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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240319BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240319BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240319BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240319BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240319BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20240319BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240319BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B7/023
B05D7/00 K
B05D7/24 302Y
B05D1/36 Z
B05D5/00 Z
B05D7/24 302R
B05D7/24 302U
B05D7/24 302T
B05D7/24 302L
B05D3/12 Z
G02B1/11
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021516161
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017341
(87)【国際公開番号】W WO2020218342
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019086595
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹下 克義
(72)【発明者】
【氏名】脇保 英之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友宏
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知典
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 真芳
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-217630(JP,A)
【文献】特開平09-258003(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122616(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/155324(WO,A1)
【文献】特開2017-170827(JP,A)
【文献】特開2018-031000(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093259(WO,A1)
【文献】特開2017-039928(JP,A)
【文献】特開2004-145283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
C08J 7/04- 7/06
G02B 1/10- 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止層を有する基材(s)と、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体であって、
前記中間層(c)は、ケイ素原子を有すると共に、アミノ基、及び/又はアミン骨格を有する有機ケイ素化合物(C)の混合組成物(cc)の硬化層又は前記有機ケイ素化合物(C)の蒸着層であり、
前記撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、該ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層であり、
前記混合組成物(ca)が下記式(b1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物(B)をさらに含有し、
以下の(1)の要件を満足することを特徴とする積層体。
(1)前記積層体の撥水層(r)側表面に、1.5cm×1.5cmの面積当たり200gの荷重を掛けて20,000回擦る耐摩耗試験後の水の滑落角が50°以下である。
【化1】
上記式(b1)中、
Rf b10 は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
b11 、R b12 、R b13 及びR b14 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、R b11 が複数存在する場合は複数のR b11 がそれぞれ異なっていてもよく、R b12 が複数存在する場合は複数のR b12 がそれぞれ異なっていてもよく、R b13 が複数存在する場合は複数のR b13 がそれぞれ異なっていてもよく、R b14 が複数存在する場合は複数のR b14 がそれぞれ異なっていてもよく、
Rf b11 、Rf b12 、Rf b13 及びRf b14 は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rf b11 が複数存在する場合は複数のRf b11 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b12 が複数存在する場合は複数のRf b12 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b13 が複数存在する場合は複数のRf b13 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b14 が複数存在する場合は複数のRf b14 がそれぞれ異なっていてもよく、
b15 は、炭素数が1~20のアルキル基であり、R b15 が複数存在する場合は複数のR b15 がそれぞれ異なっていてもよく、
1 は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、A 1 が複数存在する場合は複数のA 1 がそれぞれ異なっていてもよく、
2 は、加水分解性基であり、A 2 が複数存在する場合は複数のA 2 がそれぞれ異なっていてもよく、
b11、b12、b13、b14及びb15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
cは、1~3の整数であり、
Rf b10 -、-Si(A 2 c (R b15 3-c 、b11個の-{C(R b11 )(R b12 )}-、b12個の-{C(Rf b11 )(Rf b12 )}-、b13個の-{Si(R b13 )(R b14 )}-、b14個の-{Si(Rf b13 )(Rf b14 )}-、b15個の-A 1 -は、Rf b10 -、-Si(A 2 c (R b15 3-c が末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物(A)の数平均分子量は6,000以上、40,000以下であり、
前記要件(1)における水の滑落角が40°以下である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物である、請求項1または2に記載の積層体。
【化2】
上記式(a1)中、
Rfa1は、両端が酸素原子である2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基であり、R11が複数存在する場合は複数のR11がそれぞれ異なっていてもよく、R12が複数存在する場合は複数のR12がそれぞれ異なっていてもよく、R13が複数存在する場合は複数のR13がそれぞれ異なっていてもよく、
1、E2、E3、E4、及びE5は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、E1が複数存在する場合は複数のE1がそれぞれ異なっていてもよく、E2が複数存在する場合は複数のE2がそれぞれ異なっていてもよく、E3が複数存在する場合は複数のE3がそれぞれ異なっていてもよく、E4が複数存在する場合は複数のE4がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びG2は、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~10価のオルガノシロキサン基であり、
1、J2、及びJ3は、それぞれ独立して、加水分解性基又は-(CH2e6-Si(OR143であり、e6は1~5であり、R14はメチル基又はエチル基であり、J1が複数存在する場合は複数のJ1がそれぞれ異なっていてもよく、J2が複数存在する場合は複数のJ2がそれぞれ異なっていてもよく、J3が複数存在する場合は複数のJ3がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びL2は、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子、又はフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1~12の2価の連結基であり、L1が複数存在する場合は複数のL1がそれぞれ異なっていてもよく、L2が複数存在する場合は複数のL2がそれぞれ異なっていてもよく、
d11は、1~9であり、
d12は、0~9であり、
a10及びa14は、それぞれ独立して0~10であり、
a11及びa15は、それぞれ独立して0又は1であり、
a12及びa16は、それぞれ独立して0~9であり、
a13は、0又は1であり、
a21、a22、及びa23は、それぞれ独立して0~2であり、
e1、e2、及びe3は、それぞれ独立して1~3である。
【請求項4】
前記混合組成物(ca)における、前記有機ケイ素化合物(A)に対する前記有機ケイ素化合物(B)の質量比が0.05~2.0である請求項1~のいずれかに記載の積層体。
【請求項5】
前記有機ケイ素化合物(C)における少なくとも1つのケイ素原子には、加水分解性基又はヒドロキシ基が結合している請求項1~4のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物(C)は、下記式(c1)~(c3)のいずれかで表される有機ケイ素化合物である請求項1~5のいずれかに記載の積層体。
【化3】
上記式(c1)中、
x11、Rx12、Rx13、Rx14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx11が複数存在する場合は複数のRx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rx12が複数存在する場合は複数のRx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rx13が複数存在する場合は複数のRx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rx14が複数存在する場合は複数のRx14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx11、Rfx12、Rfx13、Rfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx11が複数存在する場合は複数のRfx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx12が複数存在する場合は複数のRfx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx13が複数存在する場合は複数のRfx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx14が複数存在する場合は複数のRfx14がそれぞれ異なっていてもよく、
x15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx15が複数存在する場合は複数のRx15がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、加水分解性基であり、X11が複数存在する場合は複数のX11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、-NH-、又は-S-であり、Y11が複数存在する場合は複数のY11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、エポキシ基、ウレイド基、又はメルカプト基であり、
p1は、1~20の整数であり、p2、p3、p4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p5は、1~10の整数であり、
p6は、1~3の整数であり、
11がアミノ基でない場合はY11の少なくとも1つが-NH-であり、Y11が全て-S-である場合はZ11がアミノ基であり、
11-、-Si(X11p6(Rx153-p6、p1個の-{C(Rx11)(Rx12)}-、p2個の-{C(Rfx11)(Rfx12)}-、p3個の-{Si(Rx13)(Rx14)}-、p4個の-{Si(Rfx13)(Rfx14)}-、p5個の-Y11-は、Z11-及び-Si(X11p6(Rx153-p6が末端となり、-O-が-O-と連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【化4】
上記式(c2)中、
x20及びRx21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx20が複数存在する場合は複数のRx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rx21が複数存在する場合は複数のRx21がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx20及びRfx21は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx20が複数存在する場合は複数のRfx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx21が複数存在する場合は複数のRfx21がそれぞれ異なっていてもよく、
x22及びRx23はそれぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx22及びRx23が複数存在する場合は複数のRx22及びRx23がそれぞれ異なっていてもよく、
20及びX21はそれぞれ独立して、加水分解性基であり、X20及びX21が複数存在する場合は複数のX20及びX21がそれぞれ異なっていてもよく、
p20は、それぞれ独立して1~30の整数であり、p21は、それぞれ独立して0~30の整数であり、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位の少なくとも1つは、アミン骨格-NR100-に置き換わっており、前記アミン骨格におけるR100は水素原子又はアルキル基であり、
p22及びp23はそれぞれ独立して、1~3の整数であり、
p20個の-{C(Rx20)(Rx21)}-、p21個の-{C(Rfx20)(Rfx21)}-は、p20個又はp21個が連続である必要はなく、任意の順で並んで結合し、両末端が-Si(X20p22(Rx223-p22及び-Si(X21p23(Rx233-p23となる。
【化5】
上記式(c3)中、
31、Z32は、それぞれ独立に、加水分解性基及びヒドロキシ基以外の、反応性官能基であり、
x31、Rx32、Rx33、Rx34は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx31が複数存在する場合は複数のRx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rx32が複数存在する場合は複数のRx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rx33が複数存在する場合は複数のRx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rx34が複数存在する場合は複数のRx34がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx31が複数存在する場合は複数のRfx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx32が複数存在する場合は複数のRfx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx33が複数存在する場合は複数のRfx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx34が複数存在する場合は複数のRfx34がそれぞれ異なっていてもよく、
31は、-NH-、-N(CH3)-又は-O-であり、Y31が複数存在する場合は複数のY31がそれぞれ異なっていてもよく、
31、X32、X33、X34は、れぞれ独立に、-ORc(Rcは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はアミノC1-3アルキルジC1-3アルコキシシリル基である)であり、X31が複数存在する場合は複数のX31がそれぞれ異なっていてもよく、X32が複数存在する場合は複数のX32がそれぞれ異なっていてもよく、X33が複数存在する場合は複数のX33がそれぞれ異なっていてもよく、X34が複数存在する場合は複数のX34がそれぞれ異なっていてもよく、
p31は、0~20の整数であり、p32、p33、p34は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p35は、0~5の整数であり、p36は、1~10の整数であり、p37は0又は1であり、
31及びZ32の少なくとも一方がアミノ基であるか、又はY31の少なくとも一つが-NH-又は-N(CH3)-であるという条件を満たし、かつ末端がZ31-及びZ32-であり、-O-が-O-と連結しない限り、p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-、p32個の-{C(Rfx31)(Rfx32)}-、p33個の-{Si(Rx33)(Rx34)}-、p34個の-{Si(Rfx33)(Rfx34)}-、p35個の-Y31-、p36個の-{Si(X31)(X32)-O}-、p37個の-{Si(X33)(X34)}-が任意の順で並んで結合して構成される。
【請求項7】
前記有機ケイ素化合物(A)が下記式(a3)又は(a4)で表される化合物であり、かつ前記有機ケイ素化合物(C)が下記式(c1-2)又は(c2-2)で表される化合物である請求項1~6のいずれかに記載の積層体。
【化6】
上記式(a3)中、R30は炭素数が2~6のパーフルオロアルキル基であり、R31及びR32はそれぞれ独立していずれも炭素数が2~6のパーフルオロアルキレン基であり、R33は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、R34は炭素数が1~3のアルキル基であり、h1は5~70であり、h2は1~5であり、h3は1~10である。
【化7】
上記式(a4)中、R40は炭素数が2~5のパーフルオロアルキル基であり、R41は炭素数が2~5のパーフルオロアルキレン基であり、R42は炭素数2~5のアルキレン基の水素原子の一部がフッ素に置換されたフルオロアルキレン基であり、R43、R44はそれぞれ独立に炭素数が2~5のアルキレン基であり、R45はメチル基又はエチル基である。k1、k2、k3はそれぞれ独立に1~5の整数である。
【化8】
上記式(c1-2)中、X12は、加水分解性基であり、X12が複数存在する場合は複数のX12がそれぞれ異なっていてもよく、Y12は、-NH-であり、Z12は、アミノ基、又はメルカプト基であり、Rx16は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx16が複数存在する場合は複数のRx16がそれぞれ異なっていてもよく、pは、1~3の整数であり、qは2~5の整数であり、rは0~5の整数である。
【化9】
上記式(c2-2)中、X22及びX23は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、X22及びX23が複数存在する場合は複数のX22及びX23がそれぞれ異なっていてもよく、Rx24及びRx25は、それぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx24及びRx25が複数存在する場合は複数のRx24及びRx25がそれぞれ異なっていてもよく、-Cw2w-は、その一部のメチレン基の少なくとも1つがアミン骨格-NR100-に置き換わっており、R100は水素原子又はアルキル基であり、wは1~30の整数であり(ただし、アミン骨格に置き換わったメチレン基の数を除く)、p24及びp25は、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
【請求項8】
前記撥水層側表面で測定した特性が、更に下記(1’)及び(3)の要件の少なくとも1つを満足する請求項1~7のいずれかに記載の積層体。
(1’)前記耐摩耗試験後の水の接触角が90°以上である。
(3)水の初期滑落角が21°以下である。
【請求項9】
前記撥水層側表面で測定した特性が、更に下記(4)の要件を満足する請求項1~8のいずれかに記載の積層体。
(4)前記耐摩耗試験後の動摩擦係数が0.40以下である。
【請求項10】
前記積層体の撥水層(r)側表面のXPS測定による表面のF量が5原子%以上であり、N量が0.15原子%以上である請求項1~9のいずれかに記載の積層体。
【請求項11】
前記中間層(c)が積層される前の前記基材(s)の算術平均高さSa(s)の絶対値に対する前記撥水層(r)が積層される前の前記中間層(c)の算術平均高さSa(c)の絶対値の比(Sa(c)の絶対値/Sa(s)の絶対値)が100%未満である請求項1~10のいずれかに記載の積層体。
【請求項12】
前記基材(s)は、ガラス層又は樹脂層の上に反射防止層が形成されたものである請求項1~11のいずれかに記載の積層体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の積層体を含む眼鏡用レンズ。
【請求項14】
反射防止層を有する基材(s)と、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体の製造方法であって、
前記反射防止層を有する基材(s)の反射防止層面に、下記式(c1)~(c3)のいずれかで表される有機ケイ素化合物(C)の混合組成物(cc)を塗布する工程、
前記混合組成物(cc)の塗布面に、下記式(a1)で表される有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)を塗布する工程、及び
前記混合組成物(cc)と前記混合組成物(ca)を硬化させ、前記混合組成物(cc)の塗布層から前記中間層(c)を形成し、前記混合組成物(ca)の塗布層から前記撥水層(r)を形成する工程とを含み、
前記混合組成物(ca)が下記式(b1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物(B)をさらに含有する積層体の製造方法。
【化10】
上記式(c1)中、
x11、Rx12、Rx13、Rx14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx11が複数存在する場合は複数のRx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rx12が複数存在する場合は複数のRx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rx13が複数存在する場合は複数のRx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rx14が複数存在する場合は複数のRx14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx11、Rfx12、Rfx13、Rfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx11が複数存在する場合は複数のRfx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx12が複数存在する場合は複数のRfx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx13が複数存在する場合は複数のRfx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx14が複数存在する場合は複数のRfx14がそれぞれ異なっていてもよく、
x15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx15が複数存在する場合は複数のRx15がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、加水分解性基であり、X11が複数存在する場合は複数のX11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、-NH-、又は-S-であり、Y11が複数存在する場合は複数のY11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、エポキシ基、ウレイド基、又はメルカプト基であり、
p1は、1~20の整数であり、p2、p3、p4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p5は、1~10の整数であり、
p6は、1~3の整数であり、
11がアミノ基でない場合はY11の少なくとも1つが-NH-であり、Y11が全て-S-である場合はZ11がアミノ基であり、
11-、-Si(X11p6(Rx153-p6、p1個の-{C(Rx11)(Rx12)}-、p2個の-{C(Rfx11)(Rfx12)}-、p3個の-{Si(Rx13)(Rx14)}-、p4個の-{Si(Rfx13)(Rfx14)}-、p5個の-Y11-は、Z11-及び-Si(X11p6(Rx153-p6が末端となり、-O-が-O-と連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【化11】
上記式(c2)中、
x20及びRx21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx20が複数存在する場合は複数のRx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rx21が複数存在する場合は複数のRx21がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx20及びRfx21は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx20が複数存在する場合は複数のRfx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx21が複数存在する場合は複数のRfx21がそれぞれ異なっていてもよく、
x22及びRx23はそれぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx22及びRx23が複数存在する場合は複数のRx22及びRx23がそれぞれ異なっていてもよく、
20及びX21はそれぞれ独立して、加水分解性基であり、X20及びX21が複数存在する場合は複数のX20及びX21がそれぞれ異なっていてもよく、
p20は、それぞれ独立して1~30の整数であり、p21は、それぞれ独立して0~30の整数であり、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位の少なくとも1つは、アミン骨格-NR100-に置き換わっており、前記アミン骨格におけるR100は水素原子又はアルキル基であり、
p22及びp23はそれぞれ独立して、1~3の整数であり、
p20個の-{C(Rx20)(Rx21)}-、p21個の-{C(Rfx20)(Rfx21)}-は、p20個又はp21個が連続である必要はなく、任意の順で並んで結合し、両末端が-Si(X20p22(Rx223-p22及び-Si(X21p23(Rx233-p23となる。
【化12】
上記式(c3)中、
31、Z32は、それぞれ独立に、加水分解性基及びヒドロキシ基以外の、反応性官能基であり、
x31、Rx32、Rx33、Rx34は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx31が複数存在する場合は複数のRx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rx32が複数存在する場合は複数のRx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rx33が複数存在する場合は複数のRx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rx34が複数存在する場合は複数のRx34がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx31が複数存在する場合は複数のRfx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx32が複数存在する場合は複数のRfx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx33が複数存在する場合は複数のRfx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx34が複数存在する場合は複数のRfx34がそれぞれ異なっていてもよく、
31は、-NH-、-N(CH3)-又は-O-であり、Y31が複数存在する場合は複数のY31がそれぞれ異なっていてもよく、
31、X32、X33、X34は、れぞれ独立に、-ORc(Rcは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はアミノC1-3アルキルジC1-3アルコキシシリル基である)であり、X31が複数存在する場合は複数のX31がそれぞれ異なっていてもよく、X32が複数存在する場合は複数のX32がそれぞれ異なっていてもよく、X33が複数存在する場合は複数のX33がそれぞれ異なっていてもよく、X34が複数存在する場合は複数のX34がそれぞれ異なっていてもよく、
p31は、0~20の整数であり、p32、p33、p34は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p35は、0~5の整数であり、p36は、1~10の整数であり、p37は0又は1であり、
31及びZ32の少なくとも一方がアミノ基であるか、又はY31の少なくとも一つが-NH-又は-N(CH3)-であるという条件を満たし、かつ末端がZ31-及びZ32-であり、-O-が-O-と連結しない限り、p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-、p32個の-{C(Rfx31)(Rfx32)}-、p33個の-{Si(Rx33)(Rx34)}-、p34個の-{Si(Rfx33)(Rfx34)}-、p35個の-Y31-、p36個の-{Si(X31)(X32)-O}-、p37個の-{Si(X33)(X34)}-が任意の順で並んで結合して構成される。
【化13】
上記式(a1)中、
Rfa1は、両端が酸素原子である2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基であり、R11が複数存在する場合は複数のR11がそれぞれ異なっていてもよく、R12が複数存在する場合は複数のR12がそれぞれ異なっていてもよく、R13が複数存在する場合は複数のR13がそれぞれ異なっていてもよく、
1、E2、E3、E4、及びE5は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、E1が複数存在する場合は複数のE1がそれぞれ異なっていてもよく、E2が複数存在する場合は複数のE2がそれぞれ異なっていてもよく、E3が複数存在する場合は複数のE3がそれぞれ異なっていてもよく、E4が複数存在する場合は複数のE4がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びG2は、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~10価のオルガノシロキサン基であり、
1、J2、及びJ3は、それぞれ独立して、加水分解性基又は-(CH2e6-Si(OR143であり、e6は1~5であり、R14はメチル基又はエチル基であり、J1が複数存在する場合は複数のJ1がそれぞれ異なっていてもよく、J2が複数存在する場合は複数のJ2がそれぞれ異なっていてもよく、J3が複数存在する場合は複数のJ3がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びL2は、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子、又はフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1~12の2価の連結基であり、L1が複数存在する場合は複数のL1がそれぞれ異なっていてもよく、L2が複数存在する場合は複数のL2がそれぞれ異なっていてもよく、
d11は、1~9であり、
d12は、0~9であり、
a10及びa14は、それぞれ独立して0~10であり、
a11及びa15は、それぞれ独立して0又は1であり、
a12及びa16は、それぞれ独立して0~9であり、
a13は、0又は1であり、
a21、a22、及びa23は、それぞれ独立して0~2であり、
e1、e2、及びe3は、それぞれ独立して1~3である。
【化14】
上記式(b1)中、
Rf b10 は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
b11 、R b12 、R b13 及びR b14 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、R b11 が複数存在する場合は複数のR b11 がそれぞれ異なっていてもよく、R b12 が複数存在する場合は複数のR b12 がそれぞれ異なっていてもよく、R b13 が複数存在する場合は複数のR b13 がそれぞれ異なっていてもよく、R b14 が複数存在する場合は複数のR b14 がそれぞれ異なっていてもよく、
Rf b11 、Rf b12 、Rf b13 及びRf b14 は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rf b11 が複数存在する場合は複数のRf b11 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b12 が複数存在する場合は複数のRf b12 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b13 が複数存在する場合は複数のRf b13 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b14 が複数存在する場合は複数のRf b14 がそれぞれ異なっていてもよく、
b15 は、炭素数が1~20のアルキル基であり、R b15 が複数存在する場合は複数のR b15 がそれぞれ異なっていてもよく、
1 は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、A 1 が複数存在する場合は複数のA 1 がそれぞれ異なっていてもよく、
2 は、加水分解性基であり、A 2 が複数存在する場合は複数のA 2 がそれぞれ異なっていてもよく、
b11、b12、b13、b14及びb15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
cは、1~3の整数であり、
Rf b10 -、-Si(A 2 c (R b15 3-c 、b11個の-{C(R b11 )(R b12 )}-、b12個の-{C(Rf b11 )(Rf b12 )}-、b13個の-{Si(R b13 )(R b14 )}-、b14個の-{Si(Rf b13 )(Rf b14 )}-、b15個の-A 1 -は、Rf b10 -、-Si(A 2 c (R b15 3-c が末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【請求項15】
反射防止層を有する基材(s)と、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体の製造方法であって、
前記反射防止層を有する基材(s)の反射防止層面に、下記式(c1)~(c3)のいずれかで表される有機ケイ素化合物(C)を蒸着して前記中間層(c)を形成する工程、 前記中間層(c)上に、下記式(a1)で表される有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)を塗布して硬化させ、前記混合組成物(ca)の塗布層から前記撥水層(r)を形成する工程とを含み、
前記混合組成物(ca)が下記式(b1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物(B)をさらに含有する積層体の製造方法。
【化15】
上記式(c1)中、
x11、Rx12、Rx13、Rx14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx11が複数存在する場合は複数のRx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rx12が複数存在する場合は複数のRx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rx13が複数存在する場合は複数のRx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rx14が複数存在する場合は複数のRx14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx11、Rfx12、Rfx13、Rfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx11が複数存在する場合は複数のRfx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx12が複数存在する場合は複数のRfx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx13が複数存在する場合は複数のRfx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx14が複数存在する場合は複数のRfx14がそれぞれ異なっていてもよく、
x15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx15が複数存在する場合は複数のRx15がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、加水分解性基であり、X11が複数存在する場合は複数のX11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、-NH-、又は-S-であり、Y11が複数存在する場合は複数のY11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、エポキシ基、ウレイド基、又はメルカプト基であり、
p1は、1~20の整数であり、p2、p3、p4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p5は、1~10の整数であり、
p6は、1~3の整数であり、
11がアミノ基でない場合はY11の少なくとも1つが-NH-であり、Y11が全て-S-である場合はZ11がアミノ基であり、
11-、-Si(X11p6(Rx153-p6、p1個の-{C(Rx11)(Rx12)}-、p2個の-{C(Rfx11)(Rfx12)}-、p3個の-{Si(Rx13)(Rx14)}-、p4個の-{Si(Rfx13)(Rfx14)}-、p5個の-Y11-は、Z11-及び-Si(X11p6(Rx153-p6が末端となり、-O-が-O-と連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【化16】
上記式(c2)中、
x20及びRx21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx20が複数存在する場合は複数のRx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rx21が複数存在する場合は複数のRx21がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx20及びRfx21は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx20が複数存在する場合は複数のRfx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx21が複数存在する場合は複数のRfx21がそれぞれ異なっていてもよく、
x22及びRx23はそれぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx22及びRx23が複数存在する場合は複数のRx22及びRx23がそれぞれ異なっていてもよく、
20及びX21はそれぞれ独立して、加水分解性基であり、X20及びX21が複数存在する場合は複数のX20及びX21がそれぞれ異なっていてもよく、
p20は、それぞれ独立して1~30の整数であり、p21は、それぞれ独立して0~30の整数であり、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位の少なくとも1つは、アミン骨格-NR100-に置き換わっており、前記アミン骨格におけるR100は水素原子又はアルキル基であり、
p22及びp23はそれぞれ独立して、1~3の整数であり、
p20個の-{C(Rx20)(Rx21)}-、p21個の-{C(Rfx20)(Rfx21)}-は、p20個又はp21個が連続である必要はなく、任意の順で並んで結合し、両末端が-Si(X20p22(Rx223-p22及び-Si(X21p23(Rx233-p23となる。
【化17】
上記式(c3)中、
31、Z32は、それぞれ独立に、加水分解性基及びヒドロキシ基以外の、反応性官能基であり、
x31、Rx32、Rx33、Rx34は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx31が複数存在する場合は複数のRx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rx32が複数存在する場合は複数のRx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rx33が複数存在する場合は複数のRx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rx34が複数存在する場合は複数のRx34がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx31が複数存在する場合は複数のRfx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx32が複数存在する場合は複数のRfx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx33が複数存在する場合は複数のRfx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx34が複数存在する場合は複数のRfx34がそれぞれ異なっていてもよく、
31は、-NH-、-N(CH3)-又は-O-であり、Y31が複数存在する場合は複数のY31がそれぞれ異なっていてもよく、
31、X32、X33、X34は、れぞれ独立に、-ORc(Rcは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はアミノC1-3アルキルジC1-3アルコキシシリル基である)であり、X31が複数存在する場合は複数のX31がそれぞれ異なっていてもよく、X32が複数存在する場合は複数のX32がそれぞれ異なっていてもよく、X33が複数存在する場合は複数のX33がそれぞれ異なっていてもよく、X34が複数存在する場合は複数のX34がそれぞれ異なっていてもよく、
p31は、0~20の整数であり、p32、p33、p34は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p35は、0~5の整数であり、p36は、1~10の整数であり、p37は0又は1であり、
31及びZ32の少なくとも一方がアミノ基であるか、又はY31の少なくとも一つが-NH-又は-N(CH3)-であるという条件を満たし、かつ末端がZ31-及びZ32-であり、-O-が-O-と連結しない限り、p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-、p32個の-{C(Rfx31)(Rfx32)}-、p33個の-{Si(Rx33)(Rx34)}-、p34個の-{Si(Rfx33)(Rfx34)}-、p35個の-Y31-、p36個の-{Si(X31)(X32)-O}-、p37個の-{Si(X33)(X34)}-が任意の順で並んで結合して構成される。
【化18】
上記式(a1)中、
Rfa1は、両端が酸素原子である2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基であり、R11が複数存在する場合は複数のR11がそれぞれ異なっていてもよく、R12が複数存在する場合は複数のR12がそれぞれ異なっていてもよく、R13が複数存在する場合は複数のR13がそれぞれ異なっていてもよく、
1、E2、E3、E4、及びE5は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、E1が複数存在する場合は複数のE1がそれぞれ異なっていてもよく、E2が複数存在する場合は複数のE2がそれぞれ異なっていてもよく、E3が複数存在する場合は複数のE3がそれぞれ異なっていてもよく、E4が複数存在する場合は複数のE4がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びG2は、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~10価のオルガノシロキサン基であり、
1、J2、及びJ3は、それぞれ独立して、加水分解性基又は-(CH2e6-Si(OR143であり、e6は1~5であり、R14はメチル基又はエチル基であり、J1が複数存在する場合は複数のJ1がそれぞれ異なっていてもよく、J2が複数存在する場合は複数のJ2がそれぞれ異なっていてもよく、J3が複数存在する場合は複数のJ3がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びL2は、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子、又はフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1~12の2価の連結基であり、L1が複数存在する場合は複数のL1がそれぞれ異なっていてもよく、L2が複数存在する場合は複数のL2がそれぞれ異なっていてもよく、
d11は、1~9であり、
d12は、0~9であり、
a10及びa14は、それぞれ独立して0~10であり、
a11及びa15は、それぞれ独立して0又は1であり、
a12及びa16は、それぞれ独立して0~9であり、
a13は、0又は1であり、
a21、a22、及びa23は、それぞれ独立して0~2であり、
e1、e2、及びe3は、それぞれ独立して1~3である。
【化19】
上記式(b1)中、
Rf b10 は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
b11 、R b12 、R b13 及びR b14 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、R b11 が複数存在する場合は複数のR b11 がそれぞれ異なっていてもよく、R b12 が複数存在する場合は複数のR b12 がそれぞれ異なっていてもよく、R b13 が複数存在する場合は複数のR b13 がそれぞれ異なっていてもよく、R b14 が複数存在する場合は複数のR b14 がそれぞれ異なっていてもよく、
Rf b11 、Rf b12 、Rf b13 及びRf b14 は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rf b11 が複数存在する場合は複数のRf b11 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b12 が複数存在する場合は複数のRf b12 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b13 が複数存在する場合は複数のRf b13 がそれぞれ異なっていてもよく、Rf b14 が複数存在する場合は複数のRf b14 がそれぞれ異なっていてもよく、
b15 は、炭素数が1~20のアルキル基であり、R b15 が複数存在する場合は複数のR b15 がそれぞれ異なっていてもよく、
1 は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、A 1 が複数存在する場合は複数のA 1 がそれぞれ異なっていてもよく、
2 は、加水分解性基であり、A 2 が複数存在する場合は複数のA 2 がそれぞれ異なっていてもよく、
b11、b12、b13、b14及びb15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
cは、1~3の整数であり、
Rf b10 -、-Si(A 2 c (R b15 3-c 、b11個の-{C(R b11 )(R b12 )}-、b12個の-{C(Rf b11 )(Rf b12 )}-、b13個の-{Si(R b13 )(R b14 )}-、b14個の-{Si(Rf b13 )(Rf b14 )}-、b15個の-A 1 -は、Rf b10 -、-Si(A 2 c (R b15 3-c が末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【請求項16】
前記混合組成物(cc)の塗布前又は前記有機ケイ素化合物(C)の蒸着前に、前記基材(s)の反射防止層に親水化処理を施し、該親水化処理面に前記混合組成物(cc)を塗布する又は前記有機ケイ素化合物(C)を蒸着する請求項14又は15に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロポリエーテル構造を有する化合物を含む組成物から形成される皮膜に代表されるフッ素系撥水性皮膜は、その表面自由エネルギーが非常に小さいため、タッチパネルディスプレイ等の表示装置、光学素子、半導体素子、建築材料、自動車や建物の窓ガラス等の種々の分野において防汚コーティング、又は撥水撥油コーティングなどとして用いられている。
【0003】
撥水性の皮膜は、通常、基材の上に形成して用いられ、撥水性皮膜形成用組成物を基材に塗布するに際しては、基材に予めプライマー層などの他の層を形成した後に、前記組成物を塗布して防汚コーティング又は撥水撥油コーティングを形成する場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、基材の少なくとも一方の面にハードコート層(X)、プライマー層(Y)及び表面層(Z)が順に積層されたハードコートフィルムであって、前記表面層(Z)が110°以上の水接触角を有するハードコートフィルムが開示されている。前記表面層(Z)を形成するためには、ポリパーフルオロポリエーテル鎖を有するフッ素系化合物を用いるのが好ましいこと、またプライマー層(Y)を形成するためには、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物が好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-120253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材の上に撥水層を備えた積層体では、良好な撥水性を維持するために、おもて面側に曝される撥水層側から評価した際の耐摩耗性が要求される。そこで、本発明は、基材、中間層、撥水層がこの順で積層された積層体であって、耐摩耗性に優れた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成した本発明は以下の通りである。
[1]反射防止層を有する基材(s)と、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体であって、
前記中間層(c)は、ケイ素原子を有すると共に、アミノ基、及び/又はアミン骨格を有する有機ケイ素化合物(C)の混合組成物(cc)の硬化層又は前記有機ケイ素化合物(C)の蒸着層であり、
前記撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、該ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層であり、
以下の(1)の要件を満足することを特徴とする積層体。
(1)前記積層体の撥水層(r)側表面に、1.5cm×1.5cmの面積当たり200gの荷重を掛けて20,000回擦る耐摩耗試験後の水の滑落角が50°以下である。
[2]前記有機ケイ素化合物(A)が、下記式(a1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物である、[1]に記載の積層体。
【化1】

上記式(a1)中、
Rfa1は、両端が酸素原子である2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基であり、R11が複数存在する場合は複数のR11がそれぞれ異なっていてもよく、R12が複数存在する場合は複数のR12がそれぞれ異なっていてもよく、R13が複数存在する場合は複数のR13がそれぞれ異なっていてもよく、
1、E2、E3、E4、及びE5は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、E1が複数存在する場合は複数のE1がそれぞれ異なっていてもよく、E2が複数存在する場合は複数のE2がそれぞれ異なっていてもよく、E3が複数存在する場合は複数のE3がそれぞれ異なっていてもよく、E4が複数存在する場合は複数のE4がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びG2は、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~10価のオルガノシロキサン基であり、
1、J2、及びJ3は、それぞれ独立して、加水分解性基又は-(CH2e6-Si(OR143であり、e6は1~5であり、R14はメチル基又はエチル基であり、J1が複数存在する場合は複数のJ1がそれぞれ異なっていてもよく、J2が複数存在する場合は複数のJ2がそれぞれ異なっていてもよく、J3が複数存在する場合は複数のJ3がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びL2は、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子、又はフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1~12の2価の連結基であり、L1が複数存在する場合は複数のL1がそれぞれ異なっていてもよく、L2が複数存在する場合は複数のL2がそれぞれ異なっていてもよく、
d11は、1~9であり、
d12は、0~9であり、
a10及びa14は、それぞれ独立して0~10であり、
a11及びa15は、それぞれ独立して0又は1であり、
a12及びa16は、それぞれ独立して0~9であり、
a13は、0又は1であり、
a21、a22、及びa23は、それぞれ独立して0~2であり、
e1、e2、及びe3は、それぞれ独立して1~3である。
[3]前記混合組成物(ca)が下記式(b1)で表される少なくとも1種類の有機ケイ素化合物(B)をさらに含有する[1]または[2]に記載の積層体。
【化2】

上記式(b1)中、
Rfb10は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
b11、Rb12、Rb13及びRb14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rb11が複数存在する場合は複数のRb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rb12が複数存在する場合は複数のRb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rb13が複数存在する場合は複数のRb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rb14が複数存在する場合は複数のRb14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfb11、Rfb12、Rfb13及びRfb14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfb11が複数存在する場合は複数のRfb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb12が複数存在する場合は複数のRfb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb13が複数存在する場合は複数のRfb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb14が複数存在する場合は複数のRfb14がそれぞれ異なっていてもよく、
b15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rb15が複数存在する場合は複数のRb15がそれぞれ異なっていてもよく、
1は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、A1が複数存在する場合は複数のA1がそれぞれ異なっていてもよく、
2は、加水分解性基であり、A2が複数存在する場合は複数のA2がそれぞれ異なっていてもよく、
b11、b12、b13、b14及びb15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
cは、1~3の整数であり、
Rfb10-、-Si(A2c(Rb153-c、b11個の-{C(Rb11)(Rb12)}-、b12個の-{C(Rfb11)(Rfb12)}-、b13個の-{Si(Rb13)(Rb14)}-、b14個の-{Si(Rfb13)(Rfb14)}-、b15個の-A1-は、Rfb10-、-Si(A2c(Rb153-cが末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
[4]前記混合組成物(ca)における、前記有機ケイ素化合物(A)に対する前記有機ケイ素化合物(B)の質量比が0.05~2.0である[3]に記載の積層体。
[5]前記有機ケイ素化合物(C)における少なくとも1つのケイ素原子には、加水分解性基又はヒドロキシ基が結合している[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]前記有機ケイ素化合物(C)は、下記式(c1)~(c3)のいずれかで表される有機ケイ素化合物である[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
【化3】
上記式(c1)中、
x11、Rx12、Rx13、Rx14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx11が複数存在する場合は複数のRx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rx12が複数存在する場合は複数のRx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rx13が複数存在する場合は複数のRx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rx14が複数存在する場合は複数のRx14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx11、Rfx12、Rfx13、Rfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx11が複数存在する場合は複数のRfx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx12が複数存在する場合は複数のRfx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx13が複数存在する場合は複数のRfx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx14が複数存在する場合は複数のRfx14がそれぞれ異なっていてもよく、
x15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx15が複数存在する場合は複数のRx15がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、加水分解性基であり、X11が複数存在する場合は複数のX11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、-NH-、又は-S-であり、Y11が複数存在する場合は複数のY11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、エポキシ基、ウレイド基、又はメルカプト基であり、
p1は、1~20の整数であり、p2、p3、p4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p5は、1~10の整数であり、
p6は、1~3の整数であり、
11がアミノ基でない場合はY11の少なくとも1つが-NH-であり、Y11が全て-S-である場合はZ11がアミノ基であり、
11-、-Si(X11p6(Rx153-p6、p1個の-{C(Rx11)(Rx12)}-、p2個の-{C(Rfx11)(Rfx12)}-、p3個の-{Si(Rx13)(Rx14)}-、p4個の-{Si(Rfx13)(Rfx14)}-、p5個の-Y11-は、Z11-及び-Si(X11p6(Rx153-p6が末端となり、-O-が-O-と連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【化4】

上記式(c2)中、
x20及びRx21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx20が複数存在する場合は複数のRx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rx21が複数存在する場合は複数のRx21がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx20及びRfx21は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx20が複数存在する場合は複数のRfx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx21が複数存在する場合は複数のRfx21がそれぞれ異なっていてもよく、
x22及びRx23はそれぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx22及びRx23が複数存在する場合は複数のRx22及びRx23がそれぞれ異なっていてもよく、
20及びX21はそれぞれ独立して、加水分解性基であり、X20及びX21が複数存在する場合は複数のX20及びX21がそれぞれ異なっていてもよく、
p20は、それぞれ独立して1~30の整数であり、p21は、それぞれ独立して0~30の整数であり、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位の少なくとも1つは、アミン骨格-NR100-に置き換わっており、前記アミン骨格におけるR100は水素原子又はアルキル基であり、
p22及びp23はそれぞれ独立して、1~3の整数であり、
p20個の-{C(Rx20)(Rx21)}-、p21個の-{C(Rfx20)(Rfx21)}-は、p20個又はp21個が連続である必要はなく、任意の順で並んで結合し、両末端が-Si(X20p22(Rx223-p22及び-Si(X21p23(Rx233-p23となる。
【化5】
上記式(c3)中、
31、Z32は、それぞれ独立に、加水分解性基及びヒドロキシ基以外の、反応性官能基であり、
x31、Rx32、Rx33、Rx34は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx31が複数存在する場合は複数のRx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rx32が複数存在する場合は複数のRx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rx33が複数存在する場合は複数のRx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rx34が複数存在する場合は複数のRx34がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx31が複数存在する場合は複数のRfx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx32が複数存在する場合は複数のRfx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx33が複数存在する場合は複数のRfx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx34が複数存在する場合は複数のRfx34がそれぞれ異なっていてもよく、
31は、-NH-、-N(CH3)-又は-O-であり、Y31が複数存在する場合は複数のY31がそれぞれ異なっていてもよく、
31、X32、X33、X34は、ぞれぞれ独立に、-ORc(Rcは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はアミノC1-3アルキルジC1-3アルコキシシリル基である)であり、X31が複数存在する場合は複数のX31がそれぞれ異なっていてもよく、X32が複数存在する場合は複数のX32がそれぞれ異なっていてもよく、X33が複数存在する場合は複数のX33がそれぞれ異なっていてもよく、X34が複数存在する場合は複数のX34がそれぞれ異なっていてもよく、
p31は、0~20の整数であり、p32、p33、p34は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p35は、0~5の整数であり、p36は、1~10の整数であり、p37は0又は1であり、
31及びZ32の少なくとも一方がアミノ基であるか、又はY31の少なくとも一つが-NH-又は-N(CH3)-であるという条件を満たし、かつ末端がZ31-及びZ32-であり、-O-が-O-と連結しない限り、p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-、p32個の-{C(Rfx31)(Rfx32)}-、p33個の-{Si(Rx33)(Rx34)}-、p34個の-{Si(Rfx33)(Rfx34)}-、p35個の-Y31-、p36個の-{Si(X31)(X32)-O}-、p37個の-{Si(X33)(X34)}-が任意の順で並んで結合して構成される。
[7]前記有機ケイ素化合物(A)が下記式(a3)又は(a4)で表される化合物であり、かつ前記有機ケイ素化合物(C)が下記式(c1-2)又は(c2-2)で表される化合物である[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
【化6】

上記式(a3)中、R30は炭素数が2~6のパーフルオロアルキル基であり、R31及びR32はそれぞれ独立していずれも炭素数が2~6のパーフルオロアルキレン基であり、R33は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、R34は炭素数が1~3のアルキル基である。
【化7】

上記式(a4)中、R40は炭素数が2~5のパーフルオロアルキル基であり、R41は炭素数が2~5のパーフルオロアルキレン基であり、R42は炭素数2~5のアルキレン基の水素原子の一部がフッ素に置換されたフルオロアルキレン基であり、R43、R44はそれぞれ独立に炭素数が2~5のアルキレン基であり、R45はメチル基又はエチル基である。k1、k2、k3はそれぞれ独立に1~5の整数である。
【化8】

上記式(c1-2)中、X12は、加水分解性基であり、X12が複数存在する場合は複数のX12がそれぞれ異なっていてもよく、Y12は、-NH-であり、Z12は、アミノ基、又はメルカプト基であり、Rx16は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx16が複数存在する場合は複数のRx16がそれぞれ異なっていてもよく、pは、1~3の整数であり、qは2~5の整数であり、rは0~5の整数である。
【化9】

上記式(c2-2)中、X22及びX23は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、X22及びX23が複数存在する場合は複数のX22及びX23がそれぞれ異なっていてもよく、Rx24及びRx25は、それぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx24及びRx25が複数存在する場合は複数のRx24及びRx25がそれぞれ異なっていてもよく、-Cw2w-は、その一部のメチレン基の少なくとも1つがアミン骨格-NR100-に置き換わっており、R100は水素原子又はアルキル基であり、wは1~30の整数であり(ただし、アミン骨格に置き換わったメチレン基の数を除く)、p24及びp25は、それぞれ独立して、1~3の整数である。)
[8]前記撥水層側表面で測定した特性が、更に下記(1’)及び(3)の要件の少なくとも1つを満足する[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
(1’)前記耐摩耗試験後の水の接触角が90°以上である。
(3)水の初期滑落角が21°以下である。
[9]前記撥水層側表面で測定した特性が、更に下記(4)の要件を満足する[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
(4)前記耐摩耗試験後の動摩擦係数が0.40以下である。
[10]前記積層体の撥水層(r)側表面のXPS測定による表面のF量が5原子%以上であり、N量が0.15原子%以上である[1]~[9]のいずれかに記載の積層体。
[11]前記中間層(c)が積層される前の前記基材(s)の算術平均高さSa(s)の絶対値に対する前記撥水層(r)が積層される前の前記中間層(c)の算術平均高さSa(c)の絶対値の比(Sa(c)の絶対値/Sa(s)の絶対値)が100%未満である[1]~[10]のいずれかに記載の積層体。
[12]前記基材(s)は、ガラス層又は樹脂層の上に反射防止層が形成されたものである[1]~[11]のいずれかに記載の積層体。
[13][1]~[12]のいずれかに記載の積層体を含む眼鏡用レンズ。
[14]反射防止層を有する基材(s)と、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体の製造方法であって、
前記反射防止層を有する基材(s)の反射防止層面に、上記式(c1)~(c3)のいずれかで表される有機ケイ素化合物(C)の混合組成物(cc)を塗布する工程、
前記混合組成物(cc)の塗布面に、上記式(a1)で表される有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)を塗布する工程、及び
前記混合組成物(cc)と前記混合組成物(ca)を硬化させ、前記混合組成物(cc)の塗布層から前記中間層(c)を形成し、前記混合組成物(ca)の塗布層から前記撥水層(r)を形成する工程とを含む積層体の製造方法。
[15]反射防止層を有する基材(s)と、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体の製造方法であって、
前記反射防止層を有する基材(s)の反射防止層面に、上記式(c1)~(c3)のいずれかで表される有機ケイ素化合物(C)を蒸着して前記中間層(c)を形成する工程、
前記中間層(c)上に、上記式(a1)で表される有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)を塗布して硬化させ、前記混合組成物(ca)の塗布層から前記撥水層(r)を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
[16]前記混合組成物(cc)の塗布前又は前記有機ケイ素化合物(C)の蒸着前に、前記基材(s)の反射防止層に親水化処理を施し、該親水化処理面に前記混合組成物(cc)を塗布する又は前記有機ケイ素化合物(C)を蒸着する[14]又は[15]に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
反射防止層を有する基材(s)、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える本発明の積層体は、耐摩耗性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層体は、反射防止層を有する基材(s)と、該基材の反射防止層側に設けられた中間層(c)、及び撥水層(r)をこの順に備える積層体であって、
前記中間層(c)は、アミノ基、及び/又はアミン骨格を有する有機ケイ素化合物(C)の混合組成物(cc)の硬化層又は前記有機ケイ素化合物(C)の蒸着層であり、
前記撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、該ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層であり、以下の(1)の要件を満足する。
(1)前記積層体の撥水層(r)側表面に、1.5cm×1.5cmの面積当たり200gの荷重を掛けて20,000回擦る耐摩耗試験後の、水の滑落角が50°以下である。
【0010】
前記要件を満足する本発明の積層体は、良好な耐摩耗性を実現できる。
【0011】
前記要件(1)において、水の滑落角は40°以下が好ましく、より好ましくは30°以下であり、更に好ましくは20°以下であり、一層好ましくは10°以下である。また前記滑落角は1°以上であってもよい。
【0012】
前記耐摩耗試験は、前記積層体の撥水層(r)側表面に、1.5cm×1.5cmの面積当たり200gの荷重を掛けて20,000回擦る試験であり、擦る際にパルプ素材の紙で擦ることが好ましく、弾性体に取付けられたパルプ素材の紙で擦ることがより好ましい。パルプ素材の紙としては、日本製紙クレシア社製のキムワイプS-200を用いることが好ましい。例えば、キムワイプS-200を用い、耐摩耗試験のストローク距離を30mmとし、擦る速度を70~90往復/分として、ストローク領域の略中央で滑落角を測定することが好ましい。荷重を負荷する際には、1.5cm×1.5cmの面積当たり200gの荷重を掛けることと同等の圧力がかかっていればよく、1.5cm×1.5cm未満の大きさの撥水層(r)を備えた積層体も本発明の範囲に含まれる。
【0013】
本発明の積層体は、下記要件(2)を満足することも好ましい。
(2)前記撥水層(r)側表面で測定した、(2-i)入射角12°及び反射角12°における波長530nmの分光反射率をJIS Z8701の2度視野(C光源)により算出した反射率から表面反射損失及び裏面反射損失を差し引いた反射率が5.0%以下、または(2-ii)光源:ハロゲンランプにて10倍対物レンズ使用下で、D65光源、10°視野換算した、波長530nmにおける反射率が5.0%以下である。
【0014】
前記要件(2)において、前記反射率(前記(2-i)及び(2-ii)で特定した反射率の両方を含む意味である)は4.0%以下が好ましく、より好ましくは3.5%以下であり、更に好ましくは3.0%以下であり、一層好ましくは2.5%以下である。前記反射率は、例えば1.0%以上であってもよい。
【0015】
また、本発明の積層体は、前記撥水層側表面で測定した際に、下記の(1’)、(3)及び(4)の要件の少なくともいずれかを更に満たすことが好ましく、(1’)及び(3)を満たすことがより好ましく、(1’)、(3)及び(4)を満たすことが更に好ましい。
【0016】
(1’)前記耐摩耗試験後の水の接触角が90°以上である。
前記耐摩耗試験後の水の接触角は、より好ましくは95°以上であり、更に好ましくは100°以上であり、一層好ましくは110°以上である。前記水の接触角は、例えば130°以下であってもよい。
【0017】
(3)水の初期滑落角が21°以下である。
要件(3)における水の初期滑落角とは、上記した耐摩耗試験を行う前に測定した水の滑落角を意味する。水の初期滑落角は、より好ましくは20°以下であり、更に好ましくは15°以下であり、一層好ましくは10°以下である。水の前記初期滑落角は、0.5°以上であってもよい。
【0018】
(4)前記耐摩耗試験後の動摩擦係数が0.40以下である。
前記耐摩耗試験後の動摩擦係数は、より好ましくは0.35以下であり、更に好ましくは0.30以下であり、一層好ましくは0.25以下である。前記動摩擦係数は、0.10以上であってもよい。
【0019】
また、初期(すなわち、耐摩耗試験前)の動摩擦係数は、0.35以下が好ましく、より好ましくは0.30以下であり、更に好ましくは0.25以下であり、0.10以上であってもよい。
【0020】
また、前記積層体の撥水層(r)側表面のXPS測定による表面のF量が5原子%以上であり、N量が0.15原子%以上であることが好ましい。このような要件を満たすことで、前記撥水層(r)側表面の初期の撥水性、初期の水滑落性、及び耐摩耗性(耐摩耗試験後の撥水性、水滑落性、動摩擦係数の低減)の少なくともいずれかを良好にできる。F量は10原子%以上がより好ましく、更に好ましくは25原子%以上であり、一層好ましくは40原子%以上であり、また70原子%以下であってもよい。N量は0.5原子%以上がより好ましく、更に好ましくは1.0原子%以上であり、一層好ましくは2.0原子%以上であり、また10原子%以下であってもよい。
【0021】
以下、本発明の積層体を構成する反射防止層を有する基材(s)、中間層(c)、撥水層(r)について順に説明する。
【0022】
1.基材(s)
前記基材(s)の反射防止層(ar)以外の部分の材質は、特に限定されず、有機系材料、無機系材料のいずれでもよく、少なくとも片側面に反射防止層(ar)を備えていればよい。有機系材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ビニル系樹脂(ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ビニルベンジルクロライド系樹脂、ポリビニルアルコール等)などの熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。無機系材料としては、鉄、シリコン、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属、又はこれら金属を含む合金、セラミックス、ガラスなどが挙げられる。
【0023】
本発明の積層体は、例えば眼鏡レンズに好適に用いることができ、この場合には基材(s)はガラス層(sg)又は樹脂層(sp)の上に、反射防止層(ar)が形成されたものとすることが好ましい。反射防止層(ar)は、少なくとも前記中間層(c)側に形成されていることが好ましい。前記樹脂層(sp)としては、アリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂、チオウレタン樹脂、エピスルフィド樹脂などを用いることができる。ガラス層(sg)又は樹脂層(sp)と、反射防止層(ar)の間には、プライマー層及び/又はハードコート層が形成されていてもよい。
前記プライマー層とは、プライマー層を介して積層される2つの層の密着性を向上させる層であり、公知の材料を用いることができる。
前記ハードコート層は、ガラス層(sp)又は樹脂層(sg)に耐傷性を付与する層であり、JIS K5600において定められた試験法による鉛筆硬度でH以上の硬度を示すものである。ハードコート層としては、公知のハードコート層を用いることができ、例えば有機系ハードコート層、無機系ハードコート層、及び有機-無機ハイブリッドハードコート層を挙げることができる。
反射防止層(ar)は、入射した光の反射を防止する機能を有する層であり、530nmの可視光領域において、反射率が5.0%以下程度に低減された反射特性を示す層である。反射防止層(ar)の反射率も、上記した前記撥水層(r)側表面で測定される反射率と同様の前記(2-i)または(2-ii)の方法で測定できる。反射防止層(ar)の構造は特に限定されず、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造の場合、低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した構造が好ましい。高屈折率層を構成する材料としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、タンタル又はランタンの酸化物などが挙げられ、低屈折率層を構成する材料としてはシリカなどが挙げられる。多層構造の反射防止層(ar)としては、SiO2とZrO2が交互に積層され、ガラス層(sg)又は樹脂層(sp)と反対側の最外層がSiO2である構造が好ましい。反射防止層(ar)は、例えば蒸着法によって形成することができる。
【0024】
前記基材s)の厚さは、例えば0.9~10mmである。なお、前記基材(s)の厚さが均一でない場合は、前記基材(s)の重心での厚みが前記範囲となればよい。
【0025】
2.中間層(c)
前記中間層(c)は、ケイ素原子を有すると共にアミノ基又はアミン骨格(-NR100-であり、R100は水素原子又はアルキル基)を有する有機ケイ素化合物(C)の混合組成物(cc)の硬化層又は前記有機ケイ素化合物(C)の蒸着層であり、前記中間層(c)はアミノ基又はアミン骨格を有する。好ましい態様においては、前記有機ケイ素化合物(C)のケイ素原子には加水分解性基又はヒドロキシ基が結合しており、前記有機ケイ素化合物(C)が有するSi-OH基又はケイ素原子に結合した加水分解性基の加水分解で生じた前記有機ケイ素化合物(C)の-SiOH基同士が脱水縮合するため、前記中間層(c)は、前記有機ケイ素化合物(C)由来の縮合構造を有することが好ましい。前記中間層(c)は撥水層(r)のプライマー層として機能することができる。前記有機ケイ素化合物(C)のケイ素原子に結合する加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アセトキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。前記有機ケイ素化合物(C)のケイ素原子には、炭素数1~4のアルコキシ基又はヒドロキシ基が結合していることが好ましい。
【0026】
2-1.式(c1)で表される有機ケイ素化合物(C)(以下、有機ケイ素化合物(C1))
【化10】
【0027】
上記式(c1)中、
x11、Rx12、Rx13、Rx14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx11が複数存在する場合は複数のRx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rx12が複数存在する場合は複数のRx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rx13が複数存在する場合は複数のRx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rx14が複数存在する場合は複数のRx14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx11、Rfx12、Rfx13、Rfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx11が複数存在する場合は複数のRfx11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx12が複数存在する場合は複数のRfx12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx13が複数存在する場合は複数のRfx13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx14が複数存在する場合は複数のRfx14がそれぞれ異なっていてもよく、
x15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx15が複数存在する場合は複数のRx15がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、加水分解性基であり、X11が複数存在する場合は複数のX11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、-NH-、又は-S-であり、Y11が複数存在する場合は複数のY11がそれぞれ異なっていてもよく、
11は、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、エポキシ基、ウレイド基、又はメルカプト基であり、
p1は、1~20の整数であり、p2、p3、p4は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p5は、1~10の整数であり、
p6は、1~3の整数であり、
11がアミノ基でない場合はY11の少なくとも1つが-NH-であり、Y11が全て-S-である場合はZ11がアミノ基であり、
11-、-Si(X11p6(Rx153-p6、p1個の-{C(Rx11)(Rx12)}-、p2個の-{C(Rfx11)(Rfx12)}-、p3個の-{Si(Rx13)(Rx14)}-、p4個の-{Si(Rfx13)(Rfx14)}-、p5個の-Y11-は、Z11-及び-Si(X11p6(Rx153-p6が末端となり、-O-が-O-と連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【0028】
x11、Rx12、Rx13、及びRx14は、水素原子であることが好ましい。
【0029】
Rfx11、Rfx12、Rfx13、及びRfx14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であることが好ましい。
【0030】
x15は、炭素数が1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0031】
11は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが更に好ましい。
【0032】
11は、-NH-であることが好ましい。
【0033】
11は、メタクリロイル基、アクリロイル基、メルカプト基又はアミノ基であることが好ましく、メルカプト基又はアミノ基がより好ましく、アミノ基が更に好ましい。
【0034】
p1は1~15が好ましく、より好ましくは2~10である。p2、p3及びp4は、それぞれ独立して、0~5が好ましく、より好ましくは全て0~2である。p5は、1~5が好ましく、より好ましくは1~3である。p6は、2~3が好ましく、より好ましくは3である。
【0035】
前記有機ケイ素化合物(C)としては、上記式(c1)において、Rx11及びRx12がいずれも水素原子であり、Y11が-NH-であり、X11がアルコキシ基(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、Z11がアミノ基又はメルカプト基であり、p1が1~10であり、p2、p3及びp4がいずれも0であり、p5が1~5(特に1~3)であり、p6が3である化合物を用いることが好ましい。
【0036】
有機ケイ素化合物(C1)は、下記式(c1-2)で表されることが好ましい。
【0037】
【化11】
【0038】
上記式(c1-2)中、
12は、加水分解性基であり、X12が複数存在する場合は複数のX12がそれぞれ異なっていてもよく、
12は、-NH-であり、
12は、アミノ基、又はメルカプト基であり、
x16は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx16が複数存在する場合は複数のRx16がそれぞれ異なっていてもよく、
pは、1~3の整数であり、qは2~5の整数であり、rは0~5の整数である。
【0039】
12は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましい。
【0040】
12は、アミノ基であることが好ましい。
【0041】
x16は、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましい。
【0042】
pは、2~3の整数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0043】
qは2~3の整数であることが好ましく、rは2~4の整数であることが好ましい。
【0044】
2-2.式(c2)で表される有機ケイ素化合物(C)(以下、有機ケイ素化合物(C2))
【0045】
【化12】


上記式(c2)中、
x20及びRx21は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx20が複数存在する場合は複数のRx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rx21が複数存在する場合は複数のRx21がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfx20及びRfx21は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx20が複数存在する場合は複数のRfx20がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx21が複数存在する場合は複数のRfx21がそれぞれ異なっていてもよく、
x22及びRx23はそれぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx22及びRx23が複数存在する場合は複数のRx22及びRx23がそれぞれ異なっていてもよく、
20及びX21はそれぞれ独立して、加水分解性基であり、X20及びX21が複数存在する場合は複数のX20及びX21がそれぞれ異なっていてもよく、
p20は、それぞれ独立して1~30の整数であり、p21は、それぞれ独立して0~30の整数であり、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位の少なくとも1つは、アミン骨格-NR100-に置き換わっており、前記アミン骨格におけるR100は水素原子又はアルキル基であり、
p22及びp23はそれぞれ独立して、1~3の整数であり、
p20個の-{C(Rx20)(Rx21)}-、p21個の-{C(Rfx20)(Rfx21)}-は、p20又はp21個が連続である必要はなく、任意の順で並んで結合し、両末端が-Si(X20p22(Rx223-p22及び-Si(X21p23(Rx233-p23となる。
【0046】
x20及びRx21は、水素原子であることが好ましい。
【0047】
Rfx20及びRfx21は、は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であることが好ましい。
【0048】
x22及びRx23は、炭素数が1~5のアルキル基であることが好ましい。
【0049】
20及びX21は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基又はエトキシ基であることが更に好ましい。
【0050】
アミン骨格-NR100-は、上記の通り分子内に少なくとも1つ存在すればよく、p20又はp21を付して括弧でくくられた繰り返し単位のいずれかが前記アミン骨格に置き換わっていればよいが、p20を付して括弧でくくられた繰り返し単位の一部であることが好ましい。前記アミン骨格は、複数存在してもよく、その場合のアミン骨格の数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~5であることがさらに好ましい。また、この場合、隣り合うアミン骨格の間にアルキレン基を有することが好ましく、該アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。隣り合うアミン骨格の間のアルキレン基の炭素数は、p20又はp21の総数に含まれる。
【0051】
アミン骨格-NR100-において、R100がアルキル基である場合、炭素数は5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。アミン骨格-NR100-は、-NH-(R100が水素原子)であることが好ましい。
【0052】
p20は、アミン骨格に置き変わった繰り返し単位の数を除いて、1~15が好ましく、より好ましくは1~10である。
【0053】
p21は、アミン骨格に置き変わった繰り返し単位の数を除いて、0~5が好ましく、より好ましくは全て0~2である。
【0054】
p22及びp23は、2~3が好ましく、より好ましくは3である。
【0055】
有機ケイ素化合物(C2)としては、上記式(c2)において、Rx20及びRx21がいずれも水素原子であり、X20及びX21がアルコキシ基(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、p20を付して括弧でくくられた繰り返し単位が、少なくとも1つアミン骨格-NR100-に置き換わっており、R100が水素原子であり、p20が1~10であり(ただし、アミン骨格に置き変わった繰り返し単位の数を除く)、p21が0であり、p22及びp23が3である化合物を用いることが好ましい。
【0056】
なお、後記する実施例で化合物(C)として用いる、特開2012-197330号公報に記載のN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランとクロロプロピルトリメトキシシランの反応物(商品名;X-12-5263HP、信越化学工業(株)製)を上記式(c2)で表すと、Rx20及びRx21がいずれも水素原子、p20が8、p21が0、アミン骨格が2つ(いずれもR100が水素原子)、両末端が同一で、p22及びp23が3でX20及びX21がメトキシ基である。
【0057】
有機ケイ素化合物(C2)は、下記式(c2-2)で表される化合物であることが好ましい。
【0058】
【化13】
【0059】
上記式(c2-2)中、
22及びX23は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、X22及びX23が複数存在する場合は複数のX22及びX23がそれぞれ異なっていてもよく、
x24及びRx25は、それぞれ独立して、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rx24及びRx25が複数存在する場合は複数のRx24及びRx25がそれぞれ異なっていてもよく、
-Cw2w-は、その一部のメチレン基の少なくとも1つがアミン骨格-NR100-に置き換わっており、R100は水素原子又はアルキル基であり、
wは1~30の整数であり(ただし、アミン骨格に置き換わったメチレン基の数を除く)、
p24及びp25は、それぞれ独立して、1~3の整数である。
【0060】
22及びX23は、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、又はイソシアネート基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基(特にメトキシ基又はエトキシ基)であることが更に好ましい。
【0061】
アミン骨格-NR100-は、複数存在してもよく、その場合のアミン骨格の数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、2~5であることがさらに好ましい。また、この場合、隣り合うアミン骨格の間にアルキレン基を有することが好ましい。前記アルキレン基の炭素数は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。隣り合うアミン骨格の間のアルキレン基の炭素数は、wの総数に含まれる。
【0062】
アミン骨格-NR100-において、R100がアルキル基である場合、炭素数は5以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。アミン骨格-NR100-は、-NH-(R100が水素原子)であることが好ましい。
【0063】
x24及びRx25は、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~5のアルキル基であることがより好ましい。
【0064】
p24及びp25は、2~3の整数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0065】
wは、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、また20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0066】
2-3.式(c3)で表される有機ケイ素化合物(C)(以下、有機ケイ素化合物(C3))
【0067】
【化14】

上記式(c3)中、
31、Z32は、それぞれ独立に、加水分解性基及びヒドロキシ基以外の、反応性官能基である。反応性官能基としては、ビニル基、α-メチルビニル基、スチリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、アミノ基、エポキシ基、ウレイド基、又はメルカプト基が挙げられる。Z31、Z32としては、アミノ基、メルカプト基、又はメタクリロイル基が好ましく、特にアミノ基が好ましい。
【0068】
x31、Rx32、Rx33、Rx34は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rx31が複数存在する場合は複数のRx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rx32が複数存在する場合は複数のRx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rx33が複数存在する場合は複数のRx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rx34が複数存在する場合は複数のRx34がそれぞれ異なっていてもよい。Rx31、Rx32、Rx33、Rx34は、水素原子又は炭素数が1~2のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0069】
Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfx31が複数存在する場合は複数のRfx31がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx32が複数存在する場合は複数のRfx32がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx33が複数存在する場合は複数のRfx33がそれぞれ異なっていてもよく、Rfx34が複数存在する場合は複数のRfx34がそれぞれ異なっていてもよい。Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rfx34は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であることが好ましい。
【0070】
31は、-NH-、-N(CH3)-又は-O-であり、Y31が複数存在する場合は複数のY31がそれぞれ異なっていてもよい。Y31は-NH-であることが好ましい。
【0071】
31、X32、X33、X34は、ぞれぞれ独立に、-ORc(Rcは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はアミノC1-3アルキルジC1-3アルコキシシリル基である)であり、X31が複数存在する場合は複数のX31がそれぞれ異なっていてもよく、X32が複数存在する場合は複数のX32がそれぞれ異なっていてもよく、X33が複数存在する場合は複数のX33がそれぞれ異なっていてもよく、X34が複数存在する場合は複数のX34がそれぞれ異なっていてもよい。X31、X32、X33、X34は、Rcが水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基である-ORcであることが好ましく、Rcは水素原子がより好ましい。
【0072】
p31は、0~20の整数であり、p32、p33、p34は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、p35は、0~5の整数であり、p36は、1~10の整数であり、p37は0又は1である。p31は1~15が好ましく、より好ましくは3~13であり、さらに好ましくは5~10である。p32、p33及びp34は、それぞれ独立して、0~5が好ましく、より好ましくは全て0~2である。p35は、1~5が好ましく、より好ましくは1~3である。p36は、1~5が好ましく、より好ましくは1~3である。p37は1が好ましい。
【0073】
有機ケイ素化合物(C3)は、Z31及びZ32の少なくとも一方がアミノ基であるか、又はY31の少なくとも一つが-NH-又は-N(CH3)-であるという条件を満たし、かつ末端がZ31-及びZ32-であり、-O-が-O-と連結しない限り、p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-、p32個の-{C(Rfx31)(Rfx32)}-、p33個の-{Si(Rx33)(Rx34)}-、p34個の-{Si(Rfx33)(Rfx34)}-、p35個の-Y31-、p36個の-{Si(X31)(X32)-O}-、p37個の-{Si(X33)(X34)}-が任意の順で並んで結合して構成される。p31個の-{C(Rx31)(Rx32)}-は、-{C(Rx31)(Rx32)}-が連続して結合している必要はなく、途中に他の単位を介して結合していてもよく、合計でp31個であればよい。p32~p37で括られる単位についても同様である。
【0074】
有機ケイ素化合物(C3)としては、Z31及びZ32がアミノ基であり、Rx31及びRx32が水素原子であり、p31が3~13(好ましくは5~10)であり、Rx33及びRx34がいずれも水素原子であり、Rfx31~Rfx34がいずれも1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~10のアルキル基又はフッ素原子であり、p32~p34がいずれも0~5であり、Y31が-NH-であり、p35が0~5(好ましくは0~3)であり、X31~X34がいずれも-OHであり、p36が1~5(好ましくは1~3)であり、p37が1である化合物が好ましい。
【0075】
有機ケイ素化合物(C3)は、下記式(c3-2)で表されることが好ましい。
【0076】
【化15】
【0077】
前記式(c3-2)中、Z31、Z32、X31、X32、X33、X34、Y31は、式(c3)中のこれらと同義であり、p41~p44は、それぞれ独立に1~6の整数であり、p45、46はそれぞれ独立に0又は1である。
【0078】
式(c3-2)において、Z31及びZ32は、アミノ基、メルカプト基、又はメタクリロイル基が好ましく、特にアミノ基が好ましい。X31、X32、X33、X34、は、Rcが水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基である-ORcであることが好ましく、Rcが水素原子であることがより好ましい。Y31は-NH-であることが好ましい。p41~p44は、2以上が好ましく、また5以下が好ましく、4以下がより好ましい。p45、p46はいずれも0であることが好ましい。
【0079】
前記混合組成物(cc)は、有機ケイ素化合物(C)が混合された組成物である。混合組成物(cc)が、有機ケイ素化合物(C)を混合することにより得られ、有機ケイ素化合物(C)以外の成分が混合されている場合は、有機ケイ素化合物(C)と、他の成分を混合することにより得られる。前記混合組成物(cc)は、混合後、例えば保管中に反応が進んだものも含む。
【0080】
混合組成物(cc)の保管中に反応が進んだ例として、混合組成物(cc)が、有機ケイ素化合物(C)の縮合物を含むことが挙げられ、より具体的には混合組成物(cc)が、有機ケイ素化合物(C3)が上記X31~X34の少なくともいずれかで縮合して結合した有機ケイ素化合物(C3’)を含むことが挙げられる。
【0081】
前記有機ケイ素化合物(C3’)は、下記式(c31-1)で表される構造(c31-1)を2以上有し、前記構造(c31-1)同士が、下記*3又は*4で鎖状又は環状に結合した化合物であって、下記*3又は*4での結合は、2以上の前記有機ケイ素化合物(C3)の前記X31又はX32の縮合によるものであり、
下記式(c31-1)の*1及び*2には、それぞれ、下記式(c31-2)のp31、p32、p33、p34、p35、(p36)-1、p37で括られた単位の少なくとも1種が任意の順で結合し末端がZ-である基が結合しており、複数の前記構造(c31-1)ごとに、*1及び*2に結合する基は異なっていてもよく、
複数の前記構造(c31-1)が鎖状に結合しているときの末端となる*3は水素原子であり、*4はヒドロキシ基である。
【0082】
【化16】
【0083】
【化17】
【0084】
前記式(c31-2)中、
Zは、加水分解性基及びヒドロキシ基以外の、反応性官能基であり、
x31、Rx32、Rx33、Rx34、Rfx31、Rfx32、Rfx33、Rf34、Y31、X31、X32、X33、X34、p31~p37は、前記式(c3)中のこれら符号と同義である。
【0085】
有機ケイ素化合物(C3)が前記式(c3-2)で表される化合物である場合、有機ケイ素化合物(C3’)としては、例えば下記式(c31-3)で表される構造が下記*3又は*4で鎖状又は環状に結合した化合物が挙げられる。下記式(c31-3)で表される構造が鎖状に結合する場合には、末端となる*3は水素原子であり、末端となる*4はヒドロキシ基である。
【0086】
【化18】
【0087】
前記式(c31-3)中の符号は、全て前記式(c3-2)の符号と同義である。
【0088】
有機ケイ素化合物(C3’)は、前記式(c31-3)で表される構造が2~10(好ましくは3~8)結合した化合物であることが好ましい。
【0089】
前記有機ケイ素化合物(C)としては1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。前記有機ケイ素化合物(C)として、少なくとも前記有機ケイ素化合物(C1)及び/又は前記有機ケイ素化合物(C2)を用いることが好ましく、少なくとも有機ケイ素化合物(C2)を用いることがより好ましい。
【0090】
前記混合組成物(cc)は、溶剤(E)が混合されていることが好ましい。溶剤(E)は特に限定されず、例えば水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤などを用いることができ、特に水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤が好ましい。
【0091】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノールなどが挙げられる。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどが挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【0092】
前記組成物(cc)の全体を100質量%としたときの、有機ケイ素化合物(C)の合計量は、0.005質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.02質量%以上であり、また5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは2質量%以下である。上記の有機ケイ素化合物(C)の量は、組成物の調製時に調整できる。前記有機ケイ素化合物(C)の量は、組成物の分析結果からから算出してもよい。なお、本明細書において、各成分の量、質量比又はモル比の範囲を記載している場合、上記と同様に、該範囲は、組成物の調製時に調整できる。
【0093】
前記中間層(c)の厚みは、例えば1~1000nm程度である。
【0094】
3.撥水層(r)
撥水層(r)は、有機ケイ素化合物(A)の混合組成物(ca)の硬化層であり、前記混合組成物(ca)が前記有機ケイ素化合物(A)と有機ケイ素化合物(B)の混合組成物であることがより好ましい。
【0095】
3-1.有機ケイ素化合物(A)
前記有機ケイ素化合物(A)は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が連結基を介して又は連結基を介さずにケイ素原子に結合すると共に、該ケイ素原子に連結基を介して又は連結基を介さずに加水分解性基が結合している化合物である。前記撥水層(r)は前記組成物(ca)を塗布して硬化させることにより得られ、前記有機ケイ素化合物(A)由来の構造を有している。上述の通り、上記有機ケイ素化合物(A)はケイ素原子に結合した(連結基を介して結合していてもよい)加水分解性基を有しており、加水分解で生じた有機ケイ素化合物(A)の-SiOH基(SiとOHが連結基を介して結合していてもよい)同士が脱水縮合するため、撥水層(r)は、通常有機ケイ素化合物(A)由来の縮合構造を有する。前記加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アセトキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0096】
前記パーフルオロポリエーテル構造は、パーフルオロオキシアルキレン基ともいうことができる。パーフルオロポリエーテル構造は、撥水性又は撥油性などの撥液性を有する。パーフルオロポリエーテル構造の最も長い直鎖部分に含まれる炭素数は、例えば5以上であることが好ましく、10以上がより好ましく、更により好ましくは20以上である。前記炭素数の上限は特に限定されず、例えば200程度であってもよい。前記有機ケイ素化合物(A)のパーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基は、更に自由末端にパーフルオロアルキル基を有することが好ましい。
【0097】
前記撥水層(r)は、パーフルオロポリエーテル構造とポリシロキサン骨格を有する層として示すこともでき、好ましくは、パーフルオロアルキル基を更に有する。前記撥水層(r)は、ポリシロキサン骨格の一部のケイ素原子に、自由末端がパーフルオロアルキル基であり、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基が結合した構造を有していることが好ましい。パーフルオロアルキル基は自由末端側に存在することで、撥水性が向上する。
【0098】
パーフルオロアルキル基の炭素数(特に最も長い直鎖部分の炭素数)は、例えば3以上であることが好ましく、5以上がより好ましく、更に好ましくは7以上である。なお前記炭素数の上限は特に限定されず、例えば20程度であっても優れた撥水特性を示す。
【0099】
前記パーフルオロアルキル基は、炭化水素基及び/又は炭化水素基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換した基と結合してフルオロアルキル基などの含フッ素基を形成していてもよく、例えば、CF3(CF2m-(CH2n-、CF3(CF2m-C64-(mはいずれも1~10であり、好ましくは3~7であり、nはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)があげられ、CF3(CF2m-(CH2n-(mはいずれも1~10であり、好ましくは3~7であり、nはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)が好ましい。前記パーフルオロアルキル基は、直接パーフルオロポリエーテル構造に結合していることがより好ましい。
【0100】
前記有機ケイ素化合物(A)では、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基とケイ素原子は、適当な連結基を介して結合していてもよく、当該連結基なしで上記パーフルオロポリエーテルを有する1価の基が直接ケイ素原子に結合してもよい。連結基としては、例えば、アルキレン基、芳香族炭化水素基などの炭化水素基、(ポリ)アルキレングリコール基、又はこれらの水素原子の一部がF又は置換基に置換された基、及びこれらが適当に連結した基などが挙げられる。連結基の炭素数は、例えば1以上、20以下であり、好ましくは2以上、15以下である。
【0101】
前記加水分解性基は、加水分解・脱水縮合反応を通じて、有機ケイ素化合物(A)同士を、又は有機ケイ素化合物(A)と基材表面の活性水素(水酸基など)とを結合する作用を有する。こうした加水分解性基としては、例えばアルコキシ基(特に炭素数1~4のアルコキシ基)、ヒドロキシ基、アセトキシ基、ハロゲン原子(特に塩素原子)などが挙げられる。好ましい加水分解性基は、アルコキシ基及びハロゲン原子であり、特にメトキシ基、エトキシ基、塩素原子が好ましい。
【0102】
前記加水分解性基は連結基を介してケイ素原子に結合していてもよいし、連結基を介さずに直接ケイ素原子に結合していてもよい。ケイ素原子に結合する加水分解性基の数は、1つ以上であればよく、2又は3であってもよいが、2又は3であるのが好ましく、3であるのが特に好ましい。2つ以上の加水分解性基がケイ素原子に結合している場合、異なる加水分解性基がケイ素原子に結合していてもよいが、同じ加水分解性基がケイ素原子に結合しているのが好ましい。ケイ素原子に結合する含フッ素基と加水分解性基との合計数は、通常4であるが、2又は3(特に3)であってもよい。3以下の場合、残りの結合手には、加水分解性基以外の1価の基が結合していてもよく、例えば、アルキル基(特に炭素数が1~4のアルキル基)、H、NCOなどが結合できる。
【0103】
前記有機ケイ素化合物(A)のパーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基は、直鎖状であっても良いし、側鎖を有していてもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0104】
前記有機ケイ素化合物(A)は、例えば下記式(a)で表すことができる。
【0105】
【化19】
【0106】
上記式(a)中、D1はパーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基であり、D1におけるD2と結合する側の末端は-CF2-O-*、-CFD9-*であり(*はD2側の結合手)、D2は単結合又はフッ素原子に置換されていない2価の炭化水素基であり、D3はフッ素原子に置換されていない3価の炭化水素基であり、該炭化水素基のメチレン基の一部が酸素原子に置き換わっていてもよく、D4は水素原子又はフッ素原子であり、D5は単結合又は2価の炭化水素基であり、D6は加水分解性基以外の1価の基であり、D7は2価の基又は単結合であり、D8は加水分解性基であり、D9は水素原子、フッ素原子、又は炭化水素基であり、n1は1~30であり、n2は1~3である。D8の加水分解性基としては上述のものが挙げられる。
【0107】
前記有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a1)で表されることが好ましい。
【0108】
【化20】
【0109】
上記式(a1)中、
Rfa1は、両端が酸素原子である2価のパーフルオロポリエーテル構造であり、
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して(すなわち、R11とR12とR13は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよく)炭素数1~20のアルキル基であり、R11が複数存在する場合は複数のR11がそれぞれ異なっていてもよく、R12が複数存在する場合は複数のR12がそれぞれ異なっていてもよく、R13が複数存在する場合は複数のR13がそれぞれ異なっていてもよく、
1、E2、E3、E4、及びE5は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子であり、E1が複数存在する場合は複数のE1がそれぞれ異なっていてもよく、E2が複数存在する場合は複数のE2がそれぞれ異なっていてもよく、E3が複数存在する場合は複数のE3がそれぞれ異なっていてもよく、E4が複数存在する場合は複数のE4がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びG2は、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~10価のオルガノシロキサン基であり、
1、J2、及びJ3は、それぞれ独立して、加水分解性基又は-(CH2e6-Si(OR143であり、e6は1~5であり、R14はメチル基又はエチル基であり、J1が複数存在する場合は複数のJ1がそれぞれ異なっていてもよく、J2が複数存在する場合は複数のJ2がそれぞれ異なっていてもよく、J3が複数存在する場合は複数のJ3がそれぞれ異なっていてもよく、
1及びL2は、それぞれ独立して、酸素原子、窒素原子、又はフッ素原子を含んでいてもよい炭素数1~12の2価の連結基であり、L1が複数存在する場合は複数のL1がそれぞれ異なっていてもよく、L2が複数存在する場合は複数のL2がそれぞれ異なっていてもよく、
d11は、1~9であり、
d12は、0~9であり、
a10及びa14は、それぞれ独立して0~10であり、
a11及びa15は、それぞれ独立して0又は1であり、
a12及びa16は、それぞれ独立して0~9であり、
a13は、0又は1であり、
a21、a22、及びa23は、それぞれ独立して0~2であり、
e1、e2、及びe3は、それぞれ独立して1~3である。
【0110】
前記有機ケイ素化合物(A)は、上記式(a1)で表される通り、Rfa1で表されるパーフルオロポリエーテル構造を有するとともに、J2で表される加水分解性基又は-(CH2e6-Si(OR143(但し、R14はメチル基又はエチル基)を少なくとも1つ有している。パーフルオロポリエーテル構造は、ポリオキシアルキレン基の全部の水素原子がフッ素原子に置き換わった構造であり、パーフルオロオキシアルキレン基ともいえ、得られる皮膜に撥水性を付与できる。また、J2によって、前記有機ケイ素化合物(A)同士、又は他の単量体と共に重合反応(特に重縮合反応)を通じて結合することによって、得られる皮膜のマトリックスとなり得る化合物である。
【0111】
Rfa1は、-O-(CF2CF2O)e4-、又は-O-(CF2CF2CF2O)e5-が好ましい。e4、e5は、いずれも15~80である。
【0112】
11、R12、及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
【0113】
1及びL2は、それぞれ独立して、フッ素原子を含んだ炭素数1~5の2価の連結基が好ましい。
【0114】
1及びG2は、それぞれ独立して、シロキサン結合を有する2~5価のオルガノシロキサン基が好ましい。
【0115】
1、J2、及びJ3は、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基又は-(CH2e6-Si(OR143が好ましい。
【0116】
a10は0~5が好ましく(より好ましくは0~3)、a11は0が好ましく、a12は0~7が好ましく(より好ましくは0~5)、a14は1~6が好ましく(より好ましくは1~3)、a15は0が好ましく、a16は0~6が好ましく、a21~a23はいずれも0又は1が好ましく(より好ましくはいずれも0)、d11は1~5が好ましく(より好ましくは1~3)、d12は0~3が好ましく(より好ましくは0又は1)、e1~e3はいずれも3が好ましい。また、a13は1が好ましい。
【0117】
前記有機ケイ素化合物(A)としては、上記式(a1)のRfa1が-O-(CF2CF2CF2O)e5-であり、e5が35~50であり、L1及びL2がいずれも炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、E1、E2、及びE3がいずれも水素原子であり、E4、及びE5が水素原子又はフッ素原子であり、J1、J2、及びJ3がいずれもメトキシ基又はエトキシ基(特にメトキシ基)であり、a10が1~3であり、a11が0であり、a12が0~5であり、a13が1であり、a14が2~5であり、a15が0であり、a16が0~6であり、a21~a23が、それぞれ独立して、0又は1であり(より好ましくはa21~a23が全て0)、d11が1であり、d12が0又は1であり、e1~e3がいずれも3である化合物を用いることが好ましい。
【0118】
前記有機ケイ素化合物(A)としては、上記式(a1)のRfa1が-O-(CF2CF2CF2O)e5-であり、e5が25~40であり、L1がフッ素原子及び酸素原子を含む炭素数3~6の2価の連結基であり、L2が炭素数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、E2、E3がいずれも水素原子であり、E5がフッ素原子であり、J2が-(CH2e6-Si(OCH33であり、e6が2~4であり、a10が1~3であり、a11が0であり、a12が0であり、a13が0であり、a14が2~5であり、a15が0であり、a16が0であり、a21~a23が、それぞれ独立して、0又は1であり(より好ましくはa21~a23が全て0)、d11が1であり、d12が0であり、e2が3である化合物を用いることも好ましい。
【0119】
また、前記有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a2-1)で表される化合物であることも好ましい。
【0120】
【化21】
【0121】
上記式(a2-1)中、
Rfa21は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
Rfa22、Rfa23、Rfa24、及びRfa25は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfa22が複数存在する場合は複数のRfa22がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa23が複数存在する場合は複数のRfa23がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa24が複数存在する場合は複数のRfa24がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa25が複数存在する場合は複数のRfa25がそれぞれ異なっていてもよく、
20、R21、R22、及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、R20が複数存在する場合は複数のR20がそれぞれ異なっていてもよく、R21が複数存在する場合は複数のR21がそれぞれ異なっていてもよく、R22が複数存在する場合は複数のR22がそれぞれ異なっていてもよく、R23が複数存在する場合は複数のR23がそれぞれ異なっていてもよく、
24は、炭素数1~20のアルキル基であり、R24が複数存在する場合は複数のR24がそれぞれ異なっていてもよく、 M1は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、M1が複数存在する場合は複数のM1がそれぞれ異なっていてもよく、
2は、水素原子又はハロゲン原子であり、
3は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-(Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基)であり、M3が複数存在する場合は複数のM3がそれぞれ異なっていてもよく、
4は、加水分解性基であり、M4が複数存在する場合は複数のM4がそれぞれ異なっていてもよく、
f11、f12、f13、f14、及びf15はそれぞれ独立して0~600の整数であり、f11、f12、f13、f14、及びf15の合計値は13以上であり、
f16は、1~20の整数であり、
f17は、0~2の整数であり、
g1は、1~3の整数であり、
Rfa21-、M2-、f11個の-{C(R20)(R21)}-、f12個の-{C(Rfa22)(Rfa23)}-、f13個の-{Si(R22)(R23)}-、f14個の-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-、f15個の-M3-、及びf16個の-[CH2C(M1){(CH2f17-Si(M4g1(R243-g1}]-は、Rfa21-、M2-が末端となり、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並び、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。すなわち、式(a2-1)は、必ずしもf11個の-{C(R20)(R21)}-が連続し、f12個の-{C(Rfa22)(Rfa23)}-が連続し、f13個の-{Si(R22)(R23)}-が連続し、f14個の-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-が連続し、f15個の-M3-が連続し、f16個の-[CH2C(M1){(CH2f17-Si(M4g1(R243-g1}]-が連続して、この順で並ぶという意味ではなく、-C(R20)(R21)-Si(Rfa24)(Rfa25)-CH2C(M1){(CH2f17-Si(M4g1(R243-g1}-C(Rfa22)(Rfa23)-M3-Si(R22)(R23)-C(Rfa22)(Rfa23)-などのように、それぞれが任意の順番で並ぶことが可能である。
【0122】
Rfa21は、好ましくは1個以上のフッ素原子で置換された炭素数1~10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~5のパーフルオロアルキル基である。
【0123】
Rfa22、Rfa23、Rfa24、及びRfa25は、好ましくはそれぞれ独立して、フッ素原子、又は1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~2のアルキル基であり、より好ましくはすべてフッ素原子である。
【0124】
20、R21、R22、及びR23は、好ましくはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
【0125】
24は、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0126】
1は、好ましくはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
【0127】
2は、好ましくは水素原子である。
【0128】
3は、好ましくは、-C(=O)-O-、-O-、-O-C(=O)-であり、より好ましくはすべて-O-である。
【0129】
4は、アルコキシ基、ハロゲン原子が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子がより好ましい。
【0130】
好ましくは、f11、f13、及びf14は、それぞれf12の1/2以下であり、より好ましくは1/4以下であり、さらに好ましくはf13又はf14は0であり、特に好ましくはf13及びf14は0である。
【0131】
f15は、好ましくはf11、f12、f13、f14の合計値の1/5以上であり、f11、f12、f13、f14の合計値以下である。
【0132】
f12は、20~600が好ましく、より好ましくは20~200であり、更に好ましくは50~200である(一層好ましくは30~150、特に50~150、最も好ましくは80~140)。f15は4~600が好ましく、より好ましくは4~200であり、更に好ましくは10~200である(一層好ましくは30~60)。f11、f12、f13、f14、f15の合計値は、20~600が好ましく、20~200がより好ましく、50~200が更に好ましい。
【0133】
f16は、好ましくは1~18である。より好ましくは1~15である。更に好ましくは1~10である。
【0134】
f17は、好ましくは0~1である。
【0135】
g1は、2~3が好ましく、3がより好ましい。
【0136】
f11個の-{C(R20)(R21)}-、f12個の-{C(Rfa22)(Rfa23)}-、f13個の-{Si(R22)(R23)}-、f14個の-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-、及びf15個の-M3-の順序は、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並ぶ限り、式中において任意であるが、好ましくは最も固定端側(ケイ素原子と結合する側)のf12を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(Rfa22)(Rfa23)}-)は、最も自由端側のf11を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(R20)(R21)}-)よりも自由端側に位置し、より好ましくは最も固定端側のf12及びf14を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(Rfa22)(Rfa23)}-、及び-{Si(Rfa24)(Rfa25)}-)は、最も自由端側のf11及びf13を付して括弧でくくられた繰り返し単位(すなわち、-{C(R20)(R21)}-、及び-{Si(R22)(R23)}-)よりも自由端側に位置する。
【0137】
上記式(a2-1)において、Rfa21が炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rfa22、Rfa23、Rfa24、Rfa25が全てフッ素原子であり、M3が全て-O-であり、M4が全てメトキシ基、エトキシ基又は塩素原子(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、M1、M2がいずれも水素原子であり、f11が0、f12が30~150(より好ましくは80~140)、f15が30~60、f13及びf14が0、f17が0~1(特に0)、g1が3、f16が1~10であることが好ましい。
【0138】
また、有機ケイ素化合物(A)は、下記式(a2-2)で表される化合物であることも好ましい。
【0139】
【化22】
【0140】
上記式(a2-2)中、
Rfa26、Rfa27、Rfa28、及びRfa29は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfa26が複数存在する場合は複数のRfa26がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa27が複数存在する場合は複数のRfa27がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa28が複数存在する場合は複数のRfa28がそれぞれ異なっていてもよく、Rfa29が複数存在する場合は複数のRfa29がそれぞれ異なっていてもよく、
25、R26、R27、及びR28は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、R25が複数存在する場合は複数のR25がそれぞれ異なっていてもよく、R26が複数存在する場合は複数のR26がそれぞれ異なっていてもよく、R27が複数存在する場合は複数のR27がそれぞれ異なっていてもよく、R28が複数存在する場合は複数のR28がそれぞれ異なっていてもよく、
29、及びR30は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、R29が複数存在する場合は複数のR29がそれぞれ異なっていてもよく、R30が複数存在する場合は複数のR30がそれぞれ異なっていてもよく、
7は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、M7が複数存在する場合は複数のM7がそれぞれ異なっていてもよく、
5、M9は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であり、M5が複数存在する場合は複数のM5がそれぞれ異なっていてもよく、M9が複数存在する場合は複数のM9がそれぞれ異なっていてもよく、
6、及びM10は、それぞれ独立して水素原子又はハロゲン原子であり、
8、及びM11は、それぞれ独立して、加水分解性基であり、M8が複数存在する場合は複数のM8がそれぞれ異なっていてもよく、M11が複数存在する場合は複数のM11がそれぞれ異なっていてもよく、
f21、f22、f23、f24、及びf25はそれぞれ独立して0~600の整数であり、f21、f22、f23、f24、及びf25の合計値は13以上であり、
f26、及びf28は、それぞれ独立して、1~20の整数であり、
f27、及びf29は、それぞれ独立して、0~2の整数であり、
g2、g3は、それぞれ独立して、1~3の整数であり、
10-、M6-、f21個の-{C(R25)(R26)}-、f22個の-{C(Rfa26)(Rfa27)}-、f23個の-{Si(R27)(R28)}-、f24個の-{Si(Rfa28)(Rfa29)}-、f25個の-M7-、f26個の-[CH2C(M5){(CH2f27-Si(M8g2(R293-g2}]、及びf28個の-[CH2C(M9){(CH2f29-Si(M11g3(R303-g3}]は、M10-、M6-が末端となり、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並び、-O-が-O-と連続しない限り、任意の順で並んで結合する。任意の順で並んで結合することについては、上記式(a2-1)にて説明したのと同様であり、各繰り返し単位が連続して上記式(a2-2)に記載の通りの順に並ぶ意味に限定されない。
【0141】
上記式(a2-2)において、Rfa26、Rfa27、Rfa28、及びRfa29が全てフッ素原子であり、M7が全て-O-であり、M8及びM11が全てメトキシ基、エトキシ基又は塩素原子(特にメトキシ基又はエトキシ基)であり、M5、M6、M9、及びM10がいずれも水素原子であり、f21が0、f22が30~150(より好ましくは80~140)、f25が30~60、f23及びf24が0、f27及びf29が0~1(特に好ましくは0)、g2及びg3が3、f26及びf28が1~10であることが好ましい。
【0142】
前記有機ケイ素化合物(A)として、より具体的には下記式(a3)の化合物が挙げられる。
【0143】
【化23】
【0144】
上記式(a3)中、R30は炭素数が2~6のパーフルオロアルキル基であり、R31及びR32はそれぞれ独立していずれも炭素数が2~6のパーフルオロアルキレン基であり、R33は炭素数が2~6の3価の飽和炭化水素基であり、R34は炭素数が1~3のアルキル基である。R30、R31、R32、R33の炭素数は、それぞれ独立に2~4が好ましく、2~3がより好ましい。h1は5~70であり、h2は1~5であり、h3は1~10である。h1は10~60が好ましく、20~50がより好ましく、h2は1~4が好ましく、1~3がより好ましく、h3は1~8が好ましく、1~6がより好ましい。
【0145】
前記有機ケイ素化合物(A)としては、下記式(a4)で表される化合物も挙げることができる。
【0146】
【化24】
【0147】
上記式(a4)中、R40は炭素数が2~5のパーフルオロアルキル基であり、R41は炭素数が2~5のパーフルオロアルキレン基であり、R42は炭素数2~5のアルキレン基の水素原子の一部がフッ素に置換されたフルオロアルキレン基であり、R43、R44はそれぞれ独立に炭素数が2~5のアルキレン基であり、R45はメチル基又はエチル基である。k1、k2、k3はそれぞれ独立に1~5の整数である。
【0148】
前記有機ケイ素化合物(A)の数平均分子量は、2,000以上が好ましく、より好ましくは4,000以上であり、更に好ましくは6,000以上、特に好ましくは7,000以上であり、また40,000以下が好ましく、より好ましくは20,000以下であり、更に好ましくは15,000以下である。
【0149】
前記有機ケイ素化合物(A)としては、例えば下記式(1)で示される化合物、又は該化合物の類似構造を有する化合物が挙げられ、ダイキン工業社株式会社製のオプツール(登録商標)UF503などが挙げられる。
【化25】
【0150】
上記式(1)で示される化合物としては、特開2014-15609号公報の合成例1、2に記載の方法により合成したものが挙げられ、rは43、sは1~6の整数であり、数平均分子量は約8000である。
【0151】
前記類似構造としては、上記式(1)の炭化水素基の炭素数又はフッ素原子で置換された炭化水素基の炭素数が異なる構造、パーフルオロポリエーテル構造とケイ素原子が連結基を介さずに結合している構造、パーフルオロポリエーテル構造とケイ素原子の間の連結基の任意の位置に他の炭化水素基(少なくとも一部の水素原子がフッ素原子で置換された炭化水素基も含む)が介在する構造、ケイ素原子と加水分解性基が連結基を介して結合する構造、r及びsの値が異なる構造、などが挙げられるが、これらの構造に限定されない。
【0152】
前記有機ケイ素化合物(A)としては1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0153】
3-2.有機ケイ素化合物(B)
下記式(b1)で表される有機ケイ素化合物(B)は、後述する通り、A2で表される加水分解性基を有しており、通常、加水分解で生じた有機ケイ素化合物(B)の-SiOH基が、加水分解で生じた有機ケイ素化合物(A)の-SiOH基及び/又は加水分解で生じた有機ケイ素化合物(B)の-SiOH基と脱水縮合するため、好ましい態様において、前記混合組成物(ca)の硬化層である撥水層(r)は有機ケイ素化合物(A)由来の縮合構造と共に、有機ケイ素化合物(B)由来の縮合構造を有する。前記加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アセトキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0154】
【化26】
【0155】
上記式(b1)中、
Rfb10は、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、
b11、Rb12、Rb13、Rb14は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数が1~4のアルキル基であり、Rb11が複数存在する場合は複数のRb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rb12が複数存在する場合は複数のRb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rb13が複数存在する場合は複数のRb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rb14が複数存在する場合は複数のRb14がそれぞれ異なっていてもよく、
Rfb11、Rfb12、Rfb13、Rfb14は、それぞれ独立して、1個以上の水素原子がフッ素原子に置換された炭素数1~20のアルキル基又はフッ素原子であり、Rfb11が複数存在する場合は複数のRfb11がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb12が複数存在する場合は複数のRfb12がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb13が複数存在する場合は複数のRfb13がそれぞれ異なっていてもよく、Rfb14が複数存在する場合は複数のRfb14がそれぞれ異なっていてもよく、
b15は、炭素数が1~20のアルキル基であり、Rb15が複数存在する場合は複数のRb15がそれぞれ異なっていてもよく、
1は、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-NR-、-NRC(=O)-、又は-C(=O)NR-であり、前記Rは水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4の含フッ素アルキル基であり、A1が複数存在する場合は複数のA1がそれぞれ異なっていてもよく、
2は、加水分解性基であり、A2が複数存在する場合は複数のA2がそれぞれ異なっていてもよく、
b11、b12、b13、b14、b15は、それぞれ独立して0~100の整数であり、
cは、1~3の整数であり、
Rfb10-、-Si(A2c(Rb153-c、b11個の-{C(Rb11)(Rb12)}-、b12個の-{C(Rfb11)(Rfb12)}-、b13個の-{Si(Rb13)(Rb14)}-、b14個の-{Si(Rfb13)(Rfb14)}-、b15個の-A1-は、Rfb10-、-Si(A2c(Rb153-cが末端となり、パーフルオロポリエーテル構造を形成せず、かつ-O-が-O-乃至-Fと連結しない限り、任意の順で並んで結合する。
【0156】
Rfb10は、それぞれ独立して、フッ素原子又は炭素数1~10(より好ましくは炭素数1~5)のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0157】
b11、Rb12、Rb13、及びRb14は、水素原子が好ましい。
【0158】
b15は、炭素数1~5のアルキル基が好ましい。
【0159】
1は、-O-、-C(=O)-O-、又は-O-C(=O)-が好ましい。
【0160】
2は、炭素数1~4のアルコキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、塩素原子である。
【0161】
b11は1~30が好ましく、1~25がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~5が特に好ましく、最も好ましくは1~2である。
【0162】
b12は、0~15が好ましく、より好ましくは0~10である。
【0163】
b13は、0~5が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0164】
b14は、0~4が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0165】
b15は、0~4が好ましく、より好ましくは0~2である。
【0166】
cは、2~3が好ましく、より好ましくは3である。
【0167】
b11、b12、b13、b14、及びb15の合計値は、3以上が好ましく、5以上が好ましく、また80以下が好ましく、より好ましくは50以下であり、更に好ましくは20以下である。
【0168】
特に、Rfb10がフッ素原子又は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であり、Rb11、Rb12がいずれも水素原子であり、A2がメトキシ基又はエトキシ基であると共に、b11が1~5、b12が0~5であり、b13、b14、及びb15が全て0であり、cが3であることが好ましい。
【0169】
なお、後記する実施例にて、化合物(B)として用いるFAS13Eを上記式(b1)で表すと、Rb11、Rb12がいずれも水素原子、b11が2、b13、b14、及びb15が全て0、cが3、A2がエトキシ基であり、Rfb10-{C(Rfb11)(Rfb12)}b12-が末端となり、C613-となるように定められる。
【0170】
上記式(b1)で表される化合物としては、具体的に、CF3-Si-(OCH33、Cj2j+1-Si-(OC253(jは1~12の整数)が挙げられ、この中で特にC49-Si-(OC253、C613-Si-(OC253、C715-Si-(OC253、C817-Si-(OC253が好ましい。また、CF3CH2O(CH2kSiCl3、CF3CH2O(CH2kSi(OCH33、CF3CH2O(CH2kSi(OC253、CF3(CH22Si(CH32(CH2kSiCl3、CF3(CH22Si(CH32(CH2kSi(OCH33、CF3(CH22Si(CH32(CH2kSi(OC253、CF3(CH26Si(CH32(CH2kSiCl3、CF3(CH26Si(CH32(CH2kSi(OCH33、CF3(CH26Si(CH32(CH2kSi(OC253、CF3COO(CH2kSiCl3、CF3COO(CH2kSi(OCH33、CF3COO(CH2kSi(OC253が挙げられる(kはいずれも5~20であり、好ましくは8~15である)。また、CF3(CF2m-(CH2nSiCl3、CF3(CF2m-(CH2nSi(OCH33、CF3(CF2m-(CH2nSi(OC253を挙げることもできる(mはいずれも1~10であり、好ましくは3~7であり、nはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)。CF3(CF2p-(CH2q-Si-(CH2CH=CH23を挙げることもできる(pはいずれも2~10であり、好ましくは2~8であり、qはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)。更に、CF3(CF2p-(CH2SiCH3Cl2、CF3(CF2p-(CH2qSiCH3(OCH32、CF3(CF2p-(CH2qSiCH3(OC252が挙げられる(pはいずれも2~10であり、好ましくは3~7であり、qはいずれも1~5であり、好ましくは2~4である)。
【0171】
上記式(b1)で表される化合物の中で、下記式(b2)で表される化合物が好ましい。
【0172】
【化27】
【0173】
上記式(b2)中、R60は炭素数3~8のパーフルオロアルキル基であり、R61は炭素数1~5のアルキレン基であり、R62は炭素数1~3のアルキル基である。
【0174】
前記有機ケイ素化合物(B)としては1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0175】
なお、前記混合組成物(ca)は、前記有機ケイ素化合物(A)が混合された組成物であり、好ましくは前記有機ケイ素化合物(A)と前記有機ケイ素化合物(B)が混合された組成物であり、前記有機ケイ素化合物(A)と必要に応じて前記有機ケイ素化合物(B)を混合することにより得られ、また前記有機ケイ素化合物(A)と前記有機ケイ素化合物(B)以外の成分が混合されている場合は、前記有機ケイ素化合物(A)と、必要に応じて前記有機ケイ素化合物(B)と、他の成分とを混合することにより得られる。前記混合組成物(ca)は、混合後、例えば保管中に反応が進んだものも含む。
【0176】
3-3.溶剤(D)
前記混合組成物(ca)は、通常、溶剤(D)が混合されている。前記溶剤(D)としてはフッ素系溶剤を用いることが好ましく、例えばフッ素化エーテル系溶剤、フッ素化アミン系溶剤、フッ素化炭化水素系溶剤等を用いることができ、特に沸点が100℃以上であることが好ましい。フッ素化エーテル系溶剤としては、フルオロアルキル(特に炭素数2~6のパーフルオロアルキル基)-アルキル(特にメチル基又はエチル基)エーテルなどのハイドロフルオロエーテルが好ましく、例えばエチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルが挙げられる。エチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルとしては、例えばNovec(登録商標)7200(3M社製、分子量約264)が挙げられる。フッ素化アミン系溶剤としては、アンモニアの水素原子の少なくとも1つがフルオロアルキル基で置換されたアミンが好ましく、アンモニアの全ての水素原子がフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)で置換された第三級アミンが好ましく、具体的にはトリス(ヘプタフルオロプロピル)アミンが挙げられ、フロリナート(登録商標)FC-3283(3M社製、分子量約521)がこれに該当する。フッ素化炭化水素系溶剤としては、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンなどのフッ素化脂肪族炭化水素系溶剤、1,3-ビス(トリフルオロメチルベンゼン)などのフッ素化芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンとしては、例えばソルブ55(ソルベックス社製)等が挙げられる。
【0177】
前記フッ素系溶剤としては、上記の他、アサヒクリン(登録商標)AK225(旭ガラス社製)などのハイドロクロロフルオロカーボン、アサヒクリン(登録商標)AC2000(旭ガラス社製)などのハイドロフルオロカーボンなどを用いることができる。
【0178】
前記溶剤(D)として、少なくともフッ素化アミン系溶剤を用いることが好ましい。また溶剤(D)としては、2種以上のフッ素系溶剤を用いることが好ましく、フッ素化アミン系溶剤とフッ素化炭化水素系溶剤(特にフッ素化脂肪族炭化水素系溶剤)を用いることが好ましい。
【0179】
前記混合組成物(ca)における前記有機ケイ素化合物(A)の量は、該組成物の全体を100質量%に対して、例えば0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、また1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下であり、更に好ましくは0.6質量%以下である。
【0180】
前記混合組成物(ca)における前記有機ケイ素化合物(B)の量は、該組成物の全体を100質量%に対して、例えば0.01質量%以上であり、好ましくは0.03質量%以上であり、また0.3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0181】
前記有機ケイ素化合物(A)に対する前記有機ケイ素化合物(B)の質量比は、0.05以上が好ましく、より好ましくは0.08以上であり、更に好ましくは0.10以上であり、また2.0以下が好ましく、より好ましくは1.0以下であり、更に好ましくは0.6以下である。
【0182】
上記の有機ケイ素化合物(A)及び(B)の量は、組成物の調製時に調整できる。前記有機ケイ素化合物(A)及び(B)の量は、組成物の分析結果からから算出してもよい。
【0183】
また撥水層(r)形成用の前記混合組成物(ca)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、シラノール縮合触媒、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、生物付着防止剤、消臭剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤等、各種の添加剤が混合されていてもよい。
【0184】
前記撥水層(r)の厚みは、例えば1~1000nm程度である。
【0185】
本発明の積層体は、前記中間層(c)が積層される前の前記基材(s)の算術平均高さSa(s)の絶対値に対する前記撥水層(r)が積層される前の前記中間層(c)の算術平均高さSa(c)の絶対値の比(Sa(c)の絶対値/Sa(s)の絶対値)が100%未満であることが好ましい。
【0186】
上記特許文献1に開示されるようなハードコート層は、通常表面粗さ(本発明では、表面粗さを算術平均高さで評価する)が十分に小さいため、ハードコート層の上に他の層が積層された場合に、前記他の層の表面粗さは通常、他の層が積層される前のハードコート層の表面粗さと同等又は大きくなる。従って、本発明の好ましい態様において、前記層(c)が積層される前の前記基材(s)の算術平均高さSa(s)の絶対値に対する前記撥水層(r)が積層される前の前記中間層(c)の算術平均高さSa(c)の絶対値の比(Sa(c)の絶対値/Sa(s)の絶対値)が100%未満であることは、本発明における基材(s)が、特許文献1などに開示されるハードコート層よりも表面粗さの粗い基材であることを意味すると同時に、ハードコート層よりも表面粗さの粗い基材の上に撥水層が積層された積層体の耐摩耗性を向上させる上で好ましい要件である。
【0187】
Sa(c)の絶対値/Sa(s)絶対値は、80%以下が好ましく、より好ましくは60%以下、更に好ましくは40%以下、特に好ましくは20%以下である。Sa(c)の絶対値/Sa(s)絶対値の下限は特に限定されず、例えば1%であってもよい。
【0188】
本発明における基材(s)が、上述の通り、ハードコート層の算術平均高さの絶対値と比べて、算術平均高さSa(s)の絶対値が大きい層であるという好ましい態様において、上述した通り、Sa(c)の絶対値/Sa(s)の絶対値が100%未満であるという条件を満たす限り、前記層(c)が積層される前の基材(s)の算術平均高さSa(s)の絶対値は限定されないが、例えば0.01μm以上である。またSa(s)の絶対値は、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下であり、更に好ましくは1μm以下であり、一層好ましくは0.8μm以下であり、特に0.5μm以下が好ましい。前記層(c)が積層される前の基材(s)の算術平均高さSa(s)そのものの値(絶対値ではない)は負の値であることが好ましく、すなわち凹部を有していることが好ましい。なお、算術平均高さSaは、ISO 25178に準拠して算出される。
【0189】
本発明の積層体を、後述の実施例に記載した方法に従って評価した際の水接触角(初期接触角)は、例えば105°以上であり、より好ましくは110°以上であり、また例えば125°以下である。また、後記する実施例で行った耐摩耗試験を行った後の、水接触角(耐摩耗試験後接触角)が、耐摩耗試験を行う前の接触角に対して85%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、通常110%以下である。
【0190】
また、本発明の積層体を、後述の実施例に記載した方法に従って評価した際の滑落角は、25°以下であり、好ましくは20°以下であり、より好ましくは15°以下であり、また例えば2°以上である。また、後記する実施例で行った耐摩耗試験を行った後の滑落角は、耐摩耗試験を行う前の滑落角に対して200%以下であることが好ましく、より好ましくは150%以下であり、また通常15%以上である。
【0191】
次に、本発明の積層体の製造方法について説明する。
【0192】
本発明の積層体を製造する第1の方法は、(i)前記反射防止層を有する基材(s)の反射防止層面に前記混合組成物(cc)を塗布する工程と、(ii)前記混合組成物(cc)の塗布面に、に前記混合組成物(ca)を塗布する工程と、(iii)前記混合組成物(cc)と前記混合組成物(ca)を硬化させ、前記混合組成物(cc)の塗布層から前記中間層(c)を形成し、前記混合組成物(ca)の塗布層から前記撥水層(r)を形成する工程とを含む。
【0193】
前記混合組成物(cc)を塗布する方法としては、公知の方法で行うことができるが、ディップコート法が好ましい。
【0194】
次に、撥水層(r)形成用の前記混合組成物(ca)を前記混合組成物(cc)の塗布面に塗布し、乾燥することで前記混合組成物(cc)の塗布層から前記中間層(c)を形成し、前記混合組成物(ca)の塗布層から前記撥水層(r)を形成できる。前記中間層(c)は、前記混合組成物(cc)の塗布中に形成してもよいし、塗布後に形成してもよく、前記中間層(c)と前記撥水層(r)の形成が同時に進行してもよい。前記撥水層(r)形成用の組成物を塗布する方法としては、例えばディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0195】
撥水層(r)形成用の組成物を塗布した後、常温、大気中で、例えば1時間以上(通常24時間以下)静置することで本発明の積層体を製造できる。本発明において常温とは、5~60℃であり、好ましくは15~40℃の温度範囲である。常温で静置する際の湿度条件は50~90%RHとしてもよい。
【0196】
また、本発明の積層体を製造する第2の方法は、前記反射防止層を有する基材(s)の反射防止層面に、前記有機ケイ素化合物(C)を蒸着して層(c)を形成し、前記中間層(c)上に、前記混合組成物(ca)を塗布して硬化させ、前記混合組成物(ca)の塗布層から前記撥水層(r)を形成する。前記有機ケイ素化合物(C)を蒸着して前記中間層(c)を形成するに際しては、前記有機ケイ素化合物(C)単体を基材(s)に蒸着してもよいし、前記有機ケイ素化合物(C)と溶剤の混合組成物から溶剤を除去して得られる固形物(すなわち前記有機ケイ素化合物(C))を基材(s)に蒸着してもよい。撥水層(r)形成用組成物を塗布した後は、前記第1の方法と同様にすればよい。
【0197】
前記組成物(cc)を塗布する前又は前記有機ケイ素化合物(C)を蒸着する前に、前記基材(s)の反射防止層に親水化処理を施しておくことが好ましい。前記親水化処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、イオンクリーニング処理等の親水化処理が挙げられ、プラズマ処理、イオンクリーニング処理がより好ましい。プラズマ処理等の親水化処理を行うことで、基材の表面にOH基やCOOH基などの官能基を形成させることができ、基材表面にこのような官能基が形成されている場合に特に前記中間層(c)と前記基材(s)との密着性がより向上できる。但し、前記積層体を眼鏡レンズに用いる場合には、基材(s)の反射防止層に親水化処理を行うことなく、前記混合組成物(cc)を塗布する又は前記有機ケイ素化合物(C)を蒸着することが好ましい。従って、前記親水化処理は、積層体を眼鏡レンズ以外の用途で用いる場合に行うことが好ましい。
【0198】
本発明の積層体は、好ましくはフレキシブル表示装置において前面板として用いることができ、該前面板はウインドウフィルムと称されることがある。該フレキシブル表示装置は、フレキシブル表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなることが好ましく、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル表示装置用積層体は、さらに偏光板(好ましくは円偏光板)、タッチセンサ等を含有していてもよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウインドウフィルム(すなわち、本発明の積層体)、偏光板、タッチセンサの順、又は、ウインドウフィルム、タッチセンサ、偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサよりも視認側に偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、フレキシブル表示装置は、前記ウインドウフィルム、偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一方の面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0199】
本願は、2019年4月26日に出願された日本国特許出願第2019-086595号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年4月26日に出願された日本国特許出願第2019-086595号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0200】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0201】
[実施例1-1]
中間層(c)形成用溶液の調製
有機ケイ素化合物(C)として下記式で示す、特開2012-197330号公報に記載のN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランとクロロプロピルトリメトキシシランの反応物(商品名;X-12-5263HP、信越化学工業株式会社製)を0.5質量%、溶剤(E)としてイソプロピルアルコールを99.5質量%混合した溶液を、室温で撹拌し、中間層(c)形成用溶液を得た。
【0202】
【化28】
【0203】
基材(s)の調製
ガラス基板(8cm×8cm、Corning社製「EAGLE XG」)にイオンクリーニングによる親水化処理を行い、真空蒸着法により、前記親水化処理面に、厚さ約0.4μmの無機酸化物(シリカ及びジルコニア)からなる多層膜反射防止コート(反射防止層(ar))を成膜し、基材(s)として反射防止層(ar)が形成されたガラス基材を得た。そして、前記基材(s)を、株式会社Aiden社製ディップコーター(型式DC4300)を使用して、液浸漬時間:10秒、引き上げ速度10mm/秒の条件で前記中間層(c)形成用溶液に浸漬して製膜した。
【0204】
次に、有機ケイ素化合物(A)として、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)UF503、有機ケイ素化合物(B)としてFAS13E(C613-C24-Si(OC253、東京化成工業株式会社製)、溶剤(D)としてFC-3283(C921N、フロリナート、3M社製)を混合した溶液を調製し、室温で所定の時間撹拌し、撥水層(r)形成用溶液を得た。ここで、オプツール(登録商標)UF503は、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基と加水分解性基とが、それぞれケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物である。撥水層(r)形成用溶液において、撥水層(r)形成用溶液全体を100質量%としたときの有機ケイ素化合物(A)の割合は、0.425質量%であり、有機ケイ素化合物(B)の割合は0.05質量%であった。撥水層(r)形成用溶液を、中間層(c)形成用溶液の塗布面(前記基材における反射防止コート上の中間層(c)形成用溶液塗布面)に株式会社Aiden社製ディップコーター(型式DC4300)を用いて、液浸漬時間:10秒、引き上げ速度10mm/秒の条件で製膜した。その後、50℃、80%RHで30分で湿熱硬化を行った。
【0205】
[実施例1-2~1-9]
有機ケイ素化合物(C)の濃度、種類、又は溶剤(E)の種類を表1-1及び表1-2に示すように変更した以外は、実施例1-1と同様にして積層体を得た。なお、表中、KBM-603とは、信越化学工業株式会社製、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランであり、FAS9EとはC49-C24-Si(OC253(東京化成工業株式会社製)であり、FAS3MとはCF3-C24-Si(OCH33(東京化成工業株式会社製)である。また、DSXは、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)DSXであり、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基と加水分解性基とが、それぞれケイ素原子に結合している有機ケイ素化合物である。
【0206】
[比較例1-1]
中間層(c)は形成せずに基材(s)に直接、撥水層(r)を形成したこと以外は実施例1-1と同様にして、基材(s)、撥水層(r)の順に積層された積層体を得た。なお、比較例1-1では、中間層(c)は形成していないので、本発明で特定する、撥水層(r)形成前の層(c)は厳密には存在しない。しかし、本発明の好ましい態様における、撥水層(r)が積層される前の層(c)の算術平均高さは、撥水層(r)が積層される面の算術平均高さを特定する点に意義を有しており、撥水層(r)が積層される面の算術平均高さSaという観点から考えると、比較例2-1において撥水層(r)が積層される面の算術平均高さSaはすなわち基材(s)の算術平均高さSaということもでき、層(c)形成前の基材(s)の算術平均高さSaと同じ数値(つまり、算術平均高さの絶対値の比が100%)である。
【0207】
実施例及び比較例で得られた積層体を下記の方法で評価した。
【0208】
(1-1)初期接触角及び初期滑落角
得られた積層体の撥水層(r)上に、1μLの水滴を滴下し、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM700)を用い、θ/2法にて、液量:1μLの水の接触角を測定した。
また、得られた積層体の撥水層(r)上に、20μLの水滴を滴下し、前記接触角測定装置(協和界面科学社製、DM700)を用い、滑落法(解析方法:接線法、傾斜方法:連続傾斜、滑落検出:滑落後、移動判定:前進角、滑落判定距離:5dot)にて、水の滑落角を測定した。
【0209】
(1-2)耐摩耗性試験後の接触角及び滑落角
得られた積層体の撥水層(r)に、16枚重ねした日本製紙クレシア社製キムワイプワイパーS-200を、15mm角の弾性体(厚さ1mmのアクリル板)に取り付け、200gの荷重をかけて、30mmストローク、70r/分(1分間に70往復)で20,000回耐摩耗を行い、摩耗箇所の略中央部にて、耐摩耗試験後の滑落角を前記(1-1)と同様にして測定した。
また耐摩耗試験後の撥水層(r)上に、1μLの水滴を滴下し、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM700)を用い、θ/2法にて、液量:1μLの水の接触角を測定した。
【0210】
(1-3)表面反射率
コニカミノルタ製測色計(CM-3700A、光源:D65)を使用し、積層体の撥水層(r)側表面で測定した入射角12°及び反射角12°における波長530nmの分光反射率をJIS Z8701の2度視野(C光源)により求めた。この値から、表面反射損失4.2%及び裏面反射損失4.2%を差し引き、反射率を算出した。なお、基材(s)の反射防止層表面で、上記と同様にして測定した表面反射率は、いずれも1.7%であった。
【0211】
(1-4)XPSによる撥水層(r)側表面のフッ素量及び窒素量の測定
日本電子社製 JFS-9010型を用い、励起X線:MgKα、X線出力は110Wとし、光電子脱出角度は45°、パスエネルギー50eVにて、撥水層(r)側表面で測定したフッ素量(F1s)、窒素量の測定を行った。
【0212】
(1-5)動摩擦係数
新東科学株式会社製トライボギア(表面性測定機 TYPE:38)の一定荷重測定を使用し、人工皮革を用い、測定条件は下記条件として、撥水層(r)側表面の動摩擦係数を測定した。また、前記(1-2)で記載したのと同じ条件で耐摩耗性試験を行った後の動摩擦係数も測定した。
荷重変換機:1.442mV/V
荷重:1000g
移動距離:20mm
移動速度:600mm/min
サンプリング個数:210
【0213】
(1-6)算術平均高さSaの測定
オリンパス社製レーザー顕微鏡LEXT OSL4000を用いて、中間層(c)形成前の基材(s)、撥水層(r)形成前の層(c)の表面を拡大倍率100倍で観察した。算術平均高さSaはISO25178に準拠して評価した。算術平均高さSaはN=3の平均値とした。中間層(c)形成前の基材(s)の算術平均高さをSa(s)とし、層(r)形成前の中間層(c)の算術平均高さSa(c)とした。
【0214】
実施例1-1~1-9及び比較例1-1の結果を表1-1、表1-2に示す。
【0215】
【表1-1】
【0216】
【表1-2】
【0217】
[実施例2-1]
中間層(c)形成用溶液の調製
有機ケイ素化合物(C)として上記実施例1-1で用いたのと同じN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランとクロロプロピルトリメトキシシランの反応物(商品名;X-12-5263HP、信越化学工業株式会社製)を0.25質量%、溶剤(E)としてヘキサンを99.75質量%混合した溶液を、室温で撹拌し、層(c)形成用溶液を得た。
【0218】
基材(s)の調製
また、ニコン・エシロール社製、NL3-SP(サイズ75mmφ、中心厚1.1mm)の表面に、浸漬法により塗液を塗布、加熱硬化させて、厚さ約1μmのウレタン系耐衝撃性向上コート(プライマー層)と、厚さ約2μmのシリコーン系耐擦傷性向上ハードコートとをこの順に積層した。次に、真空蒸着法により、前記シリコーン系耐擦傷性向上ハードコート(ハードコート層)の上に、厚さ約0.4μmの無機酸化物(シリカ及びジルコニア)からなる多層膜反射防止コート(反射防止層(ar))を成膜し、基材(s)としてプラスチック眼鏡レンズを得た。そして、前記基材(s)を、株式会社Aiden社製ディップコーター(型式DC4300)を使用して、液浸漬時間:10秒、引き上げ速度10mm/秒の条件で前記中間層(c)形成用溶液に浸漬して製膜した。
【0219】
次に、有機ケイ素化合物(A)として、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)UF503、有機ケイ素化合物(B)としてFAS13E(C613-C24-Si(OC253、東京化成工業株式会社製)、溶剤(D)としてFC-3283(C921N、フロリナート、3M社製)を混合した溶液を調製し、室温で所定の時間撹拌し、撥水層(r)形成用溶液を得た。撥水層(r)形成用溶液は、撥水層(r)形成用溶液全体を100質量%としたときの有機ケイ素化合物(A)の割合は、0.425質量%であり、有機ケイ素化合物(B)の割合は0.05質量%であった。撥水層(r)形成用溶液を、中間層(c)形成用溶液の塗布面(前記基材における反射防止コート上の中間層(c)形成用溶液塗布面)に株式会社Aiden社製ディップコーター(型式DC4300)を用いて、液浸漬時間:10秒、引き上げ速度10mm/秒の条件で製膜した。その後、50℃ 80%RH 30分で湿熱硬化を行った。
【0220】
[実施例2-2]
中間層(c)形成用溶液の溶剤(E)をヘキサンから酢酸ブチルに変更したこと以外は実施例2-1と同様にして積層体を得た。
【0221】
[比較例2-1]
層(c)は形成せずに、基材(s)上に直接、撥水層(r)を形成したこと以外は実施例2-1と同様にして、基材(s)、撥水層(r)の順に積層された積層体を得た。なお、比較例2-1では、層(c)は形成していないので、本発明で特定する、撥水層(r)形成前の中間層(c)は厳密には存在しない。しかし、本発明の好ましい態様における、撥水層(r)が積層される前の層(c)の算術平均高さは、撥水層(r)が積層される面の算術平均高さを特定する点に意義を有しており、撥水層(r)が積層される面の算術平均高さSaという観点から考えると、比較例2-1において撥水層(r)が積層される面の算術平均高さSaはすなわち基材(s)の算術平均高さSaということもでき、中間層(c)形成前の基材(s)の算術平均高さSaと同じ数値(つまり、算術平均高さの絶対値の比が100%)である。
【0222】
実施例2-1、2-2、及び比較例2-1を下記の方法で評価した。
【0223】
(2-1)初期接触角及び初期滑落角
得られた積層体の撥水層(r)上に、1μLの水滴を滴下し、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM-500/DM-SA)を用い、液滴法(解析方法:楕円フィッティング法)にて、水の接触角を測定した。
得られた積層体の撥水層(r)上に、20μLの水滴を滴下し、前記接触角測定装置(協和界面科学社製、DM―500/DM-SA)を用い、滑落法(解析方法:真円フィッティング法、傾斜方法:連続傾斜、滑落検出:滑落前、移動判定:前進及び後退、滑落判定距離:10dot)にて、水の滑落角を測定した。
【0224】
(2-2)耐摩耗性試験後の接触角及び滑落角
得られた積層体の撥水層(r)に、16枚重ねした日本製紙クレシア社製キムワイプワイパーS-200を、15mm角の弾性体(Maped社(フランス)製プラスチック消しゴム型番1156SMTR00)に取り付け、200gの荷重を掛け、30mmストローク、90r/分(1分間に90往復)で20000回擦り耐摩耗試験を行い、耐摩耗試験後の滑落角を前記(2-1)と同様にして測定した。
また耐摩耗試験後の撥水層(r)上に1μLの水滴を滴下し、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM-500/DM-SA)を用い、液滴法(解析方法:楕円フィッティング法)にて、水の接触角を測定した。
【0225】
(2-3)表面反射率
オリンパス社製レンズ反射率測定機(型番:USPM-RU、光源:ハロゲンランプ)にて10倍対物レンズ使用下で、積層体の撥水層(r)表面の反射率を測定し、D65光源、10°視野換算した、波長530nmにおける分光反射率を求めた。なお、上記と同様にして測定した基材(s)の反射防止層表面での表面反射率は、いずれも1.07%であった。
【0226】
(2-4)XPSによる撥水層(r)側表面のフッ素量及び窒素量の測定
日本電子社製 JFS-9010型を用い、励起X線:MgKα、X線出力は110Wとし、光電子脱出角度は45°、パスエネルギー50eVにて、撥水層(r)側表面で測定したフッ素量(F1s)、窒素量の測定を行った。
【0227】
(2-5)動摩擦係数
新東科学株式会社製トライボギア(表面性測定機 TYPE:38)の一定荷重測定を使用し、人工皮革を用い、測定条件は下記条件として、撥水層(r)側表面の動摩擦係数を測定した。また、前記(2-2)で記載したのと同じ条件で耐摩耗性試験を行った後の動摩擦係数も測定した。
荷重変換機:1.442mV/V
荷重:1000g
移動距離:20mm
移動速度:600mm/min
サンプリング個数:210
【0228】
(2-6)算術平均高さSaの測定
算術平均高さSaは、上記実施例1-1~1-6及び比較例1-1を評価したのと同じ方法で測定した。
【0229】
実施例2-1、2-2、比較例2-1の結果を表2に示す。
【0230】
【表2】
【0231】
また、表1によれば、実施例1-1~1-6では、耐摩耗性試験後の接触角及び滑落角が良好であり、耐摩耗性に優れており、本発明の好ましい要件であるSa(c)の絶対値/Sa(s)の絶対値が100%未満である。一方、中間層(c)を設けていない比較例1-1では、耐摩耗性試験後の接触角及び滑落角が大幅に劣化しており、耐摩耗性が劣る結果となった。
【0232】
表2によれば、実施例2-1~2-2では、耐摩耗性試験後の接触角及び滑落角が良好であり、耐摩耗性に優れており、本発明の好ましい要件であるSa(c)の絶対値/Sa(s)の絶対値が100%未満である。一方、中間層(c)を設けていない比較例2-1では、耐摩耗性試験後の接触角及び滑落角が大幅に劣化しており、耐摩耗性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明の積層体は、タッチパネルディスプレイ等の表示装置、光学素子、半導体素子、建築材料、ナノインプリント技術、太陽電池、自動車や建物の窓ガラス、調理器具などの金属製品、食器などのセラミック製品、プラスチック製の自動車部品等に好適に成膜することができ、産業上有用である。また、台所、風呂場、洗面台、鏡、トイレ周りの各部材の物品、ゴーグル、眼鏡レンズなどにも好ましく用いられる。