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特許7458432基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20240322BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240322BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240322BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240322BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20240322BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20240322BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/31 B
H10B43/27
H01L29/78 371
C23C16/34
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022036043
(22)【出願日】2022-03-09
(65)【公開番号】P2023131341
(43)【公開日】2023-09-22
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】石橋 清久
(72)【発明者】
【氏名】新田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公彦
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/037927(WO,A1)
【文献】特開2013-084911(JP,A)
【文献】特開2012-109464(JP,A)
【文献】特開2008-166518(JP,A)
【文献】特開2013-084693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/312-21/32
H01L 21/336
H01L 21/365
H01L 21/469-21/475
H01L 21/86
H01L 27/10-27/105
H01L 29/788-29/792
H10B 43/27
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する工程を有し、
前記第1膜
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第2膜
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され
前記第1膜は第1電荷保持特性を有し、前記第2膜は第2電荷保持特性を有し、前記第1電荷保持特性は、前記第2電荷保持特性よりも優れている基板処理方法。
【請求項2】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する工程を有し、
前記第1膜は
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第2膜は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第1膜は第1ステップカバレッジ特性を有し、前記第2膜は、前記第1ステップカバレッジ特性よりも優れる第2ステップカバレッジ特性を有す基板処理方法。
【請求項3】
前記第1膜は第1ステップカバレッジ特性を有し、前記第2膜は、前記第1ステップカバレッジ特性よりも優れる第2ステップカバレッジ特性を有する、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第2膜上に第3膜を形成する工程をさらに有し、
前記第3膜は、前記第2電荷保持特性よりも優れる第3電荷保持特性を有する請求項記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1膜を形成する前に第3膜を形成する工程をさらに有し、
前記第3膜は、前記第1ステップカバレッジ特性よりも優れる第3ステップカバレッジ特性を有する請求項記載の基板処理方法。
【請求項6】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異なる第2膜を形成する工程を有し、
前記第1膜は
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第2膜は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第1膜の膜厚は、前記第2膜の膜厚よりも薄い基板処理方法。
【請求項7】
前記第1原料ガスおよび前記第2原料ガスとしてそれぞれ互いに異なるハロシラン系ガスを用いる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第1原料ガスとして、水素化ケイ素系ガスまたはアミノシラン系ガスの少なくともいずれかを含むガスを用いる、請求項1から7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(b1)において供給される前記反応ガスおよび(b2)において供給される前記反応ガスとして、それぞれ窒素含有ガスを用いる、請求項1から8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異な第2膜を形成する工程とを有し、
前記第1膜及び前記第2膜の一方は、
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第1膜及び前記第2膜の他方は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第1原料ガスを供給する工程と、
(c2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される、
基板処理方法。
【請求項11】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する工程を有し、
前記第1膜
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第2膜
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され
前記第1膜は第1電荷保持特性を有し、前記第2膜は第2電荷保持特性を有し、前記第1電荷保持特性は、前記第2電荷保持特性よりも優れている半導体装置の製造方法。
【請求項12】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する工程を有し、
前記第1膜は、
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第2膜は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第1膜は第1ステップカバレッジ特性を有し、前記第2膜は、前記第1ステップカバレッジ特性よりも優れる第2ステップカバレッジ特性を有する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異なる第2膜を形成する工程を有し、
前記第1膜は
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第2膜は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第1膜の膜厚は、前記第2膜の膜厚よりも薄い、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異な第2膜を形成する工程とを有し、
前記第1膜及び前記第2膜の一方は、
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
前記第1膜及び前記第2膜の他方は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)前記第1原料ガスを供給する工程と、
(c2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される、
半導体装置の製造方法。
【請求項15】
1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する手順と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する手順を有し、
前記第1膜
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する手順と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行する手順により形成
前記第2膜
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する手順と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行する手順により形成し、
前記第1膜は第1電荷保持特性を有し、前記第2膜は第2電荷保持特性を有し、前記第1電荷保持特性を、前記第2電荷保持特性よりも優れた特性とする手順を、コンピュータによっ基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項16】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する手順と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する手順を有し、
前記第1膜は
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する手順と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第2膜は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する手順と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第2膜が有する第2ステップカバレッジ特性を、前記第1膜が有する第1ステップカバレッジ特性よりも優れた特性とする手順を、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項17】
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する手順と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異なる第2膜を形成する手順を有し、
前記第1膜は
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する手順と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第2膜は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する手順と、
(b2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第1膜の膜厚を、前記第2膜の膜厚よりも薄くする手順を、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項18】
1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する手順と、
前記第1膜に隣接して前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異な第2膜を形成する手順とを有し、
前記第1膜及び前記第2膜の一方は、
(a1)前記第1元素を含有する第1原料ガスを供給する手順と、
(b1)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行する手順により形成
前記第1膜及び前記第2膜の他方は、
(a2)前記第1元素を含み前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する手順と、
(b2)前記第1原料ガスを供給する手順と、
(c2)前記第2元素を含有する反応ガスを供給する手順と、
を行うサイクルを所定回数実行する手順により形成する手順を、コンピュータによっ基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項19】
1元素を含む第1原料ガスを基板へ供給する第1原料ガス供給系と、
前記第1元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを前記基板へ供給する第2原料ガス供給系と、
前記第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスを前記基板へ供給する反応ガス供給系と、
前記第1元素及び前記第2元素を含有する第1膜を形成する処理と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する処理を有し、
前記第1膜
(a1)前記第1原料ガスを供給する処理と、
(b1)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第2膜
(a2)前記第2原料ガスを供給する処理と、
(b2)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第1膜は第1電荷保持特性を有し、前記第2膜は第2電荷保持特性を有し、前記第1電荷保持特性を、前記第2電荷保持特性よりも優れた特性とする処理を実行させるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系及び前記反応ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項20】
第1元素を含む第1原料ガスを基板へ供給する第1原料ガス供給系と、
前記第1元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを前記基板へ供給する第2原料ガス供給系と、
前記第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスを前記基板へ供給する反応ガス供給系と、
前記第1元素及び前記第2元素を含有する第1膜を形成する処理と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有する第2膜を形成する処理を有し、
前記第1膜は
(a1)前記第1原料ガスを供給する処理と、
(b1)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第2膜は、
(a2)前記第2原料ガスを供給する処理と、
(b2)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第2膜が有する第2ステップカバレッジ特性を、前記第1膜が有する第1ステップカバレッジ特性よりも優れた特性とする処理を実行させるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系及び前記反応ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項21】
第1元素を含む第1原料ガスを基板へ供給する第1原料ガス供給系と、
前記第1元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを前記基板へ供給する第2原料ガス供給系と、
前記第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスを前記基板へ供給する反応ガス供給系と、
前記第1元素及び前記第2元素を含有する第1膜を形成する処理と、
前記第1膜に隣接して、前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異なる第2膜を形成する処理を有し、
前記第1膜は
(a1)前記第1原料ガスを供給する処理と、
(b1)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第2膜は、
(a2)前記第2原料ガスを供給する処理と、
(b2)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第1膜の膜厚を、前記第2膜の膜厚よりも薄くする処理を実行させるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系及び前記反応ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項22】
1元素を含む第1原料ガスを基板へ供給する第1原料ガス供給系と、
前記第1元素を含み、前記第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを前記基板へ供給する第2原料ガス供給系と、
前記第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスを前記基板へ供給する反応ガス供給系と、
前記第1元素及び前記第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
前記第1膜に隣接して前記第1元素及び前記第2元素を含有し、前記第1膜とは電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異な第2膜を形成する処理とを有し、
前記第1膜及び前記第2膜の一方は、
(a1)前記第1原料ガスを供給する処理と、
(b1)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成し、
前記第1膜及び前記第2膜の他方は、
(a2)前記第2原料ガスを供給する処理と、
(b2)前記第1原料ガスを供給する処理と、
(c2)前記反応ガスを供給する処理と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成する処理を実行させるように、前記第1原料ガス供給系、前記第2原料ガス供給系及び前記反応ガス供給系を制御することが可能なように構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性メモリであるNANDメモリは、近年、多層化が進み、3DNANDが開発されている。3DNANDの各メモリセルは、データを保持するチャージトラップナイトライド(CTN)と呼ばれる窒化膜を有する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-117977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CTNは、良好な電荷保持特性が望まれている。また、CTNは、狭く長い溝の中に均一に成膜され、そのため、良好なステップカバレッジ特性を備えることが望まれている。
【0005】
本開示の目的は、良好な電荷保持特性および良好なステップカバレッジ特性を達成することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
第1膜に隣接して、第1元素及び第2元素を含有し、第1膜の特性と異なる特性を有する第2膜を形成する工程を有し、
第1膜及び第2膜の一方は、
(a1)第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成され、
第1膜及び第2膜の他方は、
(a2)第1元素を含み第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される
技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、良好な電荷保持特性および良好なステップカバレッジ特性を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
図2】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を図1のA-A線断面図で示す図である。
図3】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
図4】3DNANDのメモリセルの断面構造の一例を示す図である。
図5】3DNANDのメモリセルの製造工程の一例を示す図である。
図6】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理工程により形成されるCTNを説明するための図である。
図7】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理工程により形成されるCTNの変形例を示す図である。
図8】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理工程により形成されるCTNの変形例を示す図である。
図9】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理工程により形成されるCTNの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について図1図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の筒中空部には、処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、反応管203の下部側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管232a,232bがそれぞれ接続されている。
【0013】
ガス供給管232a,232bには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232cが接続されている。ガス供給管232cには、ガス流の上流側から順に、MFC241cおよびバルブ243cが設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、ガス供給管232d,232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d,232eには、ガス流の上流側から順に、MFC241d,241eおよびバルブ243d,243eがそれぞれ設けられている。
【0014】
図2に示すように、ノズル249a,249bは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a,249bは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、第1元素を含む第1原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232cからは、第1元素を含み、第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
すなわち、第1原料ガスおよび第2原料ガスとしてそれぞれ互いに異なる原料ガスを用いる。
【0018】
ガス供給管232bからは、第1元素とは異なる第2元素を含む反応ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。なお、反応ガスは、原料ガスとは分子構造(化学構造)が異なる物質である。
【0019】
ガス供給管232d,232eからは、不活性ガス、例えば、窒素(N)ガスが、それぞれMFC241d,241e、バルブ243d,243e、ガス供給管232a,232b、ノズル249a,249bを介して処理室201内へ供給される。Nガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0020】
各ガス供給管から上述のようなガスをそれぞれ流す場合、主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第1原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第2原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d,232e、MFC241d,241e、バルブ243d,243eにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0021】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243eやMFC241a~241e等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232eのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232e内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243eの開閉動作やMFC241a~241eによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232e等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0022】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、さらに、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、圧力センサ245、APCバルブ244により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0023】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、反応管203の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0024】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が水平姿勢で多段に支持されている。
【0025】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0026】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0027】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0028】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241e、バルブ243a~243e、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0029】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241eによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243eの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0030】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0031】
図4は、本開示における基板処理工程が用いられる3DNANDのメモリセルの断面構造の一例を示す図である。図5(A)~図5(I)は、図4に示す3DNANDのメモリセルの製造工程の一例を示す図である。
【0032】
3DNANDのメモリセルは、先ず、ウエハ200上に、シリコン酸化膜(SiO膜)300とシリコン窒化膜(SiN膜)302とが交互に積層される。そして、その交互に積層された積層膜の上から下までを凹状にエッチングし、トレンチやホール等の凹部303を形成する(図5(A)参照)。
【0033】
次に、凹部303の内面に、第1酸化膜としてブロック膜(以下、BOx膜と称す)304を形成する(図5(B)参照)。BOx膜304は、例えば、SiO膜やHigh-k膜やこれらの積層膜であって、電荷がトンネルすることを防ぐ機能を有する。
【0034】
次に、BOx膜304の内面に、CTNでありSi膜(x、yは1以上の整数)である電荷トラップ膜(以下、CTN膜と称す)306を形成する(図5(C)参照)。CTN膜306は、電荷をトラップする機能を有する。
【0035】
次に、CTN膜306の内面に、第2酸化膜としてトンネル酸化膜(以下、TOx膜と称す)308を形成する(図5(D)参照)。TOx膜308は、例えば、シリコン酸窒化膜(SiON膜)であって、電荷をトンネルする機能を有する。
【0036】
次に、TOx膜308の内面にポリシリコン(Poly-Si)等のチャネル膜310を形成する(図5(E))。
【0037】
次に、チャネル膜310の内面であって、凹部303内の溝に、埋め込み酸化膜312を充填する(図5(F))。
【0038】
次に、図5(A)において積層されたSiN膜302をエッチングする(図5(G))。
【0039】
次に、SiN膜302がエッチングされたSiO膜300の内面に金属含有膜等のライナー膜314を形成する(図5(H))。ライナー膜314は、例えば酸化アルミニウム(AlO)膜や窒化チタン(TiN)膜である。
【0040】
そして、ライナー膜314の内側に金属含有膜を充填してワード電極であるコントロールゲート316を作成する(図5(I))。
【0041】
以上のように、3DNANDのメモリセルは、BOx膜304、CTN膜306、TOx膜308、チャネル膜310、コントロールゲート316の順に作成される。
【0042】
これに対して、プレーナー型のNANDのメモリセルは、チャネル膜310、TOx膜308、CTN膜306、BOx膜304、コントロールゲート316の順に作成される。
【0043】
ここで、NANDのメモリセルは、電荷を蓄積することによりデータを記憶する。この電荷は、TOx膜308、CTN膜306及びBOx膜304により構成されるONO膜320においてCTN膜306にトラップされる。
【0044】
ここで、CTN膜306は、良好な電荷保持特性(電荷トラップ特性ともいう)のみならずステップカバレッジ特性が望まれる。電荷保持特性とは、電荷を保持する能力である。また、ステップカバレッジ特性とは、段差被覆性であって、凹部303内の上側面の膜厚と下側面の膜厚との関係である。凹部303内の上側面と下側面との差が小さいほど、ステップカバレッジ特性が良好である。
【0045】
しかしながら、CTN膜306となるSiN膜は、形成する際に用いるガス種によって、電荷保持特性とステップカバレッジ特性が異なり、この電荷保持特性とステップカバレッジ特性を両立させることが課題であった。本態様においては、これらの課題を解消するために、CTN膜306を形成する際に、以下の基板処理工程を行うこととしている。
【0046】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上にCTN膜306を形成する基板処理シーケンス例、すなわち、成膜シーケンス例(基板処理方法、半導体装置の製造方法の一例でもある)について説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0047】
本開示の一態様によれば、
第1元素及び第2元素を含有する第1膜を形成する工程と、
第1膜に隣接して、第1元素及び第2元素を含有し、第1膜の特性と異なる特性を有する第2膜を形成する工程を有する。
そして、第1膜は、
(a1)第1元素を含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される。
また、第2膜は、
(a2)第1元素を含み第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)第2元素を含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される。
より具体的には、
第1元素としてSi及び第2元素としてNを含有する第1膜として第1SiN膜を形成する工程と、
第1SiN膜に隣接して、Si及びNを含有し、第1SiN膜の特性と異なる特性を有する第2膜として第2SiN膜を形成する工程を有する。
【0048】
そして、第1SiN膜は、
(a1)Siを含有する第1原料ガスを供給する工程と、
(b1)Nを含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される。
【0049】
また、第2SiN膜は、
(a2)第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b2)Nを含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される。
【0050】
本明細書では、本態様における成膜シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様等の説明においても同様の表記を用いる。
(第1原料ガス→反応ガス)×m+(第2原料ガス→反応ガス)×n (mは、1以上、好ましくは2以上の整数、nは、1以上、好ましくは2以上の整数)
⇒ 第1SiN膜 + 第2SiN膜 ⇒ CTN膜
【0051】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0052】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220を介して反応管203の下端をシールした状態となる。このとき、例えば、上述した図5(B)に示すように、ウエハ200上の凹部303内の表面には、BOx膜304が凹状に形成されている。
【0053】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の処理圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度(成膜温度)となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。なお、処理温度とはウエハ200の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。以下の説明においても同様である。
【0054】
(成膜処理)
その後、以下のステップを順次実行する。
【0055】
<第1膜形成工程>
[ステップa1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわちウエハ200上に形成されたBOx膜304に対して第1原料ガスを供給する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ第1原料ガスを流す。第1原料ガスは、MFC241aにより流量制御され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対して第1原料ガスが供給される。このとき同時にバルブ243d,243eを開き、ガス供給管232d,232e内へNガスを流す。Nガスは、MFC241d,241eにより流量調整される。流量調整されたNガスは、第1原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。
【0056】
本ステップの処理条件としては、
第1原料ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは100~1000sccm
ガス供給流量(各ガス供給管):100~20000sccm
各ガス供給時間:0.5~60秒、好ましくは1~30秒
処理温度(第1温度よりも高い温度、好ましくは、第1温度よりも高く第2温度よりも低い温度):500~1000℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃
処理圧力:1~2666Pa、好ましくは10~1333Pa
が例示される。なお、本明細書における「500~1000℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、「500~1000℃」とは「500℃以上1000℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0057】
なお、本態様では、本ステップの前処理として、ウエハ200に対してNHガス等の反応ガスを先行して供給するプリフローを行っている。プリフローにおいてNHガスをウエハ200に供給することによって、ウエハ200の表面上に水素(H)による吸着サイトを形成し、本ステップや後述するステップb1において、Si原子が吸着しやすい状態(すなわち、Si原子との反応性の高い状態)としている。プリフローの手順は、例えば、後述するステップb1と同様に行うことができる。
【0058】
上述の条件下では、第1原料ガスの分子構造の大部分を熱分解させて、Siに未結合手を有するようにする。これにより未結合手を有することとなったSiを、ステップa1においてウエハ200表面上の吸着サイトと反応させて、ウエハ200の表面に吸着させることができる。また、第1原料ガスの熱分解により未結合手を有することとなったSi同士は結合して、Si-Si結合を形成する。これらのSi-Si結合をウエハ200の表面上に残存した吸着サイト等と反応させることにより、BOx膜304上にSi-Si結合を含ませ、Siが多重に堆積した層とすることが可能となる。すなわち、本ステップにより、第1膜に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)を、後述する第2膜に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)よりも大きくする。つまり、第1膜は、第2膜に比べてSiリッチな膜となる。これにより、トラップ準位が増加し、電荷保持特性が向上する。すなわち、第1膜のトラップ準位は、第2膜のトラップ準位よりも多い。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。
【0059】
なお、本ステップにより第1膜に含ませるSi-Si結合の量を後述する第2膜に含ませるSi-Si結合の量よりも大きくするためには、上述の通り、第1原料ガスの熱分解温度が第2原料ガスの熱分解温度よりも低いことが好適である。換言すると、第1原料ガスは第2原料ガスよりも、同一条件下においてSi-Si結合を形成しやすいガスであることが望ましい。例えば、第1原料ガスの分子中にSi-Si結合が含まれていることや、第1原料ガスの分子中におけるCl等のハロゲン元素に対するSiの組成比が、第2原料ガスのものよりも大きいことなどが好適である。このように、本ステップでは、後述するステップa2よりも、ウエハ表面上に残存した吸着サイト等に反応するSi-Si結合が形成されやすいように、各ステップの処理温度等の処理条件の選択や、第1原料ガス及び第2原料ガスの選択が行われる。
【0060】
この結果、本ステップでは、第1膜の第1層として、Si含有層が形成される。
【0061】
なお、処理温度が500℃未満となると、第1原料ガスが熱分解しにくくなり、第1層の形成が困難となる場合がある。処理温度を500℃以上にすることにより、ウエハ200上に第1層を形成することが可能となる。処理温度を600℃以上にすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を650℃以上にすることで、上述の効果をより確実に得られるようになる。
【0062】
処理温度が1000℃を超えると、第1原料ガスの熱分解が過剰となり、自己飽和しないSiの堆積が急速に進みやすくなるため、第1層を略均一に形成することが困難となる場合がある。処理温度を1000℃以下とすることにより、第1原料ガスの過剰な熱分解を抑制し、自己飽和しないSiの堆積を制御することで、第1層を略均一に形成することが可能となる。処理温度を800℃以下とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を750℃以下とすることで、上述の効果をより確実に得られるようになる。
【0063】
ウエハ200上に第1膜の第1層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。なお、このとき、バルブ243d,243eは開いたままとして、不活性ガスとしてのNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0064】
第1原料ガスとして、第1元素としてのシリコン(Si)とハロゲン元素とを含むハロシラン系ガスを用いることができる。ハロシランとは、ハロゲン基を有するシランのことである。ハロゲン基には、クロロ基、フルオロ基、ブロモ基、ヨード基等が含まれる。すなわち、ハロゲン基には、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン元素が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む原料ガス、すなわち、クロロシラン系ガスを用いることができる。第1原料ガスとしては、1分子中に含まれるSi原子の数が2つ以上であり、Si-Si結合を有するクロロシラン系ガス、例えば、ヘキサクロロジシラン(SiCl、略称:HCDS)ガスを用いることができる。SiClガスは、後述する成膜処理においてSiソースとして作用する。本明細書では、処理室201内に第1原料ガスが単独で存在した場合に、第1原料ガスが熱分解する温度を第1温度と称する場合がある。第1原料ガスとしてSiClガスを用いたときの第1温度は、500℃以上の範囲内の所定の温度である。第1原料ガスとしては、SiClガスの他、モノシラン(SiH、略称:MS)ガス等の水素化ケイ素系ガス、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CHH、略称:3DMAS)ガス、ビスジエチルアミノシラン(SiH[N(C、略称:BDEAS)ガス等のアミノシラン系ガスの少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。第1原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0065】
不活性ガスとしては、Nガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述するステップb1,a2,b2においても同様である。
【0066】
[ステップb1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわちウエハ200上に形成されたBOx膜304上に形成された第1膜の第1層に対してNを含有する反応ガスを供給する。具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へ反応ガスを流す。反応ガスは、MFC241bにより流量制御され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対して反応ガスが供給される。
【0067】
本ステップにおける処理条件としては、
反応ガス供給流量:100~10000sccm、好ましくは1000~5000sccm
反応ガス供給時間:1~120秒、好ましくは10~60秒
処理圧力:1~4000Pa、好ましくは10~1000Pa
が例示される。他の処理条件は、ステップa1における処理条件と同様とする。ただし、ステップb1における温度条件は、成膜処理の生産性を向上させるという観点からは、ステップa1と同一の条件とすることが望ましいが、これらの条件と異ならせてもよい。
【0068】
上述の条件下では、第1膜の第1層であるSi含有層の少なくとも一部を窒化することができる。第1層に含まれていたClは、HCl、Cl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。
【0069】
この結果、ウエハ200上には、第1膜の第2層として、SiとNとを含むSiN層が形成される。なお、ステップa1における第1原料ガスの供給時間を、ステップb1における反応ガスの供給時間よりも長くすることで、Siリッチな第1膜を形成することができる。
【0070】
ウエハ200上に第1膜の第2層を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への反応ガスの供給を停止する。そして、上述のステップa1の残留ガス除去のステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0071】
反応ガスとしては、例えば、窒化ガス(窒化剤)である窒素(N)及び水素(H)含有ガスを用いることができる。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。N及びH含有ガスは、N-H結合を有することが好ましい。反応ガスとしては、例えば、NHガス、ジアゼン(N)ガス、ヒドラジン(N)ガス、Nガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0072】
[所定回数実行]
上述のステップa1とステップb1を1サイクルとして、このサイクルを所定回数(m回、mは1、好ましくは2以上の整数)実行することにより、ウエハ200のBOx膜304上に、第1膜として、例えば、所定組成比および所定膜厚のSi及びNを含有する第1SiN膜306aを形成することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成する層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。また、ステップa1とステップb1は、非同時に交互に行われてもよく、一部重複して行われてもよい。
【0073】
この結果、ウエハ200のBOx膜304上には、第1SiN膜306aが形成される。第1SiN膜306aは、Siリッチで電荷保持特性の良好な膜となる。すなわち、第1SiN膜306aは、Si及びNを含有し、第1電荷保持特性と第1ステップカバレッジ特性を有する膜となる。
【0074】
続けて(連続して)次の第2膜形成工程を行う。
【0075】
<第2膜形成工程>
[ステップa2]
次に、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1膜に対して、第2原料ガスを供給する。具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ第2原料ガスを流す。第2原料ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200上に形成された第1SiN膜306aに対して第2原料ガスが供給される。このとき同時にバルブ243d,243eを開き、ガス供給管232d,232e内へNガスを流す。Nガスは、MFC241d,241eにより流量調整される。流量調整されたNガスは、第2原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。
【0076】
本ステップにおける処理条件としては、
第2原料ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは100~1000sccm
第2原料ガス供給時間:10~300秒、好ましくは30~120秒
処理温度(第2温度よりも低い温度、好ましくは、第2温度よりも低く第1温度よりも高い温度):400~800℃、好ましくは500~800℃、より好ましくは600~750℃
が例示される。他の処理条件は、ステップa1における処理条件と同様とする。
【0077】
上述の条件下では、第2原料ガスにおけるSi-Cl結合の一部を切断し、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、上述の条件下では、第2原料ガスにおける切断されなかったSi-Cl結合をそのまま保持することができる。例えば、第2原料ガスを構成するSiが有する4つの結合手のうち、3つの結合手にそれぞれClを結合させた状態で、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、ウエハ200の表面に吸着したSiから切断されず保持されたClが、このSiに未結合手を有することとなった他のSiが結合することを阻害するので、ウエハ200上にSiが多重に堆積することを回避することができる。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。Siの吸着反応が進行し、ウエハ200の表面に残存する吸着サイトがなくなると、その吸着反応は飽和することになるが、本ステップでは、吸着反応が飽和する前に第2原料ガスの供給を停止し、吸着サイトが残存した状態で本ステップを終了することが望ましい。
【0078】
これらの結果、ウエハ200、すなわち、ウエハ200の第1膜上には、第2膜の第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSiおよびClを含む層、すなわち、Clを含むSi含有層が形成される。ここで、1原子層未満の厚さの層とは、不連続に形成される原子層のことを意味しており、1原子層の厚さの層とは、連続的に形成される原子層のことを意味している。また、1原子層未満の厚さの層が略均一であるということは、ウエハ200の表面上に略均一な密度で原子が吸着していることを意味している。第2膜の第1層は、ウエハ200上に略均一な厚さに形成されるため、ステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性に優れている。
【0079】
なお、処理温度が400℃未満となると、ウエハ200上にSiが吸着しにくくなり、第1層の形成が困難となる場合がある。処理温度を400℃以上にすることにより、ウエハ200上に第1層を形成することが可能となる。処理温度を500℃以上にすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。処理温度を600℃以上にすることで、上述も効果をより確実に得られるようになる。
【0080】
処理温度が800℃を超えると、第2原料ガスにおける切断されなかったSi-Cl結合をそのまま保持することが困難となるとともに、第2原料ガスの熱分解速度が増大するその結果、ウエハ200上にSiが多重に堆積し、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層を形成することが難しくなる場合がある。処理温度を800℃以下とすることにより、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層を形成することが可能となる。処理温度を750℃以下とすることで、上述の効果が確実に得られるようになる。
【0081】
ウエハ200の第1SiN膜306a上に第2膜の第1層を形成した後、バルブ243cを閉じ、処理室201内への第2原料ガスの供給を停止する。そして、上述のステップa1の残留ガス除去のステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0082】
第2原料ガスとして、第1元素を含み、第1原料ガスよりも熱分解温度が高いハロシラン系ガスを使用することができる。例えば、第2原料ガスは、第1元素としてのSiとハロゲン元素とを含むハロシラン系ガスである。第2原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。第2原料ガスとしては、1分子中に含まれるSi原子の数が1つであるクロロシラン系ガス、例えば、テトラクロロシラン(SiCl)ガスを用いることができる。SiClガスは、後述する成膜処理においてSiソースとして作用する。本明細書では、処理室201内に第2原料ガスが単独で存在した場合に、第2原料ガスが熱分解する温度を第2温度と称する場合がある。第2原料ガスとしてSiClガスを用いたときの第2温度は、800℃以上の範囲内の所定の温度である。第2原料ガスとしては、SiClガスの他、ジクロロシラン(SiHCl、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl、略称:TCS)ガス等のハロシラン原料ガスを用いることができる。第2原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0083】
[ステップb2]
このステップでは、処理室201内のウエハ200上、例えば、第1SiN膜306a上に形成された第2膜の第1層に対して反応ガスを供給する。具体的には、上述のステップb1の反応ガス供給ステップと同様の処理手順、処理条件により、第1SiN膜306a上に形成された第2膜の第1層に対して反応ガスを供給する。
【0084】
ウエハ200上に第2膜の第2層を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への反応ガスの供給を停止する。そして、上述のステップa1の残留ガス除去のステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0085】
[所定回数実行]
上述したステップa2、b2を1サイクルとして、このサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)実行することにより、ウエハ200上の、第1膜としての第1SiN膜306aに隣接して、第2膜として、例えば、所定組成比および所定膜厚の第2SiN膜306bを形成することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成するSiN層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
【0086】
この結果、第1SiN膜306a上には、第2SiN膜306bが形成される。第2SiN膜306bは、均一に成膜されて、ステップカバレッジの良好な膜となる。すなわち、第2SiN膜306bは、Si及びNを含有し、第2電荷保持特性と第2ステップカバレッジ特性を有する膜となる。すなわち、第2SiN膜306bは、第1SiN膜306aと異なる特性を有する膜となる。
【0087】
すなわち、第1SiN膜306aと第2SiN膜306bは、原料ガスが異なることによりそれぞれ異なる特性を有することとなる。より具体的には、第1SiN膜306aと第2SiN膜306bは、熱分解温度の違いにより、それぞれの電荷保持特性およびステップカバレッジ特性が異なるものとなる。
【0088】
第1SiN膜306aの第1電荷保持特性は、第2SiN膜306bの第2電荷保持特性よりも優れている。例えば、第1SiN膜306aの第1電荷保持特性は、第2SiN膜306bの第2電荷保持特性よりも、2倍以上優れている。好ましくは、第1SiN膜306aの第1電荷保持特性は、第2SiN膜306bの第2電荷保持特性よりも、10倍以上優れている。より好ましくは、第1SiN膜306aの第1電荷保持特性は、第2SiN膜306bの第2電荷保持特性よりも、15倍以上優れている。また、第2SiN膜306bの第2ステップカバレッジ特性は、第1SiN膜306aの第1ステップカバレッジ特性よりも優れている。例えば、本態様によれば、第2SiN膜306bは、少なくとも70%のステップカバレッジ(例えば、溝に形成された第2SiN膜306bの下側面の膜厚は、上側面の膜厚よりも厚く、下側面の膜厚に対する上側面の膜厚比が70%)を得ることができる。また、例えば、本態様における上述のいずれかの方法によれば、第2SiN膜306bは、80%以上のステップカバレッジを得ることもできる。また、例えば、本態様における上述のいずれかの方法によれば、第2SiN膜306bは、好ましくは85%以上のステップカバレッジを得ることもできる。更に、例えば、本態様における上述のいずれかの方法によれば、第2SiN膜306bは、より好ましくは90%以上のステップカバレッジを得ることもできる。第1SiN膜306aも、同様なステップカバレッジを得ることができるが、第2SiN膜306bのステップカバレッジが第1SiN膜306aよりも優れるように形成される。このような第2SiN膜306bによれば、適宜ウエハ200の表面に設けられた凹部内の全域にわたり均一でコンフォーマルな膜を形成することが可能となる。
【0089】
つまり、BOx膜304の界面側に配置される第1SiN膜306aは、第2SiN膜306bの第2電荷保持特性よりも優れる第1電荷保持特性を備える膜となる。また、TOx膜308の界面側に配置される第2SiN膜306bは、第1SiN膜306aの第1ステップカバレッジ特性よりも優れる第2ステップカバレッジ特性を備える膜となる。言い換えると、CTN膜306は、電荷保持特性の優れる第1SiN膜306aと、ステップカバレッジ特性の優れる第2SiN膜306bと、を含む積層膜(多層膜ともいう)により構成される。
【0090】
ここで、NANDのメモリセルは、CTN膜306の、BOx膜304界面側(コントロールゲート316側)に電荷がチャージされる。このため、BOx膜304界面側におけるCTN膜306の電荷保持特性が重要となる。本開示におけるCTN膜306は、BOx膜304界面側に電荷保持特性の優れる第1SiN膜306aを配置し、TOx膜308界面側にステップカバレッジ特性の優れる第2SiN膜306bを配置するよう構成している。よって、CTN膜306は、全体として良好な電荷保持特性と良好なステップカバレッジ特性を兼ね備えた膜となり、CTN膜306の電荷保持特性を高める効果と、ステップカバレッジ特性を向上させる効果と、を両立することが可能となる。
【0091】
なお、第1SiN膜306aの膜厚は、第2SiN膜306bの膜厚よりも薄く形成するのが好ましい。第1SiN膜306aは、第2SiN膜306bと比較して膜厚を薄く形成した場合であっても、電荷保持特性を高めることが可能であり、第2SiN膜306bの膜厚を第1SiN膜306aの膜厚と比較して厚く形成することにより、CTN膜306のステップカバレッジ特性を向上させることができる。
【0092】
具体的には、CTN膜306のうちの、BOx膜304側の1nm~3nmであって、例えば2nm程度を、電特保持特性の良好な第1SiN膜306aとし、TOx膜308側の3nm~7nmであって、例えば6nm程度を、ステップカバレッジ特性の良好な第2SiN膜306bとする。第1SiN膜306aと第2SiN膜306bとの合計膜厚は、適宜可能であるが、ここでは、8nmとして例示している。
【0093】
第1SiN膜306aの膜厚が1nm未満となると、十分な電荷を保持できない場合がある。第1SiN膜306aの膜厚を1nm以上とすることにより、十分な電荷を保持することが可能となる。また、第1SiN膜306aの膜厚が3nmを超えると、十分な電荷を保持することは可能ではあるが、第2SiN膜306bを厚くすることができず、十分なステップカバレッジ特性を確保することが困難となる場合がある。第1SiN膜306aの膜厚を3nm以下にすることにより、電荷を保持しつつ十分なステップカバレッジ特性の確保が可能となる。
【0094】
また、第2SiN膜306bの膜厚が3nm未満となると、十分なステップカバレッジ特性が得られない場合がある。第2SiN膜306bの膜厚を3nm以上とすることにより、十分なステップカバレッジ特性を得ることが可能となる。また、第2SiN膜306bの膜厚が7nmを超えると、十分なステップカバレッジ特性を得ることは可能ではあるが、第1SiN膜306aを厚くすることができず、十分な電荷を保持することが困難となる場合がある。第2SiN膜306bの膜厚を7nm以下にすることにより、ステップカバレッジ特性を確保しつつ、十分な電荷保持が可能となる。
【0095】
以上のように、第1膜形成工程において、第1原料ガスを供給するステップa1と、反応ガスを供給するステップb1と、をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に形成されるSiN膜の電荷保持特性を良好とすることが可能となる。一方で、第1膜形成工程では、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さがウエハ面内で不均一になり易いことから、ウエハ200上に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることが困難となる場合がある。
【0096】
また、第2膜形成工程において、第1原料ガスよりも熱分解温度が高く、熱分解しにくい第2原料ガスを供給するステップa2と、反応ガスを供給するステップb2と、をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さがウエハ面内にわたり均一であることから、ウエハ200上に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を良好にすることが可能となる。一方で、電荷保持特性を向上させることが困難となる場合がある。
【0097】
本開示におけるCTN膜306は、ステップa1と、ステップb1と、をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより形成される第1SiN膜306aと、ステップa2と、ステップb2と、をこの順に行うサイクルを所定回数行うことにより形成される第2SiN膜306bと、を積層することにより構成されている。
【0098】
すなわち、本開示では、CTN膜306を、電荷保持特性の優れた第1SiN膜306aと、ステップカバレッジ特性の優れた第2SiN膜306bとを積層させた積層膜とすることにより、優れた電荷保持特性と優れたステップカバレッジ特性を備える膜を形成することが可能となる。
【0099】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
上述の成膜処理が終了した後、ガス供給管232d,232eのそれぞれから不活性ガスとしてのNガス処理室201内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0100】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0101】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す一つ又は複数の効果が得られる。
【0102】
(a)本態様では、第1原料ガスを供給して形成する第1膜と、第2原料ガスを供給して形成する第2膜と、を積層することから、ウエハ200上に形成されるCTN膜の電荷保持特性を高める効果と、ステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、を両立することが可能となる。
【0103】
本態様の一例では、第1膜形成工程において、ウエハ200に対して、第1原料ガスとして、第2原料ガスとしてのSiClガスよりも熱分解温度が低く、熱分解しやすいSiClガスを供給すると、ウエハ200上にはSi-Si結合を有する、1原子層を超える厚さのSi含有層が形成されることとなる。よって、SiClガスを用いた場合よりもSiリッチな膜となり、トラップ準位が増加し、電荷保持特性を向上させることが可能となる。
【0104】
また、本態様の一例では、第1原料ガスとしてSiClガスを用いた場合、第2原料ガスとしてSiClガスを用いた場合よりも、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さが厚いことから、ウエハ200上に形成されるSiN膜の成膜レートを良好とすることが可能となる。
【0105】
また、本態様の一例では、第2膜形成工程において、第2原料ガスとして、第1原料ガスとしてのSiClガスよりも熱分解温度が高く、熱分解しにくいSiClガスを供給すると、ウエハ200上には1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSi含有層が形成されることとなる。よって、1サイクルあたりに形成されるSi含有層の厚さがウエハ面内にわたり均一であることから、ウエハ200上に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を良好にすることが可能となる。
【0106】
本態様では、第1膜形成工程と第2膜形成工程の両工程を行うことから、各工程から得られるそれぞれの効果を両立させることが可能となる。
【0107】
(b)本態様の一例では、ステップa1の処理温度をSiClガスの熱分解温度(第1温度)よりも高くし、ステップa2の処理温度をSiClガスの熱分解温度(第2温度)よりも低くしているので、上述の効果を確実に得ることができる。
【0108】
ステップa1では、処理温度を第1温度より高い温度としているので、SiClガスの適切な熱分解を維持することができ、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜の成膜レートを向上させることが可能となる。また、SiN膜の組成比をSiリッチの方向に制御することが可能となる。よって、電荷保持特性を高める方向に制御することが可能となる。
【0109】
また、本態様の一例では、ステップa2では、処理温度を第2温度よりも低い温度としているので、SiClガスの熱分解を抑制することができ、ウエハ200上に最終的に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させることが可能となる。また、SiN膜の組成比をSiに近づける方向に制御することが可能となる。
【0110】
(c)なお、上述の効果は、上述したあらゆる第1原料ガス、第2原料ガス、反応ガス、不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。上述の効果は、原料ガスとしてハロシラン系ガスを用いる場合に、顕著に得られることになる。また、上述の効果は、原料ガスとしてクロロシラン系ガスを用いる場合に、特に顕著に得られることになる。
【0111】
(4)本開示の他の態様
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0112】
例えば、上述した第1膜形成工程を行った後、上述した第2膜形成工程の代わりに、次の第2膜形成工程を行ってもよい。すなわち、上述した第1膜の上に、第1膜の特性と異なる特性を有する第2膜として第3SiN膜を形成してもよい。
【0113】
第3SiN膜は、
(a3)Siを含み第1原料ガスよりも熱分解温度が高い第2原料ガスを供給する工程と、
(b3)第1原料ガスを供給する工程と、
(c3)Nを含有する反応ガスを供給する工程と、
を行うサイクルを所定回数実行することにより形成される。なお、各工程は、互いに非同時に実行されてもよく、隣接する工程の一部が重複するように実行されてもよい。
【0114】
すなわち、以下に示す成膜シーケンスにより、ウエハ200上にCTN膜(SiN膜)を形成するようにしてもよい。
(第1原料ガス→反応ガス)×m+(第2原料ガス→第1原料ガス→反応ガス)×p (pは、1以上、好ましくは2以上の整数)
⇒ 第1SiN膜 + 第3SiN膜 ⇒ CTN膜
【0115】
つまり、上述した第1膜形成工程を行った後、続けて(連続して)次の第2膜形成工程を行うようにしてもよい。
【0116】
<第2膜形成工程>
次のステップa3~c3を実行する。
【0117】
[ステップa3]
上述のステップa2と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のウエハ200、すなわちウエハ200上に形成された第1膜に対して、第2原料ガスを供給する。すなわち、ウエハ200上の第1SiN膜306aに対して、第2原料ガスを供給する。
【0118】
上述の条件下では、第2原料ガスにおけるSi-Cl結合の一部を切断し、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、上述の条件下では、第2原料ガスにおける切断されなかったSi-Cl結合をそのまま保持することができる。例えば、第2原料ガスを構成するSiが有する4つの結合手のうち、3つの結合手にそれぞれClを結合させた状態で、未結合手を有することとなったSiをウエハ200の表面の吸着サイトに吸着させることができる。また、ウエハ200の表面に吸着したSiから切断されず保持されたClが、このSiに未結合手を有することとなった他のSiが結合することを阻害するので、ウエハ200上にSiが多重に堆積することを回避することができる。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。Siの吸着反応が進行し、ウエハ200の表面に残存する吸着サイトがなくなると、その吸着反応は飽和することになるが、本ステップでは、吸着反応が飽和する前に第2原料ガスの供給を停止し、吸着サイトが残存した状態で本ステップを終了することが望ましい。
【0119】
これらの結果、ウエハ200の第1SiN膜306a上には、第1層として、1原子層未満の厚さの略均一な厚さのSiおよびClを含む層、すなわち、Clを含むSi含有層が形成される。第1層は、ウエハ200上に略均一な厚さに形成されるため、ステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性に優れている。
【0120】
第1層を形成した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への第2原料ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。なお、このとき、バルブ243d,243eは開いたままとして、不活性ガスとしてのNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0121】
[ステップb3]
上述のステップa1と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のウエハ200、すなわち、第1膜上に形成された第1層に対して、第1原料ガスを供給する。すなわち、第1SiN膜306a上の第1層に対して、第1原料ガスを供給する。
【0122】
本ステップでは、第1原料ガスの分子構造の大部分を熱分解させ、これにより未結合手を有することとなったSiを、ステップa3において第1層が形成されずに残存したウエハ200表面上の吸着サイトと反応させて、ウエハ200の表面に吸着させることができる。一方、第1層が形成された部分には吸着サイトが存在しないため、第1層上に対するSiの吸着は抑制される。その結果、本ステップでは、略均一な厚さに形成された第1層を基礎として、第2層としてのSi含有層が略均一な厚さで形成される。また、第1原料ガスの熱分解により未結合手を有することとなったSi同士は結合して、Si-Si結合を形成する。これらのSi-Si結合をウエハ200の表面上に残存した吸着サイト等と反応させることにより、第2層にSi-Si結合を含ませ、Siが多重に堆積した層とすることが可能となる。すなわち、本ステップにより、第2層に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)を、第1層に含ませるSi-Si結合の量(含有比率)よりも大きくする。Siから切り離されたClは、HClやCl等のガス状物質を構成して排気管231より排気される。
【0123】
なお、本ステップにより第2層に含ませるSi-Si結合の量を第1層に含ませるSi-Si結合の量よりも大きくするためには、上述の通り、第1原料ガスの熱分解温度が第2原料ガスの熱分解温度よりも低いことが好適である。換言すると、第1原料ガスは第2原料ガスよりも、同一条件下においてSi-Si結合を形成しやすいガスであることが望ましい。例えば、第1原料ガスの分子中にSi-Si結合が含まれていることや、第1原料ガスの分子中におけるCl等のハロゲン元素に対するSiの組成比が、第2原料ガスのものよりも大きいことなどが好適である。このように、本ステップでは、ステップa3よりも、ウエハ表面上に残存した吸着サイト等に反応するSi-Si結合が形成されやすいように、各ステップの処理温度等の処理条件の選択や、第1原料ガス及び第2原料ガスの選択が行われる。
【0124】
この結果、本ステップでは、第2膜の第2層として、第1層の厚さを超える略均一な厚さのSi含有層が形成される。成膜レートの向上等の観点から、本態様では特に、第2層として、1原子層を超える略均一な厚さのSi含有層を形成する。なお、本明細書において、第2層とは、ステップa3及びb3が1回ずつ実行されることにより形成されたウエハ200上のSi含有層を意味している。
【0125】
また、ステップa3,b3における温度条件は、実質的に同一の条件とすることが望ましい。これにより、ステップa3,b3の間で、ウエハ200の温度変更、すなわち、処理室201内の温度変更(ヒータ207の設定温度の変更)を行うことが不要となるので、ステップ間でウエハ200の温度を安定させるまでの待機時間が不要となり、基板処理のスループットを向上させることができる。従って、ステップa3,b3においては共に、ウエハ200の温度を、例えば500~800℃、好ましくは600~800℃、より好ましくは650~750℃の範囲内の所定の温度とするのがよい。本態様では、ステップa3,b3における温度条件が実質的に同一である場合、ステップa3においては第2原料ガスの熱分解が実質的に起こらず(すなわち抑制され)、ステップb3においては第1原料ガスの熱分解が起こる(すなわち促進される)ように、当該温度条件と、第1原料ガス及び第2原料ガスが選択される。
【0126】
ウエハ200上に第2層を形成した後、バルブ243cを閉じ、処理室201内への第1原料ガスの供給を停止する。そして、上述のステップa3の残留ガス除去のステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0127】
[ステップc3]
上述のステップb1と同様の処理手順、処理条件により、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1層と第2層とが積層してなる層に対してNHガスを供給する。
【0128】
この結果、ウエハ200の第1SiN膜306a上には、第2膜の第3層として、SiとNとを含むSiN層が形成される。ウエハ200上に第3層を形成した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への反応ガスの供給を停止する。そして、上述のステップa3の残留ガス除去のステップと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0129】
[所定回数実行]
上述したステップa3~c3を1サイクルとして、このサイクルを所定回数(p回、pは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上の、第1膜としての第1SiN膜306aに隣接して、第2膜として、所定組成比および所定膜厚の第3SiN膜306cを形成することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成するSiN層の厚さを所望の膜厚よりも小さくして、上述のサイクルを所望の膜厚になるまで複数回繰り返すのが好ましい。
【0130】
上述の態様では、第2膜形成工程において、第2原料ガスを供給するステップa3と、第1原料ガスを供給するステップb3と、の両方のステップを行うことから、上述の態様と同様の効果に加えて、ウエハ200上に形成されるSiN膜のステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を向上させる効果と、この膜の成膜レートを高める効果と、をさらに両立することが可能となる。
【0131】
また、上述の態様では、第2膜形成工程の各サイクルにおいて、ステップb3よりも先にステップa3を行い、その後にステップb3を行うことにより、ウエハ200上に最終的に形成される第3SiN膜306cのステップカバレッジ特性やウエハ面内膜厚均一性を充分に発揮しつつ、その成膜レートを高めることが可能となる。
【0132】
(5)変形例
上述の基板処理工程は、以下に示す変形例のように変形することができる。図7図9は、電荷トラップ膜であるCTN膜の変形例を示す図である。なお、特に説明がない限り、各変形例における構成は、上述した態様における構成と同様であり、説明を省略する。
【0133】
(変形例1)
本変形例では、図7に示すように、BOx膜304とTOx膜308の間に、BOx膜304側から順に、第1SiN膜306a、第2SiN膜306b、第1SiN膜306aの三層を含むCTN膜306を形成する。言い換えればBOx膜304と接する側とTOx膜304と接する側に電荷保持特性の優れた第1SiN膜306aを形成し、第1SiN膜306a間にステップカバレッジの優れた第2SiN膜306bを形成する。
【0134】
つまり、上述した基板処理工程において、BOx膜304が形成されたウエハ200上に、上述した第1膜形成工程により第1SiN膜306aを形成し、上述した第2膜形成工程により第2SiN膜306bを形成した後に、上述した第1膜形成工程と同様の処理手順、処理条件により、第3膜として電荷保持特性の良好な第1SiN膜306aを形成する。
【0135】
すなわち、上述した態様における第2SiN膜306b上に第3膜としての第1SiN膜306aを形成する。第3膜としての第1SiN膜306aは、上述したように第2SiN膜306bの第2電荷保持特性よりも優れる第1電荷保持特性を有する。なお、第3膜として第1SiN膜306aを用いる場合に限らず、第2SiN膜306bの第2電荷保持特性よりも優れる第3電荷保持特性を有する膜を用いてもよい。
【0136】
すなわち、本変形例における成膜シーケンスを、以下のように示すことができる。
(第1原料ガス→反応ガス)×m+(第2原料ガス→反応ガス)×n+(第1原料ガス→反応ガス)×q (qは、1以上、好ましくは2以上の整数)⇒ 第1SiN膜306a + 第2SiN膜306b + 第1SiN膜306a
⇒ CTN膜306
【0137】
以上により、電荷保持特性が良好で、ステップビバレッジが良好なCTN膜を形成することができる。また、TOx膜308側にも電荷保持特性の優れた第1SiN膜306aを形成することにより、TOx膜308から電荷を出し入れし易い、CTN膜306のTOx膜308側においても電荷を貯めておくことが可能となる。よって、メモリセルにおける書き込み読み出しのスピードが向上される。
【0138】
なお、上述した第2SiN膜306bの代わりに、上述した第3SiN膜306cを用いた場合であっても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0139】
(変形例2)
本変形例では、図8に示すように、BOx膜304とTOx膜308の間に、BOx膜304側から順に、第2SiN膜306b、第1SiN膜306a、第2SiN膜306bの三層を含むCTN膜306を形成する。言い換えればBOx膜304と接する側とTOx膜308と接する側にステップカバレッジの優れる第2SiN膜306bを形成し、第2SiN膜306b間に電荷保持特性の優れる第1SiN膜306aを形成する。電荷保持特性の優れた第1SiN膜306aは、BOx膜304に近いことが好ましい。このため、例えばCTN膜306膜の膜厚が80Åの場合、BOx膜304側の第2SiN膜306bの膜厚を例えば1nm、第1SiN膜306aの膜厚を例えば4nm、TOx膜308側の第2SiN膜306bを例えば3nmとする。
【0140】
つまり、上述した基板処理工程において、BOx膜304が形成されたウエハ200上に、上述した第1膜形成工程を実行する前であって、第1SiN膜306aを形成する前に、上述した第2膜形成工程と同様の処理手順、処理条件により、第3膜としてステップカバレッジの良好な第2SiN膜306bを形成する。
【0141】
すなわち、第1膜としての第1SiN膜306aを形成する前に第3膜としての第2SiN膜306bを形成する。第2SiN膜306bは、上述したように第1SiN膜306aの第1ステップカバレッジ特性よりも優れる第2ステップカバレッジ特性を有する。なお、第3膜として第2SiN膜306bを用いる場合に限らず、第1SiN膜306aの第1ステップカバレッジ特性よりも優れる第3ステップカバレッジ特性を有する膜を用いてもよい。
【0142】
すなわち、本変形例における成膜シーケンスを、以下のように示すことができる。
(第2原料ガス→反応ガス)×r (rは、1以上、好ましくは2以上の整数)+(第1原料ガス→反応ガス)×m+(第2原料ガス→反応ガス)×n ⇒ 第2SiN膜306b + 第1SiN膜306a + 第2SiN膜306b
⇒ CTN膜306
【0143】
以上により、電荷保持特性が良好で、ステップビバレッジが良好なCTN膜を形成することができる。また、BOx膜304側とTOx膜308側の両側にステップカバレッジ特性の優れた第2SiN膜306bを形成することにより、横穴の狭い凹部等に均一にCTN膜306を形成することが可能となる。
【0144】
なお、上述した第2SiN膜306bの代わりに、上述した第3SiN膜306cを用いた場合であっても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0145】
(変形例3)
本変形例では、図9に示すように、BOx膜304とTOx膜308の間に、BOx膜304の界面側がTOx膜308の界面側に比べてSi含有量の多い(Siリッチな)、CTN膜306を形成する。すなわち、BOx膜304側が電荷保持特性が良くなるように形成し、TOx膜308側がステップカバレッジが良くなるように形成する。
【0146】
すなわち、ウエハ200上のBOx膜304に対して、上述した基板処理工程の、上述したステップa1と、ステップb1と、を行うサイクルを、所定回数実行することによりSi及びNを含有するSiN膜を形成する工程を行う。このとき、ステップa1における第1原料ガスの供給量が各サイクルの後のサイクルになるにしたがって減少するように制御して供給する。
【0147】
すなわち、1サイクルあたりのステップa1における第1原料ガスの供給時間を各サイクルの後のサイクルになるにしたがって短くするように制御する。また、1サイクルあたりのステップa1における第1原料ガスの供給流量を各サイクルの後のサイクルになるにしたがって短くするように制御するようにしてもよい。
【0148】
これにより、CTN膜306において、BOx膜304側がSiリッチで電荷保持特性に優れ、TOx膜308側がステップカバレッジ特性に優れるSiN膜が形成され、電荷保持特性が良好で、ステップビバレッジが良好なCTN膜306を形成することができる。
【0149】
以上、本開示の種々の典型的な態様及び変形例を説明してきたが、本開示はそれらの態様及び変形例に限定されず、態様、変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【符号の説明】
【0150】
121 コントローラ
200 ウエハ(基板)
201 処理室
217 ボート
249a、249b ノズル
250a、250b ガス供給孔
232a~232d ガス供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9