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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】CVDリアクタのサセプタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240322BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240322BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/68 N
C23C16/458
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021533270
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2019083925
(87)【国際公開番号】W WO2020120298
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】102018131751.4
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】クリュッケン、ヴィルヘルム・ジョゼフ・トマス
(72)【発明者】
【氏名】ラウフファー、ペーター・ゼバルト
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-507779(JP,A)
【文献】特表2009-502039(JP,A)
【文献】特表2005-522876(JP,A)
【文献】特表2006-509363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/683
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベアリング面(7)の中心(Z)を中心に回転可能であるように、円盤状の基板ホルダ(2)を支持するための、円形状の少なくとも一つのベアリング面(7)を備え、
前記ベアリング面(7)は、
少なくとも一つのガス分配チャネル(4)が延在し、ガス供給ライン(3)が中へと開口しているような第一放射状領域(11)と、
前記第一放射状領域(11)から中心(Z)周りに半径方向にずれて位置し、一つ以上の排出チャネル(6)を有するガス排出システムを形成する、第二放射状領域(12)と、
表面(10)を備え、前記第一放射状領域(11)と前記第二放射状領域(12)を囲むように位置し、前記ベアリング面(7)と前記基板ホルダ(2)の間にあって、前記ベアリング面(7)の半径方向外側の縁に直接隣接するギャップ(9)を形成する、第三放射状領域(13)と、を有し、
前記放射状領域(11,12,13)は、前記ガス供給ライン(3)を通り、前記第一放射状領域(11)に供給され、前記排出チャネル(6)を経由して、および前記ギャップ(9)を経由して、ボリュームから流出するガス流が、前記ベアリング面(7)と前記基板ホルダ(2)の下面(2’)との間のボリュームに、前記基板ホルダ(2)を浮遊状態に保つための圧力を発生させるように設計されている、サセプタにおいて、
前記排出チャネル(6)の断面積および前記ギャップ(9)の半径方向の長さは、前記排出チャネル(6)を経由したガス容積流量が、高さ300μmである前記ギャップ(9)を経由したガス容積流量よりも多くなるような大きさとされていることを特徴とするサセプタ。
【請求項2】
ベアリング面(7)の中心(Z)の周りで回転可能であるように、円盤状の基板ホルダ(2)を支持するための、円形状の少なくとも一つの前記ベアリング面(7)を備え、
前記ベアリング面(7)が、
少なくとも一つのガス分配チャネル(4)が延在し、その中へとガス供給ライン(3)
が開口しているような第一放射状領域(11)と、
前記第一放射状領域(11)から前記中心(Z)周りに半径方向にずれて位置し、凹部によって形成され、前記ベアリング面(7)の外へと開口した排出チャネル(6)の始端となるガス捕集チャネル(5)を有する第二放射状領域(12)と、
前記第一放射状領域(11)および前記第二放射状領域(12)を囲う環状で閉じた表面(10)を形成し、前記ベアリング面(7)の半径方向外側の縁を形成し、半径方向内側において、前記ガス捕集チャネル(5)に隣接する第三放射状領域(13)とを有する、サセプタにおいて、
環状で閉じた前記表面(10)は、前記中心(Z)に関して少なくとも4mmの半径方向の長さを有し、かつ前記排出チャネル(6)は、少なくとも直径2mmとする少なくとも4つの孔であることを特徴とするサセプタ。
【請求項3】
前記第三放射状領域(13)が、半径方向の長さが少なくとも4mmである環状かつ閉じた前記表面(10)により形成され、半径方向内側において凹部により形成されたガス捕集チャネル(5)に隣接することを特徴とする請求項1に記載のサセプタ。
【請求項4】
少なくとも4つの前記排出チャネル(6)が、前記ガス捕集チャネル(5)を始端とし、前記ベアリング面(7)の外に向けて開口していること、および少なくとも直径2mmとする孔であることを特徴とする請求項3に記載のサセプタ。
【請求項5】
前記ベアリング(7)が、半径方向外側において、ステップ(15)またはカバープレート(15’)により境界付けられ、および/または、前記表面(10)が平坦であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項6】
前記ベアリング面(7)を形成する広い面(17)を有し、
前記排出チャネル(6)が前記ベアリング面(7)の反対側の裏面(14)、端面(16)、または前記ベアリング面(7)の下流側で前記広い面(17)に向けて、開口していることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項7】
直径と前記排出チャネル(6)の数が、以下の関係を満足するように選択され、
【数1】
数1中、rは、前記排出チャネル(6)の半径を表し、laは、前記排出チャネル(6
)の長さを表し、nは、前記排出チャネル(6)の数を表し、dは、第三放射状領域(1
3)の直径を表し、lsは、ギャップ(9)の半径方向の長さを表し、hは、前記ギャップ(9)の最大の高さを表し、
当該関係式の左辺は、関係式の右辺の少なくとも10倍の大きさであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のサセプタ。
【請求項8】
請求項1又は3~7のいずれかに記載のサセプタと、
円盤状の形状を有し、回転可能であるような前記ベアリング面(7)により支持された前記基板ホルダ(2)とを備え、
前記基板ホルダ(2)は、
少なくとも、第三放射状領域(13)に適合するように広がる半径方向外側の領域において、環状で水な縁面(20)を有し、当該縁面(20)は、前記第三放射状領域(13)の前記表面(10)とともに、高さが一定となるギャップ(9)に境界付けることを特徴とするサセプタアレンジメント。
【請求項9】
前記ギャップ(9)を境界付ける表面(10、20)が、他のガス排出システムを持たず、かつ、二つの適合する閉じた環状面によって形成されることを特徴とする請求項8に記載のサセプタアレンジメント
【請求項10】
前記ベアリング面(7)の半径方向外側の縁と、対応する基板ホルダ(2)の縁面(20)とを形成する表面(10)が、
状溝(25)に係合する環状リブ(24)として形成される、噛合可能な環状構造を有することを特徴とする請求項8又は9に記載のサセプタアレンジメント。
【請求項11】
前記ベアリング面(7)と前記基板ホルダ(2)の下面(2’)間のボリュームに生成されるガス流動が、圧力を生じさせ、前記ガス流動が前記基板ホルダ(2)を浮遊状態に保ち、
300μmより小さい範囲内でギャップの高さを生じさせることを特徴とした、CVDリアクタにおける請求項8~10のいずれかに記載のサセプタアレンジメントの使用。
【請求項12】
ハウジング(23)内に配置されたプロセスチャンバーと、
プロセスチャンバー内へのプロセスガスの注入を目的としてプロセスチャンバー内へと開口されたガス入口ユニット(22)と、
少なくとも1つの基板ホルダ(2)を含むサセプタアレンジメントと、
プロセスチャンバーの底を形成するサセプタ(1)と、
前記基板ホルダ(2)を支持する少なくとも一つのベアリング面(7)と、
サセプタ(1)の加熱を目的とした加熱装置(21)と、
前記サセプタ(1)によって支持される前記基板ホルダ(2)とを備えるCVDリアクタであって、
前記サセプタアレンジメントが請求項8~10のいずれかに記載のサセプタアレンジメントであることを特徴とするCVDリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状の基板ホルダを支持するための、円形状の少なくとも一つのベアリング面を備え、それによりベアリング面の中心を中心に回転可能としたサセプタに関する。ベアリング面は、少なくとも一つのガス分配チャネルが延在し、ガス供給ラインが中へと開口している第一放射状領域と、中心を基準として、第一放射状領域から半径方向にずれて位置し、一つ以上の排出チャネルを備えるガス排出システムを形成する第二放射状領域と、第一放射状領域と第二放射状領域を囲むように位置し、ベアリング面と基板ホルダの間のギャップを形成する第三放射状領域とを有する。ベアリング面と基板ホルダの間にあるギャップは、ベアリング面の半径方向外側の縁に直接隣接し、各放射状領域は、ガス供給ラインを通り、第一放射状領域に供給されるガス流が、ベアリング面と基板ホルダの底面との間のボリュームに圧力を発生させるように設計され、当該圧力は、基板ホルダの浮遊状態を保つ。ガス流は、ガス排出システムを経由し、ギャップを経由し、ボリュームから、出ていく。
【0002】
本発明はさらに、サセプタと一つ以上の基板ホルダから形成され、CVDリアクタを有するサセプタアレンジメント、およびCVDリアクタにおけるサセプタ、サセプタアレンジメント、サセプタまたはサセプタアレンジメントの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
上述したタイプのサセプタは、特許文献1により公知の技術である。
【0004】
本発明のサセプタは、CVDリアクタの一部であり、ベアリング面で支持される基板ホルダを有するサセプタアレンジメントを形成する。当該サセプタは円盤状であり、その円の中心の周りに配置される複数のベアリング面があり、各々が、基板ホルダを支持するためにある。各基板ホルダは、図軸を中心に回転することができるようサセプタの上面のポケットに取り付けられている。ベアリング面は三つの放射状領域を有する。
【0005】
内側の放射状領域は、ポケットの底にらせん状のガス分配チャネルが配置され、ガス供給ラインを経由したキャリアガスが供給される。キャリアガスは、基板ホルダを浮遊位置まで持ち上げ、基板ホルダのための回転駆動を提供する。第一放射状領域を囲う第二放射状領域には、ガス捕集チャネルが配置され、そこから、ボリュームからキャリアガスを排出するためのガス排出チャネルが始まる。
【0006】
第三放射状領域は、第二放射状領域の半径方向外側に延在し、ギャップを形成する。先行技術においては、ギャップを通して、わずかとはいえない割合のキャリアガスが、ベアリング面と基板ホルダの底面の間のボリュームから漏れ出る可能性があった。ギャップを通り抜け出る当該ガスは、サセプタ上方に配置されたプロセスチャンバーへ入る。これにより排出ガスの流れにより希釈したプロセスガスが流れる。ギャップを経由したガスの流れが、プロセスガスの流れに対して横方向の流れを形成する。従って、プロセスガスの流れのプロフィールを妨げる。
【0007】
従来技術は、以下の特許文献2~4を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9,447,500号明細書(独国特許出願公開第10 2009 044 276号明細書)
【文献】独国特許出願公開第603 04 850号明細書
【文献】英国特許出願公開第2 264 959号明細書
【文献】米国特許第5,788,777号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の根底にある目的は、プロセスガスの流れを妨げる、すなわち基板ホルダを支持するためのガスクッションを形成するガスによるプロセスガスの希釈を、低減するための手段を特定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的は、請求項において特定された発明によって達成される。従属項は、有利な更なる発展を表すのみでなく、目的の独立した解決手段でもある。
【0011】
先ず、第一に、本発明はCVDリアクタにおいて使用するための、一つ好ましくは複数の円形のベアリング面を形成するサセプタを提示する。ベアリング面は、好ましくは円盤状であるサセプタの中心の周縁に、配置することができる。ベアリング面は周縁に沿って密に配置することができる。凹部が、ベアリング面を形成するサセプタの広い面に、配置され、そこに円盤状の基板ホルダが配置され、それにより凹部の底がベアリング面を形成する。しかしながらそのように形成されるポケットはサセプタの広い面に配置されるカバープレートによっても形成可能である。
【0012】
本発明のサセプタは、第一放射状領域を備えたベアリング面を有する。第一放射状領域は、中心にまたがり延在する最も内側の放射状領域となり得、そこには少なくとも一つのガスチャネル、とりわけらせん状のガスチャネルが延在する。当該ガスチャネルは、ベアリング面を形成するポケットの底における凹部に位置しうる。キャリアガスをガス分配チャネルに供給するために通るガス供給ラインは、ガス分配チャネルの半径方向最も内側の領域に向かって開口する。
【0013】
本発明のサセプタは、中心を基準に第一放射状領域からずれて位置する、第二放射状領域を備えるベアリング面を有する。第二放射状領域は、好ましくは第一放射状領域を囲うガス捕集チャネルによって形成され、当該ガス捕集チャネルは、ベアリング面を構成するポケットの底に、環状の凹部となりうる。
【0014】
第二放射状領域は、一つ以上の排出チャネルを有する。当該排出チャネルはガス捕集チャネルから始まり、ベアリング面から距離を置いて開口することが好ましい。排出チャネルは、ベアリング面を形成する広い面から離れて面しているサセプタの裏面へと開口することができる。しかしながら、排出チャネルは縁、とりわけサセプタの周縁にむけて開口することもできる。しかしながら、CVDリアクタのプロセスチャンバーを通って流れる、ベアリング面のプロセスガスの流れにおいて排出チャネルが下流側に開口することも提供される。その場合、とりわけ、排出チャネルが、ベアリング面の半径方向外側に配置された領域に開口することが提供される。特に、4つ、6つ、またはそれ以上の排出チャネルがガス捕集チャネルから始まることが提供される。ベアリング面の直径は、4インチウエーハ、6インチウエーハ、8インチウエーハを装着するために、およそ10cm、15cm、20cmの直径とすることができる。その場合、とりわけ好ましくは円状のガス捕集チャネルの周辺の範囲に沿って、少なくとも4cmから10cmごとに排出チャネルが配置されることが提供される。
【0015】
本発明に係るサセプタは、排出チャネルを備える第二放射状領域の半径方向外側に、環状でかつ基板ホルダの半径方向最も外側の領域とともにギャップを形成する、第三放射線領域を有する。基板ホルダは、円盤状の形状であり、その下面の半径方向内側の領域によって、第一と第二の放射状の領域を覆う。その下面の半径方向外側の領域は、周辺のギャップの境界面を形成し、当該ギャップは他面において第三放射状領域によって形成されるベアリング面の表面と境界を接する。
【0016】
ガス供給ラインを通して第一放射状領域へと供給されるガス流は、ベアリング面と基板ホルダの下面の間のボリュームにおける圧力を発生させる。この圧力は基板ホルダを浮遊状態に保つ。ボリュームに供給されるガスは、ガス排出システムと第三放射状領域の外周面と基板ホルダの縁領域との間のギャップとを通り、ボリュームから出ていく。
【0017】
本発明によれば、排出チャネルの断面積とギャップの半径の長さは、ギャップが最大ギャップ高300μmを超えないならば、ガス排出システムを通過するガスの体積流量が、ギャップを通過するガスより大きくなるように、決められる。
【0018】
本発明によれば、ボリュームに供給されるガス流の変化によって、50μmから300μmの範囲で、好ましくは、100μmから 250μmの範囲で、ガスクッションの高さを変えるためにギャップの高さが変えられる。これは、基板ホルダの下に配置されたヒーターから基板ホルダによって支持される基板への熱伝達に影響を与える結果を生じる。
【0019】
本発明のサセプタは、第二放射状領域を囲いかつギャップを形成する表面を有する。表面は少なくとも4mmの放射状の広がりをもつ。排出チャネルによって形成される、少なくとも4つの孔は、少なくとも2mm、好ましくは少なくとも3mmの直径を持ちうる。とりわけ、円形の第二放射状領域の外周範囲の線に沿って、複数の孔が一定の間隔で配置されるように設けられている。当該孔は、ガス捕集チャネルを形成する円形の溝に配置されることが好ましい。それによって隣接する孔同士の距離が最大で10mmもしくは20mmとなりうる。
【0020】
仮にサセプタが複数のベアリング面を有しているならば、二つの隣接するベアリング面の各ガス捕集チャネル間の距離が、少なくとも15mm、好ましくは少なくとも20mmとなるように、離して間隔が空けられる。密に接触して隣り合うように配置されたベアリング面は、サセプタの中心周りの円弧ラインに沿って、配置されることが好ましい。二つの隣接するベアリング面の中心を結ぶ直線ライン上であれば、ガス捕集チャネルは、少なくとも15mm離して間隔を空けることが好ましく、少なくとも20mm離すことが特に好ましい。これはそれぞれのギャップが境界を接するように十分な半径方向の間隔をもち、基板ホルダが ガス捕集チャネルと重なるようにするためである。
【0021】
ギャップと境界を接する表面は、適合する環状の表面であり、半径方向において、ステップを付けることや、波形をつけることができる。ギャップ全体の表面にわたり、ギャップが一定のギャップ高を有することが好ましい。この目的のために、ギャップと境界を接する2つの面が、基板ホルダの下面の平面で形成された縁領域と、ベアリングサイトの第三放射状領域であると有利である。
【0022】
rが、排出チャネルを形成する孔の半径、lが孔の長さ、η がキャリアガスの動的粘度、Δp がガスクッションにおける圧力とプロセスチャンバーの圧力との圧力差とすると、次の関係が、排出チャネルを経由した、ガスの体積流量を表す。
【0023】
【数1】
【0024】
さらに、第三放射状領域の環状ギャップの周長をuにより、ギャップの半径の長さをlにより、ギャップの最大の高さをhにより表すとすると、次の関係がギャップを通過する体積流量を表す。
【0025】
【数2】
【0026】
u= π・d により、第二放射状領域の外周を表すとする。本発明によると、排出チャネルの数とそれらの直径(半径)は、排出チャネルを通り流れるすべてのガス流の合計Qが、最大のギャップ高hが300μmであるときにギャップを経由して流れるガス流Qよりも大きくなるように、設計されている。これにより、以下の設計ルールが導かれる。
【0027】
【数3】
【0028】
ギャップ高がh = 300μmであるときに、この関係式の左辺は、右辺の、好ましくは少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、好ましくは少なくとも50倍であることが望ましい。このためには、十分に多数の排出チャネルが設けられ、その直径dが少なくとも2mm、好ましくは少なくとも3mmであるときには、とりわけ十分である。
【0029】
本発明はさらに、サセプタアレンジメントに関する。当該サセプタアレンジメントは、3つすべての放射状領域にわたって延在する円盤状の基板ホルダと連関する各ベアリング面を有する。当該基板ホルダ下面の半径方向外側領域において、第三放射状領域の表面と共に、ギャップと境界を接する表面を有する。
【0030】
本発明はさらに、CVDリアクタにおけるサセプタやサセプタアレンジメントの使用、または、蒸着プロセスにおいて、基板ホルダによって支持される基板上の層成長の方法に関する。このプロセスでは、ベアリング面と基板ホルダの下面の間のボリュームに、例えば水素や窒素といったキャリアガスが供給される。基板ホルダの下面とベアリング面との間のボリュームの中に圧力が蓄積され、それが基板ホルダを持ち上げ、その浮遊状態を保つ。
【0031】
ガス流は、ギャップの高さが50μmと250μmの間の範囲となるように調整される。第三放射状領域の半径の長さ、排出チャネルの個数や断面積を本発明通りの組み合わせとすることによって、排出チャネルは、ギャップの大きさが最大300μmよりも低い流動抵抗となるガス排出システムを形成する。
【0032】
本発明はさらに、ガス入口ユニットを有するCVDリアクタに関する。ガス入口ユニットを通してプロセスガスはプロセスチャンバーに供給され、そこでプロセスガスは熱分解される。プロセスチャンバーの底は、前述したサセプタによって形成される。そこでサセプタは少なくとも一つのベアリングポケットを形成し、それにより基板ホルダを支持するベアリング面を形成する。サセプタは、回転対称性を有することが好ましく、そこでガス入口ユニットはサセプタ中央の領域に配置される。
【0033】
多数のポケットがサセプタ中心周りの円弧ライン上に配置され、その各ポケットにおいて基板ホルダが支持される。サセプタは、その対称軸を中心に回転駆動される。サセプタの下に配置される加熱装置は、基板をプロセス温度まで上昇させる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明のサセプタ平面図を示す。サセプタの中心周りの円弧ライン上に12個のベアリング面7が配置される。それぞれは基板を支持するためのものである。
図2図2は、図1のラインII-IIに沿った拡大断面図を示す。
図3図3は、図1の詳細IIIを拡大して示す。
図4図4は、図1のラインII-IIに沿ったセグメントの三次元図を示す。
図5図5は、第1の例示的実施形態におけるサセプタ1のポケットに置かれる基板ホルダ2を通る概略断面図を示す。
図6図6は、第2の例示的実施形態における図5と同様の図を示す。
図7図7は、第3の例示的実施形態における図5と同様の図を示す。
図8図8は、ハウジング23を備えたCVDリアクタにおけるサセプタアレンジメント1、2の配置を模式的にを示す。
図9図9は、第4の例示的実施形態における図4と同様の図を示す。
図10図10は、第5の例示的実施形態における図4と同様の図を示す。
図11図11は、さらなる例示的実施形態における図5と同様の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明のサセプタ1は、図8に示されるように、CVDリアクタで、とりわけMOCVDリアクタで、使用される。排気可能なハウジング23には、プロセスチャンバーが配置され、そこにプロセスガスがガス入口ユニット22を用いて供給される。プロセスガスはプロセスチャンバーの中央へ供給され、プロセスチャンバーの底は、上側に面するサセプタ1の広い面によって形成される。サセプタは図1に示すような形状を有することができる。すなわち、それは例えば中心周りに規則的な間隔で配置される12個のベアリング面7を有することもできるということであり、そこで各ベアリング面7はポケットとして設計される。グラファイトで作られたサセプタ1に、凹部として当該ポケットを構成することができる。しかしながら、円形の開口部を形成するカバープレートからポケットを形成することも可能である。
【0036】
熱がサセプタ1を通り、基板ホルダ2へと、基板ホルダ2を通り、基板ホルダ2に置かれた基板19へと流れるように、サセプタ1は、加熱装置21によって下側から熱せられる。これは、ガス入口ユニット22を通り供給されるプロセスガスが基板表面上で分解するプロセス温度まで、基板表面を上昇させるためのもので、単結晶の層のような、とりわけ、III-V族の層を成膜する。この目的のために、第三主族の元素の有機金属化合物または第五主族の元素の水素化物が、例えば水素などのキャリアガスとともに、ガス入口ユニット22を介して供給される。
【0037】
当該ポケットの底は、カバープレート15’またはサセプタのステップ15によって形成されており、またグラファイトで作られた円盤状の基板ホルダ2のためのベアリング面7を形成する。ベアリング面7は第一の中央の放射状領域11を形成し、そこにらせん状のガス流通チャネル4が延在し、そこへキャリアガスがガス供給ライン3を経由して供給される。この目的のために、ガス供給ライン3は、サセプタ1内の供給ライン18に接続される。
【0038】
第一放射状領域11の半径方向外側には、第二の、より狭い、環状の放射状領域12が延在する。当該領域は、基本的にガス捕集チャネル5によって形成される。当該ガス捕集チャネル5は3×3mmの断面積を有することができ、ベアリング面7の中央Z周りの円弧ラインに沿って延在する。第二放射状領域12はガス捕集チャネル5によって形成され、従って第一の中央にある円形の放射状領域11を囲み、浮遊状態で基板ホルダ2を維持するガスクッションが形成されるようにキャリアガスが当該領域へと供給される。
【0039】
排出チャネル6は、一様に周辺に分布する、ガス捕集チャネル5の底を始端とする。排出チャネル6は、孔として設計され、相互に最大10cm、好ましくは最大4cm離れいて間隔が開けられる。排出チャネルを形成する孔の直径は2mmから4mmの範囲で広がる。孔は好ましくは最小で直径1mm、好ましくは最小で直径2.5mm、好ましくは最小で直径3mmとする。
【0040】
第三放射状領域13は、ガス捕集チャネル5の半径方向外側に延在する。実施形態の例として、第三放射状領域13の半径方向の広がりは、第二放射状領域の半径方向の広がりよりも大きい。第三放射状領域13の半径方向の広がりは、少なくとも5mmであることが好ましい。第三放射状領域においては、ベアリング面7は平面を形成し、それがギャップ境界面10を形成する。第一ギャップ境界面10と適合する表面20は、基板ホルダ2の下面2’の環状の領域によって形成される。キャリアガスがガス供給ライン3を通して供給されておらず、結果としてガスクッションが、下面2’とベアリング面7との間の領域で形成されていない、基本状態では、ギャップ境界面10上の基板ホルダ2の縁面20は、密閉状態で、置かれている。第三放射状領域13のギャップ境界面10は、ガス捕集チャネル5が表面8、10によって形成される平面の凹部となるように、ガス流通チャネル4が延在する表面と同じ平面となることが好ましい。
【0041】
仮にガス流がガス供給ライン3に供給されることで、ガス流通チャネル4によって回転が引き起こされ、基板ホルダ2が上昇したならば、そこで同時に、基板ホルダ2にその形状の軸周りの回転が引き起こされる。本発明の使用と本発明の手法との両方またはいずれか一方において、基板ホルダ2の下面2’とベアリング面7の間のボリュームへと供給されるガス流は、ギャップの高さがせいぜい300μmであるギャップ9が二つのギャップ境界面10、20の間で形成されるような大きさとされる。排出チャネル6の大きさおよび数、第三放射状領域13の半径の長さの長所によって、ギャップ9の流動抵抗は、排出チャネル6によって形成されるガス排出システムの流動抵抗よりも相当に大きい。その違いは好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍である。結果として90%以上のキャリアガスが、排出チャネル6によって形成される排出システムを通過して流れる。そして最大でも10%だけのキャリアガスがギャップ9を通り、プロセスチャンバーへと流れる。
【0042】
図6で示される第二の実施形態の例は、排出システム6が、サセプタ1の裏面14に開口していない点で、むしろ第一の実施形態の例と同様に、外周壁15’に開口している点で本質的に図5で示される第一の実施形態の例とは異なる。
【0043】
図7で示された第三の実施形態の例は、基本的に排出チャネル6がプロセスチャンバーに面するサセプタ1の上面17へ開口している点でのみ、図5で示された第一の実施形態の例と本質的に異なる。排出チャネル6の開口は、プロセスチャンバーを通る流れSの方向において、ベアリングサイト7の下流に配置される。
【0044】
図4は、サセプタ1の実施形態の例を示す。そこでベアリングサイト7の半径方向外側の外周壁は、半円状の段差15によって形成されており、この段差は、サセプタ1のベアリング面7を形成する部分に、物理的に一体的態様で接続されている。カバープレート(図示なし)が設けられ、半円形の段差を形成し、半径方向内側のベアリング面7を形成するポケットの壁を完成させている。
【0045】
図9に示された実施形態の例では、サセプタ1が、基本的に平坦な広い面を有している。ここで、ポケットの壁は、カバープレート(図示なし)の曲線状の壁によって形成される。カバープレートは、サセプタの広い面に配置される。ベアリング面7もまた平面に広がっている。
【0046】
図10において示す実施形態の例では、ベアリング面7を形成するポケットの壁の半径方向内側が、サセプタ1の台座の半径方向内側により形成され、当該台座は、物理的に一体的な態様においてベアリング面7を形成するサセプタ1の領域に接続される。ベアリングポケットの壁の半径方向外側は、ここではカバープレート(図示なし)によって形成される。
【0047】
図11において示す実施形態の例では、ベアリング面7と基板ホルダ2の下面2’の縁面10、20のそれぞれが、噛合構造24、25を有している。これらは、環状構造の形状をとることが好ましく、一種のラビリンスシールを形成している。実施形態の例において、リブ24が設けられ、環状溝25に係合する。リブ24は二つの表面10、20の一方によって形成することができる。そして、環状溝は、それぞれその他の表面20、10によって形成される。実施形態の例では、リブ24は、ベアリング面7に由来し、環状溝25は基板ホルダ2の下面2’に組み込まれている。実施形態の例では、リブ24と環状溝25は、ガス捕集チャネル5の半径方向外側に配置される。基板ホルダ2はカバープレート15’によって形成されるポケット内に配置される。
【0048】
上記の記述は、本出願が全体として範囲とする発明を説明するのに役立ち、本発明はそれぞれの場合において、独立して、少なくとも特徴の組み合わせによって、先行技術を発展させるものであり、これらの特徴の組み合わせのうち、二つ、複数または全てを組み合わせることも可能である。
【0049】
排出チャネル6の断面積やギャップ9の半径の長さの点で特徴づけられるサセプタは、ガス排出システム6を通るガスの体積流量が、ギャップの高さが300μmであるようなギャップ9を通るものより大きくなるように、形成されている。
【0050】
円形の表面は、中心Zに関して半径の長さが少なくとも5mmとなることと、排出チャネル6は、少なくとも直径が2mm、好ましくは少なくとも4mmである、少なくとも4つの孔であることとで、特徴づけられるサセプタ。
【0051】
第三放射状領域13は、半径方向の長さが少なくとも4mmの環状の閉じた面10によって形成され、当該環状の閉じた面は、半径の内側方向において、凹部によって形成されたガス捕集チャネル5が隣接し、とりわけ少なくとも4つの排出チャネル6は、ガス捕集チャネルから生じており、ベアリング面7の外側へと開口され、そしてとりわけ、少なくとも直径2mm、好ましくは少なくとも3mmの孔である、ことを特徴とするサセプタ。
【0052】
ベアリング面7がステップ15またはカバープレート15’によって半径外側方向に境界付けられることと、表面10が平面であることのいずれか、またはそれら両方であること、を特徴とするサセプタ。
【0053】
排出チャネル6が、ベアリング面7の反対側の裏面14、縁面16、またはベアリング面7の下流側で、ベアリング面7を形成するサセプタ1の広い面17へと、開口していることを特徴とするサセプタ。
【0054】
直径と漏出チャネル6の数が、以下の関係式を満たすように選択されていること、
を特徴とするサセプタ。
【0055】
【数4】
【0056】
rは、排出チャネル(6)の半径、lは、排出チャネル(6)の長さ、nは、排出チャネル(6)の数、dは、第三縁領域(13)の直径、lは、ギャップ(9)の半径の長さ、hは、ギャップ(9)の最大の高さであり、当該関係式の左辺は好ましくは少なくとも右辺の10倍、より好ましくは少なくとも20倍、そして特に好ましくは少なくとも50倍大きいことが望ましい。
【0057】
先行する請求項の一つに記載されたサセプタ1と、回転可能なベアリング面7で支持される基板ホルダ2と、を備えたサセプタアレンジメントであって、基板ホルダ2は円盤状の形状を有し、少なくとも、第三放射状領域13と適合するように広がる半径方向外側の領域で、環状のとりわけ平坦な縁面20を有し、当該縁面20が第三放射状領域13の表面10とともに一定の高さを持つギャップ9を境界付ける。
【0058】
ギャップ9を境界づける表面10、20は、他のガス排出システムを持たず、むしろ二つの適合する、閉じた環状の表面によって形成される。
【0059】
ベアリング面7の縁の半径方向外側を形成する表面10と基板ホルダ2の対応する縁面20は、噛合する環状構造を有し、とりわけそれらは、環状溝25と係合する環状のリブ24として設計されること、を特徴とする、サセプタまたはサセプタアレンジメント。
【0060】
ベアリング面7と基板ホルダ2の底面2’の間のボリュームに供給されるガス流は、圧力を発生させ、これが基板ホルダを浮遊状態に保ち、ギャップ高300μmより小さく、そして好ましくは50または100μmと250μmの間の範囲で、発生することを特徴とする使用。
【0061】
サセプタ1と基板ホルダ2が請求項1から9のうち一つに従い設計されたことを特徴とするCVDリアクタ。
【0062】
開示された全ての特徴は、(それ自体のために、また互いに組み合わされて)本発明に不可欠である。ここでの出願の開示は、関連する/追加された優先権書類(先の出願の写し)の開示内容をその内容全体に含み、それはこれらの書類の特徴を本願の請求項に組み込む目的でもある。従属請求項は、特にこれらの請求項に基づいて分割出願を行うために、引用される請求項の特徴がなくても、先行技術の独立した発明性のあるさらなる発展を特徴とする。各請求項で特定された発明は、前述の説明で特定された、特に参照符号の付与、および/または参照番号のリストで特定された、1つ以上の機能を追加で有することができる。本発明はまた、特に、それらがそれぞれの使用目的に明らかに不要であるか、または技術的に同じ効果を有する他の手段で置き換えることができる限り、前述の説明で述べた特徴の個々のものが実装されていない、設計の形態に関する。
【符号の説明】
【0063】
1 サセプタ
2 基板ホルダ
2’底
3 ガス供給ライン
4 煙道
5 ガス捕集チャネル
6 排出チャネル
7 排出チャネル
8 ギャップ
9 ギャップ
10 表面
11 第一放射状領域
12 第二放射状領域
13 第三放射状領域
14 裏面
15 カバープレート
16 端面
17 上面
18 供給ライン
18’供給ライン
19 基板
20 縁面
21 加熱装置
22 ガス入口ユニット
23 ハウジング
24 リブ
25 環状溝
S 流向
Z 中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11