(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240322BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20240322BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G03G15/20 510
H05B3/00 335
H05B3/00 310D
H05B3/10 A
(21)【出願番号】P 2020153924
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2020060703
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】南野 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 創
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-9848(JP,A)
【文献】特開2014-59508(JP,A)
【文献】特開2016-62024(JP,A)
【文献】特開2017-92039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱体と、
複数の温度検知手段とを備えた加熱装置であって、
前記加熱体は、
抵抗発熱体を含む第1の発熱部および第2の発熱部と、
複数の導電体と、
前記導電体を介して前記第1の発熱部と接続される第1の電極部と、
前記導電体を介して前記第1の発熱部および前記第2の発熱部に接続される第2の電極部と、
前記導電体を介して前記第2の発熱部と接続される第3の電極部と、を備え、
前記抵抗発熱体は複数並んで配列され、
複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記加熱体に含まれる全ての抵抗発熱体のうち、最も一方側に配置された抵抗発熱体から、最も他方側に配置された抵抗発熱体までの領域を発熱領域とすると、
前記第1の発熱部は、前記発熱領域の中央位置よりも一方側と他方側とにそれぞれ設けられた抵抗発熱体であって、前記加熱体に含まれる全ての抵抗発熱体のうち、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の抵抗発熱体を含み、
前記第1の発熱部に含まれる抵抗発熱体は偶数個であり、
前記温度検知手段は、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の前記抵抗発熱体にそれぞれ対応した位置に配置されることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
加熱体と、
複数の温度検知手段とを備えた加熱装置であって、
前記加熱体は、
抵抗発熱体を含む第1の発熱部、第2の発熱部、および、第3の発熱部と、
複数の導電体と、
前記導電体を介して前記第1の発熱部と接続される第1の電極部と、
前記導電体を介して前記第1の発熱部、前記第2の発熱部、および、前記第3の発熱部に接続される第2の電極部と、
前記導電体を介して前記第2の発熱部と接続される第3の電極部と、
前記導電体を介して前記第3の発熱部と接続される第4の電極部と、を備え、
前記抵抗発熱体は複数並んで配列され、
複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記加熱体に含まれる全ての抵抗発熱体のうち、最も一方側に配置された抵抗発熱体から、最も他方側に配置された抵抗発熱体までの領域を発熱領域とすると、 前記第1の発熱部は、前記発熱領域の中央位置よりも一方側と他方側とにそれぞれ設けられた抵抗発熱体であって、前記加熱体に含まれる全ての抵抗発熱体のうち、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の抵抗発熱体を含み、
前記第1の発熱部に含まれる抵抗発熱体は偶数個であり、
前記温度検知手段は、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の前記抵抗発熱体にそれぞれ対応した位置に配置されることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
前記第1の発熱部を構成する前記抵抗発熱体が4個である請求項1または2いずれか記載の加熱装置。
【請求項4】
請求項1に係る請求項3記載の加熱装置であって、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第1の電極部および前記第3の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して一方側に配置され、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第2の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して他方側に配置され、
前記第1の発熱部に含まれる抵抗発熱体のうち、前記複数の抵抗発熱体の配列方向の最も前記一方側の抵抗発熱体に対応する位置に、さらに温度検知手段が配置される加熱装置。
【請求項5】
請求項1に係る請求項3又は請求項4記載の加熱装置であって、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第1の電極部および前記第3の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して一方側に配置され、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第2の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して他方側に配置され、
前記第2の発熱部に含まれる抵抗発熱体のうち、前記複数の抵抗発熱体の配列方向の最も前記他方側の抵抗発熱体に対応する位置にさらに温度検知手段が配置される加熱装置。
【請求項6】
前記第1の発熱部の前記複数の抵抗発熱体の配列方向の幅が210mm±10mmの範囲に設定される請求項1から5いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
請求項2記載の加熱装置であって、
前記第1の発熱部は、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の抵抗発熱体で構成され、
前記第2の発熱部は、前記第1の発熱部よりも前記複数の抵抗発熱体の配列方向の一方側と他方側とにそれぞれ1個配置された抵抗発熱体を含み、
前記第3の発熱部は、前記第2の発熱部よりも前記発熱領域の中央位置から離れる位置の一方側と他方側とにそれぞれ1個配置された抵抗発熱体を含み、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第1の電極部と前記第3の電極部と前記第4の電極部は、前記発熱領域の前記複数の抵抗発熱体の配列方向中央位置に対して一方側に配置され、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第2の電極部は、前記発熱領域の前記複数の抵抗発熱体の配列方向中央位置に対して他方側に配置され、
前記第2の発熱部に含まれる抵抗発熱体のうち、前記複数の抵抗発熱体の配列方向の最も前記他方側の抵抗発熱体に対応する位置にさらに温度検知手段が配置される加熱装置。
【請求項8】
請求項2又は請求項7の加熱装置であって、
前記第1の発熱部は、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の抵抗発熱体で構成され、
前記第2の発熱部は、前記第1の発熱部よりも前記複数の抵抗発熱体の配列方向の一方側と他方側とにそれぞれ1個配置された抵抗発熱体を含み、
前記第3の発熱部は、前記第2の発熱部よりも前記発熱領域の中央位置から離れる位置の一方側と他方側とにそれぞれ1個配置された抵抗発熱体を含み、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第1の電極部と前記第3の電極部と前記第4の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して一方側に配置され、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第2の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して他方側に配置され、
前記第3の発熱部における最も前記他方側の抵抗発熱体に対応する位置にさらに温度検知手段が配置される加熱装置。
【請求項9】
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の抵抗発熱体のうちの一方側の抵抗発熱体の一方側端部から他方側の抵抗発熱体の他方側端部までの幅が105mm±10mmである請求項1から8いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記第1の発熱部の複数の抵抗発熱体の配列方向の幅が297mm±10mmの範囲に設定される請求項1から8いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の抵抗発熱体のうちの一方側の抵抗発熱体の一方側端部から他方側の抵抗発熱体の他方側端部までの幅が148mm±10mmである請求項1から10いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記加熱体は、回転可能な無端状のベルト部材を加熱する請求項1から11いずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項13】
請求項1から12いずれか1項に記載の加熱装置を備え、記録媒体上の画像を定着させる定着装置。
【請求項14】
請求項13記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【請求項15】
前記加熱装置を制御する制御部をさらに備えた請求項14記載の画像形成装置であって、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第1の電極部および前記第3の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して一方側に配置され、
前記第1の発熱部に通電する場合に、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の前記抵抗発熱体にそれぞれ対応した位置に配置された前記温度検知手段のうち、前記複数の抵抗発熱体の配列方向他方側の温度検知手段が温度を検知して、前記制御部が前記加熱体を制御する画像形成装置。
【請求項16】
請求項1または請求項1に係る請求項3から6、および、請求項9から12いずれか1項に記載の加熱装置を備えた定着装置と、
前記加熱装置を制御する制御部とを備えた画像形成装置であって、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第1の電極部および前記第3の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して一方側に配置され、
前記第1の発熱部および前記第2の発熱部に通電する場合に、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の前記抵抗発熱体にそれぞれ対応した位置に配置された前記温度検知手段のうち、前記複数の抵抗発熱体の配列方向一方側の温度検知手段が温度を検知して、前記制御部が前記加熱体を制御する画像形成装置。
【請求項17】
請求項2または請求項2に係る請求項3および請求項6から12いずれか1項に記載の加熱装置を備えた定着装置と、
前記加熱装置を制御する制御部とを備えた画像形成装置であって、
前記複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記第1の電極部、前記第3の電極部、および、前記第4の電極部は、前記発熱領域の中央位置に対して一方側に配置され、
前記第1の発熱部および前記第3の発熱部に通電する場合、あるいは、前記第1の発熱部、前記第2の発熱部、および、前記第3の発熱部に通電する場合に、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の前記抵抗発熱体にそれぞれ対応した位置に配置された前記温度検知手段のうち、前記複数の抵抗発熱体の配列方向一方側の温度検知手段が温度を検知して、前記制御部が前記加熱体を制御する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱装置を備えた装置として、複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載された装置である、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置や用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置などが知られている。例えば、上記の定着装置には、加熱装置によって加熱される被加熱部材としての定着ベルトや温度検知手段等が設けられる。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、長手状の基板に、発熱体(抵抗発熱体)や電気接点(電極部)、これらを電気的に接続する導体パターン(導電体)などが設けられた加熱体(ヒータ)を備える定着装置が開示されている。
【0004】
ところで、このような導体パターン(導電体)が基板に設けられている加熱体においては、発熱体(抵抗発熱体)を発熱させる際、導体パターン(導電体)への通電により導体パターン(導電体)でもわずかながら発熱が生じる。このため、厳密には、加熱体全体の発熱分布は、導体パターン(導電体)の発熱の影響を受けることになる。
【0005】
従って、導体パターン(導電体)の発熱分布によっては、それが原因で加熱体の温度分布にばらつきが生じる虞がある。そして、このような温度のばらつきがあると、温度検知手段を配置する場所によってその検知結果が変化してしまうという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱不良が生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、加熱体と、複数の温度検知手段とを備えた加熱装置であって、前記加熱体は、抵抗発熱体を含む第1の発熱部および第2の発熱部と、複数の導電体と、前記導電体を介して前記第1の発熱部と接続される第1の電極部と、前記導電体を介して前記第1の発熱部および前記第2の発熱部に接続される第2の電極部と、前記導電体を介して前記第2の発熱部と接続される第3の電極部と、を備え、前記抵抗発熱体は複数並んで配列され、複数の抵抗発熱体の配列方向において、前記加熱体に含まれる全ての抵抗発熱体のうち、最も一方側に配置された抵抗発熱体から、最も他方側に配置された抵抗発熱体までの領域を発熱領域とすると、前記第1の発熱部は、前記発熱領域の中央位置よりも一方側と他方側とにそれぞれ設けられた抵抗発熱体であって、前記加熱体に含まれる全ての抵抗発熱体のうち、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の抵抗発熱体を含み、前記第1の発熱部に含まれる抵抗発熱体は偶数個であり、前記温度検知手段は、前記発熱領域の中央位置に最も近い2個の前記抵抗発熱体にそれぞれ対応した位置に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱不良を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図9】ヒータにコネクタが接続された状態を示す斜視図である。
【
図11】本実施形態と異なる構成のヒータを示す図である。
【
図12】
図10のヒータにおいて、通常の通電経路を示す図である。
【
図13】
図10のヒータにおいて、意図しない分流が生じた場合の通電経路を示す図である。
【
図14】
図10のヒータにおいて、意図しない分流が生じた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図15】
図10のヒータにおいて、全発熱部に通電した場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図16】
図10のヒータにおいて、各サーミスタの長手方向の配置を示す図である。
【
図17】第3の発熱部を備えたヒータの構成、および、そのヒータへの電力供給を示す図である。
【
図18】
図17のヒータにおいて、意図しない分流が生じた場合の通電経路を示す図である。
【
図19】
図17のヒータにおいて、第1の発熱部に通電した場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図20】
図17のヒータにおいて、第1の発熱部および第3の発熱部に通電した場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図21】
図17のヒータにおいて、全ての発熱部に通電した場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図22】
図17のヒータにおいて、各サーミスタの長手方向の配置を示す図である。
【
図23】温度検知手段を定着ベルトの外周側に設けた場合の、定着装置の側面図である。
【
図24】
図10と異なる形態のヒータ、および、そのヒータへの電力供給を示す図である。
【
図25】
図24のヒータにおいて、意図しない分流が生じた場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図26】
図24のヒータにおいて、全発熱部に通電した場合のブロックごとの給電線の発熱量を示す図である。
【
図27】
図24のヒータにおいて、各サーミスタの長手方向の配置を示す図である。
【
図28】ヒータの短手方向寸法と抵抗発熱体の短手方向寸法を示す平面図である。
【
図31】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下、各実施形態の説明において、加熱装置を備えた装置として、トナーを熱により定着させる定着装置を説明する。
【0011】
図1に示すモノクロの画像形成装置1には、感光体ドラム10が設けられている。感光体ドラム10は、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体であり、図の矢印方向に回転する。感光体ドラム10の周囲には、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラ7等を備えた現像装置12と、感光体ドラム10の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード13等で構成されている。
【0012】
感光体ドラム10の上方には、露光部が配置されている。露光部が画像データに基づいて発したレーザ光Lbが、ミラー14を介して感光体ドラム10の表面に照射される。
【0013】
また、感光体ドラム10に対向する位置に配置され、転写チャージャを備えた転写手段15が配置されている。転写手段15は、感光体ドラム10表面上の画像を用紙Pに転写する。
【0014】
画像形成装置1の下部には給紙部4が位置しており、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙カセット16や、給紙カセット16から用紙Pを搬送路5へ搬出する給紙ローラ17等からなっている。給紙ローラ17の搬送方向下流側にはレジストローラ18が配置されている。
【0015】
定着装置9は、後述する加熱体によって加熱される定着ベルト20、その定着ベルト20を加圧可能な加圧ローラ21等を有している。
【0016】
以下、
図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
【0017】
印刷動作(画像形成動作)が開始されると、まず感光体ドラム10が帯電ローラ11によってその表面を帯電される。そして、画像データに基づいて露光部からレーザービームLbが照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラム10には、現像装置12から表面部分にトナーが供給され、トナー画像(現像剤像)として可視像化される。そして、転写後の感光体ドラム10に残されたトナー等は、クリーニングブレード13によって取り除かれる。
【0018】
一方、印刷動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部4の給紙ローラ17が回転駆動することによって、給紙カセット16に収容された用紙Pが搬送路5に送り出される。
【0019】
搬送路5に送り出された用紙Pは、レジストローラ18によってタイミングを計られ、感光体ドラム10表面上のトナー画像と向かい合うタイミングで転写手段15と感光体ドラム10との対向部である転写部へ搬送され、転写手段15による転写バイアス印加によりトナー画像が転写される。
【0020】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、加熱されている定着ベルト20と加圧ローラ21とによって加熱および加圧されて、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト20から分離され、定着装置9の下流側に設けられた搬送ローラ対によって搬送され、装置外側に設けられた排紙トレイへと排出される。
【0021】
続いて、定着装置9のより詳細な構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、回転部材あるいはベルト部材としての定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触してニップ部Nを形成する、対向部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱装置19と、を備えている。また、加熱装置19は、加熱体としての面状のヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24と、温度検知手段としてのサーミスタ35等を有する。定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、および、ステー24は、
図2の紙面に直交する方向(
図3の両矢印B方向参照)に延在しており、以下、この方向を各部材の長手方向(ただし、加圧ローラ21の軸方向でもある)、あるいは、加熱装置19や定着装置9の長手方向と呼ぶ。また、この長手方向は、定着装置9に通紙される用紙の幅方向でもあり、後述するヒータ22に設けられた抵抗発熱体59の配列方向でもある。ただし、ヒータ22の長手方向とその他の部材や装置との長手方向や上記配列方向が必ずしも一致しなくともよい。
【0023】
定着ベルト20は、無端状のベルト部材で構成され、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0024】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
【0025】
定着ベルト20は、加圧機構によって加圧ローラ21の側へ加圧され、加圧ローラ21に圧接されている。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ21は、画像形成装置本体に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。一方、定着ベルト20は、加圧ローラ21の回転に伴って従動回転するように構成されている。定着ベルト20が回転すると、定着ベルト20はヒータ22に対して摺動するため、定着ベルト20の摺動性を高めるために、ヒータ22と定着ベルト20との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の回転軸方向あるいは長手方向に渡って長手状に設けられ、加圧ローラ21に対応する位置で定着ベルト20の内周面に接触している。ヒータ22は、被加熱部材としての定着ベルト20を加熱し、定着ベルト20を所定の定着温度まで加熱するための部材である。
【0027】
本実施形態とは異なり、発熱部60を基材50の定着ベルト20側とは反対側(ヒータホルダ23側)に設けてもよい。その場合、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、本実施形態に係るヒータ22の構成において、さらに基材50の定着ベルト20とは反対側(ヒータホルダ23側)の面に、絶縁層を設けてもよい。
【0028】
ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、定着ベルト20への熱伝達効率を高めるには、本実施形態のように、ヒータ22を定着ベルト20に対して直に接触させる方が好ましい。また、ヒータ22を定着ベルト20の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト20の外周面がヒータ22との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ22が接触する面は定着ベルト20の内周面とすることが望ましい。
【0029】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側壁部に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23のヒータ22側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ22およびヒータホルダ23は加圧ローラ21の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に、ニップ部としての定着ニップNが形成される。
【0030】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
【0031】
サーミスタ35は、基材50の裏面で発熱部60に対向する位置に設けられる。サーミスタ35が検知した温度に基づいて、加熱制御手段によってヒータ22に供給する電力を制御することで定着ベルト20の温度を所望の温度に制御する。加熱制御手段は、CPU,ROM,RAM,I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータを意味する。但し、通紙時などでは上記検知温度とは別に、通紙による抜熱分を考慮して、追加電力を適切に投入することで定着ベルト20の温度を所望の温度に制御する。
【0032】
印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることで、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN)に搬送される(
図2の矢印A方向参照)ことで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。
【0033】
図3は、定着装置の斜視図、
図4は、その分解斜視図である。
【0034】
図3および
図4に示すように、定着装置9の装置フレーム40は、一対の側壁部28と前壁部27とから成る第1装置フレーム25と、後壁部29から成る第2装置フレーム26と、を備えている。一対の側壁部28は、長手方向の一端部側と他端部側とに配置されており、両側壁部28によって、定着ベルト20、加圧ローラ21および加熱装置19の両端部側が支持される。各側壁部28には、複数の係合突起28aが設けられ、各係合突起28aが後壁部29に設けられた係合孔29aに係合することで、第1装置フレーム25と第2装置フレーム26とが組み付けられる。
【0035】
また、各側壁部28は、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、後壁部29側で開口し、これとは反対側では開口しない突き当て部となっている。この突き当て部側の端部には、加圧ローラ21の回転軸を支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21は、その回転軸の両端部がそれぞれ軸受30に装着されることで、両側壁部28によって回転可能に支持される。
【0036】
また、加圧ローラ21の回転軸の一端部側には、駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が設けられている。駆動伝達ギヤ31は、加圧ローラ21が両側壁部28に支持された状態で、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載された際、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤと連結し、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。なお、加圧ローラ21に駆動力を伝達する駆動伝達部材としては、駆動伝達ギヤ31のほか、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などであってもよい。
【0037】
加熱装置19の長手方向の両端部には、定着ベルト20やヒータホルダ23、ステー24などを支持する一対のフランジ32が設けられている。各フランジ32には、ガイド溝32aが設けられている。このガイド溝32aを側壁部28の挿通溝28bの縁に沿って進入させることで、フランジ32が側壁部28に対して組み付けられる。
【0038】
また、各フランジ32には、付勢部材としての一対のバネ33が当接している。各バネ33によってステー24やフランジ32が加圧ローラ21側に付勢されることで、定着ベルト20が加圧ローラ21に押し当てられ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップが形成される。
【0039】
また、
図4に示すように、第2装置フレーム26を構成する後壁部29の長手方向の一端部側には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の長手方向の位置決めがなされる。なお、後壁部29の孔部29bが設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。これにより、温度変化に伴う定着装置本体の長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
【0040】
図5は、加熱装置19の斜視図、
図6は、その分解斜視図である。
【0041】
図5および
図6に示すように、ヒータホルダ23の定着ベルト側の面(
図5および
図6における手前側の面)には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状およびサイズに形成されているが、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このように、収容凹部23aがヒータ22よりも若干長く形成されていることで、熱膨張によりヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとが干渉しないように構成されている。また、ヒータ22は、この収容凹部23a内に収容された状態で、給電部材としての後述のコネクタによってヒータホルダ23と一緒に挟まれて保持される。
【0042】
一対のフランジ32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23およびステー24の両端部側が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その両端部側にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時においては基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力は生じない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0043】
図5および
図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向一端部側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、
図5および
図6の左側に示されるフランジ32の嵌合部32eが嵌合することで、ヒータホルダ23とフランジ32との長手方向の位置決めがなされる。一方、
図5および
図6の右側に示されるフランジ32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、フランジ32に対するヒータホルダ23の位置決めを長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴ってヒータホルダ23が長手方向へ伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
【0044】
また、
図6に示すように、ステー24の長手方向の両端部側には、各フランジ32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aはフランジ32に突き当たることでフランジ32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、フランジ32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aがフランジ32に対して隙間を介して配置されることで、温度変化に伴ってステー24が長手方向に伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
【0045】
図7は、ヒータ22の平面図、
図8は、その分解斜視図である。
【0046】
図8に示すように、ヒータ22は、基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた発熱部60などを有する導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、を有している。本実施形態では、定着ベルト20側(定着ニップN側)に向かって、基材50、第1絶縁層51、導体層52(発熱部60)、第2絶縁層53の順で積層されており、発熱部60から発された熱は、第2絶縁層53を介して定着ベルト20へと伝達される(
図2参照)。
【0047】
基材50は、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成された長手状の板材である。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度むらが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0048】
各絶縁層51,53は、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成されている。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミド(PI)等を用いてもよい。
【0049】
導体層52は、複数の抵抗発熱体59を有する発熱部60と、複数の電極部61と、これらを電気的に接続する複数の、導電体としての給電線62と、で構成されている。各抵抗発熱体59は、基材50上に設けられた複数の給電線62を介して3つの電極部61のいずれか2つに対して電気的に並列接続されている。
【0050】
抵抗発熱体59は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成される。抵抗発熱体59の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。
【0051】
給電線62は、抵抗発熱体59よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。給電線62や電極部61の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって給電線62や電極部61が形成されている。
【0052】
図9は、ヒータ22にコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
【0053】
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成され、給電用のハーネス73が接続されている。
【0054】
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子72の先端に設けられた接触部72aが、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することで、コネクタ70を介して発熱部60と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部61は、コネクタ70との接続を確保するため、少なくとも一部が第2絶縁層53に被覆されておらず、露出した状態になっている(
図7参照)。
【0055】
図10に示すように、本実施形態では、基材50の長手方向に並ぶ複数の抵抗発熱体59のうち、両端以外の各抵抗発熱体59で構成される第1の発熱部60Aと、両端の各抵抗発熱体59で構成される第2の発熱部60Bとは、それぞれ独立して発熱制御可能に構成されている。具体的に、第1の発熱部60Aを構成する両端以外の各抵抗発熱体59は、それぞれ基材50の長手方向の一端部側に設けられた第1の電極部61Aに対して第1の給電線62Aを介して接続されている。また、第1の発熱部60Aを構成する各抵抗発熱体59は、第1の電極部61A側とは反対の端部側に設けられた第2の電極部61Bに対して第2の給電線62Bを介して接続されている。一方、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59は、基材50の長手方向の一端部側に設けられた(第1の電極部61Aとは別の)第3の電極部61Cに対して第3の給電線62C又は第4の給電線62Dを介して接続されている。また、これら両端の各抵抗発熱体59は、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59と同様に第2の給電線62Bを介して第2の電極部61Bに接続されている。なお、本実施形態では、複数の抵抗発熱体59が配列された方向である
図10の左右方向が、ヒータ22(基材50)の長手方向と一致している。以下の説明では、この
図10の左右方向(長手方向)を複数の抵抗発熱体59の配列方向、あるいは、単に配列方向と称して説明する。
【0056】
第1の発熱部60Aは偶数個(4個)の抵抗発熱体59からなり、その両側に、第2の発熱部60Bを構成するそれぞれ1つ(合計2個で偶数個)の抵抗発熱体59が設けられる。つまり、ヒータ22には計6個の抵抗発熱体59が設けられている。なお本実施形態では、複数並設された抵抗発熱体59に対して、物理的に分離されていて繋がっておらず、独自の通電経路を有したものを1個の抵抗発熱体59として数えている。また本実施形態で、共通の組み合わせの電極部への電圧の印加によって通電される全ての抵抗発熱体をまとめて、1つの発熱部としている。つまり、第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとに電圧を印加することで通電される全ての抵抗発熱体59をまとめて、第1の発熱部60Aとし、第3の電極部61Cと第2の電極部61Bとに電圧を印加することで通電される全ての抵抗発熱体59をまとめて、第2の発熱部60Bとしている。
【0057】
また、それぞれの電極部61A~61Cは、前述のコネクタ70を介して電源64に接続され、電源64から電力を供給される。電極部61Aは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Aが設けられており、スイッチ65AのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。同様に、電極部61Cは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Cが設けられており、スイッチ65CのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。さらに、これらのスイッチ65A,65CのONOFFやヒータ22への電力供給のタイミングは、制御部としての制御回路66によって制御されている。また制御回路66は、画像形成装置内の各種センサーの検知結果に基づいて、これらの制御を行う。例えば、定着ニップNの入口や出口に設けられたセンサーの検知結果に基づいて用紙の通紙タイミングを判断し、ヒータ22への電力の供給の有無やスイッチ65A,65Cの切り替えを行うことができる。
【0058】
第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに電圧を印加した場合は、両端以外の各抵抗発熱体59が通電することで、第1の発熱部60Aのみが発熱する。一方、第2の電極部61Bおよび第3の電極部61Cに電圧を印加した場合は、両端の各抵抗発熱体59が通電することで、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加すれば、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bの両方の(全ての)抵抗発熱体59を発熱させることができる。
【0059】
全ての発熱部60A,60Bに通電した場合の、抵抗発熱体59の配列方向の発熱領域C1は大サイズの用紙幅に対応した長さで設けられる。また、第1の発熱部60Aに通電した場合の抵抗発熱体59の配列方向の第2の発熱領域C2は中サイズの用紙幅に対応した長さで設けられる。そして、第1の発熱部60Aの中央側の2個の抵抗発熱体59aの配列方向の第3の発熱領域C3が、小サイズの用紙幅に対応した長さで設けられる(詳しくは後述する)。このように、本実施形態の定着装置9は、領域C1、領域C2、そして、領域C3に対応する幅の用紙、つまり、少なくとも3種類の幅の用紙に対応している。なお、各抵抗発熱体59による発熱量を均一化し、各サイズの用紙を均等に加熱できるように、各抵抗発熱体59の面積や配列方向の幅は同じに設けている。ただし、これに限らず、例えば第1の発熱部60Aを構成する抵抗発熱体59と第2の発熱部60Bを構成する抵抗発熱体59との配列方向の幅を変更することもできる。上記の発熱領域C1は、ヒータ22に設けられた全ての抵抗発熱体59による配列方向の発熱領域であり、この領域C1を、全ての抵抗発熱体59による発熱領域C1、あるいは、単に発熱領域C1と呼ぶ。発熱領域C1は、より厳密には、ヒータ22に含まれる全ての抵抗発熱体59のうち、配列方向の最も一方側に配置された抵抗発熱体59(の配列方向一端の位置)から、配列方向の最も他方側に配置された抵抗発熱体59(の配列方向他端の位置)までの領域を指す。
【0060】
次に、各抵抗発熱体59の配列方向の幅を同じにした場合に、本実施形態のように第1の発熱部60Aに設けられた抵抗発熱体59が偶数個であることの利点について説明する。
図10に示す抵抗発熱体59aは、発熱領域C1の配列方向の(複数の抵抗発熱体59の配列方向の)中央位置C0(以下、単に発熱領域C1の中央位置C0あるいは中央位置C0とも呼ぶ)よりも配列方向一方側と他方側とにそれぞれ設けられ、中央位置C0に最も近い2個の抵抗発熱体59aである。また、第2の発熱領域C2は、ヒータ22に配置される中央側の4個の抵抗発熱体59のうち、最も一方側の抵抗発熱体59b(の配列方向一端の位置)から、配列方向の最も他方側に配置された抵抗発熱体59b(の配列方向他端の位置)までの領域を指す。第3の発熱領域C3は、中央位置C0に最も近い2個の抵抗発熱体59aの配列方向一方側の抵抗発熱体59a(の配列方向一端の位置)から、配列方向の他方側に配置された抵抗発熱体59a(の配列方向他端の位置)までの領域を指す。
【0061】
表1に、各用紙サイズの短辺と長辺の長さを示す。表1の左端の列に示すA3、A4などが各用紙のサイズであり、中央の列に短辺の長さ、右端の列に長辺の長さを示している。
【0062】
【0063】
表1に示すように、A3サイズの短辺とA4サイズの長辺とが297mmで共通しており、A5サイズの短辺と、A6サイズの長辺と、はがきサイズの長辺とが297mmの略半分の148mmで共通している。また、A4サイズの短辺とA5サイズの長辺とが210mmで共通しており、A6サイズの短辺が210mmの半分の105mmである。はがきサイズの短辺も105mmに近い100mmである。例えば、領域C2の幅をA3サイズの短辺に等しい297mmに設定すると、つまり、第1の発熱部60Aを構成する4つの抵抗発熱体59の発熱領域の幅を297mmに設定すると、領域C3の幅、つまり、第1の発熱部60Aを構成する中央側の2つの抵抗発熱体59aの発熱領域の幅が約148mmになり、前述のようにA5サイズの短辺等に等しい幅になる。また、領域C2の幅を210mmに設定すると領域C3の幅が105mmになり、A6サイズの短辺の幅に等しく、ハガキサイズの短辺にほぼ等しい幅になる。なお、対応する用紙に対して適切に加熱を行うために、用紙幅に対して±10mmの幅で発熱領域を設定することが好ましい。例えば、第1の発熱部60Aによる発熱領域である領域C2を、A4サイズの短辺に揃える場合、領域C2の幅は297±10(mm)の範囲で設けることが好ましい。
【0064】
このように、第1の発熱部60Aを構成する抵抗発熱体59を偶数個に設定することで、領域C3を領域C2の半分の幅に設定することができる。従って、領域C2だけでなく、領域C3を特定のサイズの用紙幅に合わせた幅に設定することが可能になる。
【0065】
ところで、定着装置が小サイズの用紙に定着動作を行った場合に、ヒータ22や定着ベルト20の配列方向端部側である非通紙領域の温度が中央側よりも高くなる、いわゆる端部温度上昇が生じる。例えば、
図10に示すように、領域C3の幅の用紙(小サイズの用紙)に定着動作を実施した場合に、第1の発熱部60Aに通電して領域C2をヒータ22の加熱領域とすると、領域C2の内側で領域C3の外側の範囲が非通紙領域になる。非通紙領域では定着ベルト20の熱が用紙によって奪われず、配列方向のこの位置で定着ベルト20やヒータ22の温度が上昇する。そして本実施形態では、配列方向端部側の上記非通紙領域における過昇温を防止するために、定着装置9に通紙される用紙の間隔を空けると共に、紙間でヒータ22の出力を落として定着装置の生産性を落とすような制御がなされている。
【0066】
そして本実施形態では、領域C3の両隣の抵抗発熱体59bを、PTC特性を有するものとすることで、上記の端部温度上昇を抑制し、定着装置9の生産性を向上させることができる。つまり、領域C3に対応した幅の用紙Pが通紙された場合には、上記のように抵抗発熱体59bの範囲は非通紙領域となりその温度が上昇する。しかし、抵抗発熱体59bは、PTC特性によって温度が上昇するほど低出力になる。これにより、ヒータ22の非通紙領域での過昇温を抑制できる。
【0067】
上記のPTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する抵抗発熱体59とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300~4000ppm/度程度にすれば、ヒータ22に必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500~2000ppm/度とするのがよい。
【0068】
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(1)を用いて算出することができる。式(1)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、上述のヒータ22において、第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(1)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
【0069】
【0070】
ここで、本実施形態と異なる構成として、
図11に示すように、第1の発熱部60Aを5つの抵抗発熱体59により構成した場合を考える。この場合、第1の発熱部60Aを構成する5個の抵抗発熱体59の配列方向の領域C2’を特定の用紙のサイズ、例えばA3サイズの短辺に合わせて297mmに設定すると、その半分の幅の用紙P1(例えばA5サイズの用紙で、その短辺を
図11の左右方向の幅にした場合)の幅は、中央1個の抵抗発熱体59cよりも大きく、その両側を含めた3個の抵抗発熱体59c、59dの領域C3’よりも小さくなる。このように、抵抗発熱体59が奇数個の場合、第1の発熱部60Aを構成する一部の抵抗発熱体59(図では中央の1個の抵抗発熱体59cあるいは中央の3個の抵抗発熱体59c、59d)によって形成される発熱領域を、特定の用紙幅に合わせることができなくなる。従って、抵抗発熱体59dが、用紙P1の通紙領域と非通紙領域Dに跨って配置されている。なお、
図11に示す非通紙領域Dは、用紙P1を通紙した場合の非通紙領域のうち、抵抗発熱体59により加熱される領域のことである。
【0071】
図11の構成では、非通紙領域Dに対応する抵抗発熱体59d、59eにPTC特性を有したものを採用としたとしても、本実施形態の
図10の構成のように非通紙領域Dにおいて過昇温を抑制することが難しい。つまり
図11の構成では、抵抗発熱体59dが用紙P1の通紙領域と非通紙領域Dに跨って配置されている。このため、用紙P1に定着動作を行う際に第1の発熱部60Aに通電すると、(1)抵抗発熱体59dの非通紙領域Dに対応する範囲F1が高温になり、PTC特性によってその抵抗値が上昇する。そして、1つの抵抗発熱体59dに流れる電流値は同じため、つまり、抵抗発熱体59dの非通紙領域に対応する範囲F1と通紙領域に対応する範囲F2に流れる電流値は同じため、範囲F1の抵抗値の上昇により、(2)抵抗発熱体59dに流れる電流値は減少する。しかし、通紙領域に対応する範囲F2では、定着ベルトを定着温度まで加熱する必要があるため、(3)第1の発熱部60Aの出力を上げたり、加熱時間を長くすることになる。以上の(1)~(3)により、非通紙領域Dでの過昇温をかえって助長するおそれがある。
【0072】
これに対して本実施形態では、前述の
図10に示すように、領域C3を小サイズの用紙幅に対応させ、その外側の抵抗発熱体59bを、PTC特性を有するものとすることで、非通紙領域における過昇温を抑制できる。非通紙領域で過昇温が生じた場合、前述のように定着装置に通紙する用紙同士の間隔を大きくし、紙間でヒータ22への通電を止めることで過昇温を抑制されるため、その分だけ定着装置9の生産性が低下する。従って、本実施形態の構成により、定着装置9の生産性を落とすことなく非通紙領域における過昇温を抑制できる。
【0073】
また第1の発熱部60Aを構成する抵抗発熱体59を4個にすることで、5個の場合と比較して断線検知がしやすくなる。つまり、ヒータ22に設けられた抵抗発熱体59の個数を減らすほど、個々の抵抗発熱体59に流れる電流値は大きくなる。従って、特定の抵抗発熱体59に対して通電不良が生じた場合に、電流変動値が大きくなって断線検知がしやすくなる。なお、第1の発熱部60Aを構成する抵抗発熱体59を3個にすると、より断線検知はしやすくなるものの、前述のように抵抗発熱体59の分割位置を小サイズの用紙幅に合わせることができなくなってしまう。本実施形態のように、第1の発熱部60Aを構成する抵抗発熱体59を4個にすることで、抵抗発熱体59の断線検知を容易にすると共に、小サイズ用紙に対する生産性を落とすことなく過昇温を抑制することができる。
【0074】
ところで、画像形成装置や定着装置のさらなる小型化を図るにあたっては、定着ベルトの内側に配置される部材の一つであるヒータの小型化が重要である。すなわち、ヒータをその短手方向(
図10中の矢印Y方向:ヒータ22の発熱部60A,60Bが設けられている面に沿って配列方向と交差する方向、あるいは、配列方向に直交する方向で、
図10の紙面に直交する方向であるヒータ22の厚み方向とは異なる方向)に小さくすることで、定着ベルトを小径化することができ、ひいては定着装置および画像形成装置の小型化を実現できるようになる。具体的に、ヒータを短手方向に小さくする方法として次の方法が挙げられる。
【0075】
その方法とは給電線を短手方向に小さくする方法である。ただし、給電線を短手方向に小さくすると、給電線の抵抗値が大きくなるため、ヒータの導電経路上で意図しない分流が発生する虞がある。特に、画像形成装置の高速化に対応すべく発熱部の発熱量を増大させるために、発熱部の抵抗値を小さくすると、給電線の抵抗値と発熱部の抵抗値が相対的に近づくため、意図しない分流が発生しやすくなる。従って、ヒータの短手方向の小型化を実現するには、抵抗値が上昇するのを見越したうえで給電線を短手方向に小さくし、これに伴って発生し得る意図しない分流に対しては別途対策を講じる必要がある。
【0076】
以下、上述のヒータ22と同じレイアウトのヒータを例に、意図しない分流と、これによる弊害について説明する。なお
図12以降では、便宜上、各抵抗発熱体59をブロック状として記載している。本実施形態の抵抗発熱体59としては、
図10の線部によって構成される抵抗発熱体59および
図12のブロック状の抵抗発熱体59のいずれの形状を採用することもできる。特に
図10のように各抵抗発熱体59を平行四辺形状とすることで、抵抗発熱体59同士の間での発熱量の落ち込みを低減でき、ヒータ22の発熱量を配列方向により均一化できる。
【0077】
図12に示すヒータ22において、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59のみを発熱させるために第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとに電圧を印加する(以下、この場合を部分通電の場合とも呼ぶ)と、通常、電流は、第1の給電線62Aに流れ、両端以外の各抵抗発熱体59を通過して、第2の給電線62Bに流れる。
【0078】
しかしながら、上述の小型化に伴う給電線の抵抗値の増大や、発熱量向上に伴う発熱部の抵抗値の低下によって、給電線と発熱部のそれぞれの抵抗値の差が小さくなると、
図13に示すように、意図しない経路の分流が発生する。すなわち、
図13における左から2番目の抵抗発熱体59を通過した電流の一部が、その先の第2の給電線62Bの分岐部Xにて第2の電極部61B側とは反対側に流れる。そして、分流した電流は、
図13における左端の抵抗発熱体59を通過し、さらに、第3の給電線62C、第3の電極部61C、第4の給電線62D、右端の抵抗発熱体59を順に通過した後、第2の給電線62Bに合流する。
【0079】
このように、
図13に示すヒータ22において、第2の給電線62Bのうち分岐部Xから図の左側に伸びる部分と、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59と、第3の電極部61Cと、第3の給電線62Cおよび第4の給電線62Dを含む部分は、意図しない経路で電流を流す分岐導電経路E3を構成する。
【0080】
また、このような意図しない分流は、ヒータ22の導電経路が、第1の発熱部60Aと第3の電極部61Cとを接続する第1の導電部E1と、第1の発熱部60Aからヒータ22の配列方向のうち第1の方向S1(
図13の右側)に伸びて第2の電極部61Bに接続される第2の導電部E2と、第2の導電部E2から第1の方向S1とは反対の第2の方向S2(
図13の左側)に分岐して第1の導電部E1を介さずに第2の導電部E2または第2の電極部61Bに接続される分岐導電経路E3と、を少なくとも有する構成であれば、第1の発熱部60Aに通電した際に生じ得る。言い換えると、「1つ目の電極部(第1の電極部61A)が配列方向中央の抵抗発熱体59に接続される」、「2つ目の電極部(第3の電極部61C)が配列方向端部側の抵抗発熱体59に接続される」、「各抵抗発熱体59から伸びる給電線が合流して3つ目の電極部(第2の電極部61B)に接続される」という3つの条件により、第1の発熱部60Aに通電した際に上記の分流が生じ得る。本実施形態では、分岐導電経路E3上に、第2の発熱部60Bと第1の電極部61Aとが設けられているが、第2の発熱部60Bおよび第1の電極部61Aが設けられていない導電経路や、これら以外の導電部材が設けられた導電経路であっても、意図しない分流は生じる可能性がある。
【0081】
そして、意図しない分流が生じた場合、これまで想定されていなかった経路で電流が流れるため、給電線の発熱によりヒータ22の温度分布にばらつきが発生する。例えば、
図14に示すヒータ22において、第1の電極部61Aから第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59へ電流が25%ずつ均等に流れ、このうち図の左から2番目の抵抗発熱体59を通過する電流が、その先の分岐部Xにおいて5%分流した場合、抵抗発熱体59ごとに区画された各ブロック内で発生する給電線の発熱量は、同図中の表に示すようになる。
【0082】
ここでは、各給電線のヒータ22の短手方向に伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることからその発熱量は無視し、各給電線のヒータ22の配列方向に伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。具体的には、第1の給電線62Aと、第2の給電線62Bと、第4の給電線62Dの、それぞれのヒータ22の配列方向に伸びる部分で発生する発熱量を算出している。また、発熱量(W)は下記式(2)で表されることから、
図14の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、
図14の表に示す発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
【0083】
【0084】
図14に基づき、発熱量の算出方法について具体的に説明すると、第1ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が100%、第4の給電線62Dに流れる電流が5%であるので、それぞれの二乗の合計値である10025(10000+25)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が75%、第2の給電線62Bに流れる電流が5%、第4の給電線62Dに流れる電流が5%であるので、これらの二乗の合計値である5675(5625+25+25)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0085】
そして、
図14の下側の表およびグラフに示すように、各ブロックの合計発熱量は、上記の意図しない分流の影響により左右非対称となり、配列方向一方側の発熱量が他方側よりも大きくなる。ただし、第1ブロックおよび第6ブロックは、用紙が通過せず、加熱の必要がない領域である。
【0086】
また全ての発熱部に通電した場合にも、導電部に流れる電流の大きさの差から、ヒータ22の配列方向の発熱量が左右非対称になる。つまり、上記のようにヒータ22を小型化しようとした場合、電極部や導電部の配置も制約を受けるため、ヒータ22の配列方向の発熱量が左右対称にすることも難しくなる。また前述のように装置の高速化を実現しようとした場合にも、導電部に流れる電流値の値が大きくなって左右の差も大きくなることから、その差を無視できなくなる。以下、全ての発熱部に通電した場合について説明する。
【0087】
図15に示すように、全ての発熱部に通電した場合(以下、全通電の場合とも呼ぶ)、左右両端の抵抗発熱体59、および、これに接続された給電線62C,62Dにも25%の電流が流れる点が前述の場合と異なる。対して、給電線62Aに流れる電流の値は先ほどと同様である。この場合、第1ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が100%、第4の給電線62Dに流れる電流が25%であるので、それぞれの二乗の合計値である10625(10000+625)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が75%、第2の給電線62Bに流れる電流が25%、第4の給電線62Dに流れる電流が25%であるので、これらの二乗の合計値である6875(5625+625+625)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
【0088】
そして、
図15の下側の表およびグラフに示すように、各ブロックの合計発熱量は、左右非対称となる。特に、全ての抵抗発熱体59に接続された第2の給電線62Bが、その下流側、つまり第6ブロックで電流値が125%と大きくなり、配列方向他方側の発熱量が一方側よりも大きくなっている。
【0089】
上記の部分通電した場合、あるいは、全通電した場合において、第2の給電線62Bは、配列方向一方側から他方側へその電流量が増加している。また、第2の電極部61Bから第1の電極部61Aあるいは第3の電極部61Cの側へ電流を流した時に、配列方向他方側の抵抗発熱体59が電流方向の上流側、一方側の抵抗発熱体59が下流側に配置されることになる。
【0090】
以上のように、本実施形態のヒータ22において、配列方向一方側(
図10の左側)は、第1の発熱部60Aに通電し意図しない分流が生じた場合(
図14の場合)にヒータ22の発熱量が大きい側である。また、配列方向他方側(
図10の右側)は、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合(
図15の場合)に発熱量が大きい側である。
【0091】
このような左右非対称になる給電線の発熱量のばらつきは、ヒータ22の配列方向に渡る温度のばらつきの原因となる。ヒータ22の温度が配列方向に渡ってばらつくと、定着装置9に設けられた温度検知手段は、配列方向のいずれの位置を検知するかによってその検知結果が異なってしまう。従って、上記のような温度偏差を考慮した配置が必要になる。以下の説明では、定着装置に設けられる温度検知手段の一例として、前述したサーミスタ35の配置について説明する。
【0092】
図16に示すように、本実施形態の定着装置は、第1のサーミスタ35Aと、第2のサーミスタ35Bと、第3のサーミスタ35Cと、第4のサーミスタ35Dとを有する。以下、各サーミスタ35の配列方向の配置を説明する。
【0093】
第1のサーミスタ35Aおよび第2のサーミスタ35Bは、配列方向において、ヒータ22の全ての抵抗発熱体59のうち、中央位置C0に最も近い2個の抵抗発熱体59aにそれぞれ対応した位置に配置される。より詳しくは、第1のサーミスタ35Aは中央位置C0よりも配列方向他方側の抵抗発熱体59aに対応した位置に配置され、第2のサーミスタ35Bは中央位置C0よりも配列方向一方側の抵抗発熱体59aに対応した位置に配置される。なお、上記の、サーミスタ35が抵抗発熱体59に対応した位置に配置される、とは、配列方向において、サーミスタ35の温度検知部分と抵抗発熱体59の少なくとも一部の配置が重なることを言う。
【0094】
第3のサーミスタ35Cは、第2の発熱部60Bのうち、配列方向他方側の抵抗発熱体59に対応した位置に配置される。つまり、第2の発熱部60Bのうち、全通電時に発熱量が大きくなる側の抵抗発熱体59に対応した位置に配置される。
【0095】
第4のサーミスタ35Dは、第1の発熱部60Aのうち、最も配列方向一方側(部分通電時に発熱量が大きくなる側)に配置された抵抗発熱体59に対応した位置に配置される。
【0096】
次に、各サーミスタ35の役割について説明する。
【0097】
第1のサーミスタ35Aは、第1の発熱部60Aに通電した場合(
図14の場合)に、ヒータ22の加熱量が最も小さくなる第4ブロックに対応した位置に配置される。すなわち、第1のサーミスタ35Aにより、小サイズあるいは中サイズの用紙を通紙時に、通紙範囲で最もヒータ22の発熱量が最も小さい部分の温度を検知することができる。従って、小サイズあるいは中サイズの用紙を通紙時に、第1のサーミスタ35Aによる温度検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。
【0098】
第2のサーミスタ35Bは、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合(
図15の場合)に、ヒータ22の加熱量が最も小さくなる第3ブロックに対応した位置に配置される。すなわち、第2のサーミスタ35Bにより、大サイズの用紙を通紙時に、通紙範囲で最もヒータ22の発熱量が最も小さくなる部分の温度を検知することができる。従って、大サイズの用紙を通紙時に、第2のサーミスタ35Bによる温度検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。
【0099】
第3のサーミスタ35Cは、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合(
図15の場合)に、ヒータ22の加熱量が最も大きくなる第6ブロックに対応した位置に配置される。従って、大サイズ通紙時に、第3のサーミスタ35Cによる検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、より早いタイミングでヒータ22の昇温を検知してヒータ22の出力を下げることができ、細かな温度制御を行うことができる。また、ヒータ22の異常昇温を検知してヒータ22への電力供給を遮断することが可能になり、定着装置の安全性を向上させることができる。
【0100】
第4のサーミスタ35Dは、第1の発熱部60Aに通電した場合(
図14の場合)に、ヒータ22の加熱量が最も大きくなる第2ブロックに対応した位置に配置される。なお、
図14の場合には給電線の発熱量は第1ブロック、その次に第6ブロックが大きくなるが、これらのブロックは抵抗発熱体59に通電されない非加熱領域のため、加熱領域の範囲では第2ブロックが最大になる。従って、小サイズあるいは中サイズ通紙時に、第3のサーミスタ35Cによる検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、より早いタイミングでヒータ22の昇温を検知してヒータ22の出力を下げることができ、細かな温度制御を行うことができる。また、ヒータ22の異常昇温を検知してヒータ22への電力供給を遮断することが可能になり、定着装置の安全性を向上させることができる。
【0101】
また、第4のサーミスタ35Dにより、小サイズ用紙の通紙時に非通紙領域となり端部温度上昇を生じるおそれのある領域の温度を検知することができる。従って、第4のサーミスタ35Dの温度検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、非通紙領域におけるヒータ22や定着ベルト20の過昇温を抑制できる。またこの際、第4のサーミスタ35Dは、非通紙領域のうち、つまり、第2ブロックと第5ブロックのうち、ヒータ22の発熱量の大きい側である第2ブロックの温度を検知できるため、より早期に端部温度上昇を検知でき、的確な温度制御が可能になる。
【0102】
以上のように本実施形態では、ヒータ22の発熱量が配列方向にばらつく場合でも、温度検知手段を適切な位置に配置することで、それぞれの場合に適切な箇所で温度検知ができる。特に、第1のサーミスタ35Aおよび第2のサーミスタ35Bにより、全通電の場合と部分通電の場合のいずれの場合にも、ヒータ22の温度落ち込みを防止して加熱装置19の被加熱部材に対する加熱不良を防止できる。本実施形態では特に、定着ベルト20の加熱不良を防止でき、定着装置9の定着不良を防止できる。
【0103】
また、本実施形態では、第1の発熱部60Aが4個の抵抗発熱体により構成される場合を示したが、第1の発熱部60Aが2個により構成されてもよい。この場合、第1の発熱部60Aを構成する2個の抵抗発熱体が、中央位置C0に最も近い2個の抵抗発熱体であり、これらの抵抗発熱体にそれぞれ対応する位置に第1のサーミスタと第2のサーミスタとを配置できる。これにより、上記の実施形態と同様、全通電の場合と部分通電の場合のいずれの場合にも、ヒータ22の温度落ち込みを防止して加熱装置19の被加熱部材に対する加熱不良を防止できる。
【0104】
また、小サイズに対応した発熱範囲を有する発熱部として、独立して制御可能な第3の発熱部を設けてもよい。例えば
図17に示すように、本実施形態のヒータ22は、第1~第3の電極部61A~61Cに加えて、第4の電極部61Dが配列方向一方側に設けられる。
【0105】
以下、
図17に示すヒータの構成について、
図10のヒータと異なる点を中心に説明する。
図17に示すように、中央側の2個の抵抗発熱体59aが第1の発熱部60Aを構成し、抵抗発熱体59aの両隣の抵抗発熱体59bが第3の発熱部60Cを構成する。最も配列方向両端部に配置された2個の抵抗発熱体59が第2の発熱部60Bを構成する点は前述した実施形態と同様である。第1の発熱部60Aを構成する2個の抵抗発熱体59aは、第1の給電線62Aを介して第1の電極部61Aに接続され、第3の発熱部60Cを構成する2個(つまり、偶数個)の抵抗発熱体59bは、第5の給電線(導電体)62Eあるいは第6の給電線(導電体)62Fを介して第4の電極部61Dに接続される。全ての抵抗発熱体59が、第2の給電線62Bを介して第2の電極部61Bと接続される点は前述した実施形態と同様である。
【0106】
また、それぞれの電極部61A~61Dは、前述のコネクタ70を介して電源64に接続され、電源64から電力を供給される。第4の電極部61Dは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Dが設けられており、スイッチ65AのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。
【0107】
全ての発熱部60A~60Cに通電した場合の、抵抗発熱体59の配列方向の発熱領域C1は大サイズの用紙幅に対応した長さで設けられる。また、第1の発熱部60Aおよび第3の発熱部60Cに通電した場合の抵抗発熱体59の配列方向の第2の発熱領域C2は中サイズの用紙幅に対応した長さで設けられる。そして、第1の発熱部60Aにのみ通電した場合の抵抗発熱体59の配列方向の第3の発熱領域C3は小サイズの用紙幅に対応した長さで設けられる。このように、本実施形態では、3種類の用紙サイズに合わせた発熱領域(抵抗発熱体による発熱領域)を形成することができる。つまり、小サイズ通紙時に抵抗発熱体による発熱領域と用紙幅との間に過不足が生じないので、前述の端部温度上昇を確実に防止できる。
【0108】
本実施形態のヒータ22は、
図18に示すように、第1の発熱部60Aにのみ通電した場合に、意図しない分流の経路が2通り生じる。具体的には、
図18に示すように、第1の発熱部60Aのうちの左側の抵抗発熱体59を通過した電流の一部が、第2の給電線62Bの分岐部X1にて第2の電極部61B側とは反対側に流れる。そして、分流した電流は、前述した実施形態と同様、
図18における左端の抵抗発熱体59を通過し、さらに、第3の給電線62C、第3の電極部61C、第4の給電線62D、右端の抵抗発熱体59を順に通過した後、第2の給電線62Bに合流する。これが1つ目の分岐導電経路E31である。もう一つは、上記の分岐部X1にて第2の電極部61B側へ流れた後、左端の抵抗発熱体59に至る前に、分岐部X2にて左から2番目の抵抗発熱体59へ流れ、第5の給電線62E,第4の電極部61D,第6の給電線62F、右から2番目の抵抗発熱体59を通過した後、第2の給電線62Bに合流する。これが2つ目の分岐導電経路E32である。後述する小サイズ紙を通紙時の各ブロックの給電線の合計発熱量の説明では、その説明の簡略化のために、上記分導電経路のうち、分岐導電経路E31にのみ電流が流れた場合について説明する。なお
図18では、便宜上、分流が生じる経路の電流の流れのみを矢印で示している。
【0109】
次に、上記のそれぞれの領域C1~C3の抵抗発熱体59に通電した場合の各ブロックの給電線の合計発熱量について説明する。以下の説明でも、各抵抗発熱体59に流れる電流値を25%として計算している。
【0110】
まず、
図19に示すように、第1の発熱部60Aのみに通電した場合(小サイズ紙を通紙時)には、抵抗発熱体59に通電される第3ブロック、第4ブロックのうち、第3ブロックの合計発熱量が675となり、第4ブロックの合計発熱量425よりも大きい。この場合、配列方向の一方側(図の左側)が発熱量の大きい側、他方側(図の右側)が発熱量の小さい側である。なお、
図19では分岐導電経路E31にのみ意図しない分流が5%流れるものとしたが、分岐導電経路E31、E32(
図18参照)へ流れる電流値の配分により、これらのブロックの発熱量の大小関係に変化は生じない。
【0111】
次に、
図20に示すように、第1の発熱部60Aおよび第3の発熱部60Cに通電した場合(中サイズ紙を通紙時)には、抵抗発熱体59に通電されるブロックのうち、第3ブロックが1675で最少となり、第5ブロックが4925で最大となる。この場合、配列方向の一方側(図の左側)が発熱量の小さい側、他方側(図の右側)が発熱量の大きい側である。なお、
図20では意図しない分流が流れる分岐導電経路は経路E31(
図18参照)のみであり、この経路に5%の電流が流れるものとした。
【0112】
最後に、
図21に示すように、全ての発熱部に通電した場合(大サイズ紙を通紙時)には、抵抗発熱体59に通電されるブロックのうち、第1ブロック~第3ブロックが4375で最少となり、第6ブロックが15625で最大となる。この場合、配列方向の一方側(図の左側)が発熱量の小さい側、他方側(図の右側)が発熱量の大きい側である。以上のように、
図19~21の場合において、給電線の合計発熱量が左右非対称になり、本実施形態においてもヒータの発熱量に配列方向の偏差が生じる。
【0113】
図22に示すように、本実施形態においても、各抵抗発熱体59に対応した位置に第1~第4のサーミスタ35A~35Dが配置される。前述の実施形態と異なる点として、第4のサーミスタ35Dが、第3の発熱部60Cを構成する抵抗発熱体59のうち、中央位置C0よりも他方側の抵抗発熱体59に対応した位置に配置される。
【0114】
本実施形態では、小サイズ紙通紙時(
図19の場合)には、第1のサーミスタ35Aによる温度検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。また、第2のサーミスタ35Bによる検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、より早いタイミングでヒータ22の昇温を検知してヒータ22の出力を下げることができ、細かな温度制御を行うことができる。また、ヒータ22の異常昇温を検知してヒータ22への電力供給を遮断することが可能になり、定着装置の安全性を向上させることができる。
【0115】
中サイズ紙通紙時(
図20の場合)には、第2のサーミスタ35Bによる温度検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。また、第4のサーミスタ35Dによる検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、より早いタイミングでヒータ22の昇温を検知してヒータ22の出力を下げることができ、細かな温度制御を行うことができる。また、ヒータ22の異常昇温を検知してヒータ22への電力供給を遮断することが可能になり、定着装置の安全性を向上させることができる。
【0116】
大サイズ紙通紙時(
図21の場合)には、第2のサーミスタ35Bによる温度検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。また、第3のサーミスタ35Cによる検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、より早いタイミングでヒータ22の昇温を検知してヒータ22の出力を下げることができ、細かな温度制御を行うことができる。また、ヒータ22の異常昇温を検知してヒータ22への電力供給を遮断することが可能になり、定着装置の安全性を向上させることができる。
【0117】
また以上の実施形態では、本発明として、ヒータ22に対向してその温度を検知する温度検知手段を例示した。温度検知手段をヒータ22に対向して設けることで、定着装置9を小型化できる。ただし、これに限らず、ベルト部材としての定着ベルト20に対向してその温度を検知する温度検知手段を設けてもよい。
【0118】
例えば
図23に示すように、定着ベルト20の外周面に対向して、定着ベルト20に非接触の温度検知手段36が複数設けられる。温度検知手段36としては、例えば、非接触のサーミスタとすることもできるし、サーモパイルとすることもできる。
【0119】
本実施形態の温度検知手段36を、
図10で示した実施形態の第1のサーミスタ35A、そして第2のサーミスタ35Bのように配置することができる。つまり、配列方向において、抵抗発熱体59のうち、中央位置C0に最も近い2個の抵抗発熱体59a(
図10)に対応する位置に配置され、第1の温度検知手段36は中央位置C0よりも配列方向一方側の抵抗発熱体59に対応する位置に配置され、第2の温度検知手段36は中央位置C0よりも配列方向他方側の抵抗発熱体59に対応する位置に配置される。そして、小サイズ通紙時には第1の温度検知手段36の温度検知結果に基づいて、大サイズ通紙時には第2の温度検知手段36の温度検知結果に基づいて、それぞれヒータ22の出力制御をすることで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。
【0120】
また、配列方向において、前述の第3のサーミスタ35Cや第4のサーミスタ35Dのように温度検知手段36を配置することもできる。これらの温度検知手段36による検知結果に基づいてヒータ22の出力制御を行うことで、より早いタイミングでヒータ22の昇温を検知してヒータ22の出力を下げることができ、細かな温度制御を行うことができる。また、ヒータ22の異常昇温を検知してヒータ22への電力供給を遮断することが可能になり、定着装置の安全性を向上させることができる。
【0121】
またヒータ22のレイアウトは、前述した
図10や
図17の構成に限らず、本発明は配列方向の一方側と他方側とでヒータ22や定着ベルト20に温度偏差の生じるヒータ22に適用することができる。
【0122】
例えば、本発明を適用するその他のヒータの例として、
図24に示すヒータ22は、前述の実施形態と異なり、全ての電極部が配列方向の一方側に設けられる。つまり、
図10のヒータ22と比較すると、第2の電極部61Bが配列方向一方側に設けられる点が異なる。また、
図24に示すように、第2の電極部61Bが配列方向一方側に設けられるため、第2の電極部61Bに直に接続される給電線が配列方向他方側まで延在して折り返し、配列方向一方側へ延びて各抵抗発熱体59に接続されている。
【0123】
本実施形態では、これらの第2の電極部61Bと各抵抗発熱体59を接続する給電線のうち、各抵抗発熱体59に接続される部分から配列方向他方側の折り返し部分までを第2の給電線62Bと称し、折り返し部分に連続した配列方向一方側へ延在する部分から第2の電極部61Bまでの部分を第7の給電線(導電体)62Gと称する。
【0124】
このようなヒータ22においても、第1の発熱部60Aのみに通電した場合、そして、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合のそれぞれについて、前述したような配列方向の左右の温度偏差が生じる。
【0125】
まず、第1の発熱部60Aのみに通電した場合には、
図25に示すように、意図しない分流が第3の給電線62Cの側へ生じる。従って、各ブロックの合計発熱量は左右非対称となり、配列方向一方側の発熱量が他方側に比べて大きくなる。また、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合にも、
図26に示すように、合計発熱量が左右非対称となり、配列方向他方側の発熱量が一方側に比べて大きくなる。
【0126】
以上のように、本実施形態のヒータ22において、配列方向一方側(
図24の左側)は、第1の発熱部60Aに通電し意図しない分流が生じた場合(
図25の場合)にヒータ22の発熱量が大きい側である。また、配列方向他方側(
図24の右側)は、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合(
図26の場合)に発熱量が大きい側である。
【0127】
上記の部分通電した場合、あるいは、全通電した場合において、第2の給電線62Bは、配列方向一方側から他方側へその電流量が増加している。また、第2の電極部61Bから第1の電極部61Aあるいは第3の電極部61Cの側へ電流を流した時に、配列方向他方側の抵抗発熱体59が電流方向の上流側、配列方向一方側の抵抗発熱体59が下流側に配置されることになる。
【0128】
上記のヒータ22においても、サーミスタなどの温度検知手段を、前述した
図10の実施形態のように配置することができる。つまり
図27に示すように、配列方向において、抵抗発熱体59のうち、中央位置C0に最も近い2個の抵抗発熱体59aに対応した位置にそれぞれのサーミスタ35が配置され、第1のサーミスタ35Aは中央位置C0よりも配列方向一方側の抵抗発熱体59に対応した位置に配置され、第2のサーミスタ35Bは中央位置C0よりも配列方向他方側の抵抗発熱体59に対応した位置に配置される。そして、小サイズ通紙時には第1のサーミスタ35Aの温度検知結果に基づいて、大サイズ通紙時には第2のサーミスタ35Bの温度検知結果に基づいて、それぞれヒータ22の出力制御をすることで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。
【0129】
また、第3のサーミスタ35Cおよび第4のサーミスタ35Dが
図16の実施形態と同様に配置される。小サイズ通紙時には第4のサーミスタ35Dの温度検知結果に基づいて、大サイズ通紙時には第3のサーミスタ35Cの温度検知結果に基づいて、それぞれヒータ22の出力制御をすることで、より早いタイミングでヒータ22の昇温を検知してヒータ22の出力を下げることができ、細かな温度制御を行うことができる。また、ヒータ22の異常昇温を検知してヒータ22への電力供給を遮断することが可能になり、定着装置の安全性を向上させることができる。
【0130】
また本発明は、特に短手方向に小型化したヒータに好適である。つまり、前述のようにヒータ22の短手方向寸法を小さくしようとした場合、給電線の短手方向の寸法が小さくする必要があり、給電線からの発熱量が相対的に大きくなってその影響も大きくなるためである。具体的には、
図28に示すヒータ22(基材50)の短手方向寸法Qに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Rの比(R/Q)が25%以上となるヒータ22に本発明を適用することが好ましい。さらに、本発明は、前記短手方向の寸法比(R/Q)が40%以上となるヒータ22に適用されることがより好ましい。このような小型のヒータ22に本発明を適用することでより大きな効果を期待できる。
【0131】
次に、上記の短手方向寸法の比(R/Q)を変化させた場合の、ヒータ22の配列方向中央側と端部側との間に生じる温度偏差の実験結果について説明する。実験では、前述した構成のヒータ22について、上記の短手方向寸法比(R/Q)が、20%以上25%未満、25%以上40%未満、40%以上70%未満、70%以上80%未満のものをそれぞれ用意し、ヒータ単体の条件下でヒータの全ての抵抗発熱体に所定の電圧で通電し、ヒータの配列方向中央および端部のそれぞれの表面温度をフリアシステムズ社製の赤外線サーモグラフィ FLIR T620を用いて測定した。以上の実験結果を表2に示す。表2の結果は、中央側と端部側の温度差が2℃未満のものを○、2℃以上5℃未満のものを△、5℃以上のものを×とした。なお、短手方向寸法の比(R/Q)を80%以上とすると、ヒータの短手方向寸法を極端に大きくする等しない限り、給電線を配置するスペースがなくなるため、実験の対象にはしていない。
【0132】
【0133】
表2に示すように、短手方向寸法の比(R/Q)が大きくなるほど、ヒータの中央と端部の温度差も大きくなった。具体的には、20%以上25%未満では〇であるのに対して、25%以上40%未満では△に変化し、40%以上70%未満、および、70%以上80%未満では×に変化した。この結果からわかるように、ヒータの配列方向の温度むらは、短手方向寸法の比(R/Q)が25%以上で顕著になり、40%以上で特に顕著になる。従って、このような寸法比のヒータに対して、本実施形態の上記構成を適用してその温度偏差を抑制することが好適である。
【0134】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、
図29~
図31に示すような定着装置にも適用可能である。以下、
図29~
図31に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0135】
まず、
図29に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されており、この押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
【0136】
次に、
図30に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図29に示す定着装置9と同じ構成である。
【0137】
最後に、
図31に示す定着装置9について説明する。定着装置9は、加熱アセンブリ92、定着部材である定着ローラ93、対向部材である加圧アセンブリ94からなる。加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22および加熱装置19、ベルト部材としての加熱ベルト120を有する。また、定着ローラ93は、中実の鉄製芯金93aと、この芯金93aの表面に形成された弾性層93bと、弾性層93bの外側に形成された離型層93cとで構成されている。また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト97と定着ローラ93との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。
【0138】
図31に示す定着装置9において、加熱アセンブリ92は定着ローラ93を加熱するため、前述のようにヒータ22の配列方向(図の奥行方向)において一方側と他方側と発熱量の偏差があると、定着ローラ93においても、配列方向の一方側と他方側とで温度の偏差が生じる。
【0139】
以上の
図29~
図31の定着装置においても、ヒータ22あるいは定着ベルト20(加熱ベルト120)に対向する位置で、その配列方向において、前述の第1のサーミスタ35Aおよび第2のサーミスタ35Bの位置に温度検知手段をそれぞれ設けることができる。つまり、そしてこれらの温度検知手段によりヒータ22の出力制御をすることで、ヒータ22の温度落ち込みを防止でき、ヒータ22がその配列方向にわたって定着ベルト20を十分に加熱することができる。従って、定着装置9の定着不良を防止できる。
【0140】
また、本発明の加熱装置を備えた装置としては、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置であってもよい。このような装置に本発明の加熱装置を適用することで、加熱体が被加熱部材を十分に加熱し、加熱不良を防止できる。
【0141】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【符号の説明】
【0142】
1 画像形成装置
9 定着装置
19 加熱装置
20 定着ベルト(被加熱部材あるいはベルト部材あるいは定着部材)
21 加圧ローラ(対向部材あるいは加圧部材)
22 ヒータ(加熱体)
35 サーミスタ(温度検知手段)
36 温度検知手段
59 抵抗発熱体(発熱体)
60 発熱部
61 電極部
62 給電線(導電体)
66 制御回路(制御部)
70 コネクタ(給電部材)
A 通紙方向
B ヒータの長手方向(複数の抵抗発熱体の配列方向)
C1 全ての抵抗発熱体による発熱領域
C0 発熱領域の中央位置
N 定着ニップ(ニップ部)
P 用紙(記録媒体あるいは被加熱物)
Q ヒータの短手方向寸法
R 抵抗発熱体の短手方向寸法
S1 第1の方向
S2 第2の方向
Y ヒータの短手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0143】