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特許7459116フィルム状の基材を接着結合するための方法及び装置並びにそれにより得られる複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】フィルム状の基材を接着結合するための方法及び装置並びにそれにより得られる複合体
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/48 20060101AFI20240325BHJP
【FI】
B29C65/48
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021540218
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2019086391
(87)【国際公開番号】W WO2020144043
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】19151375.3
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】キンツェルマン,ハンス-ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ギーアリングス,ミヒャエル
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-100898(JP,A)
【文献】特表2015-530425(JP,A)
【文献】特開昭53-051274(JP,A)
【文献】特表2020-535046(JP,A)
【文献】国際公開第2017/026346(WO,A1)
【文献】特表2011-513097(JP,A)
【文献】米国特許第05582669(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B29C 63/00-63/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を接着結合するための方法であって、
a)熱可塑性表面を有するフィルム状の第1の基材(3)を提供すること、
b)接着剤が表面に塗布された第2の基材(4)を提供すること、
c)圧力下で、第1の基材(3)及び第2の基材(4)を接合することを含み、
第1の基材(3)の前記熱可塑性表面は、接合工程の間、軟化状態にあり、該軟化した表面の反対側の第1の基材(3)の表面は、回転冷却ローラー(1)を用いて冷却され、 冷却ローラー(1)は、冷却剤を受け入れるための手段を有し、該冷却剤は水であり、 前記接合は、第1の基材(3)及び第2の基材(4)を接合するための手段(6)を用いて行われ、該手段(6)は、冷却ローラー(1)とは独立して形成され、該手段(6)は、第1の基材(3)及び第2の基材(4)を接合するための1以上のローラーを含み、かつプロセス方向で冷却ローラー(1)の後ろに配置され、
第1の基材(3)の厚さは2~100μmであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
第1の基材(3)の前記熱可塑性表面は、加熱によって軟化状態に変換され、該加熱は、第1の基材(3)を基準に冷却ローラー(1)の反対側に配置された少なくとも1つの加熱要素(2)によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの加熱要素(2)は、赤外線(IR)加熱要素である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の基材(4)上の接着剤の層重量は、2g/m満であることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第2の基材(4)上の接着剤の層重量は、1g/m 未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第2の基材(4)に塗布された接着剤は、溶媒含有形態、水性形態又は無溶媒形態の熱可塑性接着剤又は架橋接着剤から選択されることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1の基材(3)は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレンコポリマー、ポリエステル、ポリアミド及び/又はポリエーテルからなるか、又はそれらを含む基材であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第2の基材(4)は、熱硬化性プラスチック及び熱可塑性プラスチック、有機ポリマー並びに金属及び金属合金からなる群から選択されるフィルム状の基材であることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって、
該装置は、以下:
熱可塑性表面を有するフィルム状の第1の基材(3)を提供するための供給装置、
接着剤が表面に塗布された第2の基材(4)を提供するための供給装置、
第1の基材(3)を冷却するための、回転自在に駆動可能な冷却ローラー(1)、
第1の基材(3)を基準に冷却ローラー(1)の反対側に配置され、第1の基材(3)の熱可塑性表面を加熱するための少なくとも1つの加熱要素(2)、及び
第1の基材(3)及び第2の基材(4)を接合するための手段(6)
を含
冷却ローラー(1)は、冷却剤を受け入れるための手段を有し、該冷却剤は水であり、
第1の基材(3)及び第2の基材(4)を接合するための手段(6)は、冷却ローラー(1)とは独立して形成され、該手段(6)は、第1の基材(3)及び第2の基材(4)を接合するための1以上のローラーを含み、かつプロセス方向で冷却ローラー(1)の後ろに配置され、
第1の基材(3)の厚さは2~100μmである、装置。
【請求項10】
少なくとも1つの加熱要素(2)と冷却ローラー(1)との間の距離は、可変であることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項11】
冷却ローラー(1)は、第1の基材(3)及び第2の基材(4)を接合するための手段(6)の一部を形成し、該手段(6)は、冷却ローラー上にある第1の基材に対して、第2の基材をプレスするための1以上のローラーを含むことを特徴とする、請求項又は10に記載の装置。
【請求項12】
第1の基材及び第2の基材を接合するための手段(6)は、冷却ローラー(1)から離れて配置されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状の基材を接着結合するための方法であって、該基材の1つが、接着結合の前に、軟化状態に変換される熱可塑性表面を有し、該熱可塑性表面の反対側の該基材の表面が、冷却ローラーを用いて冷却される方法に関する。本発明はまた、本発明による方法を実施するための装置、及び本発明による方法によって得ることができる複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者は、基材をフィルム状で接着結合するための多種多様な方法に精通しており、様々な接着剤を使用して基材を接続することが可能である。原則として、接着剤は第1の基材の表面に塗布し、基材が圧力下で互いに接触する。この場合、2つの基材の十分な接続を確保するために、及び、基材の表面における一定の凹凸を均一にするために、及び、ラミネート加工の間、気泡の形成を防止するために、接着剤は、可能な限り完全に基材の表面を濡らすべきである。この点で、製品の層間剥離を防ぐために必要な接着剤の量は比較的多い。必要な量の接着剤を使用することには、資源の過度の使用や、発生した廃棄物の費用のかかる処分と処理など、既知の欠点がある。したがって、資源不足と環境汚染の増加を考慮すると、資源と環境の責任ある持続可能な管理を可能にする産業的方法が必要である。上記の欠点を考慮すると、使用する接着剤の量を減らすことは明らかな解決策のようである。製品が剥離する傾向が増加し、ラミネート加工中の気泡の形成を排除できなくなったため、接着剤自体の量を減らすこと自体は初期の試験では実用的ではないことが証明された。これは、特に透明な製品の場合、機械的及び光学的特性の深刻な障害をもたらす。したがって、少量の接着剤にもかかわらず、光学的及び機械的に信頼できる製品を得るためには、滑らかな表面で基材を使用する必要があった。
【0003】
基材の表面を滑らかにするための1つのアプローチは、熱可塑性プラスチック基材を使用することであり、その表面は、接着結合の前に熱の作用によって滑らかにできる。しかしながら、それを滑らかにするために、基材の表面を加熱することは、加熱された基材が変形及び引き伸ばされて、ラミネート加工の間、基材のウェブガイドが困難になり、得られる複合体がもはや所望の特性を有さなくなるという欠点を有する。先行技術は、基材の変形の問題にどのように対処できるかに関して様々なアプローチを示唆している。
【0004】
US 4,069,081には、保護フィルムが、比較的フレキシブルな基材に適用され、得られる製品がカールから防止されるラミネーション方法が記載されている。この目的のために、強固で透明で耐摩耗性の樹脂を含む保護フィルム、及び透明な熱可塑性複合樹脂で作られた内層を有し、放射熱を遮断する特定の数の顔料が複合樹脂に添加された複合フィルムが提供される。複合樹脂の層は、熱が複合樹脂に直接加わるような方法で加熱され、加熱の後すぐに、第1のプレスローラーと第2のプレスローラーとの間の複合フィルム及び基材をプレスすることにより、基材上に複合フィルムを積層し、フィルムの外面が、第1のプレスローラーに面し、基材の外面が第2のプレスローラーに面しながら、フィルムの接着面を、基材の内面と接触させる。
【0005】
US 2018/0162113は、放射線硬化樹脂を含むコーティングが第1のコーティング工程で第1のフィルムに塗布され、第2のフィルムが積層工程でコーティング上に積層され、コーティングされたフィルムが第1のフィルムと第2のフィルムとの間で案内される硬化工程で硬化層が形成される積層フィルムの製造に関する。これらの工程はそれぞれ、第1のフィルムがバックアップローラーの周りに誘導されている状態で実行される。バックアップローラーは、ローラーの表面温度を制御するための温度制御ユニットを有し得る。
【0006】
WO 2016/026918には、2つの基材を接着結合する方法が記載されており、少なくとも1つの熱可塑性プラスチックを含有するフィルム状の第1の基材は、基材表面が軟化状態に変換されるように基材を加熱する加熱ゾーンを通じて、コンベヤーベルトをサポートすることにより通過され、基材は、加熱の間及び/又は加熱後すぐに第2の基材に接合され、第2の基材は、0.01~4g/mの層重量で接着剤にコーティングされ、2つ基材は、圧力下で一緒に接着結合される。結合される基材表面のみが加熱状態に変換されることを確実にするために、接合されるべきでない表面は冷却されることが提案される。しかしながら、記載された方法には、コンベヤーベルトを用いた基材の間接冷却のみが可能であり、それがエネルギー消費の増加につながるという欠点がある。さらに、コンベヤーベルトが引張方向に伸びるのを防ぐためにコンベヤーベルト自体を加熱してはならないため、コンベヤーベルトの材料の選択肢は限られている。
【0007】
US 5,582,669には、画像キャリア媒体に保護コーティングを適用するための方法及び装置が記載されている。この場合、加熱ローラー及び能動的に冷却される冷却ローラーは、それらが、ウェブ及び画像キャリア媒体に塗布された保護コーティングが通過するギャップを形成するように配置される。保護コーティングの表面と画像との間の接着は、ウェブと媒体の層間の温度勾配によって刺激され、一方、基材のカール及びローリングなどの積層に関する一般的な問題は回避されると考えられる。
【0008】
US 2011/041981には、フィルム又は材料層を板紙又は段ボールのウェブ上に積層するための積層ステーションが記載され、積層ステーションは、圧力ローラー、冷却ローラー、材料層又はフィルムを圧縮するローラー間に形成されるギャップ、及び段ボールで作製されたウェブを含み、フィルム又は材料層は、ギャップの後ろの冷却ローラー上に所定の角度間隔で載っている。靴プレスローラーは圧縮ローラーとして使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4,069,081号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0162113号明細書
【文献】国際公開第2016/026918号
【文献】米国特許第5,582,669号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/041981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術に記載されている方法は、少量の接着剤を使用してもフレキシブルな基材を寸法的に安定して積層するためには、特殊な樹脂を使用しなければならないか、又は複雑なプロセス設定が必要であるという材料及び実行の面でその実施が制限されるという欠点がある。そこで本発明では、少量の接着剤の使用でフレキシブル基材を寸法的に安定して積層することができる方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、この課題は、基材の第1の表面を加熱し、この表面の反対側を冷却ローラーを使用して冷却する方法によって解決されることがわかった。したがって、本発明は、基材を接着結合するための方法であって、

a)熱可塑性表面を有するフィルム状の第1の基材を提供すること;
b)接着剤が表面に塗布された第2の基材を提供すること;及び
c)圧力下で、第1の基材及び第2の基材を接合することを含み、
第1の基材の前記熱可塑性表面は、接合工程の間、軟化状態にあり、該軟化した表面の反対側の第1の基材の表面は、回転冷却ローラーを用いて冷却される方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
驚くべきことに、冷却ローラーによって熱可塑性表面の反対側の表面を冷却することにより、必要とされるプロセス速度を低下させることなく、基材の変形を防ぐことができることがわかった。冷却ローラーの使用は、冷却対象の基材の表面が接触するローラーの表面を直接冷却でき、不必要なエネルギー損失を回避できるという利点も提供する。対照的に、従来技術で提案されているようなコンベヤーベルトの使用は、コンベヤーベルト自体が間接的にしか冷却できないという欠点を有し、それが基材表面の効果的な冷却をより困難にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、冷却ローラーが、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段の一部として設計されている実施形態を示す。
図2図2は、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段が、冷却ローラーとは独立して形成されている、本発明による装置の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の文脈において、軟化状態は、第1の基材の熱可塑性表面が、基材の寸法を変えることなく塑性変形できる状態を意味する。
【0015】
本発明の意味の範囲内のフィルム状又はフィルムは、接着結合又は包装用のウェブで作製された非常に薄い材料を意味し、好ましくは金属又はプラスチックで作られている。
【0016】
本発明による方法によれば、第1の基材の加熱表面の反対側の第1の基材の表面は、回転冷却ローラーによって冷却され、第1の基材は、好ましくは、冷却ローラーの周りに案内されている。冷却ローラーと第1の基材との接触面積は、必要に応じて調整できる。冷却ローラーが能動的に駆動される場合、この方法では、プロセス中に基材が引き伸ばされるリスクを最小限にすることができるため、特に有利であることが証明されている。したがって、冷却ローラーが能動的に駆動される冷却ローラーである実施形態が好ましい。冷却ローラーは、基材の変形を回避するために、ウェブ速度で動作することが特に好ましい。本発明による方法の文脈において、冷却ローラーで使用される冷却剤についての特別な要件はない。好ましい実施形態では、冷却ローラーは、液体冷却剤、特に水を使用して操作される。
【0017】
本発明によれば、第1の基材及び第2の基材は、圧力下で結合される。基材は、当業者に知られている従来の方法で、例えば、ラミネーション装置を用いて接合できる。ラミネーション装置は、好ましくは、冷却ローラー装置に組み込まれるか、又はそれとは別に形成される。2つの基材は、好ましくは、基材の全幅にわたって均一な圧力を加えることにより接合される。特に好ましい実施形態では、基材は、冷却ローラー上にある第1の基材に接合される第2の基材によって接合されている。驚くべきことに、特に第1の基材の寸法安定性は、この方法で向上できることがわかった。
【0018】
第1の基材の熱可塑性表面は、好ましくは、加熱によって軟化状態に変換され、加熱は、冷却ローラーの反対側に配置された少なくとも1つの加熱要素によって行われる。好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱要素は、冷却ローラーの周囲に配置される。好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱要素は、一連の別個の加熱要素、好ましくはIRラジエーターを含む。個々の加熱要素の数は、冷却ローラーの直径によって決定され、好ましくは少なくとも3、より好ましくは3~15、特に好ましくは3~10、特に3~5である。特に好ましい実施形態では、別個の加熱要素が冷却ローラーの周囲に配置されている。別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱要素の様々な加熱要素は、冷却ローラーの周囲の少なくとも4分の1、特に好ましくは周囲の少なくとも半分に配置される。様々な加熱要素は、非常に特に好ましくは、冷却ローラーの全周に配置され、当業者には、プロセス順序及び/又は他の要素がないように配置が行われることは明らかである。少なくとも1つの加熱要素は、好ましくはラミネーション装置を用いて、第1の基材及び第2の基材が接合されるプロセスの過程で、空間的に近接して配置される場合、特に有利であることが証明された。したがって、少なくとも1つの加熱要素が、ラミネーション装置に空間的に近接して配置されている実施形態が特に好ましい。驚くべきことに、この方法において、第1の基材の基材表面は、第1の基材と第2の基材との間で信頼できる結合が達成されるように、軟化状態に変換できることが見出された。基材の熱可塑性表面を、例えば、熱風又は電磁放射によって加熱するためのいくつかの手段が、当業者に知られている。この方法では、表面の驚くほど均一な加熱を達成できるので、IR照射によって加熱を実行することが特に有利であることが証明された。したがって、第1の基材の熱可塑性表面が、IR照射による加熱によって軟化状態に変換される、本発明による方法の実施形態が好ましい。
【0019】
本発明による方法は、接着剤の量が少ないにもかかわらず、優れた接着結合を特徴とする積層された基材を提供するという事実によって特に区別される。したがって、第2の基材の表面における接着剤の層重量が、2g/m未満、好ましくは1g/m未満、特に好ましくは0.1~0.7g/mである実施形態が好ましい。
【0020】
さらに、本発明による方法は、先行技術に記載された方法とは対照的に、使用される接着剤に特別な要件がないことを特徴とする。むしろ、当業者に知られているような従来の接着剤を使用できる。したがって、第2の基材に塗布される接着剤が、溶媒含有形態、水性形態又は無溶媒形態の熱可塑性接着剤又は架橋接着剤から選択される実施形態が好ましく、一成分系及び二成分系の両方を使用することが可能である。接着剤は、ポリウレタン、エチレンビニルアセテート、又はポリアクリレートなどの熱可塑性ポリマーに基づく接着剤、アクリレート接着剤などの溶媒含有接着剤、1K又は2Kポリウレタン接着剤、シラン架橋接着剤、1Kポリウレタン接着剤などの反応性ホットメルト接着剤、エポキシアミン接着剤、及び放射線硬化性接着剤からなる群から特に好ましくは選択される。ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル又はポリアクリレートに基づく接着剤が特に好ましく使用される。特にポリウレタン接着剤は、本方法の文脈で使用される。
【0021】
本発明による方法は、フィルム状の基材をラミネートするのに特に適している。木質材料又は板金などのフィルム状ではない基材を第2の基材として使用できるが、第2の基材も、好ましくは熱硬化性プラスチック又は熱可塑性プラスチック、有機ポリマー、並びに、金属及び金属合金からなる群から選択されるフィルム状の基材であることが好ましい。例えば、第2の基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金又はプラスチックフィルムに基づくフィルム状の基材であり得る。好ましい実施形態では、第2の基材は、ポリエチレン又はポリプロピレンでコーティングされたアルミニウム、二軸延伸ポリアミド、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、配向ポリプロピレン、及び配向ポリエチレンからなる群から選択される。
【0022】
第1の基材は、特に、その熱可塑性表面で区別される。好ましい実施形態では、第1の基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレンコポリマー、ポリエステル、ポリエーテル、及び/又はポリアミドからなるか、又はそれらを含む基材である。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、又はエチレンコポリマーが特に好ましく使用され、特にポリエチレン及びポリプロピレンが好ましく使用される。
【0023】
多層基材は、第1の基材が熱可塑性表面を有し、第2の基材が接着剤を塗布できる表面を有する限り、本発明による方法において第1の基材及び/又は第2の基材として使用することもできる。たとえば、酸素バリア材料のコア層を備えた多層フィルムは、多層基材として使用でき、塩化ビニル(VC-VDCコポリマー)又はアクリル酸メチル(MA-VDCコポリマー)等の異なるコモノマーを有する塩化ビニリデンコポリマー、ポリアミド及びエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)などの従来の酸素バリア材料を使用することが可能である。特に好ましい実施形態では、共押出された配向ポリプロピレン及び/又は共押出されたエチレンビニルアルコールフィルムが使用される。
【0024】
使用される基材は、それぞれ好ましくはフィルム状の基材である。したがって、第1の基材及び/又は第2の基材が2~100μm、好ましくは4~80μmの厚さを有する実施形態が好ましい。
【0025】
本発明の文脈において、驚くべきことに、第1の基材の、特に前進方向への変形は、加熱される表面の反対側の表面を冷却することによって防止できることが見出された。特に基材が冷却ローラーを通過し、ローラーの表面と周囲との間の温度差が少なくとも10K、好ましくは少なくとも15Kである場合、第1の基材の改善された寸法安定性を達成できた。したがって、冷却ローラーの表面と周囲との間の温度差が少なくとも10K、好ましくは少なくとも15Kである本発明による方法の実施形態が好ましい。本発明による方法は、水などの従来の冷却剤を使用することによって、有利な温度差を設定できるというさらなる利点を有する。
【0026】
本発明はまた、本発明による方法を実施するための装置に関する。該装置は、以下:
熱可塑性表面を有するフィルム状の第1の基材を提供するための供給装置;
接着剤が表面に塗布された第2の基材を提供するための供給装置;
回転自在に駆動可能な冷却ローラー;
冷却ローラーの反対側に配置され、第1の基材の表面を加熱するための少なくとも1つの加熱要素、及び
第1の基材及び第2の基材を接合するための手段
を有する。
【0027】
好ましい実施形態では、装置は2以上の加熱要素を有し、その加熱要素は、冷却ローラーの周囲に少なくとも部分的に配置される。好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱要素は、一連の別個の加熱要素、好ましくはIRラジエーターを含む。個々の加熱要素の数は、冷却ローラーの直径によって決定され、好ましくは少なくとも3、より好ましくは3~15、特に好ましくは3~10、特に3~5である。特に好ましい実施形態では、別個の加熱要素が冷却ローラーの周囲に配置されている。別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱要素の様々な加熱要素は、冷却ローラーの周囲の少なくとも4分の1、特に好ましくは周囲の少なくとも半分に配置される。様々な加熱要素は、非常に特に好ましくは、冷却ローラーの全周に配置され、当業者には、プロセス順序及び/又は他の要素がないように配置が行われることは明らかである。少なくとも1つの加熱要素が、好ましくはラミネーション装置を用いて、第1の基材及び第2の基材が接合されるプロセスの過程で空間的に近接して配置される場合、特に有利であることが証明された。したがって、少なくとも1つの加熱要素がラミネーション装置に空間的に近接して配置される実施形態が特に好ましい。この方法では、基材のウェブ速度を他の方法で減速又は調整する必要がなく、該方法を実施している間、第1の基材の表面の均一な加熱が保証される。少なくとも1つの加熱要素は、特に好ましくはIR加熱要素である。
【0028】
第1の基材の熱可塑性表面を軟化状態に変換するために必要な温度は、使用する基材に応じて変化し得る。したがって、少なくとも1つの加熱要素と第1の基材の熱可塑性表面との間の距離が可変である、本発明による装置の実施形態が好ましい。本発明による装置の少なくとも1つの加熱要素は、好ましくは、加熱要素と冷却ローラーとの間の距離を減少又は増加させることができるように配置される。2以上の加熱要素が使用される実施形態では、個々の加熱要素と冷却ローラーとの間の距離は、好ましくは、個別に制御できる。
【0029】
本発明の文脈において、第1の基材が、ただ1つの冷却ローラー上に案内される場合、この方法では、冷却ローラーが基材のバックアップローラーとしても機能するため、ローラーのサイズ及び直径をそれぞれの要件に適合させることが可能であると特に有利であることが証明された。それにもかかわらず、本発明による装置が2以上の冷却ローラーを有する、すなわち、第1の基材が2以上の冷却ローラーの周りに案内される別の実施形態も好ましい。
【0030】
ローラー及びコンベヤーベルト、特にローラーなどの従来の手段は、好ましくは、本発明による装置の供給装置として使用される。
【0031】
本発明による装置は、特にフィルム状の基材を積層することを意図している。したがって、冷却ローラーが、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段の一部であり、該手段がまた、第2の基材を第1の基材にプレスするための1以上のローラーを有する実施形態が好ましい。この方法では、基材を接合する際に、冷却ローラーの追加の支持作用を利用でき、形状を維持しながら、第1の基材の表面の良好な平滑化を達成できる。特に好ましい実施形態では、第2の基材をプレスするための加熱要素及びローラーはそれぞれ、冷却ローラーの円周の半分にわたって配置されている。
【0032】
別の好ましい実施形態では、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段が、冷却ローラーとは独立して設計されている場合に有利であることが証明されている。この方法では、基材のウェブ速度とは独立して冷却ローラーを操作することが可能である。したがって、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段が冷却ローラーとは独立して形成され、その手段が、第1の基材及び第2の基材を接合するための1以上のローラーを有する、本発明による装置の実施形態が好ましい。さらに、この実施形態では、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段は、好ましくは、プロセス方向で冷却ローラーの後ろに配置され、その手段はさらに、冷却ローラーから離れて配置される。熱可塑性表面からの熱損失及び第1の基材の前進方向への伸びを回避するために、前記手段と冷却ローラーとの間の距離は大きすぎてはならない。好ましい実施形態は、ウェブ速度とは独立して、冷却ローラーの回転速度の可変設定を可能にする。したがって、特に好ましい実施形態では、冷却ローラーの回転速度は、ウェブ速度と比較してより高い又はより低い。特に好ましい実施形態では、冷却ローラーは、ウェブ速度の90~110%で回転する。
【0033】
本発明による装置の好ましい実施形態では、冷却ローラーは、冷却剤を受け入れるための手段を有する。冷却剤は、特定の温度要件に応じて選択できる。冷却剤は特に好ましくは水である。
【0034】
本発明はまた、本発明による方法によって、又は本発明による装置を使用して得られる複合体に関する。複合体は、好ましくは、多層のフレキシブルフィルムである。特に好ましい実施形態では、第1の基材はフレキシブル熱可塑性プラスチックフィルムであり、第2の基材は、紙、金属、プラスチック、又は多層基材からなる群から選択される。好ましい実施形態では、複合体は、第1の基材がポリプロピレン又はポリエチレンであり、第2の基材がアルミニウム又はプラスチック、特に配向ポリプロピレン又は配向ポリエチレンに基づくフィルム状の基材であり、基材が、ポリウレタンに基づく接着剤によって接続されている。
本発明は、本発明の概念に限定されると見なされるべきではない以下の実施例を参照して詳細に説明される。
【実施例
【0035】
図1は、冷却ローラーが、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段の一部として設計されている実施形態を示す。第1の基材(3)は、回転自在に駆動される冷却ローラー(1)の周りに案内され、それに接触している。この目的のために、装置は、第1の基材を冷却ローラーにプレスする1以上のさらなるローラー(7)を有することができる。第1の基材は、第1の基材(3)の熱可塑性表面が加熱要素(2)に面し、第1の基材(3)の熱可塑性表面が軟化状態に変換されるように、冷却ローラー(1)の周りに配置された加熱要素(2)を通過して案内される。第1の基材(3)の軟化した表面は、第2の基材(4)の表面上の接着剤が第1の基材(3)と第2の基材(4)との間に位置するように、第2の基材(4)に接合される。この目的のために、第1の基材及び第2の基材は、冷却ローラー(1)と反対方向に回転し、第2の基材(4)を冷却ローラー(1)上にある第1の基材(3)にプレスするローラー(6)を通過して案内される。ローラー(6)を通過した後、積層された生成物(5)を巻取装置に供給できる。
【0036】
図2は、第1の基材及び第2の基材を接合するための手段が、冷却ローラーとは独立して形成されている、本発明による装置の実施形態を示す。第1の基材(3)は、回転自在に駆動される冷却ローラー(1)の周りに案内され、それに接触している。この目的のために、装置は、第1の基材を冷却ローラーにプレスする1以上のさらなるローラー(7)を有することができる。第1の基材(3)は、第1の基材(3)の熱可塑性表面が、加熱要素(2)に面し、第1の基材(3)の熱可塑性表面が軟化状態に変換されるように、冷却ローラー(1)の周りに配置された加熱要素(2)を通過して案内される。第1の基材(3)の軟化した表面は、第2の基材(4)の表面上の接着剤が、第1の基材(3)と第2の基材(4)との間に位置するように、第2の基材(4)に接合される。この目的のために、第1の基材(3)及び第2の基材(4)は、反対方向に走るローラーを含み、第2の基材(4)を第1の基材(3)にプレスするローラーグループ(6a、6b)を通過する。ローラーグループ(6a、6b)を通過した後、積層された生成物(5)を巻取装置に供給できる。
図1
図2