IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エピタキシャルウェーハの製造方法 図1
  • 特許-エピタキシャルウェーハの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】エピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240321BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019206771
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021082641
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-11-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 温
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】恩田 春香
【審判官】松永 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100483(JP,A)
【文献】特開2018-82072(JP,A)
【文献】特開平1-123470(JP,A)
【文献】特開昭61-232298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/205
C23C16/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面が(111)面のシリコンウェーハの表面に、シリコン系原料ガスを含むプロセスガスを供給してシリコン層をエピタキシャル成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記エピタキシャル成長において、反応温度を800~1150℃とし、プロセスガス中におけるシリコン系原料ガスの濃度を1.0×10-4~1.0×10-2mol/Lとし、反応炉の炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)以下とし、
エピタキシャル成長前後のサイトフラットネスの差分であるΔESFQRのウェーハ周方向のばらつき量をX、エピタキシャル成長膜の膜厚をTとしたとき、前記エピタキシャル成長膜の膜厚Tに対するΔESFQRのウェーハ周方向のばらつきの割合(X/T)×100を0.6%以下とすることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記シリコンウェーハとして、直径300mmのシリコンウェーハを用いることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記シリコン系原料ガスとして、トリクロロシラン(TCS)、ジクロロシラン(DCS)、又はモノシランを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法及びエピタキシャルウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の高集積化に伴い、最先端デバイス用ウェーハでは、最外周まで高平坦なウェーハ形状が求められている。さらにデバイス用途によっては、主表面が(100)面のエピタキシャルウェーハ(以下、「(100)エピタキシャルウェーハ」という。他の面についても同様とする。)だけではなく(111)エピタキシャルウェーハの要求も増えているため、高平坦な(111)エピタキシャルウェーハの製造方法が重要となってきている。
【0003】
エピタキシャルウェーハの平坦度で注目されるのは、ウェーハの結晶方位の変化によって生じる成長速度差がある。まず、シリコンウェーハの(111)面について説明する。図1は、主表面が(111)面のウェーハW表面における結晶方位の説明図である。図1に示すように、(111)ウェーハWの結晶方位は、ウェーハの中心を基準として回転方向30°単位の周期で、<110>方位と<112>方位を繰り返す。なお、図中の符号5は、<112>結晶方向の外周部を指す。主表面が(111)のシリコンウェーハにおいては、中心から外周へ向かう<110>方向を結晶方位の基準とした場合、結晶方位基準から30°方向の<112>方向においては成長速度が大きく、エピタキシャル層の膜厚が増大してしまい、外周の平坦度が悪化してしまう。
【0004】
従来のエピタキシャルウェーハ製造工程においては、エピタキシャル層の膜厚は2μm以上であり、エピタキシャル成長の反応温度は800~1150℃の範囲で行われるのが一般的であり、上記反応温度より低温ではエピタキシャル欠陥の増加、高温ではスリップの発生、プロセスガスの気相反応の影響が強くなり、製造条件としては相応しくない。また、原料ガス濃度も1×10-4~1×10-2mol/Lの範囲で行われるのが一般的であり、上記原料ガス濃度より低濃度では、成長速度低下による生産性の低下、高濃度ではエピタキシャル欠陥の増加が起こる。従って、シリコンウェーハを基板に用いたエピタキシャルウェーハを作製する上では、上記反応温度、上記原料ガス濃度の範囲内で成膜が行われている。
【0005】
一方、結晶方位の変化によって生じるウェーハ周縁部での成長速度差は、上記反応温度、上記原料ガス濃度の条件範囲においても発生する。結晶方位の変化によって生じるウェーハ周縁部の成長速度差は、サイトフラットネスの指標の一つであるΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきにも顕著に現れてしまう。
【0006】
ここで、ESFQR(Edge Site Front Least sQuare Range)は、サイトフラットネスのうち、平坦度の悪化しやすいエッジに注目した指標であり、厚さの分布から最小二乗法により求められた基準面からの偏差の最大、最小の幅で定義される。また、ΔESFQRはエピタキシャル成長前後におけるESFQRの差として定義される。
【0007】
結晶方位の変化によって生じるウェーハ周縁部での成長速度差を低減するために、特許文献1では、(100)、(110)ウェーハへのエピタキシャル反応時に2.66×10Pa(200Torr)以下まで減圧することで、外周フラットネスの良好な(100)、(110)エピタキシャルウェーハを製造している。(111)ウェーハへのエピタキシャル反応においては、特許文献2のように(111)エピタキシャル成長にてファセットが発生する位置の成長速度が小さくなるようにウェーハの載置位置をずらすという手法は存在するが、反応時に減圧し成長速度差を低減した例はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-100483号公報
【文献】特開2002-261023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、(111)ウェーハにおいて高平坦なエピタキシャルウェーハを製造するための成長方法及びエピタキシャルウェーハを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、主表面が(111)面のシリコンウェーハの表面に、シリコン系原料ガスを含むプロセスガスを供給してシリコン層をエピタキシャル成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、エピタキシャル成長において、反応温度を800~1150℃とし、プロセスガス中におけるシリコン系原料ガスの濃度を1.0×10-4~1.0×10-2mol/Lとし、反応炉の炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)以下とするエピタキシャルウェーハの製造方法を提供する。
【0011】
このような方法であれば、外周フラットネスの良好な(111)エピタキシャルウェーハを製造可能となる。
【0012】
このとき、シリコンウェーハとして、直径300mmのシリコンウェーハを用いることができる。
【0013】
このようなシリコンウェーハを用いれば、高い生産性で、外周フラットネスがより良好な大直径の(111)エピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0014】
このとき、シリコン系原料ガスとして、トリクロロシラン(TCS)、ジクロロシラン(DCS)、又はモノシランを用いることができる。
【0015】
これにより、外周フラットネスが更に良好な(111)エピタキシャルウェーハを安価に製造することが可能となる。
【0016】
また、主表面が(111)面であるシリコンエピタキシャルウェーハであって、エピタキシャル成長前後のサイトフラットネスの差分であるΔESFQRのウェーハ周方向のばらつき量をX、エピタキシャル成長膜の膜厚をTとしたとき、エピタキシャル成長膜の膜厚Tに対するΔESFQRのウェーハ周方向のばらつきの割合(X/T)×100が0.6%以下のエピタキシャルウェーハを提供する。
【0017】
これにより、ウェーハ周方向のばらつきが抑えられた(111)エピタキシャルウェーハとなる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法によれば、(111)ウェーハのエピタキシャル成長時に反応炉の炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)以下まで減圧することで、<110>、<112>方向のエッジ部の成長速度差を低減し、ウェーハ周方向のばらつきを、常圧で成長したときの3分の2以下まで是正し、外周フラットネスの良好な(111)エピタキシャルウェーハを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】主表面が(111)面のウェーハ表面における結晶方位の説明図。
図2】一般的なエピタキシャル成長装置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、(111)ウェーハにおいて高平坦なエピタキシャルウェーハを製造するための成長方法が求められていた。
【0021】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、主表面が(111)面のシリコンウェーハの表面に、シリコン系原料ガスを含むプロセスガスを供給してシリコン層をエピタキシャル成長させるエピタキシャルウェーハの製造方法であって、エピタキシャル成長において、反応温度を800~1150℃とし、プロセスガス中におけるシリコン系原料ガスの濃度を1.0×10-4~1.0×10-2mol/Lとし、反応炉の炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)以下とするエピタキシャルウェーハの製造方法を完成した。この製造方法により、<110>、<112>方向のエッジ部の成長速度差を低減し、ウェーハ周方向のばらつきを、常圧で成長したときの3分の2以下まで是正し、外周フラットネスの良好な(111)エピタキシャルウェーハを完成した。
【0022】
以下、本発明について図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
本発明の(111)面とは、実質上これと等価となる面も含まれるものであり、例えば、(111)面ジャストアングルのみならず、これに所望のオフアングルをしたものも含まれる。
【0024】
本発明の(111)ウェーハWとしては、主表面が(111)面であるシリコンウェーハを用いる。
【0025】
エピタキシャル成長について、図2を参照しながら説明する。図2は、一般的なエピタキシャル成長装置の一例を示す図である。エピタキシャル成長装置10は、エピタキシャル成長を行う反応炉(反応室)11とプロセスガス供給部12を備える。なお、エピタキシャル成長装置10の構造は、特に限定されない。プロセスガス供給部12からプロセスガスが供給され、温度が調整された(111)ウェーハW上でエピタキシャル成長を行うことができるものである。
【0026】
エピタキシャル成長において、(111)ウェーハWの反応温度は、800℃より低温では、エピタキシャル欠陥が増加する。逆に1150℃より高温では、スリップの発生やプロセスガスの気相反応の影響が強くなる。そのため、エピタキシャル成長において、反応温度を900~1150℃とする。
【0027】
本発明に係るプロセスガスは、シリコン系原料ガスの他、キャリアガスやドーパントなどを含み、シリコンのエピタキシャル成長が可能なガスである。プロセスガス中におけるシリコン系原料ガスの濃度は、1.0×10-4mol/Lより低濃度では、成長速度の低下による生産性が低下する。1.0×10-2mol/Lより高濃度では、エピタキシャル欠陥が増加する。そのため、プロセスガス中におけるシリコン系原料ガスの濃度は1.0×10-4~1.0×10-2mol/Lとする。
【0028】
また、エピタキシャル反応時、反応炉の炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)以下とする。これにより<110>、<112>方向のエッジ部の成長速度差を低減し、ウェーハ周方向のばらつきを、常圧で成長したときの3分の2以下まで是正し、外周フラットネスの良好な(111)エピタキシャルウェーハを製造することできる。また、反応炉の炉内圧の下限値は特に限定されないが、1.33×10Pa(1Torr)以上とすることが好ましい。1.33×10Pa(1Torr)未満にするには長時間が必要とされ、生産性の低下を招いてしまう。
【0029】
上記の主表面が(111)面のシリコンウェーハとして、直径300mmのシリコンウェーハを好適に用いることができる。このようなシリコンウェーハを用いれば、高い生産性で、大直径でありながら、外周フラットネスがより良好な(111)エピタキシャルウェーハを製造することができる。
【0030】
上記シリコン系原料ガスは、トリクロロシラン(TCS)、ジクロロシラン(DCS)、又はモノシランを好適に用いることができる。これらの化合物を用いれば、外周フラットネスが更に良好な(111)エピタキシャルウェーハを安価に製造することが可能となる。
【0031】
また、本発明で得られるエピタキシャルウェーハは、主表面が(111)面であるシリコンエピタキシャルウェーハであって、エピタキシャル成長前後のサイトフラットネスの差分であるΔESFQRのウェーハ周方向のばらつき量をX、エピタキシャル成長膜の膜厚をTとしたとき、エピタキシャル成長膜の膜厚Tに対するΔESFQRのウェーハ周方向のばらつきの割合(X/T)×100が0.6%以下のものである。
【0032】
上記エピタキシャルウェーハは、ウェーハ周方向のばらつきを、常圧で成長したときの3分の2以下まで是正し、外周フラットネスの良好な(111)エピタキシャルウェーハである。
【実施例
【0033】
以下、実施例及び比較例を参照して説明する。
【0034】
(実施例1)
評価するシリコンウェーハとして、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、トリクロロシラン(TCS)を反応ガスとして、反応ガスのガス濃度を9.4×10-4mol/L、反応温度を1080℃、炉内圧を6.66×10Pa(50Torr)としてエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2(KLA Tencor社製)にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.43%となった。
【0035】
(実施例2)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.60%となった。
【0036】
(実施例3)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをジクロロシラン(DCS)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.43%となった。
【0037】
(実施例4)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをジクロロシラン(DCS)、炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.59%となった。
【0038】
(実施例5)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをモノシラン(SiH)、反応温度を900℃とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.38%となった。
【0039】
(実施例6)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをモノシラン(SiH)、反応温度を900℃、炉内圧を1.33×10Pa(100Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.52%となった。
【0040】
(比較例1)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、炉内圧を2.66×10Pa(200Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.83%となった。
【0041】
(比較例2)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、炉内圧を5.33×10Pa(400Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.90%となった。
【0042】
(比較例3)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、炉内圧を1.01×10Pa(760Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.95%となった。
【0043】
(比較例4)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをジクロロシラン(DCS)、炉内圧を2.66×10Pa(200Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.80%となった。
【0044】
(比較例5)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをジクロロシラン(DCS)、炉内圧を5.33×10Pa(400Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.85%となった。
【0045】
(比較例6)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをジクロロシラン(DCS)、炉内圧を1.01×10Pa(760Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.90%となった。
【0046】
(比較例7)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをモノシラン(SiH)、反応温度を900℃、炉内圧を2.66×10Pa(200Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.70%となった。
【0047】
(比較例8)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをモノシラン(SiH)、反応温度を900℃、炉内圧を5.33×10Pa(400Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.75%となった。
【0048】
(比較例9)
評価するシリコンウェーハとして、実施例1と同様の、ポリッシュ加工し、表面を鏡面とした直径300mmの(111)シリコンウェーハを用いた。枚葉式エピタキシャル成長装置において、反応ガスをモノシラン(SiH)、反応温度を900℃、炉内圧を1.01×10Pa(760Torr)とする以外は、実施例1と同じ条件でエピタキシャル成膜を行った。成膜前のシリコンウェーハのESFQRと成膜後に得られたエピタキシャルウェーハのESFQRについて、Wafer-Sight2にて測定を行ったところ、エピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合は0.82%となった。
【0049】
表1に上記の実施例1~6及び比較例1~9の結果を示す。
【表1】
【0050】
表1の結果から、実施例1~6ではエピタキシャル膜の膜厚に対するΔESFQRのウェーハ周方向ばらつきの割合が0.60%以下であり、比較例1~9と比べて大幅に改善されていることがわかる。このように本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法を用いれば、ウェーハ周方向のばらつきを低減したエピタキシャルウェーハを得ることができる。すなわち、(111)面のシリコンウェーハにエピタキシャル成長する場合は、高平坦なエピタキシャルウェーハを得るためには、反応炉内圧を100Torr以下にする必要があることが判った。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
5…<112>結晶方向の外周端部、 10…エピタキシャル成長装置、
11…反応炉(反応室)、 12…プロセスガス供給部、
W…(111)ウェーハ。
図1
図2