(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】半導体素子
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240322BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G02B6/12 361
G02B6/12 301
H01S5/026 618
H01S5/026 650
(21)【出願番号】P 2020571211
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004099
(87)【国際公開番号】W WO2020162447
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2019021914
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若葉 昌布
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 康貴
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-012176(JP,A)
【文献】特開2015-197642(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135436(WO,A1)
【文献】特開2015-216318(JP,A)
【文献】特開2016-054168(JP,A)
【文献】国際公開第2016/154372(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1756010(CN,A)
【文献】特開2011-175216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
H01S 5/00-5/50
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体積層構造を有し、所定方向に延伸するメサ部と、
前記メサ部の両側のそれぞれ設けられたトレンチ溝を隔てて、前記メサ部に沿って延在する延在部と、
絶縁性材料からなり、前記トレンチ溝のそれぞれに設けられた絶縁部と、
前記メサ部の上側に設けられた導電部と、を備え、
前記絶縁部の少なくとも1つは、前記メサ部に密着し、かつ前記メサ部の延伸方向における少なくとも一部において、前記延在部との間に空隙が形成されており、
前記少なくとも1つの絶縁部と前記メサ部とにわたって前記導電部が設けられ
、
前記少なくとも1つの絶縁部の一部の絶縁部は、前記少なくとも1つの絶縁部において前記延在部との間に前記空隙が形成されていない部分を構成している
ことを特徴とする半導体素子。
【請求項2】
前記導電部の前記少なくとも1つの絶縁部にわたっている側の端は、前記少なくとも1つの絶縁部の端よりも前記メサ部の側に位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記空隙の幅は2μm以上である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記空隙の幅は前記トレンチ溝の幅の80%以下である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の半導体素子。
【請求項5】
前記メサ部は光導波領域を有する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の半導体素子。
【請求項6】
前記導電部はヒータである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の半導体素子。
【請求項7】
前記少なくとも1つの絶縁部は、前記メサ部の延伸方向における全体において、前記延在部との間に空隙が形成されている
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の半導体素子。
【請求項8】
前記少なくとも1つの絶縁部の、前記延在部との間に空隙が形成されていない部分において、前記延在部から前記少なくとも1つの絶縁部とわたって前記導電部に到達し、前記導電部と電気的に接続する配線部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の半導体素子。
【請求項9】
半導体レーザ素子である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子として、所定方向に延伸するメサ部と、メサ部の両側のそれぞれ設けられたトレンチ溝を隔ててメサ部に沿って延在する延在部と、を備える構成が開示されている(特許文献1)。メサ部は、光導波領域を有する半導体積層構造を有している。メサ部の上側には金属からなるヒータが設けられている。また、特許文献1には、トレンチ溝に樹脂等の絶縁体が充填されていてよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-054168号公報
【文献】国際公開第2018/147307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
設計や作製精度などの理由によって、ヒータがメサ部の幅内に収まらず、メサ部から絶縁体にわたって設けられる場合がある。この場合、メサ部とヒータと絶縁体との熱膨張係数の差異により、半導体素子の作製プロセスにおける温度変化や半導体素子の作製後の環境温度の変化等によって、ヒータにひび割れが発生する場合がある。ヒータのひび割れはヒータの特性(抵抗率など)の劣化や、半導体素子の特性の劣化や信頼性の低下を引き起こす。なお、メサ部から絶縁体にわたって電極が設けられる場合にも同様の問題が生じ得る。このような電極は、たとえばメサ部に電流を供給するために設けられたものである。特に、メサ部の幅が狭い場合は、ヒータや電極がメサ部の幅内に収まらない場合が多くなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、特性の劣化や信頼性の低下を抑制できる半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る半導体素子は、半導体積層構造を有し、所定方向に延伸するメサ部と、前記メサ部の両側のそれぞれ設けられたトレンチ溝を隔てて、前記メサ部に沿って延在する延在部と、絶縁性材料からなり、前記トレンチ溝のそれぞれに設けられた絶縁部と、前記メサ部の上側に設けられた導電部と、を備え、前記絶縁部の少なくとも1つは、前記メサ部に密着し、かつ前記メサ部の延伸方向における少なくとも一部において、前記延在部との間に空隙が形成されており、前記少なくとも1つの絶縁部と前記メサ部とにわたって前記導電部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る半導体素子は、前記導電部の前記少なくとも1つの絶縁部にわたっている側の端は、前記少なくとも1つの絶縁部の端よりも前記メサ部の側に位置することを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る半導体素子は、前記空隙の幅は2μm以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る半導体素子は、前記空隙の幅は前記トレンチ溝の幅の80%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る半導体素子は、前記メサ部は光導波領域を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る半導体素子は、前記導電部はヒータであることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る半導体素子は、前記少なくとも1つの絶縁部は、前記メサ部の延伸方向における全体において、前記延在部との間に空隙が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る半導体素子は、前記少なくとも1つの絶縁部の、前記延在部との間に空隙が形成されていない部分において、前記延在部から前記少なくとも1つの絶縁部とわたって前記導電部に到達し、前記導電部と電気的に接続する配線部をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る半導体素子は、半導体レーザ素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、半導体素子の特性の変化や信頼性の低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る半導体素子の模式図である。
【
図2】
図2は、ポリイミド幅または空隙幅とポリイミドに生じる応力との関係を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態2に係る半導体素子の模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る半導体素子の模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態3に係る半導体素子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複説明を適宜省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る半導体素子の模式図である。この半導体素子10は、基板11と、メサ部12と、延在部13a,13bとを備えている。
【0019】
基板11は、半導体基板であり、たとえばn型のインジウムリン(InP)からなる。メサ部12は、基板11の表面に立設しており、基板11の表面に沿った所定方向に延伸している。メサ部12の延伸方向と直交する方向における幅をメサ幅WMとする。メサ幅WMはたとえば1μm~2μm程度である。メサ部12の延伸方向における長さはたとえば50μm~1000μmである。
【0020】
メサ部12は半導体積層構造を有する。具体的には、メサ部12は光導波領域である光導波層12aを有する。光導波層12aはInPよりも屈折率が高い、たとえばInGaAsPからなる。メサ部12の光導波層12aより基板11側はたとえばn型InPからなり、光導波層12aに対するクラッド領域を構成している。メサ部12の光導波層12aに対して基板11とは反対側(以下、適宜上側と記載する)はたとえばp型InPからなり、光導波層12aに対するクラッド領域を構成している。メサ部12は、光導波領域とクラッド領域との積層構造により、光を導波する。なお、InPやInGaAsPは、半導体素子10が波長1.55μm帯の光を導波するために採用されており、他の波長帯の光を導波する場合は、その波長に応じた半導体材料を適宜採用すればよい。
【0021】
延在部13a,13bはそれぞれ、メサ部12の幅方向両側のそれぞれに設けられた幅が5μm以上のトレンチ溝14a,14bを隔てて、メサ部12に沿って延在する。延在部13a,13bは、メサ部12と同じ半導体積層構造を有する。ただし、延在部13a,13bが異なる半導体積層構造を有していてもよいし、半導体以外の材料、たとえば絶縁体で構成されていてもよい。また、基板11の表面を基準として、延在部13a,13bの高さはメサ部12の高さと略同一であるが、異なっていてもよい。メサ部12および延在部13a,13bの表面には、たとえば誘電体からなる保護膜が形成されていてもよい。トレンチ溝14a,14bの幅はそれぞれ幅WTa,WTbである。本実施形態では幅WTa,WTbは等しいが、異なっていてもよい。
【0022】
半導体素子10は、さらに絶縁部15a,15bを備える。絶縁部15a,15bは、絶縁性材料、たとえばポリイミドからなる。
【0023】
絶縁部15aは、トレンチ溝14aに設けられており、メサ部12に密着している。また、絶縁部15aは、メサ部12の延伸方向における一部において、延在部13aとの間に空隙16aが形成されている。絶縁部15aの幅は幅WPaである。空隙16aの幅は幅WGaである。絶縁部15cは、絶縁部15aの一部であり、絶縁部15aから突出して延在部13aに密着している。すなわち、絶縁部15cは、絶縁部15aにおいて延在部13aとの間に空隙16aが形成されていない部分を構成している。
【0024】
絶縁部15bは、トレンチ溝14bに設けられており、メサ部12に密着している。また、絶縁部15bは、メサ部12の延伸方向における全体において、延在部13bとの間に空隙16bが形成されている。絶縁部15bの幅は幅WPbである。空隙16bの幅は幅WGbである。本実施形態では幅WPa,WPbは等しく、幅WGa,WGbは等しいが、それぞれ異なっていてもよい。
【0025】
半導体素子10は、さらに導電部であるヒータ17を備える。ヒータ17は、メサ部12の上側に設けられており、メサ部12の延伸方向に延伸している。ヒータ17は、メサ部12と、絶縁部15a,15bとの両方とにわたって設けられている。ヒータ17の幅は幅WHである。幅WHの値はメサ幅である幅WMの値よりも大きい。ヒータ17は、ニッケル(Ni)とクロム(Cr)とを主成分とする合金からなるが、ヒータとして使用できる導電材料であれば特に限定はされない。ヒータ17を構成する導電材料の熱膨張係数は、絶縁部15a,15bを構成する絶縁材料の熱膨張係数よりも小さい。なお、ヒータ17と絶縁部15a,15bとの間には、たとえば誘電体からなる保護膜が形成されていてもよい。
【0026】
また、ヒータ17の絶縁部15aにわたっている側の端は、絶縁部15aの端(空隙16a側の端)よりもメサ部12の側に位置する。同様に、ヒータ17の絶縁部15bにわたっている側の端は、絶縁部15bの端(空隙16b側の端)よりもメサ部12の側に位置する。したがって、ヒータ17は絶縁部15a,15bからはみ出しておらず、メサ部12と絶縁部15a,15bとを土台として支持されている。
【0027】
半導体素子10は、さらに配線部18を備える。配線部18は、たとえば金(Au)を主成分として構成されており、延在部13aから絶縁部15a,15cをわたってヒータ17に到達し、ヒータ17と電気的に接続する。また、半導体素子10には、メサ部12の延伸方向において絶縁部15cとは離間した位置に、絶縁部15cと同様の不図示の絶縁部と配線部18と同様の不図示の配線部が設けられている。ヒータ17は、配線部18および不図示の配線部によって電流を供給されて発熱する。これにより、光導波層12aは加熱されてその屈折率が変化するので、光導波層12aの光路長が変化する。したがって、ヒータ17に流す電流量の制御によって光導波層12aの光路長を制御することができる。絶縁部15cについては、メサ部12の延伸方向における幅が、配線部18を設けられる程度の広さであればよい。
【0028】
ここで、半導体素子10の作製プロセスにおける温度変化や半導体素子10の作製後の環境温度の変化等にしたがって、絶縁部15a,15bは伸縮する。このとき、絶縁部15aと延在部13aとの間に空隙16aが形成されており、絶縁部15bと延在部13bとの間に空隙16bが形成されているので、絶縁部15a,15bに発生する応力が抑制される。その結果、ヒータ17に掛かる応力も抑制されるので、ヒータ17のひび割れが抑制される。これにより、半導体素子10の特性の劣化や信頼性の低下を抑制できる。
【0029】
つぎに、半導体素子10の構成において、ヒータ17に生ずる応力を有限要素法を用いた熱と応力を同時に計算する連成解析計算によって算出した。
図2は、半導体素子10の構成において、絶縁部15a,15bを熱膨張係数36ppm/Kのポリマーとし、ヒータ17部を熱膨張係数18ppm/Kの金属とし、ポリイミドの幅WPa,WPbまたは空隙16a,16bの幅WGa,WGbと、ヒータ17に生じる最大応力との関係を示す図である。幅WPa,WPbは同じ値とした。幅WGa,WGbは同じ値とした。トレンチ溝14a,14bの幅WTa,WTbはいずれも、10μmとした。
【0030】
図2に示すように、ポリイミド幅が10μm、すなわち空隙幅が0μmのときには応力は99MPaであったが、ポリイミド幅を小さくして空隙幅を大きくしていくと応力が減少し、ポリイミド幅が3.5μmでは80MPaまで減少した。本発明者らが様々な条件で実験を行ったところ、空隙幅はトレンチ溝幅の80%以下が好ましい。また、トレンチ幅が10μmのときは、空隙幅は2μm以上が好ましい。
【0031】
以上説明したように、実施形態1に係る半導体素子10は、特性の劣化や信頼性の低下が抑制されたものである。
【0032】
なお、半導体素子10は、たとえば以下のようにして製造できる。まず、基板11の表面に、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、メサ部12と同様の半導体積層構造を形成し、CVD法にて保護膜を形成する。つづいて、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、半導体積層構造にトレンチ溝14a,14bを形成する。これによって、メサ部12と延在部13a,13bとが形成される。必要に応じて保護膜を除去後、つづいて、CVD法にて保護膜を形成したのち、スピンコートにて絶縁部15a,15bとなる絶縁材料を塗布する。つづいて、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術とを用いて、絶縁材料の一部を除去し、絶縁部15a,15bと空隙16a,16bとを形成する。つづいて、CVD法にて保護膜を形成したのち、金属蒸着法とリフトオフ法とを用いてヒータ17や配線部18を形成する。その後、必要な後処理を施すことによって、半導体素子10が完成する。
【0033】
(実施形態2)
図3は、実施形態2に係る半導体素子の模式図であり、半導体素子を上面視した図である。
図4は、実施形態2に係る半導体素子の模式図であり、半導体素子の断面斜視図である。この半導体素子20は、基板21と、メサ部22と、2つの延在部23と、2つの絶縁部25と、ヒータ27と、2つの配線部28aと、2つの電極パッド28bと、2つの接続部29と、を備えている。延在部23は、それぞれ、メサ部22の幅方向両側のそれぞれに設けられたトレンチ溝24を隔てて、メサ部22に沿って延在する。絶縁部25は、それぞれ、トレンチ溝24に設けられている。絶縁部25は、それぞれ、メサ部22に密着するとともに、メサ部22の延伸方向における全体において、延在部23との間に空隙26が形成されている。ヒータ27は、メサ部22と、2つの絶縁部25の両方とにわたって設けられている。
【0034】
基板21、メサ部22、延在部23、トレンチ溝24、絶縁部25、空隙26、ヒータ27については、実施形態1に係る半導体素子10における対応する要素である基板11、メサ部12、延在部13a,13b、トレンチ溝14a,14b、絶縁部15a,15b、空隙16a,16bなどと同様の構成をとりうるので、説明を省略する。
【0035】
2つの接続部29は、それぞれ、メサ部22の延伸方向の端部において、メサ部22と、対向する2つの延在部23とに接続されるように配置されている。接続部29は、それぞれ、メサ部22、延在部23と同じ半導体積層構造を有する。ただし、接続部29はメサ部22、延在部23と異なる半導体積層構造を有していてもよいし、半導体以外の材料、たとえば絶縁体で構成されていてもよい。メサ部22と延在部23と接続部29とによってトレンチ溝24の内壁が形成されている。
【0036】
2つの配線部28aはそれぞれ、ヒータ27の長手方向の端部のそれぞれに電気的に接続されており、接続部29のそれぞれをわたって延在部23の一方に延びている。この一方の延在部23には2つの電極パッド28bが設けられており、電極パッド28bのそれぞれが配線部28aのそれぞれと電気的に接続している。配線部28aおよび電極パッド28bは、たとえば金(Au)を主成分として構成されている。ヒータ27は、配線部28aおよび電極パッド28bによって電流を供給されて発熱する。ヒータ27に流す電流量の制御によってメサ部22における光導波層の光路長を制御することができる。
【0037】
実施形態2に係る半導体素子20は、絶縁部25のそれぞれと延在部23のそれぞれとの間に空隙26が形成されているので、ヒータ27に掛かる応力が抑制される。その結果、半導体素子20は、半導体素子10と同様に、特性の劣化や信頼性の低下が抑制されたものである。また、半導体素子20では、半導体素子10における絶縁部15cのような部分を設けなくてもよい。
【0038】
(実施形態3)
図5は、実施形態3に係る半導体素子の模式図である。この半導体素子100は、特許文献2に開示されるようなバーニア効果を利用した波長可変型の半導体レーザ素子として構成されている。半導体素子100は、共通の基板上に集積された半導体素子30,40,50,60,70を備えている。なお、
図5では、後述する各ヒータや電極、および各ヒータや電極に電流を供給するための配線部や電極パッドは図示を省略している。
【0039】
半導体素子30は、メサ部32を備えている。メサ部32は、標本化回折格子(Sampled Grating)を含むDBR(Distributed Bragg Reflector)型の回折格子層と、光導波層とを含む半導体積層構造を有する。また、半導体素子30は、延在部103aと、2つの絶縁部35と、ヒータ37と、を備えている。延在部103aは、メサ部32の幅方向両側のそれぞれに設けられたトレンチ溝34を隔てて、メサ部32に沿って延在する部分を有する。絶縁部35はそれぞれ、トレンチ溝34に設けられている。絶縁部35はそれぞれ、メサ部32に密着する。これとともに、絶縁部35はそれぞれ、メサ部32の延伸方向における全体において、延在部103aとの間に空隙36が形成されている。ヒータ37は、メサ部32と、2つの絶縁部35の両方とにわたって設けられている。
【0040】
半導体素子30は、櫛形のピークを有する反射スペクトル特性を有し、レーザ共振器の反射体の一方を構成する。ヒータ37に電流を供給してメサ部32を加熱することによって、反射ピーク波長を波長軸上で全体的にシフトさせることができる。
【0041】
半導体素子40は、光導波領域としての活性層を含む埋め込みメサ型の半導体積層構造を有する。活性層は、半導体素子30の光導波層に光学的に接続しており、半導体素子40に設けられた不図示の電極によって電流が供給されて光利得を発生する。
【0042】
半導体素子50は、メサ部52を備えている。メサ部52は、光導波層を含む半導体積層構造を有する。メサ部52は、一方の端部の光導波層が半導体素子40の活性層に光学的に接続しており、半導体素子40から離間するように延伸している。メサ部52は、延伸の途中部に存在する多モード干渉(MMI)部において2分岐し、2つのアーム部となって他方の2つの端部に到っている。
【0043】
また、半導体素子50は、延在部103a,103bと、4つの絶縁部105a,105b,105c,105dと、を備えている。延在部103a,103bは、メサ部52の幅方向両側のそれぞれに設けられたトレンチ溝104a,104b,104c,104dを隔てて、メサ部52に沿って延在する部分を有する。絶縁部105a,105b,105c,105dはそれぞれ、トレンチ溝104a,104b,104c,104dに設けられている。絶縁部105a,105b,105c,105dはそれぞれ、メサ部52に密着するとともに、メサ部52の延伸方向において、それぞれ、延在部103a,103bのそれぞれとの間に空隙106a,106b,106c,106dが形成されている。
【0044】
半導体素子60は、半導体素子50の一部を構成しており、メサ部52における一方のアーム部の一部としてのメサ部62を備えている。また、半導体素子60は、延在部103a,103bと、2つの絶縁部105b,105cと、ヒータ67と、を備えている。延在部103a,103bは、メサ部62の幅方向両側のそれぞれに設けられたトレンチ溝104b,104cを隔てて、メサ部62に沿って延在する部分を有する。絶縁部105b,105cはそれぞれ、トレンチ溝104b,104cに設けられている。絶縁部105b,105cはそれぞれ、メサ部62に密着するとともに、メサ部62の延伸方向において、延在部103a,103bのそれぞれとの間に空隙106b,106cが形成されている。ヒータ67は、メサ部62と、2つの絶縁部105b,105cの両方とにわたって設けられている。
【0045】
この半導体素子60は、ヒータ67に電流を供給してメサ部62を加熱することによって、メサ部62における光導波層の光路長を変化させることができる。これによって、レーザ共振器の共振器長を変化させることができる。
【0046】
半導体素子70は、メサ部72を備えている。メサ部72は、光導波層を含む半導体積層構造を有するリング共振器である。メサ部72は、光導波層が半導体素子50のメサ部52の2つのアーム部のそれぞれの光導波路に光学的に接続している。また、半導体素子70は、延在部103a,103b,103cと、3つの絶縁部105c,105d,105eと、ヒータ77と、を備えている。延在部103a,103b,103cは、メサ部72の幅方向両側のそれぞれに設けられたトレンチ溝104c,104d,104eを隔てて、メサ部72に沿って延在する部分を有する。絶縁部105c,105d,105eは、それぞれトレンチ溝104c,104d,104eに設けられている。絶縁部105c,105d,105eはそれぞれ、メサ部72に密着するとともに、メサ部72の延伸方向において、延在部103a,103b,103cのそれぞれとの間に空隙106c,106d,106eが形成されている。ヒータ77は、メサ部72と、2つの絶縁部105c,105eの両方と、または、メサ部72と、2つの絶縁部105d,105eの両方と、にわたって設けられている。
【0047】
この半導体素子70は、半導体素子30におけるものとは周期が異なる櫛形のピークを有する反射スペクトル特性を有しており、レーザ共振器の反射体の他方を構成する。ヒータ77に電流を供給してメサ部72を加熱することによって、反射ピーク波長を波長軸上で全体的にシフトさせることができる。
【0048】
以上のように、延在部103a,103b、トレンチ溝104a,104b,104c,104d、絶縁部105a,105b,105c,105d、および空隙106a,106b,106c,106dは、半導体素子30,50,60,70に対して共通の延在部、トレンチ溝、絶縁部、または空隙として機能している。
【0049】
この半導体素子100は、ヒータ37,67,77のそれぞれに供給する電流を調整することによって、バーニア効果を利用した波長可変レーザ素子として機能する。
【0050】
実施形態3に係る半導体素子100は、半導体素子10,20と同様に、ヒータ37,67,77に掛かる応力が抑制され、特性の劣化や信頼性の低下が抑制される。
【0051】
なお、上記実施形態では、絶縁部のそれぞれが、メサ部に密着し、かつメサ部の延伸方向における少なくとも一部において、延在部との間に空隙が形成されており、絶縁部のそれぞれとメサ部とにわたって導電部であるヒータが設けられている。しかしながら、本発明はこれに限られない。絶縁部の少なくとも1つが、メサ部に密着し、かつメサ部の延伸方向における少なくとも一部において、延在部との間に空隙が形成されており、少なくとも1つの絶縁部とメサ部とにわたって導電部が設けられていてもよい。したがって、絶縁部の一方が、メサ部に密着し、かつメサ部の延伸方向における少なくとも一部において、延在部との間に空隙が形成されており、その一方の絶縁部とメサ部とにわたって導電部が設けられていてもよい。この場合、他方の絶縁部と延在部との間には、空隙が形成されていなくてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、導電部はヒータであるが、導電部はヒータに限定されず、メサ部に電流を供給するための電極でもよい。
【0053】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る半導体素子は、たとえば半導体レーザ素子に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0055】
10,20,30,40,50,60,70,100 半導体素子
11,21 基板
12,22,32,52,62,72 メサ部
12a 光導波層
13a,13b,23,103a,103b,103c 延在部
14a,14b,24,34,104a,104b,104c,104d,104e トレンチ溝
15a,15b,15c,25,35,105a,105b,105c,105d,105e 絶縁部
16a,16b,26,36,106a,106b,106c,106d,106e 空隙
17,27,37,67,77 ヒータ
18,28a 配線部
28b 電極パッド
29 接続部