(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】光学フィルムの反りの測定方法、及び、測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
G01B11/24 M
(21)【出願番号】P 2020087999
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019098392
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】神崎 昌
(72)【発明者】
【氏名】安藤 卓也
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-090420(JP,A)
【文献】特開2018-141082(JP,A)
【文献】特開2014-153522(JP,A)
【文献】特表2016-505861(JP,A)
【文献】特開2017-067704(JP,A)
【文献】特開2016-128780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ上に載置した光学フィルムを対象として、
前記光学フィルムの面外から前記光学フィルムの端部へ向かって前記光学フィルムの上方からレーザー光で走査し、前記端部からの前記レーザー光の反射光を
走査の後方側で検出することにより前記端部の高さ位置の情報を取得
し、
前記ステージは、前記レーザー光の半球反射率が2%以下である、
光学フィルムの反りの測定方法。
【請求項2】
前記光学フィルムは多角形であり、前記レーザー光による走査及び前記高さ位置の情報の取得を、前記多角形の頂点のうち少なくとも二か所において行う、
請求項
1記載の測定方法。
【請求項3】
前記レーザー光は、走査方向に対して垂直下方へ向けて照射される、
請求項1
又は2記載の測定方法。
【請求項4】
前記光学フィルムからの反射光の検出位置と前記光学フィルムの中央部との距離が、前記光学フィルムの中央部と前記レーザー光の照射位置との距離よりも長い、
請求項1~
3のいずれか一項記載の測定方法。
【請求項5】
前記光学フィルムは、光学積層フィルムである、
請求項1~
4のいずれか一項記載の測定方法。
【請求項6】
光学フィルムを載置するステージと、
前記ステージに載置された前記光学フィルムに上方からレーザー光を照射する照射部と、
前記光学フィルムの面外から前記光学フィルムの端部へ向かって前記レーザー光で走査できるように前記照射部を移動させる可動機構と、
前記光学フィルムで反射した前記レーザー光の反射光を、前記照射部よりも走査の後方側で検出する検出部と、を備え、
前記ステージは、前記レーザー光の半球反射率が2%以下である、測定装置。
【請求項7】
前記光学フィルムは、光学積層フィルムである、請求項
6記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの反りの測定方法、及び、測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置には、構成部材の一つとして光学フィルムが組み込まれている。光学フィルムは、偏光特性、ハードコート特性等、要求される様々な機能に応じたものが種々開発されている。
【0003】
光学フィルムは、反り(カール)が生じる場合がある。長尺に製造してロール状に巻き取って保存することに起因して反りが生じるほか、特に光学フィルムが積層フィルムである場合には、積層されたフィルム間の熱収縮率の差異等に起因する反りが生じやすい。長尺の光学フィルムを所望の大きさに切り出した際に反りが大きいと、画像表示装置に組み込む際の作業性が低下し、貼合わせの精密さを欠く要因ともなる。従来、光学フィルムに反りが生じることを抑制する製造方法が提案されている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-217654号公報
【文献】特開2015-21034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学フィルムの反りの程度の測定は手作業で行っているのが現状である。手作業で行うことは手間や時間が掛かるうえ、作業者によって正確さが異なり、品質管理の徹底性に難がある。そこで本発明は、手作業によらず光学フィルムの反りの程度を正確に測定することができる測定方法、及び、測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステージ上に載置した光学フィルムを対象として、光学フィルムの端部へ向かって光学フィルムの上方からレーザー光で走査し、端部からのレーザー光の反射光を検出することにより端部の高さ位置の情報を取得する、光学フィルムの反りの測定方法を提供する。
【0007】
この測定方法によれば、レーザー光による走査によって光学フィルムの端部位置を見つけ出すことができ、その位置からの反射光を検出することで当該端部の高さ位置の情報を知ることができる。従って、手作業によらず光学フィルムの反りの程度を測定することができる。
【0008】
この測定方法において、ステージは、レーザー光の半球反射率が2%以下であってもよい。光学フィルムの面外から光学フィルムの端部へ向かって走査している最中に、ステージで反射したレーザー光が光学フィルムの裏面で反射し、この反射光を発している位置を反りの端部の位置として測定される虞がある。ここで、ステージのレーザー光の半球反射率が上記範囲内であると、レーザー光がステージで反射することが抑制され、光学フィルムの裏面が光る状況が生じにくくなる。
【0009】
測定対象である光学フィルムの形状は、特に限定されず、多角形であってもよく、この場合に、レーザー光による走査及び上記高さ位置の情報の取得を、多角形の頂点のうち少なくとも二か所において行ってもよい。これによれば、複数箇所の反りの程度を測定することができるので、反り量に関する品質管理をより徹底することができる。
【0010】
レーザー光は、走査方向に対して垂直下方へ向けて照射されてもよい。また、光学フィルムからの反射光の検出位置と光学フィルムの中央部との距離が、光学フィルムの中央部とレーザー光の照射位置との距離よりも長いことが好ましい。この場合、検出位置ではレーザー光の正反射によるハレーションの影響を受けにくいので、検出精度が低下することが防止される。
【0011】
本発明は、光学フィルムを載置するステージと、ステージに載置された光学フィルムに上方からレーザー光を照射する照射部と、光学フィルムで反射したレーザー光の反射光を検出する検出部と、光学フィルムの端部へ向かってレーザー光で走査できるように照射部を移動させる可動機構とを備え、ステージはレーザー光の半球反射率が2%以下である測定装置を提供する。
【0012】
この測定装置では、光学フィルムを測定対象とし、レーザー光を照射する照射部を可動機構によって移動させることで光学フィルムの端部へ向かって走査する。光学フィルムからの反射光を検出部で検出し、その高さ位置の情報から、光学フィルムの反りの程度を知ることができる。この場合において、光学フィルムの面外から光学フィルムの端部へ向かって走査している最中に、ステージで反射したレーザー光が光学フィルムの裏面で反射し、この反射光を発している位置を反りの端部の位置として測定される虞がある。しかしながら、本発明の測定装置ではステージのレーザー光の半球反射率が上記範囲内であるので、レーザー光がステージで反射することが抑制され、光学フィルムの裏面が光る状況が生じにくくなる。
【0013】
上記測定方法及び測定装置においては、測定対象である光学フィルムは光学積層フィルムであってもよい。複数のフィルムが積層された積層フィルムは、フィルム間の熱収縮率の差異等に起因して反りが生じやすい。従って、光学積層フィルムは本発明の適用対象として好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、手作業によらず光学フィルムの反りの程度を正確に測定することができる測定方法、及び、測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】測定時のスカラロボットの動作を示す図である。
【
図4】測定時のレーザー変位計の動作を示す側面図である。
【
図5】測定時のレーザー変位計の動作を示す側面図である。
【
図6】他の実施形態での測定時のレーザー変位計の動作を示す側面図である。
【
図7】(A)及び(B)のいずれも「反りの角度」を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
本実施形態の測定装置及び測定方法は、光学フィルムを対象として、その反りの程度を測定するためのものである。光学フィルムは通常、長尺の形態で製造され、ロール状に巻き取られて保存される。使用時にはロールから巻き出され、所望の大きさ及び形状に切り出されて用途に供される。切り出された光学フィルムを例えば画像表示装置へ組み込む際、反りが大きければ作業性が低下する。従って、反りの程度は品質管理の項目として重要であり、管理を徹底することが望ましい。
【0018】
本実施形態における測定対象物は、光学フィルムである。光学フィルムは、偏光度、光学補償性等の光学特性を示すフィルムであれば特に制限されず、単層フィルムであっても、積層フィルムであってもよい。本実施形態における測定対象物は、光学フィルムの中でも特に光学積層フィルムであることが好ましい。複数のフィルムが積層されて成る積層フィルムは、フィルム間の熱収縮率の差異等に起因して反りが生じやすいので、本実施形態の適用対象として好適である。光学積層フィルムとしては、例えば、光学製品に用いられる偏光板、位相差板、円偏光板等のフィルムが挙げられる。偏光板としては、偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルムが接着剤で接着されたものであってもよく、更に、保護フィルム上に粘着剤層を介して剥離フィルム等の別のフィルムが積層されたものであってもよい。
【0019】
光学フィルムの形状は、特に限定されず、円状でも多角形であってもよい。直線部分を有する輪郭の形状の光学フィルム、特に多角形の光学フィルムは、反りが生じやすい点で、測定対象物として適用されやすい。
【0020】
光学フィルムは、測定に使用するレーザー光の透過率が20%以上であってもよく、40%以上であってもよく、60%以上であってもよく、80%以上であってもよい。上記透過率は、特に限定されないが、99%以下であってもよく、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
【0021】
<測定装置>
(構成)
図1及び
図2に示されているとおり、本実施形態の測定装置1は、光学フィルムの反りの程度を測定するための装置であり、スカラロボット2と、レーザー変位計3と、ステージ4とを備えている。スカラロボット2は、任意の作業台に高さ調整のために立設された台座部Sの上に載置されるものであり、ロボット本体ボックス部5と、ロボット本体ボックス部5の上部から水平方向に延びるように接続されたアーム部6と、アーム部6の他端から水平方向に延びるように接続されたヘッド部7とを有している。アーム部6は、ロボット本体ボックス部5に対して水平方向に回動可能とされ、ヘッド部7はアーム部6に対して水平方向に回動可能とされている。
【0022】
レーザー変位計3は、ヘッド部7の下面から懸架されるようにして支持されている。ヘッド部7はその下面において、ロボット本体ボックス部5とアーム部6との接続部、及び、アーム部6とヘッド部7との接続部にそれぞれ内蔵された電動モータでアーム部6及びヘッド部7を回動させることでレーザー変位計3を任意の方向へ移動させることができる機構を備えている(可動機構)。また、レーザー変位計3はヘッド部7との接続部分において水平方向に回動可能とされており、その下面にレーザー光源(照射部)8と、CMOSセンサ(検出部)9とを有している。
【0023】
測定装置1は、アーム部6及びヘッド部7の下方の位置に、測定対象である光学フィルムを載置するためのステージ4を備えている。ステージ4は測定対象である光学フィルムよりも広い面積を有していることが好ましい。ステージ4は、黒色の板、又は、用いるレーザーが可視光領域にある場合はレーザー光と同色の板であることが好ましい。
【0024】
ステージ4は、レーザー光源8から出射されるレーザー光の半球反射率が、例えば2%以下であってもよく、1.5%以下であってもよく、1%以下であることが好ましく、0.9%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることが更に好ましく、0.7%以下であることが特に好ましい。ステージ4の具体例として、Metal Velvet(Acktar社)やSpectral Black(Acktar社)が挙げられる。
【0025】
レーザー光源8から出射されるレーザー光の波長は任意であるが、利用可能性や検出感度の観点から近紫外線~近赤外線領域の波長であることが好ましく、例えば300nm~700nmが好ましく、350nm~450nmがより好ましく、380nm~430nmが更に好ましい。例えば405nmを選択することができる。
【0026】
ステージ4の表面は、微細な凹凸構造を有することが好ましい。その凹凸一つ当たりの高さや隣り合う凸部間の距離は、レーザー光源8から出射されるレーザー光の波長と略同等かそれ以下の長さであることが好ましい。ステージ4の表面がこのような微細構造を有している場合、低い半球反射率を実現しやすい。微細構造としては、例えばモスアイ構造が挙げられる。
【0027】
ステージ4の表面の強度は、#0000番のスチールウールを荷重250g/cm2で10往復させた際の傷の本数が30本以下であることが好ましく、10本以下であることがより好ましい。微細構造を有する表面が脆く壊れやすいものである場合は、当該表面の上方にガラス板や樹脂(アクリル樹脂等)の透明保護板を備える構成としてもよい。すなわち、ステージ4は、例えば表面に微細構造を有する黒色の板と、その上方に設けられた透明保護板との二層構造であってもよい。この二層構造の場合、上記微細構造は透明保護板の下部に位置し、微細構造には透明保護板を透過したレーザー光が照射されることになる。
【0028】
また、この二層構造の場合、測定対象である光学フィルムは透明保護板上に載置される。透明保護板の表面はアンチリフレクション(AR)処理が施されていることが好ましい。ステージ4が二層構造からなる場合、ステージ4全体としての半球反射率が上記の値を満たすことが好ましい。ここでAR処理とは、反射率の異なる材料を多層に積層することで、各層での反射光の位相差をずらして光を打ち消すようにした処理をいう。なお、黒色の板と透明保護板との二層構造の場合、両層の間に隙間を設けてもよく、例えば1mm~200mm、好ましくは3mm~10mmの隙間が存在してもよい。
【0029】
なお、測定中のレーザー光の迷光を防止するため、測定装置1全体を枠体で囲い、枠体を布や樹脂板等で隙間なく覆うことによって暗室環境を構成することが好ましい。
【0030】
上記「半球反射率」は、レーザー変位計3のレーザー光源8が出射する光の波長を対象として、分光測色計を用いてSCI方式(正反射光を含む方式)で測定した該当波長の反射率の値をいう。分光測色計としては、例えばコニカミノルタ社製の「CM-2600d」を用いることができる。ここで、対象とするレーザー光の波長そのものの半球反射率を測定するほか、分光測色計の性能がその測定したいレーザー光の波長に対応していない場合は、当該波長の前後の波長における測定値の平均値をもって当該波長の半球反射率としてもよい。例えば、405nmの波長のレーザー光の半球反射率を求める場合、400nmと410nmとの両方で測定し、その平均値を405nmの波長における半球反射率としてもよい。
【0031】
(動作)
測定装置1は、スカラロボット2の各部に内蔵された電動モータを駆動して、アーム部6、ヘッド部7及びレーザー変位計3をそれぞれの回動軸にしたがって水平方向に回動させ、
図3に示されているとおり、ヘッド部7の位置を、ステージ4に載置される矩形の光学フィルム10の四隅の位置へと移動させることができる。ここでは、平面視においてレーザー変位計3が光学フィルム10の面外に位置するようにしている。測定を行う際には、スカラロボット2の駆動機構によって、レーザー変位計3を光学フィルム10が存在する側へ走査させる。レーザー変位計3は、そのレーザー光源8からステージ4へ向けて垂直下方に(この場合鉛直下方に)レーザー光を出射することができる。そして、CMOSセンサ9は所定の画角を有し、レーザー光の出射方向に対して斜めの方向からレーザー光の出射先付近を観察する。CMOSセンサ9がレーザー光を捉えると、そのレーザー光の形状から画像処理をすることによって、ステージ4の表面からの高さ位置を割り出す。これら一連の動作によって、測定装置1は、測定対象である光学フィルム10をレーザー光で走査し、反りの端部の位置を検出することができる。
【0032】
<測定方法及び作用効果>
測定装置1を用いた光学フィルムの反りの測定方法を説明する。測定対象である矩形の光学フィルム10をステージ4上に載置する。このとき、反っている光学フィルム10が下方に凸となるように、すなわち、反りの頂点をなす端部が上方に持ち上がる向きとなるようにして載置する。スカラロボット2及びレーザー変位計3を駆動して、レーザー変位計3を光学フィルム10の四隅のうちの一つの上方に位置させる(
図3参照)。このとき、レーザー変位計3のレーザー光源8の位置が平面視で光学フィルム10の面外に位置するようにし、CMOSセンサ9の位置がその更に面外側に位置するようにする。
【0033】
図4に示されているとおり、レーザー光を鉛直下方へ出射しながら(レーザー光は実線矢印で示している。)レーザー変位計3を光学フィルム10の面外の位置を起点として面内へ向かって走査させる。なお、
図4ではスカラロボット2の描画を省略している。CMOSセンサ9は、光学フィルム10からレーザー光の反射光があった場合にそれを捉えることができるように、その視野領域Aを向ける。
図4に示した状況では、レーザー光はステージ4上に照射されているが、光学フィルム10の端部にレーザー光が照射されていないので、光学フィルム10の端部からの反射光はCMOSセンサ9に検出されない。この位置から更にレーザー変位計3を走査させることによって光学フィルム10の端部を目指してレーザー光で走査していく。
【0034】
反っている光学フィルム10は、端部(この場合、矩形の頂点でもある。)の位置が最も上方に位置しており、ステージ4の表面からの高さが最も高くなっている。このとき、
図5に示されているとおり、レーザー光は光学フィルム10の端部において反射することとなり、この反射光(反射光は破線矢印で示している。)をCMOSセンサ9で検出することで、端部の高さを計測することができる。
【0035】
こうして反り量(ステージからの端部の高さ)を測定したら、次は光学フィルム10の別の四隅の位置へとスカラロボット2及びレーザー変位計3を移動させる(
図3参照)。そして、上記と同様にしてその端部の反りの量を測定する。この測定を、好ましくは光学フィルムの四隅の2か所以上、より好ましくは、光学フィルムの四隅の全てに対して行うことにより、光学フィルム10全体の反りの状況を把握することができる。
【0036】
この測定方法では、
図4及び
図5に示されているとおり、CMOSセンサ9の位置(検出位置)と光学フィルム10の中央部との距離が、光学フィルム10の中央部とレーザー光源8の位置(照射位置)との距離よりも長い。このため、CMOSセンサ9の位置ではレーザー光の正反射によるハレーションの影響を受けにくいので、ハレーションによって検出精度が低下することが防止される。
【0037】
光学フィルム10の透過率が高い場合は通常、CMOSセンサ9による検出感度を高めるため撮像感度を高くすることが好ましい。しかしながら、撮像感度を高くすると検出感度は高まるが、同時に迷光を検出したりハレーションの影響が強く出たりするため、検出精度の低下をもたらす虞がある。この点、本実施形態の測定方法では上述の構成を有するので、撮像感度を比較的低く抑えながら測定することができ、検出精度の低下を抑止できる。
【0038】
本実施形態において、半球反射率が低く抑えられたステージを用いて測定を行うことは、特に反りが大きい光学フィルムを測定する場合に有利である。反りが小さい光学フィルムを測定する場合は、
図6に示されているような裏面反射はその反射角度からCMOSセンサで検出されないので、ステージの半球反射率の大きさにかかわらず正常に測定することができる。
【0039】
一方、反りが大きい光学フィルムを測定する場合(例えば反りの角度が70°以上である場合)は、
図6に示されているような裏面反射はその反射角度からCMOSセンサで検出されてしまうことがある。従って、半球反射率が低く抑えられたステージを用いることは、反り量が様々に異なる可能性のある複数の光学フィルムを、精密に連続して測定することに適している。なお、上記「反りの角度」とは、
図7に示されているとおり、光学フィルムをステージに載置したときに、側面視において、反り上がった端部における接線とステージ面とがなす角度のうち、光学フィルムが存在する側とは反対側の角度αをいう。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではレーザー変位計を光学フィルムの面外の位置を起点として面内へ向かって走査する態様を示したが、反対に、光学フィルムの面内の位置を起点として面外へ向かって光学フィルム上を走査する態様としてもよい。
【0041】
上記実施形態ではレーザー光の照射部(レーザー光源)と検出部(CMOSセンサ)とを一体に備えたレーザー変位計を用いる態様を示したが、当該照射部と検出部とは別々の位置に備えられたものとしてもよい。例えば、照射部をスライドさせる一方で、検出部はスカラロボットの任意の位置に取り付けてスライドさせずに定点から観測する態様としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態ではスカラロボット2を用いて(アーム部6及びヘッド部7の回動動作で)レーザー変位計3を走査する態様を示したが、レーザー変位計3の走査機構に制限はなく、例えばリニアガイド等を用いてレーザー変位計をスライドさせてもよい。この場合はレーザー変位計3を回転させる機構を併用することが望ましい。また、レーザー変位計を高さ方向で移動させる機構を備えていてもよい。
【0043】
また、上記実施形態では光学フィルムの形状が矩形である態様を示したが、形状は限定されず、他の多角形や円形、楕円形などであってもよく、これらの形状の辺の一部に凹みを有する形状であってもよい。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ53μm)、トリアセチルセルロースフィルム(厚さ40μm)、偏光フィルム(延伸、ヨウ素染色したポリビニルアルコール樹脂フィルム;厚さ25μm)及びシクロオレフィンポリマーフィルム(厚さ23μm)をこの順に接着剤又は粘着剤を介して積層してなる長尺の光学フィルムより、250mm×300mmの試験片を搬送方向(MD方向)が長辺に対して45度になるように切り出した。
【0045】
得られた試験片は、四隅のうち反り量が最大となる角部における反りの角度が90度であった。なお、反りの角度は、試験片の切り出し断面(試験片の側面)を写真撮影し、分度器を用いて測定した値である。次に該角部における反り量(=水平のステージから試験片の端部までの鉛直方向長さ)をJIS1級金尺で測定したところ、110mmであった。
【0046】
得られた試験片を、反った端部が上向きになるようにして、検出部と照射部とを備えたレーザー変位計(製品名:センサヘッドLJ-V7300;キーエンス社)と、ステージ(Metal Velvet(登録商標、Acktar社製);サイズ:350mm×400mm;半球反射率:0.65%)を備えた、
図1に示された測定装置のステージ上に置いた。なお、上記「半球反射率」は波長405nmのレーザー光に対する値であり、分光測色計(製品名:CM-2600d、コニカミノルタ社製)を用いて、波長400nm及び波長410nmの各レーザー光における半球反射率を測定し、その平均値として求めた値である。
【0047】
測定装置における検出部とステージとの距離を400mmに設定し、波長405nmのレーザー光を、走査速度50mm/秒で、ステージの端部から上記試験片の各端部に向かって走査させることにより、試験片の端部の高さを測定した。上記レーザー光を走査する間、上記検出部と上記試験片の中央部との距離が、上記試験片の中央部と上記レーザー光の照射位置との距離よりも長くなるように上記測定装置を設定した。
【0048】
その結果、金尺を用いた測定値と同様に、四隅のうち反り量が最大となる角部における反り量は110mmと検出された。測定中、レーザー変位計の感度調整をすることで、迷光を検出することなく測定をすることができた。
【0049】
(実施例2)
ステージとして、Spectral Black(登録商標;Acktar社製、サイズ:350mm×400mm;半球反射率:0.83%)を用いる以外は、実施例1と同様の手順で、実施例1記載の試験片の端部の高さ及び反り量を測定した。その結果、金尺を用いた測定値と同様に、四隅のうち反り量が最大となる角部における反り量は110mmと検出された。測定中、迷光を検出することはあったが、感度調整をすることで、実用上問題ないレベルで正確な測定をすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、光学フィルムの反りを測定することに利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…測定装置、2…スカラロボット、3…レーザー変位計、4…ステージ、5…ロボット本体ボックス部、6…アーム部、7…ヘッド部、8…レーザー光源(照射部)、9…CMOSセンサ(検出部)、10…光学フィルム、A…視野領域、S…台座部。