(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 27/06 20060101AFI20240325BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240325BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240325BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20240325BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20240325BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240325BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
B24B27/06 M
H01L21/78 F
B24B49/12
B24B55/02 Z
B23Q17/09 C
B23Q17/24 Z
B23Q11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020019976
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智章
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114251(JP,A)
【文献】特開2019-181612(JP,A)
【文献】特開2011-110631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
H01L 21/301
B24B 49/12
B24B 55/02
B23Q 17/09
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転により被加工物を切削する切削ブレードと、
該被加工物を保持する保持テーブルと、
該切削ブレード
の切り刃の刃先と加工送り方向に対面して、該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給ノズルと、を備え、
該切削ブレードの刃先を間に挟んで対向配置された発光素子および受光素子を有し、
該受光素子の受光量に基づいて切削ブレードの破損状態を検出する破損状態検出部と、を備え、
該破損状態検出部は、
該発光素子と該受光素子が、互いの間に該切削水供給ノズルから該切削ブレード
の該切り刃の該刃先に噴射される該切削水
が通る位置に配置され、
該発光素子と該受光素子との対向空間を液体で満たすことを特徴とする切削装置。
【請求項2】
該破損状態検出部は、
該切削水供給ノズルから供給される切削水の流れに沿う流線形状であることを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該切削水は、脱気水であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等の被加工物を切削ブレードで切削して個々のデバイスに分割する切削装置が用いられている。この種の切削装置は、切削中の切削ブレードの切り刃の刃先の破損を検出する破損状態検出部を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示された破損状態検出部は、発光素子と受光素子とを切削ブレードの切り刃の刃先を間に挟んで対向配置し、発光素子から出射された光束を切削ブレードの切り刃の刃先により部分的に遮光させて受光素子で受光させ、受光素子における受光量に基づいて切削ブレードの破損状態を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、切削時には、複数のノズルから切削水を半導体ウエーハの加工部分や切削ブレードに噴射しているため、切削ブレードの回転によって巻き込まれた切削水や飛散された液滴が発光素子と受光素子との対向空間に送り込まれ、これら液滴等と空気との透過率の違いや、屈折率の違いによる光の散乱により受光素子における受光量にブレが生じてしまっていた。したがって、従来の切削装置は、切削中の切削ブレードの破損状態の検出を正確に検出することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削中の切削ブレードの破損の検出を精度よく行える切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、回転により被加工物を切削する切削ブレードと、該被加工物を保持する保持テーブルと、該切削ブレードの切り刃の刃先と加工送り方向に対面して、該切削ブレードに切削水を供給する切削水供給ノズルと、を備え、該切削ブレードの刃先を間に挟んで対向配置された発光素子および受光素子を有し、該受光素子の受光量に基づいて切削ブレードの破損状態を検出する破損状態検出部と、を備え、該破損状態検出部は、該発光素子と該受光素子が、互いの間に該切削水供給ノズルから該切削ブレードの該切り刃の該刃先に噴射される該切削水が通る位置に配置され、該発光素子と該受光素子との対向空間を液体で満たすことを特徴とする。
【0008】
前記切削装置では、該破損状態検出部は、該切削水供給ノズルから供給される切削水の流れに沿う流線形状でも良い。
【0009】
前記切削装置では、該切削水は、脱気水でも良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、切削中の切削ブレードの破損の検出を精度よく行えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された切削装置の脱気水生成部の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示された切削ユニットの要部を下方からみた平面図である。
【
図5】
図5は、
図2中のV-V線で示す断面を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示された切削装置の切削中の状態を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6中のVII-VII線で示す断面を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態2に係る切削装置の切削ユニットの正面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された切削装置の切削ユニットの切削中の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの正面図である。
図3は、
図1に示された切削装置の脱気水生成部の構成を模式的に示す断面図である。
図4は、
図2に示された切削ユニットの要部を下方からみた平面図である。
図5は、
図2中のV-V線で示す断面を模式的に示す断面図である。
図6は、
図1に示された切削装置の切削中の状態を模式的に示す断面図である。
図7は、
図6中のVII-VII線で示す断面を模式的に示す断面図である。
【0014】
(被加工物)
実施形態1では、
図1に示す切削装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)又はサファイア、などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0015】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のQFN(Quad Flat No leaded)パッケージ基板等の樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面204が外周縁に環状フレーム205が装着された粘着テープ206に貼着されて、環状フレーム205に支持されている。
【0016】
(切削装置)
図1に示された実施形態1に係る切削装置1は、被加工物200を保持テーブル10で保持し、切削ブレード21と保持テーブル10とを相対的に移動させて、分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で被加工物200を切削加工する加工装置である。切削装置1は、
図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持する保持テーブル10と、切削ブレード21で保持テーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ユニット20と、保持テーブル10に保持された被加工物200を撮影する図示しない撮像ユニットと、制御ユニット100を備える。
【0017】
また、切削装置1は、
図1に示すように、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対移動させる移動ユニット30を備える。移動ユニット30は、保持テーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする加工送りユニットであるX軸移動ユニット31と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット32と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りする切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット33と、保持テーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット34とを少なくとも備える。
【0018】
X軸移動ユニット31は、保持テーブル10及び回転移動ユニット34を支持した移動プレート12を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット32は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット33は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、保持テーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。回転移動ユニット34は、移動プレート12上に配設されている。
【0019】
X軸移動ユニット31、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及び保持テーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0020】
保持テーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、保持テーブル10は、X軸移動ユニット31により移動プレート12が切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域とに亘って移動自在に設けられることで、X軸方向に移動自在に設けられている。保持テーブル10は、回転移動ユニット34によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。保持テーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源より吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、保持テーブル10は、粘着テープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引、保持する。また、保持テーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム205をクランプするクランプ部13が複数設けられている。
【0021】
切削ユニット20は、切削ブレード21がスピンドル23に装着され、保持テーブル10に保持された被加工物200を切削する切削手段である。切削装置1は、
図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0022】
切削ユニット20は、それぞれ、保持テーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット32によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット33によりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、それぞれ、
図1に示すように、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33により、保持テーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0023】
切削ユニット20は、切削ブレード21と、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられかつ図示しないモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、スピンドルハウジング22の先端面に固定されたブレードカバー24とを備える。
【0024】
切削ブレード21は、スピンドル23の回転により被加工物200を切削する略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、
図2に示すように、円環状の円形基台211と、円形基台211の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃212とを備える所謂ハブブレードである。切り刃212は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。切削ブレード21の切り刃212は、被加工物200を切削すると摩耗する。また、切削ブレード21の切り刃212は、被加工物200の切削中に刃先の一部分が欠けて、刃先に欠け213(
図6に示す)が発生して破損する場合がある。また、本発明では、切削ブレード21は、切り刃212のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0025】
スピンドル23は、モータにより軸心回りに回転することで、切削ブレード21を回転させる。ブレードカバー24は、切削ブレード21の少なくとも上方を覆うものである。ブレードカバー24は、スピンドルハウジング22の先端面に固定されている。
【0026】
また、ブレードカバー24は、シャワーノズル25と、一対のブレードノズル26とを備える。シャワーノズル25は、切削ブレード21に切削水を供給する切削水供給ノズルである。シャワーノズル25は、切削ブレード21の切り刃212の刃先とX軸方向に対面し、切削中に切削ブレード21の切り刃212の刃先に切削水40を供給する。実施形態1では、シャワーノズル25は、切削ブレード21の切り刃212の刃先の下端に向けて切り刃212に近付くのに従って徐々に下方に向かうようにX軸方向とZ軸方向との双方と交差する方向に切削水40を通す。ブレードノズル36は、X軸方向と平行に延在し、互いにY軸方向に間隔をあけて配置されている。ブレードノズル26は、互いの間に切削ブレード21の切り刃212の下端を位置づけており、切削中に切削ブレード21の切り刃212の下端に切削水40を供給する。
【0027】
シャワーノズル25と、一対のブレードノズル26とは、
図2に示す切削水供給源41から脱気水生成部42を通して脱気された切削水40が供給される。即ち、シャワーノズル25及びブレードノズル26が切削ブレード21に供給する切削水40は、溶け込んだ気体が除去(脱気)された脱気水である。実施形態1において、切削水供給源41は、切削水40として純水40-1(
図3に示す)を脱気水生成部42に通した後、ノズル25,26に供給する。
【0028】
脱気水生成部42は、切削水供給源41から供給された純水40-1に溶け込んだ気体を除去(脱気)して、脱気された切削水40をノズル25,26に供給するものである。脱気水生成部42は、
図3に示すように、生成部本体43と、生成部本体43内に複数設けられた中空糸膜44と、吸引源45とを備える。
【0029】
生成部本体43は、切削水供給源41から純水40-1が供給される供給口431と、ノズル25,26に切削水40を供給する排出口432と、外壁を貫通した排気口433とが設けられた容器である。中空糸膜44は、筒状に形成され、供給口431から生成部本体43内に供給された純水40-1を通して排出口432まで導くものである。中空糸膜44は、気体を通すことを許容しかつ液体を通すことを規制する孔が設けられたMF膜又はUF膜により構成されている。なお、MF膜は、精密ろ過膜ともいうろ過膜の一種であり、孔の大きさが概ね50nm以上でかつ10μm以下程度の膜である。UF膜は、限外ろ過膜ともいうろ過膜の一種であり、孔の大きさが概ね0.001μm以上でかつ0.01μm以下の程度の膜である。中空糸膜44は、生成部本体43の内面と間隔をあけて配置されている。吸引源45は、排気口433に接続し、排気口433を通して生成部本体43内の気体を吸引する。
【0030】
脱気水生成部42は、生成部本体43に供給口431を通して供給された純水40-1を中空糸膜44を通して排出口432に導く際に、吸引源45が生成部本体43内の気体を吸引する。脱気水生成部42は、市水30-1に溶け込んだ気体を中空糸膜44を通して排気口433から生成部本体43外に排気して、市水30-1を脱気して、切削水40を生成する。脱気水生成部42は、生成した切削水40をノズル25,26に供給する。
【0031】
なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0032】
撮像ユニットは、保持テーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニットは、保持テーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0033】
また、切削装置1は、保持テーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、保持テーブル10のX軸方向、切削ユニット20の切削ユニット20の切り刃212の下端のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。
【0034】
また、切削装置1は、切削ユニット20のシャワーノズル25に連結用ノズル部材60が接続し、連結用ノズル部材60に
図2、
図4及び
図5に示す破損状態検出部50を備えている。
【0035】
連結用ノズル部材60は、
図2及び
図4に示すように、一端がシャワーノズル25に接続し他端が切削ブレード21の切り刃212の刃先に対向し、内側にシャワーノズル25から切削ブレード21へ供給される切削水40を通す切削水40の流路61が形成されている。連結用ノズル部材60は、流路61内を通った切削水40を切削ブレード21の切り刃212に向けて噴射する。実施形態1では、流路61は、シャワーノズル25が切削水40を切削ブレード21に供給する方向に沿っている。
【0036】
破損状態検出部50は、切削中に切削ブレード21の切り刃212の破損状態を検出するものである。破損状態検出部50は、切削中に、切削ブレード21の切り刃212の破損状態として、切り刃212の外縁から一部分が欠損した欠け213の発生を検出するものである。
【0037】
破損状態検出部50は、
図5に示すように、一対の取り付け片51と、発光素子52及び受光素子53とを有する。一対の取り付け片51は、連結用ノズル部材60の切削ブレード21の切り刃212寄りの他端に一体に設けられているとともに、Y軸方向に間隔をあけて配置されているとともに、互いの間に切削ブレード21の切り刃212の刃先を位置付けている。また、一対の取り付け片51は、互いの間がシャワーノズル25とX軸方向に沿って対向して、互いの間にシャワーノズル25及び連結用ノズル部材60の流路61内を通って噴射される切削水40が通る位置に配置されている。実施形態1において、破損状態検出部50は、一対の取り付け片51が互いの間にシャワーノズル25及び連結用ノズル部材60の流路61から噴射される切削水40が通る位置に配置されていることにより、シャワーノズル25から切削ブレード21の切り刃212に供給される切削水40の流路に配置されている。
【0038】
発光素子52は、一方の取り付け片51に設けられ、受光素子53は、他方の取り付け片51に設けられている。発光素子52及び受光素子53は、Y軸方向に沿って互いに対向する位置に配置されて、切削ブレード21の切り刃212の刃先を間に挟んで対向配置されている。発光素子52は、受光素子53に向けて発光する。受光素子53は、発光素子52が発光した光を受光して受光量に応じた電圧値の信号を制御ユニット100に出力する。実施形態1では、発光素子52が受光する受光量と、受光素子53が制御ユニット100に出力する信号の電圧値とは、比例している。
【0039】
実施形態1では、発光素子52が発光しかつ受光素子53が受光する光の光束54は、
図4及び
図5に示すように、欠け213が発生していない正常時の切削ブレード21の切り刃212の刃先により一部が遮光される。このため、破損状態検出部50の受光素子53が受光する光の受光量は、切削ブレード21の切り刃212の刃先に欠け213が発生すると、欠け213の発生前よりも増加する。このため、受光素子53が受光量に応じて制御ユニット100に出力する信号の電圧値は、切削ブレード21の切り刃212の刃先に欠け213が発生すると、欠け213の発生前よりも高くなる。破損状態検出部50は、受光素子53の受光量に応じた電圧値の信号を制御ユニット100に出力することにより受光素子53の受光量に基づいて切削ブレード21の破損状態を検出する。
【0040】
制御ユニット100は、切削装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものでもある。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の各構成要素に出力する。
【0041】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットと、報知ユニットとに接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニットは、音と光のうち少なくとも一方を発してオペレータに報知する。
【0042】
また、制御ユニット100は、切削装置1の加工動作中、破損状態検出部50の受光素子53からの信号の電圧値が予め記憶した所定値を超えたか否かを判定して、切削ブレード21の切り刃212の刃先に欠け213が発生したか否かを判定する。実施形態1において、制御ユニット100は、切削装置1の加工動作中、破損状態検出部50の受光素子53からの信号の電圧値が所定値以下であると判定すると、切削ブレード21の切り刃212の刃先に欠け213が発生していないと判定して、加工動作を継続する。実施形態1において、制御ユニット100は、切削装置1の加工動作中、破損状態検出部50の受光素子53からの信号の電圧値が所定値を超えたと判定すると、切削ブレード21の切り刃212の刃先に欠け213が発生したと判定して、加工動作を停止し、報知ユニットを動作してオペレータに報知する。
【0043】
前述した構成の切削装置1は、オペレータ等が入力ユニットから入力した加工内容情報を制御ユニット100が受け付け、被加工物200が粘着テープ206を介して搬入出領域の保持テーブル10の保持面11に載置され、オペレータ等からの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作を開始する。加工動作を開始すると、切削装置1は、粘着テープ206を介して被加工物200を保持面11に吸引保持し、クランプ部13で環状フレーム205をクランプし、スピンドル23を軸心回りに回転し、ノズル25,26から切削水40を供給する。切削装置1は、移動ユニット30により搬入出領域から加工領域に向けて保持テーブル10を撮像ユニットの下方まで移動し、撮像ユニットにより保持テーブル10に吸引保持した被加工物200を撮像して、アライメントを遂行する。
【0044】
切削装置1は、加工内容情報に基づいて、移動ユニット30により、切削ブレード21と被加工物200とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させながら
図6に示すように、被加工物200の分割予定ライン202に切削ブレード21を粘着テープ206に到達するまで切り込ませて切削加工する。切削中、切削装置1は、破損状態検出部50の一対の取り付け片51が互いの間にシャワーノズル25及び連結用ノズル部材60の流路61から噴射される切削水40が通る位置に配置されているので、
図7に示すように、発光素子52と受光素子53との対向空間である一対の取り付け片51間が液体である切削水40により満たされる。
【0045】
切削装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、保持テーブル10を加工領域から搬入出領域に向けて移動する。切削装置1は、搬入出領域において保持テーブル10の移動を停止し、保持テーブル10の被加工物200の吸引保持を停止し、クランプ部13のクランプを解除して、加工動作を終了する。
【0046】
以上説明したように、実施形態1に係る切削装置1は、加工動作中即ち切削中、発光素子52と受光素子53との対向空間である一対の取り付け片51間が液体である切削水40により満たされる。このために、切削装置1は、破損状態検出部50の発光素子52が発光した光が受光素子53に受光されるまでに屈折することを抑制できる。その結果、切削装置1は、切削中の切削ブレード21の破損の検出を精度よく行えることができるという効果を奏する。
【0047】
また、切削装置1は、切削ブレード21の切り刃212に切削水40を供給するシャワーノズル25を利用することで破損状態検出部50の発光素子52と受光素子53との対向空間である一対の取り付け片51間を切削水40で満たすことができる。その結果、切削装置1は、一対の取り付け片51間を切削水40で満たすために、ノズル25,26に加え、別途ノズルや配管を用意する必要がなくなり、装置改造の必要がなくなるので、コストを高騰させることなく、切削中の切削ブレード21の破損の検出を精度よく行えることができるという効果を奏する。
【0048】
また、切削装置1は、シャワーノズル25から切削ブレード21の切り刃212に供給される切削水40が脱気水であるので、一対の取り付け片51間に供給された切削水40内に気泡が発生することを抑制することができる。
【0049】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削装置を図面に基づいて説明する。
図8は、実施形態2に係る切削装置の切削ユニットの正面図である。
図9は、
図8に示された切削装置の切削ユニットの切削中の状態を模式的に示す断面図である。なお、
図8及び
図9は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
実施形態2に係る切削装置1は、
図8及び
図9に示すように、連結用ノズル部材60を備えずに、シャワーノズル25が直接切削ブレード21の切り刃212に向けて切削水40を噴射し、破損状態検出部50の一対の取り付け片51が、ブレードカバー24に取り付けられていること以外、実施形態1と同じである。
【0051】
破損状態検出部50の一対の取り付け片51は、Y軸方向に間隔をあけて配置されているとともに、互いの間に切削ブレード21の切り刃212の刃先を位置付けている。また、一対の取り付け片51は、互いの間がシャワーノズル25とX軸方向に沿って対向して、互いの間にシャワーノズル25から噴射される切削水40が通る位置に配置されている。実施形態2において、破損状態検出部50は、一対の取り付け片51が互いの間にシャワーノズル25から噴射される切削水40が通る位置に配置されていることにより、シャワーノズル25から切削ブレード21の切り刃212に供給される切削水40の流路に配置されている。
【0052】
また、破損状態検出部50の一対の取り付け片51は、
図8に示すように、切削ユニット20の正面視において、シャワーノズル25から供給される切削水40の流れに沿う流線形状に形成されている。このように、破損状態検出部50が、シャワーノズル25から供給される切削水40の流れに沿う流線形状であるとは、一対の取り付け片51が、切削ユニット20の正面視において、シャワーノズル25から供給される切削水40の流れに沿う流線形状に形成されていることをいう。
【0053】
実施形態2において、一対の取り付け片51は、シャワーノズル25に近付くのに従って徐々にZ軸方向の幅が小さく形成され、切削ユニット20の正面視における外縁が取り付け片51の外側に向けて凸に湾曲している。取り付け片51は、切削ユニット20の正面視において、外縁に角が形成されていないことにより外縁が湾曲した流線形状に形成されている。
【0054】
実施形態2に係る切削装置1は、加工動作中即ち切削中、実施形態1と同様に、発光素子52と受光素子53との対向空間である一対の取り付け片51間が液体である切削水40により満たされる。その結果、実施形態2に係る切削装置1は、実施形態1と同様に、破損状態検出部50の発光素子52が発光した光が受光素子53に受光されるまでに屈折することを抑制でき、切削中の切削ブレード21の破損の検出を精度よく行えることができるという効果を奏する。
【0055】
また、実施形態2に係る切削装置1は、破損状態検出部50の一対の取り付け片51が切削ユニット20の正面視においてシャワーノズル25から切削ブレード21の切り刃212に供給される切削水40の流れに沿う流線形状に形成され、かつシャワーノズル25に近付くにしたがってZ軸方向の幅が徐々に狭くなる湾曲形状に形成されているので、シャワーノズル25から噴射される切削水40の流れを一対の取り付け片51が乱すことを抑制できる。このために、切削装置1は、破損状態検出部50の一対の取り付け片51間に気泡が生じることを抑制でき、発光素子52が発光した光が受光素子53に受光されるまでに屈折することを抑制できる。その結果、切削装置1は、切削中の切削ブレード21の破損の検出を精度よく行えることができるという効果を奏する。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 切削装置
10 保持テーブル
21 切削ブレード
25 シャワーノズル(切削水供給ノズル)
40 切削水(液体)
50 破損状態検出部
52 発光素子
53 受光素子
200 被加工物