(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/18 20060101AFI20240322BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240322BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20240322BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240322BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20240322BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20240322BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20240322BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240322BHJP
【FI】
H01M10/18
H01M10/04 Z
H01M4/14 Q
H01M4/02 Z
H01M4/64 A
H01M4/68 A
H01M4/70 A
H01M50/46
(21)【出願番号】P 2023535804
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2022028775
(87)【国際公開番号】W WO2023008426
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2021122682
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 惠造
(72)【発明者】
【氏名】西久保 英郎
(72)【発明者】
【氏名】荻原 吉章
(72)【発明者】
【氏名】金子 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 広樹
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0065106(US,A1)
【文献】実開昭49-062125(JP,U)
【文献】特開昭59-121787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 4/02-84
H01M 6/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記空間形成部材において前記正極側と前記負極側との間を貫通して形成される貫通穴と、
前記貫通穴に挿入されて前記正極側と前記負極側とを電気的に接続する導通体と、
を有し、
前記貫通穴の前記正極側の開口部近傍、及び、前記負極側の開口部近傍の少なくとも一方には、液絡防止部材が設けられており、前記正極用活物質層或いは前記負極用活物質層の厚みは、前記液絡防止部材の厚みよりも薄いことを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記液絡防止部材は、前記正極用集電体、及び、前記負極用集電体の少なくとも一方と前記電解質層との間に配置され、前記正極用集電体、及び、前記負極用集電体の少なくとも一方と接して配置されることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記液絡防止部材は、前記導通体と接合されることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記液絡防止部材の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚みは、前記基板の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記液絡防止部材の幅は、前記貫通穴における開口幅よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記空間形成部材において前記正極側と前記負極側との間を貫通して形成される貫通穴と、
前記貫通穴に挿入されて前記正極側と前記負極側とを電気的に接続する導通体と、
を有し、
前記貫通穴の前記正極側の開口部近傍、及び、前記負極側の開口部近傍の少なくとも一方には、液絡防止部材が設けられており、
前記液絡防止部材は、液絡防止部として前記導通体と一体に形成され、前記液絡防止部の電解質層と対向する領域には絶縁層が設けられていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項7】
前記液絡防止部の幅は、前記貫通穴における開口幅よりも大きく、前記導通体が前記貫通穴に挿入された場合、前記液絡防止部は、前記正極用集電体、前記負極用集電体と接することを特徴とする
請求項6に記載の双極型蓄電池。
【請求項8】
前記液絡防止部材は、個々の前記貫通穴の開口部近傍及び隣接して設けられる前記貫通穴の開口部近傍において連続的に配置され、その両端部は、前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体の外縁部まで延伸されていることを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項9】
前記液絡防止部材は、鋳造、或いは、鍛造により、集電体と一体に製造されていることを特徴とする
請求項8に記載の双極型蓄電池。
【請求項10】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記空間形成部材において前記正極側と前記負極側との間を貫通して形成される貫通穴と、
前記貫通穴に挿入されて前記正極側と前記負極側とを電気的に接続する導通体と、
を有し、
前記貫通穴の前記正極側の開口部近傍、及び、前記負極側の開口部近傍の少なくとも一方には、液絡防止部材が設けられており、
前記液絡防止部材は、接着剤で形成されていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項11】
前記液絡防止部材は、エポキシ樹脂を含有する主剤とアミン化合物を含有する硬化剤とが反応して硬化する反応硬化型接着剤の硬化物で形成されていることを特徴とする
請求項10に記載の双極型蓄電池。
【請求項12】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記空間形成部材において前記正極側と前記負極側との間を貫通して形成される貫通穴と、
前記貫通穴に挿入されて前記正極側と前記負極側とを電気的に接続する導通体と、
を有し、
前記貫通穴の前記正極側の開口部近傍、及び、前記負極側の開口部近傍の少なくとも一方には、液絡防止部材が設けられており、
前記液絡防止部材は、
接着剤で形成される第1の液絡防止部材と、
前記第1の液絡防止部材に接して配置される第2の液絡防止部材と、を備え、
前記第2の液絡防止部材は、樹脂で形成されていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項13】
前記第2の液絡防止部材は、非導電性樹脂で形成されていることを特徴とする
請求項12に記載の双極型蓄電池。
【請求項14】
前記第2の液絡防止部材は、個々の前記貫通穴の開口部近傍に配置される前記第1の液絡防止部材を結んで連続的に配置され、その両端部は、対向する位置に配置されている前記枠体と接合されていることを特徴とする
請求項12に記載の双極型蓄電池。
【請求項15】
隣接する空間形成部材の間に収容されるセル部材を貫通するプレス機構が設けられ、前記プレス機構の一端側は、前記第2の液絡防止部材、または、前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体のいずれかと接し、前記プレス機構の他端側は、前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体、または、前記第2の液絡防止部材のいずれかと接して配置されることを特徴とする
請求項12に記載の双極型蓄電池。
【請求項16】
前記プレス機構は、前記セル部材の貫通を可能とするために前記セル部材の各部に設けられる貫通穴の近傍であって、前記正極用活物質層、或いは、前記負極用活物質層と、前記電解質層との間を区切るカバー部材を備えていることを特徴とする
請求項15に記載の双極型蓄電池。
【請求項17】
前記液絡防止部材が前記貫通穴の前記正極側の開口部近傍に設けられている場合に、
前記第2の液絡防止部材は、前記正極用集電体の周縁部を覆うカバープレートであることを特徴とする
請求項12に記載の双極型蓄電池。
【請求項18】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし
請求項17のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項19】
空間形成部材の基板の一方の面及び他方の面を貫通して設けられる貫通穴に導通体を挿入する工程と、
前記一方の面に正極用集電体を配置する工程と、
前記他方の面に負極用集電体を配置する工程と、
前記正極用集電体及び前記負極用集電体の上から少なくとも一方の前記貫通穴を覆うように液絡防止部材を配置する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部材と前記負極用集電体側の前記液絡防止部材の間、または、前記液絡防止部材が前記正極用集電体側、或いは、前記負極用集電体のいずれか一方に配置される場合には前記液絡防止部材と前記負極用集電体との間、或いは、前記液絡防止部材と前記正極用集電体との間を挟むように溶接を行い、前記液絡防止部材、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体に接するように正極用活物質層を配置する工程と、
前記負極用集電体に接するように負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部材の電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
【請求項20】
空間形成部材の基板の一方の面及び他方の面を貫通して設けられる貫通穴に導通体を挿入する工程と、
正極用集電体及び負極用集電体の上から少なくとも一方の前記貫通穴を覆うように液絡防止部材を配置する工程と、
前記一方の面に前記正極用集電体を配置する工程と、
前記他方の面に前記負極用集電体を配置する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部材と前記負極用集電体側の前記液絡防止部材の間、または、前記液絡防止部材が前記正極用集電体側、或いは、前記負極用集電体のいずれか一方に配置される場合には前記液絡防止部材と前記負極用集電体との間、或いは、前記液絡防止部材と前記正極用集電体との間を挟むように溶接を行い、前記液絡防止部材、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体に接するように正極用活物質層を配置する工程と、
前記負極用集電体に接するように負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部材の電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
【請求項21】
空間形成部材の基板の一方の面に正極用集電体を配置する工程と、
前記基板の他方の面に負極用集電体を配置する工程と、
前記基板の前記一方の面及び前記他方の面を貫通して設けられる貫通穴に、一体に形成されている液絡防止部を備える導通体を前記正極用集電体側から挿入する工程と、
前記貫通穴に、前記液絡防止部を備える導通体を前記負極用集電体側から挿入する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部と前記負極用集電体側の前記液絡防止部とを挟むように溶接を行い、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記液絡防止部を備える導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体に接するように正極用活物質層を配置する工程と、
前記負極用集電体に接するように負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部の電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
【請求項22】
前記正極用活物質層、及び、前記負極用活物質層の厚みは、前記液絡防止部材、或いは、前記液絡防止部の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚み以上の厚みを有していることを特徴とする
請求項19ないし
請求項21のいずれかに記載の双極型蓄電池の製造方法。
【請求項23】
前記正極用活物質層、及び、前記負極用活物質層の厚みは、前記液絡防止部材、或いは、前記液絡防止部の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚みよりも薄いことを特徴とする
請求項19ないし
請求項21のいずれかに記載の双極型蓄電池の製造方法。
【請求項24】
空間形成部材の基板の一方の面及び他方の面を貫通して設けられる貫通穴に導通体を挿入する工程と、
前記一方の面に正極用集電体を配置する工程と、
前記他方の面に負極用集電体を配置する工程と、
前記正極用集電体及び前記負極用集電体の上から少なくとも一方の前記貫通穴を覆うように液絡防止部材を配置する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部材と前記負極用集電体側の前記液絡防止部材の間、または、前記液絡防止部材が前記正極用集電体側、或いは、前記負極用集電体のいずれか一方に配置される場合には前記液絡防止部材と前記負極用集電体との間、或いは、前記液絡防止部材と前記正極用集電体との間を挟むように溶接を行い、前記液絡防止部材、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体に接するように前記液絡防止部材の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚み以下の厚みを有する第1の正極用活物質層、第1の負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部材の突出部を覆うように第2の正極用活物質層、第2の負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部材の電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
【請求項25】
空間形成部材の基板の一方の面及び他方の面を貫通して設けられる貫通穴に導通体を挿入する工程と、
正極用集電体及び負極用集電体の上から少なくとも一方の前記貫通穴を覆うように液絡防止部材を配置する工程と、
前記一方の面に前記正極用集電体を配置する工程と、
前記他方の面に前記負極用集電体を配置する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部材と前記負極用集電体側の前記液絡防止部材の間、または、前記液絡防止部材が前記正極用集電体側、或いは、前記負極用集電体のいずれか一方に配置される場合には前記液絡防止部材と前記負極用集電体との間、或いは、前記液絡防止部材と前記正極用集電体との間を挟むように溶接を行い、前記液絡防止部材、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体に接するように前記液絡防止部材の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚み以下の厚みを有する第1の正極用活物質層、第1の負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部材の突出部を覆うように第2の正極用活物質層、第2の負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部材の電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
【請求項26】
空間形成部材の基板の一方の面に正極用集電体を配置する工程と、
前記基板の他方の面に負極用集電体を配置する工程と、
前記基板の前記一方の面及び前記他方の面を貫通して設けられる貫通穴に、一体に形成されている液絡防止部を備える導通体を前記正極用集電体側から挿入する工程と、
前記貫通穴に、前記液絡防止部を備える導通体を前記負極用集電体側から挿入する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部と前記負極用集電体側の前記液絡防止部とを挟むように溶接を行い、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記液絡防止部を備える導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体に接するように前記液絡防止部の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚み以下の厚みを有する第1の正極用活物質層、第1の負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部の突出部を覆うように第2の正極用活物質層、第2の負極用活物質層を配置する工程と、
前記液絡防止部の電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
【請求項27】
前記液絡防止部材は、前記貫通穴の開口部近傍に配置される第1の液絡防止部材と個々の前記第1の液絡防止部材を結んで連続的に配置される第2の液絡防止部材とからなり、前記第2の液絡防止部材の両端部は、対向する位置に配置されている枠体と接合する工程を備えていることを特徴とする
請求項19または
請求項20に記載の双極型蓄電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された鉛蓄電池では、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板(バイポーラプレート)が取り付けられている。基板の一方面及び他方面には、正極用鉛層及び負極用鉛層が設けられている。正極用鉛層には、正極用活物質層が隣接している。負極用鉛層には、負極用活物質層が隣接している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
さらに正極用鉛層と負極用鉛層とは、基板に複数形成された穿孔の内部で直接的に接合されている。すなわち、特許文献1に記載の鉛蓄電池は、一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を有する基板とセル部材とが交互に複数積層された双極(バイポーラ)型鉛蓄電池である。
【0005】
セル部材は、正極用鉛層に正極用活物質層を設けた正極と、負極用鉛層に負極用活物質層を設けた負極と、正極と負極との間に介在する電解層と、を有し、一方のセル部材の正極用鉛層と他方のセル部材の負極用鉛層とが基板の穿孔の内部に没入して接合されることにより、セル部材同士が直列に接続されたものとなっている。ここで正極用鉛層と負極用鉛層とが接合される際には、例えば、抵抗溶接が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した基板に設けられる正極用鉛層、或いは、負極用鉛層は、それぞれ薄い膜状(鉛箔)に形成されている。これら正極用鉛箔と負極用鉛箔を基板の上に設ける方法としては、例えば、基板の上に接着剤を塗布してその上から正極用鉛箔と負極用鉛箔を載置し、接着剤を介して基板に接着することが考えられる。ここで、接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂が用いられる。
【0008】
このように接着剤を用いて基板に正極用鉛箔と負極用鉛箔とを接着した状態を示すのが
図27である。なお、接着剤を用いて基板と接着される鉛箔は正極用鉛箔と負極用鉛箔とがあるが、
図27では正極用鉛箔を例に挙げて説明している。すなわち
図27の(a)に示すように、このバイポーラ電極の正極は、樹脂製の基板210の一方の面の上に接着層240を介して正極用鉛箔220が配され、当該正極用鉛箔220の上に正極用活物質層(図示せず)が配されることによって構成されている。
【0009】
上記のような双極型鉛蓄電池においては、電解液に含有される硫酸によって正極用鉛箔220が腐食して正極用鉛箔220の表面に腐食生成物(酸化鉛)の被膜260が生成されることがある(
図27の(b)を参照)。そして、この腐食生成物の被膜260の成長によって正極用鉛箔220に伸び(グロース)が生じるおそれがあった。
【0010】
また、このグロースによって正極用鉛箔220と接着層240とが剥離し、正極用鉛箔220と接着層240との界面に電解液が浸入して、硫酸による正極用鉛箔220の腐食がさらに進行するおそれがあった(
図27の(c)を参照)。その結果、腐食が例えば正極用鉛箔220の裏面(基板210に対向する面)にまで達すると、正極用鉛箔220の剥離が生じるなどして電池の性能が低下する場合があった。
【0011】
さらには、正極と負極との導通を図るために設けられる、上述した一方面側と他方面側とを連通させる穿孔(連通孔)を介して電解液が正極側から負極側に到達すると、いわゆる液絡が生じ、電圧低下を引き起こして電池性能の低下を招来する。
【0012】
また、例えば、正極用鉛層と負極用鉛層とを接合するに当たっては、上述したように抵抗溶接が利用される。しかしながら、様々な要因により正極用鉛層と負極用鉛層とが適切に溶接されないと接合不良を生じてしまう可能性がある。
【0013】
接合不良により基板と正極用鉛層との間に電解液が浸入すると、この電解液が、例えば、穿孔(連通孔)を介して基板と負極用鉛層との間に浸入して液絡を生じてしまい、上述したように性能低下を生じてしまうおそれがあった。
【0014】
本発明は、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避するとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、空間形成部材において正極側と負極側との間を貫通して形成される貫通穴と、貫通穴に挿入されて正極側と負極側とを電気的に接続する導通体と、を有し、貫通穴の正極側の開口部近傍、及び、負極側の開口部近傍の少なくとも一方には、液絡防止部材が設けられており、正極用活物質層或いは負極用活物質層の厚みは、液絡防止部材の厚みよりも薄い。
【0016】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池の製造方法は、空間形成部材の基板の一方の面及び他方の面を貫通して設けられる貫通穴に導通体を挿入する工程と、一方の面に正極用集電体を配置する工程と、他方の面に負極用集電体を配置する工程と、正極用集電体及び負極用集電体の上から少なくとも一方の貫通穴を覆うように液絡防止部材を配置する工程と、配置された正極用集電体側の液絡防止部材と負極用集電体側の液絡防止部材の間、または、前記液絡防止部材が前記正極用集電体側、或いは、前記負極用集電体のいずれか一方に配置される場合には前記液絡防止部材と前記負極用集電体との間、或いは、前記液絡防止部材と前記正極用集電体との間を挟むように溶接を行い、液絡防止部材、正極用集電体、負極用集電体、及び、導通体を接合する工程と、正極用集電体に接するように正極用活物質層を配置する工程と、負極用集電体に接するように負極用活物質層を配置する工程と、液絡防止部材の電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、空間形成部材において正極側と負極側との間を貫通して形成される貫通穴と、貫通穴に挿入されて正極側と負極側とを電気的に接続する導通体と、を有し、貫通穴の正極側の開口部近傍、及び、負極側の開口部近傍の少なくとも一方には、液絡防止部材が設けられている。このような構成を採用することによって、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避するとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る双極型蓄電池の構造の概略を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態において、溶接工程に係る双極型蓄電池の要部の構造を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池のうち、基板を中心に導通体、液絡防止部材、正極及び負極が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施の形態に係る双極型蓄電池のうち、基板を中心に導通体、液絡防止部材、正極及び負極が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態における双極型蓄電池の変形例を示す拡大断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係る双極型蓄電池のうち、基板を中心に導通体、液絡防止部材、正極及び負極が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れを示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第4の実施の形態に係る双極型蓄電池のうち、基板を中心に導通体、正極及び負極が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【
図11】本発明の第4の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れを示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第5の実施の形態に係る双極型蓄電池のうち、基板を中心に導通体、液絡防止部材、正極及び負極が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【
図13】本発明の第5の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れを示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第5の実施の形態に係る双極型蓄電池の製造の流れを示すフローチャートである。
【
図15】本発明の実施の形態における液絡防止部材が貫通穴の正極側の開口部近傍、及び、負極側の開口部近傍の少なくとも一方に設けられた例を示した斜視図である。
【
図16】
図15に示すバイポーラプレートをA-A線で切断して示す切断断面図である。
【
図17】本発明の第6の実施の形態に係る双極型蓄電池において、液絡防止部材が貫通穴の開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。
【
図18】本発明の第7の実施の形態に係る双極型蓄電池において、液絡防止部材が貫通穴の開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。
【
図19】
図18に示すバイポーラプレートをB-B線で切断して示す切断断面図である。
【
図20】本発明の第8の実施の形態に係る双極型蓄電池において、液絡防止部材が貫通穴の開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。
【
図21】
図20に示すバイポーラプレートをC-C線で切断して示す切断断面図である。
【
図22】本発明の第9の実施の形態に係る双極型蓄電池において、液絡防止部材が貫通穴の開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。
【
図23】
図22に示すバイポーラプレートをD-D線で切断して示す切断断面図である。
【
図24】本発明の第10の実施の形態に係る双極型蓄電池において、液絡防止部材が貫通穴の開口部近傍に設けられ、さらにセル部材を貫通するように設けられたプレス機構を示した切断断面図である。
【
図25】本発明の第11の実施の形態に係る双極型蓄電池において、液絡防止部材が貫通穴の開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。
【
図26】
図25に示すバイポーラプレートをE-E線で切断して示す切断断面図である。
【
図27】従来の双極型鉛蓄電池において、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極用鉛箔にグロースが生じた結果、正極用鉛箔と接着層との界面に電解液が浸入する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
〔全体構成〕
まず、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池の全体構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造の概略を示す概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140と、カバープレート160とを有する。
【0022】
ここで、
図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0023】
なお、以下においては、
図1に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(
図1の上下方向)とし、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。
【0024】
セル部材110は、正極111、負極112、およびセパレータ(電解質層)113を備えている。正極111は、正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は、負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0025】
セパレータ113には電解液が含浸されている。セパレータ113は、正極111と負極112との間に介在している。セル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aは、この順に積層されている。
【0026】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きく(厚く)、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0027】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121の間に挟まれた状態で積層されている。
【0028】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0029】
すなわち、バイポーラプレート120は、セル部材110の正極側および負極側の両方を覆い、平面形状が長方形の基板121と、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆うに枠体122と、を含む空間形成部材である。
【0030】
また、
図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
バイポーラプレート120を構成する基板121と枠体122と柱部123は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0032】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。そして、複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層されることにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成され、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0033】
正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0034】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bの深さは第2の凹部121cの深さより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0035】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aが配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aが配置されている。
【0036】
具体的には、正極用鉛箔111aは、基板121の第1の凹部121bと正極用鉛箔111aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第1の凹部121bに接合されている。また、負極用鉛箔112aは、基板121の第2の凹部121cと負極用鉛箔112aの間に設けられる接着剤150を介して基板121の第2の凹部121cに接合されている。
【0037】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤150を介して配置されている。
【0038】
正極用鉛箔111aの外縁部には、当該外縁部を覆うためのカバープレート160が設けられている。このカバープレート160は、薄板状の枠体で、長方形の内形線および外形線を有する。そして、カバープレート160の内縁部が正極用鉛箔111aの外縁部と重なり、カバープレート160の外縁部が基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と重なっている。
【0039】
すなわち、カバープレート160の内形線をなす長方形は、正極用活物質層111bの外形線をなす長方形より小さく、カバープレート160の外形線をなす長方形は、第1の凹部121bの開口面をなす長方形より大きい。
【0040】
接着剤150は、正極用鉛箔111aの端面から第1の凹部121bの開口側の外縁部まで回り込んで、カバープレート160の内縁部と正極用鉛箔111aの外縁部との間に配置される。また接着剤150は、カバープレート160の外縁部と基板121の一面との間にも配置されている。
【0041】
すなわち、カバープレート160は接着剤150により、基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの外縁部とに亘って固定されている。これにより、正極用鉛箔111aの外縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもカバープレート160で覆われている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。
【0042】
なお、
図1では示していないが、負極用鉛箔112aの外縁部も正極用鉛箔111aの外縁部を覆っているカバープレート160と同様のカバープレートで覆われていても良い。また、カバープレートについては、薄板状の枠体であることを例に挙げて説明したが、例えば、耐電解液(耐硫酸)性を備えていればテープ状の物等であっても構わない。
【0043】
バイポーラプレート120の基板121の貫通穴121aには導通体170が配置されている。また、導通体170の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、結合されている。すなわち、導通体170により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。なお、以下に説明する実施の形態において、導通体170の変形例が出てくる場合があるが、その変形例に特有の内容でなければ、引き続き適宜「導通体170」と表す。
【0044】
貫通穴121aの正極側の開口部近傍、及び、負極側の開口部近傍のいずれか一方には、液絡防止部材180が設けられている。
図1に示すように、この液絡防止部材180は、正極用鉛箔111a上、負極用鉛箔112a上であって、貫通穴121aの開口部を覆うように配置されている。
【0045】
このように液絡防止部材180は、貫通穴121aの正極側の開口部近傍、及び、負極側の開口部近傍のいずれか一方に設けられるが、当該「近傍」の中には、貫通穴121aを中心としたx方向やy方向に広がりを持つ場合のみならず、z方向において貫通穴121aの近傍に配置される場合も含む概念である。
【0046】
また、この液絡防止部材180は、例えば、鉛または鉛合金、鉛スズ共晶半田、或いは、セラミック分散金属で形成される。このうちセラミック分散金属については、電解液に含有される硫酸と接したとしても腐食等が生じにくい。またその形状は、例えば、平面で見た場合に円形や楕円形、矩形を含む多角形であっても良い。なお、
図1は双極型鉛蓄電池100の概略断面図であることから、液絡防止部材180は矩形状に示されている。
【0047】
このように液絡防止部材180は鉛等で形成されているが、その製造方法としては、例えば、鋳造を採用することができる。また鋳造の方法については、例えば、ブックモールド法や電鋳(電気めっき)等、いずれの方法であっても良い。
【0048】
さらに、鋳造ではなく、鍛造によっても製造することができる。鍛造の方法についても、何層にも折り畳んで鍛造する方法や型に入れる、型鍛造といった様々な方法を採用することができる。そして液絡防止部材180を鋳造や鍛造により正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aと一体に製造することもできる。
【0049】
また、鍛造後に熱処理等を行っても良い。当該熱処理を行うことによって、液絡防止部材180に出現しうる空隙等を埋めることで、当該空隙に電解液が浸入してしまうことを防止することができる。
【0050】
液絡防止部材180は、このような位置に配置され、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aを介して導通体170と接合されている。従って、このように接合されることによって、貫通穴121aは封止された状態となり、電解液が貫通穴121aを介して正極側から負極側に伝う、いわゆる液絡を防止することができる。なお、以下に説明する実施の形態において、液絡防止部材180の変形例が出てくる場合があるが、その変形例に特有の内容でなければ、引き続き適宜「液絡防止部材180」と表す。
【0051】
ここで液絡防止部材180の正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a、及び、導通体170との接合は以下のように行われる。
図2は、本発明の実施の形態において、溶接工程に係る双極型鉛蓄電池100の要部の構造を示す拡大断面図である。さらに
図2においては、溶接に必要な溶接機の一部を示している。
【0052】
図2に示すように、基板121に設けられている貫通穴121aには、導通体170が挿入されている。そして、この貫通穴121a及び導通体170を覆うように、正極用鉛箔111aが配置されている。
【0053】
具体的には、基板121の一方の面に、
図2においては図示されていない接着剤150が設けられ、その上に正極用鉛箔111aが配置されて接着剤150と正極用鉛箔111aとが接着されている。なお、当該接着剤150は、貫通穴121aの近傍には設けられていない。
【0054】
また、同じように、基板121の他方の面には、
図2においては図示されていない接着剤150が設けられ、その上に負極用鉛箔112aが配置されて接着剤150と負極用鉛箔112aとが接着されている。なお、
図2においては、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bの図示は省略されている。
【0055】
さらに、貫通穴121aを覆うように、また正極側及び負極側の両側から、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aに接するように液絡防止部材180が配置される。この状態で、正極側及び負極側の液絡防止部材180,180から導通体170に向けて加圧、加熱する。
【0056】
これら液絡防止部材180,180、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a、及び、導通体170の接合に当たっては、溶接機Wが用いられる。本発明の実施の形態においては、
図2に示される溶接機Wを用いて抵抗溶接が行われる。
【0057】
溶接機Wは、電源Pと電源Pに接続される2つの電極W1及び電極W2を備えている。電源Pから電極W1、電極W2に印加される電流は、
図2の細い矢印に示すように、電源Pから電極W1、電極W2から電源Pの向きに流れる。
【0058】
溶接の際には、電極W1が正極用鉛箔111aと接して設けられる液絡防止部材180に接し、電極W2が負極用鉛箔112aと接して設けられる液絡防止部材180に接する。そして、それぞれの電極が貫通穴121aに向けて
図2の太い矢印に示す向きに、互いに近接するように圧力を掛けながら移動する。
【0059】
上述したように、電極は液絡防止部材180に接しているので、電極の移動に伴い、正極側及び負極側それぞれの液絡防止部材180も湾曲するように変形し、この際に電流が溶接機Wにおいて示す細い矢印の方向に流れることで、互いに溶融接合される。
【0060】
圧力を加えながら溶接することで、正極側の液絡防止部材180と負極側の液絡防止部材180の間の空隙が大きく減少するので、液絡を防止できる。さらに、溶接後にこの空隙が広がらないようするためには、変形防止のために液絡防止部材180の厚さが充分厚いことが望ましい。
【0061】
なお本発明の第1の実施の形態では、抵抗溶接による接合としたが、他の接合方法であっても良く、例えば、超音波溶接で接合しても良い。また、リベットやハトメが通る空間を貫通穴内、正極用鉛箔、および負極用鉛箔に設けてリベットやハトメでかしめても良い。
【0062】
このように抵抗溶接された上で、さらに正極用鉛箔111aに接して正極用活物質層111bが配置され、負極用鉛箔112aに接して負極用活物質層112bが配置された後、正極用活物質層111b、負極用活物質層112bに接してセパレータ113が設けられる。
【0063】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100のうち、基板121を中心に導通体170、液絡防止部材180,180、正極111及び負極112が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【0064】
なお、第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bの厚みは、液絡防止部材180,180の厚み以上の厚みを有している。但し、
図1及び
図3においては、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bの厚みは、液絡防止部材180,180の厚みと等しい場合を例に挙げて描画している。
【0065】
ここで各部の寸法を見てみると、液絡防止部材180の正極用鉛箔111a、或いは、負極用鉛箔112aからの突出量である厚み(
図3においては、正極用鉛箔111aに接して設けられる液絡防止部材180の厚みを「T1」、負極用鉛箔112aに接して設けられる液絡防止部材180の厚みを「T3」と表す)は、基板121の厚み「T2」よりも厚くなるように形成されている。
【0066】
このように液絡防止部材180,180の厚みT1,T3が基板121の厚みT2よりも厚いことによって、正極側及び負極側からそれぞれ貫通穴121aに向けて液絡防止部材180,180を押圧しながら溶接すると導通体170が貫通穴121aの内周に食い込んで、導通体170と貫通穴121aとの間に隙間ができることを防止することができるというかしめる効果が見込まれ、液絡が生ずることを抑制することができる。
【0067】
また、正極用鉛箔111aに接して設けられる液絡防止部材180の厚み「T1」と、負極用鉛箔112aに接して設けられる液絡防止部材180の厚み「T3」とは同じ厚みである。
【0068】
すなわち、上述した
図2に示すように液絡防止部材180、正極用鉛箔111a、貫通穴121aに挿入された導通体170、負極用鉛箔112a、及び液絡防止部材180は抵抗溶接されることになるが、正極側の液絡防止部材180と負極側の液絡防止部材180との厚みが等しいことによって、溶接による効果を正極側と負極側とで揃えることができる。また、正極側の液絡防止部材180と負極側の液絡防止部材180との厚みが異なることに起因する溶接条件の設定が複雑になることを回避することができる。
【0069】
一方、液絡防止部材180の幅L1は、貫通穴121aの開口幅L2よりも大きく形成されている。液絡防止部材180の幅が貫通穴121aの開口幅よりも小さいと、電解液が正極側から貫通穴121aを介して負極側に到達することを防止することができないからである。
【0070】
なお、液絡防止部材180,180の厚みと正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとの厚み、或いは、液絡防止部材180の幅と貫通穴121aの開口幅との関係については、上述した通りである。但し、
図3以下の各図における双極型鉛蓄電池100等においては、上記関係は維持しつつも各部の大きさ、厚み、長さ等の寸法については、描画の都合上、実際の双極型鉛蓄電池100における寸法とは異なって示されている。例えば、セパレータ113の厚みについては、各部の厚みからすれば本来
図3以下に示される厚さよりも厚いところ、そのようには描画されていない。
【0071】
図1に戻り、第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0072】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0073】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0074】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0075】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、およびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0076】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0077】
第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが上述したように接着剤150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121と同様に、カバープレート160が接着剤150により基板131の一面側に固定され、正極用鉛箔111aの外縁部が、凹部131bの周縁部との境界部においてもカバープレート160で覆われている。
【0078】
また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、
図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0079】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0080】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよいが、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0081】
Z方向において、枠体142の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0082】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成され、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0083】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0084】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0085】
第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、
図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0086】
ここで、隣接するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と隣接するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と隣接するバイポーラプレート120との接合の際には、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着といった、各種溶着の方法を採用することができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0087】
なお、溶着の対象としては、互いに隣接するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0088】
なお図面には示されていないが、枠体が有する四つの端面のうちの一つの端面には、空間Cに電解液を入れるための注入穴を形成する切り欠き部が形成されている。この切り欠き部は、例えば図面右側に存在する枠体の側面に形成されている場合、枠体をX方向に貫通し、枠体のZ方向の両端面から半円弧状に凹む形状を有する。そして、この切り欠き部は上述の接合構造に関与せず、振動溶接により上述の接合構造が形成される際に、対向する切り欠き部によって円形の注入穴が形成される。
【0089】
〔製造方法〕
この第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。そこで
図4に示すフローチャートを適宜用いつつ説明する。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の製造の流れを示すフローチャートである。
【0090】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
先ず、バイポーラプレート120の基板121を、第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、第1の凹部121bに接着剤150を塗布し、第1の凹部121b内に正極用鉛箔111aを入れる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける(ST1)。
【0091】
次に、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、貫通穴121aに導通体170を挿入する(ST2)。そして、第2の凹部121cに接着剤150を塗布し、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aを入れる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の他面に負極用鉛箔112aを貼り付ける(ST3)。
【0092】
次に、基板121の第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置き、正極用鉛箔111aの外縁部の上および第1の凹部121bの縁部となる基板121の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート160を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート160を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板121の部分(第1の凹部121bの周縁部)の上に亘って固定する。
【0093】
そして、貫通穴121aの両開口部を覆う位置に、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112aの上から液絡防止部材180,180を配置する(ST4)。
【0094】
次に、抵抗溶接を行って、液絡防止部材180、正極用鉛箔111a、導通体170、及び負極用鉛箔112aを接合する(ST5)。これにより、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。この正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を必要枚数だけ用意する。
【0095】
<正極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置き、凹部131bに接着剤150を塗布し、凹部131b内に正極用鉛箔111aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通す。この接着剤150を硬化させて、基板131の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0096】
次に、正極用鉛箔111aの外縁部の上および凹部131bの縁部となる基板131の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート160を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート160を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板131の部分の上に亘って固定する。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレートを得る(ST6)。
【0097】
<負極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置き、凹部141bに接着剤150を塗布し、凹部141b内に負極用鉛箔112aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通す。この接着剤150を硬化させて、基板141の一面に負極用鉛箔112aが貼り付けられた第2のエンドプレート140を得る。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレート及び負極用鉛箔付きエンドプレートの作製が完了する(ST7)。
【0098】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111aおよびカバープレート160が固定された第1のエンドプレート130を、正極用鉛箔111aを上に向けて作業台に置き、カバープレート160の中に正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置く(ST8)。その際に、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す。次に、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113、負極用活物質層112bを置く(ST9及びST10)。
【0099】
次に、この状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く(ST11)。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せるとともに、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0100】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合され、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される(ST12)。
【0101】
その結果、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合され、第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とで形成される空間Cにセル部材110が配置され、バイポーラプレート120の上面に正極用鉛箔111aが露出した状態となる。
【0102】
次に、このようにして得られた、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合されている結合体の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後(
図5のST13~ST15)、さらに、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く(ST16)。
【0103】
この状態で、この結合体を固定し、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う(ST17)。この振動溶接工程を、必要な枚数のバイポーラプレート120が第1のエンドプレート130の上に接合されるまで続けて行う(ST18)。
【0104】
最後に、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せた後(ST19~ST21)、さらに、第2のエンドプレート140を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く(ST22)。
【0105】
この状態で、この結合体を固定し、第2のエンドプレート140を基板141の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、第2のエンドプレート140が接合される(ST23)。
【0106】
以上でバイポーラプレート120に正極用活物質層111b、負極用活物質層112b、及び、セパレータ113の載置、各プレート同士の積層、接合が行われる流れを説明した。
【0107】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成され、対向する枠体の切り欠き部によって、双極型鉛蓄電池100の例えばX方向の一端面の各空間Cの位置に、円形の注入穴が形成されている。この注入穴から各空間Cの内部に電解液を所定量注液し、セパレータ113に電解液を含浸させる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる(ST24)。
【0108】
以上説明した通り、本発明の第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100においては、貫通穴121aを覆うように液絡防止部材180,180が配置され、液絡防止部材180,180は正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a、及び、導通体170と接合される。このような構成を採用したことから、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避するとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0109】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0110】
第2の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Aでは、液絡防止部材180の厚みと正極用活物質層111b、負極用活物質層112bの厚みとの関係が第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100における両者の関係と異なる。
【0111】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Aのうち、基板121を中心に導通体170、液絡防止部材180A,180A、正極111及び負極112が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【0112】
第2の実施の形態における液絡防止部材180A,180Aの正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとの接触面からの距離を示す厚みと、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bの厚みとを比較すると、液絡防止部材180A,180Aの厚みが、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bの厚みよりも厚くなるように形成されている。
【0113】
すなわち、液絡防止部材180Aの突出部180a,180aは、正極用活物質層111bや負極用活物質層112bから突出する。そして、この突出部180a,180aは、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bに接して配置されるセパレータ113と接することになる。
【0114】
すなわち、第2の実施の形態における液絡防止部材180Aの厚みは、第1の実施の形態における液絡防止部材180の厚みよりも厚くなるように形成されている。厚みを増やすことによって、貫通穴121aに対する封止がより確実に行われることになる。特に抵抗溶接が行われると電極に接触する部分は凹むことになるが、この凹みを考慮してもまだ厚みを確保することができることから、貫通穴121a内に電解液が浸入することを防止することができる。
【0115】
なお、上述したように、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bをそれぞれ正極用鉛箔111a及び負極用鉛箔112aの上に配置した場合、液絡防止部材180Aの突出部180a,180aは、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bから突出することになる。そのため、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bにおいては、当該液絡防止部材180Aの突出部180a,180aを貫通することができるように形成されている。
【0116】
但し、このように正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bは液絡防止部材180A,180Aを貫通することができるように形成されているものの、双極型鉛蓄電池100Aの製造の流れについては、第1の実施の形態において説明した通りである。
【0117】
以上説明した通り、本発明の第2の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Aにおいては、貫通穴121aを覆うように液絡防止部材180A,180Aが配置され、正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a、及び、導通体170と接合される。このような構成を採用したことから、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避するとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0118】
また、第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100における液絡防止部材180よりも厚く形成されていることから、抵抗溶接がされた際の導通体170における貫通穴121aに対するかしめの効果もより大きくなる。
【0119】
図7は、本発明の第2の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Aの変形例を示す拡大断面図である。変形例に示す双極型鉛蓄電池100Bにおいては、
図7に示すように、液絡防止部材180Bの形状が上述した液絡防止部材180Aと異なっている。すなわち、液絡防止部材180Aは、断面視矩形状であるが、液絡防止部材180Bは、断面視台形状となるように形成されている。
【0120】
すなわち、セパレータ113に接する突出部180bの幅と正極用鉛箔111a或いは負極用鉛箔112aと接する幅とを比較すると、前者の幅の方が後者の幅よりも短く、液絡防止部材180Bは、セパレータ113側から正極用鉛箔111a或いは負極用鉛箔112a側に向けて幅が広がるように形成されている。
【0121】
このように液絡防止部材180Bは、これまで説明した液絡防止部材180Aよりも貫通穴121aの開口に対してより幅が広くなるように形成されていることから、当該開口をより確実に塞ぐことができることになる。そのため、これまで以上に液絡が生ずることを防止することができる。
【0122】
(第3の実施の形態)
次に本発明における第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1、第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0123】
第3の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Cでは、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bがそれぞれ2層となるように設けられている点で、第1及び第2の実施の形態における双極型鉛蓄電池と異なる。
【0124】
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Cのうち、基板121を中心に導通体170、液絡防止部材180C,180C、正極111及び負極112が設けられた状態を示す拡大断面図である。
【0125】
一方、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bとはそれぞれ2層にわたって設けられている。すなわち、正極用活物質層111bは、第1の正極用活物質層111ba及び第2の正極用活物質層111bbとから構成される。また、負極用活物質層112bは、第1の負極用活物質層112ba及び第2の負極用活物質層112bbとから構成される。
【0126】
第1の正極用活物質層111ba及び第1の負極用活物質層112baは、その厚みが液絡防止部材180Cと同じ厚みに形成されている。このように、液絡防止部材180Cの厚みと第1の正極用活物質層111ba及び第1の負極用活物質層112baの厚みが同じであることから、第1の正極用活物質層111ba及び第1の負極用活物質層112baを設けたのみでは液絡防止部材180C,180Cの突出部180c,180cは、第1の正極用活物質層111baや第1の負極用活物質層112baで覆われることなく露出した状態にある。
【0127】
そこで、第1の正極用活物質層111ba及び第1の負極用活物質層112baに接して別途第2の正極用活物質層111bb及び第2の負極用活物質層112bbを設ける。このような構成とすることによって、液絡防止部材180C,180Cの突出部180c,180cは、第2の正極用活物質層111bb及び第2の負極用活物質層112bbによって覆われることになる。そのため、例えば、第1の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Aとは異なり、突出部180cの分だけ反応面積が広がることになる。従って、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Cはこれまでの双極型鉛蓄電池100よりも性能の向上が期待できる。
【0128】
このような構造となるため、第1の正極用活物質層111ba及び第1の負極用活物質層112baについては、液絡防止部材180C,180Cを貫通することができるような貫通穴が設けられている。一方、第2の正極用活物質層111bb及び第2の負極用活物質層112bbについては、第1の正極用活物質層111ba及び第1の負極用活物質層112baに接し、さらに液絡防止部材180C,180Cの突出部180c,180cを覆うように配置されるため、第1の正極用活物質層111ba及び第1の負極用活物質層112baのような貫通穴は設けられていない。
【0129】
次に、上述した第3の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Cの製造の流れについては、以下の通りとなる。
図9は、本発明の第3の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Cの製造の流れを示すフローチャートである。
【0130】
第3の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Cの製造の流れについては、2つのバイポーラプレート120の間に正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bを設けることを例に挙げて説明する。これは、第1の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の製造の流れに関して
図5に示すステップST13ないしステップST15の部分に該当する。
【0131】
すなわち、バイポーラプレート120に設けられている正極用鉛箔111aの上に第1の正極用活物質層111baを載置する(ST31)。この際、第1の正極用活物質層111baに設けられている貫通穴を液絡防止部材180Cに通すように載置する。
【0132】
この第1の正極用活物質層111baの上から第2の正極用活物質層111bbを載置する(ST32)。第2の正極用活物質層111bbが載置されることで液絡防止部材180Cの突出部180cは第2の正極用活物質層111bbによって覆われる。
【0133】
そして、第2の正極用活物質層111bbの上にセパレータ113を載置し(ST33)、さらに、セパレータ113の上に第2の負極用活物質層112bbを載置する(ST34)。最後に第2の負極用活物質層112bbの上に第1の負極用活物質層112baを載置する(ST35)。
【0134】
この後さらにバイポーラプレート120を積層する場合には、第1の負極用活物質層112baに設けられた貫通穴に積層するバイポーラプレート120に設けられる液絡防止部材180Cの突出部180cが嵌まるように載置する。このような順番で正極用活物質層111b、セパレータ113、及び、負極用活物質層112bを載置する。
【0135】
なお、ここでは2つのバイポーラプレート120を積層する場合を例に挙げて正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bの積層について説明した。但し、
図9においてはその製造の流れを示す描画を省略したが、バイポーラプレート120と第1のエンドプレート130、バイポーラプレート120と第2のエンドプレート140とを積層する際に正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bを積層する場合も同じである。
【0136】
以上説明した通り、本発明の第3の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Cにおいては、貫通穴121aを覆うように液絡防止部材180C,180Cが配置され、液絡防止部材180Cは正極用鉛箔111a、負極用鉛箔112a、及び、導通体170と接合される。このような構成を採用したことから、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避するとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0137】
なお、上述した第3の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Cにおいては、第1の正極用活物質層111baと第1の負極用活物質層112baの厚みは、液絡防止部材180Cの厚みと等しいことを前提にしていたが、例えば、第1の正極用活物質層111baと第1の負極用活物質層112baの厚みが、液絡防止部材180Cの厚みよりも薄くても良い。この場合も第2の正極用活物質層111bbと第2の負極用活物質層112bbを、それぞれ液絡防止部材180Cを覆うように第1の正極用活物質層111baと第1の負極用活物質層112baの上に載置することで、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0138】
(第4の実施の形態)
次に本発明における第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態において、上述の第1ないし第3の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0139】
これまで説明してきた、第1ないし第3の各実施の形態における双極型鉛蓄電池100では、導通体170と液絡防止部材180とは、異なる部材として構成されていた。第4の実施の形態においては、この導通体170と液絡防止部材180とが一体となった導通体170Aを備える双極型鉛蓄電池100Dについて説明する。
【0140】
図10は、本発明の第4の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Dのうち、基板121を中心に導通体170A、正極111及び負極112が設けられた状態を示す拡大断面図である。第4の実施の形態における導通体170Aは、上述した液絡防止部材180の機能を果たす液絡防止部170aを備えている。
【0141】
そのため導通体170Aは、基板121に設けられている貫通穴121aに挿入されている点では、これまでの導通体170と変わりはない。しかしながらこの導通体170Aは、この貫通穴121aを飛び出してこれまで説明してきた液絡防止部材180が配置される位置にまで達している。
【0142】
すなわち、
図10に示すように、導通体170Aにおける液絡防止部170aは、液絡防止部材180と同様、その幅は、貫通穴121aにおける開口幅よりも大きく、導通体170Aが貫通穴121aに挿入された場合、液絡防止部170aは、正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとに接する。そのため、導通体170Aは略T字形状となるように形成されている。
【0143】
なお、
図10においては、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bのいずれも導通体170Aにおける液絡防止部170aを覆うように配置されているが、正極用活物質層111b及び負極用活物質層112bは、例えば、第3の実施の形態において説明したような形状とされていても良い。
【0144】
次に、このような構造を備える双極型鉛蓄電池100Dの製造方法について、以下、
図11を基に説明する。
図11は、本発明の第4の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Dの製造の流れを示すフローチャートである。
【0145】
基板121の一方の面に正極用鉛箔111aを設ける点は、これまで説明した通りである。但し、第4の実施の形態において用いられる正極用鉛箔111aには、貫通穴121aの部分に貫通穴が設けられている点で異なる(ST41)。これは、この部分を介して後述する導通体170Aが貫通穴121aに挿入されるからである。すなわち、導通体170Aは、正極用鉛箔111aを挟み込むようにして貫通穴121aに挿入される(ST42)。
【0146】
一方、負極側においても同様であり、導通体170Aが挿入される貫通穴が設けられた負極用鉛箔112aが基板121の他方の面に設けられ(ST43)、導通体170Aが負極用鉛箔112aを挟み込むようにして貫通穴121aに挿入される(ST44)。なお、この後のステップST5ないしステップST24で示す工程は、第1の実施の形態で説明した通りである。
【0147】
以上説明した通り、本発明の第4の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Dにおける導通体170Aは、液絡防止部170aを備えている。導通体170Aが貫通穴121aに挿入されると、液絡防止部170aは貫通穴121aを覆うように配置される。そして、正極用鉛箔111a、及び、負極用鉛箔112aと接合される。このような構成を採用したことから、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避するとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0148】
また、導通体と液絡防止部材とが一体となって形成されていることから、貫通穴121aに導通体170Aを挿入するだけで液絡防止部170aも配置されることになる。従って、双極型鉛蓄電池100Dの製造工程はこれまでの双極型鉛蓄電池100の製造工程に比べて、導通体170の他に液絡防止部材180を載置する工程を1つ削減することができることになるため、製造のタクトタイムをより短くすることができる。
【0149】
(第5の実施の形態)
次に本発明における第5の実施の形態について説明する。なお、第5の実施の形態において、上述の第1ないし第4の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0150】
本発明の第5の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Eは、液絡防止部材180Eの突出部180eの部分に絶縁層190が配置されている点で、これまで説明した双極型鉛蓄電池100とはその構造を異にする。
【0151】
図12は、本発明の第5の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Eのうち、基板121を中心に導通体170、液絡防止部材180E,180E、絶縁層190、正極111及び負極112が設けられた状態を示す拡大断面図である。
図12に示されているように、液絡防止部材180E,180Eの突出部180e,180eを覆うように絶縁層190,190が設けられている。
【0152】
液絡防止部材180Eの厚みが正極用活物質層111b、負極用活物質層112bの厚みよりも厚い場合、液絡防止部材180Eは、正極用活物質層111b、負極用活物質層112bから突出部180e,180eが突出するように配置される。この場合、突出部180e,180eの部分は、上述した第2の実施の形態で説明した
図6に示す双極型鉛蓄電池100Aのように、セパレータ113によって覆われる。
【0153】
但し、液絡防止部材180Eがこのような形状に形成されると、基板121と隣接する基板121との間において対向する位置にある液絡防止部材180Eの突出部180e同士が接触して短絡してしまうことが考えられる。そこで、液絡防止部材180Eの突出部180eを覆うように絶縁層190を設けることによって、上述したような事態が生ずることを防止する。
【0154】
絶縁層190としては、例えば、エポキシ樹脂等を用いることができる。また、絶縁層190の配置位置としては、少なくとも液絡防止部材180Eの突出部180eを覆う位置に配置される。但しこのような位置にのみ配置されるのではなく、例えば、シート状の絶縁層190を正極用活物質層111b、負極用活物質層112bとセパレータ113との間に載置することによっても同様の効果を奏することができる。
【0155】
次に、このような構造を備える双極型鉛蓄電池100Eの製造方法について、以下、
図13及び
図14を基に説明する。
図13、
図14は、本発明の第5の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Eの製造の流れを示すフローチャートである。
【0156】
第5の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Eの製造においては、エンドプレートが作製されてから後の工程が異なる。そこで、以下の製造の流れの説明においては、バイポーラプレート120、第1のエンドプレート130及び第2のエンドプレート140が作製される工程を示すステップST1ないしステップST7の記載を省略している。
【0157】
また第1のエンドプレート130を用意して、カバープレート160の中に正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置き、その際に、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す工程、及び、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113を載置する工程も第3の実施の形態において説明した通りである(ST51、ST52)。
【0158】
次に、セパレータ113であって、液絡防止部材180Eの突出部180eに当たる位置に絶縁層190を載置する(ST53)。そしてこの絶縁層190の上から負極用活物質層112bを置く(ST54)。この負極用活物質層112bには、液絡防止部材180Eを通すための貫通穴が設けられている。
【0159】
そしてこの状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く(ST55)。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せるとともに、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0160】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う(ST56)。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合され、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される。
【0161】
次に、接合されたバイポーラプレート120に設けられている正極用鉛箔111aの上に、正極用活物質層111bを載置する(ST57)。この正極用活物質層111bには、液絡防止部材180Eを通すための貫通穴が設けられている。そして、この液絡防止部材180Eの突出部180eの上に絶縁層190を載置する(ST58)。
【0162】
この絶縁層190が載置された液絡防止部材180Eを覆うようにセパレータ113を載置し(ST59)、当該セパレータ113の上であって、液絡防止部材180Eの突出部180eが配置される位置に絶縁層190を載置する(ST60)。さらに絶縁層190の上から負極用活物質層112bを載置する(ST61)。
【0163】
そして新たなバイポーラプレート120を積層し(ST62)、バイポーラプレート120同士を接合する(ST63)。このバイポーラプレート120同士の積層については、バイポーラプレート120が必要数積層されるまでこれまでステップST57からステップST63まで説明してきた手順で積層と接合を繰り返す(ST64のNO)。
【0164】
バイポーラプレート120が必要数積層された場合には(ST64のYES)、最後に第2のエンドプレート140とバイポーラプレート120との接合を行うための積層を行う。すなわち、まずバイポーラプレート120に設けられている正極用鉛箔111aの上に、正極用活物質層111bを載置する(ST65)。そして、液絡防止部材180Eの突出部180eの上に絶縁層190を載置する(ST66)。
【0165】
次にセパレータ113を載置し(ST67)、このセパレータ113の上に負極用活物質層112bを載置する(ST68)。その上から第2のエンドプレート140を積層して接合し、最後に空間Cに電解液を注液し化成する(ST69~ST71)。
【0166】
第5の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Eの製造においては、正極用活物質層111bが設けられた後、セパレータ113が設けられる前に絶縁層190が液絡防止部材180Eの突出部180eの部分に設けられる。そして、セパレータ113が載置された後、負極用活物質層112bが当該セパレータ113に載置される前に、負極側に設けられる液絡防止部材180Eの突出部180eの部分に絶縁層190が設けられる。
【0167】
以上説明したような構成を採用したことから、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避するとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0168】
また、本発明の第5の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Eにおいては、液絡防止部材180Eの突出部180eの部分に絶縁層190が設けられている。そのため、セル部材110を構成する対向する位置に配置される極の液絡防止部材180Eの突出部180eとの接触を防止することができる。従って、セル部材110を構成する対向する位置に配置される極の間で短絡が生ずることを防止することができる。
【0169】
なお、第5の実施の形態においては、上述したように、正極用活物質層111b、或いは、セパレータ113の上であって、液絡防止部材180Eの突出部180eが配置される位置に絶縁層190を配置する方法にて双極型鉛蓄電池100Eを製造する方法について説明した。しかしながら、製造方法としてはこの方法に限定されず、例えば、バイポーラプレート120を製造する段階で、正極側、負極側に設けられた液絡防止部材180Eの突出部180eの部分にそれぞれ絶縁層190を設けた上で、積層する方法も採用することができる。
【0170】
なお、上述した第1ないし第5の実施の形態においては、液絡防止部材180が正極側、及び、負極側の両極に設けられている例を挙げて説明した。これは液絡防止部材180を両極に設けることによって、これまで説明してきた各実施の形態における効果をより良く発揮させるためである。
【0171】
但し、液絡防止部材180については、このように両極に設けずとも、例えば、負極側だけに設ける場合のように、正極側、或いは、負極側のいずれか一方に設けられていても上述した各実施の形態における効果は十分に発揮しうる。
【0172】
ここで
図15は、本発明の実施の形態における液絡防止部材180が貫通穴121aの正極側の開口部近傍、及び、負極側の開口部近傍の少なくとも一方に設けられた例を示した斜視図である。また、
図16は、
図15に示すバイポーラプレート120をA-A線で切断して示す切断断面図である。
【0173】
図15においては、双極型鉛蓄電池100の空間形成部材であるバイポーラプレート120が示されており、上述したように基板121の周囲を枠体122が取り囲んでいる。そして基板121には負極用鉛箔112aが配置されている。従って、
図15において負極側に液絡防止部材180が設けられている例が示されている。
【0174】
なお以下に説明する
図24までの各図においては、当該
図15と同様、負極側に液絡防止部材180が設けられた例を示している。このように液絡防止部材180が正極側、或いは、負極側のいずれか一方に設けられた例を説明する便宜上、
図15のように適宜斜視図を使用するとともに、液絡防止部材180や負極用鉛箔112aといった各図に現れるセル部材110を構成する各部の位置関係を明らかに示すため、斜視図におけるハッチングは省略している。さらに、
図15以下においては、説明の都合上、柱部123の描画も省略している。
【0175】
また、断面図も適宜使用して説明しているが、これまで
図1以下を用いて説明してきた各部の位置関係と若干その位置関係が異なっている場合がある。但し、これは説明の都合上そのように描画しているだけであり、各部の構造はこれまで説明してきた構造と異なるものではない。
【0176】
図15及び
図16に示すように、貫通穴121aの開口部近傍であって負極用鉛箔112aに接して液絡防止部材180が配置されている。一方、正極側には液絡防止部材180は設けられていない。
【0177】
このようにバイポーラプレート120の正極側、或いは、負極側のいずれか一方にのみ液絡防止部材180を設けることによって、両極に液絡防止部材180を設ける場合と異なり、双極型鉛蓄電池100の製造に掛かる手間やコスト等を低減することができる。
【0178】
また液絡防止部材180をバイポーラプレート120の正極側、或いは、負極側のいずれか一方に設けるに当たっては、正極側に設ける方がよりグロースを抑制することができる。一方、液絡防止部材180を設ける際にはセル部材110内部の構造を考慮する必要があるが、負極側に液絡防止部材180を設ける場合、グロースの抑制ができることはもちろんのこと、正極側よりも負極側の方が考慮する構造が少なく、その配置等、より効果的に液絡防止部材180を設けることができる。
【0179】
(第6の実施の形態)
次に本発明における第6の実施の形態について説明する。なお、第6の実施の形態において、上述の各実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0180】
図17は、本発明の第6の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Fにおいて、液絡防止部材180Fが貫通穴121aの開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。
図17に示す液絡防止部材180Fは、個々の貫通穴121aの開口部近傍及び隣接して設けられる貫通穴121aの開口部近傍において連続的に配置され、その両端部は、負極用鉛箔112aの外縁部まで延伸されている。
【0181】
ここではバイポーラプレート120の貫通穴121aが
図15に示すような位置に形成されていることを前提としている。そのため、液絡防止部材180Fは、3つの貫通穴121aの個々の貫通穴121aの開口部近傍のみならず、隣接するこれら個々の貫通穴121aの開口部をつなぐ部分にも設けられている。
【0182】
すなわち、上述した各実施の形態における液絡防止部材180のように個々の貫通穴121aの開口部近傍のみに配置されるのではなく、複数の貫通穴121aの開口部を覆う大きな面積を備える液絡防止部材180Fとなっている。
【0183】
その結果、第6の実施の形態における液絡防止部材180Fは、
図17に示すように、負極用鉛箔112aに接して3つに分かれたような形状とされている。そして1つ1つの液絡防止部材180Fは、1本の長い四角柱状に形成されている。また、液絡防止部材180Fの両端部は、負極用鉛箔112aの外縁部まで延伸されており、その端部は、それぞれ枠体122と対向している。そして、当該液絡防止部材180Fは、負極用鉛箔112aと一体に製造されている。
【0184】
以上説明した通り、本発明の第6の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Fにおいては、液絡防止部材180Fが個々の貫通穴121aの開口部近傍及び隣接して設けられる貫通穴121aの開口部近傍において連続的に配置され、その両端部は、負極用鉛箔112aの外縁部まで延伸されている。液絡防止部材180Fがこのような形状に形成されていることによって、負極用鉛箔112aの面積のより大きな領域に液絡防止部材180Fが形成されることになる。従って、負極用鉛箔112a全体の剛性が向上することにつながり、たとえ正極側から貫通穴121aを介して電解液が浸入したとしても負極用鉛箔112aが浮き上がることを防止し、グロースの発生を抑制することができる。
【0185】
またこのように液絡防止部材180Fが負極用鉛箔112aの対向する外縁部をつなぐように(横断するように)配置されていること、液絡防止部材180Fと負極用鉛箔112aとが一体に製造されていることによって、上述したように負極用鉛箔112a全体の剛性を向上させることができるので、負極用鉛箔112a自体をより薄くすることができる。従って、負極用鉛箔112aの生産性向上を図ることができる。
【0186】
さらに、バイポーラプレート120の正極側、或いは、負極側のいずれか一方にのみ液絡防止部材180Fを設けることによって、双極型鉛蓄電池100Fの製造に掛かる手間やコスト等を低減することができるという効果を奏することは上述した通りである。
【0187】
なお、ここでは液絡防止部材180Fを3本、互いに平行となるように形成しているが、隣接する複数の貫通穴121aの開口部近傍をつなぐように形成することができるのであれば、例えば、負極用鉛箔112aの1対の対角を結ぶように液絡防止部材180Fを形成しても、或いは、負極用鉛箔112aの2辺をつなぐようにL字状となるように液絡防止部材180Fを形成しても良い。
【0188】
また第6の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Fの製造の流れについては、これまで例えば、
図4及び
図5を用いて説明してきたような流れをもって製造することができる。また、この流れではなく、例えば、負極用鉛箔112aに液絡防止部材180Fを形成した上で、基板121の第2の凹部121cに設けることとしても良い。
【0189】
(第7の実施の形態)
次に本発明における第7の実施の形態について説明する。なお、第7の実施の形態において、上述の各実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0190】
これまで第6の実施の形態まで説明してきたが、これら各実施の形態における液絡防止部材180は、上述したようにいずれも鉛等の金属製の材質で形成されていた。以下に説明する第7の実施の形態における液絡防止部材180Gは、金属以外の材質で形成されている。
【0191】
図18は、本発明の第7の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Gにおいて、液絡防止部材180Gが貫通穴121aの開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。また、
図19は、
図18に示すバイポーラプレート120をB-B線で切断して示す切断断面図である。
【0192】
図18及び
図19に示す図は、いずれも
図15及び
図16において示す図とその形状に相違はない。しかしながら、上述したように液絡防止部材180の材質が異なる。第7の実施の形態における液絡防止部材180Gは、接着剤で形成されている。
【0193】
すなわち、液絡防止部材180Gは、例えば、エポキシ樹脂を含有する主剤とアミン化合物を含有する硬化剤とが反応して硬化する反応硬化型接着剤を硬化させてなる硬化物で形成されている。この反応硬化型接着剤は、エポキシ樹脂を含有する主剤とアミン化合物を含有する硬化剤とを混合し、主剤と硬化剤を反応させて硬化させるタイプの接着剤である。
【0194】
このような反応硬化型接着剤は、常温(例えば20℃以上40℃以下)で硬化させることが可能であるため、正極用鉛箔111aや負極用鉛箔112aを形成する鉛又は鉛合金の金属組織に影響を与えにくい温度で硬化させることができる。さらに、上記反応硬化型接着剤は、基板111を形成する熱可塑性樹脂に対して悪影響を与えにくい。さらに、上記反応硬化型接着剤は、接着性が高い、可使時間が長い等の長所を有している。
【0195】
用いられる接着剤として、具体的には、主剤に含有されるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方が挙げられる。また、エポキシ樹脂は、1種を単独で使用しても良く、或いは、2種以上を併用しても良い。
【0196】
一方硬化剤に含有されるアミン化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミン化合物、脂環族ポリアミン化合物、芳香族ポリアミン化合物が挙げられる。これらのアミン化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0197】
また、脂肪族ポリアミン化合物の具体例としては、トリエチレンテトラミン(C6H18N4)等の脂肪族第一級アミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族第二級アミンが挙げられる。脂環族ポリアミン化合物の具体例としては、イソホロンジアミン(C10H22N2)等の脂環族第一級アミンが挙げられる。芳香族ポリアミン化合物の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン(C13H14N2)等の芳香族第一級アミンが挙げられる。
【0198】
さらに硬化剤の別の例としては、例えば、酸無水物やフェノール類硬化剤が挙げられる。これら酸無水物やフェノール類硬化剤を硬化剤として使用するのは、硫酸への耐性が強いからである。
【0199】
ここで酸無水物としては、例えば、芳香族カルボン酸無水物、脂肪族酸無水物、或いは、脂環式酸無水物を挙げることができる。このうち芳香族カルボン酸無水物は、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸などである。
【0200】
また、脂肪族酸無水物としては、例えば、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等などが挙げられる。さらに脂環式酸無水物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物(THPA)、ヘキサヒドロフタル酸無水物(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(Me-THPA)メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(Me-HHPA)ナジック酸無水物(NMA)、ハイミック酸無水物(MHAC)ヘット酸無水物、等を挙げることができる。
【0201】
一方フェノール類硬化剤としては、例えばビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ビフェニルフェノール、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリレン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェノール),トリスヒドロキシフェニルメタン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1-ジ-4-ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等のポリフェノール化合物、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂等を挙げることができる。
【0202】
また、上述した酸無水物、或いは、フェノール類硬化剤に対しては、さらに硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤を使用するのは、硬化促進剤を使用することで元々酸無水物、或いは、フェノール類硬化剤の硬化に必要な温度を下げることができ、硬化時間を短縮することができるからである。硬化時間を短縮することができると、バイポーラ型鉛蓄電池の製造自体に掛かるタクトタイムの短縮につながる。
【0203】
硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン(TPP)、三級アミン(DMP-30:2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール)やアミン系(DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、イミダゾール(2PZ-CN:1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾール)、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、有機酸金属塩、などを使用しても良い。なおこれらの硬化促進剤については、1種を単独で使用しても良く、或いは、2種以上を併用することとしても良い。
【0204】
以上説明した通り、本発明の第7の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Gにおいては、液絡防止部材180Gを接着剤で形成している。このように接着剤を液絡防止部材180Gとして用いることによって、電解液が正極側から貫通穴121aを介して負極側へと浸入しても負極用鉛箔112aが基板121から剥離してしまう(グロースが生ずる)ことを回避することができる。
【0205】
また、負極側へと浸入した電解液を食い止めることができず、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112bへと電解液の浸入を許してしまうと、双極型鉛蓄電池100Gの寿命を短くしてしまう。
【0206】
そこで、負極側の貫通穴121aの開口部近傍に、上述したような構成を備える接着剤で形成される液絡防止部材180Gを配置することによって、貫通穴121aから浸入した電解液は、その浸入の向きを変えて、液絡防止部材180Gと負極用鉛箔112aとの界面に沿って進むことになる。
【0207】
すなわち、電解液が浸入する沿面距離を延ばすことができことになるため、双極型鉛蓄電池100Gの寿命の延長化を図ることができる。また、液絡防止部材180Gの配置領域を広げることによって、さらなる長寿命化を図ることもできる。
【0208】
なお、バイポーラプレート120の正極側、或いは、負極側のいずれか一方にのみ液絡防止部材180Gを設けることによって、双極型鉛蓄電池100Gの製造に掛かる手間やコスト等を低減することができるという効果を奏することは上述した通りである。
【0209】
(第8の実施の形態)
次に本発明における第8の実施の形態について説明する。なお、第8の実施の形態において、上述の各実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0210】
図20は、本発明の第8の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Hにおいて、液絡防止部材180Hが貫通穴121aの開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。また、
図21は、
図20に示すバイポーラプレート120をC-C線で切断して示す切断断面図である。
【0211】
第8の実施の形態における液絡防止部材180Hは、上述した第7の実施の形態における液絡防止部材180Gと同様、金属製ではない。また、液絡防止部材180Hは、第1の液絡防止部材180Haと第2の液絡防止部材180Hbの2つの液絡防止部材から構成されている。
【0212】
すなわち、
図20、或いは、
図21に示されている通り、第1の液絡防止部材180Haは、負極用鉛箔112aに接し、第2の液絡防止部材180Hbは、第1の液絡防止部材180Haに接するとともに
図20及び
図21では図示しない負極用活物質層112bに接するように配置されている。
【0213】
そのため、第2の液絡防止部材180Hbが第1の液絡防止部材180Haを正極側へと押しつける役割を果たし、正極側から負極側への電解液の浸入を防止、或いは、遅らせることが可能となる。
【0214】
ここで第1の液絡防止部材180Haは、接着剤で形成される。当該第1の液絡防止部材180Haとして使用することができる接着剤としては、第7の実施の形態において説明したような、例えば、エポキシ樹脂を含有する主剤とアミン化合物を含有する硬化剤とが反応して硬化する反応硬化型接着剤を硬化させてなる硬化物を挙げることができる。
【0215】
一方、第2の液絡防止部材180Hbは、樹脂で形成されている。採用可能な樹脂としては、例えばABS樹脂、或いは、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、その他に、セラミック等といった、非導電性材料(非導電性樹脂)を採用することができる。これらはいずれも耐硫酸性に優れ、電気を通さない不導体であり、たとえ貫通穴121aから電解液が浸入したとしても負極用鉛箔112aから負極用活物質層112bへの浸入を防ぐことができるからである。
【0216】
以上説明した通り、本発明の第8の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Hにおいては、接着剤で形成される第1の液絡防止部材180Haと樹脂で形成される第2の液絡防止部材180Hbとを備える。さらに第8の実施の形態における液絡防止部材180Hは、第1の液絡防止部材180Haに接して第2の液絡防止部材180Hbを配置する。このような構成をしたことによって、第2の液絡防止部材180Hbが第1の液絡防止部材180Haを押さえることになる。
【0217】
そのため、上述した液絡防止部材180に接着剤を使用したことによる効果はもちろんのこと、さらに第2の液絡防止部材180Hbから貫通穴121aに向けて力を加えることになる。すなわち、正極側から負極側へ電解液が浸入してきたとしても負極用鉛箔112aが酸化することにより膨張して浮き上がることを押さえることができ、グロースの伸張を遅らせることができる。このことは、双極型鉛蓄電池100Hの長寿命化に資する。
【0218】
上述したように、第2の液絡防止部材180Hbは、負極用活物質層112bに接し、さらに当該負極用活物質層112bはセパレータ113に接している。セパレータ113は、例えば、硫酸を含有する電解液が含浸されたガラス繊維マットによって構成されており、弾力性を有している。第2の液絡防止部材180Hbは、上述した液絡防止部材180Gよりもよりセパレータ113に近い位置に配置されていることから、当該セパレータ113の圧力を受けて貫通穴121aに向けて押されることになる。従ってより一層グロースへの効果が大きなものとなる。
【0219】
なお、バイポーラプレート120の正極側、或いは、負極側のいずれか一方にのみ液絡防止部材180H設けることによって、双極型鉛蓄電池100Hの製造に掛かる手間やコスト等を低減することができるという効果を奏することは上述した通りである。
【0220】
(第9の実施の形態)
次に本発明における第9の実施の形態について説明する。なお、第9の実施の形態において、上述の各実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0221】
本発明の第9の実施の形態における液絡防止部材180Iも第8の実施の形態における液絡防止部材180Hと機能は同じであるが、その構成を異にする。
図22は、本発明の第9の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Iにおいて、液絡防止部材180Iが貫通穴121aの開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。また、
図23は、
図22に示すバイポーラプレート120をD-D線で切断して示す切断断面図である。
【0222】
すなわち、第8の実施の形態における液絡防止部材180Hでは、個々の第1の液絡防止部材180Haにそれぞれの第2の液絡防止部材180Hbが接する構成である。一方第9の実施の形態における液絡防止部材180Iについても、第1の液絡防止部材180Iaと第2の液絡防止部材180Ibを備えている。
【0223】
但し、第2の液絡防止部材180Ibは、個々の第1の液絡防止部材180Iaごとにそれぞれ個別に接しているわけではなく、
図22に明らかなように、個々の第1の液絡防止部材180Iaを結んで連続的に配置されている。そのため第2の液絡防止部材180Ibは、負極用鉛箔112aを横断するように配置されている。
【0224】
また第2の液絡防止部材180Ibの両端部は、対向する位置に配置されている枠体122と接合されている。そして第2の液絡防止部材180Ibの両端部と枠体122との接合に当たっては、例えば、上述した振動溶着が用いられる。
【0225】
このように第1の液絡防止部材180Iaを押さえる役割を果たす第2の液絡防止部材180Ibの両端部がそれぞれ枠体122に固定されていることから、貫通穴121aに向けて力が働き、負極用鉛箔112aにおけるグロースの伸張による浮き上がりを抑えることができる。
【0226】
なお、バイポーラプレート120の正極側、或いは、負極側のいずれか一方にのみ液絡防止部材180Iを設けることによって、双極型鉛蓄電池100Iの製造に掛かる手間やコスト等を低減することができるという効果を奏することは上述した通りである。
【0227】
(第10の実施の形態)
次に本発明における第10の実施の形態について説明する。なお、第10の実施の形態において、上述の各実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0228】
図24は、本発明の第10の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Jにおいて、液絡防止部材180Jが貫通穴121aの開口部近傍に設けられ、さらにセル部材110を貫通するように設けられたプレス機構200を示した切断断面図である。
【0229】
本発明の第10の実施の形態における液絡防止部材180Jも第1の液絡防止部材180Jaと第2の液絡防止部材180Jbとから構成される。また、第1の液絡防止部材180Jaが負極用鉛箔112aに接し、第2の液絡防止部材180Jbは第1の液絡防止部材180Jaと接するのもこれまで説明してきた液絡防止部材180H,180Iと同じである。
【0230】
従って、以下に説明する第10の実施の形態における液絡防止部材180Jにおける、特に第2の液絡防止部材180Jbの形状については、液絡防止部材180Hの第2の液絡防止部材180Hbの形状であっても、或いは、液絡防止部材180Iの第2の液絡防止部材180Ibの形状であっても良い。
【0231】
第10の実施の形態における双極型鉛蓄電池100Jにおいては、隣接する空間形成部材120の間に収容されるセル部材110を貫通するプレス機構200が設けられている。当該プレス機構200は、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン、セラミック、ガラスといった非導電性材料で形成されている。
図24に示すように、プレス機構200の一端側は、第2の液絡防止部材180Jbと接している。一方、プレス機構200の他端側は、正極用鉛箔111aと接している。
【0232】
従って、プレス機構200は、セル部材110を貫通するようにその内部に配置されている。従って、負極用活物質層112b、セパレータ113、および、正極用活物質層111bには、プレス機構200を貫通させる貫通穴112e,113b,111eがそれぞれ形成されている。
【0233】
このようなプレス機構200が、その一端側が第2の液絡防止部材180Jbに接触し、他端側が正極用鉛箔111aと接触するようにセル部材110を貫通して設けられていることによって、第2の液絡防止部材180Jbは、貫通穴121aに向けて強く押しつけられることになる。従って、たとえ正極側から負極側へと電解液が浸入してグロースが発生したとしても、負極用鉛箔112aが膨張して浮き上がることを防止することができる。
【0234】
さらに、プレス機構200は、セル部材110の貫通を可能とするためにセル部材110の各部に設けられる貫通穴112e,113b,111eの近傍であって、正極用活物質層111b、或いは、負極用活物質層112bと、セパレータ113との間を区切るカバー部材201を備えている。
【0235】
このようなカバー部材201が設けられていることによって、貫通穴112e,113b,111eを介して正極用活物質層111b、負極用活物質層112b、セパレータ113の間を活物質が移動することに伴う短絡が生ずることを防止することができる。
【0236】
なお、バイポーラプレート120の正極側、或いは、負極側のいずれか一方にのみ液絡防止部材180Jを設けることによって、双極型鉛蓄電池100Jの製造に掛かる手間やコスト等を低減することができるという効果を奏することは上述した通りである。
【0237】
(第11の実施の形態)
次に本発明における第11の実施の形態について説明する。なお、第11の実施の形態において、上述の各実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0238】
液絡防止部材180については、正極側、負極側の両方、或いは、いずれか一方に設けることができ、特に第6の実施の形態以降においては、負極側に液絡防止部材180が設けられている場合を例に挙げて説明してきた。第11の実施の形態においては、液絡防止部材180が正極側に設けられている場合を例に挙げて説明する。
【0239】
図25は、本発明の第11の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100Kにおいて、液絡防止部材180Kが貫通穴121aの開口部近傍に設けられた例を示した斜視図である。また、
図26は、
図25に示すバイポーラプレート120をE-E線で切断して示す切断断面図である。
【0240】
上述したように、正極用鉛箔111aの周縁部にはカバープレート160が設けられている(例えば、
図1参照)。
図26に示すように、例えば、バイポーラプレート120の枠体122の近傍に貫通穴121aが形成されている場合、カバープレート160と当該カバープレート160と正極用鉛箔111aとを接合する接着剤150とを液絡防止部材180Kとして利用することができる。
【0241】
すなわち、第11の実施の形態における液絡防止部材180Kは、接着剤150とカバープレート160とから構成される。そして接着剤150が第1の液絡防止部材180Kaに該当し、カバープレート160が第2の液絡防止部材180Kbに該当する。
【0242】
つまり、また、第2の液絡防止部材180Kb(カバープレート160)によって第1の液絡防止部材180Ka(接着剤150)を押さえていることになることから、これまで説明してきた電解液の浸入による正極用鉛箔111aにおけるグロースの伸張を抑えることができる。
【0243】
また、このように元々双極型鉛蓄電池100Kに設けられている部材を用いて液絡防止部材180Kの役割を持たせることによって、特別な液絡防止部材180を用意することも液絡防止部材180を設けることによる様々な追加の工程を設けることが不要になる。従って、より少ない材料、加工プロセスで電解液の浸入による様々な不都合を回避することができる。
【0244】
そして、バイポーラプレート120の正極側のみ液絡防止部材180Kを設けることによって、双極型鉛蓄電池100Kの製造に掛かる手間やコスト等を低減することができるという効果も奏する。
【0245】
以上第6ないし第11の実施の形態において説明したような構成を採用したことから、電解液に含有される硫酸による腐食によって正極にグロースが生じても貫通穴に電解液が浸入することを回避することができるとともに、たとえ貫通穴に電解液が浸入したとしても、当該電解液が負極側に達することを可能な限り回避して液絡の発生を大きく抑制することで電池性能の低下が起こりにくく、長寿命化を図ることができる双極型蓄電池及び双極型蓄電池の製造方法を提供することができる。
【0246】
なお、本発明の実施の形態において説明した技術については、以下のような構成を採用することもできる。
(1)正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在する電解質層を備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の正極側および負極側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
前記空間形成部材において前記正極側と前記負極側との間を貫通して形成される貫通穴と、
前記貫通穴に挿入されて前記正極側と前記負極側とを電気的に接続する導通体と、
を有し、
前記貫通穴の前記正極側の開口部近傍、及び、前記負極側の開口部近傍の少なくとも一方には、液絡防止部材が設けられていることを特徴とする双極型蓄電池。
(2)前記液絡防止部材は、前記導通体と接合されることを特徴とする上記(1)に記載の双極型蓄電池。
(3)前記液絡防止部材の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚みは、前記基板の厚みよりも厚いことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の双極型蓄電池。
(4)前記液絡防止部材の幅は、前記貫通穴における開口幅よりも大きいことを特徴とする上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(5)前記正極用活物質層或いは前記負極用活物質層の厚みは、前記液絡防止部材の厚み以上の厚みを有していることを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(6)前記正極用活物質層或いは前記負極用活物質層の厚みは、前記液絡防止部材の厚みよりも薄いことを特徴とする上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(7)前記正極用集電体、前記負極用集電体に、それぞれ前記液絡防止部材の厚み以下の厚みを有する第1の正極用活物質層、第1の負極用活物質層が配置される場合、さらに前記第1の正極用活物質層の上に第2の正極用活物質層を、前記第1の負極用活物質層の上に第2の負極用活物質層を配置することを特徴とする上記(5)に記載の双極型蓄電池。
(8)前記液絡防止部材は、液絡防止部として前記導通体と一体に形成されていることを特徴とする上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(9)前記液絡防止部の幅は、前記貫通穴における開口幅よりも大きく、前記導通体が前記貫通穴に挿入された場合、前記液絡防止部は、前記正極用集電体、前記負極用集電体と接することを特徴とする上記(8)に記載の双極型蓄電池。
(10)前記液絡防止部材、或いは、前記導通体の前記液絡防止部であって、電解質層と対向する領域には絶縁層が設けられることを特徴とする上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(11)前記液絡防止部材は、個々の前記貫通穴の開口部近傍及び隣接して設けられる前記貫通穴の開口部近傍において連続的に配置され、その両端部は、前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体の外縁部まで延伸されていることを特徴とする上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(12)前記液絡防止部材、或いは、前記導通体の前記液絡防止部は、鋳造、或いは、鍛造により製造されていることを特徴とする上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(13)前記液絡防止部材は、接着剤で形成されていることを特徴とする上記(1)、(3)ないし(7)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(14)前記液絡防止部材は、エポキシ樹脂を含有する主剤とアミン化合物を含有する硬化剤とが反応して硬化する反応硬化型接着剤の硬化物で形成されていることを特徴とする上記(13)に記載の双極型蓄電池。
(15)前記接着剤で形成される第1の液絡防止部材と、
前記第1の液絡防止部材に接して配置される第2の液絡防止部材と、を備え、
前記第2の液絡防止部材は、樹脂で形成されていることを特徴とする上記(1)、(3)ないし(7)、(13)、(14)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(16)前記第2の液絡防止部材は、熱可塑性樹脂で形成されていることを特徴とする上記(15)に記載の双極型蓄電池。
(17)前記第2の液絡防止部材は、個々の前記貫通穴の開口部近傍に配置される前記第1の液絡防止部材を結んで連続的に配置され、その両端部は、対向する位置に配置されている前記枠体と接合されていることを特徴とする上記(15)または(16)に記載の双極型蓄電池。
(18)隣接する空間形成部材の間に収容されるセル部材を貫通するプレス機構が設けられ、前記プレス機構の一端側は、前記第2の液絡防止部材、または、前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体のいずれかと接し、前記プレス機構の他端側は、前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体、または、前記第2の液絡防止部材のいずれかと接して配置されることを特徴とする上記(15)ないし(17)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(19)前記プレス機構は、前記セル部材の貫通を可能とするために前記セル部材の各部に設けられる貫通孔の近傍であって、前記正極用活物質層、或いは、前記負極用活物質層と、前記セパレータとの間を区切るカバー部材を備えていることを特徴とする上記(17)に記載の双極型蓄電池。
(20)前記液絡防止部材が前記貫通穴の前記正極側の開口部近傍に設けられている場合に、
前記第2の液絡防止部材は、前記正極用集電体の周縁部を覆うカバープレートであることを特徴とする上記(15)または(16)に記載の双極型蓄電池。
(21)前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする上記(1)ないし(20)のいずれかに記載の双極型蓄電池。
(22)空間形成部材の基板の一方の面及び他方の面を貫通して設けられる貫通穴に導通体を挿入する工程と、
前記一方の面に正極用集電体を配置する工程と、
前記他方の面に負極用集電体を配置する工程と、
前記正極用集電体及び前記負極用集電体の上から少なくとも一方の前記貫通穴を覆うように液絡防止部材を配置する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部材と前記負極用集電体側の前記液絡防止部材の間、または、前記液絡防止部材が前記正極用集電体側、或いは、前記負極用集電体のいずれか一方に配置される場合には前記液絡防止部材と前記負極用集電体との間、或いは、前記液絡防止部材と前記正極用集電体との間を挟むように溶接を行い、前記液絡防止部材、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体に接するように正極用活物質層を配置する工程と、
前記負極用集電体に接するように負極用活物質層を配置する工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
(23)空間形成部材の基板の一方の面及び他方の面を貫通して設けられる貫通穴に導通体を挿入する工程と、
正極用集電体及び負極用集電体の上から少なくとも一方の前記貫通穴を覆うように液絡防止部材を配置する工程と、
前記一方の面に前記正極用集電体を配置する工程と、
前記他方の面に前記負極用集電体を配置する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部材と前記負極用集電体側の前記液絡防止部材の間、または、前記液絡防止部材が前記正極用集電体側、或いは、前記負極用集電体のいずれか一方に配置される場合には前記液絡防止部材と前記負極用集電体との間、或いは、前記液絡防止部材と前記正極用集電体との間を挟むように溶接を行い、前記液絡防止部材、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体に接するように正極用活物質層を配置する工程と、
前記負極用集電体に接するように負極用活物質層を配置する工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
(24)空間形成部材の基板の一方の面に正極用集電体を配置する工程と、
前記基板の他方の面に負極用集電体を配置する工程と、
前記基板の前記一方の面及び前記他方の面を貫通して設けられる貫通穴に、一体に形成されている液絡防止部を備える導通体を前記正極用集電体側から挿入する工程と、
前記貫通穴に、前記液絡防止部を備える導通体を前記負極用集電体側から挿入する工程と、
配置された前記正極用集電体側の前記液絡防止部と前記負極用集電体側の前記液絡防止部とを挟むように溶接を行い、前記正極用集電体、前記負極用集電体、及び、前記液絡防止部を備える導通体を接合する工程と、
前記正極用集電体に接するように正極用活物質層を配置する工程と、
前記負極用集電体に接するように負極用活物質層を配置する工程と、
を備えることを特徴とする双極型蓄電池の製造方法。
(25)前記正極用活物質層、及び、前記負極用活物質層の厚みは、前記液絡防止部材、或いは、前記液絡防止部の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚み以上の厚みを有していることを特徴とする上記(22)ないし(24)のいずれかに記載の双極型蓄電池の製造方法。
(26)前記正極用活物質層、及び、前記負極用活物質層の厚みは、前記液絡防止部材、或いは、前記液絡防止部の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚みよりも薄いことを特徴とする上記(22)ないし(24)のいずれかに記載の双極型蓄電池の製造方法。
(27)前記液絡防止部材、或いは、前記液絡防止部の前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体からの突出量である厚み以下の厚みを有する第1の正極用活物質層、第1の負極用活物質層を配置する工程の後に、前記液絡防止部材、或いは、前記液絡防止部の突出部を覆うように第2の正極用活物質層、第2の負極用活物質層を配置する工程を備えることを特徴とする上記(26)に記載の双極型蓄電池の製造方法。
(28)前記正極用活物質層を配置する工程及び前記負極用活物質層を配置する工程の後に、
前記液絡防止部材、或いは、前記液絡防止部のうち、電解質層と対向する領域に絶縁層を設ける工程を備えることを特徴とする上記(22)ないし(27)のいずれかに記載の双極型蓄電池の製造方法。
(29)前記液絡防止部材は、前記貫通穴の開口部近傍に配置される前記第1の液絡防止部材と個々の前記第1の液絡防止部材を結んで連続的に配置される第2の液絡防止部材とからなり、前記第2の液絡防止部材の両端部は、対向する位置に配置されている前記枠体と接合する工程を備えていることを特徴とする上記(22)ないし(24)のいずれかに記載の双極型蓄電池の製造方法。
【0247】
なお、上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電体に鉛ではなく他の金属を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【符号の説明】
【0248】
100~100K・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
120・・・バイプレート
121・・・バイプレートの基板
121a・・・基板の貫通穴
122・・・バイプレートの枠体
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・接着剤
160・・・カバープレート
170・・・導通体
180~180K・・・液絡防止部材
180a・・・突出部
190・・・絶縁層
200・・・プレス機構
201・・・カバー部材
C・・・セル部材を収容する空間