(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240325BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240325BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20240325BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 Q
B23K26/53
B23K26/57
(21)【出願番号】P 2020105573
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 奈緒
(72)【発明者】
【氏名】武田 昇
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-035829(JP,A)
【文献】特開2019-075480(JP,A)
【文献】特開2014-221483(JP,A)
【文献】特表2001-501778(JP,A)
【文献】特開2003-218470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B23K 26/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシー基板の表面にバッファ層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウェーハの光デバイス層を移設部材に移し替えてLEDデバイスを製造するデバイスの製造方法であって、
該光デバイスウェーハの光デバイス層の表面に伸縮性を有するテープを貼着するテープ貼着ステップと、
該テープ貼着ステップの前または後に、該光デバイス層に対して透過性を有する波長のレーザービームを該光デバイス層の内部に集光点を位置付けて照射して分割起点を形成する分割起点形成ステップと、
該テープ貼着ステップおよび該分割起点形成ステップの後に、該光デバイスウェーハのエピタキシー基板の裏面側から該エピタキシー基板に対しては透過性を有しバッファ層に対しては吸収性を有する波長のレーザービームを照射し、該バッファ層を破壊するバッファ層破壊ステップと、
該バッファ層破壊ステップの後に、該エピタキシー基板を該光デバイス層から剥離する剥離ステップと、
該剥離ステップの後に、該テープに対して外力を付与することで該光デバイス層を分割起点に沿って分割する分割ステップと、
を含むことを特徴とする、デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の光デバイスウェーハは、例えば、pn接合を構成するn型半導体およびp型半導体を、サファイア(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)等の基板の表面上にエピタキシャル成長させることにより形成される。このように形成された光デバイス層を基板から剥離するレーザーリフトオフという剥離技術が知られている(特許文献1参照)。レーザーリフトオフでは、基板と光デバイス層との界面付近のバッファ層にレーザービームを照射することで変質層を形成し、変質層で基板と光デバイス層とを分離して光デバイス層を実装基板へと移設する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年注目されているμLEDと呼ばれる100μm角以下のサイズのLEDを作成する場合には、予めエッチングによって光デバイス層を分割した後にレーザーリフトオフによって移設基板へと移設している。しかしながら、エッチングしたμLEDに対してレーザービームを照射すると、エッチングにより除去されて光デバイス層が存在しない部分にもレーザービームが照射されるため、熱等の影響によってチッピングやクラック等のダメージが発生してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板を剥離する際の光デバイス層へのダメージを抑制することができるデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のデバイスの製造方法は、エピタキシー基板の表面にバッファ層を介して光デバイス層が積層された光デバイスウェーハの光デバイス層を移設部材に移し替えてLEDデバイスを製造するデバイスの製造方法であって、該光デバイスウェーハの光デバイス層の表面に伸縮性を有するテープを貼着するテープ貼着ステップと、該テープ貼着ステップの前または後に、該光デバイス層に対して透過性を有する波長のレーザービームを該光デバイス層の内部に集光点を位置付けて照射して分割起点を形成する分割起点形成ステップと、該テープ貼着ステップおよび該分割起点形成ステップの後に、該光デバイスウェーハのエピタキシー基板の裏面側から該エピタキシー基板に対しては透過性を有しバッファ層に対しては吸収性を有する波長のレーザービームを照射し、該バッファ層を破壊するバッファ層破壊ステップと、該バッファ層破壊ステップの後に、該エピタキシー基板を該光デバイス層から剥離する剥離ステップと、該剥離ステップの後に、該テープに対して外力を付与することで該光デバイス層を分割起点に沿って分割する分割ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、基板から剥離する際の光デバイス層へのダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るデバイスの製造方法の加工対象の光デバイスウェーハの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す光デバイスウェーハの断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図2に示すテープ貼着ステップの一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示す分割起点形成ステップの一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2に示す分割起点形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示すバッファ層破壊ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示す剥離ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示す分割ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【
図11】
図11は、変形例に係るデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、
図11に示す分割起点形成ステップの一状態を一部断面で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0010】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るデバイスの製造方法について、図面に基づいて説明する。まず、実施形態の加工対象である光デバイスウェーハ1の構成について説明する。
図1は、実施形態に係るデバイスの製造方法の加工対象の光デバイスウェーハ1の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す光デバイスウェーハ1の断面図である。光デバイスウェーハ1は、エピタキシー基板10と、バッファ層20と、光デバイス層30と、を含む。なお、
図2は、実施形態の説明のため、実際よりも光デバイスウェーハ1に対してバッファ層20および光デバイス層30を大きく模式的に示しており、以降の図面についても同様である。
【0011】
エピタキシー基板10は、実施形態において、直径が4インチ(約100mm)程度で厚みが1.2mm~1.5mm程度の円板形状を有するサファイア基板である。エピタキシー基板10の表面11側には、バッファ層20を介して光デバイス層30が形成される。
【0012】
なお、エピタキシー基板10は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)ウェーハであってもよい。CMOSデバイスのチップの大きさは、例えば、8mm~11mm程度である。エピタキシー基板10がCMOSウェーハである場合、CMOSデバイス上に複数の光デバイス層30が形成される。
【0013】
バッファ層20は、実施形態において、厚みが1μm程度の窒化ガリウム(GaN)層である。バッファ層20は、エピタキシー基板10に光デバイス層30を積層する際に、エピタキシー基板10と光デバイス層30の界面付近に形成される。より詳しくは、バッファ層20は、エピタキシー基板10の表面11と光デバイス層30の後述するp型窒化ガリウム半導体層32との間に形成される。
【0014】
光デバイス層30は、エピタキシー基板10の表面11側にバッファ層20を介して積層される。光デバイス層30は、n型窒化ガリウム半導体層31と、p型窒化ガリウム半導体層32と、を含む。n型窒化ガリウム半導体層31は、p型窒化ガリウム半導体層32に対して、光デバイス層30の表面33側に積層される。p型窒化ガリウム半導体層32は、n型窒化ガリウム半導体層31に対して、バッファ層20側に積層される。光デバイス層30は、実施形態において、エピタキシャル成長法によって合計6μm程度、最大10μm程度の厚さで形成される。光デバイス層30は、実施形態において、μLEDとして使用されるものである。
【0015】
光デバイス層30は、実施形態において、表面33に格子状に設定された複数のストリート34と、ストリート34によって区画された領域に形成されたLEDデバイス35と、を有する。光デバイス層30は、ストリート34に沿って分割されて、LEDデバイス35に製造される。LEDデバイス35同士の間隔は、ストリート34の幅と同じであり、実施形態において、5μm程度である。LEDデバイス35の大きさは、ストリート34同士の間隔と同じであり、実施形態において、10μm~20μm程度である。
【0016】
次に、実施形態に係るデバイスの製造方法を説明する。
図3は、実施形態に係るデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。実施形態のデバイスの製造方法は、テープ貼着ステップ101と、分割起点形成ステップ102と、バッファ層破壊ステップ103と、剥離ステップ104と、分割ステップ105と、を含む。
【0017】
(テープ貼着ステップ101)
図4は、
図2に示すテープ貼着ステップ101の一例を示す斜視図である。テープ貼着ステップ101は、光デバイスウェーハ1の光デバイス層30の表面33にテープ40を貼付するステップである。
【0018】
テープ40は、伸縮性を有する。テープ40は、例えば、伸縮性を有する合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ伸縮性および粘着性を有する合成樹脂で構成された糊層と、を含む。
【0019】
図4に示すように、実施形態のテープ貼着ステップ101では、まず、テープ40を、環状フレーム41の裏面側に貼着する。環状フレーム41は、光デバイスウェーハ1の外径より大きな開口を有する。テープ貼着ステップ101では、次に、光デバイスウェーハ1を、環状フレーム41の開口の所定の位置に位置決めし、光デバイス層30の表面33側をテープ40に貼着させる。これにより、光デバイスウェーハ1を、環状フレーム41およびテープ40に固定させる。
【0020】
(分割起点形成ステップ102)
図5は、
図2に示す分割起点形成ステップ102の一例を示す斜視図である。
図6は、
図2に示す分割起点形成ステップ102の一状態を一部断面で示す側面図である。分割起点形成ステップ102は、光デバイス層30に対して透過性を有する波長のレーザービーム50を光デバイス層30の内部に集光点51を位置付けて照射して分割起点を形成するステップである。分割起点形成ステップ102は、テープ貼着ステップ101の前または後に行われる。実施形態の分割起点形成ステップ102は、テープ貼着ステップ101の後に行われる。
【0021】
図5および
図6に示すように、実施形態の分割起点形成ステップ102では、レーザー加工装置300を用いて、光デバイス層30の分割起点となるシールドトンネル36を形成する。レーザー加工装置300は、チャックテーブル310と、レーザービーム照射ユニット320と、撮像ユニット330と、チャックテーブル310とレーザービーム照射ユニット320とを相対的に移動させる移動ユニット340と、を備える。
【0022】
分割起点形成ステップ102では、まず、テープ40を介して光デバイスウェーハ1の光デバイス層30の表面33側を、テープ40を介してチャックテーブル310の保持面311で吸引保持し、環状フレーム41の外周部をクランプ部材312で固定する。次に、移動ユニット340によってレーザービーム照射ユニット320を加工位置まで移動させる。次に、撮像ユニット330で光デバイスウェーハ1のエピタキシー基板10の表面11(
図2参照)側とは反対側の裏面12側を撮像して、ストリート34を検出する。ストリート34が検出されたら、ストリート34と、レーザービーム照射ユニット320の照射部との位置合わせを行うアライメントを遂行する。
【0023】
ここで、レーザービーム照射ユニット320は、
図6に示すように、レーザー発振器321と、光学ミラー322と、集光レンズ323と、を有する。レーザービーム照射ユニット320は、レーザー発振器321により所定の波長のパルス状のレーザービーム50を発振する。レーザービーム照射ユニット320は、レーザー発振器321から発振されたレーザービーム50を、光学ミラー322によってチャックテーブル310で保持した光デバイスウェーハ1のエピタキシー基板10の裏面12に直交する方向に向きを変更する。レーザービーム照射ユニット320は、光学ミラー322で反射されたレーザービーム50を、集光レンズ323によって集光する。レーザービーム照射ユニット320は、出力や周波数等、分割起点形成ステップ102および後述のバッファ層破壊ステップ103におけるレーザービーム50、60の照射条件を調整する。
【0024】
分割起点形成ステップ102では、光デバイス層30に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザービーム50を、光デバイス層30の内部に集光点51を位置付けて照射する。実施形態の分割起点形成ステップ102では、エピタキシー基板10の裏面12側から、エピタキシー基板10に対しても透過性を有する波長のパルス状のレーザービーム50を照射する。実施形態の分割起点形成ステップ102では、光デバイス層30の内部に、厚み方向に細孔と該細孔をシールドする非晶質とからなるシールドトンネル36が形成される。
【0025】
分割起点形成ステップ102では、チャックテーブル310に対してレーザービーム照射ユニット320を相対的に移動させながら、光デバイス層30のストリート34に沿ってレーザービーム50を照射させる。光デバイス層30の内部には、集光点51付近から表面33に向かって細孔と該細孔の周囲に形成された非晶質とが成長して、ストリート34に対応する領域に沿って、所定の間隔でシールドトンネル36が形成される。シールドトンネル36は、レーザービーム50の繰り返し周波数と送り速度とが調整されることによって、互いに隣接する非晶質同士が繋がるように形成される。
【0026】
なお、分割起点形成ステップ102では、例えば、以下の通りにレーザービーム50による加工条件が設定される。
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :10kHz
平均出力 :0.1W
送り速度 :100mm/s
スポット径 :0.5~3μm
【0027】
(バッファ層破壊ステップ103)
図7は、
図2に示すバッファ層破壊ステップ103の一状態を一部断面で示す側面図である。バッファ層破壊ステップ103は、光デバイスウェーハ1のエピタキシー基板10の裏面12側からエピタキシー基板10に対しては透過性を有しバッファ層20に対しては吸収性を有する波長のレーザービーム60を照射し、バッファ層20を破壊するステップである。バッファ層破壊ステップ103は、テープ貼着ステップ101および分割起点形成ステップ102の後に行われる。
【0028】
図7に示すように、実施形態のバッファ層破壊ステップ103では、レーザー加工装置300を用いて、エピタキシー基板10と光デバイス層30との界面付近に形成されるバッファ層20を破壊する。バッファ層破壊ステップ103で用いるレーザー加工装置300は、分割起点形成ステップ102で用いたレーザー加工装置300と同一のものであってもよいし、別のものであってもよい。
【0029】
バッファ層破壊ステップ103では、まず、分割起点形成ステップ102と同様に、テープ40を介して光デバイスウェーハ1の光デバイス層30の表面33側を、チャックテーブル310の保持面311で吸引保持し、環状フレーム41の外周部をクランプ部材312で固定する。なお、バッファ層破壊ステップ103が分割起点形成ステップ102の直後に行われる場合は、既に光デバイスウェーハ1がチャックテーブル310に固定されているため、この工程は省略される。
【0030】
バッファ層破壊ステップ103では、次に、エピタキシー基板10の裏面12側から、エピタキシー基板10に対しては透過性を有し、バッファ層20に対しては吸収性を有する波長のパルス状のレーザービーム60を、バッファ層20の内部に集光点61を位置付けて照射する。バッファ層破壊ステップ103では、バッファ層20に対してレーザービーム60を照射することにより、バッファ層20を破壊する。バッファ層破壊ステップ103は、エピタキシー基板10の全面に対してレーザービーム60の照射を実行する。
【0031】
バッファ層破壊ステップ103では、例えば、以下の通りにレーザービーム60による加工条件が設定される。
波長 :257nm
繰り返し周波数 :50~200kHz
平均出力 :0.1~2W
スポット径 :10~50μm
【0032】
(剥離ステップ104)
図8は、
図2に示す剥離ステップ104の一状態を一部断面で示す側面図である。剥離ステップ104は、エピタキシー基板10を光デバイス層30から剥離するステップである。剥離ステップ104は、バッファ層破壊ステップ103の後に行われる。
【0033】
図8に示すように、バッファ層破壊ステップ103の後の光デバイスウェーハ1は、バッファ層20が除去されている。このため、剥離ステップ104では、エピタキシー基板10を光デバイス層30から自然に剥離させることができる場合もある。剥離しにくい場合は、例えば、公知の方法で超音波を付与したり、エピタキシー基板10と光デバイス層30との間に楔を入れたり等、外力を付与することによって剥離させてもよい。
【0034】
(分割ステップ105)
図9は、
図2に示す分割ステップ105の一状態を一部断面で示す側面図である。
図10は、
図2に示す分割ステップ105の
図9の後の一状態を一部断面で示す側面図である。分割ステップ105は、テープ40に対して外力を付与することで光デバイス層30を分割起点に沿って分割するステップである。分割ステップ105は、剥離ステップ104の後に行われる。
【0035】
図9および
図10に示すように、実施形態の分割ステップ105では、拡張装置400を用いて、テープ40に放射方向に外力を与えることによって光デバイスウェーハ1を分割する。拡張装置400は、チャックテーブル401と、クランプ部材402と、昇降ユニット403と、突き上げ部材404と、コロ部材405と、を備える。突き上げ部材404は、チャックテーブル401の外周かつ同軸に設けられる円筒形状である。コロ部材405は、チャックテーブル401の保持面と同一平面上または僅かに上方、かつ突き上げ部材404の上端に、回転自在に設けられる。
【0036】
図9に示すように、分割ステップ105では、まず、テープ40を介して光デバイス層30の表面33側を、テープ40を介してチャックテーブル401の保持面に載置し、環状フレーム41の外周部をクランプ部材402で固定する。この際、コロ部材405は、環状フレーム41の内縁と光デバイス層30の外縁との間のテープ40に当接する。
【0037】
図10に示すように、分割ステップ105では、次に、昇降ユニット403によって、チャックテーブル401および突き上げ部材404を一体的に上昇させる。この際、テープ40は、外周部が環状フレーム41を介してクランプ部材402で固定されているため、環状フレーム41の内縁と光デバイス層30の外縁との間の部分が面方向に拡張される。さらに、突き上げ部材404の上端に設けられたコロ部材405がテープ40との摩擦を緩和するので、テープ40全体が、面方向に拡張される。この際、環状フレーム41の内縁と光デバイス層30の外縁との間の部分のテープ40は、断面が、環状フレーム41の下面からコロ部材405の上面に向かって直線状になる。
【0038】
分割ステップ105では、テープ40の拡張の結果、テープ40に放射状に引張力が作用する。テープ40に放射状の引張力が作用すると、
図10に示すように、テープ40が貼着された光デバイス層30が、ストリート34に沿ったシールドトンネル36を分割起点にして、個々のLEDデバイス35毎に分割されてチップサイズに個片化される。光デバイス層30がチップサイズのLEDデバイス35に分割された後は、例えば、ピックアップ工程において、周知のピッカーでテープ40からLEDデバイス35がピックアップされる。
【0039】
〔変形例〕
次に、変形例に係るデバイスの製造方法を説明する。
図11は、変形例に係るデバイスの製造方法の流れを示すフローチャートである。変形例のデバイスの製造方法は、分割起点形成ステップ201と、テープ貼着ステップ202と、バッファ層破壊ステップ203と、剥離ステップ204と、分割ステップ205と、を含む。
【0040】
(分割起点形成ステップ201)
図12は、
図11に示す分割起点形成ステップ201の一状態を一部断面で示す側面図である。分割起点形成ステップ201は、実施形態の分割起点形成ステップ102と同様に、光デバイス層30に対して透過性を有する波長のレーザービーム50を光デバイス層30の内部に集光点51を位置付けて照射して分割起点を形成するステップである。変形例の分割起点形成ステップ201は、テープ貼着ステップ202の前に行われる。
【0041】
図12に示すように、変形例の分割起点形成ステップ201では、実施形態の分割起点形成ステップ102と同様に、レーザー加工装置300を用いて、光デバイス層30の分割起点となるシールドトンネル36を形成する。
【0042】
変形例の分割起点形成ステップ201では、まず、光デバイスウェーハ1のエピタキシー基板10の裏面12側を、チャックテーブル310の保持面311で吸引保持して、チャックテーブル310に固定する。次に、移動ユニット340によってレーザービーム照射ユニット320を加工位置まで移動させる。次に、撮像ユニット330で光デバイスウェーハ1の光デバイス層30の表面33側を撮像して、ストリート34を検出する。ストリート34が検出されたら、ストリート34と、レーザービーム照射ユニット320の照射部との位置合わせを行うアライメントを遂行する。
【0043】
変形例の分割起点形成ステップ201では、光デバイス層30の表面33側から、光デバイス層30に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザービーム50を、光デバイス層30の内部に集光点51を位置付けて照射する。変形例の分割起点形成ステップ201では、光デバイス層30の内部に、厚み方向に細孔と該細孔をシールドする非晶質とからなるシールドトンネル36が形成される。
【0044】
変形例の分割起点形成ステップ201では、実施形態の分割起点形成ステップ102と同様に、チャックテーブル310に対してレーザービーム照射ユニット320を相対的に移動させながら、光デバイス層30のストリート34に沿ってレーザービーム50を照射させる。光デバイス層30の内部には、集光点51付近から表面33に向かって細孔と該細孔の周囲に形成された非晶質とが成長して、ストリート34に対応する領域に沿って、所定の間隔で非晶質のシールドトンネル36が形成される。
【0045】
(テープ貼着ステップ202~分割ステップ205)
変形例のテープ貼着ステップ202は、光デバイス層30の表面33にテープ40を貼付する時点で、光デバイス層30にシールドトンネル36が既に形成されていることを除いて、実施形態のテープ貼着ステップ101と同様の手順であるため、説明を省略する。また、変形例のバッファ層破壊ステップ203、剥離ステップ204、および分割ステップ205は、実施形態のバッファ層破壊ステップ103、剥離ステップ104、および分割ステップ105と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0046】
以上説明したように、実施形態および変形例にかかるデバイスの製造方法は、光デバイス層30に対して予めレーザービーム50を照射して光デバイス層30の内部に分割起点を形成し、その後エピタキシー基板10から光デバイス層30を剥離してから拡張してチップサイズのLEDデバイス35へと分割する。すなわち、光デバイス層30の内部に分割起点を形成しているため、バッファ層20を破壊してエピタキシー基板10を剥離する際に、光デバイス層30の内部が露出しておらず、また、光デバイス層30およびバッファ層20が存在しない領域が形成されていない。このため、レーザービーム60をバッファ層20の全面に照射しても、光デバイス層30にダメージを生じさせることを抑制できる。したがって、μLEDデバイスの製造において、ダメージによる品質や歩留まりの低下を抑制できる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0048】
例えば、分割起点形成ステップ102、201において、実施形態および変形例では分割起点としてシールドトンネル36を形成したが、本発明では分割起点としてステルスダイシング加工による改質層を形成してもよい。改質層とは、密度、屈折率、機械的強度またはその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味する。改質層は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、およびこれらの領域が混在した領域等である。改質層は、光デバイス層30の他の部分よりも機械的な強度等が低い。
【0049】
また、分割起点形成ステップ102において、実施形態ではエピタキシー基板10の裏面12側からレーザービーム50を照射したが、本発明ではテープ40越しに光デバイス層30の表面33側からレーザービーム50を照射してもよい。
【0050】
また、分割起点形成ステップ201において、変形例ではエピタキシー基板10の裏面12側を直接チャックテーブル310に吸引保持したが、本発明では裏面12にテープを貼着させて、テープ越しにチャックテーブル310に吸引保持してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 光デバイスウェーハ
10 エピタキシー基板
11 表面
12 裏面
20 バッファ層
30 光デバイス層
31 n型窒化ガリウム半導体層
32 p型窒化ガリウム半導体層
33 表面
34 ストリート
35 LEDデバイス
36 シールドトンネル(分割起点)
40 テープ
50、60 レーザービーム
51、61 集光点