(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
B65D47/20 110
(21)【出願番号】P 2020017527
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 泰
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】南 健太
(72)【発明者】
【氏名】武藤 誠弥
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-043644(JP,A)
【文献】特開2000-142756(JP,A)
【文献】特開2003-026259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外容器と内容器の二重構造を有する容器の口部に装着し、内部に弁部材を有するキャップであり、
キャップは、外容器と内容器の間の空隙に連通する吸気口を有し、吸気口はキャップ内側面に開口し、キャップ内側面が吸気口の開口の周囲において弁座を形成し、
弁部材は、内容器の口部を塞ぐ位置に配置した中栓に装着する弁体支持部と、弁体支持部と一体成型し、弁体支持部の外周縁から容器の口部の半径方向に伸びる方形の片材状をなす空気弁部を有し、
空気弁部は、キャップ内側面の吸気口の開口を覆って配置する空気弁体と、空気弁体を開弁位置と閉弁位置とにわたって揺動可能に弁体支持部に連結する空気弁ヒンジ部を有し、
空気弁ヒンジ部は、空気弁部の幅方向の両側が括れて、空気弁体の両側の外側縁間より狭い括れ部を形成し、空気弁部は、空気弁体の外側縁と空気弁ヒンジ部が不連続で離隔した形状をなすことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
キャップは、吸気口内に相対向する吸気口内側面間を繋ぐブリッジを設けたことを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着するキャップに関し、キャップに内蔵する弁の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、醤油等の内容物を充填した容器において内容物の酸化を抑制する技術がある。これは、二重容器の内容器に醤油等の内容物を納め、容器の口部にキャップを装着したものであり、キャップの内部に弁体部および空気弁部を備えている。
【0003】
この二重容器では、内容器の内容物を吐出する際に、外容器に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器と内容器の間の空気層を介して内容器に与えて内容器を搾ることで、内容物を吐出させる。
【0004】
そして、外容器に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器が復元力により元の形状に戻ることで、外容器の内部空間が広がって負圧となり、外容器と内容器の間に空気が流入する。
【0005】
弁体は、圧搾力を加えたときに、開弁して内容物の吐出を許容し、圧搾力を解除したときに、閉弁して内容物の漏出を防止する。
【0006】
空気弁部は、圧搾力を加えたときに、閉弁して外容器と内容器の間の空気が外部に漏れることを阻止する。このため、圧搾力が外容器と内容器の間の空気層を介して内容器に確実に伝わる。外容器に加える圧搾力を解除すると、空気弁は開弁して外容器と内容器の間に空気が流入することを許容する。
【0007】
このような容器およびキャップの構造を示した先行技術文献には、例えば特許文献1に記載するものがある。
【0008】
これは、二重容器の内容器の口部に中栓部材を装着し、中栓部材に設けた連通筒部内に弁体部を配置したものであり、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動する。弁体部は、容器軸心と同軸に配置された有底筒状をなし、容器軸心方向の上側端部に径方向外方に拡がる環状のフランジ部を有する。連通筒部の環状の上端面が弁座をなし、弁体部のフランジ部と当接して封止する。そして、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動することで、フランジ部と連通筒部の弁座間を開閉する。
【0009】
また、外気導入孔を通して外容器と内容器の間に外気を吸気する際に、空気の流れを空気弁部で制御している。空気弁部は、外気の流路の途中に配置しており、外気の流路を囲んで形成した環状の弁座に沿って環状をなす鍔状の弁体を有し、弁座に当接離間するリップ部を鍔状の弁体の周縁に沿って環状に形成している。
【0010】
また、外気吸入時における外気流量を増大させて音鳴りを抑止するために、弁体は外気の流れ方向の下流側に反った形状をなし、閉弁時にはリップ部のみが弁座に線状に当接する。
【0011】
また、特許文献2に記載するものは、
図17から
図20に示すようなものである。ここでは、容器本体100が外容器101と内容器102からなる二重構造を有し、外容器101の口部にキャップ103を装着している。キャップ103は、外容器101の口部に嵌合するキャップ本体104と、キャップ本体104の上部に配置する蓋105からなる。キャップ本体104は、吐出口106を有し、蓋105に吐出口106を閉止する閉止部107を設けている。
【0012】
キャップ103の内部には逆止弁120を配置している。逆止弁120は、内容器102の口部に装着する中栓108と、中栓108を覆って配置する弁部材109を備えている。弁部材109は、内容器102の軸心方向において中栓108に対向して配置する弁体110と、弁体110と一体をなし弁体110の外周縁を支持して中栓108に外嵌装着する弁体支持部111を有している。
【0013】
中栓108は醤油等の内容物の液体が通過する開口112を有し、開口112の周囲が弁座113をなす。弁体110は中栓108の開口112を覆って弁座113に対向して配置し、開口112を囲み弁体110の周縁部に沿って形成したシール部114を有している。シール部114は、弁体110の一部をなし、弁体110の内面側において弁座113に向けて湾曲形状に突出し、弁体110の外面側において溝状に窪んだ形状をなす。シール部114は、中栓108の開口112の周囲の弁座113にシール面115が当接離間可能である。このシール部114よりも外側の位置において弁体110には複数の液穴116が開口している。
【0014】
また、キャップ103は、平面視で四角形状の吸気口117を有し、吸気口117が内容器102と外容器101の間に連通している。弁部材109は、吸気口117を開閉する空気弁部118を有する。空気弁部118は、弁支持部111の外周縁からキャップ103の半径方向外側へ伸びる四角形状をなし、周縁部において吸気口117の開口を四角形状に囲む弁座に面接触している。
【0015】
このキャップ103において内容器102の内容物を吐出する際には、外容器101に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器101と内容器102の間の空気層を介して内容器102に与えて内容器102を搾る。
【0016】
このとき、内容器102の内圧の高まりにより、弁体110は、
図20(a)に示す閉弁状態から
図20(b)に示す中間状態へ遷移して、中栓108の開口112から離間する方向に移動する。さらに、弁体110は、
図20(b)に示す中間状態から
図20(c)に示す閉弁状態に遷移し、弁体110の移動に伴ってシール部114が弁座113から離間して開弁位置に移動し、
図17に示すように、内容器102の内容物がシール部114と弁座113の間を通り、キャップ103の吐出口106から押し出される。
【0017】
さらに、外容器101の内圧の高まりにより、空気弁部118が吸気口117の周囲の弁座に圧接して閉弁し、外容器101と内容器102の間の空気が外部に漏れ出ることを防止する。
【0018】
また、外容器101に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器101が復元力により元の形状に戻ることで外容器101の内部空間が広がって負圧となる。このため、
図18に示すように、容器内外の圧力差を駆動圧として、空気弁部118が吸気口117の周囲の弁座から離間して開弁し、吸気口117を通して外容器101と内容器102の間に空気が流入する。
【0019】
また、加圧力が解除された内容器102の内部が負圧となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、弁体110の液弁部118が中栓108の開口112に接近する方向に押圧され、弁体110の移動に伴ってシール部114が弁座113に当接する閉弁位置に移動し、シール面115と弁座113の間を封止する。
【0020】
さらに、シール部114の内周面と中栓108の弁座113との間、およびシール部114の外周面と中栓108の弁座113との間に醤油等の内容物の液体の液層を保持して液封することで、内容器102に空気が侵入することを遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】特許第6450243号
【文献】特開2019-43644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上述した構成において、内容物を吐出させる際に、外容器101に圧搾力を加えると、空気弁部118が平板状を維持する状態で吸気口117の周囲の弁座に圧接して閉弁する。この際に、空気弁部118の周縁部は面接触で弁座に圧接し、空気弁部118のシール面と弁座の弁座面の間に面圧が生じる。
【0023】
しかし、外容器101に圧搾力を加え始めるタイミングと、空気弁部118のシール面と弁座の弁座面の間に十分な面圧が生じて内容物の注ぎ出しが始まるタイミングとの間にタイムラグがある。特に、内容器102の残量が少なくなった状態、すなわち外容器101と内容器102の間に空気層が大きく広がっている状態で行う最終排液においては、内容物の注ぎ出しをスムーズに行えない場合がある。
【0024】
本発明は上記した課題を解決するものであり、加圧時に空気弁部のシール面と弁座の弁座面の間に十分な面圧を速やかに作用させて、外容器と内容器の間の空気が外部に漏出することを阻止し、注ぎ出しをスムーズに行えるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記した課題を解決するために、本発明のキャップは、外容器と内容器の二重構造を有する容器の口部に装着し、内部に弁部材を有するキャップであり、キャップは、外容器と内容器の間の空隙に連通する吸気口を有し、吸気口はキャップ内側面に開口し、キャップ内側面が吸気口の開口の周囲において弁座を形成し、弁部材は、内容器の口部を塞ぐ位置に配置した中栓に装着する弁体支持部と、弁体支持部と一体成型し、弁体支持部の外周縁から容器の口部の半径方向に伸びる方形の片材状をなす空気弁部を有し、空気弁部は、キャップ内側面の吸気口の開口を覆って配置する空気弁体と、空気弁体を開弁位置と閉弁位置とにわたって揺動可能に弁体支持部に連結する空気弁ヒンジ部を有し、空気弁ヒンジ部は、空気弁部の幅方向の両側が括れて、空気弁体の両側の外側縁間より狭い括れ部を形成し、空気弁部は、空気弁体の外側縁と空気弁ヒンジ部が不連続で離隔した形状をなすことを特徴とする。
【0027】
また、本発明のキャップは、吸気口内に相対向する吸気口内側面間を繋ぐブリッジを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
上記の構成により、空気弁ヒンジ部は、空気弁部の幅方向の両側が括れて、空気弁体の両側の外側縁間より狭い括れ部を形成し、空気弁体の外側縁と空気弁ヒンジ部が不連続で離隔した形状をなすので、空気弁体は容易に揺動可能な状態にあり、空気弁体の外側縁が空気弁ヒンジ部に拘束されずに、かつ空気弁体の揺動方向とは異なる方向にも容易に揺動可能な状態にある。このため、空気弁体は十分な圧力を受ける前に弁座面に沿う姿勢に容易に変位し、かつ空気弁体の外側縁が空気弁体に十分な圧力を受ける前に弁座面に沿う姿勢に容易に変位し、空気弁体のシール面と弁座の弁座面の間に十分な面圧が速やかに作用し、外容器と内容器の間の空気が外部に漏出することを阻止し、外容器に圧搾力を加えるタイミングと内容物の注ぎ出しが始まるタイミングとの間に生じるタイムラグを抑制して、内容物の注ぎ出しをスムーズに行える。
【0030】
さらに、吸気口にブリッジを設けることで平滑な弁座面が容易に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の実施の形態におけるキャップを示す断面図
【
図2】同実施の形態におけるキャップの開栓状態を示す下面図
【
図3】同実施の形態におけるキャップの開栓状態を示す上面図
【
図4】同実施の形態におけるキャップ本体および蓋を示す断面図
【
図10】同実施の形態における空気弁部の拡大断面図
【
図15】同実施の形態の逆止弁の作動を示し、(a)は閉弁状態を示す図、(b)は中間状態を示す図、(c)は開弁状態を示す図
【
図16】同実施の形態の同逆止弁を示す部分拡大断面図
【
図18】同キャップの液弁構造を示す部分拡大断面図
【
図19】同キャップの空気弁構造を示す部分拡大断面図
【
図20】従来の逆止弁の作動を示し、(a)は閉弁状態を示す図、(b)は中間状態を示す図、(c)は開弁状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図16に示すように、本実施の形態では、容器本体1が外容器2と内容器3からなる二重構造を有している。
(キャップ)
容器本体1の口部にはキャップ4を装着している。キャップ4は、キャップ本体5と、キャップ本体5とキャップ蓋50を繋ぎ、キャップ蓋50を開栓状態と閉栓状態とにわたって揺動可能に支持するキャップヒンジ部501を有し、キャップ本体5とキャップ蓋50とキャップヒンジ部501が一体に成型されている。キャップ4は、頂部に形成した注ぎ口部6に吐出口7を有し、内部に逆止弁8を配置している。
(逆止弁)
逆止弁8は中栓9と弁部材10を備えており、
図5から
図7および
図13に示すように、内容器3の口部を塞ぐ位置に配置する中栓9は、醤油等の内容物の液体が通過する開口11を有し、開口11の周囲が弁座12をなす。中栓9は弁座12の外周に環状溝9aを有し、環状溝9aの外周に拡がる外縁部9bに複数の切欠き部9cを有している。切欠き部9cは、後述するキャップ本体5の内部に形成した突起51と係合し、開口11の軸心廻りにおいて中栓9を位置決めする。
【0033】
また、中栓9の環状溝9aの内周面には弁部材10を位置決めする突起9dが形成されている。突起9dに対応する位置にある切欠き部9cは、両端縁がそれぞれ21度の角度θ
βで扇状に拡がっている。このため、後述する弁部材10の空気弁部15の配置位置が多少ずれても外縁部9bが空気弁部15と接触して動きを阻害することはない。
(弁部材)
図8から
図12および
図14に示すように、弁部材10は、中栓9の開口11および弁座12を覆って配置しており、弁体13と弁体支持部14と空気弁部15を有している。
【0034】
弁体13は、中栓9の開口11および弁座12に対向し、中栓9の開口11の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって弾性変位する。弁体支持部14は、弁体13と一体をなし弁体13の外周縁を支持しており、中栓9の環状溝9aに嵌合装着している。弁体支持部14は内周面に中栓9の突起9dに嵌合する凹部14aを有している。
【0035】
弁体13は、中栓9の開口11を囲み弁体13の外周縁に沿って環状に形成したシール部16と、中栓9の開口11の半径方向においてシール部16よりも外側の位置に形成した液穴17を有している。
【0036】
シール部16は、
図15および
図16に示すように、中栓9の開口11の軸心に沿った断面において、弁座12に向けて突出しており、弁体13の一部を湾曲形状に形成したものである。すなわち、シール部16は、弁座12に対向する弁体13の内面側において弁座12に向けて湾曲形状に突出し、弁体13の外面側において溝状に窪んだ形状をなす。
【0037】
シール部16の湾曲形状は、液穴17に臨む側の外側湾曲部18と中栓9の開口11に臨む側の内側湾曲部19との形状が異なっている。すなわち、シール部16は、弁体13に強制力が作用しない自然下の無負荷状態において、湾曲形状の頂点を境とする液穴17の側の外側湾曲部18と中栓9の開口11の側の内側湾曲部19とが非対称な形状をなしている。そして、外側湾曲部18は内側湾曲部19の曲率半径よりも大きい曲率半径を有している。
【0038】
このように、シール部16の外側湾曲部18の曲率半径を内側湾曲部19の曲率半径よりも大きくすることで、シール部16に曲がり剛性が異なる二つの部位、すなわち曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を実現できる。
【0039】
シール部16は、湾曲形状の頂点を含むシール面20の一部で、弁座12の弁座面21に当接離間可能である。そして、閉弁位置にある逆止弁8は、シール部16のシール面20が弁座12の弁座面21に圧接する圧接領域と、シール面20と弁座面21が離間する非圧接領域を形成し、圧殺領域と非圧接領域との境の近傍において、外側シール面20bに対する接線と弁座面21との成す角度θ1が、内側シール面20aに対する接線と弁座面21との成す角度θ2よりも小さくなる。
【0040】
液穴17は、シール部16に沿った複数個所において、弁体13と弁体支持部14の肩部とにわたって開口しており、後述するように、従来よりも大きく開口している。
(キャップ本体)
キャップ本体5は、天部に形成した吸気部22に吸気口23が形成されており、吸気口23が外容器2と内容器3の間の空隙に連通している。吸気口23の内部にはブリッジ231を設けている。ブリッジ231は、吸気口内の相対向する吸気口内側面間を繋いでおり、キャップ本体5の中心に近い側の吸気口内側面からキャップ本体5の中心から遠い側の吸気口内側面にわたって配置されている。このように、吸気口23にブリッジ231を設けることで、キャップ4の成型時に樹脂がスムーズに吸気部22に流れる。結果として、後述する弁座シール面56を確実に平滑に形成できる。
【0041】
図1、
図2に示すように、キャップ本体5の内部には中栓9の各切欠き部9cに係合する複数の突起51が形成してあり、突起が開口11の軸心廻りにおいて中栓9を位置決めする。
【0042】
キャップ本体5の吸気口23はキャップ内側面に一つ孔状の方形に開口し、キャップ内側面が吸気口23の開口の周囲において弁座52を形成する。
【0043】
キャップ本体5は内周面に、容器本体1の口部に螺合する雌ネジ部5aと、中栓9の外周縁9aにキャップ本体5の軸心方向で係合する中栓抱え部5bを有している。
【0044】
充填ラインにおいてキャップ4を容器本体1に装着する際に、キャップ4の巻締に要するトルクを改善するために、キャップ4の成型時にキャップ用樹脂に軟化剤を添加している。
【0045】
中栓抱え部5bは、中栓9の外周縁9aとの係合状態を確実に保持して、中栓9の脱落を防止するに必要な程度に、キャップ本体5の内周面の半径方向内側に向けて凸状に形成されている。
【0046】
図3および
図4に示すように、キャップ4は、キャップ本体5とキャップ蓋50を係合離脱可能に連結するキャップ連結部502を有している。
【0047】
キャップ本体5は、注ぎ口部6を形成する頂部が山状に隆起して弁収納部503をなし、弁収納部503は内部に弁部材10を納める空間を形成している。
【0048】
キャップ蓋50は、吐出口7を塞ぐ栓体部504と、弁収納部503の円形状の外側縁505を、半円弧を超える範囲にわたって囲む円弧状スカート部506を有している。
【0049】
キャップ連結部502は、円弧状スカート部506の内側面に設けた複数の内側突起部507と、弁収納部503の外側縁505に形成した複数の外側突起部508からなる。
【0050】
内側突起部507は、円弧状スカート部506の内側面における円弧中央位置と円弧両端位置に設けており、キャップ蓋50の半径方向内側に突出している。外側突起部508は、弁収納部503の外側縁505において各内側突起部507に対向する位置に設けており、弁収納部503の半径方向外側に突出している。
【0051】
そして、外側突起部508と内側突起部507がキャップ本体5の軸心方向において係合し、キャップ蓋50がキャップ本体5に嵌合する状態に保持している。ここでは、弁収納部503の円形状の外側縁505を、半円弧を超える範囲にわたって囲む円弧状スカート部506の円弧両端位置において、内側突起部507が外側突起部508に係合することで、キャップ蓋50がキャップ本体5に嵌合する状態が確実に保持される。
(空気弁部)
弁部材10の空気弁部15は、弁支持部14の外周縁からキャップ本体5の半径方向外側へ伸びる扇形状の片材状をなし、両端縁がそれぞれ5度の角度θαで広がっている。このため、空気弁部15の配置位置が多少ずれても吸気口23の開口を塞ぐことができる。なお、後述するように、空気弁部15は方形に形成することも可能である。
【0052】
空気弁部15は、キャップ内側面の吸気口23の開口を覆って配置する空気弁体151と、空気弁体151を開弁位置と閉弁位置とにわたって揺動可能に弁体支持部14に連結する空気弁ヒンジ部152を有している。空気弁部15は空気弁体151が空気弁ヒンジ部152で揺動して、空気弁体151が吸気口23を閉塞する閉弁位置と吸気口23を開放する開弁位置とにわたって変位し、吸気口23を開閉する。
【0053】
空気弁体151は、吸気口23に対向する平板部53と、平板部53を平坦な状態に維持する耐圧構造部54とを一体成型している。平板部53は、平坦な弁体シール面55で弁座シール面56に圧接する。耐圧構造部54は、弁体シール面55を形成する平板部53の一側面と表裏をなす他側面に形成した隆起部であり、平板部53を縁取る主部57と、両端を平板部53の幅方向の両側にある主部57に接続して配置する補助部58と、両端を主部57と弁体支持部14に接続した補助部59とで格子状に形成している。空気弁体151は、外側縁151aが円弧状をなして厚みが漸減する形状をなす。
【0054】
また、耐圧構造部54は、格子状に限らず、平板部53を縁取る主部57と、平板部53の幅方向の両側にある主部57に接続して配置する補助部58とで形成することも可能である。さらに、耐圧構造部54は、平板部53を縁取る主部57のみで形成することも可能である。
【0055】
空気弁ヒンジ部152は、空気弁体151の厚みより薄い厚みの揺動中心部152aを有している。本実施の形態では、揺動中心部152aを所定幅の帯状に形成しているが、細幅の溝状に形成することも可能である。
【0056】
空気弁ヒンジ部152は、空気弁部15の幅方向の両側に括れ152bを有し、空気弁体151の両側の外側縁151aの間より狭い括れ部152cを形成しており、ここでは、括れ部152cが揺動中心部152aと同部位からなる。
【0057】
そして、空気弁部15は、空気弁体151の外側縁151aと空気弁ヒンジ部152が括れ152bにおいて不連続で離隔した形状をなす。
(弁部材)
弁部材10は基本的に薄膜に形成しており、弁体13および空気弁部15は0.2mmの厚みに形成している。ここで、先に説明した従来の弁体と本実施の形態における弁体13および空気弁部15の違いについて説明する。
【0058】
従来の弁体は、材質がEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)であり、弁体の厚みが0.4mmであった。このEPDMは硬度ショアA40程度の柔らかさを有しているので、弁体の応答性が良い特質を有する。一方で、柔らかさのために、薄くすると形状を維持することが困難となる場合があり、厚みは0.4mmが限界であり、これ以上に薄くするとシール部のシール性を確保することが困難となる。このため、シール部は曲率半径の小さい形状に形成しており、液穴も小さく開口せざるを得なかった。
【0059】
本実施の形態では、弁部材10の材質としてPE(ポリエチレン)を採用しており、超低密度PEに軟化剤を添加して硬度ショアA75程度の柔らかさに調整している。このため、弁部材10の弁体13および空気弁部15を0.2mmの薄膜に形成しても形状を維持することが可能となった。この結果、シール部16は、液穴17の側の外側湾曲部18と中栓9の開口11の側の内側湾曲部19とが非対称な形状をなし、外側湾曲部18が内側湾曲部19の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する形状に形成できた。このため、応答性とシール性がともに向上した。
【0060】
また、液穴17を弁体13と弁体支持部14の肩部とにわたって大きく開口させ、肩部の肉厚を薄くしても型崩れを起こすことがないので、液穴17の拡張により液出し性が向上した。この結果、内容物の少量出しから大量出しまでの全域において圧搾力を低減することができ、液穴17からの吐出量が増加したことで大量出しもスムーズに行うことができ、特に、内容器3の残量が少なくなった状態で行う最終排液も、軽い力で出し切ることが可能となった。
【0061】
以下、上記した構成における作用について説明する。内容器3の内容物を吐出する際には、外容器2に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器2と内容器3の間の空気層を介して内容器3に与えて内容器3を搾る。
【0062】
内容器3の内圧の高まりにより弁体13は、
図15(a)に示す閉弁状態から
図15(b)に示す中間状態へ遷移して、中栓9の開口11から離間する方向に移動する。本実施の形態では、駆動圧力に対する弁体13の応答性が優れているので、この過程の途中でシール部16が弁座12から離間し始める。さらに、弁体13は、
図15(b)に示す中間状態から
図15(c)に示す閉弁状態に遷移し、弁体13の移動に伴ってシール部16が弁座12から離間して開弁位置に移動し、内容器3の内容物がシール部16と弁座12の間を通り、キャップ4の吐出口7から押し出される。
【0063】
このとき、本実施の形態では、空気弁ヒンジ部152の揺動中心部152aが空気弁体151の厚みより薄い厚みをなすことで、空気弁体151は容易に揺動可能な状態にある。このため、空気弁体151は十分な圧力を受ける前に弁座シール面56に沿う姿勢に容易に変位し、空気弁体151の弁体シール面55と弁座52の弁座シール面56の間に十分な面圧が速やかに作用し、外容器2と内容器3の間の空気が外部に漏出することを阻止し、外容器2に圧搾力を加えるタイミングと内容物の注ぎ出しが始まるタイミングとの間に生じるタイムラグを抑制して、内容物の注ぎ出しをスムーズに行える。
【0064】
また、空気弁ヒンジ部152は、空気弁部15の幅方向の両側の括れ152bにおいて空気弁体151の両側の外側縁151aの間より狭い括れ部152cを形成し、空気弁体151の外側縁151aと空気弁ヒンジ部152が不連続で離隔した形状をなすので、空気弁体151は容易に揺動可能な状態にある。さらに、空気弁体151の外側縁151aが空気弁ヒンジ部152に拘束されずに、かつ空気弁体151の揺動方向とは異なる方向にも容易に揺動可能な状態にある。
【0065】
このため、空気弁体151は十分な圧力を受ける前に弁座シール面56に沿う姿勢に容易に変位し、かつ空気弁体151の外側縁151aが空気弁体151に十分な圧力を受ける前に弁座シール面56に沿う姿勢に容易に変位し、空気弁体151の弁体シール面55と弁座52の弁座シール面56の間に十分な面圧が速やかに作用し、外容器2と内容器3の間の空気が外部に漏出することを阻止し、外容器2に圧搾力を加えるタイミングと内容物の注ぎ出しが始まるタイミングとの間に生じるタイムラグを抑制して、内容物の注ぎ出しをスムーズに行える。
【0066】
また、シール部16が曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を有しているので、曲がり剛性の小さい外側湾曲部18により、弁体13の移動に追従してシール部16が容易に稼働する優れた応答性を実現できる。
【0067】
外容器2に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器2が復元力により元の形状に戻ることで外容器2の内部空間が広がって負圧となる。このため、
図1に一点鎖線で示すように、空気弁部15は、空気弁体151が空気ヒンジ部152の揺動中心部152aで容易に揺動して開動し、吸気口23を通して外容器2と内容器3の間に空気が流入する。
【0068】
また、弁体13は、自身の復元力で閉弁方向に移動するとともに、加圧力が解除された内容器3の内部が負圧となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、中栓9の開口11に接近する方向に押圧される。弁体13の移動に伴ってシール部16が弁座12に当接する閉弁位置に移動し、シール面20と弁座面21の間を封止する。
【0069】
このとき、本実施の形態では、シール部16が曲がり剛性の大きい内側湾曲部19と曲がり剛性の小さい外側湾曲部18が共存する構造を有するので、曲がり剛性の大きい内側湾曲部19により、駆動圧を受ける弁体13からシール部16に加わる力を確実にシール面20に作用させて弁座面21とシール面20との間に内容物の漏出を防止する封止に必要な十分な面圧を確保できる。
【0070】
また、
図16に示すように、シール面20が弁座面21に圧接する閉弁状態で、シール部16の内周の内側シール面20aと中栓9の弁座面21との間、およびシール部16の外周の外側シール面20bと中栓9の弁座面21との間に毛管現象により内容物の液層24が形成される。
【0071】
この際に、外側湾曲部18の曲率半径が内側湾曲部19の曲率半径よりも大きいことで、シール面20と弁座面21との非圧接領域において、外側湾曲部18の外側シール面20b弁座面21の間に形成する外側液封用間隙25は、内側湾曲部19の内側シール面20aと弁座面21の間に形成する内側液封用間隙26よりも狭くなり、表面張力が強まることで、毛管現象により保持する液層24を確実に保持できる。このため、内容物の酸化を防止するために必要なシール部16と弁座12の間の通気の遮断を確実に実現できる。
【0072】
また、空気弁部15は、外容器2に加える圧搾力により外容器2と内容器3の間の空気層に加わる圧力を受けて、平板部53の平坦な弁体シール面55で弁座シール面56に圧接して十分な面圧を確保して確実なシール性を発揮する。また、空気弁部15に作用する圧力に対して、耐圧構造部54が平板部53の少なくとも縁部を平坦な状態に維持するので、弁座シール面55と弁体シール面56の平行を保って空気の漏出を確実に防止する。
【符号の説明】
【0073】
4 キャップ
5 キャップ本体
5a 雌ネジ部
5b 中栓抱え部
7 吐出口
8 逆止弁
9 中栓
9a 外周縁
10 弁部材
11 開口
12 弁座
13 弁体
14 弁体支持部
15 空気弁部
16 シール部
17 液穴
18 外側湾曲部
19 内側湾曲部
20 シール面
20a 内側シール面
20b 外側シール面
21 弁座面
24 液層
25 外側液封用間隙
26 内側液封用間隙
50 キャップ蓋
51 突起
52 弁座
53 平板部
54 耐圧構造部
55 弁体シール面
56 弁座シール面
57 主部
58、59 補助部
151 空気弁体
152 空気弁ヒンジ部
151a 外側縁
152a 揺動中心部
152b 括れ
152c 括れ部
231 ブリッジ
501 キャップヒンジ部
502 キャップ連結部
503 弁収納部
504 栓体部
505 外側縁
506 円弧状スカート部
507 内側突起部
508 外側突起部