間に第2正極活物質粒子が満たされることにより、これを含む正極材のタップ密度(tap density)が向上され得る。前記タップ密度が高いほど電極の充填密度(packing density)が高くなるので、これを用いて電極製造時、正極集電体の表面に前記タップ密度を有する正極活物質を含むスラリーを薄く塗布することができるため、コーティング後の電極の厚さが薄く改善され、これを圧延する過程で圧延密度を合わせるための電極厚さに到達するために必要な圧力が少なくかかり、圧延による正極活物質の割れ(crack)を改善することができる。併せて、体積エネルギー密度(volumetric energy density)の改善に伴って容量特性をより改善することができる。
【0031】
一方、前記第1正極活物質と第2正極活物質は、それぞれ独立して、全遷移金属中のニッケルのモル比が80モル%以上である高濃度ニッケル含有リチウム遷移金属酸化物である。
【0032】
前記高濃度ニッケル含有リチウム遷移金属酸化物は、単位体積当り容量が大きいため、これを電池に適用する場合、優れた容量特性を具現することができる。
【0033】
好ましくは、前記第1正極活物質と第2正極活物質は、それぞれ独立して、下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含むものであってよい。
[化学式1]
Li1+aNiCo
【0034】
前記化学式1中、前記Mは、Mn及びAlよりなる群から選択される1種以上であり、好ましくはMn及びAlを同時に含むものであってよい。
【0035】
前記Mは、W、Mo、Cr、Zr、Ti、Mg、Ta及びNbよりなる群から選択される1種以上であってよい。
【0036】
前記1+aは、リチウム遷移金属酸化物内のリチウムのモル比を示すものであって、0≦a≦0.3、好ましくは0≦a≦0.2であってよい。
【0037】
前記xは、全遷移金属中のニッケルのモル比を示すものであって、0.8≦x<1.0、0.80≦x≦0.99、0.80≦x≦0.95、0.85≦x<1、又は0.80≦x≦0.85であってよい。ニッケル含有量が前記範囲を満たす場合、優れた容量特性を具現することができる。
【0038】
前記yは、全遷移金属中のコバルトのモル比を示すものであって、0<y<0.20、0<y<0.15、又は0.01≦y≦0.10であってよい。
【0039】
前記zは、全遷移金属中のMのモル比を示すものであって、0<z<0.2、0<z<0.15、又は0.01<z<0.10であってよい。
【0040】
前記wは、全遷移金属中のMのモル比を示すものであって、0≦w≦0.1、又は0≦w≦0.05であってよい。
【0041】
より具体的には、前記第1正極活物質と第2正極活物質は、それぞれ独立して、下記化学式2で表されるリチウム遷移金属酸化物を含むものであってよい。
[化学式2]
Li1+aNiCoMnz1Alz2
【0042】
前記化学式2中、a、x、y、w、Mは、前記化学式1で定義されたものと同一である。
【0043】
すなわち、前記Mは、W、Mo、Cr、Zr、Ti、Mg、Ta及びNbよりなる群から選択される1種以上であってよい。
【0044】
前記1+aは、リチウム遷移金属酸化物内のリチウムのモル比を示すものであって、0≦a≦0.3、好ましくは0≦a≦0.2であってよい。
【0045】
前記xは、全遷移金属中のニッケルのモル比を示すものであって、0.8≦x<1.0、0.80≦x≦0.99、0.80≦x≦0.95、0.85≦x<1、又は0.80≦x≦0.85であってよい。
【0046】
前記yは、全遷移金属中のコバルトのモル比を示すものであって、0<y<0.20、0<y<0.15、又は0.01≦y≦0.10であってよい。
【0047】
前記wは、全遷移金属中のMのモル比を示すものであって、0≦w≦0.1、又は0≦w≦0.05であってよい。
【0048】
一方、前記z1は、遷移金属中のMnのモル比を示すものであって、0<z1<0.2、0<z1≦0.15、又は0<z1≦0.10であってよい。
【0049】
前記z2は、遷移金属中のAlのモル比を示すものであって、0<z2<0.2、0<z2≦0.15、又は0<z2≦0.10であってよい。
【0050】
前記第1正極活物質と第2正極活物質は、組成が同一であるか、異なっていてよい。例えば、前記第1正極活物質は、遷移金属中のニッケルのモル比が85モル%以上であるリチウム遷移金属酸化物を含み、前記第2正極活物質は、遷移金属中のニッケルのモル比が80モル%から85モル%であるリチウム遷移金属酸化物を含んでよい。
【0051】
一方、前記第1正極活物質及び第2正極活物質は、必要に応じて、前記リチウム遷移金属酸化物の表面にAl、Ti、W、B、F、P、Mg、Ni、Co、Fe、Cr、V、Cu、Ca、Zn、Zr、Nb、Mo、Sr、Sb、Bi、Si、及びSよりなる群から選択された1種以上の元素(以下、「コーティング元素」と記す)を含むコーティング層をさらに含んでよい。前記のようなコーティング層を含む場合、リチウム遷移金属酸化物と電解液の接触が遮断され、電解液との副反応によるガスの発生及び遷移金属の溶出を効果的に抑制することができる。
【0052】
前記コーティング層は、リチウム遷移金属酸化物と前記コーティング元素を含む原料物質を混合した後、200~500℃の温度に熱処理する方法を介して形成されてよい。
【0053】
一方、本発明に係る正極材は、大粒子である第1正極活物質の粒子強度をA、小粒子である第2正極活物質の粒子強度をBとするとき、下記式(1)を満たす。
式(1):0<{(B-A)/B}×100≦10
【0054】
前記式(1)を満たす場合、大粒径を有する第1正極活物質と小粒径を有する第2正極活物質の粒子強度が類似に調節されることにより、正極圧延時にある一方に物理的な力が集中されないように分散されるので、第1正極活物質及び第2正極活物質のそれぞれが本来の形状を維持することができ、粒子割れを抑制することができるのである。
【0055】
具体的には、第1正極活物質の粒子強度と第2正極活物質の粒子強度が前記式(1)の範囲を超える場合、圧延時に相対的に粒子強度が低い粒子に物理的な力が集中されることにより粒子割れが発生することがあり、粒子割れにより正極活物質と電解液との間の接触面積が広くなるので、これを電池に適用する際に寿命特性が劣ることがある。
【0056】
また、第1正極活物質の粒子強度と第2正極活物質の粒子強度が式(1)の範囲未満である場合、すなわち、小粒子である第2正極活物質の粒子強度Bが大粒子である第1正極活物質の粒子強度Aより低い場合には、大粒子より相対的に低い粒子強度を有する小粒子割れが主に発生するようになる。小粒子の場合、比表面積が大きく、相対的に電解液との接触に脆弱なので、小粒子割れが発生する場合、大粒子割れが発生する場合に比べて電池の寿命性能の低下がより顕著に表れる。
【0057】
具体的には、前記第1正極活物質の粒子強度Aは、50から500MPa、好ましくは100から200MPaであり、前記第2正極活物質の粒子強度Bは、50から500MPa、好ましくは100から200MPaであってよい。第1正極活物質と第2正極活物質の粒子強度が前記範囲を満たす場合、正極圧延時に粒子割れが発生しないとともに、優れた圧延密度を具現することができる。
【0058】
一方、正極活物質の粒子強度は、原料物質である正極活物質前駆体の組成及び特性と焼成条件により異なるため、正極活物質前駆体の組成及び/又は特性(表面積、密度、形状等)により焼成条件(温度及び時間)を適切に調節することで所望の粒子強度を有する正極活物質を製造することができる。
【0059】
本発明に係る正極材は、粒子強度が前記式(1)の条件を満たす第1正極活物質と第2正極活物質を混合して製造されてよい。この際、前記第1正極活物質と前記第2正極活物質は、50:50から99:1の重量比、好ましくは70:30から90:10の重量比で混合するのが好ましい。第1正極活物質と第2正極活物質の混合比が前記範囲を満たす場合、正極材のタップ密度向上の効果を得ることができる。
【0060】
本発明によると、前記第1正極活物質及び第2正極活物質を含む正極材のタップ密度は、1.00g/ccから5.00g/cc、好ましくは1.50g/ccから3.50g/cc、最も好ましくは2.00g/ccから3.00g/ccであってよい。正極材のタップ密度が前記範囲を満たす場合、エネルギー密度に優れた正極を製造することができる。
【0061】
正極
また、本発明は、前述した方法により製造された正極材を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0062】
具体的に、前記正極は、正極集電体、及び前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0063】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が用いられてよい。また、前記正極集電体は、通常3から500μmの厚さを有してよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めてもよい。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等の多様な形態で用いられてよい。
【0064】
前記正極活物質層は、前述した本発明に係る正極材とともに、導電材及びバインダーを含んでよい。
【0065】
前記正極材は、正極活物質層の総重量に対して80から99重量%、より具体的には85から98重量%の含量で含まれてよい。前記含量範囲で含まれる際、優れた容量特性を示すことができる。
【0066】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末又は金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;又はポリフェニレン誘導体等の伝導性高分子等が挙げられ、これらのうち1種単独で又は2種以上の混合物が用いられてよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0067】
前記バインダーは、正極活物質粒子同士の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を担う。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ビニリデンフルオリド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体等が挙げられ、これらのうち1種単独で又は2種以上の混合物が用いられてもよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0068】
前記正極は、本発明に係る正極材を用いることを除いては、通常の正極の製造方法により製造されてよい。具体的に、前記正極材、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造するか、前記正極合材を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることで製造されてよい。
【0069】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)又は水等が挙げられ、これらのうち1種単独で又は2種以上の混合物が用いられてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極材、導電材及びバインダーを溶解又は分散させ、その後、正極の製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0070】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には電池、キャパシタなどであってよく、より具体的にはリチウム二次電池であってよい。
【0071】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在される分離膜及び電解質を含み、前記正極は前述したものと同様であるため、具体的な説明は省略し、以下では残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0072】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0073】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0074】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金等が用いられてよい。また、前記負極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等の多様な形態で用いられてよい。
【0075】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダー及び導電材を含む。
【0076】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が用いられてよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金又はAl合金等の、リチウムとの合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物;又はSi‐C複合体又はSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等が挙げられ、これらのうち何れか1つ又は2つ以上の混合物が用いられてよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。さらに、炭素材料としては、低結晶性炭素及び高結晶性炭素等がいずれも用いられてよい。低結晶性炭素としては、軟質炭素(soft carbon)及び硬質炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)、及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0077】
前記負極活物質は、負極活物質層の総重量に対して80重量%から99重量%で含まれてよい。
【0078】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体の間の結合に助力する成分であって、通常、負極活物質層の総重量に対して0.1重量%から10重量%で添加される。かかるバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等が挙げられる。
【0079】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の総重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されてよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が用いられてよい。
【0080】
前記負極は、例えば、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極合材を塗布して乾燥するか、又は前記負極合材を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることで製造されてもよい。
【0081】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池で分離膜に用いられるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ、電解液含湿能に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム又はこれらの2層以上の積層構造体が用いられてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等からなる不織布が用いられてもよい。さらに、耐熱性又は機械的強度の確保のためにセラミックス成分又は高分子物質が含まれているコーティングされた分離膜が用いられてもよく、選択的に単層又は多層構造で用いられてよい。
【0082】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等が挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0083】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。
【0084】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割ができるものであれば、特に制限なく用いられてよい。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)又はテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R‐CN(Rは、炭素数2から20の直鎖状、分岐状又は環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含んでよい)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3‐ジオキソラン等のジオキソラン類;又はスルホラン(sulfolane)類等が用いられてよい。これらの中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。
【0085】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば、特に制限なく用いられてよい。具体的に、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、又はLiB(C等が用いられてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1から2.0Mの範囲内で用いることが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0086】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上等を目的に、例えば、ジフルオロエチレンカーボネート等のようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノール又は三塩化アルミニウム等の添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。この際、前記添加剤は、電解質の総重量100重量部に対して0.1から5重量部で含まれてよい。
【0087】
前記のように、本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)等の電気自動車の分野等に有用である。
【0088】
これにより、本発明の他の一実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0089】
前記電池モジュール又は電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;又は電力貯蔵用システムのうち何れか1つ以上の中大型デバイスの電源として用いられてよい。
【0090】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限されないが、缶を用いた円筒型、角型、パウチ(pouch)型、又はコイン(coin)型等であってよい。
【0091】
本発明に係るリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに用いられ得るだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いられてよい。
【0092】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は多様な他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が以下に詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0093】
実施例1
以下の方法通りに製造した第1正極活物質と第2正極活物質を8:2の重量比で混合し、これを正極材として用いた。
【0094】
(1)第1正極活物質
NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が88:5:7となるようにする量で水に溶解して2M濃度の遷移金属含有溶液を準備した。
【0095】
前記遷移金属含有溶液が入っている容器と、追加で25重量%濃度のNaOH溶液と15重量%濃度のNHOH水溶液を55℃に設定された200Lのバッチ(batch)式反応器にそれぞれ連結した。
【0096】
次いで、前記バッチ式反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスをパージングして水中の溶存酸素を除去することで反応器内を非酸化雰囲気に造成した。その後、NaOHを投入し、250rpmの撹拌速度で撹拌しながら、共沈反応器内のpHを11.7に維持した。
【0097】
その後、前記遷移金属含有溶液を前記共沈反応器内に250mL/hrの速度で投入し、NHOH水溶液を40mL/hrの速度で、NaOH水溶液を反応溶液のpHが11.7に維持できる速度で投入し、6時間反応後、撹拌を停止して上澄み液を除去することにより濃縮した。このような過程を4~5回繰り返して、平均粒径(D50)が約15μmとなるまで粒子を成長させた。
【0098】
このように製造された第1遷移金属酸化物前駆体の粒子をフィルタープレスで濾過した後、130℃で24時間乾燥し、Ni0.88Co0.05Mn0.07(OH)組成の第1正極活物質前駆体を収得した。
【0099】
次いで、前記第1正極活物質前駆体に対してLiOH・HOが1.06当量となるように添加し、Al(OH)を混合して酸素雰囲気で775℃で13.5時間焼成し、ニッケル:コバルト:マンガン:アルミニウムのモル比が86:5:7:2であるリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0100】
前記リチウム遷移金属酸化物と蒸溜水を1:1.1の重量比で撹拌して水洗した。
【0101】
水洗が完了したリチウム遷移金属酸化物にHBOを混合し、295℃で5時間熱処理してBコーティングされた第1正極活物質を製造した。
【0102】
(2)第2正極活物質
NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が83:5:12となるようにする量で水に溶解して2M濃度の遷移金属含有溶液を用い、前駆体の製造時に濃縮過程を2~3回のみ繰り返すことにより、平均粒径(D50)が約5μmとなるまで粒子を成長させた点を除いては、前記第1正極活物質前駆体の製造方法と同一の方法で第2正極活物質前駆体を製造した。
【0103】
製造された第2正極活物質前駆体の平均粒径(D50)は約5μmであり、組成はNi0.83Co0.05Mn0.12(OH)であった。
【0104】
その後、前記第2正極活物質前駆体に対してLiOH・HOが1.06当量となるように添加し、Al(OH)を混合して酸素雰囲気で790℃で13.5時間焼成し、ニッケル:コバルト:マンガン:アルミニウムのモル比が81:5:12:2であるリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0105】
前記リチウム遷移金属酸化物と蒸溜水を1:1.1の重量比で撹拌して水洗した。
【0106】
水洗が完了したリチウム遷移金属酸化物にHBOを混合し、295℃で5時間熱処理してBコーティングされた第2正極活物質を製造した。
【0107】
実施例2
第1正極活物質の製造時の焼成温度を760℃、第2正極活物質の製造時の焼成温度を765℃とした点を除いては、実施例1と同一の方法で正極材を製造した。
【0108】
比較例1
第1正極活物質の製造時の焼成温度を760℃、第2正極活物質の製造時の焼成温度を770℃とした点を除いては、実施例1と同一の方法で正極材を製造した。
【0109】
比較例2
第1正極活物質前駆体として、Zoomwe社で市販される平均粒径(D50)が約15μmのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)を用いた点を除いては、実施例1と同一の方法で正極材を製造した。
【0110】
比較例3
第1正極活物質前駆体として、Zoomwe社で市販される平均粒径(D50)が約15μmのNi0.88Co0.05Mn0.07(OH)を用い、第2正極活物質の製造時の焼成温度を765℃とした点を除いては、実施例1と同一の方法で正極材を製造した。
【0111】
実験例1
(1)平均粒径(D50
前記実施例1~2及び比較例1~3で製造した正極活物質それぞれの平均粒径(D50)を測定した。
【0112】
具体的に、実施例1~2及び比較例1~3の正極活物質粒子の平均粒径を測定するためにMicrotrac社のS‐3500を用い、その結果を下記表1に示した。
【0113】
(2)粒子強度
前記実施例1~2及び比較例1~3で製造した正極活物質粒子のサンプルを採取し、採取されたサンプルに圧力をかけながら粒子にクラックが発生する時点を測定し、圧力単位(MPa)に換算して粒子強度を測定した。測定の結果は、下記表1に示した。
【0114】
【表1】
【0115】
実験例2
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造した正極材と導電材(FX35)とバインダー(KF9700とBM730Hを1.35:0.15重量比で混合)を97.5:1:1.5の重量比でN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥し、空隙率(porosity)が24%となるように圧延して正極を製造した。
【0116】
実施例1及び比較例1の正極材を用いて製造された正極の断面を走査電子顕微鏡で観察した様子が図1及び図2に示されている。
【0117】
図1に示されているように、実施例1で製造した正極材を用いた場合、正極活物質粒子の割れ現象がほとんど発生しないことを確認することができる。一方、図2に示されているように、比較例1で製造した正極材を用いた場合、大粒径を有する第1正極活物質粒子の割れ現象が顕著に示され、小粒径を有する第2正極活物質粒子もまた粒子の割れにより円形の形状を失うことを確認することができる。
【0118】
実験例3
実施例1~2及び比較例1~3でそれぞれ製造した正極材と導電材(FX35)とバインダー(KF9700とBM730Hを1.35:0.15の重量比で混合)を97.5:1:1.5の重量比でN‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥し、空隙率(porosity)が24%となるように圧延して正極を製造した。
【0119】
前記で製造されたそれぞれの正極と負極(リチウムメタルディスク(Li metal disk))の間に分離膜を介在して電極組立体を製造し、これを電池ケースの内部に位置させた後、前記ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。この際、電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネートを3:3:4の体積比で混合した有機溶媒に1MのLiPFを溶解させた電解液を用いた。
【0120】
次いで、前記実施例1~2及び比較例1~3で製造したリチウム二次電池のそれぞれに対して25℃で0.1Cの定電流で4.25VまでCC/CVモード充電を実施した後(CV 0.05C)、3.0VとなるまでCCモード放電を実施し、1回目の初期充電容量及び放電容量を測定した。
【0121】
また、45℃、3.0~4.25Vの範囲で0.33Cの定電流で充放電サイクルを30回繰り返し実施し、それぞれのリチウム二次電池の30回サイクルにおける容量維持率及び抵抗増加率を測定した。測定の結果は、下記表2に示した。
【0122】
【表2】
【0123】
前記表2に示されているように、式(1)を満たす実施例1及び2の正極材を用いたリチウム二次電池の場合、式(1)を満たすことができない比較例1~3の正極材を用いたリチウム二次電池に比べて30サイクル以後の容量維持率及び抵抗増加率に優れていることを確認することができる。
図1
図2