(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】血漿交換システム、及び血漿交換システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240325BHJP
A61M 1/18 20060101ALI20240325BHJP
A61M 1/32 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61M1/36 181
A61M1/36 119
A61M1/18 525
A61M1/32 500
(21)【出願番号】P 2023571298
(86)(22)【出願日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2023025340
【審査請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2022120574
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000200677
【氏名又は名称】泉工医科工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【氏名又は名称】山本 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100161090
【氏名又は名称】小田原 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【氏名又は名称】内田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】原 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】長久保 大
(72)【発明者】
【氏名】市場 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】木原 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】南浦 亮介
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538118(JP,A)
【文献】特表2015-522577(JP,A)
【文献】特開2007-144228(JP,A)
【文献】特開平10-071201(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0252205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/18
A61M 1/32
A61M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液に酸素を付加するための液体に前記酸素を付加する酸素付加器と、
前記血液から前記液体への血漿の移動と、前記液体から前記血液への前記酸素の移動と、前記血液から前記液体への二酸化炭素の移動とが行われる中空糸膜を有している血漿分離器と、
前記液体に含まれている前記血漿を分画する成分分画器とを備えている、血漿交換システム。
【請求項2】
前記成分分画器から流出する前記液体が流れる第一ラインと、
前記成分分画器へ流入する前記液体が流れる第二ラインとを備えており、
前記酸素付加器は、前記第一ライン及び前記第二ラインの少なくとも一方に配置されている、請求項1に記載の血漿交換システム。
【請求項3】
前記液体から前記二酸化炭素を除去する除去部を備えており、
前記除去部は、前記血液の二酸化炭素分圧が前記液体の二酸化炭素分圧よりも高くなるように、前記液体から前記二酸化炭素を除去する、請求項1に記載の血漿交換システム。
【請求項4】
前記酸素付加器は、前記液体を貯める液源部と、前記除去部とを有しており、
前記酸素付加器は、前記液源部の内部の前記液体に前記酸素を付加するように構成されている、請求項3に記載の血漿交換システム。
【請求項5】
前記血漿分離器と前記成分分画器とが一体化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の血漿交換システム。
【請求項6】
前記血漿分離器と前記成分分画器とは、互いに直接的に又は間接的に接するように一体化されている、請求項5に記載の血漿交換システム。
【請求項7】
前記成分分画器は、前記液体を貯める貯留部を有しており、
前記貯留部には、前記液体を前記貯留部から流出させる液体出口と、前記液体を前記貯留部に流入させる液体流入口とが設けられており、
重力方向において、前記液体出口の位置が前記液体流入口よりも上方に位置する、請求項1から4のいずれか一項に記載の血漿交換システム。
【請求項8】
前記貯留部は、前記血漿を排出させる排出口を有しており、
前記重力方向において、前記排出口の位置は、前記液体出口よりも下方に位置する、請求項7に記載の血漿交換システム。
【請求項9】
前記血漿分離器は、前記中空糸膜を挟む第一壁部と第二壁部とを有し、
前記第一壁部には、付加された前記酸素を含む前記液体が流れる第一流路が形成されており、
前記第二壁部には、移動された前記二酸化炭素を含む前記液体が流れる第二流路が形成されており、
前記第二流路は、前記液体流入口と連通している、請求項7に記載の血漿交換システム。
【請求項10】
前記第一流路は、付加された前記酸素を含む前記液体を前記血漿分離器に流入させる液体入口と連通している、請求項9に記載の血漿交換システム。
【請求項11】
酸素付加器と、血漿分離器と、成分分画器とを備えている血漿交換システムの制御方法であって、
前記酸素付加器
が、血液に酸素を付加するための液体に前記酸素を付加
し、
前記血漿分離器
が、前記血液から前記液体への血漿の移動と、前記液体から前記血液への前記酸素の移動と、前記血液から前記液体への二酸化炭素の移動とを行
い、
前記成分分画器
が、前記液体に含まれている前記血漿を分画
する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除水機能とガス交換機能とを有する血漿交換システム、及び血漿交換システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人工腎臓用装置が記載されている。この人工腎臓用装置は、血液ポンプが配置される動脈側回路を備えている。そして、動脈側回路の末端にあるポートコネクタは、血液透析器の血液流入口と接続されている。さらに、血液透析器の血液流出口は、静脈側回路と接続されており、流路に沿って補充液容器が配置されている。また、透析液供給装置と透析液流入口との間にある透析液供給回路には、酸素付加装置が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者から取り出した血液から病因物質を除去する治療法として、アフェレーシス療法がある。このアフェレーシス療法には、単純血漿交換法、二重濾過血漿分離交換法、及び血漿吸着法などがある。例えば、アフェレーシス療法では、除水機能を有する血漿分離器を用いて血液から血漿を分離する。
【0005】
単純血漿交換法では、血液から分離した血漿を病因物質とともに廃棄する。そして、廃棄する血漿と同じ量の置換液を患者の体内に戻す。また、二重濾過血漿分離交換法では、分離した血漿をさらに濾過して、濾過されなかった病因物質を廃棄する。そして、濾過された血漿成分と置換液を患者の体内に戻す。また、血漿吸着法では、分離した血漿から病因物質を吸着体に吸着させて除去する。そして、吸着した病因物質を廃棄するとともに、病因物質が除去された血漿を患者の体内に戻す。
【0006】
このようなアフェレーシス療法をおこなう場合に、血液への酸素の付加及び血液からの二酸化炭素の除去を行うガス交換が望まれることがある。この場合には、ガス交換機能を有する人工肺を用いてガス交換を行うことができる。しかし、血漿分離器及び人工肺の両者が患者に接続されることになり、患者への負担が増加してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る血漿交換システムは、血液に酸素を付加するための液体に前記酸素を付加する酸素付加器と、前記血液から前記液体への血漿の移動と、前記液体から前記血液への前記酸素の移動と、前記血液から前記液体への二酸化炭素の移動とが行われる中空糸膜を有している血漿分離器と、前記液体に含まれている前記血漿を分画する成分分画器とを備えている。
【0008】
他の態様に係る制御方法は、酸素付加器と、血漿分離器と、成分分画器とを備えている血漿交換システムの制御方法であって、前記酸素付加器に、血液に酸素を付加するための液体に前記酸素を付加させ、前記血漿分離器に、前記血液から前記液体への血漿の移動と、前記液体から前記血液への前記酸素の移動と、前記血液から前記液体への二酸化炭素の移動とを行わせ、前記成分分画器に、前記液体に含まれている前記血漿を分画させる。
【発明の効果】
【0009】
これにより、アフェレーシス療法中に血液のガス交換を行う場合に、患者への負担の増加を抑制できる。
【0010】
本開示のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態に係る血漿交換システムの概略図である。
【
図2】第二実施形態に係る血漿交換システムの概略図である。
【
図3】血漿交換ユニットの奥行方向に沿った概略断面図である。
【
図4】血漿交換ユニットの幅方向に沿った概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置又は方法の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されない。なお、本明細書において、上下とは重力方向における上方向と下方向とにそれぞれ対応する。
【0013】
[第一実施形態]
図1は、体外循環システムとしても機能する血漿交換システム100の概略図である。この血漿交換システム100は、患者Pの血液の循環動作と、血液から血漿を分離する除水と、血液へ酸素を付加し且つ血液から二酸化炭素を除去するガス交換とを行う。また、血漿交換システム100は、血漿、又は血漿中の病因物質の除去を行う。そのために、血漿交換システム100は、血漿分離器10を備えている。血漿分離器10は、血液に酸素を付加するための酸素加用の液体へ、血液から血漿を移動させることによって、患者Pの血液から血漿を分離する。また、血漿分離器10は、当該液体から血液への酸素の移動と、血液から当該液体への二酸化炭素の移動とを行うガス交換機能を有する。そのために、血漿分離器10は、血液から酸素加用の液体への血漿の移動と、当該液体から血液への酸素の移動と、血液から当該液体への二酸化炭素の移動とが行われる中空糸膜(不図示)を有している。
【0014】
また、血漿交換システム100は、酸素付加器20を備えている。この酸素付加器20は、血液に酸素を付加するための液体の一例である循環液に酸素を付加する。さらに、血漿交換システム100は、成分分画器30を備えている。この成分分画器30は、当該液体に含まれている血漿を分画する。
【0015】
また、血漿交換システム100は、脱血回路の一例である脱血ライン101と、血液を移送する送血回路の一例である送血ライン102とを備えている。さらに、血漿交換システム100は、脱血ライン101を介して血液を患者Pの体内から脱血する第1ポンプ106を備えている。この脱血ライン101は、患者Pから血漿分離器10まで設けられている。そして、脱血ライン101においては、不図示の脱血カニューレ等を介して患者Pから脱血した血液が、第1ポンプ106によって血漿分離器10に移送される。一例として、血液は、患者Pの上大静脈及び下大静脈から脱血される。
【0016】
そして、血液は、血漿分離器10の血液入口(不図示)から血漿分離器10の内部に流入する。その後、血漿分離器10によって血液から血漿が分離される。血漿が分離された血液は、血漿分離器10の血液出口(不図示)から血漿分離器10の外部に流出する。そして、流出した血液は、送血ライン102を介して患者Pの体内へ送血される。すなわち、送血される血液は、送血ライン102を通り、不図示の送血カニューレ等を介して患者Pの大動脈に向かって流れる。この送血ライン102は、血漿分離器10から患者Pまで設けられている。
【0017】
また、送血ライン102の途中では、補充液源40から補充液が血液に補充される。補充液は、血漿と置換されるものであり、例えば、アルブミン溶液と新鮮凍結血漿である。なお、一例として、脱血ライン101と送血ライン102とは、ポリ塩化ビニルにより形成されたチューブを有している。
【0018】
さらに、血漿交換システム100は、循環回路の一例である血漿ライン103及び循環液ライン104を備えている。この循環回路は血漿分離器10から酸素付加器20及び成分分画器30を経て血漿分離器10に戻るまで設けられている。また、血漿交換システム100は第2ポンプ107を備えており、循環回路には循環液が流れている。この第2ポンプ107は、血漿分離器10の中空糸の内部流路の圧力が、中空糸の外部流路の圧力よりも高くなるように、血漿分離器10に陰圧を付加する。そして、第2ポンプ107が圧力差を生じさせることによって、血漿を血液から分離できる。
【0019】
一例として、循環液は、生体適合性イオン液体又は疎水性液体である。例えば、循環液は、デカメチルシクロペンタシロキサン、フルオロカーボン類(例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、若しくはクロロフルオロカーボン)、又はパーフルオロカーボン類(例えば、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、若しくはパーフルオロプロパン)である。また、循環液は、血漿よりも密度が小さい液体を使用できる。これにより、血漿の沈殿を利用して、成分分画器30において循環液に混合している血漿を分画できる。
【0020】
一例として、血漿ライン103及び循環液ライン104は、ポリ塩化ビニルにより形成されたチューブを有している。そして、第1ポンプ106及び第2ポンプ107は、回転ローラがチューブを押し潰しながら回転移動することによりチューブ内の液体を吸引及び押し出すローラポンプである。代替的に、第1ポンプ106及び第2ポンプ107は、モータによりインペラ羽根を回転させて液体を送出する遠心ポンプであってもよい。
【0021】
血漿分離器10においては、血液から分離された血漿及び二酸化炭素が循環液の中に拡散する。そして、血漿を含む循環液は、血漿分離器10の循環液出口(不図示)から血漿分離器10の外部に流出する。その後、血漿及び二酸化炭素を含む循環液は、酸素付加器20において酸素が付加される。
【0022】
酸素付加器20には、酸素加用の気体を供給するガス供給源50が接続されている。例えば、酸素加用の気体は、酸素、又は酸素及び空気からなる混合ガスである。一例として、酸素付加器20は、気泡型酸素加装置であり、循環液を一時的に貯留する酸素加リザーバ(不図示)を有している。そして、酸素加用の気体は、バブリング等の方法によって酸素加リザーバ内の循環液に拡散される。すなわち、酸素付加器20は、循環液に酸素を吹送し続け、これにより循環液に豊富な酸素が含まれる状態を維持できる。そのため、アフェレーシス療法中に、循環液のガス交換性能を維持できる。
【0023】
代替的に、酸素付加器20は、中空糸膜又は半透膜を用いて循環液に酸素加用の気体を付加してもよい。この場合、中空糸膜又は半透膜を用いて、循環液中の二酸化炭素を除去してもよい。なお、バブリングによって酸素加用の気体を付加することによって、循環液中の二酸化炭素の一部を循環液から分離できる。すなわち、循環液中の二酸化炭素は、分圧差によって酸素加用の気体の気泡に移動して分離される。この場合、酸素付加器20は、酸素加リザーバの上部に設けられているパージポートを有する。そして、循環液に拡散されなかった酸素加用の気体の一部と、循環液から分離された二酸化炭素とは、パージポートを介して酸素加リザーバの外部へ排出される。
【0024】
酸素が付加された循環液は、成分分画器30に送出される。そして、成分分画器30において、循環液から病因物質を含む血漿又は血漿成分と、二酸化炭素とが分画される。そして、酸素を含む循環液は、循環液ライン104を通って、血漿分離器10の循環液入口(不図示)から血漿分離器10の内部に流入する。その後、血漿分離器10の内部において、循環液中の酸素が血液の中に拡散する。同時に、血液中の二酸化炭素が循環液の中に拡散することによりガス交換が行われる。
【0025】
[血漿分離器]
血漿分離器10は、多数の中空糸が集束された中空糸膜と、中空糸膜を収容するハウジングを有している。そして、血漿分離器10の血液入口から流入する血液は、中空糸の内側の内部流路を流れる。また、血漿分離器10の循環液入口から流入する循環液は、中空糸の外側の外部流路を流れる。この中空糸は、半透膜として機能し、第2ポンプ107が外部流路に陰圧を付加することにより、血液中の血漿が中空糸の外側に移動して循環液中に拡散する。言い換えると、血液中の血漿は、限外濾過によって、半透膜としての中空糸を通過して循環液中に拡散する。
【0026】
さらに、血漿分離器10は、液-液型の人工肺としても機能する。具体的に、内部流路を流れる血液の二酸化炭素分圧は、外部流路を流れる循環液の二酸化炭素分圧よりも高い。また、内部流路を流れる血液の酸素分圧は、外部流路を流れる循環液の酸素分圧よりも低い。そのため、中空糸の外部と内部との酸素の分圧差により、外部流路を流れる循環液中の酸素は、中空糸の表面を透過して内部流路を流れる血液の中に拡散する。同時に、中空糸の外部と内部との二酸化炭素の分圧差により、内部流路を流れる血液中の二酸化炭素は、中空糸の表面を透過して外部流路を流れる循環液の中に拡散する。
【0027】
このようにして、中空糸膜を介して液-液(血液-循環液)間でのガス交換が行われる。その後、酸素が付加されて動脈血化した血液は、血漿分離器10の血液出口から流出する。そして、動脈血化した血液は、患者Pの体内へ送血される。また、二酸化炭素が拡散した循環液は、血漿分離器10の循環液出口から流出する。そして、循環液は、酸素付加器20へと送出される。
【0028】
なお、血漿分離器10と患者Pとの間には、血液の温度を調整するための熱交換部(不図示)が設けられている。例えば、熱交換部は、患者Pと血漿分離器10の血液入口との間、又は血漿分離器10の血液出口と患者Pとの間に設けられる。代替的に、熱交換部は、血漿分離器10に設けられていてもよい。また、循環液を加温又は冷却することによって、血漿分離器10において血液の温度を調整してもよい。例えば、循環液の温調装置は、成分分画器30と血漿分離器10の間に設けることができる。代替的に、循環液の温調装置は、酸素付加器20又は成分分画器30に設けてもよい。ただし、温調装置を成分分画器30と血漿分離器10の間に設けることによって、廃棄される血漿による熱の損失を低減できる。
【0029】
また、血漿分離器10の内部には、ヘモフィルタとも呼ばれる中空糸膜が設けられている。一例として、中空糸膜の中空糸は、親水性中空糸であるか、又は親水化処理が施されている。例えば、中空糸には、親水化処理として、高分子ポリマーコーティングが施されている。これにより、疎水性液体である循環液は、中空糸の表面を透過せず、血液と循環液とが混合することを防止できる。一方、血液中の血漿は、このような中空糸の表面を透過するため、限外濾過によって血液から血漿を分離できる。なお、分離した血漿の代わりに、補充液が血液に補充される。ただし、血漿分離器10をヘモコンセントレータとして機能させてもよい。この場合、血液から血漿を分離することによって、血液を濃縮して、ヘモグロビン濃度又はヘマトクリット値を増加させることができる。
【0030】
[成分分画器]
血漿分離器10から成分分画器30までの血漿ライン103においては、循環液に血漿及び二酸化炭素が混合されている。さらに、酸素付加器20から成分分画器30までの血漿ライン103においては、循環液に血漿、二酸化炭素、及び酸素が混合されている。そして、循環液中の血漿及び二酸化炭素は、成分分画器30において循環液から分離される。そのために、成分分画器30は、一例として、血漿が混合した循環液を一時的に貯留する分画リザーバ31を有している。また、分画リザーバ31は、血漿が混合した循環液が流入するリザーバ入口32と、血漿が分離した循環液が流出するリザーバ出口33とを有している。さらに、分画リザーバ31は、血漿を排出する排出口34と、循環液に混合している二酸化炭素(及び酸素の一部)を排出する排ガス口35を有している。
【0031】
具体的に、循環液は血漿よりも密度が小さい。そのため、循環液中の血漿は、分画リザーバ31の内部の対流を調整することによって、分画リザーバ31内の下部へ自然沈降する。さらに、分画リザーバ31内には、親水性分離膜36(半透膜)が設けられている。この親水性分離膜36は、分画リザーバ31の上部と下部とを仕切る位置に配置される。そして、血漿は親水性分離膜36を透過して分画リザーバ31の下部へと移動する。
【0032】
また、分画リザーバ31の下端には、排出口34が設けられている。そして、沈降した血漿は、排出口34を介して分画リザーバ31の外部へ排出される。一方、循環液は、親水性分離膜36を透過せずに分画リザーバ31の上部に留まる。そして、分画リザーバ31の上部には、リザーバ出口33が設けられている。これにより、血漿が分離した循環液は、リザーバ出口33を介して分画リザーバ31の外部へ流出する。代替的に、循環液が血漿よりも密度が大きい場合には、循環液と分離した血漿の層を分画リザーバ31の上部から吸引して排出してもよい。
【0033】
また、循環液が流入するリザーバ入口32は、分画リザーバ31の上部に形成されている。そして、親水性分離膜36は、重力方向においてリザーバ入口32よりも下方であり、且つ血漿を排出する排出口34により近い位置に配置されている。また、重力方向において、リザーバ入口32よりも下方であり且つ排出口34よりも上方の位置に、血漿が分離した循環液が流出するリザーバ出口33が形成されている。また、循環液中に混合している二酸化炭素は、血漿を自然沈降させている間に、気泡となって上部空間Sへと放出される。そして、上部空間Sに溜まった二酸化炭素は、排ガス口35を介して成分分画器30の外部へと排出される。
【0034】
このように、リザーバ出口33は、リザーバ入口32よりも下方に形成されている。これによって、リザーバ入口32を介して流入した循環液から気泡となって上昇する二酸化炭素が、リザーバ出口33を介して外部に流出することを抑制できる。なお、排出口34には、血漿の排出タイミングを調整するための開閉弁が設けられていてもよい。
【0035】
以上説明した第一実施形態に係る血漿交換システム100によれば、アフェレーシス療法における血漿及び病因物質の除去と、ガス交換としての二酸化炭素の除去及び酸素の付加とを、同一システムにおいて実行できる。さらに、血漿分離器10に加えて人工肺を患者Pに接続する必要がないため、患者Pへの負担の増加を抑制できる。また、血漿分離器10に加えて人工肺が患者Pに接続されることによる血液の凝固亢進を抑制できる。
【0036】
なお、親水性分離膜36に代えて、分画リザーバ31の内部に、疎水性分離膜(半透膜)が設けられていてもよい。疎水性分離膜も、分画リザーバ31の上部と下部とを仕切る位置に配置される。そして、循環液は、疎水性分離膜を透過して分画リザーバ31の上部へと移動する。この場合、血漿が混合した循環液が流入するリザーバ入口32は、疎水性分離膜よりも下方の位置に形成される。また、リザーバ出口33は、疎水性分離膜よりも上方の位置に形成される。
【0037】
[第二実施形態]
図2は、体外循環システムとしても機能する、第二実施形態に係る血漿交換システム200の概略図である。第二実施形態に係る血漿交換システム200は、血漿分離器60と成分分画器70とが一体化されている点で、第一実施形態とは異なる。
【0038】
第一実施形態と同様に、血漿交換システム200も、患者Pの血液の循環動作と、血液から血漿を分離する除水と、血液へ酸素を付加し且つ血液から二酸化炭素を除去するガス交換とを行う。また、血漿交換システム200は、血漿、又は血漿中の病因物質の除去を行う。そのために、血漿交換システム200は、血漿交換ユニットPUを備えている。この血漿交換ユニットPUにおいては、血漿分離器60と成分分画器70とが一体化されている。
【0039】
血漿分離器60は、血液に酸素を付加するための酸素加用の液体の一例である透析液へ、血液から血漿を移動させる。また、血漿分離器60は、透析液から血液への酸素の移動と、血液から透析液への二酸化炭素の移動とを行うガス交換機能を有する。また、成分分画器70は、透析液に含まれている血漿を分画する。
【0040】
具体的に、血漿分離器60と成分分画器70とは、血漿交換ユニットPUの筐体を構成するように一体化している。代替的に、血漿分離器60と成分分画器70とは、血漿交換ユニットPUの筐体内に収容されることによって、一体化されていてもよい。また、血漿交換ユニットPUは、他の装置を備えていてもよい。一例として、血漿交換ユニットPUは、血液又は透析液の温度を調整する熱交換装置を備えていてもよい。
【0041】
また、血漿交換システム200は、透析液に酸素を付加する酸素付加器220を備えている。さらに、血漿交換システム200は、透析液から二酸化炭素を除去する除去部220Aを備えている。この除去部220Aは、血液の二酸化炭素分圧が透析液の二酸化炭素分圧よりも高くなるように、透析液から二酸化炭素を除去する。例えば、酸素付加器220が、除去部220Aを有している。そして、酸素付加器220は、液源部220Bの内部の透析液に酸素を付加するように構成されている。代替的に、酸素付加器220に代えて又は加えて、成分分画器70において酸素を付加してもよい。
【0042】
一例として、酸素付加器220は、透析液の供給のために、透析液が溜まっている液源部220Bを有している。また、酸素付加器220には、酸素加用の気体を供給するガス供給源50が接続されている。そして、酸素付加器220は、酸素加リザーバとしても機能する液源部220Bにおいて、透析液に酸素を付加し且つ透析液から二酸化炭素を除去する。具体的に、酸素付加器220は、液源部220Bの内部に貯められた透析液に、バブリングによって酸素加用の気体を付加する。また、バブリングによって、透析液の中の二酸化炭素を透析液から分離できる。これにより、酸素付加器220は、透析液から二酸化炭素を除去する除去部220Aとして機能する。そして、分離された二酸化炭素は、液源部220Bの上部に設けられているパージポートを介して、酸素付加器220の外部へ排出される。
【0043】
さらに、血漿交換システム200は、脱血回路の一例である脱血ライン201と、血液を移送する送血回路の一例である送血ライン202とを備えている。さらに、血漿交換システム200は、脱血ライン201を介して血液を患者Pの体内から脱血する第1ポンプ106を備えている。この脱血ライン201は、患者Pから血漿分離器60まで設けられている。そして、脱血ライン201においては、不図示の脱血カニューレ等を介して患者Pから脱血した血液が、第1ポンプ106によって血漿分離器60に移送される。一例として、血液は、患者Pの上大静脈及び下大静脈から脱血される。
【0044】
そして、血液は、血漿分離器60の血液入口管61から血漿分離器60の内部に流入する。その後、血漿分離器60によって血液から血漿が分離される。血漿が分離された血液は、血漿分離器60の血液出口管62から血漿分離器60の外部に流出する。そして、流出した血液は、送血ライン202を介して患者Pの体内へ送血される。すなわち、送血される血液は、送血ライン202を通り、不図示の送血カニューレ等を介して患者Pの大動脈に向かって流れる。この送血ライン202は、血漿分離器60から患者Pまで設けられている。また、送血ライン202の途中では、補充液源40から補充液が血液に補充される。
【0045】
なお、
図2の例では、図中左側に血液入口管61が位置しており、図中右側に血液出口管62が位置している。しかし、血液入口管61及び血液出口管62の位置は任意に設定できる。例えば、図中左側に血液出口管62が位置しており、図中右側に血液入口管61が位置していてもよい。さらに、血漿分離器60の下部に血液入口管61が位置しており、血漿分離器60の上部に血液出口管62が位置していてもよい。また、血漿分離器60の上部に血液入口管61が位置しており、血漿分離器60の下部に血液出口管62が位置していてもよい。
【0046】
さらに、血漿交換システム200は、循環回路の一例として、成分分画器70から流出する液体が流れる第一ライン203と、成分分画器70へ流入する液体が流れる第二ライン204とを備えている。例えば、第一ライン203及び第二ライン204は、ポリ塩化ビニルにより形成されたチューブを有している。そして、酸素付加器220は、第一ライン203及び第二ライン204の少なくとも一方に配置されている。
図2の例では、酸素付加器220が第二ライン204に配置されている。代替的に、酸素付加器220は、第一ライン203に配置されてもよい。
【0047】
また、第一ライン203及び第二ライン204を含む各ラインには、チューブによって構成される外部流路の他に、装置内を通る内部流路が含まれる。一例として、内部流路は、リザーバ又はセンサ等の内部を通っている。また、
図2の例では、第二ライン204に血漿分離器60の内部流路が含まれており、液体は液体流出口65A(
図3)を介して成分分画器70へ流入する。なお、第一実施形態では、血漿ライン103が、成分分画器30へ流入する液体が流れる第二ラインに対応している。また、第一実施形態では、循環液ライン104が、成分分画器30から流出する液体が流れる第一ラインに対応している。そして、第一実施形態の酸素付加器20は、血漿ライン103に配置されている。
【0048】
循環回路は、血漿交換ユニットPUから酸素付加器220を経て血漿交換ユニットPUに戻るまで設けられている。そして、酸素が付加された透析液は、成分分画器70の液体入口管73に送出される。また、酸素を含む透析液は、液体入口管73から血漿分離器60の内部に流入する。そして、血漿分離器60では、血液から酸素加用の液体への血漿の移動と、当該液体から血液への酸素の移動と、血液から当該液体への二酸化炭素の移動とが行われる。これにより、血漿分離器60の内部において、透析液中の酸素が血液の中に拡散する。同時に、血液中の二酸化炭素が透析液の中に拡散することによりガス交換が行われる。
【0049】
さらに、血漿分離器60においては、血液から分離された血漿が透析液の中に拡散する。そして、血漿及び二酸化炭素を含む透析液は、血漿分離器60から成分分画器70に流出する。その後、成分分画器70においては、透析液から病因物質を含む血漿又は血漿成分(以下、「血漿等」ともいう。)が分画される。続いて、二酸化炭素を含み且つ血漿等が分画された透析液は、液体出口管74を介して外部に流出する。その後、当該透析液には、酸素付加器220において酸素が付加される。
【0050】
また、成分分画器70には、沈降した血漿等を排出するための排出管75が接続されている。そして、血漿等を含む透析液の一部が、排出管75を介して成分分画器70の外部へ排出される。さらに、血漿交換システム200は、血漿等とともに排出される透析液を分離する分離装置222を備えている。そして、血漿等と分離された透析液は、分離装置222から酸素付加器220の液源部220Bへと送出される。
【0051】
続いて、
図3及び
図4を参照して、血漿交換ユニットPUについて説明する。
図3は、血漿交換ユニットPUの奥行方向Dに沿った概略断面を示している。この奥行方向Dは、
図2に示す幅方向Wと直交している。また、
図3に示す断面は、幅方向Wにおける中央部分を通っており、
図2に示す血漿交換ユニットPUの高さ方向Hに延びている。そして、
図4は、血漿交換ユニットPUの幅方向Wに沿った概略断面を示している。また、
図4に示す断面は、奥行方向Dにおける中央部分を通っており、血漿交換ユニットPUの高さ方向Hに延びている。なお、
図4においては、断面に現れない血漿分離器60の血液入口管61と血液出口管62とを破線によって示している。
【0052】
図3に示すように、血漿分離器60は、多数の中空糸が集束された中空糸膜63を有している。また、一例として、血漿分離器60は、中空糸膜63を挟む第一壁部64と第二壁部65とを有している。これらの第一壁部64及び第二壁部65は、中空糸膜63を収容するハウジングの一部として機能する。また、血漿分離器60は、第一壁部64及び第二壁部65と、中空糸膜63との上端部を覆う蓋部68を有している。また、中空糸膜63の両端部は、第一壁部64及び第二壁部65とそれぞれ対向しており、例えばウレタン樹脂からなるポッティング材によって固定されている。また、両端部は、中空糸の内部の中空部を開口状態に保ったまま、ハウジングの内部において固定されている。
【0053】
さらに、血漿分離器60は、血漿分離器60と成分分画器70とを区分けする隔壁部69を有している。この隔壁部69は、血液が成分分画器70へ漏洩することを防止する。そして、蓋部68及び隔壁部69は、中空糸膜63を収容するハウジングの一部として機能する。一例として、隔壁部69は、樹脂製又は金属製であるが、ポッティング材が隔壁部69として機能してもよい。代替的に、成分分画器70が蓋を有しており、当該蓋が血漿分離器60と成分分画器70とを区分けしてもよい。なお、血漿分離器60は、第一壁部64及び第二壁部65を取り付けるためのフレーム又は筐体を有していてもよい。さらに、中空糸膜63を収容するハウジングは、他の構造を有していてもよい。例えば、ハウジングは、円筒状の構造を有していてもよい。
【0054】
第一壁部64には、付加された酸素を含む透析液が流れる第一流路64Pが形成されている。具体的に、第一流路64Pは、第一壁部64と中空糸膜63との間に形成されている。そして、第一壁部64は、蓋部68に向かうにつれて、中空糸膜63に近付くように傾斜した斜面を有している。これにより、第一流路64Pは、蓋部68に近付くにつれて狭まり、奥行方向Dの長さが短くなる。代替的に、第一流路64Pの奥行方向Dの長さが一定であってもよい。または、第一流路64Pは、蓋部68に近付くにつれて拡がり、奥行方向Dの長さが長くなってもよい。
【0055】
第二壁部65には、移動された二酸化炭素を含む透析液が流れる第二流路65Pが形成されている。具体的に、第二流路65Pは、第二壁部65と中空糸膜63との間に形成されている。そして、第二壁部65は、蓋部68に向かうにつれて、中空糸膜63に近付くように傾斜した斜面を有している。これにより、第二流路65Pは、蓋部68に近付くにつれて狭まり、奥行方向Dの長さが短くなる。代替的に、第二流路65Pの奥行方向Dの長さが一定であってもよい。または、第二流路65Pは、蓋部68に近付くにつれて広がり、奥行方向Dの長さが長くなってもよい。
【0056】
そして、第二流路65Pは、成分分画器70の液体流入口71と連通している。
図3の例では、血漿分離器60の第二壁部65に、第二流路65Pと連通する液体流出口65Aが形成されている。そして、第二流路65Pは、液体流出口65Aを介して液体流入口71と連通している。
【0057】
また、第一流路64Pは、付加された酸素を含む透析液を血漿分離器60に流入させる液体入口64Aと連通している。
図3の例では、液体入口管73は、成分分画器70の底部に設けられた上流側端部73Aと、
図3中の成分分画器70の上部に設けられた下流側端部73Bとを有している。また、血漿分離器60の第一壁部64には、第一流路64Pと連通する液体入口64Aが形成されている。そして、液体入口管73の下流側端部73Bが、液体入口64Aと連通している。
【0058】
なお、液体入口管73の上流側端部73Aは、成分分画器70の底部から突出していてもよい。または、液体入口管73が成分分画器70とは別体であってもよい。例えば、チューブ状の液体入口管73が、血漿分離器60の液体入口64Aと連通していてもよい。この場合、液体入口64Aは、血漿交換ユニットPUの側面において開口していてもよい。すなわち、第一壁部64において、成分分画器70と面する側とは反対側の面において、液体入口64Aが開口していてもよい。
【0059】
透析液は、
図3において矢印によって示す経路に沿って、液体入口管73から第一流路64Pを介して、中空糸の内側の内部流路を流れる。そして、中空糸膜63を介して血液と透析液との間でのガス交換が行われ、血漿等が透析液に拡散する。この透析液は、中空糸膜63を通って第二流路65Pに到達する。そして、透析液は、第二流路65Pを通って、液体流入口71から成分分画器70の内部に流入する。
【0060】
また、血漿分離器60の血液入口管61から流入する血液は、中空糸の外側の外部流路を流れる。この中空糸は、半透膜として機能し、血液中の血漿等が中空糸の外側に移動して透析液中に拡散する。さらに、外部流路を流れる血液の二酸化炭素分圧は、内部流路を流れる透析液の二酸化炭素分圧よりも高い。また、外部流路を流れる血液の酸素分圧は、内部流路を流れる透析液の酸素分圧よりも低い。そのため、中空糸の外部と内部との酸素の分圧差により、内部流路を流れる透析液中の酸素は、中空糸の表面を透過して外部流路を流れる血液の中に拡散する。同時に、中空糸の外部と内部との二酸化炭素の分圧差により、外部流路を流れる血液中の二酸化炭素は、中空糸の表面を透過して内部流路を流れる透析液の中に拡散する。
【0061】
このようにして、中空糸膜63を介してガス交換が行われる。その後、酸素が付加されて動脈血化した血液は、血漿分離器60の血液出口管62から流出する。そして、動脈血化した血液は、患者Pの体内へ送血される。また、二酸化炭素が拡散した透析液は、液体流入口71から成分分画器70の内部に流入する。なお、透析液は、中空糸の外側の外部流路を流れてもよい。この場合、血液が、中空糸の内側の内部流路を流れる。
【0062】
また、血漿分離器60と成分分画器70とは、互いに直接的に又は間接的に接するように一体化されている。
図3の例では、血漿分離器60と成分分画器70とは、血漿分離器60の隔壁部69を介して接している。これにより、血漿交換ユニットPUの筐体内の温度低下を抑制できる。すなわち、成分分画器70の内部には、比熱が高い透析液が溜まっている。そして、透析液は、比熱が低い血液と比べると温度が低下しにくい。そのため、透析液から伝達される熱によって、血漿分離器60の内部温度及び血液の温度の低下を抑制できる。
【0063】
さらに、成分分画器70は、透析液を貯める貯留部の一例である分画リザーバ76を有している。例えば、分画リザーバ76は、成分分画器70において透析液を貯留するための空間を形成している。そして、分画リザーバ76には、透析液を貯留部に流入させる液体流入口71が設けられている。一例として、分画リザーバ76の底部は、断面V字状若しくはU字状の形状か、又は漏斗状の形状を有している。これにより、血漿等が沈殿しやすくなる。
【0064】
さらに、分画リザーバ76からの気体を受け入れるように、液体流入口71よりも上方には、透析液から分離される気体(例えば二酸化炭素及び酸素)が溜まる空間が形成されている。当該空間は、少なくとも
図3の高さH1に対応する高さを有している。そのために、隔壁部69は、断面U字状の形状を有しており、分画リザーバ76の内部の透析液の液面から隔壁部69の下面が離隔している。また、分画リザーバ76は、パージポートを有している。そして、透析液から分離された気体は、当該パージポートを介して血漿交換ユニットPUの外部へ排出される。代替的に、透析液から分離された気体は、血漿分離器60を介して外部へ排出されてもよい。
【0065】
図4に示すように、液体出口管74は、成分分画器70の上部に設けられた上流側端部74Aと、成分分画器70の底部に設けられた下流側端部74Bとを有している。そして、分画リザーバ76には、透析液を分画リザーバ76から流出させる液体出口として機能する上流側端部74Aが設けられている。また、
図4に示す高さ方向Hと平行な重力方向において、液体出口の位置が液体流入口71よりも上方に位置する。これにより、血漿等が沈殿する前の透析液が、液体流入口71から液体出口に直接的に流入することを抑制できる。さらに、液体出口が、液体流入口71からより遠い位置にあれば、血漿等が沈殿する前の透析液の流入をより抑制できる。
【0066】
なお、液体出口が分画リザーバ76の内部に開口していれば、液体出口管74の下流側端部74Bの位置は任意である。例えば、液体出口管74が可撓性を有するチューブであり、下流側端部74Bが液体出口よりも上方に位置していてもよい。また、下流側端部74Bは、成分分画器70の底部から突出していてもよい。または、液体出口管74が成分分画器70とは別体であってもよい。さらに、透析液を分画リザーバ76から流出させる液体出口は、分画リザーバ76の側面において開口していてもよい。
【0067】
液体流入口71は、幅方向Wに沿って延びるスリット状の形状を有している。
図4の例では、液体流入口71が矩形状の形状を有した開口である。そして、幅方向Wに沿って延びている液体流入口71は、その開口面積が広い。そのため、液体流入口71から分画リザーバ76に流入する透析液が液体ジェット又は噴流になることを抑制できる。代替的に、液体流入口71は、楕円状等の他の形状を有していてもよい。さらに、液体流入口71は、中空の管であってもよい。
【0068】
分画リザーバ76は、血漿を排出させる排出口75Aを有している。
図4の例では、排出口75Aが、分画リザーバ76の側面に形成されている円状の開口である。そして、
図2に示す排出管75が、排出口75Aに接続されている。また、重力方向において、排出口75Aの位置は、液体出口の一例である液体出口管74の上流側端部74Aよりも下方に位置する。代替的に、排出口75Aは、分画リザーバ76の底面に形成されていてもよい。また、複数の排出口75Aが形成されていてもよい。また、排出管75が分画リザーバ76と一体的に構成されていてもよい。この場合、排出管75の上流側の端部が排出口75Aとして機能する。
【0069】
また、分画リザーバ76は、血漿が混合した透析液を一時的に貯留する。そして、透析液中の血漿は、分画リザーバ76内の下部へ自然沈降する。そして、沈降した血漿は、排出口75Aを介して分画リザーバ76の外部へ排出される。その後、血漿等とともに排出された透析液は、分離装置222によって分離される。さらに、分離された透析液は、透析液の液源部220Bへ流れる。そして、酸素付加器220において、酸素が透析液へ付加される。また、酸素が付加された透析液は、血漿交換ユニットPUへと流れる。
【0070】
一方、血漿等が分離された透析液は、分画リザーバ76の上部に留まる。そして、分画リザーバ76の上部には、液体出口として機能する上流側端部74Aが位置している。これにより、血漿等が分離した透析液は、上流側端部74Aを介して分画リザーバ76の外部へ流出する。代替的に、透析液が血漿よりも密度が大きい場合には、透析液と分離した血漿の層を分画リザーバ76の上部から吸引して排出してもよい。
【0071】
また、血漿分離器60は、中空糸膜63を挟む第三壁部66と第四壁部67とを有している。これらの第三壁部66及び第四壁部67は、中空糸膜63を収容するハウジングの一部として機能する。そして、第一壁部64及び第二壁部65と、第三壁部66及び第四壁部67とは、中空の角筒状のハウジングを構成する。
【0072】
第三壁部66には、二酸化炭素が分離される前の静脈血が流れる第三流路66Pが形成されている。具体的に、第三流路66Pは、第三壁部66と中空糸膜63との間に形成されている。そして、第三壁部66は、隔壁部69に向かうにつれて、中空糸膜63に近付くように傾斜した斜面を有している。これにより、第三流路66Pは、隔壁部69に近付くにつれて狭まり、幅方向Wの長さが短くなる。代替的に、第三流路66Pは、幅方向Wの長さが一定であってもよい。または、第三流路66Pは、隔壁部69に近付くにつれて拡がり、幅方向Wの長さが長くなってもよい。
【0073】
第四壁部67には、酸素が付加された動脈血が流れる第四流路67Pが形成されている。具体的に、第四流路67Pは、第四壁部67と中空糸膜63との間に形成されている。そして、第四壁部67は、隔壁部69に向かうにつれて、中空糸膜63に近付くように傾斜した斜面を有している。これにより、第四流路67Pは、隔壁部69に近付くにつれて狭まり、幅方向Wの長さが短くなる。代替的に、第四流路67Pは、幅方向Wの長さが一定であってもよい。または、第四流路67Pは、隔壁部69に近付くにつれて拡がり、幅方向Wの長さが長くなってもよい。
【0074】
血液入口管61から流入した血液は、
図4において矢印によって示す経路に沿って流れる。具体的に、血液は、血液入口管61と連通する第三流路66Pを介して、中空糸の外側の外部流路を流れる。そして、中空糸膜63を介して血液と透析液との間でのガス交換が行われる。また、血液中の血漿等は、中空糸の表面を透過して透析液に拡散する。そして、血液は、中空糸膜63を通って第四流路67Pに到達する。この血液は、第四流路67Pを介して、第四流路67Pと連通する血液出口管62から血漿分離器60の外部へ流出する。
【0075】
以上説明した第二実施形態に係る血漿交換システム200によっても、アフェレーシス療法における血漿及び病因物質の除去と、ガス交換としての二酸化炭素の除去及び酸素の付加とを、同一システムにおいて実行できる。さらに、血漿分離器60に加えて人工肺を患者Pに接続する必要がないため、患者Pへの負担の増加を抑制できる。また、血漿分離器60に加えて人工肺が患者Pに接続されることによる血液の凝固亢進を抑制できる。
【0076】
また、第二実施形態に係る血漿交換システム200によれば、血漿分離器60と成分分画器70とが一体的に構成されている。そのため、血漿分離器60と成分分画器70との間の流路を短くできる。これにより、手術の際に血漿分離器60と成分分画器70とが邪魔になることを抑制できる。また、患者Pに血漿交換ユニットPUを装着することができる。さらに、血漿交換ユニットPUのハウジングを構成する各壁部の内側に血液又は透析液の流路を設けることができる。これによって、血漿交換ユニットPUのサイズを小さくできる。
【0077】
また、第二実施形態に係る血漿交換システム200は、酸素付加器220と、血漿分離器60と、成分分画器70とを備えている。そして、当該血漿交換システム200の制御方法は、酸素付加器220に、血液に酸素を付加するための液体に酸素を付加させる工程を有する。また、当該制御方法は、血漿分離器60に、血液から液体への血漿の移動と、液体から血液への酸素の移動と、血液から液体への二酸化炭素の移動とを行わせる工程を有する。さらに、当該制御方法は、成分分画器70に、液体に含まれている血漿を分画させる工程を有する。
【0078】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態、並びに各実施形態又は各変形形態に含まれる技術的手段は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0079】
例えば、酸素加用の液体から血漿を分画することに代えて、血漿、二酸化炭素、及び酸素加用の液体の混合液を廃棄してもよい。この場合には、廃棄された混合液の代わりに、酸素加用の液体が補充される。ただし、血漿を酸素加用の液体から分画すれば、酸素加用の液体を循環して利用できる。
【0080】
また、成分分画器30において循環液から二酸化炭素を除去する構成に代えて、循環液から二酸化炭素を除去する装置又は構造を設けてもよい。例えば、酸素付加器20のリザーバの内部に中空糸膜を配置して、酸素付加器20において循環液から二酸化炭素を除去してもよい。この場合、二酸化炭素が中空糸の表面を透過して、中空糸の内部又は外部を流れる気体又は液体の中に拡散する。
【0081】
さらに、成分分画器30は、サイクロンセパレータ又は分級機(例えば水力分級機)であってもよい。分級機の場合、密度がより大きい(又は比重がより大きい)血漿が、分画リザーバ31の下部に沈殿して、排出口34から成分分画器30の外部へ排出される。これにより、血漿とともに、病因物質を廃棄できる。一方、密度がより小さい(又は比重がより小さい)循環液は、分画リザーバ31の上部を通って、リザーバ出口33から成分分画器30の外部へ流出する。また、二酸化炭素と一部の酸素は、分画リザーバ31の内部の上部空間Sに溜まり、排ガス口35から成分分画器30の外部へ排出される。
【0082】
なお、血漿交換システム100,200は、血漿及び病因物質の除去とガス交換とを同時に実行できるが、血漿交換システム100,200を用いて血漿及び病因物質の除去のみを実行してもよい。さらに、血漿交換システム100,200を用いてガス交換のみを実行してもよい。
【0083】
また、血漿分離器10,60においては、流体の一例として、血液に酸素を付加するための液体(例えば循環液又は透析液)が流れる。ただし、血漿分離器10,60においては、当該液体に代えて、流体の一例である気体を流すことも可能である。すなわち、血漿分離器10,60は、液体を流すことが可能であり、且つ血液へ酸素を付加するための気体を流すことも可能であるように構成されていてもよい。
【0084】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0085】
(付記1)
血液に酸素を付加するための液体に前記酸素を付加する酸素付加器と、
前記血液から前記液体への血漿の移動と、前記液体から前記血液への前記酸素の移動と、前記血液から前記液体への二酸化炭素の移動とが行われる中空糸膜を有している血漿分離器と、
前記液体に含まれている前記血漿を分画する成分分画器とを備えている、血漿交換システム。
【0086】
(付記2)
前記成分分画器から流出する前記液体が流れる第一ラインと、
前記成分分画器へ流入する前記液体が流れる第二ラインとを備えており、
前記酸素付加器は、前記第一ライン及び前記第二ラインの少なくとも一方に配置されている、付記1に記載の血漿交換システム。
【0087】
(付記3)
前記液体から前記二酸化炭素を除去する除去部を備えており、
前記除去部は、前記血液の二酸化炭素分圧が前記液体の二酸化炭素分圧よりも高くなるように、前記液体から前記二酸化炭素を除去する、付記1又は2に記載の血漿交換システム。
【0088】
(付記4)
前記酸素付加器は、前記液体を貯める液源部と、前記除去部とを有しており、
前記酸素付加器は、前記液源部の内部の前記液体に前記酸素を付加するように構成されている、付記3に記載の血漿交換システム。
【0089】
(付記5)
前記血漿分離器と前記成分分画器とが一体化されている、付記1から4のいずれか一項に記載の血漿交換システム。
【0090】
(付記6)
前記血漿分離器と前記成分分画器とは、互いに直接的に又は間接的に接するように一体化されている、付記5に記載の血漿交換システム。
【0091】
(付記7)
前記成分分画器は、前記液体を貯める貯留部を有しており、
前記貯留部には、前記液体を前記貯留部から流出させる液体出口と、前記液体を前記貯留部に流入させる液体流入口とが設けられており、
重力方向において、前記液体出口の位置が前記液体流入口よりも上方に位置する、付記1から6のいずれか一項に記載の血漿交換システム。
【0092】
(付記8)
前記貯留部は、前記血漿を排出させる排出口を有しており、
前記重力方向において、前記排出口の位置は、前記液体出口よりも下方に位置する、付記7に記載の血漿交換システム。
【0093】
(付記9)
前記血漿分離器は、前記中空糸膜を挟む第一壁部と第二壁部とを有し、
前記第一壁部には、付加された前記酸素を含む前記液体が流れる第一流路が形成されており、
前記第二壁部には、移動された前記二酸化炭素を含む前記液体が流れる第二流路が形成されており、
前記第二流路は、前記液体流入口と連通している、付記7又は8に記載の血漿交換システム。
【0094】
(付記10)
前記第一流路は、付加された前記酸素を含む前記液体を前記血漿分離器に流入させる液体入口と連通している、付記9に記載の血漿交換システム。
【0095】
(付記11)
酸素付加器と、血漿分離器と、成分分画器とを備えている血漿交換システムの制御方法であって、
前記酸素付加器に、血液に酸素を付加するための液体に前記酸素を付加させ、
前記血漿分離器に、前記血液から前記液体への血漿の移動と、前記液体から前記血液への前記酸素の移動と、前記血液から前記液体への二酸化炭素の移動とを行わせ、
前記成分分画器に、前記液体に含まれている前記血漿を分画させる、制御方法。
【符号の説明】
【0096】
10 :血漿分離器
20 :酸素付加器
30 :成分分画器
60 :血漿分離器
63 :中空糸膜
64 :第一壁部
64A :液体入口
64P :第一流路
65 :第二壁部
65P :第二流路
70 :成分分画器
71 :液体流入口
74A :上流側端部(液体出口)
75A :排出口
76 :分画リザーバ(貯留部)
100 :血漿交換システム
103 :血漿ライン(第二ライン)
104 :循環液ライン(第一ライン)
200 :血漿交換システム
203 :第一ライン
204 :第二ライン
220 :酸素付加器
220A :除去部
220B :液源部
【要約】
血漿交換システム100は、血液に酸素を付加するための液体に酸素を付加する酸素付加器20と、血液から液体への血漿の移動と、液体から血液への酸素の移動と、血液から液体への二酸化炭素の移動とが行われる中空糸膜を有している血漿分離器10と、液体に含まれている血漿を分画する成分分画器30とを備えている。