IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の特許一覧

<>
  • 特許-作物搬送装置 図1
  • 特許-作物搬送装置 図2
  • 特許-作物搬送装置 図3
  • 特許-作物搬送装置 図4
  • 特許-作物搬送装置 図5
  • 特許-作物搬送装置 図6
  • 特許-作物搬送装置 図7
  • 特許-作物搬送装置 図8
  • 特許-作物搬送装置 図9
  • 特許-作物搬送装置 図10
  • 特許-作物搬送装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】作物搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240321BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B25J15/08 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020056744
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154433
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】太田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲資
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-085439(JP,A)
【文献】特開平08-300286(JP,A)
【文献】特開2013-212570(JP,A)
【文献】特開2000-354414(JP,A)
【文献】特開2008-173431(JP,A)
【文献】特開2019-55859(JP,A)
【文献】特開2018-69353(JP,A)
【文献】実開昭63-79189(JP,U)
【文献】特開2019-93520(JP,A)
【文献】特開平8-300286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の略球状の作物のうちの1つの作物対し第1方向の一側から近づいて前記作物を保持し、搬送する作物搬送装置であって、
複数の前記作物のうち前記第1方向の最も一側に位置する特定点の3次元座標情報を検出する第1検出部と、
板状の弾性体で形成され、前記作物の前記第1方向の他側の半球面に接触する接触面を有し、前記接触面が前記作物に接触した状態で前記作物を保持する複数のフィンガと、前記複数のフィンガを互いに接近又は離間する方向に駆動するフィンガ駆動部と、を有するハンドと、
前記ハンドを駆動するハンド駆動部と、
前記作物の位置及び形状を検出する第2検出部と、
前記第1検出部及び前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記フィンガ駆動部と前記ハンド駆動部とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1検出部が検出した前記3次元座標情報に基づいて、前記ハンドを前記特定点の前記第1方向の一側に位置決めし、
前記ハンドを前記特定点の前記第1方向の一側に位置決めした状態で、前記第2検出部により前記特定点を有する作物の位置及び形状を検出し、
前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記ハンドが前記特定点を有する作物の前記第1方向の一側に位置する第1状態から、前記複数のフィンガの前記接触面の近傍の先端を前記特定点を有する作物の表面に接触させつつ、前記ハンドを前記第1方向の一側から他側に移動させることにより、前記複数のフィンガの前記接触面が前記特定点を有する作物の前記第1方向の他側の半球面に接触する第2状態に遷移させる、
ことを特徴とする作物搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1状態において、前記複数のフィンガの前記接触面の近傍の先端と前記特定点を有する作物とが前記第1方向に関して対向するように、前記第2検出部が検出した前記特定点を有する作物の形状に基づいて前記フィンガ駆動部を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の作物搬送装置。
【請求項3】
前記第1状態から前記第2状態に遷移するときに、前記複数のフィンガの前記接触面の近傍の先端は、前記板状の弾性体の弾性力の作用により、前記特定点を有する作物の表面に沿って移動する、ことを特徴とする請求項2に記載の作物搬送装置。
【請求項4】
前記フィンガの前記接触面には、第1緩衝材が設けられている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の作物搬送装置。
【請求項5】
前記フィンガの前記接触面とは反対側の面には、前記第1緩衝材よりも摩擦係数の低い第2緩衝材が設けられている、ことを特徴とする請求項4に記載の作物搬送装置。
【請求項6】
前記フィンガは、
前記第1方向の一側から第1屈曲部と、第2屈曲部と、を有し、
前記第1屈曲部と前記第2屈曲部は、逆向きに屈曲しており、
前記第2屈曲部よりも前記第1方向の他側に前記接触面が位置している、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の作物搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トマトなどの施設園芸ハウスでは、収穫した作物の選果機への投入作業や箱詰め作業に多大な労力、人員を要しており、省力化が望まれている。例えば、選果機への投入作業は、傷のつきやすい軟弱な果実を1個ずつコンテナから取り出して選果機に投入する単調な作業である。また、箱詰め作業についても選果機で選果された果実を1個ずつ箱に投入する単調な作業である。従来、共同選果場で利用される自動箱詰め装置が知られているが、コンベア上のトレイ(パン)に載せられ、整列された状態の果実しか自動で箱詰めすることができず、また、大型であり、高コストなため、大規模施設生産者は導入することが難しい。
【0003】
現時点では、果実を選果機に投入する作業や果実を箱詰めする作業に用いるロボットは知られておらず、物体を保持するロボットとして、例えば特許文献1~4等に記載のロボットが知られている。また、特許文献5には、積層された多数の胡瓜の中から胡瓜を一本ずつ保持して取り出すロボットハンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-55859号公報
【文献】特開2018-69353号公報
【文献】実開昭63-79189号公報
【文献】特開2019-93520号公報
【文献】特開平8-300286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1~4に開示されているロボット等を、コンテナ内に多数収容された軟弱な果実の搬送作業に転用することも考えられる。しかしながら、上記特許文献1~4のロボット等では、ハンド等を搬送対象の果実に対して近づける場合に、ハンドの一部が搬送対象の果実や隣接する果実に接触し、果実の表面を傷つけるおそれがある。
【0006】
また、上記特許文献5に開示されているロボットハンドは、指形成体の先端反り面を、積層された多数の胡瓜のうちの一本に対して上側から押し付けるようにし、指形成体で胡瓜を挟持する。しかしながら、このような挟持の仕方では、トマトのような略球状の作物を確実に保持することが難しく、高速で搬送(ハンドリング)すると作物が落下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、略球状の作物を確実に保持して搬送することが可能な作物搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の作物搬送装置は、複数の略球状の作物のうちの1つの作物対し第1方向の一側から近づいて前記作物を保持し、搬送する作物搬送装置であって、複数の前記作物のうち前記第1方向の最も一側に位置する特定点の3次元座標情報を検出する第1検出部と、板状の弾性体で形成され、前記作物の前記第1方向の他側の半球面に接触する接触面を有し、前記接触面が前記作物に接触した状態で前記作物を保持する複数のフィンガと、前記複数のフィンガを互いに接近又は離間する方向に駆動するフィンガ駆動部と、を有するハンドと、前記ハンドを駆動するハンド駆動部と、前記作物の位置及び形状を検出する第2検出部と、前記第1検出部及び前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記フィンガ駆動部と前記ハンド駆動部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1検出部が検出した前記3次元座標情報に基づいて、前記ハンドを前記特定点の前記第1方向の一側に位置決めし、前記ハンドを前記特定点の前記第1方向の一側に位置決めした状態で、前記第2検出部により前記特定点を有する作物の位置及び形状を検出し、前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記ハンドが前記特定点を有する作物の前記第1方向の一側に位置する第1状態から、前記複数のフィンガの前記接触面の近傍の先端を前記特定点を有する作物の表面に接触させつつ、前記ハンドを前記第1方向の一側から他側に移動させることにより、前記複数のフィンガの前記接触面が前記特定点を有する作物の前記第1方向の他側の半球面に接触する第2状態に遷移させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の作物搬送装置は、略球状の作物を確実に保持して搬送することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】作物搬送装置を示す斜視図である。
図2】ハンドを模式的に示す図である。
図3図3(a)は、図2のA-A線断面図(フィンガが接近した状態を示す図)であり、図3(b)は、図2のA-A線断面図(フィンガが離間した状態を示す図)である。
図4図4(a)は、フィンガの1つの縦断面であり、図4(b)は、図4(a)のフィンガを+X側から見た状態を示す図である。
図5】作物搬送装置の制御ブロック図である。
図6図6(a)は、制御装置のハードウェア構成を示す図であり、図6(b)は、制御装置の機能ブロック図である。
図7】作物搬送装置の動作を示すフローチャートである。
図8図8(a)、図8(b)は、図7の処理を説明するための図(その1)である。
図9図9(a)、図9(b)は、図7の処理を説明するための図(その2)である。
図10図7の処理を説明するための図(その3)である。
図11】変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態に係る作物搬送装置100について、図1図10に基づいて詳細に説明する。図1には、作物搬送装置100が斜視図にて示されている。本実施形態の作物搬送装置100は、図1に示すように、作物(本実施形態ではトマト)が収容されたコンテナ110から、不図示の選果機に接続された搬送コンベア120上に作物(トマト)を搬送する装置である。搬送コンベア120は、図1のようなベルトコンベアのみならず、パンやトレイを搬送するチェーンコンベアなどであってもよい。
【0012】
作物搬送装置100は、コンテナ110近傍に設けられた、ハンド駆動部としてのロボット本体90と、ロボット本体90の先端に設けられたハンド10と、を備える。
【0013】
ロボット本体90は、多関節ロボットであり、制御装置190(図5参照)の指示の下で駆動し、ハンド10を6自由度方向に移動させる。ロボット本体90の各関節には、関節の角度を検出するためのエンコーダ94(図5参照)が設けられており、制御装置190は、エンコーダ94の情報から、ロボット本体90の姿勢をモニタリングすることができる。図1では不図示であるが、作物搬送装置100の上方(例えばコンテナ110の1m上方)には、グローバルセンサ92(図5参照)が設けられている。グローバルセンサ92は、例えば、コンテナ110近傍に投光した赤外線が反射して戻ってくる時間から深度情報を得るTime of Flight(TOF)方式の深度センサを含み、コンテナ110内において最も高い位置(トマトの最高点)を検出し、検出した位置の3次元座標を制御装置190に対して出力する。
【0014】
ハンド10は、複数(本実施形態では6つ)のフィンガ12A、12B、12C、14A、14B、14Cを有する(フィンガ14Bについては、図1では不図示、図2等参照)。
【0015】
図2は、ハンド10を模式的に示す図である。図2では、ハンド10のフィンガ12B、14Bを示し、その他のフィンガについての図示を省略している。また、図3(a)、図3(b)は、図2のA-A線断面図である。なお、図2においては、紙面内上下方向をZ軸方向とし、紙面内左右方向(フィンガ12Bとフィンガ14Bとが対向する方向)をY方向、紙面直交方向をX軸方向としている。なお、図2の座標系は、ハンド10の座標系であるため、ハンド10が移動したり、姿勢を変更したりしても、ハンド10と座標系との関係は変化しないものとする。
【0016】
図2図3(a)に示すように、フィンガ12A~12Cは、取付部材16Aにネジ止め等により取り付けられている。また、フィンガ14A~14Cは、取付部材16Bにネジ止め等により取り付けられている。取付部材16A、16Bは、フィンガ駆動部としてのフィンガ駆動装置18により、X軸方向にスライド駆動される。これにより、フィンガ12A~12Cと、フィンガ14A~14Cは、X軸方向に関して、接近(図3(a)参照)、離間(図3(b)参照)が可能となっている。図3(a)の状態では、フィンガ12A~12C、14A~14Cが閉じた状態となる。一方、図3(b)の状態では、フィンガ12A~12C、14A~14Cが開いた状態となる。
【0017】
ここで、フィンガ12A~12C、14A~14Cについて詳細に説明する。図4(a)には、フィンガ12Bの縦断面図が示され、図4(b)には、フィンガ12Bを+X側から見た状態が示されている。なお、その他のフィンガについては、フィンガ12Bと同一であるので、説明は省略する。
【0018】
フィンガ12Bは、薄板状のバネ材(例えばバネ鋼)を材料としており、長さが100~200mmで、厚さが0.6~1.2mm程度となっている。このような材料、長さ及び厚さを採用することで、フィンガ12Bの下端部(-Z端部)がトマトに上方から接触してもフィンガ12Bが弾性変形するため、トマトの傷つきを抑制することができる。また、上記厚さは、永久変形するほどは薄くないため、フィンガ12に対して外力が作用しなくなると元の状態に戻るようになっている。また、フィンガ12BのY軸方向に関する幅は、10~20mm程度となっている。このような幅を採用することで、コンテナ110内に多数のトマトが存在していても、フィンガ12Bがトマトとトマトの間の隙間に入りやすくなっている。なお、フィンガ12Bの材料としては、バネ鋼以外の板状の弾性体を採用してもよい。板状の弾性体としては、例えば樹脂やその他の材料を用いることも可能である。
【0019】
フィンガ12Bは、略球状のトマトを板バネの弾性力により保持できるようにするため、薄板状の部材の2か所を互いに逆向きに折り曲げた形状を有している。より具体的には、フィンガ12Bは、第1部分50A、第2部分50B、第3部分50Cを有しており、第1部分50Aと第2部分50Bとの境が第1屈曲部52A、第2部分50Bと第3部分50Cとの境が第2屈曲部52Bとなっている。
【0020】
第1屈曲部52Aの屈曲角度αは、例えば、130~170°程度である。屈曲角度αとして上記範囲を採用することで、フィンガ12Bの下端部(-Z側の端部)近傍に-X方向から+X方向に向かう外力が作用したときに、フィンガ12Bは外力が作用する方向(屈曲角度αが小さくなる方向)に変形するようになっている。
【0021】
また、第2屈曲部52Bの屈曲角度βは、例えば110~170°程度である。屈曲角度βとして上記範囲とすることで、第3部分50Cがトマトの下半部(下側の半球面)に接触しやすくなっている。これにより、トマトを高速でハンドリングしても、トマトが落下しにくくなっている。なお、本実施形態では、トマトが載置された状態で上側から視認できる範囲を「上側の半球面」と呼び、それ以外の面を「下側の半球面」と呼ぶものとする。
【0022】
第3部分50Cは、長さが30~70mm程度となっている。この長さは、トマトの高さのほぼ半分程度である。したがって、フィンガによりトマトを保持したときに、トマトの重さを下側から受けることができる。また、第3部分50Cには、緩衝材(第1緩衝材)54Aと、緩衝材(第2緩衝材)54Bと、が貼り付けられており、緩衝材54Aの-X側の面が保持対象のトマト(搬送対象のトマト)の下側の半球面に接触する接触面となっている。
【0023】
緩衝材54Aは、保持対象のトマトと接触する緩衝材であり、厚さは、0.5~2mm程度で、摩擦係数が高い(滑りにくい)材料、例えばエプトシーラ(登録商標)を用いることができる。フィンガ12Bに緩衝材54Aを設けることで、フィンガ12Bが保持対象のトマトに接触してもトマトに傷がつきにくくなっている。また、緩衝材54Aとして上記材料を採用することで、トマトを確実に保持することができる。
【0024】
緩衝材54Bは、保持対象のトマトの周辺に存在する保持対象でないトマトと接触する緩衝材であり、厚さは、0.5~2mm程度で、摩擦係数が低い(滑りやすい)材料、例えば天然ゴムを用いることができる。フィンガ12Bに緩衝材54Bを設けることで、フィンガ12Bが保持対象でないトマトに接触してもトマトに傷がつきにくくなっている。また、緩衝材54Bとして上記材料を採用することで、トマトとトマトの間に第3部分50Cをスムーズに入り込ませることができるようになる。
【0025】
緩衝材54A,54Bは、図4(b)に示すように、第3部分50Cよりも寸法P(Pは例えば1~5mm程度)だけ大きく設定されている。このように、フィンガ12Bの第3部分50Cを外部に露出させないことで、フィンガ12Bとトマトが接触したときのトマトの傷つきを抑制している。また、図4(b)に示すように、緩衝材54A,54B及びフィンガ12Bの下端部の角を落としている(角を曲線状に加工している)。この点からも、フィンガ12Bとトマトが接触したときのトマトの傷つきが抑制されている。なお、緩衝材54A,54B及びフィンガ12Bの下端部全体を、半円状などの曲線形状に加工してもよい。
【0026】
なお、緩衝材54A、54Bの材料は、同一であってもよい。この場合、例えば、緩衝材54A、54Bの表面に形成する凹凸の方向や表面粗さなどを異ならせることにより、各緩衝材54A、54Bが必要とする表面状態(摩擦係数など)を実現するようにしてもよい。
【0027】
なお、フィンガ12Aとフィンガ12B、フィンガ12Bとフィンガ12Cとの間の間隔(図3(b)の中心間距離H)は、20~40mm程度となっている。同様に、フィンガ14Aとフィンガ14B、フィンガ14Bとフィンガ14Cとの間の間隔は、20~40mm程度となっている。これにより、1つのトマトをフィンガ12A~12C、14A~14Cにより確実に保持することができ、保持対象でないトマトとの接触を極力少なくすることができる。
【0028】
図1に戻り、ハンド10は、ローカルセンサ36を有している。ローカルセンサ36は、深度計測が可能なステレオビジョン等の深度カメラを含み、撮影した画像から、保持対象(搬送対象)のトマトの外形形状(外接円)を特定し、特定した外接円の中心(外心)の位置座標と、外接円の径の情報を制御装置190に送信する。なお、深度カメラは単眼のカメラであってもよい。
【0029】
図5には、作物搬送装置100の制御ブロック図が示されている。図5に示すように、作物搬送装置100においては、制御部としての制御装置190が、グローバルセンサ92、ローカルセンサ36、エンコーダ94が検出した結果を取得し、これに基づいて、フィンガ駆動装置18及びロボット本体90の駆動を制御する。
【0030】
図6(a)には、制御装置190のハードウェア構成が示されている。図6(a)に示すように、制御装置190は、CPU(Central Processing Unit)189、ROM(Read Only Memory)192、RAM(Random Access Memory)194、記憶部(ここではHDD(Hard Disk Drive))196、ネットワークインタフェース197、及び可搬型記憶媒体用ドライブ199等を備えている。これら制御装置190の構成各部は、バス198に接続されている。制御装置190では、ROM192あるいはHDD196に格納されているプログラム、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ199が可搬型記憶媒体191から読み取ったプログラムをCPU189が実行することにより、図6(b)に示す各部の機能が実現される。なお、図6(b)の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0031】
図6(b)には、制御装置190の機能ブロック図が示されている。制御装置190では、CPU189がプログラムを実行することで、図6(b)に示す、最高点取得部202、作物情報取得部204、エンコーダ情報取得部208、及び駆動制御部210、としての機能が実現されている。
【0032】
最高点取得部202は、グローバルセンサ92で検出されるコンテナ110内の最高点(コンテナ110内に存在するトマトの最高点)の3次元座標情報を取得する。最高点取得部202は、取得した3次元座標情報を駆動制御部210に通知する。
【0033】
作物情報取得部204は、ローカルセンサ36で検出される保持対象のトマトの外心の位置と径の情報を取得する。作物情報取得部204は、取得した情報を駆動制御部210に通知する。なお、作物情報取得部204は、ローカルセンサ36で検出される保持対象のトマトと、周囲のトマトとの間の隙間の位置情報を検出することもできる。
【0034】
エンコーダ情報取得部208は、ロボット本体90の各関節に設けられたエンコーダ94から各関節の角度情報を取得し、駆動制御部210に通知する。
【0035】
駆動制御部210は、最高点取得部202、作物情報取得部204、及びエンコーダ情報取得部208から取得した情報に基づいて、作物搬送装置100全体を制御する。
【0036】
(作物搬送装置100の動作について)
次に、作物搬送装置100の動作について、図7のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。図7の処理は、駆動制御部210により実行される処理である。図7の処理が開始される際には、駆動制御部210は、ハンド10を初期位置に位置決めしているものとする。
【0037】
ステップS10では、駆動制御部210が、グローバルセンサ92によって検出されるコンテナ110内の最高点の3次元座標情報を最高点取得部202を介して取得する。なお、最高点を有するトマトが保持対象(搬送対象)のトマトとなる。
【0038】
次いで、ステップS12では、駆動制御部210が、ハンド接近動作を開始する。具体的には、駆動制御部210は、エンコーダ情報取得部208が取得するエンコーダ情報(ロボット本体90の各関節の角度情報)に基づいて、ロボット本体90を制御し、ハンド10の下端部が最高点の上方(第1方向の一側)の所定高さ(例えば15cm)の位置に位置決めされるように、ハンド10を駆動する。
【0039】
次いで、ステップS14では、駆動制御部210が、ハンド10が最高点の上方の所定高さに位置するまで待機する。駆動制御部210は、エンコーダ情報から、ハンド10が最高点の上方の所定高さに位置したと判断すると、ステップS16に移行する。
【0040】
ステップS16に移行すると、駆動制御部210は、ローカルセンサ36による果実位置・径検出を実行する。具体的には、駆動制御部210は、ローカルセンサ36に指示を出し、ハンド10直下のトマトを撮影する。そして、駆動制御部210は、果実位置として、ローカルセンサ36によって検出された、画角中央に位置するトマトの外心(外接円の中心)の、コンテナ110内における2次元位置及び高さ位置を、作物情報取得部204を介して取得する。また、駆動制御部210は、ローカルセンサ36によって検出された、トマトの径(外接円の直径)を、作物情報取得部204を介して取得する。なお、駆動制御部210は、ステップS10においてグローバルセンサ92によって検出されたコンテナ110内の最高点の3次元座標情報を、ローカルセンサ36によって検出された果実位置を用いて補正する。
【0041】
次いで、ステップS18では、駆動制御部210は、フィンガ12Bの下端部とフィンガ14Bの下端部との間の距離が所定幅になるように、フィンガ駆動装置18を制御する。なお、所定幅は、検出されたトマトの径の大きさに所定割合(例えば80%)を掛けた寸法であるものとする。なお、ステップS18において、駆動制御部210は、作物情報取得部204が検出した保持対象のトマトと周囲のトマトとの間の隙間の位置情報を取得し、取得した隙間の位置情報に基づいて、ハンド10をZ軸回りに回転してもよい。この場合、駆動制御部210は、フィンガ12A~12C、14A~14Cが隙間に入りやすくなるように、ハンド10をZ軸回りに回転すればよい。また、駆動制御部210は、ハンド10を回転した後におけるトマトのX軸方向の寸法に基づいて、フィンガ駆動装置18を制御するようにすればよい。図8(a)には、ステップS18の処理が実行された後の状態(第1状態)が示されている。なお、図8(a)の第1の状態では、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部と、保持対象のトマトが、上下方向(第1方向)に関して対向した状態となっている。
【0042】
次いで、ステップS20では、駆動制御部210が、保持対象のトマトを保持可能な位置に向けてハンド10の下方への移動(第1方向の一側から他側への移動)を開始する。すなわち、駆動制御部210は、ロボット本体90を制御して、各フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部が所定位置(例えばローカルセンサ36により検出されたトマトの外心が位置するトマト表面の高さよりも所定高さ(平均的なトマトの高さの95%程度)だけ低い位置)になるように駆動する。
【0043】
このハンド10の移動の間に、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部は、図8(b)に示すように、保持対象のトマトの表面(上側の半球面)に接触する。そして、ハンド10が更に下方に移動すると、図9(a)に示すように、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部は、板バネの弾性力に抗して、トマトの表面に沿って広がり始める。この場合、フィンガ12A~12C、14A~14Cが第1屈曲部52Aを有していることから、フィンガ12A~12C、14A~14Cは第1屈曲部52Aを支点にして外側に開きやすくなっている。なお、ハンド10が下方に移動している間は、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部は保持対象のトマトの表面に沿って移動するようになっている。
【0044】
このとき、フィンガ12A~12C、14A~14Cは、保持対象のトマトの周辺に位置している保持対象でないトマトを押しのける。なお、トマトは略球状であり、内向きに屈曲した第3部分50Cの先端(下端)がトマトの略球状の表面に倣って(沿って)下方に移動するため、トマト同士が接触している部分にフィンガの下端部が当たる可能性は低いが、トマト同士が接触している部分にフィンガの下端部が当たったとしても、フィンガの厚さは十分に薄いので、保持対象でないトマトを押し退けながらフィンガをトマト間に挿入することができる。
【0045】
そして、ハンド10が更に下方に移動すると、図9(b)に示すように、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部はトマトの下側の半球面に接触し始める。このとき、フィンガ12A~12Cの下端部とフィンガ14A~14Cの下端部との間の間隔は、板バネの弾性力によって、狭まるようになっている。なお、フィンガ12A~12C、14A~14Cには、第2屈曲部52Bが設けられているため、図9(b)に示すように、フィンガ12A~12C、14A~14Cの接触面(緩衝材54A)をトマトの下側の半球面に接触させることができ、トマトを下側から保持できるようになっている。
【0046】
次いで、図7のステップS22では、駆動制御部210が、ハンド10が所定位置に移動するまで、すなわち、図9(b)の状態(第2状態)になるまで待機する。駆動制御部210は、ロボット本体90のエンコーダ94から得られる情報に基づいて、図9(b)の状態になったかを判断する。駆動制御部210は、図9(b)の状態になったと判断した段階で、ステップS24に移行する。本実施形態では、フィンガを予め狭めた状態(図8(a)参照)としているため、図9(b)の状態からフィンガ12A~12Cとフィンガ14A~14Cを更に接近させなくても、トマトを保持した状態とすることができる。ただし、これに限らず、フィンガ12A~12Cとフィンガ14A~14Cによるトマトの保持を更に確実にするため、駆動制御部210は、フィンガ12A~12Cとフィンガ14A~14Cを更に接近させるようにしてもよい。
【0047】
次いで、ステップS24では、駆動制御部210が、トマトの搬送動作を実行する。すなわち、駆動制御部210は、エンコーダ情報に基づいてロボット本体90を制御して、図10に示すように、トマトを搬送する。そして、駆動制御部210は、ハンド10をトマトの搬送先である搬送コンベア120の上方に移動し、ハンド10を開く(フィンガ12A~12Bとフィンガ14A~14Cとを離間させる)。これにより、ハンド10が保持していたトマトが、搬送コンベア120上に載置される。
【0048】
以上により、図7の全処理が終了する。図7の全処理が終了すると、駆動制御部210は、ハンド10を初期位置に戻す。なお、駆動制御部210は、図7の処理を繰り返し実行することにより、コンテナ110内のトマトを搬送コンベア120上に載置する処理を繰り返す。
【0049】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、ハンド10は、板バネで形成され、トマトの下側の半球面に接触する接触面を有し、接触面がトマトの下側の半球面に接触した状態でトマトを保持する複数のフィンガ12A~12C、14A~14Cと、複数のフィンガを互いに接近又は離間する方向に駆動するフィンガ駆動装置18と、を有する。また、ハンド10は、ロボット本体90によって駆動され、グローバルセンサ92とローカルセンサ36とにより、トマトの位置及び形状が検出される。そして、制御装置190(駆動制御部210)は、ハンド10が保持対象のトマトの上方に位置する第1状態(図8(a))から、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部(接触面近傍の先端)をトマトの表面に接触させながら、ハンド10を下方に移動させることで、フィンガ12A~12C、14A~14Cがトマトの下側の半球面に接触した第2状態(図9(b))に遷移させる。これにより、本実施形態では、トマトの表面に傷をつけずに、保持対象でないトマトを押し退けながら、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部を保持対象のトマトの下側に滑り込ませることができる。また、フィンガ12A~12C、14A~14Cは、板バネで形成されているため、上記のようにフィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部をトマトの下側に滑り込ませることで、板バネの弾性力により、トマトを確実に保持することができる。これにより、トマトを高速搬送した場合でもトマトが落下する可能性を低減することができる。
【0050】
また、本実施形態では、フィンガ12A~12C、14A~14Cが薄板状の部材であるため、フィンガ12A~12C、14A~14Cが保持対象でないトマトを押し退けたときのトマトの移動量を少なくすることができる。これにより、保持対象でないトマトの傷つきを低減することができる。
【0051】
また、本実施形態では、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部は、板バネの弾性力の作用により、トマトの表面に接触し続けるため、ハンド10をトマトに近づけている間にフィンガ駆動装置18を制御しなくても、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部をトマトの表面に接触させ続けることができる。これにより、制御の簡素化を図ることが可能である。
【0052】
また、本実施形態では、ハンド10を下降させている間に、フィンガ12A~12C、14A~14Cの下端部が保持対象のトマトの表面に接触し続けるため、保持対象のトマトと周囲のトマトとの隙間にフィンガを確実に挿入することができる。
【0053】
また、本実施形態では、フィンガ12A~12C、14A~14Cの保持対象のトマトの下側の半球面と接触する接触面に緩衝材54Aを設けている。これにより、フィンガ12A~12C、14A~14Cと保持対象のトマトが接触することにより、保持対象のトマトが損傷する可能性を低減することができる。また、緩衝材54Aを滑りにくい材料とすることで、保持したトマトが落下する可能性を低減することができる。
【0054】
また、本実施形態では、フィンガ12A~12C、14A~14Cの保持対象でないトマトと接触する面に緩衝材54Bを設けている。これにより、フィンガ12A~12C、14A~14Cが保持対象でないトマトに接触した場合でも、保持対象でないトマトが損傷する可能性を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態では、図4(a)に示すように、フィンガ12A~12C、14A~14Cが第1屈曲部52Aを有しているので、第1屈曲部52Aを支点として、第1屈曲部52Aの下側が開く方向に弾性変形しやすくなっている。また、フィンガ12A~12C、14A~14Cが第2屈曲部52Bを有しているので、第3部分50Cがトマトの下側の半球面に接触しやすくなっている。これにより、トマトを高速でハンドリングしたときのトマトの落下を抑制することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、検出部として、グローバルセンサ92とローカルセンサ36を併用する場合について説明したが、いずれか一方のみを用いることとしてもよい。例えば、グローバルセンサ92のみを用いる場合には、図7の処理において、ステップS16の処理を省略し、ステップS10において、グローバルセンサ92がトマトの外心や径を検出するようにすればよい。
【0057】
なお、上記実施形態のハンド10の構成は、一例である。すなわち、ハンド10はその他の構成であってもよい。例えば、フィンガ12A~12C、14A~14Cが上下方向にスライド可能であってもよく、スライド量を検出し、当該検出結果に基づいて、制御装置190が、フィンガ駆動装置18やロボット本体90を制御するようにしてもよい。例えば、制御装置190は、フィンガのスライド量が閾値に達した場合に、フィンガがトマトを傷つける可能性があると判断し、トマトの搬送動作を停止するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、ハンド10が有するフィンガの本数が6本である場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、フィンガの本数は、4本などであってもよい。また、上記実施形態では、トマトを保持するときに、3つのフィンガを一体的に駆動する場合について説明したが、これに限られるものではなく、各フィンガを独立に駆動することとしてもよい。
【0059】
なお、上記実施形態では、作物搬送装置100が、コンテナ110から搬送コンベア120に作物を搬送する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、作物搬送装置100は、ミニトマト等を多数収容するトレイから、弁当箱の所定位置に向けてミニトマト等をハンドリングする装置(具材盛り付け装置)であってもよい。
【0060】
なお、上記各実施形態では、ローカルセンサ36が、画像を撮影しているため、撮影した画像から、搬送対象のトマトの形状、大きさ、色を特定し、特定結果に基づいて選果を行うこととしてもよい。この場合、選果結果に基づいて、各トマトの搬送位置を異ならせてもよい。また、ハンド10において保持したトマトの重量を検出できる場合には、検出された重量に基づいて、各トマトの搬送位置を異ならせてもよい。なお、ハンド10においてトマトの重量を検知する装置としては、ロードセルを用いることができる。
【0061】
なお、上記実施形態の作物搬送装置100は、トマト等の果実の収穫に用いることもできる。例えば、図11に示すように、収穫対象の果実に対して、横方向(水平方向)からハンド10を接近させ、上記実施形態と同様に果実を保持させる。そして、保持完了後に、ハンド10を回転させて果実をもぎ取り、ハンド10を退避させる。このようにすることで、トマト等の果実の収穫が可能となる。
【0062】
なお、上記実施形態では、搬送対象の作物がトマトである場合について説明したが、これに限らず、搬送対象の作物は、その他の略球状の作物、例えばメロン、スイカ、玉ねぎ、リンゴ、モモ、ミカン、キャベツなどであってもよい。フィンガの寸法や本数等は、搬送対象の作物に応じて適宜変更すればよい。
【0063】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 ハンド
12A~12C,14A~14C フィンガ
18 フィンガ駆動装置(フィンガ駆動部)
36 ローカルセンサ(検出部の一部)
52A 第1屈曲部
52B 第2屈曲部
54A 緩衝材(第1緩衝材)
54B 緩衝材(第2緩衝材)
90 ロボット本体(ハンド駆動部)
92 グローバルセンサ(検出部の一部)
190 制御装置(制御部)
100 作物搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11