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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】レーザ装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0687 20060101AFI20240322BHJP
【FI】
H01S5/0687
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020022624
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021129015
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金堂 晃久
(72)【発明者】
【氏名】西田 昌義
(72)【発明者】
【氏名】三浦 準
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140304(JP,A)
【文献】特開2015-060961(JP,A)
【文献】特開2001-244557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0046868(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102751656(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部と、前記レーザ光の周波数に相当する周波数相当量に対応するモニタ値を取得するモニタ部と、を備えるレーザ部と、
制御量を前記レーザ部に供給することによって前記レーザ光の周波数を制御する制御部と、
を備え、
前記モニタ部は、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ位相がπの整数倍以外の量だけ相対的にずれている第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタと、前記レーザ光が前記第1周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第1強度を検出する第1検出部と、前記レーザ光が前記第2周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第2強度を検出する第2検出部と、を少なくとも備え、
前記制御部は、
前記レーザ光の周波数の制御目標となる目標周波数を取得する目標周波数設定部と
前記レーザ光の強度に対する前記第1強度の比に相当する第1比と、前記レーザ光の強度に対する前記第2強度の比に相当する第2比と、を取得し、
前記第1比と前記第2比との和である第3比、および前記第1比と前記第2比との差である第4比を取得可能なモニタ値算出部と、
前記第1比、前記第2比、前記第3比、および前記第4比のいずれか一つを前記レーザ光の周波数に相当するモニタ値として設定する弁別カーブ選択部と
前記第1乃至第4比の当該いずれか一つに基づいて、前記目標周波数に相当する目標値を取得する目標値取得部と、を備え
前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記制御量を制御する
レーザ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1強度、前記第2強度、および前記レーザ光の強度をデジタル信号に変換し、デジタル演算によって前記第1比または前記第2比を算出する
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記第1および第2周波数フィルタの透過率は、周波数の変化に対し正弦関数的に変化する
請求項1または2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1強度、前記第2強度、および前記レーザ光の強度から、前記第1周波数フィルタの透過特性または前記第2周波数フィルタの透過特性を示す周波数の関数を周波数の正弦関数に変換して、前記第1比または前記第2比を算出する
請求項1~のいずれか一つに記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記レーザ部は、バーニア効果を利用して前記レーザ光の周波数が可変とされている
請求項1~のいずれか一つに記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記制御量に対応する電力を前記レーザ部に供給することによって前記レーザ光の周波数を制御する、
請求項1~のいずれか一つに記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記光源部と、第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタとが設置される設置面を有する温度制御器をさらに備え、
前記光源部、前記第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタは、
前記温度制御器の同一の前記設置面に設置される
ことを特徴とする請求項6に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1乃至第4比のうち、前記目標値における周波数変化に対する比の変化が最も大きい比を、前記レーザ光の周波数に相当するモニタ値として設定し選択する
請求項1~のいずれか一つに記載のレーザ装置。
【請求項9】
出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部を備えるレーザ装置の制御方法であって、
前記レーザ光の周波数の制御目標となる目標周波数を取得する第1取得ステップと、
入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ位相がπの整数倍以外の量だけ相対的にずれている第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタのうち、前記レーザ光が前記第1周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第1強度を検出し、前記レーザ光が前記第2周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第2強度を検出し、前記レーザ光の強度を検出する検出ステップと、
前記レーザ光の強度に対する前記第1強度の比に相当する第1比と、前記レーザ光の強度に対する前記第2強度の比に相当する第2比と、を取得する第2取得ステップと、
前記第1比と前記第2比との和である第3比、および前記第1比と前記第2比との差である第4比を取得する第3取得ステップと、
前記第1比、前記第2比、前記第3比、および前記第4比のいずれか一つから前記レーザ光の周波数に相当する周波数相当量に対応するモニタ値を設定する設定ステップと、
前記第1乃至第4比の当該いずれか一つに基づいて、前記目標周波数に相当する目標値を取得する第3取得ステップと、
前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように制御量を調整する調整ステップと、
を含む
レーザ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出力するレーザ光の周波数を可変とするレーザ装置において、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有する2以上の周波数フィルタを用いて、レーザ光の周波数を制御する技術が開示されている(特許文献1)。この2以上の周波数フィルタは、互いに位相がずれるように設計されている。この制御では、レーザ光の制御目標の周波数において、周波数の変化に対する透過率の変化が大きい方の周波数フィルタの透過光を制御に使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-140304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周波数に対して周期的に変化する透過特性を有する周波数フィルタは、その透過特性の極値の付近の周波数帯では、周波数の変化に対する透過率の変化が小さく、制御の精度が低下する。このような周波数帯は不感帯とも呼ばれる。
【0005】
特許文献1の技術では、2以上の周波数フィルタを互いに位相がずれるように設定して、制御目標の周波数において不感帯ではない周波数フィルタを選択することで、制御精度の低下を抑制できるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を用いたとしても、周波数フィルタの透過特性が意図しない原因によって周波軸方向にずれる、いわゆる横ずれが生じると、制御目標の周波数が、選択した周波数フィルタの不感帯と意図せずに重なってしまうおそれがある。これにより制御の精度が低下するおそれがある。このような意図しない原因としては、周波数フィルタの温度の変動が考えられる。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、レーザ光の周波数の制御精度の低下を抑制できるレーザ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部と、前記レーザ光の周波数に相当する周波数相当量に対応するモニタ値を取得するためのモニタ部と、を備えるレーザ部と、制御量に対応する電力を前記レーザ部に供給することによって前記レーザ光の周波数を制御する制御部と、を備え、前記モニタ部は、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ位相が相対的にずれている第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタと、前記レーザ光が前記第1周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第1強度を検出する第1検出部と、前記レーザ光が前記第2周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第2強度を検出する第2検出部と、を少なくとも備え、前記制御部は、前記レーザ光の周波数の制御目標となる目標周波数を取得し、前記レーザ光の強度に対する前記第1強度の比に相当する第1比と、前記レーザ光の強度に対する前記第2強度の比に相当する第2比と、を取得し、前記第1比、前記第2比、前記第1比と前記第2比との和である第3比、および前記第1比と前記第2比との差である第4比のいずれか一つを前記レーザ光の周波数に相当するモニタ値として設定し、前記第1乃至第4比の当該いずれか一つに基づいて、前記目標周波数に相当する目標値を取得し、前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように前記制御量を制御するレーザ装置である。
【0009】
前記制御部は、前記第1比または前記第2比を、前記第1強度、前記第2強度、または前記レーザ光の強度に補正係数を適用して算出してもよい。
【0010】
前記制御部は、前記第1強度、前記第2強度、および前記レーザ光の強度をデジタル信号に変換し、デジタル演算によって前記第1比または前記第2比を算出してもよい。
【0011】
前記第1および第2周波数フィルタの透過率は、周波数の変化に対し正弦関数的に変化しもよい。
【0012】
前記制御部は、前記第1強度または前記第2強度、および前記レーザ光の強度から、前記第1周波数フィルタの透過特性または前記第2周波数フィルタの透過特性を示す周波数の関数を周波数の正弦関数に変換して、前記第1比または前記第2比を算出してもよい。
【0013】
前記レーザ部は、バーニア効果を利用して前記レーザ光の周波数が可変とされていてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記制御量に対応する電力を前記レーザ部に供給することによって前記レーザ光の周波数を制御してもよい。
【0015】
前記光源部と、第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタとが設置される設置面を有する温度制御器をさらに備え、前記光源部、前記第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタは、前記温度制御器の同一の前記設置面に設置されてもよい。
【0016】
前記制御部は、前記第1乃至第4比のうち、前記目標値における周波数変化に対する比の変化が最も大きい比を、前記レーザ光の周波数に相当するモニタ値として設定し選択してもよい。
【0017】
本発明の一態様は、出力するレーザ光の周波数を可変とする光源部を備えるレーザ装置の制御方法であって、前記レーザ光の周波数の制御目標となる目標周波数を取得する第1取得ステップと、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、かつ位相が相対的にずれている第1周波数フィルタおよび第2周波数フィルタのうち、前記レーザ光が前記第1周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第1強度を検出し、前記レーザ光が前記第2周波数フィルタを透過した後のレーザ光の強度に対応する第2強度を検出し、前記レーザ光の強度を検出する検出ステップと、前記レーザ光の強度に対する前記第1強度の比に相当する第1比と、前記レーザ光の強度に対する前記第2強度の比に相当する第2比と、を取得する第2取得ステップと、前記第1比、前記第2比、前記第1比と前記第2比との和である第3比、および前記第1比と前記第2比との差である第4比のいずれか一つから前記レーザ光の周波数に相当する周波数相当量に対応するモニタ値を設定する設定ステップと、前記第1乃至第4比の当該いずれか一つに基づいて、前記目標周波数に相当する目標値を取得する第3取得ステップと、前記目標値と前記モニタ値との差の絶対値が小さくなるように制御量を調整する調整ステップと、を含むレーザ装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レーザ光の周波数の制御精度の低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係るレーザ装置の構成を示す図である。
図2図2は、光源部の構成を示す図である。
図3図3は、実施形態1に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、周波数弁別カーブを示す図である。
図5図5は、余裕度の説明図である。
図6図6は、φと余裕度との関係を示す図である。
図7図7は、比較形態における周波数弁別カーブの温度依存変化を示す図である。
図8図8は、実施形態における周波数弁別カーブの温度依存変化を示す図である。
図9図9は、実施形態1に係る制御部による制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合がある。さらに、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中で適宜xyz座標軸を示し、これにより方向を説明する。
【0021】
(実施形態1)
〔レーザ装置の概略構成〕
図1は、実施形態1に係るレーザ装置の構成を示す図である。
レーザ装置1は、モジュール化されたレーザ部2と、当該レーザ部2の動作を制御する制御ステップを実行する制御部3と、を備える。
なお、図1では、レーザ部2と制御部3とを別体で構成しているが、一体にモジュール化しても構わない。
【0022】
〔レーザ部の構成〕
レーザ部2は、制御部3による制御の下、出力するレーザ光の周波数を複数の周波数のうちいずれか周波数のレーザ光に可変とし、当該周波数のレーザ光を出力する。このレーザ部2は、光源部4と、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)5と、平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)6と、光検出部7と、温度センサ8と、温度制御器9と、を備える。平面光波回路6と光検出部7とはモニタ部10を構成する。
【0023】
図2は、光源部の構成を示す図である。
光源部4は、たとえばバーニア効果を利用したレーザであり、制御部3による制御の下、レーザ光L1を出力する。この光源部4は、出力するレーザ光L1の周波数を可変とするレーザ本体部41と、変更部42と、を備える。変更部42は、制御部3から供給される電力に応じて発熱する3つのマイクロヒータを有し、レーザ本体部41を局所的に加熱することで、レーザ本体部41から出力されるレーザ光L1の周波数を変更する。
【0024】
レーザ本体部41は、共通の基部B1上にそれぞれ形成された第1,第2の導波路部43,44を備える。ここで、基部B1は、たとえばn型InPからなる。そして、基部B1の裏面には、たとえばAuGeNiを含んで構成され、当該基部B1とオーミック接触するn側電極45が形成されている。
【0025】
第1の導波路部43は、埋め込み導波路構造を有している。この第1の導波路部43は、導波路部431と、半導体積層部432と、p側電極433と、を備える。
導波路部431は、半導体積層部432内にz方向に延伸するように形成されている。
また、第1の導波路部43内には、利得部431aと、DBR(Distributed Bragg Reflector)型の回折格子層431bとが配置されている。
【0026】
ここで、利得部431aは、InGaAsPからなる多重量子井戸構造と光閉じ込め層とを有する活性層である。また、回折格子層431bは、InGaAsPとInPとからなる標本化回折格子で構成されている。
【0027】
半導体積層部432は、InP系半導体層が積層して構成されており、導波路部431に対してクラッド部の機能等を備える。
【0028】
p側電極433は、半導体積層部432上において、利得部431aに沿うように配置されている。なお、半導体積層部432上には、SiN保護膜(図示略)が形成されている。そして、p側電極433は、当該SiN保護膜に形成された開口部(図示略)を介して半導体積層部432に接触している。
【0029】
ここで、マイクロヒータであるDBRヒータ421は、半導体積層部432のSiN保護膜上において、回折格子層431bに沿うように配置されている。そして、DBRヒータ421は、制御部3から供給される電力に応じて発熱し、回折格子層431bを加熱する。また、制御部3がDBRヒータ421に供給する電力を制御することによって回折格子層431bの温度が変化し、その屈折率が変化する。
【0030】
第2の導波路部44は、2分岐部441と、2つのアーム部442,443と、リング状導波路444と、を備える。
【0031】
2分岐部441は、1×2型の多モード干渉型(MMI)導波路441aを含む1×2型の分岐型導波路で構成され、2ポート側が2つのアーム部442,443のそれぞれに接続されるとともに1ポート側が第1の導波路部43側に接続されている。すなわち、2分岐部441により、2つのアーム部442,443は、その一端が統合され、回折格子層431bと光学的に結合される。
【0032】
アーム部442,443は、いずれもz方向に延伸し、リング状導波路444を挟むように配置されている。これらアーム部442,443は、リング状導波路444といずれも同一の結合係数κでリング状導波路444と光学的に結合している。κの値は、たとえば0.2である。そして、アーム部442,443とリング状導波路444とは、リング共振器フィルタRF1を構成している。また、リング共振器フィルタRF1と2分岐部441とは、反射ミラーMを構成している。
【0033】
ここで、マイクロヒータであるRINGヒータ422は、リング状であり、リング状導波路444を覆うように形成されたSiN保護膜(図示略)上に配置されている。そして、RINGヒータ422は、制御部3から供給される電力に応じて発熱し、リング状導波路444を加熱する。また、制御部3がRINGヒータ422に供給する電力を制御することによってリング状導波路444の温度が変化し、その屈折率が変化する。
【0034】
上述した2分岐部441、アーム部442,443、およびリング状導波路444は、いずれも、InGaAsPからなる光導波層44aがInPからなるクラッド層によって挟まれたハイメサ導波路構造を有している。
【0035】
ここで、マイクロヒータであるPhaseヒータ423は、アーム部443の一部のSiN保護膜(図示略)上に配置されている。当該アーム部443のうちPhaseヒータ423の下方の領域は、光の位相を変化させる位相調整部445として機能する。そして、Phaseヒータ423は、制御部3から供給される電力に応じて発熱し、位相調整部445を加熱する。また、制御部3がPhaseヒータ423に供給する電力を制御することによって位相調整部445の温度が変化し、その屈折率が変化する。
【0036】
以上説明した第1,第2の導波路部43,44は、互いに光学的に接続された回折格子層431bと反射ミラーMとにより構成される光共振器Cを構成している。また、利得部431aと位相調整部445とは、光共振器C内に配置される。
【0037】
回折格子層431bは、所定の周波数間隔で周期的な反射特性を有する第1の櫛状反射スペクトルを生成する。一方、リング共振器フィルタRF1は、所定の周波数間隔で周期的な反射特性を有する第2の櫛状反射スペクトルを生成する。
【0038】
ここで、第2の櫛状反射スペクトルは、第1の櫛状反射スペクトルのピークの半値全幅よりも狭い半値全幅のピークを有し、第1の櫛状反射スペクトルの周波数間隔とは異なる周波数間隔で周期的な反射特性を有する。
【0039】
各櫛状反射スペクトルの特性について例示すると、第1の櫛状反射スペクトルのピーク間の周波数間隔(自由スペクトル領域:FSR)は373GHzである。また、各ピークの半値全幅は43GHzである。一方、第2の櫛状反射スペクトルのピーク間の周波数間隔(FSR)は400GHzである。また、各ピークの半値全幅は25GHzである。すなわち、第2の櫛状反射スペクトルの各ピークの半値全幅(25GHz)は、第1の櫛状反射スペクトルの各ピークの半値全幅(43GHz)より狭い。
【0040】
光源部4では、レーザ発振を実現するために、第1の櫛状反射スペクトルのピークの一つと第2の櫛状反射スペクトルのピークの一つとを周波数軸上で重ね合わせ可能に構成されている。このような重ね合わせは、DBRヒータ421,RINGヒータ422の少なくとも一つを用いて、DBRヒータ421により回折格子層431bを加熱して熱光学効果によりその屈折率を変化させて第1の櫛状反射スペクトルを周波数軸上で全体的に移動させて変化させる、および、RINGヒータ422によりリング状導波路444を加熱してその屈折率を変化させて第2の櫛状反射スペクトルを周波数軸上で全体的に移動させて変化させる、の少なくともいずれか一つを行うことにより、実現することができる。
【0041】
一方、光源部4において、光共振器Cによる共振器モードが存在する。そして、光源部4において、共振器モードの間隔(縦モード間隔)は、25GHz以下となるように光共振器Cの共振器長が設定されている。この設定の場合、光共振器Cの共振器長は、1800μm以上となり、発振するレーザ光の狭線幅化を期待することができる。なお、光共振器Cの共振器モードの周波数は、Phaseヒータ423を用いて位相調整部445を加熱してその屈折率を変化させて共振器モードの周波数を周波数軸上で全体的に移動させることにより微調整することができる。すなわち、位相調整部445は、光共振器Cの光路長を能動的に制御するための部分である。
【0042】
光源部4は、制御部3により、n側電極45およびp側電極433から利得部431aへ電流を注入し、利得部431aを発光させると、第1の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分のピーク、第2の櫛状反射スペクトルのスペクトル成分のピーク、および光共振器Cの共振器モードの一つが一致した周波数、たとえば193.4THzでレーザ発振し、レーザ光L1を出力するように構成されている。
【0043】
光源部4では、バーニア効果を利用してレーザ光L1の周波数を変化させることができる。すなわち、制御部3から供給する電力を調整してDBRヒータ421を制御すると、その櫛状反射スペクトルは、周波数軸上でシフトする。同様に、RINGヒータ422を制御すると、その櫛状反射スペクトルは周波数軸上でシフトする。同様に、Phaseヒータ423を制御すると、そのスペクトルは周波数軸上でシフトする。
【0044】
たとえば、まず、DBRの反射ピークと光共振器Cの共振器モードとRINGの反射ピークとが一致した周波数f1でレーザ発振する状態を形成する。この状態にするために、DBRヒータ421およびRINGヒータ422は、供給される電力に基づいて、DBR、RINGの反射スペクトルがピークとなる周波数位置を各々設定する。また、Phaseヒータ423は、供給される電力に基づいて、共振器モードがピークとなる周波数位置を設定する。周波数f1でレーザ発振する状態から、各ヒータの制御によってDBRの反射ピークと光共振器Cの共振器モードとRINGの反射ピークとが一致する周波数を周波数f2とすると、レーザ光L1の周波数を周波数f2に調整できる。なお、各ヒータへ供給する電力は電流を制御量として制御することができる。すなわち、制御部3は、制御量である電流に対応する電力を光源部4に供給することによってレーザ光L1の周波数を制御する。
【0045】
レーザ光L1の周波数を第1周波数から第2周波数に変更する場合には、たとえば、まずDBRおよびRINGの櫛状反射スペクトルが第2周波数において重なり合うようにDBRヒータ421およびRINGヒータ422をフィードフォワード制御し、その後に共振器モードのいずれか一つが第2周波数と一致するようにPhaseヒータ423をフィードバック制御する。ただし制御の方法はこれに限られない。
【0046】
図1に戻って説明を続ける。半導体光増幅器5は、具体的な図示は省略したが、第1の導波路部43と同様の材料および構造からなる活性コア層を備える埋め込み導波路構造を有する。但し、回折格子層431bは設けられていない。この半導体光増幅器5は、空間結合光学系(図示略)により光源部4に対して光学的に結合している。そして、光源部4から出力されたレーザ光L1は、半導体光増幅器5に入力される。半導体光増幅器5は、レーザ光L1を増幅してレーザ光L2として出力する。なお、半導体光増幅器5は、基部B1上に、光源部4とモノリシックに構成されていてもよい。
【0047】
平面光波回路6は、空間結合光学系(図示略)によりアーム部442に光学的に結合している。そして、レーザ光L1と同様に光源部4におけるレーザ発振により発生したレーザ光L3の一部は、アーム部442を介して平面光波回路6に入力される。なお、レーザ光L3は、レーザ光L1の周波数と同一の周波数を有し、レーザ光L1の強度と対応する強度を有する。この平面光波回路6は、光分岐部61と、光導波路62と、リング共振器型光フィルタである周波数フィルタ63aを有する光導波路63と、リング共振器型光フィルタである周波数フィルタ64aを有する光導波路64と、を備える。周波数フィルタ63aは第1周波数フィルタの一例であり、周波数フィルタ64aは第2周波数フィルタの一例である。
【0048】
光分岐部61は、入力したレーザ光L3を3つのレーザ光L4,L5,L6に分岐する。光導波路62は、レーザ光L4を光検出部7における後述するPD(Photo Diode)73に導波する。光導波路63は、レーザ光L5を光検出部7における後述するPD71に導波する。光導波路64は、レーザ光L6を光検出部7における後述するPD72に導波する。
【0049】
ここで、周波数フィルタ63aは、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、レーザ光L5をレーザ光L5の周波数に応じた透過率で透過する。そして、周波数フィルタ63aを透過したレーザ光L5は、PD71に入力する。すなわち、周波数フィルタ63aは、導波路型の周波数フィルタである。なお、周波数フィルタ63aとして、入力する光の周波数に対して周期的な透過特性を有するエタロンフィルタやMZI(Mach-Zehnder Interferometer)フィルタを用いてもよい。
【0050】
同様に、周波数フィルタ64aは、入力する光の周波数に対して透過率が周期的に変化する透過特性を有し、レーザ光L6をレーザ光L6の周波数に応じた透過率で透過する。そして、周波数フィルタ64aを透過したレーザ光L6は、PD72に入力する。周波数フィルタ64aとして、入力する光の周波数に対して周期的な透過特性を有するエタロンフィルタやMZIフィルタを用いてもよい。
【0051】
周波数フィルタ63a、64aの透過特性は、互いに同じ周期であることが好ましい。また、後に詳述するように、周波数フィルタ63a、64aの透過特性は位相が相対的にずれている。
【0052】
光検出部7は、PD71,72,73を備え、検出ステップを実行する。PD73は、レーザ光L4(光源部4から出力されたレーザ光L1と同一の周波数を有し、レーザ光L1の強度と対応する強度を有する)を受光し、当該レーザ光L4の強度に応じた電気信号を制御部3に出力する。PD71は、周波数フィルタ63aを透過したレーザ光L5を受光し、当該レーザ光L5の強度に応じた電気信号を制御部3に出力する。PD72は、周波数フィルタ64aを透過したレーザ光L6を受光し、当該レーザ光L6の強度に応じた電気信号を制御部3に出力する。そして、PD71,72,73からそれぞれ出力された電気信号は、制御部3による周波数ロック制御(光源部4から出力されるレーザ光L1の周波数を目標周波数にするための制御)に用いられる。
【0053】
PD71は、レーザ光L1が周波数フィルタ63aを透過した後の強度に相当するレーザ光L5の強度である第1強度を検出する第1検出部の一例である。PD72は、レーザ光L1が周波数フィルタ64aを透過した後の強度に相当するレーザ光L6の強度である第2強度を検出する第2検出部の一例である。PD73は、レーザ光L1の強度に対応するレーザ光L4の強度である第3強度を検出する第3検出部の一例である。
【0054】
温度センサ8は、たとえばサーミスタ等で構成されるとともに、温度制御器9の設置面91上に載置され、光源部4および平面光波回路6の周囲温度を検出する。なお、温度センサ8としては、温度制御器9の外部に配置し、レーザ装置1が配置される環境の温度を周囲温度として検出しても構わない。温度センサ8は、検出した温度の情報を含む電気信号を制御部3に出力する。
【0055】
温度制御器9は、たとえばペルチェ素子を含むTEC(Thermo Electric Cooler)等で構成されている。この温度制御器9には、光源部4、半導体光増幅器5、平面光波回路6、光検出部7、および温度センサ8が載置される。そして、温度制御器9は、供給された電力に応じて光源部4、半導体光増幅器5、平面光波回路6、光検出部7、および温度センサ8の温度を制御する。この場合、制御部3は、温度センサ8が検出した温度の情報に基づいて、主に光源部4が一定の温度となるように、温度制御器9に供給する電力を制御する。主に光源部4が一定の温度となるよう制御を行うことが、レーザ光L1の周波数の、動作条件や外部環境温度に依存する変動を抑制する上で好ましい。
【0056】
なお、温度センサ8は、温度制御器9において、光源部4、半導体光増幅器5、平面光波回路6、光検出部7、および温度センサ8が載置される設置面91を、光源部4および半導体光増幅器5が載置される第1の領域Ar1と、平面光波回路6および光検出部7が載置される第2の領域Ar2の2つの領域に区画した場合には、第1の領域Ar1に載置してもよい。このとき、温度センサ8は、光源部4に近接して配置したり、光源部4上に載置するようにしてもよい。また、温度センサ8は、第2の領域Ar2に載置され、平面光波回路6に近接して配置されていてもよい。
【0057】
〔制御部の構成〕
つぎに、制御部3の構成について説明する。図3は、制御部の構成を示すブロック図である。制御部3は、たとえばユーザインターフェースを備えた上位の制御装置(図示略)と接続されており、当該上位の制御装置を介したユーザからの指示にしたがって、光源部4の動作を制御する。
【0058】
なお、以下では、本発明の要部である制御部3による周波数ロック制御を主に説明する。また、図3では、説明の便宜上、制御部3の構成として、周波数ロック制御を実行する構成を主に図示している。
【0059】
制御部3は、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)31、32,33,34と、演算部35と、記憶部36と、電流源37と、を備える。
【0060】
ADC31は、PD71から入力されたアナログの電気信号をデジタル信号(電圧信号)に変換して演算部35に出力する。ADC32は、PD72から入力されたアナログの電気信号をデジタル信号(電圧信号)に変換して演算部35に出力する。ADC33は、PD73から入力されたアナログの電気信号をデジタル信号(電圧信号)に変換して演算部35に出力する。ADC34は、温度センサ8から入力されたアナログの電気信号をデジタル信号(電圧信号)に変換して演算部35に出力する。
【0061】
デジタル演算を行う演算部35は、制御部3が実行する制御のための各種演算処理を行うものであり、たとえばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される。記憶部36は、演算部35が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ等が格納される、たとえばROM(Read Only Memory)で構成される部分と、演算部35が演算処理を行う際の作業スペースや演算部35の演算処理の結果等を記憶する等のために使用される、たとえばRAM(Random Access Memory)で構成される部分とを備えている。制御部3の制御機能は、演算部35と記憶部36との機能によりソフトウェア的に実現される。
【0062】
電流源37は、演算部35からの指示に基づいて、光源部4にレーザ光L1の周波数の制御のための電力を供給する。本実施形態では、演算部35は電流源37に制御量として電流値を指示する。電流源37は指示された電流値の電流を光源部4に供給する。
【0063】
つぎに、演算部35の構成について詳述する。演算部35は、機能部として、目標周波数設定部351と、弁別カーブ選択部352と、目標値取得部353と、モニタ値算出部354と、差分取得部355と、PID制御部356と、DBR/RING電力設定部357と、を備えている。これらの機能部はソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。
【0064】
目標周波数設定部351は、たとえば上位の制御装置からの指示により、レーザ光L1の周波数の制御における目標値として目標周波数を取得して設定する第1取得ステップを行う。
【0065】
弁別カーブ選択部352は、設定された目標周波数を取得し、目標周波数に基づいて、第1周波数弁別カーブ、第2周波数弁別カーブ、第3周波数弁別カーブ、および第4周波数弁別カーブのいずれか一つを選択する。第1周波数弁別カーブは、周波数フィルタ63aの透過特性に相当する。第2周波数弁別カーブは、周波数フィルタ64aの透過特性に相当する。第3周波数弁別カーブは、第1周波数弁別カーブと第2周波数弁別カーブとの和で示される。第4周波数弁別カーブは、第1周波数弁別カーブと第2周波数弁別カーブとの差で示される。
【0066】
振幅値が-1から1の間で変化するように規格化した第1周波数弁別カーブ、第2周波数弁別カーブは、周波数の変化に対し正弦関数的に変化する場合、たとえば以下の式(1)、(2)のような正弦関数(余弦関数)で表現できる。なお、θ=2πf/Fである。fは光の周波数である。Fは弁別カーブの周期またはFSR(Free Spectral Range)であり、周波数フィルタ63aおよび周波数フィルタ64aの周期と等しい。また、φは周波数フィルタ63aと周波数フィルタ64aとの相対的な位相ずれに対応する位相差である。
sinθ ・・・ (1)
sin(θ+φ) ・・・ (2)
【0067】
振幅値が-1から1の間で変化するように規格化した第3周波数弁別カーブ、第4周波数弁別カーブは、たとえば以下の式(3)、(4)で表される。なお、Δ=φ-π/2である。
sin(θ+π/4+Δ/2) ・・・ (3)
sin(θ-π/4+Δ/2) ・・・ (4)
【0068】
図4は、振幅値が-1から1の間で変化するように規格化した第1周波数弁別カーブC1、第2周波数弁別カーブC2、第3周波数弁別カーブC3、第4周波数弁別カーブC4、を示す図である。横軸は周波数であり、弁別カーブの半周期で規格化したものである。縦軸は、第1周波数弁別カーブC1、第2周波数弁別カーブC2、第3周波数弁別カーブC3、第4周波数弁別カーブC4について、それぞれ第1比、第2比、第3比、第4比に相当する比である。なお、図4では位相ずれφをπ/2に設定している。尚、第1周波数弁別カーブ、第2周波数弁別カーブの位相ずれφがπ/2でない場合においても、第1周波数弁別カーブ、第2周波数弁別カーブの振幅が略等しい場合では、第3周波数弁別カーブと第4周波数弁別カーブとの位相ずれはπ/2となる。
【0069】
領域C11、C21、C31、C41は、第1~第4周波数弁別カーブC1~C4において、不感帯とは異なり周波数に対する比の変化率が大きく、制御精度を高くできる領域である。領域C11、C21、C31、C41は、周波数的に互いに重なり合わないように設定される。
【0070】
弁別カーブ選択部352は、目標周波数に基づいて、目標周波数が含まれる領域C11、C21、C31、C41のいずれかに対応する周波数弁別カーブを選択する。たとえば、目標周波数が領域C11に含まれる場合、弁別カーブ選択部352は第1周波数弁別カーブC1を選択する。周波数弁別カーブの選択においては、周波数に対する比の変化率がより大きい周波数弁別カーブを選択することが好ましい。図4の場合、複数の周波数弁別カーブのうち、目標周波数において比の絶対値が小さい周波数弁別カーブを選択することが好ましい。
【0071】
目標値取得部353は、目標周波数を、弁別カーブ選択部352が選択した周波数弁別カーブに当てはめることによって、目標値を取得する第3取得ステップを行う。たとえば、図4において、目標周波数がf_tgtの場合は、第1周波数弁別カーブC1に当てはめて目標値R_tgtを取得する。
【0072】
モニタ値算出部354は、ADC31,32,33から入力されたデジタル信号から第1比、第2比を取得する第2取得ステップを行うとともに、第3比、または第4比を算出するステップを行う。そして、第1比、第2比、第3比、および第4比のいずれか一つをレーザ光L1の周波数に相当するモニタ値R_monとして設定する設定ステップを行う。モニタ値R_monは周波数相当量の一例である。なお、目標周波数とレーザ光L1の周波数とは、同じ領域(たとえば領域C11)に位置するとする例を示すが、モニタ値R_monと目標値R_tgtとが同じ周波数弁別カーブ上で設定されるようにすればよい。
【0073】
第1比は、PD73が検出した第3強度に対するPD71が検出した第1強度の比である。また、当該比に相当するものとして、第1比は、PD73が検出した第3強度に補正係数を適用した強度に対する、PD71が検出した第1強度に補正係数を適用した強度の比でもよい。また、当該比に相当する量として、第1比は、第1強度または第3強度のいずれか一方に補正係数を適用した強度を用いて比を算出したものでもよい。以下では第1比はPD1/PD3と記載する場合がある。
【0074】
第2比は、PD73が検出した第3強度に対するPD72が検出した第2強度の比である。また、当該比に相当するものとして、第1比は、PD73が検出した第3強度に補正係数を適用した強度に対する、PD72が検出した第2強度に補正係数を適用した強度の比でもよい。また、当該比に相当する量として、第2比は、第2強度または第3強度のいずれか一方に補正係数を適用した強度を用いて比を算出したものでもよい。以下では第2比はPD2/PD3と記載する場合がある。
【0075】
第1強度、第2強度、または第3強度に対する補正係数は、実験等によって予め取得され、テーブルデータや関係式などの形式にて記憶部36に記憶されており、モニタ値算出部354が適宜読み出して使用する。補正係数は、たとえばレーザ装置1の動作条件や、温度センサ8が検出した温度等に応じて定められていてもよい。また、補正係数は、規格化された周波数弁別カーブに当てはめるのに適するように定められていてもよい。第1強度、第2強度、または第3強度に対する補正係数の適用は、たとえば、加算、減算、乗算、除算のいずれかの演算による適用である。
【0076】
第3比は、第1比と第2比との和である。第4比は、第1比と第2比との差である。したがって、第3比または第4比は、第1強度、第2強度、または第3強度に対する補正係数を含みうる。
【0077】
差分取得部355は、目標値取得部353が取得した目標値R_tgtとモニタ値算出部354が算出したモニタ値R_monとの差分を算出して取得する。
【0078】
PID制御部356は、目標値R_tgtとモニタ値R_monとの差分に基づいて電流値の指示値を算出し、その指示値を電流源37に出力し、比例積分微分(PID)制御やPI制御などのフィードバック制御を実行する。すなわち、PID制御部356は、目標値R_tgtとモニタ値R_monとの差の絶対値が小さくなるように電流値(制御量)を調整する調整ステップを実行する。
【0079】
DBR/RING電力設定部357は、目標周波数設定部351が設定した目標周波数をもとに、DBRヒータ421およびRINGヒータ422のそれぞれに供給する電力を設定する。DBR/RING電力設定部357は、設定した電力に基づいて電流値を設定し、その電流値の指示を電流源37に出力し、DBRヒータ421およびRINGヒータ422のフィードフォワード制御を行うことができる。
【0080】
このように構成されたレーザ装置1では、制御目標の周波数が不感帯と意図せずに重なってしまうことが抑制されるので、レーザ光の周波数の制御精度の低下を抑制できる。
【0081】
以下では、横ずれが起きたときの制御目標の周波数と不感帯との重なりにくさについて、「余裕度」なるパラメータを導入して説明する。余裕度は、周波数モニタ・制御系の横ずれへの耐性の評価指標となるパラメータである。
【0082】
図5は、余裕度の説明図である。図5では、振幅値が-1から1の間で変化するように規格化した正弦関数である第5周波数弁別カーブC5、第6周波数弁別カーブC6を示している。領域C51、C61は、第5、第6周波数弁別カーブC5、C6において、不感帯とは異なり周波数に対する比の変化率が大きく、制御精度を高くできる領域である。領域C51、C61は、周波数的に互いに重なり合わないように設定される。
【0083】
図5において、余裕度は、2つの周波数弁別カーブの切り替え点のうち最も極値に近い点と、不感帯の中心すなわち周波数弁別カーブの極値(図5では極小値)との周波数差として定義できる。余裕度が大きいほど、不感帯から周波数的に離れた領域でレーザ光L1の周波数のモニタができるといえるので、横ずれへの耐性が高いといえる。なお、図5のような2つの周波数弁別カーブを切り換えて周波数制御を行う場合、余裕度はφ/2である。
【0084】
図6は、φと余裕度との関係を示す図である。線M1は、式(1)、(2)で示す第1および第2周波数弁別カーブの2つを用いた場合のφと余裕度との関係を示している。線M2は、式(1)~(3)で示す第1~第3周波数弁別カーブの3つを用いた場合のφと余裕度との関係を示している。線M2はφが90度以下では線M1と重なっている。線M3は、式(1)、(2)、(4)で示す第1、第2、第4周波数弁別カーブの3つを用いた場合のφと余裕度との関係を示している。線M3はφが90度以上では線M1と重なっている。線M4は、式(1)~(4)で示す第1~第4周波数弁別カーブの4つを用いた場合のφと余裕度との関係を示している。線M4はφが60度以下では線M3と重なり、120度以下では線M2と重なっている。
【0085】
図6に示すように、第1~第4周波数弁別カーブの4つを用いた場合、いずれのφにおいても余裕度が高くなり、周波数モニタ・制御系の横ずれへの耐性が高いことが確認できる。
【0086】
つぎに、図7は、比較形態における周波数弁別カーブの温度依存変化を示す図である。比較形態とは、レーザ装置1において、第1および第2周波数弁別カーブのみを用いて周波数制御を行う形態である。
【0087】
図7では、図5と同様に第5周波数弁別カーブC5、第6周波数弁別カーブC6を示している。ただし、第5周波数弁別カーブC5と第6周波数弁別カーブC6との位相ずれはπ/2としている。ここで、領域C51において、例示的な4つの目標周波数に対応する第5周波数弁別カーブC5上のポイントを実線の白丸で示している。一方、周波数弁別カーブC5Aは、温度変化によって第5周波数弁別カーブC5が正の周波側に横ずれした状態を示しており、周波数弁別カーブC5Bは、温度変化によって第5周波数弁別カーブC5が負の周波側に横ずれした状態を示している。領域C5F、C5AF、C5BFは、それぞれ第5周波数弁別カーブC5、周波数弁別カーブC5A、周波数弁別カーブC5Bにおける不感帯を示している。
【0088】
横ずれによって周波数弁別カーブC5Aの状態になった場合、破線の白丸で示すように、4つの目標周波数のうち最も負側のポイントは、横ずれによって不感帯C5AFと重なってしまう。また、横ずれによって周波数弁別カーブC5Bの状態になった場合、破線の白丸で示すように、4つの目標周波数のうち最も正側のポイントは、横ずれによって不感帯C5BFと重なってしまう。このことは、比較形態の場合は横ずれへの耐性が低いことを示している。
【0089】
一方、図8は、実施形態における周波数弁別カーブの温度依存変化を示す図である。図8では、図4と同様に第1~第4周波数弁別カーブC1~C4を示している。ここで、領域C11において、例示的な3つの目標周波数に対応する第1周波数弁別カーブC1上のポイントを実線の白丸で示している。一方、周波数弁別カーブC1Aは、温度変化によって第1周波数弁別カーブC1が正の周波側に横ずれした状態を示しており、周波数弁別カーブC1Bは、温度変化によって第1周波数弁別カーブC1が負の周波側に横ずれした状態を示している。領域C1F、C1AF、C1BFは、それぞれ第1周波数弁別カーブC1、周波数弁別カーブC1A、周波数弁別カーブC1Bにおける不感帯を示している。
【0090】
実施形態の場合は、横ずれによって周波数弁別カーブC1Aの状態になった場合でも、破線の白丸で示すように、3つの目標周波数いずれのポイントも不感帯C1AFとは重ならない。また、横ずれによって周波数弁別カーブC1Bの状態になった場合も、破線の白丸で示すように、3つの目標周波数のいずれも不感帯C1BFとは重ならない。このことは、実施形態の場合は横ずれへの耐性が高いことを示している。
【0091】
〔制御方法〕
つぎに、レーザ装置1において実行される制御方法について、図9のフローチャートを参照して説明する。
【0092】
はじめに、ステップS101において、目標周波数設定部351は、レーザ光L1の周波数の目標値として目標周波数を設定する。つづいて、図示は省略するが、DBR/RING電力設定部357は、目標周波数設定部351が設定した目標周波数をもとに、DBRヒータ421およびRINGヒータ422のそれぞれに供給する電力を設定し、電流源37にその電力に相当する電流値の指示値を電流源37に出力する。
【0093】
つづいて、ステップS102において、弁別カーブ選択部352が、目標周波数に基づいて、第1周波数弁別カーブ、第2周波数弁別カーブ、第3周波数弁別カーブ、および第4周波数弁別カーブのいずれか一つを選択する。例えば、第1周波数弁別カーブ、第2周波数弁別カーブ、第3周波数弁別カーブ、および第4周波数弁別カーブのうち、ステップS101において設定された目標周波数における変化率が最も大きくなる周波数弁別カーブを選択したり、いずれの周波数弁別カーブも振幅値が-1から1の間で変化するように規格化した上で目標周波数において絶対値が最も小さくなる周波数弁別カーブを選択したりしてもよい。
【0094】
第1周波数弁別カーブを選択した場合(ステップS102、カーブ1)、ステップS103において、目標値取得部353は、第1周波数弁別カーブに基づいて、目標周波数に対応する目標値R_tgtを取得して決定する。つづいて、ステップS104において、モニタ値算出部354は、第1周波数弁別カーブに基づいて、レーザ光L1の周波数に相当するモニタ値R_monを算出して設定する。その後フローはステップS111に進む。
【0095】
第2周波数弁別カーブを選択した場合(ステップS102、カーブ2)、ステップS105において、目標値取得部353は、第2周波数弁別カーブに基づいて、目標周波数に対応する目標値R_tgtを取得して決定する。つづいて、ステップS106において、モニタ値算出部354は、第2周波数弁別カーブに基づいて、レーザ光L1の周波数に相当するモニタ値R_monを算出して設定する。その後フローはステップS111に進む。
【0096】
第3周波数弁別カーブを選択した場合(ステップS102、カーブ3)、ステップS107において、目標値取得部353は、第3周波数弁別カーブに基づいて、目標周波数に対応する目標値R_tgtを取得して決定する。つづいて、ステップS108において、モニタ値算出部354は、第3周波数弁別カーブに基づいて、レーザ光L1の周波数に相当するモニタ値R_monを算出して設定する。その後フローはステップS111に進む。
【0097】
第4周波数弁別カーブを選択した場合(ステップS102、カーブ4)、ステップS109において、目標値取得部353は、第4周波数弁別カーブに基づいて、目標周波数に対応する目標値R_tgtを取得して決定する。つづいて、ステップS110において、モニタ値算出部354は、第4周波数弁別カーブに基づいて、レーザ光L1の周波数に相当するモニタ値R_monを算出して設定する。その後フローはステップS111に進む。
【0098】
つづいて、ステップS111において、差分取得部355は、目標値R_tgtとモニタ値R_monとの差分(目標値R_tgt-モニタ値R_mon)を算出して取得する。
【0099】
つづいて、ステップS112において、PID制御部356は、目標値R_tgtとモニタ値R_monとの差の絶対値が小さくなるような電流値の指示値を算出する。
【0100】
つづいて、ステップS113において、PID制御部356は、算出した指示値を電流源37に出力する。
【0101】
つづいて、ステップS114において、PID制御部356は、差の絶対値である|目標値R_tgt-モニタ値R_mon|が目標誤差内であるか否かを判定する。目標誤差内ではないと判定した場合(ステップS114、No)、制御はステップS115に進む。
【0102】
ステップS115において、制御部3は、弁別カーブ選択部352が選択した弁別カーブを確認する。第1周波数弁別カーブを選択したと確認した場合(ステップS115、カーブ1)、フローはステップS104に戻る。第2周波数弁別カーブを選択したと確認した場合(ステップS115、カーブ2)、フローはステップS106に戻る。第3周波数弁別カーブを選択したと確認した場合(ステップS115、カーブ3)、フローはステップS108に戻る。第4周波数弁別カーブを選択したと確認した場合(ステップS115、カーブ4)、フローはステップS110に戻る。
【0103】
一方、ステップS114において、PID制御部356が、|目標値R_tgt-モニタ値R_mon|が目標誤差内であると判定した場合(ステップS113、Yes)、制御は終了する。
【0104】
以上説明したように、レーザ装置1では、制御目標の周波数が不感帯と意図せずに重なってしまうことが抑制されるので、レーザ光の周波数の制御精度の低下を抑制できる。
【0105】
また、レーザ装置1では、2つの周波数フィルタ63a、64aにて、4つの周波数弁別カーブを生成しているので、周波数フィルタの数を増加させる場合と比較して、レーザ装置の構成や制御の煩雑さの増大は抑制される。また、周波数弁別カーブに対して、レーザ光の強度を検出する検出部をある程度共用しているので、周波数弁別カーブを切り換える毎に検出部を切り換える必要が無い。その結果、周波数弁別カーブを切り換える際に制御が不安定になることが抑制される。
【0106】
また、レーザ装置1では、第1比または第2比を、第1強度、第2強度、または第3強度に補正係数を適用して算出することができる。これにより、レーザ装置1の動作条件や、温度センサ8が検出した温度や、周波数弁別カーブへの当てはめの適正に応じて第1比または第2比、さらには第3比や第4比を算出することができる。具体的には、温度センサ8が検出した温度に応じて、温度に依存する周波数フィルタの横ずれを補正するように補正係数を設定したり、温度に依存する周波数フィルタの縦ずれを補正するように補正係数を設定したりすることができる。ここで、周波数フィルタの縦ずれとは、周波数フィルタの透過特性が透過率軸方向にずれることを意味する。縦ずれは、目標周波数に制御ができなかったり、達成不可能な目標値が設定されたりする原因となりうる。また、たとえば周波数フィルタ63a、64aの透過特性が周波数の正弦関数ではない場合に、補正係数を用いて、第1強度、第2強度、または第3強度を、周波数の正弦関数である周波数弁別カーブに当てはめられるように補正してもよい。尚、温度センサ8を第1の領域Ar1に載置し、当該温度センサ8(第1の温度センサ)とは別に、第2の温度センサを載置し、当該温度センサ8が検出した温度の情報に基づいて温度制御器9に供給する電力を制御する場合は、第2の温度センサで検出された温度の情報に基づいて、周波数フィルタの横ずれおよび縦ずれの少なくとも一方を補正するように補正係数を設定してもよい。このとき、第2の温度センサは第2の領域Ar2に載置してもよいし、光源部4よりも平面光波回路6に近接するように載置してもよい。この他、レーザ部2と異なる場所(例えば、レーザ部2が筐体内に格納される場合は、当該筐体の外)に載置するようにしてもよい。
【0107】
また、周波数フィルタ63a、64aの透過特性が周波数の正弦関数ではない周期関数である場合、高速フーリエ変換(FFT)と逆高速フーリエ変換(IFFT)とを用いて正弦関数に変換するための関数を導いて使用してもよい。たとえば、ADC31、32で変換したデジタル信号を1周期以上蓄積し、これをFFTした上で周波数フィルタ63a、64aのFSR以外の成分を除去し、IFFTすることで正弦関数へと変換できる。こうして導かれた関数を使用し、正弦関数へと変換する。尚、MZIフィルタの周波数透過特性は、周波数の変化に対して正弦関数的に変化するとして扱うことができるため、MZIフィルタを周波数フィルタ63a、64aとして用いる場合は、FFTおよびIFFTによる正弦関数への変換を行わなくともよい。周波数フィルタ63a、64aとしてリング共振器型フィルタを用いる際は、当該フィルタの周波数透過特性のQ値が小さい場合に、周波数の変化に対して正弦関数的に変化するとして扱うことができる。
【0108】
また、レーザ装置1では、1つの温度制御器9によって、光源部4と平面光波回路6との両方の温度制御を行っているので、光源部4と平面光波回路6とにそれぞれ温度制御器を設けるよりも低消費電力、低コストが実現できる。しかしながら、制御部3が主に光源部4が一定の温度となるように温度制御器9に供給する電力を制御したり、光源部4に供給する電力を制御することで光源部4の出力するレーザ光の発振周波数を制御すると、平面光波回路6の周波数フィルタ63a、64aに温度に依存する横ずれが生じやすい場合がある。これに対して、レーザ装置1は、横ずれへの耐性が高い構成を備えるので、制御精度の低下を抑制するのに好適である。
【0109】
また、レーザ装置1において、第3比および第4比は、周波数フィルタ63aの特性が反映された第1比および周波数フィルタ64aの特性が反映された第2比の両方の情報を含んでいる。このことは、ADC31,32,33が変換したデジタル信号において、第1比および第2比のどちらかの電圧値が、周波数に対して1bitでも変化していれば、その変化は検出可能であることを意味している。すなわち、仮に横ずれなどによって目標値やモニタ値が不感帯に入ったり、位相ずれφが0またはπに近かったりする場合でも、モニタ値の変化の検出が可能であるため、周波数制御を実行できることを意味する。
【0110】
また、レーザ装置1では、第1比または第2比を、第1強度、第2強度、または第3強度に補正係数を適用して算出しているが、目標値取得部353が目標周波数から目標値を取得する際に補正係数を適用してもよい。この補正係数は、実験等によって予め取得され記憶部36に記憶されているものであり、レーザ装置1の動作条件や、温度センサ8または第2の温度センサが検出した温度に応じて設定することができる。また、目標周波数から目標値を取得する際に、FFTとIFFTとを用いて正弦関数以外から正弦関数に変換する手法と同様の手法を用いて、目標周波数から目標値を取得してもよい。
【0111】
また、レーザ装置1では、第3比や第4比を算出するための和や差の演算を演算部35のデジタル演算で行っているが、アナログ回路で和や差の演算を行ってもよい。デジタル演算を用いれば使用素子数や回路規模を削減でき、かつ低コスト化が実現される。また、アナログ回路を用いれば、デジタル化の際の量子化による情報の欠損の発生を防止できる。
【0112】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 レーザ装置
2 レーザ部
3 制御部
4 光源部
5 半導体光増幅器
6 平面光波回路
7 光検出部
8 温度センサ
9 温度制御器
10 モニタ部
31、32、33、34 ADC
35 演算部
36 記憶部
37 電流源
41 レーザ本体部
42 変更部
43 第1の導波路部
44 第2の導波路部
44a 光導波層
45 n側電極
61 光分岐部
62、63、64 光導波路
63a、64a 周波数フィルタ
91 設置面
351 目標周波数設定部
352 弁別カーブ選択部
353 目標値取得部
354 モニタ値算出部
355 差分取得部
356 PID制御部
357 DBR/RING電力設定部
421 DBRヒータ
422 RINGヒータ
423 Phaseヒータ
431 導波路部
431a 利得部
431b 回折格子層
432 半導体積層部
433 p側電極
441a 導波路
442、443 アーム部
444 リング状導波路
445 位相調整部
Ar1 第1の領域
Ar2 第2の領域
B1 基部
C 光共振器
C1 第1周波数弁別カーブ
C2 第2周波数弁別カーブ
C3 第3周波数弁別カーブ
C4 第4周波数弁別カーブ
C5 第5周波数弁別カーブ
C6 第6周波数弁別カーブ
C5A、C5B 周波数弁別カーブ
C11、C21、C31、C41、C51、C61、C1F、C1AF、C1BF、C5F、C5AF、C5BF 領域
L1、L2、L3、L4、L5、L6 レーザ光
M 反射ミラー
M1、M2、M3、M4 線
RF1 リング共振器フィルタ
図1
図2
図3
図4
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図8
図9