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特許7459320波長変換膜、波長変換膜形成用組成物、及びクラスター含有量子ドットの製造方法
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  • 特許-波長変換膜、波長変換膜形成用組成物、及びクラスター含有量子ドットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-22
(45)【発行日】2024-04-01
(54)【発明の名称】波長変換膜、波長変換膜形成用組成物、及びクラスター含有量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240325BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20240325BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023002980
(22)【出願日】2023-01-12
(62)【分割の表示】P 2021533943の分割
【原出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2023052352
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】P 2019134073
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】廖 曰淳
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 武広
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0157354(US,A1)
【文献】特開平09-115668(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0092671(KR,A)
【文献】国際公開第2018/114982(WO,A1)
【文献】特許第7212166(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第03321340(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットの一次粒子と、2以上の前記量子ドットの一次粒子からなる量子ドットクラスターとを含む波長変換膜形成用組成物であって、
前記量子ドットクラスターのサイズが100nm以上700nm以下である、波長変換膜形成用組成物。
【請求項2】
前記量子ドットクラスターの表面にリガンドが結合している、請求項1に記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項3】
前記リガンドが、下記式(1):
R-SH・・・(1)
(式(1)中のRは、炭素原子数6以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基である。)
で表される化合物である、請求項2に記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項4】
さらに、液状の有機化合物を含み、
前記液状の有機化合物のSP値が、17MPa0.5以上22MPa0.5以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の波長変換膜形成用組成物。
【請求項5】
青色光を、赤色光又は緑色光に変換する、量子ドットを含む波長変換膜であって、
前記量子ドットの一部が、2以上の量子ドットの一次粒子からなる量子ドットクラスターであり、
前記波長変換膜の、波長450nmにおける光線透過率が40%以下であり、
波長変換後の光線の色相が赤色である場合、前記波長変換膜の波長650nmにおける光線透過率が90%以上であり、
波長変換後の光線の色相が緑色である場合、前記波長変換膜の波長550nmにおける光線透過率が90%以上であり、
前記光線透過率が、量子ドットを含む波長変換膜形成用組成物を用いて形成された膜厚5μmの波長変換膜に対して測定され、
450nm波長におけるOD値(OD@450nm)と、透過光強度が最大となった吸収波長のOD値(OD@Imax)との差分である、ODコントラストの値が0.52以上である、波長変換膜。
【請求項6】
前記波長変換膜中の、前記量子ドット以外の無機粒子の含有量が、前記量子ドットの質量に対して5質量%以下である、請求項に記載の波長変換膜。
【請求項7】
前記量子ドットクラスターの表面にリガンドが結合している、請求項に記載の波長変換膜。
【請求項8】
前記リガンドが、下記式(1):
R-SH・・・(1)
(式(1)中のRは、炭素原子数6以上18以下の脂肪族炭化水素基である。)
で表される化合物である、請求項に記載の波長変換膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換膜、波長変換膜形成用組成物、及びクラスター含有量子ドットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子を閉じ込めるために形成された極小さな粒(ドット)が、量子ドットと称され、各種分野での適用検討がなされてきた。1粒の量子ドットの大きさは、直径数ナノメートルから数10ナノメートルである。
【0003】
量子ドットのサイズを変える(バンドギャップを変える)ことで、発光する蛍光の色(発光波長)を変えることができる。このため、量子ドットを、波長変換材料として用いることができる。波長変換材料の画像表示装置への適用について、例えば、発光性ナノ結晶粒子としての量子ドットと、酸化チタン等の光散乱粒子とを含む光変換層を備えるカラーフィルターが提案されている(特許文献1の実施例を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-26780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
量子ドットは非常に小さな粒子である。このため、表示装置の光源から発せられる光を量子ドットのみを含む光変換層を通過させても、光が良好に量子ドットに入射せず、良好な波長変換を行いにくい問題がある。そこで、特許文献1の実施例では、光源から光変換層に発せられた光が、発光性ナノ結晶粒子としての量子ドットに入射する確立を上げ、波長変換を良好に行うために、発光性ナノ結晶粒子としての量子ドットとともに光散乱粒子を光変換層に含ませている。
【0006】
しかし、特許文献1の実施例のように、発光性ナノ結晶粒子としての量子ドットとともに光散乱粒子を含む光変換層を備えるカラーフィルターでは、高い光学濃度(OD)を得にくい問題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、高い光学濃度を示す波長変換膜と、当該波長変換膜の形成に好適に使用される波長変換膜形成用組成と、前述の波長変換膜及び波長変換膜形成用組成物に好適に適用し得るクラスター含有量子ドットの製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、青色光を、赤色光又は緑色光に変換する、量子ドットを含む波長変換膜について、波長変換膜の波長450nmにおける光線透過率を40%以下とし、波長変換後の光線の色相が赤色である場合に、波長変換膜の、波長650nmにおける光線透過率を90%以上とし、波長変換後の光線の色相が緑色である場合に、波長変換膜の、波長550nmにおける光線透過率を90%以上とすることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第1の態様は、青色光を、赤色光又は緑色光に変換する、量子ドットを含む波長変換膜であって、
波長変換膜の、波長450nmにおける光線透過率が60%以下であり、
波長変換後の光線の色相が赤色である場合、波長変換膜の波長650nmにおける光線透過率が90%以上であり、
波長変換後の光線の色相が緑色である場合、波長変換膜の波長550nmにおける光線透過率が90%以上であり、
光線透過率が、膜厚5μmの波長変換膜に対して測定された値である、波長変換膜。
【0010】
本発明の第2の態様は、量子ドットの一次粒子と、2以上の量子ドットの一次粒子からなる量子ドットクラスターとを含む、波長変換膜形成用組成物である。
【0011】
本発明の第4の態様は、量子ドットと、下記式(1):
R-SH・・・(1)
(式(1)中のRは、炭素原子数6以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基である。)
で表される化合物とを含む混合物を、150℃以上300℃以下の温度に加熱することと、
加熱された混合物を冷却して、量子ドットの一次粒子をクラスター化させることとを含む、クラスター含有量子ドットの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い光学濃度を示す波長変換膜と、当該波長変換膜の形成に好適に使用される波長変換膜形成用組成と、前述の波長変換膜及び波長変換膜形成用組成物に好適に適用し得るクラスター含有量子ドットの製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例5、実施例6、及び比較例1の波長変換膜の光線透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪波長変換膜≫
波長変換膜は、青色光を、赤色光又は緑色光に変換し、量子ドットを含む。
波長変換膜の、波長450nmにおける光線透過率が40%以下であり好ましくは30%以下である。
波長変換後の光線の色相が赤色である場合、波長変換膜の波長650nmにおける光線透過率が90%以上である。波長変換後の光線の色相が緑色である場合、波長変換膜の、波長550nmにおける光線透過率が90%以上である。
上記の光線透過率は、膜厚5μmの波長変換膜に対して測定された値である。
【0015】
光線透過率は、ガラス基板上に成膜された膜厚5μmの波長変換膜を試料とし、分光光度計Vista(HunterLab社製)を用いて測定することができる。波長変換膜を成膜する前のガラス基板のみの光線透過率をベースラインとし、スキャンする波長範囲は400~700nmである。
【0016】
波長変換膜において、光線波長と光線透過率との関係を上記のように調整することによって、波長変換膜のOD値を高めることができる。
波長変換膜において、光を散乱させる機能を有する光散乱微粒子を含有させると、波長変換膜内で光散乱微粒子により散乱された光が量子ドットに入射しやすいことにより、波長450nmの青色光の赤色光又は緑色光への変換が良好に行われる。この場合、波長変換されずに波長変換膜を透過する青色光の量が減少する。その結果、波長変換膜の波長450nmにおける光線透過率が低下する。一方で、赤色光又は緑色光の光線透過率は増加するため、例えば、650nmにおける光線透過率(又は535nmにおける光線透過率)と、波長450nmにおける光線透過率との差(コントラスト)が増加する。波長変換膜における量子ドットの含有量を多めに設定することで、このOD値のコントラストが良好になる。
【0017】
光散乱微粒子を用いることにより青色光の波長を変換する効率が高まる。一方で、波長変光散乱微粒子の量が過度に多いと、青色光や、波長変換された赤色光又は緑色光が、光源側に反射される場合が増え、青色光の光線透過率も、赤色光又は緑色光の光線透過率も低下しやすい。そこで、後述する量子ドットクラスターを光散乱微粒子として用いる場合、散乱光による量子ドットの波長変換効果と、量子ドットクラスター自体の光源及び/又は散乱光による波長変換効果を合わせられるため、OD値のコントラストがさらに高まるため好ましい。
【0018】
上記の観点で、波長変換膜における、量子ドットの量と、光散乱微粒子の粒子径や量とを微調整することにより、前述の光線透過率に関する要件を満たす波長変換膜を製造し得る。
この場合、光散乱微粒子に該当する量子ドット以外の無機粒子の、波長変換膜中における含有量は、量子ドットの質量に対して5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。光散乱微粒子に該当する量子ドット以外の無機粒子の、波長変換膜中における含有量は、量子ドットの質量に対して1質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。光散乱微粒子に該当する量子ドット以外の無機粒子の、波長変換膜中における含有量の下限は特に限定されない。典型的には、量子ドットの質量に対して、0質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、0.5質量%以上であってもよい。
【0019】
しかしながら、量子ドットと、従来知られる酸化チタン微粒子のような光散乱微粒子とを用いる場合、各波長において所望する光線透過率を達成するために、量子ドットの使用量、光散乱微粒子の使用量、及び光散乱微粒子の粒子径等について、非常にシビアなバランスが求められる。
【0020】
この点を考慮すると、量子ドットの一部が、2以上の量子ドットの一次粒子からなる量子ドットクラスターであるのが好ましい。量子ドットクラスターは、2以上の量子ドットの一次粒子が近接して結合した微粒子である。一次粒子同士の結合は特に限定されず、粒子間の親和力による物理的な結合であっても、共有結合やイオン結合等の形成による化学的な結合であってもよい。一次粒子のサイズは例えば3nm以上80nm以下の範囲が好ましく、5nnm以上30nm以下の範囲がより好ましい。
【0021】
量子ドットクラスターは、共通する発光波長を有する量子ドット(後述の(A)成分)のクラスターであることが、OD値のコントラストを向上させる点で好ましく、後述する波長変換膜形成用組成物において、量子ドットクラスターとともにクラスターでない量子ドットが含まれる場合、それぞれの量子ドットは共通する発光波長を有していることが好ましい。つまり、青色光が波長変換膜を通過した際の発光色を赤色にしたい場合は、量子ドットクラスターを形成する量子ドットの発光波長は赤色に相当する波長(600~680nmの波長範囲に発光中心波長を有する)であり、波長変換膜形成用組成物において組み合わせられるクラスターでない量子ドットの発光波長も赤色に相当する波長(600~680nmの波長範囲に発光中心波長を有する)である。また、青色光が波長変換膜を通過した際の発光色を緑色にしたい場合は、それぞれ520~580nmの波長範囲に発光中心波長を有するクラスター化された量子ドット、及びクラスター化されていない量子ドットを用いる。
【0022】
量子ドットが、量子ドットクラスターを含むか否かは、波長変換膜の電子顕微鏡写真(SEM)により確認することができる。波長変換膜の断面SEM写真により、波長変換膜中に比較的サイズのそろった量子ドットクラスターが粒状に点在していることが確認できる。波長変換膜中に、粒状のクラスターが複数存在していることが確認される場合、波長変換膜中で量子ドットクラスターがクラスターとして保持されており、単に量子ドットが局所的に凝集を起こしているのではないことがわかる。量子ドットクラスターのサイズは例えば100nm以上700nm以下が好ましく、200nm以上600nm以下がより好ましい。量子ドットクラスターのサイズが当該範囲であれば、QY(発光効率)やコントラスト向上の点で好ましい。
【0023】
量子ドットクラスターの表面には、リガンドが結合しているのが好ましい。量子ドットクラスターの表面にリガンドが存在すると、リガンドの立体障害によって、波長変換膜において量子ドットクラスターが過度に近接せず、ある程度離れた位置に存在する。
この場合、量子ドットに青色光が入射した際に、青色光に由来するエネルギーの量子ドット間での移動が起こらないため、量子収率が高まる。このため、量子ドットの一部が、表面にリガンドを備える量子ドットクラスターであると、青色光の赤色光又は緑色光への変換効率が高くなる。
【0024】
リガンドとしては、例えば、ホスフィン、ホスフィン酸化物、トリアルキルホスフィン類等のリン化合物;ピリジン、アミノアルカン類、第3級アミン類等の有機窒素化合物;メルカプトアルコール、チオール、ジアルキルスルフィド類、ジアルキルスルホキシド類等の有機硫黄化合物;高級脂肪酸、アルコール類等の表面修飾剤(有機リガンド)が挙げられる。
【0025】
なお、本願明細書において、量子ドット(A)のクラスター(量子ドットクラスター)がリガンドを備える場合、リガンドの質量は、量子ドット(A)のクラスターの質量には含まれず、量子ドット(A)のクラスターとは別個の材料の質量として定義される。
ただし、本願明細書において、クラスター形成されない量子ドット(A)がリガンドを備える場合、リガンドの質量は、量子ドット(A)と別個の材料の質量ではなく、量子ドット(A)を構成する材料の質量であると定義される。このため、量子ドット(A)がリガンドを含む場合、リガンドの質量は量子ドット(A)の質量に含まれる。
【0026】
クラスターを形成しない量子ドット(A)におけるリガンドは、量子ドットクラスターの表面に結合し得るリガンドと異なるものであることが好ましい。量子ドットクラスターの表面に結合し得るリガンドを後述の特定化合物にすることで、クラスター形成しないままの量子ドット(A)と、クラスター化された量子ドット(A)(量子ドットクラスター)とを同じ系中に配合することができる。
【0027】
量子ドットクラスターの表面に結合し得るリガンドとしては、下記式(1):
R-SH・・・(1)
(式(1)中のRは、炭素原子数6以上18以下の脂肪族炭化水素基である。)
で表される化合物が好ましい。
式(1)中のRは、脂肪族炭化水素基である。当該脂肪族炭化水素基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であっても、これらの構造の組み合わせであってもよい。これらの構造の中では、量子ドットクラスター同士を遠ざけやすい点で、直鎖状又は分岐鎖状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
Rとしての脂肪族炭化水素基は、1以上の不飽和結合を含んでいてもよい。不飽和結合は、二重結合であっても三重結合であってもよい。
【0028】
式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、1-ヘキサンチオール、1-ヘプタンチオール、1-オクタンチオール、2-エチル-1-ヘキサンチオール、1-ノナンチオール、1-デカンチオール、1-ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、1-トリデカンチオール、1-テトラデカンチオール、1-ペンタデカンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-ヘプタデカンチオール、及び1-オクタデカンチオールが挙げられる。
【0029】
量子ドットクラスターと上記式(1)で表される化合物との配合比について、量子ドットクラスターを構成する一次粒子の質量をX、上記式(1)で表される化合物の質量をYとした場合、クラスターの安定性や組成物を調製する際の安定性を考慮して、例えば、X:Yとして、1:2~1:0.01の範囲が好ましく、1:1.5~1:0.1の範囲がより好ましく、1:1.2~1:0.5の範囲がさらに好ましい。
量子ドットクラスターの質量XXと、量子ドットクラスターに結合して量子ドットクラスターと共存する上記式(1)で表される化合物の質量YYとの質量比について、クラスター自体の安定性や組成物を調製する際の安定性を考慮して、例えば、XX:YYとして、1:2~1:0.01の範囲が好ましく、1:1.5~1:0.1の範囲がより好ましく、1:1.2~1:0.2の範囲がさらに好ましく、1:1,1~1:0.3の範囲がさらにより好ましい。
【0030】
<量子ドット(A)>
量子ドット(A)が量子ドットとしての機能を奏する微粒子である限りにおいて、その構造やその構成成分は特に限定されない。量子ドット(A)は、量子力学に従う独特の光学特性(後述の量子閉じ込め効果)を有するナノスケールの材料であり、一般的に半導体ナノ粒子のことである。本明細書において、量子ドット(A)は、半導体ナノ粒子表面にさらに発光量子収率を向上させるために被覆されている量子ドット(後述のシェル構造を有する量子ドット)や、安定化のために表面修飾されている量子ドットも含む。
【0031】
量子ドット(A)は、バンドギャップ(価電子帯及び伝導帯のエネルギー差)よりも大きなエネルギーの光子を吸収し、その粒子径に応じた波長の光を放出する半導体ナノ粒子とされている。量子ドット(A)の材料に含まれる元素としては、例えば、II族元素(2A族、2B族)、III族元素(特に3A族)、IV族元素(特に4A族)、V族元素(特に5A族)、及びVI族元素(特に6A族)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。量子ドット(A)の材料として好ましい化合物又は元素としては、例えば、II-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
II-VI族化合物としては、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0033】
III-V族化合物としては、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0034】
IV-VI族化合物としては、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0035】
IV族元素としては、Si、Ge及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。IV族化合物としては、SiC、SiGe及びこれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物;が挙げられる。
【0036】
量子ドット(A)の構造は、1種の化合物からなる均質構造であってもよく、2種以上の化合物からなる複合構造であってもよい。上記化合物の発光量子収率を向上させるために、量子ドット(A)の構造は、コアが、1層以上のシェル層で被覆されたコア-シェル構造であることが好ましく、コアの材質となる化合物の粒子表面を半導体材料でエピタキシャルに被覆した構造であることがより好ましい。例えば、コアの材質としてII-VI族のCdSeを用いた場合、その被覆層(シェル)としてZnS、ZnSSe等が用いられる。シェルはコアの材質と同じ格子定数であることが好ましく、コア-シェルの格子定数の差の小さい材料の組み合わせが適宜選択される。
【0037】
蛍光効率の点からは、量子ドット(A)が、Cd又はInを含む化合物を構成成分として含むのが好ましい。安全性を加味すると、量子ドット(A)が、Inを含む化合物を構成成分として含むのがより好ましい。
【0038】
シェル層を持たない均質構造型の量子ドット(A)の好適な具体例としては、AgInS、及びZnがドープされたAgInSが挙げられる。
コア-シェル型の量子ドット(A)としては、InP/ZnS、InP/ZnSSe、CuInS/ZnS、及び(ZnS/AgInS)固溶体/ZnSが挙げられる。
なお、上記において、コア-シェル型の量子ドット(A)の材質は、(コアの材質)/(シェル層の材質)として記載されている。
【0039】
また、安全性と発光量子収率の向上の点で、コア―シェル構造のシェルを多層構造にすることが好ましく、2層にすることがより好ましい。
コア-多層シェル構造の場合、コアの材質が、InP、ZnS、ZnSeからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、コアの材質がInPを含むことがより好ましい。コアの総質量のうち、InPの含有割合は、50質量%以上100質量%以下が好ましく、60質量%以上99質量%以下がより好ましく、82質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。また、コアの総質量のうち、ZnS及び/又はZnSeの含有割合は、0質量%以上50質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上18質量%以下がさらに好ましい。
【0040】
多層シェル構造における第1のシェルの材質は、ZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される1種以上であることが好ましい。ZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される1種以上の含有割合としては、第1のシェルの全質量を基準にして、例えば50質量%以上100質量%以下であり、75質量%以上98質量%以下が好ましく、80質量%以上97質量%以下がより好ましい。第1のシェルの材質がZnS及びZnSeの混合物である場合、混合比(質量比)は特に限定されず、1/99以上99/1以下であり、好ましくは10/90以上90/10以下である。
【0041】
多層シェル構造において、第2のシェルを、第1のシェルの表面上に成長させる。第2のシェルの材質は、第1のシェルの材質と同等であることが好ましい(ただし、各材質において、コアに対する格子定数の差が異なる。つまり、各材質において99%以上同質の場合を除く)。ZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される1種以上の含有割合としては、第2のシェルの全質量を基準にして、例えば50質量%以上100質量%以下であり、75質量%以上98質量%以下が好ましく、80質量%以上97質量%以下がより好ましい。第2のシェルの材質がZnS、ZnSe、及びZnSSeから選択される2種の混合物である場合、混合比(質量比)は特に限定されず、1/99以上99/1以下であり、10/90以上90/10以下である。
【0042】
多層シェル構造における第1のシェルと第2のシェルとは、格子定数に差を有する。
例えば、コアと第1のシェルとの間の格子定数差は2%以上8%以下であり、2%以上6%以下が好ましく、3%以上5%以下がより好ましい。
また、コアと第2のシェルとの間の格子定数差は5%以上13%以下であり、5%以上12%以下が好ましく、7%以上10%以下がより好ましく、8%以上10%以下がさらに好ましい。
【0043】
また。第1のシェルと第2のシェルの格子定数の差は、例えば、3%以上9%以下であり、3%以上7%以下が好ましく、4%以上6%以下がより好ましい。
【0044】
これらのコア-多層シェル構造による量子ドット(A)は、400nm以上800nm以下の範囲(さらには470nm以上680nm以下の範囲、特に赤色の場合600nm以上680nm以下の範囲であり、緑色の場合520nm以上580nm以下の範囲)の発光波長(emission wavelength)を有することができる。
【0045】
これらのコア-多層シェル構造による量子ドット(A)としては、例えば、InP/ZnS/ZnSe、及びInP/ZnSe/ZnSが挙げられる。
【0046】
上記の量子ドット(A)は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。コア-(多層)シェル型の量子ドット(A)と、均質構造型の量子ドット(A)とを組み合わせて用いてもよい。
【0047】
量子ドット(A)の平均粒子径は、量子ドットとして機能し得る範囲内であれば特に限定されない。量子ドット(A)の平均粒子径は、一次粒子の粒子径として0.5nm以上30nm以下が好ましく、1.0nm以上15nm以下がより好ましい。
コア-(多層)シェル型の量子ドット(A)の場合、コアのサイズは、例えば0.5nm以上10nm以下であり、2nm以上5nm以下が好ましい。シェルの平均厚さは、0.4nm以上2nm以下が好ましく、0.4nm以上1.4nm以下がより好ましい。シェルが、第1のシェルと第2のシェルとからなる場合、第1のシェルの平均厚さは、例えば0.2nm以上1nm以下であり、0.2nm以上0.7nm以下が好ましい。第2のシェルの平均厚さは、第1のシェルの平均厚さによらず、例えば0.2nm以上1nm以下であり、0.2nm以上0.7nm以下が好ましい。
【0048】
かかる範囲内の平均粒子径を有する量子ドット(A)は、量子閉じ込め効果を発揮し量子ドットとして良好に機能するとともに、調製が容易であり、安定な蛍光特性を有する。
なお、量子ドット(A)の平均粒子径は、例えば、量子ドット(A)の分散液を、基板上に塗布・乾燥させ、揮発成分を除いた後に、その表面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって定義することができる。典型的には、TEM画像の画像解析により得られる各粒子の円相当径の数平均径として、この平均粒子径を定義することができる。
【0049】
量子ドット(A)の形状は特に限定されない。量子ドット(A)の形状の例としては、球状、楕円球状、円柱状、多角柱状、円盤状、及び多面体状等が挙げられる。
これらの中でも、取扱いの容易さ、入手容易性の観点から球状であることが好ましい。
【0050】
波長変換膜としての特性や波長変換特性が良好である点から、量子ドット(A)は、520nm以上580nm以下の波長域に蛍光極大を有する化合物(A1)、及び600nm以上680nm以下の波長域に蛍光極大を有する化合物(A2)からなる群より選択される1種以上を含むのが好ましく、化合物(A1)及び化合物(A2)からなる群より選択される1種以上からなるのがより好ましい。
【0051】
量子ドット(A)の製造方法は特に限定されない。周知の種々の方法で製造された量子ドットを、量子ドット(A)として用いることができる。量子ドット(A)の製造方法としては、例えば、配位性の有機溶媒中で有機金属化合物を熱分解する方法を採用ができる。
また、コア-シェル構造型の量子ドット(A)は、反応により均質なコアを形成した後に、分散されたコアの存在下にシェル層の前駆体を反応させてシェル層を形成する方法により製造できる。また例えば、上記コア-多層シェル構造を有する量子ドット(A)は、WO2013/127662号公報に記載の方法により製造することができる。
なお、市販されている種々の量子ドット(A)を用いることもできる。
【0052】
波長変換膜における、量子ドットの含有量は、波長変換膜が光線透過率に関する前述の要件を満たす限りにおいて特に限定されない。
波長変換膜における量子ドット(A)の含有量は、波長変換膜全体の質量に対して、20質量%以上80質量%以下が好ましく、25質量%以上60質量%以下がより好ましく
30質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
量子ドット(A)の含有量は、クラスター化していない量子ドットの一次粒子の量と、量子ドットクラスターの量との合計である。
波長変換膜における、クラスター化していない量子ドットの一次粒子の量と量子ドットクラスターの総和に対しての量子ドットクラスターの含有比率は、例えば、コントラスト向上の点で、40質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下である。下限値は特にないが、例えば1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
【0053】
<光散乱微粒子(B)>
前述の通り、波長変換膜は、量子ドット以外に、光散乱微粒子(B)を含んでいてもよい。光散乱微粒子(B)の粒子の形態は特に限定されない。粒子の形態は、球状、略球状、正多面体形状等の多面体形状、略多面体形状、及び不定形等が挙げられる。粒子の形態としては、光線を散乱させる性能の点で、球状、略球状、多面体形状、及び略多面体形状が好ましい。
【0054】
光散乱微粒子(B)の具体例としては、タングステン、ジルコニウム、チタン、白金、ビスマス、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、白金、及び金等の金属単体又は合金からなる金属微粒子;硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、アルミナホワイト、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、及びチタン酸ストロンチウム等の金属又は半金属を含む塩又は酸化物が挙げられる。
【0055】
上記の光散乱微粒子(B)の中では、入手の容易性や、光散乱性能の点等から、酸化チタン、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及びシリカが好ましい。
光散乱微粒子(B)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
光散乱微粒子(B)の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。光散乱微粒子の粒子径は、体積平均粒子径として、0.05μm以上であってよく、0.2μm以上であってもよく、0.3μm以上であってもよい。光散乱微粒子(B)の体積平均粒子径体積は、1.0μm以下であってもよく、0.6μm以下であってもよく、0.4μm以下であってもよい。
【0057】
波長変換膜中の光散乱微粒子(B)の含有量について前述の通りである。
【0058】
<基材(Ca)及び基材成分(Cb)>
波長変換膜は、通常、量子ドット(A)や、光散乱微粒子(B)又は量子ドット(A)の量子ドットクラスターを膜中に支持する基材(Ca)を含む。波長変換膜のマトリックスを構成する材料である基材(Ca)は、透光性の材料であれば特に限定されない。当該基材(Ca)としては、種々の透明な樹脂を用いることができる。基材(Ca)を与える基材成分(Cb)としては、典型的には高分子化合物からなる樹脂材料や、加熱又は露光により架橋して高分子化合物を生じさせる反応性の低分子化合物の硬化物が用いられる。また、基材成分(Cb)として使用される樹脂材料は、加熱又は露光により架橋する官能基を有してもよい。つまり、熱硬化性又は光硬化性の樹脂も基材成分(Cb)として使用できる。
さらに、基材成分(Cb)として使用される樹脂材料は、焼成により硬化する樹脂であってもよい。
基材成分(Ca)は、基材成分(Cb)のみが関与する反応により生成する材料であってもよく、基材成分(Cb)と、後述する硬化剤(D)との反応により生成する材料を含んでいてもよい。
【0059】
上記の基材成分(Cb)としては、硬度や引張伸度等の物理的特性に優れる成形体を形成しやすいことから、熱硬化性又は光硬化性の基材成分が好ましい。
以下、基材成分(Cb)の具体例について、順に説明する。
【0060】
〔樹脂材料〕
基材成分(Cb)として使用される非硬化性の樹脂材料について説明する。非硬化性の樹脂材料は、量子ドット(A)を含む波長変換膜形成用組成物に成膜性等の賦形性を与える非硬化性の樹脂材料であれば特に限定されない。かかる樹脂材料の具体例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等)、FR-AS樹脂、FR-ABS樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミドビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾチアゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、シリコーン樹脂、BT樹脂、ポリメチルペンテン、超高分子量ポリエチレン、FR-ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、及びポリスチレン等が挙げられる。
これらの樹脂材料は、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0061】
上記の樹脂材料は、後述する波長変換膜形成用組成物中に溶解しているのが好ましい。上記の樹脂材料は、本発明の目的を阻害しない範囲で、例えば、ラテックスのような懸濁液であってもよい。
【0062】
(アルカリ可溶性樹脂)
波長変換膜形成用組成物がネガ型の組成物である場合、当該組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含むのが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、特に限定されず、従来公知のアルカリ可溶性樹脂を用いることができる。このアルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和基を有する樹脂であってもよく、エチレン性不飽和基を有さない樹脂であってもよい。
なお、本明細書においてアルカリ可溶性樹脂とは、樹脂濃度20質量%の樹脂溶液(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)により、膜厚1μmの樹脂膜を基板上に形成し、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に1分間浸漬した際に、膜厚0.01μm以上溶解する樹脂をいう。
【0063】
エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、エポキシ化合物と不飽和カルボン酸との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂を用いることができる。このような樹脂としては、後述する式(c7)で表される化合物、又は後述のグリシジルメタクリレートに由来する構成単位に、アクリル酸を反応させた反応物に由来する構成単位を含む樹脂若しくは当該反応物に多塩基酸無水物を反応させて得られる化合物に由来する構成単位を含む樹脂が好ましい。
【0064】
多塩基酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-エチルテトラヒドロ無水フタル酸、及び4-エチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0065】
エポキシ基を有する構成単位を含むアクリル樹脂に、不飽和カルボン酸を反応させた後に、さらに多塩基酸無水物を反応させることにより、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることもできる。
具体例としては、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位に、アクリル酸を反応させると、下記反応式中に示される、水酸基を有する構成単位が生成する。かかる水酸基を有する構成単位に、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸無水物を反応させることにより、カルボキシ基を有する、樹脂にアルカリ可溶性を付与する構成単位が生成する。
【化1】
【0066】
また、エチレン性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等を用いることもできる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
【0067】
一方、エチレン性不飽和基を有さないアルカリ可溶性樹脂としては、不飽和カルボン酸と、他の不飽和化合物とを共重合させて得られる樹脂を用いることができる。他の不飽和化合物としては、エポキシ基含有不飽和化合物、及び脂環式基含有不飽和化合物から選択される少なくとも1種とを用いるのが好ましい。
【0068】
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。これらの中でも、共重合反応性、得られる樹脂のアルカリ溶解性、入手の容易性等の点から、(メタ)アクリル酸及び無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和カルボン酸は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0069】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、脂環式基を有さないエポキシ基含有不飽和化合物と、脂環式基を有するエポキシ基含有不飽和化合物とが挙げられる。
脂環式基を有するエポキシ基含有不飽和化合物としては、後述する式(c5-1)~(c5-15)で表される化合物が挙げられる。
脂環式基を有さないエポキシ基含有不飽和化合物としては、エポキシ基含有樹脂について後述する、芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルを好ましく用いることができる。
【0070】
脂環式基含有不飽和化合物としては、脂環式基を有する不飽和化合物であれば特に限定されない。脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。具体的に、脂環式基含有不飽和化合物としては、例えば後述の式(c6-1)~(c6-8)で表される化合物が挙げられる。
【0071】
不飽和カルボン酸に対して、上記以外の他の化合物をさらに重合させるのも好ましい。このような他の化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、マレイミド類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル類としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0073】
(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、及びマレイミド類の具体例については、エポキシ基含有樹脂を与える単量体として詳細に後述する。
【0074】
また、不飽和カルボン酸に由来する構成単位とともに、後述する光硬化性の低分子化合物との重合可能部位を有する構成単位とを少なくとも有する共重合体、又は不飽和カルボン酸に由来する構成単位と、エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構成単位と、後述する光重合性化合物との重合可能部位を有する構成単位とを少なくとも有する共重合体も、アルカリ可溶性樹脂として好適に使用することができる。
【0075】
上記の光硬化性の低分子化合物との重合可能部位を有する構成単位を有する共重合体は、上述の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、及びマレイミド類等に由来する1種以上の構成単位をさらに有していてもよい。
【0076】
光硬化性の低分子化合物との重合可能部位を有する構成単位は、光硬化性の低分子化合物との重合可能部位としてエチレン性不飽和基を有する構成単位が好ましい。このような構成単位を有する共重合体は、不飽和カルボン酸の単独重合体に含まれるカルボキシル基の少なくとも一部と、エポキシ基含有不飽和化合物とを反応させることにより、調製することができる。
また、不飽和カルボン酸に由来する構成単位と、エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構成単位とを有する共重合体におけるエポキシ基の少なくとも一部と、不飽和カルボン酸とを反応させることでも、光硬化性の低分子化合物との重合可能部位を有する構成単位を有する共重合体を調製することができる。
【0077】
このアルカリ可溶性樹脂中における上記不飽和カルボン酸に由来する構成単位の割合は、3質量%以上25質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。また、上記エポキシ基含有不飽和化合物に由来する構成単位の割合は、30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。また、上記脂環式基含有不飽和化合物に由来する構成単位の割合は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。上記の範囲とすることにより、得られる樹脂のアルカリ溶解性を適度としながら、波長変換膜の基板への密着性と強度とを高めることができる。
【0078】
アルカリ可溶性樹脂の質量平均分子量は、1000以上40000以下であることが好ましく、2000以上30000以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、良好な現像性を得ながら、十分な耐熱性、膜強度を得ることができる。
【0079】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、波長変換膜形成用組成物の固形分に対して5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、15質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性のバランスがとりやすい傾向がある。
【0080】
〔熱硬化性の低分子化合物〕
基材成分(Cb)のうち、加熱により架橋して高分子化合物を生じる、熱硬化性の低分子化合物としては、エポキシ化合物、又はオキセタン化合物が挙げられる。エポキシ化合物やオキセタン化合物を基材成分(Cb)として含む組成物が所定の温度以上に加熱されると、エポキシ化合物やオキセタン化合物が有するエポキシ基やオキセタニル基同士が架橋され、耐熱性や機械的特性に優れる硬化膜が得られる。
【0081】
なお、エポキシ化合物やオキセタン化合物は基本的に熱硬化性の基材成分(Cb)として使用される。エポキシ化合物やオキセタン化合物を、硬化剤としてのオニウム塩とともに用いる場合、光硬化が可能である。
【0082】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物は、単独での加熱や、感熱性の硬化剤又は感光性の硬化剤の作用により硬化可能なエポキシ化合物であれば特に限定されない。エポキシ化合物は、2以上のエポキシ基を有するのが好ましい。また、エポキシ化合物は、オキシラン環以外の環式構造を含むのが好ましい。
このような構造のエポキシ化合物を用いることにより、良好に分散された状態で量子ドット(A)を含有する、蛍光効率が良好な波長変換膜を形成しやすい。
【0083】
エポキシ化合物が環式構造を有する場合、エポキシ化合物に含まれる環式構造は、特に限定されない。環式構造は、炭化水素環構造や複素環構造のような、環構成元素として炭素を含有する環式構造であってもよく、環状シロキサン構造のような、環構成元素として炭素を含有しない環式構造であってもよい。
複素環構造に含まれ得るヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子等が挙げられる。
環式構造は、単環式構造であっても、多環式構造であってもよい。
環構成元素として炭素を含有する環式構造については、芳香族環構造であっても、脂肪族環構造であってもよく、芳香族環と脂肪族環とが縮合した多環構造であってもよい。
【0084】
芳香族環構造、又は芳香族環を含む環構造を与える環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラリン環、アセナフテン環、及びフルオレン環等が挙げられる。
脂肪族環構造を与える環としては、モノシクロアルカン環、ビシクロアルカン環、トリシクロアルカン環、テトラシクロアルカン環等が挙げられる。
具体的には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン等のモノシクロアルカン環や、アダマンタン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、トリシクロデカン環、テトラシクロドデカン環が挙げられる。
【0085】
好適に使用できる汎用されるエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エトキシ]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-[2-(グリシジルオキシ)エチル]フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3-メチルフェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(グリシジルオキシ)-3,5-ジメチルフェニル]-9H-フルオレン、及び9,9-ビス(6‐グリシジルオキシナフタレン-2-イル)-9H-フルオレン等のエポキシ基含有フルオレン化合物;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物は、EHPE-3150(ダイセル社製)として市販される。
【0086】
また、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物も、好ましく用いることができる。
典型的な例としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、臭素化フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルソクレゾールノボラック型エポキシ化合物、キシレノールノボラック型エポキシ化合物、ナフトールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールADノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等が挙げられる。
【0087】
また、下記式(C1)で表される化合物も、オリゴマー又はポリマー型の多官能エポキシ化合物の好ましい例として挙げられる。
【化2】
(式(C1)中、OGlyは、グリシジルオキシ基であり、RC1は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上8以下の1価の基である。naは0以上4以下の整数である。nbは括弧内のユニットの繰り返し数である。naが2以上の整数である場合、ベンゼン環上で隣接する2つのRC1は、互いに結合して環を形成してもよい。RC2は、2価の脂肪族環式基、又は下記式(C1-1):
【化3】
で表される基である。式(C1-1)中、OGlyは、グリシジルオキシ基である。RC3は、芳香族炭化水素基である。RC4は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基である。ncは0又は1である。ndは0以上8以下の整数である。RC5は、水素原子、又は下記式(C1-2):
【化4】
で表される基である。式(C1-2)中、OGlyは、グリシジルオキシ基である。RC6は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基である。neは0以上4以下の整数である。)
【0088】
上記式(C1)で表されるエポキシ化合物は、平均分子量が800以上であるのが好ましい。式(C1)で表されるエポキシ化合物として、かかる平均分子量を有する化合物を用いることにより、耐水性や強度に優れる硬化物を形成しやすい。
式(C1)で表されるエポキシ化合物の平均分子量は、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上が特に好ましい。また、式(C1)で表されるエポキシ化合物の平均分子量は、50000以下が好ましく、20000以下がより好ましい。
【0089】
式(C1)中、RC1は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上8以下の1価の基である。炭素原子数1以上8以下の1価の基の具体例としては、アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、ベンゾイル基、ベンジル基、フェネチル基、及び不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
アルキル基、アルコキシ基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、及び不飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0090】
C1としてのハロゲン原子の好適な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。RC1としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0091】
C1が炭素原子数1以上8以下の1価の基である場合、当該1価の基としてはアルキル基、及びアルコキシ基が好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、及び2-エチルヘキシル基が挙げられる。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、及び2-エチルヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0092】
また、naが2以上4以下の整数である場合に、複数のRC1のうちベンゼン環上で隣接する2のRC1は、互いに結合して環を形成してもよい。2のRC1が結合して形成される環は、芳香族環であっても脂肪族環であってもよく、炭化水素環であっても複素環であってもよい。
2のRC1が結合して形成される環が複素環である場合、当該環に含まれるヘテロ原子としては、N、O、S、及びSe等が挙げられる。
2のRC1が結合することにより、ベンゼン環とともに形成される基の好適な例としては、ナフタレン環、及びテトラリン環が挙げられる。
【0093】
式(C1)中、RC2としての2価の脂肪族環式基としては、特に限定されず、単環式基の2環以上の他環式基でもよい。なお、2価の脂肪族環式基は、通常その構造中にエポキシ基を含まず、エポキシ基を含まないのが好ましい。
2価の脂肪族環式基として、具体的には、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基等を例示できる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
2価の脂肪族環式基の炭素原子数は、3以上50以下が好ましく、3以上30以下がより好ましく、3以上20以下が特に好ましい。3以上15以下が最も好ましい。
【0094】
C2としての2価の脂肪族環式基の具体例としては、以下に示す基が挙げられる。
【化5】
【0095】
C3は、芳香族炭化水素基である。RC3としての芳香族炭化水素基の価数は、2+nc+ndである。芳香族炭化水素基としては特に限定されない。芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環は、典型的には、6員芳香族炭化水素環(ベンゼン環)か、2以上のベンゼン環が、互いに縮合するか単結合を介して結合した環である。
芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素環の好適な具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、及びターフェニルである。これらの芳香族炭化水素環から2+nc+nd個の水素原子を除いた基が、RC3としての芳香族炭化水素基として好適である。
【0096】
式(C1-1)で表される基において、ncは0又は1である。つまり、芳香族炭化水素基であるRC3には、グリシジルオキシ基が結合していなくてもよく、1つのグリシジルオキシ基が結合していてもよい。
【0097】
式(C1-1)で表される基において、RC4は、ハロゲン原子、又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基であり、dは0以上8以下の整数である。つまり、RC4は、芳香族炭化水素基であるRC3上の、グリシジルオキシ基以外の置換基であって、RC3上の置換基数0以上8以下である。ndは、0以上4以下の整数が好ましく、0以上2以下の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
C4としてのハロゲン原子の好適な例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。RC4としてのアルキル基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が好ましく、メチル基、及びエチル基がより好ましい。
【0098】
式(C1-1)で表される基において、RC5は、水素原子、又は前述の式(C1-2)で表される基である。
式(C1-2)中のRC6は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又はフェニル基である。ハロゲン原子、及び炭素原子数1以上4以下のアルキル基の具体例については、RC4と同様である。
【0099】
以上説明した式(C1)で表されるエポキシ化合物について、RC2が、2価の脂肪族環式基であるか、又は前述の式(C1-1)で表される2価の基であって、ncが0であり、且つRC5が水素原子である基であるのが好ましい。
この場合、式(C1)で表されるエポキシ化合物に含まれる複数のエポキシ基の間に、適度な距離が存在することにより、より耐水性が良好な硬化物を形成しやすい。
【0100】
式(C1)で表されるエポキシ化合物は、市販品として入手可能である。市販品の具体例は、日本化薬株式会社製のNC-シリーズ、XD-シリーズ等が挙げられる。また、DIC株式会社、昭和電工株式会社からも特定の構造を有する同等品を入手することができる。
【0101】
式(C1)で表されるエポキシ化合物の好適な具体例の化学構造を以下に記す。下記式中、OGlyは、グリシジルオキシ基を表し、p0は括弧内の単位の繰り返し数を表す。
【化6】
【0102】
好適なエポキシ化合物の他の例として、脂環式エポキシ基を有する多官能の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。かかる脂環式エポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β-メチル-δ-バレロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、及びトリシクロデセンオキサイド基を有する多官能エポキシ化合物や、下記式(c1-1)~(c1-5)で表される化合物が挙げられる。
これらの脂環式エポキシ化合物は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
【0103】
【化7】
(式(c1-1)中、Zは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。Rc1~Rc18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0104】
連結基Zとしては、例えば、2価の炭化水素基、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO-、-CBr-、-C(CBr-、-C(CF-、及び-Rc19-O-CO-からなる群より選択される2価の基、並びにこれらが複数個結合した基等を挙げることができる。
【0105】
連結基Zである2価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。上記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等を挙げることができる。
【0106】
c19は、炭素原子数1以上8以下のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0107】
【化8】
【0108】
(式(c1-2)中、Rc1~Rc18は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Rc2及びRc10は互いに結合して環を形成してもよい。Rc13及びRc16は互いに結合して環を形成してもよい。mc1は、0又は1である。)
【0109】
【化9】
(式(c1-3)中、Rc1~Rc10は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Rc2及びRc8は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0110】
【化10】
(式(c1-4)中、Rc1~Rc12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。Rc2及びRc10は、互いに結合して環を形成してもよい。)
【0111】
【化11】
(式(c1-5)中、Rc1~Rc12は、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0112】
式(c1-1)~(c1-5)中、Rc1~Rc18が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、及びフッ素原子等が挙げられる。
【0113】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素原子数は1以上20以下が好ましく、1以上10以下がより好ましく、1以上5以下が特に好ましい。
【0114】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0115】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2-クロロフェニルメチル基、3-クロロフェニルメチル基、4-クロロフェニルメチル基、2-ブロモフェニルメチル基、3-ブロモフェニルメチル基、4-ブロモフェニルメチル基、2-フルオロフェニルメチル基、3-フルオロフェニルメチル基、4-フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0116】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、及び3,5-ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2-ヒドロキシフェニルメチル基、3-ヒドロキシフェニルメチル基、及び4-ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、α-ナフチルオキシ基、β-ナフチルオキシ基、ビフェニル-4-イルオキシ基、ビフェニル-3-イルオキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α-ナフチルメチルオキシ基、β-ナフチルメチルオキシ基、α-ナフチルエチルオキシ基、及びβ-ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロポキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロポキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロポキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロポキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロポキシ基、3-エトキシ-n-プロポキシ基、3-n-プロポキシ-n-プロポキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロポキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、及び4-メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α-ナフトキシカルボニル基、及びβ-ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α-ナフトイルオキシ基、及びβ-ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0117】
c1~Rc18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上5以下のアルキル基、及び炭素原子数1以上5以下のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に機械的特性に優れる硬化膜を形成しやすいことから、Rc1~Rc18が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0118】
式(c1-2)~(c1-5)中、Rc1~Rc18は、式(c1-1)におけるRc1~Rc18と同様である。式(c1-2)及び式(c1-4)において、Rc2及びRc10が、互いに結合する場合、式(c1-2)において、Rc13及びRc16が、互いに結合する場合、及び式(c1-3)において、Rc2及びRc8が、互いに結合する場合、2つの基が結合して形成される2価の基としては、例えば、-CH-、-C(CH-が挙げられる。
【0119】
式(c1-1)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(c1-1a)、式(c1-1b)、及び式(c1-1c)で表される脂環式エポキシ化合物や、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン[=2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン]等を挙げることができる。
【化12】
【0120】
式(c1-2)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、下記式(c1-2a)で表されるビシクロノナジエンジエポキシド、又はジシクロノナジエンジエポキシド等が挙げられる。
【化13】
【0121】
式(c1-3)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、Sスピロ[3-オキサトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタン-6,2’-オキシラン]等が挙げられる。
【0122】
式(c1-4)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジペンテンジオキシド、リモネンジオキシド、1-メチル-4-(3-メチルオキシラン-2-イル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン等が挙げられる。
【0123】
式(c1-5)で表される脂環式エポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
【0124】
さらに、下記式(c1)で表される化合物をエポキシ化合物として好適に使用し得る。
【化14】
(式(c1)中、Xc1、Xc2、及びXc3は、それぞれ独立に、水素原子、又はエポキシ基を含んでいてもよい有機基であり、Xc1、Xc2、及びXc3が有するエポキシ基の総数が2以上である。)
式(c1)中の有機基としては、炭素原子含有基が好ましく、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
【0125】
上記式(c1)で表される化合物としては、下記式(c1-6)で表される化合物が好ましい。
【化15】
(式(c1-6)中、Rc20~Rc22は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。E~Eは、エポキシ基、オキセタニル基、エチレン性不飽和基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、チオール基、カルボキシ基、水酸基及びコハク酸無水物基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基又は水素原子である。ただし、E~Eのうち少なくとも2つは、エポキシ基及びオキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種である。)
【0126】
式(c1-6)中、Rc20とE、Rc21とE、及びRc22とEで示される基は、例えば、少なくとも2つが、それぞれ、下記式(c1-6a)で表される基であることが好ましく、いずれもが、それぞれ、下記式(c1-6a)で表される基であることがより好ましい。1つの化合物に結合する複数の式(c1-6a)で表される基は、同じ基であることが好ましい。
-L-C (c1-6a)
(式(c1-6a)中、Lは直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基、アリーレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であり、Cはエポキシ基である。式(c1-6a)中、LとCとが結合して環状構造を形成していてもよい。)
【0127】
式(c1-6a)中、Lとしての直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基としては、炭素原子数1以上10以下のアルキレン基が好ましく、また、Lとしてのアリーレン基としては、炭素原子数5以上10以下のアリーレン基が好ましい。式(c1-6a)中、Lは、直鎖状の炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)-、-NH-及びこれらの組み合わせからなる基であることが好ましく、メチレン基等の直鎖状の炭素原子数1以上3以下のアルキレン基及びフェニレン基の少なくとも1種、又は、これらと、-O-、-C(=O)-及びNH-の少なくとも1種との組み合わせからなる基が好ましい。
【0128】
式(c1-6a)中、LとCとが結合して環状構造を形成している場合としては、例えば、分岐鎖状のアルキレン基とエポキシ基とが結合して環状構造(脂環構造のエポキシ基を有する構造)を形成している場合、下記式(c1-6b)又は(c1-6c)で表される有機基が挙げられる。
【化16】
(式(c1-6b)中、Rc23は、水素原子又はメチル基である。)
【0129】
以下、式(c1-6)で表される化合物の例としてオキシラニル基、又は脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物の例を示すが、これらに限定されない。
【化17】
【0130】
また、エポキシ化合物として好適に使用し得る化合物としては、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物(以下、単に「シロキサン化合物」とも記す。)を挙げることができる。
【0131】
シロキサン化合物は、シロキサン結合(Si-O-Si)により構成されたシロキサン骨格と、2以上のグリシジル基とを分子内に有する化合物である。
シロキサン化合物におけるシロキサン骨格としては、例えば、環状シロキサン骨格やかご型やラダー型のポリシルセスキオキサン骨格を挙げることができる。
【0132】
シロキサン化合物としては、なかでも、下記式(c1-7)で表される環状シロキサン骨格を有する化合物(以下、「環状シロキサン」という場合がある)が好ましい。
【化18】
【0133】
式(c1-7)中、Rc24、及びRc25は、エポキシ基を含有する1価の基又はアルキル基を示す。ただし、式(c1-7)で表される化合物におけるx1個のRc24及びx1個のRc25のうち、少なくとも2個はエポキシ基を含有する1価の基である。また、式(c1-7)中のx1は3以上の整数を示す。なお、式(c1-7)で表される化合物におけるRc24、Rc25は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、複数のRc24は同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数のRc25も同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0134】
上記エポキシ基を含有する1価の基としては、-D-O-Rc26で表されるグリシジルエーテル基が好ましい。Dはアルキレン基を示す。Rc26はグリシジル基を示す。上記D(アルキレン基)としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基等の炭素原子数が1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等を挙げることができる。
また、-D-Rc27で表される脂環式エポキシ基含有基も好ましい。Rc27は、エポキシシクロアルキル基である。Dは前述の通り、アルキレン基である。Dとしてのアルキレン基の好ましい例も、前述の通りである。Rc27としてのエポキシシクロアルキル基としては、2,3-エポキシシクロペンチル基、3,4-エポキシシクロヘキシル基、及び2,3-エポキシシクロヘキシル基が好ましい。-D-Rc27で表される基としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基が好ましい。
【0135】
c24、及びRc25としてのアルキル基の好ましい例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上18以下の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。アルキル基の炭素原子数は、より好ましくは1以上6以下、特に好ましくは1以上3以下である。
【0136】
式(c1-7)中のx1は3以上の整数を示し、なかでも、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点で3以上6以下の整数が好ましい。
【0137】
シロキサン化合物が分子内に有するエポキシ基の数は2個以上であり、硬化膜を形成する際の架橋反応性に優れる点から2個以上6個以下が好ましく、特に好ましくは2個以上4個以下である。
【0138】
波長変換膜形成用組成物は、式(c1-7)で表されるシロキサン化合物以外にも、脂環式エポキシ基含有環状シロキサン、特開2008-248169号公報に記載の脂環式エポキシ基含有シリコーン樹脂、及び特開2008-19422号公報に記載の1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能性基を有するオルガノポリシルセスキオキサン樹脂等のシロキサン骨格を有する化合物を含有していてもよい。
【0139】
シロキサン化合物としては、より具体的には、下記式で表される、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサン等を挙げることができる。また、シロキサン化合物としては、例えば、商品名「X-40-2670」、「X-40-2701」、「X-40-2728」、「X-40-2738」、「X-40-2740」(以上、信越化学工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0140】
【化19】
【0141】
【化20】
【0142】
(オキセタン化合物)
オキセタン化合物の好適な例としては、例えば、3,3’-(オキシビスメチレン)ビス(3-エチルオキセタン)、4,4‐ビス[(3‐エチル-3-オキセタニル)メチル]ビフェニル、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサノナン、3,3’-〔1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン)〕ビス(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,2-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル〕エタン、1,3-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル〕プロパン、エチレングリコールビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、ジシクロペンテニルビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、トリエチレングリコールビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、テトラエチレングリコールビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、トリメチロールプロパントリス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕ブタン、1,6-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、ポリエチレングリコールビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル等が挙げられる。
【0143】
ジペンタエリスリトールヘキサキス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテルとカプロラクトンとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタキス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテルとカプロラクトンとの反応生成物、ジトリメチロールプロパンテトラキス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、ビスフェノールAビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物、ビスフェノールAビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテルとプロピレンオキサイドとの反応生成物、水添ビスフェノールAビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物、水添ビスフェノールAビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテルとプロピレンオキサイドとの反応生成物、ビスフェノールFビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物等も、オキセタン化合物として使用できる。
【0144】
〔熱硬化性の高分子化合物〕
基材成分(Cb)として使用できる熱硬化性の高分子化合物としては、加熱により、分子内での芳香環形成反応、及び/又は分子間での架橋反応を生じさせる樹脂や、焼成により硬化膜を生成させる樹脂が挙げられる。
波長変換膜形成用組成物が加熱により、分子内での芳香環形成反応、及び/又は分子間での架橋反応を生じさせる樹脂を含む場合、加熱による、分子内での芳香環形成反応及び/又は分子間での架橋反応を促進させる点から、波長変換膜形成用組成物が、特開2016-145308号公報に記載される熱イミダゾール発生剤や、特開2017-025226号公報に記載のイミダゾール化合物を含むのが好ましい。
波長変換膜形成用組成物が焼成により硬化膜を生成させる樹脂を含む場合に、波長変換膜形成用組成物が含みうる硬化剤については詳細に後述する。
【0145】
分子内での芳香環形成反応によれば、樹脂を構成する分子鎖の構造が剛直化し、波長変換膜形成用組成物を用いて耐熱性及び機械的特性に優れる硬化膜を得やすい。分子内での芳香環形成反応のうち、好ましい反応としては、例えば、下式(I)~(VI)で示される反応が挙げられる。なお、下式中の反応は芳香環形成反応の一例にすぎず、基材成分(Cb)として使用される、加熱により分子内での芳香環形成反応を生じさせる樹脂の構造は、下式中に示される前駆体ポリマーの構造に限定されない。
【0146】
【化21】
【0147】
分子間での架橋反応によれば、樹脂を構成する分子鎖が相互に架橋され、三次元架橋構造が形成される。このため、加熱により架橋反応を生じさせる樹脂を基材成分(Cb)として含む波長変換膜形成用組成物を用いると、耐熱性及び機械的特性に優れる硬化膜を得やすい。
【0148】
加熱により分子間の架橋反応を生じさせる樹脂としては、分子中に、水酸基、カルボン酸無水物基、カルボキシ基、及びエポキシ基から選択される基を有する樹脂が好ましい。このような樹脂を用いる場合、例えば、前述の熱イミダゾール発生剤やイミダゾール化合物の作用によって、以下に記すような架橋が生じる。水酸基を有する樹脂を用いる場合、樹脂に含まれる分子間に水酸基間の脱水縮合による架橋が生じる。カルボン酸無水物基を有する樹脂を用いる場合、酸無水物基の加水分解により生じるカルボキシ基同士が脱水縮合して架橋する。カルボキシ基を有する樹脂を用いる場合、樹脂に含まれる分子間にカルボキシ基間の脱水縮合による架橋が生じる。エポキシ基を有する樹脂を用いる場合、樹脂に含まれる分子間にエポキシ基間の重付加反応による架橋が生じる。
【0149】
このような加熱により分子内での芳香環形成反応や、分子間での架橋反応を生じさせる化合物の中では、耐熱性に優れる成形体を形成しやすいことから、ポリアミック酸、ポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリベンゾチアゾール前駆体、ポリベンゾイミダゾール前駆体、スチレン-マレイン酸共重合体、及びエポキシ基含有樹脂が好ましい。
【0150】
(エポキシ基含有樹脂)
エポキシ基含有樹脂は、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体であってもよい。エポキシ基含有樹脂は、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性を有する官能基を有する重合体に対して、例えばエピクロルヒドリンのようなエポキシ基を有する化合物を用いてエポキシ基を導入した樹脂であってもよい。入手、調製、重合体中のエポキシ基の量の調整等が容易であることから、エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する単量体又はエポキシ基を有する単量体を含む単量体混合物を重合させて得られる重合体が好ましい。
【0151】
エポキシ基含有樹脂の好ましい一例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0152】
また、エポキシ基含有樹脂の中では、調製が容易であること等から、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体か、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体が好ましい。
【0153】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、鎖状脂肪族エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであっても、後述するような、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、芳香族基を含んでいてもよい。エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの中では、鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルや、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。
【0154】
芳香族基を含み、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、4-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、2-グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-グリシジルオキシフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0155】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの例としては、エポキシアルキル(メタ)アクリレート、及びエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート等のような、エステル基(-O-CO-)中のオキシ基(-O-)に鎖状脂肪族エポキシ基が結合する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルが有する鎖状脂肪族エポキシ基は、鎖中に1又は複数のオキシ基(-O-)を含んでいてもよい。鎖状脂肪族エポキシ基の炭素原子数は、特に限定されないが、3以上20以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上10以下が特に好ましい。
【0156】
鎖状脂肪族エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキル(メタ)アクリレート;2-グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3-グリシジルオキシ-n-プロピル(メタ)アクリレート、4-グリシジルオキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、5-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート、6-グリシジルオキシ-n-ヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0157】
脂環式エポキシ基を有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば下記式(c5-1)~(c5-15)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(c5-1)~(c5-5)で表される化合物が好ましく、下記式(c5-1)~(c5-3)で表される化合物がより好ましい。
【0158】
【化22】
【0159】
【化23】
【0160】
【化24】
【0161】
上記式中、Rc40は水素原子又はメチル基を示し、Rc41は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rc42は炭素原子数1以上10以下の2価の炭化水素基を示し、tは0以上10以下の整数を示す。Rc41としては、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Rc42としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基が好ましい。
【0162】
エポキシ基を有する重合体としては、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体のいずれも用いることができるが、エポキシ基を有する重合体中の、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましく、100質量%であるのが最も好ましい。
【0163】
エポキシ基を有する重合体が、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体としては、不飽和カルボン酸、エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類、及びマレイミド類等が挙げられる。これらの化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。波長変換膜形成用組成物の保存安定性や、波長変換膜形成用組成物を用いて形成される波長変換膜のアルカリ等に対する耐薬品性の点からは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体との共重合体は、不飽和カルボン酸に由来する単位を含まないのが好ましい。
【0164】
不飽和カルボン酸の例としては、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド;クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、これらジカルボン酸の無水物が挙げられる。
【0165】
エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、t-オクチル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート;脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。エポキシ基を持たない(メタ)アクリル酸エステルの中では、脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0166】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルにおいて、脂環式骨格を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0167】
脂環式骨格を有する基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば下記式(c6-1)~(c6-8)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(c6-3)~(c6-8)で表される化合物が好ましく、下記式(c6-3)又は(c6-4)で表される化合物がより好ましい。
【0168】
【化25】
【0169】
【化26】
【0170】
上記式中、Rc43は水素原子又はメチル基を示し、Rc44は単結合又は炭素原子数1以上6以下の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rc45は水素原子又は炭素原子数1以上5以下のアルキル基を示す。Rc44としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Rc45としては、メチル基、エチル基が好ましい。
【0171】
(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0172】
アリル化合物の例としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0173】
ビニルエーテル類の例としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0174】
ビニルエステル類の例としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0175】
スチレン類の例としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0176】
マレイミド類としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-n-ペンチルマレイミド、N-n-ヘキシルマレイミド等の炭素原子数1~10のアルキル基でN置換されたマレイミド;N-シクロペンチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-シクロヘプチルマレイミド等の炭素原子数3~20の脂環式基でN置換されたマレイミド:N-フェニルマレイミド、N-α-ナフチルマレイミド、N-β-ナフチルマレイミド等の炭素原子数6以上20以下のアリール基でN置換されたN-アリールマレイミド;N-ベンジルマレイミド、N-フェネチルマレイミド等の炭素原子数7以上20以下のアラルキル基でN置換されたN-アラルキルマレイミドが挙げられる。
【0177】
エポキシ基含有樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、ポリスチレン換算の質量平均分子量として、3,000以上30,000以下が好ましく、5,000以上15,000以下がより好ましい。
【0178】
〔光重合性の低分子化合物〕
波長変換膜形成用組成物は、基材成分(Cb)として光重合性の低分子化合物(光重合性モノマー)を含んでいてもよい。波長変換膜形成用組成物が多官能の光重合性の低分子化合物を含む場合は、波長変換膜形成用組成物が後述の光重合開始剤等を含むことが好ましい。光重合性の低分子化合物には、単官能モノマーと多官能モノマーとがある。以下、単官能モノマー、及び多官能モノマーについて順に説明する。
【0179】
単官能モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル-2-アミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0180】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等の多官能モノマーや、トリアクリルホルマール等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
〔光重合性の高分子化合物〕
波長変換膜形成用組成物は、基材成分(Cb)として光重合性の高分子化合物を含んでいてもよい。光重合性の高分子化合物としては、エチレン性不飽和基を含む樹脂が好適に使用される。
エチレン性不飽和基を含む樹脂としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、カルドエポキシジアクリレート等が重合したオリゴマー類;多価アルコール類と一塩基酸又は多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオールと2個のイソシアネート基を持つ化合物とを反応させた後、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノール又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエステル、脂肪族又は脂環式エポキシ樹脂、アミンエポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。さらに、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に多塩基酸無水物を反応させた樹脂を好適に用いることができる。
【0182】
また、エチレン性不飽和基を含む樹脂としては、エポキシ化合物と不飽和基含有カルボン酸化合物との反応物を、さらに多塩基酸無水物と反応させることにより得られる樹脂や、不飽和カルボン酸に由来する単位を含む重合体に含まれるカルボキシ基の少なくとも一部と、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸エポキシアルキルエステルとを反応させることにより得られる樹脂(以下、まとめて「エチレン性不飽和基を有する構成単位を含む樹脂」という)を好適に用いることができる。エチレン性不飽和基を有する構成単位におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0183】
その中でも、エチレン性不飽和基を有する構成単位を含む樹脂又は下記式(c7)で表される化合物が好ましい。この式(c7)で表される化合物は、それ自体が、光硬化性が高い点で好ましい。
【化27】
【0184】
上記式(c7)中、Xは、下記一般式(c8)で表される基を表す。
【化28】
【0185】
上記式(c8)中、Rc50は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1以上6以下の炭化水素基、又はハロゲン原子を表し、Rc51は、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表し、Wは、単結合、又は下記構造式(c9)で表される基を表す。なお、式(c8)、及び式(c9)において「*」は、2価の基の結合手の末端を意味する。
【化29】
【0186】
上記式(c7)中、Yはジカルボン酸無水物から酸無水物基(-CO-O-CO-)を除いた残基を表す。ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸等が挙げられる。
【0187】
また、上記式(c7)中、Zは、テトラカルボン酸二無水物から2個の酸無水物基を除いた残基を表す。テトラカルボン酸二無水物の例としては、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。さらに、上記式(c7)中、nは、0以上20以下の整数を表す。
【0188】
エチレン性不飽和基を含む樹脂の酸価は、樹脂固形分で、10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が好ましく、70mgKOH/g以上110mgKOH/g以下がより好ましい。酸価を10mgKOH/g以上とすることにより、波長変換膜形成用組成物にフォトリソ特性を付与する場合に、現像液に対する十分な溶解性を有する波長変換膜形成用組成物を得やすいため好ましい。また、酸価を150mgKOH/g以下とすることにより、十分な硬化性を得ることができ、表面性を良好にすることができるので好ましい。
【0189】
また、エチレン性不飽和基を含む樹脂の質量平均分子量は、1,000以上40,000以下が好ましく、2,000以上30,000以下がより好ましい。質量平均分子量を1,000以上とすることにより、良好な耐熱性と、膜強度とを有する硬化膜を形成しやすいので好ましい。また、質量平均分子量を40,000以下とすることにより、良好な現像性を得ることができるので好ましい。
【0190】
〔焼成により硬化膜を生成させる樹脂〕
焼成により硬化膜を生成させる樹脂としては、例えば、ケイ素含有樹脂が挙げられる。ケイ素含有樹脂の好ましい例としては、シロキサン樹脂、及びポリシランから選択される1種以上が挙げられる。これらのケイ素含有樹脂を含む波長変換膜形成用組成物を塗布することでケイ素含有樹脂を含む波長変換膜が得られ、当該波長変換膜が焼成されることでシリカ系の波長変換膜が得られる。以下、シロキサン樹脂、及びポリシランとについて説明する。
【0191】
(シロキサン樹脂)
シロキサン樹脂としては、例えば下式(C-a)で表されるシラン化合物から選択される少なくとも1種を加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂が好適に使用される。
4-nSi(OR’)・・・(C-a)
【0192】
式(C-a)において、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表し、R’はアルキル基又はフェニル基を表し、nは2以上4以下の整数を表す。Siに複数のRが結合している場合、該複数のRは同じであっても異なっていてもよい。またSiに結合している複数の(OR’)基は同じであっても異なっていてもよい。
【0193】
以上説明したシラン化合物を、常法に従って加水分解縮合することによりシロキサン樹脂が得られる。
シロキサン樹脂の質量平均分子量は、300以上30,000以下が好ましく、500以上10,000以下がより好ましい。異なる質量平均分子量のシロキサン樹脂を2種以上混合してもよい。シロキサン樹脂の質量平均分子量がかかる範囲内である場合、製膜性に優れ、平坦な波長変換膜を形成できる波長変換膜形成用組成物を得やすい。
【0194】
(ポリシラン)
ポリシランの構造は特に限定されない。ポリシランは直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、網目状であっても、環状であってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造が好ましい。
ポリシランは、シラノール基及び/又はアルコキシ基を含有していてもよい。
【0195】
以上説明したポリシランの中では、それぞれケイ素原子に結合している、アルキル基と、アリール基又はアラルキル基とを組み合わせて含むポリシラン又はアルキル基のみケイ素原子に結合しているポリシランが好ましい。より具体的には、それぞれケイ素原子に結合している、メチル基と、ベンジル基とを組み合わせて含むポリシランや、それぞれケイ素原子に結合している、メチル基と、フェニル基とを組み合わせて含むポリシラン、又はメチル基のみケイ素原子に結合しているポリシランが好ましく使用される。
【0196】
ポリシランの質量平均分子量は、300以上100,000以下が好ましく、500以上70,000以下がより好ましく、800以上30,000以下がさらに好ましい。異なる質量平均分子量のポリシランを2種以上混合してもよい。
【0197】
波長変換膜形成用組成物中の、ケイ素含有樹脂の含有量は特に限定されず、所望の膜厚に応じて設定すればよい。製膜性の点からは、波長変換膜形成用組成物中のケイ素含有樹脂の含有量は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0198】
波長変換膜における基材(Ca)の含有量は、波長変換膜に所望する量の量子ドット(A)が含まれる限り特に限定されず、質量比で量子ドット(A):基材(Ca)=99:1~1:99であることが好ましく、90:10~10:90がより好ましい。
【0199】
<硬化剤(D)>
波長変換膜が、基材(Ca)として、エポキシ化合物やオキセタン化合物等の成分や、光硬化性の成分や、ケイ素含有樹脂のような硬化性の成分を基材成分(Cb)として含む場合、波長変換膜形成組成物において、基材(Cb)とともに硬化剤(D)が併用されてもよい。この場合、硬化剤(D)が、基材成分(Cb)と反応して基材(Ca)に組み込まれてよい。また、波長変換膜が、硬化剤(D)をそのまま含んでいてもよく、波長変換膜が硬化剤(D)の熱分解物や光分解物を含んでいてもよい。
【0200】
ここで、本願明細書において、硬化剤(D)は、基材成分(Cb)を硬化させ得る成分であれば特に限定されない。例えば、所謂光重合開始剤等についても、本願明細書において硬化剤(D)に含まれる。
なお、波長変換膜形成用組成物に含まれる基材成分(Cb)が、カルボキシ基、カルボン酸無水物基や、アミノ基のようなエポキシ基やオキセタニル基との反応性を有する官能基を有するエポキシ化合物又はオキセタン化合物である場合、液状組成物は、必ずしも、硬化剤を含有する必要はない。
【0201】
〔光重合開始剤(D1)〕
光重合開始剤(D1)は、不飽和二重結合を有する光硬化性の基材成分(Cb)とともに使用され、露光により、光硬化性の基材成分(Cb)を硬化させる。光重合開始剤(D1)としては、特に限定されず、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤(D1)を含む波長変換膜形成用組成物としては、アルカリ現像によるフォトリソグラフィ特性の点から、量子ドット(A)及び光重合開始剤(D1)とともに、前述のアルカリ可溶性樹脂と、光重合性の低分子化合物とを含む組成物が好ましい。
【0202】
光重合開始剤(D1)として、具体的には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)[4-(2-メトキシ-1-メチルエトキシ)-2-メチルフェニル]メタノンO-アセチルオキシム、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(D1)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0203】
これらの中でも、オキシム系の光重合開始剤が、感度の面で特に好ましい。好ましいオキシム系の光重合開始剤としては、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、O-アセチル-1-[6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル]エタノンオキシム、及び1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
また、ケイ素含有樹脂用硬化剤(D4)として後述するオキシムエステル化合物も、オキシム系の光重合開始剤として好適に用いることができる。
【0204】
光重合開始剤(D1)の含有量は、波長変換膜形成用組成物の固形分100質量部に対して0.5質量部以上30質量部以下が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
【0205】
また、この光重合開始剤(D1)に、光開始助剤を組み合わせてもよい。光開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、ペンタエリストールテトラメルカプトアセテート、3-メルカプトプロピオネート等のチオール化合物等が挙げられる。これらの光開始助剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0206】
〔オニウム塩(D2)〕
オニウム塩(D2)は、エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物、又はオキセタン化合物等とともに使用することができ、光又は熱の作用により、エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物、又はオキセタン化合物等の硬化を促進させる。
オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オキソニウム塩等が挙げられる。これらの中では、入手の容易性や、良好な硬化の点から、スルホニウム塩、及びヨードニウム塩が好ましく、スルホニウム塩がより好ましい。以下スルホニウム塩について説明する。
【0207】
スルホニウム塩を構成するアニオンとしては、1価の多原子アニオンが好適に挙げられ、MY 、(Rf)PF6-b 、Rx1 BY4-c 、Rx1 GaY4-c 、Rx2SO 、(Rx2SO、又は(Rx2SOで表されるアニオンがより好ましい。また、スルホニウム塩を構成するアニオンは、ハロゲンアニオンでもよく、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
【0208】
Mは、リン原子、ホウ素原子、又はアンチモン原子を表す。
Yはハロゲン原子(フッ素原子が好ましい。)を表す。
【0209】
Rfは、水素原子の80モル%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基(炭素原子数1以上8以下のアルキル基が好ましい。)を表す。フッ素置換によりRfとするアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びオクチル等の直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル等の分岐鎖アルキル基、並びにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられる。Rfにおいてこれらのアルキル基の水素原子がフッ素原子に置換されている割合は、もとのアルキル基が有していた水素原子のモル数に基づいて、80モル%以上が好ましく、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは100%である。フッ素原子による置換割合がこれら好ましい範囲にあると、スルホニウム塩(Q)の光感応性がさらに良好となる。特に好ましいRfとしては、CF-、CFCF 、(CFCF、CFCFCF 、CFCFCFCF 、(CFCFCF 、CFCF(CF)CF及び(CFが挙げられる。b個のRfは、相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0210】
Pはリン原子、Fはフッ素原子を表す。
【0211】
x1は、水素原子の一部が少なくとも1個の元素又は電子求引基で置換されたフェニル基を表す。そのような1個の元素の例としては、ハロゲン原子が含まれ、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等が挙げられる。電子求引基としては、トリフルオロメチル基、ニトロ基及びシアノ基等が挙げられる。これらのうち、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基が好ましい。c個のRx1は相互に独立であり、従って、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0212】
Bはホウ素原子、Gaはガリウム原子を表す。
【0213】
x2は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基、炭素原子数1以上20以下のフルオロアルキル基又は炭素原子数6以上20以下のアリール基を表し、アルキル基及びフルオロアルキル基は直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよく、アルキル基、フルオロアルキル基、又はアリール基は無置換であっても、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、置換されていてよいアミノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換されていてよいアミノ基としては、例えば、上記式(D-II)~(D-VI)に関する後述の説明中で例示する基が挙げられる。
また、Rx2で表されるアルキル基、フルオロアルキル基又はアリール基における炭素鎖は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有していてもよい。特に、Rx2で表されるアルキル基又はフルオロアルキル基における炭素鎖は、例えば、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミノ結合、アミド結合、イミド結合、スルホニル結合、スルホニルアミド結合、スルホニルイミド結合、及びウレタン結合等の2価の官能基を有していてもよい。
x2で表されるアルキル基、フルオロアルキル基又はアリール基が上記置換基、ヘテロ原子、又は官能基を有する場合、上記置換基、ヘテロ原子、又は官能基の個数は、1個であっても2個以上であってもよい。
【0214】
Sは硫黄原子、Oは酸素原子、Cは炭素原子、Nは窒素原子を表す。
aは4以上6以下の整数を表す。
bは、1以上5以下の整数が好ましく、さらに好ましくは2以上4以下の整数、特に好ましくは2又は3である。
cは、1以上4以下の整数が好ましく、さらに好ましくは4である。
【0215】
MY で表されるアニオンとしては、SbF 、PF 又はBF で表されるアニオン等が挙げられる。
【0216】
(Rf)PF6-b で表されるアニオンとしては、(CFCFPF 、(CFCFPF 、((CFCF)PF 、((CFCF)PF 、(CFCFCFPF 、(CFCFCFPF 、((CFCFCFPF 、((CFCFCFPF 、(CFCFCFCFPF 又は(CFCFCFCFPF で表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CFCFPF 、(CFCFCFPF 、((CFCF)PF 、((CFCF)PF 、((CFCFCFPF 又は((CFCFCFPF で表されるアニオンが好ましい。
【0217】
x1 BY4-c で表されるアニオンとしては、好ましくは
x1 BY4-c
(式中、Rx1は水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子又は電子求引基で置換されたフェニル基を示し、Yはハロゲン原子を示し、cは1以上4以下の整数を示す。)
であり、例えば、(C、((CF、(CF、(CBF 、CBF 又は(Cで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(C又は((CFで表されるアニオンが好ましい。
【0218】
x1 GaY4-c で表されるアニオンとしては、(CGa、((CFGa、(CFGa、(CGaF 、CGaF 又は(CGaで表されるアニオン等が挙げられる。これらのうち、(CGa又は((CFGaで表されるアニオンが好ましい。
【0219】
x2SO で表されるアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロフェニルスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン及びブタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。これらのうち、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン又はp-トルエンスルホン酸アニオンが好ましい。
【0220】
(Rx2SOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO又は(CSOで表されるアニオン等が挙げられる。
【0221】
(Rx2SOで表されるアニオンとしては、(CFSO、(CSO、(CSO又は(CSOで表されるアニオン等が挙げられる。
【0222】
1価の多原子アニオンとしては、MY 、(Rf)PF6-b 、Rx1 BY4-c 、Rx1 GaY4-c 、Rx2SO 、(Rx2SO又は(Rx2SOで表されるアニオン以外に、過ハロゲン酸イオン(ClO 、BrO 等)、ハロゲン化スルホン酸イオン(FSO 、ClSO 等)、硫酸イオン(CHSO 、CFSO 、HSO 等)、炭酸イオン(HCO 、CHCO 等)、アルミン酸イオン(AlCl 、AlF 等)、ヘキサフルオロビスマス酸イオン(BiF )、カルボン酸イオン(CHCOO、CFCOO、CCOO、CHCOO、CCOO、CFCOO等)、アリールホウ酸イオン(B(C 、CHCHCHCHB(C 等)、チオシアン酸イオン(SCN)及び硝酸イオン(NO )等が使用できる。
【0223】
これらのXのうち、カチオン重合性能の点では、MY 、(Rf)PF6-b 、Rx1 BY4-c 、Rx1 GaY4-c 及び(Rx2SOで表されるアニオンが好ましく、SbF 、PF 、(CFCFPF 、(C、((CF、(CGa、((CFGa及び(CFSOがより好ましく、Rx1 BY4-c がさらに好ましい。
【0224】
スルホニウム塩を構成するカチオンの具体例としては、以下のカチオン部が挙げられる。
【0225】
【化30】
【0226】
上記の好ましいカチオン部の群の中では、下記式で表されるカチオン部がより好ましい。
【化31】
【0227】
波長変換膜形成用組成物におけるオニウム塩(D2)の含有量は、波長変換膜形成用組成物の硬化が良好に進行する限り特に限定されない。波長変換膜形成用組成物を良好に硬化させやすい点から、波長変換膜形成用組成物におけるオニウム塩(D2)の含有量は、典型的には、エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物、又はオキセタン化合物等のオニウム塩(D2)により硬化する基材成分(Cb)100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下であり、0.01質量部以上30質量部以下が好ましく、0.01質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上15質量部以下がさらに好ましく、1質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
【0228】
〔エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物又はオキセタン化合物用硬化剤(D3)〕
エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物又はオキセタン化合物用硬化剤(D3)(以下、硬化剤(D3)とも記す。)は、上記のオニウム塩(D2)以外の硬化剤であって、従来公知の硬化剤から適宜選択することができる。硬化剤(D3)は、エポキシ基含有樹脂、エポキシ化合物又はオキセタン化合物とともに使用してもよく、加熱による硬化に寄与する。
【0229】
硬化剤(D3)としては、例えば、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、多価アミン系硬化剤、触媒型硬化剤が挙げられる。
フェノール系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤の使用量は、波長変換膜形成用組成物中の基材成分(Cb)の量100質量部に対して、1質量部以上200質量部以下が好ましく、50質量部以上150質量部以下がより好ましく、80質量部以上120質量部以下が特に好ましい。フェノール系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
多価アミン系硬化剤の使用量は、波長変換膜形成用組成物中の基材成分(Cb)の量100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下が好ましく、0.5質量部以上30質量部以下がより好ましく、1質量部15質量部が特に好ましい。これらの多価アミン系硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
触媒型硬化剤の使用量は、波長変換膜形成用組成物中の基材成分(Cb)の量100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下が好ましく、1質量部以上80質量部以下がより好ましく、1質量部以上50質量部以下が特に好ましい。これらの触媒型硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
なお、基材成分(Cb)の量は、特に、エポキシ化合物の量、及びオキセタニル化合物の量の合計である。エポキシ化合物の量、及びオキセタニル化合物の量は、エポキシ基及び/又はオキセタニル基を含有する樹脂の量を含む。
【0230】
〔ケイ素含有樹脂用硬化剤(D4)〕
ケイ素含有樹脂を基材成分(Cb)として含む波長変換膜形成用組成物は、ケイ素含有樹脂用硬化剤(D4)(以下、硬化剤(D4)とも記す。)を含んでいてもよい。ケイ素含有樹脂を含む波長変換膜形成用組成物が硬化剤(D4)を含む場合、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤により、溶解、膨潤、変形したりしにくい、有機溶剤耐性に優れる波長変換膜を形成しやすい。
【0231】
硬化剤(D4)の好適な例としては、塩酸、硫酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルメチルアミン、DBU(1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕-7-ウンデセン)、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素)等の有機アミン類;三塩化リン、三臭化リン、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリプロピル等のPX(式中、Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;オキシ三塩化リン、オキシ三臭化リン、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル等のPOX(式中、Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;五酸化二リン;ポリリン酸やポリリン酸エステル等の、H(HPOOH(式中、xは1以上の整数である。)で表されるリン化合物;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、メトキシジクロロホスフィン等のRD0PX(式中、RD0は水素原子又は炭素原子数1以上30以下の有機基であり、該有機基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジクロリド、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジクロリド、ベンジルホスホン酸ジエチル等のRD0POX(式中、RD0は水素原子又は炭素原子数1以上30以下の有機基であり、該有機基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。)で表されるリン化合物;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(m-トリル)ホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,4-ビスジフェニルホスフィノブタン等の有機リン化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリアミル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリシクロペンチル、ホウ酸トリシクロヘキシル、ホウ酸トリアリル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸エチルジメチル等のBX(式中、Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。)で表されるホウ素化合物;酸化ホウ素(B);フェニルボロン酸、ジイソプロポキシ(メチル)ボラン、メチルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸等のRD0BX(式中、RD0は水素原子又は炭素原子数1以上30以下の有機基であり、該有機基中の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。Xはハロゲン原子、水酸基、又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基である。)で表されるホウ素化合物;トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムジシアナミド等の有機リン化合物の複合体;三フッ化ホウ素等のルイス酸の有機アミン錯体(有機アミンとしては例えばピペリジン);アザビシクロウンデセン、ジアザビシクロウンデセントルエンスルホン酸塩、又はジアザビシクロウンデセンオクチル酸塩等のアミジン類;が挙げられる。
上記のRD0としての有機基は、炭素原子含有基であり、1以上の炭素原子、並びにH、O、S、Se、N、B、P、Si、及びハロゲン原子からなる群より選択される1以上の原子からなる基がより好ましい。炭素原子含有基の炭素原子数は特に限定されず、1以上50以下が好ましく、1以上20以下がより好ましい。
【0232】
また、基材成分(Cb)として上記ポリシランを用いる場合、上記硬化剤(D4)に加えて又は単独で、光又は熱により塩基成分を発生する硬化剤を用いることが好ましい。
【0233】
(熱により塩基成分を発生する硬化剤)
熱により塩基成分を発生する硬化剤としては、従来から熱塩基発生剤として使用されている化合物を特に限定なく用いることができる。
例えば、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンを、熱により塩基成分を発生する効果剤として用いることができる。なお、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンは光の作用によっても塩基を発生させる。
【0234】
また、加熱によりイミダゾール化合物を発生させる熱イミダゾール発生剤も、硬化剤として好ましく使用される。かかる熱イミダゾール発生剤としては、前述の通り、特開2016-145308号公報や特開2017-025226号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0235】
熱イミダゾール発生剤として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
【化32】
【0236】
(オキシムエステル化合物)
オキシムエステル化合物は、光の作用により分解して塩基を発生する。オキシムエステル化合物の好適な具体例としては、以下の化合物1~化合物41が挙げられる。
【化33】
【0237】
【化34】
【0238】
波長変換膜形成用組成物中の硬化剤(D4)は、異なる分類又は種類の硬化剤を2種以上含んでいてもよい。
波長変換膜形成用組成物中の、硬化剤(D4)の含有量は、典型的には、波長変換膜形成用組成物の固形分の質量に対して、0.01質量%以上40質量%以下が好ましく、0.1質量%以上20質量%以下がより好ましく、1質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0239】
波長変換膜は、以上説明した成分の他、本発明の目的を阻害しない範囲で種々の成分を含んでいてもよい。これらの任意成分については、波長変換膜形成用組成物について後述する。
【0240】
以上説明した波長変換膜は、光線透過率について前述の所定の要件を満たすことにより、高いOD値を示す。
このため、以上説明した波長変換膜を種々の画像表示パネル及び画像表示装置に適用する場合、高輝度且つ鮮明な画像の表示が容易である。
【0241】
≪波長変換膜形成用組成物≫
以下、上記の波長変換膜の形成用いられる波長変換膜形成用組成物について説明する。
【0242】
前述の波長変換膜を形成し得る波長変換膜形成用組成物の第1の例としては、
量子ドットの一次粒子と、2以上の量子ドットの一次粒子からなる量子ドットクラスターとを含む波長変換膜形成用組成物が挙げられる。
上記の波長変換膜形成用組成物は、量子ドット(A)の一次粒子、及び量子ドット(A)のクラスター以外に、量子ドット(A)のクラスターのリガンド(上記式(1)で表される化合物)、前述の光散乱微粒子(B)、基材(Ca)、基材成分(Cb)、硬化剤(D)、後述する液状の有機化合物、及びその他の成分からなる群より選択される1種以上の成分を適宜含み得る。
【0243】
量子ドットクラスターの表面にはリガンドが結合しているのが好ましい。リガンドについては、波長変換膜について前述した通りである。
【0244】
<液状の有機化合物>
波長変換膜形成用組成物は、波長変換膜中での量子ドットクラスターの安定性の観点から、液状の有機化合物を含んでいてもよい。
ここで、液状の有機化合物とは、大気圧下、20℃においてそのものが液状であるか、波長変換膜形成用組成物において、溶媒(S)に溶解し得る有機化合物である。
【0245】
波長変換膜形成用組成物が、前述の液状の有機化合物を含む場合、液状の有機化合物のSP値が、17MPa0.5以上22MPa0.5以下であることによって、量子ドットクラスターのクラスター性を維持したまま、波長変換膜形成用組成物を調製することができる。特に量子ドットクラスターが上記式(1)で表される化合物をリガンドとして備える場合に、液状の有機化合物のSP値が上記範囲内であることで、上記式(1)の置換基Rとの相互作用のバランスが良好になると考えられるため、(単体の量子ドット(A)に分解されて分散することなく)適切なサイズ(100nm~700nmであり、好ましくは200nm~600nm)のクラスター状態のまま系中に分散させることができる。これにより、QYやOD値のコントラストが良好になる。
【0246】
液状の有機化合物のSP値は、17.5MPa0.5以上であっても、18MPa0.5以上であっても、19MPa0.5以上であってもよい。液状の有機化合物のSP値は、21.5MPa0.5以下であっても、21MPa0.5以下であっても、20MPa0.5以下であってもよい。
【0247】
波長変換膜形成用組成物が溶媒(S)を含む場合、溶媒(S)は、17MPa0.5以上22MPa0.5以下のSP値を有する液状の有機化合物から選択されるのが好ましい。
【0248】
上記の範囲内のSP値を有する液状の有機化合物の好適な具体例を以下に記す。下記の化合物群において、各化合物の直後に記載される数字はSP値である。
有機化合物の好適な具体例としては、
ビシクロヘキシル(17.00)、1,2-プロパンジエン(17.01)、シクロペンテン(17.21)、シクロペンタジエン(17.22)、ジメチルアセチレン(17.24)、フェンチェン(17.25)、シクロヘプタン(17.26)、2-ピネン(DL)(17.28)、シクロプロパン(17.30)、シクロヘキセン(17.34)、3-n-ブチルトルエン(17.43)、4-n-ブチルトルエン(17.43)、n-ブチルベンゼン(17.44)、シクロプロペン(17.48)、cis-デカヒドロナフタレン(17.60)、2-n-ブチルトルエン(17.63)、1,2-ジエチルベンゼン(17.73)、ジペンテン(DL-リモネン)(17.82)、エチルベンゼン(17.87)、ビニルアセチレン(17.97)、trans-デカヒドロナフタレン(18.00)、高沸点ナフサ(18.00)、p-ジエチルベンゼン(18.01)、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)(18.02)、1,2,4-トリメチルベンゼン(18.06)、メチルアセチレン(18.09)、p-キシレン(18.10)、トルエン(18.16)、イソプロピルベンゼン(クメン)(18.18)、ジフェニルアセチレン(18.39)、ベンゼン(18.51)、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン(18.61)、シクロヘキシルベンゼン(18.73)、α-メチルスチレン(18.81)、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン(18.81)、2-ビニルトルエン(19.01)、スチレン(19.07)、アセチレン(19.15)、ヘキサメチルベンゼン(19.27)、フェニルアセチレン(19.42)、ジフェニルメタン(19.55)、ビフェニル(19.83)、p-ジビニルベンゼン(19.90)、テトラヒドロナフタレン(19.91)、ナフタレン(20.19)、1-メチルナフタレン(20.27)、インデン(20.92)、及びフルオレン(21.44)等の炭化水素類;
2-クロロプロペン(17.03)、ジクロロモノフルオロメタン(17.08)、エチルクロライド(17.09)、クロロプレン(17.11)、イソプロピルクロライド(17.12)、1-クロロブタン(17.22)、3-クロロ-2-メチルプロペン(17.26)、1-クロロヘキサン(17.34)、1,1-ジクロロエチレン(17.37)、塩化ビニル(17.44)、1,1,1-トリクロロエタン(17.46)、2-クロロ-2-メチルプロパン(17.47)、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン(17.48)、1-クロロペンタン(17.53)、2-クロロブタン(17.65)、1,1,1-トリフルオロエタン(17.70)、1,1-ジフルオロエタン(17.80)、2-ブロモプロペン(17.87)、1-クロロ-1,3-ブタジエン(17.88)、1-クロロ-1-フルオロエチレン(17.88)、プロピルクロライド(17.91)、ブロモエチレン(17.93)、1,2-ジブロモエチレン(17.94)、トリフルオロメタン(17.96)、1-クロロ-2-ブテン(18.05)、エチルフルオライド(18.07)、1-クロロ-2-メチルプロペン(18.09)、4-ブロモ-1-ブテン(18.12)、2-ブロモプロパン(18.20)、cic-1-ブロモプロペン(18.21)、2,3-ジクロロプロペン(18.23)、1,1-ジクロロプロパン(18.23)、アリルクロライド(18.24)、シクロヘキシルクロライド(18.26)、1,1-ジブロモエチレン(18.29)、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(18.31)、、ロプロペン(18.40)、3-クロロプロピン(18.41)、2-ヨード-1,3-ブタジエン(18.45)、1,1-ジクロロエタン(18.50)、ブロモクロロメタン(18.55)、2-ブロモブタン(18.56)、1-クロロ-2-ブロモエチレン(18.57)、ペンタクロロエタン(18.63)、メチルクロライド(18.64)、エチルブロマイド(18.66)、ブロモプレン(18.67)、アリルブロマイド(18.70)、ヘキサクロロエタン(18.71)、trans-ジクロロエチレン(18.72)、4-ブロモ-1,2-ブタジエン(18.80)、1,3-ジクロロ-2-ブテン(18.81)、1-ブロモプロパン(18.83)、1,2-ジクロロプロパン(18.92)、クロロホルム(18.95)、1,1,1,2-テトラクロロエタン(19.00)、1,1,2-トリクロロエチレン(19.02)、cis-1,2-ジクロロエチレン(19.06)、クロロシクロプロパン(19.14)、テトラクロロエチレン(19.17)、フルオロベンゼン(19.20)、cis-1,2-ジクロロプロペン(19.23)、メチルブロマイド(19.32)、ブロモアセチレン(19.39)、1,1,2,2-テトラクロロプロパン(19.40)、1,4-ジクロロ-2-ブテン(19.46)、4-ヨード-1,2-ブタジエン(19.52)、フルオロメタン(19.55)、p-クロロスチレン(19.58)、クロロベンゼン(19.58)、トリフルオロメチルベンゼン(19.59)、4-クロロ-1,2-ブタジエン(19.61)、1-クロロ-2-エチルベンゼン(19.65)、アリルヨージド(19.67)、o-クロロスチレン(19.67)、1,5-ジクロロペンタン(19.67)、1,2,3-トリクロロプロパン(19.73)、o-クロロトルエン(19.76)、エチルヨージド(19.78)、ジクロロメタン(19.82)、メチルヨージド(19.84)、エチレンジクロライド(19.89)、(トリクロロメチル)ベンゼン(19.92)、3-ブロモプロピン(19.95)、1,3-ジクロロプロパン(20.00)、ブロモトリクロロメタン(20.01)、m-ジクロロベンゼン(20.05)、1,4-ジクロロブタン(20.05)、1,1,2-トリクロロエタン(20.14)、o-ジフルオロベンゼン(20.15)、1,1,2,2-テトラクロロエタン(20.19)、ビニルヨージド(20.19)、p-クロロトルエン(20.25)、ベンジルクロライド(20.26)、1,2-ジクロロ-1,3-ブタジエン(20.28)、トリクロロビフェニル(20.34)、o-ブロモトルエン(20.37)、ブロモベンゼン(20.39)、ヘキサクロロベンゼン(20.41)、2-クロロエチルベンゼン(20.42)、o-ジクロロベンゼン(20.47)、(ジクロロメチル)ベンゼン(塩化ベンザル)(20.60)、p-ジクロロベンゼン(20.66)、3,4-ジクロロ-α,α,α-トリフルオロトルエン(20.68)、2,5-ジクロロ-α,α,α-トリフルオロトルエン(20.68)、o-ブロモスチレン(20.87)、p-ブロモトルエン(20.87)、1,2,4-トリクロロベンゼン(20.88)、1-クロロナフタレン(21.23)、1-ブロモナフタレン(21.23)、ジブロモメタン(21.24)、α,α,α,4-テトラクロロトルエン(21.32)、1,2-ジブロモエタン(21.33)、o-クロロフルオロベンゼン(21.36)、ヨードベンゼン(21.55)、ペンタクロロシクロプロパン(21.59)、1,3-ジクロロ-2-フルオロベンゼン(21.60)、ブロモホルム(21.77)、及び1,2,3-トリクロロプロパン(21.90)等のハロゲン化炭化水素;
メチルビニルエーテル(17.02)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(17.06)、エチレングリコールブチルメチルエーテル(17.07)、アリルイソプロピルエーテル(17.09)、ビニルアリルエーテル(17.10)、エチレングリコールジエチルエーテル(17.13)、エチレングリコールジ-tert-ブチルエーテル(17.32)、1,3-ジメトキシブタン(17.34)、ジメチルエーテル(17.34)、ジメトキシメタン(17.38)、1,2-ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)(17.58)、1,8-シネオール(17.65)、1-エトキシ-2-プロパノール(17.69)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(17.77)、シクロペンチルメチルエーテル(17.77)、パラアルデヒド(17.80)、ビニルブチルカルビトール(17.80)、フラン(17.90)、メチル-1-プロピニルエーテル(17.92)、1,1,3,3-テトラメトキシプロパン(17.93)、エチル-1-プロピニルエーテル(17.97)、ジ-(2-メトキシエチル)エーテル(18.05)、エチレングリコールメチルtert-ブチルエーテル(18.09)、2-メチルテトラヒドロフラン(18.14)、ビニルエチルカルビトール(18.23)、エチルエチニルエーテル(18.29)、トリエチレングリコールモノオレイルエーテル(18.33)、1-メトキシ-1,3-ブタジエン(18.39)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(18.41)、ビニル(2-メトキシエチル)エーテル(18.55)、ビニル(2-クロロエチル)エーテル(18.55)、テトラヒドロピラン(18.56)、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル(18.60)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(18.63)、ジイソブチルカルビノール(18.66)、メントフラン(18.66)、2-メチル-1,3-ジオキソラン(18.87)、1-クロロビニルエチルエーテル(18.89)、エチルメチルエーテル(18.91)、ジエチレングリコールメチル-tert-ブチルエーテル(18.97)、2-メチルフラン(19.02)、ベンジルエチルエーテル(19.17)、ジヒドロピラン(19.21)、2,5-ジエトキシテトラヒドロフラン(19.23)、ジエチレングリコールジビニルエーテル(19.28)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(19.30)、フェネトール(エチルフェニルエーテル)(19.36)、2-メトキシテトラヒドロピラン(19.38)、テトラヒドロフラン(19.46)、4-メチルモルホリン(19.54)、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(19.57)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(19.58)、アニソール(19.59)、ブトキシエトキシプロパノール(19.66)、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(19.70)、プロピレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル(19.70)、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(19.72)、3,4-エポキシ-1-ブテン(19.74)、1,4-ジオキサン(19.76)、1,2-エポキシ-2-プロペン(19.78)、ジエチレングリコールヘキシルエーテル(19.80)、3-ブトキシブタノール(19.89)、trans-アネトール(19.92)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(19.95)、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル(19.96)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(19.97)、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン(20.03)、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(20.04)、ジフェニルエーテル(20.10)、ブロモメチルメチルエーテル(20.17)、2,3-ベンゾフラン(20.20)、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル(20.27)、ジメチルイソソルバイド(20.41)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(20.43)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(20.44)、ビス-(m-フェノキシフェニル)エーテル(20.49)、ビス(クロロメチル)エーテル(20.51)、エピクロロヒドリン(20.54)、ジベンジルエーテル(20.56)、1-クロロ-4-エトキシベンゼン(20.77)、1,2-ジクロロビニルエチルエーテル(20.78)、エチレングリコールモノブチルエーテル(20.82)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(20.87)、1,2-メチレンジオキシベンゼン(20.99)、2-メトキシ-1,3-ジオキソラン(21.14)、ジ(2-クロロエトキシ)メタン(21.14)、p-フルオロアニソール(21.16)、3-メトキシブタノール(21.17)、ノニルフェノキシエタノール(21.30)、1-クロロ-2-エトキシベンゼン(21.30)、ジ(2-クロロイソプロピル)エーテル(21.31)、1,3-ジオキソラン(21.39)、3-メトキシ-3-メチルブタノール(21.50)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(21.52)、ジ(2-クロロエチル)エーテル(21.61)、1-ブロモ-4-エトキシベンゼン(21.62)、モルホリン(21.66)、1,2-ジメトキシベンゼン(21.83)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(21.83)、及びジエチレングリコールモノメチルエーテル(21.96)等のエーテル化合物;
イソプロピルパルミテート(17.07)、イソアミルアセテート(17.11)、ヘキシルアセテート(17.11)、sec-ブチルアセテート(17.22)、エチルブチレート(17.22)、ブチルオレエート(17.23)、メチルオレート(17.24)、アミルアセテート(17.26)、ブチル-6-メチル-3-シクロヘキセンカルボキシレート(17.26)、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニルエステル(17.29)、n-ブチルメタクリレート(17.29)、エチルプロピオネート(17.36)、n-ブチルアセテート(17.41)、イソブチルアクリレート(17.43)、アリルメタクリレート(17.44)、n-プロピルプロピオネート(17.44)、イソアミルプロピオネート(17.46)、n-ブチルアクリレート(17.49)、ジイソノニルアジペート(17.50)、ビニルブチレート(17.50)、ヘキシレングリコールジアセテート(17.50)、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート(17.54)、ジトリデシルフタレート(17.56)、ジオクチルアジペート(17.58)、n-ペンチルプロピオネート(17.58)、イソプロピルアセテート(17.59)、n-プロピルアセテート(17.62)、n-ブチルプロピオネート(17.65)、トリイソノニルトリメリレート(17.69)、ベンジルメタクリレート(17.77)、ジブチルセバケート(17.77)、3-メトキシブチルアセテート(17.79)、トリイソオクチルトリメリレート(17.83)、ジイソデシルフタレート(17.91)、エチルアクリレート(17.91)、グリセロールトリブチレート(17.91)、メチルメタクリレート(17.92)、ジイソブチルアジペート(17.99)、イソブチルホルメート(18.09)、ジイソノニルフタレート(18.10)、L-メンチルアセテート(18.12)、ジメチルセバケート(18.13)、ビニルプロピオネート(18.15)、エチルアセテート(18.15)、アリルアセテート(18.19)、ジブチルフマレート(18.24)、プロピルメタクリレート(18.24)、ジエチルヘキシルフタレート(18.28)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(18.35)、トリ-n-ブチルアセチルシトレート(18.44)、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート(18.44)、メチルプロピオネート(18.49)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(18.50)、ビニルアセテート(18.51)、ジイソヘプチルフタレート(18.59)、1-アセトキシ-1,3-ブタジエン(18.64)、2-クロロエチルエチルエーテル(18.69)、メチルアセテート(18.70)、エトキシエチルプロピオネート(18.73)、ジベンジルセバケート(18.76)、アリルホルメート(18.80)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(18.81)、ジ(2-エチルヘキシル)アゼラート(18.84)、エチルメタクリレート(18.91)、ビニルクロトネート(18.94)、ジヘキシルフタレート(18.97)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(19.01)、ジブチルマレエート(19.01)、プロパルギルアセテート(19.02)、アセチルトリエチルシトレート(19.02)、n-ブチルアセトアセテート(19.04)、ジエチルアジペート(19.07)、プロピルホルメート(19.10)、エチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート(19.11)、メチルアクリレート(19.17)、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート(19.19)、グリシジルメタクリレート(19.25)、ビニルホルメート(19.25)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(19.26)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(19.32)、ブチルホルメート(19.32)、アリルアセトアセテート(19.35)、二塩基酸エステル(19.37)、グリセロールトリアセテート(19.37)、メクロフェノキサート(19.38)、ジエチルグルタレート(19.38)、ジメチル-2-メチルグルタレート(19.40)、α-クロロメチルアクリレート(19.45)、エチレングリコールジアセテート(19.51)、エチルホルメート(19.53)、1,4-ブタンジオールジアクリレート(19.56)、モノ-2-エチルヘキシルフタレート(19.60)、ジメチルアジペート(19.60)、ジエチルスクシネート(19.61)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(19.68)、ジエチルマロネート(19.68)、ジメチルグルタレート(19.68)、トリ-n-ブチルシトレート(19.80)、エチルアセトアセテート(19.86)、エチルベンゾエート(19.87)、ブチルラクテート(19.90)、ジメチルスクシネート(19.90)、ブチルベンゾエート(19.91)、ベンジルアセテート(20.08)、ジエチルオキサレート(20.10)、ジブチルフタレート(20.19)、メチルホルメート(20.22)、2-クロロアリリデン-3,3-ジアセテート(20.24)、エチルシアノアセテート(20.25)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(20.44)、メチル-p-メチルベンゾエート(20.44)、ひまし油(20.44)、エチルシアノアクリレート(20.45)、メチルアセトアセテート(20.55)、ジエチルフタレート(20.55)、エチルシンナメート(20.56)、メチルクロロホルメート(20.69)、ジメチルマレエート(20.75)、トリエチルシトレート(20.98)、メチルフラン-2-カルボキシレート(21.08)、メチルベンゾエート(21.13)、2-クロロエチルアセテート(21.18)、ベンジルベンゾエート(21.28)、エチルクロロホルメート(21.31)、フェニルアセテート(21.45)、エチルラクテート(21.68)、及びn-ブチルサリチレート(21.92)等のエステル化合物;
エチルアミルケトン(17.31)、エチルブチルケトン(17.44)、4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン(ペントキソン)(17.46)、メチルイソアミルケトン(17.47)、ジメチルケトン(17.57)、メチル-n-アミルケトン(17.66)、ジアセチル(17.85)、ジエチルケトン(18.15)、ジプロピルケトン(18.20)、ジブチルケトン(18.29)、メチルn-プロピルケトン(18.33)、メシチルオキサイド(18.60)、ヘキサクロロアセトン(18.79)、メチルエチルケトン(19.05)、シクロデカノン(19.05)、L-メントン(19.34)、イソホロン(19.44)、1,1-ジクロロアセトン(19.48)、2-メチルシクロヘキサノン(19.82)、3-メチルシクロヘキサノン(19.87)、アセトン(19.94)、エチルビニルケトン(19.94)、アセチルアセトン(19.94)、シクロオクタノン(20.04)、4-(トリフルオロメチル)アセトフェノン(20.07)、クロロアセトン(20.12)、シクロヘキサノン(20.33)、プレゴン(20.39)、メチルイソプロペニルケトン(20.48)、メチルビニルケトン(20.61)、メチル-1-プロペニルケトン(20.71)、シクロヘプタノン(20.77)、シクロプロピルメチルケトン(20.82)、ジアセトンアルコール(20.82)、4-フルオロプロピオフェノン(21.14)、d-カンファー(21.21)、アセトフェノン(21.22)、p-クロロアセトフェノン(21.40)、ベンゾフェノン(21.40)、及びペンタフルオロベンゾフェノン(21.62)等のケトン類;
メチルエチルケトキシム(17.35)、及びアセトキシム(19.95)等のオキシム類;
ジメチルケテン(17.57)、及びケテン(18.00)等のケテン類;
オレイン酸(17.39)、ステアリン酸(17.52)、カプリル酸(オクタン酸)18.02)、ペンタン酸(18.65)、イソブタン酸(19.64)、プロピオン酸(19.95)、イソ吉草酸(20.01)、メタクリル酸(20.04)、ブタン酸(20.34)、ヘキサン酸(20.39)、アクリル酸(20.41)、4-ペンテン酸(20.70)、酢酸(21.37)、cis-2-メチルアクリル酸(21.52)、トリフルオロ酢酸(21.62)、及びセバシン酸(21.90)等のカルボン酸類;
イソバレルアルデヒド(18.20)、ヘキサナール(18.66)、4-ペンテナール(18.76)、2-エチルクロトンアルデヒド(18.80)、ペンタナール(19.20)、メタクリルアルデヒド(19.53)、ブチルアルデヒド(19.59)、3-エトキシプロピオンアルデヒド(19.70)、プロピオンアルデヒド(20.12)、トリクロロアセトアルデヒド(クロラール)(20.21)、アクロレイン(20.35)、ジクロロアセトアルデヒド(20.44)、アセトアルデヒド(20.85)、2-クロロ-2-ブテナール(21.40)、ベンズアルデヒド(21.43)、2-メチル-2-ブテナール(21.80)、4-クロロベンズアルデヒド(21.89)、及びプロパルギルアルデヒド(21.90)等のアルデヒド類;
メタノールクラスター(18.42)、オレイルアルコール(18.52)、ヘキサフルオロヘキサノール(18.58)、セチルアルコール(18.66)、トリデシルアルコール(18.79)、ドデカノール(18.93)、L-メントール(18.95)、2-デカノール(19.10)、ノニルフェノール(19.33)、1-デカノール(19.71)、4-メチル-2-ペンタノール(19.98)、1-ノナノール(20.00)、2-エチルヘキサノール(20.07)、2-オクタノール(20.11)、1-オクタノール(20.16)、2-ヘプタノール(20.31)、3-ヘプタノール(20.47)、1-ヘプタノール(20.52)、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール(20.57)、イソオクタノール(20.67)、1-ヘキサノール(21.04)、2-メチル-2-ブタノール(21.17)、3-メチル-2-ブタノール(21.21)、2-エチル-1-ブタノール(21.22)、1-メチルシクロヘキサノール(21.27)、イソアミルアルコール(21.30)、2-メチル-1-ペンタノール(21.35)、2-ペンタノール(21.48)、2,2-ジメチル-1-プロパノール(21.63)、tert-ブチルアルコール(21.75)、及び1-ペンタノール(21.93)等のアルコール類又はフェノール類;
2-エチルへキシルアミン(17.36)、ジアリルアミン(17.56)、N-メチルピロリジン(18.29)、n-ブチルアミン(18.62)、シクロヘキシルアミン(18.65)、ヒドラジン(18.70)、プロピルアミン(18.81)、ピペラジン(18.93)、エチルアミン(19.26)、N-クロロジメチルアミン(19.47)、ジメチルアミン(19.56)、アリルアミン(19.62)、ピペリジン(19.67)、1,1-ジメチルヒドラジン(19.75)、N,N-ジクロロメチルアミン(19.81)、N,N-ジクロロエチルアミン(19.98)、ピロリジン(20.43)、2-(ジエチルアミノ)エタノール(20.59)、プロピレンイミン(20.73)、ビニルアミン(20.92)、ニコチン(21.10)、ジフェニルアミン(21.11)、ベンジルアミン(21.69)、2,4-ジメチルアニリン(21.71)、及びN-メチルアニリン(21.84)等のアミン類;
トリ-n-ブチルボレート(17.42)等の含ホウ素化合物;
ジエチルスルフィド(17.20)、ビニルブチルスルフィド(17.61)、1-ブタンチオール(17.72)、カルボニルスルフィド(17.79)、クロロメチルスルフィド(17.90)、エチルメチルスルフィド(2-チアブタン)(17.94)、ジビニルスルフィド(18.02)、1-プロパンチオール(18.04)、メチルビニルスルフィド(18.14)、ビニル(4-エトキシブチル)スルフィド(18.19)、エタンチオール(18.42)、ビニルエチルスルフィド(18.50)、ビニル(2-エトキシエチル)スルフィド(18.81)、2-プロパンチオール(18.81)、ジメチルスルフィド(18.84)、2-クロロエチルエチルスルフィド(18.92)、塩化スルフリル(19.02)、ジエチルジスルフィド(19.14)、アリルメルカプタン(19.23)、メチルメルカプタン(20.22)、ジメチルジスルフィド(20.32)、チオ酢酸(20.32)、ジイソブチルスルホキシド(20.33)、ジ-n-ブチルスルホキシド(20.41)、二酸化硫黄(20.50)、チオフェン(20.59)、テトラヒドロチオフェン(20.66)、メチルフェニルスルフィド(20.72)、N,N,N’,N‘-テトラメチルチオウレア(21.11)、エチルチオシアネート(21.12)、γ-チオブチロラクトン(21.14)、1,2-エタンジチオール(21.16)、2-ブロモチオフェン(21.27)、二硫化二水素(21.29)、硫化水素(21.46)、テトラヒドロチアピラン(21.47)、1,4-チオキサン(21.54)、エタン-1,2-ジオールビス(メタンスルホネート)(21.55)、2-クロロチオフェン(21.70)、ジイソプロピルスルホキシド(21.82)、及びチオシアン酸(21.91)等の含硫黄化合物;
トリオクチルフォスフェート(17.75)、トリ-n-ブチルフォスフェート(18.00)、ジイソプロピルメチルホスホネート(20.04)、及びトリメチルフォスフェート(21.47)等の含リン化合物;
2-メチリデンプロパンジニトリル(18.13)、トリクロロアセトニトリル(19.00)、シアノゲン(ジシアン)(19.16)、メタクリロニトリル(19.21)、バレロニトリル(19.45)、ブチロニトリル(20.34)、アリルアセトニトリル(20.40)、2-メチル-3-ブテンニトリル(20.56)、1-シアノ-1,3-ブタジエン(20.65)、ジクロロアセトニトリル(20.79)、4-クロロベンゾニトリル(21.47)、アクリロニトリル(21.59)、1-フルオロアクリロニトリル(21.64)、及びプロピオニトリル(21.65)等のシアノ化合物;
N,N-ジブチルホルムアミド(18.92)、ビニルピロリドン(19.75)、N-ベンジルピロリドン(20.00)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン(20.49)、N,N-ジメチルブチルアミド(20.88)、N-n-ブチルピロリドン(20.93)、N,N-ジエチルアセトアミド(21.28)、N-アセチルカプロラクタム(21.35)、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(21.61)、及びN,N-ジエチルホルムアミド(21.99)等のアミド類又は尿素類;
トリクロロメチルシラン(18.11)、パインオイル(18.67)、次亜塩素酸エチル(19.04)、メチルイソシアネート(19.54)、エチルイソシアネート(19.68)、n-プロピルニトラート(19.85)、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(20.00)、ジメチルカーボネート(20.21)、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン(20.28)、4-ビニルピリジン(20.63)、アクリジン(20.95)、2,5-ジメチルピロール(20.95)、シアン化塩素(21.30)、アリルイソシアニド(21.39)、硝酸メチル(21.65)、2,4-ジイソシアネート-1-メチルベンゼン(21.73)、及びピリジン(21.75)等のその他の化合物;が挙げられる。
【0249】
これらの中でも、炭化水素類、エステル化合物、ケトン類、アルコール類若しくはフェノール類、含硫黄化合物、又は尿素類が好ましい。
さらに、波長変換膜形成用組成物が基材(Ca)及び/又は基材成分(Cb)を含む場合は、エステル化合物、ケトン類、含硫黄化合物、又は尿素類が相溶性等の点で好ましい。
【0250】
波長変換膜形成用組成物において、液状の有機化合物の含有量は、インク用途等の量子ドットクラスター分散液として用いる場合は、波長変換膜形成用組成物全体に対して、例えば、10質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、40質量%以上80質量%以下がさらに好ましい。この場合、量子ドットクラスターと、(クラスター化されていない)量子ドットと、液状の有機化合物との総和は、波長変換膜形成用組成物全体に対して、例えば、70質量%以上であり、好ましくは80質量%であり、より好ましくは90質量%であり、100質量%であってもよい。
感光性又は硬化性の成分を組み合わせて用いる場合は、液状の有機化合物の含有量は、波長変換膜形成用組成物全体に対して、例えば、20質量%以上80質量%以下が好ましく、30質量%以上70質量%以下がより好ましく、40質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0251】
<その他の成分>
波長変換膜形成用組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記の種々の成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、密着増強剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、粘度調整剤、樹脂、ゴム粒子、及び着色剤等が挙げられる。
また、波長変換膜形成用組成物がゴム粒子を含む場合、形成される波長変換膜に弾性が付与され、波長変換膜の脆さを解消しやすい。
【0252】
また、波長変換膜形成用組成物は、量子ドット(A)の分散促進や、分散安定化の点からは、イオン液体(I)を含むのが好ましい。波長変換膜形成用組成物がイオン液体(I)を含む場合、組成物は、イオン液体(I)とともに、前述の有機溶媒(S2a)を含むのが好ましい。波長変換膜形成用組成物が、イオン液体(I)と、有機溶媒(S2a)とを組み合わせて含むことにより、量子ドット(A)の分散促進や、分散安定化の効果がより高められやすい。
【0253】
イオン液体(I)は、有機合成分野や、電池用の電解質等に使用されれているイオン液体を特に制限なく用いることができる。イオン液体(I)は、典型的には、140℃以下の温度領域で融解しうる塩であり、140℃以下で液体となる安定な塩であることが好ましい。
【0254】
イオン液体(I)の融点は、所望する効果をより確実に達成する観点、及び、イオン性液体(I)や波長変換膜形成用組成物の取り扱い性の観点等から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
【0255】
イオン液体(I)は、有機カチオンと、アニオンとから構成されることが好ましい。
イオン液体(I)は、窒素含有有機カチオン、リン含有有機カチオン、又は硫黄含有有機カチオンと、対アニオンとからなるのが好ましく、窒素含有有機カチオン、又はリン含有有機カチオンと、対アニオンとからなるのがより好ましい。
【0256】
イオン液体(I)を構成する有機カチオンとしては、溶媒(S)との親和性が良好であること等から、アルキル鎖四級アンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、グアニジニウムカチオン、モルホリニウムカチオン、ホスホニウムカチオン及びスルホニウムカチオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルキル鎖四級アンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、モルホリニウムカチオン、又はホスホニウムカチオンであることがより好ましく、本発明の効果の点で、ピロリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、又はホスホニウムカチオンであることがさらに好ましい。
【0257】
上記アルキル鎖四級アンモニウムカチオンの具体例としては下記式(L1)で表される四級アンモニウムカチオンが挙げられる。具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、オクチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、メチルトリオクチルアンモニウムカチオン等が挙げられる。
上記ピペリジニウムカチオンの具体例としては下記式(L2)で表されるピペリジニウムカチオンが挙げられる。具体的には、例えば、1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘキシルピペリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘプチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジプロピルピペリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1,1-ジブチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。
上記ピリミジニウムカチオンの具体例としては、例えば、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0258】
上記ピロリジニウムカチオンの具体例としては下記式(L3)で表されるピロリジニウムカチオンが挙げられ、より具体的には、例えば、1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘキシルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘキシルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-ヘプチルピロリジニウムカチオン、1,1-ジプロピルピロリジニウムカチオン、1-プロピル-1-ブチルピロリジニウムカチオン、1,1-ジブチルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
上記イミダゾリウムカチオンの具体例としては下記式(L5)で表されるイミダゾリウムカチオンが挙げられ、より具体的には、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
上記ピリジニウムカチオンの具体例としては下記式(L6)で表されるピリジニウムカチオンが挙げられ、より具体的には、例えば、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-ヘキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-ヘキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0259】
上記ピラゾニウムカチオンの具体例としては、例えば、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0260】
上記ホスホニウムカチオンの具体例としては下記式(L4)で表されるホスホニウムカチオンが挙げられる。具体的には、テトラブチルホスホニウムカチオン、トリブチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルヘキシルホスホニウムカチオン等のテトラアルキルホスホニウムカチオンや、トリエチル(メトキシメチル)ホスホニウムカチオン等が挙げられる。
上記スルホニウムカチオンの具体例としては、トリエチルスルホニウムカチオン、ジメチルエチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、エチルメチルプロピルスルホニウムカチオン、ブチルジメチルスルホニウムカチオン、1‐メチルテトラヒドロチオフェニウムオン、1‐エチルテトラヒドロチオフェニウムカチオン、1-プロピルテトラヒドロチオフェニウムカチオン、1-ブチルテトラヒドロチオフェニウムカチオン、又は1-メチル-[1,4]‐チオキソニウムカチオン等が挙げられる。中でも、上記スルホニウムカチオンとしては、テトラヒドロチオフェニウム系又はヘキサヒドロチオピリリウム系の5員環又は6員環等の環状構造を有しているスルホニウムカチオンが好ましく、環状構造中に酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0261】
【化35】
【0262】
式(L1)~(L4)中、RL1~RL4は、それぞれ独立に、炭素原子数が1以上20以下のアルキル基、又はRL7-O-(CHLn-で表わされるアルコキシアルキル基(RL7は、メチル基、又はエチル基を示し、Lnは1以上4以下の整数を表す。)である。
式(L5)中、RL1~RL4は、各々独立に、炭素原子数が1以上20以下のアルキル基、RL7-O-(CHLn-で表わされるアルコキシアルキル基(RL7は、メチル基、又はエチル基を示し、Lnは1以上4以下の整数を表す。)、又は水素原子である。
式(L6)中、RL1~RL6は、各々独立に、炭素原子数が1以上20以下のアルキル基、RL7-O-(CHLn-で表わされるアルコキシアルキル基(RL7は、メチル基、又はエチル基を示し、Lnは1以上4以下の整数を表す)、水素原子である。
【0263】
イオン液体(I)を構成するアニオンとしては、有機アニオンであっても、無機アニオンであってもよい。イオン液体(I)の溶媒(S)との親和性が良好であることから、有機アニオンが好ましい。
有機アニオンとして、カルボン酸系アニオン、N-アシルアミノ酸イオン、酸性アミノ酸アニオン、中性アミノ酸アニオン、アルキル硫酸系アニオン、含フッ素化合物系アニオン及びフェノール系アニオンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、カルボン酸系アニオン又はN-アシルアミノ酸イオンであることがより好ましい。
【0264】
上記カルボン酸系アニオンの具体例としては、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン等が挙げられ、中でも、酢酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオンが好ましく、酢酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、ギ酸イオンがより好ましい。
上記N-アシルアミノ酸イオンの具体例としては、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、アスパラギン酸イオン、グリシンイオン、N-アセチルグリシンイオン等が挙げられ、中でも、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオンが好ましく、N-アセチルグリシンイオンがより好ましい。
【0265】
上記酸性アミノ酸アニオンの具体例としては、アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等が挙げられ、上記中性アミノ酸アニオンの具体例としては、グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等が挙げられる。
上記アルキル硫酸系アニオンの具体例としては、メタンスルホン酸イオン等が挙げられ、上記含フッ素化合物系アニオンの具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン(例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン)、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等が挙げられ、上記フェノール系アニオンの具体例としては、フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等が挙げられる。
【0266】
上記無機アニオンとして、本発明の効果をより確実に達成する観点から、F、Cl、Br、I、BF 、PF 及びN(SOF) からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、BF 、PF 又はN(SOF) であることがより好ましく、BF 又はPF であることがさらに好ましい。
【0267】
イオン液体(I)は、例えば、国際公開第2014/178254号の段落0045に開示された手法等によって製造することができる。
イオン液体(I)は単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。
イオン液体(I)の含有量は、波長変換膜形成用の組成物において量子ドット(A)を分散させる効果が良好であることから、量子ドット(A)100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下が好ましく、90質量部以上400質量部以下がより好ましく、100質量部以上300質量部以下がさらに好ましい。
【0268】
≪クラスター含有量子ドットの製造方法≫
前述の量子ドットクラスターを含むクラスター含有量子ドットの製造方法は特に限定されない。
好ましい製造方法としては、量子ドットと、下記式(1):
R-SH・・・(1)
(式(1)中のRは、炭素
原子数6以上18以下の飽和脂肪族炭化水素基である。)
で表される化合物とを含む混合物を、150℃以上300℃以下の温度に加熱することと、
加熱された混合物を冷却して、量子ドットの一次粒子をクラスター化させることとを含む、方法が挙げられる。
【0269】
以下、量子ドットと、上記式(1)で表される化合物とを含む混合物を、150℃以上300℃以下の温度に加熱する工程を加熱工程とも記す。
加熱された混合物を冷却して、量子ドットの一次粒子をクラスター化させる工程を冷却工程とも記す。
【0270】
<加熱工程>
加熱工程では、量子ドットと、上記式(1)で表される化合物とを含む混合物を、150℃以上300℃以下の温度に加熱する。上記式(1)で表される化合物については、波長変換膜について前述した通りである。
上記式(1)で表される化合物は、量子ドットクラスターを製造する際に、量子ドットクラスターの表面に結合するリガンドとして作用するとともに、量子ドットを分散させる分散媒としても作用する。
上記式(1)で表される化合物の使用量は、量子ドット100質量部に対して、例えば、1質量部以上200質量部以下であり、5質量部以上120質量部以下が好ましく、10質量部以上100質量部以下がより好ましく、20質量部以上80質量部以下がさらに好ましい。
【0271】
加熱工程において、クラスターの形成を阻害しない限りにおいて、式(1)で表される化合物とともに有機溶媒を用いてもよい。
有機溶媒としては、液状の有機化合物を用いることができる。また、出発原料の量子ドットの分散媒を含んでいてもよい。当該量子ドットの分散媒の沸点は、150℃未満であるか、150℃以上であって、分散媒とともに加熱される式(1)で表される化合物の沸点より低いことが好ましい。
【0272】
混合物の調製に使用される量子ドットは、乾燥した粉体であっても、有機溶媒、及び/又は上記式(1)で表される化合物中に分散した分散液であってもよい。
入手が容易である点から、有機溶媒中に分散された分散液として市販される量子ドットを、混合物の調製に用いるのが好ましい。
【0273】
混合液は、量子ドットクラスターの形成が可能である範囲内で、種々の物質を含んでいてもよい。かかる物質としては、量子ドットを分散させるための分散剤や、例えば、ステアリン酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛等の脂肪酸又はカルボン酸の金属塩;フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛;その他亜鉛チオラート、ジアルキル亜鉛、セレン化トリアルキルホスフィン、セレノールのような、加熱中に、量子ドットの一次粒子の最外層を被覆し得る材料等が挙げられる。
【0274】
加熱前、及び加熱後の混合液における量子ドットの濃度は、例えば、10質量%以上99.5質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。
【0275】
混合液における量子ドット(A)の濃度は、加熱中に変動してもよい。例えば、有機溶媒、及び/又は上記式(1)で表される化合物を留去しながら加熱が行われてもよい。
また、混合液に対して、有機溶媒、及び/又は上記式(1)で表される化合物を添加しながら加熱が行われてもよい。
【0276】
混合液は150℃以上300℃以下、好ましくは160℃以上270℃以下、より好ましくは170℃以上250℃以下に加熱される。加熱は、式(1)で表される化合物が過度に留去されない条件で行われるのが好ましい。式(1)で表される化合物が留去されない条件での加熱としては、密閉された耐圧容器中での加熱や、式(1)で表される化合物の沸点以下での加熱や、式(1)で表される化合物を混合液中に還流しながらの加熱が挙げられる。
混合液が有機溶媒を含む場合、加熱中に有機溶媒の一部又は全部が留去されてもよい。
【0277】
加熱時間は、量子ドットクラスターを形成できる限り特に限定されない。加熱時間は、典型的には、5分以上12時間以下が好ましく、10分以上6時間以下がより好ましく、30分以上3時間以下がさらに好ましい。
【0278】
<冷却工程>
冷却工程において、加熱工程で加熱された混合液は冷却される。混合液が冷却されることにより、混合液中の一部又は全部の量子ドットの一次粒子がクラスター化する。
冷却後の混合液の温度はクラスターが生成する限り特に限定されない。冷却後の混合液の温度は、有機溶媒、及び/又は上記式(1)で表される化合物が固化しない温度であるのが好ましい。典型的には、冷却後の混合液の温度は、0℃以上60℃以下が好ましく、5℃以上50℃以下がより好ましく、10℃以上40℃以下がさらに好ましい。
【0279】
冷却方法は特に限定されない。加熱された混合液を室温の雰囲気下に置いて混合液を冷訳してもよいし、水等の冷媒との接触や、送風等により混合液を冷却してもよい。
【0280】
以上のようにして加熱された混合液を冷却して得られる、クラスター含有量子ドットは、量子ドットクラスターを含む液体として、又は当該液体から分離された粉体として、前述の波長変換膜形成用組成物の調製に使用され得る。
クラスター含有量子ドットに含まれる量子ドットクラスターは、量子ドット(A)としての機能と、前述の光散乱微粒子(B)としての機能とを兼ね備える。このため、クラスター含有量子ドットは、前述の波長変換膜の形成や、波長変換膜形成用組成物の調製に好適に用いられる。
【0281】
≪波長変換膜の形成方法≫
以上説明した波長変換膜形成用組成物からなる塗布膜を、乾燥及び/又は硬化させることにより波長変換膜が形成される。
波長変換膜形成用組成物を硬化させる場合、硬化方法は、特に限定されず、加熱であっても、露光であってもよく、加熱と露光とを組み合わせて行ってもよい。
波長変換膜は、発光表示素子用途において好適に使用される。
【0282】
波長変換膜の製造方法の典型例を以下説明する。
波長変換膜は、積層体や、発光表示素子パネル等において種々の機能層上に直接形成されてもよく、金属基板やガラス基板等の任意の材質の基板上に形成した後、基板から剥離させて使用されてもよい。
また、波長変換膜は、発光表示素子パネル等において画素を画定する遮光性の隔壁に囲まれた領域内に形成されてもよい。
【0283】
まず、任意の基板や機能層等の上に、波長変換膜形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置)、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。
また、波長変換膜形成用組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって液状組成物の塗布を行って、所望の形状にパターニングされた塗布膜を形成してもよい。
【0284】
次いで、必要に応じて、溶媒(S)等の揮発成分を除去して塗布膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されないが、例えば、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥し、その後、ホットプレートにて60℃以上120℃以下、好ましくは70℃以上100℃以下の温度にて60秒以上180秒以下の間乾燥する方法が挙げられる。
このようにして塗布膜を形成した後、塗布膜に対して露光及び/又は加熱を施す。
露光は、エキシマレーザー光等の活性エネルギー線を照射して行う。照射するエネルギー線量は、液状組成物の組成によっても異なるが、例えば30mJ/cm以上2000mJ/cm以下が好ましく、50mJ/cm以上500mJ/cm以下がより好ましい。
加熱を行う際の温度は特に限定されず、180℃以上280℃以下が好ましく、200℃以上260℃以下がより好ましく、220℃以上250℃以下が特に好ましい。加熱時間は、典型的には、1分以上60分以下が好ましく、10分以上50分以下がより好ましく、20分以上40分以下が特に好ましい。
【0285】
なお、波長変換膜形成用組成物が基材成分(Cb)としてケイ素含有樹脂を含む場合、波長変換膜を製造するために、塗布膜が焼成される。
この場合、基板の材質は、焼成に耐えられる材質であれば特に限定されない。基板の材質の好適な例としては、金属、シリコン、ガラス等の無機材料や、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等の耐熱性の材料が挙げられる。基板の厚さは特に限定されず、基板は、フィルムやシートであってもよい。
【0286】
塗布膜を備える基板は、次いで焼成される。焼成方法は特に限定されないが、典型的には電気炉等を用いて焼成が行われる。焼成温度は、典型的には300℃以上が好ましく、350℃以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、例えば、1000℃以下である。焼成雰囲気は特に限定されず、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲下、真空下、又は減圧下であってもよい。大気下であってもよいし、酸素濃度を適宜コントロールしてもよい。
【0287】
波長変換膜の膜厚は特に限定されない。波長変換膜の膜厚は、典型的には、0.1μm以上10μm以下であり、0.2μm以上5μm以下が好ましく、0.5μm以上3μm以下がより好ましい。
【0288】
以上説明した方法により形成される量子ドット(A)を含む波長変換膜は、蛍光効率に優れ、高いOD値を示すため発光表示素子用の光学フィルムとして好適に使用でき、また、発光表示素子において好適に用いられる積層体の製造に好適に使用できる。
【0289】
≪積層体≫
積層体は、波長変換膜を含む積層体である。かかる積層体は、量子ドット(A)を含有する波長変換膜のみからなる積層体であってもよく、波長変換膜と、他の機能層とからなる積層体であってもよい。
【0290】
<波長変換膜の積層体>
積層体としては、例えば、種々の基材(Ca)中に分散された量子ドット(A)を含む波長変換膜が2層以上積層されており、前述の波長変換膜形成用組成物を用いて形成された波長変換膜を含む積層体が挙げられる。
かかる積層体は、前述の波長変換膜形成用組成物を用いて形成された波長変換膜だけが積層された積層体であってもよく、前述の波長変換膜形成用組成物を用いて形成された量波長変換膜と、前述の波長変換膜形成用組成物を用いて形成された波長変換膜以外の、量子ドット(A)を含む他の膜とが積層された積層体であってもよい。
【0291】
量子ドット(A)を含有する膜は、光源からの入射光を波長変換して赤色光を生ずる量子ドットと、光源からの入射光を波長変換して緑色光を生ずる量子ドットを含むのが好ましい。
また、赤色光を生ずる量子ドットを含む膜と、緑色光を生ずる量子ドットを含む膜とを交互に積層するのも好ましい。
このような構成の積層体を発光表示素子パネルに適用することにより、波長変換によって色純度の高い緑色光と赤色光を取り出すことができるため、発光表示素子パネルを備える発光表示装置の色相の再現範囲を拡大することができる。
なお、光源としては、典型的には、青色光や白色光を利用することができる。かかる光源と、上記の積層体とを組み合わせて用いることにより、色純度の高い、赤色光、緑色光、及び青色光を取り出すことができ、良好な色相の鮮明な画像を表示することができる。
【0292】
発光表示装置としては、光源の発光を用いて画像を表示する装置であれば特に限定されず、液晶表示装置や、有機EL表示装置等が挙げられる。
【0293】
<波長変換膜と、他の機能層とを含む積層体>
量子ドット(A)を含有する膜である、前述の波長変換膜形成用組成物を用いて形成された波長変換膜は、他の機能層と積層されるのも好ましい。
波長変換膜は、光源からの入射光を波長変換して赤色光を生ずる量子ドットと、光源からの入射光を波長変換して緑色光を生ずる量子ドットを含むのが好ましい。
また、光源としては、典型的には、青色光や白色光を利用することができる。
【0294】
他の機能層としては、光線を拡散させる拡散層、波長変換膜よりも低い屈折率を有する低屈折率層、光源から入射する光の一部を反射させる反射層、光源の発する光を積層体に入射させる導光板等が挙げられる。
また、必要に応じて、積層体内に空隙が設けられてもよい。空隙は、例えば、空気の層や、窒素等の不活性ガスの層であってよい。
【0295】
拡散層としては、従来、種々の表示装置や光学装置に用いられている種々の拡散層を、特に制限なく用いることができる。典型的な例としては、表面にプリズム等の微細構造が設けられたフィルム、表面にビーズが散布又は埋没されたフィルム、及び微粒子や、光線を散乱させるように構造化された界面又は空隙等を内部に含むフィルムが挙げられる。
【0296】
低屈折率層は、前述の波長変換膜よりも低い屈折率を有するフィルムであれば特に限定されず、種々の材質からなるフィルムを用いることができる。
【0297】
反射層としては、反射性の偏光フィルム、入射光のうちの一部を反射できるように、表面にプリズム等の微細構造が設けられたフィルム、金属箔、多層光学フィルム等が挙げられる。反射層は、入射光の30%以上を反射させるのが好ましく、40%以上を反射させるのがより好ましく、50%以上を反射させるのが特に好ましい。
反射層は、波長変換膜を通過した光を反射して、反射光を再度、波長変換膜に入射させるように設けられるのが好ましい。反射層から波長変換膜に入射した光を、拡散層等により、反射層の方向へ再度反射させることにより、反射層を用いない場合よりも、波長変換膜から発せられる緑色光、及び赤色光の色純度を高めることができる。
【0298】
導光板としては、従来、種々の表示装置や光学装置に用いられている種々の導光板を、特に制限なく用いることができる。
【0299】
波長変換膜と、他の機能層とを含む積層体の好ましい層構成の典型例としては、以下の1)~8)の層構成が挙げられる。なお1)~8)の構成の積層体では、最も左に記載された層に光源が発する光線を入射させ、最も右に記載された層から波長変換膜により波長変換された光線を取り出す。
通常、積層体から取り出された光線を入射させるようにディスプレイパネルが設けられ、色準との高い赤色光、緑色光、及び青色光を利用して画像の表示が行われる。
1)拡散層/波長変換膜/低屈折率層/反射層
2)導光板/拡散層/波長変換膜/低屈折率層/反射層
3)低屈折率層/波長変換膜/空隙/反射層
4)導光板/低屈折率層/波長変換膜/空隙/反射層
5)低屈折率層/波長変換膜/低屈折率層/反射層
6)導光板/低屈折率層/波長変換膜/低屈折率層/反射層
7)反射層/低屈折率層/波長変換膜/低屈折率層/反射層
8)導光板/反射層/低屈折率層/波長変換膜/低屈折率層/反射層
【0300】
なお、以上説明した積層体において、前述の液状組成物を用いて形成された波長変換膜は、前述の方法に従って製造されるのが好ましい。
【0301】
≪発光表示素子パネル、及び発光表示装置≫
前述の液状組成物を用いて形成された波長変換膜や、前述の積層体は、種々の発光表示素子パネルに組み込まれ、光源が発する光線から色純度の高い赤色光、緑色光、及び青色光を取り出す目的で好ましく使用される。
ここでは、前述の液状組成物を用いて形成された波長変換膜や、前述の積層体の総称について「量子ドットシート」と記載する。
【0302】
発光表示素子パネルは、典型的には、光源であるバックライトと、量子ドットシートと、ディスプレイパネルとを組み合わせて含む。
量子ドットシートが導光板を備える場合、典型的には、導光板の側面に光線を入射させるように光源が設けられる。導光板の側面から入射した光線は、量子ドットシート内を通過し、ディスプレイパネルに入射する。
量子ドットシートが導光板を備えない場合、面光源から量子ドットシートの主面に光線を入射させ、量子ドットシート内を通過した光線をディスプレイパネルに入射させる。
ディスプレイパネルの種類は、量子ドットシートを通過した光線を用いて画像形成可能であれば特に限定されないが、典型的には液晶ディスプレイパネルである。
【0303】
光源が発する光線から特に色純度の高い赤色光、緑色光、及び青色光を取り出しやすいことから、量子ドットシートは、前述の積層体であるのが好ましい。
量子ドットシートが積層体である場合の、発光表示素子パネルが備える構成の好ましい組み合わせとしては、以下a)~h)の組み合わせが挙げられる。
下記a)~h)に記載の組み合わせについて、最も左に記載の構成から、記載されている順に積み上げられ、発光表示素子パネルが形成される。
a)面光源/拡散層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
b)光源付導光板/拡散層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
c)面光源/低屈折率層/量子ドットシート/空隙/反射層/ディスプレイパネル
d)光源付導光板/低屈折率層/量子ドットシート/空隙/反射層/ディスプレイパネル
e)面光源/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
f)光源付導光板/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
g)面光源/反射層/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
h)光源付導光板/反射層/低屈折率層/量子ドットシート/低屈折率層/反射層/ディスプレイパネル
【0304】
以上説明した発光表示素子パネルを用いることで、色相の再現範囲が広く、良好な色相であり鮮明な画像を表示可能な発光表示装置を製造することができる。
【実施例
【0305】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0306】
〔実施例1〕
量子ドットの濃度が25質量%の原料量子ドット分散液に、原料量子ドットと同じ重量のドデカンチオールを加えて混合液を得た。原料量子ドット分散液における分散媒はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)であった。原料量子ドットとして、一次粒子径が10nmであり、波長630nmに発光極大波長を示す、InPからなるコアが、ZnSからなるシェル層で被覆されたコアシェル型の量子ドットが使用された。その後、得られた混合液を200℃で60分加熱した。加熱により、加熱前の混合液に含まれていた、PGMEAが留去された。また黄色灯下での液体の色は透明な赤~橙色であった。
加熱後の混合液を室温雰囲気において静置し、混合液を室温まで冷却した。冷却の過程において、沈殿が生成し、量子ドットの一次粒子がクラスター化したことが観察された。このようにして、ドデカンチオール中に50質量%のクラスター含有量子ドットを含む液を得た。また、用いた1次粒子の量子ドット(原料量子ドット)のうち、クラスター化された量子ドットは25質量%であった。
【0307】
〔実施例2〕
混合液に、ドデカンチオールの質量の10質量%に相当するステアリン酸亜鉛を添加することの他は、実施例1と同様にして、ドデカンチオール中に50質量%のクラスター含有量子ドットを含む液を得た。また、用いた1次粒子の量子ドット(原料量子ドット)のうち、クラスター化された量子ドットは25質量%であった。
【0308】
〔実施例3及び実施例4〕
実施例1及び実施例2で得られた混合液について、それぞれPGMEAで溶媒置換を行い、PGMEA中に50質量%のクラスター含有量子ドットを含む不透明な液体組成物3及び4を得た。含有される量子ドットのうち、リガンドとしてのドデカンチオールを有する量子ドット(量子ドットクラスター)の割合は、液体組成物3が86質量%であり、液体組成物4が85質量%であった。
【0309】
〔調製例1〕
(量子ドット含有ネガ型組成物1の調製)
基材(Ca)としてのアルカリ可溶性樹41.3質量部と、基材成分(Cb)としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート18質量部と、硬化剤(D)としての下記構造の光重合開始剤5質量部と、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1質量部と、シリコン系界面活性剤0.1質量部と、実施例1で用いた量子ドット(固形分換算で)34.6質量部とを、PGMEA中に固形分濃度41質量%となるように溶解・分散させて量子ドット含有ネガ型組成物1(溶媒:PGMEA、固形分濃度41質量%)を得た。
同様の操作を3回実施し、同一の組成の量子ドット含有ネガ型組成物1を3つ作成した。
アルカリ可溶性樹脂としては、下記の構成単位からなる樹脂を用いた。各構成単位について、括弧の右下の値は、樹脂中の各構成単位のモル比率である。
【化36】
【0310】
【化37】
【0311】
〔実施例5及び実施例6〕
(波長変換膜形成用組成物の調製)
実施例1及び実施例2で沈殿した各量子ドットクラスターを分離精製した。得られた精製された各量子ドットクラスターを、調製例1で得られた2つのネガ型組成物1(ネガ型組成物1における溶剤を除いた組成100質量部として)にそれぞれ25.3質量部ずつ添加し、実施例1で得た量子ドットクラスターを含む波長変換膜形成用組成物1と、実施例2で得た量子ドットクラスターを含む波長変換膜形成用組成物2を得た。
【0312】
(波長変換膜のコントラスト)
得られた波長変換膜形成用組成物1及び2を、それぞれ、ガラス基板上にスピンコート法により塗布し、塗布膜を形成した。
次いで塗布膜を空気中で100℃でベークした後、露光量50mJ/cmで塗布膜を全面露光し硬化させた。
さらに、硬化膜を、窒素雰囲気下で200℃60分間ベークし、膜厚5μmの波長変換膜1及び2をそれぞれ得た。
得られた波長変換膜1及び2について、分光光度計Vista(HunterLab社製)を用いて光線透過率を測定した。波長変換膜を成膜する前のガラス基板のみの光線透過率をベースラインとし、スキャンする波長範囲は400~700nmとした。光線透過率の測定結果のグラフを図1に示す。
また、450nm波長におけるOD値(OD@450nm)と、透過光強度が最大となった吸収波長のOD値(OD@Imax)とをそれぞれ求め、2つのOD値の差分をコントラストとして表に記載した。
なお、膜厚を変えたサンプルについても同様に光線透過率を測定し、2種の膜厚のサンプルにおいて、下記式:
ODλ=-(1/L)log10(I0/I)
(Lは光が通過するサンプル厚さであり;λは波長であり;I0は入射光強度であり;Iは透過光強度である)
から、膜厚5μmにおけるOD値(OD/5μm)を求めた。
また、比較例1として、量子ドットクラスターを添加しなかったネガ型組成物1を用いて、同様に比較用の波長変換膜を得、光線透過率を測定し、ODコントラストを求めた。
【0313】
【表1】
【0314】
表1及び図1によれば、青色光を、赤色光に変換する量子ドットを含む波長変換膜について、波長変換膜の、波長450nmにおける光線透過率を40%以下とし、波長650nmにおける光線透過率を90%以上とすることによって、波長変換膜が良好なOD値を示すことが分かる。


図1