(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】ウェハの処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240325BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240325BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/02 C
H01L21/68 N
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020198491
(22)【出願日】2020-11-30
(62)【分割の表示】P 2019001315の分割
【原出願日】2019-01-08
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】10 2018 200 656.3
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】カール ハインツ プリエヴァッサー
(72)【発明者】
【氏名】星野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー マイヤー
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191297(JP,A)
【文献】国際公開第2018/002035(WO,A2)
【文献】特開2016-76671(JP,A)
【文献】特開2008-78430(JP,A)
【文献】国際公開第2017/036512(WO,A1)
【文献】特開2005-191296(JP,A)
【文献】特開2007-165636(JP,A)
【文献】国際公開第2016/187186(WO,A1)
【文献】特開2009-117441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイス(27)を備えたデバイス領域(2)を一面(1)に有する、ウェハ(W)を処理する方法において、
単一の均質な材料から形成された保護フィルム(4)を準備するステップと、
前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の面(6)に前記単一の均質な材料から形成された保護フィルム(4)を加えるステップであって、前記保護フィルム(4)の表の面(4a)の少なくとも中央領域が、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)と直接接触する、前記ステップと、
前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)に前記保護フィルム(4)を加える間および/または加えた後、前記保護フィルム(4)に外部刺激を加えるステップと、
前記ウェハ(W)の前記一面(1)および/または前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を処理するステップと、
を含み、
前記保護フィルムに外部刺激を加えることにより、前記保護フィルム(4)および前記ウェハ(W)の間に材料結合が形成される、方法。
【請求項2】
少なくとも一つの分割ライン(11)が前記ウェハ(W)の前記一面(1)に形成され、
前記方法は、前記ウェハ(W)の前記一面(1)を処理するステップを含み、
前記ウェハ(W)の前記一面(1)を処理するステップは、
前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って、または、前記ウェハ(W)の全体の厚さを通して、ウェハ材料を除去する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウェハ(W)の前記一面(1)を処理するステップは、
前記ウェハ(W)の一部の厚さのみに沿って、または、前記ウェハ(W)の全体の厚さを通して、ウェハ材料を除去する工程を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウェハ材料は、前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って、機械的に除去される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ウェハ材料は、前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って前記ウェハ(W)を機械的に切断することによって、機械的に除去される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの分割ライン(11)が、前記ウェハ(W)の前記一面(1)に形成され、
前記方法は、前記ウェハ(W)の前記一面(1)を処理するステップを含み、
前記ウェハ(W)の前記一面(1)を処理するステップは、前記ウェハ(W)の前記一面(1)から前記ウェハ(W)にパルスレーザビームを加える工程を含み、前記ウェハ(W)は、前記パルスレーザビームに対して透過性の材料から形成され、前記パルスレーザビームは、所定の状態で、前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って、少なくとも複数の位置に加えられ、前記所定の状態は、前記ウェハ(W)の前記一面(1)から、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の面(6)に向かう方向で、前記ウェハ(W)の前記一面(1)から一定の距離に、前記パルスレーザの焦点が置かれる状態であり、前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って、前記ウェハ(W)において、複数の改質区域を形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェハ(W)の前記一面に少なくとも一つの分割ライン(11)が形成され、
前記方法は、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を処理するステップを含み、
前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハの前記面(6)を処理するステップは、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)から前記ウェハ(W)にパルスレーザビームを加える工程を含み、前記保護フィルム(4)は、前記パルスレーザビームに対して透過性の材料で形成され、前記ウェハ(W)は、前記パルスレーザビームに対して透過性の材料で形成され、前記パルスレーザビームは、所定の状態で、前記少なくとも一つの分割ラインに沿って、少なくとも複数の位置で、前記ウェハ(W)に加えられ、前記所定の状態は、前記ウェハ(W)の前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)から、前記一面(1)に向かう方向で、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)から一定の距離に、前記パルスレーザビームの焦点が置かれる状態であり、前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って、前記ウェハ(W)において、複数の改質区域を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記保護フィルム(4)には接着層(9)が設けられ、
前記接着層(9)は、前記保護フィルム(4)の前記表の面(4a)の周辺領域にのみ設けられ、前記周辺領域は、前記保護フィルム(4)の前記表の面(4a)の前記中央領域を囲み、
前記保護フィルム(4)は、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)に加えられ、前記接着層(9)は、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)の周辺部分のみと接触するようになる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記接着層(9)は、環状の形状、開いた矩形の形状、または、開いた正方形の形状を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記保護フィルム(4)は、拡張可能であり、
前記方法は、
前記ウェハ(W)の前記一面(1)および/または前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を処理した後、前記デバイス(27)を互いに分離するように前記保護フィルム(4)を径方向に拡張させるステップを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数のデバイス(27)を備えたデバイス領域(2)を一面(1)に有するウェハ(W)を処理する方法において、少なくとも一つの分割ライン(11)が前記ウェハ(W)の前記一面(1)に形成され、前記方法は、
前記ウェハ(W)の前記一面(1)から前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って、ウェハ材料を除去するステップと、
単一の均質な材料から形成された保護フィルム(4)を準備するステップと、
前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿ってウェハ材料を除去した後、前記ウェハ(W)上の前記デバイス(27)を覆う為に、前記単一の均質な材料から形成された保護フィルム(4)を前記ウェハ(W)の前記一面(1)に加えるステップであって、前記保護フィルム(4)の表の面(4a)の少なくとも中央領域が前記ウェハ(W)の前記一面(1)と直接接触する、前記ステップと、
前記ウェハ(W)の前記一面(1)に前記保護フィルム(4)を加える間および/または加えた後、前記保護フィルム(4)に外部刺激を加えるステップであって、前記保護フィルム(4)は前記ウェハ(W)の前記一面(1)に付けられる、前記ステップと、
前記保護フィルム(4)に前記外部刺激を加えた後、前記ウェハの厚さを調整するために、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の面(6)を研削するステップであって、前記ウェハ材料は、前記ウェハ(W)の前記厚さの一部のみに沿って除去される、前記ステップと、
前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を研削するステップは、何もウェハ材料が除去されなかった前記ウェハの前記厚さの残部に沿って行われ、前記少なくとも一つの分割ライン(11)に沿って前記ウェハ(W)を分割するステップと、
を含み、
前記保護フィルムに外部刺激を加えることにより、前記保護フィルム(4)および前記ウェハ(W)の間に材料結合が形成される、方法。
【請求項12】
前記保護フィルム(4)は拡張可能であり、
前記方法は、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を研削した後、前記デバイス(27)を互いに分離させるように前記保護フィルム(4)を径方向に拡張させるステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を研削した後、
前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)に接着テープ(30)を付けるステップと、
前記デバイス(27)を互いに分離させるように前記接着テープ(30)を径方向に拡張させるステップと、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を研削した後、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)を研磨するステップを更に含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記保護フィルム(4)には、接着層(9)が設けられ、
前記接着層(9)は、前記保護フィルム(4)の前記表の面(4a)の周辺領域にのみ設けられ、前記周辺領域は、前記保護フィルム(4)の前記表の面(4a)の前記中央領域を囲み、
前記保護フィルム(4)は前記ウェハ(W)の前記一面(1)に加えられ、前記接着層(9)は、前記ウェハ(W)の前記一面(1)の周辺部分とだけ接触するようになる、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
クッション層(13)が、前記表の面(4a)に対して反対側になる前記保護フィルム(4)の裏の面(4b)に付けられる、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ベースシート(7)が、前記クッション層(13)の裏の面に付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ベースシート(7)の表の面(17)が、前記クッション層(13)の前記裏の面と接触し、
前記ベースシートの表の面(17)に対して反対側の、前記ベースシート(7)の裏の面(18)は、前記一面(1)に対して反対側にある前記ウェハ(W)の前記面(6)に対して平行である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記クッション層(13)は、外部刺激によって硬化可能である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記外部刺激は、UV線、熱、電界および/または化学剤である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記クッション層(13)を硬化させるために、前記ウェハ(W)の前記一面(1)に前記保護フィルム(4)を加えた後、前記クッション層(13)に前記外部刺激を加えるステップを更に含む、請求項19
又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記保護フィルム(4)に前記外部刺激を加えるステップは、前記保護フィルム(4)を加熱する工程および/または前記保護フィルム(4)を冷却する工程および/または前記保護フィルム(4)に真空を加える工程および/または前記保護フィルム(4)を光で照射する工程を含む、請求項
1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記保護フィルム(4)は、高分子で形成される、請求項
1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記保護フィルム(4)は、ポリオレフィンで形成される、請求項
23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面に複数のデバイスを備えたデバイス領域を有する、半導体ウェハのようなウェハを処理する方法に関する。
【0002】
【技術的背景】
【0003】
半導体デバイス製造処理では、複数の分割ラインによって区切られた複数のデバイスを備えたデバイス領域と、そのデバイス領域の周りにデバイスが形成されない周辺限界領域とを一面に有するウェハが個々のダイに分割される。この製造処理は、一般的に、ウェハの厚さを調整する研削ステップと、個々のダイを得る為に分割ラインに沿ってウェハを切断する切断ステップとを有する。研削ステップは、デバイス領域が形成されるウェハ表面の反対側にあるウェハ裏面から行われる。さらに、研磨および/またはエッチングのような他の処理ステップも、ウェハの裏面から実行されてもよい。ウェハは、その表面または裏面から分割ラインに沿って切断されてもよい。
【0004】
ウェハに形成されるデバイスを、例えば、破壊、変形および/または破片、ウェハの研削またはウェハの切断による汚染から、保護するため、保護フィルム又はシーティングが、処理前に、ウェハの表面に加えられてもよい。
【0005】
デバイスの、そのような保護は、デバイス領域が不均一表面構造を有する場合、特に重要である。たとえば、ウェハーレベルチップスケールパッケージ(WLCSP)のような既知の半導体デバイス製造方法において、ウェハのデバイス領域は、ウェハの平坦面から突出するバンプのような複数の突出部を備えて形成される。これらの突出部は、例えば、携帯電話やパーソナルコンピュータのような電気機器にダイを組み入れるときに、例えば、個々のダイにおけるデバイスとの電気的接触を確立する為に使用される。
【0006】
そのような電気機器の小型化を達成するには、半導体デバイスの大きさを減少しなければならない。このため、表面にデバイスが形成されたウェハは、前述された研磨ステップで、μm範囲の厚さまで(例えば、20-100μmの範囲で)研削される。
【0007】
知られた半導体デバイス製造処理において、突出部(バンプなど)がデバイス領域に存在する場合、処理(例えば研削処理)中に問題が生じる。特に、これらの突出部の存在により、処理中のウェハの破壊の危険性が著しく高くなる。さらに、ウェハが小さな厚さ(例えば、μm範囲の厚さ)まで研削される場合、ウェハ表面上のデバイス領域の突出部は、ウェハ裏面の変形の原因になり、その結果として生じるダイの品質を危うくする。
【0008】
そのため、保護フィルム又はシーティングの使用は、そのような不均一表面構造を有するデバイス領域を持つウェハを処理するとき、特に重要である。
【0009】
しかしながら、MEMのような傷つきやすいデバイスの場合、フィルム又はシーティングがウェハから引き剥がされるとき、ウェハ上のデバイス構造が、保護フィルム又はシーティング上に形成される接着層の接着力によって損傷される場合があり、あるいは、デバイス上の接着材残渣によって汚染される場合がある。
【0010】
たとえば、ウェハの切断のステップ中、例えば、破壊、変形および/または破片から、ウェハを保護するため、保護フィルム又はシーティングが、処理前に、ウェハの裏面に加えられてもよい。
【0011】
この場合も同様に、フィルム又はシーティングがウェハから剥がされるとき、ウェハは、保護フィルム又はシーティング上に形成された接着層の接着力により損傷される場合があり、或いは、ウェハ上の接着材残渣によって汚染される場合がある。
【0012】
このため、ウェハに対する汚染および損傷の危険性を最小限に抑えることを可能にする、デバイス領域を有するウェハを信頼性良く、更に、効率良く処理する方法が必要である。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明は、ウェハに対する汚染および損傷リスクを最小限に抑えることを可能にする、デバイス領域を有するウェハを処理する信頼性および効率の良い方法を提供することを目的とする。この目標は、請求項1の技術的特徴を備えたウェハ処理方法、請求項9の技術的特徴を備えたウェハ処理方法、請求項19の技術的特徴を備えたウェハ処理方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属形式請求項から続く。
【0014】
本発明は、複数のデバイスを備えたデバイス領域を一面に有するウェハを処理する方法を提供する。この方法は、保護フィルム又はシートを準備するステップおよび保護フィルム又はシートを、一面の反対側にあるウェハの面に加えるステップを含み、保護フィルム又はシートの表の面の少なくとも中央領域が、一面の反対側にあるウェハの面と直接接触する。さらに、当該方法は、保護フィルム又はシートを、一面に対して反対側にあるウェハの面に加える間および/または加えた後、一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルム又はシートが付けられるように、保護フィルム又はシートに外部刺激を加えるステップと、ウェハの一面および/または一面に対して反対側にあるウェハの面を処理するステップとを含む。
【0015】
保護フィルムは、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域が一面に対して反対側にあるウェハの面と直接接触するように、一面に対して反対側にあるウェハの面、即ち、ウェハの裏面に加えられる。そのため、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域および一面に対して反対側にあるウェハの面の間には、何も材料、特に接着材が存在しない。
【0016】
したがって、例えば、ウェハ上の接着層または接着材残渣の接着力による、ウェハの可能な汚染またはウェハに対する可能な損傷の危険性が著しく減少され、排除すら可能である。
【0017】
一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、外部刺激が保護フィルムに加えられ、一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムが付けられる。そのため、保護フィルムをウェハ上の所定位置に保持する、保護フィルムおよびウェハの間の付ける力が、外部刺激を加えることによって発生する。このため、一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを付ける為の追加の接着材料は不要である。
【0018】
特に、外部刺激を保護フィルムに加えることによって、保護フィルムおよびウェハの間に、積極嵌合のような形態嵌合(form fit)及び/又は接着結合のような材料結合(material bond)が形成されてもよい。用語「材料結合」と「接着結合」は、保護フィルムとウェハとの間を、これら2つのコンポーネント間に作用する原子及び/又は分子力によって付けること又は接続することを定める。
【0019】
用語「接着結合」は、これらの原子及び/又は分子力の存在に関し、これらが、保護フィルムをウェハに付ける又は接着するように作用し、保護フィルムとウェハとの間に追加の接着の存在を意味しない。むしろ、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域は、前述されてきたように、一面に対して反対側にあるウェハの面と直接接触する。
【0020】
そのため、本発明の方法は、デバイス領域を有するウェハの信頼性及び効率の良い処理を可能にし、ウェハに対する汚染および損傷リスクを最小限に抑える。
【0021】
ウェハの裏側面は、実質的に平ら、均一面または平らな均一面でもよい。あるいは、ウェハの厚さ方向に沿って、平らなウェハ面から突出する突出部または突起がウェハの裏面に存在してもよい。
【0022】
外部刺激を保護フィルムに加えるステップは、保護フィルムの加熱工程および/または保護フィルムの冷却工程および/または保護フィルムに真空を加える工程および/または例えばレーザビームを使用することによって保護フィルムに光のような放射線を照射する工程を含んでもよく、或いは、これらの工程から成り得る。
【0023】
外部刺激は、化学的化合物および/または電子又はプラズマ照射および/または、圧力、摩擦、超音波を加えることのような機械的処置、および/または静電気を含み、あるいは、これらでもよい。
【0024】
特に好ましくは、保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムを加熱する工程を含み、或いは、この工程から成る。たとえば、保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムを加熱する工程および保護フィルムに真空を加える工程を含んでもよく、あるいは、これらの工程から成り得る。この場合、真空は、保護フィルムを加熱する間および/または加熱する前および/または加熱した後に、保護フィルムに加えられてもよい。
【0025】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが保護フィルムを加熱する工程を含み、或いは、この工程から成る場合、当該方法は、加熱処理の後に保護フィルムの冷却を可能にする工程を更に含んでもよい。特に、保護フィルムは、その初期温度まで、即ち、加熱処理前の温度までの冷却が可能である。保護フィルムは、ウェハの一面(即ち、ウェハ表面)および/または、その一面に対して反対側になるウェハの面(即ち、ウェハ裏面)を処理する前に、例えば、その初期温度まで冷却することを可能にしてもよい。
【0026】
保護フィルムおよびウェハの間の付ける力は、加熱処理によって生じる。ウェハ自体の加熱処理で、さらに/または、保護フィルムを冷却させる後の処理で、保護フィルムをウェハに付けてもよい。
【0027】
例えば、ウェハのトポグラフィを吸収し、たとえば、一面に対して反対側にあるウェハの面上のウェハ面に適合するように、保護フィルムが加熱処理によって柔らかくされてもよい。例えば、その初期温度まで冷却する際、例えば、ウェハに対する形態嵌合および/または材料結合を作るように、保護フィルム又はシートが再び硬化されてもよい。
【0028】
保護フィルムは、180℃以上の温度まで、好ましくは220℃以上の温度まで、より好ましくは250℃以上の温度まで、もっと更に好ましくは300℃以上の温度まで耐熱性があってもよい。
【0029】
保護フィルム又はシートは、30℃~250℃、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは60℃~150℃、更により好ましくは70℃~110℃の範囲内の温度まで加熱されてもよい。特に好ましくは、保護フィルムは、およそ80℃の温度まで加熱される。
【0030】
保護フィルムは、一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、30秒~10分、好ましくは1分~8分、より好ましくは1分~6分、更により好ましくは1分~4分、もっと更により好ましくは1分~3分の時間にわたって加熱されてもよい。
【0031】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが保護フィルムの加熱工程を含み、或いは、この工程から成る場合、保護フィルムは、直接および/または間接的に加熱されてもよい。
【0032】
保護フィルムは、例えば、加熱されたローラ、加熱されたスタンプなどのような熱を加える手段、或いは、熱放射手段を使用して、それに直接熱を加えることによって加熱されてもよい。保護フィルムおよびウェハは、真空チャンバのようなレセプタクル又はチャンバ内に置かれてもよく、レセプタクル又は、保護フィルムを加熱する為にチャンバの内容積が加熱されてもよい。レセプタクル又はチャンバには、熱放射手段が備えられてもよい。
【0033】
保護フィルムは、例えば、一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを加える前および/または加える間および/または加えた後にウェハを加熱することによって、間接的に加熱されてもよい。たとえば、チャックテーブルのような支持体またはキャリアにウェハを配置し、その支持体またはキャリアを加熱することによって、ウェハが加熱されてもよい。
【0034】
たとえば、チャックのような支持体又はキャリアは、30℃~250℃、好ましくは50素~200℃、より好ましくは60℃~150℃、更により好ましくは70℃~110℃の範囲内の温度まで加熱されてもよい。特に好ましくは、支持体又はキャリアは、およそ80℃の温度まで加熱されてもよい。
【0035】
例えば、加熱されたローラ等のような熱を加える手段と、あるいは、保護フィルムの直接加熱およびウェハを通した保護フィルムの間接加熱の為に熱放射手段とを使用することによって、これらの方法が組み合わされてもよい。
【0036】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが保護フィルムの加熱工程を含み、或いは、この工程から成る場合、保護フィルムは、加熱された状態にあるとき、しなやかであり、弾性があり、柔軟性があり、伸ばすことができ、柔らかく、さらに/または、圧縮性があるのが好ましい。このように、保護フィルムが、一面に対して反対側にあるウェハの面上のウェハ面に適合し、例えば、ウェハトポグラフィを吸収することが特に信頼性良く確保できる。以下に更に詳述されるように、ウェハの厚さ方向に沿って突出する、表面ムラ、粗さ、バンプ、光学素子などがウェハの裏面に存在する場合、これは特に有利である。
【0037】
好ましくは、保護フィルムは、冷却の際、ある程度まで硬くされ、或いは、堅くされ、冷却状態で、より剛性があり、さらに/または頑丈になる。このように、ウェハの切断のようなウェハの後処理中に、特に信頼性の良いウェハの保護が確保できる。
【0038】
この方法は、一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを加える間および/または加えた後に、保護フィルムの表の面に対して反対側にある保護フィルムの裏の面に圧力を加えるステップを更に含んでもよい。このように、保護フィルムの表の面は、一面に対して反対側にあるウェハの面に押しつけられる。そのため、保護フィルムが信頼性良くウェハに付けられることが特に効率良く確保できる。
【0039】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが保護フィルムの加熱工程を含む場合、保護フィルムの加熱工程前および/または加熱工程中および/または加熱工程後に、圧力が保護フィルムの裏の面に加えられてもよい。この圧力は、ウェハの表面および/または裏面を処理する前に、保護フィルムの裏の面に加えられてもよい。
【0040】
この圧力は、ローラ、スタンプ、膜などのような圧力を加える手段によって、保護フィルムの裏の面に加えられてもよい。
【0041】
特に好ましくは、加熱されたローラ又は加熱されたスタンプのような組み合わされた熱及び圧力を加える手段が使用されてもよい。この場合、圧力は保護フィルムの裏の面に加えることができるが、同時に、保護フィルムを加熱する。
【0042】
圧力は、後述されるように、真空チャンバ内で保護フィルムの裏の面に加えられてもよい。
【0043】
保護フィルムは、減圧雰囲気、特に、真空下で、ウェハの裏面に加えられ、さらに/または、付けられてもよい。このように、保護フィルムとウェハとの間に何も空洞及び/又は気泡が存在しないことが確保できる。このため、ウェハの表面および/または裏面を処理する間に、例えば、加熱処理に膨張するそのような気泡によるウェハの応力又は歪が避けられる。
【0044】
たとえば、保護フィルムを、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に加えるステップおよび/または付けるステップは、真空チャンバ内で実行されてもよい。特に、保護フィルムは、真空ラミネート装置を使用することによって、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に加え、更に/又は、付けられてもよい。そのような真空ラミネート装置において、ウェハは、ウェハ表面がチャックテーブルの上面と接触してウェハ裏面が上方に向けられる状態で、真空チャンバ内のチャックテーブル上に置かれる。チャックテーブルは、たとえば、加熱されたチャックテーブルでもよい。
【0045】
ウェハ裏面に加えられる保護フィルムは、環状フレームによって、その周辺部分に保持され、真空チャンバ内のウェハ裏面の上方に置かれる。チャックテーブルの上方に位置される真空チャンバの上部と環状フレームには、拡張可能なゴム製膜によって閉じられる空気入口ポートが設けられる。
【0046】
ウェハおよび保護フィルムが真空チャンバにロードされた後、チャンバは排気され、空気がゴム製膜に空気入口ポートを通って供給され、ゴム製膜を排気済みチャンバに拡張させる。このように、ゴム製膜は、保護フィルムをウェハ裏面に押しつけるように真空チャンバ内を下方に移動され、ウェハの周辺部分を保護フィルムで密封し、フィルムをウェハ裏面に押し付ける。このため、そのような突出部又は突起が存在する場合、例えば、突出部又は突起の外形に追従するように、保護フィルムをウェハ裏面に密着させることができる。
【0047】
保護フィルムは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に、保護フィルムを加える間および/または加えた後に、例えば、チャックテーブルを加熱することによって、保護フィルムが加熱されてもよい。
【0048】
続いて、真空チャンバ内の真空が解除され、保護フィルムは、真空チャンバ内の正圧および加熱処理を経て発生される付ける力によって、ウェハの裏面上の、その位置に保持される。
【0049】
あるいは、柔らかいスタンプまたは柔らかいローラ(例えば、加熱された柔らかいスタンプ又は加熱された柔らかいローラ)によってゴム製膜を置き換えることができる。
【0050】
この方法は、ウェハの表面および/または裏面を処理した後、ウェハから保護フィルムを除去するステップを更に含んでもよい。ウェハから保護フィルムを除去する前および/または除去した後、熱のような外部刺激が保護フィルムに加えられてもよい。この場合、除去処理を容易にできる。
【0051】
ウェハは、その表面に、デバイスを持たずデバイス領域の周りに形成される周辺限界領域を更に有することができる。
【0052】
ウェハは、例えば、半導体ウェハ、ガラスウェハ、サファイヤウェハ、アルミナ(Al2O3)のようなセラミックウェハ、石英ウェハ、ジルコニアウェハ、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)ウェハ、ポリカーボネートウェハ、金属(例えば、銅、鉄、鋼、アルミニウムなど)または金属で被覆された材料のウェハ、フェライトウェハ、光学的結晶ウェハ、樹脂(例えば、エポキシ樹脂)、被覆または成形されたウェハなどでもよい。
【0053】
特に、ウェハは、例えば、Siウェハ、GaAsウェハ、GaNウェハ、GaPウェハ、InAsウェハ、InPウェハ、SiCウェハ、SiNウェハ、LT(タンタル酸リチウム)ウェハ、LN(ニオブ酸リチウム)ウェハなどでもよい。
【0054】
ウェハは、単一材料で形成されてもよく、或いは、異なる材料の組合せ(例えば、2種以上の上記識別された材料)で形成されてもよい。たとえば、ウェハは、Siで形成されたウェハ要素がガラスで形成されたウェハ要素に結合されるSi・ガラス結合ウェハでもよい。
【0055】
ウェハは、どのような種類の形状を有してもよい。その上面視において、ウェハは、たとえば、円形状、楕円形状、矩形又は正方形のような多角形状を有してもよい。
【0056】
保護フィルムは、どのような形状を有してもよい。その上面視において、保護フィルム又はシートは、たとえば、円形状、楕円形状、矩形又は正方形のような多角形状を有してもよい。
【0057】
保護フィルムは、ウェハと実質的に同一または同一の形状を有してもよい。
【0058】
保護フィルムは、ウェハの外径より大きな外径を有してもよい。このように、ウェハの処理、取扱いおよび/または搬送が容易になり得る。特に、保護フィルムの外周部分には、後述するように、環状フレームを付けることができる。
【0059】
保護フィルムは、ウェハの外径より小さな外径を有してもよい。
【0060】
保護フィルムは、ウェハの外径と実質的に同一の外径を有してもよい。
【0061】
この方法は、保護フィルムを切断するステップを更に含んでもよい。ウェハの外径より大きな外径あるいはウェハの外径より小さい外径あるいはウェハの外径と実質的に同一の外径を有するように、保護フィルムが切断されてもよい。
【0062】
保護フィルムを切断するステップは、ウェハに保護フィルムを加える前または加えた後に行われてもよい。
【0063】
保護フィルムを切断するステップは、保護フィルムをウェハに付ける前または付けた後に行われてもよい。
【0064】
この方法は、保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップを更に含んでもよい。特に、保護フィルムの外周部分は、保護フィルムが環状フレームの開口部、即ち、環状フレームの内径内側領域を閉じるように、環状フレームに付けられてもよい。このように、保護フィルム、特にその中央部分に付けられるウェハは、保護フィルムを通じて環状フレームによって保持される。そのため、ウェハ、保護フィルム及び環状フレームを備えるウェハユニットが形成され、ウェハの処理、取扱い、及び/又は、運搬を容易にする。
【0065】
保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップは、保護フィルムをウェハに加える前または加えた後に行われてもよい。
【0066】
保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップは、保護フィルムをウェハに付ける前または付けた後に行われてもよい。
【0067】
保護フィルムの外周部分を環状フレームに付けるステップは、ウェハの表面および/または裏面を処理する前または処理した後に行われてもよい。
【0068】
少なくとも一つの分割ラインがウェハの一面に形成されてもよい。複数の分割ラインがウェハの一面に形成されてもよい。一つ又は複数の分割ラインは、デバイス領域に形成されたデバイスを区切る。
【0069】
少なくとも一つの分割ラインの幅は、30μmから200μm、好ましくは30μmから150μm、より好ましくは30μmから100μmの範囲内にあってもよい。
【0070】
この方法は、ウェハの一面、即ち、ウェハ表面を処理するステップを含んでもよい。ウェハの一面を処理するステップは、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハの材料を除去する工程を含み、或いは、この工程から成り得る。複数の分割ラインがウェハの一面に形成される場合、ウェハの一面を処理するステップは、複数の分割ラインの各々に沿ってウェハの材料を除去する工程を含み、或いは、この工程から成り得る。
【0071】
ウェハの材料は、ウェハの厚さ全体にわたって少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。この場合、ウェハは、ウェハの材料を除去する工程によって、少なくとも一つの分割ラインに沿って、複数のチップ又はダイへと分割される。
【0072】
あるいは、ウェハの材料は、ウェハの厚さの一部だけに沿って、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。たとえば、ウェハの材料は、ウェハの厚さの20%以上に沿って、30%以上に沿って、40%以上に沿って、50%以上に沿って、60%以上に沿って、70%以上に沿って、80%以上に沿って、90%以上に沿って、除去されてもよい。
【0073】
この場合、ウェハを分割する処理、即ち完全に分割する処理は、たとえば、破壊処理を採用することによって、ウェハに外力を加えること(例えば拡張テープの使用)によって、機械的切断又はダイシング処理、レーザ切断又はダイシング処理またはプラズマ切断又はダイシング処理のような切断またはダイシング処理を採用することによって、実行されてもよい。たとえば、外力は、径方向に保護フィルムを拡張させることによって、即ち、保護フィルムを拡張テープとして使用することによって、ウェハに加えられてもよい。さらに、2つ以上の、これらの処理の組合せが使用されてもよい。
【0074】
さらに、ウェハは、以下に更に詳述されるように、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を研削することによって分割されてもよい。
【0075】
ウェハ材料は、少なくとも一つの分割ラインに沿って機械的に除去されてもよい。特に、ウェハの材料は、例えばブレード又は鋸によって少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハを機械的に切断することによって、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。この場合、ウェハは、その表面から切断される。
【0076】
代替または追加で、ウェハ材料は、レーザ切断および/またはプラズマ切断によって、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。
【0077】
ウェハは、単一の機械的切断ステップ、単一のレーザ切断ステップ、単一のプラズマ切断ステップで切断されてもよい。あるいは、ウェハは、連続した機械的切断ステップおよび/またはレーザ切断ステップおよび/またはプラズマ切断ステップによって切断されてもよい。
【0078】
レーザ切断は、更に後述されるように、たとえば、アブレーションレーザ切断によって、および/またはステルスレーザ切断によって、即ち、レーザビームを加えることによってウェハ内部に改質区域を形成することによって、および/またはレーザビームを加えることによってウェハ内に複数のホール区域を形成することによって、行われてもよい。これらのホール区域の各々は、ウェハの表面に開いた改質区域内の空間と改質区域とから構成されてもよい。
【0079】
保護フィルムをウェハ裏面に付けることによって、切断ステップ中に加えられる圧力が、切断中にウェハの至る所で、一様かつ均質に分布されることが確保されるので、切断ステップにおいて、ウェハに対する損傷(例えば、結果として生じるチップ又はダイの側壁の割れ)の危険性を減少または排除さえする。
【0080】
この方法は、ウェハの一面を処理するステップを含み、ウェハの一面を処理するステップは、ウェハの一面からウェハにパルスレーザビームを加える工程を含み、或いは、この工程から成り、ウェハはパルスレーザに対して透過性である材料から形成され、パルスレーザビームは、一定の状態で、少なくとも分割ラインに沿って、少なくとも複数の位置でウェハに加えられ、その状態は、ウェハの一面から、一面に対して反対側にあるウェハの面に向かう方向で、ウェハの一面から一定の距離に、パルスレーザの焦点が置かれる状態であり、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハには複数の改質区域を形成する。
【0081】
この場合、ウェハは、パルスレーザビームに対して透過性である材料から形成される。そのため、複数の改質区域が、ウェハを通してレーザビームの透過を可能にする波長を有するパルスレーザビームを加えることによって、ウェハに形成される。たとえば、ウェハがSiウェハである場合、パルスレーザビームは、1.0μm以上の波長を有してもよい。
【0082】
パルスレーザは、たとえば1ns~300nsの範囲内のパルス波長を有してもよい。
【0083】
改質区域は、アモルファス区域、または割れが形成された区域を含んでもよく、或いは、アモルファス区域、または割れが形成された区域であってもよい。特に好ましい実施形態において、改質区域は、アモルファス区域を含み、或いは、アモルファス区域である。
【0084】
各々の改質区域は、空間(例えば空洞)をウェハ材料の内側に含んでもよく、空間は、アモルファス区域または割れが形成された区域によって囲まれる。
【0085】
各々の改質区域は、ウェハ材料の内側の空間(例えば空洞)から構成され、アモルファス区域、または割れが形成された区域は、空間を囲んで形成される。
【0086】
改質区域が、割れが形成される区域、即ち、割れが形成されていた区域を含み、或いは、これらの区域である場合、これらの割れは、微細割れでもよい。割れの寸法(例えば長さおよび/または幅)は、μm範囲内であろう。たとえば、割れは、5μm~100μmの範囲内の幅および/または100μm~1000μmの範囲内の長さを有するであろう。
【0087】
この方法によると、パルスレーザビームは、少なくとも一つの分割ラインに沿って、少なくとも複数の位置で、ウェハの一面からウェハに加えられるので、少なくとも一つの分割ラインに沿って、ウェハに複数の改質区域を形成する。これらの改質区域を形成することによって、改質区域が形成される領域において、ウェハの強度が減少される。このため、複数の改質区域が形成された場所で少なくとも一つの分割ラインに沿って、ウェハの分割が大いに容易にされる。そのようなウェハ分割処理において、ウェハのデバイス領域に設けられた個々のデバイスは、チップ又はダイとして得られる。
【0088】
この方法は、ウェハに複数の改質区域を形成した後、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハを分割するステップを更に含む。ウェハを分割する処理は、様々な方法で実行されてもよく、例えば、破壊処理の採用、たとえば、拡張テープを使用してウェハに外力を加えること、あるいは、機械的切断又はダイシング処理、レーザ切断又はダイシング処理、プラズマ切断又はダイシング処理のような切断又はダイシング処理の採用がある。たとえば、外力は、保護フィルムを径方向に拡張させること、即ち、拡張テープとして保護フィルムを使用することによって、ウェハに加えられてもよい。さらに、2つ以上の、これらの処理が使われてもよい。
【0089】
この方法は、一面に対して反対側にあるウェハの面を処理するステップを含んでもよい。一面に対して反対側にあるウェハの面を処理するステップは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面から、ウェハにパルスレーザビームを加える工程を含み、或いは、この工程から成り、保護フィルムは、パルスレーザビームに対して透過性の材料から形成され、ウェハは、パルスレーザビームに対して透過性の材料から形成され、パルスレーザビームは、一定の状態で、少なくとも一つの分割ラインに沿って、少なくとも複数の位置で、ウェハに加えられ、この状態は、ウェハの一面に対して反対側にある面から、ウェハの一面に向かう方向で、ウェハの一面に対して反対側にある面から一定の距離に、パルスレーザの焦点が置かれる状態であり、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハに複数の改質区域を形成する。
【0090】
ウェハの裏面から加えられたパルスレーザビームは、ウェハの表面から加えられたものと同一のパルスレーザビームでもよく、或いは、異なったパルスレーザビームでもよい。
【0091】
ウェハの裏面からパルスレーザビームを加えることによって形成された改質区域は、ウェハの表面からパルスレーザビームを加えることによって形成される改質区域と実質的に同一の方法で形成されてもよい。
【0092】
保護フィルムは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に加えられてもよく、一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムの前の面が接触する全体区域において、保護フィルムの前の面は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面と直接接触する。そのため、保護フィルムの前の面および一面に対して反対側にあるウェハの面の間には、材料、特に、接着材が何も存在しない。
【0093】
このように、例えば、ウェハ上の接着層又は接着材残渣によるウェハの可能な汚染、ウェハに対する可能な損傷を信頼性良く排除できる。
【0094】
あるいは、保護フィルムには接着層が設けられてもよく、接着層は、保護フィルムの前の面の周辺領域にのみ設けられ、周辺領域は保護フィルムの前の面の中央領域を囲み、保護フィルムは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に加えられるので、接着層は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面の周辺部分とだけ接触するようになる。ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面の周辺部分は、ウェハの一面に形成された周辺限界領域に対応してもよい。
【0095】
このように、保護フィルムをウェハに付けるステップは、更に改善される。接着層は保護フィルムの表の面の周辺領域だけに設けられることから、接着層によって保護フィルムおよびウェハが互いに付けられる領域は、接着層が保護フィルムの前の面の全体に設けられる場合と比較して、著しく減少される。そのため、保護フィルムは、より簡単にウェハから剥がすことができ、ウェハ、特に、その裏面に形成された突出部に対する損傷は、相当に減少される。
【0096】
接着層の接着材は、熱、UV線、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。このように、処理の後、ウェハから保護フィルムを特に簡単に除去できる。外部刺激は、接着材に、その接着力を低減するように、即ち、保護フィルムの簡単な除去を可能にする為に、加えられてもよい。
【0097】
たとえば、接着層は、実質的に環状形状、開いた(open)矩形の形状または開いた正方形の形状(即ち、接着層の中央に開口を備えた矩形又は正方形の形状)を有してもよい。
【0098】
保護フィルムは、拡張可能である。保護フィルムは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に加えられるときに拡張されてもよい。突出部が、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に存在する場合、保護フィルムは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に加えられるときに、これらの突出部の外形に密着または少なくとも部分的に追従するように拡張されてもよい。
【0099】
特に、保護フィルムは、その当初の大きさの2倍以上、好ましくは、その当初の大きさの3倍以上、より好ましくは、その当初の大きさの4倍以上まで拡張可能であってもよい。このように、特に、その当初の大きさの3倍または4倍以上の拡張の場合、保護フィルムが突出部の外径に追従することが信頼性良く確保できる。
【0100】
保護フィルムが拡張可能である場合、デバイスを互いに分離する為に使用されてもよい。特に、当該方法は、ウェハの一面および/または一面に対して反対側にあるウェハの面を処理した後、デバイスを互いに分離する為に、保護フィルムを径方向に拡張させるステップを更に含んでもよい。
【0101】
たとえば、ウェハは、例えば、機械的切断処理、レーザ切断処理またはプラズマ切断処理によって、あるいは、研削処理前のダイシングによって、完全に分割されてもよい。その後、完全に分割されたデバイスは、チップ又はダイの形でもよいが、これらは、保護フィルムを径方向に拡張させることによって、お互いから遠ざかるように移動されてもよく、これによって、隣接したデバイス間の距離が増加する。
【0102】
あるいは、ウェハは、ステルスダイシング処理、即ち、前述されてきたように、レーザビームを加えることによって改質区域がウェハ内部に形成される処理を受けてもよい。その後、ウェハは、保護フィルムを径方向に拡張させることによって改質区域が形成された場所で、少なくとも分割ラインに沿って、分割(例えば破損)されてもよく、これによって、個々のチップ又はダイを得る。
【0103】
保護フィルムを径方向に拡張させるステップの代替として、別個の拡張テープが、例えば、保護フィルムを除去した後に、ウェハの裏面に付けられてもよい。その後、デバイスは、径方向に拡張テープを拡張させることによって、お互いから分離されてもよい。
【0104】
保護フィルムは、単一の材料、特に、単一の均質な材料から形成されてもよい。
【0105】
保護フィルムは、高分子のようなプラスチック材料から形成されてもよい。特に好ましくは、保護フィルムはポリオレフィンから形成される。たとえば、保護フィルムは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)又はプリブチレン(PB)で形成されてもよい。
【0106】
特に、外部刺激を保護フィルムに加えるステップが、保護フィルムの加熱工程を含み、或いは、この工程から成る場合、ポリオレフィンフィルムは、本発明のウェハ処理方法で使用する為に特に有利な材料特性を有する。ポリオレフィンは、60℃~150℃の範囲内の温度まで加熱された状態のとき、しなやかで、伸ばすことができ、柔らかい。そのため、保護フィルムが、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面上のウェハ面に適合すること(たとえば、ウェハのトポグラフィを吸収すること)を特に信頼性良く確保できる。ウェハの裏面が、ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起で形成される場合、これは特に有利である。
【0107】
さらに、ポリオレフィンフィルムは、冷却された状態で、より剛性があり、頑丈になるように、冷却の際に硬化し堅くなる。このため、ウェハの切断のようなウェハの後処理中、特に信頼性の良いウェハの保護を確保できる。
【0108】
保護フィルムは、5~200μm、好ましくは8~100μm、より好ましくは10~80μm、更により好ましくは12~50μmの範囲の厚さを有してもよい。特に好ましくは、保護フィルム又はシートは、80~150μmの範囲の厚さを有する。
【0109】
このように、保護フィルムが、ウェハの裏面上に形成された突出部の外形と有効に適合するのに十分な柔軟性としなやかさを有し、そのような突出部が存在する場合、同時に、ウェハの表面および/または裏面を処理する間、ウェハを信頼性および効率良く保護する為に、十分な厚さを呈することが、特に信頼性良く確保できる。
【0110】
クッション層は、保護フィルムの前の面に対して反対側の保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0111】
表面ムラまたは粗さ、バンプ、光学素子(例えば、光学レンズ)、他の構造体などのような突出部又は突起が、ウェハの厚さ方向に沿ってウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面から延びまたは突出する場合、このアプローチは特に有利である。この場合、突出部又は突起は、ウェハ裏面のトポグラフィ又は表面構造体を定め、この面を不均一にする。
【0112】
クッション層が保護フィルムの裏の面に付けられる場合、そのような突出部はクッション層に埋め込まれ得る。このため、切断のようなウェハの後処理における突出部の存在から生じる表面ムラの否定的影響を排除することができる。特に、クッション層は、切断処理中、圧力の、特に一様かつ均質な分布を達成する為に著しく役立ち得る。
【0113】
クッション層に突出部を埋め込むことによって、たとえば、光学素子または他の構造体のような突出部は、ウェハ処理中(たとえば、後の切断ステップにおいて)どんな損傷からも信頼性良く保護される。
【0114】
クッション層の材料は、特に限定されない。特に、ウェハの厚さ方向に沿って突出する突出部が内部に埋め込まれることを可能にする材料の種類からクッション層が形成されてもよい。たとえば、クッション層は、樹脂、接着材、ゲルなどから形成されてもよい。
【0115】
クッション層は、UV線、熱、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。この場合、クッション層は、外部刺激を加える際、少なくとも一定の程度まで硬くなる。たとえば、クッション層は、硬化性樹脂、硬化性接着材、硬化性ゲルなどで形成されてもよい。
【0116】
クッション層は、硬化後、ある程度の圧縮性、弾性および/または柔軟性を呈するように、即ち、圧縮性、弾性および/または柔軟性を持つように構成されてもよい。たとえば、クッション層は、硬化によってゴムのような状態にもたらされるものでもよい。あるいは、クッション層は、硬化後、剛性があり、硬い状態に達するように構成されてもよい。
【0117】
本発明の方法においてクッション層として使用されるUV硬化性樹脂の好ましい実施例は、DISCO株式会社によるResiFlatとDENKAによるTEMPLOCである。
【0118】
本発明の方法は、ウェハの処理(例えば、切断)前に、クッション層を硬化させるようにクッション層に外部刺激を加えるステップを更に含んでもよい。このように、切断中のウェハの保護および切断精度を更に改善できる。
【0119】
クッション層は、180℃以上の温度まで、好ましくは220℃以上の温度まで、より好ましくは250℃以上の温度まで、更により好ましくは300℃の温度まで耐熱性があってもよい。
【0120】
クッション層は、10~300μm、好ましくは20~250μm、より好ましくは50~200μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0121】
クッション層は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを加える前に保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0122】
この場合、保護フィルムおよびクッション層は、最初に積層され、クッション層と、クッション層に付けられた保護フィルムとを備える保護シーティングを形成してもよい。このように形成された保護シーティングは、例えば、ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起が保護フィルムによって覆われ、保護フィルム及びクッション層に埋め込まれるように、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に後で付けられてもよい。保護シーティングは、ウェハの一面に対してクッション層の裏の面が実質的に平行になるように、加えられてもよい。保護フィルムの表の面は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に保護シーティングが加えられるとき、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に加えられる。
【0123】
このように、ウェハ処理法を、特に単純かつ効率良い方法で実行できる。たとえば、保護シーティングは、予め準備され、後の使用の為に貯蔵され、必要なときにウェハ処理の為に使用され得る。そのため、保護シーティングは、大量に製造されてもよく、その生産を、時間および費用の点で特に効率良くさせる。
【0124】
クッション層は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを加えた後、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0125】
この場合、例えば、ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起が保護フィルムおよびクッション層に埋め込まれ、クッション層の裏の面がウェハの一面と実質的に平行になるように、最初に、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムが加えられ、その後、保護フィルムが加えられた、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面は、クッション層の表の面に付けられる。このアプローチは、特に、ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起に関して、保護フィルムが、特に高精度で、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に付けられることを可能にする。
【0126】
クッション層は、ウェハの一面に保護フィルムを付ける前および/または付ける間および/または付けた後に、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0127】
この方法は、ウェハから保護フィルムおよびクッション層を取り外すステップを更に含んでもよい。保護フィルムおよびクッション層は、ウェハの、切断のような処理の後にウェハから取り外されてもよい。
【0128】
クッション層および保護フィルムは、個々に(即ち、次々と)取り外されてもよい。たとえば、クッション層が最初に取り外され、その後、保護フィルムが取り外されてもよい。あるいは、クッション層および保護フィルムが一緒に取り外されてもよい。
【0129】
保護フィルムに付けられたクッション層の表の面に対して反対側のクッション層の裏の面に、ベースシートが付けられてもよい。
【0130】
ベースシートの材料は、特に限定されない。ベースシートは、たとえば、高分子材料のような、柔らかく、しなやかな材料(たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニルコポリマ(EVA)又はポリオレフィン)で形成されてもよい。
【0131】
あるいは、ベースシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはシリコンおよび/またはガラスおよび/またはステンレス鋼(SUS)のような剛性又は硬い材料で形成されてもよい。
【0132】
たとえば、ベースシートがポリエチレンテレフタレート(PET)またはガラスで形成され、クッション層が外部刺激によって硬化可能である場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はガラスを透過可能な放射線(例えば、UV線)でクッション層が硬化されてもよい。ベースシートがシリコン又はステンレス鋼(SUS)で形成される場合、費用効果に優れたベースシートが設けられる。
【0133】
また、ベースシートは、前述した材料の組合せで形成されてもよい。
【0134】
ベースシートは、180℃以上の温度まで、好ましくは220℃以上の温度まで、より好ましくは250℃以上の温度まで、更により好ましくは300℃以上の温度まで、耐熱性があってもよい。
【0135】
ベースシートは、30~1500μm、好ましくは40~1200μm、より好ましくは50~1000μmの範囲の厚さを有してもよい。
【0136】
クッション層およびベースシートは、保護フィルムをウェハの裏面に加える前または加えた後に、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0137】
特に、保護フィルムおよびクッション層およびベースシートを最初に積層し、ベースシート、クッション層、クッション層に付けられた保護フィルムを備える保護シーティングを形成してもよい。このように形成された保護シーティングは、その後、ウェハの裏面に加えられてもよい。
【0138】
ベースシートの表の面は、クッション層の裏の面に接触してもよく、ベースシートの表の面に対して反対側にあるベースシートの裏の面は、ウェハの一面に対して実質的に平行であってもよい。そのため、ウェハの一面を処理(例えば切断)するとき、例えば、この裏の面をチャックテーブル上に配置することによって、最適なカウンタ圧力をベースシートの裏の面に加えることができる。
【0139】
この場合、ベースシートの平坦な裏の面はウェハの表面に対して実質的に平行になっていることから、切断処理のような処理中(例えば、切断装置の切断又はダイシングブレードによって)ウェハに加えられる圧力は、ウェハにわたって、均一かつ均質に分布されるので、ウェハの破壊の危険性を最小にする。さらに、ウェハの表面およびベースシートの平らな均一な裏の面との実質的に平行な整列は、高精度で切断ステップを実行することを可能にするので、良好に規定された形状およびサイズの高品質ダイ又はチップの生産を達成する。
【0140】
この方法は、特に、保護フィルムをウェハに加える前に、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を、研削および/または研磨および/またはエッチング(例えばプラズマエッチング)するステップを更に含んでもよい。ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面は、ウェハの厚さを調整する為に研削されてもよい。
【0141】
本発明は、複数のデバイスを備えたデバイス領域を一面に有するウェハを処理する方法であって、少なくとも一つの分割ラインがウェハの一面に形成された方法を更に提供する。この方法は、一面から少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハ材料を除去するステップと、保護フィルムを準備するステップと、少なくとも分割ラインに沿って、ウェハ材料を除去した後、ウェハ上のデバイスを覆う為に、保護フィルムの前の面の中央領域がウェハの一面と直接接触するように、ウェハの一面に保護フィルムを加えるステップと、を含む。この方法は、ウェハの一面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、保護フィルムがウェハの一面に付けられるように、外部刺激を保護フィルムに加えるステップと、保護フィルムに外部刺激を加えた後、ウェハの厚さを調整する為に、一面に対して反対側にあるウェハの面を研削するステップとを更に含む。ウェハ材料は、ウェハの厚さの一部だけに沿って除去され、一面に対して反対側にあるウェハの面を研削するステップは、少なくとも一つの分割ラインに沿って、ウェハを分割する為に、ウェハ材料が除去されていないウェハの厚さの残部に沿って行われる。
【0142】
ウェハは、先に詳述した特性、特徴、機能を有してもよい。
【0143】
ウェハは、どんな形状を有してもよい。上部における上面視において、ウェハは、たとえば、円形状、楕円形状、長円形状、矩形状または四角形状のような多角形状でもよい。
【0144】
保護フィルムは、先に詳述した特性、特徴、機能を有してもよい。特に、保護フィルムは、先に詳述したように、クッション層との組合せ、クッション層およびベースシートとの組合せで使用されてもよい。
【0145】
保護フィルムは、どんな形状を有してもよい。上部における上面視において、保護フィルムは、たとえば、円形状、楕円形状、長円形状、矩形状または四角形状のような多角形状でもよい。
【0146】
保護フィルムは、ウェハと実質的に同一の形状または同一の大きさを有してもよい。
【0147】
ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に保護フィルムを加える為に、前述した同一の方法で、ウェハの一面に保護フィルムが加えられてもよい。
【0148】
特に、保護フィルムは、保護フィルムの表の面の少なくとも中央領域がウェハの一面と直接接触するように、ウェハの一面に加えられ、即ち、ウェハの表面に加えられる。そのため、保護フィルムの前の面の少なくとも中央領域とウェハの一面との間には、材料、特に接着材が何も存在しない。
【0149】
したがって、例えば、ウェハ上の接着層または接着材残渣の接着力による、ウェハ、特に、デバイス領域に形成されたデバイスの可能な汚染またはウェハに対する可能な損傷の危険性は、著しく減少され、排除すら可能である。
【0150】
外部刺激および外部刺激を保護フィルムに加えるステップは、先に詳述された特性、特徴、機能を有してもよい。
【0151】
特に、保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムの加熱および/または保護フィルムの冷却および/または保護フィルムに真空を加えることおよび/または光のような放射線で(例えばレーザビームを使用することによって)保護フィルムを照射することを含んでもよく、あるいは、これらから成り得る。
【0152】
外部刺激は、化学的化合物および/または電子又はプラズマ照射および/または圧力、摩擦又は超音波を加えることのような機械的処置および/または静電気を含んでもよく、或いは、これらでもよい。
【0153】
特に好ましくは、外部刺激を保護フィルムに加えるステップは、保護フィルムの加熱を含み、或いは、これから成る。たとえば、外部刺激を保護フィルムに加えるステップは、保護フィルムを加熱する工程、保護フィルムに真空を加える工程を含んでもよく、或いは、これらの工程から成り得る。この場合、真空は、保護フィルムの加熱工程の間および/または加熱工程の前および/または加熱工程の後に加えられてもよい。
【0154】
保護フィルムに外部刺激を加えるステップが保護フィルムの加熱工程を含み、或いは、この工程から成る場合、当該方法は、加熱処理の後、保護フィルムの冷却を可能にする工程を更に含んでもよい。特に、保護フィルムは、その初期温度まで、即ち、加熱処理前の温度まで、冷却が可能であってもよい。保護フィルムは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面(即ち、ウェハ裏面)を研削する前に、例えば初期温度まで、冷却が可能であってもよい。
【0155】
ウェハは、先に詳述した同一の方法で、少なくとも分割ラインに沿って除去されてもよい。
【0156】
特に、ウェハ材料は、少なくとも一つの分割ラインに沿って、機械的に除去されてもよい。たとえば、ウェハ材料は、例えばブレードダイシング又は鋸によって、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハを機械的に切断することによって、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。代替または追加で、ウェハ材料は、レーザ切断および/またはプラズマ切断によって、少なくとも一つの分割ラインに沿って、除去されてもよい。
【0157】
少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハ材料を除去する処理は、ウェハの面において、ウェハ材料が、ウェハの側方縁部まで完全に除去されるように、或いは、ウェハの周辺部分で(たとえば、周辺限界領域で)ウェハ材料が除去されないように、行われてもよい。ウェハの周辺部分にウェハ材料が除去されない場合、デバイス領域を、汚染に対して特に信頼性良く保護できる。特に、保護フィルムを、ウェハ面に対して特に密着してウェハの周辺部分に付けることができるので、デバイス領域を効率良く密封する。
【0158】
この方法において、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面の研削は、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハを分割するように、ウェハ材料が除去されていないウェハの厚さの残部に沿って行われる。このように、研削ステップにおいてウェハを分割することによって、ウェハを、特に信頼性、精度および効率良く、処理することができる。特に、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハ材料を除去するステップは、ウェハ上で、研削する前、即ち、その厚さを減少させる前に、行われる。このため、少なくとも一つの分割ラインに沿って、材料除去中に(例えば切断中に)、ウェハの反りのようなウェハの変形を信頼性良く避けることができる。さらに、少なくとも一つの分割ラインに沿って、ウェハ材料除去の間にウェハに加えられる応力は、著しく減少され、増加されたダイ強度を備えたチップ又はダイを得ることができる。割れの形成又は裏面チッピングのような、結果として生じるダイ又はチップに対する損傷を避けることができる。
【0159】
さらに、ウェハ材料がウェハの厚さの一部に沿ってのみ、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されることから、ウェハ材料除去処理の効率、特に処理速度が高められる。また、ウェハ材料除去ステップの為に使用される手段(例えば、切断手段)の運用寿命が延びる。
【0160】
ウェハの一面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、外部刺激が、保護フィルムに加えられ、保護フィルムが、ウェハの一面に付けられる。そのため、保護フィルムをウェハ上の所定位置に保持する、保護フィルムおよびウェハの間の付ける力が、外部刺激を付けることによって生成される。このため、ウェハの一面に保護フィルムを付ける為に、何も追加の接着材が必要ない。特に、保護フィルムに外部刺激を加えることによって、保護フィルムとウェハとの間に、積極嵌合のような形態嵌合及び/又は接着結合のような材料結合が形成されてもよい。
【0161】
そのため、本発明の方法は、デバイス領域を有するウェハの信頼性および効率良い処理を可能にし、ウェハに対する汚染および損傷のリスクを最小限に抑える。
【0162】
ウェハの表側面は、実質的に平坦、均一表面または平坦かつ均一表面でもよい。
【0163】
あるいは、デバイス領域は、ウェハの平坦面から突出する複数の突出部又は突起で形成されてもよい。ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起は、保護フィルムに埋め込まれてもよい。
【0164】
バンプのような突出部又は突起は、実質的に平らな面であるウェハ平坦面から突出して延び、或いは、出っぱっている。突出部または突起は、この一面を不均一にする、ウェハの一面(即ち、ウェハの表面)のトポグラフィ又は表面構造を定めてもよい。
【0165】
これらの突出部又は突起は、例えば、ウェハが分割された後、携帯電話やパーソナルコンピュータのような電気機器にダイを組み入れるときに、例えば、個々のダイにおけるデバイスとの電気的接触を確立する為に使用されてもよい。
【0166】
突出部は、不規則的に配置され、或いは、規則正しいパターンで配置される。一部の突出部だけが規則正しいパターンで配置されてもよい。
【0167】
突出部は、どのような種類の形状を有してもよい。たとえば、一部または全部の突出部が球、半球、支柱(pillars)、円柱(columns)、例えば、円形を備えた支柱または円柱、楕円、多角形(例えば、三角、四角など)、横断面または底面積、円錐、円錐台、段状の形状でもよい。
【0168】
少なくとも一部の突出部は、ウェハの平坦面に形成された要素から起き上がってもよい。スルーシリコンビア(TSV)の場合、少なくとも一部の突出部は、ウェハの厚さ方向にウェハを部分的または全体的に貫通する要素から持ち上がってもよい。これら後者の要素は、ウェハ厚さの一部に沿って延びてもよく、或いは、全体のウェハ厚さに沿って延びてもよい。
【0169】
突出部は、20-500μm、好ましくは30-400μm、より好ましくは40-250μm、更により好ましくは50-200μm、もっと更により好ましくは70-150μmの範囲で、ウェハの厚さ方向の高さを有してもよい。
【0170】
突出部の全ては、実質的に同一形状および/または大きさを有してもよい。あるいは、突出部の少なくとも一部は、互いに形状および/または大きさが異なってもよい。
【0171】
本発明の方法において、ウェハの平坦面から突出する突出部又は突起は、保護フィルムに埋め込まれてもよい。このため、後のウェハ処理ステップ、特にウェハの裏面の研削で、デバイス領域内の突出部の存在から起こる表面ムラの否定的影響は減少され、又は排除されもする。
【0172】
特に、保護フィルム内に突出部を埋め込むことによって、突出部は、ウェハ処理(例えば、後の研削ステップ)中に、どんな損傷からも保護可能である。
【0173】
さらに、もしウェハが小さな厚さ(例えば、μm範囲の厚さ)まで研削される場合、ウェハ表面上のデバイス領域の突出部は、ウェハ厚さの減少と、研削処理で加えられる圧力のため、ウェハ裏面の変形の原因になる。ウェハ表面上の突出部のパターンは、ウェハ裏面に転写されることから、この後者の影響は「パターン転写」と呼ばれ、ウェハ裏面側の望ましくないムラが生じるので、結果として生じるダイの品質を危うくする。
【0174】
保護フィルムは、ウェハ表面と、ウェハ裏面の処理(研削及び/又は研磨))中にウェハ表面が置かれる支持体又はキャリアとの間の緩衝物あるいはクッションとして作用するので、処理中の圧力の一様かつ均質分布を達成するのに役立つ。このため、ウェハ裏面の処理中、特に研削中、ウェハの破壊またはパターン転写を避けることができる。
【0175】
保護フィルムは、拡張可能であってもよい。保護フィルムは、ウェハの一面に加えられるときに拡張されてもよい。突出部がウェハの一面に存在する場合、保護フィルムは、突出部の外径と密着または少なくとも部分的に追従するように、ウェハの一面に加えられるときに拡張されてもよい。
【0176】
特に、保護フィルムは、その当初の大きさの2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは4倍以上まで拡張可能であってもよい。このように、特に、当初の大きさの3倍または4倍以上までの拡張の場合、保護フィルムが突出部の外径に追従することが信頼性良く確保できる。
【0177】
保護フィルムが拡張可能である場合、それは、デバイスをお互いに分離する為に使用されてもよい。特に、当該方法は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を研削した後、お互いにデバイスを分離させるように保護フィルムを径方向に拡張させるステップを更に含んでもよい。
【0178】
ウェハは、前述されたように、ウェハの裏面を研削することによって、少なくとも一つの分割ラインに沿って完全に分割される。その後、完全に分割されたデバイスは、チップ又はダイの形でもよいが、これらは、保護フィルムを径方向に拡張させることによって、お互いに遠ざかるように移動されてもよく、これによって、隣接したデバイス間の距離を増加する。このように、デバイス間の意図されていない接触による(例えば、お互いに接触し、又は、擦れ合う隣接デバイスによる)デバイスに対する損傷を信頼性良く避けることができる。
【0179】
当該方法は、ウェハの一面に対して反対側にある面を研削した後、拡張テープのような拡張可能な接着テープを、一面に対して反対側にあるウェハの面に付けるステップと、お互いにデバイスを分離させるように接着テープを径方向に拡張させるステップとを含んでもよい。また、このようにして、完全に分割されたデバイスは、お互いに遠ざかるように移動され、このため、隣接したデバイス間の距離を増加することができる。このアプローチは、拡張可能でない保護フィルムが使用される場合、特に有利である。
【0180】
ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面に接着テープを付ける前に、保護フィルムが取り外されてもよい。
【0181】
当該方法は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を研削した後、その一面に対して反対側にあるウェハの面を研磨および/またはエッチング(例えば、プラズマエッチング)するステップを更に含んでもよい。
【0182】
保護フィルムは、ウェハの一面に加えられてもよく、保護フィルムの表の面がウェハの一面と接触する全区域において、保護フィルムの表の面がウェハの一面と直接接触する。そのため、保護フィルムの表の面およびウェハの一面の間には、材料、特に、接着材が何も存在しない。
【0183】
このように、例えば、ウェハ上の接着層または接着材残渣の間の接着力による、ウェハ、特に、デバイス領域に形成されたデバイスの可能な汚染またはデバイスに対する可能な損傷を信頼性良く排除できる。
【0184】
あるいは、保護フィルムには接着層が設けられてもよく、接着層は、保護フィルムの表の面の周辺領域だけに設けられ、周辺領域は、保護フィルムの表の面の中央領域を囲み、保護フィルムはウェハの一面に加えられ、接着層が、ウェハの一面の周辺部分(周辺厳戒領域)とだけ接触するようになる。
【0185】
このように、保護フィルムをウェハに付けるステップが更に改善される。接着層は保護フィルムの前の面の周辺領域だけに設けられることから、保護フィルムおよびウェハが接着層によって互いに付けられる領域は、接着層が保護フィルムの前の面の全体に設けられる場合と比較して、著しく減少される。そのため、より簡単に保護フィルムをウェハから剥がすことができ、ウェハ、特に、その表面に(例えばデバイス領域に)形成された突出部に対するリスクは、かなり減少され、排除されもする。
【0186】
接着層の接着材は、熱、UV線、電界および/または化学剤のような外部刺激によって、硬化可能であってもよい。このように、保護フィルムを、処理後、特に簡単にウェハから取り外すことができる。外部刺激は、接着材の接着力を低下させるように接着材に加えられるので、保護フィルムの簡単な取り外しが可能になる。
【0187】
たとえば、接着層は、実質的に環状形状、開いた矩形の形状または開いた正方形の形状を有してもよい。
【0188】
クッション層は、保護フィルムの前の面に対して反対側にある保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。
【0189】
クッション層は、先に詳述された特性、特徴、機能を有してもよい。クッション層は、前述した同一方法で、保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。クッション層に関して、先に提供した開示を完全に適用する。
【0190】
保護フィルムの裏の面にクッション層を付けるステップは、ウェハの一面、特に、デバイス領域に突出部又は突起が存在する場合、特に有利である。この場合、突起又は突出部は、この一面を不均一にする、ウェハの表面のトポグラフィ又は表面構造を定める。
【0191】
クッション層が保護フィルムの裏の面に付けられる場合、そのような突出部をクッション層に埋め込むことができる。このため、後のウェハ処理ステップ、特に、ウェハ裏面の研削で、突出部の存在から起こる表面ムラの否定的影響を排除することができる。特に、クッション層は、研削処理中、特に一様かつ均質な圧力分布を達成するのに著しく貢献することができる。クッション層に突出部を埋め込むことによって、突出部は、ウェハ処理中、たとえば、研削ステップ中、どのような損傷からも信頼性良く保護される。
【0192】
クッション層は、保護フィルムの裏の面に付けられてもよく、クッション層の裏の面は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面と実質的に平行になる。
【0193】
クッション層は、UV線、熱、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。
【0194】
当該方法は、保護フィルムをウェハの一面に加えた後、クッション層を硬化させるようにクッション層に外部刺激を加えるステップを更に含んでもよい。
【0195】
ベースシートが、クッション層の裏の面に付けられてもよい。
【0196】
ベースシートは、前述したような特性、特徴、機能を有してもよい。ベースシートは、前述した同一の方法で、クッション層の裏の面に付けられてもよい。ベースシートに関して、先に提供された開示が完全に適用される。
【0197】
ベースシートの表の面は、クッション層の裏の面と接触してもよい。ベースシートの表の面に対して反対側にあるベースシートの裏の面は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの裏の面と実質的に平行であってもよい。
【0198】
この場合、ベースシートの平坦な裏の面がウェハの裏面と実質的に平行になることから、例えば、研削装置の研削ホィールによる研削のような処理中にウェハに加えられる圧力は、ウェハにわたって均一かつ均質に分布されるので、パターン転写(すなわち、デバイス領域の突出部又は突起によって定められるパターンが処理済み、特に、研削済みのウェハの裏面への転写およびウェハの破壊の危険性を最小にする。さらに、ベースシートの平らな均一な裏の面とウェハの裏面との実質的に平行な整列は、高精度で研削ステップを実行することを可能にするので、研削後、特に一様かつ均質なウェハの厚さを達成する。
【0199】
また、保護フィルムは、ウェハ表面およびクッション層の間の更なるクッションまたは緩衝として作用するので、研削のような処理中、圧力の一様かつ均一な分布に更に寄与する。このため、処理中のウェハのパターン転写又は破壊を特に効率良く避けることができる。
【0200】
本発明は、複数のデバイスを備えたデバイス領域を一面に有するウェハの処理方法を更に提供する。この方法は、接着層を有する保護フィルムを準備するステップと、保護フィルムを、ウェハ上のデバイスを覆う為に、ウェハの一面に加えるステップであって、保護フィルムの表の面の中央領域がウェハの一面と直接接触する、前記ステップと、ウェハの一面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、保護フィルムに外部刺激を加えるステップであって、前記保護フィルムがウェハの一面に付けられる、前記ステップと、一面に対して反対側になるウェハの面を処理するステップとを含む。接着層は、保護フィルムの表の面の周辺領域だけに設けられ、周辺領域は、保護フィルムの表の面の中央領域を囲む。保護フィルムは、ウェハの一面に加えられ、接着層は、ウェハの執念限界領域のようなウェハの一面の周辺部分だけと接触するようになる。
【0201】
ウェハは、前述したような特性、特徴、機能を有してもよい。
【0202】
ウェハは、どのような種類の形状を有してもよい。その上面視において、ウェハは、たとえば、円形状、楕円形状、矩形又は正方形のような多角形状を有してもよい。
【0203】
保護フィルムは、前述したような特性、特徴、機能を有してもよい。特に、保護フィルムは、前述したように、クッション層との組合せで、或いは、クッション層およびベースシートの組合せで使用されてもよい。
【0204】
保護フィルムは、どのような種類の形状を有してもよい。その上面視において、保護フィルムは、たとえば、円形状、楕円形状、矩形又は正方形のような多角形状を有してもよい。
【0205】
保護フィルムの形状は、ウェハと実質的に同一の形状または同一の形状でもよい。
【0206】
保護フィルムは、前述した同一の方法で、ウェハの一面に加えられてもよい。
【0207】
特に、保護フィルムは、ウェハの一面、即ち、ウェハ表面に加えられ、保護フィルムの表の面の中央領域がウェハの一面と直接接触する。そのため、保護フィルムの表の面の中央領域およびウェハの一面の間には、材料、特に接着材が何も存在しない。
【0208】
したがって、ウェハ上の接着層または接着材残渣の接着力による、ウェハ、特に、デバイス領域に形成されたデバイスの可能な汚染またはデバイスに対する可能な損傷の危険性を著しく減少できる。
【0209】
ウェハの表側面は、実質的に平坦、均一表面または平坦かつ均一表面でもよい。あるいは、ウェハの厚さ方向に沿って、平坦なウェハ面から突出する突出部又は突起が、ウェハの表面、特にデバイス領域において、存在してもよい。
【0210】
外部刺激および外部刺激を保護フィルムに加える処理は、先に詳述した特性、特徴、機能を有してもよい。
【0211】
特に、保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムの加熱および/または保護フィルムの冷却および/または保護フィルムに真空を加えることおよび/さらに例えば、レーザビームを使用することによって光のような放射線で保護フィルムを照射することを含んでもよく、或いは、これらから成り得る。
【0212】
外部刺激は、化学的化合物および/または電子又はプラズマ照射および/または圧力、摩擦、超音波を加えることのような機械的処置および/または静電気を含んでもよく、或いは、これらから成り得る。
【0213】
特に好ましくは、保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムの加熱工程を含み、或いは、この工程から成る。たとえば、保護フィルムに外部刺激を加えるステップは、保護フィルムを加熱する工程と、保護フィルムに真空を加える工程とを含んでもよく、或いは、これらの工程から成り得る。この場合、真空は、保護フィルムを加熱する間および/または加熱する前および/または加熱した後に、保護フィルムに加えられてもよい。
【0214】
外部刺激を保護フィルムに加えるステップが、保護フィルムを加熱する工程を含む、或いは、この工程から成り得る場合、当該方法は、加熱処理の後に保護フィルムを冷却することを可能にする工程を更に含んでもよい。特に、保護フィルムは、その当初温度まで、即ち、加熱処理前の温度まで冷却させてもよい。保護フィルムは、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面、即ち、ウェハの裏面を処理する前に、例えば、その初期温度まで、冷却させてもよい。
【0215】
ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を処理する工程は、前述した方法で行われてもよい。
【0216】
ウェハの一面に保護フィルムを加える間および/または加えた後、外部刺激が保護フィルムに加えられ、保護フィルムがウェハの一面に付けられる。そのため、ウェハの位置に保護フィルムを保持し、保護フィルムおよびウェハの間の付ける力は、外部刺激を加えることによって発生される。特に、保護フィルムに外部刺激を加えることによって、保護フィルムとウェハとの間に、積極嵌合のような形態嵌合及び/又は接着結合のような材料結合が形成されてもよい。さらに、保護フィルムは、接着層によってウェハに付けられる。このように、保護フィルムをウェハに付けることが更に改善される。
【0217】
接着層は、保護フィルムの前の面の周辺領域だけに設けられることから、保護フィルムおよびウェハが接着層によって互いに付けられる領域は、接着層が保護フィルムの表の面の全体に設けられる場合と比較すると、著しく減少される。そのため、保護フィルムを、ウェハから、より簡単に剥がすことができ、ウェハ、特に、その表面上に形成された突出部に対する損傷の危険性は、相当に減少される。
【0218】
そのため、本発明の方法は、デバイス領域を有するウェハの、信頼性および効率の良い処理を可能にし、ウェハの汚染および損傷の危険性を最小限に抑える。
【0219】
接着層の接着材は、熱、UV線、電界、および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。このように、処理後、保護フィルムをウェハから特に簡単に取り外すことができる。外部刺激は、接着材に加えられ、その接着力を低下させ、保護フィルムの簡単な取外しを可能にしてもよい。
【0220】
たとえば、接着層は、実質的に環状形状、開いた矩形の形状、または、開いた正方形の形状を有してもよい。
【0221】
クッション層は、保護フィルムの表の面に対して反対側の裏の面に付けられてもよい。
【0222】
クッション層は、前述したような特性、特徴、機能を有してもよい。クッション層は、前述した同一の方法で保護フィルムの裏の面に付けられてもよい。クッション層に関して提供された開示が完全に適用される。
【0223】
保護フィルムの裏の面にクッション層を付けるステップは、ウェハの一面、特にデバイス領域に突出部又は突起が存在する場合、特に有利である。この場合、突出部または突起は、ウェハの表面を不均一にする、この面のトポグラフィ又は表面構造を定める。
【0224】
クッション層が、保護フィルムの裏の面に付けられる場合、そのような突出部を、クッション層に埋め込むことができる。このため、研削、切断、研磨のような後のウェハ処理ステップで、突出部の存在から起こる表面ムラの否定的影響は減少され、又は排除されもする。特に、クッション層は、そのような処理中、圧力の、特に一様かつ均一分布を達成するのに、特に貢献することができる。クッション層に突出部を埋め込むことによって、突出部は、ウェハ処理中、例えば、研削ステップ中、どのような損傷からも信頼性良く保護される。
【0225】
クッション層は、保護フィルムの裏の面に付けられ、クッション層の裏の面は、ウェハの一面に対して反対側にある面と実質的に平行であってもよい。
【0226】
クッション層は、UV線、熱、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能であってもよい。
【0227】
当該方法は、保護フィルムをウェハの一面に加えた後に、クッション層を硬化するように、クッション層に外部刺激を加えるステップを更に含んでもよい。
【0228】
ベースシートは、クッション層の裏の面に付けられてもよい。
【0229】
ベースシートは、前に詳述した特性、特徴、機能を有してもよい。ベースシートは、前述した同一方法でクッション層の裏の面に付けられてもよい。ベースシートに関して先に提供された開示が完全に適用される。
【0230】
ベースシートの表の面は、クッション層の裏の面に接触してもよい。ベースシートの表の面に対して反対側の裏の面は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面と実質的に平行であってもよい。
【0231】
この場合、ベースシートの平坦な裏の面がウェハの裏面と実質的に平行であることから、研削装置の研削ホィールによって、研削のような処理中にウェハに加えられる圧力は、ウェハにわたって均一かつ均質に分布されるので、前述されてきたように、パターン転写の危険性を最小限に抑える。さらに、ウェハの裏面およびベースシートの平坦かつ均一な裏の面の実質的に平行な配列は、高精度で研削ステップを行うことを可能にするので、研削後、特に一様かつ均質なウェハの厚さを達成する。
【0232】
また、保護フィルムは、ウェハ表面およびクッション層の間で更なるクッションまたは緩衝として作用するので、研削のような処理中、圧力の一様かつ均質な分布に更に貢献する。このため、処理中のウェハのパターン転写または破壊を特に信頼性良く防止できる。
【0233】
ウェハの一面の反対側にあるウェハの面を処理するステップは、ウェハの厚さを調整するように、一面に対して反対側にあるウェハの面を研削する工程を含んでもよく、或いは、この工程から成り得る。
【0234】
ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を処理するステップは、一面に対して反対側にあるウェハの面を研削した後、一面に対して反対側にあるウェハの面を研磨する工程を含んでもよく、或いは、この工程から成り得る。
【0235】
少なくとも一つの分割ラインが、ウェハの一面に形成されてもよい。複数の分割ラインが、ウェハの一面に形成されてもよい。一つ又は複数の分割ラインが、デバイス領域に形成されたデバイスを区切る。
【0236】
ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を処理するステップは、たとえば、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を研削した後、少なくとも一つの分割ラインに沿って、ウェハ材料を除去する工程を含んでもよく、或いは、この工程から成り得る。複数の分割ラインがウェハの一面に形成される場合、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を処理するステップは、たとえば、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を研削した後、複数の分割ラインの各々に沿って、ウェハの材料を除去する工程を含んでもよく、或いは、この工程から成り得る。
【0237】
ウェハの材料は、ウェハの厚さ全体を通して、少なくとも一つの分割ラインに沿って、除去されてもよい。この場合、ウェハは、ウェハの材料除去処理によって、少なくとも一つの分割ラインに沿って、複数のチップ又はダイへと分割される。
【0238】
あるいは、ウェハ材料は、ウェハの厚さの一部だけに沿って、少なくとも一つの分割ラインに沿って、除去されてもよい。たとえば、ウェハ材料は、ウェハの厚さの20%以上に沿って、30%以上に沿って、40%以上に沿って、50%以上に沿って、60%以上に沿って、70%以上に沿って、80%以上に沿って、90%以上に沿って、除去されてもよい。
【0239】
この場合、ウェハを分割、即ち、完全に分割する処理は、たとえば、破壊処理を採用するステップと、例えば、拡張テープを使用して、ウェハに外力を加えるステップと、或いは、機械的切断又はダイシング処理、レーザ切断又はダイシング処理、プラズマ切断又はダイシング処理のような切断又はダイシング処理を採用するステップとによって実行されてもよい。たとえば、外力は、保護フィルムを径方向に拡張させることによって、即ち、拡張テープとして保護フィルムを使用することによって、ウェハに加えられてもよい。さらに、2つ以上の、これらの処理の組合せが使われてもよい。
【0240】
ウェハ材料は、少なくとも一つの分割ラインに沿って、機械的に除去されてもよい。特に、ウェハ材料は、例えばブレードダイシング又は鋸によって、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハを機械的に切断することによって、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。この場合、ウェハは、その裏面から切断される。
【0241】
代替または追加で、ウェハ材料が、レーザ切断および/またはプレズマ切断によって、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。
【0242】
ウェハは、単一の機械的切断ステップ、単一のレーザ切断ステップまたは単一のプラズマ切断ステップで切断されてもよい。あるいは、ウェハは、連続した機械的切断ステップおよび/またはレーザ切断ステップおよび/またはプラズマ切断ステップによって切断されてもよい。
【0243】
レーザ切断は、たとえば、アブレーションレーザ切断によって、および/またはステルスレーザ切断によって、即ち、前述されてきたように、レーザビームを加えることによってウェハ内部に改質区域を形成することによって、および/またはレーザビームを加えることによってウェハ内に複数のホール区域を形成することによって、行われてもよい。これらのホール区域の各々は、ウェハの表面に開いた改質区域内の空間と改質区域とから構成されてもよい。
【0244】
そのようなステルスレーザ切断またはステルスダイシング処理において、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面からウェハにパルスレーザが加えられてもよく、ウェハはパルスレーザに対して透過性の材料から形成され、パルスレーザは、一定の状態で、少なくとも一つの分割ラインに沿って、少なくとも複数の位置でウェハに加えられ、その状態は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面から、ウェハの一面に向かう方向で、ウェハの面に対して反対側にあるウェハの面から一定の距離に、パルスレーザの焦点が置かれる状態であり、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハには複数の改質区域を形成する。
【0245】
当該方法は、ウェハに複数の改質区域を形成した後、少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハを分割するステップを更に含んでもよい。ウェハを分割する処理は、様々な方法で実行されてもよく、例えば、破壊処理の採用、たとえば、拡張テープを使用してウェハに外力を加えること、あるいは、機械的切断又はダイシング処理、レーザ切断又はダイシング処理、プラズマ切断又はダイシング処理のような切断又はダイシング処理の採用がある。以下に更に詳細に説明されるように、たとえば、外力は、保護フィルムを径方向に拡張させることによって、即ち、拡張テープとして保護フィルムを使用することによって、ウェハに加えられてもよい。さらに、2つ以上の、これらの処理の組合せが用いられてもよい。
【0246】
保護フィルムは、拡張可能であってもよい。この場合、保護フィルムは、デバイスを互いに分離する為に使用されてもよい。特に、当該方法は、ウェハの一面に対して反対側にあるウェハの面を処理した後、互いにデバイスを分離させるように、保護フィルムを径方向に拡張させるステップを更に含んでもよい。
【0247】
たとえば、ウェハは、例えば機械的切断処理、レーザ切断処理またはプラズマ切断処理によって、完全に分離されてもよい。その後、完全に分離されたデバイスは、チップ又はダイの形でもよいが、これらは、保護フィルムを径方向に拡張させることによって互いに遠ざけられるように移動されてもよく、これによって、隣接したデバイス間の距離が増加する。
【0248】
あるいは、ウェハは、ステルスレーザ切断又はステルスダイシング処理を受けてもよい。その後、ウェハは、径方向に保護フィルムを拡張させることによって改質区域が形成された場所で少なくとも一つの分割ラインに沿って、分割され、例えば、破損され、これによって、個々のチップ又はダイを得る。
【0249】
径方向に保護フィルムを拡張させる工程の代替として、例えば、保護フィルムを取り外した後、別個の拡張テープがウェハ表面または裏面に付けられてもよい。その後、デバイスは、径方向に拡張テープを拡張させることによって、互いに分離されてもよい。
【0250】
当該方法は、例えば、ウェハの裏面を研削した後、拡張テープのような拡張可能な接着テープを、ウェハ裏面に付けるステップを含んでもよい。接着テープをウェハ裏面に付ける前または付けた後、保護フィルムは、ウェハ表面を露出させるように、取り外されてもよい。
【0251】
当該方法は、例えば、ウェハ裏面に接着テープを付けた後、および/または保護フィルムを取り外した後、少なくとも一つの分割ラインに沿って、ウェハ材料を除去するステップを含んでもよい。ウェハ材料は、ウェハ表面から、少なくとも一つの分割ラインに沿って除去されてもよい。
【0252】
少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハ材料を除去するステップは、前述した方法で行われてもよい。たとえば、ウェハは、ウェハ表面から少なくとも一つの分割ラインに沿って、切断されてもよく、あるいは、ステルスレーザ切断又はステルスダイシング処理が、ウェハ表面から少なくとも一つの分割ラインに沿って行われてもよい。
【0253】
少なくとも一つの分割ラインに沿ってウェハ材料を除去した後、或いは、ステルスレーザ切断又はステルスダイシング処理を行った後、例えば、径方向に接着テープを拡張させることによって、デバイスが互いに分離されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0254】
以下、図面を参照して、本発明の非限定実施例を説明する。
【
図1】
図1は、本発明の方法によって処理されるウェハを示す横断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に従うウェハを処理する方法に使用される保護シーティングの実施形態を示す横断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に従うウェハの処理方法において、
図1に示されたウェハに、
図3に示された保護シーティングを加えるステップを例示する横断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の他の実施形態に従うウェハの処理方法において、
図1に示されたウェハに、
図3に示された保護シーティングを加えるステップを例示する横断面図である。
【
図6】
図6は、ウェハに保護シーティングを付けるステップの結果を示す横断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示された保護シーティングとウェハの配置の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図6および
図7に示されたウェハ上で行われる切断ステップを例示する横断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の他の実施形態に従うウェハの処理方法において、ウェハに保護フィルムを付けるステップの結果を示す横断面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示されたウェハ上で行われる切断ステップを例示する横断面図である。
【
図11】
図11は、
図10に示された切断ステップの後に行われるデバイス分離ステップを例示する横断面図である。
【
図12】
図12は、
図9に示されたウェハ上で行われるステルスダイシングステップを例示する横断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の他の実施形態に従うウェハの処理方法において、ウェハ材料を除去するステップの結果を示す横断面図である。
【
図14】
図14は、
図13に示されたウェハに保護フィルムを付けるステップの結果を示す横断面図である。
【
図15B】
図15Bは、ウェハ材料を除去する改質されたステップの結果を示す上面図である。
【
図16】
図16は、
図14に示されたウェハの裏面を研削するステップの結果を示す横断面図である。
【
図17】
図17は、
図16に示されたウェハに接着テープを付けるステップの結果を示す横断面図である。
【
図18】
図18は、
図17に示された付けるステップの後で行われるデバイス分離ステップを例示する横断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の方法によって処理されるウェハを示す横断面図である。
【
図20】
図20は、本発明の方法の他の実施形態に従うウェハに保護フィルムを加えるステップを例示する横断面図である。
【
図21】
図21は、
図20に示された実施形態に従うウェハに保護フィルムを加え留ステップを例示する斜視図である。
【
図22】
図22は、ウェハに保護フィルムを付けるステップの結果を示す横断面図である。
【
図23】
図23は、
図22に示されたウェハの裏面を研削するステップの結果を示す横断面図である。
【
図24】
図24は、
図23に示されたウェハ上で行われる切断ステップを例示する横断面図である。
【
図25】
図25は、
図24に示された切断ステップの後で行われるデバイス分離ステップを例示する横断面図である。
【
図26】
図26は、
図23に示されたウェハに接着テープを付けるステップの結果を示す横断面図である。
【
図27】
図27は、
図26に示されたウェハ上で行われる切断ステップを例示する横断面図である。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0255】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。好ましい実施形態は、ウェハWを処理する為の方法に関する。
【0256】
ウェハWは、たとえば、ウェハWの表面1の面にMEMSデバイスが形成されたMEMSウェハでもよい(
図1を参照)。しかしながら、ウェハWはMEMSウェハに限定されるものではなく、好ましくは固体撮像素子としてCMOSデバイスを有するCMOSウェハでもよく、これらは、ウェハWの表面1上に、あるいは、表面1上の他の型式のデバイスと共にウェハ上に形成される。
【0257】
ウェハWは、半導体、例えば、シリコン(Si)で形成されてもよい。そのようなシリコンウェハWは、シリコン基板上に、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)のようなデバイスを含むことができる。あるいは、ウェハは、例えば、セラミック、ガラス、サファイアの有機材料基板上に、LED(発光ダイオード)のような光学デバイスを形成することによって構成される光学デバイス用ウェハでもよい。ウェハWは、これに限定されるものではなく、任意の他の方法で形成可能である。さらに、前述した例示的ウェハ設計の組み合わせも可能である。
【0258】
ウェハWは、研削する前にμmの範囲、好ましくは625~925μmの範囲の厚さを有し得る。
【0259】
ウェハWは、好ましくは円形状を呈する。しかしながら、ウェハWの形状は、特に限定されない。他の実施形態において、ウェハWの形状は、たとえば、楕円形状、長円形状、矩形状又は四角形状のような多角形状でもよい。
【0260】
ウェハWには、その表面1に形成されたストリートと呼ばれる複数の交差分割ライン11(
図2を参照)が設けられ、それによって、前述されたようなデバイス27がそれぞれ形成される複数の矩形区域にウェハWが区切られる。これらのデバイス27は、ウェハWのデバイス領域2に形成される。円形ウェハWの場合、このデバイス領域2は、好ましくは、円形であり、ウェハWの外周と同心で配置される。
【0261】
デバイス領域2は、例えば、
図1-
図2に概略的に示されるように、環状周辺限界領域3によって囲まれる。この周辺限界領域3には、デバイスが形成されない。周辺限界領域3は、好ましくは、ウェハWの外周および/またはデバイス領域2に対して同心で配置される。周辺限界領域3の径方向拡張部は、mm範囲、好ましくは、1-3mmである。
【0262】
ウェハWは,表面1に対して反対側の裏面6を更に有する(
図1参照)。たとえば、
図1に概略的に示されるように、裏面6は、ウェハWの厚さ方向に沿って突出する複数の突出部14を有する。突出部14は、たとえば、表面ムラまたは粗さ、バンプ、光学素子(例えば光学レンズ)、他の構造体などでもよい。ウェハWの厚さ方向における突出部14の高さは、たとえば、5~300μmの範囲内にあってもよい。例えば
図1に例示された突出部14は、一知恵の縮尺で描かれていないが、より見やすくするために拡大して示されている。
【0263】
以下、
図1-
図8を参照して、本発明の実施形態に従うウェハWを処理する方法を説明する。
【0264】
図1は、本発明の方法によって処理されるウェハWの横断面図を示す。
図2は、
図1の横断面で示されたウェハWの斜視図を示す。
図3は、ウェハWをしょりする方法で使用される保護シーティング5の横断面図を示す。
【0265】
図3に示されるように、保護シーティング5は、ベースシート7と,ベースシート7の表の面17に加えられるクッション層13と、保護フィルム4であって、その裏の面がクッション層13に付けられる保護フィルム4と,その裏の面の反対側の保護フィルム4の表の面4aの一部に加えられる接着層9とを備える。特に、接着層9は、環状形状を有し、保護フィルム4の前の面4aの周囲または周辺領域のみに設けられる。周囲または周辺領域は、保護フィルム4の表の面4aの中央領域を囲む。
【0266】
ベースシート7およびクッション層13は、実質的に円形形状を有する。ベースシート7およびクッション層13の外径は、互いに実質的に同一であり、接着層9の外径と実質的に同一である。
【0267】
ベースシート7の厚さは、たとえば、500~1000μmの範囲内でもよい。保護フィルム4の厚さは、5~200μmの範囲内でもよい。クッション層13の厚さは、10~300μm、好ましくは、50~200μmの範囲内でもよい。
【0268】
クッション層13は、UV線、熱、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能である。特に、クッション層13は、DISCO株式会社によるResiFlat、DENKAによるTEMPLOCのような硬化性樹脂で形成されてもよい。
【0269】
保護シーティング5は、保護フィルム4と、クッション層13をその表の面17に加えたベースシート7とを積層することによって形成される。
【0270】
図4は、ウェハWの裏面6に保護フィルム4の表の面4aを加えるステップを例示する。
【0271】
図4に示されるように、環状接着層9は、環状フレーム25の内径より大きな外径を有する。さらに、環状接着層9は、ウェハWの外径より小さく、デバイス領域2の外径より大きい内径を有する。このため、信頼性良く確保されるのは、接着層9の接着材がウェハWの裏面6の周辺部分とだけ接触するようになり、これは、ウェハWの表面1上の周辺限界領域3に対応することである。
【0272】
保護シーティング5をウェハWに加える前に、保護シーティング5の周辺部分は、環状フレーム25に装着される。さらに、ベースシート7の表の面17に対して反対側のベースシート7の裏の面18は、チャックテーブル20上に置かれる。その後、
図4の矢印によって表示されるように、ウェハWは、チャックテーブル20上に置かれた保護シーティング5に加えられ、これによって、保護フィルム4の表の面4aをウェハWの裏面6に加え、接着層9によって裏面6の周辺部分に保護フィルム4を付ける。さらに、ウェハWの裏面6で突出する突出部14は、
図6に概略的に示されるように、クッション層13に埋め込まれる。
【0273】
保護フィルム4は、突出部14を覆うので、損傷または汚染から、それらを保護する。さらに、保護フィルム4は、後述するように、後の切断ステップにおいて、追加のクッションまたは緩衝物として作用する。
【0274】
接着層9を形成する接着材は、熱、UV線、電界および/または化学剤のような外部刺激によって硬化可能でもよい。このように、保護シーティング5は、処理後、ウェハWから特に簡単に除去可能である。
【0275】
特に、接着材は、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂でもよい。接着材の為のUV硬化型樹脂の好ましい実施例は、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマーである。
【0276】
さらに、接着材は、例えば、水溶性樹脂でもよい。
【0277】
保護フィルム4は、ポリオレフィンで形成される。たとえば、保護フィルム4は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)で形成されてもよい。
【0278】
保護フィルム4は、しなやかで、当初の直径の約3倍まで拡張可能である。
【0279】
ウェハWを保護シーティング5に加えるとき、保護フィルム4は拡張、例えば、その当初の直径の約3倍まで拡張されるので、
図6に概略的に示されるように、突出部14の外形と密接に追従する。
【0280】
ベースシート7の裏の面18は、
図6の矢印(点線)によって表示されるように、ウェハWの表面1に対して実質的に平行である。
【0281】
保護シーティング5は、ウェハWの裏面6に加えられ、保護フィルム4の表の面4aの中央領域、即ち、環状接着層9の内側の表の面4aの領域は、ウェハWの裏面6と直接接触する(
図4および
図6を参照)。そのため、ウェハWの裏面6および保護フィルム4の表の面4aの中央領域の間には、何も材料、特に、どんな接着材も存在しない。
【0282】
ウェハWの裏面6に保護シーティング5を加えた後、外部刺激が保護フィルム4に加えられ、保護フィルム4,したがって、保護シーティング5は、ウェハWの裏面6に付けられ、即ち、完全に付けられる。
【0283】
外部刺激を保護フィルム4に加え留ステップは、保護フィルム4を加熱する工程および/または保護フィルム4を冷却する工程および/または保護フィルム4に真空を加える工程および/または光のような放射を用いて(例えば、レーザビームを使用して)保護フィルム4を照射する工程を含んでもよく、或いは、これらの工程から成り得る。
【0284】
外部刺激は、化学的化合物および/または電子又はプラズマ照射および/または、圧力、摩擦、超音波を加えることのような機械的処置および/または静電気を含み、或いは、これらであり得る。
【0285】
特に好ましくは、外部刺激を保護フィルム4に加えるステップは、保護フィルム4を加熱する工程を含み、或いは、この工程から成る。たとえば、外部刺激を保護フィルム4に加えるステップは、保護フィルム4を加熱する工程および保護フィルム4に真空を加える工程を含んでもよく、或いは、これらの工程を含み得る。この場合、真空は、保護フィルム4を加熱する間および/または加熱する前および/または加熱した後、保護フィルム4に加えられてもよい。
【0286】
特に、保護フィルム4は、チャックテーブル20(
図4~
図6を参照)を、例えば60℃~150℃の範囲内の温度まで加熱することによって加熱されてもよい。特に好ましくは、チャックテーブル20は、約80℃の温度まで加熱される。チャックテーブル20は、たとえば、1分~10分の範囲内の時間にわたって加熱されてもよい。
【0287】
さらに、保護フィルム4をウェハWの裏面6に押し付けるように、圧力が保護シーティング5および/またはウェハWに加えられてもよい。このため、ローラ(例えば、加熱されたローラ)のような圧力を加える手段(図示せず)が使用されてもよい。加熱されたチャックテーブル20を通して保護フィルム4を加熱することに加えて、或いは、これに対する代替として、そのような加熱されたローラによって熱が保護フィルム4に加えられてもよい。
【0288】
加熱されたチャックテーブル20および/または加熱されたローラを使用して保護フィルム4を加熱することによって、保護フィルム4は、ウェハWの裏面6に付けられる(例えば、完全に付けられる)。
【0289】
ウェハWの裏面6および保護フィルム4の表の面4aの中央領域の間の付ける力は、加熱処理を通して発生される。特に、保護フィルム4を加熱することによって、この中央領域において、保護フィルム4とウェハWとの間に形態嵌合及び/又は材料結合が形成される。
【0290】
さらに、保護フィルム4の表の面4aの周辺領域は、接着層9によってウェハの裏面6の周辺部分に接着されるので、保護シーティング5の特に頑丈かつ信頼性良く付けることが確保される。
【0291】
図6に示されるように、保護シーティング5の付けられた状態において、ウェハWの平坦な裏側面から突出する突出部14は保護シーティング5に完全に埋め込まれる。
【0292】
前述した方法でウェハWに保護シーティング5をウェハWに付けることによって、
図6および
図7に示されるように、ウェハW,保護フィルム4,クッション層13およびベースシート7から成るウェハユニットが形成される。
【0293】
保護シーティング5をウェハWに付けるステップの代替の方法は、
図5に例示されている。
【0294】
特に、この図で示されるように、ウェハWの表面1は、裏面6が上方に向けられるようにチャックテーブル20上に置かれる。その後、保護シーティング5は、
図5の矢印によって表示されるように、チャックテーブル20上に保持されたウェハの裏面6に加えられ、付けられてもよく、突出部14はクッション層13に埋め込まれ、ベースシート7の裏の面18は、ウェハWの表面1に対して実質的に平行である。ウェハWおよび保護シーティング5を互いに付ける代替ステップは、たとえば、真空チャンバ(例えば、前述した真空チャンバ)のような真空マウンタ内で実行可能である。
【0295】
ウェハWおよび保護シーティング5を互いに付けた後、他の外部刺激がクッション層13に加えられ、クッション層13を硬化させる。たとえば、熱で硬化可能な(例えば、熱硬化性)クッション層13の場合、クッション層13は、オーブンで加熱することによって硬化されてもよい。UV硬化可能なクッション層の場合、クッション層13は、PETまたはガラスのような、この形式の放射線に対して透過性であるベースシートが使用される場合、例えばベースシート7を通して、UV線を加えることによって硬化される。
【0296】
このため、突出部14は、硬化されたクッション層13でしっかりと保持され、ベースシートの裏の面18およびパターン面1の、実質的に平行な相対的整列は、更なる処理の最初から最後まで信頼性良く維持される。
【0297】
しかしながら、前述したクッション層13を硬化するステップは任意的である点に留意されたい。あるいは、クッション層13は、非硬化性接着材、非硬化性樹脂または非硬化性ゲルのような非硬化性材料で形成されてもよく、或いは、クッション層13は、硬化性材料で形成されてもよいが、ウェハWを処理する方法において硬化されなくてもよい。
【0298】
続いて、クッション層13を硬化させる任意ステップの後、ウェハWの表面1は、平坦かつ平らな面であるベースシート7の裏の面18がチャックテーブル20(
図6を参照)の最上面に置かれる状態で処理される。特に、処理ステップは、ウェハWの表面1を切断する(例えば、分割ライン11に沿ってウェハWを切断する)ステップを含み、或いは、そのステップから成り得る。このように、ウェハWは、個々のチップまたはダイへと分割可能であるが、各々のチップまたはダイは、それぞれのデバイス27を有する(
図2を参照)。
【0299】
ウェハWを分割ライン11に沿って切断するステップは、
図8において点線によって表示される。この図に例示されるように、本発明の実施形態において、ウェハWは、その表面1から切断される。ウェハWの切断は、機械的切断(例えば、ブレードダイシング、鋸引き)により、および/または、レーザ切断により、および/または、プラズマ切断により行われてもよい。たとえば、レーザ切断は、レーザアブレーションによって、或いは、レーザ照射によって分割ライン11に沿ってウェハWの内側に改質層を形成することによって、行われてもよい。ウェハWは、単一の機械的切断ステップ、単一のレーザ切断ステップまたは単一のプラズマ切断ステップで切断されてもよい。
【0300】
あるいは、ウェハWは、連続した機械的切断および/またはレーザ切断および/またはプラズマ切断ステップによって切断されてもよい。さらに、切断処理は、異なる切断幅を用いた連続した切断ステップを使用して行われてもよい。
【0301】
ベースシート7の平坦な裏の面18は、切断装置(図示せず)の一部を形成し得るチャックテーブル20の最上面に置かれ、ウェハWの表面1に対して実質的に平行であることから、例えば切断ブレード又は鋸によってウェハWに加えられる圧力は、切断処理中、ウェハWにわたって、均一かつ均質に分布される。このため、ウェハWの破壊の危険性を最小限に抑えることができる。さらに、ベースシート7の裏の面18およびウェハWの表面1の、平らで均一な実質的に平行な整列は、高精度で切断ステップを実行することを可能にするので、結果として生じるチップ又はダイの、特に、良好に規定された一様な形状およびサイズを達成する。
【0302】
保護フィルム4は、ウェハWの裏面6に形成された突出部14を覆うので、例えばクッション層13を形成する材料の残渣による汚染および損傷から突出部14を保護する。さらに、保護フィルム4は、ウェハWの裏面6とクッション層13との間の追加のクッション又は緩衝物として機能するので、切断のような処理中、圧力の一様かつ均質分布に更に寄与する。そのため、切断処理中のウェハWの破壊は、特に信頼性良く避けられる。
【0303】
チップ又はダイが切断ステップにおいて、互いに完全に分割された後、それらは、ピックアップデバイス(図示せず)によってピックアップされてもよい。
【0304】
このピックアップステップを実行する前に、ベースシート7およびクッション層13が、分割されたウェハWから共に除去されてもよく、チップ又はダイが、保護フィルム4上に残ってもよい。このように、分離されたダイ又はチップは、保護フィルム4から、特に単純かつ効率の良い方法で、ピックアップ可能である。たとえば、保護フィルム4は、拡張ドラムなどを使用して、径方向に拡張されてもよく、これによって、隣接したチップ又はダイの間の隙間を増やし、ピックアップを容易にする。保護フィルム4は、外部刺激を加えることによって、更に、接着層9によって、それぞれ、保護フィルム4の表の面4aの中央領域および周辺領域でウェハWの裏面6に付けられることから、特に信頼性良く効率の良い方法で、チップ又はダイを互いに分離させる処理を実行することができる。
【0305】
クッション層13は、その硬化後、ある程度の圧縮性、弾性および/または柔軟性、例えばゴム状の挙動を呈してもよいので、ウェハWからの簡単な除去を可能にする。代替又は追加で、硬化済みクッション層13を軟化し、更に取り外し処理を容易にするため、熱湯のような他の外部刺激が、取り外しの前に、硬化済みクッション層13に加えられてもよい。
【0306】
保護フィルム4は、ウェハWの裏面6に配置され、接着層9の接着材が裏面6の周辺部分とだけ接触するが、これは、ウェハWの表面1上の周辺限界領域3に対応している。保護フィルム4の表の面4aの中央領域およびウェハ裏面6の間、即ち、保護フィルム4および分離されたチップ又はダイの間には、何の材料も、特に、何も接着材が存在しない。このため、ピックアップ処理において、例えば、チップ又はダイ上の接着層9又は接着材残渣の接着力によるチップ又はダイの可能な汚染またはチップ又はダイに対する損傷リスクは排除される。
【0307】
以下、
図9~
図12を参照して、本発明の他の実施形態に従うウェハWを処理する方法を説明する。
【0308】
図9~
図12の実施形態に従う方法は、主として、保護シーティング5というより保護フィルム4が使用され、表の面4aおよびウェハの裏面6が互いに接触している全体の領域において、保護フィルム4の表の面4aに何も接着材が設けられない点で、
図1~
図8の実施形態に従う方法とは異なる。さらに、ウェハWの裏面6には、何も突出部又は突起が存在しない。本実施形態の説明において、
図1~
図8の実施形態の説明と類似または実質的に同一である要素は、同一の参照符合によって示され、重複する詳細な説明は省略する。
【0309】
図9に示されたウェハWのデバイス領域2は、ウェハWの平坦面から突出する複数の突出部24を備えて形成されている。突出部24は、たとえば、分離されたチップ又はダイにおいて、デバイス領域2のデバイスとの電気接触を確立する為のバンプでもよい。ウェハWの厚さ方向における突出部24は、20~500μmの範囲内の高さでもよい。
【0310】
保護フィルム4をウェハWに加える前に、保護フィルム4の周辺部分は環状フレーム25(
図5を参照)に装着される。その後、保護フィルム4は、ウェハWの裏面6に加えられるので、保護フィルム4の前の面4aがウェハの裏面6と接触している全体の区域において、保護フィルム4の前の面4aは裏面6と直接接触する。そのため、前の面4aおよび裏面6の間には、何も材料、特に、何も接着材が存在しない。
【0311】
保護フィルム4をウェハWの裏面6に加えた後、保護フィルム4に外部刺激が加えられるので、保護フィルム4はウェハWの裏面6に付けられる。保護フィルムに外部刺激が加える処理は、
図1~
図8の実施形態の為に前述した実質的に同一の方法で、特に保護フィルム4を加熱することによって、行われてもよい。この付けるステップの結果が
図9に示されている。
【0312】
その後、ウェハWが処理され、即ち、
図10において矢印および点線によって表示されるように、その表面1から分割ライン11(
図2を参照)に沿って切断される。切断ステップは、
図1~
図8の実施形態の為に前述された実質的に同一の方法で行われてもよい。
【0313】
この切断処理において、ウェハWは、例えば、機械的切断処理、レーザ切断処理、プラズマ切断処理によって、完全に個々のチップ又はダイへと分割されてもよい。その後、完全に分割されたチップ又はダイは、たとえば、拡張ドラムなどを使用して、保護フィルム4を径方向に拡張させることによって、したがって、
図11に示されるように、隣接したチップ又はダイの間の距離を増加することによって、互いに離れるように移動されてもよい。このように、例えばピックアップデバイス(図示せず)によって、チップ又はダイをピックアップする以下のステップは著しく容易になる。
【0314】
径方向に保護フィルム4を拡張させることによってチップ又はダイを互いに遠ざけるように移動させるステップは、チップ又はダイが特に効率良い方法で分離することを可能にする。特に、拡張テープのような分離した接着テープ上にウェハWを再装着することは不要であり、処理ステップの数を減らすことができる。
【0315】
あるいは、個々のチップ又はダイを得るために、ウェハWはステルスダイシング処理、即ち、前述したように、レーザビームを加えることによってウェハW内部に改質区域が形成される処理を受けてもよい。レーザビームは、その表面1からウェハWに加えられる。その後、
図11の2つの矢印によって表示されるように、径方向に保護フィルム4を拡張させることによって、改質区域が形成された場所で、分割ライン11に沿って、ウェハWが分割され、例えば破損されてもよい。
【0316】
保護フィルム4の表の面4aおよびウェハの裏面6の間、即ち、保護フィルム4及び分離されたチップ又はダイの間には、何も材料、特に接着材が存在しない。このため、例えば、チップ又はダイにおける接着層または接着材残渣の接着力による、チップ又はダイの可能な汚染又はチップ又はダイに対する可能な損傷のリスクは排除される。
【0317】
ウェハWを分割する代替方法は、
図12に例示されている。このアプローチでは、ウェハWの表面から切断またはステルスダイシング処理を行うというより、ウェハWは、その裏面6からステルスダイシングを受ける。
図12の矢印で表示されるように、特に、パルスレーザビームが、ウェハWに、その裏面6から加えられる。保護フィルム4は、パルスレーザビームに対して透過性の材料から形成される。このため、レーザビームは、保護フィルム4を透過して、分割ライン11に沿って、(
図12に点線で表示された)複数の改質区域をウェハW内に形成する。これらの改質区域をウェハW内に形成した後、ウェハWは、径方向に保護フィルム4を拡張させることによって分割ライン11に沿って(
図11を参照)、分割される(例えば破壊される)。
【0318】
ウェハWの裏面6からステルスダイシングを行うことは、金属構造体などのような要素がウェハ表面1に設けられ、これらがパルスレーザビームの透過に影響を与える又は妨害する場合、特に有利である。
【0319】
以下、
図13~
図18を参照して、本発明の他の実施形態に従うウェハWを処理する方法を説明する。
【0320】
本発明の実施形態の説明において、先の実施形態の要素と類似または実質的に同一である要素は同一の参照符合によって示され、重複する詳細な説明を省略する。特に、
図13に示されたウェハWは、
図9に示されたウェハと実質的に同一である。
【0321】
この実施形態の方法において、ウェハの材料は、ウェハWの表面1から分割ライン11に沿って(
図15A及び
図15Bを参照)除去される。この処理において、ウェハの材料は、ウェハWの厚さの一部だけに沿って除去されるので、
図13,
図15A、
図15Bに示されるように、分割ライン11に沿って伸びる溝を形成する。
【0322】
ウェハの材料は、前述された同一の方法で分割ライン11に沿って除去されてもよい。特に、ウェハの材料は、分割ライン11に沿って機械的に除去されてもよい。たとえば、ウェハの材料は、分割ラインに沿ってウェハWを機械的に切断することによって(例えばブレードダイシング又は鋸によって)、分割ライン11に沿って除去されてもよい。代替または追加で、ウェハの材料は、レーザ切断および/またはプラズマ切断によって、分割ライン11に沿って除去されてもよい。
【0323】
図15Aに示されるように、分割ライン11に沿ってウェハの材料を除去する処理は、ウェハWの側方縁部まで溝28が完全に伸びないように行われてもよい。この場合、ウェハWの周辺部分では何もウェハの材料が除去されない。このように、デバイス領域2を、汚染から特に信頼性良く保護できる。特に、ウェハ面に特に密着させて、保護フィルム4をウェハWの周辺部分に付けることができるので、デバイス領域2を効率良く密封する。
【0324】
あるいは、
図15Bに示されるように、分割ライン11に沿ってウェハの材料を除去する処理は、ウェハWの側方縁部まで溝が完全に伸びるように行われてもよい。
【0325】
分割ライン11に沿ってウェハの材料を除去した後、ウェハW上のデバイスを覆う為に、保護フィルム4がウェハWの表面1に加えられ、保護フィルム4の前の面4aがウェハの表面1と接触する全体の区域で、保護フィルム4の表の面4aは表面1と直接接触する。そのため、保護フィルム4およびウェハ表面1の間には、何も材料、特に接着材が存在しない。保護フィルム4は、ウェハWと同一の形状を有するのが好ましく、即ち、本実施形態においては、円形形状を有し、同心でウェハWに付けられるのが好ましい。保護フィルム4の直径は、
図14に概略的に示されるように、ウェハWの直径と、ほぼ同一である。
【0326】
保護フィルム4をウェハWの表面1に加えた後、保護フィルム4が表面1に付けられるように、保護フィルム4に外部刺激が加えられる。保護フィルム4に外部刺激を加えるステップは、
図1~
図8の実施形態の為に前述された同一の方法で、特に、保護フィルム4を加熱することによって、実質的に行われてもよい。付けるステップの結果は、
図14に示されている。保護フィルム4が付けられた状態において、ウェハの表面1の平坦面から突出する突出部24は、保護フィルム4に完全に埋め込まれる。
【0327】
その後、ウェハWの裏面6は、ウェハの厚さを調整する為に研削される。ウェハの裏面6の研削は、何もウェハ材料が除去されなかったウェハWの厚さの残部に沿って行われるので、ウェハWを分割ライン11に沿って分割し、それによって、個々のチップ又はダイを得る。この研削ステップの結果は、
図16に示される。ウェハWの裏面6を研削した後、裏面6は、研磨され、さらに/または、エッチング(例えば、プラズマエッチング)されてもよい。
【0328】
以下のステップにおいて、拡張テープのような拡張可能な接着テープ30が、ウェハWの、研磨された裏面6に付けられる。接着テープ30の周辺部分は、環状フレーム25に装着される。この付けるステップの結果は、
図17に示されている。
【0329】
接着テープ30が、研削されたウェハの裏面6に付けられた後、保護フィルム4が除去される。接着テープ30は、
図18の2つの矢印によって表示されるように、その後、例えば拡張ドラムなどを使用することによって、径方向に拡張され、分割されたチップ又はダイを互いに遠ざけるように移動し、それによって、隣接したチップ又はダイの距離を増加する。その後、チップ又はダイは、例えばピックアップデバイス(図示せず)を使用することによって、ピックアップされてもよい。
【0330】
以下、
図19~
図27を参照して、本発明の他の実施形態に従うウェハWの処理方法を説明する。
【0331】
本実施形態の説明において、先の実施形態の要素と類似または実質的に同一の要素には同一符号が示され、重複した説明を省略する。特に、
図19に示されたウェハWは、
図9に示されたウェハWと実質的に同一である。
【0332】
この実施形態の方法において、(
図20の矢印によって表示されるように)接着層9を有する保護フィルム4が、ウェハW上のデバイス27を覆う為に、ウェハWの表面1に加えられ、保護フィルム4の表の面4aがウェハWの表面1と直接接触する。そのため、保護フィルム4の表の面4aの中央領域およびウェハ表面1の間には何も材料、特に接着材が存在しない。
【0333】
接着層9は、環状形状を有し、保護フィルム4の表の面1の周辺領域だけに設けられている。周辺領域は、保護フィルム4の表の面4aの中央領域を囲んでいる。保護フィルム4は、ウェハの表面1に加えられるので、接着層9の接着材は、表面1の周辺部分だけと接触するようになる。この、表面1の周辺部分は、何もデバイス27が形成されていない周辺限界領域3に配置される。この点で、より簡単に表示するため、接着層9は、
図22~
図24には示されていないことに留意されたい。
【0334】
保護フィルム4は、ウェハWと同一形状を有するのが好ましく、即ち、本実施形態においては、円形形状を有し、ウェハWと同心に付けられるのが好ましい。保護フィルム4の直径は、
図21および
図22に概略的に示されるように、ウェハWの直径とほぼ同一である。
【0335】
保護フィルム4は、突出部24を含む、デバイス領域2に形成されたデバイス27を覆うので、損傷または汚染に対してデバイス27を保護する。さらに、保護フィルム4は、ウェハWの後の処理(例えば、後の研削ステップ)において、クッションとして作用する。
【0336】
保護フィルム4をウェハWの表面1に加えた後、保護フィルム4がウェハ表面1に付けられる(即ち、完全に付けられる)ように、保護フィルム4に外部刺激が加えられる。外部刺激を保護フィルム4に加えるステップは、特に、保護フィルム4を加熱することによって、
図1~
図8の実施形態の為に詳述された実質的に同一の方法で行われてもよい。この付けるステップの結果は、
図22に示されている。保護フィルム4の付けられた状態において、ウェハの表面1の平坦面から突出する突出部24は、保護フィルム4に完全に埋め込まれる。
【0337】
ウェハWの表面1および保護フィルム4の前の面4aの中央領域の間の付ける力は、外部刺激(例えば加熱処理)を加えることを通じて発生される。特に、保護フィルム4の加熱によって、形態嵌合及び/又は材料結合が、この中央領域において、保護フィルム4およびウェハWの間に形成されてもよい。
【0338】
さらに、保護フィルム4の前の面4aの周辺領域は、接着層9によって、ウェハWの表面1の周辺部分に接着されるので、特に頑丈かつ信頼性の良い保護フィルム4の接着を確保する。
【0339】
保護フィルム4をウェハWの表面1に付けた後、ウェハWの裏面6が処理される。ウェハWの裏面は、研削および/または研磨および/またはエッチングおよび/または切断によって処理される。
【0340】
本実施形態の方法において、ウェハの裏面6は、保護フィルム4をウェハの表面1に付けた後、ウェハの厚さを調整する為に研削される。この研削ステップの結果が
図23に示されている。ウェハWの裏面6を研削した後、裏面6は研磨および/またはエッチング(例えばプラズマエッチング)されてもよい。
【0341】
その後、ウェハの裏面6が更に処理され、即ち、
図24の点線および矢印によって表示されるように、分割ライン11(
図21を参照)に沿って切断される。切断ステップは、
図1~
図8の実施形態で詳述された同一方法で実質的に行われてもよい。
【0342】
この切断処理において、ウェハWは、例えば、機械的切断処理、レーザ切断処理またはプラズマ切断処理によって、個々のチップ又はダイへと完全に分割されてもよい。その後、拡張テープのような拡張可能な接着テープ30は、ウェハWの、研削された裏面6に付けられてもよい(
図25を参照)。
【0343】
接着テープ30が、研削されたウェハの裏面6に付けられた後、保護フィルム4が除去されてもよい。その後、
図25の2つの矢印によって表示されるように、例えば、拡張ドラムなどを使用することによって、接着テープ30を径方向に拡張させてもよく、分離されたチップ又はダイを互いに遠ざかるように移動させ、これによって、隣接したチップ又はダイの間の距離を増加する。その後、チップ又はダイは、例えば、ピックアップデバイス(図示せず)によってピックアップされてもよい。
【0344】
あるいは、個々のチップ又はダイを得るために、ウェハWは、研削された裏面6からステルスダイシング処理を受けてもよい。その後、接着テープ30は、研削されたウェハWの裏面6に付けられ、保護フィルム4が除去され、径方向に接着テープ30を拡張することによって改質区域が形成される場所で分割ライン11に沿って、ウェハWが分割(例えば破壊)されてもよい。
【0345】
ウェハWを分割する代替法は、
図26および
図27に例示されている。このアプローチでは、ウェハWの裏面6を研削した後、研削されたウェハの裏面6に接着テープ30が付けられ、保護フィルム4が除去される。接着テープ30の周辺部分は、環状フレーム25に装着される。これらの付けるステップおよび除去ステップの結果は、
図26に示されている。その後、ウェハWは、
図27の矢印および点線によって表示されるように、その表面1から分割ライン11に沿って切断またはステルスダイシングを受ける。