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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019194275
(22)【出願日】2019-10-25
(65)【公開番号】P2021067866
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 寿和
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0176657(US,A1)
【文献】特開2018-128664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子複合体の少なくとも片面側に保護層を有する光学積層体であって、
前記偏光子複合体は、偏光子と、前記偏光子の一方の面側に設けられた補強材と、を有し、
前記偏光子は、
偏光領域と、平面視において前記偏光領域に囲まれた非偏光領域と、を有し、
前記偏光領域の厚みは、15μm以下であり、
前記非偏光領域は、平面視において前記偏光領域に囲まれた貫通穴に、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物が設けられた領域であり
前記補強材は、各開口端面が前記偏光子の面に対向するように配列した複数のセルを有し、
前記保護層は、厚みが20μm以上の樹脂フィルムであり、前記偏光子の片面側の全面を被覆し、かつ、前記偏光子上に粘着剤層又は接着剤層のみを介して設けられ、
前記セルの前記開口の形状は、多角形状、円形状、又は楕円形状である、光学積層体。
【請求項2】
偏光子複合体の少なくとも片面側に保護層を有する光学積層体であって、
前記偏光子複合体は、偏光子と、前記偏光子の一方の面側に設けられた補強材と、を有し、
前記偏光子は、
偏光領域と、平面視において前記偏光領域に囲まれた非偏光領域と、を有し、
前記偏光領域の厚みは、15μm以下であり、
前記非偏光領域は、平面視において前記偏光領域に囲まれた貫通穴に、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物が設けられた領域であり、
前記補強材は、各開口端面が前記偏光子の面に対向するように配列した複数のセルを有し、
前記保護層は、厚みが20μm以上の樹脂フィルムであり、前記偏光子の片面側の全面を被覆し、かつ、前記偏光子上に粘着剤層又は接着剤層のみを介して設けられ、
さらに、前記セルの内部空間に透光性の充填材が設けられている、光学積層体。
【請求項3】
前記セルの前記開口の形状は、多角形状、円形状、又は楕円形状である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
偏光子複合体の少なくとも片面側に保護層を有する光学積層体であって、
前記偏光子複合体は、偏光子と、前記偏光子の一方の面側に設けられた補強材と、を有し、
前記偏光子は、
偏光領域と、平面視において前記偏光領域に囲まれた非偏光領域と、を有し、
前記偏光領域の厚みは、15μm以下であり、
前記非偏光領域は、平面視において前記偏光領域に囲まれた貫通穴に、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物が設けられた領域であり、
前記補強材は、各開口端面が前記偏光子の面に対向するように配列した複数のセルを有し、かつ、前記偏光子の片面側の全面に前記セルが存在するように設けられており、
前記保護層は、厚みが20μm以上の樹脂フィルムであり、前記偏光子の片面側の全面を被覆し、かつ、前記偏光子上に粘着剤層又は接着剤層のみを介して設けられる、光学積層体。
【請求項5】
前記セルの前記開口の形状は、多角形状、円形状、又は楕円形状である、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
さらに、前記セルの内部空間に透光性の充填材が設けられている、請求項4又は5に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記硬化物の厚みは、前記偏光領域の厚みと同じである、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記硬化物の厚みは、前記偏光領域の厚みよりも小さい、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記硬化物の厚みは、前記偏光領域の厚みよりも大きい、請求項1~6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記非偏光領域は、透光性を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記非偏光領域の平面視における径は、0.5mm以上20mm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項12】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、エポキシ化合物を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項13】
前記エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物を含む、請求項12に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子、偏光子複合体、及び光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光子は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置等の表示装置における偏光の供給素子として、また偏光の検出素子として広く用いられている。偏光子を備えた表示装置は、ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話等のモバイル機器にも展開されており、表示目的の多様化、表示区分の明確化、装飾化等への要求から、透過率の異なる領域を有する偏光子が要求されている。特にスマートフォンやタブレット型端末に代表される中小型の携帯端末においては、装飾性の観点から全面にわたって境目のないデザインとするため、表示面全面に偏光子を貼り合わせることがある。この場合、カメラレンズの領域、画面下のアイコン又はロゴ印刷の領域にも偏光子が重なることがあるため、カメラの感度が悪くなったり、意匠性に劣ったりするという問題がある。
【0003】
例えば特許文献1には、偏光板に含まれる偏光子に二色性物質の含有量が相対的に低い二色性物質低濃度部を部分的に設け、この二色性物質低濃度部に対応させてカメラを配置することにより、カメラ性能に悪影響を与えないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-215609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、二色性物質を含む樹脂フィルムに塩基性溶液を接触させるという化学処理を施すことにより、樹脂フィルムを部分的に脱色して二色性物質低濃度部を形成している。脱色のために用いた塩基性溶液は、廃液として処理するために手間やコストを要する。また、特許文献1には、二色性物質としてのヨウ素を用いた場合に塩基性溶液を接触させることにより、ヨウ素の含有量を低減して二色性物質低濃度部を形成できることが記載されている。しかしながら、ヨウ素以外の二色性物質を用いた場合に二色性物質低濃度部を形成する具体的な方法については開示がない。
【0006】
本発明は、脱色等の化学処理によって二色性物質の含有量の少ない領域を形成した偏光子に代わる、新規な偏光子、偏光子複合体、及び光学積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の偏光子、偏光子複合体、及び光学積層体を提供する。
〔1〕 偏光領域と、平面視において前記偏光領域に囲まれた非偏光領域と、を有し、
前記偏光領域の厚みは、15μm以下であり、
前記非偏光領域は、平面視において前記偏光領域に囲まれた貫通穴に、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物が設けられた領域である、偏光子。
〔2〕 前記硬化物の厚みは、前記偏光領域の厚みと同じである、〔1〕に記載の偏光子。
〔3〕 前記硬化物の厚みは、前記偏光領域の厚みよりも小さい、〔1〕に記載の偏光子。
〔4〕 前記硬化物の厚みは、前記偏光領域の厚みよりも大きい、〔1〕に記載の偏光子。
〔5〕 前記非偏光領域は、透光性を有する、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の偏光子。
〔6〕 前記非偏光領域の平面視における径は、0.5mm以上20mm以下である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の偏光子。
〔7〕 前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、エポキシ化合物を含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の偏光子。
〔8〕 前記エポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物を含む、〔7〕に記載の偏光子。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面側に設けられた補強材と、を有する偏光子複合体であって、
前記補強材は、各開口端面が前記偏光子の面に対向するように配列した複数のセルを有する、偏光子複合体。
〔10〕 前記セルの前記開口の形状は、多角形状、円形状、又は楕円形状である、〔9〕に記載の偏光子複合体。
〔11〕 さらに、前記セルの内部空間に透光性の充填材が設けられている、〔9〕又は〔10〕に記載偏光子複合体。
〔12〕 〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の偏光子、又は〔9〕~〔11〕のいずれかに記載の偏光子複合体の少なくとも片面側に保護層を有する、光学積層体。
〔13〕 前記保護層は、前記偏光子上に設けられた活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物層である、〔12〕に記載の光学積層体。
〔14〕 前記保護層を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂は、前記偏光領域に含まれる前記硬化物を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂と同じ活性エネルギー線硬化性樹脂である、〔13〕に記載の光学積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新規な偏光子、偏光子複合体、及び光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、本発明の偏光子の一例を模式的に示す概略平面図であり、(b)~(d)は、(a)に示す偏光子のz-z’断面図である。
図2】(a)及び(b)は、偏光子の非偏光領域周辺の断面の一例を模式的に示す図であって、非偏光領域に設けられた硬化物の厚みを決定する方法を説明するための説明図である。
図3】(a)~(e)は、本発明の偏光子の製造方法の一例を模式的に示す概略断面図である。
図4】(a)は、本発明の偏光子複合体の一例を模式的に示す概略断面図であり、(b)は、(a)に示す偏光子複合体の補強材側の概略平面図である。
図5】(a)~(c)は、本発明の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図6】本発明の光学積層体の他の一例を模式的に示す概略断面図である。
図7】本発明の光学積層体のさらに他の一例を模式的に示す概略断面図である。
図8】本発明の光学積層体のさらに他の一例を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の偏光子、偏光子複合体、及び光学積層体の好ましい実施形態について説明する。以下のすべての図面においては、各構成要素を理解しやすくするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0011】
<偏光子>
図1(a)は、本実施形態の偏光子の一例を模式的に示す概略平面図であり、図1(b)~(d)は、図1(a)に示す偏光子のz-z’断面図である。図1(a)~(d)に示す偏光子10は、偏光領域11と、平面視において偏光領域11に囲まれた非偏光領域12とを有する。偏光領域11の厚みは、15μm以下である。非偏光領域12は、平面視において、偏光領域11に囲まれた貫通穴22に、活性エネルギー線硬化性樹脂(以下、「硬化性樹脂(X)」ということがある。)の硬化物が設けられた領域である。
【0012】
偏光子10では、図1(a)に示すように、平面視において偏光領域11に囲まれた非偏光領域12を有する。そのため、偏光子10をスマートフォンやタブレット型端末等に展開される液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に適用する際に、非偏光領域12に対応させて、カメラレンズ、アイコン又はロゴ等の印刷部を配置することにより、カメラの感度の低下及び意匠性の低下を抑制することができる。
【0013】
偏光子10では、貫通穴22に硬化性樹脂(X)の硬化物が設けられているため、非偏光領域12を中実とすることができる。偏光子10は厚みが15μm以下と薄いため、非偏光領域12に硬化性樹脂(X)の硬化物が設けられておらず貫通穴22が中空の状態であると、表示装置に適用した際等に曝される温度変化に伴う偏光子の収縮によって貫通穴22の周辺にクラックが発生したりする等の不具合を生じる虞がある。これに対し、偏光子10のように、貫通穴22に硬化性樹脂(X)の硬化物が設けられることによって非偏光領域12を中実とすることができるため、上記の不具合の発生を抑制することができる。
【0014】
偏光子10における偏光領域11及び非偏光領域12の配置は、偏光領域11が非偏光領域12を取り囲むように設けられていれば特に限定されない。偏光子10の平面視において、偏光領域11が占有する総面積は、非偏光領域12が占有する総面積よりも大きいことが好ましい。偏光子10は、非偏光領域12を1つ有していればよく、非偏光領域12を2つ以上有していてもよい。非偏光領域12を2つ以上有する場合、それぞれの非偏光領域12の形状は互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0015】
偏光子10は、枚葉体であってもよく、保管時や輸送時等に巻回されてロール形状とされる長さを有する長尺体であってもよい。偏光子10の平面形状及び大きさは、特に限定されず、偏光子10を適用する表示装置の大きさに応じて定められる。
【0016】
(偏光領域)
偏光子10の偏光領域11は、好ましくは波長380nm~780nmの範囲の波長において吸収二色性を示す。偏光子10は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有するが、この性質は主に偏光領域11によって得ることができる。
【0017】
偏光領域11は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質が吸着・配向されたもの;ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等、ポリエン系配向フィルムや液晶化合物を配向させたものに二色性物質が吸着・配向されたもの;等を用いることができる。その中でも、光学特性に優れたものとして、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し、一軸延伸して得られたものを用いることが好ましい。
【0018】
まず、好ましい偏光領域11となる、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られたものについて、簡単にその製造方法を説明する。
【0019】
ヨウ素による染色は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。一軸延伸の延伸倍率は、3~7倍であることが好ましい。延伸は、染色処理後に行ってもよく、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。
【0020】
ポリビニルアルコール系フィルムには、必要に応じて、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗することで、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させて染色ムラ等を防止することができる。
【0021】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの延伸処理、染色処理、架橋処理(ホウ酸処理)、水洗処理、乾燥処理は、例えば、特開2012-159778号公報に記載されている方法に準じて行ってもよい。この文献記載の方法では、基材フィルムへのポリビニルアルコール系樹脂のコーティングにより、偏光領域11となるポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。この際、用いた基材フィルムは、後述する第1支持層25として用いることもできる。
【0022】
続いて、液晶化合物を配向させたものに二色性色素が吸着・配向してなる偏光領域11について簡単に説明する。この場合の偏光領域11としては、例えば特開2013-37353号公報、特開2013-33249号公報、特開2016-170368号公報特開2017-83843号公報等に記載されるように、液晶化合物が重合した硬化膜中に、二色性色素が配向したものを使用してもよい。二色性色素としては、波長380~800nmの範囲内に吸収を有するものを用いることができ、有機染料を用いることが好ましい。二色性色素として、例えば、アゾ化合物が挙げられる。液晶化合物は、配向したまま重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有することができる。このような液晶化合物が重合した硬化膜は、基材フィルム上に形成されていてもよく、その場合は、上記基材フィルムは、後述する第1支持層25として用いることもできる。
【0023】
上記のようにして偏光領域11に用いられる偏光フィルムを作製した後に、穴あけ加工により非偏光領域12を形成して偏光子10を形成することも好ましい。本明細書では、このような偏光領域11のみで形成された偏光フィルムを原料偏光子20ということがある。
【0024】
偏光領域11の視感度補正偏光度(Py)は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上であり、特に好ましくは99%以上である。偏光領域11の単体透過率(Ts)は、通常50%未満であり、46%以下であってもよい。偏光領域11の単体透過率(Ts)は、好ましくは39%以上であり、より好ましくは39.5%以上であり、さらに好ましくは40%以上であり、特に好ましくは40.5%以上である。
【0025】
単体透過率(Ts)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)に準拠して測定して視感度補正を行ったY値である。視感度補正偏光度(Py)は、例えば、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、製品名:V7100)を用いて測定することができ、視感度補正を行った平行透過率Tp及び直交透過率Tcに基づいて、下記式により求められる。
Py[%]={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0026】
偏光領域11の厚みは、15μm以下であり、13μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよく、通常1μm以上である。偏光領域11の厚みが上記範囲を超えると、非偏光領域12に、後述する硬化性樹脂(X)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を設けるための作業性が低下しやすい。また、偏光領域11が上記範囲未満である場合、所望の光学特性を得ることが難しくなる。偏光領域11の厚みは、例えば接触式膜厚測定装置(MS-5C、株式会社ニコン製)を用いて測定することができる。
【0027】
(非偏光領域)
一般的に「非偏光」とは、電界成分に観測し得る規則性がない光を指す。換言すると、非偏光とは、優位な特定の偏光状態が観測されないランダムな光である。また、「部分偏光」とは、偏光と非偏光との中間の状態にある光を指し、直線偏光、円偏光及び楕円偏光の少なくとも1つと非偏光とが交じり合った光を意味する。偏光子10における非偏光領域12とは、当該非偏光領域12を透過する光(透過光)が、非偏光又は部分偏光となることを意味するものである。特に、透過光が非偏光である非偏光領域が好ましい。
【0028】
偏光子10の非偏光領域12は、平面視において偏光領域11に囲まれた領域である。非偏光領域12は、硬化性樹脂(X)の硬化物を含む。非偏光領域12は、偏光領域11のみで形成された偏光子(原料偏光子20)に設けられた貫通穴に、後述する硬化性樹脂(X)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物を設けたものであることが好ましい。非偏光領域12は透光性を有する。本明細書において、透光性とは波長400nm~700nmの範囲の可視光が80%以上透過する性質(透過率)をいい、85%以上透過するものが好ましく、90%以上透過するものがより好ましく、92%以上透過するものがさらに好ましい。以下における「透光性」の定義及び可視光に対する透過率の好ましい範囲も上記と同じである。
【0029】
偏光子10の非偏光領域12が透光性を有することにより、非偏光領域12において光学的な透明性を確保することができる。これにより、偏光子10を表示装置に適用する際に、非偏光領域12に対応させて、カメラレンズ、アイコン又はロゴ等の印刷部を配置することにより、カメラの感度の低下や意匠性の低下を抑制することができる。
【0030】
非偏光領域12の平面形状は特に限定されないが、円形;楕円形;小判形;三角形や四角形等の多角形;多角形の少なくとも1つの角が角丸(Rを有する形状)とされた角丸多角形等とすることができる。
【0031】
非偏光領域12の径は、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であってもよく、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよい。非偏光領域12の径は、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であってもよく、10mm以下であってもよく、7mm以下であってもよい。非偏光領域12の径とは、当該非偏光領域12の外周の任意の二点を結ぶ直線のうち最も長さが長い直線における長さをいう。
【0032】
非偏光領域12に設けられた硬化性樹脂(X)の硬化物の厚みは、偏光領域11の厚みと同じであってもよく(図1(b))、偏光領域11の厚みよりも小さくてもよく(図1(c))、偏光領域11の厚みよりも大きくてもよい(図1(d))。非偏光領域12に設けられた硬化性樹脂(X)の硬化物は、貫通穴22全体を埋めるように設けられていることが好ましい。
【0033】
非偏光領域12の硬化物の厚みは、次のようにして決定する。まず、偏光子10において、偏光領域11の一方の表面を含む第1平面と他方の表面を含む第2平面とを仮定する。次に、非偏光領域12において、上記一方の表面側における硬化物の表面と第1平面とがなす最短距離が最大となる位置である第1位置、及び、上記他方の表面側における硬化物の表面と第2平面とがなす最短距離が最大となる位置である第2位置を決定する。そして、第1位置における最短距離(dm)、第2位置における最短距離(dn)、及び、第1平面と第2平面との距離(D)を合計した値(dm+dn+D)を、非偏光領域12の硬化物の厚みとする。
【0034】
非偏光領域12に設けられた硬化物の厚みと偏光領域11の厚みとが異なる場合の厚みの決定方法について、図2に基づいて具体的に説明する。図2(a)及び(b)は、偏光子の非偏光領域周辺の断面の一例を模式的に示す図であって、非偏光領域に設けられた硬化物の厚みを決定する方法を説明するための説明図である。
【0035】
図2(a)に示すように非偏光領域12に硬化物が設けられている場合、偏光領域11の一方の表面側に沿って非偏光領域12にある一点鎖線で示す直線を第1平面11mと仮定する。この第1平面11m上の任意の点と、非偏光領域12に設けられた硬化物の表面上の任意の点とを結ぶ直線が最短距離となる直線のうち、当該直線の長さ(図2(a)中の「dm」)が最大となるときの位置を第1位置とする。次に、図2(a)に示すように、偏光領域11の他方の表面側に沿って非偏光領域12にある一点鎖線で示す直線を第2平面11nと仮定する。この第2平面11n上の任意の点と、非偏光領域12に設けられた硬化物の表面上の任意の点とを結ぶ直線が最短距離となる直線のうち、当該直線の長さ(図2(a)中の「dn」)が最大となるときの位置を第2位置とする。ここで、図2(a)に示すように、非偏光領域12に設けられている硬化物の表面が、偏光子10の厚み方向において、第1平面11m及び第2平面11nよりも内面側(偏光子10側)に存在する場合、dm及びdnは負の値として示すものとする。また、第1平面11mと第2平面11nとの間の距離をDとする。そうすると、図2(a)に示す非偏光領域12に設けられている硬化物の厚みは、D+dm+dn(dm及びdnは負の値)として決定することができる。
【0036】
また、図2(b)に示すように非偏光領域12に硬化物が設けられている場合についても上記と同様に、第1平面11m及び第2平面11nを仮定することにより、非偏光領域12に設けられている硬化物の厚みを決定することができる。具体的には、まず、第1平面11m上の任意の点と、非偏光領域12に設けられた硬化物の表面上の任意の点とを結ぶ直線が最短距離となる直線のうち、当該直線の長さ(図2(b)中の「dm」)が最大となるときの位置を第1位置とする。次に、第2平面11n上の任意の点と、非偏光領域12に設けられた硬化物の表面上の任意の点とを結ぶ直線が最短距離となる直線のうち、当該直線の長さ(図2(b)中の「dn」)が最大となるときの位置を第2位置とする。ここで、図2(b)に示すように、非偏光領域12に設けられている硬化物の表面が、偏光子10の厚み方向において、第1平面11m及び第2平面11nよりも外面側(偏光子10とは反対側)に存在する場合、dm及びdnは正の値として示すものとする。そうすると、図2(b)に示す非偏光領域12に設けられている硬化物の厚みは、D+dm+dn(dm及びdnは正の値)として決定することができる。
【0037】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(硬化性樹脂組成物))
偏光子10における非偏光領域12は上記のとおり、活性エネルギー線硬化性樹脂(硬化性樹脂(X))の硬化物が設けられた領域であり、好ましくは、当該硬化性樹脂(X)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、「硬化性樹脂組成物」ということがある。)により形成される。硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂(X)は、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化するものである。硬化性樹脂(X)は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。硬化性樹脂(X)を含む硬化性樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化型の接着剤であってもよく、この場合、紫外線硬化型の接着剤であることがより好ましい。
【0038】
硬化性樹脂組成物は無溶剤型であることが好ましい。無溶剤型とは、積極的には溶剤を添加していないことをいい、具体的には、無溶剤型の硬化性樹脂組成物とは、当該硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂(X)100重量%に対して溶剤の含有量が5重量%以下であることをいう。
【0039】
硬化性樹脂(X)は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物とは、分子内に1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、水素化エポキシ化合物(脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル)等を挙げることができる。硬化性樹脂(X)に含まれるエポキシ化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0040】
エポキシ化合物の含有量は、硬化性樹脂(X)100重量%に対して、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがより好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。エポキシ化合物の含有量は、硬化性樹脂(X)100重量%に対して、100重量%以下であればよく、90重量%以下であってもよく、さらには80重量%以下であってもよいし、75重量%以下であってもよい。
【0041】
エポキシ化合物のエポキシ当量は通常、40~3000g/当量、好ましくは50~1500g/当量の範囲内である。エポキシ当量が3000g/当量を超えると、硬化性樹脂(X)に含有される他の成分との相溶性が低下する可能性がある。
【0042】
硬化性樹脂(X)に含まれるエポキシ化合物は、脂環式エポキシ化合物を含有することが好ましい。脂環式エポキシ化合物は、脂環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有するエポキシ化合物である。「脂環に結合したエポキシ基」とは、下記式に示される構造における橋かけの酸素原子-O-を意味する。下記式中、mは2~5の整数である。
【化1】
【0043】
上記式における(CH中の1個又は複数個の水素原子を取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となり得る。(CH中の1個又は複数個の水素原子は、メチル基やエチル基等の直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。脂環式エポキシ化合物の中でも、オキサビシクロヘキサン環(上記式においてm=3のもの)や、オキサビシクロヘプタン環(上記式においてm=4のもの)を有するエポキシ化合物は、偏光子10の偏光領域11と、非偏光領域12を形成する硬化性樹脂(X)の硬化物との間に優れた密着性を与えることから好ましく用いられる。以下に、好ましく用いられる脂環式エポキシ化合物を具体的に例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0044】
[a]下記式(IV)で示されるエポキシシクロヘキシルメチル エポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
【化2】

[式(IV)中、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表す。]
【0045】
[b]下記式(V)で示されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキサンカルボキシレート類:
【化3】

[式(V)中、R10及びR11は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表し、nは2~20の整数を表す。]
【0046】
[c]下記式(VI)で示されるジカルボン酸のエポキシシクロヘキシルメチルエステル類:
【化4】

[式(VI)中、R12及びR13は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表し、pは2~20の整数を表す。]
【0047】
[d]下記式(VII)で示されるポリエチレングリコールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
【化5】

[式(VII)中、R14及びR15は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表し、qは2~10の整数を表す。]
【0048】
[e]下記式(VIII)で示されるアルカンジオールのエポキシシクロヘキシルメチルエーテル類:
【化6】

[式(VIII)中、R16及びR17は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表し、rは2~20の整数を表す。]
【0049】
[f]下記式(IX)で示されるジエポキシトリスピロ化合物:
【化7】

[式(IX)中、R18及びR19は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表す。]
【0050】
[g]下記式(X)で示されるジエポキシモノスピロ化合物:
【化8】

[式(X)中、R20及びR21は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表す。]
【0051】
[h]下記式(XI)で示されるビニルシクロヘキセンジエポキシド類:
【化9】

[式(XI)中、R22は、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表す。]
【0052】
[i]下記式(XII)で示されるエポキシシクロペンチルエーテル類:
【化10】

[式(XII)中、R23及びR24は、互いに独立して、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表す。]
【0053】
[j]下記式(XIII)で示されるジエポキシトリシクロデカン類:
【化11】

[式(XIII)中、R25は、水素原子又は炭素数1~5の直鎖状アルキル基を表す。]
【0054】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。より具体的には、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0055】
水素化エポキシ化合物は、芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより得られるものである。芳香族ポリオールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノール等の多官能型の化合物が挙げられる。水素化エポキシ化合物の中でも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0056】
硬化性樹脂(X)は、エポキシ化合物等の活性エネルギー線硬化性化合物とともに(メタ)アクリル系化合物等を含有してもよい。(メタ)アクリル系化合物を併用することにより、偏光子10の偏光領域11と非偏光領域12を形成する硬化性樹脂(X)の硬化物との間の密着性、硬化性樹脂(X)の硬化物の硬度及び機械的強度を高める効果が期待でき、さらには、硬化性樹脂(X)の粘度や硬化速度等の調整をより容易に行うことができるようになる。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも一方を意味する。
【0057】
硬化性樹脂(X)を含む硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、光カチオン系重合剤等のカチオン系重合剤やラジカル重合開始剤が挙げられる。光カチオン系重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基の重合反応を開始させるものである。上述のように硬化性樹脂(X)は、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂であることが好ましく、硬化性樹脂(X)は脂環式エポキシ化合物を含むことが好ましいため、この場合の重合開始剤は、紫外線の照射によりカチオン種又はルイス酸を発生するものが好ましい。
【0058】
硬化性樹脂組成物は、さらに、光増感剤、重合促進剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤を含有することができる。
【0059】
(偏光子の製造方法)
図3(a)~(e)は、本実施形態の偏光子の製造方法の一例を模式的に示す概略断面図である。図3(a)~(e)では、図1(b)に示す偏光子10を得る場合を示しているが、図1(c)及び(d)に示す偏光子10も、下記に説明する方法によって製造することができる。偏光子10は、例えば、全体が同じ視感度補正偏光度(Py)を有し、非偏光領域12を有していない原料偏光子20を用いて製造することができる。原料偏光子20は上記した偏光子10の偏光領域11のみで形成されているため、原料偏光子20の厚みは、偏光子10の偏光領域11と同じ厚みである15μm以下であることが好ましい。
【0060】
偏光子10は、例えば次の工程で製造することができる。まず、図3(a)に示すように、原料偏光子20の一方の面に、原料偏光子20に対して剥離可能に第1支持層25が設けられた第1積層体31を準備する。準備した第1積層体31に対して、打抜き、切抜き、切削、又はレーザーカット等により積層方向に貫通する貫通穴32を形成する(図3(b))。これにより、原料偏光子20に貫通穴22が形成された穴あき偏光子21が得られる。続いて、貫通穴32が形成された第1積層体31の穴あき偏光子21側に第2支持層26を剥離可能に設けた後(図3(c))、第1支持層25を剥離する(図3(d))。これにより、第2支持層26と穴あき偏光子21とが積層された第2積層体33を得る(図3(d))。第2支持層26は、穴あき偏光子21の貫通穴22の一方側を塞ぐように設ける。
【0061】
次に、第2積層体33の穴あき偏光子21の貫通穴22に硬化性樹脂(X)を含む硬化性樹脂組成物を充填し、活性エネルギー線を照射することにより、貫通穴22内の硬化性樹脂(X)を硬化させる。これにより、穴あき偏光子21の貫通穴22に硬化性樹脂(X)の硬化物を形成し、第2支持層26上に積層された偏光子10を得る(図3(e))。硬化物を形成した後に、第2支持層26は剥離してもよい。得られた偏光子10は、穴あき偏光子21の貫通穴22以外の領域が偏光領域11となり、硬化物が設けられた貫通穴22の領域が非偏光領域12となっている。
【0062】
穴あき偏光子21の貫通穴22に硬化性樹脂組成物を充填する方法としては、特に限定されない。例えば、分注器又はディスペンサー等を用いて第2積層体33の穴あき偏光子21の貫通穴22に硬化性樹脂組成物を注入してもよく、第2積層体33の穴あき偏光子21の表面上に硬化性樹脂組成物をコーティングしながら、穴あき偏光子21の貫通穴22に硬化性樹脂組成物を充填してもよい。穴あき偏光子21の表面上にコーティングされた硬化性樹脂組成物の硬化物層は、後述する保護層とすることができる。硬化性樹脂組成物をコーティングする場合は、コーティングにより形成された塗布層表面を覆うように基材フィルムを設けてもよい。基材フィルムは、後述する保護層として用いてもよく、この場合、硬化性樹脂(X)の硬化物層は、後述する保護層を貼合するための貼合層としてもよい。基材フィルムは、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂(X)の硬化後に剥離してもよい。
【0063】
第1支持層25は、原料偏光子20の製造時に用いられる支持層であってもよく、硬化性樹脂組成物をコーティングする際に用いた上記基材フィルムを用いてもよい。あるいは、原料偏光子20に、水等の揮発性液体によって貼合された剥離可能な支持層であってもよく、原料偏光子20に対して剥離可能な粘着シートであってもよい。第2支持層26は、穴あき偏光子21に水等の揮発性液体によって貼合された剥離可能な支持層であってもよく、穴あき偏光子21に対して剥離可能な粘着シートであってもよい。
【0064】
上記のように、原料偏光子20の厚みが15μm以下であることにより、穴あき偏光子21に設けられる貫通穴22の深さも15μm以下とすることができる。これにより、穴あき偏光子21の貫通穴22への硬化性樹脂組成物の充填や、貫通穴22に充填された硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂(X)の硬化処理を短時間で行うことができるため、作業性の低下を抑制できる。
【0065】
(原料偏光子)
原料偏光子20は、貫通穴22に充填された硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂(X)を硬化させるために照射する活性エネルギー線によって著しく変質しにくいものであることが好ましい。このような原料偏光子20は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたフィルムや、重合性液晶化合物の硬化層中で二色性色素が配向しているものであり、これらの製造方法は、上述の偏光領域11において説明したとおりである。
【0066】
<偏光子複合体>
図4(a)は、本実施形態の偏光子複合体の一例を模式的に示す概略断面図であり、図4(b)は、偏光子複合体の補強材側の概略平面図である。図4(b)中、偏光子10の非偏光領域12を波線で示している。図4(a)に示す偏光子複合体41は、偏光子10と、偏光子10の一方の面側に設けられた補強材50とを有する。補強材50は、偏光子10の両面に設けられていてもよい。
【0067】
偏光子複合体41において、補強材50は、各開口端面が偏光子10の面に対向するように配列した複数のセル51を有する。セル51は、セル51を区画するセル隔壁53に囲まれた中空柱状(筒状)の構造を有し、柱状の構造の軸方向両端が開口した開口端面となっているものである。
【0068】
偏光子複合体41において、補強材50は、図4(a)に示すように、偏光子10の非偏光領域12及びその周辺に対応する領域にセル51が存在するように設けることが好ましく、偏光子10の全面にセル51が存在するように設けることがより好ましい。
【0069】
偏光子10は非偏光領域12を有するため、表示装置に適用した場合等に受ける温度変化に伴う偏光子10の収縮によって非偏光領域12の周辺にクラックが発生しやすいと考えられる。また、偏光子10は、偏光領域11の厚みが15μm以下と薄いため、衝撃を受けた場合にクラックが発生しやすいと考えられる。偏光子複合体41では、上記のように偏光子10の片面に補強材50が設けられているため、温度変化や衝撃を受けた場合のクラックの発生や、微細なクラックが大きなクラックに進行することを抑制できると考えられる。
【0070】
図4(a)に示す偏光子複合体41は、それぞれ図1(b)に示す偏光子10と補強材50とを有するものであるが、これに限定されない。例えば、偏光子複合体41に含まれる偏光子10は、図1(c)又は(d)に示す偏光子10であってもよい。
【0071】
補強材50は、偏光子10とともに表示装置等に適用される。補強材50のセル51の内部空間が空洞であると、セル隔壁53とセル51の内部空間との屈折率の違い等により表示装置の視認性が低下する虞がある。そのため、偏光子複合体41における補強材50のセル51の内部空間には、透光性の充填材が設けられることが好ましい。偏光子複合体41の補強材50において、後述するように複数のセル51の間に隙間が設けられている場合には、この隙間にも透光性の充填材が設けられることが好ましい。
【0072】
補強材50に設けてもよい充填材は透光性を有し、補強材50のセル51の内部空間を埋めることができるものであれば特に限定されない。充填材は、補強材50のセル隔壁53を構成する材料とは異なる材料であることが好ましく、樹脂材料を含むことがより好ましい。当該樹脂材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂等の硬化性樹脂等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられ、粘着剤又は接着剤であってもよい。
【0073】
熱可塑性樹脂としては、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)等のポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテル系樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0074】
硬化性樹脂としては、例えば上記した硬化性樹脂(X)が挙げられる。
【0075】
粘着剤は、それ自体を被着体に貼り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、又はゴム系ポリマー等のポリマーを主成分として含むものが挙げられる。本明細書において、主成分とは、粘着剤の全固形分のうち50質量%以上を含む成分をいう。粘着剤は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよく、活性エネルギー線照射や加熱により、架橋度や接着力を調整してもよい。
【0076】
接着剤は、硬化性の樹脂成分を含むものであって、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤である。接着剤としては、硬化性の樹脂成分を水に溶解又は分散させた水系接着剤、活性エネルギー線硬化性化合物を含有する活性エネルギー線硬化性接着剤、熱硬化性接着剤等が挙げられる。
【0077】
接着剤として、偏光板の技術分野で汎用されている水系接着剤を用いることもできる。水系接着剤に含有される樹脂成分としては、ポリビニルアルコール系樹脂やウレタン系樹脂等が挙げられる。活性エネルギー線硬化性接着剤としては、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する組成物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性接着剤としては、上記した硬化性樹脂(X)を含む硬化性樹脂組成物を用いてもよい。熱硬化性接着剤としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂等を主成分として含むものが挙げられる。
【0078】
(補強材)
補強材50が有するセル51は、上記したように、セル51を区画するセル隔壁53に囲まれた中空柱状(筒状)の構造を有し、柱状の構造の軸方向両端が開口した開口端面となっているものである。セル51は、開口端面として、偏光子複合体41の偏光子10との距離が相対的に近い側に配置される第1開口端面と、相対的に遠い側に配置される第2開口端面とを有する。補強材50は、第1開口端面及び第2開口端面のうちの少なくとも一方が、偏光子10に対向するように配列していればよく、第1開口端面及び第2開口端面の両方が、偏光子10に対向するように配列していることが好ましい。
【0079】
補強材50が有するセル51の開口の形状は特に限定されないが、多角形状、円形状、又は楕円形状であることが好ましい。第1開口端面の開口の形状と、第2開口端面の開口の形状とは、同じ大きさの同じ形状であることが好ましいが、異なる形状であってもよく、同じ形状であって大きさが異なっていてもよい。また、補強材50が有する複数のセルの開口の形状は、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0080】
補強材50が有する複数のセル51は、開口端面の平面視において、各セル51の開口が互いに隣接するように配列していることが好ましい。複数のセル51は、開口端面の平面視において、例えば図4(b)に示すセル51の開口の形状が六角形等である場合のように、セル51が互いに隙間なく配置されるように配列していてもよい。あるいは、複数のセル51は、開口端面の平面視において、セル51の開口の形状が円形等である場合のように、複数のセル51のセル隔壁53の一部が接しており、複数のセル51の間に隙間を有して配置されるように配列されていてもよい。
【0081】
補強材50は、例えば図4(b)に示すように、第1開口端面及び第2開口端面のいずれにおいても開口の形状が六角形状であり、偏光子複合体41の面方向において、開口が互いに隣り合い隙間なく配置されるように複数のセルが配列したハニカム構造を有することが好ましい。
【0082】
補強材50のセル51の開口の大きさは特に限定されないが、非偏光領域12の径よりも小さい径を有することが好ましい。セルの径は、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であってもよく、1mm以下であってもよく、通常、0.1mm以上であり、0.5mm以上であってもよい。このセル51の開口の径は、開口の外周の任意の二点を結ぶ直線のうち最も長さが長い直線における長さをいう。
【0083】
補強材50のセル51の高さ(セル51の開口端面に直交する方向の長さ)は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、また、通常15μm以下であり、13μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
【0084】
補強材50のセル51を区画するセル隔壁53は、透光性を有することが好ましい。
【0085】
補強材50のセル隔壁53の線幅は、例えば0.05mm以上であり、0.1mm以上であってもよく、0.5mm以上であってもよく、1mm以上であってもよく、また、通常5mm以下であり、3mm以下であってもよい。
【0086】
補強材50のセル隔壁53は、例えば樹脂材料又は無機酸化物によって形成することができ、樹脂材料によって形成されることが好ましい。樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、上記した硬化性樹脂(X);上記充填材に用いる熱可塑性樹脂として例示した熱可塑性樹脂等が挙げられる。無機酸化物としては、酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0087】
偏光子10の両面側に補強材50が設けられる場合、2つの補強材50は互いに同じもの(セル51の形状及び大きさが同じもの)であってもよく、互いに異なっていてもよい。偏光子10の両面側に設けられる2つの補強材50のセル51の開口は、平面視において互いに重なるように配置されていてもよいが、平面視において互いにずれるように配置されていることが好ましい。
【0088】
(偏光子複合体の製造方法)
図4(a)に示す偏光子複合体41は、偏光子10に、補強材50を形成することによって製造することができる。補強材50は、例えば、樹脂材料又は無機酸化物を用いて、偏光子10の表面にセル51を区画するセル隔壁53を形成することによって得ることができる。
【0089】
樹脂材料を用いてセル隔壁53を形成する方法としては特に限定されないが、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法;フォトリソグラフィ法;ノズルやダイ等を用いた塗布法等が挙げられる。上記方法では、樹脂材料を、溶媒、添加剤等と混合した樹脂組成物を用いてもよい。添加剤としては、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、粘着付与剤、有機又は無機の充填剤、顔料、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。セル隔壁53は、印刷又は塗布された樹脂組成物に、必要に応じて固化又は硬化のための処理を行って形成してもよい。
【0090】
無機酸化物を用いてセル隔壁53を形成する方法としては特に限定されないが、例えば、無機酸化物を蒸着することによって形成することができる。
【0091】
偏光子複合体41の補強材50が充填材を有する場合、偏光子10に形成した補強材50に対し、セル51の内部空間やセル51の間の隙間に、充填材を構成する材料を充填すればよい。充填材を構成する材料は、例えば、補強材50上にコーティングすることによって充填してもよい。あるいは、充填材を構成する材料として粘着剤を用いる場合は、離型フィルム上に粘着剤層を設けた粘着シートを貼合して、粘着剤を充填してもよい。
【0092】
<光学積層体>
図5図8は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。光学積層体は、図1(b)~(d)に示す偏光子10、図4(a)に示す偏光子複合体41の片面側又は両面側に保護層を有するものである。
【0093】
(光学積層体(1))
図5(a)~(c)に示す光学積層体42は、図1(b)~(d)のいずれかに示す偏光子10と、偏光子10の片面側に設けられた保護層17とを有する。保護層17は、偏光子10上に直接設けられた硬化性樹脂(X)の硬化物層である。硬化物層である保護層17を構成する硬化性樹脂(X)としては、紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射によって硬化する樹脂であれば特に限定されず、例えば上記で説明した硬化性樹脂(X)が挙げられる。保護層17は、偏光子10の非偏光領域12に含まれる硬化物を構成する硬化性樹脂(X)と同じ硬化性樹脂(X)を含む硬化性樹脂組成物の硬化物層であることが好ましい。
【0094】
保護層17が偏光子10の硬化物を構成する硬化性樹脂(X)と同じ硬化性樹脂(X)の硬化物層である場合、保護層17は少なくとも偏光子10の非偏光領域12を被覆することが好ましい。保護層17は、偏光子10の片面の少なくとも一部を被覆していればよいが、偏光子10の片面の全面を被覆することが好ましい。
【0095】
光学積層体42を製造するためには、例えば、偏光子10の片面に硬化性樹脂組成物をコーティングし、活性エネルギー線を照射することによって当該硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂(X)を硬化させる。これにより、偏光子10上に、硬化性樹脂(X)の硬化物層である保護層17を形成して光学積層体42を得てもよい。
【0096】
あるいは、まず上記した第2積層体33(図3(d))の穴あき偏光子21の表面上に硬化性樹脂組成物をコーティングすることにより、穴あき偏光子21の貫通穴22に硬化性樹脂組成物を充填し、穴あき偏光子21の表面にも硬化性樹脂組成物の塗布層を形成する。その後、活性エネルギー線の照射により、穴あき偏光子21の貫通穴22内及び表面上の、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂(X)を硬化させて、硬化物及び硬化物層である保護層17を形成して光学積層体42を得てもよい。この場合、非偏光領域12に含まれる硬化物と、保護層17を構成する硬化物層とを一体化することができ、保護層17を構成する硬化性樹脂(X)は、非偏光領域12に含まれる硬化物を構成する硬化性樹脂(X)と同じ硬化性樹脂(X)とすることができる。
【0097】
図5(b)及び(c)に示す光学積層体42を製造するために、図1(c)及び(d)に示す偏光子10に、硬化物層である保護層17を設ける場合は、偏光子10の偏光領域11と非偏光領域12との厚み差を埋めるように保護層17を設けてもよい。具体的には、図5(b)に示す光学積層体42を得る場合には、図1(c)に示す偏光子10の、非偏光領域12において偏光領域11の厚みよりも小さくなっている側(図1(c)の上側の表面側)において、その厚み差を埋め、かつ、偏光領域11の表面を被覆するように、硬化性樹脂(X)をコーティングして保護層17を設ければよい。図5(c)に示す光学積層体42を得る場合には、図1(d)に示す偏光子10の、偏光領域11の表面よりも非偏光領域12が突出している側(図1(d)の上側の表面側)において、その厚み差を埋め、偏光領域11及び非偏光領域12の両方の表面を被覆するように、硬化性樹脂組成物をコーティングして保護層17を設けてもよい。図5(c)に示す光学積層体42では、非偏光領域12の表面にも保護層17を設けているが、非偏光領域12の表面は被覆せず、偏光領域11の表面のみを被覆するように保護層17を設けてもよい。
【0098】
硬化性樹脂組成物をコーティングする場合は、コーティングにより形成された塗布層表面を覆うように基材フィルムを設けてもよい。この場合、基材フィルムを保護層17とし、硬化性樹脂(X)の硬化物層を、保護層17を偏光子10に貼合するための貼合層としてもよい。基材フィルムは、硬化性樹脂(X)の硬化後に剥離してもよい。
【0099】
(光学積層体(2))
図6は、本実施形態の光学積層体の他の一例を模式的に示す概略断面図である。図6に示す光学積層体43は、偏光子10の片面に、硬化性樹脂(X)の硬化物層の保護層17を有する光学積層体42(図5(a))と、光学積層体42の偏光子10側に設けられた補強材50とを有する。補強材50は、図5(a)に示す光学積層体42の保護層17側にも設けられてもよい。
【0100】
補強材50については、上記した偏光子複合体41において説明したとおりである。図6に示す光学積層体43は、例えば、図5(a)に示す光学積層体42に、上記した方法により補強材50を形成することによって得ることができる。あるいは、図1(b)~(d)に示す偏光子10に、上記した方法により補強材50を形成した後、上記した方法で保護層17を形成して光学積層体43を得てもよい。
【0101】
(光学積層体(3))
図7に示す光学積層体44は、図1(b)に示す偏光子10の両面側に保護層17,18を有する。光学積層体44は、偏光子10の片面側にのみ保護層17(又は18)を有するものであってもよい。光学積層体44に含まれる偏光子10は、図1(c)又は(d)に示す偏光子10であってもよい。保護層17,18は、粘着剤層又は接着剤層等の貼合層を介して偏光子10上に設けることができる。この場合、例えば、貼合層を介して、偏光子10にフィルム状の保護層を積層すればよい。保護層17,18は、貼合層を介さずに偏光子10に直接接するように設けてもよい。この場合、例えば、保護層17,18を構成する樹脂材料を含む組成物を、偏光子10上に塗布し、この塗布層を固化又は硬化すること等によって保護層17,18を形成することができる。保護層17,18は、一方を貼合層を介して設けた保護層とし、他方を貼合層を介さずに設けた保護層としてもよい。光学積層体44に含まれる保護層17,18は、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0102】
光学積層体44が、図1(c)又は(d)に示す偏光子10に貼合層を介して保護層17,18を設けたものである場合は、偏光子10の偏光領域11と非偏光領域12との厚み差を埋めるように貼合層を設けて、保護層17,18を設けることが好ましい。光学積層体44が、図1(c)又は(d)に示す偏光子10に直接接するように保護層17,18を設けたものである場合には、偏光子10の偏光領域11と非偏光領域12との厚み差を埋めるように保護層17,18を構成する樹脂材料を含む組成物を設けて、保護層17,18を形成することが好ましい。
【0103】
(光学積層体(4))
図8に示す光学積層体45は、図4(a)に示す偏光子複合体41の両面側に保護層17,18を有する。光学積層体45は、偏光子複合体41の片面側にのみ保護層17(又は18)を有するものであってもよい。保護層17,18は、粘着剤層又は接着剤層等の貼合層を介して偏光子複合体41上に設けることができる。この場合、例えば、貼合層を介して、偏光子複合体41にフィルム状の保護層を積層すればよい。偏光子複合体41の補強材50側に設けられる保護層18は、例えば、補強材50のセル51の内部空間、及び複数のセル51の間の隙間等を埋めるように貼合層を設けて、保護層を積層すればよい。あるいは、フィルム状の保護層の片面に貼合層となる材料の塗布層が形成された積層シートを、補強材50上に積層することによって、補強材50のセル51の内部空間、及び複数のセル51の間の隙間等に貼合層となる材料を充填して保護層を形成してもよい。また、図8においては、偏光子10の一方側の面に補強材を設けた場合について示したが、偏光子10の両面に補強材50を設けてもよい。
【0104】
保護層17,18は、貼合層を介さずに偏光子複合体41に直接接するように設けてもよい。偏光子複合体41の偏光子10側に設けられる保護層17は、例えば、保護層17を構成する樹脂材料を含む組成物を、偏光子複合体41の偏光子10上に塗布し、この塗布層を固化又は硬化すること等によって形成することができる。偏光子複合体41の補強材50側に設けられる保護層18は、補強材50のセル51の内部空間、及び複数のセル51の間の隙間等を埋めるように、保護層18を構成する樹脂材料を含む組成物を設けて、保護層18を充填して形成してもよい。
【0105】
保護層17,18は、一方を貼合層を介して設けた保護層とし、他方を貼合層を介さずに設けた保護層としてもよい。光学積層体44に含まれる保護層17,18は、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0106】
(保護層)
保護層17,18は、光を透過可能な樹脂層であることが好ましく、樹脂フィルムであってもよく、樹脂材料を含む組成物を塗布して形成した塗布層であってもよい。樹脂層に用いられる樹脂としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、上記した原料偏光子20の製造に用いてもよい基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂が挙げられる。光学積層体42~45が両面に保護層17,18を有する場合、保護層17,18の樹脂組成は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0107】
保護層17,18の厚みは、薄型化の観点から、通常200μm以下であり、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であってもよく、60μm以下であってもよい。保護層17,18の厚みは、通常5μm以上であり、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。保護層17,18は位相差を有していても、有していなくてもよい。光学積層体42~45が両面に保護層17,18を有する場合、保護層17,18の厚みは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0108】
(貼合層)
貼合層は、粘着剤層又は接着剤層である。粘着剤層を形成するための粘着剤及び接着剤層を形成するための接着剤としては、例えば、上記した充填材を構成するために用いる粘着剤及び接着剤が挙げられる。
【0109】
<光学表示素子用貼合層を有する積層体>
図1(b)~(d)に示す偏光子10、図4(a)に示す偏光子複合体41、図5図8に示す光学積層体42~45は、さらに、液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置の光学表示素子(液晶パネル、有機EL素子)に貼合するための光学表示素子用貼合層を有していてもよい。
【0110】
偏光子10、偏光子複合体41、光学積層体42~45において、図1(c)又は(d)に示す偏光子10のように偏光領域11と非偏光領域12との間に厚み差が生じている表面に光学表示素子用貼合層を設ける場合は、この厚み差を埋めるように光学表示素子用貼合層を設けることが好ましい。
【0111】
偏光子複合体41及び光学積層体43,45において、補強材50の表面に光学表示素子用貼合層を設ける場合は、補強材50に設けられる充填材として光学表示素子用貼合層を構成する材料を用い、補強材50のセル51の内部空間等への充填材の充填と、光学表示素子用貼合層の形成とを同時に行ってもよい。
【符号の説明】
【0112】
10 偏光子、11 偏光領域、11m 第1平面、11n 第2平面、12 非偏光領域、17,18 保護層、20 原料偏光子、21 穴あき偏光子、22 貫通穴、25 第1支持層、26 第2支持層、31 第1積層体、32 貫通穴、33 第2積層体、41 偏光子複合体、42~45 光学積層体、50 補強材、51 セル、53 セル隔壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8