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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】シリコン原料の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/037 20060101AFI20240325BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20240325BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
C01B33/037
C30B29/06 502Z
C01B33/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020042895
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143091
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】松村 尚
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-293688(JP,A)
【文献】特開2011-68554(JP,A)
【文献】特開2002-37617(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
C30B
B08B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン原料を洗浄する洗浄装置において、
前記シリコン原料を洗浄するための洗浄液が入れられた洗浄槽と、前記シリコン原料を収容する容器であって前記洗浄槽に浸漬可能なシリコン原料収容容器とを備え、
前記シリコン原料収容容器は、
少なくとも前記洗浄液に耐性を有する樹脂製容器と、
前記樹脂製容器の内側に配置されたシリコン製板部材とを有することを特徴とするシリコン原料の洗浄装置。
【請求項2】
前記樹脂製容器と前記シリコン製板部材とには、複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載されたシリコン原料の洗浄装置。
【請求項3】
前記シリコン製板部材は、少なくとも1000Ωcmの抵抗率を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたシリコン原料の洗浄装置。
【請求項4】
前記シリコン製板部材には、洗浄するシリコン原料にドーピングされたドーパントと同じ種のドーパントがドーピングされており、
前記シリコン製板部材は、前記シリコン原料の抵抗率より大きい抵抗率を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたシリコン原料の洗浄装置。
【請求項5】
前記シリコン製板部材の厚さは、5mm以上20mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたシリコン原料の洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン原料の洗浄装置に関し、特にシリコン単結晶を製造するために使用されるシリコン原料を洗浄し、金属汚染物質だけでなく炭素汚染物質を除去することのできるシリコン原料の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばチョクラルスキー法によりシリコン単結晶を製造する場合、シリコン製ルツボにシリコン原料を充填し、ルツボ全体を加熱してシリコン原料を溶融し、ルツボ内にシリコン溶融液を形成する。
【0003】
前記シリコン原料としては、シーメンス法により製造された多結晶シリコン、及び/或いは単結晶シリコンを製造する際に製品用ウェーハとはならないコーン部、テール部等が用いられている。これらの原料は切断され、或いは破砕されて凡そ所望の大きさに形成される。
【0004】
ところで、所望の大きさに形成されたシリコン原料は、前記切断や破砕に用いられた金属治具に接触することにより金属不純物が付着して汚染される。そのため従来から前記シリコン原料はシリコン融液とする前に洗浄処理が施されている。
具体的な洗浄方法としては、例えば図5(a)に示すように洗浄槽50に洗浄液Lが充填され、そこに図5(b)に示すようにシリコン原料Sを収容した樹脂製容器51が浸漬され洗浄される。
【0005】
前記シリコン原料の洗浄では、洗浄液として例えばフッ酸、硝酸、或いは過酸化水素水等の薬液が使用されるため、シリコン原料Sを収容する樹脂製容器50としては耐薬液性のテフロン(登録商標)、ポリプロピレン、或いは塩化ビニール等の樹脂が一般に用いられている。
【0006】
しかしながら、前記シリコン原料の収容容器として樹脂材料を使用すると、シリコン原料と樹脂との擦れにより樹脂異物がシリコン原料に付着する。そのため、この原料を溶解した際にシリコン溶融液に炭素成分が混入し、結晶の炭素濃度が上昇するという課題があった。
【0007】
特許文献1に開示される洗浄方法では、多結晶シリコンを界面活性剤、フッ化水素、硝酸、及び水を含む第一混合溶液と接触させる工程、並びに前記工程を経た多結晶シリコンを、過酸化水素水と接触させる工程とを実施することにより、金属不純物だけでなく、炭素成分を低減するようにしている。
【0008】
また、特許文献2に開示されるクリーニング方法では、反応容器中の多結晶シリコンを350℃-600℃の温度で熱処理し、不活性ガス流下で冷却することによりシリコン表面の炭素成分を気化、熱分解し、除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2015-199619号公報
【文献】特開2013-170122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された洗浄方法にあっては、界面活性剤を含むエッチング剤を使用した場合に、界面活性剤に起因する炭素成分を除去することを目的としている。
しかしながら、特許文献1に開示された洗浄方法にあっては、上記したようなシリコン原料と樹脂容器との擦れにより生じる樹脂異物に起因する炭素成分の除去には不十分であるという課題があった。
また、特許文献2に開示される方法にあっては、熱処理のための装置、及び工程が必要となるため、コストが大幅に増加するという課題があった。
【0011】
本発明は上記した事情のもとになされたものであり、その目的は、コストの増加を抑制しつつ、シリコン原料に付着する金属汚染物質、及び炭素成分の低減を効果的に行うことのできるシリコン原料の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた、本発明に係るシリコン原料の洗浄装置は、シリコン原料を洗浄する洗浄装置において、前記シリコン原料を洗浄するための洗浄液が入れられた洗浄槽と、前記シリコン原料を収容する容器であって前記洗浄槽に浸漬可能なシリコン原料収容容器とを備え、前記シリコン原料収容容器は、少なくとも前記洗浄液に耐性を有する樹脂製容器と、前記樹脂製容器の内側に配置されたシリコン製板部材とを有することに特徴を有する。
尚、前記樹脂製容器と前記シリコン製板部材とには、複数の貫通孔が形成されていることが望ましい。
また、前記シリコン製板部材は、少なくとも1000Ωcmの抵抗率を有することが望ましい。
また、前記シリコン製板部材には、洗浄するシリコン原料にドーピングされたドーパントと同じ種のドーパントがドーピングされており、前記シリコン製板部材は、前記シリコン原料の抵抗率より大きい抵抗率を有することが望ましい。
また、前記シリコン製板部材の厚さは、5mm以上20mm以下であることが望ましい。
【0013】
このように構成することにより、シリコン原料収容容器に収容されたシリコン原料を洗浄槽に浸漬して洗浄する際、シリコン原料は、樹脂製容器ではなくシリコン製板部材に接することになるため、従来のように樹脂とシリコン原料とが擦れることがなく、樹脂製異物の発生を防止し、シリコン原料に付着する金属汚染物質、及び炭素成分の低減を効果的に行うことができる。
また、シリコン原料収容容器は、樹脂製容器の内側にシリコン製板部材を配置した構成であり、それにより上記効果を得ることができるため、炭素成分を低減するための装置構成としてのコスト増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コストの増加を抑制しつつ、シリコン原料に付着する金属汚染物質、及び炭素成分の低減を効果的に行うことのできるシリコン原料の洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明のシリコン原料の洗浄装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1のシリコン原料洗浄装置が備えるシリコン原料収容容器の斜視図である。
図3図2は、図1のシリコン原料洗浄装置が備えるシリコン原料収容容器の断面図である。
図4図4は、実施例の結果を示すグラフである。
図5図5(a)、(b)は、従来のシリコン原料の洗浄方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のシリコン原料の洗浄装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1のシリコン原料洗浄装置が備えるシリコン原料収容容器の斜視図であり、図3はその断面図である。
【0017】
図1に示すシリコン原料洗浄装置100は、酸洗浄槽1と、この酸洗浄槽1から排出される洗浄水を浄化して槽に戻す循環路2とを備える。前記循環路2には、プレフィルタ3、ポンプ4、フィルタ5がそれぞれ介設されている。
前記酸洗浄槽1には、フッ化水素水と硝酸の混合液(例えばフッ酸2wt%、硝酸70wt%、水28wt%)が酸洗浄液として充填され、例えば液温25℃に維持されている。
【0018】
また、シリコン原料洗浄装置100は、純水洗浄槽10と、この純水洗浄槽10から排出される排水を浄化して槽に戻す循環路12とを備える。前記循環路20には、プレフィルタ13、ポンプ14、フィルタ15が介設されている。
前記純水洗浄槽10には、精製処理装置11により純水が供給され、例えば水温が25℃に維持されている。
【0019】
また、シリコン原料洗浄装置100は、前記酸洗浄槽1と純水洗浄槽10とに順に浸漬されるシリコン原料収容容器20を備え、このシリコン原料収容容器20は、図示しないアームを有する搬送装置25によって各槽間を移動可能に構成されている。
【0020】
シリコン原料を収容するシリコン原料収容装置20は、図2図3に示すように外側容器を形成する樹脂製容器(例えばPTFE製)21と、この樹脂製容器21の内側の全面に配置されたシリコン製板部材22とを備えている。
前記樹脂製容器21は、酸洗浄槽1に浸漬されることになるため、耐薬液性の例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)により形成されている。
前記樹脂製容器21とシリコン製板部材22とには、複数の貫通孔21a、22aが形成されており、シリコン原料収容容器20が酸洗浄槽1中に浸漬された場合には、前記貫通孔21a、22aから容器20中に浸入し洗浄液によりシリコン原料Sが洗浄されることになる。
【0021】
また、シリコン原料収容容器20に収容されたシリコン原料Sは、樹脂製容器21ではなくシリコン製板部材22に接することになるため、従来のように樹脂とシリコン原料Sとが擦れることがなく、樹脂製異物が発生することを防止することができ、シリコン原料表面への樹脂製異物の付着を大幅に低減することができる。
【0022】
前記シリコン製板部材22は、例えば厚さ5~10mmに形成されている。シリコン製板部材22の厚さが5mmより薄いと板材が割れやすく、洗浄の際にエッチングされて薄くなり、部材のライフが短くなる。一方、シリコン製板部材22の厚さが20mmより厚くなると、シリコン材料の使用量が多くなるため、コストが掛かる上、重量が大きくなり好ましくない。
【0023】
また、前記シリコン製板部材22の抵抗率は、1000Ωcm以上であることが望ましい。これは、抵抗率が1000Ωcm以上であれば、シリコンの板材が擦れて、それにより発生する欠片が混入した場合でも、シリコン単結晶製品の目標とする抵抗率への大きな影響がないためである。
【0024】
また、シリコン原料Sにボロンやリンがドーピングされている場合、シリコン製板部材22の抵抗率は、洗浄するシリコン原料Sの抵抗率以上であり、同じドーパント種であることが望ましい。
尚、シリコン原料にボロンやリンがドーピングされている場合には、高抵抗のシリコン製板部材22でなくてもよい。一般に、高抵抗の単結晶よりもドーピングした単結晶のほうが生産量が多く、シリコン製板部材22を製造するための材料を入手しやすい。
また、シリコン原料Sへのボロンやリンのドーピングの有無にかかわらず、ドーピングがなされていないシリコン製板部材22を用いてもよい。
【0025】
このように構成されたシリコン原料製造装置100においては、先ず、個々の大きさが所望の大きさ(例えばシリコン原料塊の長辺が50mm)に形成された複数のシリコン原料Sが、所定量(例えば30kg)、シリコン原料収容容器20に収容される。
【0026】
シリコン原料Sを収容したシリコン原料収容容器20は、搬送装置25によって酸洗浄槽1に所定時間(例えば5分間)の間浸漬される。ここで、酸洗浄槽1に充填されている酸洗浄液はシリコン原料収容容器20の貫通孔21a、22aを通ってシリコン原料Sに接触し、シリコン原料S表面に付着している金属不純物等を除去する。
また、シリコン原料Sは、樹脂製容器21ではなくシリコン製板部材22に接することになるため、従来のように樹脂とシリコン原料Sとが擦れることがなく、樹脂製異物が発生することが防止される。
【0027】
次いで、シリコン原料収容容器20は、搬送装置25によって酸洗浄槽1から純水洗浄槽10に移動され、純水洗浄槽10に所定時間(例えば5分間)浸漬される。これにより純水がシリコン原料収容容器20の貫通孔21a、22aを通ってシリコン原料Sに接触し、シリコン原料Sが洗浄される。
純水での洗浄処理を終えると、シリコン原料収容容器20は純水洗浄槽10から出され、一連の洗浄処理が終了する。
【0028】
以上のように本実施の形態によれば、シリコン原料収容容器20に収容されたシリコン原料Sを洗浄槽に浸漬して洗浄する際、シリコン原料Sは、樹脂製容器21ではなくシリコン製板部材22に接することになるため、従来のように樹脂とシリコン原料Sとが擦れることがなく、樹脂製異物の発生を防止し、シリコン原料に付着する金属汚染物質、及び炭素成分の低減を効果的に行うことができる。
また、シリコン原料収容容器20は、樹脂製容器21の内側にシリコン製板部材22を配置した構成であり、それにより上記効果を得ることができるため、炭素成分を低減するための装置構成としてのコスト増加を抑制することができる。
【実施例
【0029】
本発明に係るシリコン原料の洗浄装置について、実施例に基づきさらに説明する。本実施例では、前記実施の形態に基づき以下の実験を行った。
【0030】
(実験1)
実験1では、育成したシリコン単結晶の炭素濃度の推移を測定することにより本発明の効果が得られたかを検証した。
【0031】
実施例1では、図2に示した形状のシリコン原料収容装置を製造した。樹脂製容器の内側に配置するシリコン製板部材の厚さは10mmとした。
上記シリコン原料収容容器内に30kgのシリコン原料を収容し、フッ化水素水と硝酸の混合液(例えばフッ酸2wt%、硝酸70wt%、水28wt%)が酸洗浄液として充填された洗浄槽に5分間浸漬した。
【0032】
酸洗浄液での洗浄後、シリコン原料収容容器を純水洗浄槽に所定時間浸漬し、引き上げることによりシリコン原料の洗浄を行った。
このようにしてシリコン原料を複数回洗浄し、シリコン原料を合計400kgとしてルツボにて溶融し、チョクラルスキー法により直径300mmのシリコン単結晶を育成しながら引き上げた。そして、育成したシリコン単結晶の炭素濃度の推移を測定した。
【0033】
比較例1では、シリコン原料を収容する容器内内側にシリコン製板部材を配置せず、シリコン原料が樹脂製容器に接する状態で、シリコン原料の洗浄を行った。その他の条件は、実施例1と同様とし、育成したシリコン単結晶の炭素濃度の推移を測定した。
【0034】
実施例1、比較例1の結果を図4のグラフに示す。
図4のグラフにおいて横軸は固化率、縦軸は炭素濃度(E16atoms/cm)である。
図4のグラフに示すように、シリコン単結晶中の炭素濃度は、比較例1(実線で示す)に対し実施例1(破線で示す)では40%低減したことが確認できた。
具体的には、ネック部形成以降では、炭素汚染が無いと仮定した場合の、初期融液中の炭素濃度に換算すると、比較例1では、5E15atoms/cmに対し、実施例1では、3E15atoms/cmとなり、シリコン原料に付着する炭素異物を低減することにより、2E15atoms/cmの炭素汚染を抑制することができた。
【0035】
(実験2)
実験2では、シリコン原料収容容器に用いるシリコン製板部材の好ましい抵抗率について検証した。
【0036】
実施例2では、シリコン原料収容容器用に、ドーパントをボロンとして抵抗率が1000Ωcmのシリコン製板部材を製造し、そのドーパント濃度を測定した。
実施例2の結果、シリコン製板部材のドーパント濃度は、1.3E13atoms/cmであった。
【0037】
比較例2では、シリコン原料収容容器用に、ドーパントをボロンとして抵抗率が100Ωcmのシリコン製板部材を製造し、そのドーパント濃度を測定した。
比較例2の結果、シリコン製板部材のドーパント濃度は、1.3E14atoms/cmとなり、実施例2の抵抗率1000Ωcmの場合よりもドーパント濃度が高い結果となった。
【0038】
実施例3では、シリコン原料収容容器用に、ドーパントをリンとして抵抗率が1000Ωcmのシリコン製板部材を製造し、そのドーパント濃度を測定した。
実施例2の結果、シリコン製板部材のドーパント濃度は、4.2E12atoms/cmであった。
【0039】
比較例3では、シリコン原料収容容器用に、ドーパントをリンとして抵抗率が100Ωcmのシリコン製板部材を製造し、そのドーパント濃度を測定した。
比較例3の結果、シリコン製板部材のドーパント濃度は、4.2E13atoms/cmとなり、実施例3の抵抗率1000Ωcmの場合よりもドーパント濃度が高い結果となった。
【0040】
シリコン単結晶の抵抗率の目標値は100Ωcm以下に設定することが多い。そのため、シリコン製板部材の抵抗率を少なくとも1000Ωcmに形成することにより(即ち、ドーパント濃度を、抵抗率が100Ωcmのときのドーパント濃度よりも低くすることにより)、シリコン製板材から発生する欠片が混入した場合でも、シリコン単結晶製品の目標とする抵抗率への影響を小さく抑えることができる。
例えば、シリコン製板部材の抵抗率を少なくとも1000Ωcmに形成した場合、30kgのシリコン原料を洗浄処理中にシリコン製板部材が欠損して仮に3kg(10分の1の量)が混入してもシリコン単結晶の濃度の変化を10%以下に抑えることができる。
【0041】
(実験3)
実験3では、シリコン製板部材の好ましい厚さについて検証した。
【0042】
実施例4では、縦横高さが50cm×50cm×50cmの樹脂製容器の内面側に厚さ5mmのシリコン製板部材を配置し、30kgのシリコン原料を入れて洗浄処理を100回実施した。そして、使用後におけるシリコン製板部材の破損率を調べた。
実施例4の結果、破損率は1%であった。
【0043】
比較例4では、厚さ4mmのシリコン製板部材を使用した。その他の条件は実施例4と同じとした。比較例4の結果、破損率は10%であった。
【0044】
実験3の結果、シリコン製板部材の厚さが5mm以上であれば、多数回使用しても欠損率を低く抑えることができると確認した。
尚、シリコン製板部材の厚さが20mmを超えると、材料費がかかり、また、重くなるため、シリコン製板部材の厚さは、5mm以上20mm以下が好ましい。
【0045】
本実施例により、本発明によれば、シリコン原料に付着する炭素成分の低減を効果的に行うことができると確認した。
【符号の説明】
【0046】
1 酸洗浄槽
2 循環路
3 プレフィルタ
4 循環ポンプ
5 フィルタ
20 シリコン原料収容容器
21 樹脂製容器
21a 貫通孔
22 シリコン製板部材
22a 貫通孔
100 洗浄装置
S シリコン原料

図1
図2
図3
図4
図5