(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-21
(45)【発行日】2024-03-29
(54)【発明の名称】銅箔及び遮光材
(51)【国際特許分類】
C23F 1/00 20060101AFI20240322BHJP
B32B 15/01 20060101ALI20240322BHJP
C25D 1/04 20060101ALI20240322BHJP
C25D 5/12 20060101ALI20240322BHJP
C25D 5/34 20060101ALI20240322BHJP
C25D 5/48 20060101ALI20240322BHJP
C25D 7/06 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
C23F1/00 Z
B32B15/01 H
C25D1/04 311
C25D5/12
C25D5/34
C25D5/48
C25D7/06 A
(21)【出願番号】P 2023575709
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2023013130
(87)【国際公開番号】W WO2023190845
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2022055958
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐野 惇郎
(72)【発明者】
【氏名】中津川 達也
(72)【発明者】
【氏名】片平 周介
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-89769(JP,A)
【文献】特開2020-142831(JP,A)
【文献】国際公開第2022/176648(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/00
B32B 15/01
C25D 1/04
C25D 5/12
C25D 5/34
C25D 5/48
C25D 7/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山頂点の算術平均曲率Spcが1300mm
-1以上5000mm
-1以下で且つ二乗平均平方根傾斜Sdqが2°以上25°以下である粗面を、一方又は両方の表面に有する銅箔。
【請求項2】
前記粗面を有する表面の上に、ニッケル単体又はニッケル合金からなり且つ厚さが0.2nm以上300nm以下である防錆層が形成されている請求項1に記載の銅箔。
【請求項3】
前記粗面を有する表面の上に、ニッケル単体又はニッケル合金からなり且つ厚さが0.2nm以上40nm以下である防錆層が形成されている請求項1に記載の銅箔。
【請求項4】
前記粗面を有する表面の上に、ニッケル単体又はニッケル合金からなり且つ厚さが0.2nm以上10nm以下である防錆層が形成されている請求項1に記載の銅箔。
【請求項5】
前記粗面の算術平均高さSaが0.03μm以上0.35μm以下で且つ十点平均粗さRzjisが0.5μm以上2μm以下である請求項
1に記載の銅箔。
【請求項6】
前記粗面の明度L
*が60以上85以下である請求項
1に記載の銅箔。
【請求項7】
光学機器用の遮光材の基材として用いられる請求項
1に記載の銅箔。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の銅箔からなる基材と、前記銅箔の2つの表面のうち前記粗面を有する表面の上に形成された黒色塗膜と、を有し、光学濃度が6以上である遮光材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅箔及び遮光材に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ、プロジェクタ等の光学機器には、遮光性を有する部材である遮光材が使用されている。遮光材の例としては、カーボンブラックを含有する黒色塗膜をフィルム状の樹脂製基材(例えばポリエチレンテレフタレート製フィルム)の上に形成した樹脂製遮光材(例えば特許文献1を参照)や、カーボンブラックを含有する黒色塗膜を箔状の金属製基材(例えば銅箔)の上に形成した金属製遮光材が知られている。
【0003】
モバイル用の光学機器に使用される遮光材においては薄型化、軽量化の要求が高まっているが、樹脂製遮光材の場合は、厚さが薄いほど遮光性が低下するという問題があった。金属製遮光材の場合は、厚さが薄くても十分な遮光性を有するが、金属製基材は樹脂製基材に比べて黒色塗膜との密着性が低いという問題があった。そのため、遮光材の使用時に金属製基材から黒色塗膜が剥離しやすかった。薄い遮光材は外力が加えられた際に変形しやすいので、使用時における黒色塗膜の剥離は薄い遮光材の場合に発生しやすい。また、金属製基材は黒色塗膜との密着性が低いので、金属製基材の上に塗工液を塗工して黒色塗膜を形成する際に、ブツ、ハジキと呼ばれる外観不良が生じやすかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属箔の中でも銅単体又は銅合金からなる銅箔は、他の金属箔に比べて、導電性に優れる、静電気が生じにくい、電解法又は圧延法により工業的に十分な生産性で箔化できるので経済性に優れる、耐食性に優れるなどの特性を有していることから、遮光材の基材として好適である。しかしながら、従来の銅箔は、上記のように塗膜との密着性が低いという問題があった。
本発明は、塗膜との密着性が高い銅箔を提供することを課題とする。また、本発明は、優れた遮光性を有することに加えて黒色塗膜と基材との密着性が高い遮光材を提供することを併せて課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者らは銅箔の表面形状に注目した。一般的な銅箔の表面形状は、例えば電解銅箔の場合であれば、めっき形成によるピラミッド状の凹凸形状、光沢のある平滑形状、及びめっき基材の研磨面の転写である研磨形状などのうちのいずれかの形状である。また、例えば圧延銅箔の場合であれば、圧延痕、オイルピットを含む圧延形状である。そして、上記の表面形状を有する銅箔の表面に対して、粗面化処理と呼ばれるめっき処理を施して、銅箔の表面に銅単体又は銅合金からなる粒子を形成することもある。
【0007】
しかしながら、上記の表面形状を有する銅箔は、黒色塗膜等の塗膜との密着性が十分に高いとは言えなかった。その理由の詳細は定かではないが、例えば平滑形状や研磨形状の場合は、銅箔上に黒色塗膜を形成する際に用いられる塗工液の溶剤(例えばメチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸ブチル)との濡れ性の低さが理由であると考えられる。また、ピラミッド状の凹凸形状や粗面化処理後の表面形状の場合は、塗工液に含有される樹脂(例えばアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂)は比較的軟性に富むため、凹凸の細い隙間に入り込んだ樹脂は容易に破断してしまい、十分なアンカー効果が得られにくいことが理由であると考えられる。
【0008】
このように、塗膜との密着性が高い銅箔を得るためには、従来の銅箔とは異なる表面形状とする必要があると考えられる。
本発明者らは、これらの知見を基に鋭意研究を行った結果、特定の粗面を表面に有することにより、塗膜との密着性が高い銅箔が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一態様に係る銅箔は、山頂点の算術平均曲率Spcが1300mm-1以上5000mm-1以下で且つ二乗平均平方根傾斜Sdqが2°以上25°以下である粗面を、一方又は両方の表面に有することを要旨とする。
また、本発明の別の態様に係る遮光材は、上記一態様に係る銅箔からなる基材と、銅箔の2つの表面のうち粗面を有する表面の上に形成された黒色塗膜と、を有し、光学濃度が6以上であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る銅箔は、塗膜との密着性が高い。また、本発明に係る遮光材は、優れた遮光性を有することに加えて黒色塗膜と基材との密着性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る遮光材を説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一例を示したものである。また、本実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0013】
本実施形態に係る銅箔1は、山頂点の算術平均曲率Spcが1300mm
-1以上5000mm
-1以下で且つ二乗平均平方根傾斜Sdqが2°以上25°以下である粗面1aを、一方又は両方の表面に有する(
図1は、一方の表面のみに粗面1aを有する例である)。粗面1aを有する表面の上には、ニッケル(Ni)単体又はニッケル合金からなり且つ厚さが0.2nm以上300nm以下である防錆層3を形成してもよいし、形成しなくてもよい(
図1は、防錆層3が形成されている例である)。
また、本実施形態に係る遮光材10は、
図1に示すように、銅箔1からなる基材と、銅箔1の2つの表面のうち粗面1aを有する表面の上に形成された黒色塗膜2と、を有し、光学濃度が6以上である。
【0014】
本実施形態に係る銅箔1は、上記構成の粗面1aを有するため、樹脂を含有する塗膜(例えば、遮光材に使用される黒色塗膜)との密着性が高い。詳述すると、銅箔の粗面に形成されている凹凸の形状が過剰に尖鋭で且つ尖鋭な凹凸が密集して形成されていると、凹凸の細い隙間に入り込んだ樹脂は容易に破断してしまい、アンカー効果が十分に得られないおそれがある。しかしながら、本実施形態に係る銅箔1が有する粗面1aは、形成されている凹凸の形状が尖鋭過ぎず且つ尖鋭な凹凸が均一に形成されている粗面であるため、凹凸の細い隙間に入り込んだ樹脂が破断しにくく、十分なアンカー効果が得られる。そのため、塗膜との密着性が高い。
【0015】
特に、遮光材が備える黒色塗膜は、カーボンブラック等のフィラーを多量に含有しているため、軟質且つ脆いものである。そのため、銅箔の粗面に形成されている凹凸の細い隙間に入り込んだ樹脂が破断しやすい。しかしながら、本実施形態に係る銅箔1は、上記構成の粗面1aを有するため、表面上に形成される塗膜がカーボンブラック等のフィラーを多量に含有している黒色塗膜であったとしても、凹凸の細い隙間に入り込んだ樹脂が破断しにくく十分なアンカー効果が得られる。そのため、本実施形態に係る銅箔1は、黒色塗膜との密着性が高い。
【0016】
このような性能を有することから、本実施形態に係る銅箔1は、遮光材の基材として好適である。すなわち、本実施形態に係る遮光材10は、上記構成の粗面1aを有する銅箔1を基材として用い、粗面1aを有する表面の上に黒色塗膜2が形成されているので、黒色塗膜2と銅箔1との密着性が高い。また、銅箔1の上に塗工液を塗工して黒色塗膜2を形成する際に、ブツ、ハジキと呼ばれる外観不良が生じにくい。さらに、遮光材10の使用時に外力が加えられ変形しても、銅箔1から黒色塗膜2が剥離しにくい。さらにまた、本実施形態に係る遮光材10は、光学濃度が6以上であるので、優れた遮光性を有している。
【0017】
このような性能を有することから、本実施形態に係る遮光材10は、カメラ、プロジェクタ等の光学機器の内部部材(例えばカメラの内壁面を構成する部材)や、スペーサー、シャッター、絞り部材、リング等に用いられる光学機器用の遮光材として好適である。本実施形態に係る遮光材10を備える光学機器は、外光によるハレーションやゴーストが発生しにくい。また、本実施形態に係る遮光材10は、銅箔1を薄型化しても遮光性が優れており、薄型化、軽量化が可能であるため、モバイル用の光学機器に好適である。
【0018】
以下に、本実施形態に係る銅箔1及び遮光材10について、さらに詳細に説明する。
(1)銅箔の製造方法について
本実施形態に係る銅箔1は、原料銅箔が有する2つの表面のうち一方又は両方の表面に粗面化処理を施して粗面1aを設け、山頂点の算術平均曲率Spcを1300mm-1以上5000mm-1以下とするとともに二乗平均平方根傾斜Sdqを2°以上25°以下とすることによって製造することができる。
【0019】
粗面化処理の種類は特に限定されるものではないが、例としては、エッチング処理、酸化処理、酸化還元処理、機械的処理、めっき処理が挙げられる。エッチング処理とは、原料銅箔の表面にエッチング液を接触させてエッチングすることによって粗面化する処理である。酸化処理とは、気体状、液体状、又は固体状の酸化剤を用いて原料銅箔の表面を酸化させることによって粗面化する処理である。酸化還元処理とは、原料銅箔の表面を酸化させた後に還元することによって粗面化する処理である。機械的処理とは、原料銅箔の表面にサンドブラスト等の機械的加工を施すことによって粗面化する処理である。めっき処理とは、原料銅箔の表面に金属からなる粒子を形成するめっきを施すことによって粗面化する処理である。これらの粗面化処理は、1種を単独で行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0020】
ここで、エッチング処理の一例として、マイクロエッチング液を用いたマイクロエッチング処理について説明する。マイクロエッチング液の具体例としては、硫酸と過酸化水素水の混合液からなるマイクロエッチング液や、メック株式会社製のマイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ-8101に代表される市販のマイクロエッチング液が挙げられる。
【0021】
マイクロエッチング処理は、原料銅箔の表面にマイクロエッチング液を接触させてエッチングすることによって行うことができる。原料銅箔の表面にマイクロエッチング液を接触させる方法は特に限定されるものではないが、マイクロエッチング液への浸漬、マイクロエッチング液の噴霧(スプレー)、マイクロエッチング液の掛け流し(シャワー)等が挙げられる。原料銅箔の表面にマイクロエッチング液を接触させる時間(エッチング時間)は特に限定されるものではないが、3秒以上60秒以下であることが好ましい。
【0022】
原料銅箔をマイクロエッチング液に浸漬することによってマイクロエッチング処理を行う場合には、超音波発生装置等を用いて超音波振動を印加しつつマイクロエッチング処理を行うことが好ましい。超音波振動は、エッチング時間の全体にわたって印加してもよいし、エッチング時間の一部分のみ印加してもよい。
【0023】
超音波振動の出力は、20kHz以上250kHz以下であることが好ましい。出力が20kHz以上であれば、マイクロエッチング液がエッチング界面へ十分に搬送されるため、形成されている凹凸の形状が尖鋭過ぎず且つ尖鋭な凹凸が均一に形成されている粗面が形成されやすい。また、出力が250kHz以下であれば、超音波振動による機械的な損傷が原料銅箔に加えられにくいことに加えて、設備的な負荷も現実的なものとなりやすい。
【0024】
上記の粗面化処理の中では、硫酸と過酸化水素水の混合液からなるマイクロエッチング液を用い、超音波振動を印加しつつマイクロエッチング処理を行う方法が最も好ましい。このようなマイクロエッチング処理によれば、原料銅箔の表面を適切に粗面化することができる。
【0025】
上記のマイクロエッチング処理が好ましい理由は定かではないが、以下のように推測される。マイクロエッチング処理によって原料銅箔から溶出した銅イオンやマイクロエッチング液の反応生成物は、通常は、微視的にはエッチング界面の近傍、特に凹凸の凹部分に比較的高濃度に留まりやすい。
【0026】
マイクロエッチング液の反応生成物が高濃度であると、一般にはエッチング速度に影響が出るため、マイクロエッチング処理の途中において、凹凸のそれぞれの箇所でエッチング速度が経時的に変化することになる。これにより、エッチング形状が複雑化し、銅箔の粗面に形成されている凹凸の形状が過剰に尖鋭で且つ尖鋭な凹凸が密集して形成されることが推測できる。
【0027】
このような表面形状であると、塗膜との密着性が良好であるように思われるが、塗膜を形成する樹脂が軟質且つ脆い場合には、凹凸の細い隙間に入り込んだ樹脂は容易に破断してしまい、アンカー効果が十分に得られないおそれがある。黒色塗膜はカーボンブラック等の黒色顔料を含有しているため、軟質且つ脆い。そのため、銅箔の粗面に形成されている凹凸の形状が過剰に尖鋭で且つ尖鋭な凹凸が密集して形成されていると、凹凸の細い隙間に入り込んだ樹脂は容易に破断してしまい、アンカー効果が十分に得られないと考えられる。
【0028】
超音波振動を印加しつつマイクロエッチング処理を行うと、エッチング界面の近傍のマイクロエッチング液がキャビテーションや振動の効果によって迅速にエッチング界面の遠方へ送られ、またエッチング界面の遠方からバルク組成のマイクロエッチング液がエッチング界面の近傍に送られる。そのため、凹凸のそれぞれの箇所でエッチング速度の経時的変化が起こりにくい。これにより、形成されている凹凸の形状が尖鋭過ぎず且つ尖鋭な凹凸が均一に形成されている粗面が形成される。
【0029】
粗面化処理前の原料銅箔の表面の十点平均粗さRzjisは、2μm以下であることが好ましい。この十点平均粗さRzjisは、JIS B0601:2001に規定された方法に従って、接触式表面粗さ測定機を用いて測定することができる。表面の十点平均粗さRzjisが2μm以下であれば、粗面化処理によって、塗膜との密着性が高い銅箔1が得られやすい。
【0030】
粗面化処理前の原料銅箔の厚さは、本実施形態に係る銅箔1(すなわち粗面化処理後の原料銅箔)の厚さの目標値によっても異なるが、5μm以上20μm以下であることが好ましく、5μm以上18μm以下であることがより好ましく、6μm以上18μm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係る銅箔1(すなわち粗面化処理後の原料銅箔)の厚さは、5μm以上18μm以下であることが好ましく、5μm以上12μm以下であることがより好ましく、5.5μm以上12μm以下であることがさらに好ましい。厚さが5μm以上の銅箔1を基材として用いれば、十分な機械特性を有する遮光材10を得ることができる。また、厚さが18μm以下の銅箔1を基材として用いれば、十分に薄型の遮光材10を得ることができる。
【0032】
(2)銅箔の粗面について
銅箔1の粗面1aの山頂点の算術平均曲率Spcは、1300mm-1以上5000mm-1以下である必要があり、1400mm-1以上5000mm-1以下であることが好ましく、1400mm-1以上4500mm-1以下であることがより好ましい。
【0033】
また、銅箔1の粗面1aの二乗平均平方根傾斜Sdqは、2°以上25°以下である必要があり、3°以上25°以下であることが好ましく、3°以上22°以下であることがより好ましい。
さらに、銅箔1の粗面1aの算術平均高さSaは、0.03μm以上0.35μm以下であることが好ましく、0.03μm以上0.15μm以下であることがより好ましく、0.03μm以上0.13μm以下であることがさらに好ましい。銅箔1の粗面1aの算術平均高さSaが上記範囲内であると、塗膜塗工時の外観不良が発生しにくい。
【0034】
さらに、銅箔1の粗面1aの十点平均粗さRzjisは、0.5μm以上2μm以下であることが好ましく、0.6μm以上2.0μm以下であることがより好ましく、0.6μm以上1.8μm以下であることがさらに好ましい。銅箔1の粗面1aの十点平均粗さRzjisが上記範囲内であると、塗膜塗工時の外観不良が発生しにくく、より高い耐熱性が得られやすい。
さらに、銅箔1の粗面1aの明度L*は、60以上85以下であることが好ましく、65以上85以下であることがより好ましい。銅箔1の粗面1aの明度L*が上記範囲内であると、塗膜塗工時の外観不良が発生しにくく、より高い耐熱性が得られやすい。
【0035】
(3)防錆層について
銅箔1の粗面1aを有する表面の上には、ニッケル単体又はニッケル合金からなり且つ厚さが0.2nm以上300nm以下である防錆層3が形成されていてもよい。防錆層3が形成されていれば、銅箔1の粗面1aの発錆が抑制される。なお、防錆層3の厚さは薄いので、防錆層3の形成による粗面1aの山頂点の算術平均曲率Spc、二乗平均平方根傾斜Sdq、明度L*等への影響は小さく、山頂点の算術平均曲率Spc、二乗平均平方根傾斜Sdq、明度L*等は十分に制御可能である。
【0036】
ニッケル合金の種類は特に限定されるものではないが、例としては、リン(P)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、及び銅(Cu)の中から選ばれる少なくとも1種の元素を含有するニッケル合金が挙げられる。
防錆層3の形成方法は特に限定されるものではないが、例としてはめっき法が挙げられる。
【0037】
防錆層3の厚さは特に限定されるものではないが、0.2nm以上300nm以下であることが好ましく、0.2nm以上40nm以下であることがより好ましく、0.2nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。防錆層3の厚さが0.2nm以上であれば、塗膜との密着性がより高くなる。また、防錆層3の厚さが300nm以下であれば、粗面1aの表面形状へ与える影響を小さくできる。また、防錆層3の厚さが40nm以下であれば、防錆層3の内部応力に伴う銅箔のカール現象が抑制され、銅箔の製造時や加工時のハンドリングが容易になり、カール時の加工不良を低減できる。さらに言えば、防錆層3の厚さが10nm以下であれば、カールはほとんど生じないのでカール由来の加工不良を低減することができるとともに、生産性やコストへの影響も小さい。
【0038】
(4)塗膜について
塗膜は、樹脂を含有する膜であり、銅箔1の2つの表面のうち粗面1aを有する表面の上に、樹脂が溶剤に溶解してなる樹脂溶液を含有する塗工液を塗工することによって形成することができる。本実施形態に係る遮光材10においては、銅箔1の2つの表面のうち粗面1aを有する表面の上に、塗膜として黒色塗膜2が形成されている。カーボンブラック等の黒色顔料が配合された塗工液を用いることにより、塗膜を黒色塗膜2とすることができる。
【0039】
塗膜に含有される樹脂の種類は特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系樹脂、ハイドロカーボン系樹脂(例えば、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂)、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、イソシアネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
塗工液に使用される溶剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤や、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶剤や、メタノール、エタノール等のアルコールや、トルエン、水等が挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
(5)遮光材について
本実施形態に係る遮光材10の光学濃度は、6以上である必要があり、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。光学濃度が6以上であれば、遮光材10の遮光性が優れている。
本実施形態に係る遮光材10を製造する際には、銅箔1の2つの表面のうち粗面1aを有する表面の上に塗工液を塗工して、黒色塗膜2を形成する。黒色塗膜2を形成する方法の一例を説明する。
【0042】
樹脂とカーボンブラックと溶剤を混合することにより、樹脂が溶剤に溶解してなる樹脂溶液にカーボンブラックを分散させて、塗工液を調製する。この塗工液を、銅箔1の2つの表面のうち粗面1aを有する表面の上に塗工して、銅箔1の表面の上に塗工液の膜を形成する。そして、塗工液の膜が含有する溶剤を熱処理等によって揮発させて、銅箔1の2つの表面のうち粗面1aを有する表面の上に黒色塗膜2を形成する。
【0043】
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
(A)基材
実施例1~28及び比較例7~16の基材を製造するための原料である原料銅箔として、表1、2に示す厚さを有する電解銅箔(両面光沢箔)を用意した。この電解銅箔の電解析出終了面(マット面)のRzjisは0.8~1.4μmの範囲内であり、電解析出開始面(シャイニー面)のRzjisは0.7~1.6μmの範囲内である。また、この電解銅箔の常態における引張強度は320MPaである。
【0044】
電解銅箔のマット面又はシャイニー面に、後述する粗面化処理及びニッケルめっき(防錆層の形成)を施して、基材とした。粗面化処理及びニッケルめっきを施した面は、表1、2の原料の欄に示すとおりである。ただし、実施例1、4、6、18及び比較例7、9、10については、粗面化処理のみを施し、ニッケルめっきは施していない。
【0045】
実施例28及び比較例6の基材を製造するための原料である原料銅箔として、厚さ10μmの圧延銅箔を用意した。この圧延銅箔の両面のRzjisは0.3~1.0μmの範囲内である。また、この圧延銅箔の常態における引張強度は380MPaである。実施例28については、圧延銅箔の一方の面に、後述する粗面化処理及びニッケルめっきを施して、基材とした。比較例6については粗面化処理及びニッケルめっきを施さず、圧延銅箔をそのまま基材とした。
【0046】
比較例1、2の基材を製造するための原料である樹脂製フィルムとして、表1、2に示す厚さを有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このポリエチレンテレフタレートフィルムの常態における引張強度は205MPaである。比較例1、2については粗面化処理及びニッケルめっきを施さず、ポリエチレンテレフタレートフィルムをそのまま基材とした。
【0047】
比較例3については、実施例6に用いた原料銅箔を、粗面化処理及びニッケルめっきを施すことなくそのまま基材とした。後述する黒色塗膜は、マット面に形成した。
比較例4については、古河電気工業株式会社製のプリント配線板用電解銅箔F2-WSをそのまま基材とした。ただし、この電解銅箔のマット面には、銅からなる粒子を形成して表面に凹凸を付与するめっき処理が施された後に、亜鉛、クロム等で形成された防錆層を設ける防錆めっきが施されている。後述する黒色塗膜は、マット面に形成した。
【0048】
比較例5については、古河電気工業株式会社製のプリント配線板用電解銅箔F2-WSをそのまま基材とした。ただし、この電解銅箔のシャイニー面には、亜鉛、クロム等で形成された防錆層を設ける防錆めっきが施されている。後述する黒色塗膜は、シャイニー面に形成した。
【0049】
(B)粗面化処理
実施例1~28及び比較例7~16については、銅箔をマイクロエッチング液に浸漬するマイクロエッチング処理により、銅箔の表面に粗面化処理を施した。マイクロエッチング液としては、メック株式会社製のマイクロエッチング剤であるメックエッチボンドCZ-8101を用いた。マイクロエッチング処理の際のマイクロエッチング液の温度は、30℃とした。マイクロエッチング処理を施す時間(エッチング時間)は、表1、2に記載のとおりである。
【0050】
また、実施例1~28及び比較例7、8、10、15、16については、超音波発生装置を用いて超音波振動を印加しつつマイクロエッチング処理を行った。超音波振動の出力は、表1、2に記載のとおりである。比較例9及び比較例11~14については、超音波振動を印加せずにマイクロエッチング処理を行った。
なお、粗面化処理後の銅箔の厚さを表1、2に示す。
【0051】
(C)防錆層の形成
粗面化処理に続いて、実施例2、3、5、実施例7~17、実施例19~28、比較例8、及び比較例11~16については、粗面化処理を施した表面(粗面)に対してニッケルめっきを施すことにより、粗面上に防錆層を形成した。実施例1、4、6、18及び比較例7、9、10については、前述したようにニッケルめっきは施していない。防錆層の厚さは、表1、2に記載のとおりである。なお、表1、2には、防錆層の厚さの数値を記すと共に、防錆層の厚さが0.2nm以上10nm以下である場合は「AA」、10nm超過40nm以下である場合は「A」、40nm超過300nm以下である場合は「B」、0.2nm未満又は300nm超過である場合は「C」と記してある。また、ニッケルめっきの条件は、下記のとおりである。
【0052】
<ニッケルめっきの条件>
めっき浴中のニッケルの濃度:40g/L
めっき浴中のホウ酸(H3BO3)の濃度:5g/L
めっき浴中の次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)の濃度:12g/L
めっき浴の温度:25℃
めっき浴のpH:3.5
電流密度:0.5A/dm2
通電時間:1.5~350秒
【0053】
(D)表面の性状の評価
粗面化処理を施した銅箔については、粗面化処理を施した側の表面の特性を評価した。粗面化処理を施していない比較例3~5の銅箔については、表2の原料の欄に記載した側の表面(マット面又はシャイニー面)の特性を評価した。比較例1、2、6については、特性を評価する表面は、いずれの側の表面でも差し支えない。
【0054】
評価する特性は、十点平均粗さRzjis、算術平均高さSa、山頂点の算術平均曲率Spc、二乗平均平方根傾斜Sdq、及び明度L*である。これら特性の評価方法を、以下に説明する。
<十点平均粗さRzjis>
十点平均粗さRzjisは、JIS B0601:2001に規定された方法に従って、接触式表面粗さ測定機を用いて測定した。結果を表1、2に示す。表1、2に示した数値は、任意の3点の測定値の平均値である。なお、表1、2には、十点平均粗さRzjisの数値を記すと共に、十点平均粗さRzjisが0.6μm以上1.8μm以下である場合は「A」、1.8μm超過2.0μm以下である場合は「B」、0.5μm以上0.6μm未満である場合は「C」、0.5μm未満又は2.0μm超過である場合は「D」と記してある。
【0055】
<算術平均高さSa、山頂点の算術平均曲率Spc、二乗平均平方根傾斜Sdq>
算術平均高さSa、山頂点の算術平均曲率Spc、二乗平均平方根傾斜Sdqは、株式会社キーエンス製の共焦点レーザー顕微鏡VK-X1050及びVK-X1000を用いて、ISO25178に従って測定した。結果を表1、2に示す。
【0056】
なお、共焦点レーザー顕微鏡の対物レンズ倍率は100倍、スキャンモードはレーザーコンフォーカル、測定サイズは2048×1536、測定品質はHigh Precision、ピッチは0.08μmである。表1、2に示した数値は、Sa、Spc、Sdqいずれについても、任意の3点の測定値の平均値である。
【0057】
なお、表1、2には、算術平均高さSaの数値を記すと共に、算術平均高さSaが0.03μm以上0.13μm以下である場合は「AA」、0.13μm超過0.15μm以下である場合は「A」、0.15μm超過0.35μm以下である場合は「B」、0.03μm未満又は0.35μm超過である場合は「C」と記してある。
【0058】
また、表1、2には、山頂点の算術平均曲率Spcの数値を記すと共に、山頂点の算術平均曲率Spcが1400mm-1以上4500mm-1以下である場合は「A」、4500mm-1超過5000mm-1以下である場合は「B」、1300mm-1以上1400mm-1未満である場合は「C」、1300mm-1未満又は5000mm-1超過である場合は「D」と記してある。
【0059】
さらに、表1、2には、二乗平均平方根傾斜Sdqの数値を記すと共に、二乗平均平方根傾斜Sdqが3°以上22°以下である場合は「A」、22°超過25°以下である場合は「B」、2°以上3°未満である場合は「C」、2°未満又は25°超過である場合は「D」と記してある。
【0060】
また、Sa、Spc、Sdqの演算は、以下に示すフィルター処理及び演算条件で行った。
画像処理:平滑化処理、3×3、メディアン
Sフィルター:無し
F-operation:平面傾き補正
Lフィルター:0.025μm
演算対象面積:100μm×100μm
なお、ニッケルめっき層の厚さについては、蛍光X線分光分析を用いて測定した。検量線を用いて銅箔単位面積当たりのニッケル付着質量を測定し、ニッケルの密度8.90g/cm3で除することによって、厚さを算出した。
【0061】
<明度L*>
明度L*は、日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計V-660(積分球ユニット)を用いて測定した。詳述すると、波長870~200nmの間での全光線分光反射率を測定し、そのスペクトルから、上記紫外可視分光光度計に付属のソフトウェアを用いて明度L*を算出した。結果を表1、2に示す。表1、2に示した数値は、任意の3点の測定値の平均値である。なお、表1、2には、明度L*の数値を記すと共に、明度L*が65以上85以下である場合は「A」、60以上65未満である場合は「B」、60未満又は85超過である場合は「C」と記してある。
【0062】
(E)黒色塗膜の形成
実施例1~28及び比較例1~16の基材の表面に塗工液を塗工して、基材の表面上に黒色塗膜を形成し、遮光材を作製した。詳述すると、基材の表面にバーコート法によって塗工液を塗工して塗工液の膜を形成し、塗工液の膜が含有する溶剤を乾燥空気中で十分に揮発させることによって、黒色塗膜を形成した。乾燥後の黒色塗膜の厚さが2μmになるように、乾燥前の塗工液の膜の厚さを調整した。
【0063】
粗面化処理を施した銅箔については、粗面化処理を施した側の表面の上に黒色塗膜を形成した。粗面化処理を施していない比較例3~5の銅箔については、表2の原料の欄に記載した側の表面(マット面又はシャイニー面)に黒色塗膜を形成した。比較例1、2、6については、黒色塗膜を形成する表面は、いずれの側の表面でも差し支えない。
【0064】
塗工液の組成は以下のとおりである。
・アクリルポリオール(DIC株式会社製のアクリディックA801P(固形分50質量%)):12.2質量部
・イソシアネート(DIC株式会社製のバーノックDN980(固形分75質量%)):8.5質量部
・カーボンブラック(キャボット社製のバルカンXC-72):6.0質量部
・メチルエチルケトン:42.1質量部
・トルエン:16.2質量部
【0065】
(F)遮光材の評価
上記のようにして得られた実施例1~28及び比較例1~16の遮光材について、以下の評価を行った。
<外観不良>
黒色塗膜の表面のうち一部の領域を評価領域と定め、該評価領域における外観不良の有無を確認した。すなわち、評価領域に存在する直径100μm以上のブツ及びハジキの合計の個数を計測した。評価領域は、縦200mm、横150mmの長方形状の領域であり、その縦方向は塗工液の塗工時に塗工液を流延した方向である。
【0066】
初めに目視にて評価領域内のブツ及びハジキを確認した後に、そのそれぞれについて光学顕微鏡で観察を行い、その直径を計測した。ブツ及びハジキの形状が、円形又はそれに類似する形状とは異なる異形状である場合は、直径100μmの円内に収まらない形状のブツ及びハジキを、直径100μm以上のブツ及びハジキとして個数に加えた。
【0067】
ここで、ブツとは、黒色塗膜と基剤の界面又は黒色塗膜の内部に気泡等の空隙が存在する部分であり、その部分の形状は円形又はそれに類似する形状が多く、その部分の大きさは微小である。また、ハジキとは、黒色塗膜の一部に形成された凹部又は穴(基材まで到達する凹部)であり、凹部及び穴の平面形状は円形又はそれに類似する形状が多い。
【0068】
外観不良の評価結果を表1、2に示す。なお、表1、2においては、評価領域に存在する直径100μm以上のブツ及びハジキの合計の個数が0個である場合は「AA」、1個以上4個以下である場合は「A」、5個以上6個以下である場合は「B」、7個以上である場合は「C」と記してある。評価がAA、A、及びBである場合を合格とし、Cである場合を不合格とする。
【0069】
<密着性試験>
JIS K5600-5-4に従って、黒色塗膜に対して鉛筆硬度試験を行った。試験の結果を表1、2に示す。なお、黒色塗膜の剥離が生じない最大硬さが3H以上である場合は合格とし、表1、2においては「OK」と記し、2H以下である場合は不合格とし、表1、2においては「NG」と記した。また、鉛筆硬度試験は任意の3箇所で行い、黒色塗膜の剥離が生じない最大硬さが最も小さかった結果を、評価結果として用いた。
【0070】
<耐熱性試験>
遮光材を縦横100mmの正方形状に切断して、これを試験片とした。この試験片を大気オーブン中で190℃に加熱した。黒色塗膜の外観を目視で確認し、黒色塗膜の剥離が生じるまでの時間を測定した。試験の結果を表1、2に示す。なお、黒色塗膜の剥離が生じるまでの時間が600時間以上である場合を合格とし、表1、2においては「OK」と記し、600時間未満である場合は不合格とし、表1、2においては「NG」と記した。また、1512時間に達しても黒色塗膜の剥離が生じなかった場合は、試験を打ち切り、表1、2には1512時間と記した。
【0071】
<光学濃度>
オプトシリウス株式会社製の光学濃度計DD8-Nを使用して、遮光材の光学濃度を測定した。測定波長範囲は435~700nmとし、光学濃度の測定範囲は0~8とした。結果を表1、2に示す。なお、光学濃度が6.5以上である場合は合格とし、表1、2においては「OK」と記し、6.5未満である場合は不合格とし、表1、2においては「NG」と記した。また、表1、2に示した数値は、任意の3点の測定値の平均値である。
【0072】
【0073】
【0074】
実施例1~28の銅箔は、山頂点の算術平均曲率Spcが1300mm-1以上5000mm-1以下で且つ二乗平均平方根傾斜Sdqが2°以上25°以下であるため、これら銅箔を基材として用いた遮光材は、表1から分かるように、良好な外観、密着性、及び耐熱性を示し、且つ、高い光学濃度を示した。
【0075】
比較例1及び比較例2の遮光材は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いているため、表2から分かるように、良好な外観、密着性、及び耐熱性を示したが、光学濃度は不十分であった。また、比較例1と比較例2の比較から、基材の厚さが小さいほど光学濃度が小さいことが分かる。さらに、比較例2と実施例1の比較から、基材の厚さが同じであっても比較例2の方が光学濃度は小さいことが分かる。
【0076】
比較例3~6の遮光材は、粗面化処理が施されていない銅箔を基材として用いているため、表2から分かるように、山頂点の算術平均曲率Spc及び二乗平均平方根傾斜Sdqが上記の数値範囲を外れている。そのため、表2から分かるように、外観、密着性、及び耐熱性のうち少なくとも一つが劣っていた。
【0077】
比較例7~16の遮光材は、粗面化処理が施された銅箔を基材として用いているものの、山頂点の算術平均曲率Spc又は二乗平均平方根傾斜Sdqが上記の数値範囲を外れている。そのため、表2から分かるように、外観、密着性、及び耐熱性のうち少なくとも一つが劣っていた。
【符号の説明】
【0078】
1・・・銅箔
1a・・・粗面
2・・・黒色塗膜
3・・・防錆層
10・・・遮光材