(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】反応促進剤
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/26 20060101AFI20240325BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C12Q1/26 ZNA
C12N9/02
(21)【出願番号】P 2018527675
(86)(22)【出願日】2017-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2017025622
(87)【国際公開番号】W WO2018012607
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2016138547
(32)【優先日】2016-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一柳 敦
(72)【発明者】
【氏名】下地 一彦
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】松本 淳
【審判官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-503277号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2003/023134号(WO,A1)
【文献】特開2008-201968号公報(JP,A)
【文献】特開昭60-036961号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093722号(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
JST7580/JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
CAPLUS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシダーゼ、及び、下記の式(I)で表されるオキシダーゼ反応促進剤を用いる工程を含む、オキシダーゼ反応を用いる方法、
【化1】
[式中、R
1が、
【化2】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化3】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化4】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化5】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化6】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化7】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化8】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化9】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化10】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化11】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化12】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化13】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化14】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化15】
からなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
オキシダーゼ反応促進剤が下記の式、
【化16】
で表される場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ、及びサルコシンオキシダーゼからなる群より選択され、
オキシダーゼ反応促進剤が
【化17】
である場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ、サルコシンオキシダーゼ、及びコレステロールオキシダーゼからなる群より選択され、
R
1又はR
2が、
【化18】
であり、R
2又はR
1が、それぞれ対応して、
【化19】
である場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ
であり、
R
1又はR
2が、
【化20】
であり、R
2又はR
1が、それぞれ対応して、
【化21】
である場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ及びサルコシンオキシダーゼからなる群より選択される]。
【請求項2】
式(I)により表される化合物が、
以下の式により表される化合物、
【化22】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化23】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化24】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化25】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化26】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化27】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化28】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
及び、以下の式により表される化合物、
【化29】
からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に従うことを条件として、オキシダーゼが、アマドリアーゼ、サルコシンオキシダーゼ、
及び、コレステロールオキシダーゼからなる群より選択されるオキシダーゼである、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
式(I)により表される化合物を含む、オキシダーゼ反応促進剤、
【化30】
[式中、R
1が、
【化31】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化32】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化33】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化34】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化35】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化36】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化37】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化38】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化39】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化40】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化41】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化42】
からなる群より選択されるか、或いは
R
1が、
【化43】
からなる群より選択され、かつ、R
2が、
【化44】
からなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
オキシダーゼ反応促進剤が下記の式、
【化45】
で表される場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ、及びサルコシンオキシダーゼからなる群より選択され、
オキシダーゼ反応促進剤が
【化46】
である場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ、サルコシンオキシダーゼ、及びコレステロールオキシダーゼからなる群より選択され、
R
1又はR
2が、
【化47】
であり、R
2又はR
1が、それぞれ対応して、
【化48】
である場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ
であり、
R
1又はR
2が、
【化49】
であり、R
2又はR
1が、それぞれ対応して、
【化50】
である場合には、オキシダーゼは、アマドリアーゼ及びサルコシンオキシダーゼからなる群より選択される]。
【請求項5】
式(I)により表される化合物が、
以下の式により表される化合物、
【化51】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化52】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化53】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化54】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化55】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化56】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化57】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]
及び、以下の式により表される化合物、
【化58】
からなる群より選択される、請求項
4に記載の反応促進剤。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載の反応促進剤及びオキシダーゼを含む、組成物。
【請求項7】
請求項4に従うことを条件として、オキシダーゼが、アマドリアーゼ、サルコシンオキシダーゼ、
及び、コレステロールオキシダーゼからなる群より選択されるオキシダーゼである、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
測定対象を検出する反応が促進される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
測定対象を検出する反応を促進する、請求項
4又は5に記載の反応促進剤、又は、請求項
6若しくは
7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシダーゼの反応促進剤(例えばアマドリアーゼの反応促進剤、サルコシンオキシダーゼの反応促進剤、及び、コレステロールオキシダーゼの反応促進剤などが挙げられるがこれに限らない)に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシダーゼは、酸化反応を触媒する酵素であり、様々な分野に応用されている。例えば糖尿病の臨床診断分野において、糖尿病患者の診断や症状管理のための重要な血糖コントロールマーカーとして、ヘモグロビンA1c(HbA1c)および糖化アルブミン(GA)が注目されている。このHbA1cおよびGAを迅速かつ簡便に測定する方法として、オキシダーゼの一種であるアマドリアーゼを用いる酵素的方法がある。
【0003】
アマドリアーゼは、酸素の存在下で、イミノ2酢酸もしくはその誘導体(「アマドリ化合物」ともいう)を酸化して、グリオキシル酸又はα-ケトアルデヒド、アミノ酸又はペプチド及び過酸化水素を生成する反応を触媒する。アマドリアーゼとしては、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ、フルクトシルペプチドオキシダーゼ、A1cオキシダーゼ(A1cOX)などが挙げられる。
【0004】
アマドリアーゼを用いたHbA1c測定法としては、例えばHbA1cをプロテアーゼ等で分解し、そのβ鎖アミノ末端より遊離させた糖化基質を定量する方法が知られている(例えば、特許文献1~11)。さらに、プロテアーゼを必要とせずHbA1cに直接作用するアマドリアーゼ(A1cOX)もいくつか知られている(特許文献12、13)。
【0005】
HbA1cの測定では、反応を10分程度の短時間で完了させることが望ましい。一方で、これまでに知られているA1cOXの種類は限られており、10分程度の短時間で反応を完了させるには、場合により測定試薬にA1cOXを多量に処方する必要があった。ところが酵素は一般に高価であり、HbA1c測定試薬へのA1cOXの処方量の低減が望まれていた。
【0006】
特許文献14は、反応系におけるフェノチアジン誘導体色素を吸光度測定により検出する方法において、フェノチアジン誘導体の検出波長をシフトさせる化合物を記載している。
【0007】
サルコシンオキシダーゼ(ザルコシンオキシダーゼともいう)(EC 1.5.3.1)は、ザルコシンを加水分解してグリシン及びホルムアルデヒドを生成する触媒作用を有する酵素であり、ヒトの血清中又は尿中のクレアチニン量の測定に用いることができ、腎臓病をはじめとする各種の疾患の診断薬として利用することができる。サルコシンオキシダーゼは、コリネバクテリウム属、バチルス属、シリンドロカーボン属、シュードモナス属、アースロバクター属等の由来が知られている。改変型サルコシンオキシダーゼやサルコシンオキシダーゼの種々の由来については、例えば特許文献15~17を参照のこと。
【0008】
コレステロールオキシダーゼ(EC 1.1.3.6)は、3β-ヒドロキシステロイドと酸素の間の反応を触媒し、相当する3-オキソステロイドと過酸化水素を生成する酸化酵素である。コレステロールオキシダーゼは、体液中のコレステロール濃度の測定(特許文献18)等に利用することを目的として研究開発されている。コレステロールオキシダーゼはストレプトマイセス、ブレビバクテリウム、ロドコッカス、シュードモナス、バークホルデリア・セパシア等により生産されることが知られている。コレステロールオキシダーゼやその種々の由来については例えば特許文献19を参照のこと。
【0009】
アマドリアーゼを用いた糖化アルブミン(GA)測定法としては、例えばGAをプロテアーゼ等で分解し、遊離させた糖化基質ε-フルクトシルリジン(ε-FK)を定量する方法が知られている。例えば特許文献20を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2004/104203号パンフレット
【文献】国際公開第2005/49857号パンフレット
【文献】特開2001-95598号公報
【文献】特公平05-33997号公報
【文献】特開平11-127895号公報
【文献】国際公開第97/13872号パンフレット
【文献】特開2011-229526号公報
【文献】国際公開第2011/015325号パンフレット
【文献】国際公開第2008/108385号パンフレット
【文献】国際公開第2015/005258号パンフレット
【文献】国際公開第2013/162035号パンフレット
【文献】国際公開第2015/060429号パンフレット
【文献】国際公開第2015/005257号パンフレット
【文献】国際公開第2008/093722号パンフレット
【文献】特開2005-176828
【文献】特開2005-168487
【文献】特開2000-175685
【文献】特開平6-169765号公報
【文献】特開2007-014329
【文献】特開2001-204495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
こうした問題に鑑み、本発明は、オキシダーゼ(例えばアマドリアーゼが挙げられるがこれに限らない)が触媒する酵素反応を促進する化合物、すなわちオキシダーゼ反応促進剤(例えばアマドリアーゼ反応促進剤等が挙げられるがこれに限らない)を提供する。さらに本発明はオキシダーゼ反応促進剤(例えばアマドリアーゼ反応促進剤が挙げられるがこれに限らない)を含む組成物を提供する。さらに本発明はオキシダーゼ及びオキシダーゼ反応促進剤を用いる方法(例えばアマドリアーゼ及びアマドリアーゼ反応促進剤を用いるHbA1cの測定方法が挙げられるがこれに限らない)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
アマドリアーゼをはじめとするオキシダーゼの反応を促進させる化合物についての情報が乏しい中で、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことにオキシダーゼの反応を促進させることのできる化合物を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の実施形態を包含する。
【0013】
[1] オキシダーゼ、及び、下記の式(I)で表されるオキシダーゼ反応促進剤を用いる工程を含む、オキシダーゼ反応を用いる方法、
【化1】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
前記の置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-CO-NH
2、-R
3、-NH-R
4、-NHCO-NH-R
5-N=N-R
6、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
Zは、-H、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-SO
3Xからなる群より選択され、
各X、Y、Zは、同一でも異なっていてもよく、
-R
3は、-Hであるか、或いは、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
-R
4は、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
-R
5及び-R
6は、それぞれ独立に、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-O-CH
3、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の
5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
ただし、R
1又はR
2が、芳香族の5員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環である場合には、該複素環は-COOXにより置換されたものではない]。
【0014】
[2] 式(I)により表される反応促進剤において、R1及びR2が、それぞれ独立に、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記芳香族の6員単環の炭素環を含む10員の縮合環である、1に記載の方法。
【0015】
[3] 式(I)により表される反応促進剤において、R
1及びR
2が、それぞれ独立に、
【化2】
からなる群より選択され、式中、X、Y、Zは1に定義したとおりである、1又は2に記載の方法。
【0016】
[4] 式(I)により表される反応促進剤において、R
1が、
【化3】
からなる群より選択され、R
2が、
【化4】
からなる群より選択され、式中、Xは1に定義したとおりである、1、2又は3に記載の方法。
【0017】
[5] 式(I)により表される反応促進剤が、下記の式で表される反応促進剤である、1に記載の方法、
【化5】
[式中、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
各X、Yは、同一でも異なっていてもよく、
-R
3は、-H又は-NHCO-NH-R
5-N=N-R
6であるか、或いは、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記炭素環を含む10員の縮合環であり、
-R
5及び-R
6は、それぞれ独立に、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-O-CH
3、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記炭素環を含む10員の縮合環である]。
【0018】
[6] 式(I)により表される反応促進剤が、下記のいずれかの式で表される反応促進剤である、1に記載の方法、
【化6】
[式中、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
各X、Yは、同一でも異なっていてもよい]。
【0019】
[7] 式(I)により表される反応促進剤が、下記の式で表される反応促進剤である、1に記載の方法、
【化7】
[式中、
R
1は、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環又はナフタレン環であり、
前記の置換基は、-NO
2、-SO
3X、及び
【化8】
からなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]。
【0020】
[8] 式(I)により表される反応促進剤において、R1が、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環であり、R2が、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5員単環の、少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環である、1に記載の方法。
【0021】
[9] R
2が、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5員単環の、2つの窒素原子を含む複素環であり、該複素環が
【化9】
により置換されており、式中、Xは1に定義したとおりであり、各Xは同一でも異なっていてもよい、1又は8に記載の方法。
【0022】
[10] R
2が、
【化10】
であり、式中、Xは1に定義したとおりであり、各Xは同一でも異なっていてもよい、1、8又は9に記載の方法。
【0023】
[11] 式(I)により表される化合物が、
以下の式により表される化合物、
【化11】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化12】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化13】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化14】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化15】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化16】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化17】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化18】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
及び、以下の式により表される化合物、
【化19】
からなる群より選択される、1~10のいずれかに記載の方法。
【0024】
[12] オキシダーゼが、アマドリアーゼ、サルコシンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼからなる群より選択されるオキシダーゼである、1~11のいずれかに記載の方法。
【0025】
[13] 式(I)により表される化合物を含む、オキシダーゼ反応促進剤、
【化20】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
前記の置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-CO-NH
2、-R
3、-NH-R
4、-NHCO-NH-R
5-N=N-R
6、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
Zは、-H、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-SO
3Xからなる群より選択され、
各X、Y、Zは、同一でも異なっていてもよく、
-R
3は、-Hであるか、或いは、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
-R
4は、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
-R
5及び-R
6は、それぞれ独立に、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-O-CH
3、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の
5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
ただし、R
1又はR
2が、芳香族の5員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環である場合には、該複素環は-COOXにより置換されたものではない]。
【0026】
[14] 式(I)により表される反応促進剤において、R1及びR2が、それぞれ独立に、場合により置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記芳香族の6員単環の炭素環を含む10員の縮合環である、13に記載の反応促進剤。
【0027】
[15] 式(I)により表される化合物において、R
1及びR
2が、それぞれ独立に、
【化21】
からなる群より選択され、式中、X、Y、Zは12に定義したとおりである、13又は14に記載の反応促進剤。
【0028】
[16] 式(I)により表される反応促進剤において、R
1が、
【化22】
からなる群より選択され、R
2が、
【化23】
からなる群より選択され、式中、Xは12に定義したとおりである、13~15のいずれかに記載の反応促進剤。
【0029】
[17] 式(I)により表される反応促進剤が、下記の式で表される反応促進剤である、13~16のいずれかに記載の反応促進剤、
【化24】
[式中、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
各X、Yは、同一でも異なっていてもよく、
-R
3は、-H又は-NHCO-NH-R
5-N=N-R
6であるか、或いは、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記炭素環を含む10員の縮合環であり、
-R
5及び-R
6は、それぞれ独立に、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-O-CH
3、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記炭素環を含む10員の縮合環である]。
【0030】
[18] 式(I)により表される反応促進剤が、下記のいずれかの式で表される反応促進剤である、13~17のいずれかに記載の反応促進剤、
【化25】
[式中、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
各X、Y、Zは、同一でも異なっていてもよい]。
【0031】
[19] 式(I)により表される反応促進剤が、下記の式で表される反応促進剤である、13~17のいずれかに記載の反応促進剤、
【化26】
[式中、
R
1は、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環又はナフタレン環であり、
前記の置換基は、-NO
2、-SO
3X、及び
【化27】
からなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]。
【0032】
[20] 式(I)により表される反応促進剤において、R1が、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環であり、R2が、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5員単環の、少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環である、13に記載の反応促進剤。
【0033】
[21] R
2が、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5員単環の、2つの窒素原子を含む複素環であり、該複素環が
【化28】
により置換されており、式中、Xは12に定義したとおりであり、各Xは同一でも異なっていてもよい、13又は20に記載の反応促進剤。
【0034】
[22] R
2が、
【化29】
であり、式中、Xは12に定義したとおりであり、各Xは同一でも異なっていてもよい、13、20又は21に記載の反応促進剤。
【0035】
[23] 式(I)により表される化合物が、
以下の式により表される化合物、
【化30】
以下の式により表される化合物、
【化31】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化32】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化33】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化34】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
以下の式により表される化合物、
【化35】
以下の式により表される化合物、
【化36】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
以下の式により表される化合物、
【化37】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]
及び、以下の式により表される化合物、
【化38】
からなる群より選択される、13~22のいずれかに記載の反応促進剤。
【0036】
[24] 13~23のいずれかに記載の反応促進剤及びオキシダーゼを含む、組成物。
【0037】
[25] オキシダーゼが、アマドリアーゼ、サルコシンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼからなる群より選択されるオキシダーゼである、24に記載の組成物。
【0038】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2016-138547号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0039】
本発明の効果として、オキシダーゼが触媒する酵素反応を促進しうる。これにより測定に必要な酵素量を軽減したり、同じ酵素量でも反応時間を短縮したり、測定感度を高めたりすることができる。例えばある実施形態において、アマドリアーゼが触媒する酵素反応を促進することができる。これによりHbA1c測定試薬へのアマドリアーゼの処方量、例えばA1cOXの処方量や、GA測定試薬へのアマドリアーゼの処方量を、本発明のアマドリアーゼ反応促進剤を添加しない場合と比較して、低減することができる。また同一のアマドリアーゼの処方量であれば、酵素反応が促進されるため、測定の高感度化及び/又は反応時間短縮が可能となる。他のオキシダーゼ(例えばサルコシンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ等)についても、同様である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】希釈試料と第1試薬を混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A
694及びA
751)を経時的に測定した結果を示す。横軸は時間(分)であり、縦軸はA
694/751(A
694-A
751)である。また、A
694/751と、ΔA
9min及びΔA
10minとの関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ある実施形態において、本発明は、オキシダーゼ反応促進剤を提供する。ここでオキシダーゼ反応促進剤とは、オキシダーゼが触媒する酵素反応を促進する化合物をいう。オキシダーゼが触媒する酵素反応を促進するとは、オキシダーゼ反応促進剤が系に存在しない場合と比較して、本発明のオキシダーゼ反応促進剤が系に存在する場合、同一反応時間中により多くの生成物(過酸化水素等)が生成する、又は、より短時間で反応が完了する若しくはほぼ完了することをいう。
【0042】
本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、種々のオキシダーゼの反応を促進しうる。ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、アマドリアーゼの反応を促進しうる。この場合、本発明のオキシダーゼ反応促進剤のことをアマドリアーゼ反応促進剤ともいう。ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、サルコシンオキシダーゼの反応を促進しうる。この場合、本発明のオキシダーゼ反応促進剤のことをサルコシンオキシダーゼ反応促進剤ともいう。ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、コレステロールオキシダーゼの反応を促進しうる。この場合、本発明のオキシダーゼ反応促進剤のことをコレステロールオキシダーゼ反応促進剤ともいう。なお、これらの名称はあくまで便宜上のものである。例えば同一の反応促進剤化合物が、アマドリアーゼの反応を促進し、かつ、サルコシンオキシダーゼの反応を促進することがあり、このような反応促進剤は、アマドリアーゼ反応促進剤に該当するとともにサルコシンオキシダーゼ反応促進剤にも該当する。したがってアマドリアーゼ反応促進剤などの名称は、何ら本発明の反応促進剤を限定する意味に解されてはならない。本明細書において本発明の反応促進剤という場合、特に断らない限りこれはオキシダーゼ反応促進剤を意味する。
【0043】
ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、アマドリアーゼの反応を促進しうる。ある実施形態において反応が促進されるアマドリアーゼとしては、α-フルクトシルバリン(αFV)、α-フルクトシルバリルヒスチジン(αFVH)、及び/又はα-フルクトシルヘキサペプチド(αF6P)を基質とするアマドリアーゼが挙げられるがこれに限らない。ある実施形態において、反応が促進されるアマドリアーゼとしては、ε-フルクトシルリジン(ε-FK)を基質とするアマドリアーゼが挙げられる。ある実施形態において、反応が促進されるアマドリアーゼとしては、ヘモグロビンA1cに直接作用するアマドリアーゼ、すなわちヘモグロビンA1cオキシダーゼ(A1cOX)が挙げられる。この場合、本発明のアマドリアーゼ反応促進剤のことをヘモグロビンA1cオキシダーゼ反応促進剤ともいう。
【0044】
ある実施形態において、本発明は、オキシダーゼ及びオキシダーゼ反応促進剤を用いる工程を含む方法を提供する。例えばある実施形態において、本発明は、オキシダーゼ及びオキシダーゼ反応促進剤を用いることを含む、オキシダーゼ反応生成物の測定方法を提供する。別の実施形態では、本発明はオキシダーゼ及びオキシダーゼ反応促進剤を用いることを含む、生成物の合成方法を提供する。別の実施形態では、本発明はオキシダーゼ及びオキシダーゼ反応促進剤を用いることを含む、過酸化水素の生成方法を提供する。この方法は例えば、生成する過酸化水素を利用し、殺菌、洗浄、酸化反応などに適用しうる。
【0045】
ある実施形態において、本発明は、オキシダーゼ及びオキシダーゼ反応促進剤を用いる工程を含む、測定対象物質の測定方法を提供する。ある実施形態において、本発明の方法は、測定対象物質を含み得る試料にペルオキシダーゼ、及びオキシダーゼ反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、発色剤と反応促進されるオキシダーゼとを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、及びオキシダーゼ反応促進剤を含む第1試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。発色剤と反応促進されるオキシダーゼを含む第2試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。別の実施形態では、本発明の測定方法は、測定対象物質を含み得る試料にペルオキシダーゼ、発色剤及びオキシダーゼ反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、反応促進されるオキシダーゼを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。やはり試薬中の各成分は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数試薬の組み合わせでもよい。測定は定性的でも定量的でもよい。
【0046】
別の実施形態において、本発明の測定方法は、測定対象物質を含み得る試料に、ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ反応促進剤、発色剤及び反応促進されるオキシダーゼを含む測定試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、オキシダーゼ反応促進剤、発色剤及び反応促進されるオキシダーゼを含む測定試薬は単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。
【0047】
ある実施形態において、本発明は、アマドリアーゼ及びアマドリアーゼ反応促進剤を用いる工程を含む、HbA1cの測定方法を提供する。ある実施形態において、本発明のHbA1cの測定方法は、HbA1cを含み得る試料にペルオキシダーゼ、及びアマドリアーゼ反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、発色剤とアマドリアーゼを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、及びアマドリアーゼ反応促進剤を含む第1試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。発色剤とアマドリアーゼを含む第2試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。別の実施形態では、本発明のHbA1cの測定方法は、HbA1cを含み得る試料にペルオキシダーゼ、発色剤及びアマドリアーゼ反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、アマドリアーゼを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。やはり試薬中の各成分は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数試薬の組み合わせでもよい。測定は定性的でも定量的でもよい。ある実施形態では、ペルオキシダーゼ及びアマドリアーゼ反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程において、さらに試料中の全ヘモグロビンを定量することができる。ある実施形態ではさらに、定量した全ヘモグロビン及び糖化ヘモグロビンから、試料中の全ヘモグロビンに対する糖化ヘモグロビンの割合、HbA1c%を算出しうる。
【0048】
別の実施形態において、本発明のHbA1cの測定方法は、HbA1cを含み得る試料に、ペルオキシダーゼ、アマドリアーゼ反応促進剤、発色剤及びアマドリアーゼを含む測定試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、アマドリアーゼ反応促進剤、発色剤及びアマドリアーゼを含む測定試薬は単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。
【0049】
ある実施形態において、アマドリアーゼとしてはαFV、αFVH及び/又はαF6P等の糖化基質に作用するアマドリアーゼを用いることができる。この場合、本発明のHbA1c測定方法は、HbA1cをプロテアーゼで前処理する工程をさらに有しうる。プロテアーゼとしては任意の公知のものを使用しうる。別の実施形態において、アマドリアーゼとして、ε-FKに作用するアマドリアーゼを用いることができる。これは糖化アルブミン(GA)の測定方法に利用することができる。この場合、GA測定方法は、GAをプロテアーゼで前処理する工程をさらに有しうる。別の実施形態において、アマドリアーゼとして、HbA1cに直接作用するヘモグロビンA1cオキシダーゼ(A1cOX)を用いることができる。この場合、プロテアーゼでの前処理は行わなくともよい。
【0050】
ある実施形態において、本発明は、サルコシンオキシダーゼ及び本発明の反応促進剤を用いる工程を含む、サルコシンの測定方法を提供する。この測定方法には、上流工程として、クレアチニンをクレアチニンアミドヒドロラーゼ(クレアチニナーゼともいう)によりクレアチンに変換し、クレアチンをクレアチンアミジノヒドロラーゼ(クレアチナーゼともいう)によりサルコシンに変換する工程を追加してもよい。これによりクレアチニン又はクレアチンの測定方法が提供される。ある実施形態において、本発明の測定方法は、測定対象物質(サルコシン)を含み得る試料にペルオキシダーゼ、及び本発明の反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、発色剤とサルコシンオキシダーゼとを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、及び本発明の反応促進剤を含む第1試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。発色剤とサルコシンオキシダーゼとを含む第2試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。別の実施形態では、本発明の測定方法は、測定対象物質を含み得る試料にペルオキシダーゼ、発色剤及び本発明の反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、サルコシンオキシダーゼを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。やはり試薬中の各成分は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数試薬の組み合わせでもよい。測定は定性的でも定量的でもよい。
【0051】
別の実施形態において、本発明の測定方法は、測定対象物質を含み得る試料に、ペルオキシダーゼ、本発明の反応促進剤、発色剤及びサルコシンオキシダーゼを含む測定試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、本発明の反応促進剤、発色剤及び反応促進されるオキシダーゼを含む測定試薬は単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。
【0052】
ある実施形態において、本発明は、コレステロールオキシダーゼ及び本発明の反応促進剤を用いる工程を含む、コレステロールの測定方法を提供する。この測定方法には、上流工程として、コレステロールエステルをコレステロールエステラーゼによりコレステロールに変換する工程を追加してもよい。ある実施形態において、本発明の測定方法は、コレステロールを含み得る試料にペルオキシダーゼ、及び本発明の反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、発色剤とコレステロールオキシダーゼとを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、及び本発明の反応促進剤を含む第1試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。発色剤とコレステロールオキシダーゼとを含む第2試薬は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。別の実施形態では、本発明の測定方法は、コレステロールを含み得る試料にペルオキシダーゼ、発色剤及び本発明の反応促進剤を含む第1試薬を添加し加温する工程、コレステロールオキシダーゼを含む第2試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。やはり試薬中の各成分は、単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数試薬の組み合わせでもよい。測定は定性的でも定量的でもよい。
【0053】
別の実施形態において、本発明の測定方法は、コレステロールを含み得る試料に、ペルオキシダーゼ、本発明の反応促進剤、発色剤及びコレステロールオキシダーゼを含む測定試薬を添加し加温する工程、並びに試料の吸光度を測定する工程を含む。ペルオキシダーゼ、本発明の反応促進剤、発色剤及びコレステロールオキシダーゼを含む測定試薬は単一の試薬でもよく、個別の成分をそれぞれ含有する複数の試薬の組み合わせでもよい。
【0054】
試料溶液に添加する本発明の反応促進剤の終濃度は特に限定されず、例えば、0.01~200mM、0.02~150mM、0.03~100mM、0.04~80mM、0.05~60mM、0.06~50mM、0.08~40mM、0.1mM~30mM、0.15~20mM、0.2~10mM、0.3~5mM、0.4~3mM、例えば0.05~10mMの範囲であり得る。試料溶液に添加する本発明の反応促進剤の終濃度は特に限定されず、例えば0.001~5%(w/v)、0.003~3%(w/v)、0.005~1%(w/v)、0.01~0.5%(w/v)、0.02~0.3%(w/v)、0.03~0.1%(w/v)であり得る。なお、反応促進剤と他の酵素や試薬との添加順序は制限されず、同時でも逐次添加でもよい。
【0055】
例えば測定対象物質が糖化基質であり、試料溶液中の糖化基質濃度が0~0.5mMの場合、添加するアマドリアーゼ反応促進剤の終濃度は、例えば、0.01~20mM、例えば0.02~10mMとすることができる。
【0056】
例えば測定対象物質がHbA1cであり、試料溶液中のHbA1c濃度が0~0.5mMの場合、添加するアマドリアーゼ反応促進剤の終濃度は、例えば、0.01~20mM、例えば0.02~10mMとすることができる。
【0057】
例えば測定対象物質がサルコシンであり、試料溶液中のサルコシン濃度が0.1~2mg/dLの場合、添加するサルコシンオキシダーゼ反応促進剤の終濃度は、例えば、0.01~20mM、例えば0.02~10mMとすることができる。なお本明細書にいう、測定対象物質をサルコシンとする方法は、上流工程として、クレアチニンをクレアチニンアミドヒドロラーゼ(クレアチニナーゼともいう)によりクレアチンに変換し、クレアチンをクレアチンアミジノヒドロラーゼ(クレアチナーゼともいう)によりサルコシンに変換する工程を含む方法を包含するものとする。
【0058】
例えば測定対象物質がコレステロールであり、試料溶液中のコレステロール濃度が1~1000mg/dLの場合、添加するコレステロールオキシダーゼ反応促進剤の終濃度は、例えば、0.01~20mM、例えば0.02~10mMとすることができる。
【0059】
ある実施形態において合計反応時間は、60分以下、30分以下、20分以下、好ましくは15分以下、好ましくは10分程度とすることができる。例えば、上記の第1試薬添加後の加温を30分以下、20分以下、15分以下、10分、例えば5分程度とすることができ、上記の第2試薬添加後の加温を30分以下、20分以下、15分以下、10分、例えば5分程度とすることができる。また、試料に含まれると推定される測定対象物質(例えば糖化ヘモグロビン)の濃度範囲に対して、オキシダーゼ(例えばアマドリアーゼ)による反応が完了するか又はほぼ完了するよう、測定試薬の各成分の濃度を調節することができる。反応が完了するとは、試料に含まれる測定対象物質(例えば糖化ヘモグロビン又は糖化基質)の100%が反応したことをいう。反応がほぼ完了するとは、試料に含まれる測定対象物質(例えば糖化ヘモグロビン又は糖化基質)の例えば90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、例えば99%以上が反応したことをいう。
【0060】
吸光度測定における測定波長は、発色剤に応じて選択することができる。吸光度の測定波長は、例えば340~900nm、590~900nm、600~751nm、610~730nmでありうる。ある実施形態において、2つの測定波長A1及びA2で測定を行い、その差(A1-A2又はA1/A2と表記することがある)を取得することもできる。2つの測定波長A1及びA2は、590~900nmの範囲の任意の2つの波長とすることができる。例えばA1を色素の吸光波長とし、A2をバックグラウンド波長とし、その差(A1-A2)を算出し得る。吸光度の測定波長は、フェノチアジン誘導体色素を用いる場合、590~730nm、例えば610~710nmでありうる。バックグラウンド波長は、フェノチアジン誘導体色素を用いる場合、当該フェノチアジン誘導体色素の吸収がほとんどない領域、例えば710nmより高く900nm以下である範囲から選択することができる。例えばA1=A694とし、A2=A751とし、これらからA694-A751を算出してもよい。吸収波長をA1=A654としてもよい。吸光度測定は自動分析装置を用いて行ってもよい。
【0061】
発色剤は、特に限定されないが、過酸化水素存在下でのペルオキシダーゼの触媒反応により吸光度が変化する化合物が好ましい。発色剤としては、4-アミノアンチピリンや、例えば、ADOS(N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-m-アニシジン)、ALOS(N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)アニリン)、TOOS(N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-m-トルイジンナトリウム)、DA-67(10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3、7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノシアジン)、DA-64(N-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-4、4’-ビス(ジメチルアミノ)-ジフェニルアミン)等が挙げられる。ADOS、ALOS、TOOSは4-アミノアンチピリンと縮合した際に発色する。DA-64、DA-67は4-アミノアンチピリンを必要とせず、単独で処方するだけで発色する。いずれの場合も、発色反応はパーオキシダーゼにより触媒される。さらに発色剤として、メチレンブルー、10-(アセチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン、10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン、10-(フェニルカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン、10-(3-(メチルカルボキシアミノ)-ヘキサメチル-アミノ)-フェノチアジン、10-((3-(メチルカルボキシアミノ)-4-メチル-フェニル)-アミノ)-フェノチアジン、10-((3-(メチルカルボキシアミノメチル)-フェニル)-メチルアミノ)-フェノチアジン、10-(1-ナフタレンアミノ)-フェノチアジン、10-(メチル)-フェノチアジン、10-(フェニルアミノ)-フェノチアジン、10-(メチルアミノ)-フェノチアジン、アズールA、アズールB、アズールC、トルイジンブルーO、1,9-ジメチル-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン塩、メチレングリーン若しくはその塩、又はそのロイコ体等が挙げられるがこれに限らない。発色剤は、反応溶液における終濃度が、0.001~10mM、例えば0.005~2mMとなるよう添加しうる。
【0062】
オキシダーゼとしては、任意の公知のアマドリアーゼ、サルコシンオキシダーゼ、及びコレステロールオキシダーゼを使用しうるがこれに限らない。公知のサルコシンオキシダーゼについては例えば特許文献15~17を参照のこと。公知のコレステロールオキシダーゼについては、例えば特許文献19を参照のこと。参照によりそれらの全内容を本明細書に組み入れる。これらの改変体や均等物も使用しうる。
【0063】
アマドリアーゼとしては任意の公知のものを使用しうる。例えばアマドリアーゼとしては、αFV、αFVH及び/又はαF6P等の糖化基質に作用するものが挙げられる。例えば特許文献1~7、8~11を参照されたい。他の公知のアマドリアーゼも使用しうる。またアマドリアーゼとしては、HbA1cに直接作用するA1cOXが挙げられ、特許文献12、13に記載のもの等が例示される。同等の機能を有する他のA1cOXも使用しうる。またアマドリアーゼとしては、ε-FKに作用するアマドリアーゼが挙げられ、特許文献20に記載のもの等が例示される。参照によりこれらの全内容を本明細書に組み入れる。
【0064】
アマドリアーゼ反応では、糖化基質又はHbA1cを含み得る試料溶液にアマドリアーゼを添加し、基質にアマドリアーゼを作用させて過酸化水素を生成させる。このとき、系に本発明アマドリアーゼ反応促進剤を共存させる。
【0065】
アマドリアーゼは、α及び/又はε-アミノ基が糖化された、糖化アミノ酸、糖化ペプチド又は糖化タンパク質に作用して、過酸化水素及びα-ケトアルデヒドを発生する反応を触媒する。このとき、系に本発明アマドリアーゼ反応促進剤が存在すると、この反応が促進されると考えられる。ただし本発明は特定の作用機序に拘束されるものではない。
【0066】
アマドリアーゼ反応は緩衝溶液中で行うことができる。プロテアーゼを用いた前処理を行う場合は、当該前処理反応と同じまたは異なる緩衝溶液をアマドリアーゼ反応に使用しうる。反応溶液のpHは特に限定されないが、例えば3~11、4~10、5~9、例えば6~8でありうる。反応温度は、例えば、10~45℃、10~38℃、20~37℃、例えば25~37℃でありうる。反応時間は、0.1~60分、0.1~30分、0.1~20分、0.1~15分、0.1~10分、例えば0.1~5分であり得る。
【0067】
サルコシンオキシダーゼを用いた反応は緩衝溶液中で行うことができる。上流工程として、クレアチニナーゼ及びクレアチナーゼを用いて、クレアチニンをクレアチンに、次いでサルコシンに変換する場合は、当該上流工程での反応と同じまたは異なる緩衝溶液をサルコシンオキシダーゼを用いた反応に使用しうる。反応溶液のpHは特に限定されないが、例えば3~11、4~10、5~9、例えば6~8でありうる。反応温度は、例えば、10~45℃、10~38℃、20~37℃、例えば25~37℃でありうる。反応時間は、0.1~60分、0.1~30分、0.1~20分、0.~15分、0.1~10分、例えば0.1~5分であり得る。
【0068】
コレステロールオキシダーゼを用いた反応は緩衝溶液中で行うことができる。コレステロールエステラーゼを用いた前処理を行う場合は、当該前処理反応と同じまたは異なる緩衝溶液をコレステロールオキシダーゼ反応に使用しうる。反応溶液のpHは特に限定されないが、例えば3~11、4~10、5~9、例えば6~8でありうる。反応温度は、例えば、10~45℃、10~38℃、20~37℃、例えば25~37℃でありうる。反応時間は、0.1~60分、0.1~30分、0.1~20分、0.~15分、0.1~10分、例えば0.1~5分であり得る。
【0069】
オキシダーゼ(例えばアマドリアーゼ)は、試料溶液中に含まれる基質(例えば糖化基質)の量にもよるが、例えば終濃度が0.01~50U/mL、0.1~20U/mL、0.2~10U/mL、例えば0.5~10U/mLとなるよう試料に添加することができる。酵素活性「U」は、αFVを基質とするアマドリアーゼについては、αFVを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとすることができる。酵素活性「U」は、αFVHを基質とするアマドリアーゼについては、αFVHを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとすることができる。酵素活性「U」は、ε-FKを基質とするアマドリアーゼについては、ε-FKを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとすることができる。酵素活性「U」は、αF6Pを基質とするアマドリアーゼについては、αF6Pを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとすることができる。酵素活性「U」は、HbA1cを基質とするアマドリアーゼについては、HbA1cを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとすることができる。酵素活性「U」は、サルコシンを基質とするサルコシンオキシダーゼについては、サルコシンを基質として1分間に1マイクロモルの尿素を生成する量を1Uとすることができる。酵素活性「U」は、コレステロールを基質とするコレステロールオキシダーゼについては、コレステロールを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとすることができる。本明細書では、アマドリアーゼについて、特に断らない限り、酵素活性「U」は、HbA1cを基質として1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する量を1Uとして定義する。
【0070】
ペルオキシダーゼとしては任意の公知のものを使用しうる。ペルオキシダーゼは、過酸化水素と発色剤との酸化還元反応を触媒する。この反応により発色剤が発色する。ペルオキシダーゼを用いる条件は特に制限されず、反応液のpHは、例えば、5~9であり、処理温度は、例えば、10~40℃の範囲であり、好ましくは25~37℃である。処理時間も特に制限されず、0.1~60分、0.1~10分、例えば0.1~5分でありうる。ペルオキシダーゼは、終濃度が0.01~300KU/L、例えば0.5~50KU/Lとなるよう反応溶液に添加しうる。ペルオキシダーゼの活性「U」は、次の反応条件下で、20秒間に1mgのプルプロガリン(purpurogallin)を生成する酵素(POD)量を1 プルプロガリン単位と定義する:
【0071】
試薬:
A. 5%(W/V)ピロガロール水溶液
B. 0.147M H2O2水溶液(30%(W/V)H2O2溶液1.67mlを蒸留水で希釈して100mlとする)
C. 0.1Mリン酸緩衝液、pH6.0 (反応混液及び酵素希釈用)
D. 2.0N H2SO4溶液
酵素溶液:酵素標品を予め氷冷した0.1Mリン酸緩衝液、pH6.0で溶解し、同緩衝液で3.0~6.0 プルプロガリン U/Pに希釈して氷冷保存する
【0072】
手順:
1 試験管(32φ×200mm)に下記反応混液を調製し、20℃で約5分間予備加温する
14.0ml 蒸留水
2.0ml ピロガロール水溶液(A)
1.0ml H2O2水溶液(B)
2.0ml リン酸緩衝液(C)
2 酵素溶液1.0mlを加え、反応を開始する。
3 20℃で正確に20秒間反応させた後、H2SO4溶液(D)1.0mlを加えて反応を停止させる。反応停止後の混液から生成したプルプロガリンをエーテル15mlで抽出する。この操作を5回繰り返し、抽出液を合わせ、更にエーテルを加えて全量を100 mlにする。この液について420nmにおける吸光度を測定する(OD test)。
4 盲検は反応混液1を20℃で20秒間放置後、H2SO4溶液(D)1.0mlを加えて混和し、次いで酵素溶液1.0mlを加えて調製する。この液につき上記同様にエーテル抽出を行って吸光度を測定する(ODblank)。
計算式は次のとおりである:
U/ml=ΔOD(OD test-OD blank)×希釈倍率/(0.117×1ml)
=ΔOD×8.547×希釈倍率
U/mg = U/ml×1/C
0.117 : 1mg% プルプロガリンエーテル溶液の420nmにおける吸光度
C : 溶解時の酵素濃度(c mg/ml)
1プルプロガリン単位は13.5国際単位(o-ジアニシジンを基質とし、25℃の反応条件下)に相当する。
【0073】
吸光度測定には、任意の公知の分光光度計や検出機器を使用しうる。反応溶液の吸光度は発色した発色剤の量を示し、ここから試料中の測定対象物質(例えばHbA1c)濃度を決定しうる。例えば濃度が既知の基質(例えば濃度が既知の糖化ヘモグロビン又は糖化基質)を含む標準物質についての吸光度を測定し、濃度と吸光度の関係をプロットして検量線を作成しうる。次いで、濃度未知の基質(例えば糖化ヘモグロビン又は糖化基質)を含む試料について吸光度を測定し、前記検量線から基質(例えば糖化ヘモグロビン又は糖化基質)の濃度を決定しうる。
【0074】
ある実施形態において、本発明は、オキシダーゼ反応促進剤を含む組成物を提供する。この組成物は場合により、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、緩衝剤、安定化剤、発色剤、界面活性剤等を含み得る。また本発明の組成物に、マーカーや化合物を測定するためのさらなる酵素や試薬を追加してもよい。
【0075】
ある実施形態において、本発明は、アマドリアーゼ反応促進剤を含む、HbA1c測定用の組成物を提供する。この組成物は場合により、アマドリアーゼ、ペルオキシダーゼ、緩衝剤、安定化剤、発色剤、界面活性剤等を含み得る。また本発明の組成物に、HbA1c以外のマーカーや化合物を測定するためのさらなる酵素や試薬を追加してもよい。
【0076】
ある実施形態において、本発明は、サルコシンオキシダーゼ反応促進剤を含む、サルコシン測定用の組成物を提供する。この組成物は場合により、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、緩衝剤、安定化剤、発色剤、界面活性剤等を含み得る。クレアチニンアミドヒドロラーゼやクレアチンアミジノヒドロラーゼ、及びペルオキシダーゼを用いることによりクレアチン又はクレアチニンを測定することができる。したがってある実施形態において、本発明はさらに、サルコシンオキシダーゼ反応促進剤、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼ、及びペルオキシダーゼを含む、クレアチン又はクレアチニン測定用の組成物を提供する。
【0077】
ある実施形態において、本発明は、コレステロールオキシダーゼ反応促進剤を含む、コレステロール測定用の組成物を提供する。この組成物は場合により、コレステロールオキシダーゼ、コレステロールエステラーゼ、ペルオキシダーゼ、緩衝剤、安定化剤、発色剤、界面活性剤等を含み得る。
【0078】
緩衝剤としては、例えば、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、硼酸塩、クエン酸塩、ジメチルグルタミン酸塩、トリシン、HEPES、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、フタル酸、酒石酸等が挙げられる。さらに必要により、溶解補助剤、安定化剤、反応性向上剤、HbA1c変性剤等として、界面活性剤(n-オクチル-β-D-グルコシド、n-オクチル-β-D-チオグルコシド、n-ドデシル-β-D-マルトシド、n-テトラデシル-β-D-マルトシド、n-オクチル-β-D-マルトシド、1-ドデシルピリジニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム塩、テトラデシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、トリトンX-100、ブリッジ35、ブリッジ58、ツイーン80、コール酸塩、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、3-オキサトリデシル-α-D-マンノシド、n-ノニル-β-D-チオマルトシド、n-デシル-β-D-マルトシド、n-ウンデシル-β-D-マルトシド、トレハロースC8、トレハロースC10、トレハロースC12、トレハロースC14、トレハロースC16、BIGCHAP、deoxy-BIGCHAP、MEGA-8、MEGA-9、MEGA-10、ヘキサデシルピリジニウム塩、オクタデシルトリメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ノニルトリメチルアンモニウム塩、オクチルトリメチルアンモニウム塩、へキシルトリメチルアンモニウム塩、ドデシル硫酸ナトリウム等)、還元剤(ジチオスレイトール、メルカプトエタノール、L-システイン等)、亜硝酸塩、牛血清アルブミン、糖類(グリセリン、乳糖、シュークロース等)等を適宜添加してもよい。
【0079】
アマドリアーゼがA1cOXであり、糖化基質がHbA1cである場合において、A1cOXとHbA1cとの反応効率を高めるために、HbA1cを予め変性させてもよい。変性は、界面活性剤処理や熱処理、又は酸若しくはアルカリでの処理により行うことができる。変性処理として界面活性剤添加と熱処理の両方を行う場合、その順序は任意である。熱処理はHbA1cの全部又は一部を変性させるのに十分な温度及び時間で行われうる。処理温度は例えば60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、例えば98℃とすることができる。処理時間は温度にもよるが例えば10秒以上、20秒、30秒以上、1分以上、又は2分以上であり得る。界面活性剤の例は上述したとおりであり、これらを適当な濃度で添加しうる。
【0080】
ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は以下の式(I)により表される化合物である。
【0081】
【化39】
[式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立に、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
前記の置換基は、-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-CO-NH
2、-R
3、-NH-R
4、-NHCO-NH-R
5-N=N-R
6、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
Zは、-H、-C
1-6アルキル、-O-C
1-6アルキル、-SO
3Xからなる群より選択され、
各X、Y、Zは、同一でも異なっていてもよく、
-R
3は、-Hであるか、或いは、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
-R
4は、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
R
5及びR
6は、それぞれ独立に、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-O-CH
3、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、-COOX、Y、Zからなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5~6員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環、或いは前記芳香族の5~
6員単環の炭素環若しくは複素環を含む9~10員の縮合環であり、
ただし、R
1又はR
2が、芳香族の5員単環の、炭素環又は少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環である場合には、該複素環は-COOXにより置換されたものではない]。
【0082】
5~6員単環としては5~6員炭素環や5~6員複素環が挙げられる。
9~10員の縮合環は、複素環と複素環との縮合環、炭素環と複素環との縮合環、炭素環と炭素環との縮合環であってもよい。
【0083】
5員単環の場合には該単環は場合により1、2、3、若しくは4つの置換基により置換されていてもよく、6員単環の場合には該単環は場合により1、2、3、4若しくは5つの置換基により置換されていてもよく、9員縮合環の場合には該縮合環は場合により1、2、3、4、5、若しくは6つの置換基により置換されていてもよく、10員縮合環の場合には該縮合環は場合により1、2、3、4、5、6若しくは7つの置換基により置換されていてもよい。
【0084】
芳香族の単環の炭素環としてはベンゼン環が挙げられる。芳香族の炭素環と炭素環との縮合環としてはナフタレン環が挙げられる。
【0085】
五員複素環としては、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピロールが挙げられるがこれに限らない。
【0086】
六員複素環としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラジン、オキサジンが挙げられるがこれに限らない。
【0087】
芳香族の五員複素環としては、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、チオフェン、オキサジアゾール(例えば1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール(フラザンともいう)、1,3,4-オキサジアゾール、フラン、ピロール(1H-ピロール、2H-ピロール)、トリアゾール(1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール)、テトラゾール、ペンタゾール、チアジアゾールが挙げられるがこれに限らない。
【0088】
芳香族の六員複素環式化合物としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン)が挙げられるがこれに限らない。
【0089】
縮合環としては9員環のベンズイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール(Benzisoxazole)、1,3-ベンゾジオキソール、ベンゾチオフェン、ベンゾ[c]チオフェン、ベンゾチアゾール、インドール(2,3-ベンゾピロール)、インダゾール、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、イソベンゾフランが挙げられるがこれに限らない。
【0090】
縮合環としては10員環のベンゾジオキサン、1,4-ベンゾジオキシン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジンが挙げられるがこれに限らない。
【0091】
-C1-6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル)、ペンチル(n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル)、ヘキシル(n-ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル)基が挙げられる。
【0092】
-C2-6アルケニルとしては、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
【0093】
-C2-6アルキニルとしては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基などが挙げられる。
【0094】
-O-C1-6アルキルは、C1-6アルコキシ基ともいい、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0095】
ある実施形態において、R1及びR2は、それぞれ独立に、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記芳香族の6員単環の炭素環を含む10員の縮合環である。
【0096】
ある実施形態において、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、
【化40】
からなる群より選択される基である。式中、X、Y、Zは上記に定義したとおりである。
【0097】
ある実施形態において、R
1は、
【化41】
からなる群より選択され、R
2は、
【化42】
からなる群より選択され、式中、Xは上記に定義したとおりである。
【0098】
ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、下記の式で表される化合物を含む、
【化43】
[式中、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
各X、Yは、同一でも異なっていてもよく、
-R
3は、-H又は-NHCO-NH-R
5-N=N-R
6であるか、或いは、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記炭素環を含む10員の縮合環であり、
R
5及びR
6は、それぞれ独立に、場合により-F、-Cl、-Br、-I、-At、-C
1-6アルキル、-C
2-6アルケニル、-C
2-6アルキニル、=O、-OH、-O-C
1-6アルキル、-O-CH
3、-CONH
2、-NO
2、-NH
2、-SO
3X、からなる群より選択される1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環、或いは前記炭素環を含む10員の縮合環である]。
【0099】
ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、下記のいずれかの式で表される化合物を含む、
【化44】
[式中、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、
Yは、-H、-SO
3X、-COOXからなる群より選択され、
各X、Yは、同一でも異なっていてもよい]。
【0100】
ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、下記の式で表される化合物を含む、
【化45】
[式中、
R
1は、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、ベンゼン環又はナフタレン環であり、
前記の置換基は、-NO
2、-SO
3X、及び
【化46】
からなる群より選択され、
Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]。
【0101】
ある実施形態において、R1は、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の6員単環の炭素環であり、R2は、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5員単環の、少なくとも1つの窒素原子、硫黄原子若しくは酸素原子を含む複素環である。
【0102】
ある実施形態において、R
2は、場合により1又は複数の置換基により置換されていてもよい、芳香族の5員単環の、2つの窒素原子を含む複素環であり、該複素環は
【化47】
により置換されており、式中、Xは上記に定義したとおりであり、各Xは同一でも異なっていてもよい。
【0103】
ある実施形態において、R
2は、
【化48】
であり、式中、Xは上記に定義したとおりであり、各Xは同一でも異なっていてもよい。
【0104】
ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤はアゾベンゼン誘導体、例えば水溶性を示すアゾベンゼン誘導体、例えばアゾベンゼン-4-スルホン酸骨格を有する化合物である。
【0105】
ある実施形態において、本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、
以下の式により表される化合物、
【化49】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
例えば、以下の式により表されるMordant Orange 1(CAS 2243-76-7)
【化50】
以下の式により表される化合物、
【化51】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
例えば以下の式により表されるAlizarin Yellow GG(CAS 584-42-9)、
【化52】
以下の式により表される化合物、
【化53】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
例えば以下の式により表されるChrome Yellow(CAS6054-97-3)、
【化54】
以下の式により表される化合物、
【化55】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
例えば以下の式により表されるDirect Yellow 44(CAS8005-52-5)、
【化56】
以下の式により表される化合物、
【化57】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
例えば以下の式により表されるAcid Red 151(CAS6406-56-0)
【化58】
以下の式により表される化合物、
【化59】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
例えば以下の式により表されるAcid Yellow 36(CAS587-98-4)
【化60】
以下の式により表される化合物、
【化61】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択され、各Xは、同一でも異なっていてもよい]、
例えば以下の式により表されるXylene Fast Yellow 2G(CAS 6359-98-4)、
【化62】
及び、以下の式により表される化合物、
【化63】
[式中、Xは、-H、-Na、-K、-Liからなる群より選択される]、
例えば以下の式により表されるAcid Yellow 34(CAS 6359-90-6)、
【化64】
及び、以下の式により表されるDisperse Diazo Black 3BF(CAS 6232-57-1)、
【化65】
からなる群より選択される化合物である。
【0106】
本発明の反応促進剤からは、以下の式により表される化合物(Tartrazine、CAS 1934-21-0)は除かれる:
【化66】
【0107】
上記の化合物は市販されているもの又はその塩を使用しうる。他の式Iの化合物は慣用の手法を用いて合成するか、又は市販されているもの又はその塩を使用しうる。
【0108】
ある実施形態において本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、アマドリアーゼの反応を促進しうる。このような反応促進剤(アマドリアーゼ反応促進剤ともいう)としては、上記の化合物、例えば式I、式II、及び式IIIの化合物、式IVの化合物、例えばMordant Orange 1、式Vの化合物、例えばAlizarin Yellow GG、式VIの化合物、例えばChrome Yellow、式VIIの化合物、例えばDirect Yellow 44、式VIIIの化合物、例えばAcid Red 151、式IXの化合物、例えばAcid Yellow 36、式Xの化合物、例えばXylene Fast Yellow 2G、式XIの化合物、例えばAcid Yellow 34及び式XIIの化合物、例えばDisperse Diazo Black 3BFが挙げられるがこれに限らない。
【0109】
ある実施形態において本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、サルコシンオキシダーゼの反応を促進しうる。このような反応促進剤(サルコシンオキシダーゼ反応促進剤ともいう)としては、上記の化合物、例えば式I、式II、及び式IIIの化合物、式IVの化合物、例えばMordant Orange 1、式Vの化合物、例えばAlizarin Yellow GG、式VIの化合物、例えばChrome Yellow、式VIIの化合物、例えばDirect Yellow 44、式VIIIの化合物、例えばAcid Red 151、式Xの化合物、例えばXylene Fast Yellow 2G、及び式XIIの化合物、例えばDisperse Diazo Black 3BFが挙げられるがこれに限らない。
【0110】
ある実施形態において本発明のオキシダーゼ反応促進剤は、コレステロールオキシダーゼの反応を促進しうる。このような反応促進剤(コレステロールオキシダーゼ反応促進剤ともいう)としては、上記の化合物、例えば式I、式II、及び式IIIの化合物、式IVの化合物、例えばMordant Orange 1、式Vの化合物、例えばAlizarin Yellow GG、式VIの化合物、例えばChrome Yellow、式VIIの化合物、例えばDirect Yellow 44、式VIIIの化合物、例えばAcid Red 151、式IXの化合物、例えばAcid Yellow 36、式XIの化合物、例えばAcid Yellow 34及び式XIIの化合物、例えばDisperse Diazo Black 3BFが挙げられるがこれに限らない。
【0111】
(HbA1c測定方法の例)
本発明のHbA1c測定試薬及び測定方法について例示する。ただし本発明はこれ限定されない。
【0112】
以下のHbA1c測定用試薬を調製する。
HbA1c標準物質
HbA1c認証実用標準物質JCCRM423-9b(検査医学標準物質機構製)
総ヘモグロビン濃度133g/l、
HbA1c濃度3レベル(NGSP値 5.61%、7.71%、10.55%)
第1試薬(ペルオキシダーゼ、ロイコ色素を含む溶液)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH6.5
15mM Tris
0.2%(w/v) n-ドデシル-β-D-マルトシド(同仁化学研究所製)
4mM NaNO2
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
第2試薬(A1cOXを含む溶液)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH6.5
5.3mg/ml CFP-DH4(A1cOX)
【0113】
Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用して、次に示す手順に沿ってHbA1cを測定する。イオン交換水で12.5倍希釈したHbA1c標準物質8μlを、96μlの第1試薬に添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬を添加してHbA1cのβ鎖アミノ末端の酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させる。希釈した標準物質と第1試薬を混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694/751(A694-A751)を求める。横軸にHbA1c標準物質の濃度を、縦軸に希釈した標準物質と第1試薬を混合してから10分後のA694/751をプロットし、HbA1c濃度とA694/751の相関性を表す検量線を作成する。
【0114】
次に、HbA1c標準物質の代わりに、HbA1c濃度が未知の試料を用いて、上記と同様の測定を行う。希釈試料と第1試薬を混合してから10分後のA694/751と、上記で作成した検量線を用いて、試料のHbA1c濃度を決定する。
【0115】
化合物がオキシダーゼ反応を促進するか否かは、系に候補化合物を添加した場合の反応の進行と、添加しなかった場合の反応の進行とを比較することにより評価することができる。
【0116】
(サルコシンオキシダーゼを用いた測定方法の例)
サルコシンオキシダーゼを用いた測定試薬及び測定方法について例示する。ただし本発明はこれ限定されない。尚、サルコシンオキシダーゼの酵素活性に関し、サルコシンを基質として、1分間に1マイクロモルの尿素を生成するサルコシンオキシダーゼ酵素活性を1単位(U)とする。
【0117】
A.試薬の調製
反応用試薬として、以下の溶液を調製する。
1) 0.2M ザルコシン, 100mM Tris-HCl, 2 mM KCl, 0.05% Triton-X100 pH7.7
2) 80U/ml POD溶液
3) 0.2% phenol 溶液
4) 0.2% 4-アミノアンチピリン溶液
5) 0.3% SDS 溶液
6) 20mM Tris-HCl, 1mM KCl, 0.2% BSA pH7.7 (酵素希釈液)
次いで、上記各溶液を以下の数量混合し、活性測定液を調製する。
1) 5ml
2) 1ml
3) 2ml
4) 1ml
【0118】
B.測定法
測定は、以下のようにして行う。
1)活性測定液 0.95 mlを37℃、5分間プレインキュベーションする。
2)酵素液(0.04U/ml~0.16U/mlに酵素希釈液で調整)0.05mlを添加混合する。
3) 37℃において10分間反応させる。
4) 10分間の反応後、上記0.3% SDS 溶液を混合する。
5) 25℃にて10分間放置後、495 nmの吸光度を測定する。(ODsample)
【0119】
ブランク値は、酵素液の混合前に 0.3% SDS 溶液を混合することによって測定する。ODblank)
(活性換算式)
U/ml=(ODsample-ODblank) ×0.95
【0120】
(コレステロールオキシダーゼを用いた測定方法の例)
コレステロールオキシダーゼを用いた測定試薬及び測定方法について例示する。ただし本発明はこれ限定されない。コレステロールオキシダーゼの酵素活性の測定方法の例として、過酸化水素量を測定する方法について示す。以下のコレステロールオキシダーゼの活性測定には、特に断らない限り、コレステロールを基質として用いる。なお、コレステロールオキシダーゼの酵素力価は、コレステロールを基質として測定したとき、1分間に1μmolの過酸化水素を生成する酵素量を1Uと定義する。
【0121】
A.試薬の調製
(1)試薬1:コレステロール溶液
5.0mlのTritonX-100に500mgのコレステロール(和光純薬製)を添加し、ヒーター上で攪拌溶解する。これに90mlのイオン交換水を添加後、煮沸後、氷上で冷却し、4.0gのコール酸ナトリウム(ナカライテスク製)を添加し、溶解した後、100mlに定容する。
(2)試薬2:6.0%フェノール溶液
フェノール6.0gをイオン交換水に溶解して100mlにする。
(3)試薬3:0.15%ペルオキシダーゼ溶液
150mgを100mlの0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH7.0)に溶解する。
(4)試薬4:4-アミノアンチピリン溶液
1.76gの4-アミノアンチピリン(和光純薬製)をイオン交換水に溶解し、100mlに定容する。
【0122】
B.測定法
4.0mlの試薬1と51mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)とを混合した後、2.0mlの試薬2、2.0mlの試薬3、1.0mlの試薬4を順に加え、混合する。これを3.0mlずつ試験管に分注し、氷冷保存する。測定時は、3.0mlを37℃で5分加温し、50μlの酵素液を加え混和し、分光光度計(U-3010、日立社製)により、500nmにおける吸光度を測定する。測定値(ΔODtest)は、500nmにおける2分後から4分後の1分間あたりの吸光度変化とする。なお対照液(ΔODblank)は、酵素液の代わりに50μlの0.2%牛血清アルブミンを含む20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を加える以外は前記と同様にしたものである。下記の計算式に従い、算出した値を酵素活性値(U/ml)とした。
【数1】
13.78:上記の測定条件下でのミリモル分子吸光係数(cm
2/micromole)
1/2:酵素反応で生成したH
2O
2の2分子から形成するQuinoneimine色素は1分子であることによる係数。
1.0:光路長(cm)。
【実施例】
【0123】
以下の実施例において本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。特に断らない場合、試薬は市販品を用いた。
【0124】
[実施例1]アマドリアーゼ遺伝子を保持するプラスミドpKK223-3-CFP-DH2の調製
HbA1cに作用するアマドリアーゼ(CFP-DH2、国際公開第2015/060429号参照)のアミノ酸配列を配列番号1に示す。CFP-DH2遺伝子(配列番号2)を組込んだpKK223-3ベクターであるpKK223-3-CFP-DH2を調製するために、pKK223-3-CFP-DH2を有する大腸菌JM109株を、3mlのLB-amp培地[1%(w/v)バクトトリプトン、0.5%(w/v)ペプトン、0.5%(w/v)NaCl、50μg/ml アンピシリン]に接種して、37℃で16時間振とう培養し、培養物を得た。
【0125】
この培養物を10,000×gで、1分間遠心分離することにより集菌して菌体を得た。この菌体より、GenElute Plasmid MiniprepKit(Sigma-Aldrich社製)を用いてpKK223-3-CFP-DH2を抽出して精製し、2.5μgの組換え体プラスミドpKK223-3-CFP-DH2を得た。
【0126】
[実施例2]pKK223-3-CFP-DH2の部位特異的改変操作
得られたpKK223-3-CFP-DH2を鋳型として、配列番号3、4の合成オリゴヌクレオチド、KOD-Plus-(東洋紡績社製)を用い、以下の条件でPCR反応を行った。
【0127】
すなわち、10×KOD-Plus-緩衝液を5μl、dNTPが各2mMになるよう調製されたdNTPs混合溶液を5μl、25mMのMgSO4溶液を2μl、鋳型となるpKK223-3-CFP-DH2を50ng、上記合成オリゴヌクレオチドをそれぞれ15pmol、KOD-Plus-を1Unit加えて、滅菌水により全量を50μlとした。調製した反応液をサーマルサイクラー(エッペンドルフ社製)を用いて、94℃で2分間インキュベートし、続いて、「94℃、15秒」-「50℃、30秒」-「68℃、6分」のサイクルを30回繰り返した。
【0128】
得られた反応液に、制限酵素DpnI(NEW ENGLAND BioLabs社製)を添加して37℃で反応させ、残存している鋳型DNAを切断した後、大腸菌JM109を形質転換し、LB-amp寒天培地に展開した。生育したコロニーをLB-amp培地に接種して振とう培養し、実施例1と同様の方法でプラスミドDNAを単離した。該プラスミド中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列を、マルチキャピラリーDNA解析システムApplied Biosystems 3130xlジェネティックアナライザ(LifeTechnologies社製)を用いて決定し、配列番号1記載のアミノ酸配列の64位のアルギニンがグリシンに置換された改変型アマドリアーゼ(CFP-DH3、配列番号5)の遺伝子を保持するプラスミド(pKK223-3-CFP-DH3)を得た。
【0129】
続いて、pKK223-3-CFP-DH3を鋳型として、配列番号6、配列番号7のオリゴヌクレオチド、及びKOD -Plus- を用い、先述の条件でPCR反応、大腸菌JM109の形質転換及び生育コロニーが保持するプラスミドDNA中のアマドリアーゼをコードするDNAの塩基配列決定を行った。その結果、配列番号1記載のアミノ酸配列の64位のアルギニンがグリシンに置換され、かつ、110位のロイシンがチロシンに置換された改変型アマドリアーゼ(CFP-DH4、配列番号8)の遺伝子を保持するプラスミド(pKK223-3-CFP-DH4)を得た。
【0130】
[実施例3]pKK223-3-CFP-DH4の製造及び精製
CFP-DH4遺伝子を保持するプラスミド(pKK223-3-CFP-DH4)を導入した大腸菌JM109株を、終濃度0.1mMとなるようにIPTGを添加したLB-amp培地200mlに植菌し、25℃で16時間培養した。得られた各培養菌体を2mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)で洗浄した後、同緩衝液に菌体を懸濁して超音波破砕処理を行い、20,000×gで10分間遠心分離し、粗酵素液40mlを調製した。
【0131】
Q-sepharose FF(GEヘルスケア社製)を充てんしたカラムを2mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)で平衡化した後、調製したCFP-DH4を含む粗酵素液をアプライしてアマドリアーゼを陰イオン交換樹脂に結合させた。その後、4mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)を20カラム体積分送液し、夾雑タンパク質を溶出させた後、30mMのNaClを含む4mM リン酸カリウム緩衝液(pH8.0)で樹脂に結合したタンパク質を溶出させ、アマドリアーゼ活性を示す画分を回収した。
【0132】
得られたそれぞれのアマドリアーゼ活性を示す画分を、Amicon Ultra Ultracel-30K(ミリポア社製)により濃縮し、HiLoad 26/60 Superdex200により精製した。樹脂の平衡化、溶出には150mMのNaClを含む10mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を用いた。溶出した各フラクションの純度をSDS-PAGEにより評価し、夾雑タンパク質を含んでいないフラクションを回収し、CFP-DH4の精製標品とした。
【0133】
[実施例4]HbA1c検出反応が完遂した場合における吸光度の測定
本実施例では過剰量のA1cOXを用いて、HbA1c検出反応が完遂した場合の吸光度変化量を決定する。
【0134】
以下の組成を有するHbA1c測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してHbA1cの測定を実施した。
(試料)
血球(HbA1c 10.4%(NGSP値))
(第1試薬-A)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH6.5
15mM Tris
0.2%(w/v) n-ドデシル-β-D-マルトシド(同仁化学研究所製)
4mM NaNO2
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物(和光純薬工業)、本発明の化合物のいずれか一つ(いずれも東京化成工業、ただしAcid Yellow 34のみMP Biomedicals)、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-A)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH6.5
5.3mg/ml CFP-DH4(A1cOX)
【0135】
イオン交換水で51倍希釈した試料8μlを、96μlの第1試薬-Aに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Aを添加してHbA1cのβ鎖アミノ末端の酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた。希釈試料と第1試薬-Aを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A
694及びA
751)を経時的に測定し、A
694からA
751を引いた値、すなわちA
694/751を求めた。続いて、希釈試料と第1試薬-Aを混合してから4.8分後のA
694/751を(104/128)倍した値を、A
694/751から引いてΔAを算出した。なお、希釈試料と第1試薬-Aを混合してから4.8分後は、第2試薬-Aを添加する直前を表す。希釈試料と第1試薬を混合してから9分後、10分後のΔA(ΔA
9min及びΔA
10min)を表1に示す。また、一例として、比較例2における、A
694/751、ΔA
9min及びΔA
10minの関係性を
図1に示す。
【0136】
【0137】
表1に示した通り、本発明の化合物及び比較例について、ΔA9min及びΔA10minに差は見られない。つまり、希釈試料と第1試薬-Aを混合してから10分後には、HbA1c定量反応、すなわちHbA1cの酸化により生じた過酸化水素の定量反応は完遂していることが分かる。そこで、実施例4および5において、各比較例、及び本発明におけるΔA10minを、それぞれの条件においてHbA1c定量反応が100%進行した時のΔA(ΔA100%)と定義した。
【0138】
[実施例5]本発明の化合物による、HbA1c検出反応促進効果の算出
次に本実施例では、少量のA1cOXを用いて、本発明の化合物による、HbA1c検出反応の促進の度合いを決定した。
【0139】
以下の組成を有するHbA1c測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してHbA1cの測定を実施した。
(試料)
血球(HbA1c 10.4%(NGSP値))
(第1試薬)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH6.5
15mM Tris
0.2%(w/v) n-ドデシル-β-D-マルトシド(同仁化学研究所製)
4mM NaNO2
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表2における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-B)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH6.5
1.1mg/ml CFP-DH4(A1cOX)
【0140】
イオン交換水で51倍希釈した試料8μlを、96μlの第1試薬に添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Bを添加してHbA1cのβ鎖アミノ末端の酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた。希釈試料と第1試薬を混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、希釈試料と第1試薬を混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、希釈試料と第1試薬を混合してから5分後は、第2試薬-Bを添加する直前を表す。
【0141】
次に、本実施例で算出されたΔAを実施例4で定義したΔA100%で割り、HbA1c検出反応の進行度を算出した。希釈試料と第1試薬を混合してから7.5、10分後(換言すると、第2試薬-Bを添加してから2.5、5分後)のHbA1c検出反応の進行度を表2に示す。
【0142】
【0143】
表2に示した通り、Mordant Orange 1、AlizarinYellow GG、Chrome Yellow、DirectYellow 44、Acid Red 151、AcidYellow 36、Xylene Fast Yellow 2G、Acid Yellow 34には、HbA1c検出反応を促進する効果があることが見出された。
【0144】
[実施例6]フルクトシルペプチドオキシダーゼによるフルクトシルバリルヒスチジン検出反応が完遂した場合における吸光度の測定
本実施例ではオキシダーゼの一種であるフルクトシルペプチドオキシダーゼ(FPOX-CET)を過剰量用いて、基質であるフルクトシルバリルヒスチジン検出反応が完遂した場合の吸光度変化量を決定する。
【0145】
以下の組成を有するフルクトシルバリルヒスチジン測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してフルクトシルペプチドオキシダーゼによるフルクトシルバリルヒスチジンの測定を実施した。
(試料)
32μM フルクトシルバリルヒスチジン(キッコーマンバイオケミファ製)
(第1試薬-B)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
0.2%(v/v) Triton X-100(和光純薬工業製)
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-C)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
4.8U/ml FPOX-CET(キッコーマンバイオケミファ製)
【0146】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Bに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Cを添加してフルクトシルバリルヒスチジンの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた。試料と第1試薬-Bを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Bを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Bを混合してから4.8分後は、第2試薬-Cを添加する直前を表す。希釈試料と第1試薬-Bを混合してから9分後、10分後のΔA(ΔA9min及びΔA10min)を表3に示す。
【0147】
【0148】
表3に示した通り、本発明の化合物及び比較例について、ΔA9min及びΔA10minに差は見られない。つまり、希釈試料と第1試薬-Bを混合してから10分後には、フルクトシルバリルヒスチジン定量反応、すなわちフルクトシルバリルヒスチジンの酸化により生じた過酸化水素の定量反応は完遂していることが分かる。そこで、実施例6および7において、各比較例、及び本発明におけるΔA10minを、それぞれの条件においてHbA1c定量反応が100%進行した時のΔA(ΔA100%)と定義した。
【0149】
[実施例7]本発明の化合物による、フルクトシルペプチドオキシダーゼによるフルクトシルバリルヒスチジン検出反応促進効果の算出
次に本実施例では、少量のフルクトシルペプチドオキシダーゼを用いて、本発明の化合物による、フルクトシルバリルヒスチジン検出反応の促進の度合いを決定した。
【0150】
以下の組成を有するフルクトシルバリルヒスチジン測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してフルクトシルバリルヒスチジンの測定を実施した。
(試料)
32μM フルクトシルバリルヒスチジン(キッコーマンバイオケミファ製)
(第1試薬-B)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
0.2%(v/v) Triton X-100(和光純薬工業製)
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-D)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
0.48U/ml FPOX-CET(キッコーマンバイオケミファ製)
【0151】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Bに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Dを添加してフルクトシルバリルヒスチジンの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた試料と第1試薬-Bを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Bを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Bを混合してから5分後は、第2試薬-Dを添加する直前を表す。
【0152】
次に、本実施例で算出されたΔAを実施例6で定義したΔA100%で割り、フルクトシルバリルヒスチジン検出反応の進行度を算出した。試料と第1試薬-Bを混合してから7.5、10分後(換言すると、第2試薬-Dを添加してから2.5、5分後)のフルクトシルバリルヒスチジン検出反応の進行度を表4に示す。
【0153】
【0154】
表4に示した通り、Chrome Yellow、Direct Yellow 44、Xylene Fast Yellow 2G、Acid Yellow 34には、フルクトシルバリルヒスチジン検出反応を促進する効果があることが見出された。
【0155】
[実施例8]フルクトシルアミノ酸オキシダーゼによるフルクトシルバリン検出反応が完遂した場合における吸光度の測定
本実施例ではオキシダーゼの一種であるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD-E)を過剰量用いて、基質であるフルクトシルバリン検出反応が完遂した場合の吸光度変化量を決定する。
【0156】
以下の組成を有するフルクトシルバリン測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してフルクトシルアミノ酸オキシダーゼによるフルクトシルバリンの測定を実施した。
(試料)
32μM フルクトシルバリン(キッコーマンバイオケミファ製)
(第1試薬-C)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
0.2%(v/v) ナイミーンF-215(日油製)
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-E)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
21.4U/ml FAOD-E(キッコーマンバイオケミファ製)
【0157】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Cに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Eを添加してフルクトシルバリンの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた。試料と第1試薬-Cを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Cを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Cを混合してから4.8分後は、第2試薬-Eを添加する直前を表す。希釈試料と第1試薬-Cを混合してから9分後、10分後のΔA(ΔA9min及びΔA10min)を表5に示す。
【0158】
【0159】
表5に示した通り、本発明の化合物及び比較例について、ΔA9min及びΔA10minに差は見られない。つまり、希釈試料と第1試薬-Cを混合してから10分後には、フルクトシルバリン定量反応、すなわちフルクトシルバリンの酸化により生じた過酸化水素の定量反応は完遂していることが分かる。そこで、実施例8および9において、各比較例、及び本発明におけるΔA10minを、それぞれの条件においてHbA1c定量反応が100%進行した時のΔA(ΔA100%)と定義した。
【0160】
[実施例9]本発明の化合物による、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼによるフルクトシルバリン検出反応促進効果の算出
次に本実施例では、少量のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを用いて、本発明の化合物による、フルクトシルバリン検出反応の促進の度合いを決定した。
【0161】
以下の組成を有するフルクトシルバリン測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してフルクトシルバリンの測定を実施した。
(試料)
32μM フルクトシルバリン(キッコーマンバイオケミファ製)
(第1試薬-C)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
0.2%(v/v) ナイミーンF-215(日油製)
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-F)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
2.14U/ml FAOD-E(キッコーマンバイオケミファ製)
【0162】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Cに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Fを添加してフルクトシルバリンの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた試料と第1試薬-Cを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Cを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Cを混合してから5分後は、第2試薬-Fを添加する直前を表す。
【0163】
次に、本実施例で算出されたΔAを実施例8で定義したΔA100%で割り、フルクトシルバリン検出反応の進行度を算出した。試料と第1試薬-Cを混合してから7.5、10分後(換言すると、第2試薬-Fを添加してから2.5、5分後)のフルクトシルバリン検出反応の進行度を表6に示す。
【0164】
【0165】
表6に示した通り、Mordant Orange 1、Alizarin Yellow GG、Chrome Yellow、Disperse Diazo Black 3BFには、フルクトシルバリン検出反応を促進する効果があることが見出された。
【0166】
[実施例10]サルコシンオキシダーゼによるサルコシン検出反応が完遂した場合における吸光度の測定
本実施例ではオキシダーゼの一種であるサルコシンオキシダーゼ(SOD-TE)を過剰量用いて、基質であるサルコシン(N-メチルグリシン)検出反応が完遂した場合の吸光度変化量を決定する。
【0167】
以下の組成を有するサルコシン測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してサルコシンオキシダーゼによるサルコシンの測定を実施した。
(試料)
32μM サルコシン(和光純薬工業製)
(第1試薬-D)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
0.2%(v/v) NP-10(HELM製)
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-G)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
123U/ml SOD-TE(キッコーマンバイオケミファ製)
【0168】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Dに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Gを添加してサルコシンの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた。試料と第1試薬-Dを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Dを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Dを混合してから4.8分後は、第2試薬-Gを添加する直前を表す。希釈試料と第1試薬-Dを混合してから9分後、10分後のΔA(ΔA9min及びΔA10min)を表7に示す。
【0169】
【0170】
表7に示した通り、本発明の化合物及び比較例について、ΔA9min及びΔA10minに差は見られない。つまり、希釈試料と第1試薬-Dを混合してから10分後には、サルコシン定量反応、すなわちサルコシンの酸化により生じた過酸化水素の定量反応は完遂していることが分かる。そこで、実施例10および11において、各比較例、及び本発明におけるΔA10minを、それぞれの条件においてサルコシン定量反応が100%進行した時のΔA(ΔA100%)と定義した。
【0171】
[実施例11]本発明の化合物による、サルコシンオキシダーゼによるサルコシン検出反応促進効果の算出
次に本実施例では、少量のサルコシンオキシダーゼを用いて、本発明の化合物による、サルコシン検出反応の促進の度合いを決定した。
【0172】
以下の組成を有するサルコシン測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してサルコシンの測定を実施した。
(試料)
32μM サルコシン(和光純薬工業製)
(第1試薬-D)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
0.2%(v/v) NP-10(HELM製)
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-H)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH8.0
12.3U/ml SOD-TE(キッコーマンバイオケミファ製)
【0173】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Dに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Hを添加してサルコシンの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた試料と第1試薬-Dを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Dを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Dを混合してから5分後は、第2試薬-Hを添加する直前を表す。
【0174】
次に、本実施例で算出されたΔAを実施例10で定義したΔA100%で割り、サルコシン検出反応の進行度を算出した。試料と第1試薬-Dを混合してから7.5、10分後(換言すると、第2試薬-Hを添加してから2.5、5分後)のサルコシン検出反応の進行度を表8に示す。
【0175】
【0176】
表8に示した通り、Mordant Orange 1、Alizarin Yellow GG、Chrome Yellow、Direct Yellow 44、Acid Red 151、Xylene Fast Yellow 2G、Disperse Diazo Black 3BFには、サルコシン検出反応を促進する効果があることが見出された。
【0177】
[実施例12]コレステロールオキシダーゼによるコレステロール検出反応が完遂した場合における吸光度の測定
本実施例ではオキシダーゼの一種であるコレステロールオキシダーゼ(CHO-CE)を過剰量用いて、基質であるコレステロール検出反応が完遂した場合の吸光度変化量を決定する。
【0178】
以下の組成を有するコレステロール測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してコレステロールオキシダーゼによるコレステロールの測定を実施した。
(試料)
32μM コレステロール(和光純薬工業製)
5.0%(v/v) Triton X-100(和光純薬工業製)
4.0%(w/v) コール酸ナトリウム(和光純薬工業製)
(第1試薬-E)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-I)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
11.6U/ml CHO-CE(キッコーマンバイオケミファ製)
【0179】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Eに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Iを添加してコレステロールの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた。試料と第1試薬-Eを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Eを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Eを混合してから4.8分後は、第2試薬-Iを添加する直前を表す。希釈試料と第1試薬-Eを混合してから9分後、10分後のΔA(ΔA9min及びΔA10min)を表9に示す。
【0180】
【0181】
表9に示した通り、本発明の化合物及び比較例について、ΔA9min及びΔA10minに差は見られない。つまり、希釈試料と第1試薬-Eを混合してから10分後には、コレステロール定量反応、すなわちコレステロールの酸化により生じた過酸化水素の定量反応は完遂していることが分かる。そこで、実施例12および13において、各比較例、及び本発明におけるΔA10minを、それぞれの条件においてコレステロール定量反応が100%進行した時のΔA(ΔA100%)と定義した。
【0182】
[実施例13]本発明の化合物による、コレステロールオキシダーゼによるコレステロール検出反応促進効果の算出
次に本実施例では、少量のコレステロールオキシダーゼを用いて、本発明の化合物による、コレステロール検出反応の促進の度合いを決定した。
【0183】
以下の組成を有するコレステロール測定用試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子製)を利用してコレステロールの測定を実施した。
(試料)
32μM コレステロール(和光純薬工業製)
5.0%(v/v) Triton X-100(和光純薬工業製)
4.0%(w/v) コール酸ナトリウム(和光純薬工業製)
(第1試薬-E)
30mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
10U/ml ペルオキシダーゼ PEO-301(東洋紡)
0.023mM 10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジンナトリウム(DA-67、和光純薬工業製)
0.04%(w/v) 表1における比較例2の化合物、本発明の化合物のいずれか一つ、もしくは化合物を含有しない(比較例1とする)イオン交換水
(第2試薬-J)
10mM MOPS-NaOH緩衝液 pH7.0
2.31U/ml CHO-CE(キッコーマンバイオケミファ製)
【0184】
試料8μlを、96μlの第1試薬-Eに添加して37℃で5分間インキュベートした後、24μlの第2試薬-Jを添加してコレステロールの酸化により生じる過酸化水素の定量反応を37℃で5分間進行させた試料と第1試薬-Eを混合してから10分間の、波長694nm及び751nmの光に対する反応液の吸光度(A694及びA751)を経時的に測定し、A694からA751を引いた値、すなわちA694/751を求めた。続いて、試料と第1試薬-Eを混合してから4.8分後のA694/751を(104/128)倍した値を、A694/751から引いてΔAを算出した。なお、試料と第1試薬-Eを混合してから5分後は、第2試薬-Jを添加する直前を表す。
【0185】
次に、本実施例で算出されたΔAを実施例12で定義したΔA100%で割り、コレステロール検出反応の進行度を算出した。試料と第1試薬-Eを混合してから7.5、10分後(換言すると、第2試薬-Jを添加してから2.5、5分後)のコレステロール検出反応の進行度を表10に示す。
【0186】
【0187】
表10に示した通り、Mordant Orange 1、Alizarin Yellow GG、Chrome Yellow、Acid Red 151、Acid Yellow 36、Acid Yellow 34、Disperse Diazo Black 3BFには、コレステロール検出反応を促進する効果があることが見出された。
【0188】
なお、本発明の反応促進剤は、ペルオキシダーゼが触媒する酵素反応も促進する可能性があるが、本実施例の条件下では、系に過剰量のペルオキシダーゼが添加されており、各種オキシダーゼの酵素反応により生じた過酸化水素は直ちにペルオキシダーゼによって分解されると考えられる。そのため、上記の反応促進の結果は、主として、本発明の反応促進剤が各種オキシダーゼの酵素反応を促進していることに起因するものと考察される。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明のオキシダーゼ反応促進剤を用いることにより、臨床診断用試薬、例えばHbA1c測定試薬、GA測定試薬、サルコシン測定試薬、コレステロール測定試薬等に処方するオキシダーゼの量を低減することができる。また、反応時間を短縮したり、検出感度を高めることができる。
【0190】
[配列表の簡単な説明]
配列番号1 CFP-DH2のアミノ酸配列
配列番号2 CFP-DH2遺伝子の塩基配列
配列番号3 R64G導入用プライマー
配列番号4 R64G導入用プライマー
配列番号5 CFP-DH3のアミノ酸配列
配列番号6 L110Y導入用プライマー
配列番号7 L110Y導入用プライマー
配列番号8 CFP-DH4のアミノ酸配列
【0191】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
【配列表】