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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】荷電粒子検査ツール、検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/12 20060101AFI20240321BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20240321BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H01J37/12
H01J37/28 B
H01L21/66 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022545974
(86)(22)【出願日】2021-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021053326
(87)【国際公開番号】W WO2021165136
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】20158804.3
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20206984.5
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラント,マルコ,ジャン-ジャコ
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0259570(US,A1)
【文献】特開2014-183047(JP,A)
【文献】特開2014-220241(JP,A)
【文献】特開2005-203464(JP,A)
【文献】特開2017-162590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0264062(US,A1)
【文献】米国特許第08785879(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
G01N 23/00-23/2276
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子評価ツールであって、
荷電粒子のビームを複数のサブビームに分割し、各サブビームをそれぞれの中間焦点に集束させるように構成された集光レンズアレイと、
各中間焦点にあるコリメータであって、それぞれのサブビームがサンプルに実質的に垂直に入射するように、前記それぞれのサブビームを偏向させるように構成されたコリメータと、
複数の対物レンズであって、そのそれぞれは前記複数のサブビームのうちの1つを前記サンプル上に投影するように構成され、
各対物レンズは、
第1の電極、及び
前記第1の電極と前記サンプルとの間にある第2の電極、を含み、前記第1の電極及び/又は前記第2の電極が前記複数のサブビームに共通のものである、複数の対物レンズと、
前記それぞれのサブビームが減速されて、所望の着地エネルギーで前記サンプルに入射するように、第1及び第2の電位をそれぞれ前記第1及び前記第2の電極に印加するように構成された電源と、
前記サンプルから放出された荷電粒子を検出するように構成された検出器であって、前記検出器は前記複数の対物レンズと前記サンプルとの間にある、検出器と、を含む、荷電粒子評価ツール。
【請求項2】
前記第1の電位は、前記第2の電位よりも正である、請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記第2の電位は、望ましくは前記サンプルを基準にして+50Vから+200Vまでの範囲内で、前記サンプルを基準にして正である、請求項1又は2に記載のツール。
【請求項4】
荷電粒子ビーム源をさらに含み、
各対物レンズは第3の電極を更に含み、前記第3の電極は前記第1の電極と前記荷電粒子ビーム源との間にあり、前記電源は、前記第3の電極に第3の電位を印加するように構成される、請求項1、2、又は3に記載のツール。
【請求項5】
前記電源は、前記第1及び前記第2の電極のうちの少なくとも幾つかに異なる電位を印加するように構成される、請求項4に記載のツール。
【請求項6】
前記電源は、全ての前記第1の電極に同じ第1の電位を印加し、全ての前記第2の電極に同じ第2の電位を印加するように構成される、請求項1~5の何れか一項に記載のツール。
【請求項7】
前記サブビーム中の1つ又は複数の収差を低減するように構成された1つ又は複数の収差補正器を更に含む、請求項1~6の何れか一項に記載のツール。
【請求項8】
前記収差補正器の少なくともサブセットのそれぞれは、前記中間焦点のうちのそれぞれ1つに配置されるか、又はそれと直接的に隣接する、請求項7に記載のツール。
【請求項9】
前記サンプルに渡って前記サブビームを走査するための1つ又は複数の走査偏向器を更に含む、請求項1~8の何れか一項に記載のツール。
【請求項10】
前記1つ又は複数の走査偏向器は、前記対物レンズのうちの1つ又は複数と一体化されるか、又はそれらと直接的に隣接する、請求項9に記載のツール。
【請求項11】
前記コリメータは、1つ又は複数のコリメータ偏向器である、請求項1~10の何れか一項に記載のツール。
【請求項12】
前記1つ又は複数のコリメータ偏向器は、前記サブビームの主光線が前記サンプルに実質的に垂直に入射することを確実にするのに効果的な量だけ、それぞれのビームレットを曲げるように構成される、請求項11に記載のツール。
【請求項13】
各中間焦点にある前記コリメータは、実質的に、前記サブビーム経路の対応するフォーカスポイントの位置で、前記サブビームの経路に配置された前記コリメータを含む、請求項1~12の何れか一項に記載のツール。
【請求項14】
前記コリメータは、前記サブビームを互いに対して平行化するための前記コリメータのダウンビームであるように、前記それぞれの分散するサブビームに対して作用するように構成される、請求項1~13の何れか一項に記載のツール。
【請求項15】
検査方法であって、
荷電粒子のビームを複数のサブビームに分割することと、
各サブビームを、それぞれの中間焦点に集束させることと、
各中間焦点にあるコリメータを使用して、それぞれのサブビームがサンプルに実質的に垂直に入射するように、前記それぞれのサブビームを偏向させることと、
複数の対物レンズを使用して、前記複数のサブビームを前記サンプル上に投影することであって、各対物レンズは、第1の電極、及び前記第1の電極と前記サンプルとの間にある第2の電極を含み、前記第1の電極及び/又は前記第2の電極が前記複数のサブビームに共通のものであることと、
前記それぞれのサブビームが減速されて所望の着地エネルギーで前記サンプルに入射するように、各対物レンズの前記第1及び前記第2の電極に印加される電位を制御することと、
前記複数の対物レンズと前記サンプルとの間にある検出器によって、前記サンプルから放出された荷電粒子を検出することと、を含む、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年2月21日に出願された欧州特許出願第20158804.3号、及び2020年11月11日に出願された欧州特許出願第20206984.5号の優先権を主張するものであり、これらの特許出願はそれぞれ、全体として本明細書に援用される。
【0002】
[0002] 本明細書に提供される実施形態は、一般に、荷電粒子評価ツール及び検査方法に関し、特に、複数の荷電粒子サブビームを使用する荷電粒子評価ツール及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 半導体集積回路(IC)チップを製造する際に、例えば、光学効果及び偶発的粒子の結果として、望ましくないパターン欠陥が、製作プロセス中に、基板(すなわち、ウェーハ)又はマスク上で不可避的に生じ、それによって歩留まりが低下する。したがって、望ましくないパターン欠陥の程度をモニタリングすることは、ICチップの製造において重要なプロセスである。より一般的に、基板又は他の物体/材料の表面の検査及び/又は測定は、それの製造中及び/又は製造後において重要なプロセスである。
【0004】
[0004] 荷電粒子ビームを用いたパターン検査ツールは、物体を検査するために、例えば、パターン欠陥を検出するために使用されてきた。これらのツールは、一般的に、走査電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡法技術を使用する。SEMでは、比較的高いエネルギーの電子の一次電子ビームが、比較的低い着地エネルギーでサンプル上に着地するために、最終減速ステップでターゲットにされる。電子ビームは、サンプル上にプロービングスポットとして集束される。プロービングスポットにおける材料構造と、電子ビームからの着地電子の相互作用により、二次電子、後方散乱電子、又はオージェ電子などの電子が表面から放出される。発生した二次電子は、サンプルの材料構造から放出され得る。サンプル表面に渡り、プロービングスポットとして一次電子ビームを走査することによって、サンプルの表面に渡り二次電子を放出させることができる。サンプル表面からのこれらの放出二次電子を収集することによって、パターン検査ツールは、サンプルの表面の材料構造の特徴を表す画像を取得し得る。
【0005】
[0005] 荷電粒子検査装置のスループット及び他の特性を向上させる一般的必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 本明細書で提供する実施形態は、荷電粒子ビーム検査装置を開示する。
【0007】
[0007] 本発明の第1の態様によれば、荷電粒子評価ツールが提供され、この荷電粒子評価ツールは、
荷電粒子のビームを複数のサブビームに分割し、各サブビームをそれぞれの中間焦点に集束させるように構成された集光レンズアレイと、
【0008】
[0008] 各中間焦点にあるコリメータであって、それぞれのサブビームがサンプルに実質的に垂直に入射するように、それぞれのサブビームを偏向させるように構成されたコリメータと、
複数の対物レンズであって、そのそれぞれは複数の荷電粒子ビームのうちの1つをサンプル上に投影するように構成され、
各対物レンズは、
第1の電極、及び
第1の電極とサンプルとの間にある第2の電極、を含む、複数の対物レンズと、
それぞれの荷電粒子ビームが減速されて、所望の着地エネルギーでサンプルに入射するように、第1及び第2の電位をそれぞれ第1及び第2の電極に印加するように構成された電源と、を含む。
【0009】
[0009] 本発明の第2の態様によれば、検査方法が提供され、この検査方法は、
荷電粒子のビームを複数のサブビームに分割することと、
各サブビームを、それぞれの中間焦点に集束させることと、
各中間焦点にあるコリメータを使用して、それぞれのサブビームがサンプルに実質的に垂直に入射するように、それぞれのサブビームを偏向させることと、
複数の対物レンズを使用して、複数の荷電粒子ビームをサンプル上に投影することであって、各対物レンズは、第1の電極、及び第1の電極とサンプルとの間にある第2の電極を含むことと、
それぞれの荷電粒子ビームが減速されて所望の着地エネルギーでサンプルに入射するように、各対物レンズの第1及び第2の電極に印加される電位を制御することと、を含む。
【0010】
[0010] 本発明の第3の態様によれば、マルチビーム荷電粒子光学系が提供され、このマルチビーム荷電粒子光学系は、
荷電粒子のビームを複数のサブビームに分割し、各サブビームをそれぞれの中間焦点に集束させるように構成された集光レンズアレイと、
各中間焦点にあるコリメータであって、それぞれのサブビームがサンプルに実質的に垂直に入射するように、それぞれのサブビームを偏向させるように構成されたコリメータと、
複数の対物レンズであって、そのそれぞれは複数の荷電粒子ビームのうちの1つをサンプル上に投影するように構成され、
各対物レンズは、
第1の電極、及び
第1の電極とサンプルとの間にある第2の電極、を含む、複数の対物レンズと、
それぞれの荷電粒子ビームが減速されて、所望の着地エネルギーでサンプルに入射するように、第1及び第2の電位をそれぞれ第1及び第2の電極に印加するように構成された電源と、を含む。
【0011】
[0011] 本発明の第4の態様によれば、複数の荷電粒子ビームをサンプル上に投影するように構成されたマルチビーム投影システム用の最終荷電粒子光学要素が提供され、この最終荷電粒子光学要素は、
複数の対物レンズであって、そのそれぞれは複数の荷電粒子ビームのうちの1つをサンプル上に投影するように構成され、
各対物レンズは、
第1の電極、及び
第1の電極とサンプルとの間にある第2の電極、を含む、複数の対物レンズと、
それぞれの荷電粒子ビームが減速されて、所望の着地エネルギーでサンプルに入射するように、第1及び第2の電位をそれぞれ第1及び第2の電極に印加するように構成された電源と、を含む。
【0012】
[0012] 本開示の上記及び他の態様は、添付の図面と併せた例示的実施形態の説明からより明白となるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]例示的な荷電粒子ビーム検査装置を示す概略図である。
図2】[0014]図1の例示的な荷電粒子ビーム検査装置の一部である例示的なマルチビーム装置を示す概略図である。
図3】[0015]一実施形態による、例示的なマルチビーム装置の概略図である。
図4】[0016]一実施形態による、別の例示的なマルチビーム装置の概略図である。
図5】[0017]着地エネルギー対スポットサイズのグラフである。
図6】[0018]本発明の一実施形態の対物レンズの拡大図である。
図7】[0019]一実施形態による、検査装置の対物レンズの概略断面図である。
図8】[0020]図7の対物レンズの底面図である。
図9】[0021]図7の対物レンズの変形の底面図である。
図10】[0022]図7の対物レンズに組み込まれた検出器の拡大概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0023] これより、例示的な実施形態を詳細に参照し、その例を、添付の図面に示す。以下の説明は、添付の図面を参照し、別段の表示がない限り、異なる図面における同一の番号は、同一又は類似の要素を表す。例示的な実施形態の以下の説明に記載される実装形態は、本発明と一致する全ての実装形態を表すわけではない。代わりに、それらの実装形態は、添付の請求項において記述されるように、本発明に関連する態様と一致する装置及び方法の単なる例である。
【0015】
[0024] デバイスの物理的サイズを減少させる、電子デバイスの計算能力の向上は、ICチップ上のトランジスタ、キャパシタ、ダイオードなどの回路コンポーネントの実装密度を大幅に増加させることによって達成することができる。これは、更に小さい構造の作製を可能にする分解能の向上によって可能にされてきた。例えば、親指の爪の大きさであり、2019年以前に利用可能なスマートフォンのICチップは、20億を超えるトランジスタを含むことができ、各トランジスタのサイズは、人間の毛髪の1/1000未満である。したがって、半導体IC製造が、数百の個々のステップを有する、複雑で時間のかかるプロセスであることは驚くに値しない。たとえ1つのステップのエラーであっても、最終製品の機能に劇的に影響を与える可能性がある。たった1つの「キラー欠陥」が、デバイスの故障を生じさせ得る。製造プロセスの目標は、プロセスの全体的な歩留まりを向上させることである。例えば、50のステップを有するプロセス(ここでは、ステップが、ウェーハ上に形成される層の数を示し得る)に関して75%の歩留まりを得るためには、個々のステップは、99.4%を超える歩留まりを有していなければならない。個々のそれぞれのステップが95%の歩留まりを有した場合、全体的なプロセス歩留まりは、7%と低い。
【0016】
[0025] ICチップ製造設備において、高いプロセス歩留まりが望ましい一方で、一時間当たりに処理される基板の数と定義される高い基板(すなわち、ウェーハ)スループットを維持することも必須である。高いプロセス歩留まり及び高い基板スループットは、欠陥の存在による影響を受け得る。これは、欠陥を調査するためにオペレータの介入が必要な場合に特に当てはまる。したがって、検査ツール(走査電子顕微鏡(「SEM」)など)によるマイクロスケール及びナノスケール欠陥の高スループット検出及び識別は、高い歩留まり及び低いコストを維持するために必須である。
【0017】
[0026] SEMは、走査デバイス及び検出器装置を含む。走査デバイスは、一次電子を発生させるための電子源を含む照明装置と、一次電子の1つ又は複数の集束ビームで基板などのサンプルを走査するための投影装置とを含む。共に、少なくとも照明装置又は照明システム、及び投影装置又は投影システムは、合わせて電子-光学システム又は装置と呼ばれることがある。一次電子は、サンプルと相互作用し、二次電子を発生させる。検出装置は、SEMがサンプルの走査エリアの画像を生成できるように、サンプルが走査されるときに、サンプルからの二次電子を捕捉する。高スループットの検査のために、検査装置の一部は、一次電子の複数の集束ビーム、すなわち、マルチビームを使用する。マルチビームの成分ビームは、サブビーム又はビームレットと呼ばれることがある。マルチビームは、サンプルの異なる部分を同時に走査することができる。したがって、マルチビーム検査装置は、単一ビーム検査装置よりもはるかに高速でサンプルを検査することができる。
【0018】
[0027] 既知のマルチビーム検査装置の実装形態を以下に説明する。
【0019】
[0028] 図は、概略図である。したがって、図面では、コンポーネントの相対寸法は、明瞭にするために拡大される。以下の図面の説明では、同じ又は同様の参照番号は、同じ又は同様のコンポーネント又はエンティティを指し、個々の実施形態に対する違いのみを説明する。説明及び図面は電子光学装置を対象とするが、実施形態は、本開示を特定の荷電粒子に限定するためには使用されないことが理解される。したがって、本文書全体を通して、電子への言及は、より一般的に、荷電粒子への言及であるとみなすことができ、荷電粒子は、必ずしも電子ではない。
【0020】
[0029] ここで図1を参照すると、図1は、例示的な荷電粒子ビーム検査装置100を示す概略図である。図1の荷電粒子ビーム検査装置100は、メインチャンバ10、装填ロックチャンバ20、電子ビームツール40、機器フロントエンドモジュール(EFEM)30、及びコントローラ50を含む。電子ビームツール40は、メインチャンバ10内に位置する。
【0021】
[0030] EFEM30は、第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bを含む。EFEM30は、追加の1つ又は複数の装填ポートを含むことがある。第1の装填ポート30a及び第2の装填ポート30bは、例えば、基板(例えば、半導体基板若しくは他の材料でできている基板)又は検査対象のサンプル(以降では、基板、ウェーハ、及びサンプルはまとめて「サンプル」と呼ばれる)を収容する、基板前面開口式一体型ポッド(FOUP(front opening unified pod))を受け取ることがある。EFEM30内の1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)は、サンプルを装填ロックチャンバ20に運ぶ。
【0022】
[0031] 装填ロックチャンバ20は、サンプルの周囲の気体を取り除くために使用される。これは、周囲環境の圧力より低い局所気体圧力である真空を生じさせる。装填ロックチャンバ20は、装填ロック真空ポンプシステム(図示せず)に接続されてもよく、装填ロック真空ポンプシステムは、装填ロックチャンバ20内の気体粒子を取り除く。装填ロック真空ポンプシステムの動作により、装填ロックチャンバが大気圧を下回る第1の圧力に達することが可能になる。第1の圧力に達した後、1つ又は複数のロボットアーム(図示せず)が、装填ロックチャンバ20からメインチャンバ10にサンプルを運ぶ。メインチャンバ10は、メインチャンバ真空ポンプシステム(図示せず)に接続される。メインチャンバ真空ポンプシステムは、サンプルの周囲の圧力が第1の圧力を下回る第2の圧力に達するように、メインチャンバ10内の気体粒子を取り除く。第2の圧力に達した後に、サンプルは、電子ビームツールに運ばれ、サンプルは、電子ビームツールによって検査され得る。電子ビームツール40は、マルチビーム電子光学装置を含み得る。
【0023】
[0032] コントローラ50は、電子ビームツール40に電子的に接続される。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置100を制御するように構成されたプロセッサ(コンピュータなど)でもよい。コントローラ50は、様々な信号及び画像処理機能を実行するように構成された処理回路も含み得る。図1では、コントローラ50は、メインチャンバ10、装填ロックチャンバ20、及びEFEM30を含む構造の外部のものとして示されているが、コントローラ50は、構造の一部でもよいことが理解される。コントローラ50は、荷電粒子ビーム検査装置のコンポーネント要素の1つの内部に位置してもよく、又はコントローラ50は、コンポーネント要素の少なくとも2つに分散されてもよい。本開示は、電子ビーム検査ツールを収納するメインチャンバ10の例を提供しているが、本開示の態様は、広い意味で、電子ビーム検査ツールを収納するチャンバに限定されないことに留意すべきである。むしろ、前述の原理は、第2の圧力下で動作する装置の他のツール及び他の配置にも適用できることが理解される。
【0024】
[0033] ここで図2を参照すると、図2は、図1の例示的な荷電粒子ビーム検査装置100の一部であるマルチビーム検査ツールを含む例示的な電子ビームツール40を示す概略図である。マルチビーム電子ビームツール40(本明細書では、装置40とも呼ばれる)は、電子源201、投影装置230、電動ステージ209、及びサンプルホルダ207を含む。電子源201及び投影装置230は、まとめて、照明装置と呼ばれることがある。サンプルホルダ207は、検査のためにサンプル208(例えば、基板又はマスク)を保持するように、電動ステージ209によって支持される。マルチビーム電子ビームツール40は、電子検出デバイス240を更に含む。
【0025】
[0034] 電子源201は、カソード(図示せず)、及び抽出器又はアノード(図示せず)を含み得る。動作中に、電子源201は、一次電子として電子をカソードから放出するように構成される。一次電子は、抽出器及び/又はアノードによって抽出又は加速されて、一次電子ビーム202を形成する。
【0026】
[0035] 投影装置230は、一次電子ビーム202を複数のサブビーム211、212、213に変換し、且つ各サブビームをサンプル208上に誘導するように構成される。簡潔にするために3つのサブビームが示されているが、何十、何百、又は何千ものサブビームが存在することがある。サブビームは、ビームレットと呼ばれることがある。
【0027】
[0036] コントローラ50は、電子ソース201、電子検出デバイス240、投影装置230、及び電動ステージ209などの図1の荷電粒子ビーム検査装置100の様々な部分に接続され得る。コントローラ50は、様々な画像及び信号処理機能を行い得る。コントローラ50は、荷電粒子マルチビーム装置を含む荷電粒子ビーム検査装置の動作を制御するための様々な制御信号を生成することもできる。
【0028】
[0037] 投影装置230は、検査のためにサブビーム211、212、及び213をサンプル208上に集束させるように構成されることがあり、サンプル208の表面に3つのプローブスポット221、222、及び223を形成することがある。投影装置230は、サンプル208の表面の一セクション内の個々の走査エリアに渡ってプローブスポット221、222、及び223を走査するために、一次サブビーム211、212、及び213を偏向させるように構成されることがある。サンプル208上のプローブスポット221、222、及び223への一次サブビーム211、212、及び213の入射に応答して、二次電子及び後方散乱電子を含む電子が、サンプル208から発生する。二次電子は、一般的に、50eV以下の電子エネルギーを有し、後方散乱電子は、一般的に、50eVと一次サブビーム211、212、及び213の着地エネルギーとの間の電子エネルギーを有する。
【0029】
[0038] 電子検出デバイス240は、二次電子及び/又は後方散乱電子を検出し、対応する信号を生成するように構成され、これらの信号は、例えば、サンプル208の対応する走査エリアの画像を構築するために、コントローラ50又は信号処理システム(図示せず)に送られる。電子検出デバイスは、投影装置に組み込まれているか、又は投影装置からは分離されていることがあり、二次光学コラムが、二次電子及び/又は後方散乱電子を電子検出デバイスに向けるように設けられる。
【0030】
[0039] コントローラ50は、画像取得器(図示せず)及びストレージデバイス(図示せず)を含む画像処理システムを含み得る。例えば、コントローラは、プロセッサ、コンピュータ、サーバ、メインフレームホスト、端末、パーソナルコンピュータ、任意の種類のモバイルコンピューティングデバイスなど、又はそれらの組み合わせを含み得る。画像取得器は、コントローラの処理機能の少なくとも一部を含み得る。したがって、画像取得器は、少なくとも1つ又は複数のプロセッサを含み得る。画像取得器は、数ある中でも特に、導電体、光ファイバケーブル、ポータブル記憶媒体、IR、Bluetooth、インターネット、ワイヤレスネットワーク、ワイヤレス無線機、又はこれらの組み合わせなどの信号通信を可能にする装置40の電子検出デバイス240に通信可能に結合され得る。画像取得器は、電子検出デバイス240から信号を受信し、信号に含まれるデータを処理し、そこから画像を構築することができる。したがって、画像取得器は、サンプル208の画像を取得することができる。画像取得器は、輪郭の生成、及び取得画像へのインジケータの重畳などの様々な後処理機能を行うこともできる。画像取得器は、取得画像の明度及びコントラストなどの調整を行うように構成され得る。ストレージは、ハードディスク、フラッシュドライブ、クラウドストレージ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、他のタイプのコンピュータ可読メモリなどの記憶媒体でもよい。ストレージは、画像取得器と結合されてもよく、走査された生の画像データをオリジナルの画像として保存したり、後処理された画像を保存したりするために使用することができる。
【0031】
[0040] 画像取得器は、電子検出デバイス240から受信された撮像信号に基づいてサンプルの1つ又は複数の画像を取得することができる。撮像信号は、荷電粒子撮像を実施するための走査動作に対応し得る。取得画像は、複数の撮像エリアを含む単一の画像であり得る。単一の画像は、ストレージに保存することができる。単一の画像は、複数の領域に分割され得るオリジナルの画像であり得る。各領域は、サンプル208の特徴を含む1つの撮像エリアを含み得る。取得画像は、ある期間に渡って複数回サンプリングされたサンプル208の単一の撮像エリアの複数の画像を含み得る。複数の画像は、ストレージに保存することができる。コントローラ50は、サンプル208の同じ場所の複数の画像を用いて画像処理ステップを行うように構成され得る。
【0032】
[0041] コントローラ50は、検出された二次電子の分布を得るために、測定回路(例えば、アナログ-デジタル変換器)を含み得る。検出時間窓の間に収集された電子分布データは、サンプル表面に入射した一次サブビーム211、212、及び213の各々の対応する走査パスデータと組み合わせて、検査中のサンプル構造の画像を再構築するために使用することができる。再構築された画像は、サンプル208の内部又は外部の構造の様々なフィーチャを明らかにするために使用することができる。したがって、再構築された画像は、サンプルに存在し得るいかなる欠陥も明らかにするために使用することができる。
【0033】
[0042] コントローラ50は、サンプル208の検査中にサンプル208を移動させるように電動ステージ209を制御することができる。コントローラ50は、電動ステージ209が、少なくともサンプルの検査中に、好ましくは継続的に、例えば、一定の速度で、ある方向にサンプル208を移動させることを可能にし得る。コントローラ50は、電動ステージ209が、様々なパラメータに依存するサンプル208の移動の速度を変えるように、電動ステージ209の移動を制御することができる。例えば、コントローラは、走査プロセスの検査ステップの特性に応じて、ステージ速度(その方向を含む)を制御することができる。
【0034】
[0043] 図3は、評価ツールの概略図である。電子源201は、電極を、投影システム230の一部を形成する集光レンズ231のアレイに向ける。電子源は、明度と全放出電流との間の良好な妥協点を持つ高明度の熱電界放出器であることが望ましい。何十、何百、又は何千もの集光レンズ231が存在することがある。集光レンズ231は、多電極レンズを含むことがあり、欧州特許出願公開第1602121A1号に基づく構成を有することがあり、この文書は、特に電子ビームを複数のサブビームに分割するためのレンズアレイ(このアレイは、サブビーム毎に1つのレンズを提供する)の開示を参照することにより本明細書に組み込まれる。レンズアレイは、少なくとも2つのプレートの形態を取ることがある。レンズアレイは、少なくとも2つのプレートのうちの一方であり得るビーム制限アパーチャアレイを含むことがある。この少なくとも2つのプレートは電極として機能し、各プレート内のアパーチャは互いに位置合わせされ、サブビームの位置に対応する。これらのプレートのうちの少なくとも2つは、所望のレンズ効果を達成するために、動作中に異なる電位に維持される。
【0035】
[0044] ある構成では、集光レンズアレイは、荷電粒子が各レンズに入るときと出るときで同じエネルギーを有する3つのプレートのアレイから形成され、この構成は、アインツェルレンズと呼ばれることがある。したがって、分散はアインツェルレンズ自体の内部(レンズの入口電極と出口電極との間)でのみ発生し、それによって、オフアクシス色収差が制限される。集光レンズの厚さが薄い場合、例えば、数mmである場合、そのような収差の影響は小さいか又は無視できる。
【0036】
[0045] アレイ中の各集光レンズは、電子を、それぞれの中間焦点233で集束するそれぞれのサブビーム211、212、213に向ける。サブビームは、互いに対して発散している。中間焦点233のダウンビームは、複数の対物レンズ234であり、そのそれぞれは、それぞれのサブビーム211、212、213をサンプル208に向ける。対物レンズ234は、アインツェルレンズであり得る。集光レンズ及び対応するダウンビーム対物レンズによりビーム内で発生する、少なくとも色収差は、互いに打ち消されることがある。
【0037】
[0046] 電子検出デバイス240は、対物レンズ234とサンプル208との間に設けられ、サンプル208から放出された二次電子及び/又は後方散乱電子を検出する。電子検出システムの例示的な構成について、以下で説明する。
【0038】
[0047] 図3のシステムでは、ビームレット211、212、213は、集光レンズ231からサンプル208まで直線経路に沿って伝搬する。ビームレット経路は、集光レンズ231のダウンビームを発散させる。変形システムが図4に示されており、これは、偏向器235が中間焦点233に設けられている点を除いて、図3のシステムと同じである。偏向器235は、対応する中間焦点233又はフォーカスポイント(即ち、フォーカス地点)の位置で、又は少なくともその周りで、ビームレット経路中に配置される。偏向器は、関連付けられたビームレットの中間像面において、即ち、その焦点又はフォーカスポイントにおいて、ビームレット経路内に配置される。偏向器235は、それぞれのビームレット211、212、213に対して動作するように構成される。偏向器235は、主光線(ビーム軸と呼ばれることもある)がサンプル208に実質的に垂直に(即ち、サンプルの公称表面に実質的に90°で)入射することを確実にするのに効果的な量だけ、それぞれのビームレット211、212、213を曲げるように構成される。偏向器235は、コリメータ又はコリメータ偏向器と呼ばれることもある。偏向器235は、事実上、偏向器に至る前で、ビームレット経路が互いに対して発散するように、ビームレットの経路を平行化する。偏向器のダウンビームでは、ビームレット経路は互いに対して実質的に平行である、即ち、実質的にコリメートされている。したがって、各ビームレット経路は、集光レンズ231のアレイと、コリメータ、例えば偏向器235のアレイ、との間で直線状になっていることがある。各ビームレット経路は、偏向器235のアレイと、対物レンズアレイ234との間、任意選択的にサンプル208との間で、直線状になっていることがある。適切なコリメータは、2020年2月7日に出願された欧州特許出願第20156253.5号で開示される偏向器であり、この特許出願は、マルチビームアレイへの偏向器の適用に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
[0048] 図4のシステムは、サンプル上の電子の着地エネルギーを制御するように構成されることがある。着地エネルギーは、評価対象のサンプルの性質に応じて、二次電子の放出及び検出を増加させるように選択されることがある。対物レンズ234を制御するために設けられるコントローラは、着地エネルギーを、所定の範囲内の任意の所望の値、又は複数の所定の値のうちの所望の値に制御するように構成されることがある。一実施形態では、着地エネルギーは、1000eVから5000eVまでの範囲内の所望の値に制御されることがある。図4のシステムでは、電子の着地エネルギーが制御されることがある、というのも、ビームレット経路で発生するオフアクシス収差は、集光レンズ231において、又は少なくとも主として集光レンズ231において、発生するからである。図4に示したシステムの対物レンズ234は、アインツェルレンズである必要はない。これは、ビームが平行化されている場合、対物レンズ内でオフアクシス収差が発生しないから、である。オフアクシス収差は、対物レンズ234よりも集光レンズにおいてより良好に制御することができる。集光レンズ231を実質的により薄くすることにより、オフアクシス収差、特に色オフアクシス収差に対する集光レンズの寄与分が最小限に抑えられることがある。集光レンズ231の厚さを変化させて、色オフアクシス寄与分を調整し、それぞれのビームレット経路中の色収差の他の寄与分と釣り合わせることがある。したがって、対物レンズ234は、2つ以上の電極を有することがある。対物レンズに入ってくるビームエネルギーは、対物レンズを出てゆくエネルギーとは異なっていることがある。
【0040】
[0049] 図6は、対物レンズのアレイのうちの一つの対物レンズ300の拡大概略図である。対物レンズ300は、10よりも大きな倍率、望ましくは50から100以上の範囲の倍率で、電子ビームを縮小するように構成されることがある。対物レンズは、中央の即ち第1の電極301、下側の即ち第2の電極302、及び上側の即ち第3の電極303を含む。電圧源V1、V2、V3は、電位を、それぞれ第1、第2、及び第3の電極に印加するように構成される。更なる電圧源V4がサンプルに接続されて、グランドであり得る第4の電位を印加する。電位は、サンプル208を基準にして定義されることがある。第1、第2、及び第3の電極は、それぞれアパーチャを備えており、そのアパーチャを通って、それぞれのサブビームが伝搬する。第2の電位は、サンプルの電位に近い電位、例えば50V~200Vの範囲より正の電位であり得る。或いは、第2の電位は、約+500V~約+1,500Vの範囲内であり得る。検出器が、最下部の電極よりも光学コラム内でより高くにある場合、より高い電位が有用である。第1及び/又は第2の電位は、焦点補正を行うために、アパーチャ毎に、又はアパーチャのグループ毎に、変えることができる。
【0041】
[0050] 一実施形態では、第3の電極が省略されることが望ましい。2つの電極のみを有する対物レンズは、より多くの電極を有する対物レンズよりも、収差がより小さくなることがある。3電極対物レンズは、電極間により大きな電位差を有することができるので、より強力なレンズを実現できる。追加の電極(即ち、3つ以上の電極)は、例えば、入射ビームに加えて二次電極を集束させるために電子の軌道を制御する際に更なる自由度をもたらす。
【0042】
[0051] 着地エネルギーを決定することができるように、対物レンズ300に減速機能を持たせるために、最も下側の電極とサンプルの電位を変化させることが望ましい。電子を減速させるために、下側の(第2の)電極は、中央の電極よりも負にされる。最も低い着地エネルギーが選択された場合に、最も高い静電場強度が発生する。第2の電極と中央の電極との距離、最も低い着地エネルギー、及び第2の電極と中央の電極との最大電位差は、結果として得られる電場強度が許容可能であるように、選択される。着地エネルギーがより高くなると、静電場はより低くなる(同じ長さに渡る減速度がより小さくなる)。
【0043】
[0052] 電子源とビーム制限アパーチャ(集光レンズのすぐ上)との間の電子光学系構成は同じままなので、ビーム電流は、着地エネルギーが変化しても変わらないままである。着地エネルギーが変化すると、解像度に影響が及び、解像度が向上するか又は低減することがある。図5は、2つの場合における、着地エネルギー対スポットサイズを示すグラフである。黒丸を備えた破線は、着地エネルギーだけを変化させた場合の効果を示す、即ち集光レンズの電圧は同じままである。白丸を備えた実線は、着地エネルギーが変更され、集光レンズの電圧(拡大率対開き角の最適化)が再最適化された場合の効果を示す。
【0044】
[0053] 集光レンズの電圧が変更された場合、コリメータは、全ての着地エネルギーに対して正確な中間像面にはなくなる。したがって、コリメータによって誘発される非点収差を補正することが望ましい。
【0045】
[0054] いくつかの実施形態では、荷電粒子評価ツールは、サブビーム中の1つ又は複数の収差を低減する1つ又は複数の収差補正器を更に含む。一実施形態では、収差補正器の少なくともサブセットのそれぞれが、中間焦点のうちのそれぞれ1つに配置されるか、又はそれと直接的に隣接する(例えば、中間像面に配置されるか、又はそれと隣接する)。サブビームは、中間平面などの焦点面で又はその近傍で、最小の断面積を有する。これは、他の場所で、すなわち、中間平面のアップビーム若しくはダウンビームで利用可能なスペースよりも(又は中間像面を持たない代替の配置で利用可能となるスペースよりも)多くのスペースを収差補正器に提供する。
【0046】
[0055] 一実施形態では、中間焦点(若しくは中間像面若しくはフォーカスポイント)に、又はそれらに直接隣接して配置された収差補正器は、異なるビームにとって異なる位置にあるように見えるソース201を補正するための偏向器を含む。補正器は、各サブビームと対応する対物レンズとの間の良好なアライメントを阻む、ソースに起因した巨視的収差を補正するために使用されることがある。
【0047】
[0056] 収差補正器は、適切なコラムアライメントを阻む収差を補正することができる。そのような収差は、サブビームと補正器との間のミスアライメントにつながることもある。この理由のため、これに加えて又はその代わりに、収差補正器を集光レンズ231に、又はその近くに配置することが望ましいことがある(例えば、そのような収差補正器のそれぞれは、集光レンズ231のうちの1つ又は複数と一体化されるか、又はそれらと直接隣接する)。これは、集光レンズ231がビームアパーチャと垂直方向に近いか、又はビームアパーチャと一致するので、集光レンズ231では、又はその近傍では、収差が、対応するサブビームのシフトをまだ引き起こしていないことから、望ましい。しかしながら、集光レンズ231に、又はその近傍に補正器を配置することの課題は、更に下流の場所と比べて、この場所では各サブビームの断面積が比較的大きくなり、ピッチが比較的小さくなる、という点である。
【0048】
[0057] いくつかの実施形態では、収差補正器の少なくともサブセットのそれぞれが、対物レンズ234のうちの1つ又は複数と一体化されるか、又はそれらと直接的に隣接する。一実施形態では、これらの収差補正器は、像面湾曲、フォーカスエラー、及び非点収差、のうちの1つ又は複数を低減する。これに加えて又はその代わりに、サンプル208に渡ってサブビーム211、212、214を走査するために、1つ又は複数の走査偏向器(図示せず)が、対物レンズ234のうちの1つ又は複数と一体化されるか、又はそれらと直接的に隣接することがある。一実施形態では、米国特許出願公開第2010/0276606号に記載の走査偏向器が使用されてもよく、この文書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0049】
[0058] 収差補正器は、欧州特許出願公開第2702595A1号に開示されるようなCMOSベースの個々のプログラマブル偏向器、又は欧州特許出願公開第2715768A2号に開示されるような多極偏向器のアレイであることがあり、両文書におけるビームレットマニピュレータの説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
[0059] ある実施形態では、前述の実施形態で参照された対物レンズは、アレイ対物レンズである。アレイ内の各要素は、マルチビームにおける異なるビーム又は異なるビームの一群を操作するマイクロレンズである。静電アレイ対物レンズは、少なくとも2つのプレートを有し、各プレートは、複数の孔又はアパーチャを有する。一方のプレートにおける各孔の位置は、他方のプレートにおける対応する孔の位置に対応する。対応する孔は、使用時に、マルチビームにおける同じビーム又は同じビームの一群に対して作用する。アレイ内の各要素のレンズのタイプの適切な例は、2電極減速レンズである。対物レンズの底部電極は、検出器、例えばCMOSチップである。検出器は、対物レンズなどのマルチビームマニピュレータアレイと一体化されることがある。対物レンズに検出器アレイを統合すると、二次コラムが置き換えられる。検出器アレイ、例えばCMOSチップは、サンプルと向き合うように向けられることが好ましい(ウェーハと電子光学システムの底部との間の距離が短い(例えば、100μm)ため)。一実施形態では、二次電子信号を捕捉する電極が、CMOSデバイスの上部金属層内に形成される。電極は、他の層に形成されてもよい。CMOSの電力及び制御信号は、スルーシリコンビアによってCMOSに接続され得る。ロバスト性のために、底部電極は、好ましくは2つの要素:CMOSチップ、及び孔を有するパッシブSiプレートから成る。このプレートは、高電界からCMOSをシールドする。
【0051】
[0060] 検出効率を最大にするために、(アパーチャを除く)アレイ対物レンズの実質的に全てのエリアが電極によって占められるように、電極表面をできる限り大きくすることが望ましい。各電極は、アレイピッチに実質的に等しい直径を有する。ある実施形態では、電極の外形は、円形であるが、これは、検出エリアを最大にするために正方形にされてもよい。また、基板スルーホールの直径を最小にすることができる。電子ビームの一般的なサイズは、約5~15ミクロンである。
【0052】
[0061] 一実施形態では、単一の電極が各アパーチャを取り囲む。別の実施形態では、複数の電極要素が、各アパーチャの周りに設けられる。1つのアパーチャを取り囲む電極要素によって捕捉される電子は、単一の信号に合成されるか、又は独立した信号を生成するために使用されることがある。電極要素は、半径方向に分割されるか(即ち、複数の同心の環を形成するか)、角度的に分割されるか(即ち、複数の扇状の部分を形成するか)、半径方向と角度的の両方で分割されるか、又は他の任意の便利な態様で分割されることがある。
【0053】
[0062] しかしながら、電極表面の拡大は、寄生容量の増大、したがって、帯域幅の低下をもたらす。このため、電極の外径を制限することが望ましい場合がある。特に、電極の拡大が、わずかな検出効率の向上を与えるにすぎず、しかしキャパシタンスの大幅な増加を与える場合。円形(環状)電極は、収集効率と寄生容量の良い妥協点を提供し得る。
【0054】
[0063] 電極の外径の増大は、クロストーク(隣接した孔の信号に対する感度)の増加ももたらし得る。これは、電極の外径をより小さくする理由にもなり得る。特に、電極の拡大が、わずかな検出効率の向上を与えるにすぎず、しかしクロストークの大幅な増加を与える場合。
【0055】
[0064] 電極によって収集された後方散乱電子及び/又は二次電子の電流は、トランスインピーダンスアンプによって増幅される。
【0056】
[0065] 対物レンズアレイと一体化された検出器の例示的な実施形態が図7に示されており、この図は、マルチビーム対物レンズ401を概略断面で示している。対物レンズ401の出力側(サンプル403に対向する側)には、検出器モジュール402が設けられる。図8は、検出器モジュール402の底面図であり、検出器モジュール402は、上に複数の捕捉電極405が設けられる基板404を含み、各捕捉電極405は、ビームアパーチャ406を取り囲む。ビームアパーチャ406は、基板404を貫通してエッチングすることによって形成することができる。図8に示される配置では、ビームアパーチャ406は、矩形アレイで示されている。ビームアパーチャ406は、異なるように(例えば、図9に示されるように、六方最密アレイで)配置されることも可能である。
【0057】
[0066] 図10は、縮尺を大きくして、検出器モジュール402の一部を断面で示す。捕捉電極405は、検出器モジュール402の一番下の面、すなわちサンプルに最も近い面を形成する。捕捉電極405とシリコン基板404の本体との間には、論理層407が設けられる。論理層407は、増幅器、例えば、トランスインピーダンス増幅器、アナログ-デジタル変換器、及び読出し論理回路を含み得る。ある実施形態では、1つの捕捉電極405につき、1つの増幅器及び1つのアナログ-デジタル変換器が存在する。論理層407及び捕捉電極405は、捕捉電極405が最終メタライゼーション層を形成するCMOSプロセスを使用して製造することができる。
【0058】
[0067] 配線層408は、基板404の裏側に設けられ、スルーシリコンビア409によって論理層407に接続される。スルーシリコンビア409の数は、ビームアパーチャ406の数と同じである必要はない。具体的には、電極信号が論理層407においてデジタル化される場合、データバスを提供するために、少数のスルーシリコンビアのみが必要とされ得る。配線層408は、制御線、データ線、及び電力線を含み得る。ビームアパーチャ406にもかかわらず、全ての必要な接続に十分なスペースが存在することに気付くだろう。検出モジュール402は、バイポーラ又は他の製造技術を使用して製作することもできる。プリント回路基板及び/又は他の半導体チップが検出器モジュール402の裏側に設けられてもよい。
【0059】
[0068] 上述した統合された検出器アレイは、調整可能な着地エネルギーを有するツールと共に使用された場合に、特に有利である、というのも、二次電子の捕捉を、ある範囲の着地エネルギーに対して最適化することができるからである。検出器アレイは、最下部の電極アレイだけでなく、他の電極アレイとも一体化させることができる。
【0060】
[0069] 本発明の一実施形態による評価ツールは、サンプルの定性的評価(例えば、合格/不合格)を行うツール、又は、サンプルの定量的測定(例えば、フィーチャのサイズ)を行うツール、又はサンプルのマップの画像を生成するツールであり得る。評価ツールの例は、(例えば、欠陥を特定するための)検査ツール、(例えば、欠陥を分類するための)レビューツール、及び計測ツールである。
【0061】
[0070] 「サブビーム」及び「ビームレット」という用語は、本明細書では互換的に使用され、両方とも、親の放射ビームを分割又は分裂させることにより、親の放射ビームから導出された任意の放射ビームを包含するものと理解される。「マニピュレータ」という用語は、レンズ又は偏向器などの、サブビーム又はビームレットの経路に影響を与える任意の要素を包含するように使用される。本明細書に記載する実施形態は、1本のビーム又はマルチビームの経路に沿ってアレイ状に配置された一連のアパーチャアレイ又は電子光学要素の形態を取ることがある。そのような電子光学要素は、静電的であり得る。一実施形態では、例えば、サンプルより前のサブビーム経路内の、ビーム制限アパーチャアレイから最後の電子光学要素までの、全ての電子光学要素は、静電的であることがあり、及び/又はアパーチャアレイ若しくはプレートアレイの形態をしていることがある。構成では、電子光学要素のうちの1つ又は複数は、微小電子機械システム(MEMS)として製造されることがある。
【0062】
[0071] 「隣接する」という用語は、「当接する」という意味を含むことがある。
【0063】
[0072] 本発明の実施形態は、以下の条項によって提供される。
【0064】
[0073] 条項1.荷電粒子評価ツールであって、荷電粒子のビームを複数のサブビームに分割し、各サブビームをそれぞれの中間焦点に集束させるように構成された集光レンズアレイと、各中間焦点にあるコリメータであって、それぞれのサブビームがサンプルに実質的に垂直に入射するように、それぞれのサブビームを偏向させるように構成された、コリメータと、複数の対物レンズであって、そのそれぞれは複数の荷電粒子ビームのうちの1つをサンプル上に投影するように構成され、各対物レンズは、第1の電極、及び第1の電極とサンプルとの間にある第2の電極を含む、複数の対物レンズと、それぞれの荷電粒子ビームが減速されて所望の着地エネルギーでサンプルに入射するように、第1及び第2の電位をそれぞれ第1及び第2の電極に印加するように構成された電源と、を含む、荷電粒子評価ツール。
【0065】
[0074] 条項2.第1の電位は第2の電位よりも正である、条項1に記載のツール。
【0066】
[0075] 条項3.第2の電位は、望ましくはサンプルを基準にして+50Vから+200Vまでの範囲内で、サンプルを基準にして正である、条項1又は2に記載のツール。
【0067】
[0076] 条項4.第2の電位は、望ましくはサンプルを基準にして+500から+1,500Vまでの範囲内で、サンプルを基準にして正である、条項1又は2に記載のツール。
【0068】
[0077] 条項5.各対物レンズは第3の電極を更に含み、第3の電極は第1の電極と荷電粒子ビーム源との間にあり、電源は、第3の電極に第3の電位を印加するように構成され、好ましくは、電源は、第1及び第2の電極のうちの少なくとも幾つかに異なる電位を印加するように構成される、条項1、2、3、又は4に記載のツール。
【0069】
[0078] 条項6.サンプルから放出された荷電粒子を検出するように構成された検出器を更に含み、検出器は複数の対物レンズとサンプルとの間にある、条項1~5の何れか一項に記載のツール。
【0070】
[0079] 条項7.電源は、全ての第1の電極に同じ第1の電位を印加し、全ての第2の電極に同じ第2の電位を印加するように構成される、条項1~6の何れか一項に記載のツール。
【0071】
[0080] 条項8.サブビーム中の1つ又は複数の収差を低減するように構成された1つ又は複数の収差補正器を更に含み、好ましくは、収差補正器の少なくともサブセットのそれぞれは、中間焦点のうちのそれぞれ1つに配置されるか、又はそれと直接的に隣接する、条項1~7の何れか一項に記載のツール。
【0072】
[0081] 条項9.サンプルに渡ってサブビームを走査するための1つ又は複数の走査偏向器を更に含む、条項1~8の何れか一項に記載のツール。
【0073】
[0082] 条項10.1つ又は複数の走査偏向器は、対物レンズのうちの1つ又は複数と一体化されるか、又はそれらと直接的に隣接する、条項に記載のツール。
【0074】
[0083] 条項11.コリメータは、1つ又は複数のコリメータ偏向器である、条項1~10の何れか一項に記載のツール。
【0075】
[0084] 条項12.1つ又は複数のコリメータ偏向器は、サブビームの主光線がサンプルに実質的に垂直に入射することを確実にするのに効果的な量だけ、それぞれのビームレットを曲げるように構成される、条項11に記載のツール。
【0076】
[0085] 条項13.各中間焦点にあるコリメータは、実質的に、サブビーム経路の対応するフォーカスポイントの位置で、サブビームの分散経路に配置されたコリメータを含む、条項1~12の何れか一項に記載のツール。
【0077】
[0086] 条項14.コリメータは、サブビームを互いに対して平行化するためのコリメータのダウンビームであるように、それぞれの分散するサブビームに対して作用するように構成される、条項1~13の何れか一項に記載のツール。
【0078】
[0087] 条項15.検査方法であって、荷電粒子のビームを複数のサブビームに分割することと、各サブビームをそれぞれの中間焦点に集束させることと、各中間焦点にあるコリメータを使用して、それぞれのサブビームがサンプルに実質的に垂直に入射するように、それぞれのサブビームを偏向させることと、複数の対物レンズを使用して、複数の荷電粒子ビームをサンプル上に投影することであって、各対物レンズは、第1の電極、及び第1の電極とサンプルとの間にある第2の電極を含むことと、それぞれの荷電粒子ビームが減速されて所望の着地エネルギーでサンプルに入射するように、各対物レンズの第1及び第2の電極に印加される電位を制御することと、を含む、検査方法。
【0079】
[0088] 本発明について様々な実施形態と関連付けて説明してきたが、当業者には、本明細書で開示される発明の明細及び実施を考慮することから、他の実施形態が明らかであろう。この明細書及び例は、単なる例とみなされることが意図されており、本発明の真の範囲及び趣旨は、以降の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10