(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2020144571
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】森尻 敬治
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088830(JP,A)
【文献】特開2008-199705(JP,A)
【文献】特開2013-207914(JP,A)
【文献】特開2010-063333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧の印加端に第1端が接続された第1スイッチと、
前記第1スイッチの第2端に第1端が接続され、前記入力電圧よりも低い電圧の印加端に第2端が接続された第2スイッチと、
前記第2スイッチを流れる所定の期間の電流情報を取得し、前記電流情報に基づいた駆動制御用のスロープ電圧を生成する制御情報生成部と、
前記スロープ電圧に応じて前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのオンオフを制御する駆動制御部と、を備え、
前記制御情報生成部は、前記第2スイッチがオンする期間内の第1期間及び第2期間における電流情報を取得し、前記第1期間の電流情報と前記第2期間の電流情報との差分に基づいて前記スロープ電圧を生成する、
スイッチング電源装置。
【請求項2】
前記制御情報生成部は、
前記第1期間及び前記第2期間を設定する電流情報取り込み時間設定回路を有し、
前記第1期間の時間と前記第2期間の時間は、所定誤差範囲内で等しく、各期間は前記第1スイッチがオンする時間の長さに反比例する時間である、
請求項1に記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記制御情報生成部は、
前記第1期間の時間、及び前記第2期間の時間のそれぞれにおいて、前記第2スイッチを流れる電流情報に対応する電圧を積算し、前記スロープ電圧として前記第1期間の積算値と前記第2期間の積算値との差分に応じた傾きを持つ電圧を生成する、
請求項1又は2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記制御情報生成部は、
前記第2スイッチを流れる電流に応じた電荷を充電又は放電するキャパシタを有し、
前記第1期間において前記キャパシタを充電し、前記第2期間において前記キャパシタを放電し、前記キャパシタの充電電圧に基づいて前記スロープ電圧を出力する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記制御情報生成部は、
前記第2スイッチを流れる電流情報を検出し、前記第1期間及び前記第2期間の電流情報を蓄積する電流検出回路と、
前記電流検出回路により蓄積された電流情報に応じた電圧により前記スロープ電圧を生成するスロープ生成回路と、を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
前記電流情報取り込み時間設定回路は、
前記第1期間と前記第2期間のそれぞれの時間においてハイレベルの信号を出力するワンショットパルス生成回路である、
請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置において、制御方式は、出力電圧の電圧情報を帰還して制御する電圧モード制御方式と、出力電圧の電圧情報とパワートランジスタ等のスイッチ素子を流れる電流情報を用いて出力電圧を制御する電流モード制御方式とに大別できる。電流モード制御方式は、一般的に位相補償の簡易化、高速応答、外付け部品点数削減の面で、極めて有効な制御方式である。
【0003】
電流モード制御方式では、スイッチ素子に流れる電流情報を用いるため、スイッチ素子がオンしたときに発生するスパイク電流等のノイズもそのまま伝達してしまうため、誤動作が発生してしまう。
【0004】
こうした誤動作を防止するために、スイッチ素子がターンオンしてから一定時間だけ電流を取り込まないようにマスク時間を設ける方法が一般的である。このマスク時間が電流モード制御方式を用いたスイッチング電源装置の最小オン時間となる。例えば、降圧型スイッチング電源の場合、最小オン時間を小さくするほど、入力電圧に対する出力電圧の比を小さくすることができる。
【0005】
しかし、上記のような誤動作が発生する可能性があることから、マスク時間を一定時間以上確保する必要があるため、入力電圧に対する出力電圧の比を極端に小さくすることができないという課題がある。この課題を解決するものとして、例えば、特許文献1のような手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の手法は、スイッチ素子がオフ状態にあるときに次の周期におけるスイッチ素子がオンしたときの電流情報を予測するため、スイッチ素子がオンしたときに発生するスパイク電流等の影響を受けることがない。したがって、一定のマスク時間を設定する必要がなく、入力電圧に対する出力電圧の比を極端に小さくすることができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の手法では、予測する電流情報が入力電圧や出力負荷の条件に依存しているため、これらの条件変化によって本来の電流情報との誤差が大きくなってしまう課題がある。
【0009】
本発明は、電流モード制御方式において電流情報検出のマスク時間を設ける必要がなく、かつ高精度に電流情報を得ることが可能なスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入力電圧の印加端に第1端が接続された第1スイッチと、前記第1スイッチの第2端に第1端が接続され、前記入力電圧よりも低い電圧の印加端に第2端が接続された第2スイッチと、前記第2スイッチを流れる所定の期間の電流情報を取得し、前記電流情報に基づいた駆動制御用のスロープ電圧を生成する制御情報生成部と、前記スロープ電圧に応じて前記第1スイッチ及び前記第2スイッチのオンオフを制御する駆動制御部と、を備え、前記制御情報生成部は、前記第2スイッチがオンする期間内の第1期間及び第2期間における電流情報を取得し、前記第1期間の電流情報と前記第2期間の電流情報との差分に基づいて前記スロープ電圧を生成する、スイッチング電源装置を提供する。
【0011】
また、本発明は、上記のスイッチング電源装置であって、前記制御情報生成部は、前記第1期間及び前記第2期間を設定する電流情報取り込み時間設定回路を有し、前記第1期間の時間と前記第2期間の時間は、所定誤差範囲内で等しく、各期間は前記第1スイッチがオンする時間の長さに反比例する時間である、スイッチング電源装置を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記いずれかのスイッチング電源装置であって、前記制御情報生成部は、前記第1期間の時間、及び前記第2期間の時間のそれぞれにおいて、前記第2スイッチを流れる電流情報に対応する電圧を積算し、前記スロープ電圧として前記第1期間の積算値と前記第2期間の積算値との差分に応じた傾きを持つ電圧を生成する、スイッチング電源装置を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記いずれかのスイッチング電源装置であって、前記制御情報生成部は、前記第2スイッチを流れる電流に応じた電荷を充電又は放電するキャパシタを有し、前記第1期間において前記キャパシタを充電し、前記第2期間において前記キャパシタを放電し、前記キャパシタの充電電圧に基づいて前記スロープ電圧を出力する、スイッチング電源装置を提供する。
【0014】
また、本発明は、上記いずれかのスイッチング電源装置であって、前記制御情報生成部は、前記第2スイッチを流れる電流情報を検出し、前記第1期間及び前記第2期間の電流情報を蓄積する電流検出回路と、前記電流検出回路により蓄積された電流情報に応じた電圧により前記スロープ電圧を生成するスロープ生成回路と、を有する、スイッチング電源装置を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記のスイッチング電源装置であって、前記電流情報取り込み時間設定回路は、前記第1期間と前記第2期間のそれぞれの時間においてハイレベルの信号を出力するワンショットパルス生成回路である、スイッチング電源装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電流モード制御方式において電流情報検出のマスク時間を設ける必要がなく、かつ高精度に電流情報を得ることが可能なスイッチング電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のスイッチング電源装置の構成例を示す回路図である。
【
図2】本実施形態のスイッチング電源装置の主要部の詳細構成例を示す回路図である。
【
図3】本実施形態のスイッチング電源装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】本実施形態における電流情報取り込み時間設定回路の構成例を示す回路図である。
【
図5】本実施形態における電流情報取り込み時間設定回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】第1比較例のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図7】第1比較例のスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図8】スイッチング電源装置におけるスイッチのオン時及びオフ時の電流情報の傾きを説明する図である。
【
図9】第2比較例のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
【
図10】第2比較例のスイッチング電源装置の主要部の詳細構成例を示す回路図である。
【
図11】第2比較例のスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るスイッチング電源装置を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(本実施形態に至る背景)
第1比較例として、一般的な電流モード制御方式の同期整流型スイッチング電源装置の構成を示し、動作について説明する。
【0020】
図6は、第1比較例のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図7は、第1比較例のスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
図7では、スイッチング電源装置の各ノードの動作波形を示している。
【0021】
第1比較例のスイッチング電源装置50は、パワーMOSトランジスタ等によるスイッチ素子Q1,Q2、電流検出回路51、重畳回路52、基準電圧源54、誤差増幅器55、PWM比較器56、発振器57、フリップフロップ58、NOT回路NOT1、ドライバ59A,59Bを有する。スイッチング電源装置50は、V+端子に電源60が接続されて入力電圧VINが入力され、SW端子にインダクタL1の一端が接続され、インダクタL1の他端にキャパシタC1及び分圧抵抗R1,R2が接続され、インダクタL1の他端より出力電圧VOUTを出力する。また、FB端子に分圧抵抗R1,R2の接続点が接続され、出力電圧VOUTを分圧した電圧がフィードバックされる。
【0022】
第1比較例のスイッチング電源装置50では、インダクタL1を流れる出力電流ILの電流情報を検出し、FB端子にフィードバックされた出力電圧VOUTの電圧情報と合わせて出力電圧VOUTを所定電圧に制御する。このとき、出力電流ILの電流情報は電流検出回路51により、スイッチ素子Q1,Q2の接続点SWに相当するノードA電圧と入力電圧VINとに基づく検出電流情報をノードB電圧として出力し、このノードB電圧と発振器57の出力のランプ電圧Vrampとを重畳回路52で重畳する。また、誤差増幅器55により、出力電圧VOUTに比例する電圧と基準電圧源54の参照電圧VREFとの差分を増幅出力し、PWM比較器56により、誤差増幅器55の出力の誤差信号と重畳回路52の出力の電流情報とを比較する。PWM比較器56の出力のノードC電圧は、PWM+入力の電流情報電圧がPWM-入力の誤差信号電圧を超えたときに、ハイレベルとなる。
【0023】
そして、RS型のフリップフロップ58により、発振器57の出力のクロック信号CLOCK(RSFF_S信号)とPWM比較器56の出力のノードC電圧とに応じて、Q出力よりRSFF_Q信号を出力する。ここで、ノードC電圧は、フリップフロップ58のQB出力に基づき、トランジスタQ11によってリセットされる。そして、RSFF_Q信号に基づき、ドライバ59A,59Bによりスイッチ素子Q1,Q2のゲートに対して駆動信号を出力する。以上により、検出電流情報と出力電圧の電圧情報に応じてデューティ比を調整しながら、スイッチ素子Q1,Q2が交互にオンオフするように駆動制御する。
【0024】
このように、第1比較例の電流モード制御方式では、インダクタL1の電流情報を直接モニタする代わりに、上側トランジスタ(ハイサイドスイッチ)であるスイッチ素子Q1がオン状態にあるときの電流情報を取り込み、電流情報と出力電圧の電圧情報により出力電圧VOUTを一定電圧に制御している。
【0025】
上記動作例において、上側トランジスタとしてのスイッチ素子Q1がオンの期間は、SW端子の電圧がハイレベルとなり、出力電流ILが所定の傾きで増加する。スイッチ素子Q1がオフ、下側トランジスタ(ローサイドスイッチ)であるスイッチ素子Q2がオンの期間は、SW端子の電圧がローレベルとなり、出力電流ILが所定の傾きで減少する。
【0026】
図8は、スイッチング電源装置におけるスイッチのオン時及びオフ時の電流情報の傾きを説明する図である。スイッチ素子Q1のオン時における、出力電流ILのスロープの傾きSlp1は、入力電圧V
IN及び出力電圧V
OUTを用いて以下のように表される。ここで、L:インダクタL1のインダクタンスである(以下同様)。
Slp1=(V
IN-V
OUT)/L
【0027】
また、スイッチ素子Q1のオフ時における出力電流ILのスロープの傾きSlp2は、出力電圧VOUTを用いて以下のように表される。
Slp2=(-VOUT)/L
【0028】
この第1比較例では、スイッチ素子Q1がオンしたときに発生するスパイク電流等のノイズの影響を低減するため、スイッチ素子Q1がターンオンしてから一定時間だけ電流を取り込まないようにマスク時間を設ける必要がある。
【0029】
図9は、特許文献1に開示された構成に対応する第2比較例のスイッチング電源装置の構成を示す回路図である。
図10は、
図9に示した第2比較例のスイッチング電源装置の主要部の詳細構成例を示す回路図である。第2比較例のスイッチング電源装置100は、スイッチ素子Q1,Q2、タイミングコントロール回路101、誤差増幅器102、基準電圧源103、電流検出回路104、スロープ回路105、PWM比較器106、発振器107を有する。電流検出回路104は、電圧電流変換回路104Aを有して構成される。スロープ回路105は、スイッチS11~S13、キャパシタC12,C13、電圧電流変換回路105Aを有して構成される。スイッチ素子Q1,Q2の接続点にはインダクタL1の一端が接続され、インダクタL1の他端にキャパシタC1及び分圧抵抗R1,R2が接続され、インダクタL1の他端より出力電圧V
OUTを出力する。
【0030】
図11は、
図9に示した第2比較例のスイッチング電源装置の動作を示すタイミングチャートである。
図11では、スイッチング電源装置の各ノードの動作波形を示している。
【0031】
第2比較例のスイッチング電源装置100では、発振器107の出力のSET信号とPWM比較器106の出力のRESET信号とに基づき、スイッチ素子Q1,Q2のゲートに対して駆動信号を供給してオンオフする。上側トランジスタとしてのスイッチ素子Q1がオンの期間は、スイッチ素子Q1,Q2の接続点の電圧VSWがハイレベルとなる。そして、スイッチ素子Q1がオフ(電圧VSWがローレベル)となるt11のタイミングで、スイッチS12をオンしてキャパシタC12に充電された電荷を放電してリセットする。またこのとき、スイッチS13をオンしてキャパシタC13に充電された電荷を放電してリセットする。続いて、t11のタイミングから所定時間後のt12のタイミングにおいて、スイッチS11をオフ状態からオン状態に切り替え、所定時間後のt13のタイミングでスイッチS11をオフ状態に切り替える。これにより、t12のタイミングからt13のタイミングまでの間、電圧電流変換回路104Aを通して下側トランジスタとしてのスイッチ素子Q2を流れる電流の情報がキャパシタC12の充電電圧VCRGの形で蓄積される。
【0032】
その後、t13のタイミングから所定時間後のt14のタイミング、すなわちスイッチ素子Q1がオン(電圧VSWがハイレベル)となるタイミングにおいて、スイッチS13をオン状態からオフ状態に切り替える。そして、t14のタイミングからt11のタイミングまでの期間において、電圧電流変換回路105Aの出力電流によってキャパシタC3が充電される。これにより、t12のタイミングからt13のタイミングまでにスイッチ素子Q2を流れていた電流の情報が伝達されてスロープ電圧VSLPに反映される。PWM比較器106において、誤差増幅器102の出力の誤差電圧VERRとスロープ回路105の出力のスロープ電圧VSLPとを比較し、スロープ電圧VSLPが誤差電圧VERRを超えたときにハイレベルとなり、RESET信号としてハイレベルが出力される。これにより、検出電流情報に応じてデューティ比を調整しながら、スイッチ素子Q1,Q2が交互にオンオフするように駆動制御する。
【0033】
このように、第2比較例の電流モード制御方式では、スイッチ素子Q1がオフ状態、すなわちスイッチ素子Q2がオン状態にあるときの電流情報を取り込み、次の周期におけるスイッチ素子Q1がオンしたときの電流情報を推定する。このとき、推定した電流情報はスロープ回路105よりスロープ電圧VSLPとして出力される。そして、スロープ電圧VSLPを用いて出力電圧VOUTを一定電圧に制御する。
【0034】
図6に示した第1比較例のスイッチング電源装置50の場合、上側トランジスタとしてのスイッチ素子Q1がオンしたときの電流情報を取り込んでいる。一方、
図9に示した第2比較例のスイッチング電源装置100の場合、下側トランジスタとしてのスイッチ素子Q2がオンしたときの電流情報をキャパシタに充電して取り込み、スイッチ素子Q1がオンしたときの電流情報を疑似的に生成している。
【0035】
図6の第1比較例のスイッチング電源装置50において、V
ramp信号を0Vとすると、ノードB電圧=PWM比較器56の非反転入力(PWM+入力)となる。一方、
図9の第2比較例のスイッチング電源装置100の場合、スロープ電圧V
SLP=PWM比較器106の非反転入力(PWM+入力)となる。
【0036】
第1比較例のスイッチング電源装置50において、ノードB電圧のスロープの傾きSN1は、スイッチ素子Q1のオン抵抗をRONQ1とし、電流検出回路51のゲインをkV1とすると、以下の(1)式で表すことができる。
【0037】
【0038】
ここで、VIN:入力電圧、VOUT:出力電圧である。
【0039】
(1)式において、オン抵抗RONQ1とゲインkV1の積を定数Aとすると、以下の(2)式のように置き換えることができる。
【0040】
【0041】
第2比較例のスイッチング電源装置100において、スロープ電圧VSLPのスロープの傾きSN2は、特許文献1中の式(4)より、式中の定数をBに置き換えて以下の(3)式で表すことができる。
【0042】
【0043】
(3)式において、tpは下側トランジスタとしてのスイッチ素子Q2を流れる電流の情報の蓄積時間、すなわちキャパシタC12において充電電圧V
CRGをチャージする期間あり、
図11におけるt12~t13間に相当する。t11~t12間の時間及びt13~t14間の時間がt12~t13間の時間より十分小さいとすると、tp≒t
offとなる。ここで、t
off:上側トランジスタとしてのスイッチ素子Q1がオフする時間(オフ時間)である。よって、(3)式はt
offを用いて以下の(4)式のように表すことができる。
【0044】
【0045】
(4)式のtoffについて、T,VIN,VOUTを用いて置き換えることにより、スロープ電圧VSLPのスロープの傾きSN2は以下の(5)式で表される。
【0046】
【0047】
ここで、T:スイッチ素子Q1のオンオフ周期である。
【0048】
上述したように、第2比較例のスイッチング電源装置100では、スイッチ素子Q2がオン(スイッチ素子Q1がオフ)のときの電流情報から、スイッチ素子Q1がオンしたときの電流情報として、スロープ電圧VSLPのスロープの傾きSN2を求めている。この場合、上記(5)式のように、出力電流IOUTや入力電圧VINの変化により、傾きSN2に誤差が生じる。このため、本来予測すべき電流情報の傾き、すなわち第1比較例の傾きSN1に相当する値からの乖離が大きくなる場合がある。
【0049】
本実施形態では、上記事情に鑑み、スイッチ素子Q1がオフ、すなわちスイッチ素子Q2がオンのときの電流情報を用いて、高精度にスイッチ素子Q1がオンのときの電流情報を得ることが可能なスイッチング電源装置の構成例を示す。
【0050】
(実施形態)
図1は、本実施形態のスイッチング電源装置の構成例を示す回路図である。本実施形態のスイッチング電源装置10は、パワーMOSトランジスタ等によるスイッチ素子Q1,Q2、電流検出回路11、スロープ生成回路12、電流情報取り込み時間設定回路13、基準電圧源14、誤差増幅器15、PWM比較器16、発振器17、フリップフロップ18、NOT回路NOT1、ドライバ19A,19Bを有する。スイッチング電源装置10は、V+端子に電源40が接続されて入力電圧V
INが入力される。また、SW端子にインダクタL1の一端が接続され、インダクタL1の他端にキャパシタC1及び分圧抵抗R1,R2が接続され、この接続点がスイッチング電源装置10の出力端となり、出力電圧V
OUTが出力される。また、FB端子に分圧抵抗R1,R2の接続点が接続され、出力電圧V
OUTを分圧した電圧がフィードバックされる。
【0051】
スイッチ素子Q1,Q2は、入力電圧VINが供給されるV+端子とグランドとの間に互いに直列接続される。第1スイッチとしてのスイッチ素子Q1は、高電位側スイッチであり、ハイサイドスイッチ、上側スイッチ、上側トランジスタ等とも称する。スイッチ素子Q1は、例えばPchMOSFETにより構成される。第2スイッチとしてのスイッチ素子Q2は、低電位側スイッチであり、ローサイドスイッチ、下側スイッチ、下側トランジスタ等とも称する。スイッチ素子Q2は、例えばNchMOSFETにより構成される。本実施形態では、V+端子が入力電圧VINの印加端であり、スイッチ素子Q1の第1端が接続される。また、グランドが入力電圧VINよりも低い電圧の印加端となっており、スイッチ素子Q2の第2端が接続される。そして、スイッチ素子Q1の第2端とスイッチ素子Q2の第1端とが接続され、この接続点がSW端子、インダクタL1を介してスイッチング電源装置10の出力端に接続される。
【0052】
スイッチ素子Q1は、制御端としてのゲートがドライバ19Aに接続され、ドライバ19Aによってオン/オフ制御される。スイッチ素子Q2は、制御端としてのゲートがドライバ19Bに接続され、ドライバ19Bによってオン/オフ制御される。
【0053】
電流検出回路11は、スイッチ素子Q2の第1端と第2端の両端に接続され、スイッチ素子Q2を流れる電流を検出してスロープ生成回路12に出力する。電流検出回路11には、電流情報取り込み時間設定回路13が接続され、電流情報取り込み時間設定回路13から出力されるタイミング信号に従って電流検出を実行する。電流情報取り込み時間設定回路13は、スイッチ素子Q2の電流情報の取り込み時間を設定するためのタイミング信号を生成して出力する。スロープ生成回路12は、電流検出回路11の出力と接続され、スイッチ素子Q1がオンしたときの電流情報として推定したスロープ電圧VSLPを生成出力する。スロープ電圧VSLPは、スイッチ素子Q1,Q2のオンオフ制御のための駆動制御用の電圧信号である。ここで、電流検出回路11、スロープ生成回路12、及び電流情報取り込み時間設定回路13により、制御情報生成部の機能を実現する。これらの電流検出回路11、スロープ生成回路12、電流情報取り込み時間設定回路13の構成については後述する。
【0054】
誤差増幅器15は、反転入力端にFB端子が接続され、非反転入力端に基準電圧源14が接続され、出力電圧VOUTに比例するFB端子の電圧と基準電圧源14により出力される参照電圧VREFとの誤差を増幅して誤差信号として出力する。PWM比較器16は、スロープ生成回路12の出力のスロープ電圧VSLPと誤差増幅器15の出力の誤差信号とを比較し、比較結果を示す比較信号をノードC電圧として出力する。PWM比較器16は、PWM+入力のスロープ電圧VSLPがPWM-入力の誤差信号電圧を超えたときに、ハイレベルとなるノードC電圧を出力する。
【0055】
フリップフロップ18は、RS型であり、S入力に発振器17の出力のクロック信号CLOCKを入力し、R入力にPWM比較器16の出力のノードC電圧を入力する。発振器17は、スイッチ素子Q1,Q2のオンオフのタイミングを指示するためのクロック信号CLOCKを出力する。PWM比較器16のPWM+入力には、トランジスタQ11のドレインが接続され、トランジスタQ11のゲートはフリップフロップ18のQB出力に接続され、トランジスタQ11のソースが接地される。PWM比較器16の出力のノードC電圧は、フリップフロップ18のQB出力に基づき、トランジスタQ11によってリセットされる。フリップフロップ18は、S入力のクロック信号CLOCKとR入力のノードC電圧とに応じて、Q出力よりRSFF_Q信号を出力する。フリップフロップ18のQ出力は、NOT回路NOT1を介してドライバ19Aに接続されるとともに、ドライバ19Bに直接接続される。
【0056】
ドライバ19Aは、RSFF_Q信号がハイレベルとなったときにスイッチ素子Q1のゲートに駆動信号を出力し、スイッチ素子Q1をオンする。ドライバ19Bは、RSFF_Q信号がローレベルとなったときにスイッチ素子Q2のゲートに駆動信号を出力し、スイッチ素子Q2をオンする。ここで、誤差増幅器15、PWM比較器16、フリップフロップ18、NOT回路NOT1、及びドライバ19A,19Bにより、駆動制御部の機能を実現する。
【0057】
以上により、電流検出回路11において検出されるスイッチ素子Q2の電流情報に応じてデューティ比を調整しながら、スイッチ素子Q1,Q2が交互にオンオフするように駆動制御を実行する。
【0058】
図2は、本実施形態のスイッチング電源装置の主要部の詳細構成例を示す回路図である。電流検出回路11は、電圧電流変換回路(V/I)21、スイッチS1,S2,S3、キャパシタC2、トランジスタQ3,Q4によるカレントミラー回路を有して構成される。電圧電流変換回路21は、入力端がスイッチ素子Q2の第1端と第2端の両端に接続され、スイッチ素子Q2のドレイン-ソース間の電圧を電流に変換する。電圧電流変換回路21の出力端は、スイッチS1の一端に接続され、スイッチS1の他端がスイッチS2の一端、キャパシタC2の一端、及びスイッチS3の一端と接続されるとともに、電流検出回路11の出力端となってスロープ生成回路12に接続される。スイッチS2の他端、及びキャパシタC2の他端は接地され、スイッチS3の他端がカレントミラー回路の一方のトランジスタQ3に接続される。カレントミラー回路の他方のトランジスタQ4は電圧電流変換回路21に接続される。
【0059】
スロープ生成回路12は、電圧電流変換回路(V/I)22、トランジスタQ5,Q6によるカレントミラー回路、スイッチS4,S5、キャパシタC3を有して構成される。電圧電流変換回路22は、入力端が電流検出回路11の出力端と接続され、出力端がカレントミラー回路の一方のトランジスタQ5に接続される。カレントミラー回路の他方のトランジスタQ6はスイッチS4の一端に接続され、スイッチS4の他端がスイッチS5の一端、及びキャパシタC3の一端と接続されるとともに、スロープ生成回路12の出力端となってPWM比較器16に接続される。スイッチS5の他端、及びキャパシタC3の他端は接地される。
【0060】
次に、本実施形態のスイッチング電源装置の動作について説明する。
【0061】
図3は、本実施形態のスイッチング電源装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図3において、横軸は時間tを示し、縦軸において、出力電流ILの段は電流を、他の段は電圧を示す。時間tにおいて、t21~t26はそれぞれスイッチ素子Q1のオンオフ周期T上の所定のタイミングを表すものである。
【0062】
電流検出回路11において、スイッチS1,S2,S3はそれぞれクロック信号CLOCKに同期した所定のタイミングでオンオフする。まず、t21のタイミングで上側トランジスタのスイッチ素子Q1がオンし、t22のタイミングでオフ状態に切り替わる。そして、t22のタイミングから所定時間経過後のt23のタイミングまで、t22~t23間でスイッチS2がオンし、キャパシタC2の充電電圧に相当する電圧VCHGの電圧レベルをローレベルに引き下げる。次に、t23のタイミングから所定時間経過後のt24のタイミングまで、t23~t24間でスイッチS1がオンし、キャパシタC2が電圧電流変換回路21からの電流値によって充電され、スイッチ素子Q2を流れる電流の情報がキャパシタC2に電圧VCHGという形で蓄積される。このとき、インダクタL1に流れる出力電流ILに関して、t23~t24間のIL1からIL2までの電流に対応する電荷がキャパシタC2に充電される。そして、t24~t25の間、スイッチS1,S2,S3が共にオフ状態となり、ここでスロープ生成回路12の入力抵抗が高い場合、電圧VCHGはt23のタイミングにおける電圧レベルに保持される。
【0063】
次に、t25のタイミングから所定時間経過後のt26のタイミングまで、t25~t26間でスイッチS3がオンし、キャパシタC2に蓄積された電荷を放電し、電圧VCHGの電圧レベルは一定レベルまで低下する。ここで、トランジスタQ3を流れる電流値は、t25~t26間でスイッチ素子Q2に流れる電流の情報に比例した電流値となる。このとき、インダクタL1に流れる出力電流ILに関して、t25~t26間のIL3からIL4までの電流に対応する電荷がキャパシタC2から放電される。そして、t26~t21の間、スイッチS3がオフ状態となり、電圧VCHGは、t24~t25の時と同様、t26のタイミングにおける電圧レベルに保持される。
【0064】
スロープ生成回路12において、t21~t22間でスイッチS4がオンし、電圧VCHGの電圧レベルを電圧電流変換回路22にて変換した電流値でキャパシタC3が充電される。この電流値とキャパシタC3の充電電圧とによって生成した電圧スロープ信号を、スロープ電圧VSLPとしてスロープ生成回路12より出力し、PWM比較器16のPWM+入力端に入力する。スイッチS5はスロープ電圧VSLPの放電用スイッチであり、t22~t21間でオンする。
【0065】
ここで、t23~t24までの第1期間の時間とt25~t26までの第2期間の時間は、後述する電流情報取り込み時間設定回路13によって時間を設定し、2つの期間が所定誤差範囲内でほぼ等しくなるように設定する。第1期間、第2期間は、それぞれ下側トランジスタであるスイッチ素子Q2がオンする期間内の所定の期間であり、各期間の時間長さは、上側トランジスタであるスイッチ素子Q1がオンする時間の長さに反比例する時間、すなわちスイッチ素子Q1のオン時間の逆数に比例する時間に設定する。
【0066】
図4は、本実施形態における電流情報取り込み時間設定回路の構成例を示す回路図である。電流情報取り込み時間設定回路13は、定電流源I2、スイッチS7,S8、キャパシタC4,C5、電圧電流変換回路31、トランジスタQ7,Q8,Q9,Q10、NOT回路INV1,INV2,INV3、NAND回路NAND1を有して構成される。電流情報取り込み時間設定回路13は、所定タイミングの期間においてハイレベルのパルス信号を出力するワンショットパルス生成回路であり、電流情報の取り込み時間に対応するスイッチS1,S3のオン及びオフのタイミングを設定するものである。
【0067】
電源VCCに接続される定電流源I2の出力端は、スイッチS7の一端に接続され、スイッチS7の他端がスイッチS8の一端、キャパシタC4の一端、及び電圧電流変換回路31に接続される。スイッチS8の他端、及びキャパシタC4の他端は接地される。電圧電流変換回路31の出力端は、トランジスタQ7,Q8によるカレントミラー回路に接続される。カレントミラー回路の出力側のトランジスタQ8は、ドレインにトランジスタQ9のソース、ドレイン、及びトランジスタQ10のソースが直列に接続され、トランジスタQ10のドレインが接地される。
【0068】
NOT回路INV1の入力端には、クロック信号CLOCKに同期した所定タイミングを指示するタイミング信号CLK1,CLK2が入力され、NOT回路INV1の出力端がトランジスタQ9,Q10のゲートに接続される。トランジスタQ9,Q10のソース、ドレインの接続点には、キャパシタC5の一端、及びNOT回路INV2の入力端に接続され、キャパシタC5の他端が接地される。NOT回路INV2の出力端はNAND回路NAND1の第1入力端に接続され、NAND回路NAND1の第2入力端にはタイミング信号CLK1,CLK2が入力され、NAND回路NAND1の出力端がNOT回路INV3の入力端に接続される。NOT回路INV3の出力端が電流情報取り込み時間設定回路13の出力端となり、スイッチS1,S3に対するオンオフ信号として出力される。
【0069】
上記構成において、電流情報取り込み時間設定回路13は、NOT回路INV1に入力された入力信号(タイミング信号CLK1,CLK2)のローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングで、出力信号(スイッチS1,S3のオンオフ信号)がローレベルからハイレベルに切り替わる。そして、電流情報取り込み時間設定回路13は、トランジスタQ9を流れる電流とキャパシタC5とによって設定される所定時間の間、出力信号のハイレベルを保持し、この所定時間経過後に出力信号をローレベルにする。ここで、電流情報取り込み時間設定回路13は、タイミング信号CLK1が入力された場合、出力信号としてスイッチS1のオンオフ信号を生成し、タイミング信号CLK2が入力された場合、出力信号としてスイッチS3のオンオフ信号を生成する。
【0070】
図5は、本実施形態における電流情報取り込み時間設定回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図5において、横軸は時間tを示し、縦軸において、出力電流ILの段は電流を、他の段は電圧を示す。
図3と同様、時間tにおいて、t21~t26はそれぞれスイッチ素子Q1のオンオフ周期T上の所定のタイミングを表すものである。
【0071】
電流情報取り込み時間設定回路13において、スイッチS7,S8はそれぞれクロック信号CLOCKに同期した所定のタイミングでオンオフする。スイッチS7は、スイッチ素子Q1,Q2の接続点の電圧VSWがハイレベルとなる期間、オン状態となる。まず、t21~t22間でスイッチS7がオンし、定電流源I2の出力電流にてキャパシタC4を充電する。これにより、キャパシタC4の充電電圧に相当する電圧VCHG2の電圧レベルを所定値まで上昇させる。そして、t22~t23の間、電圧VCHG2の電圧レベルは保持される。
【0072】
スイッチング電源装置10は、
図3におけるスイッチS2がオンからオフ状態に切り替わるt23のタイミングで、ローレベルからハイレベルに変化するタイミング信号CLK1を内部で生成する。このタイミング信号CLK1は、電流情報取り込み時間設定回路13のNOT回路INV1及びNAND回路NAND1の第2入力端に入力される。t23のタイミングでタイミング信号CLK1がローレベルからハイレベルに切り替わると、NOT回路INV3の出力端より出力されるスイッチS1のオンオフ信号がローレベルからハイレベルに切り替わる。そして、トランジスタQ9を流れる電流とキャパシタC5とによって設定される所定時間の間、スイッチS1のオンオフ信号としてハイレベルが出力される。タイミング信号CLK1は、次にスイッチ素子Q1がオンするt21のタイミングでハイレベルからローレベルに切り替わる。
【0073】
また、スイッチング電源装置10は、
図3における次にスイッチ素子Q1がオンするt21のタイミングから所定時間手前のt25のタイミングで、ローレベルからハイレベルに変化するタイミング信号CLK2を内部で生成する。t25は、t24~t21の間の任意の時点に設定する。このタイミング信号CLK2は、電流情報取り込み時間設定回路13のNOT回路INV1及びNAND回路NAND1の第2入力端に入力される。t25のタイミングでタイミング信号CLK2がローレベルからハイレベルに切り替わると、NOT回路INV3の出力端より出力されるスイッチS3のオンオフ信号がローレベルからハイレベルに切り替わる。そして、トランジスタQ9を流れる電流とキャパシタC5とによって設定される所定時間の間、スイッチS3のオンオフ信号としてハイレベルが出力される。タイミング信号CLK2は、次にスイッチ素子Q1がオンしてオフするt22のタイミングでハイレベルからローレベルに切り替わる。
【0074】
次に、本実施形態の動作における、スイッチ素子Q1のオン時の電流情報として推定するスロープ電圧VSLP、及びスロープ電圧VSLPの傾きを決定するキャパシタC2の充電電圧VCHGについて説明する。
【0075】
図3において、本実施形態のスロープ電圧V
SLPの傾きをS
N3とする。また、スイッチS1とスイッチS3がオンする時間が等しいものとし、このオン時間のパルス幅をt
plsとする。また、t22~t23間の時間、及びt26~t21間の時間が等しいものとし、この時間をt1とする。
【0076】
t24のタイミング時点のキャパシタC2の充電電圧VCHG_t24は、以下の(6)式で表すことができる。
【0077】
【0078】
ここで、C2:キャパシタC2の容量、kv3:インダクタL1からスイッチS1に流れる電流の変換係数、Ipk:出力電流ILの最大値(
図3参照)である。
【0079】
t25~t26間のキャパシタC2の充電電圧VCHGの変動分をΔVCHGとすると、ΔVCHGは以下の(7)式で表される。
【0080】
【0081】
したがって、(6)式及び(7)式から、t26のタイミング時点でのキャパシタC2の充電電圧VCHG_t26は、以下の(8)式で求められる。
【0082】
【0083】
t23,t24,t25,t26の各タイミングについて、t22=0として、t1,tpls,toffを用いて表すと、以下の(9)式で表すことができる。
【0084】
【0085】
(9)式を用いて、t26のタイミング時点でのキャパシタC2の充電電圧VCHG_t26を表すと、上記(8)式は以下の(10)式、(11)式のように表すことができる。
【0086】
【0087】
【0088】
t1,tplsはスイッチ素子Q1のオフ時間toffより十分に短く、toff>>t1,tplsとすると、(11)式は次の(12)式のように近似することができる。
【0089】
【0090】
tplsは上述した電流情報取り込み時間設定回路13により設定され、以下の(13)式で表すことができる。
【0091】
【0092】
ここで、C4:キャパシタC4の容量、C5:キャパシタC5の容量、VTHINV2:NOT回路INV2のスレッショルド電圧、kv4:定電流源I2からトランジスタQ5に流れる電流の変換係数、I2:定電流源I2の出力電流値、ton:上側トランジスタとしてのスイッチ素子Q1がオンする時間(オン時間)(t21~t22間の時間)である。(13)式で示されるように、tplsの時間長さは、tonの時間長さに反比例している。
【0093】
(12)式において、tplsを(13)式を用いて置き換えて代入すると、t26のタイミング時点でのキャパシタC2の充電電圧VCHG_t26は、次の(14)式にように表される。
【0094】
【0095】
上式において、(C4×C5×VTHINV2×kv3)/(kv4×I2×C2)を定数Kに置換して表している。
【0096】
上述のように求めた充電電圧V
CHG_t26に基づき、スロープ電圧V
SLPの傾きS
N3は、
図2のトランジスタQ6を流れる電流とキャパシタC3の容量によって、以下の(15)式、(16)式のように表すことができる。
【0097】
【0098】
【0099】
ここで、C3:キャパシタC3の容量、kv5:スロープ生成回路12の入力端からトランジスタQ6に流れる電流の変換係数である。
【0100】
上式において、(1/C3)×kv5×Kを定数Cに置換して表すと、(16)式は以下の(17)式で表すことができる。
【0101】
【0102】
以上のように、スロープ電圧VSLPの傾きSN3を求めることができる。(17)式の傾きSN3は、第1比較例における(2)式の傾きSN1とほぼ同等となり、出力電流IOUTや入力電圧VINの変動の影響を低減できる。このため、入力電圧や出力負荷が変化した場合でも本来のスイッチ素子Q1の電流情報を高精度に予測することが可能となる。
【0103】
上述したように、本実施形態では、上側トランジスタである第1スイッチとしてのスイッチ素子Q1がオフであり、下側トランジスタである第2スイッチとしてのスイッチ素子Q2がオンの期間において、第1期間及び第2期間を設定し、スイッチ素子Q2を流れる電流情報を取得する。これらの第1期間の電流情報と第2期間の電流情報との差分に基づいてスロープ電圧V
SLPを生成し、スロープ電圧に応じてスイッチ素子Q1及びスイッチ素子Q2のオンオフを制御する。このように、2つの期間の電流情報の差分を用いることによって、装置全体の出力電流I
OUTや入力電圧V
INの絶対値の増減の影響を受けないようにでき、
図9に示した第2比較例における課題のような出力電流I
OUTや入力電圧V
INの変化した場合の誤差を低減できる。
【0104】
一例として、第1期間は、スイッチ素子Q2のオン期間の開始時点から所定時間経過後の期間とする。また、第2期間は、スイッチ素子Q2のオン期間の終了時点から所定時間前の期間とする。すなわち、スイッチ素子Q2のオン期間において、前半の所定時間の第1期間と後半の所定時間の第2期間とにおいて、スイッチ素子Q2に流れる電流情報を検出する。特に、本実施形態では、第1期間の時間と第2期間の時間について、所定誤差範囲内で等しい時間tplsとし、各期間を第1スイッチがオンする時間tonの長さに反比例する時間、すなわちtpls=α×(1/ton)、(ここでα:定数)となるように設定している。この構成によって、(17)式に示したようにスロープ電圧の傾きにおける出力電流IOUTや入力電圧VINの要因を削減し、これらの出力電流IOUTや入力電圧VINの変化による影響をさらに低減できる。したがって、本実施形態によれば、スイッチ素子Q2がオンのときの電流情報を用いて、スイッチ素子Q1がオンのときのインダクタL1に流れる電流情報を高精度に推定することが可能になる。
【0105】
具体的には、第1期間の時間及び第2期間の時間のそれぞれにおいて、スイッチ素子Q2を流れる電流情報に対応する電圧を積算し、スロープ電圧として第1期間の積算値と第2期間の積算値との差分に応じた傾きを持つ電圧を生成する。一例として、スイッチ素子Q2を流れる電流に応じた電荷を充電又は放電するキャパシタC2を設け、第1期間においてキャパシタC2を充電し、第2期間においてキャパシタC2を放電し、キャパシタC2の充電電圧VCHGに基づいてスロープ電圧VSLPを出力する。上記動作を実現するため、スイッチ素子Q2を流れる電流情報を検出して第1期間及び第2期間の電流情報を蓄積する電流検出回路11と、電流検出回路11により蓄積された電流情報に応じた電圧によりスロープ電圧を生成するスロープ生成回路12と、第1期間及び第2期間を設定する電流情報取り込み時間設定回路13と、を有する構成とする。また、一例として、電流情報取り込み時間設定回路13は、第1期間と第2期間のそれぞれの時間においてハイレベルの信号を出力するワンショットパルス生成回路によって構成する。
【0106】
したがって、本実施形態では、電流モード制御方式のスイッチング電源装置において、第1スイッチがオフのときに次の周期における第1スイッチがオンしたときの電流情報を予測するため、電流情報検出のマスク時間の設定を不要にできる。これにより、最小オン時間を小さくし、入力電圧に対する出力電圧の比を極端に小さくすることが可能である。さらに、入力電圧や出力負荷の条件に依存することなく、これらの条件変化の影響を受けずに高精度にスイッチ素子に流れる電流情報を得ることができる。このため、出力電圧制御の精度をさらに向上させたスイッチング電源装置を実現できる。
【0107】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、電流モード制御方式において電流情報検出のマスク時間を設ける必要がなく、かつ高精度に電流情報を得ることが可能となる効果を有し、例えば同期整流型のスイッチング電源装置等として有用である。
【符号の説明】
【0109】
10:スイッチング電源装置
11:電流検出回路
12:スロープ生成回路
13:電流情報取り込み時間設定回路
14:基準電圧源
15:誤差増幅器
16:PWM比較器
17:発振器
18:フリップフロップ
19A,19B:ドライバ
21,22,31:電圧電流変換回路
40:電源
C1,C2,C3,C4,C5:キャパシタ
I2:定電流源
L1:インダクタ
NAND1:NAND回路
NOT1,INV1,INV2,INV3:NOT回路
Q1,Q2:スイッチ素子
Q3,Q4,Q5,Q6,Q7,Q8,Q9,Q10,Q11:トランジスタ
R1,R2:分圧抵抗
S1,S2,S3,S4,S5,S7,S8:スイッチ