(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】窒化物半導体積層物、半導体装置、および窒化物半導体積層物の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240319BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240319BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240319BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/20
(21)【出願番号】P 2022062379
(22)【出願日】2022-04-04
(62)【分割の表示】P 2020212495の分割
【原出願日】2017-05-26
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】磯野 僚多
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-017285(JP,A)
【文献】特開2010-171416(JP,A)
【文献】特開2016-100471(JP,A)
【文献】特開2005-277047(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/338
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
基板と、
前記基板上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層と、
前記電子走行層上に設けられ、前記第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層と、
を有し、
前記電子走行層の厚さは、500nm以上2500nm以下であり、
前記電子供給層の厚さは、前記電子供給層の表面の二乗平均粗さが0.4nm以下である範囲内で、前記基板の主面全体に亘って均一であって、且つ、5nm以上50nm以下であり、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度は、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、
前記電子供給層のうちの前記表面側の領域中における炭素の濃度に対する、前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度の比率は、0.2以上0.7未満である
窒化物半導体積層物。
【請求項2】
前記電子供給層中における炭素の濃度は、1×10
18at・cm
-3以下であ
る
請求項1に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項3】
前記電子走行層の上面から厚さ方向に前記電子供給層の前記表面に向けた所定の位置における炭素の濃度は、前記基板の主面全体に亘って均一である
請求項1
または請求項2に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項4】
前記電子走行層は、GaNからなり、
前記電子供給層は、AlGaNからなる
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項5】
前記基板は、半絶縁性を有するSiC基板である
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項6】
前記基板と前記電子走行層との間に設けられ、AlNからなる核生成層をさらに有する
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項7】
前記電子供給層のAl組成比は、0.05以上0.5以下である
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項8】
前記電子供給層のうちの前記表面側の領域中におけるAl組成比は、前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中におけるAl組成比よりも低い
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項9】
前記電子供給層中における炭素の濃度は、該電子供給層の前記表面側から前記電子走行層側に向かって徐々に低くなっている
請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の窒化物半導体積層物。
【請求項10】
少なくとも、
基板と、
前記基板上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層と、
前記電子走行層上に設けられ、前記第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層と、
を有し、
前記電子走行層の厚さは、500nm以上2500nm以下であり、
前記電子供給層の厚さは、前記電子供給層の表面の二乗平均粗さが0.4nm以下である範囲内で、前記基板の主面全体に亘って均一であって、且つ、5nm以上50nm以下であり、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度は、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、
前記電子供給層のうちの前記表面側の領域中における炭素の濃度に対する、前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度の比率は、0.2以上0.7未満である
半導体装置。
【請求項11】
前記電子供給層中における炭素の濃度は、1×10
18at・cm
-3以下であ
る
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記電子走行層の上面から厚さ方向に前記電子供給層の前記表面に向けた所定の位置における炭素の濃度は、前記基板の主面全体に亘って均一であ
る
請求項10または請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
少なくとも、
基板上に、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上に、前記第1のIII族窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層を形成する工程と、
を有し、
前記電子走行層を形成する工程では、
前記電子走行層の厚さを、500nm以上2500nm以下とし、
前記電子供給層を形成する工程では、
前記電子供給層の厚さを、前記電子供給層の表面の二乗平均粗さが0.4nm以下である範囲内で、前記基板の主面全体に亘って均一とし、且つ、5nm以上50nm以下とし、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度が、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、且つ、前記電子供給層のうちの前記表面側の領域中における炭素の濃度に対する、前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度の比率が、0.2以上0.7未満となるように、前記電子供給層を形成する
窒化物半導体積層物の製造方法。
【請求項14】
前記電子供給層を形成する工程では
、
前記電子供給層中における炭素の濃度を、1×10
18at・cm
-3以下と
する
請求項13に記載の窒化物半導体積層物の製造方法。
【請求項15】
前記電子供給層を形成する工程では
、
前記電子走行層の上面から厚さ方向に前記電子供給層の前記表面に向けた所定の位置における炭素の濃度を、前記基板の主面全体に亘って均一と
する
請求項13または請求項14に記載の窒化物半導体積層物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体積層物、半導体装置、窒化物半導体積層物の製造方法および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウムなどのIII族窒化物半導体は、シリコンよりも高い飽和自由電子速度や高い絶縁破壊耐圧を有している。このため、III族窒化物半導体は、高周波・高耐圧用途の半導体装置への応用が期待されている。III族窒化物半導体系の半導体装置としては、例えば、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HEMTの信頼性を向上させるためには、例えば、高電圧印加時にドレイン電流が減少する現象である電流コラプスを抑制することや、ゲートリーク電流を低減させることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、電流コラプスを抑制することと、ゲートリーク電流を低減させることとを両立することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
基板と、
前記基板上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層と、
前記電子走行層上に設けられ、前記第1の窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層と、
を有し、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度は、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、
前記電子供給層の表面の面積に対する、前記電子供給層の表面に形成された深さ1nm以上の凹部の面積を積算した値の比率は、1.2%以下である
窒化物半導体積層物、およびそれに関連する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電流コラプスを抑制することと、ゲートリーク電流を低減させることとを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る窒化物半導体積層物を示す断面図であり、(b)は、電子供給層の厚さ方向の位置に対する、電子供給層中の炭素の濃度を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図3】(a)は、本発明の一実施形態の変形例に係る窒化物半導体積層物を示す断面図であり、(b)は、電子供給層の厚さ方向の位置に対する、電子供給層中の炭素の濃度を示す図である。
【
図4】(a)は、ドレインソース間電圧に対するドレイン電流を示す図であり、(b)は、炭素濃度比(Ne/Ns)に対する電流コラプスの指標値を示す図である。
【
図5】(a)は、深さ1nm以上の凹部が少ないサンプルのAFM像であり、(b)は、深さ1nm以上の凹部が多いサンプルのAFM像である。
【
図6】(a)は、ゲート電圧に対するゲートリーク電流を示す図であり、(b)は、凹部面積比率に対するゲートリーク電流を示す図である。
【
図7】電流コラプスの指標値に対するゲートリーク電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<発明者の得た知見>
HEMTは、例えば、窒化ガリウム(GaN)からなる電子走行層と、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)からなる電子供給層と、を有する。HEMTでは、電子供給層の分極作用によって、電子走行層内のヘテロ接合界面付近に高濃度の2次元電子ガスが誘起される。二次元電子ガスを利用することで、HEMTにおいて高出力特性および高速応答性を得ることが可能となる。
【0010】
ここで、HEMTの信頼性を低下させる現象としては、例えば、以下の2つの現象が起こりうる。
【0011】
HEMTにおいて、電子供給層の表面が荒れていると、電子供給層の表面荒れ部分に電界が集中してしまう可能性がある。電子供給層での電界が集中すると、電子供給層を介してゲート電極に向けてリーク電流(ゲートリーク電流ともいう)が流れてしまう。ゲートリーク電流が増大すると、安定した素子特性が得られず、素子が絶縁破壊に至る可能性がある。
【0012】
また、HEMTにおいて、ドレインソース間に高電圧が印加された際に、ドレイン電流が低減し、オン抵抗が大きくなる現象が生じることがある。このような現象は、電流コラプスと呼ばれている。高電圧が印加された際には、高電界により、電子供給層内の電子トラップに電子が捕獲され、電子走行層内の2次元電子ガスの電子濃度が低下してしまう。
その結果、電流コラプスが生じてしまう可能性がある。
【0013】
発明者等は、上記したゲートリーク電流および電流コラプスが、電子供給層の成長条件に依存してトレードオフの関係を有していることが分かった。
【0014】
ゲートリーク電流を低減させるため、電子供給層の表面が平滑となる成長条件を適用すると、電子供給層内に炭素(C)が多く取り込まれてしまう。電子供給層内に取り込まれたCの少なくとも一部は、電子供給層内で深い準位を有する電子トラップとなる。このため、電流コラプスが生じ易くなってしまう可能性がある。
【0015】
一方で、電流コラプスを抑制するため、電子トラップとなるCの取り込みを抑制する成長条件を適用すると、電子供給層の表面の二乗平均粗さ(RMS)を0.4nm以下とすることができても、電子供給層の表面に深さ1nm以上の局所的な凹部(クラック)が形成されてしまう可能性がある。このため、電子供給層の表面における局所的な凹部に電界が集中し、ゲートリーク電流が増大してしまう可能性がある。
【0016】
本発明は、本発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0017】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(1)窒化物半導体積層物
まず、
図1を用い、本実施形態に係る窒化物半導体積層物について説明する。
図1(a)は、本実施形態に係る窒化物半導体積層物を示す断面図であり、(b)は、電子供給層の厚さ方向の位置に対する、電子供給層中の炭素の濃度を示す図である。
【0019】
図1(a)に示すように、本実施形態の窒化物半導体積層物10は、例えば、HEMTを製造する際の中間体として構成され、基板100と、電子走行層(バッファ層、チャネル層)140と、電子供給層(バリア層)160と、を有している。
【0020】
(基板)
基板100は、電子走行層140および電子供給層160をエピタキシャル成長させる下地基板として構成され、本実施形態では、例えば、炭化シリコン(SiC)基板として構成されている。具体的には、基板100として、例えば、ポリタイプ4H又はポリタイプ6Hの半絶縁性SiC基板が用いられる。4H、6Hの数字はc軸方向の繰返し周期を示し、Hは六方晶を示している。なお、基板100の表面は、例えば、(0001)面(c面)とする。
【0021】
また、基板100は、例えば、半絶縁性を有している。なお、ここでいう「半絶縁性」とは、例えば、比抵抗が105Ω・cm以上である状態をいう。これにより、電子走行層140から基板100への自由電子の拡散を抑制し、リーク電流を抑制することができる。
【0022】
なお、基板100の上には、例えば、核生成層(不図示)が設けられている。例えば、核生成層のうちの基板100側に位置する領域が主に基板100と電子走行層140との格子定数差を緩衝する緩衝層として機能するとともに、核生成層のうちの電子走行層140側に位置する領域が主に電子走行層140を結晶成長させる結晶核を形成するよう構成されている。核生成層は、III族窒化物半導体からなり、本実施形態では、例えば、窒化アルミニウム(AlN)を主成分として構成されている。
【0023】
(電子走行層)
電子走行層140は、基板100上に設けられ、例えば、電子走行層140のうちの核生成層の側に位置する領域が主に核生成層と電子供給層160との格子定数差を緩衝する緩衝層として機能するように構成され、電子走行層140のうちの電子供給層160側に位置する領域が後述する半導体装置20を駆動させたときに電子を走行させるよう構成されている。電子走行層140は、第1のIII族窒化物半導体からなり、本実施形態では、例えば、GaNを主成分として構成されている。また、電子走行層140の表面(上面)は、III族原子極性面(+c面)となっている。
【0024】
電子走行層140の厚さは、例えば、500nm以上2500nm以下とする。電子走行層140の厚さが500nm未満であると、電子走行層140の品質が低下し、その電子移動度が低下する可能性がある。これに対し、電子走行層140の厚さを500nm以上とすることで、電子走行層140の品質を向上させ、その電子移動度を所定値以上とすることができる。一方で、電子走行層140の厚さが2500nm超であると、電子走行層140の品質があまり向上せず、成長コストのみが増加してしまう。これに対し、電子走行層140の厚さを2500nm以下とすることにより、電子走行層140の良好な品質を確保しつつ、成長コストの増加を抑制することができる。
【0025】
(電子供給層)
電子供給層160は、電子走行層140上に設けられ、電子走行層140内に2次元電子ガスを生成させるとともに、電子走行層140内に2次元電子ガスを空間的に閉じ込めるよう構成されている。具体的には、電子供給層160は、電子走行層140を構成する第1のIII族窒化物半導体よりも広いバンドギャップと、第1のIII族窒化物半導体の格子定数よりも小さい格子定数とを有する第2のIII族窒化物半導体からなり、本実施形態では、例えば、AlxGa1-xN(ただし、0<x<1)を主成分として構成されている。また、電子供給層160の表面(上面)は、III族原子極性面(+c面)となっている。このような構成により、電子供給層160には、自発分極とピエゾ分極とが生じる。その分極作用により、電子走行層140内のヘテロ接合界面付近に高濃度の2次元電子ガスが誘起されることとなる。
【0026】
ここで、電子供給層160内には、電子供給層160を形成する際のIII族有機原料ガスを起因として、Cが取り込まれる可能性がある。電子供給層160内に取り込まれたCの少なくとも一部は、上述のように、電子供給層160内で深い準位を有する電子トラップとなる。このため、電流コラプスが生じてしまう可能性がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、例えば、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるC濃度Neは、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsよりも低くなっている。これにより、電子供給層160のうちの電子走行層140の2次元電子ガス付近における電子トラップを減少させることができる。その結果、電流コラプスを抑制することができる。
【0028】
本実施形態では、例えば、
図1(a)に示すように、電子供給層160は、例えば、C濃度の異なる2層構造を有している。すなわち、電子供給層160は、例えば、第1層162と、第2層164と、を有している。第1層162は、電子走行層140上に設けられ、第2層164は、第1層162上に設けられている。
【0029】
図1(b)に示すように、例えば、第1層162中におけるC濃度Neは、第2層164中におけるC濃度Nsよりも低い。これにより、2次元電子ガスに近い第1層162中の電子トラップを減少させることができる。なお、本実施形態では、第1層162および第2層164のそれぞれ中におけるC濃度は一定である。
【0030】
また、例えば、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsに対する、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるC濃度Neの比率Ne/Nsは、0.2以上0.7未満、好ましくは0.2以上0.5以下である。つまり、本実施形態では、例えば、第2層164中におけるC濃度Nsに対する、第1層162中におけるC濃度Neの比率Ne/Nsは、0.2以上0.7未満、好ましくは0.2以上0.5以下である。Ne/Nsが0.2未満であると、例えば、電子走行層140の成長温度と、電子供給層160の第1層162の成長温度との差を大きくする必要がある。この場合、これらの層間で温度を変更する際に、電子走行層140の表面が荒れてしまい、その影響を受けて、第2層164の表面(すなわち電子供給層160の最表面)を平滑にすることが困難となる。その結果、ゲートリーク電流が増大する可能性がある。これに対し、Ne/Nsを0.2以上とすることにより、例えば、電子走行層140の成長温度と、電子供給層160の第1層162の成長温度との差を小さくすることができる。これにより、電子走行層140の表面荒れを抑制し、その上に成長される第2層164の表面を平滑にすることができる。その結果、ゲートリーク電流を低減することができる。一方で、Ne/Nsが0.7以上であると、第1層162中の電子トラップが充分に減少しない可能性がある。このため、電流コラプスを充分に抑制することができず、例えば、後述の電流コラプスの指標値が1.2超となる可能性がある。これに対し、Ne/Nsを0.7未満とすることにより、第1層162中の電子トラップを充分に減少させることができる。
これにより、電流コラプスを充分に抑制することができ、例えば、電流コラプスの指標値を1.2以下とすることができる。さらに、Ne/Nsを0.5以下とすることにより、電流コラプスを安定的に抑制することができ、例えば、電流コラプスの指標値を1.1以下とすることができる。
【0031】
また、電子供給層160中におけるC濃度(Ne,Ns)は、例えば、1×1018at・cm-3以下である。すなわち、本実施形態では、第2層164中のC濃度Nsが第1層162中のC濃度Neよりも相対的に高くなっているが、第2層164中のC濃度Nsは高くても1×1018at・cm-3以下となっている。電子供給層160中におけるC濃度が1×1018at・cm-3超であると、たとえC濃度が高い部分が電子供給層160のうちの表面側の領域であったとしても、電子供給層160のうちの表面側の領域で電子トラップが増大してしまう可能性がある。このため、電子供給層160のうちの表面側の領域中における電子トラップに電子が捕獲されることで、電子走行層140中の2次元電子ガスが空乏化しうる。その結果、電流コラプスが生じてしまう可能性がある。
これに対し、電子供給層160中におけるC濃度を1×1018at・cm-3以下とすることにより、電子供給層160のうちの表面側の領域でC濃度が高くなっていたとしても、当該領域での電子トラップの増大を抑制することができる。これにより、電子走行層140中の2次元電子ガスの空乏化を抑制することができる。その結果、電流コラプスを抑制することができる。
【0032】
なお、電子供給層160中におけるC濃度(Ne,Ns)は、例えば、5×1015at・cm-3以上である。電子供給層160中におけるC濃度が5×1015at・cm-3未満であると、例えば、電子供給層160の成長温度を過剰に高くする必要がある。
この場合、電子供給層160の表面が荒れてしまい、ゲートリーク電流が増大する可能性がある。これに対し、電子供給層160中におけるC濃度を5×1015at・cm-3以上とすることにより、電子供給層160の成長温度をAlGaNの結晶成長に適した温度範囲内とすることができる。これにより、電子供給層160の表面荒れを抑制し、電子供給層160の表面を平滑にすることができる。その結果、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0033】
また、例えば、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるAl組成比xは、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるAl組成比xよりも低くなっている。本実施形態では、例えば、第2層164中におけるAl組成比xは、第1層162中におけるAl組成比xよりも低い。これにより、第2層164を構成する結晶の島状成長を抑制することができ、第2層164の表面荒れを抑制することができる。その結果、ゲートリーク電流を低減することができる。一方で、第1層162中におけるAl組成比xを第2層164中におけるAl組成比xよりも相対的に高くすることで、第1層162から電子走行層140に対して加えられる圧縮応力を大きくすることができ、第1層162のバンドギャップと電子走行層140のバンドギャップとの差を大きくすることができる。その結果、電子走行層140中の2次元電子ガスを増加させることができる。
【0034】
なお、電子供給層160中のAl組成比x(第1層162および第2層164のそれぞれのAl組成比x)は、例えば、0.05以上0.5以下、好ましくは0.1以上0.35以下である。これにより、電子供給層160の島状成長を抑止しつつ、電子走行層140中に所定量の2次元電子ガスを誘起することができる。
【0035】
ここで、本実施形態では、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域(すなわち第1層162)中におけるC濃度を低くすることで、これと反対に、電子供給層160のうちの表面側の領域(すなわち第2層164)中におけるC濃度を相対的に高くすることができる。これにより、電子供給層160の表面側の領域を成長する際において、電子供給層160の表面を平滑にすることが可能な成長条件を適用することができる。その結果、電子供給層160の表面における局所的な凹部の形成を抑制することができる。
【0036】
具体的には、例えば、電子供給層160の表面(第2層164の表面)の面積に対する、電子供給層160の表面に形成された深さ1nm以上の凹部の面積を積算した値の比率(以下、凹部面積比率)は、例えば、1.2%以下、好ましくは0.8%以下とすることができる。電子供給層160の表面における凹部面積比率が1.2%超であると、電子供給層160の表面における局所的な凹部に電界が集中してしまう可能性がある。このため、ゲートリーク電流が増大してしまう可能性がある。電子供給層160の表面における凹部面積比率を1.2%以下とすることにより、すなわち、電子供給層160の表面における局所的な凹部を減少させることにより、電子供給層160の表面における電界集中を抑制することができる。これにより、ゲートリーク電流を低減することができる。なお、後述のように、電子供給層160の表面における凹部面積比率が0.8%超1.2%以下の範囲内において、ゲートリーク電流が急激に低減し、電子供給層160の表面における凹部面積比率が0.8%以下の範囲内において、ゲートリーク電流が小さい値でほぼ一定となることが分かっている。したがって、電子供給層160の表面における凹部面積比率を0.8%以下とすることにより、凹部面積比率に誤差が生じていてもゲートリーク電流のばらつきを小さくすることができ、ゲートリーク電流を安定的に低減することができる。
【0037】
なお、電子供給層160の表面における凹部面積比率の下限値は、電界集中を抑制する観点から、0%に近いほど好ましい。
【0038】
また、電子供給層160の表面におけるRMSは、例えば、0.4nm以下であることが好ましい。このように電子供給層160の表面における巨視的な荒れを抑制することによっても、電子供給層160における電界集中を抑制することができる。
【0039】
電子供給層160の厚さは、例えば、5nm以上50nm以下、好ましくは10nm以上30nm以下とする。電子供給層160の厚さが5nm未満であると、ゲートリーク電流が大きくなる可能性がある。これに対し、電子供給層160の厚さを5nm以上とすることにより、ゲートリーク電流を低減することができる。さらに、電子供給層160の厚さを10nm以上とすることにより、ゲートリーク電流を安定的に低減することができる。一方で、電子供給層160の厚さが50nm超であると、閾値電圧が大きくなり、スイッチング特性が悪くなる可能性がある。これに対し、電子供給層160の厚さを50nm以下とすることにより、閾値電圧を所定値以下とし、スイッチング特性を向上させることができる。電子供給層160の厚さを30nm以下とすることにより、スイッチング特性を安定的に向上させることができる。
【0040】
本実施形態では、例えば、電子供給層160のうち、第1層162の厚さd1が第2層164の厚さd2よりも大きい(厚い)。C濃度Neが低い第1162の厚さを相対的に大きくすることにより、電子供給層160のうち電子トラップが低減された領域を広くすることができる。これにより、電流コラプスを安定的に抑制することができる。一方で、第2層164の厚さd2を相対的に小さくしても、第2層164の表面を充分に平滑にすることができる。このように、第1層162および第2層164のそれぞれの機能に応じて、それぞれの厚さを異ならせることができる。
【0041】
具体的には、第1層162の厚さd1は、例えば、5nm以上40nm以下であり、第2層164の厚さd2は、例えば、2nm以上10nm以下である。
【0042】
(2)半導体装置
次に、
図2を用い、本実施形態の半導体装置について説明する。
図2は、本実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の半導体装置20は、例えば、上記した窒化物半導体積層物10を用いて製造されるものであり、HEMTとして構成されている。具体的には、半導体装置20は、例えば、基板100と、電子走行層140と、電子供給層160と、ゲート電極210と、ソース電極220と、ドレイン電極230と、保護膜300と、を有している。
【0044】
(電極)
ゲート電極210は、電子供給層160上に設けられている。ゲート電極210は、例えば、ニッケル(Ni)と金(Au)との複層構造(Ni/Au)からなっている。なお、本命最初においてX/Yの複層構造と記載した場合、X、Yの順で積層したことを示している。
【0045】
ソース電極220は、電子供給層160上に設けられ、ゲート電極210から所定距離離れた位置に配置されている。ソース電極220は、例えば、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)との複層構造(Ti/Al)からなっている。
【0046】
ドレイン電極230は、電子供給層160上に設けられ、ゲート電極210を挟んでソース電極220と反対側にゲート電極210から所定距離離れた位置に配置されている。
ドレイン電極230は、ソース電極220と同様に、例えば、TiとAlとの複層構造からなっている。なお、ソース電極220およびドレイン電極230では、Ti/Alの複層構造上にNi/Auの複層構造が積層されていてもよい。
【0047】
(保護膜)
保護膜300は、電子供給層160等の表面を保護し、電子供給層160等の劣化を抑制するよう構成されている。具体的には、保護膜300は、少なくとも、ゲート電極210およびソース電極220の間と、ゲート電極210およびドレイン電極230の間と、ソース電極220またはドレイン電極230の外側とにおける電子供給層160の表面を覆うように設けられている。保護膜300は、例えば、窒化シリコン(SiN)からなっている。
【0048】
なお、電子走行層140内に、平面視でソース電極220、ゲート電極210およびドレイン電極230を含むデバイス領域の周囲を囲むように、窒素(N)イオンがイオン注入されていてもよい。これにより、デバイス領域の外側の二次元電子ガスを不活性化して、隣接するデバイス領域間の絶縁性を確保することができる。
【0049】
また、電子走行層140および電子供給層160内に、平面視でソース電極220およびドレイン電極230のそれぞれに重なる領域に、シリコン(Si)イオンがイオン注入されていてもよい。これにより、ソース電極220およびドレイン電極230のそれぞれのコンタクト抵抗を低減することができる。なお、この場合、Siイオンは、例えば、電子供給層160の表面から深さ50nm程度にピークが位置するようなプロファイルを有していることが好ましい。
【0050】
(特性)
本実施形態では、電子供給層160中のC濃度や電子供給層160の表面の凹部面積比率が所定の要件を満たすことで、半導体装置20は、以下の特性を満たす。
【0051】
ここで、ゲート電極およびソース電極の間に+6Vの電圧を印加した状態で、ドレイン電極230およびソース電極220の間に+10Vの電圧を印加したときに、ドレイン電極230およびソース電極220の間に流れる電流から求められる半導体装置20のオン抵抗について、ゲート電極210およびソース電極220の間の電圧を0Vとし、ドレイン電極230およびソース電極220の間に+300Vの電圧を所定時間印加するストレスを半導体装置20に与える前のオン抵抗に対する、当該ストレスを半導体装置20に与えた後のオン抵抗の比率を、電流コラプスの指標値(電流コラプス率)Xとする。なお、電流がドレイン電極230からソース電極220に向かって流れる場合の電圧を+(プラス)とする。
【0052】
また、ゲート電極210およびソース電極220の間に-10Vの電圧を印加したときに、ゲート電極210およびソース電極220の間に流れるゲートリーク電流をY(A/mm)とする。なお、電流がゲート電極210からソース電極220に向かって流れる場合の電圧を+(プラス)とする。
【0053】
このとき、本実施形態の半導体装置20は、例えば、以下の式(1)を満たす。
Y≦2×10
4exp(-17.8X) ・・・(1)
(ただし、X≧1、Y>0)
式(1)は、後述の
図7において矢印の範囲に相当する。
【0054】
このように、本実施形態の半導体装置20では、電子供給層160中のC濃度や電子供給層160の表面の凹部面積比率が所定の要件を満たすことで、電流コラプスを抑制することと、ゲートリーク電流を低減することとを両立することができる。これにより、電流コラプスの指標値Xとゲートリーク電流Yとについて、上記式(1)を満たすことができる。上記式(1)の範囲は、電流コラプスとゲートリーク電流とがトレードオフの関係を有していた従来の半導体装置では実現できなかった範囲である。したがって、本実施形態では、従来の半導体装置よりも半導体装置20の信頼性を向上させることができる。
【0055】
(3)窒化物半導体積層物の製造方法および半導体装置の製造方法
次に、
図1および
図2を用い、本実施形態の窒化物半導体積層物の製造方法および半導体装置の製造方法について説明する。以下、ステップをSと略している。
【0056】
本実施形態では、例えば、有機金属気相成長(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)装置を用い、以下の手順により、窒化物半導体積層物10を形成する。
【0057】
(S110:基板用意工程)
まず、基板100として、例えば、ポリタイプ4Hの半絶縁性SiC基板を用意する。
【0058】
(S120:電子走行層形成工程)
まず、基板100として、例えば、ポリタイプ4Hの半絶縁性SiC基板を用意する。
そして、MOVPE装置の処理室内に、基板100を搬入する。そして、処理室内に水素(H2)ガス(または、H2ガスおよび窒素(N2)ガスの混合ガス)を供給し、基板100の温度を核生成層の所定の成長温度(例えば1150℃以上1250℃以下)まで上昇させる。基板100の温度が所定の成長温度となったら、例えば、III族原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスと、V族原料ガスとしてアンモニア(NH3)ガスとを、基板100に対して供給する。これにより、基板100上にAlNからなる核生成層を成長させる。所定の厚さの核生成層の成長が完了したら、TMAガスの供給を停止する。なお、このとき、NH3ガスの供給を継続する。
【0059】
次に、基板100の温度を電子走行層140の所定の成長温度(例えば1000℃以上1100℃以下)に調整する。そして、基板100の温度が所定の成長温度となったら、NH3ガスの供給を継続した状態で、例えば、III族原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMG)ガスを供給する。これにより、核生成層上に単結晶のGaNからなる電子走行層140をエピタキシャル成長させる。所定の厚さの電子走行層140の成長が完了したら、TMGガスの供給を停止する。なお、このとき、NH3ガスの供給を継続する。
【0060】
(S130:電子供給層形成工程)
次に、例えば、基板100の温度を電子供給層160の所定の成長温度とする。そして、基板100の温度が所定の成長温度となったら、NH3ガスの供給を継続した状態で、例えば、III族原料ガスとしてTMGガスおよびTMAガスを供給する。これにより、電子走行層140上に単結晶のAlGaNからなる電子供給層160をエピタキシャル成長させる。
【0061】
このとき、例えば、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるC濃度が、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度よりも低く、且つ、電子供給層160の表面における凹部面積比率が1.2%以下となるように、電子供給層160を形成する。本実施形態では、電子供給層160が上記要件を満たすよう、例えば、以下のように第1層162および第2層164をこの順で成長させる。
【0062】
例えば、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域を形成する際の基板100の温度を、電子供給層160のうちの表面側の領域を形成する際の基板100の温度よりも高くする。つまり、本実施形態では、例えば、第1層162の成長温度を第2層164の成長温度よりも高くする。これにより、第1層162の成長時に、III族有機原料ガス中のIII族元素とCとの結合が切れることなく第1層162中に残存してしまうことを抑制することができる。その結果、第1層162中におけるC濃度Neを、第2層164中におけるC濃度Nsよりも低くすることができる。一方で、第2層164の成長温度を第1層162の成長温度よりも低くすることで、第2層164を緩やかに成長させることができ、第2層164の表面における局所的な凹部の形成を抑制することができる。
これにより、第2層164の表面における凹部面積比率を1.2%以下とすることができる。
【0063】
なお、第2層164の成長温度を第1層162の成長温度よりも低くすることで、第2層164中におけるAl組成比xを、第1層162中におけるAl組成比xよりも低くすることができる。これにより、第2層164を構成する結晶の島状成長を抑制することができ、第2層164の表面荒れを抑制することができる。
【0064】
このとき、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域を形成する際の基板100の温度と、電子供給層160のうちの表面側の領域を形成する際の基板100の温度との差(温度差)を、例えば、30℃以上100℃以下とする。つまり、本実施形態では、例えば、第1層162の成長温度と第2層164の成長温度との差を、30℃以上100℃以下とする。温度差が30℃未満であると、第1層162中におけるC濃度Neを低くすることができないか、或いは、第2層164の表面が荒れてしまう可能性がある。これに対し、温度差を30℃以上とすることにより、第1層162中におけるC濃度Neを、第2層164中におけるC濃度Nsよりも低くしつつ、第2層164の表面における凹部面積比率を1.2%以下とすることができる。一方で、温度差が100℃超であると、例えば、第1層162の成長温度を過剰に高くする必要がある。この場合、第1層162の表面が荒れてしまい、その影響を受けて、第2層164の表面を平滑にすることが困難となる。これに対し、温度差を100℃以下とすることにより、例えば、第1層162の成長温度をAlGaNの結晶成長に適した温度範囲内とすることができる。これにより、第1層162の表面荒れを抑制し、第2層164の表面を平滑にすることができる。本実施形態では、第2層164の表面における凹部面積比率を1.2%以下とすることができる。
【0065】
具体的には、第1層162の成長温度を、例えば、1100℃以上1250℃以下とし、第2層164の成長温度を、例えば、1000℃以上1150℃とする。そして、それぞれの成長温度の範囲内で、上記温度差を満たすようにする。これにより、第1層162中におけるC濃度Neを、第2層164中におけるC濃度Nsよりも低くしつつ、第2層164の表面における凹部面積比率を1.2%以下とすることができる。
【0066】
なお、このとき、以下のように、成長温度以外の条件を制御することで、電子供給層160が上記要件を満たすようにしてもよい。
【0067】
例えば、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域を形成する際のV/III比(III族原料ガスの流量に対するV族原料ガスの流量の比率)を、電子供給層160のうちの表面側の領域を形成する際のV/III比よりも高くする。つまり、本実施形態では、例えば、第1層162の成長時のV/III比を、第2層164の成長時のV/III比よりも高くする。これにより、第1層162中におけるC濃度Neを、第2層164中におけるC濃度Nsよりも低くすることができる。なお、この場合、V/III比とともに、成長温度を変化させてもよい。
【0068】
所定の厚さの電子供給層160の成長が完了したら、TMGガスおよびTMAガスの供給を停止し、基板100の温度を電子供給層160の成長温度から低下させる。なお、このとき、通常は、H2ガスを停止し、N2ガスを供給するとともに、NH3ガスの供給を継続する(電子走行層140および電子供給層160の成長中にH2ガスとともにN2ガスが供給されていた場合は、H2ガスを停止し、N2ガスおよびNH3ガスの供給を継続する)。そして、窒化物半導体積層物10の温度が500℃以下となったら、NH3ガスの供給を停止し、MOVPE装置の処理室内の雰囲気をN2ガスのみへ置換して大気圧に復帰させる。
【0069】
このとき、例えば、所定厚さの電子供給層160を形成した後に、基板100の温度を電子供給層160の成長温度から低下させるときの冷却温度を1.0℃/s以上とする。
これにより、電子供給層160の表面からのGaの蒸発を抑制することができる。これにより、電子供給層160の表面側の領域中におけるAl組成比xを所定値(例えば電子供給層160の電子走行層140側の領域中におけるAl組成比xよりも低い値)に維持することができる。また、冷却温度を1.0℃/s以上とすることで、原理は不明ではあるが、電子供給層160の表面における局所的な凹部の発生を抑制することができる。
【0070】
また、このとき、例えば、所定厚さの電子供給層160を形成した後に、基板100の温度を電子供給層160の成長温度から低下させるときに、電子供給層160の表面に対してH2ガス又はヘリウム(He)ガスを供給してもよい。つまり、本実施形態では、降温時にN2ガスおよびNH3ガスに加えてH2ガス又はHeガスを供給してもよい。H2ガスの比熱(約14000J/(kg・K))や、Heガスの比熱(約5000J/(kg・K))は、N2ガスの比熱(約1000J/(kg・K))やNH3ガスの比熱(約2000J/(kg・K))よりも大きい。したがって、比熱の大きいH2ガス又はHeガスを電子供給層160の表面に対して供給することで、電子供給層160の表面の冷却効率を向上させることができる。これにより、電子供給層160の表面からのGaの蒸発を抑制することができ、電子供給層160の表面側の領域中におけるAl組成比xを所定値に維持することができる。また、電子供給層160の表面における局所的な凹部の発生を抑制することができる。
【0071】
その後、窒化物半導体積層物10が搬出可能な温度にまで低下したら、窒化物半導体積層物10を処理室内から搬出する。
【0072】
以上により、
図1に示す本実施形態の窒化物半導体積層物10が製造される。
【0073】
(S140:電極形成工程)
次に、電子供給層160上にレジスト膜を形成し、平面視でソース電極220およびドレイン電極230が形成されることとなる領域が開口となるようにレジスト膜をパターニングする。そして、例えば、電子ビーム蒸着法により、電子供給層160およびレジスト膜を覆うようにTi/Alの複層構造(またはTi/Al/Ni/Auの複層構造)を形成する。そして、所定の溶媒を用い、リフトオフによりレジスト膜を除去することで、上記所定領域にソース電極220およびドレイン電極230を形成する。そして、窒化物半導体積層物10を、N2雰囲気中において所定の温度で所定時間アニール処理する(例えば、650℃3分間)。これにより、ソース電極220およびドレイン電極230のそれぞれを電子供給層160に対してオーミック接合させることができる。
【0074】
次に、電子供給層160、ソース電極220およびドレイン電極230を覆うようにレジスト膜を形成し、平面視でゲート電極210が形成されることとなる領域が開口となるようにレジスト膜をパターニングする。そして、例えば電子ビーム蒸着法により、電子供給層160およびレジスト膜を覆うようにNi/Auの複層構造を形成する。そして、所定の溶媒を用い、リフトオフによりレジスト膜を除去することで、上記所定領域にゲート電極210を形成する。そして、窒化物半導体積層物10を、N2雰囲気中において所定の温度で所定時間アニール処理する(例えば、450℃10分間)。
【0075】
(S150:保護膜形成工程)
次に、例えば、P-CVD法により、電子供給層160および各電極を覆うように、SiNからなる保護膜300を形成する。そして、各電極の上面の一部のみが露出するように、保護膜300をパターニングする。これにより、ゲート電極210およびソース電極220の間と、ゲート電極210およびドレイン電極230の間と、ソース電極220またはドレイン電極230の外側とにおける電子供給層160の表面を覆うように保護膜300が形成される。
【0076】
以上により、
図2に示す本実施形態の半導体装置20が製造される。
【0077】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0078】
(a)電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるC濃度Neを、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsよりも低くすることで、電子供給層160のうちの電子走行層140の二次元電子ガス付近における電子トラップを減少させることができる。これにより、電流コラプスを抑制することができる。
【0079】
一方で、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsを相対的に高くすることができる。これにより、電子供給層160の表面側の領域を成長する際において、電子供給層160の表面を平滑にすることが可能な成長条件(例えば低い成長温度等)を適用することができる。このような成長条件で電子供給層160の表面側の領域を成長させることで、電子供給層160の表面における局所的な凹部の形成を抑制することができる。具体的には、電子供給層160の表面における凹部面積比率を1.2%以下とすることができる。その結果、電子供給層160の表面における電界集中を抑制し、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0080】
このようにして、本実施形態によれば、電流コラプスを抑制することと、ゲートリーク電流を低減することとを両立することが可能となる。
【0081】
(b)電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsに対する、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるC濃度Neの比率Ne/Nsは、0.7未満である。これにより、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中の電子トラップを充分に減少させることができる。これにより、電流コラプスを充分に抑制することができ、例えば、電流コラプスの指標値Xを1.2以下とすることができる。
【0082】
(c)電子供給層160中におけるC濃度は、1×1018at・cm-3以下である。
言い換えれば、電子供給層160のうちC濃度が相対的に高い表面側の領域であっても、該領域中におけるC濃度は、高くても1×1018at・cm-3以下である。これにより、電子供給層160全体としての電子トラップを減少させることができ、特に電子供給層160の表面側の領域における電子トラップの集中を抑制することができる。その結果、電流コラプスを安定的に抑制することができる。
【0083】
(d)本実施形態では、電子供給層160は第1層162および第2層164を有し、第1層162中におけるC濃度Neは、第2層164中におけるC濃度Nsよりも低くなっている。これにより、電子走行層140の2次元電子ガスに近い第1層162中の電子トラップを減少させることができる。その結果、電流コラプスを安定的に抑制することができる。また、第2層164を成長する際において、第2層164の表面を平滑にすることが可能な成長条件(例えば低い成長温度等)を適用することができる。その結果、第2層164の表面における電界集中を抑制し、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0084】
また、後述の変形例のようにC濃度が傾斜した分布(グラデーション分布)を有する電子供給層160を形成する場合と比較して、第1層162および第2層164のそれぞれの成長条件を容易に制御することができる。
【0085】
(e)電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるAl組成比xは、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるAl組成比xよりも低い。これにより、電子供給層160のうちの表面側の領域における結晶の島状成長を抑制し、電子供給層160の表面荒れを抑制することができる。
【0086】
一方で、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるAl組成比xを相対的に高くすることで、電子供給層160から電子走行層140に対して加えられる圧縮応力を大きくするとともに、電子供給層160のバンドギャップを広くすることができる。その結果、電子走行層140中の2次元電子ガスを増加させることができる。
【0087】
また、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるC濃度Neを、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsよりも低くすることと、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるAl組成比xを、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるAl組成比xよりも低くすることとを組み合わせることで、電子供給層160の表面に局所的な凹部がより発生し難くなる。これにより、電子供給層160のうちの表面側の領域を成長させる際に、電子供給層160の表面を平滑にしつつ、例えば、成長温度を高くすることができる。このように成長温度を高くすることで、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Ns(すなわち、電子供給層160のC濃度の最大値)を低くすることができる。その結果、電流コラプスを確実に抑制することが可能となる。
【0088】
(f)電子供給層形成工程S130では、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域を形成する際の基板100の温度を、電子供給層160のうちの表面側の領域を形成する際の基板100の温度よりも高くする。これにより、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域の成長時に、III族有機原料ガス中のIII族元素とCとの結合が切れることなく電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中に残存してしまうことを抑制することができる。その結果、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域中におけるC濃度Neを、電子供給層160のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsよりも低くすることができる。
【0089】
一方で、電子供給層160のうちの表面側の領域の成長温度を電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域の成長温度よりも低くすることで、電子供給層160のうちの表面側の領域を緩やかに成長させることができ、電子供給層160の表面における局所的な凹部の形成を抑制することができる。
【0090】
(5)本実施形態の変形例
上述の実施形態では、電子供給層160が2層構造を有している場合について説明したが、電子供給層160は、以下に示す変形例のように変更することができる。上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
(窒化物半導体積層物)
まず、
図3を用い、本変形例の窒化物半導体積層物について説明する。
図3(a)は、本実施形態の変形例に係る窒化物半導体積層物を示す断面図であり、(b)は、電子供給層の厚さ方向の位置に対する、電子供給層中の炭素の濃度を示す図である。
【0092】
図3(a)および(b)に示すように、本変形例の窒化物半導体積層物10は、例えば、単層により構成され、厚さ方向に対してC濃度が傾斜した分布を有している。なお、ここでいう「厚さ方向」とは、電子供給層160の表面から基板100の表面に向かう方向(或いは基板100の表面から電子供給層160の表面に向かう方向)のことをいう。
【0093】
図3(b)に示すように、本変形例では、例えば、電子供給層160中におけるC濃度は、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に低くなっている。これにより、電子走行層140の2次元電子ガスに近づくにつれて電子供給層160内の電子トラップを徐々に減少させることができる。その結果、電流コラプスを安定的に抑制することができる。一方で、電子供給層160中におけるC濃度を、該電子供給層160の電子走行層140側から表面側に向かって徐々に高くすることで、電子供給層160の表面側の領域を成長する際において、電子供給層160の表面に近づくにつれて、該表面を平滑にすることが可能な成長条件を徐々に適用していくことができる。電子供給層160の表面における電界集中を抑制し、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0094】
具体的には、例えば、
図3(b)のAの場合のように、電子供給層160の厚さ方向の位置(距離)に対する電子供給層160中におけるC濃度の傾き(以下、単に「C濃度の傾き」という)は、一定とすることができる。Aの場合では、電子供給層160中における電子トラップの濃度の傾きをC濃度の傾きに倣って一定にすることができる。すなわち、電子供給層160の厚さ方向に電子トラップの濃度の変化が大きい部分の形成を抑制することができる。これにより、電流コラプスを安定的に抑制することができる。また、Aの場合では、電子供給層160の成長条件(例えば成長温度)を線形に変化させることで、上記所定のC濃度の分布を容易に得ることができる。
【0095】
また、例えば、
図3(b)のBの場合のように、C濃度の傾きの絶対値は、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に小さくすることができる。Bの場合では、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域において、C濃度が低い領域を厚さ方向に広くすることができる。これにより、電子供給層160のうちの電子走行層140側の領域の電子トラップを減少させ易くことができる。したがって、Bの場合は、電流コラプスの抑制を優先する場合に特に有効である。
【0096】
また、例えば、
図3(b)のCの場合のように、C濃度の傾きの絶対値は、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に大きくすることができる。Cの場合では、電子供給層160のうちの表面側において、C濃度が高い領域を厚さ方向に広くすることができる。電子供給層160の表面を平滑にすることが可能な成長条件を適用する時間を長くすることができる。つまり、電子供給層160の表面の平滑性を制御し易くすることができる。したがって、Cの場合は、ゲートリーク電流の抑制を優先する場合に特に有効である。
【0097】
また、例えば、
図3(b)のDの場合のように、C濃度の傾きの絶対値は、該電子供給層160の表面側から中間位置まで徐々に大きくなり、中間位置から電子走行層140側に向かって徐々に小さくすることができる。上述の実施形態のように電子供給層160を2層構造とした場合であっても、C濃度が意図せずにDの場合のような非線形の分布を有する可能性がある。Dの場合であっても、上述の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、C濃度が大きく変化する中間位置を調整することで、Bの場合またはCの場合のいずれかと同様な効果を得ることができる。
【0098】
なお、本変形例においても、電子供給層160のうちC濃度が相対的に高い表面側の領域であっても、該領域中におけるC濃度は、高くても1×1018at・cm-3以下である。
【0099】
また、本変形例では、電子供給層160中におけるAl組成比xが、該電子供給層160の電子走行層140側から表面側に向かって徐々に低くなっている。これにより、電子供給層160の表面側に近づくにつれて結晶の島状成長を徐々に抑制し、電子供給層160の表面荒れを抑制することができる。一方で、電子供給層160中におけるAl組成比xを、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に高くすることで、電子供給層160から電子走行層140に近づくにつれて、圧縮応力を徐々に大きくするとともに、バンドギャップを徐々に広くすることができる。その結果、電子走行層140中の2次元電子ガスを増加させることができる。また、本変形例によれば、電子供給層160中におけるAl組成比xを連続的に変化させることで、Al組成比xの異なる界面の形成を抑制することができる。これにより、界面準位の形成を抑制することができる。この結果によっても、電流コラプスを安定的に抑制することができる。
【0100】
(製造方法)
電子供給層形成工程S130では、電子供給層160中におけるC濃度は、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に低くなるように、電子供給層160の成長条件を制御する。例えば、電子供給層160を成長させていくにしたがって、電子供給層160の成長温度を徐々に低くしていく。または、例えば、電子供給層160を成長させていくにしたがって、V/III比を徐々に小さくしていく。
【0101】
具体的には、例えば、
図3(b)のAの場合では、電子供給層160を成長させていくにしたがって、電子供給層160の成長温度を線形に低くしていく。または、電子供給層160を成長させていくにしたがって、V/III比を線形に小さくしていく。これにより、C濃度の傾きを一定とすることができる。
【0102】
例えば、
図3(b)のBの場合では、電子供給層160を成長させていくにしたがって、電子供給層160の成長温度の低下量が小さい状態から、電子供給層160の成長温度の低下量を徐々に大きくしていく。または、電子供給層160を成長させていくにしたがって、V/III比の減少量が小さい状態から、V/III比の減少量を徐々に大きくしていく。このような成長条件により、C濃度の傾きの絶対値を、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に小さくすることができる。
【0103】
例えば、
図3(b)のCの場合では、電子供給層160を成長させていくにしたがって、電子供給層160の成長温度の低下量が大きい状態から、電子供給層160の成長温度の低下量を徐々に小さくしていく。または、電子供給層160を成長させていくにしたがって、V/III比の減少量が大きい状態から、V/III比の減少量を徐々に小さくしていく。このような成長条件により、C濃度の傾きの絶対値を、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に大きくすることができる。
【0104】
例えば、
図3(b)のDの場合では、電子供給層160を成長させていくにしたがって、電子供給層160の成長温度の低下量が小さい状態から、電子供給層160の成長温度の低下量を徐々に大きくしていき、電子供給層160の成長温度が所定温度となったら、電子供給層160の成長温度の低下量を徐々に小さくしていく。または、電子供給層160を成長させていくにしたがって、V/III比の減少量が小さい状態から、V/III比の減少量を徐々に大きくしていき、V/III比が所定値となったら、V/III比の減少量を徐々に小さくしていく。このような成長条件により、C濃度の傾きの絶対値を、該電子供給層160の表面側から中間位置まで徐々に大きくなり、中間位置から電子走行層140側に向かって徐々に小さくすることができる。
【0105】
(効果)
本変形例によれば、電子供給層160中におけるC濃度は、該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に低くなっている。これにより、上述のように、電流コラプスを安定的に抑制するとともに、ゲートリーク電流を低減することができる。
【0106】
また、本変形例によれば、電子供給層160中におけるC濃度を連続的に変化させることで、C濃度の異なる界面の形成を抑制することができる。これにより、C濃度の異なる界面の荒れを抑制することができる。その結果、電子供給層160の表面を平滑にすることができ、ゲートリーク電流を低減することができる。また、界面の形成を抑制することで、界面準位の形成を抑制することができる。その結果、電流コラプスを安定的に抑制することができる。
【0107】
また、本変形例によれば、成長条件の不連続な切替を行うことなく、成長条件を連続的に変化させることができる。これにより、成長条件の切替に伴うタイムラグの発生(例えば所定温度差が生じるまでのタイムラグ等)を抑制することができる。その結果、窒化物半導体積層物10および半導体装置20の生産性を向上させることができる。
【0108】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0109】
上述の実施形態では、基板100がSiC基板として構成されている場合について説明したが、基板100は、GaN自立基板、サファイア基板、またはダイヤモンド基板として構成されていてもよい。
【0110】
上述の実施形態では、核生成層がAlNからなっている場合について説明したが、核生成層は、AlN以外のIII族窒化物半導体からなっていてもよく、例えば、GaN、AlGaN、InN、InGaN、AlInGaN等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体からなっていてもよい。
【0111】
上述の実施形態では、電子走行層140を構成する第1のIII族窒化物半導体がGaNである場合について説明したが、電子走行層140を構成する第1のIII族窒化物半導体は、GaN以外のIII族窒化物半導体であってもよい。具体的には、第1のIII族窒化物半導体は、例えば、AlGaN、InN、InGaN、AlInGaN等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体であってもよい。
【0112】
上述の実施形態では、電子供給層160を構成する第2のIII族窒化物半導体がAlGaNである場合について説明したが、電子供給層160を構成する第1のIII族窒化物半導体は、電子走行層140を構成する第1のIII族窒化物半導体よりも広いバンドギャップと、第1のIII族窒化物半導体の格子定数よりも小さい格子定数とを有していれば、AlGaN以外のIII族窒化物半導体であってもよい。具体的には、第2のIII族窒化物半導体は、例えば、AlInGaN等のIII族窒化物半導体、すなわち、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0<x+y≦1)の組成式で表されるIII族窒化物半導体であってもよい。
【0113】
上述の実施形態では、第2層中におけるAl組成比xは、第1層162中におけるAl組成比xよりも低い場合について説明したが、第1層162中におけるC濃度が第2層164中におけるC濃度よりも低くければ、第2層164中におけるAl組成比xが、第1層162中におけるAl組成比x以上であってもよい。
【0114】
上述の変形例では、電子供給層160中におけるAl組成比xが、該電子供給層160の電子走行層140側から表面側に向かって徐々に低くなっている場合について説明したが、電子供給層160中におけるC濃度が該電子供給層160の表面側から電子走行層140側に向かって徐々に低くなっていれば、電子供給層160中におけるAl組成比xが厚さ方向に一定であるか、或いは、該電子供給層160の電子走行層140側から表面側に向かって徐々に高くなっていてもよい。
【0115】
上述の実施形態では、電子供給層160が2層構造を有している場合について説明したが、電子供給層160中のC濃度や電子供給層160の表面の凹部面積比率が所定の要件を満たせば、電子供給層160が2層超の多層構造を有していてもよい。
【0116】
上述の実施形態では、MOVPE装置を用いて窒化物半導体積層物10を製造する場合について説明したが、ハイドライド気相成長装置(HVPE装置)を用いて窒化物半導体積層物10を製造してもよい。
【0117】
上述の実施形態では、電子供給層160中のC濃度や電子供給層160の表面の凹部面積比率が所定の要件を満たすように、電子供給層160の成長温度やV/III比を制御する場合について説明したが、上記以外の成長条件を制御してもよい。例えば、III族原料ガスの流量(成長速度)を制御してもよい。
【実施例】
【0118】
以下、本発明の効果を裏付ける各種実験結果について説明する。
【0119】
(1)電流コラプス
(1-1)半導体装置の作製
以下の構成を有する半導体装置のサンプルを作製した。
【0120】
(構成)
基板:ポリタイプ4Hの半絶縁性SiC基板
核生成層:厚さ20nmのAlN
電子走行層:厚さ1200nmのGaN
電子供給層:
第1層:厚さ17nmのAl0.24Ga0.76N
第2層:厚さ3nmのAl0.18Ga0.82N
第1層中におけるC濃度Ne:5×1016at・cm-3~5×1017at・cm-3
第2層中におけるC濃度Ns(共通):5×1017at・cm-3
第2層中におけるC濃度Nsに対する第1層中におけるC濃度Neの比率Ne/Ns:0.2~1(電子供給層成長条件)
第1層の成長温度:1000~1200℃
第2層の成長温度:1000℃
【0121】
(1-2)評価
上記半導体装置のサンプルのそれぞれにおいて、ゲート電極およびソース電極の間の電圧を0Vとし、ドレイン電極およびソース電極の間に+300Vの電圧を1秒印加するストレスを印加した。その後、ゲート電極およびソース電極の間に+6Vの電圧を印加した状態で、ドレイン電極およびソース電極の間に印加する電圧を変化させた。このとき、ドレイン電極およびソース電極の間に+10Vの電圧を印加したときに、ドレイン電極およびソース電極の間に流れる電流から求められる半導体装置のオン抵抗を測定した。また、このとき、ストレスを半導体装置に与える前のオン抵抗に対する、ストレスを半導体装置に与えた後のオン抵抗の比率を、電流コラプスの指標値として求めた。
【0122】
(1-3)結果
図4(a)は、ドレインソース間電圧に対するドレイン電流を示す図であり、(b)は、炭素濃度比(Ne/Ns)に対する電流コラプスの指標値を示す図である。
図4(a)に示すように、Ne/Ns=1のサンプルでは、ドレインソース間電圧が高い領域においてドレイン電流が減少し、電流コラプスが生じていた。Ne/Ns=1のサンプルでは、電子供給層中のC濃度が一様に高く、電子供給層中に多くの電子トラップが形成されていたため、電流コラプスが生じていたと考えられる。
【0123】
これに対し、Ne/Ns=0.5のサンプルでは、ドレインソース間電圧が高い領域においてドレイン電流の減少を抑制し、電流コラプスを抑制することができることを確認した。つまり、電子供給層のうちの電子走行層側の領域中におけるC濃度Neを、電子供給層のうちの表面側の領域中におけるC濃度Nsよりも低くくすることで、電流コラプスを抑制することができることを確認した。
【0124】
また、
図4(b)に示すように、Ne/Nsが小さくなるにつれて、電流コラプスの指標値は、単調に減少することを確認した。Ne/Ns<0.7の範囲では、電流コラプスの指標値を1.2以下とすることができることを確認した。また、特にNe/Ns≦0.2の範囲では、Ne/Nsに対する電流コラプスの指標値の傾きが小さくなり、電流コラプスの指標値を安定的に1.1以下とすることができることを確認した。
【0125】
(2)凹部面積比率
(2-1)半導体装置の作製
以下の構成を有する半導体装置のサンプルを作製した。
【0126】
(構成)
基板:ポリタイプ4Hの半絶縁性SiC基板
核生成層:厚さ20nmのAlN
電子走行層:厚さ1200nmのGaN
電子供給層:
第1層:厚さ17nmのAl0.24Ga0.76N
第2層:厚さ3nmのAl0.18Ga0.82N
第1層中におけるC濃度Ne(共通):3×1017at・cm-3
第2層中におけるC濃度Ns:1×1016at・cm-3~3×1018at・cm-3(電子供給層成長条件)
第1層の成長温度:1100℃
第2層の成長温度:1000~1200℃
【0127】
(2-2)評価
上記半導体装置のサンプルのそれぞれにおいて、原子間力顕微鏡(AFM)により第2層の表面状態を測定した。その結果に基づいて、電子供給層の表面における凹部面積比率を算出した。
【0128】
また、上記半導体層のサンプルにおいて、ドレイン電極およびソース電極の間に+10Vの電圧を印加した状態で、ゲート電極およびソース電極の間にに-10~+4Vの電圧を印加したときのゲートリーク電流を測定した。
【0129】
(2-3)結果
図5(b)は、深さ1nm以上の凹部が多いサンプルのAFM像である。なお、
図5(b)は、第2層の成長温度を第1層の成長温度よりも高く1200℃としたサンプルのAFM像を示している。
図5(b)に示すサンプルでは、RMSが0.255nmであったが、電子供給層の表面に深さ1nm以上の凹部が多く形成されており、凹部面積比率は2.0%であった。また、当該サンプルでは、最大高低差が3.71nmであった。
【0130】
図6(a)は、ゲート電圧に対するゲートリーク電流を示す図である。
図6(a)に示すように、凹部面積比率が2.0%である上記サンプルでは、ゲートリーク電流が大きかった。当該サンプルでは、電子供給層の表面に深さ1nm以上の局所的な凹部が形成されていたため、電子供給層の表面における局所的な凹部に電界が集中し、ゲートリーク電流が増大してしまったと考えられる。
【0131】
これに対し、
図5(a)は、深さ1nm以上の凹部が少ないサンプルのAFM像である。なお、
図5(a)は、第2層の成長温度を第1層の成長温度よりも低く1050℃としたサンプルのAFM像を示している。
図5(a)に示すサンプルでは、電子供給層の表面に深さ1nm以上の凹部があまり見受けられず、凹部面積比率は0.8%であった。なお、当該サンプルでは、RMSが0.289nmであり、最大高低差が1.19nmであった。当該サンプルでは、第2層の成長時に表面を平滑にすることが可能な成長条件を適用することにより、第2層の表面における局所的な凹部の形成を抑制することができることを確認した。
【0132】
また、
図6(a)に示すように、凹部面積比率が0.8%である上記サンプルでは、ゲートリーク電流が小さいことを確認した。当該サンプルでは、電子供給層の表面における局所的な凹部の形成を抑制することで、電子供給層の表面における電界集中を抑制し、ゲートリーク電流を低減することができることを確認した。
【0133】
また、
図6(b)は、凹部面積比率に対するゲートリーク電流を示す図である。
図6(b)に示すように、電子供給層の表面における凹部面積比率が小さくなるにつれて、ゲートリーク電流は単調に減少することを確認した。また、凹部面積比率が0.8%超1.2%以下の範囲内において、ゲートリーク電流が急激に低減していた。つまり、凹部面積比率を少なくとも1.2%以下とすることで、ゲートリーク電流を低減することができることを確認した。また、凹部面積比率が0.8以下の範囲内において、ゲートリーク電流が小さい値(およそ1×10
-7A/mm)で一定となっていた。つまり、凹部面積比率を0.8%以下とすることで、凹部面積比率に誤差が生じていてもゲートリーク電流のばらつきを小さくすることができ、ゲートリーク電流を安定的に低減することができることを確認した。
【0134】
(3)まとめ
図7は、電流コラプスの指標値に対するゲートリーク電流を示す図である。
図7では、上記(1)および(2)で作製したサンプルのうち、「第1層中におけるC濃度Neが第2層中におけるC濃度Nsよりも低く、且つ、電子供給層の表面における凹部面積比率が1.2%以下である」との要件を満たすサンプルを「実施例」とした。一方、
図7では、電子供給層が単層構造を有するサンプルを「比較例」としている。つまり、比較例は、従来の構成を有する半導体装置に相当する。
【0135】
図7に示すように、比較例では、電流コラプスの指標値Xに対してゲートリーク電流Yが単調減少する傾向を示していた。つまり、比較例のように従来の構成を有する半導体装置では、電流コラプスとゲートリーク電流とがトレードオフの関係を有することを確認した。
【0136】
これに対し、実施例では、電流コラプスの指標値Xとゲートリーク電流Yとは、比較例が示す直線よりも下に位置することを確認した。つまり、実施例では、上記要件を満たすことで、電流コラプスを抑制することと、ゲートリーク電流を低減することとを両立することができ、上記式(1)を満たすことができることを確認した。したがって、実施例によれば、比較例のような従来の半導体装置よりも半導体装置の信頼性を向上させることができることを確認した。
【0137】
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0138】
(付記1)
基板と、
前記基板上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層と、
前記電子走行層上に設けられ、前記第1の窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層と、
を有し、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度は、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、
前記電子供給層の表面の面積に対する、前記電子供給層の表面に形成された深さ1nm以上の凹部の面積を積算した値の比率は、1.2%以下である
窒化物半導体積層物。
【0139】
(付記2)
前記電子供給層の表面の面積に対する、前記電子供給層の表面に形成された深さ1nm以上の凹部の面積を積算した値の比率は、0.8%以下である
付記1に記載の窒化物半導体積層物。
【0140】
(付記3)
前記電子供給層上にソース電極、ゲート電極およびドレイン電極を形成して半導体装置を作製し、
前記ゲート電極および前記ソース電極の間に+6Vの電圧を印加した状態で前記ドレイン電極および前記ソース電極の間に+10Vの電圧を印加したときに前記ドレイン電極および前記ソース電極の間に流れる電流から求められる前記半導体装置のオン抵抗について、前記ゲート電極および前記ソース電極の間の電圧を0Vとし、前記ドレイン電極および前記ソース電極の間に+300Vの電圧を所定時間印加するストレスを前記半導体装置に与える前の前記オン抵抗に対する、前記ストレスを前記半導体装置に与えた後の前記オン抵抗の比率をXとし、
前記ゲート電極および前記ソース電極の間に-10Vの電圧を印加したときに、前記ゲート電極および前記ソース電極の間に流れるゲートリーク電流をY(A/mm)とした場合に、
下記の式(1)を満たす
付記1又は2に記載の窒化物半導体積層物。
Y≦2×104exp(-17.8X) ・・・(1)
(ただし、X≧1、Y>0)
【0141】
(付記4)
前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度に対する、前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度の比率は、0.7未満である
付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体積層物。
【0142】
(付記5)
前記電子供給層中における炭素の濃度は、1×1018at・cm-3以下である
付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体積層物。
【0143】
(付記6)
前記電子供給層は、
前記電子走行層上に設けられる第1層と、
前記第1層上に設けられる第2層と、
を有し、
前記第1層中における炭素の濃度は、前記第2層中における炭素の濃度よりも低い
付記1~5のいずれか1項に記載の窒化物半導体積層物。
【0144】
(付記7)
前記電子供給層中における炭素の濃度は、該電子供給層の前記表面側から前記電子走行層側に向かって徐々に低くなっている
付記1~5のいずれか1つに記載の窒化物半導体積層物。
【0145】
(付記8)
前記電子供給層の厚さ方向の位置に対する、前記電子供給層中における炭素の濃度の傾きは、一定である
付記7に記載の窒化物半導体積層物。
【0146】
(付記9)
前記電子供給層の厚さ方向の位置に対する、前記電子供給層中における炭素の濃度の傾きの絶対値は、該電子供給層の前記表面側から前記電子走行層側に向かって徐々に小さくなっている
付記7に記載の窒化物半導体積層物。
【0147】
(付記10)
前記電子供給層の厚さ方向の位置に対する、前記電子供給層中における炭素の濃度の傾きの絶対値は、該電子供給層の前記表面側から前記電子走行層側に向かって徐々に大きくなっている
付記7に記載の窒化物半導体積層物。
【0148】
(付記11)
前記電子供給層の厚さ方向の位置に対する、前記電子供給層中における炭素の濃度の傾きの絶対値は、該電子供給層の前記表面側から中間位置まで徐々に大きくなり、前記中間位置から前記電子走行層側に向かって徐々に小さくなっている
付記7に記載の窒化物半導体積層物。
【0149】
(付記12)
前記電子供給層を構成する前記第2の窒化物半導体は、AlxGa1-xN(ただし、0<x<1)であり、
前記電子供給層のうちの前記表面側の領域中におけるAl組成比xは、前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中におけるAl組成比xよりも低い
付記1~11のいずれか1つに記載の窒化物半導体積層物。
【0150】
(付記13)
前記電子供給層は、
前記電子走行層上に設けられる第1層と、
前記第1層上に設けられる第2層と、
を有し、
前記第2層中におけるAl組成比xは、前記第1層中におけるAl組成比xよりも低い
付記12に記載の窒化物半導体積層物。
【0151】
(付記14)
前記電子供給層中におけるAl組成比xは、該電子供給層の前記電子走行層側から前記表面側に向かって徐々に低くなっている
付記12に記載の窒化物半導体積層物。
【0152】
(付記15)
基板と、
前記基板上に設けられ、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層と、
前記電子走行層上に設けられ、前記第1の窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層と、
前記電子供給層上に設けられるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極と、
を有し、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度は、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、
前記電子供給層の表面の面積に対する、前記電子供給層の表面に形成された深さ1nm以上の凹部の面積を積算した値の比率は、1.2%以下である
半導体装置。
【0153】
(付記16)
基板上に、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上に、前記第1の窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層を形成する工程と、
を有し、
前記電子供給層を形成する工程では、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度が、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、且つ、前記電子供給層の表面の面積に対する、前記電子供給層の表面に形成された深さ1nm以上の凹部の面積を積算した値の比率が、1.2%以下となるように、前記電子供給層を形成する
窒化物半導体積層物の製造方法。
【0154】
(付記17)
前記電子供給層を形成する工程では、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域を形成する際の前記基板の温度を、前記電子供給層のうちの表面側の領域を形成する際の前記基板の温度よりも高くする
付記16に記載の窒化物半導体積層物の製造方法。
【0155】
(付記18)
前記電子供給層を形成する工程では、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域を形成する際の前記基板の温度と、前記電子供給層のうちの表面側の領域を形成する際の前記基板の温度との差を、30℃以上100℃以下とする
付記17に記載の窒化物半導体積層物の製造方法。
【0156】
(付記19)
前記電子供給層を形成する工程では、
前記基板の温度を前記電子供給層の成長温度から低下させるときの冷却速度を1.0℃/s以上とする
付記16~18のいずれか1つに記載の窒化物半導体積層物の製造方法。
【0157】
(付記20)
前記電子供給層を形成する工程では、
前記基板の温度を前記電子供給層の成長温度から低下させるときに、前記電子供給層の表面に対して水素ガス又はヘリウムガスを供給する
付記16~19のいずれか1つに記載の窒化物半導体積層物の製造方法。
【0158】
(付記21)
基板上に、第1のIII族窒化物半導体からなる電子走行層を形成する工程と、
前記電子走行層上に、前記第1の窒化物半導体よりもバンドギャップが広い第2のIII族窒化物半導体からなる電子供給層を形成する工程と、
前記電子供給層上に、ソース電極、ゲート電極およびドレイン電極を形成する工程と、
を有し、
前記電子供給層を形成する工程では、
前記電子供給層のうちの前記電子走行層側の領域中における炭素の濃度が、前記電子供給層のうちの表面側の領域中における炭素の濃度よりも低く、且つ、前記電子供給層の表面の面積に対する、前記電子供給層の表面に形成された深さ1nm以上の凹部の面積を積算した値の比率が、1.2%以下となるように、前記電子供給層を形成する
半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0159】
10 窒化物半導体積層物
20 半導体装置
100 基板
140 電子走行層
160 電子供給層
162 第1層
164 第2層
210 ゲート電極
220 ソース電極
230 ドレイン電極
300 保護膜