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特許7458995芳香化学物質として使用するための2-フリル-及び2-チエニル-置換ジ-及びテトラヒドロピラン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】芳香化学物質として使用するための2-フリル-及び2-チエニル-置換ジ-及びテトラヒドロピラン
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240325BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20240325BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240325BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20240325BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240325BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240325BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240325BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240325BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20240325BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q13/00 101
A61Q11/00
A61Q19/10
A61K47/22
A61P1/02
A61P17/00
A23L27/00 Z
A23L27/20 G
C11B9/00 G
C11B9/00 H
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020565769
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063516
(87)【国際公開番号】W WO2019224373
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】18174317.0
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブル ロイク,ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】ダンツ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ペルツァー,ラルフ
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522781(JP,A)
【文献】特表2017-530126(JP,A)
【文献】国際公開第2016/046360(WO,A1)
【文献】特表2010-511016(JP,A)
【文献】Journal American Chemical Society,2016年,Vol.138 ,pp.10822-10825
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
A23L27/00-27/4
C11B 1/00-15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Science Direct
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香化学物質としての、一般式(I):
【化1】
(式中、
XはO又はSであり;
XがOである場合:
R 1 は、OH、O-C 1 -C 4 -アルキル又はO-(C=O)-R 5 であり、
R 2 、R 3 、R 4 は水素であり、
R 5 は、C 1 -C 4 -アルキルであり、
XがSである場合:
R1、OHであり;
R2、R3、R4は水素であるか;
又はR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表し、R 2 、R 3 、R 4 の他の2つは水素である)
の化合物、2つ以上の異なる化合物(I)の混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物の使用。
【請求項2】
XがSであり、式(I)の化合物が、化合物I-1、I-2又はI-3であるか(ここで、化合物I-1は、R2がR1と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物であり、化合物I-2は、R3がR1と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物であり、化合物I-3は、R4がR1と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物である);あるいは、化合物I-1、I-2及びI-3の少なくとも2つの混合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記混合物が、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1を0~10重量%の量で、化合物I-2を1~80重量%の量で、化合物I-3を15~99重量%の量で含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)において、R1がOHである、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
式(I)において、XがOであり、R1が、O-C1-C4-アルキルである、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
式(I)において、XがOであり、R1がO-(C=O)-R5である、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
XがOである、請求項1及び4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
XがSである、請求項1及び4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
嗅覚印象を付与するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
フレグランスとしての、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
フレグランスを付与した即時使用可能な組成物の香りの特徴を改質するための、請求項1~8のいずれか1項に定義される式(I)の化合物、その立体異性体、その立体異性体の混合物、又は異なる化合物(I)の混合物の使用。
【請求項12】
香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物から選択される組成物における、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に定義される少なくとも1つの式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物と、化合物(I)とは異なる芳香化学物質及び非芳香化学物質担体からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる化合物とを含む組成物。
【請求項14】
前記非芳香化学物質担体が、界面活性剤、皮膚軟化剤及び溶媒からなる群から選択され、ここで溶媒は、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、トリエチルシトレート及びベンジルベンゾエートからなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物、並びに作物保護組成物からなる群から選択される、請求項13又は14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
一般式(I.a):
【化2】
(式中、
R1は、OH、O-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5であり、
R5、C 1-C4-アルキルである)
の化合物、異なる化合物(I.a)の混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物。
【請求項17】
R1が、OH又はO-C1-C4-アルキルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
一般式(I.b):
【化3】
(式中、
R1、OHであり、
R2、R3、R4は水素であるか;
又はR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表し、R 2 、R 3 、R 4 の他の2つは水素である)
の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物。
【請求項19】
少なくとも2つの異なる一般式(I.b):
【化4】
(式中、
R 1 は、OHであり、
R 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表し、R 2 、R 3 、R 4 の他の2つは水素である)
の化合物の混合物であって、前記混合物が、化合物I-1、I-2及びI-3の少なくとも2つの混合物であり、ここで、化合物I-1においては、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、化合物I-2においては、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、化合物I-3においては、R4はR1と一緒になって二重結合を表す、混合物。
【請求項20】
前記混合物が、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1を0~10重量%の量で、化合物I-2を1~80重量%の量で、化合物I-3を15~99重量%の量で含む、請求項19に記載の混合物。
【請求項21】
請求項16若しくは17に記載の式(I.a)の化合物、又は異なる化合物(I.a)の混合物を調製する方法であって、
式(I.a)の化合物(ここでR1はOHである)を調製するためには:
(i) ブレンステッド酸の存在下で、3-メチルブタ-3-エン-1-オールとフラン-2-カルボアルデヒドとを反応させて、請求項1に定義される式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR1はOHである)と、1つ以上の式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)とを含む粗生成物混合物を得ること;及び
(ii) 式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR1はOHである)を単離すること;
を含み、
式(I.a)の化合物(ここでR1はO-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5である)を調製するためには:
(v) 式(I.a)の化合物(ここでR1はOHである)を、アルキル化反応又はアシル化反応に供すること
を含む、前記方法。
【請求項22】
請求項18に記載の式(I.b)の化合物、又は異なる式(I.b)の化合物の混合物を調製する方法であって、
(i') ブレンステッド酸の存在下で、3-メチルブタ-3-エン-1-オールとチオフェン-2-カルボアルデヒドとを反応させて、式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)と、1つ以上の式(I.b)の化合物(ここでR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)とを含む粗生成物混合物を得ること、
(ii') 式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)を得るために、式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)を単離すること;
又は、ステップ(ii')の代わりに、
(iii') 式(I.b)の化合物(ここでR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)を得るために、式(I.b)の化合物(ここでR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)を、式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)から分離すること
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香化学物質(aroma chamical)としての2-フリル-及び2-チエニル-置換ジ-及びテトラヒドロピランの使用、少なくとも1つの2-フリル-又は2-チエニル-置換ジ-又はテトラヒドロピランを含む芳香化学物質組成物、及び、芳香化学物質組成物、特にフレグランスを付与した(fragranced)組成物、とりわけフレグランスを付与した(fragranced)即時使用可能な組成物を調製する方法であって、かかる組成物中に少なくとも1つの2-フリル-又は2-チエニル-置換ジ-又はテトラヒドロピランを組み込むことを含む、上記方法に関する。本発明はさらに、特定の2-フリル-及び2-チエニル-置換ジ-及びテトラヒドロピラン並びにそれらの調製のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香化学物質、とりわけフレグランスは、とりわけ化粧品組成物並びに洗浄組成物及び洗濯組成物の分野において、大きな関心が寄せられている。天然由来のフレグランスは、大部分が高価であり、多くの場合入手可能な量は限られており、環境条件の変動のため、含有量、純度等における変化も受けやすい。そのため、これらの望ましくない要素を回避するために、より高価な天然フレグランスの感覚刺激特性に類似した感覚刺激特性を有するか、又は新規な且つ興味深い感覚刺激プロファイルを有する合成物質を作り出すことに大きな関心が寄せられている。
【0003】
多数の合成芳香化学物質(フレグランス及び香味料)が既に存在するにもかかわらず、極めて多様な適用領域について所望される数多くの特性を満たすことができるように、新たな成分が絶えず必要とされている。これらは、第一に感覚刺激特性を含み、すなわち、化合物は有利な発香(嗅覚)特性又は味覚特性を有するべきである。しかしながら、芳香化学物質はさらに、付加的な好ましい第2の特性、例えば、効率的な調製方法、他のフレグランスとの相乗効果の結果としてより優れた感覚プロファイルを提供し得ること、特定の適用条件下におけるより高い安定性、より高い拡張性、より優れた持続力等も有するべきである。
【0004】
しかしながら、化学構造における小さな変化でさえも、匂い及びまた味などの感覚特性における大きな変化をもたらすため、特定の感覚特性(例えば特定の匂い)を有する物質を標的とする探索は、極めて困難である。従って、新たなフレグランス及び香味料の探索は、大半の場合、困難で時間と労力を要し、所望の匂い及び/又は味を有する物質が実際に見出されるか否かさえ不明である。
【0005】
2,4,4-三置換テトラヒドロピラン化合物は、芳香化学物質として繰り返し言及されている。例えば、EP 0383446 A2は、式(A)の2,4,4-三置換テトラヒドロピラン(式中、RIはメチル又はエチルであり、RIIは、直鎖又は分岐鎖のC2-C4-アルキル又はC2-C4-アルケニルである)について記載している。
【0006】
US 4,962,090は、式(B)の2,4-二置換及び2,2,4-三置換テトラヒドロピラニル-4-エーテル(式中、R'はメチル又はエチルを表し、Ra及びRbは、水素、フェニル、C1-C8-アルキル及びC2-C8-アルケニルから選択されるか、又は、一緒になってC5-C12-シクロアルキル又はアルキルシクロアルキルを表す)について記載している。
【0007】
【化1】
【0008】
L. Liuら, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10822-10825は、芳香族又は脂肪族アルデヒドと3-メチルプロパ-3-エン-1-オールとの非対称Prins環化による、キラルな2-置換4-メチレンテトラヒドロピランを調製する方法について記載している。とりわけ、2-(フラン-2-イル)-4-メチレンテトラヒドロピラン及びその位置異性体の合成が記載されている。
【0009】
J. A. Marcoらは、Tetrahedron 2003, 59, 4085-4101において、閉環メタセシスを介した、アルデヒド及びケトン由来のコンジュゲート化されたγ-及びδ-ラクトンの合成について記載している。とりわけ、2-(2-フリル)-4-メチル-3,6-ジヒドロ-2H-ピランの合成が記載されている。
【0010】
これまでのところ、2-フリル-及び2-チエニル-置換ジ-及びテトラヒドロピランは、芳香化学物質としては未だに示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】EP 0383446 A2
【文献】US 4,962,090
【非特許文献】
【0012】
【文献】L. Liuら, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10822-10825
【文献】J. A. Marcoら, Tetrahedron 2003, 59, 4085-4101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、快い感覚刺激特性を呈し、且つ芳香化学物質として有利に使用し得る物質を提供することであった。本発明のさらなる目的は、即時使用可能な組成物中の芳香化学物質として使用し得る物質を提供することであった。特に、快い匂いを有する、匂いの強い物質が求められる。さらに、これらの芳香化学物質は、他の芳香化学物質と組合せることが可能であり、新規の有利な感覚プロファイルの創出を可能とするべきである。また、これらの芳香化学物質は、それらの迅速且つ経済的な製造を可能とする容易に入手可能な出発材料から得られるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、これらの及びさらなる目的は、式(I)の化合物、その混合物(2つ以上の異なる化合物(I)、例えば2、3又は4つの異なる化合物(I)の混合物を意味する)、その立体異性体、及びその立体異性体の混合物によって達成されることが見いだされた。
【0015】
従って、本発明の第1の態様は、芳香化学物質としての、一般式(I):
【0016】
【化2】
(式中、
XはO又はSであり;
R1は、水素、OH、O-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5であり;
R2、R3、R4は水素であるか;
又はR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表し;
R5は、水素及びC1-C4-アルキルからなる群から選択される)
の化合物(その立体異性体を含む)の使用に関する。
【0017】
本発明はまた、芳香化学物質としての、異なる式(I)の化合物の混合物(二重結合異性体の混合物を含む)、及びその立体異性体の混合物の使用にも関する。
【0018】
本発明はさらに、上記に定義される少なくとも1つの式(I)の化合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物と、化合物(I)とは異なる芳香化学物質及び非芳香化学物質担体からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる化合物とを含む芳香化学物質組成物に関する。
【0019】
一般式(I)の化合物は、一般的に、快く特徴的な匂いを呈し、フレグランスを付与した即時使用可能な組成物を製造するために使用し得ることがさらに見出された。加えて、これらを、化合物(I)とは異なる他の芳香化学物質と有利に組み合わせて、新たな香りプロファイルを創出することができる。
【0020】
従って、本発明はさらに、少なくとも1つの式(I)の化合物、その立体異性体、又はその立体異性体の混合物を、組成物中に、特に即時使用可能な組成物中に組み込むことを含む、芳香化学物質組成物、特にフレグランスを付与した組成物、とりわけフレグランスを付与した即時使用可能な組成物を調製する方法に関する。
【0021】
本発明はまた、フレグランスを付与した即時使用可能な組成物の香りの特徴を改質するための、上記に定義される式(I)の化合物、その立体異性体、その立体異性体の混合物、又は異なる化合物(I)の混合物の使用にも関する。
【0022】
式(I)の化合物の群の中でも特に、本明細書中以下に記載される式(I.a)の2-(2-フリル)-テトラヒドロピラン化合物、及び本明細書中以下に記載される式(I.b)の2-(2-チエニル)-テトラヒドロピラン化合物は、当技術分野において記載されていない。
【0023】
従って、本発明は、一般式(I.a):
【0024】
【化3】
(式中、
R1は、水素、OH、O-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5であり、
R5は、水素及びC1-C4-アルキルからなる群から選択される)
の新規な化合物、異なる化合物(I.a)の混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物、
及びかかる化合物を製造する方法にも関する。
【0025】
さらに、本発明は、一般式(I.b):
【0026】
【化4】
(式中、
R1は、水素、OH、O-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5であり、
R2、R3、R4は水素であるか;
又はR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表し;
R5は、水素及びC1-C4-アルキルからなる群から選択される)
の新規な化合物、異なる化合物(I.b)の混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物;
及びかかる化合物を製造する方法に関する。
【0027】
本発明はまた、少なくとも2つの異なる式(I)の化合物の混合物にも関する。特に、この混合物は、式(I)の化合物の2つ又は3つの二重結合異性体を含む。
【0028】
式(I)の化合物、それらの混合物、それらの立体異性体又はそれらの立体異性体の混合物は、有利な感覚刺激特性、特に快い匂いを有する。従って、これらは、例えば、香水組成物、ボディケア組成物(化粧品組成物を含む)、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物(食器洗い組成物を含む)、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物、作物保護組成物、及び他の即時使用可能な組成物において、芳香化学物質として好ましく使用することができる。
【0029】
それらの物理的特性により、式(I)の化合物、それらの立体異性体又はそれらの立体異性体の混合物は、他のフレグランス、及びフレグランスを付与した即時使用可能な組成物(例えば特に香水組成物)中の他の慣用の成分について、特に優れた、実質的に普遍的な溶媒特性を有する。従って、式(I)の化合物、それらの立体異性体又はそれらの立体異性体の混合物は、他の芳香化学物質と好ましく組み合わせることが可能であり、特に、新規の有利な感覚プロファイルを有する香水組成物の創出を可能とする。
【0030】
さらに、式(I)の化合物、それらの立体異性体又はそれらの立体異性体の混合物は、容易に入手可能な出発化合物から出発して、1ステップ合成又は2ステップ合成により、それぞれ優れた収率及び純度で製造することができる。従って、式(I)の化合物、それらの立体異性体又はそれらの立体異性体の混合物は、大規模に、且つ簡単でコスト効率の高い方法で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明の文脈において、「C1-C4-アルキル」という表現は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、及びtert-ブチルを指す。好ましくは、「C1-C4-アルキル」という表現は、C1-C3-アルキル(すなわちメチル、エチル、n-プロピル及びイソプロピル)を指し、また特にC1-C2-アルキル(すなわちメチル及びエチル)を指す。
【0032】
R2、R3、R4の1つがR1と一緒になって二重結合を表す場合、これは、当然のことながら、R2、R3又はR4及びR1が結合している炭素原子間に存在する結合と、R2、R3又はR4がR1と一緒になって形成する結合とによって二重結合が形成されることを意味する。従って、R2がR1と一緒になって二重結合を表す場合、これは式(I-1)の化合物を生じる。R3がR1と一緒になって二重結合を表す場合、これは、式(I-2)の化合物を生じる。R4がR1と一緒になって二重結合を表す場合、これは、式(I-3)の化合物を生じる。
【0033】
【化5】
【0034】
これらの化合物は、互いの二重結合異性体とみなすことができる。
【0035】
化合物I-1におけるR3及びR4がHであり、化合物I-2におけるR2及びR4がHであり、化合物I-3におけるR2及びR3がHであることから、式I-1、I-2及びI-3の化合物は、以下のとおりに、より簡単に表すことができる:
【0036】
【化6】
【0037】
R1がHである場合、化合物(I)は、式(I-4)の化合物である。R1がOHである場合、化合物(I)は、式(I-5)の化合物である。R1がO-C1-C4-アルキルである場合、化合物(I)は、式(I-6)の化合物である。R1がO-(C=O)-R5である場合、化合物(I)は、式(I-7)の化合物である。
【0038】
【化7】
【0039】
「立体異性体」という用語は、光学異性体、例えばエナンチオマー又はジアステレオマー(後者は、分子中の2つ以上の不斉中心に起因して存在する)、並びに特定の形態のジアステレオマーとしての幾何異性体(シス/トランス異性体)の両方を包含する。式(I)の化合物は、少なくとも1つの不斉中心(stereogenic center)、すなわち、フラン環(X=O)又はチオフェン環(X=S)を有するジ-又はテトラヒドロピラン環の炭素原子を有する。R1が、水素、OH、O-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5である場合、式(I)の化合物は、1つのさらなる不斉中心を(すなわち、R1を有するジ-又はテトラヒドロピランの炭素原子において)有する。本発明は、純粋なエナンチオマー又はジアステレオマーとそれらの混合物の両方、及び化合物(I)の純粋なエナンチオマー若しくは純粋なジアステレオマー又はそれらの混合物の本発明による使用を提供する。
【0040】
本発明の文脈において、「化合物I」、「化合物(I)」又は「式(I)の化合物」という用語は、特定の立体異性体又は特定の立体異性体の混合物として定義されない場合、その製造のために使用された非立体選択的方法において得られたとおりの化合物の形態を指す。しかしながら、この用語はまた、化合物(I)の立体化学をより詳細に特定する必要性がないか又は特定することができない場合にも使用される。
【0041】
以下において、式(I)の化合物が、特定の定義された化合物である(且つ異なる化合物Iの混合物ではない)と定義される場合、これは、この化合物が、特定の定義された化合物I及び場合により存在する他の化合物(1つ又は複数)Iの全重量に対して、5重量%未満、好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満の他の化合物Iを含むことを意味する。
【0042】
異なる化合物(I)を含む混合物において、これらは、1つ以上のR1基~R4基及び/又はX基の定義において異なり得る。好ましくは、混合物中の化合物は、1つ以上のR1基~R4基の定義においてのみ異なる。より好ましくは、混合物は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の2つ又は3つを含む。製造方法に起因して、このような混合物は、少量の化合物(I-5)をさらに含み得る。「少量」とは、混合物中に含まれる化合物(I-1)、(I-2)、(I-3)及び(I-5)の総重量に対して、3重量%未満、好ましくは1重量%未満を意味する。一般的に、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の2つ又は3つの混合物は二重結合異性体の混合物であり、これは、混合物中に含まれる化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の全てにおいて(また存在する場合、化合物(I-5)において)、Xが同じ意味を有し、従って、いずれの場合もOであるか又はいずれの場合もSであることを意味する。(I-1)、(I-2)及び/又は(I-3)においてXが異なる意味を有する混合物もまた本発明の目的に適しているが、化合物(I)の全てにおいてXが同じ意味を有する混合物は、製造方法において自動的に形成される場合が多いことから、それほど経済的ではない。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、XはOである。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、XはSである。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す。
【0046】
より好ましくは、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここでR2はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、又は、化合物(I-2)(ここでR3はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、又は、化合物(I-3)(ここでR4はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物である。このような化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、好ましくは、化合物(I)の二重結合異性体の混合物である(混合物中に含まれる化合物(I-1)、(I-2)、(I-3)の全てにおいてXが同じ意味を有することを意味する)。
【0047】
化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHである化合物I[化合物(I-5)]を含み得る。「少量」とは、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)、又はそれらの混合物(R1がOHである化合物Iを含む)の総重量に対して、3重量%未満、好ましくは1重量%未満を意味する。
【0048】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここでR2はR1と一緒になって二重結合を表す)である。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-2)(ここでR3はR1と一緒になって二重結合を表す)である。別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-3)(ここでR4はR1と一緒になって二重結合を表す)である。とりわけ、式(I)の化合物は、化合物(I-2)である。
【0049】
さらに別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物である。さらに特に、この混合物は、化合物I-2と、化合物I-1及びI-3の1つ又は両方とを含む。代替的なより特定の実施形態において、混合物は、化合物I-1及びI-2と、また場合により化合物I-3とを含む。さらに別の代替的なより特定の実施形態において、混合物は、化合物(I-2)及び(I-3)を含むか、又は3つの化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の全てを含む。
【0050】
特に、上記混合物は、化合物I-2及びI-3と、また場合により化合物I-1とを含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~80重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる。好ましくは、上記混合物は二重結合異性体の混合物であり、これは、混合物中に含まれる化合物(I-2)及び(I-3)において、Xが同じ意味を有することを意味する。とりわけ、上記混合物は、3つの化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の全てを含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.1~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~79.9重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる。好ましくは、上記混合物は、二重結合異性体の混合物であり、これは、混合物中に含まれる化合物(I-1)、(I-2)、(I-3)の全てにおいて、Xが同じ意味を有することを意味する。
【0051】
化合物(I-2)及び(I-3)の二成分混合物の特定の実施形態においては、化合物(I-3)が優位であり、すなわち、化合物(I-3)が、化合物(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して50重量%超の量で存在する。特に、化合物(I-3)は、化合物(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、70~99重量%、さらに特に75~98重量%、とりわけ75~95重量%の量で存在する;その100%に対する差が化合物(I-2)である。
【0052】
化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の三成分混合物の特定の実施形態においては、化合物(I-2)が優位である。特に、化合物(I-2)は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、50~80重量%、さらに特に55~75重量%、とりわけ60~70重量%の量で存在する。とりわけ、三成分混合物において、化合物(I-3)は2番目に多い成分であり、特に、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、15~45重量%、さらに特に20~40重量%、とりわけ28~39.5重量%の量で存在する。化合物(I-1)は、とりわけ少量の化合物であり、特に、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、0.1~10重量%、さらに特に0.5~5重量%、とりわけ0.5~2重量%の量で存在する。当然のことながら、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)のパーセントは、合計で100%になる。
【0053】
化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の三成分混合物の別の特定の実施形態においては、化合物(I-3)が優位である。特に、化合物(I-3)は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、50~90重量%、さらに特に55~90重量%、とりわけ55~85重量%の量で存在する。とりわけ、上記の三成分混合物においては、化合物(I-2)が2番目に多い成分であり、特に、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、9~45重量%、さらに特に9~44.5重量%、とりわけ13~44.5重量%の量で存在する。化合物(I-1)は、とりわけ少量の化合物であり、特に、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、0.1~10重量%、さらに特に0.5~5重量%、とりわけ0.5~2重量%の量で存在する。当然のことながら、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)のパーセントは、合計で100%になる。
【0054】
とりわけ、上記混合物は、化合物I-1、I-2及びI-3を含み、ここで化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.5~1.5重量%の量で含まれ、化合物I-2は15~73.5重量%の量で含まれ、化合物I-3は25~84.5重量%の量で含まれる。当然のことながら、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)のパーセントは、合計で100%になる。
【0055】
前述のとおり、このような化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物では、混合物中に含まれる化合物(I-1)、(I-2)、(I-3)の全てにおいて、Xは好ましくは同じ意味を有する。
【0056】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1は水素である[従って、化合物(I)は化合物(I-4)である]。
【0057】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はOHである[従って、化合物(I)は化合物(I-5)である]。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はO-C1-C4-アルキルである[従って、化合物(I)は化合物(I-6)である]。特に、R1はO-C1-C2-アルキルである(すなわち、R1はメトキシ又はエトキシである)。とりわけ、R1はメトキシである。
【0059】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はO-(C=O)-R5である[従って、化合物(I)は化合物(I-7)である]。好ましくは、R5は、C1-C4-アルキル、特にC1-C2-アルキルである。とりわけ、R5はメチルである(すなわち、R1はアセトキシである)。
【0060】
しかし、より好ましくは、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここでR2はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここでR3はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここでR4はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物であるか(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHである化合物Iを含み得る);あるいは、R1が水素である化合物(I)であるか;又はR1がOHである化合物(I)であるか;又はR1がメトキシである化合物(I)である。特に、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここでR2はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここでR3はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここでR4はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物であるか(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHである化合物Iを含み得る);あるいは、R1が水素である化合物(I)であるか;又はR1がOHである化合物(I)である。とりわけ、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここでR2はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここでR3はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここでR4はR1と一緒になって二重結合を表す)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物である(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHである化合物Iを含み得る)。上記の混合物は、好ましくは、二重結合異性体の混合物(その中に含まれる化合物(I)の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)である。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、式(I)の化合物において、XはOであり、且つR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す。
【0062】
さらに特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここでR2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここでR3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここでR4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、又は、XがOである化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物である。既に上述したとおり、化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHである化合物Iを含み得る。「少量」とは、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)、又はそれらの混合物(R1がOHである化合物Iを含む)の総重量に対して、3重量%未満、好ましくは1重量%未満を意味する。
【0063】
さらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここでR2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)である。別のさらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-2)(ここでR3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)である。別のさらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-3)(ここでR4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)である。とりわけ、式(I)の化合物は、XがOである化合物(I-2)である。
【0064】
さらに別のさらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の少なくとも2つの混合物である。さらに特に、上記混合物は、化合物(I-2)及び(I-3)を含むか、又は3つの化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の全てを含む(ここで、いずれの場合もXはOである)。
【0065】
特に、上記混合物は、化合物I-2及びI-3と、また場合により化合物I-1とを含み(ここで、いずれの場合もXはOである);ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~80重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる。とりわけ、上記混合物は、3つの化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の全てを含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.1~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~79.9重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる。
【0066】
具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の二成分混合物であり、またここで、化合物(I-3)が優位であり、すなわち、化合物(I-3)が、化合物(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して50重量%超の量で存在する。特に、化合物(I-3)は、化合物(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、70~99重量%、さらに特に75~98重量%、とりわけ80~95重量%、またきわめてとりわけ90~95重量%の量で存在し;その100%に対する差が化合物(I-2)である。
【0067】
具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の三成分混合物であり、またここで、化合物(I-2)が優位である。特に、化合物(I-2)は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、50~80重量%、さらに特に55~75重量%、とりわけ60~70重量%の量で存在する。とりわけ、上記の三成分混合物において、化合物(I-3)は2番目に多い成分であり、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、特に15~45重量%、さらに特に20~40重量%、とりわけ28~39.5重量%の量で存在する。化合物(I-1)は、とりわけ少量の化合物であり、特に、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、0.1~10重量%、さらに特に0.5~5重量%、とりわけ0.5~2重量%の量で存在する。当然のことながら、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)のパーセントは、合計で100%になる。
【0068】
別の具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の三成分混合物であり、またここで、化合物(I-3)が優位である。特に、化合物(I-3)は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、50~90重量%、さらに特に70~90重量%、とりわけ75~85重量%の量で存在する。とりわけ、三成分混合物において、化合物(I-2)は2番目に多い成分であり、特に、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、9~45重量%、さらに特に9~29.5重量%、とりわけ13~24.5重量%の量で存在する。化合物(I-1)は、とりわけ少量の化合物であり、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、特に0.1~10重量%、さらに特に0.5~5重量%、とりわけ0.5~2重量%の量で存在する。当然のことながら、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)のパーセントは、合計で100%になる。
【0069】
とりわけ、上記混合物は、化合物I-1、I-2及びI-3(ここで、いずれの場合もXはOである)を含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.5~1.5重量%の量で含まれ、化合物I-2は15~73.5重量%の量で含まれ、化合物I-3は25~84.5重量%の量で含まれる。当然のことながら、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)のパーセントは、合計で100%になる。
【0070】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1は水素であり、且つXはOである(従って、化合物(I)は、XがOである化合物(I-4)である)。
【0071】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はOHであり、且つXはOである(従って、化合物(I)は、XがOである化合物(I-5)である)。
【0072】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はO-C1-C4-アルキルであり、且つXはOである(従って、化合物(I)は、XがOである化合物(I-6)である)。特に、R1はO-C1-C2-アルキルであり(すなわち、R1はメトキシ又はエトキシであり)、且つXはOである。とりわけ、R1はメトキシであり、且つXはOである。
【0073】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はO-(C=O)-R5であり、且つXはOである(従って、化合物(I)はXがOである化合物(I-7)である)。好ましくは、R5はC1-C4-アルキル、特にC1-C2-アルキルであり、且つXはOである。とりわけ、R5はメチルであり(すなわち、R1はアセトキシであり)、且つXはOである。
【0074】
しかし、より好ましくは、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の少なくとも2つの混合物であるか(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHであり且つXがOである化合物Iを含み得る);あるいは、R1が水素であり且つXがOである化合物(I)であるか;又はR1がOHであり且つXがOである化合物(I)であるか;又はR1がメトキシであり且つXがOである化合物(I)である。特に、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の少なくとも2つの混合物であるか(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHであり且つXがOである化合物Iを含み得る);あるいは、R1が水素であり且つXがOである化合物(I)であるか;又はR1がOHであり且つXがOである化合物(I)である。とりわけ、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはOである)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはOである)の少なくとも2つの混合物である(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHであり且つXがOである化合物Iを含み得る)。
【0075】
本発明の別の特定の実施形態では、式(I)の化合物において、XはSであり、且つR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す。
【0076】
別のより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、又は、XがSである化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物である。既に上述したとおり、化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHである化合物Iを含み得る。「少量」とは、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)、又はそれらの混合物(R1がOHである化合物Iを含む)の総重量に対して、3重量%未満、好ましくは1重量%未満を意味する。
【0077】
別のさらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)である。別のさらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)である。別のさらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)である。とりわけ、式(I)の化合物は、XがSである化合物(I-2)である。
【0078】
さらに別の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の少なくとも2つの混合物である。さらに特に、上記混合物は、化合物(I-2)及び(I-3)を含むか、又は3つの化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の全てを含む。
【0079】
特に、上記混合物は、化合物I-2及びI-3と、また場合により化合物I-1(ここで、いずれの場合もXはSである)も含み;ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~80重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる。とりわけ、上記混合物は、3つの化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の全てを含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.1~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~79.9重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる。
【0080】
具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の二成分混合物であり、またここで、化合物(I-3)が優位であり、すなわち、化合物(I-3)が、化合物(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して50重量%超の量で存在する。特に、化合物(I-3)は、化合物(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、50~99重量%、さらに特に55~90重量%、とりわけ55~80重量%の量で存在し;その100%に対する差が化合物(I-2)である。
【0081】
具体的な実施形態において、式(I)の化合物は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の三成分混合物であり、またここで、化合物(I-3)が優位である。特に、化合物(I-3)は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、50~80重量%、さらに特に55~75重量%、とりわけ55~70重量%の量で存在する。とりわけ、三成分混合物において、化合物(I-2)は2番目に多い成分であり、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、特に10~45重量%、さらに特に20~44.5重量%、とりわけ25~43重量%の量で存在する。化合物(I-1)は、とりわけ少量の化合物であり、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)からなる混合物の重量に対して、特に0.1~10重量%、さらに特に0.5~5重量%、とりわけ0.5~2重量%の量で存在する。当然のことながら、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)のパーセントは、合計で100%になる。
【0082】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1は水素であり、且つXはSである(従って、化合物(I)は、XがSである化合物(I-4)である)。
【0083】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はOHであり、且つXはSである(従って、化合物(I)は、XがSである化合物(I-5)である)。
【0084】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はO-C1-C4-アルキルであり、且つXはSである(従って、化合物(I)は、XがSである化合物(I-6)である)。特に、R1はO-C1-C2-アルキルであり(すなわち、R1はメトキシ又はエトキシであり)、且つXはSである。とりわけ、R1はメトキシであり、且つXはSである。
【0085】
本発明の別の好ましい実施形態では、一般式(I)の化合物において、R1はO-(C=O)-R5であり、且つXはSである(従って、化合物(I)は、XがSである化合物(I-7)である)。好ましくは、R5はC1-C4-アルキル(特にC1-C2-アルキル)であり、且つXはSである。とりわけ、R5はメチルであり(すなわち、R1はアセトキシであり)、且つXはSである。
【0086】
しかし、より好ましくは、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の少なくとも2つの混合物であるか(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHであり且つXがSである化合物Iを含み得る);あるいは、R1が水素であり且つXがSである化合物(I)であるか;又はR1がOHであり且つXがSである化合物(I)である。特に、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の少なくとも2つの混合物であるか(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHであり且つXがSである化合物Iを含み得る);あるいは、R1がOHであり且つXがSである化合物(I)である。とりわけ、式(I)の化合物は、化合物(I-1)(ここで、R2はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-2)(ここで、R3はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、若しくは化合物(I-3)(ここで、R4はR1と一緒になって二重結合を表し、且つXはSである)であるか、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(ここで、いずれの場合もXはSである)の少なくとも2つの混合物である(ここで、上記の化合物(I-1)、化合物(I-2)、化合物(I-3)、又は、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の少なくとも2つの混合物は、少量のR1がOHであり且つXがSである化合物Iを含み得る)。
【0087】
式(I)の化合物、その立体異性体、その立体異性体の混合物、及び2つ以上の異なる化合物(I)の混合物は、芳香化学物質として有用である。
【0088】
「芳香化学物質」という用語は、感覚的印象、より厳密には嗅覚又は香味の印象、特にフレグランス又はフレーバーの印象を得るために使用される物質を表す。「嗅覚」という用語は、肯定的又は否定的な判断のいずれも伴わない匂いの印象を表し、一方、「フレグランス」という用語(「香水」又は「香り」とも称される)は、一般に快いと感じられる匂いの印象に結びついている。香味は、味の印象を誘導する。
【0089】
「快い匂い」、「快い匂い印象」、「快い発香特性」、「快いと感じられる匂い印象」及び類似の用語は、芳香化学物質により伝達される匂い印象の心地良さ及び明確性について記載する快楽的表現である。「有利な感覚特性」又は「有利な感覚刺激特性」というより一般的な快楽的表現は、芳香化学物質により伝達される感覚刺激印象の心地良さ及び明確性について記述する。本発明の用語において、「感覚刺激」及び「感覚」という用語は、嗅覚特性又は香味特性に関する。「心地良さ」及び「明確性」は、当業者である調香師によく知られている用語である。「心地良さ」は一般的に、自然に生じ、肯定的に知覚される快い感覚的印象を指す。しかしながら、「心地良い」は「甘い(スウィート)」と同義である必要はない。「心地良い」はまた、ジャコウ又はビャクダンの匂いである場合もある。「明確性」は一般に、同じ試験パネルに再現性よく同じ特定の何かを思い出させる、自然に生じる感覚的印象を指す。例えば、ある物質は、「リンゴ(アップル)」の匂いを自然に思い出させる匂いを有し得る。この匂いはその後、明確に「リンゴ」のものとなるであろう。このリンゴの匂いが、例えば、甘い、十分に熟したリンゴを思い出させることから極めて快いものであった場合、その匂いは「心地良い」と称されるであろう。しかしながら、典型的に酸っぱいリンゴの匂いもまた、明確であり得る。上記物質の匂いを嗅いだ際に、両方の反応が生じる場合、従ってこの例においては心地良く明確なリンゴの匂いがする場合、この物質は、特に有利な感覚特性を有する。
【0090】
「匂いの強い物質」という用語は、強い匂いの印象を呈する物質又は芳香化学物質を指す。強い匂いの印象は、極めて低いガス空間濃度であっても印象的な知覚を可能とする、芳香化学物質の特性を意味するものとして理解されたい。強度は、閾値測定によって決定することができる。閾値とは、代表的な試験パネルにより匂いの印象が依然として知覚され得るにすぎない関連のガス空間中の物質の濃度であるが、これはもはや規定されていなくてもよい。おそらくは最も匂いが強い公知の物質クラスに属する(すなわち、極めて低い匂い閾値を有する)物質クラスはチオールであり、その閾値は、多くの場合、ppb/m3の範囲内である。
【0091】
好ましくは、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、嗅覚印象を付与するために使用される。特に、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、フレグランスとして使用される。
【0092】
特に、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はそれらの立体異性体の混合物は、ガルバナムノート(galbanum note)、ハーバルノート(herbal note)、スモーキーノート(smoky note)、レザーノート(leather note)を付与するために使用されるか;又は、ガルバナムノート、ハーバルノート、スモーキーノート、レザーノートを有する香りを生じさせるために使用される。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、約1:65.5:33.5の重量比で存在する。
【0093】
特に、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はそれらの立体異性体の混合物は、ハーバルノート、スモーキーノート、スパイシーノート(spicy note)、ナツメグノート(nutmeg note)、ガルバナムノート、レザーノート、オークモスノート(oakmoss note)を付与するために使用されるか;又は、ハーバルノート、スモーキーノート、スパイシーノート、ナツメグノート、ガルバナムノート、レザーノート、オークモスノートを有する香りを生じさせるために使用される。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、約1:19.5:79.5の重量比で存在する。
【0094】
特に、上記の化合物(I-2)及び(I-3)の混合物(式中、XはOである)、又はそれらの立体異性体の混合物は、スパイシーノート、ナツメグノート、スモーキーノート、タバコノート(tobacco note)、レザーノート、フェノールノート(phenol note)を付与するために使用されるか;又は、スパイシーノート、ナツメグノート、スモーキーノート、タバコノート、レザーノート、フェノールノートを有する香りを生じさせるために使用される。とりわけ、化合物(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、7:92の重量比で存在する。
【0095】
特に、化合物(I-2)(式中、XはOである)、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、ルートノート(root note)、ガルバナムノート、レザーノート、スパイシーノートを付与するために使用されるか;又は、ルートノート、ガルバナムノート、レザーノート、スパイシーノートを有する香りを生じさせるために使用される。
【0096】
特に、化合物(I)(式中、R1はHであり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-4)(式中、X=O))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、スモークドノート(smoked note)、ライムノート(lime note)、ヒッコリーノート(hickory note)、グリーンノート(green note)、スウィートノート(sweet note)を付与するために使用されるか;又は、スモークドノート、ライムノート、ヒッコリーノート、グリーンノート、スウィートノートを有する香りを生じさせるために使用される。
【0097】
特に、化合物(I)(式中、R1はOHであり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-5)(式中、X=O))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、ガルバナムノート、フローラルノート(floral note)を付与するために使用されるか;又は、ガルバナムノート、フローラルノートを有する香りを生じさせるために使用される。
【0098】
特に、化合物(I)(式中、R1はOCH3であり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、ウォータリーノート(watery note)、メロンノート(melon note)、スライトリービターノート(slightly bitter note)を付与するために使用されるか;又は、ウォータリーノート、メロンノート、スライトリービターノートを有する香りを生じさせるために使用される。
【0099】
特に、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の混合物(式中、XはSである)、又はその立体異性体の混合物は、グリーンノート、ハーバルノート、チャイブノート(chives note)、ウッディノート(woody note)を付与するために使用されるか;又は、グリーンノート、ハーバルノート、チャイブノート、ウッディノートを有する香りを生じさせるために使用される。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはSである)は、1:39:60の重量比で存在する。
【0100】
特に、化合物(I)(式中、R1はOHであり且つXはSである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-5)(式中、X=S))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、ビアノート(beer note)、バーントノート(burnt note)を付与するために使用されるか;又は、ビアノート、バーントノートを有する香りを生じさせるために使用される。
【0101】
化合物(I)、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物は、一般的に、即時使用可能な組成物において、特にフレグランスを付与した即時使用可能な組成物において使用される。本明細書中で使用される「フレグランスを付与した即時使用可能な組成物」は、主に快い匂い印象を誘導する即時使用可能な組成物を指す。
【0102】
フレグランスを付与した即時使用可能な組成物は、例えば、パーソナルケアにおいて使用される組成物、ホームケアにおいて使用される組成物、工業用途において使用される組成物、並びに他の用途において使用される組成物(例えば医薬組成物又は作物保護組成物)である。
【0103】
好ましくは、化合物(I)、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物は、香水組成物、ボディケア組成物(化粧品組成物を含む)、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物(食器洗い組成物を含む)、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物からなる群から選択される組成物において使用される。化合物(I)、その立体異性体、その立体異性体混合物、又はその二重結合異性体は、上記の組成物において、芳香化学物質として、好ましくはフレグランスとして使用される。
【0104】
特に、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はそれらの立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、ガルバナムノート、ハーバルノート、スモーキーノート、レザーノートを付与するために使用される。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、約1:65.5:33.5の重量比で存在する。
【0105】
特に、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はそれらの立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、ハーバルノート、スモーキーノート、スパイシーノート、ナツメグノート、ガルバナムノート、レザーノート、オークモスノートを付与するために使用される。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、約1:19.5:79.5の重量比で存在する。
【0106】
特に、上記の化合物(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はその立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、スパイシーノート、ナツメグノート、スモーキーノート、タバコノート、レザーノート、フェノールノートを付与するために使用される。とりわけ、化合物(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、7:92の重量比で存在する。
【0107】
特に、化合物(I-2)(式中、XはOである)、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、ルートノート、ガルバナムノート、レザーノート、スパイシーノートを付与するために使用される。
【0108】
特に、化合物(I)(式中、R1はHであり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-4)(式中、X=O))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、スモークドノート、ライムノート、ヒッコリーノート、グリーンノート、スウィートノートを付与するために使用される。
【0109】
特に、化合物(I)(式中、R1はOHであり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-5)(式中、X=O))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、ガルバナムノート、フローラルノートを付与するために使用される。
【0110】
特に、化合物(I)(式中、R1はOCH3であり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、ウォータリーノート、メロンノート、スライトリービターノートを付与するために使用される。
【0111】
特に、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)の混合物(式中、XはSである)、又はその立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、グリーンノート、ハーバルノート、チャイブノート、ウッディノートを付与するために使用される。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはSである)は、1:39:60の重量比で存在する。
【0112】
特に、化合物(I)(式中、R1はOHであり且つXはSである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-5)(式中、X=S))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物は、上記に列挙される組成物に、ビアノート、バーントノートを付与するために使用される。
【0113】
上記に列挙される組成物についての詳細は、以下に示される。
【0114】
嗅覚特性に加えて、化合物(I)、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物は、有利な第2の特性を呈する。
【0115】
例えば、これらは、他のフレグランスとの相乗効果の結果として、より優れた感覚プロファイルを提供することが可能であり、これは、これらが他のフレグランスに対するブースター効果を提供し得ることを意味する。従って、これらは、他のフレグランスに対するブースター剤として好適である。
【0116】
従って、本発明の別の態様は、フレグランスを付与した組成物の香りの特徴を改質するための、化合物(I)、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物の使用;またとりわけ、他のフレグランスに対するブースター剤としての使用に関する。
【0117】
ブースター効果とは、その物質が、香料製剤中で混合物の全体的な印象を増強及び強化することを意味する。例えば、ミント範囲(mint range)においては、純粋物質であるエーテル自体は特定の強い匂いを全く生じないにもかかわらず、メンチルメチルエーテルが、ペパーミント油の香料混合物又は味覚混合物を強化し、特にトップノートにおいて、相当により強くより複雑な知覚をもたらすことが知られている。フレグランス用途において、Hedione(登録商標)(メチルジヒドロジャスモネート)は、純粋物質としては軽いフローラルジャスミンノートを呈するだけであるが、匂いブースター剤としては、香水組成物の拡散、清涼感、及び量を強化する。ブースター効果は、匂いの印象が特に迅速に且つ強く伝えられるトップノートを特徴とする用途が求められる場合、例えば、脱臭剤においてはエアフレッシュナーで、又は味部門においてはチューインガムで、特に望ましい。
【0118】
このようなブースター効果を達成するため、化合物(I)、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物は、一般的に、フレグランス混合物の総重量に対して、0.1~20重量%の量、好ましくは0.5~5重量%の量、特に0.6~3重量%の量で使用される。
【0119】
さらに、化合物(I)、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物は、これらが使用される組成物に対してさらに好ましい効果を有し得る。例えば、これらは、それらが組み込まれる組成物の全体的な性能(例えば、組成物の安定性(例えば製剤安定性)、拡張性又は持続力)を高めることができる。
【0120】
別の態様において、本発明は、化合物(I)、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物を含む芳香化学物質組成物に関する。本明細書中で使用される「芳香化学物質組成物」という用語は、快い匂い印象を誘導する組成物を指す。
【0121】
好ましくは、芳香化学物質組成物は、
- 式(I)の化合物若しくはその混合物[すなわち、異なる化合物(I)の混合物]、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物;及び
- 少なくとも1種のさらなる芳香化学物質及び/又は少なくとも1種の非芳香化学物質担体(ここで、上記の非芳香化学物質担体は、特に、界面活性剤、油成分(皮膚軟化剤)及び溶媒からなる群から選択される)
を含む。
【0122】
上記のさらなる芳香化学物質は、当然のことながら、式(I)の化合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物とは異なる。
【0123】
それらの物理的特性により、式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体混合物は、他のフレグランス、及びフレグランスを付与した即時使用可能な組成物(例えば特に香水組成物)中の他の慣用の成分について、特に優れた、実質的に普遍的な溶媒特性を有する。従って、これらは、他の芳香化学物質と十分に組み合わせることが可能であり、特に、新規の有利な感覚プロファイルを有する香水組成物の創出を可能とする。とりわけ、既に上で説明したとおり、これらは、他のフレグランスに対するブースター効果を提供し得る。
【0124】
従って、1つの好ましい実施形態において、芳香化学物質組成物は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物;及び少なくとも1種のさらなる芳香化学物質を含む。
【0125】
さらなる芳香化学物質は、例えば、以下からなる群から選択される、1種、好ましくは2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種又はさらに多くの種類の芳香化学物質であり得る:
ゲラニルアセテート(3,7-ジメチル-2,6オクタジエン-1イルアセテート)、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、2-フェノキシエチルイソブチレート(Phenirat1)、ジヒドロミルセノール(2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール)、メチルジヒドロジャスモネート(好ましくは、60重量%超のシス異性体の含有率を有する)(Hedione9、Hedione HC9)、4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-シクロペンタ[g]ベンゾピラン(Galaxolid3)、テトラヒドロリナロール(3,7-ジメチルオクタン-3-オール)、エチルリナロール、ベンジルサリチレート、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール(Lysmeral2a)、シンナミルアルコール、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5-インデニルアセテート及び/又は4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-6-インデニルアセテート(Herbaflorat1)、シトロネロール、シトロネリルアセテート、テトラヒドロゲラニオール、バニリン、リナリルアセテート、スチロリルアセテート(1-フェニルエチルアセテート)、オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチル-2-アセトナフトン及び/又は2-アセチル-1,2,3,4,6,7,8-オクタヒドロ-2,3,8,8-テトラメチルナフタレン(Iso E Super3)、ヘキシルサリチレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート(Oryclone1)、2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート(Agrumex HC1)、α-イオノン(4-(2,2,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-3-ブテン-2-オン)、n-α-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、クマリン、テルピニルアセテート、2-フェニルエチルアルコール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド(Lyral3)、α-アミルシンナムアルデヒド、エチレンブラシレート、(E)-及び/又は(Z)-3-メチルシクロペンタデカ-5-エノン(Muscenon9)、15-ペンタデカ-11-エノリド及び/又は15-ペンタデカ-12-エノリド(Globalide1)、15-シクロペンタデカノリド(Macrolide1)、1-(5,6,7,8-テトラヒドロ-3,5,5,6,8,8-ヘキサメチル-2-ナフタレニル)エタノン(Tonalid10)、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール(Florol9)、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(Sandolen1)、シス-3-ヘキセニルアセテート、トランス-3-ヘキセニルアセテート、トランス-2/シス-6-ノナジエノール、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド(Vertocitral1)、2,4,4,7-テトラメチルオクタ-6-エン-3-オン(Claritone1)、2,6-ジメチル-5-ヘプテン-1-アール(Melonal2)、ボルネオール、3-(3-イソプロピルフェニル)ブタナール(Florhydral2)、2-メチル-3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール(Helional3)、3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール(Florazon1)、7-メチル-2H-1,5-ベンゾジオキセピン-3(4H)-オン(Calone)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアセテート(好ましくは、70重量%以上のシス異性体の含有率を有する)、並びに2,5,5-トリメチル-1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロナフタレン-2-オール(Ambrinol S1)。従って、本発明の文脈の範囲内で、上述の芳香化学物質(1種又は複数種)は、好ましくは、上記に定義される式(I)の化合物、あるいはその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物、又はその二重結合異性体と組み合わせられる。
【0126】
本発明のさらなる実施形態は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と、メチルベンゾエート、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテート、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール及びリナロールからなる群から選択される少なくとも1種のさらなる芳香化学物質とを含む組成物に関する。
【0127】
本発明のさらなる実施形態は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オールとを含む組成物に関する。
【0128】
本発明のさらなる実施形態は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と、メチルベンゾエートとを含む組成物に関する。
【0129】
上記で商品名が示される場合、これらは、以下の供給元を指す。
1 Symrise GmbH (ドイツ)の商品名、
2 Givaudan AG (スイス)の商品名、
2a BASF SE (ドイツ)の商品名、
3 International Flavors & Fragrances Inc., USA (アメリカ)の商品名、
5 Danisco Seillans S.A. (フランス)の商品名、
9 Firmenich S.A. (スイス)の商品名、
10 PFW Aroma Chemicals B.V. (オランダ)の商品名。
【0130】
上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と組み合わせて、例えば本発明による組成物をもたらし得るさらなる芳香化学物質は、例えば、自費出版されたS. Arctander、Perfume and Flavor Chemicals、Vol. I及びII、Montclair, N. J.、1969、又はK. Bauer、D. Garbe及びH. Surburg、Common Fragrance and Flavor Materials、第4版、Wiley- VCH、Weinheim 2001に見出すことができる。具体的には、以下のものが言及され得る:
天然原料由来の抽出物、例えば、精油、コンクリート(concrete)、アブソリュート、樹脂、レジノイド、バルサム、チンキ、例えば、
アンバーグリスチンキ、アミリス油、アンゼリカ種子油、アンゼリカ根油、アニス油、吉草根油、メボウキ油、ツリーモスアブソリュート、ベイ油、ヨモギ油、ベンゾイン樹脂、ベルガモット油、蜜蝋アブソリュート、バーチタール油、ビターアーモンド油、セイバリー油、ブーク葉油、カブリューバ油、カデ油、ショウブ(calmus)油、カンファー油、カナンガ油、カルダモン油、カスカリラ油、カシア油、カシアアブソリュート、カストリウムアブソリュート、シダー葉油、シダーウッド油、シスタス(cistus)油、シトロネラ油、レモン油、コパイババルサム、コパイババルサム油、コリアンダー油、コスタス根油、クミン油、サイプレス油、ダバナ油、ディルウィード油、ディル種子油、オードブルー(Eau de brouts)アブソリュート、オークモスアブソリュート、エレミ油、タラゴン油、ユーカリシトリオドラ(eucalyptus citriodora)油、ユーカリ油、ウイキョウ油、松葉油、ガルバナム油、ガルバナム樹脂、ゼラニウム油、グレープフルーツ油、グアヤックウッド油、ガージャンバルサム、ガージャンバルサム油、ヘリクリサムアブソリュート、ヘリクリサム油、ショウガ油、アイリス根アブソリュート、アイリス根油、ジャスミンアブソリュート、ショウブ(calmus)油、ブルーカモミール油、ローマカモミール油、ニンジン種子油、カスカリラ油、松葉油、スペアミント油、キャラウェイ油、ラブダナム油、ラブダナムアブソリュート、ラブダナム樹脂、ラバンジンアブソリュート、ラバンジン油、ラベンダーアブソリュート、ラベンダー油、レモングラス油、ロベージ油、蒸留ライム油、圧搾ライム油、リナロール油、アオモジ(litsea cubeba)油、ローレル葉油、メース油、マジョラム油、マンダリン油、マッソイアバーク油、ミモザアブソリュート、ジャコウ種子油、ジャコウチンキ、クラリセージ油、ナツメグ油、ミルラアブソリュート、ミルラ油、ミルテ油、丁子葉油、丁子花油、ネロリ油、乳香アブソリュート、乳香油、オポパナクス油、オレンジ花アブソリュート、オレンジ油、オリガナム油、パルマローザ油、パッチュリ油、エゴマ油、ペルーバルサム油、パセリ葉油、パセリ種子油、プチグレン油、ペパーミント油、コショウ油、ピメント油、松油、ペニーローヤル油、ローズアブソリュート、ローズウッド油、ローズ油、ローズマリー油、ダルマチアセージ油、スペインセージ油、ビャクダン油、セロリ種子油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、エゴノキ油、タゲテス油、モミ葉油、ティーツリー油、テレピン油、タイム油、トルーバルサム、トンカアブソリュート、チュベローズアブソリュート、バニラ抽出物、スミレ葉アブソリュート、バーベナ油、ベチバ油、ジュニパーベリー油、ブドウ酒粕油(wine lees oil)、ニガヨモギ油、ウインターグリーン油、ヒソップ油、シベットアブソリュート、シナモン葉油、シナモン皮油、及びこれらの画分又はこれらから単離される成分など、
炭化水素の群の個々のフレグランス、例えば、3-カレン、α-ピネン、β-ピネン、α-テルピネン、γ-テルピネン、p-シメン、ビサボレン、カンフェン、カリオフィレン、セドレン、ファルネセン、リモネン、ロンギホレン、ミルセン、オシメン、バレンセン、(E,Z)-1,3,5-ウンデカトリエン、スチレン、ジフェニルメタンなど、
脂肪族アルコール、例えばヘキサノール、オクタノール、3-オクタノール、2,6-ジメチルヘプタノール、2-メチル-2-ヘプタノール、2-メチル-2-オクタノール、(E)-2-ヘキセノール、(E)-及び(Z)-3-ヘキセノール、1-オクテン-3-オール、3,4,5,6,6-ペンタメチル-3/4-ヘプテン-2-オールと3,5,6,6-テトラメチル-4-メチレンヘプタン-2-オールとの混合物、(E,Z)-2,6-ノナジエノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール、9-デセノール、10-ウンデセノール、4-メチル-3-デセン-5-オールなど、
脂肪族アルデヒド及びそのアセタール、例えばヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、2-メチルオクタナール、2-メチルノナナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-4-ヘプテナール、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、10-ウンデセナール、(E)-4-デセナール、2-ドデセナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、ヘプタナールジエチルアセタール、1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、(E/Z)-1-(1-メトキシプロポキシ)-ヘキサ-3-エンなど、脂肪族ケトン及びそのオキシム、例えば2-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、5-メチル-3-ヘプタノン、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、2,4,4,7-テトラメチル-6-オクテン-3-オン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オンなど、
脂肪族硫黄含有化合物、例えば3-メチルチオヘキサノール、3-メチルチオヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキサノール、3-メルカプトヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキシルブチレート、3-アセチルチオヘキシルアセテート、1-メンテン-8-チオールなど、
脂肪族ニトリル、例えば2-ノネンニトリル、2-ウンデセンニトリル、2-トリデセンニトリル、3,12-トリデカジエンニトリル、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル、3,7-ジメチル-6-オクテンニトリルなど、
脂肪族カルボン酸のエステル、例えば(E)-及び(Z)-3-ヘキセニルホルメート、エチルアセトアセテート、イソアミルアセテート、ヘキシルアセテート、3,5,5-トリメチルヘキシルアセテート、3-メチル-2-ブテニルアセテート、(E)-2-ヘキセニルアセテート、(E)-及び(Z)-3-ヘキセニルアセテート、オクチルアセテート、3-オクチルアセテート、1-オクテン-3-イルアセテート、エチルブチレート、ブチルブチレート、イソアミルブチレート、ヘキシルブチレート、(E)-及び(Z)-3-ヘキセニルイソブチレート、ヘキシルクロトネート、エチルイソバレレート、エチル2-メチルペンタノエート、エチルヘキサノエート、アリルヘキサノエート、エチルヘプタノエート、アリルヘプタノエート、エチルオクタノエート、エチル(E,Z)-2,4-デカジエノエート、メチル2-オクチネート、メチル2-ノニネート、アリル2-イソアミルオキシアセテート、メチル-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエノエート、4-メチル-2-ペンチルクロトネートなど、
非環式テルペンアルコール、例えばゲラニオール、ネロール、リナロール、ラバンジュロール、ネロリドール、ファルネソール、テトラヒドロリナロール、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチルオクタン-2-オール、2-メチル-6-メチレン-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチル-5,7-オクタジエン-2-オール、2,6-ジメチル-3,5-オクタジエン-2-オール、3,7-ジメチル-4,6-オクタジエン-3-オール、3,7-ジメチル-1,5,7-オクタトリエン-3-オール、2,6-ジメチル-2,5,7-オクタトリエン-1-オール、並びにそれらのホルメート、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、ブチレート、イソバレレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、クロトネート、チグリネート、及び3-メチル-2-ブテノエートなど、
非環式テルペンアルデヒド及びケトン、例えばゲラニアール、ネラール、シトロネラール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、7-メトキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、ゲラニルアセトン、並びにゲラニアール、ネラール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールのジメチルアセタール及びジエチルアセタールなど、環式テルペンアルコール、例えばメントール、イソプレゴール、α-テルピネオール、テルピン-4-オール、メンタン-8-オール、メンタン-1-オール、メンタン-7-オール、ボルネオール、イソボルネオール、リナロールオキシド、ノポール、セドロール、アンブリノール、ベチベロール、グアイオール(guajol)、並びにそれらのホルメート、アセテート、プロピオネート、イソブチレート、ブチレート、イソバレレート、ペンタノエート、ヘキサノエート、クロトネート、チグリネート、及び3-メチル-2-ブテノエートなど、
環式テルペンアルデヒド及びケトン、例えばメントン、イソメントン、8-メルカプトメンタン-3-オン、カルボン、カンファー、フェンコン、α-イオノン、β-イオノン、α-n-メチルイオノン、β-n-メチルイオノン、α-イソメチルイオノン、β-イソメチルイオノン、α-イロン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、β-ダマセノン、δ-ダマスコン、γ-ダマスコン、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、1,3,4,6,7,8a-ヘキサヒドロ-1,1,5,5-テトラメチル-2H-2,4a-メタノナフタレン-8(5H)-オン、2-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、ノートカトン、ジヒドロノートカトン、4,6,8-メガスチグマトリエン-3-オン、α-シネンサール、β-シネンサール、アセチル化シダーウッド油(メチルセドリルケトン)など、
環式アルコール、例えば4-tert-ブチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、3-イソカンフィルシクロヘキサノール、2,6,9-トリメチル-Z2,Z5,E9-シクロドデカトリエン-1-オール、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オールなど、
脂環式アルコール、例えばα-3,3-トリメチルシクロヘキシルメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)ペンタン-2-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ペンタン-3-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オールなど、
環式及び脂環式エーテル、例えばシネオール、セドリルメチルエーテル、シクロドデシルメチルエーテル、1,1-ジメトキシシクロドデカン、(エトキシメトキシ)シクロドデカン、α-セドレンエポキシド、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、3a-エチル-6,6,9a-トリメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、1,5,9-トリメチル-13-オキサビシクロ-[10.1.0]トリデカ-4,8-ジエン、ローズオキシド、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサンなど、
環状及び大環状ケトン、例えば4-tert-ブチルシクロヘキサノン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-ヘプチルシクロペンタノン、2-ペンチルシクロペンタノン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-シス-2-ペンテン-1-イル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-4-シクロペンタデセノン、3-メチル-5-シクロペンタデセノン、3-メチルシクロペンタデカノン、4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン、4-tert-ペンチルシクロヘキサノン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、8-シクロヘキサデセン-1-オン、7-シクロヘキサデセン-1-オン、(7/8)-シクロヘキサデセン-1-オン、9-シクロヘプタデセン-1-オン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノンなど、
脂環式アルデヒド、例えば2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルボアルデヒド、2-メチル-4-(2,2,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルボアルデヒド、4-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセンカルボアルデヒドなど、
脂環式ケトン、例えば1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)-4-ペンテン-1-オン、2,2-ジメチル-1-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパノン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタレニルメチルケトン、メチル2,6,10-トリメチル-2,5,9-シクロドデカトリエニルケトン、tert-ブチル(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)ケトンなど、
環式アルコールのエステル、例えば2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、2-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート、4-tert-ペンチルシクロヘキシルアセテート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアセテート、デカヒドロ-2-ナフチルアセテート、2-シクロペンチルシクロペンチルクロトネート、3-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアセテート、デカヒドロ-2,5,5,8a-テトラメチル-2-ナフチルアセテート、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニルアセテート、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニルプロピオネート、4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニルイソブチレート、4,7-メタノオクタヒドロ-5又は6-インデニルアセテートなど、
脂環式アルコールのエステル、例えば1-シクロヘキシルエチルクロトネートなど、
脂環式カルボン酸のエステル、例えばアリル3-シクロヘキシルプロピオネート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、シス-及びトランス-メチルジヒドロジャスモネート、シス-及びトランス-メチルジャスモネート、メチル2-ヘキシル-3-オキソシクロペンタンカルボキシレート、エチル2-エチル-6,6-ジメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレート、エチル2,3,6,6-テトラメチル-2-シクロヘキセンカルボキシレート、エチル2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-アセテートなど、
芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-フェニルプロパノール、2-フェノキシエタノール、2,2-ジメチル-3-フェニルプロパノール、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアルコール、1,1-ジメチル-3-フェニルプロパノール、1-エチル-1-メチル-3-フェニルプロパノール、2-メチル-5-フェニルペンタノール、3-メチル-5-フェニルペンタノール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、4-メトキシベンジルアルコール、1-(4-イソプロピルフェニル)エタノールなど、
芳香脂肪族アルコール及び脂肪族カルボン酸のエステル、例えばベンジルアセテート、ベンジルプロピオネート、ベンジルイソブチレート、ベンジルイソバレレート、2-フェニルエチルアセテート、2-フェニルエチルプロピオネート、2-フェニルエチルイソブチレート、2-フェニルエチルイソバレレート、1-フェニルエチルアセテート、α-トリクロロメチルベンジルアセテート、α,α-ジメチルフェニルエチルアセテート、α,α-ジメチルフェニルエチルブチレート、シンナミルアセテート、2-フェノキシエチルイソブチレート、4-メトキシベンジルアセテートなど、
芳香脂肪族エーテル、例えば2-フェニルエチルメチルエーテル、2-フェニルエチルイソアミルエーテル、2-フェニルエチル1-エトキシエチルエーテル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール、ヒドロアトロパアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセロールアセタール、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、4,4a,5,9b-テトラヒドロ-2,4-ジメチルインデノ[1,2-d]-m-ジオキシンなど、
芳香族及び芳香脂肪族アルデヒド、例えばベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルプロパナール、ヒドロアトロパアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、4-メチルフェニルアセトアルデヒド、3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、2-メチル-3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-イソブチルフェニル)プロパナール、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、シンナムアルデヒド、α-ブチルシンナムアルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、3-メチル-5-フェニルペンタナール、4-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド、3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-メチレンジオキシフェニル)プロパナールなど、
芳香族及び芳香脂肪族ケトン、例えばアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン、4-フェニル-2-ブタノン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1-(2-ナフタレニル)エタノン、2-ベンゾフラニルエタノン、(3-メチル-2-ベンゾフラニル)エタノン、ベンゾフェノン、1,1,2,3,3,6-ヘキサメチル-5-インダニルメチルケトン、6-tert-ブチル-1,1-ジメチル-4-インダニルメチルケトン、1-[2,3-ジヒドロ-1,1,2,6-テトラメチル-3-(1-メチルエチル)-1H-5-インデニル]エタノン、5',6',7',8'-テトラヒドロ-3',5',5',6',8',8'-ヘキサメチル-2-アセトナフトンなど、
芳香族及び芳香脂肪族カルボン酸並びにそれらのエステル、例えば安息香酸、フェニル酢酸、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、ヘキシルベンゾエート、ベンジルベンゾエート、メチルフェニルアセテート、エチルフェニルアセテート、ゲラニルフェニルアセテート、フェニルエチルフェニルアセテート、メチルシンナメート、エチルシンナメート、ベンジルシンナメート、フェニルエチルシンナメート、シンナミルシンナメート、アリルフェノキシアセテート、メチルサリチレート、イソアミルサリチレート、ヘキシルサリチレート、シクロヘキシルサリチレート、シス-3-ヘキセニルサリチレート、ベンジルサリチレート、フェニルエチルサリチレート、メチル2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチルベンゾエート、エチル3-フェニルグリシデート、エチル3-メチル-3-フェニルグリシデートなど、
窒素含有芳香族化合物、例えば2,4,6-トリニトロ-1,3-ジメチル-5-tert-ブチルベンゼン、3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-tert-ブチルアセトフェノン、シンナモニトリル、3-メチル-5-フェニル-2-ペンテノニトリル、3-メチル-5-フェニルペンタノニトリル、メチルアントラニレート、メチル-N-メチルアントラニレート、メチルアントラニレートと7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール又は2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルボアルデヒドとのシッフ塩基、6-イソプロピルキノリン、6-イソブチルキノリン、6-sec-ブチルキノリン、2-(3-フェニルプロピル)ピリジン、インドール、スカトール、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジンなど、
フェノール、フェニルエーテル、及びフェニルエステル、例えばエストラゴール、アネトール、オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル、イソオイゲノール、イソオイゲニルメチルエーテル、チモール、カルバクロール、ジフェニルエーテル、β-ナフチルメチルエーテル、β-ナフチルエチルエーテル、β-ナフチルイソブチルエーテル、1,4-ジメトキシベンゼン、オイゲニルアセテート、2-メトキシ-4-メチルフェノール、2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール、p-クレシルフェニルアセテートなど、
複素環式化合物、例えば2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン、2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-2H-フラン-3-オン、3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン、2-エチル-3-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オンなど、
ラクトン、例えば1,4-オクタノリド、3-メチル-1,4-オクタノリド、1,4-ノナノリド、1,4-デカノリド、8-デセン-1,4-オリド、1,4-ウンデカノリド、1,4-ドデカノリド、1,5-デカノリド、1,5-ドデカノリド、4-メチル-1,4-デカノリド、1,15-ペンタデカノリド、シス-及びトランス-11-ペンタデセン-1,15-オリド、シス-及びトランス-12-ペンタデセン-1,15-オリド、1,16-ヘキサデカノリド、9-ヘキサデセン-1,16-オリド、10-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、11-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、12-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、エチレン1,12-ドデカンジオエート、エチレン1,13-トリデカンジオエート、クマリン、2,3-ジヒドロクマリン、オクタヒドロクマリンなど。
【0131】
有利なのは、スウィートノートを有する芳香化学物質(例えば、バニリン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン(フラネオール)、又は3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン(マルトール))との組み合わせであり、これらの芳香化学物質のスウィートノートは、化合物(I)、又はその立体異性体若しくはその二重結合異性体によりブーストされる。
【0132】
本発明のさらなる態様は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と、界面活性剤、皮膚軟化剤(油成分)及び溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の成分とを含む組成物を対象とする。
【0133】
本発明の一実施形態は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と、少なくとも1種の溶媒とを含む組成物を対象とする。
【0134】
本発明の文脈において、「溶媒」は、それ自体の発香特性を有することなく本発明により使用される、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物を希釈する役割を果たす。幾つかの溶媒は、同時に固定特性を有する。
【0135】
1種以上の溶媒(1種又は複数種)は、本組成物中に、その組成物に対して0.01~99重量%存在し得る。本発明の好ましい実施形態において、本組成物は、その組成物に対して、0.1~90重量%、好ましくは0.5~80重量%の溶媒(1種又は複数種)を含む。溶媒(1種又は複数種)の量は、組成物に応じて選択することができる。本発明の一実施形態において、本組成物は、その組成物に対して0.05~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.2~3重量%含む。本発明の一実施形態において、本組成物は、その組成物に対して、20~70重量%、好ましくは25~50重量%の溶媒(1種又は複数種)を含む。
【0136】
好ましい溶媒は、エタノール、イソプロパノール、ジプロピレングリコール(DPG)、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチルフタレート(DEP)、イソプロピルミリステート(IPM)、トリエチルシトレート(TEC)、及びベンジルベンゾエート(BB)である。
【0137】
特に好ましい溶媒は、エタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、ベンジルベンゾエート、及びイソプロピルミリステートからなる群から選択される。
【0138】
本発明の好ましい実施形態において、溶媒は、エタノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、及びイソプロピルミリステートからなる群から選択される。
【0139】
さらなる態様によれば、式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物は、界面活性剤含有組成物における使用に適している。それらの特徴的な香りプロファイルにより、これらはとりわけ、界面活性剤含有組成物、例えば、洗浄剤(特に洗濯用ケア製品及び汎用洗浄剤)などの賦香に使用することができる。
【0140】
従って、本発明の一実施形態は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と、少なくとも1種の界面活性剤とを含む組成物を対象とする。
【0141】
界面活性剤(1種又は複数種)は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、及び/又は両性若しくは双性イオン性の界面活性剤から選択され得る。界面活性剤含有組成物、例えば、シャワージェル、フォームバス、シャンプー等は、好ましくは、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含有する。
【0142】
本発明による組成物は、通常、界面活性剤(1種又は複数種)を、その凝集体中に、組成物の総重量に対して、0~40重量%、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.1~15重量%、特に0.1~10重量%の量で含有する。非イオン性界面活性剤の典型例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテル及び混合ホルマール、場合により部分的に酸化されたアルキル(アルケニル)オリゴグリコシド又はグルクロン酸誘導体、脂肪酸-N-アルキルグルカミド、タンパク質加水分解物(特に、コムギベースの植物性生成物)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート、並びにアミンオキシドである。非イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有する場合、非イオン性界面活性剤は、従来のホモログ分布を有してもよいが、好ましくは、狭い範囲のホモログ分布を有する。
【0143】
双性イオン性界面活性剤は、分子中に少なくとも1個の第四級アンモニウム基と少なくとも1個の-COO(-)又は-SO3 (-)基とを含有する表面活性化合物である。特に好適な双性イオン性界面活性剤は、いわゆるベタイン、例えば、アルキル基又はアシル基中に8~18個の炭素原子を含有する、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート(例えば、ココアルキルジメチルアンモニウムグリシネート)、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート(例えば、ココアシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート)、及び2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン、並びにココアシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。コカミドプロピルベタインのCTFA名で知られる脂肪酸アミド誘導体が特に好ましい。
【0144】
両性界面活性剤は、特に共界面活性剤としても好適である。両性界面活性剤は、C8-C18アルキル基又はアシル基に加えて、分子中に少なくとも1個の遊離アミノ基と少なくとも1個の-COOH-基又は-SO3H-基とを含有し、内塩を形成し得る表面活性化合物である。好適な両性界面活性剤の例は、アルキル基中に約8~18個の炭素原子を含有する、N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸、及びアルキルアミノ酢酸である。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ココアルキルアミノプロピオネート、ココアシルアミノエチルアミノプロピオネート、及びアシルサルコシンである。
【0145】
アニオン性界面活性剤は、水溶性化するアニオン性基、例えばカルボキシレート基、スルフェート基、スルホネート基、又はホスフェート基、及び親油性基などにより特徴付けられる。皮膚科学的に安全なアニオン性界面活性剤は、関連の教科書から多数のものが実務者に知られており、商業的に入手可能である。これらは特に、アルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアルカノールアンモニウム塩の形態のアルキルスルフェート、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形態の、直鎖C12-8アルキル基又はアシル基を含有するアルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルイセチオネート、アシルサルコシネート、アシルタウリン、並びにスルホスクシネート及びアシルグルタメートである。
【0146】
特に好適なカチオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物、好ましくはアンモニウムハライド、さらにとりわけクロリド及びブロミド、例えばアルキルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、及びトリアルキルメチルアンモニウムクロリド、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、及びトリセチルメチルアンモニウムクロリドである。さらに、容易に生分解される第四級エステル化合物、例えば、Stepantexeの名称で販売されているジアルキルアンモニウムメトスルフェート及びメチルヒドロキシアルキルジアルコイルオキシアルキル(dialkoyloxyalkyl)アンモニウムメトスルフェート、並びに対応するDehyquart(登録商標)シリーズの製品などを、カチオン性界面活性剤として使用してもよい。「エステルクワット(Esterquat)」は、一般的に、第四級化脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩であると理解される。エステルクワットは、組成物に特定の柔軟性を与えることができる。エステルクワットは、関連の有機化学の方法により調製される公知物質である。本発明による使用に好適な他のカチオン性界面活性剤は、第四級化タンパク質加水分解物である。
【0147】
本発明の一実施形態は、上記に定義される式(I)の化合物若しくはその混合物、又はその立体異性体若しくはその立体異性体混合物と、少なくとも1種の油成分とを含む組成物を対象とする。
【0148】
油成分は、典型的には、組成物に対して、0.1~80重量%、好ましくは0.5~70重量%、より好ましくは1~60重量%、さらにより好ましくは1~50重量%、特に1~40重量%、さらに特に5~25重量%、とりわけ5~15重量%の総量で存在する。
【0149】
油成分は、例えば、6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を含有する脂肪アルコールをベースとするゲルベアルコール、並びに他のさらなるエステル、例えばミリスチルミリステート、ミリスチルパルミテート、ミリスチルステアレート、ミリスチルイソステアレート、ミリスチルオレエート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルエルケート、セチルミリステート、セチルパルミテート、セチルステアレート、セチルイソステアレート、セチルオレエート、セチルベヘネート、セチルエルケート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルイソステアレート、ステアリルオレエート、ステアリルベヘネート、ステアリルエルケート、イソステアリルミリステート、イソステアリルパルミテート、イソステアリルステアレート、イソステアリルイソステアレート、イソステアリルオレエート、イソステアリルベヘネート、イソステアリルオレエート、オレイルミリステート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルオレエート、オレイルベヘネート、オレイルエルケート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルイソステアレート、ベヘニルオレエート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルエルケート、エルシルミリステート、エルシルパルミテート、エルシルステアレート、エルシルイソステアレート、エルシルオレエート、エルシルベヘネート、及びエルシルエルケートから選択され得る。同様に、C18-C38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖若しくは分岐鎖C6-C22脂肪アルコールとのエステル(さらにとりわけジオクチルマレート)、直鎖及び/若しくは分岐鎖脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ダイマージオール(dial)又はトリマートリオール)とのエステル、C6-C10脂肪酸をベースとするトリグリセリド、C6-C18脂肪酸をベースとする液体モノ-、ジ-及びトリグリセリドの混合物、C6-C22脂肪アルコール及び/若しくはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸(さらに特に安息香酸)とのエステル、ジカルボン酸と2~10個の炭素原子及び2~6個のヒドロキシル基を含有するポリオールとのエステル、植物性油、分岐鎖第一級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖及び分岐鎖C6-C22脂肪アルコールカーボネート、例えばジカプリリルカーボネート(Cetiol@ CC)など、6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を含有する脂肪アルコールをベースとするゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖及び/若しくは分岐鎖C6-C22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv(登録商標) TN)、アルキル基1個当たり6~22個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐鎖の対称若しくは非対称ジアルキルエーテル(例えばジカプリリルエーテル(Cetiol(登録商標) OE)など)、エポキシ化脂肪酸エステルとポリオール及び炭化水素との開環生成物、又はそれらの混合物も好適である。
【0150】
上記に定義される式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物は、広範囲の芳香化学物質組成物において使用することができる。式(I)の化合物、その立体異性体、その立体異性体の混合物又はその二重結合異性体の嗅覚特性、物質特性(例えばこのような組成物の慣用の溶媒における溶解性、及びさらなる慣用の構成成分との適合性)、並びに毒物学的許容性は、それらが、記載した使用目的及び組成物に特に好適であることを強調する。
【0151】
好適な芳香化学物質組成物は、例えば、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物である。
【0152】
香水組成物は、ファインフレグランス、液体形態、ゲル状形態、又は固体担体に適用された形態のエアフレッシュナー、エアロゾルスプレー、香り付き洗浄剤、賦香キャンドル及び賦香油(例えばランプ用オイル又はマッサージ用オイル)から選択され得る。
【0153】
ファインフレグランスの例は、香水抽出物、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、オードソリッド、及びエクストレパルファム(Extrait Parfum)である。
【0154】
ボディケア組成物は化粧品組成物を包含し、アフターシェーブ、プレシェーブ製品、スプラッシュコロン、固体及び液体の石鹸、シャワージェル、シャンプー、シェービングソープ、シェービングフォーム、バスオイル、水中油型、油中水型及び水中油中水型の化粧品エマルション(例えばスキンクリーム及びスキンローション、フェイスクリーム及びフェイスローション、日焼け止めクリーム及び日焼け止めローション、アフターサンクリーム及びアフターサンローション、ハンドクリーム及びハンドローション、フットクリーム及びフットローション、脱毛クリーム及び脱毛ローション、アフターシェーブクリーム及びアフターシェーブローション、日焼けクリーム及び日焼けローションなど)、ヘアケア製品(例えばヘアスプレー、ヘアジェル、ヘアセットローション、ヘアコンディショナー、ヘアシャンプー、パーマネントヘアカラー剤及びセミパーマネントヘアカラー剤など)、ヘアシェーピング組成物(例えばコールドウェーブ剤及びヘアスムーシング組成物、ヘアトニック、ヘアクリーム及びヘアローションなど)、デオドラント剤及び制汗剤(例えば脇用スプレー、ロールオン、デオドラントスティック及びデオドラントクリームなど)、装飾化粧品製品(例えばアイライナー、アイシャドウ、マニキュア、メイクアップ(make-up)、口紅、及びマスカラなど)から選択され得る。
【0155】
口腔及び歯の衛生用製品としては、例えば、練り歯磨き、デンタルフロス、マウスウォッシュ、ブレスフレッシュナー、デンタルフォーム、デンタルゲル、及びデンタルストリップなどが挙げられる。
【0156】
衛生物品は、線香、殺虫剤、忌避剤、噴射剤、錆除去剤、賦香清涼ふき取り材、脇パッド、赤ん坊用オムツ、生理用ナプキン、トイレットペーパー、化粧用ふき取り材、ポケットティッシュ、食器洗浄剤、及び脱臭剤から選択され得る。
【0157】
洗浄組成物(例えば固体表面洗浄剤など)は、賦香の酸性、アルカリ性、及び中性の洗浄剤(例えば、床用洗浄剤、窓用洗浄剤、食器の手洗い及び機械洗い用食器洗浄洗剤、浴室及びサニタリー用洗浄剤、研磨用ミルク(scouring milk)、固体及び液体のトイレ洗浄剤、粉末及び泡状のカーペット用洗浄剤など)、ワックス及び磨き剤(例えば、家具用磨き剤、床用ワックス、靴用クリーム、消毒剤、表面消毒剤及び衛生洗浄剤(sanitary cleaner)など)、ブレーキ洗浄剤、パイプ洗浄剤、水垢除去剤、グリル洗浄剤及びオーブン用洗浄剤、藻類及びコケ除去剤、カビ除去剤、並びにファサード洗浄剤(facade cleaner))から選択され得る。
【0158】
布用洗剤組成物は、液体洗剤、粉末洗剤、洗濯前処理剤(例えば漂白剤、浸漬剤及び染み除去剤)、織物用柔軟剤、洗濯石鹸、洗濯タブレットから選択され得る。
【0159】
食品は、未処理の、加熱調理した、若しくは加工した食用の物質、氷菓、飲料、又は、全体として若しくは部分的にヒトの摂取に使用されるか若しくは使用が意図される成分、あるいはチューインガム、グミ、ゼリー、及び菓子を意味する。
【0160】
栄養補助食品は、食物にさらなる栄養価を付加することが意図される食物成分を含有する、摂取のために意図される製品である。食物成分は、以下の物質:ビタミン、ミネラル、ハーブ若しくは他の植物性物質、アミノ酸、人々が総食物摂取量を増加させることにより食事を補うために使用される食物物質、濃縮物、代謝物、構成成分、又は抽出物のうちの1つ又は任意の組合せであり得る。栄養補助食品は、タブレット、カプセル、ソフトゲル、ゲルキャップ、液体、又は粉末などの多くの形態で見られ得る。
【0161】
医薬組成物は、疾病の診断、治療、緩和、処置、又は予防における使用が意図される組成物、及びヒト又は他の動物の体の構造又は任意の機能に影響を及ぼすことが意図される物品(食品以外)を含む。
【0162】
作物保護組成物は、農作物及び森林を損なう、植物疾患、雑草、及び他の有害生物(脊椎動物及び無脊椎動物の両方)の管理のために意図される組成物を含む。
【0163】
本発明による組成物は、1種以上の物質、例えば、保存料、研磨剤、抗にきび剤、皮膚の老化を抑えるための薬剤、抗細菌剤、抗セルライト剤、抗フケ剤、抗炎症剤、刺激予防剤、刺激緩和剤、抗微生物剤、抗酸化剤、収斂剤、発汗抑制剤、消毒剤、帯電防止剤、結合剤、緩衝剤、担体材料、キレート剤、細胞刺激物質、洗浄剤、ケア剤、脱毛剤、表面活性物質、脱臭剤、制汗剤、乳化剤、酵素、精油、繊維、フィルム形成剤、固定剤、泡形成剤、泡安定剤、発泡防止用物質、泡ブースター、殺菌剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、ヘアケア剤、ヘアシェーピング剤、ヘアスムーシング剤、水分供与剤、加湿物質、保湿剤物質、漂白剤、補強剤、染み除去剤、蛍光増白剤、含浸剤、汚れ忌避剤(soil repellent)、減摩剤、潤滑剤、保湿クリーム、軟膏、乳白剤、可塑剤、被覆剤、磨き剤、光沢剤、ポリマー、粉末、タンパク質、加脂剤(refatting agent)、剥離剤、シリコーン、皮膚鎮静剤、皮膚クレンジング剤、スキンケア剤、皮膚治癒剤、皮膚美白剤、皮膚保護剤、皮膚軟化剤、冷却剤、皮膚冷却剤、加温剤(warming agent)、皮膚加温剤、安定剤、UV吸収剤、UVフィルター、織物柔軟剤、懸濁剤、日焼け剤、増粘剤、ビタミン、油、ワックス、脂肪、リン脂質、飽和脂肪酸、モノ若しくはポリ不飽和脂肪酸、α-ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ脂肪酸、液化剤、染料、着色防止剤、顔料、防食剤、ポリオール、界面活性剤、電解質、有機溶媒、又はシリコーン誘導体などをさらに含み得る。
【0164】
上記に定義される式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体及びその立体異性体の混合物、並びにこれらを含む本発明による芳香化学物質組成物は、マイクロカプセル化形態、噴霧乾燥形態、包接複合体の形態、又は押出製品の形態であってもよい。上記の特性は、好適な材料によるいわゆる「コーティング」により、より標的化された香りの放出に関してさらに最適化することが可能であり、この目的のため、好ましくはワックス状合成物質(例えばポリビニルアルコール)が使用される。
【0165】
マイクロカプセル化は、例えば、いわゆる、例えばポリウレタン状物質製又は軟ゼラチン製のカプセル材料を用いたコアセルベーション法により行うことができる。噴霧乾燥香油は、例えば、上記に定義される式(I)の化合物、その立体異性体、その立体異性体の混合物、及び上記の本発明の方法により得ることができる組成物を含むエマルション又は分散液を噴霧乾燥させることにより製造することが可能であり、使用し得る担体物質は、加工デンプン、タンパク質、デキストリン、及び植物性ガムである。包接複合体は、例えば、フレグランス組成物、及びシクロデキストリン又は尿素誘導体の分散液を、好適な溶媒(例えば水)に導入することによって調製することができる。押出製品は、上記に定義される式(I)の化合物、その立体異性体、その立体異性体の混合物又は上記の本発明の方法により得ることができる組成物を、好適なワックス状物質と共に融解させ、場合により好適な溶媒(例えばイソプロパノール)中で、押出した後に固化させることにより製造することができる。
【0166】
一般的に、本発明による芳香化学物質組成物中の式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物の総量は、典型的には、特定の意図される使用又は意図される用途に対して適合されるため、広範囲にわたって変動し得る。通例、香りについての慣用の標準的な市販量が使用される。
【0167】
本発明による組成物は、上記に定義される式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物を、組成物の総重量に対して、0.001~99.9重量%、好ましくは0.01~90重量%、より好ましくは0.05~80%、特に0.1~60重量%、さらに特に0.1~40重量%、例えば0.1~10重量%又は0.1~15重量%の総量で含み得る。
【0168】
本発明の一実施形態において、本組成物は、上記に定義される式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物を、組成物の総重量に対して、0.001~5重量%、好ましくは0.01~2重量%の総量で含む。
【0169】
本発明のさらなる実施形態は、芳香化学物質組成物、特にフレグランスを付与した組成物、とりわけフレグランスを付与した即時使用可能な組成物を調製する方法であって、少なくとも1つの式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物を、標的組成物(例えば即時使用可能な組成物)中に組み込み、芳香化学物質組成物、特にフレグランスを付与した組成物、とりわけフレグランスを付与した即時使用可能な組成物をもたらすことを含む、上記方法を対象とする。あるいは、本発明は、芳香化学物質組成物、特にフレグランスを付与した組成物、とりわけフレグランスを付与した即時使用可能な組成物を調製する方法であって、少なくとも1つの式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物を、化合物(I)とは異なる少なくとも1つの芳香化学物質と、及び/又は少なくとも1種の非芳香化学物質担体と混合することを含む、上記方法を対象とする。好適且つ好ましい、化合物(I)とは異なる芳香化学物質及び非芳香化学物質担体は、上に記載されている。
【0170】
例えば、本方法は、上記に定義される少なくとも1つの式(I)の化合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物と、化合物(I)とは異なる芳香化学物質からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる化合物及び非芳香化学物質担体とを混合することによって行うことができる。
【0171】
本発明はまた、芳香化学物質組成物、特にフレグランスを付与した組成物、とりわけフレグランスを付与した即時使用可能な組成物の香りの特徴を改質するための方法であって、少なくとも1つの式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物を、芳香化学物質組成物、特にフレグランスを付与した組成物、とりわけフレグランスを付与した即時使用可能な組成物中に組み込むことを含む、上記方法も対象とする。
【0172】
特に、本発明は、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物を調製する方法であって、上記に定義される式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物を、又は香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。
【0173】
一実施形態において、本発明は、ガルバナムノート、ハーバルノート、スモーキーノート、レザーノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はそれらの立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、約1:65.5:33.5の重量比で存在する。
【0174】
別の実施形態において、本発明は、ハーバルノート、スモーキーノート、スパイシーノート、ナツメグノート、ガルバナムノート、レザーノート、オークモスノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はそれらの立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、約1:19.5:79.5の重量比で存在する。
【0175】
別の実施形態において、本発明は、スパイシーノート、ナツメグノート、スモーキーノート、タバコノート、レザーノート、フェノールノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、上記の化合物(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)の混合物、又はその立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。とりわけ、化合物(I-2)及び(I-3)(式中、XはOである)は、7:92の重量比で存在する。
【0176】
別の実施形態において、本発明は、ルートノート、ガルバナムノート、レザーノート、スパイシーノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、化合物(I-2)(式中、XはOである)、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。
【0177】
別の実施形態において、本発明は、スモークドノート、ライムノート、ヒッコリーノート、グリーンノート、スウィートノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、化合物(I)(式中、R1はHであり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-4)(式中、X=O))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。
【0178】
別の実施形態において、本発明は、ガルバナムノート、フローラルノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、式(I)の化合物(式中、R1はOHであり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-5)(式中、X=O))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。
【0179】
別の実施形態において、本発明は、ウォータリーノート、メロンノート、スライトリービターノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、式(I)の化合物(式中、R1はOCH3であり且つXはOである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。
【0180】
別の実施形態において、本発明は、グリーンノート、ハーバルノート、チャイブノート、ウッディノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、上記の化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはSである)の混合物、又はその立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。とりわけ、化合物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(式中、XはSである)は、1:39:60の重量比で存在する。
【0181】
別の実施形態において、本発明は、ビアノート、バーントノートを、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物に付与する方法であって、式(I)の化合物(式中、R1はOHであり且つXはSである(また当然のことながら、R2、R3及びR4はHである))(=化合物(I-5)(式中、X=S))、又はその立体異性体若しくはその立体異性体の混合物を、香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物又は作物保護組成物中に含めることを含む、上記方法を対象とする。
【0182】
さらなる態様において、本発明は、一般式(I.a):
【0183】
【化8】
(式中、
R1は、水素、OH、O-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5であり、
ここでR5は、水素及びC1-C4-アルキルからなる群から選択される)
の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物に関する。
【0184】
特に、化合物(I.a)において、R1は、水素、OH、メトキシ、エトキシ及びアセトキシからなる群から選択される。さらに特に、R1は、水素、OH及びメトキシからなる群から選択される。とりわけ、R1は水素又はOHである。
【0185】
化合物(I.a)の代替的な特定の実施形態において、R1は、OH、O-C1-C4-アルキル及びO-(C=O)-R5からなる群から選択され;好ましくはOH及びO-C1-C4-アルキル;より好ましくはOH、メトキシ及びエトキシ、特にOH及びメトキシからなる群から選択される。
【0186】
さらなる態様において、本発明は、一般式(I.b):
【0187】
【化9】
(式中、
R1は、水素、OH、O-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5であり、
R2、R3、R4は水素であるか;
又はR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表し;
R5は、水素及びC1-C4-アルキルからなる群から選択される)
の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物
に関する。
【0188】
好ましくは、化合物(I.b)においては、R2がR1と一緒になって二重結合を表すか、若しくはR3がR1と一緒になって二重結合を表すか、若しくはR4がR1と一緒になって二重結合を表すか、又は化合物(I.b)は、少なくとも2つのかかる化合物の混合物であるか;あるいは、化合物(I.b)において、R1は水素又はOHである。特に、化合物(I.b)においては、R2がR1と一緒になって二重結合を表すか、若しくはR3がR1と一緒になって二重結合を表すか、若しくはR4がR1と一緒になって二重結合を表すか、又は化合物(I.b)は、少なくとも2つのかかる化合物の混合物であるか;あるいは、化合物(I.b)において、R1はOHである。とりわけ、化合物(I.b)においては、R2がR1と一緒になって二重結合を表すか、若しくはR3がR1と一緒になって二重結合を表すか、若しくはR4がR1と一緒になって二重結合を表すか、又は、化合物(I.b)は、少なくとも2つのかかる化合物の混合物である。上記の、R2がR1と一緒になって二重結合を表すか、又はR3がR1と一緒になって二重結合を表すか、又はR4がR1と一緒になって二重結合を表す化合物(I.b)、又は少なくとも2つのかかる化合物の混合物は、少量の、R1がOHである化合物(I.b)を含み得る。
【0189】
さらなる態様において、本発明は、上記に定義される少なくとも2つの式(I)の化合物の混合物に関する。
【0190】
特に、上記混合物は、化合物I-1、I-2及びI-3(ここで、化合物I-1においては、R2がR1と一緒になって二重結合を表し、化合物I-2においては、R3がR1と一緒になって二重結合を表し、化合物I-3においては、R4がR1と一緒になって二重結合を表す)の少なくとも2つの混合物である。このような混合物では、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは好ましくは同じ意味を有する。好ましくは、I-1、I-2及び/又はI-3の混合物は、化合物I-2と、化合物I-1及びI-3の1つ又は両方とを含む混合物であるか;又は、化合物I-1及びI-2と、また場合により化合物I-3とを含む混合物であるか;又は、化合物I-2及びI-3と、また場合により化合物I-1とを含む混合物であるか;又は、化合物I-1、I-2及びI-3を含む混合物であり;とりわけ、化合物I-1及びI-2を含む混合物である(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)。
【0191】
別の特定の実施形態において、上記混合物は、化合物I-2及びI-3と、また場合により化合物I-1とを含む。とりわけ、上記混合物は、化合物I-2及びI-3と、また場合により化合物I-1とを含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~80重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)。さらにとりわけ、上記混合物は、化合物I-1、I-2及びI-3を含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.1~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~79.9重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれる(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)。なおさらにとりわけ、上記混合物は、化合物I-1、I-2及びI-3を含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.5~1.5重量%の量で含まれ、化合物I-2は15~73.5重量%の量で含まれ、化合物I-3は25~84.5重量%の量で含まれる(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)。
【0192】
本発明の混合物の特定の実施形態において、XはSである。
【0193】
式(I)の化合物は、以下のスキーム若しくは実施例の合成の説明において記載される方法により、又は標準的な有機化学の方法によって調製することができる。置換基、可変要素及び指数は、別段に特定されない場合、式(I)について上記に定義されるとおりである。
【0194】
より正確には、化合物(I)は、環状エーテルを調製するための標準的な方法により(例えば、以下のスキーム1に示されるとおり、イソプレノール(3-メチルブタ-3-エン-1-オール)(1)を、フルフラール(X=O)又はチオフェンカルボアルデヒド(X=S)(2)と反応させることを含むPrins反応によって)調製することができる。(1)と(2)との反応は、一般的に、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸若しくはp-トルエンスルホン酸を用いるか、又はポリマー酸(例えば強酸性カチオン交換体)を用いて、酸性条件下で行われる。「強酸性カチオン交換体」という用語は、強酸性基を有するH+型のカチオン交換体を指す。上記の強酸性基は、一般的にはスルホン酸基であり;これらは、一般的には、ポリマーマトリックス(これらは、例えば、ゲル状及び/又はマクロ多孔性であり得る)に結合している。スルホン酸基を含むスチレン(コ)ポリマー、とりわけスルホン酸基を含むスチレン-ジビニルベンゼンコポリマー(例えば、Amberlyst(登録商標)131などの、Rohm and Haas製のAmberlyst(登録商標)ブランドの樹脂)が好ましい。さらなる詳細は、方法A及びBとの関連で以下に示される。好適には、反応において形成される水は、反応を促進するために、一般的には蒸留により除去される。反応は、通常、とりわけ酸性カチオン交換体とは異なる酸が使用される場合、有機溶媒中で行われる。好適な溶媒は、例えば、アルカン(例えばペンタン又はヘキサン)、ハロゲン化C1-C4-アルカン(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム又はジクロロエタン)、シクロアルカン(例えばシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばトルエン及びキシレン)、脂肪族エーテル(例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル又はメチル-tert-ブチルエーテル)、環状エーテル(例えば、テトラヒドロフラン又はジオキサン)、あるいはカルボン酸エステル(例えば酢酸エチル)である。酸性カチオン交換体が使用される場合、反応はニートで(すなわち溶媒なしで)行うこともできる。
【0195】
(1)及び(2)は、通常、0.9:1~1.5:1のモル比で、また好ましくは1:1~1.3:1のモル比で利用される。副生成物としてのアセタールの形成((2)を過剰に使用した場合にはこちらが優位になり得る)を回避するため、(1)をわずかに過剰に用いることが有利である。
【0196】
さらなる詳細は、方法A及びBに関連して以下に示される。
【0197】
上記の反応は、一般的には、式(I)の化合物(ここでR1はOHである)(以下においてI'と称される)と、1つ以上の式(I)の化合物(ここで、R2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)(以下においてI"と称される)とを含む粗生成物混合物を生じさせる。点線は、3つの点線の結合のうちの1つは二重結合であるが、他の2つは単結合であることを示すことが意図される。
【0198】
【化10】
【0199】
所望の場合、化合物I'とI"とを互いに分離することができる。化合物I''が様々な二重結合異性体の混合物である場合、これらを互いに分離することもできるし、又は、1つの二重結合異性体を富化させることもできる。好適な分離法及び富化法は当技術分野で公知であり、例えば、蒸留法又はクロマトグラフィー法である。
【0200】
所望の場合、化合物I"を、R1がHである化合物Iへと水素化することができる。好適な水素化条件は、方法A及びBに関連して以下に記載されている。
【0201】
所望の場合、化合物I'を脱水して化合物I"を得ることができる。あるいは、所望の場合、化合物I'を、R1がO-C1-C4-アルキルである化合物Iへとアルキル化することができるか、又はR1がO-(C=O)-R5である化合物Iへとアシル化することができる。好適なアルキル化条件及びアシル化条件は、方法A及びBに関連して以下に記載されている。
【0202】
本発明はまた、化合物(I.a)及び化合物(I.b)を調製する方法にも関する。本明細書中以下に記載される本発明の反応は、このような反応に慣用される反応容器中で行われ、この反応は、連続様式、半連続様式又は回分様式で行われる。一般的に、特定の反応は、大気圧下で行われるであろう。しかし、この反応は、減圧下又は高圧下で行うこともできる。
【0203】
より正確には、本発明は、式(I.a)の化合物又はその混合物を調製する方法であって、この方法が、以下のステップ(i)及び任意選択のステップ(ii)~(iv):
(i) ブレンステッド酸の存在下で、3-メチルブタ-3-エン-1-オールをフラン-2-カルボアルデヒドと反応させて、本明細書中で定義される式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR1はOHである)と、1つ以上の式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)とを含む粗生成物混合物を得ること;及び
(ii) 場合により、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR1はOHである)を単離すること;
又は、ステップ(ii)の代わりに、
(iii) 場合により、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)を、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR1はOHである)から分離し、式(I)の化合物(ここでR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)を水素化反応に供すること;
又は、ステップ(ii)及び(iii)の代わりに、
(iv) 場合により、ステップ(i)で得られた粗生成物混合物を水素化反応に供し、また場合により、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR1はHである)を単離すること;
を含む、上記方法に関する。
【0204】
この方法は、以下において、方法Aとも呼ばれる。
【0205】
ステップ(ii)は、R1がOHである化合物(I.a)を生じさせるが、ステップ(iii)及び(iv)は、R1がHである化合物(I.a)を生じる。従って、第一例において、方法Aは、R1がH又はOHである化合物(I.a)を生じる。しかし、ステップ(ii)で得られた化合物(I.a)は、R1がO-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5である化合物(I.a)へとさらに変換され得る。
【0206】
従って、方法Aは、任意選択のステップ(v):
(v) 場合により、ステップ(ii)で得られた生成物(すなわち、式(I.a)の化合物(ここでR1はOHである))又はステップ(i)で得られた反応混合物を、(R1がO-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5である化合物(I.a)を得るために)アルキル化反応又はアシル化反応に供すること
を含む。
【0207】
一般的には、ステップ(ii)、(iii)、又は(iv)の1つを行わなければならないが;例えば、ステップ(ii)で得られた化合物(I.a)が、R1がO-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5である化合物(I.a)へとさらに変換される場合は例外である。この場合、ステップ(i)で得られた反応混合物を、ステップ(ii)においてR1がOHである化合物(I.a)を予め単離することなく、さらなる変換のために使用することができるが、一般的には、望ましくない副生成物の形成の可能性を低減するため、最初に、R1がOHである化合物(I.a)を単離することが有利である。
【0208】
方法Aのステップ(i)における反応において、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR1はOHである)(すなわち、式(I.a)の化合物(ここでR1はOHである))と、1つ以上の式(I)の化合物(ここでXはOであり、R2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)(すなわち、1つ以上の本明細書中で定義される式(I-1)、(I-2)、又は(I-3)の化合物(ここでXはいずれの場合もOである))とを含む粗生成物混合物が調製される。この変換は、以下の反応スキーム2に表されるとおり、イソプレノール(3-メチルブタ-3-エン-1-オール)(1)と、フルフラール(フラン-2-カルボアルデヒド)(2)とを反応させることによって行われる(例えば:US 4,962,090、EP 0383446及びL. Liuら, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10822-10825を比較のこと):
【0209】
【化11】
【0210】
スキーム2において、式(II)は、本明細書中で定義される式(I-1)、(I-2)、又は(I-3)(式中、Xはいずれの場合もOである)の脱離生成物の1つ、又はこれらの脱離生成物の任意の混合物を表す。式(I.a')は、式(I.a)の化合物(ここでR1はOHである)を表す。
【0211】
ステップ(i)において、イソプレノール及びフルフラールは、触媒としてのブレンステッド酸の存在下で付加反応を受け、式(I.a)のテトラヒドロピラノール化合物(ここでR1はOHである)と、1つ以上の対応する式(II)の脱離生成物との混合物を生じる。この反応は、Prins反応のような、当技術分野で公知の反応群に属するとみなされ得る。
【0212】
イソプレノール及びフルフラールは、通常、0.9:1~1.5:1のモル比で、また好ましくは1:1~1.3:1のモル比で利用される。フルフラールを過剰に使用した場合に優位となり得る副生成物としてのアセタールの形成を回避するため、イソプレノールをわずかに過剰に用いることが有利である。
【0213】
上記の反応において使用されるブレンステッド酸は、当技術分野で公知の任意のブレンステッド酸であってよく、好ましくは、強ブレンステッド酸(例えば強酸性カチオン交換樹脂、硫酸、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸)から、とりわけメタンスルホン酸及び強酸性カチオン交換樹脂から選択される。
【0214】
「強酸性カチオン交換(体)」という用語は、強酸性基を有するH+型のカチオン交換体を指す。強酸性基は、一般的にはスルホン酸基であり;これらは、一般的には、例えば、ゲル状及び/又はマクロ多孔性であり得るポリマーマトリックスに結合している。スルホン酸基を含むスチレン(コ)ポリマー、とりわけ、スルホン酸基を含むスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーが好ましい。このようなカチオン交換体の市販例は、Lewatit(登録商標)(Lanxess)、Purolite(登録商標)(The Purolite Company)、Dowex(登録商標)(Dow Chemical Company)、Amberlite(登録商標)(Rohm and Haas Company)、Amberlyst(登録商標)(Rohm and Haas Company)である。好ましい強酸性カチオン交換体は:Lewatit(登録商標)K 1221、Lewatit(登録商標)K 1461、Lewatit(登録商標)K 2431、Lewatit(登録商標)K 2620、Lewatit(登録商標)K 2621、Lewatit(登録商標)K 2629、Lewatit(登録商標)K 2649、Amberlite(登録商標)FPC 22、Amberlite(登録商標)FPC 23、Amberlite(登録商標)IR 120、Amberlyst(登録商標)131、Amberlyst(登録商標)15、Amberlyst(登録商標)31、Amberlyst(登録商標)35、Amberlyst(登録商標)36、Amberlyst(登録商標)39、Amberlyst(登録商標)46、Amberlyst(登録商標)70、Purolite(登録商標)SGC650、Purolite(登録商標)C100H、Purolite(登録商標)C150H、Dowex(登録商標)50X8、Serdolit(登録商標)red、及びNation(登録商標)NR-50である。とりわけ、Rohm and Haas製のAmberlyst(登録商標)ブランドの樹脂、きわめて特にAmberlyst(登録商標)131の樹脂が使用される。あるいは、上記のカチオン交換体は、例えば、DuPontのNafion(登録商標)ブランドの下で販売されている過フッ素化イオン交換樹脂であり得る。
【0215】
酸性カチオン交換体樹脂とは異なるブレンステッド酸は、一般的に、触媒量で使用される。
【0216】
強酸性カチオン交換体の量はそれほど重要ではないが、経済的側面及び加工的側面を考慮し、一般的には触媒量で使用される。通常、強酸性カチオン交換体は、いずれの場合も(1)及び(2)の重量の合計に対して、約5~約40重量%の量で、好ましくは約10~約40重量%の量で、特に好ましくは約15~約30重量%の量で使用される。ここで、上記の数字は、即時使用可能なカチオン交換体を指し、これらは、一般的には水で前処理され、従って、約70重量%以下、好ましくは約30~約70重量%、また特に好ましくは約40~約70重量%の量の水を含み得る。従って、特に非連続的な手順の場合、上記の工程を行うときのさらなる水の添加は不要であり得る。特定の強酸性カチオン交換体は、個別に、あるいは混合物の形態で使用することができる。
【0217】
方法Aのステップ(i)における反応において、酸性カチオン交換体とは異なる酸が使用される場合、この反応は、一般的には、ステップ(i)の反応条件下では不活性な好適な有機溶媒中で行われる。好適な溶媒は、例えば、アルカン(例えばペンタン又はヘキサン)、ハロゲン化C1-C4-アルカン(例えばジクロロメタン、クロロホルム又はジクロロエタン)、シクロアルカン(例えばシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばトルエン及びキシレン)、脂肪族エーテル(例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル又はメチル-tert-ブチルエーテル(butyether))、環状エーテル(例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン)、あるいはカルボン酸エステル(例えば酢酸エチル)である。特定の溶媒は、それだけで使用することも可能であり、又は相互の混合物の形態で使用することもできる。とりわけ、芳香族炭化水素が使用される。酸性カチオン交換体が使用される場合、反応は、反応条件下で不活性な溶媒の存在下で行うこともできる。好適な溶媒は、上記に列挙されるものである。しかし、一般的に、ブレンステッド酸として強酸性カチオン交換体が使用される場合、反応はニートで(すなわち有機溶媒を添加することなく)行われる。
【0218】
反応物は、原理上、任意の望ましい順番で互いに接触させることができる。例えば、最初に、場合により不活性溶媒中に溶解又は分散させたイソプレノール及びブレンステッド酸を入れて、互いに混合することができる。得られた混合物を、その後、フルフラールと混合することができる。逆に、最初に、場合により不活性溶媒中に溶解又は分散させたフルフラールを入れて、イソプレノール及びブレンステッド酸の混合物と混合することもできる。あるいは、最初に、フルフラールをブレンステッド酸と混合し、その後、この混合物をイソプレノールと混合してもよい。さらなる代替案として、全ての反応物を、反応容器に同時に添加することもできる。
【0219】
最初に、反応容器に、イソプレノールとブレンステッド酸の混合物を(場合により溶媒中の分散液又は溶液として、しかし好ましくは溶媒なしで)入れ、その後、溶解形態で利用されるか、又は好ましくはそのままのフルフラールを加えることが有利であることが見いだされた。
【0220】
一般的に、方法Aのステップ(i)における反応は、温度制御下で行われる。この反応は、典型的には、撹拌装置を有する密閉された反応容器中で、又は好ましくは開放された反応容器中で行われる。方法Aの反応の反応温度は、様々な要因により、特にブレンステッド酸の酸性度及び使用量によって決まり、個別ケースにおけて、当業者により、例えば簡単な予備試験によって決定され得る。一般的に、方法Aの変換は、10~150℃の範囲内、好ましくは30~120℃の範囲内、より好ましくは40~110℃の範囲内、とりわけ50~100℃の範囲内の温度で行われる。C-C二重結合を有する脱水化合物IIの取得が望ましい場合、比較的高い反応温度、例えば約100℃(例えば80~120℃又は90~110℃)が、中間的に形成された化合物I.a'からの水の脱離及び除去を促進するのに有利である。飽和化合物I.a'が望ましい場合、100℃未満の反応温度(例えば、30~90℃又は50~80℃)がより好適である。
【0221】
方法Aのステップ(i)で得られた反応混合物の後処理、及び式(I.a)の化合物(ここでR1はOHである)と1つ以上の式(II)の脱離生成物との混合物の単離は、慣用の方法で、例えば水性抽出後処理により、又は例えば減圧下で溶媒を除去することによって行われる。一般的には、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と1つ以上の脱離生成物(II)との混合物は、このような手段又はそれらの組み合わせを利用することにより、十分な純度で得られる。従って、さらなる精製ステップ、特に精巧な精製ステップ(例えば、クロマトグラフィー又は蒸留)は、通常、本明細書中以下に記載されるとおり、式(II)の脱離生成物の、式(I.a)の化合物(ここでR1はOHである)からの分離が求められる場合にのみ必要とされる。しかし、所望の場合、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と1つ以上の脱離生成物(II)との混合物のさらなる精製は、当技術分野において一般的に用いられる方法によって行うことができる。
【0222】
好ましくは、方法Aのステップ(i)で得られた反応混合物を、後処理のために、水中で不溶性又はわずかながらの水溶性であり、且つ得られた反応生成物を溶解させるのに好適な極性有機溶媒(例えば酢酸エチル又はジクロロメタンなど)で希釈する。その後、この混合物を、ブレンステッド酸として使用されていた可能性があるカチオン交換樹脂を除去するためにできるだけろ過する。次いで、得られた生成物溶液を、炭酸水素ナトリウム水溶液などの塩基性水溶液で処理する。水性相の除去後、有機相を、場合により上述の塩基性水溶液で再び処理する。好ましくは、その後、上記の有機相を、ブラインなどの中性又はほぼ中性のpH値を有する水溶液で洗浄する。次いで、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と、1つ以上の脱離生成物(II)との混合物を含有する有機相を、直接、又は溶媒の部分的若しくは完全な除去後に、さらなる反応ステップに導入することができる。あるいは、上記の有機相は濃縮され、このようにして得られた粗生成物は、その後、使用のために保持されるか、又は直接使用に送られ、例えば、以下に記載されるように、さらなる反応ステップにおいて使用されるか、又はさらなる精製ステップに供される。
【0223】
方法Aの任意選択のステップ(ii)において、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)は、ステップ(i)で得られた、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と1つ以上の脱離生成物(II)との混合物から単離される。この単離は、上記混合物を、蒸留又はクロマトグラフィーなどの当技術分野で公知の好適な精製手順の少なくとも1つ(特に蒸留)に供することによって達成することができる。実際、R1がOHである式(I.a)の化合物は、方法Aのステップ(i)で得られた混合物から、蒸留により高純度で単離することができる。
【0224】
方法Aの任意選択のステップ(iii)において、ステップ(i)で得られた、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と1つ以上の脱離生成物(II)との混合物は、1つ以上の脱離生成物(II)(すなわち、1つ以上の、XがOであり且つR2、R3、R4の1つがR1と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物)を、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)から分離するために、分離工程に供される。その後、上記の1つ以上の脱離生成物(II)は、水素化反応に供される。
【0225】
上記の分離は、蒸留又はクロマトグラフィーなどの、1つ以上の当技術分野で公知の好適な精製手順(特に蒸留)を用いることによって達成することができる。実際、1つ以上の脱離生成物(II)は、方法Aのステップ(i)において得られた混合物から、蒸留により高純度で単離することができる。
【0226】
分離工程後の1つ以上の脱離生成物(II)の収率をより高くするためには、典型的には、ステップ(i)で得られる、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と1つ以上の脱離生成物(II)との混合物中の、1つ以上の脱離生成物(II)の割合を増加させることが有利である。これは、方法Aのステップ(i)における変換の反応平衡を、より高い反応温度、より多量の酸又はより長い反応時間などのより厳しい反応条件を適用することによって、あるいは反応平衡から水を除去することにより、式(II)の脱離生成物の方向に移動させることによって達成することができる。これらの手段の1つ以上が採られる場合、ステップ(i)の変換は、典型的には、出発物質であるイソプレノール及びフルフラールの、式(II)の脱離生成物への完全な変換又はほぼ完全な変換を可能とする。次いで、その後のステップ(iii)による蒸留精製により、1つ以上の脱離生成物(II)が、優れた収率及び高純度で得られるであろう。
【0227】
ステップ(ii)の単離及びステップ(iii)の分離は、典型的には、単回の精製ラン(例えば、特に単回の蒸留ラン)で行って、少なくとも主にR1がOHである式(I.a)の化合物からなる1つの画分と、少なくとも主に1つ以上の脱離生成物(II)からなる別の画分とを得ることができる。
【0228】
以下のスキーム3に示されるとおり、ステップ(iii)の水素化反応において、分離手順において得られた1つ以上の脱離生成物(II)が水素化反応に供され、式(I.a)のテトラヒドロフラン化合物(ここでR1はHである)(スキーム3においてI.a''と称される)が得られる。
【0229】
【化12】
【0230】
原理上、水素化は、当技術分野において同様の変換に好適であることが知られている任意の水素化法を用いることによって達成することができる。好ましくは、水素化は、典型的には、少なくとも1種の遷移金属、特に周期表(CAS版)のIVB群、VIIIB群又はIB群に属する遷移金属(例えばジルコニウム、パラジウム、白金、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、イリジウム、ルテニウム又は銅)を含む触媒の存在下で、還元剤として気体水素を用いることによって行われる。これらの金属は、それらの塩、酸化物又は錯体のうちの1つの形態、あるいは金属形態で、触媒中に存在し得る。これに関して好ましい金属は、ニッケル(とりわけラネーニッケルの形態のもの)である。ステップ(iii)における水素化は、例えば、J. H. Tymanら, Tetrahedron Lett. 1970, 11, 4507;V. H. Rawalら, J. Org. Chem. 1993, 58, 7718;B. M. Trostら, J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 6745;L. Coulombelら, Eur. J. Org. Chem. 2009, 33, 5788;及びP. L. Alstersら, Org. Process Res. Dev. 2010, 14, 259に記載されている変換と同様に行うことができる。
【0231】
方法Aのステップ(iii)における水素化は溶媒なしで行うことができるが、好ましくは、水素化条件下で不活性な溶媒(特に、好ましくはC1-C6-アルカノールから選択されるプロトン性有機溶媒、とりわけ、メタノール、エタノール及びイソプロパノールから選択されるプロトン性有機溶媒など)の存在下で行われる。
【0232】
水素化は、典型的には、1~2バールの範囲内、好ましくは1~1.5バールの範囲内、特に1~1.2バールの水素圧で行われる。温度は、通常、10~50℃の範囲内、好ましくは20~40℃(例えば20~30℃又は20~25℃)の範囲内である。
【0233】
方法Aのステップ(iii)において得られた反応混合物の後処理、及び式(I.a)のテトラヒドロフラン化合物(ここでR1はHである)の単離は、慣用の方法で、例えば、ろ過及び溶媒の除去(例えば減圧下)により行われる。一般的には、その後、R1がHである式(I.a)の生成物が十分な純度で得られ、さらなる精製ステップ(例えばクロマトグラフィー又は蒸留)は、通常は必要ではないが、R1がHである式(I.a)の極めて純粋な生成物が望ましい場合には適用することができる。
【0234】
上記のスキーム3に示されるとおり、方法Aの任意選択のステップ(iv)において、ステップ(i)で得られた、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と1つ以上の脱離生成物(II)との混合物が水素化反応に供され、R1がHである式(I.a)のテトラヒドロフラン化合物が得られる。
【0235】
ステップ(iv)における水素化反応は、方法Aのステップ(iii)の文脈において本明細書中上記した水素化反応と同様に行われる。
【0236】
方法Aのステップ(iv)において、式(I.a)のテトラヒドロフラン化合物(ここでR1はHである)の収率をより高くするためには、典型的には、ステップ(i)で得られる、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)と1つ以上の脱離生成物(II)との混合物中の、脱離生成物(II)の割合を増加させることが有利である。これは、本明細書中上記の手段の1つ以上を適用することにより、方法Aのステップ(i)における変換の反応平衡を式(II)の脱離生成物の方向に移動させることによって達成することができる。
【0237】
さらに、方法Aのステップ(i)又はステップ(ii)で得られた、式(I.a)のテトラヒドロピラノール化合物(ここでR1はOHである)を、式(I.a)の化合物(ここでR1はO-C1-C4-アルキルである)を調製するために、アルキル化反応に供してもよい。
【0238】
上記のアルキル化反応は、当技術分野で周知の従来のアルキル化反応条件下で行われる。好ましくは、R1がO-C1-C4-アルキルである化合物(I.a)は、R1がOHである化合物(I.a)を、典型的には塩基の存在下で、アルキル化試薬R6-Y(式中、R6はC1-C4-アルキル基であり、Yは、ハロゲン(例えば、Cl、Br、I)、及びスルホネート(例えばトシラート、メシラート、トリフラート又はノナフラート)から選択される脱離基を表す)を用いてアルキル化することによって調製される。
【0239】
好適な塩基は、典型的には、無機塩基及び有機塩基から選択される。
【0240】
このアルキル化反応において使用し得る好適な無機塩基は、例えば、アルカリ金属炭酸塩(例えばLi2CO3、Na2CO3、K2CO3又はCs2CO3)、アルカリ金属水酸化物(例えば、LiOH、NaOH又はKOH)、及び水素化物供与体(例えば、NaH、LiAlH4又はNaBH4)である。
【0241】
このアルキル化反応において使用し得る好適な有機塩基は、例えば、第三級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エチルジイソプロピルアミンなど)、又は塩基性のN複素環(例えば、モルホリン、ピリジン、ルチジン、DMAP、DABCO、DBU又はDBN)である。
【0242】
上記のアルキル化反応で得られた反応混合物の後処理、及びR1がO-C1-C4-アルキルである式(I.a)の生成物の単離は、慣用の方法で、例えば、水性抽出後処理により、又は例えば減圧下で溶媒を除去することによって行われる。所望の生成物は、一般的に、このような手段又はそれらの組み合わせを利用することによって、十分な純度で得られる。しかし、クロマトグラフィー又は蒸留などのさらなる精製ステップは、R1がO-C1-C4-アルキルである式(I.a)の極めて純粋な化合物が望ましい場合に行うことができる。
【0243】
方法Aのステップ(i)又はステップ(ii)で得られた式(I.a)のテトラヒドロピラノール化合物(ここでR1はOHである)を、式(I.a)の化合物(ここでR1はO-(C=O)-R5である)を調製するために、アシル化反応に供してもよい。
【0244】
一般的には、R1がO-(C=O)-R5である式(I.a)のエステルは、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)を、カルボン酸R5-COOH(式中、R5は本明細書中で定義される意味の1つを有する)、若しくはその酸無水物、又はカルボン酸R5-COOHとその酸無水物との混合物と反応させることにより、効率的に調製することができる。上記の反応は、典型的には、エステル化触媒又は塩基の存在下で行われる。
【0245】
この反応に利用し得る好適なエステル化触媒は、当技術分野で周知である。好適なエステル化触媒は、例えば、金属系触媒(例えば、金属、金属酸化物、若しくは金属塩(例えば金属アルコキシレート)の形態の、鉄、カドミウム、コバルト、鉛、亜鉛、アンチモン、マグネシウム、チタン、及びスズの触媒);鉱酸(例えば硫酸、塩酸、若しくはリン酸);又は有機スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、若しくはパラ-トルエンスルホン酸)である。
【0246】
好適な塩基は、例えば、上記に定義される有機塩基(例えば、特にピリジン、ルチジン又はDMAP)、とりわけDMAPである。
【0247】
あるいは、R1がO-(C=O)-R5である式(I.a)のエステルは、有機塩基(好ましくは上記に定義される有機塩基の1つ)の存在下で、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)を、式R5-(C=O)Y'の酸ハロゲン化物(式中、R5は本明細書中で定義される意味の1つを有し、Y'はハロゲン(例えばCl、Br又はI)である)と反応させることによって調製することができる。
【0248】
好ましくは、R1がO-(C=O)-R5である式(I.a)のエステルは、有機塩基の存在下で、化合物(I.a)(ここでR1はOHである)を、カルボン酸R5-COOHの酸無水物と反応させることによって調製される。
【0249】
上記に概説される、R1がO-(C=O)-R5である式(I.a)のエステルの調製のための個々の反応条件は、当技術分野で周知である。
【0250】
上記のアシル化反応で得られた反応混合物の後処理、及びR1がO-(C=O)-R5である式(I.a)の生成物の単離は、慣用の方法で、例えば、水性抽出後処理により、又は(例えば減圧下で)溶媒を除去することによって行われる。所望の生成物は、一般的に、このような手段又はそれらの組み合わせを利用することにより、十分な純度で得られる。しかし、クロマトグラフィー又は蒸留などのさらなる精製ステップは、R1がO-(C=O)-R5である式(I.a)の極めて純粋な化合物が望ましい場合に行うことができる。
【0251】
本発明はさらに、本明細書中上記に定義される式(I.b)の化合物の1つ、又はその混合物を調製する方法であって、この方法が、以下のステップ(i')及び任意選択のステップ(ii')~(v'):
(i') ブレンステッド酸の存在下で、3-メチルブタ-3-エン-1-オールをチオフェン-2-カルボアルデヒドと反応させて、式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)と1つ以上の式(I.b)の化合物(ここでR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)とを含む粗生成物混合物を得ること、
(ii') 場合により、式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)を単離すること;
又は、ステップ(ii')の代わりに、
(iii') 場合により、式(I.b)の化合物(ここでR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)を、式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)から分離し、所望の場合、式(I.b)の化合物(ここでR2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)を水素化反応に供すること;
又は、ステップ(ii')及び(iii')の代わりに、
(iv') 場合により、ステップ(i)で得られた粗生成物混合物を水素化反応に供し、また場合により、式(I.b)の化合物(ここでR1はHである)を単離すること;
又は、ステップ(iii')及び(iv')の代わりに、又はこれらに加えて、
(v') 場合により、式(I.b)の化合物(ここでR1はOHである)を、アルキル化反応又はアシル化反応に供すること、
を含む、上記方法に関する。
【0252】
この方法は、本明細書において、方法Bとも呼ばれる。
【0253】
ステップ(ii')は、R1がOHである化合物(I.b)をもたらし、ステップ(iii')は、R2、R3、R4の1つがR1と一緒になって二重結合を表す化合物(I.b)(水素化反応が行われない場合)をもたらすか、又は、かかる化合物の水素化が行われる場合には、R1が水素である化合物(I.b)をもたらし、ステップ(iv')は、R1がHである化合物(I.b)をもたらす。ステップ(v')は、R1がO-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5である化合物(I.b)をもたらす。
【0254】
一般的には、ステップ(ii')、(iii')、又は(iv')のうちの1つを行わなければならないが;例えば、ステップ(ii)で得られた化合物(I.b)が、ステップ(v')において、R1がO-C1-C4-アルキル又はO-(C=O)-R5である化合物(I.b)へとさらに変換される場合は例外である。この場合、ステップ(i)で得られた反応混合物を、ステップ(ii')でR1がOHである化合物(I.b)を予め単離することなく、ステップ(v')においてさらなる変換のために使用することができるが、一般的には、ステップ(v')における望ましくない副生成物の形成の可能性を低減するために、最初に、ステップ(ii')において、R1がOHである化合物(I.b)を単離することが有利である。
【0255】
上記の方法Bのステップ(i')~(iv')は、本発明の方法Aのステップ(i)~(iv)に対応し、ステップ(i')においてはフルフラールの代わりにチオフェン-2-カルボアルデヒドが使用されることを例外として、またステップ(iii')においては式(I.b)の化合物(ここで、R2、R3、R4の1つはR1と一緒になって二重結合を表す)が得られるように水素化反応をスキップし得ることを例外として、本明細書中上記のステップ(i)~(iv)について記載されている手順と同様に行うことができる。さらに、方法Bのステップ(v')によるアルキル化反応及びアシル化反応は、R1がOHである式(I.a)のテトラヒドロピラノール化合物をアルキル化又はアシル化するための上記の手順に対応し、同様の様式で行うことができる。
【0256】
化合物(I.a)及び(I.b)とは異なる化合物(I)(例えば、XがOであり、且つR2、R3、R4の1つがR1と一緒になって二重結合を表す化合物(I))は、同様の方法で調製することができる。例えば、XがOであり且つR2、R3、R4の1つがR1と一緒になって二重結合を表す化合物(I)は、方法Aと同様に調製することができるが、しかしここで、ステップ(iii)においては、水素化ステップはスキップされ、XがOであり且つR2、R3、R4の1つがR1と一緒になって二重結合を表す化合物(I)が、ステップ(i)の反応混合物から単離される。
【0257】
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
芳香化学物質としての、一般式(I):
【化13】
(式中、
XはO又はSであり;
R 1 は、水素、OH、O-C 1 -C 4 -アルキル又はO-(C=O)-R 5 であり;
R 2 、R 3 、R 4 は水素であるか;
又はR 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表し;
R 5 は、水素及びC 1 -C 4 -アルキルからなる群から選択される)
の化合物、2つ以上の異なる化合物(I)の混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物の使用。
項2
式(I)の化合物が、化合物I-1、I-2又はI-3であるか(ここで、化合物I-1は、R 2 がR 1 と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物であり、化合物I-2は、R 3 がR 1 と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物であり、化合物I-3は、R 4 がR 1 と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物である);あるいは、化合物I-1、I-2及びI-3の少なくとも2つの混合物であり(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する);
またここで特に、式(I)の化合物が、化合物I-1、I-2又はI-3であるか、あるいは、化合物I-2と、化合物I-1及びI-3の1つ又は両方とを含む混合物であるか、又は、化合物I-1及びI-2と、場合により化合物I-3とを含む混合物であるか、又は、化合物I-2及びI-3と、場合により化合物I-1とを含む混合物である(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)、
項1に記載の使用。
項3
前記混合物が、化合物I-2及びI-3と、場合により化合物I-1とを含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~80重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれ(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する);
ここで好ましくは、前記混合物が、化合物I-1、I-2及びI-3を含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.1~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~79.9重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれ(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する);
またここで特に、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.5~1.5重量%の量で含まれ、化合物I-2は15~73.5重量%の量で含まれ、化合物I-3は25~84.5重量%の量で含まれる(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)、
項2に記載の使用。
項4
式(I)において、R 1 が水素である、項1に記載の使用。
項5
式(I)において、R 1 がOHである、項1に記載の使用。
項6
式(I)において、R 1 が、O-C 1 -C 4 -アルキル、特にメトキシ又はエトキシ、とりわけメトキシである、項1に記載の使用。
項7
式(I)において、R 1 がO-(C=O)-R 5 、特にアセトキシである、項1に記載の使用。
項8
XがOである、項1~7のいずれか1項に記載の使用。
項9
XがSである、項1~7のいずれか1項に記載の使用。
項10
嗅覚印象を付与するための、項1~9のいずれか1項に記載の使用。
項11
フレグランスとしての、項10に記載の使用。
項12
フレグランスを付与した即時使用可能な組成物の香りの特徴を改質するための、項1~9のいずれか1項に定義される式(I)の化合物、その立体異性体、その立体異性体の混合物、又は異なる化合物(I)の混合物の使用。
項13
香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物及び作物保護組成物から選択される組成物における、項1~12のいずれか1項に記載の使用。
項14
項1~9のいずれか1項に定義される少なくとも1つの式(I)の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物と、化合物(I)とは異なる芳香化学物質及び非芳香化学物質担体からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる化合物とを含む組成物。
項15
前記非芳香化学物質担体が、界面活性剤、皮膚軟化剤及び溶媒からなる群から選択され、ここで溶媒は、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセロール、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、トリエチルシトレート及びベンジルベンゾエートからなる群から選択される、項14に記載の組成物。
項16
香水組成物、ボディケア組成物、口腔及び歯の衛生用製品、衛生物品、洗浄組成物、布用洗剤組成物、香りディスペンサー用組成物、食品、栄養補助食品、医薬組成物、並びに作物保護組成物からなる群から選択される、項14又は15のいずれか1項に記載の組成物。
項17
一般式(I.a):
【化14】
(式中、
R 1 は、水素、OH、O-C 1 -C 4 -アルキル又はO-(C=O)-R 5 であり、
R 5 は、水素及びC 1 -C 4 -アルキルからなる群から選択され、
またここで特に、R 1 は、水素、OH、メトキシ、エトキシ及びアセトキシからなる群から選択される)
の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物。

項18
R 1 が、OH、O-C 1 -C 4 -アルキル又はO-(C=O)-R 5 、好ましくはOH又はO-C 1 -C 4 -アルキル、より好ましくはOH、メトキシ又はエトキシ、特にOH又はメトキシである、項17に記載の化合物。
項19
一般式(I.b):
【化15】
(式中、
R 1 は、水素、OH、O-C 1 -C 4 -アルキル又はO-(C=O)-R 5 であり、
R 2 、R 3 、R 4 は水素であるか;
又はR 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表し;
R 5 は、水素及びC 1 -C 4 -アルキルからなる群から選択され、
ここで、とりわけR 1 はOHであり、且つR 2 、R 3 、R 4 は水素である)
の化合物、その混合物、その立体異性体又はその立体異性体の混合物。
項20
項1に定義される少なくとも2つの異なる式(I)の化合物の混合物であって;ここで好ましくは、前記混合物は、化合物I-1、I-2及びI-3の少なくとも2つの混合物であり、ここで、化合物I-1においては、R 2 はR 1 と一緒になって二重結合を表し、化合物I-2においては、R 3 はR 1 と一緒になって二重結合を表し、化合物I-3においては、R 4 はR 1 と一緒になって二重結合を表し(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する);
またここで特に、前記混合物は、化合物I-2と、化合物I-1及びI-3の1つ又は両方とを含む混合物であるか;又は、化合物I-1及びI-2と、場合により化合物I-3とを含む混合物であるか;又は、化合物I-2及びI-3と、場合により化合物I-1とを含む混合物であるか;あるいは、化合物I-1、I-2及びI-3を含む混合物であり;とりわけ、化合物I-1及びI-2を含む混合物である(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)、
前記混合物。
項21
XがSである、項20に記載の混合物。
項22
前記混合物が、化合物I-2及びI-3と、場合により化合物I-1とを含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~80重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれ(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する);
ここで好ましくは、前記混合物が、化合物I-1、I-2及びI-3を含み、ここで、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.1~10重量%の量で含まれ、化合物I-2は1~79.9重量%の量で含まれ、化合物I-3は15~99重量%の量で含まれ(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する);
またここで特に、化合物I-1、I-2及びI-3の総重量に対して、化合物I-1は0.5~1.5重量%の量で含まれ、化合物I-2は15~73.5重量%の量で含まれ、化合物I-3は25~84.5重量%の量で含まれる(ここで好ましくは、混合物中に含まれる化合物I-1、I-2及びI-3の全てにおいて、Xは同じ意味を有する)、
項20又は21のいずれか1項に記載の混合物。
項23
項17若しくは18に記載の式(I.a)の化合物、又は異なる化合物(I.a)の混合物を調製する方法であって、
式(I.a)の化合物(ここでR 1 はOH又はHである)又はその混合物を調製するためには:
(i) ブレンステッド酸の存在下で、3-メチルブタ-3-エン-1-オールとフラン-2-カルボアルデヒドとを反応させて、項1に定義される式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR 1 はOHである)と、1つ以上の式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表す)とを含む粗生成物混合物を得ること;及び
(ii) 場合により、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR 1 はOHである)を単離すること;
又は、ステップ(ii)の代わりに、
(iii) 場合により、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表す)を、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR 1 はOHである)から分離し、式(I)の化合物(ここでR 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表す)を水素化反応に供すること;
又は、ステップ(ii)及び(iii)の代わりに、
(iv) 場合により、ステップ(i)で得られた粗生成物混合物を水素化反応に供し、さらに場合により、式(I)の化合物(ここでXはOであり且つR 1 はHである)を単離すること;
を含み、
式(I.a)の化合物(ここでR 1 はO-C 1 -C 4 -アルキル又はO-(C=O)-R 5 である)を調製するためには:
(v) 式(I.a)の化合物(ここでR 1 はOHである)を、アルキル化反応又はアシル化反応に供すること
を含む、前記方法。
項24
項19に記載の式(I.b)の化合物、又は異なる式(I.b)の化合物の混合物を調製する方法であって、
(i') ブレンステッド酸の存在下で、3-メチルブタ-3-エン-1-オールとチオフェン-2-カルボアルデヒドとを反応させて、式(I.b)の化合物(ここでR 1 はOHである)と、1つ以上の式(I.b)の化合物(ここでR 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表す)とを含む粗生成物混合物を得ること、
(ii') 場合により、式(I.b)の化合物(ここでR 1 はOHである)を単離すること;
又は、ステップ(ii')の代わりに、
(iii') 場合により、式(I.b)の化合物(ここでR 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表す)を、式(I.b)の化合物(ここでR 1 はOHである)から分離し、所望の場合、式(I.b)の化合物(ここで、R 2 、R 3 、R 4 の1つはR 1 と一緒になって二重結合を表す)を水素化反応に供すること;
又は、ステップ(ii')及び(iii')の代わりに、
(iv') 場合により、ステップ(i)で得られた粗生成物混合物を水素化反応に供し、さらに場合により、式(I.b)の化合物(ここでR 1 はHである)を単離すること;
又は、ステップ(iii')及び(iv')の代わりに、
(v') 場合により、式(I.b)の化合物(ここでR 1 はOHである)を、アルキル化反応又はアシル化反応に供すること、
を含む、前記方法。
以下の実施例は、本発明のさらなる説明の役割を果たす。
【実施例
【0258】
1. 調製実施例
略語:
DMAP:4-(ジメチルアミノ)-ピリジン
EA:酢酸エチル
RT: 室温
THF: テトラヒドロフラン
MTBE: メチル-tert-ブチルエーテル
【0259】
分析
生成物の純度を、ガスクロマトグラフィーにより、面積%に基づいて決定した:
GCカラム:DB-WAX (30m(長さ)、0.25mm (ID)、0.25マイクロメートル(フィルム);
温度プログラム:50℃で5分間、6℃/分で50℃~230℃、230℃で10分間。
注入器の温度 200℃;検出器の温度 230℃。流速:1.4ml/分
【0260】
生成物は、13C NMRにより同定した。
【0261】
1a) 2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オール(R1=OHである式(I.a)の化合物)、及びエキソ-又はエンド環状二重結合を有する対応する3つの脱離生成物(X=Oであり且つR2、R3又はR4がR1と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物)の調製
イソプレノール(3-メチルブタ-3-エン-1-オール)(40g、0.464mol)と、20gの強酸性カチオン交換体Amberlyst(登録商標)131(湿性;Rohm&Haas製;水で洗浄し、次いでメタノールで洗浄し、使用前に再び水で洗浄した)との混合物に、フルフラール(37.9g、0.395mol)を、室温で撹拌しながらゆっくりと加えた。発熱反応を、70℃の温度で3時間継続した。その後、反応混合物を室温に設定し、カチオン交換体をろ過除去した。ろ液を、100mLのEA及び100mLの水と混合した。有機相を分離し、NaHCO3の飽和水溶液で洗浄し、その後ブラインで洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で蒸発させた後、47.9gの粗生成物を得た(GC分析(面積%)によれば、約71.84%の2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールと、19.95%の脱離生成物である2-(フラン-2-イル)-4-メチリデン-テトラヒドロピラン、2-(フラン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピラン及び2-(フラン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピランを含有していた)。粗生成物を蒸留分離に供し、2つの主要画分を得た。蒸留の第1画分は3つの脱離生成物の混合物であり、純度は95.3%(GC面積%)であり、また化合物I-1:I-2:I-3(ここで、いずれの場合もXはOである)のモル比は1:65.5:33.5であることが判明した。
ジヒドロピラン類似体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ = 22.97, 33.26, 65.79, 68.89, 106.77, 110.08, 119.64, 131.19, 142.21, 154.41。
メチリデン類似体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ = 34.82, 38.64, 68.47, 73.53, 106.78, 109.58, 110.06, 142.29, 143.28, 154.19。
【0262】
NMRにより決定すると、第2画分は2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールであり、純度は97.7%(GC面積%)であり、そのE異性体とZ異性体の比は3:1であることが判明した。
E異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ = 22.33, 26.11, 35.54, 39.81, 63.77, 68.28, 78.79, 106.74, 110.11, 142.29, 154.13, 170.32。
Z異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ = 21.57, 22.41, 37.26, 40.66, 64.72, 69.93, 79.33, 106.70, 110.14, 142.31, 153.83, 170.24。
【0263】
反応を繰り返し、398.7gの粗生成物を、4cm直径を有する60cmカラムを用いた精留(fine distillation)に供した。このカラムのうち59cmを、カラムパッキング(DN30 A3-1000 2.4610 8 27x50mm)で充填した。幾つかの画分を単離し、画分4は、純度97.3%の異性体I-2(X=O)であった。
【0264】
1b) 2-(フラン-2-イル)-ジヒドロピランと、エンド-又はエキソ環状二重結合を有する2-(フラン-2-イル)-4-メチリデン-テトラヒドロピラン(= 2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールの脱離生成物;X=Oである化合物I-1、I-2及びI-3の混合物(= X=Oであり且つR2、R3又はR4がR1と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物の混合物))との混合物の調製
200mLのトルエン中のイソプレノール(21.50g、0.249mol)とフルフラール(20g、0.208mol)との混合物を、20℃で撹拌した。この温度で、2滴のメタンスルホン酸を反応混合物に加えた(軽い発熱)。混合物を還流で5時間撹拌し、その間、反応中の水を蒸留した。その後、反応混合物を室温に設定した。この混合物に、100mLの水を加え、有機相をNaHCO3の5%溶液で、さらに水で洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で蒸発させた後、30.3gの粗生成物を得た(GC分析(面積%)によれば、約6%の2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールと、80.7%の、脱離生成物である2-(フラン-2-イル)-4-メチリデン-テトラヒドロピラン、2-(フラン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピラン及び2-(フラン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピランとを含有していた)。粗生成物を蒸留分離に供して主要画分を得て、これは3つの脱離生成物の混合物であり、純度は97.8%(GC面積%)であり、また化合物I-1:I-2:I-3(ここで、いずれの場合もXはOである)のモル比は1:19.5:79.5であることが判明した。
【0265】
上記の反応を繰り返し、59.9gの粗生成物を、カラムパッキング(DN30 A3-1000 2.4610 8 27x50mm)を充填した21cmカラムを用いた精留に供した。幾つかの画分を単離したところ、画分3が、7%のI-2及び92%のI-3(ここで、いずれの場合もXはOである)を含有していた。
【0266】
1c) 2-(2-フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン(R1がHである式(I.a)の化合物)の調製
15gの、X=Oでありエキソ-又はエンド環状二重結合を有する3つの脱離生成物I-1、I-2及びI-3(X=Oであり、且つR2、R3又はR4がR1と一緒になって二重結合を表す式(I)の化合物)の混合物を、360mLのメタノール中に溶解させた。この混合物に、9gのラネーニッケル(水中50%)を加えた。反応容器を、水で満たしたガスビュレットに接続した。次いで、H2消費をモニターし得る方法で、H2を、ガスボトルからガスビュレット中に直接圧縮した。反応を25℃で進めた。この実験を4.5時間継続し、H2の2.5L消費が観察された。触媒をろ過除去し、溶媒を減圧で蒸発させた。16.2gの粗生成物を得た(これは、95%の水素化生成物を含有していた)。この粗生成物を蒸留分離に供して主要画分を得、これは、純度96%を有する3:2のZ/E比の所望の2-(2-フリル)-4-メチル-テトラヒドロピランであることが判明した。
Z異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 22.25, 30.18, 34.25, 38.13, 68.27, 72.81, 106.02, 110.01, 141.83, 155.13。
E異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 20.19, 25.22, 33.00, 35.26, 62.60, 68.27, 107.18, 109.99, 141.83, 154.84。
【0267】
1d) 2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-イル-アセテート(R1がO-(C=O)-CH3である式(I.a)の化合物)の調製
室温で、DMAP(0.2g、1.64mmol)を、50mLのTHF中の2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オール(10g、0.055mol)の溶液に加えた。得られた混合物を53℃で還流し、この間に、無水酢酸(7g、1.25当量)を、この温度でゆっくりと加えた。6時間後、GCにより約85%の変換が観察された。反応物を室温に冷却し、50mLの水でゆっくりとクエンチした。その後、50mLのEAを加えた。有機相を分離し、NaHCO3の飽和水溶液で、さらにブラインで洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で蒸発させた後、6.9gの粗生成物を得た(GC分析(面積%)によれば、約81.5%の表題化合物を含有していた)。カラムクロマトグラフィーによる精製により、純度99%(GC面積%)を有する表題化合物を、そのE異性体とZ異性体の混合物として得た。NMR分析により、E/Z異性体比は7:3であることが明らかになった。
E異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 31.59, 38.14, 42.03, 63.94, 67.52, 68.44, 106.65, 110.03, 142.16, 154.61。
Z異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 25.19, 40.05, 43.58, 65.59, 68.55, 70.66, 106.75, 110.13, 142.25, 154.05。
【0268】
1e) 2-(2-フラン-2-イル)-4-メトキシ-4-メチル-テトラヒドロピラン(R1がOCH3である式(I.a)の化合物)の調製
75mLのTHF中の水素化ナトリウム(1.3当量)の分散液に、30mLのTHF中の10gの2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オール(R1=OHである式(I.a)の化合物)の溶液を、0℃でゆっくりと加えた。混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、1.3当量のヨウ化メチルを室温でゆっくりと加えた。添加後、この混合物を40℃で4時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、0.25当量のNaHの添加、その後0.25当量のヨウ化メチルの添加を繰り返した。次いで、混合物を40℃で17時間撹拌した。この反応物を、50mLの水でゆっくりとクエンチした。有機相を、50mLのMTBEで3回抽出した。有機抽出物を合わせ、50mLのNH3溶液で、さらに50mLのブラインで洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で蒸発させた後、9.6gの粗生成物を得た(GC(面積%)によれば、95%の所望のメチルエーテルを含有していた)。この粗生成物を蒸留分離に供して主要画分を得、これは、純度99%(GC面積%)を有する所望の2-(2-フラン-2-イル)-4-メトキシ-4-メチル-テトラヒドロピランであることが判明した。NMR分析は、7:3の比のE/Z混合物を示した。
E異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 24.84, 34.92, 39.22, 48.69, 63.77, 68.12, 71.18, 106.44, 110.01, 142.13, 154.84。
Z異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 20.26, 36.59, 40.33, 48.20, 65.43, 70.42, 72.48, 106.51, 110.11, 142.20, 154.35。
【0269】
1f) 2-(チエン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オール(R1がOHであり且つR2、R3及びR4がそれぞれHである式(I.b)の化合物)の調製
イソプレノール(20g、0.232mol)と、10gの強酸性カチオン交換体Amberlyst(登録商標)131(湿性;Rohm&Haas製)との混合物に、チオフェン-2-カルボアルデヒド(22.13g、0.197mol)を、室温で撹拌しながらゆっくりと加えた。発熱反応を、70℃の温度で3時間継続した。その後、反応混合物を室温に設定し、カチオン交換体をろ過除去した。ろ液を、100mLのEA及び100mLの水と混合した。有機相を分離し、NaHCO3の飽和水溶液で洗浄し、その後ブラインで洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で蒸発させた後、28.5gの粗生成物を得た(GC分析(面積%)によれば、約67.45%の2-(チエン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールと、14,68%の、脱離生成物である2-(チエン-2-イル)-4-メチリデン-テトラヒドロピラン、2-(チエン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピラン及び2-(チエン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピランとを含有していた)。粗生成物を蒸留分離に供し、2つの主要画分(main fraction)を得た。
【0270】
主要画分(major fraction)は、2-(チエン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールであり、純度は98.2%(GC面積%)であり、またNMRにより決定されたそのE異性体とZ異性体の比は55:45であった。
E異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ= 31.55, 38.14, 46.23, 64.14, 67.86, 71.07, 123.57, 124.47, 126.38, 145.80。
Z異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3):δ= 25.19, 40.01, 47.73, 65.79, 68.76, 73.22, 123.74, 124.78, 126.38, 145.09。
【0271】
1g) 2-(チオフェン-2-イル)-ジヒドロピランと、エンド-又はエキソ環状二重結合を有する2-(チオフェン-2-イル)-4-メチリデン-テトラヒドロピラン(= 2-(チオフェン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールの脱離生成物;X=Sである化合物I-1、I-2及びI-3の混合物(= R2、R3又はR4がR1と一緒になって二重結合を表す式(Ib)の化合物の混合物))との混合物の調製
35mLのトルエン中の、実施例1f)由来の蒸留生成物(5.5g、0.027mol)の溶液に、0.8gのNaHSO4(0.007mol)を室温でゆっくりと加えた。反応物を、110℃(還流)で3時間撹拌した。この時間の後、2-(チエン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールの37%変換が観察され、反応を停止した。この混合物を室温に冷却し、NaHSO4をろ過除去した。このろ液に50mLの水を加えた。有機相を分離し、水とブラインで洗浄した。有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で蒸発させた後、2.4gの粗生成物を得た(GC分析(面積%)によれば、約61%の2-(チエン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オールと、36%の、脱離生成物である2-(チエン-2-イル)-4-メチリデン-テトラヒドロピラン、2-(チエン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピラン及び2-(チエン-2-イル)-4-メチル-5,6-ジヒドロ-2H-ピランとを含有していた)。カラムクロマトグラフィーによる精製により表題化合物を得、これは、純度が98.8%(GC面積%)であり、また化合物I-1:I-2:I-3(ここで、いずれの場合もXはSである)のモル比は1:39:60であった。
ジヒドロピラン類似体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 22.91, 37.33, 66.15, 71.55, 119.72, 123.77, 124.68, 126.43, 131.37, 145.59。
メチリデン類似体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 34.77, 42.78, 68.89, 76.37, 109.46, 123.64, 124.69, 126.45, 143.53, 145.37。
【0272】
1h) 2-(2-フラン-2-イル)-4-エトキシ-4-メチル-テトラヒドロピラン(R1がOCH2CH3である式(I.a)の化合物)の調製
70mLのトルエン中の水素化ナトリウム(1.3当量)の分散液に、20mLのトルエン中の12gの2-(フラン-2-イル)-4-メチル-テトラヒドロピラン-4-オール(R1=OHである式(I.a)の化合物)の溶液を、0℃でゆっくりと加えた。混合物を0℃で30分間撹拌した。反応物を87℃で2時間加熱し、この温度で、0.7当量のジエチルスルフェートをゆっくりと加えた。添加後、この混合物を87℃で3時間撹拌した。反応物を50mLの水でゆっくりとクエンチし、その後、混合物を室温で48時間撹拌した。有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧で蒸発させた後、11.2gの粗生成物を得た(GC(面積%)によれば、90%の所望のエチルエーテルを30:60のZ/E比で含有していた)。カラムクロマトグラフィーによる精製により、2つの主要画分(major fraction)を得、これは、所望の2-(2-フラン-2-イル)-4-エトキシ-4-メチル-テトラヒドロピランであることが判明した。NMR分析は、第1画分がE異性体(95%純度[GC面積%)]であり、第2画分が85:15の比のZ/E混合物(97%純度[GC面積%])であることを示唆していた。
E異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 16.01, 25.57, 35.45, 39.66, 56.06, 63.87, 68.18, 71.00, 106.39, 110.01, 142.10, 154.96。
Z異性体:
13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 16.13, 20.99, 37.10, 40.85, 55.52, 65.42, 70.38, 72.29, 106.48, 110.10, 142.17, 155.46。
【0273】
2. 嗅覚試験
本発明の化合物(I)の匂いの品質及び強度を試験するため、香りストリップ試験を行った。
【0274】
この目的のため、吸収紙のストリップを、エタノール中の被試験化合物(I)の1~10重量%溶液を含有する溶液に浸漬した。溶媒の蒸発(約30秒間)後、訓練を受けた調香師が、香りの印象を嗅覚的に評価した。
【0275】
香り試験の結果は、表1にまとめられる。
【0276】
【表1】