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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】ポンプ用電動機およびポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/167 20060101AFI20240322BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20240322BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20240322BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20240322BHJP
   F16C 33/16 20060101ALI20240322BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H02K5/167 B
F16C17/02 Z
F16C17/04 A
F16C17/04 B
F16C33/20 A
F16C33/16
F04D29/046 C
F04D29/046 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020166834
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059233
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】楯石 修
(72)【発明者】
【氏名】平本 和也
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102479(JP,A)
【文献】特開2017-125449(JP,A)
【文献】特開2018-204610(JP,A)
【文献】特開2003-184783(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0267435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/167
F16C 17/02
F16C 17/04
F16C 33/20
F16C 33/16
F04D 29/046
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体が存在した状態で運転するように構成された、ポンプ用の電動機であって、
回転軸と、
前記回転軸に固定されたモータロータと、
前記モータロータの周囲に配置されたモータステータと、
前記モータロータおよび前記モータステータを囲むモータハウジングと、
前記ポンプの吐出し側から吸込み側に向かう第1の方向に作用するスラスト荷重を支持するスラスト軸受と、
前記第1の方向とは反対の第2の方向に作用するスラスト荷重を支持する逆スラスト支持部材を備えており、
前記逆スラスト支持部材は、溝が形成された荷重支持面を有しており、
前記逆スラスト支持部材は、前記回転軸に支持されており、かつ前記回転軸に対して相対的に回転可能である、電動機。
【請求項2】
前記逆スラスト支持部材は、前記モータロータを挟んで前記スラスト軸受とは反対側に配置されている、請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記逆スラスト支持部材は、充填材とポリテトラフルオロエチレンとの混合体から構成されている、請求項1または2に記載の電動機。
【請求項4】
前記荷重支持面は、第1荷重支持面と、前記第1荷重支持面とは反対側にある第2荷重支持面であり、
前記溝は、前記第1荷重支持面に形成された第1溝と、前記第2荷重支持面に形成された第2溝である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電動機。
【請求項5】
前記逆スラスト支持部材は、前記回転軸の外周面を囲む内周面と、前記内周面に形成され、かつ前記第1溝および前記第2溝に連通する複数の流体流路をさらに備えている、請求項に記載の電動機。
【請求項6】
前記電動機は、前記回転軸のラジアル荷重を支持するラジアル軸受をさらに備えており、
前記第1荷重支持面は、前記ラジアル軸受に対向している、請求項に記載の電動機。
【請求項7】
羽根車を有するポンプと、
前記ポンプを駆動する請求項1乃至のいずれか一項に記載の電動機を備えている、ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの駆動に使用される電動機に関し、特に回転軸およびモータロータを含む回転体が液体に接触した状態で該回転体が回転するように構成された電動機に関する。また、本発明は、そのような電動機を備えたポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
深井戸用ポンプ装置など、液体の移送に用いられるポンプ装置は、1つまたは複数の羽根車を有するポンプと、羽根車を回転させる駆動源として電動機を備えている。ポンプ装置の運転中、羽根車の回転によって昇圧された液体の圧力は、羽根車に作用する。その結果、羽根車の吸込み側と吐出し側との差圧に起因してスラスト荷重が発生する。このスラスト荷重は、ポンプの吸込み側に向かう方向に作用する。ポンプ装置は、通常、このスラスト荷重を支持するためのスラスト軸受を備えている。
【0003】
ポンプ装置の運転中は、上述したように、ポンプの吸込み側に向かう方向にスラスト荷重が発生するが、ポンプ装置の起動時や揚程が低いとき、または大流量で運転するとき、ポンプの吐出し側に向かう方向にスラスト荷重(以下、逆スラスト荷重という)が発生することがある。この逆スラスト荷重は、一時的に発生する力であるため、簡易的なシート状の支持部材を使用して逆スラスト荷重を受けるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭59-121519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、揚程が低い状態または流量が大きい状態が長く続くと、逆スラスト荷重が長時間に亘って発生する。従来の支持部材は、そのような逆スラスト荷重に耐えることができなく、支持部材が破損することがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ポンプの吸込み側から吐出し側に向かう方向に作用するスラスト荷重(逆スラスト荷重)を長時間に亘って支持することができる構造を備えた電動機を提供する。また、本発明は、そのような電動機を備えたポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、内部に液体が存在した状態で運転するように構成された、ポンプ用の電動機であって、回転軸と、前記回転軸に固定されたモータロータと、前記モータロータの周囲に配置されたモータステータと、前記モータロータおよび前記モータステータを囲むモータハウジングと、前記ポンプの吐出し側から吸込み側に向かう第1の方向に作用するスラスト荷重を支持するスラスト軸受と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に作用するスラスト荷重を支持する逆スラスト支持部材を備えており、前記逆スラスト支持部材は、溝が形成された荷重支持面を有している、電動機が提供される。
【0008】
一態様では、前記逆スラスト支持部材は、前記モータハウジングに連結された静止部材に保持されている。
一態様では、前記逆スラスト支持部材は、カーボンから構成されている。
一態様では、前記逆スラスト支持部材を前記静止部材に着脱可能に固定する固定具をさらに備えている。
一態様では、前記溝は、前記荷重支持面に形成された複数の放射溝である。
一態様では、前記溝は、前記荷重支持面に形成された複数の螺旋溝である。
一態様では、前記荷重支持面は、前記スラスト軸受のスラストディスクに対向している。
一態様では、前記逆スラスト支持部材は、前記回転軸に支持されている。
一態様では、前記逆スラスト支持部材は、充填材とポリテトラフルオロエチレンとの混合体から構成されている。
一態様では、前記荷重支持面は、第1荷重支持面と、前記第1荷重支持面とは反対側にある第2荷重支持面であり、前記溝は、前記第1荷重支持面に形成された第1溝と、前記第2荷重支持面に形成された第2溝である。
一態様では、前記逆スラスト支持部材は、前記回転軸の外周面を囲む内周面と、前記内周面に形成され、かつ前記第1溝および前記第2溝に連通する複数の流体流路をさらに備えている。
一態様では、前記電動機は、前記回転軸のラジアル荷重を支持するラジアル軸受をさらに備えており、前記第1荷重支持面は、前記ラジアル軸受に対向している。
【0009】
一態様では、羽根車を有するポンプと、前記ポンプを駆動する上記電動機を備えている、ポンプ装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
溝が形成された荷重支持面を有する逆スラスト支持部材は、ポンプの吸込み側から吐出し側に向かう方向に作用する逆スラスト荷重を長時間に亘って支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ポンプ装置の一実施形態を示す図である。
図2図1に示す電動機の一実施形態の断面図である。
図3図2に示す逆スラスト支持部材をその中心軸線の方向から見た図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】逆スラスト支持部材の他の実施形態を示す図である。
図6】電動機の他の実施形態を示す拡大断面図である。
図7】電動機のさらに他の実施形態を示す拡大断面図である。
図8】電動機のさらに他の実施形態を示す拡大断面図である。
図9図8に示す逆スラスト支持部材をその中心軸線の方向から見た図である。
図10図9のB-B線断面図である。
図11図9のC-C線断面図である。
図12】電動機のさらに他の実施形態を示す拡大断面図である。
図13】電動機のさらに他の実施形態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、ポンプ装置の一実施形態を示す図である。図1に示すように、ポンプ装置は、複数の羽根車2を有するポンプ1と、ポンプ1を駆動する電動機3を備えている。ポンプ1は、連結部材4によって電動機3に連結されている。羽根車2はポンプ軸5に固定されており、羽根車2とポンプ軸5は一体に回転可能に構成されている。ポンプ軸5は、電動機3に軸カップリング6によって連結されており、電動機3によって羽根車2およびポンプ1が回転する。羽根車2は、ポンプケーシング7内に配置されている。
【0013】
ポンプケーシング7は、液体の吸込み口8と、液体の吐出し口9を有している。羽根車2が電動機3によって回転されると、液体は吸込み口8からポンプ1内に流入する。液体は羽根車2の回転に伴って昇圧される。そして、昇圧された液体は、吐出し口9から吐き出される。図1に示す実施形態では、複数の羽根車2が設けられているが、羽根車2の数は、必要とされる揚程に基づいて決定される。羽根車2の数は、図1に示す実施形態に限定されない。一実施形態では、単一の羽根車が設けられてもよい。
【0014】
図1に示すポンプ装置は、縦置きタイプであるが、斜め置き、または横置きでも使用することができる。本実施形態では、ポンプ1の吸込み口8は、電動機3と羽根車2との間に位置しており、ポンプ1の吐出し口9は、羽根車2を挟んで吸込み口8とは反対側に位置している。一実施形態では、ポンプ1の吐出し口9は、電動機3と羽根車2との間に位置し、ポンプ1の吸込み口8は、羽根車2を挟んで吐出し口9とは反対側に位置してもよい。
【0015】
図2は、図1に示す電動機3の一実施形態の断面図である。図2に示すように、電動機3は、回転軸11と、回転軸11に固定されたモータロータ15と、モータロータ15の周囲に配置されたモータステータ16と、モータロータ15およびモータステータ16を囲むモータハウジング18を備えている。回転軸11は、図1に示すポンプ軸5に連結される。モータステータ16は、図示しない電力線に接続されており、電力線を通じて電力がモータステータ16に供給される。モータロータ15は回転軸11と一体に回転可能である。
【0016】
電動機3は、回転軸11およびモータロータ15を含む回転体が液体に接触した状態で該回転体が回転するように構成されている。より具体的には、モータハウジング18内には、液体が予め封入されている。モータステータ16は、隔壁20とモータハウジング18との間に形成されている密閉空間21内に配置されており、液体はモータステータ16には接触しないようになっている。一実施形態では、電動機3は、ポリエチレンなどの耐水性樹脂で覆われた電線(耐水電線)をモータステータ16のコイルに使用した耐水構造を有してもよい。この場合は、隔壁20は設けられず、液体はモータステータ16に接触する。電動機3は、回転軸11とモータハウジング18との間の隙間を封止する軸封装置25をさらに備えている。軸封装置25は、グランドパッキン、オイルシール、メカニカルシールなどから構成されている。
【0017】
このように、本実施形態では、電動機3の全体が液密構造を有しており、モータハウジング18の内部は液体で満たされている。液体の例としては、水、不凍液などが挙げられる。一実施形態では、ポンプ1が汲み上げる対象の液体(例えば、井戸水)がモータハウジング18の内部に導入され、回転体に接触するように構成されてもよい。
【0018】
電動機3は、回転軸11のラジアル荷重を支持する複数のラジアル軸受27,28を備えている。これらラジアル軸受27,28は、軸方向においてモータロータ15の両側に配置されている。本実施形態のラジアル軸受27,28は、回転軸11を回転可能に支持するように構成された滑り軸受である。ラジアル軸受27,28は、モータハウジング18に支持されたラジアル軸受保持部31,32によってそれぞれ保持されている。
【0019】
電動機3は、ポンプ1の吐出し側から吸込み側に向かう第1の方向に作用するスラスト荷重を支持するスラスト軸受41と、第1の方向とは反対の第2の方向に作用するスラスト荷重を支持する逆スラスト支持部材46をさらに備えている。スラスト軸受41は、回転軸11に連結されたスラストディスク42と、モータハウジング18に連結されたスラストパッド43を有している。スラストディスク42は、スラストパッド43に接触している。
【0020】
第1の方向のスラスト荷重は、ポンプ装置の運転中に、ポンプ1の羽根車2の吸込み側と吐出し側との間の差圧に起因して発生する荷重である。これに対し、第2の方向のスラスト荷重(以下、逆スラスト荷重という)は、ポンプ装置の起動時や揚程が低いとき、または大流量で運転するときに発生する荷重である。
【0021】
逆スラスト支持部材46は、軸方向においてラジアル軸受28の外側であって、かつスラスト軸受41の内側に配置されている。すなわち、逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受28とスラスト軸受41との間に位置し、かつ電動機3の反ポンプ側に位置している。逆スラスト支持部材46は、逆スラスト荷重を受けるための荷重支持面48を有している。この荷重支持面48は、スラスト軸受41のスラストディスク42の背面に対向している。
【0022】
逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受28を保持するラジアル軸受保持部32に固定されている。このラジアル軸受保持部32は、モータハウジング18に連結された静止部材である。逆スラスト支持部材46をラジアル軸受保持部(静止部材)32に固定する態様は特に限定されないが、本実施形態では、逆スラスト支持部材46は接着剤によりラジアル軸受保持部32に固定されている。また、逆スラスト支持部材46が固定される静止部材は、ラジアル軸受保持部32に限定されず、モータハウジング18に連結された他の静止部材であってもよい。
【0023】
電動機3の運転中、スラストディスク42は回転するのに対して、逆スラスト支持部材46は静止している。したがって、逆スラスト支持部材46が逆スラスト荷重を受けるとき、スラストディスク42は、逆スラスト支持部材46の荷重支持面48に摺接する。逆スラスト支持部材46がスラストディスク42とともに回転してしまうことを防止するために、逆スラスト支持部材46とラジアル軸受保持部(静止部材)32との間には、廻り止めピン51が設けられている。
【0024】
逆スラスト支持部材46は、カーボンから構成されている。カーボンは、耐摩耗性に優れている観点から使用されている。一実施形態では、逆スラスト支持部材46は、カーボンよりも耐摩耗性に優れた、充填材とポリテトラフルオロエチレンとの混合体から構成されてもよい。ただし、充填材とポリテトラフルオロエチレンとの混合体は、一般に、カーボンよりも高価であるので、荷重支持面48が逆スラスト荷重を長時間受けることができるのに十分に広いのであれば、カーボンを用いることが好ましい。逆スラスト荷重が逆スラスト支持部材46に加わる時間が短いことが想定される場合には、逆スラスト支持部材46は、砲金から構成されてもよい。モータハウジング18内に存在する上記液体は、ラジアル軸受27,28、スラスト軸受41、および逆スラスト支持部材46の潤滑剤として機能する。
【0025】
図3は、図2に示す逆スラスト支持部材46をその中心軸線の方向から見た図であり、図4は、図3のA-A線断面図である。逆スラスト支持部材46は、全体として、回転軸11を囲む環状(またはリング状)の形状を有している。逆スラスト支持部材46は、荷重支持面48に形成された複数の溝54を有している。これらの溝54は、放射状に延びている。各溝54は、逆スラスト支持部材46の内周面46aから外周面46bまで延びている。溝54は、荷重支持面48の、スラストディスク42の背面(図2参照)への貼り付きを防止し、さらに液体を荷重支持面48とスラストディスク42の背面との間に導入して荷重支持面48を潤滑させるために設けられている。図5に示すように、一実施形態では、螺旋状に延びる複数の溝54が設けられてもよい。
【0026】
図3乃至図5に示す溝54は、電動機3内の液体を荷重支持面48に導き、荷重支持面48を潤滑させることができる。したがって、逆スラスト支持部材46は、ポンプ1の吸込み側から吐出し側に向かう方向に作用する逆スラスト荷重を長時間に亘って支持することができる。
【0027】
図6は、電動機3の他の実施形態を示す拡大断面図である。図6に示す実施形態では、逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受保持部(静止部材)32に着脱可能に取り付けられている。より具体的には、接着剤に代えて、金属製の留め具60が使用されている。この留め具60は、逆スラスト支持部材46の溝54と、ラジアル軸受保持部(静止部材)32の外面の両方に係止するフック60aを有している。この留め具60のフック60aを、逆スラスト支持部材46の溝54と、ラジアル軸受保持部32の外面の両方に係止すると、逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受保持部32に取り付けられる。また、留め具60を外すと、逆スラスト支持部材46をラジアル軸受保持部32から外すことができる。図6では1つの留め具60が描かれているが、複数の留め具60によって逆スラスト支持部材46がラジアル軸受保持部32に取り付けられる。
【0028】
図7は、電動機3のさらに他の実施形態を示す拡大断面図である。図7に示す実施形態でも、逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受保持部(静止部材)32に着脱可能に取り付けられている。より具体的には、接着剤または留め具60に代えて、ねじ62が使用されている。ねじ62は、ラジアル軸受保持部(静止部材)32に形成されたねじ穴63に螺合される。さらに、ねじ62の先端は、逆スラスト支持部材46の外周面に形成された位置決め穴64内に挿入される。この実施形態では、図2に示す廻り止めピン51は設けられていない。本実施形態で使用されているねじ62は、端部に六角穴が形成されたセットねじ(またはいもねじ)であるが、ねじ62のタイプは特に限定されない。
【0029】
図7に示す実施形態によれば、ねじ62をねじ穴63に螺合し、ねじ62の先端を位置決め穴64内に挿入することで、逆スラスト支持部材46をラジアル軸受保持部32に取り付けることができる。また、ねじ62を外すと、逆スラスト支持部材46をラジアル軸受保持部32から外すことができる。図7では1つのねじ62が描かれているが、複数のねじ62によって逆スラスト支持部材46がラジアル軸受保持部32に取り付けられる。
【0030】
図8は、電動機3のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。また、図2に示す構成要素に対応する構成要素には、同一の符号が付されている。
【0031】
図8に示す電動機3は、図1に示すポンプ1よりも揚程の低いポンプに使用され、図2に示す電動機3よりも小型である。したがって、第1の方向のスラスト荷重および逆スラスト荷重も、上述した実施形態よりも小さい。図8に示すように、第1の方向のスラスト荷重を支持するためのスラスト軸受41は、モータステータ16の径方向内側に位置しており、スラスト軸受41の直径は、モータロータ15とほぼ同じである。ラジアル軸受28は、軸方向においてスラスト軸受41の外側に位置している。
【0032】
逆スラスト支持部材46は、電動機3のポンプ側に配置されている。より具体的には、逆スラスト支持部材46は、モータロータ15を挟んでスラスト軸受41とは反対側に配置されている。逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受27と、回転軸11に固定されたスラストディスク69との間に配置されている。スラストディスク69は、モータロータ15を挟んでスラスト軸受41とは反対側に配置されている。逆スラスト支持部材46は、回転軸11に支持されており、回転軸11に対して相対的に回転可能である。逆スラスト支持部材46は、第1荷重支持面48Aと、第1荷重支持面48Aとは反対側にある第2荷重支持面48Bを有している。第1荷重支持面48Aはラジアル軸受27の端面に対向し、第2荷重支持面48Bはスラストディスク69に対向している。
【0033】
図9は、図8に示す逆スラスト支持部材46をその中心軸線の方向から見た図であり、図10は、図9のB-B線断面図であり、図11は、図9のC-C線断面図である。逆スラスト支持部材46は、全体として、回転軸11を囲む環状(またはリング状)の形状を有している。逆スラスト支持部材46は、回転軸11(図8参照)の外周面に対向する内周面46aを有している。この内周面46aの直径は、回転軸11の外周面の直径よりも大きい。第1荷重支持面48Aは、逆スラスト支持部材46の一方側の面であり、第2荷重支持面48Bは、逆スラスト支持部材46の反対側の面である。
【0034】
逆スラスト支持部材46は、第1荷重支持面48Aに形成された複数の第1溝54Aと、第2荷重支持面48Bに形成された複数の第2溝54Bを有する。本実施形態では、2つの第1溝54Aが第1荷重支持面48Aに形成され、2つの第2溝54Bが第2荷重支持面48Bに形成されている。3つ以上の第1溝54Aおよび3つ以上の第2溝54Bが形成されてもよい。第1溝54Aおよび第2溝54Bは、逆スラスト支持部材46の半径方向に延びている。第1溝54Aおよび第2溝54Bの位置は、逆スラスト支持部材46の周方向において異なっている。
【0035】
逆スラスト支持部材46は、その内周面46aに形成され、かつ第1溝54Aおよび第2溝54Bに連通する複数の流体流路71をさらに備えている。流体流路71は、内周面46aに形成された溝から構成されている。各流体流路71は、逆スラスト支持部材46の中心軸心に沿って延び、第1溝54Aまたは第2溝54Bに接続されている。第1溝54Aは、流体流路71から逆スラスト支持部材46の外周面46bまで延び、第2溝54Bも、流体流路71から逆スラスト支持部材46の外周面46bまで延びている。
【0036】
第1溝54Aおよび第2溝54Bは、液体を第1荷重支持面48Aおよび第2荷重支持面48Bにそれぞれ導く役割を有し、流体流路71は、第1溝54Aおよび第2溝54B内の液体を内周面46aに導く役割を有する。液体は、第1荷重支持面48Aおよび第2荷重支持面48Bの両方に供給され、これらを潤滑することができる。
【0037】
逆スラスト支持部材46は、充填材とポリテトラフルオロエチレンとの混合体から構成されている。充填材とポリテトラフルオロエチレンとの混合体は、耐摩耗性に優れており、第1荷重支持面48Aおよび第2荷重支持面48Bが比較的小さくても、逆スラスト支持部材46は逆スラスト荷重を長時間に亘って支持することが可能である。
【0038】
図12は、電動機3のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図8に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図12に示す実施形態では、逆スラスト支持部材46は、回転軸11を囲む円筒形状を有している。逆スラスト支持部材46は、回転軸11に支持されており、回転軸11に対して相対的に回転可能である。逆スラスト支持部材46は、回転軸11に固定されてもよい。
【0039】
逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受27の端面に対向する第1荷重支持面48Aと、モータロータ15に対向する第2荷重支持面48Bを有している。第1荷重支持面48Aには、逆スラスト支持部材46の半径方向に延びる複数の溝(図示せず)が形成されている。これらの溝は、図3を参照して説明した溝54と概ね同じ形状を有している。一実施形態では、図5に示すような螺旋状の溝が設けられてもよい。溝は、第1荷重支持面48Aとラジアル軸受27の端面との間に液体を導き、第1荷重支持面48Aを潤滑することができる。第2荷重支持面48Bにも、逆スラスト支持部材46の半径方向に延びる複数の溝または螺旋状の溝が形成されてもよい。
【0040】
図13は、電動機3のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図8に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図13に示す実施形態では、逆スラスト支持部材46は、ラジアル軸受27と円筒部材74との間に配置されている。円筒部材74は、回転軸11を囲むように配置され、回転軸11に固定されている。一実施形態では、円筒部材74は、回転軸11に支持され、回転軸11に対して相対的に回転可能であってもよい。第1荷重支持面48Aはラジアル軸受27の端面に対向し、第2荷重支持面48Bは円筒部材74の端面に対向している。逆スラスト支持部材46の構成は、図9乃至図11を参照して説明した実施形態と同じである。
【0041】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 ポンプ
2 羽根車
3 電動機
5 ポンプ軸
6 軸カップリング
7 ポンプケーシング
8 吸込み口
9 吐出し口
11 回転軸
15 モータロータ
16 モータステータ
18 モータハウジング
20 隔壁
21 密閉空間
25 軸封装置
27,28 ラジアル軸受
31,32 ラジアル軸受保持部
41 スラスト軸受
42 スラストディスク
43 スラストパッド
46 逆スラスト支持部材
48 荷重支持面
48A 第1荷重支持面
48B 第2荷重支持面
51 廻り止めピン
54 溝
54A 第1溝
54B 第2溝
60 留め具
62 ねじ
63 ねじ穴
64 位置決め穴
69 スラストディスク
71 流体流路
74 円筒部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13