(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを含む有機発光素子
(51)【国際特許分類】
C07D 491/22 20060101AFI20240319BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240319BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240319BHJP
【FI】
C07D491/22 CSP
H10K50/15
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2022551372
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 KR2021009267
(87)【国際公開番号】W WO2022045583
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0107117
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0091852
(32)【優先日】2021-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】シン・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンウク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・クァン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ユン・イム
(72)【発明者】
【氏名】ボムシン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンジュ・チェ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/149610(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/172647(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、化合物:
【化1】
前記化学式1中、
X
1およびX
2はそれぞれ独立して、O、S、SeまたはTeであり、
A1~A3はそれぞれ独立して、隣接した2つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環であり、
A4およびA5はそれぞれ独立して、隣接した1つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環であり、
Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のSi、N、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
R
1~R
4はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールである。
【請求項2】
下記化学式1-1~化学式1-17のうちのいずれか1つで表され
る化合物:
【化2】
【化3】
前記化学式1-1~化学式1-17中、
X
1
およびX
2
はそれぞれ独立して、O、S、SeまたはTeであり、
A4およびA5はそれぞれ独立して、隣接した1つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環であり、
Ar
1
およびAr
2
はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のSi、N、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
R
1
~R
4
はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールである。
【請求項3】
下記化学式1-A~化学式1-Fのうちのいずれか1つで表され
る化合物:
【化4】
【化5】
【化6】
前記化学式1-A~化学式1-F中、
X
1
およびX
2
はそれぞれ独立して、O、S、SeまたはTeであり、
A1~A3はそれぞれ独立して、隣接した2つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環であり、
Ar
1
およびAr
2
はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のSi、N、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
R
1
~R
4
はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールである。
【請求項4】
前記化学式1は、下記化学式1-A-1、化学式1-A-2、または化学式1-B-1で表される、請求項1に記載の化合物:
【化7】
前記化学式1-A-1、化学式1-A-2および化学式1-B-1中、
A1は隣接した2つの環と縮合したベンゼン環またはナフタレン環であり、
X
1、X
2、Ar
1、Ar
2およびR
1~R
4は請求項1で定義した通りである。
【請求項5】
X
1およびX
2はそれぞれ独立して、O、SまたはSeである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
A1~A3はそれぞれ独立して、隣接した2つの環と縮合したベンゼン環またはナフタレン環であり、
A4およびA5はそれぞれ独立して、隣接した1つの環と縮合したベンゼン環またはナフタレン環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
A2とA3は互いに同一であり、A4とA5は互いに同一である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、ジメチルフルオレニル、ジメチルジベンゾシロリル、ジメチルベンゾフルオレニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリジニルであり、
前記Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して、非置換されるか;ブチル、tert-ブチル、トリメチルシリルおよびトリフェニルシリルからなる群より選択されるいずれか1つ以上の置換基で置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Ar
1とAr
2は互いに同一である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
R
1~R
4はそれぞれ独立して、水素、重水素、メチル、またはヘキシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
A2とA3は互いに同一であり、A4とA5は互いに同一であり、Ar
1とAr
2は互いに同一であり、R
1とR
3は互いに同一であり、R
2とR
4は互いに同一である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
下記で構成される群より選択されるいずれか1つであ
る化合物:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【請求項13】
第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機発光素子。
【請求項14】
前記有機物層は発光層である、請求項13に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年8月25日付の韓国特許出願第10-2020-0107117号および2021年7月13日付の韓国特許出願第10-2021-0091852号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに変換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れて多くの研究が進められている。
【0004】
有機発光素子は、一般的に正極と負極および前記正極と負極との間に有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質で構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時、光が出るようになる。
【0005】
このような有機発光素子に使用される有機物に対して新たな材料の開発が要求され続けている。
【0006】
一方、最近では工程費用の節減のために既存の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を利用した有機発光素子が開発されている。草創期にはすべての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、HIL、HTL、EMLのみを溶液工程で行い、その後の工程は、既存の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程が研究中である。
【0007】
そこで本発明では、有機発光素子に用いられ、かつ溶液工程に使用可能な新規な有機発光素子の素材を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第10-2000-0051826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記化学式1で表される化合物を提供する:
【化1】
【0011】
前記化学式1中、
X1およびX2はそれぞれ独立して、O、S、SeまたはTeであり、
A1~A3はそれぞれ独立して、隣接した2つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環であり、
A4およびA5はそれぞれ独立して、隣接した1つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環であり、
Ar1およびAr2はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のSi、N、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
R1~R4はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1~60のアルキル;置換または非置換の炭素数3~60のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~60のヘテロアリールである。
【0012】
また、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上述した化学式1で表される化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として用いられ、また、溶液工程に使用可能であり、有機発光素子で効率の向上、低い駆動電圧および/または寿命特性を向上させることができる。特に、上述した化学式1で表される化合物は、正孔注入、正孔輸送および/または発光材料に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】基板1、正極2、発光層3、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【
図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層3、電子輸送層7、電子注入層8および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。
【0016】
本発明は、前記化学式1で表される化合物を提供する。
【0017】
本明細書において、
【化2】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0018】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;アリールシリル基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択される1個以上の置換基で置換されるかまたは非置換であるか、前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されているかまたは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0019】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の置換基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化3】
【0020】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記置換基の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化4】
【0021】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の置換基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0022】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0025】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。さらに一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化6】
などであってもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、ヘテロアリールは、異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含むヘテロアリールであって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0031】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0032】
化合物
本発明の化合物は、前記化学式1で表される。
【0033】
好ましくは、前記化学式1は、下記化学式1-1~化学式1-17のうちのいずれか1つで表される:
【0034】
【0035】
【0036】
前記化学式1-1~化学式1-17中、
X1、X2、A4、A5、Ar1、Ar2およびR1~R4は前記化学式1で定義した通りである。
【0037】
好ましくは、前記化学式1は、下記化学式1-A~化学式1-Fのうちのいずれか1つで表される:
【化9】
【化10】
【化11】
【0038】
前記化学式1-A~化学式1-F中、
X1、X2、A1~A3、Ar1、Ar2およびR1~R4は請求項1で定義した通りである。
【0039】
また、好ましくは、前記化学式1は、下記化学式1-A-1、化学式1-A-2または化学式1-B-1で表される:
【化12】
【0040】
前記化学式1-A-1、化学式1-A-2および化学式1-B-1中、
A1は隣接した2つの環と縮合したベンゼン環またはナフタレン環であり、
X1、X2、Ar1、Ar2およびR1~R4は請求項1で定義した通りである。
【0041】
好ましくは、X1およびX2はそれぞれ独立して、O、S、またはSeであり得る。
【0042】
好ましくは、X1とX2は互いに同一であってもよい。
【0043】
好ましくは、A1~A3はそれぞれ独立して、隣接した2つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~20の芳香族環であってもよく、より好ましくは、A1~A3はそれぞれ独立して、隣接した2つの環と縮合したベンゼン環またはナフタレン環であってもよい。
【0044】
好ましくは、A4およびA5はそれぞれ独立して、隣接した1つの環と縮合した置換または非置換の炭素数6~20の芳香族環であってもよく、より好ましくは、A4およびA5はそれぞれ独立して、隣接した1つの環と縮合したベンゼン環またはナフタレン環であってもよい。
【0045】
好ましくは、A2とA3は互いに同一であり、A4とA5は互いに同一であってもよい。
【0046】
好ましくは、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~20のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~20のヘテロアリールであり得る。より好ましくは、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、ジメチルフルオレニル、ジメチルジベンゾシロリル、ジメチルベンゾフルオレニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、またはピリジニルであり得、前記Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して、非置換であるか;ブチル、tert-ブチル、トリメチルシリルおよびトリフェニルシリルからなる群より選択されるいずれか1つ以上の置換基で置換され得る。最も好ましくは、Ar
1およびAr
2はそれぞれ独立して、下記で構成される群より選択されるいずれか1つであり得る:
【化13】
【0047】
好ましくは、Ar1とAr2は互いに同一であってもよい。
【0048】
好ましくは、R1~R4はそれぞれ独立して、水素;重水素;ハロゲン;置換または非置換の炭素数1~10のアルキル;置換または非置換の炭素数3~20のシクロアルキル;置換または非置換の炭素数6~20のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群より選択されるいずれか1つ以上を含む炭素数2~20のヘテロアリールであり得、より好ましくは、R1~R4はそれぞれ独立して、水素、重水素、メチル、またはヘキシルであり得る。
【0049】
好ましくは、R1とR3は互いに同一であり、R2とR4は互いに同一であってもよい。
【0050】
より好ましくは、A2とA3は互いに同一であり、A4とA5は互いに同一であり、Ar1とAr2は互いに同一であり、R1とR3は互いに同一であり、R2とR4は互いに同一であってもよく、最も好ましくは、X1とX2は互いに同一であり、A2とA3は互いに同一であり、A4とA5は互いに同一であり、Ar1とAr2は互いに同一であり、R1とR3は互いに同一であり、R2とR4は互いに同一であってもよい。
【0051】
前記化学式1で表される化合物の代表的な例は以下の通りである:
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
一方、前記化学式1で表される化合物中のX
1とX
2が互いに同一であり、A2とA3が互いに同一であり、A4とA5が互いに同一であり、Ar
1とAr
2が互いに同一であり、R
1とR
3が互いに同一であり、R
2とR
4が互いに同一である場合、一例として、下記反応式1のような方法で製造することができ、それ以外の残りの化合物も同様に製造することができる。
【化28】
【0067】
前記反応式1中、X1、A1、A2、A4、R1およびR2は前記化学式1で定義した通りであり、Z1およびZ2はそれぞれ独立して、ハロゲンであり、好ましくは、Z1およびZ2はそれぞれ独立して、塩素または臭素である。
【0068】
前記反応式1中のステップ(step)1はアミン置換反応であって、パラジウム触媒と塩基の存在下で行うことが好ましく、アミン置換反応のための反応基は当業界で公知のものによって変更可能であり、ステップ(step)2は分子内環化反応であって、使用する反応基、触媒、溶媒などは目的とする生成物に適宜変更することができる。前記製造方法は、後述する製造例でさらに具体化される。
【0069】
好ましくは、本発明に係る化合物は半値幅が36nm以下であり得る。前記半値幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)は、化合物のPL(Photoluminescence)スペクトルを測定して最大強度(intensity)値の半分値を示す2つの波長値間の幅を意味するものであって、一般にその値が小さいほど発光効率が増加する。より好ましくは、本発明に係る化合物の半値幅は20nm以上、22nm以上、24nm以上、26nm以上、28nm以上、または29nm以上であり、36nm以下、35nm以下、34nm以下、または33nm以下であり得る。
【0070】
一方、本発明に係る化合物を含む有機物層は、真空蒸着法、溶液工程などの多様な方法を用いて形成することができ、溶液工程については以下で詳しく説明する。
【0071】
コーティング組成物
本発明に係る前記化学式1で表される化合物は、溶液工程で有機発光素子の有機物層に含まれ得る。そのため、本発明は上述した本発明に係る前記化学式1で表される化合物および溶媒を含むコーティング組成物を提供する。
【0072】
前記溶媒は、前記化学式1で表される化合物を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に限定されず、一例として、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;ブチルベンゾエート、メチル-2-メトキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;テトラリン;3-phenoxy-tolueneなどの溶媒が挙げられる。また、上述した溶媒を1種単独でまたは2種以上の溶媒を混合して使用することができる。
【0073】
また、各コーティング組成物は、熱重合開始剤および光重合開始剤からなる群より選択される1種または2種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0074】
前記熱重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物、またはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、およびアゾビスシクロヘキシルニトリルなどのアゾ系があるが、これらに限定されない。
【0075】
前記光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルフェニルエーテルなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤;およびエチルアントラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのその他光重合開始剤があるが、これらに限定されない。
【0076】
また、光重合促進効果を有するものを単独または前記光重合開始剤と併用して使用することもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2-ジメチルアミノ)エチル、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノンなどがあるが、これらに限定されない。
【0077】
また、前記コーティング組成物の粘度は1cP以上が好ましい。また、前記コーティング組成物のコーティングの容易性を考慮して、前記コーティング組成物の粘度は10cP以下が好ましい。また、前記コーティング組成物内の本発明に係る化合物の濃度は0.1wt/v%以上が好ましい。また、前記コーティング組成物が最適にコーティングされるように、前記コーティング組成物内の本発明に係る化合物の濃度は20wt/v%以下が好ましい。
【0078】
また、本発明は、上述したコーティング組成物を使用して発光層を形成する方法を提供する。具体的には、正極上に、正極上に形成された正孔注入層上に、または正極上に形成された正孔注入層上に形成された正孔輸送層上に、上述した本発明に係るコーティング組成物を溶液工程でコーティングする段階と、前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理または光処理する段階と、を含む。
【0079】
前記溶液工程は、上述した本発明に係るコーティング組成物を使用するもので、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらにのみ限定されるものではない。
【0080】
前記熱処理段階で熱処理温度は150~230℃が好ましい。また、前記熱処理時間は1分~3時間であり、より好ましくは10分~1時間である。また、前記熱処理は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。また、前記コーティング段階と前記熱処理または光処理段階の間に溶媒を蒸発させる段階をさらに含み得る。
【0081】
有機発光素子
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。一例として、本発明は、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層と、を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【0082】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層される多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有し得る。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機物層を含んでもよい。
【0083】
また、前記有機物層は発光層を含んでもよく、前記発光層は前記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0084】
また、前記有機物層は正孔輸送層、または正孔注入層を含んでもよく、前記正孔輸送層、または正孔注入層は前記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0085】
また、前記有機物層は電子輸送層、電子注入層、または電子輸送および電子注入を同時に行う層を含んでもよい。
【0086】
また、前記有機物層は発光層または正孔輸送層を含んでもよく、前記発光層または正孔輸送層は前記化学式1で表される化合物を含んでもよい。
【0087】
また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、正極、1層以上の有機物層、および負極が順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であり得る。また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、負極、1層以上の有機物層、および正極が順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であり得る。例えば、本発明の一実施形態による有機発光素子の構造は、
図1および
図2に例示されている。
【0088】
図1は、基板1、正極2、発光層3、および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。この構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記発光層に含まれ得る。
【0089】
図2は、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層3、電子輸送層7、電子注入層8および負極4からなる有機発光素子の例を示す図である。この構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記正孔注入層、正孔輸送層および発光層のうちの1層以上に含まれ得る。
【0090】
本発明に係る有機発光素子は、前記有機物層のうちの1層以上が前記化学式1で表される化合物を含むことを除けば、当該技術分野で知られている材料および方法で製造され得る。また、前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成され得る。
【0091】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、基板上に、第1電極、有機物層、および第2電極を順次積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)などのPVD(physical Vapor Deposition)方法を用いて、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いられる物質を蒸着させて製造することができる。この方法以外にも、基板上に、負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を作ることができる。
【0092】
また、前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子の製造時に真空蒸着法のみならず、溶液塗布法によって有機物層に形成され得る。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらにのみ限定されるものではない。
【0093】
この方法以外にも、基板上に、負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を製造することができる(WO2003/012890)。但し、製造方法はこれに限定されるものではない。
【0094】
一例として、前記第1電極は正極であり、前記第2電極は負極であるか、または、前記第1電極は負極であり、前記第2電極は正極である。
【0095】
前記正極物質としては、通常有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。前記正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSNO2:Sbなどの金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0096】
前記負極物質としては、通常有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。前記負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などの金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0097】
前記正孔注入層は電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、正極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0098】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層で、正孔輸送物質としては、正極や正孔注入層から正孔輸送を受けて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共に存在するブロック共重合体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0099】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔および電子の輸送をそれぞれ受けて結合させることにより可視光線領域の光を発し得る物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体的な例としては、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq3);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0100】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0101】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換または非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換または非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基、およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換または非置換される。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。好ましくは、前記化学式1で表される化合物をドーパント材料として含み得る。
【0102】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層で、電子輸送物質としては、負極から電子注入をよく受けて発光層に移し得る物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体的な例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されているような、任意の所望するカソード物質と共に使用可能である。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウム、およびサマリウムであり、各場合、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0103】
前記電子注入層は電極から電子を注入する層で、電子を輸送する能力を有し、負極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力の優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物、および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0104】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラート)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラート)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0105】
上述した材料以外にも、前記発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層には量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物をさらに含み得る。
【0106】
前記量子ドットは、例えば、コロイド量子ドット、合金量子ドット、コアシェル量子ドット、またはコア量子ドットであり得る。第2族および第16族に属する元素、第13族および第15族に属する元素、第13族および第17族に属する元素、第11族および第17族に属する元素、または第14族および第15族に属する元素を含む量子ドットであり得、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、砒素(As)などの元素を含む量子ドットを使用することができる。
【0107】
本発明に係る有機発光素子は、背面発光(bottom emission)素子、前面発光(top emission)素子、または両面発光素子であり得、特に、相対的に高い発光効率が求められる背面発光素子であり得る。
【0108】
また、前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスターに含まれ得る。
【0109】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。但し、下記の実施例は本発明を例示したものに過ぎず、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0110】
[製造例]
製造例1:化合物1の製造
(製造例1-1:中間体a1の製造)
【化29】
【0111】
2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジオール(10.0g、37.3mmol)、(4-クロロ-2-フルオロフェニル)ボロン酸(14.3g、82.1mmol)、炭酸カリウム(25.8g、186.5mmol)、Pd(PPh3)4(4.3g、3.73mmol)を500mL丸底フラスコに入れ、190mLの無水トルエン(0.2M)と40mLの蒸留水を投入した。Bath温度100℃下で一晩攪拌した。常温に冷却した後、反応物をセライト/フロリジル/シリカゲルパッドでトルエンを流しながら通過させた。酢酸エチルとヘキサンでカラム精製した後、メタノール/テトラヒドロフランで沈殿させて中間体a1を得た。
【0112】
【0113】
中間体a1(5.0g、13.6mmol)、炭酸カリウム(9.4g、68.0mmol)を500mL丸底フラスコに入れ、140mLのNMP(0.1M)に溶解した後、バス温度180℃下で一晩攪拌した。常温に冷却した後、ヘキサンと水を滴下して沈殿させ、ろ過した後、テトラヒドロフラン、メタノールで洗浄して中間体a2を得た。
【0114】
【0115】
中間体a2(3.0g、9.2mmol)、中間体a3(6.3g、27.6mmol)、ナトリウムt-ブトキシド(3.5g、36.8mmol)、Pd(P(t-Bu)3)2(0.47g、0.92mmol)を1L丸底フラスコに入れ、窒素を充填した後、370mLのトルエン(0.025M)を投入した。その後、バス温度110℃下で6時間攪拌した。常温に冷却した後、水、ヘキサン、メタノールで洗浄し、メタノール/テトラヒドロフランで沈殿させて中間体a4を得た。
【0116】
【0117】
中間体a4(2.0g、2.8mmol)を250mL丸底フラスコに入れ、窒素を充填した後、110mLのジクロロメタン(0.025M)を投入した。ボロントリフルオリド ジエチルエーテラート(1.6g、11.2mmol)を0℃で滴下し、その後、常温で4時間攪拌した。水、ヘキサン、メタノールで洗浄し、クロロベンゼンで再結晶して化合物1を得た。
MS:[M+H]+=673
【0118】
【0119】
前記製造例1-1の(4-クロロ-2-フルオロフェニル)ボロン酸の代わりに(5-クロロ-2-フルオロフェニル)ボロン酸を使用したことを除いて、前記製造例1と同様の方法で化合物2を製造した。
MS:[M+H]+=673
【0120】
【0121】
前記製造例1-1の2,5-ジブロモベンゼン-1,4-ジオールの代わりに3,7-ジブロモナフタレン-2,6-ジオールを使用したことを除いて、前記製造例1と同様の方法で化合物3を製造した。
MS:[M+H]+=723
【0122】
【0123】
前記製造例1-3の中間体a3の代わりに中間体d1を使用したことを除いて、前記製造例1と同様の方法で化合物4を製造した。
MS:[M+H]+=773
【0124】
【0125】
前記製造例1-3の中間体a3の代わりに中間体e1を使用したことを除いて、前記製造例1と同様の方法で化合物5を製造した。
MS:[M+H]+=905
【0126】
【0127】
前記製造例3の中間体a3の代わりに中間体f1を使用したことを除いて、前記製造例3と同様の方法で化合物6を製造した。
MS:[M+H]+=875
【0128】
【0129】
前記製造例1-3の中間体a3の代わりにジフェニルアミンを使用したことを除いて、前記製造例1-3と同様の方法で化合物Aを製造した。
MS:[M+H]+=593
【0130】
[実施例]
実施例1:有機発光素子の製作
ITO(indium tin oxide)が500Åの厚さに薄膜蒸着されたガラス基板を洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルタ(Filter)で2次ろ過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水洗浄が終わった後、アセトン、蒸留水、イソプロピルアルコールで超音波洗浄をし、乾燥して、洗浄されたITOガラス基板を用意した。
【0131】
前記ITO透明電極上に、下記化合物Z-1とZ-2を重量比8:2で混合した組成物をスピンコーティングし、窒素雰囲気下でホットプレートで220℃、30分の条件で硬化して400Å厚さの正孔注入層を形成した。前記正孔注入層上に、下記化合物Z-3をトルエンに1wt%に溶かした組成物をスピンコーティングし、ホットプレートで200℃、30分の条件で熱処理して200Å厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層上に、下記化合物Z-4と上記で製造した化合物1を98:2の重量比でトルエンに0.5wt%に溶かした組成物をスピンコーティングして250Å厚さの発光層を形成し、窒素雰囲気下で、ホットプレートで120℃、10分の条件でコーティング組成物を乾燥させた。その後、真空蒸着装置に移送して下記化合物Z-5(電子輸送層、300Å)、LiF(電子注入層、10Å)、Al(負極、1000Å)を順次蒸着して有機発光素子を製作した。上記の過程で、LiFは0.3Å/sec、アルミニウム(Al)は2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時の真空度は2×10-7~5×10-8torrを維持した。
【0132】
【0133】
実施例2~実施例6
化合物1の代わりに表1に記載された化合物を使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。
【0134】
比較例1~比較例2
化合物1の代わりに化合物AまたはBを使用したことを除いて、前記実施例1と同様の方法で有機発光素子を製作した。化合物Aおよび化合物Bは以下の通りである。
【化40】
【0135】
実験例1:有機発光素子の特性評価
前記実施例1~6、比較例1および2で製作した有機発光素子の駆動電圧、発光効率、量子効率および寿命(T95)値を10mA/cm2の電流密度で測定してその結果を下記表1に示す。下記表1の寿命(T95)は、初期輝度が95%に低下するまでの時間を意味する。
【0136】
【0137】
前記実験結果から本発明一実施形態の化合物は有機発光素子の発光層のドーパントとして使用することができ、素子の製造時、溶液工程に使用することができることを確認した。
【0138】
また、前記表1に示すように、本発明の化学式1の化合物を発光層のドーパントとして使用した有機発光素子は、母核が異なる化合物AまたはBを有機発光素子のドーパントとして使用した場合より発光効率、量子効率および寿命の側面において非常に優れた特性を示すことを確認した。
【0139】
実験例2:化合物の半値幅の測定
上記で製造した化合物1~6および化合物A~Bのフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを測定し、半値幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)を下記表2に示す。半値幅は、最大強度値の半分値を示す2つの波長間の幅で、一般にその値が小さいほど発光効率が増加する。各化合物をトルエンに10-5Mの濃度に溶かし、380nmの励起波長を用いて測定した。
【0140】
【0141】
上記表2に示すように、本発明の化学式1の化合物は、母核が異なる化合物AまたはBより小さい半値幅を有することを確認した。したがって、化学式1で表される本発明の化合物の発光効率がより優れていると推測される。
【符号の説明】
【0142】
1 基板
2 正極
3 発光層
4 負極
5 正孔注入層
6 正孔輸送層
7 電子輸送層
8 電子注入層