(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】剥離装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240321BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2020028107
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 史哲
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-040546(JP,A)
【文献】特開2015-167205(JP,A)
【文献】特開2018-051646(JP,A)
【文献】特開2013-168488(JP,A)
【文献】特開2011-103373(JP,A)
【文献】特開2010-232428(JP,A)
【文献】特開2017-126412(JP,A)
【文献】特開2003-338474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークの一方の面を保護する保護部材を、該一方の面から剥離する剥離装置であって、
保持面によって該板状ワークの他方の面を保持する保持手段と、該保持面に保持された該板状ワークの該一方の面を覆う該保護部材の外周部分を把持し、該保護部材を剥離する剥離手段と、を備え、
該剥離手段は、該保護部材の外周部分を把持する把持部と、
該把持部を該一方の面から遠ざかる方向に移動させつつ該把持部と該保持手段とを相対的に該保持面に平行な方向に移動させ、該把持部を該保持面の外周から中心に向かわせ、該保持面の該中心を通過した該把持部を該中心から遠ざかる方向へと一直線上に移動させる移動手段と、該把持部と該保持面との間に介在する該保護部材に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部と、を備え、
該引っ張り荷重測定部は、該保持面に平行な方向の水平方向引っ張り荷重を測定する水平方向引っ張り荷重測定部と、該一方の面から遠ざかる方向のZ軸方向引っ張り荷重を測定するZ軸方向引っ張り荷重測定部と、該水平方向引っ張り荷重測定部の測定値と該Z軸方向引っ張り荷重測定部の測定値と下記の式とを用いて引っ張り荷重を算出する算出部と、を備え、
(水平方向引っ張り荷重Fx)
2
+(Z軸方向引っ張り荷重Fz)
2
=(引っ張り荷重F)
2
該引っ張り荷重測定部によって該保護部材に掛かる引っ張り荷重を測定することによって該剥離手段の剥離動作を最適化させる剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状ワークから保護部材を剥離する剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テープマウンタは、保護テープを一方の面に貼着したウェーハの他方の面とリングフレームとにダイシングテープを貼着して、ウェーハをダイシングテープを介してリングフレームで支持可能な状態にすることができる。また、ダイシングテープを貼着した後、ウェーハに貼着されている保護テープを剥離している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
保護テープを剥離する際は、例えば、保護テープの外周部分に剥離テープを貼着させ、剥離テープを把持してウェーハから離間する方向に引っ張ることで保護テープを剥離している。しかし、保護テープを剥離する際の保護テープを引っ張る速度が速いと保護テープの糊がウェーハの一方の面に残る可能性がある、または、ウェーハを破損させる可能性があるという問題が有る。対して、保護テープを引っ張る速度が遅いと無駄な時間がかかり作業効率が落ちるという問題がある。
【0005】
また、保護テープが貼着されたウェーハの一方の面に形成されるデバイスの種類等によって、保護テープの粘着力は異なる。つまり、同じ保護テープだとしても、ウェーハに形成されたデバイスによって強く粘着される場合と、弱く粘着される場合とがあり、粘着力の違いによって剥離させる時の引っ張り力(引っ張り速度)を変える必要がある。
【0006】
さらに、円形の保護テープの剥離開始当初の小さな剥離領域と、ウェーハの中央付近まで保護テープが剥離された時の大きな剥離領域とにより、引っ張る力が異なるのでウェーハが受ける力も保護テープが剥離されている位置によって異なる。しかし、従来は、ウェーハ毎に剥離する剥離速度を徐々に早くして、剥離実験を繰り返し、所定の剥離速度を決定して該剥離速度で剥離していくか、ウェーハを破損させる可能性が無いという余裕をもった安全な速度を設定して剥離させていくかであったため、無駄な時間がかかっていた。
【0007】
したがって、ウェーハの一方の面に形成した保護テープ等の保護部材をウェーハから剥離する剥離装置においては、保護部材をウェーハから剥離する際に、ウェーハが割れたり、ウェーハに糊残り等が発生したりしないようにしつつ、かつ、無駄な時間を掛けずに保護部材をウェーハから剥離するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、板状ワークの一方の面を保護する保護部材を、該一方の面から剥離する剥離装置であって、保持面によって該板状ワークの他方の面を保持する保持手段と、該保持面に保持された該板状ワークの該一方の面を覆う該保護部材の外周部分を把持し、該保護部材を剥離する剥離手段と、を備え、該剥離手段は、該保護部材の外周部分を把持する把持部と、該把持部を該一方の面から遠ざかる方向に移動させつつ該把持部と該保持手段とを相対的に該保持面に平行な方向に移動させ、該把持部を該保持面の外周から中心に向かわせ、該保持面の該中心を通過した該把持部を該中心から遠ざかる方向へと一直線上に移動させる移動手段と、該把持部と該保持面との間に介在する該保護部材に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部と、を備え、該引っ張り荷重測定部は、該保持面に平行な方向の水平方向引っ張り荷重を測定する水平方向引っ張り荷重測定部と、該一方の面から遠ざかる方向のZ軸方向引っ張り荷重を測定するZ軸方向引っ張り荷重測定部と、該水平方向引っ張り荷重測定部の測定値と該Z軸方向引っ張り荷重測定部の測定値と下記の式とを用いて引っ張り荷重を算出する算出部と、を備え、
(水平方向引っ張り荷重Fx)
2
+(Z軸方向引っ張り荷重Fz)
2
=(引っ張り荷重F)
2
該引っ張り荷重測定部によって該保護部材に掛かる引っ張り荷重を測定することによって該剥離手段の剥離動作を最適化させる剥離装置である。
【0009】
前記引っ張り荷重測定部は、前記保持手段を支持する支持部に配設された圧電素子からなると好ましい。
【0010】
前記引っ張り荷重測定部は、前記把持部を支持する把持部支持部に配設された圧電素子からなると好ましい。
【0011】
前記保護部材は、保護テープであって、前記板状ワークは、外周部分に切り欠き部を備え、前記保持手段は、該切り欠き部に位置する該板状ワークに貼着されていない該保護テープを突き上げ該切り欠き部付近の該保護テープを該板状ワークから剥離させる部分剥離部を備え、前記把持部は、該部分剥離部によって剥離された該保護テープの外周部分を把持すると好ましい。
【0012】
前記保護部材は、保護テープであって、該保護テープの外周部分に剥離テープを貼着する剥離テープ貼着手段を備え、前記把持部は、保護テープの外周部分を把持するのに代えて、該保護テープに貼着した該剥離テープを把持し、前記引っ張り荷重測定部は、該把持部と該保持面との間に介在する該保護テープと一体となった該剥離テープに掛かる引っ張り荷重を測定すると好ましい。
【0013】
前記保護部材は、前記板状ワークの外周から僅かにはみ出したはみ出し部を有していて、前記把持部は、該はみ出し部を把持すると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る剥離装置は、剥離手段は、保護部材の外周部分を把持する把持部と、把持部と保持手段とを相対的に保持面に平行な方向に移動させ、把持部を保持面の外周から中心に向かわせ、保持面の中心を通過した把持部を中心から遠ざかる方向へと一直線上に移動させる移動手段と、把持部と保持面との間に介在する保護部材に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部と、を備えているため、引っ張り荷重測定部によって保護部材に掛かる引っ張り荷重を測定することで剥離手段の剥離動作を最適化させることができる。即ち、ウェーハが割れたり、ウェーハに糊残り等が発生したりしないようにしつつ、かつ、無駄に時間をかけること無い最適な剥離速度で保護部材をウェーハから剥離することが可能となる。
【0015】
引っ張り荷重測定部は、保持手段を支持する支持部に配設された圧電素子からなると、保護部材に掛かる引っ張り荷重を正確に測定することが可能となる。
【0016】
引っ張り荷重測定部は、把持部を支持する把持部支持部に配設された圧電素子からなると、保護部材に掛かる引っ張り荷重を正確に測定することが可能となる。
【0017】
保護部材は、保護テープであって、板状ワークは、外周部分に切り欠き部を備え、保持手段は、切り欠き部に位置する板状ワークに貼着されていない保護テープを突き上げ切り欠き部付近の保護テープを板状ワークから剥離させる部分剥離部を備えることで、把持部が、部分剥離部によって剥離された保護テープの外周部分を容易に把持することが可能となる。
【0018】
保護部材は、保護テープであって、保護テープの外周部分に剥離テープを貼着する剥離テープ貼着手段を備えることで、把持部は、保護テープの外周部分を把持するのに代えて、保護テープに貼着した剥離テープを把持し、引っ張り荷重測定部は、保護テープに掛かる引っ張り荷重を測定することに代えて、把持部と保持面との間に介在する保護テープと一体となった剥離テープに掛かる引っ張り荷重を測定することで、剥離手段の剥離動作を最適化させることが可能となる。
【0019】
保護部材は、板状ワークの外周から僅かにはみ出したはみ出し部を有していることで、把持部が保護部材の外周部分のはみ出し部を容易に把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1の剥離装置を説明するための斜視図である。
【
図2】保持手段をX軸方向に移動させ、かつ、把持部を保持手段の保持面に対して水平方向に向かって移動させながら、把持部側引っ張り荷重測定部により引っ張り荷重を測定しつつ、板状ワークから保護テープを剥離する場合を説明する断面図である。
【
図3】保持手段をX軸方向に移動させ、かつ、把持部を移動させないで、テーブル側引っ張り荷重測定部により引っ張り荷重を測定しつつ、板状ワークから保護テープを剥離する場合を説明する断面図である。
【
図4】板状ワークの切り欠き部付近の保護テープを板状ワークから剥離させる部分剥離部を備える保持手段を説明するための断面図である。
【
図5】実施形態2の剥離装置を説明するための斜視図である。
【
図6】実施形態2の剥離装置において、保護部材の剥離を開始するにあたって、把持部の把持クランプがはみ出し部を把持した状態を示す断面図である。
【
図7】実施形態2の剥離装置において、保護部材の剥離を開始するにあたって、把持部の把持クランプがはみ出し部の一部を板状ワークの外周縁から剥がした状態を説明する断面図である。
【
図8】実施形態2の剥離装置において、保護部材の剥離を開始するにあたって、把持部の把持クランプがはみ出し部の一部を板状ワークの外周縁から剥がした後回転ローラの側面に保護部材をならわせた状態を説明する断面図である。
【
図9】保持手段をY軸方向に移動させ、かつ、把持部を保持手段の保持面に対して斜め下方に向かって移動させながら、把持部側引っ張り荷重測定部により引っ張り荷重を測定しつつ、板状ワークから保護部材を剥離する場合を説明する断面図である。
【
図10】保持手段をY軸方向に移動させ、かつ、把持部を移動させないで、パッド側引っ張り荷重測定部により引っ張り荷重を測定しつつ、板状ワークから保護部材を剥離する場合を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(剥離装置の実施形態1)
図1に示す本発明に係る剥離装置1(以下、実施形態1の剥離装置1とする。)は、帯状の剥離テープ83を用いて、板状ワーク80の
図1における上面である一方の面800に貼着されている保護部材である保護テープ81を剥離する剥離装置の一例であり、保持面302によって板状ワーク80の他方の面801を保持する保持手段30と、保持面302に保持された板状ワーク80の一方の面800を覆う保護テープ81の外周部分を把持し、保護テープ81を板状ワーク80の外周から中央に向かって剥離し、更に中央から外周の反対側の外周へと剥離する剥離手段4と、を少なくとも備えている。
【0022】
図1に示す板状ワーク80は、例えば、シリコンを母材とする外形が円形の半導体ウェーハであり、その一方の面800は、直交差する複数の分割予定ライン804で格子状に区画されており、格子状に区画された各領域にはIC等のデバイス805がそれぞれ形成されている。
板状ワーク80の一方の面800全面を覆うように貼着されている保護部材は、本実施形態においては、例えば、ある程度の柔軟性を有した樹脂(例えば、ポリオレフィン系樹脂等)からなる基材層と基材層上の粘着層(糊層)とを備える保護テープ81である。
なお、板状ワーク80はシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、セラミックス、樹脂、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよいし、保護部材も保護テープ81に限定されるものではない。
【0023】
例えば、板状ワーク80は一方の面800の反対面である他方の面801(
図1における下面)に板状ワーク80よりも大径のダイシングテープ82が貼着されている。そして、ダイシングテープ82の糊層の外周部が環状フレーム84にも貼着されていることで、板状ワーク80は、ダイシングテープ82を介して環状フレーム84に支持され、環状フレーム84によるハンドリングが可能である。
【0024】
剥離装置1は、X軸方向に延在する直方体状の基台10を有しており、基台10の上には、保持手段30をX軸方向に往復移動させるテーブル移動手段13が配設されている。テーブル移動手段13は、基台10に配設されたボールネジ130と、ボールネジ130の一端に接続されたモータ132と、ボールネジ130と平行に延在する一対のガイドレール131と、X軸方向に移動可能な可動部材133とを備えている。可動部材133の上面には、保持手段30が支持部31を介して配設されている。可動部材133の下面には、一対のガイドレール131が摺接し、可動部材133の下面に配設された図示しないナットにはボールネジ130が螺合している。モータ132によって駆動されてボールネジ130が回動することにより、可動部材133とともに保持手段30がガイドレール131に沿ってX軸方向に移動する。
【0025】
テーブル移動手段13は、剥離手段4の一部であり、把持部41と保持手段30とを相対的に保持面302に平行なX軸方向に移動させ、把持部41を保持面302の外周から中心に向かわせ、保持面302の中心を通過した把持部41を中心から遠ざかる方向へと一直線上に移動させる移動手段として機能する。
【0026】
保持手段30は、本実施形態においては、保持テーブルであり、ポーラス部材等からなり板状ワーク80を吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は、真空発生装置等の図示しない吸引源に連通し、吸引源が吸引することで生み出された吸引力が、吸着部300の露出面である平坦な保持面302に伝達されることで、保持手段30は保持面302上で板状ワーク80を吸引保持できる。
【0027】
例えば、保持手段30は、環状フレーム84を固定するフレーム固定手段32によって周囲を囲繞されている。平面視環状の外形を備え環状フレーム84が載置されるフレーム固定手段32は、図示しない吸引源が生み出す吸引力により環状フレーム84を吸引固定する構成となっており、周方向に均等に配設されたピストン機構33によってZ軸方向(鉛直方向)に上下動可能となっている。なお、フレーム固定手段32の代わりに、クランプがバネ等によって開閉するメカニカルクランプが保持手段30の周囲に複数配設されていてもよい。
【0028】
例えば、剥離手段4は、後述する
図1に示す把持部41と保持面302との間に介在する保護テープ81に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部として、保持手段30を支持する支持部31に配設された圧電素子からなる引っ張り荷重測定部35を備えている。以下、引っ張り荷重測定部35を、テーブル側引っ張り荷重測定部35とする。
【0029】
本実施形態において、保持手段30を支持する支持部31は、例えば、円筒形状を備えており、テーブル側引っ張り荷重測定部35は、支持部31のテーブル移動手段13の可動部材133との接続部位に配設されている。即ち、テーブル側引っ張り荷重測定部35は、支持部31と可動部材133との間に上下方向(Z軸方向)から挟まれ、支持部31上に装着された保持手段30の重量を支える形で配設される。そして、本実施形態において、テーブル側引っ張り荷重測定部35は、保持手段30の下方にX軸方向において対向するように2つ配設されている。即ち、テーブル側引っ張り荷重測定部35は、第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351と、第2のテーブル側引っ張り荷重測定部352とで構成されている。
【0030】
第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351(第2のテーブル側引っ張り荷重測定部352)である圧電素子は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、リチウムナイオベート(LiNbO3)、又はリチウムタンタレート(LiTaO3)等の材料で平板状又は柱状に形成されており、受けた荷重を電圧信号に変換して、剥離装置1の装置全体の制御を行う制御手段19に出力することができる。
【0031】
保持手段30の移動経路上方には、保持手段30に保持される板状ワーク80の保護テープ81を剥離する剥離手段4が配設されており、剥離手段4は、例えば、所定の長さで剥離テープ83を切断するテープ切断手段40と、剥離テープ83がロール状に巻回されたテープロール831から剥離テープ83を引き出し板状ワーク80の一方の面800に貼着された保護テープ81に供給する剥離テープ供給手段42と、保護テープ81の外周部分に剥離テープ83を貼着する剥離テープ貼着手段44と、保護テープ81に貼着した剥離テープ83を把持する把持部41と、剥離テープ貼着手段44及び把持部41をX軸方向に移動させるX軸方向移動手段46とを備えている。
【0032】
X軸方向移動手段46は、把持部41と保持手段30とを相対的に保持面302に平行なX軸方向に移動させ、把持部41を保持面302の外周から中心に向かわせ、保持面302の中心を通過した把持部41を中心から遠ざかる方向へと一直線上に移動させる移動手段として機能する。
具体的には、X軸方向移動手段46は、X軸方向の軸心を有するボールネジ460と、ボールネジ460と平行に配設された一対のガイドレール461と、ボールネジ460に連結しボールネジ460を回動させるモータ462と、内部のナットがボールネジ460に螺合し側部がガイドレール461に摺接する可動板463とを備え、モータ462がボールネジ460を回動させると、これに伴い可動板463がガイドレール461にガイドされてX軸方向に往復移動し、可動板463に取り付けられた剥離テープ貼着手段44及び把持部41もX軸方向に往復移動する。
【0033】
剥離テープ供給手段42は、テープロール831が装着された巻筒420と、テープロール831から引き出された剥離テープ83を下方にガイドする一対のガイドローラ421と、一対のガイドローラ421の下方側に配置された一対の送り出しローラ422とを備えている。巻筒420には、図示しない制御機構によってバックテンションがかけられており、テープロール831から引き出された剥離テープ83に弛みが生じないように張り具合が調整されている。一対のガイドローラ421は、剥離テープ83を挟みながら折り返してテンションをかけつつ一対の送り出しローラ422に向けてガイドし、一対の送り出しローラ422は、剥離テープ83を把持部41に向けて送り出すことができる。
【0034】
剥離テープ83は、例えば、保護テープ81の外周部分に熱を加えて接着される接着剤層と基材とからなる2層構造のヒートシールである。基材の材質は、例えばポリエチレンテレフタレート等の樹脂からなる。接着剤層は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で構成されている。剥離テープ83の保護テープ81に対する粘着力は、保護テープ81の板状ワーク80に対する粘着力よりも強く設定されている。かかる剥離テープ83は、内側(伸ばされた状態における下面側)に接着剤層が位置する状態で巻回されてテープロール831となっている。なお、剥離テープ83は、ヒートシールに限定されない。
【0035】
図1に示すX軸方向移動手段46の可動板463の側面に固定された支持台480には、把持部支持部48が取り付けられており、さらに把持部支持部48によって把持部41を構成する一対の把持爪412が上下動可能となっている。
【0036】
一対の把持爪412は、例えば、側面視略L字状の固定爪4121と、固定爪4121とZ軸方向において対向して配設され固定爪4121に対して接近又は離間可能な可動爪4122とを備えている。把持部41では、固定爪4121に対して可動爪4122を接近させることにより剥離テープ83の一端をその間に把持することができる。そして、剥離テープ83を把持した一対の把持爪412を、把持部支持部48により保持手段30に保持された板状ワーク80の保護テープ81上のテープ貼着に適切な高さ位置に位置づけることができる。一方、固定爪4121から可動爪4122を離間させることにより把持部41における剥離テープ83の一端の把持状態を解除することができる。
【0037】
図1に示す剥離テープ貼着手段44は、一対の送り出しローラ422と把持部41との間に配設されている。剥離テープ貼着手段44は、X軸方向移動手段46の可動板463の側面に固定された支持台440と、エアシリンダ等からなり支持台440によって支持された押付板昇降機構441と、押付板昇降機構441によって上下動可能となっている押付板442とを備えている。
【0038】
押付板442には電流を流すことで発熱する図示しないヒータが取り付けられており、押付板昇降機構441によって押付板442を下降させて保護テープ81の外周部分に剥離テープ83を押し付けて貼着する際には、図示しないヒータが押付板442を加熱することで、保護テープ81に剥離テープ83を部分的に熱溶着させることができる。これにより、剥離テープ83を保護テープ81に対して良好に貼着することができる。
【0039】
テープ切断手段40は、例えば、一対の送り出しローラ422と剥離テープ貼着手段44との間に配設されている。テープ切断手段40は、剥離テープ83の接着剤層側(下側)が載置される載置面404及び載置面404を剥離テープ83の幅方向(X軸方向に水平面内において直交するY軸方向)に横断する溝405を備える載置台400と、溝405の延在方向に沿って溝405内を進行させるカッター401と、カッター401をカッター昇降手段403を介して支持しカッター401を溝405の延在方向(Y軸方向)に移動させるボールネジ機構であるカッター移動手段402と、エアシリンダ等からなりカッター401を載置面404に対してZ軸方向に昇降させるカッター昇降手段403と、を備えている。
【0040】
例えば、剥離手段4は、把持部41と保持面302との間に介在する保護テープ81に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部として、把持部41を支持する把持部支持部48に配設された圧電素子からなる引っ張り荷重測定部47を備えている。以下、引っ張り荷重測定部47を、把持部側引っ張り荷重測定部47とする。そして、把持部側引っ張り荷重測定部47は、例えば、上下方向荷重測定圧電素子471と、水平方向荷重測定圧電素子472とを備えている。
なお、剥離装置1は、引っ張り荷重測定部として、テーブル側引っ張り荷重測定部35、又は把持部側引っ張り荷重測定部47の少なくともいずれか一方を備えていればよい。
【0041】
把持部支持部48は、例えば、ピストンロッド483がシリンダチューブ484内からZ軸方向に上下動可能である電動シリンダ等である。そして、例えば、上下方向荷重測定圧電素子471は、円柱状の外形を備えており、二本のロッドを上下連結させて一本のピストンロッド483とするように、ピストンロッド483に一体的に配設されている。
【0042】
水平方向荷重測定圧電素子472は、例えば、平板状に形成されており、ピストンロッド483の先端部と固定爪4121との連結部位に両部材によってX軸方向両側から挟まれた状態で配設されている。
なお、上下方向荷重測定圧電素子471、及び水平方向荷重測定圧電素子472は、先に説明したテーブル側引っ張り荷重測定部35と同様の材質で構成されている。
【0043】
例えば、把持部41の移動経路下方となる位置には、剥離手段4が剥離した保護テープ81を投下させて回収する回収ボックス17が配設されている。
【0044】
剥離装置1は、例えば、装置の各構成の制御を行う制御手段19を備えており、制御手段19は、制御プログラムに従って演算処理するCPU及びメモリ等の記憶媒体等から構成されており、図示しない有線又は無線の通信経路を介して、テーブル移動手段13、X軸方向移動手段46、及び把持部41を昇降移動させる電動シリンダ等の把持部支持部48等に電気的に接続されており、制御手段19によるテーブル移動手段13の制御の下で、板状ワーク80を吸引保持した保持手段30のX軸方向における移動速度の制御や把持部41等に対する位置合わせ制御がなされる。また、制御手段19によるX軸方向移動手段46及び把持部支持部48の制御の下で、板状ワーク80の保護テープ81に貼着された剥離テープ83を把持する把持部41の移動速度の制御や位置合わせの制御等が行われる。なお、例えば、制御手段19によるX軸方向移動手段46の制御は、モータ462の回転数の制御によって行われる。また、制御手段19は、テーブル側引っ張り荷重測定部35、及び把持部側引っ張り荷重測定部47から、それぞれの荷重測定部が測定した引っ張り荷重についての情報を受け取ることができる。
【0045】
例えば、テーブル移動手段13のモータ132がサーボモータである場合には、サーボモータのロータリエンコーダは、サーボアンプとしての機能も有する制御手段19に接続されており、制御手段19の出力インターフェイスからサーボモータに対して動作信号が供給された後、サーボモータの回転数をエンコーダ信号として制御手段19の入力インターフェイスに対して出力する。そして、エンコーダ信号を受け取った制御手段19は、モータ132の回転角度を基に保持手段30の移動量を逐次認識し、これによって保持手段30のX軸方向における位置を逐次認識することができる。
【0046】
次に、
図1に示す剥離装置1を用いて、板状ワーク80から保護テープ81を剥離する場合について説明する。
まず、環状フレーム84と一体となった板状ワーク80が、保持手段30の保持面302に保護テープ81を上側に向けた状態で載置されると共に、保持手段30の外周側に配設されたフレーム固定手段32に環状フレーム84が載置される。続いて、図示しない吸引源が作動して、保持面302で板状ワーク80が吸引保持されると共に、フレーム固定手段32によって環状フレーム84が吸引固定される。そして、環状フレーム84が、例えば保持面302よりも低い位置まで引き下げられる。
【0047】
図1に示した一対のガイドローラ421によって、テープロール831から剥離テープ83が把持部41に向けて送り出される。剥離テープ83の接着剤層側(内側)がテープ切断手段40の載置台400の載置面404に載置され、さらに、剥離テープ83の一端が把持部41の固定爪4121の上面に位置付けられたら、可動爪4122が固定爪4121に対して接近して把持部41が剥離テープ83の一端を把持する。次いで、X軸方向移動手段46によって把持部41が-X方向に移動して把持された剥離テープ83が同方向に引っ張られる。この段階では、剥離テープ83の上方側に剥離テープ貼着手段44の押付板442及びテープ切断手段40のカッター401が待機した状態となっている。
【0048】
例えば保持手段30が+X方向に移動して、剥離テープ貼着手段44の真下に保護テープ81の外周部分を位置付ける。続いて、内部に備える図示しないヒータにより加熱された押付板442が下降して、押付板442の下端で剥離テープ83を上方から保護テープ81の外周部分に押し付け、剥離テープ83の接着剤層を保護テープ81に熱溶着させる。
【0049】
この状態で、カッター401が剥離テープ83の一方の側辺側から露出した載置台400の溝405の一端の位置に位置付けられる。さらに、カッター昇降手段403によって、カッター401の最下端が溝405内に至るまでカッター401が下降する。さらに、カッター401が溝405の延在方向に沿って-Y方向に進行し、カッター401によって剥離テープ83が切断される。カッター401が剥離テープ83を切断した後、カッター401及び押付板442は、+Z方向に上昇して剥離テープ83から退避する。
【0050】
(剥離装置1における保護テープ81の剥離の実施形態A)
保護テープ81の剥離において、保持手段30をX軸方向に移動させ、かつ、把持部41を保持手段30の保持面302から所定の距離上に位置づけた後、水平方向に移動させる場合について説明する。
剥離テープ83を把持する把持部41が+Z方向に移動して、板状ワーク80の一方の面800から保護テープ81の一部が剥離される。次いで、X軸方向移動手段46により把持部41を-X方向に移動させる。また、テーブル移動手段13によって保持手段30を+X方向に移動させて、把持部41を相対的に板状ワーク80の外周縁から中心に向かって径方向に移動させ板状ワーク80から保護テープ81を剥離していく。なお、保持手段30の移動経路上方に図示しない回転ローラを配設し、該回転ローラに保護テープ81を当接させつつ剥離を行っていくことで、保護テープ81の剥離の際に起き得る保護テープ81の折れの発生を抑制させるものとしてもよい。
【0051】
なお、例えば、把持部41を相対的に板状ワーク80の外周縁から中心に向かって径方向に移動させ板状ワーク80から保護テープ81を剥離できればよいため、例えば、保持手段30は+X方向には移動せず、把持部41のみが-X方向に移動することにより保護テープ81が剥離されるものとしてもよい。
【0052】
本実施形態において、上記板状ワーク80からの保護テープ81の剥離において、
図2に示す把持部側引っ張り荷重測定部47は、把持部41と保持面302との間に介在する保護テープ81と一体となった剥離テープ83に掛かる引っ張り荷重を正確に測定することができる。
【0053】
例えば、把持部側引っ張り荷重測定部47による引っ張り荷重の測定は、上下方向荷重測定圧電素子471と水平方向荷重測定圧電素子472とによって行われる。なお、
図2において、剥離手段4及び保持手段30等の構成を一部簡略化して示している。
図2において、斜め上方に向く矢印F1は、把持部41と保持手段30の保持面302との間に介在する保護テープ81と一体となった剥離テープ83に掛かる引っ張り荷重F1を示している。そして、引っ張り荷重F1は、
図2に示す向きが-X方向であるX軸方向引っ張り荷重Fx1と、向きが+Z方向であるZ軸方向引っ張り荷重Fz1とが合成された引っ張り荷重F1である。そして、ピタゴラスの定理より下記の式1が成立する。
(X軸方向引っ張り荷重Fx1)
2+(Z軸方向引っ張り荷重Fz1)
2=(引っ張り荷重F1)
2・・・・(式1)
【0054】
ここで、X軸方向引っ張り荷重Fx1は、水平方向荷重測定圧電素子472によって所定の時間間隔毎に測定される。即ち、X軸方向引っ張り荷重Fx1により水平方向荷重測定圧電素子472が僅かに変形し、水平方向荷重測定圧電素子472には荷重に応じた電位差が発生する。水平方向荷重測定圧電素子472に電位差が生じることで、水平方向荷重測定圧電素子472から荷重検出信号が
図1に示す制御手段19に測定毎に送られる。また、Z軸方向引っ張り荷重Fz1は、上下方向荷重測定圧電素子471によって所定の時間間隔毎に測定され、測定毎に荷重検出信号が制御手段19に送られる。
【0055】
制御手段19は、式1にX軸方向引っ張り荷重Fx1についての実測値とZ軸方向引っ張り荷重Fz1についての実測値とを代入する演算処理を行い、所定の時間間隔毎の引っ張り荷重F1を測定する。そして、制御手段19は、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F1を、剥離手段4による保護テープ81の剥離動作を最適化させるための情報として用いる。即ち、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F1の値によって、例えば、X軸方向移動手段46による把持部41の-X方向への移動速度が制御手段19によって最適化される。その結果、把持部41が保護テープ81と一体となった剥離テープ83を剥離する際の引っ張り荷重F1が、板状ワーク80が割れたり、板状ワーク80に糊残り等が発生したりしない最適な引っ張り荷重となるようフィードバック制御がなされた状態になる。また、把持部41による剥離速度も遅すぎることが無くなり、無駄な時間を掛けること無く保護テープ81が板状ワーク80から剥離されていく。
【0056】
保護テープ81が板状ワーク80の一方の面800から完全に剥離されると、保護テープ81に貼着された剥離テープ83を把持する把持部41が、回収ボックス17上まで移動する。そして、把持部41は、剥離テープ83の把持を解除し、保護テープ81及び剥離テープ83を回収ボックス17内に落下させる。
【0057】
本実施形態のように、板状ワーク80を保護する保護部材は、保護テープ81であって、保護テープ81の外周部分に剥離テープ83を貼着する剥離テープ貼着手段44を備えることで、把持部41は、保護テープ81の外周部分を把持するのに代えて、保護テープ81に貼着した剥離テープ83を把持し、把持部側引っ張り荷重測定部47は、保護テープ81に掛かる引っ張り荷重を測定することに代えて、把持部41と保持面302との間に介在する保護テープ81と一体となった剥離テープ83に掛かる引っ張り荷重を測定することで、剥離手段4の剥離動作を最適化させることが可能となる。
【0058】
(剥離装置1における保護テープ81の剥離の実施形態B)
剥離テープ83を把持する把持部41が+Z方向に移動して、板状ワーク80の一方の面800から保護テープ81の一部が剥離された後、さらに保護テープ81を剥離していくにあたり、
図3に示すように、保持手段30をX軸方向に移動させ、かつ、把持部41をX軸方向移動手段46で移動させない場合について説明する。
本場合において、把持部41は、所定の高さ位置及び所定のX軸方向における位置P2に停止しており、制御手段19は、把持部41の位置している高さ位置及びX軸方向における位置P2を認識している。
【0059】
テーブル移動手段13によって保持手段30を+X方向に移動させて、移動が停止している把持部41を相対的に板状ワーク80の外周縁から中心に向かって径方向に移動させ板状ワーク80から保護テープ81を剥離していく。なお、保持手段30の移動経路上方に図示しない回転ローラを配設し、該回転ローラに保護テープ81を当接させつつ剥離を行っていくことで、保護テープ81の剥離の際に起き得る保護テープ81の折れの発生を抑制させるものとしてもよい。
【0060】
本実施形態において、上記板状ワーク80からの保護テープ81の剥離において、テーブル側引っ張り荷重測定部35は、把持部41と保持面302との間に介在する保護テープ81と一体となった剥離テープ83に掛かる引っ張り荷重を測定する。
図3において、矢印F2は、把持部41と保持手段30の保持面302との間に介在する保護テープ81と一体となった剥離テープ83に掛かる引っ張り荷重F2を示している。そして、引っ張り荷重F2は、
図3に示す向きが-X方向であるX軸方向引っ張り荷重Fx2と、向きが+Z方向であるZ軸方向引っ張り荷重Fz2とが合成された引っ張り荷重F2である。
【0061】
図3に示す矢印R1は、第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351がZ軸方向において、所定の時間間隔毎に測定することができる第1測定荷重R1である。第1測定荷重R1は、例えば、-Z方向の向きを有する。第1測定荷重R1の値についての情報は、所定の時間間隔毎に制御手段19に送られる。
矢印R2は、第2のテーブル側引っ張り荷重測定部352がZ軸方向において、所定の時間間隔毎に測定することができる第2測定荷重R2である。第2測定荷重R2は、例えば、+Z方向の向きを有する。第2測定荷重R2の値についての情報は、所定の時間間隔毎に制御手段19に送られる。
図3に示す第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351と第2のテーブル側引っ張り荷重測定部352とのX軸方向における距離L2は、制御手段19が予め認識している装置設計値であり、定数となる。
第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351からX軸方向における移動が停止しており位置P2に位置している把持部41までのX軸方向の変化距離Mは、保持手段30がX軸方向に移動することで変化する変数である。なお、テーブル移動手段13のモータ132(サーボモータ132)のロータリエンコーダから制御手段19にフィードバックされるエンコーダ信号によって、制御手段19は可動部材133と共に移動する第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351の位置を把握できるため、該変化距離Mの値についても制御手段19は所定の時間間隔毎に逐次認識することができる。
制御手段19が高さ位置を認識している第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351と位置P2に停止している把持部41とZ軸方向における距離Nは、制御手段19が予め認識する定数となる。
【0062】
ピタゴラスの定理より下記の式2が成立する。
(X軸方向引っ張り荷重Fx2)2+(Z軸方向引っ張り荷重Fz2)2=(引っ張り荷重F2)2・・・・(式2)
また、Z軸方向における力のつり合いから、下記の式3が成立する。
(Z軸方向引っ張り荷重Fz2)=(第1測定荷重R1)+(第2測定荷重R2)・・・・(式3)
【0063】
さらに、第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351を原点と仮定した場合の、第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351周りのモーメントのつり合いから、下記の式4が成立する。
(X軸方向引っ張り荷重Fx2)×(定数である距離N)=(第2測定荷重R2)×(距離L2)+(Z軸方向引っ張り荷重Fz2)×(変化距離M)・・・・(式4)
【0064】
式3から、制御手段19は、所定の時間間隔毎にZ軸方向引っ張り荷重Fz2を測定できる。
また、式4を変形した下記の式5から、制御手段19は、所定の時間間隔毎にX軸方向引っ張り荷重Fx2を測定できる。
(X軸方向引っ張り荷重Fx2)={(第2測定荷重R2)×(距離L2)+(Z軸方向引っ張り荷重Fz2)×(変化距離M)}/(定数である距離N)・・・・(式5)
【0065】
制御手段19は、式2にX軸方向引っ張り荷重Fx2についての値とZ軸方向引っ張り荷重Fz2についての値とを代入する演算処理を行い、所定の時間間隔毎に引っ張り荷重F2を測定する。そして、制御手段19は、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F2を、剥離手段4による保護テープ81の剥離動作を最適化させるための情報として用いる。即ち、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F2の値によって、例えば、テーブル移動手段13による保持手段30の移動速度が制御手段19によって最適化される。その結果、把持部41が保護テープ81と一体となった剥離テープ83を剥離する際の引っ張り荷重F2が、板状ワーク80が割れたり、板状ワーク80に糊残り等が発生したりしない最適な引っ張り荷重となるフィードバック制御がなされた状態になる。また、移動する保持手段30に対してX軸方向おいて相対的に移動する把持部41による剥離速度も遅すぎることが無くなり、無駄な時間を掛けること無く保護テープ81が板状ワーク80から剥離されていく。
【0066】
本実施形態のように、テーブル側引っ張り荷重測定部35、即ち、第1のテーブル側引っ張り荷重測定部351及び第2のテーブル側引っ張り荷重測定部352は、保持手段30を支持する支持部31に配設された圧電素子からなると、保護部材である保護テープ81に掛かる引っ張り荷重を正確に測定することが可能となる。
【0067】
保護テープ81が板状ワーク80の一方の面800から完全に剥離されると、保護テープ81に貼着された剥離テープ83を把持する把持部41が、回収ボックス17上まで移動する。そして、把持部41は、剥離テープ83の把持を解除し、保護テープ81及び剥離テープ83を回収ボックス17内に落下させる。
【0068】
本発明に係る実施形態1の剥離装置1は、上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されている剥離装置1の各構成要素の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0069】
例えば、板状ワーク80は、
図4に示すように、外周部分に切り欠き部806を備えていてもよい。切り欠き部806は、例えば、結晶方位を示すマークであるノッチであり、板状ワーク80の外周縁に板状ワーク80の中心に向けて径方向内側に窪んだ状態で形成されている。または、切り欠き部806は、オリエンテーションフラットであってもよい。この場合、板状ワーク80の外周の一部をフラットに切欠くことで切り欠き部806は形成されている。
【0070】
図1に示す保持手段30は、例えば、
図4に示すように、板状ワーク80の切り欠き部806に位置する板状ワーク80に貼着されていない保護テープ81を突き上げ切り欠き部806付近の保護テープ81を板状ワーク80から剥離させる部分剥離部34を備えていてもよい。そして、例えば、
図1に示す把持部41は、部分剥離部34によって剥離された保護テープ81の外周部分を把持して保護テープ81を板状ワーク80から剥離してもよい。
【0071】
保持面302に載置される板状ワーク80の切り欠き部806に対応するように、保持面302の外周には、部分剥離部34を構成し保持面302と保持手段30の下面(枠体301の下面)とを貫通させる円形状の貫通孔341が形成されている。具体的には、板状ワーク80の中心から切り欠き部806までの距離と、保持面302の中心から貫通孔341までの距離とが一致するように、貫通孔341が保持面302に配設される。
【0072】
また、貫通孔341の直径は切り欠き部806の幅より例えばわずかに小さく設定されている。部分剥離部34の貫通孔341の直下には、板状ワーク80の一方の面800に貼着された保護テープ81の一部を突き上げる突き上げピン342が、上下駆動部345によって上下動可能に設けられている。突き上げピン342は、上下方向に延在した棒状に形成されており、突き上げピン342の外径は、貫通孔341よりわずかに小さくなっている。例えば、突き上げピン342は、先端(上端)が尖った形状を有しており、板状ワーク80の他方の面801に貼着されたダイシングテープ82を突き破ることが可能になっている。
【0073】
また、例えば、突き上げピン342には、先端から流体を噴出する図示しない噴出孔が延在方向に沿って形成されている。噴出孔の下端にはバルブ346を介して流体供給源347が接続されており、バルブ346が開かれることで流体供給源347から突き上げピン342内に流体が供給される。なお、流体供給源347から供給される流体は特に限定されず、本実施の形態においては、流体として圧縮エアを用いることにする。
【0074】
上下駆動部345は、例えば、エア又はモータ駆動のガイドアクチュエータで構成されており、保持手段30の貫通孔341内で突き上げピン342を上下方向にガイドしながら上下動させることが可能になっている。
【0075】
このように、突き上げピン342は、噴出孔の出口からエアを噴出しながら上下駆動部345によって上昇され、ダイシングテープ82を突き破るように構成されている。また、突き上げピン342は、ダイシングテープ82を突き破った後に保持面302から突出して、板状ワーク80の切り欠き部806の上の保護テープ81を突き上げることが可能になっている。即ち、突き上げピン342の噴出孔からエアを噴出させ保護テープ81を浮上させながら、更に突き上げピン342を上昇させ保護テープ81の外周部分を突き上げる、もしくは突き上げピン342を上昇させ保護テープ81の外周部分を突き上げながら噴出孔からエアを噴出させて保護テープ81の外周部分を板状ワーク80から剥離させる。
そして、
図4に示す把持部41は、部分剥離部34によって剥離された保護テープ81の外周部分を把持して保護テープ81を板状ワーク80から剥離することができる。
【0076】
(剥離装置の実施形態2)
図5に示す本発明に係る剥離装置2(以下、実施形態2の剥離装置2とする。)は、板状ワーク80の
図5における下面である一方の面800に貼着されている保護部材85を剥離する剥離装置の一例であり、保持面502によって板状ワーク80の他方の面801を保持する保持手段50と、保持面502に保持された板状ワーク80の一方の面800を覆う保護部材85の外周部分を把持し、保護部材85を板状ワーク80の外周から中央に向かって剥離し、更に中央から外周の反対側の外周へと剥離する剥離手段6と、を少なくとも備えている。
【0077】
板状ワーク80の下方を向いている一方の面800の全面を覆うように貼着されている保護部材85は、例えば、図示しない保護部材形成装置において、板状ワーク80よりも大径の円形シート86上に供給された液状樹脂に板状ワーク80の一方の面800を押し付けて、板状ワーク80の中心から外周側に向けて液状樹脂を押し広げて一方の面800全面に液状樹脂をいきわたらせた後、この液状樹脂に例えば紫外線を照射することにより液状樹脂を硬化させて形成した樹脂膜87(
図6参照)と円形シート86とからなる保護部材である。そして、本実施形態において、保護部材85は、円形シート86と樹脂膜87とからなり板状ワーク80の外周から僅かに径方向外側にはみ出した
図6に示すはみ出し部850を備えている。
【0078】
図5に示す剥離装置2のベース20上の後方側(-X方向側)には、コラム21が立設されており、コラム21の+X方向側の前面の上部には、モータ602によりボールネジ600を回動させることで、可動板601に配設された保持手段50をY軸方向に往復移動させるパッド移動手段60が配設されている。
パッド移動手段60は、剥離手段6の一部であり、把持部61と保持手段50とを相対的に保持面502に平行なY軸方向に移動させ、把持部61を保持面502の外周から中心に向かわせ、保持面502の中心を通過した把持部61を中心から遠ざかる方向へと一直線上に移動させる移動手段として機能する。
【0079】
可動板601上には、Z軸方向に保持手段50を往復移動させるパッド昇降手段66が配設されている。パッド昇降手段66は、モータ662によりボールネジ660を回動させることで、可動板661上に配設された保持手段50をZ軸方向に往復移動させる。
【0080】
保持面502によって板状ワーク80の他方の面801を保持する保持手段50は、可動板661上に一端が固定されX軸方向に延在するアーム部52により支持されており、アーム部52の+X方向側のもう一端の下面側に支持部53を介して取り付けられている。
【0081】
図6に示すように、保持手段50は、本実施形態においては、吸引保持パッドであり、ポーラス部材からなり板状ワーク80を吸着する吸着部500と、吸着部500を支持する枠体501とを備える。吸着部500は、図示しない吸引源に吸引管509、及び樹脂チューブや継手等を介して連通している。そして、吸引源が生み出す吸引力が、吸着部500の露出面と枠体501の下面とで形成される面一な保持面502に伝達されることで、保持手段50は保持面502で板状ワーク80を吸引保持する。
【0082】
図5に示す支持部53は、例えば、円環板状の外形を備えており、その上面がアーム部52の下面に図示しない固定ボルト等によって接続されている。支持部53の下面には、把持部61と保持面502との間に介在する保護部材85に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部であるパッド側引っ張り荷重測定部64が取り付けられている。
【0083】
パッド側引っ張り荷重測定部64は、保持手段50を支持する支持部53に配設された圧電素子からなる。即ち、例えば、パッド側引っ張り荷重測定部64は、円柱状又は角柱状に形成されたチタン酸バリウム等の圧電素子であり、Y軸方向において対向するように2つ(
図5においては、1つのみ図示)、支持部53と保持手段50とを連結し保持手段50の重量を支える形で配設されている。即ち、パッド側引っ張り荷重測定部64は、
図6に示す第1のパッド側引っ張り荷重測定部641と、第2のパッド側引っ張り荷重測定部642とで構成されている。
【0084】
図5に示すコラム21の+X方向側の前面の中間部、即ち、保持手段50の移動経路の下方には、+Z方向側から順に、X軸方向の軸心を有する回転ローラ211と、剥離手段6の各構成要素と、板状ワーク80から剥離された保護部材85が載置される載置テーブル27と、載置テーブル27上の剥離後の保護部材85をダストボックス28に落下させる落下手段26と、が並んで配設されている。
【0085】
剥離手段6は、保護部材85の外周部分(本実施形態においては、外周部分となるはみ出し部850)を把持する把持部61と、把持部61と保持手段50とを相対的に保持面502に平行な方向(Y軸方向)に移動させ、把持部61を保持面502の外周から中心に向かわせ、保持面502の中心を通過した把持部61を中心から遠ざかる方向へと一直線上に移動させる移動手段63と、把持部61と保持面502との間に介在する保護部材85に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部であるパッド側引っ張り荷重測定部64と、を備えている。
なお、移動手段63は、以下の説明において把持部移動手段63とする。
【0086】
把持部移動手段63は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ630と、ボールネジ630と平行に配設された一対のガイドレール631と、ボールネジ630を回動させるモータ632と、内部のナットがボールネジ630に螺合し側部がガイドレール631に摺接する可動ブロック633とから構成される。そして、モータ632がボールネジ630を回動させると、これに伴い可動ブロック633がガイドレール631にガイドされてY軸方向に移動し、可動ブロック633に配設された把持部61が可動ブロック633の移動に伴いY軸方向に移動する。
【0087】
可動ブロック633の側面には、軸方向がX軸方向であるスピンドル680を回転可能に支持するアーム型ハウジング681が取り付けられている。そして、スピンドル680の+X方向側の先端に配設されたカップリング部材616に、把持部側引っ張り荷重測定部67の上下方向荷重測定圧電素子673を介して把持部61を支持する連結ブロック614が取り付けられている。連結ブロック614には、把持部側引っ張り荷重測定部67の水平方向荷重測定圧電素子674を介して把持部61の把持クランプ612を支持するクランプ基部610が取り付けられている。
また、図示はしないが、アーム型ハウジング681は、図示しないボールネジ機構等の昇降手段でZ軸方向に昇降可能となっており、把持部61もZ軸方向に昇降可能となっている。
【0088】
把持クランプ612は、互いが接近及び離間可能な一対の把持板の間に把持対象を挟み込むことができ、スピンドル680が回転することで、把持対象に対する角度を変えることができる。
【0089】
把持部61と保持手段50の保持面502との間に介在する保護部材85に掛かる引っ張り荷重を測定する引っ張り荷重測定部である、把持部側引っ張り荷重測定部67は、例えば平板状に形成されたチタン酸バリウム等の水平方向荷重測定圧電素子674と、同様の素材で構成される平板状の上下方向荷重測定圧電素子673とで構成される。そして、上下方向荷重測定圧電素子673は、スピンドル680の先端側に取り付けられたブロック状のカップリング部材616の下面と連結ブロック614の上面との間にZ軸方向から挟まれた状態で配設されている。また、水平方向荷重測定圧電素子674は、連結ブロック614と把持部61のクランプ基部610とによって、Y軸方向両側から挟まれた状態で配設されている。
【0090】
図5に示す回転ローラ211は、例えば、その外形が円柱状に形成されており、図示しないモータによりX軸方向の軸心を軸として回転する。回転ローラ211は、保護部材85に当接することにより、例えば、保護部材85の剥離の際に起き得る
図6に示す樹脂膜87の折れを防止する役割を果たす。なお、回転ローラ211は、Y軸方向に移動可能であってもよい。
【0091】
板状ワーク80から剥離された保護部材85が載置される載置テーブル27は、例えば、その外形が略長方形状であり、すのこ状の載置面を備えている。すなわち、載置テーブル27は、板状の直線材271をその長手方向をY軸方向としてX軸方向に等間隔を保って隙間が形成されるように並列に整列させ、各直線材271の+Y軸方向側の一端を図示しない棒状の連結具で連結し固定した構成となっている。例えば、載置テーブル27は、各直線材271を連結する図示しない棒状の連結具により、コラム21の+X方向側側面に固定されて、把持部の移動経路下に配設される。
【0092】
載置テーブル27上の保護部材85を落下させる落下手段26は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ260と、ボールネジ260と平行に配設された一対のガイドレール261と、ボールネジ260を回動させるモータ262と、内部のナットがボールネジ260に螺合し側部2631がガイドレール261に摺接する側面視略L字状の可動部材263と、可動部材263に配設された突き出しピン2634とから構成される。
【0093】
可動部材263は、例えば、ボールネジ260に螺合する側部2631と、側部2631の上端部分側面から+X方向側に向かって突き出すように形成されたピン台部2632とを備えている。ピン台部2632の上面には、+Z方向に向かって突き出る二本の突き出しピン2634が配設されている。各突き出しピン2634は、X軸方向に所定距離だけ離間して配置されており、モータ262がボールネジ260を回動させると、これに伴い可動部材263がガイドレール261にガイドされてY軸方向に移動し、可動部材263上に配設された突き出しピン2634が、載置テーブル27の各直線材271間の隙間を通るようにしてY軸方向に移動する。
【0094】
ベース20上には、剥離された保護部材85を収容するダストボックス28が配設されている。ダストボックス28は、例えば、外形が略直方体状に形成されており、載置テーブル27の+Y方向側端の下方において開口している。ダストボックス28の上部には、例えば、発光部280(-Y方向側)と受光部281(+Y方向側)とを備える透過型の光センサが配設されている。板状ワーク80から剥離され載置テーブル27上に載置された保護部材85が、落下手段26によりダストボックス28内に落とされていき、ダストボックス28内に保護部材85が所定の高さまで積み上がり、発光部280から出射された検査光が保護部材85により遮られ受光部281の受光量が減少することで、光センサはダストボックス28内に回収すべき量の保護部材85が溜まったことを検出する。
【0095】
例えば、コラム21の前面の剥離手段6の把持部61の可動範囲内となる位置には、テーブル保持台22が取り付けられており、テーブル保持台22上には、保護部材85が剥離される板状ワーク80が載置される受け渡しテーブル221が配設されている。受け渡しテーブル221は、その保持面上に載置された板状ワーク80を例えば一方の面801を上側に向けた状態で吸引保持できる。なお、テーブル保持台22上に受け渡しテーブル221が配設されていない構成としてもよい。
【0096】
テーブル保持台22上には、はみ出し部850を把持して保護部材85の外側部分を板状ワーク80から剥離する外側部分剥離手段23が、受け渡しテーブル221を中心として周方向に一定の間隔をおいて複数(例えば8つ)配設されている。なお、
図1においては、外側部分剥離手段23の構成を拡大して詳しく示している。
【0097】
外側部分剥離手段23は、はみ出し部850を把持するはみ出し部把持部230と、はみ出し部把持部230をZ軸方向(鉛直方向)に移動する図示しない垂直移動部と、はみ出し部把持部230を水平方向に移動する水平移動部234とを備えている。
【0098】
図3に示すように、水平移動部234は、モータ2340により水平方向に延在するボールネジ2341を回動させることで、例えば側面視L字状に形成されたスライダー2342上に図示しない垂直移動部を介して配設されたはみ出し部把持部230を、受け渡しテーブル221の径方向に往復移動させる。図示しない垂直移動部は、例えば、ボールネジ機構等で構成されている。
【0099】
はみ出し部把持部230は、略直方体状の把持台2301と、把持台2301の側面に配設されるシリンダ機構2303と、シリンダ機構2303によってZ軸方向に上下動する把持板2302とを備えており、把持台2301の上面と把持板2302の下面との間に把持対象を挟み込むことができる。
各はみ出し部把持部230は、把持板2302と把持台2301との間の開口部分を受け渡しテーブル221側に向けて配設されている。
【0100】
剥離装置2は、例えば、装置の各構成の制御を行う制御手段29を備えており、制御手段29は、制御プログラムに従って演算処理するCPU及びメモリ等の記憶媒体等から構成されており、図示しない有線又は無線の通信経路を介して、パッド移動手段60、パッド昇降手段66、及び把持部移動手段63等に電気的に接続されており、制御手段29によるパッド移動手段60やパッド昇降手段66の制御の下で、板状ワーク80を吸引保持した保持手段50のY軸方向やZ軸方向における移動速度の制御や把持部61等に対する位置合わせ制御がなされる。また、制御手段29による把持部移動手段63の制御の下で、板状ワーク80を保護する保護部材85のはみ出し部850を把持する把持部61の移動速度の制御や位置合わせの制御等が行われる。また、制御手段19は、パッド側引っ張り荷重測定部64、及び把持部側引っ張り荷重測定部67から、それぞれの荷重測定部が測定した引っ張り荷重についての情報を受け取ることができる。
【0101】
例えば、パッド移動手段のモータ602がサーボモータである場合には、サーボモータのロータリエンコーダは、サーボアンプとしての機能も有する制御手段29に接続されており、制御手段29の出力インターフェイスからサーボモータに対して動作信号が供給された後、サーボモータの回転数をエンコーダ信号として制御手段29の入力インターフェイスに対して出力する。そして、エンコーダ信号を受け取った制御手段29は、サーボモータの回転角度を基に保持手段50の移動量を逐次認識し、これによって保持手段50のY軸方向における位置を逐次認識することができる。
【0102】
以下に、
図5に示す板状ワーク80から保護部材85を剥離する場合の剥離装置2の動作について説明する。
まず、
図5に示す例えば研削後の板状ワーク80が、研削された面である他方の面801が上側になるように、受け渡しテーブル221上に載置される。保持手段50が+Y方向に移動し、保持面502の中心が板状ワーク80の他方の面801の中心に略合致するように、板状ワーク80の上方に位置付けられる。さらに、保持手段50が降下し、保持面502を板状ワーク80の他方の面801に接触させる。さらに、図示しない吸引源が吸引することで生み出された吸引力が保持面502へと伝達されることで、保持手段50が保護部材85を下にして板状ワーク80の他方の面801を吸引保持する。
【0103】
例えば、板状ワーク80を吸引保持した保持手段50が上昇して、受け渡しテーブル221上から板状ワーク80を離脱させる。次いで、はみ出し部把持部230が、図示しない垂直移動部によって、保護部材85のはみ出し部850を把持できる所定の高さ位置に位置付けられる。
【0104】
また、各水平移動部234が、各はみ出し部把持部230を水平方向に移動させ、はみ出し部把持部230と保護部材85のはみ出し部850との径方向における位置合わせを行う。シリンダ機構2303によって把持板2302が下降して、はみ出し部把持部230が保護部材85のはみ出し部850を把持する。なお、はみ出し部把持部230による板状ワーク80の保護部材85のはみ出し部850を把持等は、受け渡しテーブル221上に板状ワーク80を保持した状態で行ってもよい。
【0105】
次いで、各水平移動部234が板状ワーク80の保護部材85のはみ出し部850を把持した各はみ出し部把持部230を、板状ワーク80の径方向外側に向かって移動させることで、はみ出し部850がはみ出し部把持部230により径方向外側に向かって引っ張られて拡張される。そして、はみ出し部把持部230の上記移動によって、板状ワーク80の外周部分に付着した樹脂膜87(
図6参照)に対して付与される拡張力と、円形シート86と樹脂膜87との間に働く接着力とにより、板状ワーク80の外周部分に付着した樹脂膜87が板状ワーク80の外周縁から径方向外側に向かって容易に剥離される。
【0106】
次いで、例えば、各はみ出し部把持部230を所定の高さ位置まで降下させ、保護部材85のはみ出し部850を板状ワーク80からある程度下方に引き下げ剥離した後、はみ出し部把持部230が保護部材85のはみ出し部850を開放する。これによって、例えば、板状ワーク80の中心を基準として周方向において均等な角度で、板状ワーク80の外周部分の少なくとも計8箇所ではみ出し部850が部分的に剥離される。
【0107】
次いで、板状ワーク80を吸引保持した保持手段50が、回転ローラ211の上方に位置するまで-Y方向に移動してから下降して、保護部材85の下面の+Y方向側の外周部付近に回転ローラ211の側面を当接させる。把持部移動手段63が、
図6に示すように把持部61を-Y方向に移動させ、把持クランプ612と保護部材85のはみ出し部850との位置合わせを行い、把持クランプ612がはみ出し部850を把持する。
図6に示す例においては、把持部61が、保護部材85の外側部分の内板状ワーク80からの剥離が行われていない外側部分のはみ出し部850を把持しているが、保護部材85の外側部分の内板状ワーク80からの剥離が行われている外側部分のはみ出し部850(
図6における-Y方向側のはみ出し部850)を把持するものとしてもよい。
【0108】
例えば、
図6に示すように、把持クランプ612がはみ出し部850を把持した後、把持クランプ612が+Y方向側へ僅かに移動して、樹脂膜87の外周部分が板状ワーク80の外周縁から剥離される。次いで、
図7から
図8に示すように、スピンドル680が+X方向側から見て時計回り方向に180度回転することで、回転ローラ211が保護部材85の下面側を支持した状態で、保護部材85の樹脂膜87が回転ローラ211の側面にならって緩やかに曲げられつつ、保護部材85が-Z方向に向かって把持クランプ612により引っ張られることにより、板状ワーク80の一方の面800から保護部材85の一部が剥離される。
【0109】
(剥離装置2における保護部材85の剥離の実施形態C)
保護部材85のさらなる剥離において、保持手段50をY軸方向に移動させる。または、把持部61を保持手段50の保持面502に対してY軸方向に移動させる場合について説明する。
【0110】
図5に示す把持部移動手段63により、
図9に示すように把持部61を-Y方向に移動させる。また、パッド移動手段60(
図5参照)によって保持手段50を+Y方向に移動させてもよい。把持部61を相対的に板状ワーク80の外周縁から中心に向かって径方向に移動させ板状ワーク80から保護部材85を剥離していく。また、回転ローラ211がX軸方向の軸心を軸に回転し、保護部材85の樹脂膜87が回転ローラ211の側面にならって緩やかに曲げられた状態を維持しつつ、板状ワーク80の+Y方向側の外周縁から板状ワーク80の中央に向かって保護部材85を剥離していく。保護部材85の剥離中に樹脂膜87の折れが発生すると、剥離後も樹脂膜87が板状ワーク80に対して部分的に残ってしまったり、樹脂折れによる反動で樹脂膜87から板状ワーク80の一方の面800に対して瞬間的に撃力が加わり板状ワーク80の一方の面800が傷ついてしまったりする場合があるが、回転ローラ211の側面が円形シート86に当接することにより、そのような問題が生じるのを防ぐことができる。
【0111】
本実施形態において、上記板状ワーク80からの保護部材85の剥離において、把持部側引っ張り荷重測定部67は、把持部61と保持面502との間に介在する保護部材85に掛かる引っ張り荷重を正確に測定することができる。
【0112】
例えば、把持部側引っ張り荷重測定部67による引っ張り荷重の測定は、上下方向荷重測定圧電素子673と水平方向荷重測定圧電素子674とによって行われる。
図9において、矢印F3は、把持部61と保持手段50の保持面502との間に介在する保護部材85に掛かる引っ張り荷重F3を示している。そして、引っ張り荷重F3は、板状ワーク80と把持部61とがZ軸方向に所定の距離離間しているので、
図9に示す、向きが-Y方向であるY軸方向引っ張り荷重Fy3と、向きが-Z方向であるZ軸方向引っ張り荷重Fz3とが合成された引っ張り荷重F3である。そして、ピタゴラスの定理より下記の式11が成立する。
(Y軸方向引っ張り荷重Fy3)
2+(Z軸方向引っ張り荷重Fz3)
2=(引っ張り荷重F3)
2・・・・(式11)
【0113】
ここで、Y軸方向引っ張り荷重Fy3は、水平方向荷重測定圧電素子674によって所定の時間間隔毎に的確に測定され、荷重検出信号が制御手段29に測定毎に送られる。また、Z軸方向引っ張り荷重Fz3は、上下方向荷重測定圧電素子673によって所定の時間間隔毎に的確に測定され、測定毎に荷重検出信号が制御手段29に送られる。
【0114】
制御手段29は、式11にY軸方向引っ張り荷重Fy3についての実測値とZ軸方向引っ張り荷重Fz3についての実測値とを代入する演算処理を行い、所定の時間間隔毎に引っ張り荷重F3を測定する。そして、制御手段29は、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F3を、剥離手段6による保護部材85の剥離動作を最適化させるための情報として用いる。即ち、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F3の値によって、例えば、把持部移動手段63による把持部61の移動速度が制御手段29によって最適化される。その結果、把持部61が保護部材85を剥離する際の引っ張り荷重F3が、板状ワーク80が割れたり、板状ワーク80に糊残り等が発生したりしない最適な引っ張り荷重となるフィードバック制御がなされた状態になる。また、把持部61による剥離速度も遅すぎることが無くなり、無駄な時間を掛けること無く保護部材85が板状ワーク80から剥離されていく。
【0115】
保護部材85が板状ワーク80の一方の面800から完全に剥離されると、保護部材85のはみ出し部850を把持する把持部61が、
図5に示す載置テーブル27上まで移動する。そして、把持部61は、はみ出し部850の把持を解除し、保護部材85を載置テーブル27上に落下させる。
【0116】
(剥離装置2における保護部材85の剥離の実施形態D)
保護部材85の剥離において、保持手段50をY軸方向に移動させ、かつ、実施形態Cのように把持部61をY軸方向に移動させない場合について説明する。この場合には、例えば、回転ローラ211が保持手段50の移動方向と同方向に移動する。
本場合において、
図8に示す状態から
図10に示すように90度回転した把持部61は、所定の高さ位置及びY軸方向における位置P3に停止しており、
図5に示す制御手段29は、把持部61の位置している高さ位置及びY軸方向における位置P3を認識している。
【0117】
パッド移動手段60によって保持手段50を+Y方向に移動させて、移動が停止している把持部61を相対的に板状ワーク80の外周縁から中心に向かって径方向に移動させ板状ワーク80から保護部材85を剥離していく。なお、回転ローラ211の側面が円形シート86に当接することにより、樹脂膜87の割れ等が防がれる。
【0118】
本実施形態において、上記板状ワーク80からの保護部材85の剥離において、パッド側引っ張り荷重測定部64は、把持部61と保持面502との間に介在する保護部材85に掛かる引っ張り荷重を測定する。
図10において、矢印F4は、把持部61と保持手段50の保持面502との間に介在する保護部材85に掛かる引っ張り荷重F4を示している。そして、引っ張り荷重F4は、
図10に示す向きが-Y方向であるY軸方向引っ張り荷重Fy4と、向きが-Z方向であるZ軸方向引っ張り荷重Fz4とが合成された引っ張り荷重F4である。
【0119】
図10に示す矢印R4は、第1のパッド側引っ張り荷重測定部641がZ軸方向において、所定の時間間隔毎に測定することができる第1測定荷重R4である。第1測定荷重R4は、例えば、+Z方向の向きを有する。
矢印R5は、第2のパッド側引っ張り荷重測定部642がZ軸方向において、所定の時間間隔毎に測定することができる第2測定荷重R5である。第2測定荷重R5は、例えば、-Z方向の向きを有する。
第1のパッド側引っ張り荷重測定部641と第2のパッド側引っ張り荷重測定部642とのY軸方向における距離L4は、制御手段29が予め認識している装置設計値であり、定数となる。
【0120】
第1のパッド側引っ張り荷重測定部641からY軸方向における移動が停止しており位置P3に位置している把持部61までのY軸方向の変化距離M1は、保持手段50がY軸方向に移動することで変化する変数である。なお、
図5に示すパッド移動手段60のモータ602(サーボモータ602)のロータリエンコーダから制御手段29にフィードバックされるエンコーダ信号によって、制御手段29は可動板601と共に移動する第1のパッド側引っ張り荷重測定部641の位置を把握できるため、該変化距離M1の値についても制御手段29は所定の時間間隔毎に逐次認識することができる。
第1のパッド側引っ張り荷重測定部641と位置P3に停止している把持部61とZ軸方向における距離N1は、制御手段29が予め認識している装置設計値であり、定数となる。
【0121】
ピタゴラスの定理より下記の式12が成立する。
(Y軸方向引っ張り荷重Fy4)2+(Z軸方向引っ張り荷重Fz4)2=(引っ張り荷重F4)2・・・・(式12)
また、Z軸方向における力のつり合いから、下記の式13が成立する。
(Z軸方向引っ張り荷重Fz4)=(第1測定荷重R4)+(第2測定荷重R5)・・・・(式13)
【0122】
さらに、第1のパッド側引っ張り荷重測定部641を原点と仮定した場合の、第1のパッド側引っ張り荷重測定部641周りのモーメントのつり合いから、下記の式14が成立する。
(Y軸方向引っ張り荷重Fy4)×(距離N1)=(第2測定荷重R5)×(距離L4)+(Z軸方向引っ張り荷重Fz4)×(変化距離M1)・・・・(式14)
【0123】
式13から、制御手段29は、所定の時間間隔毎にZ軸方向引っ張り荷重Fz4を測定できる。
また、式14を変形した下記の式15から、制御手段29は、所定の時間間隔毎にY軸方向引っ張り荷重Fy4を測定できる。
(Y軸方向引っ張り荷重Fy4)={(第2測定荷重R5)×(距離L4)+(Z軸方向引っ張り荷重Fz4)×(変化距離M1)}/(距離N1)・・・・(式15)
【0124】
制御手段29は、式12にY軸方向引っ張り荷重Fy4についての値とZ軸方向引っ張り荷重Fz4についての値とを代入する演算処理を行い、所定の時間間隔毎に引っ張り荷重F4を測定する。そして、制御手段29は、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F4を、剥離手段6による保護部材85の剥離動作を最適化させるための情報として用いる。即ち、所定の時間間隔毎に測定した引っ張り荷重F4の値によって、例えば、パッド移動手段60による保持手段50の移動速度が制御手段29によって最適化される。その結果、把持部61が保護部材85と一体となった剥離テープ83を剥離する際の引っ張り荷重F4が、板状ワーク80が割れたり、板状ワーク80に糊残り等が発生したりしない最適な引っ張り荷重となるフィードバック制御がなされた状態になる。また、移動する保持手段50に対してY軸方向おいて相対的に移動する把持部61による剥離速度も遅すぎることが無くなり、無駄な時間を掛けること無く保護部材85が板状ワーク80から剥離されていく。
【0125】
保護部材85が板状ワーク80の一方の面800から完全に剥離されると、保護部材85のはみ出し部850を把持する把持部61が、
図5に示す載置テーブル27上まで移動する。そして、把持部61は、はみ出し部850の把持を解除し、保護部材85を載置テーブル27上に落下させる。
【符号の説明】
【0126】
80:板状ワーク 800:一方の面 801:他方の面 806:切り欠き部
82:ダイシングテープ 84:環状フレーム 81:保護テープ(保護部材)
1:実施形態1の剥離装置 10:基台 19:制御手段 17:回収ボックス
30:保持手段 300:吸着部 302:保持面 301:枠体 31:支持部 32:フレーム固定手段 33:ピストン機構
34:部分剥離部 341:貫通孔 342:突き上げピン 346:バルブ
347:流体供給源 345:上下駆動部
83:剥離テープ 831:テープロール
4:剥離手段
13:テーブル移動手段 130:ボールネジ 132:モータ 133:可動部材
35:テーブル側引っ張り荷重測定部 351:第1のテーブル側引っ張り荷重測定部
352:第2のテーブル側引っ張り荷重測定部
40:テープ切断手段 400:載置台 401:カッター 402:カッター移動手段 403:カッター昇降手段
41:把持部 412:一対の把持爪 4121:固定爪 4122:可動爪
48:把持部支持部 480:支持台 483:ピストンロッド 484:シリンダチューブ
42:剥離テープ供給手段 420:巻筒 421:一対のガイドローラ 422:一対の送り出しローラ
44:剥離テープ貼着手段 440:支持台 441:押付板昇降機構 442:押付板
46:X軸方向移動手段 ボールネジ460 モータ462
47:把持部側引っ張り荷重測定部 471:上下方向荷重測定圧電素子 472:水平方向荷重測定圧電素子
80:板状ワーク 85:保護部材 86:円形シート 87:樹脂膜 850:はみ出し部
2:実施形態2の剥離装置 20:ベース 21:コラム
50:保持手段 500:吸着部 502:保持面 509:吸引管
52:アーム部 53:支持部
6:剥離手段
60:パッド移動手段 602:モータ 600:ボールネジ 601:可動板
61:把持部 612:把持クランプ 610:クランプ基部 614:連結ブロック
616:カプリング部材
67:把持部側引っ張り荷重測定部 673:上下方向荷重測定圧電素子 674:水平方向荷重測定圧電素子
63:把持部移動手段 630:ボールネジ 631:一対のガイドレール 632:モータ 633:可動ブロック
680:スピンドル 681:アーム型ハウジング
64:パッド側引っ張り荷重測定部
641:第1のパッド側引っ張り荷重測定部 642:第2のパッド側引っ張り荷重測定部
66:パッド昇降手段 660:ボールネジ 662:モータ 661:可動板
211:回転ローラ
27:載置テーブル 26:落下手段 28:ダストボックス
29:制御手段