(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】熱輸送デバイス
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20240322BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
F28D15/04 B
F28D15/02 101H
(21)【出願番号】P 2020098036
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上久保 将大
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070593(JP,A)
【文献】実開昭56-149290(JP,U)
【文献】特開2005-180907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内部に作動流体を有しており、
前記作動流体を蒸発させる蒸発部と、
前記蒸発部から離隔した位置に配設され、前記作動流体を凝縮させる凝縮部と、
前記蒸発部と前記凝縮部との間に配設される中間部と
を設けてなる熱輸送デバイスにおいて、
前記容器は、内周面に、前記凝縮部から前記中間部を経て前記蒸発部まで連続して延在する少なくとも1本の溝を備え、
前記溝は、
前記中間部に位置する溝の開口溝幅が、前記蒸発部もしくは前記凝縮部に位置する溝の開口溝幅より狭いか、または前記中間部に位置する溝の開口部が閉じて
おり、
前記凝縮部、前記中間部および前記蒸発部における底部が等しい幅を有し、かつ、
前記蒸発部と前記凝縮部に位置する溝部分の幅は、溝深さ方向の全体において等しい、熱輸送デバイス。
【請求項2】
前記中間部に位置する溝部分の開口位置で測定したときの開口溝幅は、0μm以上300μm以下の範囲である、請求項1に記載の熱輸送デバイス。
【請求項3】
前記中間部に位置する溝部分の幅は、前記開口位置から溝深さ方向に向かって広がるように構成される、請求項1または2に記載の熱輸送デバイス。
【請求項4】
前記凝縮部から前記中間部を経て前記蒸発部まで連続して延在する溝部分の溝深さは、100μm以上2000μm以下の範囲である、請求項1から3のいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【請求項5】
前記中間部に位置する溝部分は、前記容器の横断面で見て、開口溝幅に対する溝深さの比が0.5以上50以下の範囲である、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【請求項6】
前記溝は、前記蒸発部に位置する溝部分の内面に、多孔質層が形成されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1本の溝は、複数本の溝であり、前記複数本の溝は、前記容器の表面に、互いに間隔をおいて平行に並列配置され、前記間隔は、200μm以上1000μm以下の範囲である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【請求項8】
前記容器は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄合金、チタンまたはチタン合金からなる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【請求項9】
前記容器は、端部で密封されている2枚の金属シートによって内部空間が構成され、
ベーパーチャンバとして用いられる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【請求項10】
前記容器は、端部で密封されている管状容器によって内部空間が構成され、
ヒートパイプとして用いられる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱輸送デバイスに関し、より具体的には、凝縮によって液相の作動流体に相変化した作動流体を、気相の作動流体への相変化が行われる蒸発部に確実に運搬する熱輸送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化に伴い、電子機器内部には、電気・電子部品等の発熱体(以下、単に「発熱体」という場合がある。)が高密度に搭載され、また、発熱体の発熱量が増大化する傾向がある。発熱体の温度が、所定の許容温度を超えて上昇すると、発熱体が誤作動等を起こす原因となることから、発熱体の温度は、常に許容温度以下に維持し続けることが必要である。そのため、電子機器内部には、通常、発熱体が有する熱を外部に輸送するための熱輸送デバイスが搭載されている。このような熱輸送デバイスとしては、例えば、液相の作動流体を蒸発させて気相の作動流体に相変化させる蒸発部と、気相の作動流体を凝縮させて液相の作動流体に相変化させる凝縮部とを備え、作動流体を相変化させることによって潜熱(気化熱)を外部に輸送する、ベーパーチャンバやヒートパイプが知られている。
【0003】
電子機器を構成する電気・電子部品等の発熱体では、上述したように発熱量が増大化する傾向があることから、熱輸送デバイスの熱輸送性能をさらに向上させることが要求されている。熱輸送デバイスの熱輸送性能をさらに向上させるには、熱輸送デバイスの内部における作動流体の循環を円滑化することが有用である。
【0004】
熱輸送デバイスの内部における作動流体の循環を円滑化するための手段として、例えば、特許文献1には、管体の内壁にグルーブを形成し、このグルーブの内側に密着するように、毛細管力を生じさせる微細な繊維からなる繊維体を装填した熱輸送デバイス(冷却器)が記載されている。この熱輸送デバイスでは、管体の内壁に形成したグルーブの内側に繊維体を装填することで、グルーブの毛細管力に加えて、繊維体に含まれる繊維によって強い毛細管力が発揮されるため、重力による影響を受けずに作動液を確実に移動させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の熱輸送デバイスは、繊維体に液相の作動流体が染み込むため、蒸発部と凝縮部との間に位置する中間部では、気相の作動流体と液相の作動流体が互いに逆方向の流体流れを、同じ内部空間で形成している。
【0007】
そのため、液相の作動流体が気相の作動流体とぶつかり合って流体の流れに乱れが生じやすく、結果として、所期したほどの熱輸送効率が得られないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、熱輸送性能が高められた熱輸送デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)容器の内部に作動流体を有しており、前記作動流体を蒸発させる蒸発部と、前記蒸発部から離隔した位置に配設され、前記作動流体を凝縮させる凝縮部と、前記蒸発部と前記凝縮部との間に配設される中間部とを設けてなる熱輸送デバイスにおいて、前記容器は、内周面に、前記凝縮部から前記中間部を経て前記蒸発部まで連続して延在する少なくとも1本の溝を備え、前記溝は、前記中間部に位置する溝の開口溝幅が、前記蒸発部もしくは前記凝縮部に位置する溝の開口溝幅より狭いか、または前記中間部に位置する溝の開口部が閉じている、熱輸送デバイス。
(2)前記中間部に位置する溝部分の開口位置で測定したときの開口溝幅は、0μm以上300μm以下の範囲である、上記(1)に記載の熱輸送デバイス。
(3)前記中間部に位置する溝部分の幅は、前記開口位置から溝深さ方向に向かって広がるように構成される、上記(1)または(2)に記載の熱輸送デバイス。
(4)前記凝縮部から前記中間部を経て前記蒸発部まで連続して延在する溝部分の溝深さは、100μm以上2000μm以下の範囲である、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
(5)前記中間部に位置する溝部分は、前記容器の横断面で見て、開口溝幅に対する溝深さの比が0.5以上50以下の範囲である、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
(6)前記溝は、前記蒸発部に位置する溝部分の内面に、多孔質層が形成されている、上記(1)から(5)までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
(7)前記少なくとも1本の溝は、複数本の溝であり、前記複数本の溝は、前記容器の表面に、互いに間隔をおいて平行に並列配置され、前記間隔は、200μm以上1000μm以下の範囲である、上記(1)から(6)までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
(8)前記容器は、銅または銅合金からなる、上記(1)から(7)までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
(9)前記容器は、端部で密封されている2枚の金属シートによって内部空間が構成され、ベーパーチャンバとして用いられる、上記(1)から(8)までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
(10)前記容器は、端部で密封されている管状容器によって内部空間が構成され、ヒートパイプとして用いられる、上記(1)から(8)までのいずれか1項に記載の熱輸送デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱輸送性能が高められた熱輸送デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】
図1Aは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した平面図である。
【
図1B】
図1Bは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した図であって、
図1AのI
A-I
A線上で切断したときの断面図である。
【
図1C】
図1Cは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した図であって、
図1AのI
B-I
B線上で切断したときの断面図である。
【
図1D】
図1Dは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した図であって、
図1AのI
C-I
C線上で切断したときの断面図である。
【
図2】
図2は、
図1A~
図1Cのベーパーチャンバで生じる作動流体の流れを説明するための、熱輸送デバイスの内部構造が分かるように透視して示した平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの変形例について内部構造を示した図であって、
図3(a)が平面図、
図3(b)が
図3(a)のII
A-II
A線上で切断したときの断面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態の熱輸送デバイスであるヒートパイプの内部構造を示した図であって、
図4(a)が縦断面図、
図4(b)が
図4(a)のIII
A-III
A線上で切断したときの断面図、
図4(c)が
図4(a)のIII
B-III
B線上で切断したときの断面図、
図4(d)が
図4(a)のIII
C-III
C線上で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のいくつかの実施形態の熱輸送デバイスについて、以下で説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1Aは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した平面図である。
図1Bは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した図であって、
図1AのI
A-I
A線上で切断したときの断面図である。
図1Cは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した図であって、
図1AのI
B-I
B線上で切断したときの断面図である。
図1Dは、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの内部構造を示した図であって、
図1AのI
C-I
C線上で切断したときの断面図である。
図2は、
図1A~
図1Cのベーパーチャンバで生じる作動流体の流れを説明するための、熱輸送デバイスの平面図である。
【0014】
本発明の熱輸送デバイス1は、
図1Aに記載されるように、容器2の内部に作動流体Fを有しており、作動流体Fを蒸発させる蒸発部3と、蒸発部3から離隔した位置に配設され、作動流体Fを凝縮させる凝縮部4と、蒸発部3と凝縮部4との間に配設される中間部5とを設けてなる熱輸送デバイスである。ここで、容器2は、内周面2aに、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3まで連続して延在する少なくとも1本の溝6を備え、溝6は、容器2の横断面で見て、中間部5に位置する溝の開口溝幅w
1が、蒸発部3もしく凝縮部4に位置する溝の開口溝幅より狭いか、または中間部5に位置する溝の開口部が閉じている。
【0015】
これにより、
図2に記載されるように、中間部5では、気相の作動流体F(g)の流体流れと、液相の作動流体F(L)の流体流れが、互いに逆向きとなってぶつかる箇所であるが、本実施形態では、開口溝幅w
1が相対的に狭く、または開口部が閉じている溝6の部分に限られるようになることで、気相の作動流体F(g)と液相の作動流体F(L)の接触面積が小さくなる。そのため、これらの接触する部分における、気相の作動流体F(g)が液相の作動流体F(L)によって冷却されることによって生じていた液相への相変化を低減して、気相の作動流体F(g)の相変化による熱輸送性能の低下を抑えることができる。加えて、本発明の熱輸送デバイス1は、板材にレーザ加工を行って溝6を形成した後にプレス加工を施すだけで、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w
1を狭く構成することが可能なため、より少ない工数で熱輸送デバイス1を製造することができる。したがって、より少ない工数で製造することができ、かつ熱輸送性能が高められた熱輸送デバイスを提供することができる。
【0016】
なお、作動流体Fは、熱輸送デバイス1においては、液相状態と気相状態に相変化して存在する。そのため、以下では、説明の便宜上、液相の作動流体をF(L)、気相の作動流体をF(g)と区別した符号を付す場合がある。
【0017】
(熱輸送デバイス)
熱輸送デバイス1は、容器2の内部空間Sに封入された作動流体Fを通じて、熱を輸送することができる構成を有し、例えばベーパーチャンバやヒートパイプ、熱交換器のような種々の伝熱装置に用いることができる。特に、本実施形態に係る熱輸送デバイス1は、
図1Aに示すように、ベーパーチャンバとして用いられる。
【0018】
(容器)
熱輸送デバイス1に用いられる容器2は、内部に作動流体Fを有する。より具体的には、容器2は、作動流体Fが封入される内部空間Sを有している。特に、本実施形態では、容器2は、端部Tで密封されている2枚の金属シートによって内部空間Sが構成される。
【0019】
ここで、2枚の金属シートは、一方が伝熱部材21を、他方が蓋体22をそれぞれ構成し、伝熱部材21の上面と蓋体22の下面とが、容器2の端部Tで密封されるように構成される。伝熱部材21と蓋体22は、同じ構造を有していてもよい。これらが同じ構造を有する場合、伝熱部材21と蓋体22のうち、下側にあるものが伝熱部材21となり、上側にあるものが蓋体22となる。
【0020】
熱輸送デバイス1が設けられている容器2の内部空間Sは、外部環境に対して密閉された空間であり、脱気処理により減圧されている。これにより、容器2からの液相の作動流体F(L)や気相の作動流体F(g)の漏洩を防ぐとともに、内部空間Sの圧力を調整して、所望の動作温度で動作するように構成されている。
【0021】
容器2の平面形状は、特に限定する必要はなく、
図1に示すような矩形状の他、円形、三角形、多角形などの種々の形状が挙げられ、特にベーパーチャンバが取り付けられる部分の形状に対応させた形状にすることが好ましい。容器2の厚さは、特に限定されないが、例えば0.1mm以上2.0mm以下の範囲であることが好ましい。
【0022】
容器2を構成する材料としては、特に限定されず、例えば熱伝導性材料を挙げることができる。特に、高い熱伝導性を得る観点では、容器2は、金属または合金によって構成されることが好ましく、その一例として、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、鉄合金(例えばステンレス鋼)、チタン、チタン合金などを挙げることができる。その中でも、特に高い熱伝導性を得られる観点では、容器2は、銅または銅合金によって構成されることが好ましい。
【0023】
容器2に封入される作動流体Fとしては、特に限定されず、広汎な材料が使用でき、例えば、電気絶縁性の冷媒を挙げることができる。具体例としては、例えば、水、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコール、およびこれらの混合物などを挙げることができる。これらの作動流体Fのうち、電気絶縁性の点から、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコールが好ましく、フルオロカーボン類が特に好ましい。
【0024】
容器2には、作動流体Fを蒸発させる蒸発部3と、蒸発部3から離隔した位置に配設され、作動流体Fを凝縮させる凝縮部4と、蒸発部3と凝縮部4との間に配設される中間部5とを設ける。より具体的には、液相の作動流体F(L)を蒸発させて気相の作動流体F(g)に相変化させる蒸発部3と、蒸発部3から離隔した位置に配設され、気相の作動流体F(g)を凝縮させて液相の作動流体F(L)に相変化させる凝縮部4と、蒸発部3と凝縮部4との間に配設される中間部5とを設ける。
【0025】
このうち、蒸発部3は、容器2のうち、発熱体7の取付位置Pに対応する位置に形成され、例えば
図1Aの熱輸送デバイス1では、容器2の一端側部分に形成されている。蒸発部3は、熱的に接続された発熱体7から受熱(吸熱)する機能を有している。具体的には、
図2に記載されるように、発熱体7からの熱を、容器2の内部空間Sに封入された液相の作動流体F(L)に伝えることで液相の作動流体F(L)を加熱および蒸発させて、気相の作動流体F(g)に相変化させることで、蒸発潜熱として発熱体7から受けた熱を吸収する。
【0026】
また、凝縮部4は、蒸発部3から離隔した位置に配設されており、例えば
図1Aの熱輸送デバイス1では、容器2の他端側部分に配設される。この凝縮部4は、蒸発部3で相変化して輸送されてきた気相の作動流体F(g)を放熱する機能を有している。具体的には、凝縮部4は、
図2に記載されるように、気相の作動流体F(g)を凝縮させて液相の作動流体F(L)に相変化させ、それにより凝縮潜熱として輸送された作動流体F(g)の熱を容器2の外部に放出する。他方で、凝縮部4において生じる液相の作動流体F(L)は、後述する溝6に沿って流れ、中間部5を経て蒸発部3に戻る。蒸発部3に戻った液相の作動流体F(L)は、発熱体7から熱を吸収するのに再度用いられる。
【0027】
また、中間部5は、蒸発部3と凝縮部4との間に配設されており、蒸発部3から凝縮部4に向かう気相の作動流体F(g)と、凝縮部4から蒸発部3に向かう液相の作動流体F(L)とが、互いに逆方向の流体流れを形成するように構成される。中間部5では、液相の作動流体F(L)が溝6に沿って蒸発部3に供給されるとともに、気相の作動流体F(g)が溝6の上にある空隙を通って凝縮部4に供給される。
【0028】
(溝)
本発明の熱輸送デバイス1は、容器2の内周面2aに、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3まで連続して延在する、少なくとも1本の溝6を備える。ここで、溝6は、上述の2枚の金属シートのうち、少なくとも伝熱部材21に設けられる。
【0029】
溝6は、その内部を液体の作動流体F(L)が流通するように構成される。これにより、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3に至る、溝6に沿った液体の作動流体F(L)の流れが形成されるため、凝縮部4で凝縮した液体の作動流体F(L)を、速やかに蒸発部3に供給することができる。
【0030】
溝6の形状は、容器2の横断面で見て、中間部5に位置する溝の開口溝幅w
1が、蒸発部3に位置する溝の開口溝幅w
2や、凝縮部4に位置する溝の開口溝幅w
3より狭くなるように構成される。より具体的には、
図1Bに示すような、中間部5を横切る容器2の横断面で見たときの、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w
1が、
図1Cに示される蒸発部3を横切る容器2の横断面で見たときの、蒸発部3に位置する溝部分の開口溝幅w
2や、
図1Dに示される凝縮部4を横切る容器2の横断面で見たときの、凝縮部4に位置する溝部分の開口溝幅w
3よりも狭いことが好ましい。これにより、中間部5では、気相の作動流体F(g)と液相の作動流体F(L)の接触面積が小さくなる。そのため、これらの接触する部分における、気相の作動流体F(g)が液相の作動流体F(L)によって冷却されることによって生じていた液相への相変化を低減して、気相の作動流体F(g)の相変化による熱輸送性能の低下を抑えることができる。加えて、中間部5では凝縮部4より大きな毛細管力が液相の作動流体F(L)に作用することで、凝縮部4から中間部5に液相の作動流体F(L)が引き寄せられるため、作動流体Fの還流を促進することができる。
【0031】
ここで、溝6のうち、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w1の大きさは、開口位置6a、6a’で測定したときの開口溝幅とすることができる。この開口溝幅w1の大きさは、0μm以上300μm以下の範囲にすることが好ましく、0μm以上100μm以下の範囲にすることがより好ましい。
【0032】
また、溝6のうち、中間部5に位置する溝部分の幅は、開口位置6a、6a’から溝深さ方向(
図1BのZ方向)に向かって広がるように構成されることが好ましい。これにより、溝部分の開口溝幅w
1を狭めながらも、より多くの液相の作動流体F(L)を溝6に流通させることが可能になるため、中間部5における気相の作動流体F(g)の液相への相変化をより起こり難くすることができる。
【0033】
なお、溝6のうち、蒸発部3と凝縮部4に位置する溝部分の幅は、蒸発部3における液相の作動流体F(L)の蒸発や、凝縮部4における液相の作動流体F(L)の溝6への回収を容易にするため、溝深さ方向(
図1BのZ方向)の全体において等しいことが好ましい。
【0034】
他方で、溝6のうち、蒸発部3に位置する溝部分の開口溝幅w2は、開口位置6b、6b’で測定したときの開口溝幅とすることができ、凝縮部4に位置する溝部分の開口溝幅w3は、開口位置6c、6c’で測定したときの開口溝幅とすることができる。これら開口溝幅w2、w3の大きさは、50μm以上500μm以下の範囲にすることが好ましく、100μm以上400μm以下の範囲にすることがより好ましい。
【0035】
溝6の深さdは、溝6が開口している場合と、開口していない場合とも、内周面2aのうち溝6が形成されていない部分から、溝の底部までの距離をいう。作動流体Fの圧力損失を低減し、溝6を介して作動流体Fを流通し易くできる観点では、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3まで連続して延在する溝部分における溝6の深さdは、蒸発部3、中間部5および凝縮部4に位置する溝部分の各々において、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることがより好ましい。他方で、溝6の深さdの上限は、蒸発部3、中間部5および凝縮部4に位置する溝部分の各々において、熱輸送デバイス1のスペースを必要以上に大きくしない観点から、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。特に、本実施形態のように、熱輸送デバイス1がベーパーチャンバのような薄型のデバイスであるときは、溝6の深さdの上限は、蒸発部3、中間部5および凝縮部4に位置する溝部分の各々において、400μm以下であってもよい。
【0036】
特に、溝6のうち中間部5に位置する溝部分は、
図1Bに示すような中間部5を横切る容器2の横断面で見たときの、開口溝幅w
1に対する溝深さd
1の比が、0.5以上50以下の範囲であることが好ましく、1以上20以下の範囲であることがより好ましい。開口溝幅w
1に対する溝深さd
1の比をこの範囲内にすることで、作動流体Fの圧力損失が低減されるため、溝6を介した凝縮部4から蒸発部3への作動流体Fの流通を、よりスムーズにすることができる。また、開口溝幅w
1に対する溝深さd
1の比が0.5以上10以下の範囲内にある溝6は、レーザ加工を施して溝6を形成した後、プレス成形を行って中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w
1を狭くすることで、容易に形成することができる。
【0037】
溝6は、より多くの液体の作動流体F(L)を効率よく蒸発部3に戻すため、複数本の溝によって構成されることが好ましい。本実施形態では、
図1Aに示すように、溝6である複数本の溝が、容器2の内周面2aに、互いに間隔をおいて平行に並列配置される。これにより、液体の作動流体F(L)が、平行に並列配置された溝6の各々を流れることで、熱輸送デバイス1の幅方向(
図1AのY方向)に沿ったより広い範囲で液体の作動流体F(L)を流通することができるため、蒸発部3における液体の作動流体F(L)の偏在を軽減してドライアウトを起こり難くすることができる。
【0038】
容器2の内周面2aに配置される溝6のうち、蒸発部3または凝縮部4に位置する溝部分における、幅方向(
図1AのY方向)に沿った間隔vは、200μm以上1000μm以下の範囲であることが好ましい。特に、溝6の間隔vを400μm以上1000μm以下の範囲にすることで、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅が狭くなる形状を、プレス成形によって容易に形成することができる。
【0039】
さらに、溝6は、少なくとも蒸発部3に位置する溝部分の内面に、多孔質層8が形成されていることが好ましい。これにより、蒸発部3に位置する溝部分の内面における表面積が増加するため、蒸発部3における作動流体F1の液相から気相への相変化を行い易くすることができる。また、多孔質層8の毛細管力によって、液体の作動流体F(L)が、凝縮部4や中間部5から多孔質層8に引き寄せられるため、作動流体Fの還流を促進させることができる。
【0040】
このような溝6を備えた熱輸送デバイス1を製造する方法としては、特に限定されず、例えば容器2のうち少なくとも伝熱部材21の、内周面2aとなる部分に対して、レーザ加工、切削加工、押出成形加工、エッチング加工などを用いることができる。その中でも、より少ない工数で溝6を形成できる観点では、容器2の内周面2aにレーザ加工を施して溝6の原形を形成した後、プレス成形を行って中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w1を狭くすることで溝6を形成する工程を有することが好ましい。また、レーザ加工によって溝6を形成する際に、少なくとも蒸発部3に位置する溝部分の内面を、レーザ加工によって、微粉を溝内部に生成するとともに局所的に加熱することで、蒸発部3に位置する溝部分の内面に多孔質層8を形成することも可能である。
【0041】
容器2の少なくとも伝熱部材21に溝6を形成した後、容器2の端部Tのうち封入口となる部分を残して、伝熱部材21の端部T1と蓋体22の端部T2とを接触させて封止し、封入口から作動流体Fを注入する。作動流体Fを注入した後、容器2の内部を、加熱脱気、真空脱気などの脱気処理をして減圧状態にする。その後、封入口を封止することで熱輸送デバイス1を製造する。
【0042】
封止の方法は、特に限定されず、例えば、TIG溶接、抵抗溶接、圧接、はんだ付けを挙げることができる。なお、最初に行う封止(封入口となる部分以外に対する封止)は、その後に行う脱気の際に内部の気体が抜ける部分以外を封止するために行う工程であり、また、2回目の封止(封入口の封止)は、脱気の際に内部の気体が抜ける部分を封止するために行う工程である。
【0043】
(ベーパーチャンバの動作原理)
熱輸送デバイス1であるベーパーチャンバは、動作前に液相の作動流体F(L)が内部空間Sに封入され、蒸発部3に供給される。
【0044】
発熱体7が発熱して蒸発部3の温度が上昇すると、発熱体7の熱が容器2に伝達され、容器2のうち発熱体7の近傍にある蒸発部3に熱が伝達される。蒸発部3では、液相の作動流体F(L)が加熱されて温度が上昇して沸騰温度に到達し、液相の作動流体F(L)から気相の作動流体F(g)に相変化することで、気相の作動流体F(g)が内部空間Sに放出される。また、液相の作動流体F(L)から気相の作動流体F(g)への相変化によって、発熱体からの熱が蒸発潜熱として気相の作動流体F(g)に吸収される。
【0045】
蒸発部3で熱を吸収した気相の作動流体F(g)は、容器2の内部空間Sを通って凝縮部4へ流れることで、発熱体7から受けた熱が、蒸発部3から中間部5を経て凝縮部4へと輸送される。このとき、蒸発部3から凝縮部4に輸送される気相の作動流体F(g)は、中間部5の溝6の開口が狭くなっていることで、中間部5を流れる液相の作動流体F(L)との接触面積が低減されるため、中間部5での気相の作動流体F(g)の凝縮を起こり難くして、より確実に凝縮部4に熱を輸送することができる。
【0046】
その後、凝縮部4へ輸送された気相の作動流体F(g)は、凝縮部4にて、熱交換手段(図示せず)によって、液相へ相変化させられる。このとき、輸送されてきた発熱体の熱は、凝縮潜熱としてベーパーチャンバの外部に放出される。他方で、凝縮部4で熱を放出して液相に相変化した液相の作動流体F(L)が、溝6に沿って、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3に流れることで、蒸発部3と凝縮部4の間の作動流体Fの循環流れを形成することができる。
【0047】
<第2実施形態>
図3は、第1実施形態の熱輸送デバイスであるベーパーチャンバの変形例について内部構造を示した図であって、
図3(a)が平面図、
図3(b)が
図3(a)のII
A-II
A線上で切断したときの断面図である。なお、以下の説明において、上記第1実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0048】
上述の第1実施形態では、
図1Bに示すように、容器2の横断面で見て、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w
1が、他の溝部分の開口溝幅より狭い構成を示したが、例えば
図3(a)、(b)に示される熱輸送デバイス1Aのように、溝6Aのうち、中間部5に位置する溝部分の開口部が閉じていてもよい。特に、中間部5に位置する溝部分の開口が閉じているとき、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w
1は0である。
【0049】
本発明の熱輸送デバイスでは、このように中間部5に位置する溝部分の開口部が閉じていることが特に好ましい。これにより、中間部5では、気相の作動流体F(g)と液相の作動流体F(L)がより一層接触し難くなるため、気相の作動流体F(g)の液相の作動流体F(L)との接触による液相への相変化を起こり難くして、熱輸送デバイス1Aの熱輸送性能の低下をより一層抑えることができる。
【0050】
<第3実施形態>
図4は、第3実施形態の熱輸送デバイスであるヒートパイプの内部構造を示した図であって、
図4(a)が縦断面図、
図4(b)が
図4(a)のIII
A-III
A線上で切断したときの断面図、
図4(c)が
図4(a)のIII
B-III
B線上で切断したときの断面図、
図4(d)が
図4(a)のIII
C-III
C線上で切断したときの断面図である。なお、
図4(a)では、容器2Bの内周面2aのうち溝6が占める部分を分かりやすくするため、溝6の内部は黒塗りで表示した。以下の説明において、上記第1実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略または簡略にし、主に相違点について説明する。
【0051】
第3実施形態に係る熱輸送デバイス1Bは、
図4(a)に記載されるように、作動流体Fが封入された内部空間Sを有する管状の容器2Bに、管状の容器2Bの延在方向に沿って、蒸発部3、中間部5および凝縮部4を備える。また、この熱輸送デバイス1Bは、容器2の内周面2aに、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3まで連続して延在する、少なくとも1本の溝6を備える。
【0052】
(容器)
本実施形態の熱輸送デバイス1Bは、容器2Bが、端部T3、T4で密封されている管状容器によって内部空間Sが構成され、ヒートパイプとして用いられる。ここで、熱輸送デバイス1Bが設けられている容器2Bの内部空間Sは、外部環境に対して密閉された空間であり、脱気処理により減圧されている。本実施形態の熱輸送デバイス1であるヒートパイプは、ベーパーチャンバと同様の動作原理によって動作するものであるが、容器2Bが管状容器であり、それにより相対的に広い内部空間Sを有する点で、ベーパーチャンバの容器と異なる。
【0053】
容器2Bの長手方向Lについての延在形状は、
図4(a)に示す直線状の他、曲部を有する形状などが挙げられ、特に限定されない。容器2Bの長手方向Lに対して直交方向に切断したときの外面輪郭形状は、
図4(c)に示す略円形状の他、扁平形状、四角形などの多角形状などが挙げられ、特に限定されない。容器2Bの外径寸法は、特に限定されないが、例えば、容器2Bが略円形状の外面輪郭形状である場合には、5mm以上20mm以下の範囲であることが好ましい。
【0054】
容器2Bには、液相の作動流体F(L)を蒸発させて気相の作動流体F(g)に相変化させる蒸発部3と、蒸発部3から離隔した位置に配設され、気相の作動流体F(g)を凝縮させて液相の作動流体F(L)に相変化させる凝縮部4と、蒸発部3と凝縮部4との間に配設される中間部5を設ける。
【0055】
(溝)
本実施形態の熱輸送デバイス1Bは、容器2Bの内周面2aには、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3まで連続して延在する溝6を備える。そして、溝6のうち少なくとも1本の内部を、液体の作動流体F(L)が流通するように構成される。
【0056】
溝6の形状は、容器2Bの横断面で見て、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w
1が、他の溝部分の開口溝幅より狭いか、または中間部5に位置する溝部分の開口部が閉じるように構成される。より具体的には、
図4(b)に示すような、中間部5を横切る容器2Bの横断面で見たときの、中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w
1が、
図4(c)に示される蒸発部3を横切る容器2Bの横断面で見たときの、蒸発部3に位置する溝部分の開口溝幅w
2や、
図4(d)に示される凝縮部4を横切る容器2Bの横断面で見たときの、凝縮部4に位置する溝部分の開口溝幅w
3よりも狭いことが好ましい。より好ましくは、中間部5に位置する溝部分の開口部が閉じるように構成される。これにより、中間部5では、気相の作動流体F(g)と液相の作動流体F(L)の接触面積が小さくなる。そのため、これらの接触する部分における、気相の作動流体F(g)が液相の作動流体F(L)によって冷却されることによって生じていた液相への相変化を低減して、気相の作動流体F(g)の相変化による熱輸送性能の低下を抑えることができる。
【0057】
溝6は、
図4に記載されるように複数設けられていてもよい。このとき、溝6のうち少なくとも1本の内部を、液体の作動流体F(L)が流通していればよく、液体の作動流体F(L)が流通しない溝があってもよい。
【0058】
このような溝6を備えた熱輸送デバイス1Bを製造する方法としては、特に限定されず、例えば容器2Bの内周面2aに対して、レーザ加工、切削加工、押出成形加工、エッチング加工などを用いることができる。その中でも、より少ない工数で溝6を形成できる観点では、容器2の材料となる平板の一方の面にレーザ加工を施して溝6の原形を形成した後で、プレス成形を行って中間部5に位置する溝部分の開口溝幅w1を狭くすることで溝6を形成する工程を有することが好ましい。平板に溝6を形成した後、平板を丸めて管状の容器2Bを形成し、管状の容器2Bのうち封入口となる部分(端部T3またはT4)を残して封止し、封入口から作動流体Fを注入する。作動流体Fを注入した後、容器2Bの内部を、加熱脱気、真空脱気などの脱気処理をして減圧状態にする。その後、封入口を封止することで熱輸送デバイス1Bを製造する。
【0059】
(ヒートパイプの動作原理)
次に、熱輸送デバイス1であるヒートパイプの熱輸送のメカニズムを、
図4に示すヒートパイプを用いて以下で説明する。
【0060】
まず、液相の作動流体F(L)が、容器2の内周面2aに長手方向に向かって延在する溝6に沿って、蒸発部3に供給される。
【0061】
発熱体7が発熱して蒸発部3の温度が上昇すると、発熱体7の熱が容器2Bに伝達され、容器2Bのうち発熱体7の近傍にある蒸発部3に熱が伝達される。蒸発部3では、液相の作動流体F(L)が加熱されて温度が上昇して沸騰温度に到達し、液相の作動流体F(L)から気相の作動流体F(g)に相変化することで、気相の作動流体F(g)が内部空間Sに放出される。また、液相の作動流体F(L)から気相の作動流体F(g)への相変化によって、発熱体からの熱が蒸発潜熱として気相の作動流体F(g)に吸収される。
【0062】
蒸発部3で熱を吸収した気相の作動流体F(g)は、容器2Bの内部空間Sを通って凝縮部4へ流れることで、発熱体7から受けた熱が、蒸発部3から中間部5を経て凝縮部4へと輸送される。このとき、蒸発部3から凝縮部4に輸送される気相の作動流体F(g)は、中間部5の溝6の開口が狭くなっていることで、中間部5を流れる液相の作動流体F(L)との接触面積が低減されるため、中間部5での気相の作動流体F(g)の凝縮を起こり難くして、より確実に凝縮部4まで熱を運ぶことができる。
【0063】
その後、凝縮部4へ輸送された気相の作動流体F(g)は、凝縮部4で液相へ相変化させられる。このとき、輸送されてきた発熱体の熱は、凝縮潜熱としてヒートパイプの外部に放出される。他方で、凝縮部4で熱を放出して液相に相変化した液相の作動流体F(L)は、少なくとも1本の溝6に沿って、凝縮部4から中間部5を経て蒸発部3に流れることで、蒸発部3と凝縮部4の間の作動流体Fの循環流れを形成することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B 熱輸送デバイス
2、2B 容器
2a 容器の内周面
21 伝熱部材
22 蓋体
3 蒸発部
4 凝縮部
5 中間部
6、6A 溝
7 発熱体
8 多孔質層
F 作動流体
F(L) 液相の作動流体
F(g) 気相の作動流体
S 内部空間
T 容器の端部
T1 伝熱部材の端部
T2 蓋体の端部
T3、T4 管状容器の端部