(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】有機電界発光素子用溶融混合物、及び有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20240319BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240319BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20240319BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240319BHJP
【FI】
H10K50/12
C09K11/06 690
H10K71/16 164
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2021509037
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020010975
(87)【国際公開番号】W WO2020195917
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019056860
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】多田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】相良 雄太
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/070787(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/070963(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194604(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198844(WO,A1)
【文献】特表2016-535942(JP,A)
【文献】国際公開第2015/163848(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/002198(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/111277(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/12
C09K 11/06
H10K 71/16
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の有機化合物の溶融混合物であり、前記2種類の有機化合物は、第1有機化合物と第2有機化合物を含み、第1有機化合物と第2有機化合物の蒸着温度の差は20℃以下であり、前記溶融混合物の蛍光発光スペクトルの最大発光波長と、前記第1有機化合物、前記第2有機化合物のいずれかの蛍光発光スペクトルの最大発光波長との差が±10nm以内であること、前記第1有機化合物と第2有機化合物は、ホストと発光ドーパントを含む発光層に使用されるホストであること、及び前記第1有機化合物が下記一般式(1)で表され、第2有機化合物が下記一般式(2)で表されることを特徴とする有機電界発光素子用溶融混合物。
【化1】
ここで、Xは炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
Zは式(1a)で表される芳香族複素環基であり、環Aは式(1b)で表される芳香族炭化水素環であり、環Bは式(1c)で表される複素環であり、環A及び環Bはそれぞれ隣接する環と任意の位置で縮合する。
R
1は独立にシアノ基、重水素、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~17の芳香族複素環基を表す。
YはN-Ar
1を表し、Ar
1は炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
aは1~3の整数を表し、b及びcは0~4の整数を表し、dは0~2の整数を表す。
【化2】
ここで、
Z’はO、S、又はN-Ar
3を表す。Ar
2及びAr
3は炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
R
2は独立にシアノ基、重水素、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~17の芳香族複素環基を表す。
e及びhは0~4の整数を表し、f及びgは0~3の整数を表す。
【請求項2】
Zが、N-Ar
3であることを特徴とする
請求項1に記載の有機電界発光素子用溶融混合物。
【請求項3】
一般式(2)が、下記式(3)であることを特徴とする
請求項1に記載の有機電界発光素子用溶融混合物。
【化3】
ここで、Ar
2、Ar
3、R
2、e、h、f及びgは、一般式(2)と同意である。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の有機電界発光素子用溶融混合物を真空蒸着させた昇華物を発光層に含有する有機電界発光素子。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の有機電界発光素子用溶融混合物を真空蒸着して発光層を形成する工程を有することを特徴とする有機電界発光素子の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用溶融混合物と、それを用いた有機電界発光素子(有機EL素子という)に関するものである。
【0002】
有機EL素子に電圧を印加することで、陽極から正孔が、陰極からは電子がそれぞれ発光層に注入される。そして発光層において、注入された正孔と電子が再結合し、励起子が生成される。この際、電子スピンの統計則により、一重項励起子及び三重項励起子が1:3の割合で生成する。一重項励起子による発光を用いる蛍光発光型の有機EL素子は、内部量子効率は25%が限界であるといわれている。一方で三重項励起子による発光を用いる燐光発光型の有機EL素子は、一重項励起子から項間交差が効率的に行われた場合には、内部量子効率が100%まで高められることが知られている。
しかしながら、燐光発光型の有機EL素子に関しては、長寿命化が技術的な課題となっている。
【0003】
さらに最近では、遅延蛍光を利用した高効率の有機EL素子の開発がなされている。例えば特許文献1には、遅延蛍光のメカニズムの一つであるTTF(Triplet-Triplet Fusion)機構を利用した有機EL素子が開示されている。TTF機構は2つの三重項励起子の衝突によって一重項励起子が生成する現象を利用するものであり、理論上内部量子効率を40%まで高められると考えられている。しかしながら、燐光発光型の有機EL素子と比較すると効率が低いため、更なる効率の改良が求められている。
一方で特許文献2では、TADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence)機構を利用した有機EL素子が開示されている。TADF機構は一重項準位と三重項準位のエネルギー差が小さい材料において三重項励起子から一重項励起子への逆項間交差が生じる現象を利用するものであり、理論上内部量子効率を100%まで高められると考えられている。しかしながら燐光発光型素子と同様に寿命特性の更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2010/134350号公報
【文献】WO2011/070963号公報
【文献】WO2016/194604号公報
【文献】WO2018/198844号公報
【文献】WO2015/053459号公報
【文献】WO2012/127990号公報
【0005】
特許文献3及び特許文献4ではインドロカルバゾール化合物を第1ホストとして、ビスカルバゾール化合物を第2ホストとして使用する有機EL素子を開示している。
【0006】
特許文献5では2種類の有機化合物を溶融混合することで、それぞれ単独の有機化合物の蛍光発光スペクトルの最大発光波長、及び単純混合物の蛍光発光スペクトルの最大発光波長と20nm以上異なる蛍光発光スペクトルの最大発光波長を有する有機アロイを作製し、その有機アロイをホストとして用いる有機EL素子を開示している。
【0007】
特許文献6では、エキサイプレックスを形成する第1有機化合物と第2有機化合物をホストとして用いる有機EL素子を開示している。
【発明の概要】
【0008】
有機EL素子を、フラットパネルディスプレイ等の表示素子や光源に応用するためには素子の発光効率を改善すると同時に駆動時の安定性を十分に確保する必要がある。本発明は、低駆動電圧でありながら高効率かつ高い駆動安定性を有した実用上有用な有機EL素子を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、少なくとも2種類の有機化合物の溶融混合物であり、前記2種類の有機化合物は、第1有機化合物と第2有機化合物を含み、第1有機化合物と第2有機化合物の蒸着温度の差は20℃以下であり、前記溶融混合物の蛍光発光スペクトルの最大発光波長と、前記第1有機化合物、前記第2有機化合物のいずれかの蛍光発光スペクトルの最大発光波長との差が±10nm以内であることを特徴とする有機電界発光素子用溶融混合物である。
【0010】
第1有機化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物がある。
【化1】
【0011】
ここで、Xは炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
Zは下記式(1a)で表される芳香族複素環基であり、環Aは式(1b)で表される芳香族炭化水素環であり、環Bは式(1c)で表される複素環であり、環A及び環Bは、それぞれ隣接する環と任意の位置で縮合する。
R1は独立にシアノ基、重水素、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~17の芳香族複素環基を表す。
YはO、S、又はN-Ar1を表し、Ar1は炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
aは1~3の整数を表し、b及びcは0~4の整数を表し、dは0~2の整数を表す。
【0012】
第2有機化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物がある。
【化2】
【0013】
ここで、Z’はO、S、又はN-Ar3を表す。Ar2及びAr3は、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
R2は独立にシアノ基、重水素、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~17の芳香族複素環基を表す。
e及びhは0~4の整数を表し、f及びgは0~3の整数を表す。
【0014】
一般式(2)の好ましい態様として、下記式(3)がある。
【化3】
ここで、Ar
2、Ar
3、R
2、e、h、f及びgは、一般式(2)と同意である。
【0015】
また、上記Y又はZが、N-Ar1又はN-Ar3であることは好ましい態様である。
【0016】
また、本発明は上記の有機電界発光素子用溶融混合物を真空蒸着させた昇華物を発光層に含有する有機電界発光素子である。
更に、本発明は、上記の有機電界発光素子用溶融混合物を真空蒸着して発光層を形成する工程を有することを特徴とする有機電界発光素子の作製方法である。
【0017】
本発明の有機EL素子用溶融混合物を真空蒸着して発光層を形成し、有機EL素子を作製することで、低駆動電圧で高発光効率、且つ長寿命な有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】有機EL素子の一例を示した模式断面図である。
【
図2】溶融混合物M1、予備混合物及び2種の化合物のPLスペクトルである。
【
図3】溶融混合物M2、予備混合物及び2種の化合物のPLスペクトルである。
【
図4】溶融混合物M3、予備混合物及び2種の化合物のPLスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の有機EL用溶融混合物は、少なくとも2種類の有機化合物を含む混合物を溶融させて均一に混合して得られる混合物である。この溶融混合物は、溶融状態であってもよいが、溶融した混合物を冷却固化させたものが適する。
少なくとも2種類の有機化合物は、第1有機化合物と第2有機化合物を含み、第1有機化合物と第2有機化合物の蒸着温度の差は20℃以下である。
この蒸着温度は、第1有機化合物又は第2有機化合物を1.0×10-2Pa以下の高真空下で基板上に1Å/sの蒸着速度で蒸着した場合の蒸着源の平均温度をいう。
ここで、第1有機化合物と第2有機化合物の合計は、有機EL用溶融混合物の50wt%以上を占めることが好ましく、より好ましくは70wt%以上、更には80wt%以上、90wt%以上、95wt%以上の順に好ましい。そして、第1有機化合物と第2有機化合物は、有機EL用溶融混合物に含まれる化合物の含有量が上位2種であることが好ましい。
【0020】
そして、溶融混合物の蛍光発光スペクトルの最大発光波長と、第1有機化合物、第2有機化合物のいずれかの蛍光発光スペクトルの最大発光波長との差が±10nm以内である。
蛍光発光スペクトルの最大発光波長を、PL最大発光波長ともいう。
溶融混合物のPL最大発光波長と、第1有機化合物、又は第2有機化合物のいずれかのPL最大発光波長との波長の差が、±5nm以内であることがより好ましい。
ここで、PL最大発光波長とは、分光光度計を用いて粉末のサンプルに340nmの励起光を照射した際に、350nm~700nmの測定範囲に観測される発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を示す発光ピークの波長を意味する。
【0021】
第1有機化合物は、上記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(1)において、Zは上記式(1a)で表される芳香族複素環基であり、環Aは式(1b)で表される芳香族炭化水素基であり、環Bは式(1c)で表される複素環であり、環A及び環Bは、それぞれ隣接する環と縮合する。
aは1~3の整数を表し、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
【0022】
Xは炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
好ましくは、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、炭素数3~15の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~6個連結して構成される連結芳香族基である。より好ましくは炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数3~12の芳香族複素環基、若しくはこれらが2~4個連結して構成される連結芳香族基である。
ここで、連結芳香族基は、上記芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の芳香族環が単結合で結合した構造を有する基であり、連結する基又は芳香族環は同一であっても異なっていても良く、また、それらは直鎖状に連結されていても良く、分岐状であっても良い。
【0023】
Xの具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アズレン、アントラセン、クリセン、ピレン、フェナントレン、トリフェニレン、フルオレン、ベンゾ[a]アントラセン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、若しくはこれらが2~8連結して構成される化合物からa個の水素を取って生じる基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アズレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、若しくはこれらが2~6連結して構成される化合物からa個の水素を取って生じる基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、若しくはこれらが2~4連結して構成される化合物からa個の水素を取って生じる基が挙げられる。
【0024】
R1は独立に、シアノ基、重水素、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~17の芳香族複素環基である。好ましくは、炭素数1~8の脂肪族炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~15の芳香族複素環基である。より好ましくは、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~12の芳香族複素環基である。
b及びcは0~4の整数を表し、dは0~2の整数を表す。
【0025】
R1の具体例としては、シアノ、重水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ベンゼン、ナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アズレン、アントラセン、クリセン、ピレン、フェナントレン、トリフェニレン、フルオレン、ベンゾ[a]アントラセン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾールから1個の水素を取って生じる基が挙げられる。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ベンゼン、ナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アズレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾールから1個の水素を取って生じる基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾールから1個の水素を取って生じる基が挙げられる。
【0026】
YはO、S、又はN-Ar1を表し、好ましくはN-Ar1である。
【0027】
Ar1は炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。好ましくは炭素数6~12の芳香族炭化水素基、炭素数3~15の芳香族複素環基、又はそれらが2~6個連結して構成される連結芳香族基である。より好ましくは、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、炭素数3~12の芳香族複素環基、又はそれらが2~4連結してなる連結芳香族基である。
【0028】
Ar1の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アズレン、アントラセン、クリセン、ピレン、フェナントレン、トリフェニレン、フルオレン、ベンゾ[a]アントラセン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、若しくはこれらが2~6連結して構成される化合物から1個の水素を取って生じる基が挙げられる。好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アズレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、若しくはこれらが2~4連結して構成される化合物からa個の水素を取って生じる基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アズレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、ピリダジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラジン、フラン、イソキサゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、チアジアゾール、フタラジン、テトラゾール、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、プリン、ピラノン、クマリン、イソクマリン、クロモン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、若しくはこれらが2~4連結して構成される化合物からa個の水素を取って生じる基が挙げられる。
【0029】
一般式(1)で表される化合物の具体的な例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
第2有機化合物は、上記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)において、Z’はO、S、N-Ar3を表し、好ましくはN-Ar3である。
【0034】
一般式(2)の好ましい様態として、式(3)が挙げられる。一般式(2)と式(3)において、共通する記号は同じ意味を有する。
【0035】
Ar2及びAr3は、一般式(1)のAr1と同様な意味を有する。Ar2及びAr3の具体例、好ましい範囲も一般式(1)のAr1と同様である。
【0036】
すなわち、Ar2及びAr3は、炭素数6~18の芳香族炭化水素基、炭素数3~17の芳香族複素環基、又はこれらの芳香族環が2~8個連結して構成される連結芳香族基を表す。
好ましくは、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、若しくはそれらが2~4個連結して構成される連結芳香族基である。より好ましくは、炭素数6~10の芳香族炭化水素基、若しくはそれらが2~3連結して構成される連結芳香族基である。
【0037】
R2は、前記一般式(1)のR1と同様な意味を有する。R2の具体例、好ましい範囲も一般式(1)のR1と同様である。
e及びhは0~4の整数を表し、f及びgは0~3の整数を表す。
【0038】
一般式(2)で表される化合物の具体的な例を以下に示すが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
本発明の有機電界発光素子用溶融混合物は、第1有機化合物と第2有機化合物を含む少なくとも2種類の有機化合物の溶融混合物であり、2種類の有機化合物は、蒸着温度の差が20℃以下であり、溶融混合物のPL最大発光波長と、第1有機化合物、第2有機化合物のいずれかのPL最大発光波長との差が±10nm以内である。
【0045】
溶融混合物は、第1有機化合物と第2有機化合物を含む有機化合物を共に溶融して混合することにより得られる。具体的には、第1有機化合物と第2有機化合物を含む混合物を不活性な雰囲気下、又は減圧下、例えば200Pa以下の減圧下で第1有機化合物と第2有機化合物の両者又は一方の融点以上に加熱し、融解させることで作製することができる。
この溶融混合物を真空蒸着させた層を有する有機EL素子は優れた性能を示す。特に、これを発光層とした場合に優れる。発光層とする場合は、第1有機化合物と第2有機化合物はホストとすることがよく、発光材料であるドーパントと共に蒸着させることがよい。
【0046】
第1有機化合物と第2有機化合物は、それぞれ任意の割合で混合することができるが、第1有機化合物と第2有機化合物の混合比(重量比)は、多量成分を第2有機化合物とした場合、第1有機化合物と第2有機化合物の合計に対し、第1有機化合物の割合は10~60%が良く、好ましくは20~50%であり、より好ましくは30~50%である。
前記一般式(1)で表される化合物と前記一般式(2)で表される化合物からなる場合は、多量成分の第2有機化合物を、一般式(2)で表される化合物とし、第1有機化合物を、一般式(1)で表される化合物することがよい。
【0047】
第1有機化合物と第2有機化合物の蒸着温度差は、20℃以下が良く、好ましくは15℃以下であり、より好ましくは10℃以下である。
【0048】
有機EL素子用溶融混合物のPL最大発光波長は、第1有機化合物、第2有機化合物のPL最大発光波長のいずれかとの差が、±10nm以内であり、±5nm以内であることが好ましい。
【0049】
有機EL素子用溶融混合物は、これを真空蒸着して発光層とすることができる。この場合、ドーパントや他の材料と共蒸着することがよい。
【0050】
理由は定かではないが、本発明の有機EL素子用溶融混合物のPL最大発光波長と第1有機化合物、第2有機化合物のPL最大発光波長のいずれかのPL極最大発光波長との差が小さいほど、励起されたエネルギー移動がスムーズに移動し、発光層のホスト材料の蒸着原料として使用した場合、素子の発光輝度、駆動電圧、発光効率、輝度半減寿命特性が向上する。
【0051】
次に、本発明の有機EL素子の構造について、図面を参照しながら説明するが、本発明の有機EL素子の構造はこれに限定されない。
【0052】
図1は本発明に用いられる一般的な有機EL素子の構造例を示す断面図であり、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は陰極を表す。本発明の有機EL素子は発光層と隣接して励起子阻止層を有してもよく、また発光層と正孔注入層との間に電子阻止層を有してもよい。励起子阻止層は発光層の陰極側、陽極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。本発明の有機EL素子では、陽極、発光層、そして陰極を必須の層として有するが、必須の層以外に正孔注入輸送層、電子注入輸送層を有することがよく、更に発光層と電子注入輸送層の間に正孔阻止層を有することがよい。なお、正孔注入輸送層は、正孔注入層と正孔輸送層のいずれか、または両者を意味し、電子注入輸送層は、電子注入層と電子輸送層のいずれかまたは両者を意味する。
【0053】
図1とは逆の構造、すなわち基板1上に陰極7、電子輸送層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に積層することも可能であり、この場合も必要により層を追加、省略することが可能である。
【0054】
-基板-
本発明の有機EL素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については特に制限はなく、従来から有機EL素子に用いられているものであればよく、例えばガラス、透明プラスチック、石英等からなるものを用いることができる。
【0055】
-陽極-
有機EL素子における陽極材料としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3-ZnO)等の非晶質で、透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは有機導電性化合物のような塗布可能な物質を用いる場合には印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。膜厚は材料にもよるが、通常10~1000nm、好ましくは10~200nmの範囲で選ばれる。
【0056】
-陰極-
一方、陰極材料としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物又はこれらの混合物からなる材料が用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えばマグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの陰極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm~5μm、好ましくは50~200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば発光輝度は向上し、好都合である。
【0057】
また、陰極に上記金属を1~20nmの膜厚で形成した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0058】
-発光層-
発光層は陽極及び陰極のそれぞれから注入された正孔及び電子が再結合することにより励起子が生成した後、発光する層であり、発光層には有機発光性ドーパント材料とホスト材料を含む。
【0059】
発光層におけるホスト材料としては、本発明の有機EL素子用溶融混合物を蒸着原料として用いることがよい。
【0060】
有機発光性ドーパント材料として燐光発光ドーパントを使用する場合、燐光発光ドーパントとしては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも1つの金属を含む有機金属錯体を含有するものがよい。具体的には、J.Am.Chem.Soc.2001,123,4304や特表2013-53051号公報に記載されているイリジウム錯体が好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0061】
燐光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。燐光発光ドーパント材料を2種類以上含有する場合には、燐光発光ドーパント材料の総重量がホスト材料に対して30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
【0062】
燐光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0063】
【0064】
発光性ドーパント材料として蛍光発光ドーパントを使用する場合、蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないが例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリジン化合物、8-キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体、希土類錯体、遷移金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体等が挙げられる。好ましくは縮合芳香族誘導体、スチリル誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、オキサジン誘導体、ピロメテン金属錯体、遷移金属錯体、又はランタノイド錯体が挙げられ、より好ましくはナフタセン、ピレン、クリセン、トリフェニレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ペンタセン、ペリレン、フルオランテン、アセナフソフルオランテン、ジベンゾ[a,j]アントラセン、ジベンゾ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ナフタセン、ヘキサセン、ナフト[2,1-f]イソキノリン、α‐ナフタフェナントリジン、フェナントロオキサゾール、キノリノ[6,5-f]キノリン、ベンゾチオファントレン等が挙げられる。これらは置換基としてアルキル基、アリール基、芳香族複素環基、又はジアリールアミノ基を有しても良い。
【0065】
蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。蛍光発光ドーパント材料を2種類以上含有する場合には、蛍光発光ドーパント材料の総重量がホスト材料に対して20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0066】
蛍光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0067】
【0068】
蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されても良いし、2種類以上を含有しても良い。蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して1~20%であることが好ましく、1~10%であることがより好ましい。
【0069】
発光性ドーパント材料として熱活性化遅延蛍光発光ドーパントを使用する場合、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントとしては、特に限定されないがスズ錯体や銅錯体等の金属錯体や、WO2011/070963号公報に記載のインドロカルバゾール誘導体、Nature 2012,492,234に記載のシアノベンゼン誘導体、カルバゾール誘導体、Nature Photonics 2014,8,326に記載のフェナジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、スルホン誘導体、フェノキサジン誘導体、アクリジン誘導体、Adv. Mater.2016, 28, 2777に記載のアリールボラン誘導体等が挙げられる。
【0070】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0071】
【0072】
熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料は、発光層中に1種類のみが含有されてもよいし、2種類以上を含有してもよい。また、熱活性化遅延蛍光発光ドーパントは燐光発光ドーパントや蛍光発光ドーパントと混合して用いてもよい。熱活性化遅延蛍光発光ドーパント材料の含有量は、ホスト材料に対して1~50%であることが好ましく、1~30%であることがより好ましい。
【0073】
-注入層-
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層又は正孔輸送層の間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0074】
-正孔阻止層-
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ、正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなる。電子を輸送しつつ正孔を阻止することで、発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。この正孔阻止層には、公知の正孔阻止材料を用いることができる、また、正孔阻止材料を複数種類併用して用いてもよい。
【0075】
-電子阻止層-
電子阻止層とは広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送しつつ、電子を阻止することで発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。この電子阻止層の材料としては、公知の電子阻止層材料を用いることができる。電子阻止層の膜厚は好ましくは3~100nmであり、より好ましくは5~30nmである。
【0076】
-励起子阻止層-
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層(正孔輸送層、電子輸送層)に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は2つ以上の発光層が隣接する素子において、隣接する2つの発光層の間に挿入することができる。励起子阻止層の材料としては、公知の励起子阻止層材料を用いることができる。
【0077】
発光層に隣接する層としては、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層などがあるが、これらの層が設けられない場合は、正孔輸送層、電子輸送層などが隣接層となる。
【0078】
-正孔輸送層-
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0079】
正孔輸送材料としては、正孔の注入、又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。正孔輸送層には従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。かかる正孔輸送材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン誘導体、アリールアミン誘導体及びスチリルアミン誘導体を用いることが好ましく、アリールアミン化合物を用いることがより好ましい。
【0080】
-電子輸送層-
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0081】
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。電子輸送層には、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントロリン等の多環芳香族誘導体、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム(III)誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、ビピリジン誘導体、キノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体等が挙げられる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、その要旨を超えない限りにおいて、種々の形態で実施することが可能である。
【0083】
実施例1
化合物1-5(0.6g)と化合物2-77(1.4g)を量りとり、乳鉢ですり潰しながら混合することにより予備混合物H1を調製した。
予備混合物H1(1.0g)を真空チャンバーに入れ、100Pa以下に減圧した状態で、320℃まで加熱することでH1を融解させた後、室温まで冷却し、粉砕混合することで溶融混合物M1を得た。
図1に、溶融混合物M1、予備混合物H1及び化合物1-5と化合物2-77のPL発光スペクトルを示す。
【0084】
実施例2
化合物1-11(0.6g)と化合物2-77(1.4g)を量りとり、乳鉢ですり潰しながら混合することにより予備混合物H2を調製した。
予備混合物H2(1.0g)を真空チャンバーに入れ、100Pa以下に減圧した状態で、320℃まで加熱することでH2を融解させた後、室温まで冷却し、粉砕混合することで溶融混合物M2を得た。
図2に、溶融混合物M2、予備混合物H2及び化合物1-11と化合物2-77のPL発光スペクトルを示す。
【0085】
比較のための溶融混合物を作製するために使用した化合物Aと化合物Bの構造式を次に示す。
【化32】
【0086】
比較例1
化合物A(0.6g)と化合物B(1.4g)を量りとり、乳鉢ですり潰しながら混合することにより予備混合物H3を調製した。
予備混合物H3(1.0g)を真空チャンバーに入れ、100Pa以下に減圧した状態で、300℃まで加熱することでH3を融解させた後、室温まで冷却し、粉砕混合することで溶融混合物M3を得た。
図3に、溶融混合物M3、予備混合物H3及び化合物Aと化合物BのPL発光スペクトルを示す。
【0087】
表1に化合物1-5、1-11、2-77、化合物A、及びBの融点(Mp)と蒸着温度(Ts)を示す。
【0088】
【0089】
上記実施例及び比較例で作製した予備混合物H1~H3と溶融混合物M1~M3、及び化合物1-5、1-11、2-77、化合物A、Bの粉末のフォトルミネッセンス(PL:蛍光発光)スペクトルを測定した。分光蛍光光度計(Spectrofluorometer、FP-6500、JASCO製)を用いた。粉末試料を2枚の石英基板で挟み、粉末状態でのPLスペクトルを測定した。
【0090】
PLスペクトルにおいて、最大ピークにおける波長をPL最大発光波長とし、これを表2に示す。
【0091】
【0092】
表2から、溶融混合物M1のPL最大発光波長と化合物1-5のPL最大発光波長との差が2nmであることが分かる。
また、溶融混合物M2のPL最大発光波長と化合物1-11のPL最大発光波長との差が1nmであることが分かる。
また、溶融混合物M3のPL最大発光波長は予備混合物H3、化合物A及びBのいずれのPL最大発光波長とも異なる値を示し、化合物Aとの差が84nm、化合物Bとの差が64nmであることが分かる。
【0093】
【0094】
実施例3
膜厚110nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを25nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを30nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして、ホストとして溶融混合物M1を、発光ドーパントとしてIr(ppy)3をそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、40nmの厚さに発光層を形成した。この時、Ir(ppy)3の濃度が5wt%となる蒸着条件で共蒸着した。次に、電子輸送層としてET-1を20nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0095】
実施例4
実施例3において、ホストとして溶融混合物M2を用いた以外は実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0096】
比較例2
実施例3において、ホストとして溶融混合物M3を用いた以外は実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0097】
比較例3~5
実施例3において、ホストとして予備混合物H1~H3のいずれかを用いた以外は実施例3と同様にして有機EL素子を作製した。
【0098】
上記実施例及び比較例で作製された有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれも極大波長530nmのEL発光スペクトルが観測され、Ir(ppy)3からの発光が得られていることがわかった。
【0099】
作製した有機EL素子の輝度、駆動電圧、発光効率、輝度半減寿命を表3に示す。表中、駆動電圧、電流効率は駆動電流20mA/cm2時の値であり、初期特性である。LT95は、20mA/cm2で駆動させた際の輝度が初期輝度の95%まで減衰するまでにかかる時間であり、寿命特性である。
【0100】
【0101】
表3から、実施例3と比較例3、及び実施例4と比較例4の比較から溶融混合物と燐光発光材料を発光層に含有する有機EL素子は、予備混合物から形成された発光層を有する有機EL素子に比べて、寿命特性が向上することが分かる。
また、実施例3、4と比較例2から、溶融混合物のPL最大発光波長と、溶融混合物を構成する化合物のいずれか一方の化合物のPL最大発光波長との差が10nm以内である溶融混合物をホストとして使用することで寿命特性が改善することが分かる。
この理由は、定かではないが、溶融混合物のPL最大発光波長と溶融混合物を構成する単独化合物のPL最大発光波長との差が大きく変わる溶融混合物よりも、励起状態での安定性が高いことに起因していると考えられる。
【0102】
実施例5
膜厚70nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを10nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを25nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして、ホストとして溶融混合物M1を、発光ドーパントとしてDACT-IIをそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに発光層を形成した。この時、DACT-IIの濃度が9wt%となる蒸着条件で共蒸着した。次に、電子輸送層としてET-1を45nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0103】
比較例6
実施例5において、ホストとして予備混合物H1を用いた以外は実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。
【0104】
上記実施例及び比較例で作製された有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれも極大波長523nmのEL発光スペクトルが観測され、DACT-IIからの発光が得られていることがわかった。
【0105】
作製した有機EL素子の輝度、駆動電圧、発光効率、輝度半減寿命を表4に示す。表中、駆動電圧、電流効率は駆動電流2.5mA/cm2時の値であり、初期特性である。LT50は、2.5mA/cm2で駆動させた際の輝度が初期輝度の50%まで減衰するまでにかかる時間であり、寿命特性である。
【0106】
【0107】
表4から溶融混合物を、熱活性化遅延蛍光発光材料を発光ドーパントとして使用する素子のホストとして使用することで寿命特性が向上することが分かる。
【0108】
実施例6
膜厚70nmのITOからなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度4.0×10-5Paで積層した。まず、ITO上に正孔注入層としてHAT-CNを10nmの厚さに形成し、次に正孔輸送層としてNPDを25nmの厚さに形成した。次に、電子阻止層としてHT-1を10nmの厚さに形成した。そして、ホストとして溶融混合物M1を、発光ドーパントとしてTBRbをそれぞれ異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さに発光層を形成した。この時、TBRbの濃度が2wt%となる蒸着条件で共蒸着した。次に、電子輸送層としてET-1を45nmの厚さに形成した。更に、電子輸送層上に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)を1nmの厚さに形成した。最後に、電子注入層上に、陰極としてアルミニウム(Al)を70nmの厚さに形成し、有機EL素子を作製した。
【0109】
比較例7
実施例6において、ホストとして予備混合物H1を用いた以外は実施例6と同様にして有機EL素子を作製した。
【0110】
上記実施例及び比較例で作製された有機EL素子に外部電源を接続し直流電圧を印加したところ、いずれも極大波長564nmのEL発光スペクトルが観測され、TBRbからの発光が得られていることがわかった。
【0111】
作製した有機EL素子の輝度、駆動電圧、発光効率、輝度半減寿命を表5に示す。表中、駆動電圧、電流効率は駆動電流2.5mA/cm2時の値であり、初期特性である。LT97は、2.5mA/cm2で駆動させた際の輝度が初期輝度の97%まで減衰するまでにかかる時間であり、寿命特性である。
【0112】
【0113】
表5から溶融混合物を、蛍光発光材料を発光ドーパントとして使用する素子のホストとして使用することで寿命特性が向上することが分かる。
【産業上の利用の可能性】
【0114】
本発明の有機EL素子用溶融混合物を真空蒸着して発光層を形成し、有機EL素子を作製することで、低駆動電圧で高発光効率、且つ長寿命な有機EL素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 基板、2 陽極、3 正孔注入層、4 正孔輸送層、5 発光層、6 電子輸送層、7 陰極