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特許7459484湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、造作部材、及び、フラッシュパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、造作部材、及び、フラッシュパネル
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20240326BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240326BHJP
   C08G 18/30 20060101ALI20240326BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08G18/42 002
C08G18/10
C08G18/30 070
C08G18/42 030
C08G18/42 069
C09J175/04
B32B27/00 D
B32B27/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019204676
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021075657
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】樋口 大地
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/42
C08G 18/10
C08G 18/30
C09J 175/04
B32B 27/00
B32B 27/40
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記ポリオール(a)が、水添無水フタル酸を原料とする、数平均分子量が1,000を超える脂環ポリエステルポリオール(a1)を含有し、更に、結晶性ポリエステルポリオール(a2)、及び、ポリカプロラクトンポリオール(a3)を含有するものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂環ポリエステルポリオール(a1)の使用量が、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中20~70質量%の範囲である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a2)が、炭素原子数が11以上の多塩基酸を原料とする結晶性ポリエステルポリオール(a2-1)と、炭素原子数が11未満の多塩基酸を原料とする結晶性ポリエステルポリオール(a2-2)とを併用したものである請求項記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項5】
請求項記載の接着剤による接着剤層を有することを特徴とする造作部材。
【請求項6】
芯材の両面に請求項記載の造作部材が接着されたことを特徴とするフラッシュパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、造作部材、及び、フラッシュパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア等の建築部材の分野では、美観の向上や耐久性の付与等の要請から、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等の基材と、化粧シート等の表面材とを貼り合わせた化粧造作部材が広く使用されており、このような化粧造作部材を芯材の両面に貼着して建築部材として用いるのが一般的である(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
また、軽量化や断熱性付与等の観点から、芯材が中空状であることも多い。よって、建築部材の内部(特に中空部)と外部とでは温度差が生じ易く、夏場や冬場には結露が発生する場合がある。そして、結露が化粧造作部材に吸収された場合、化粧造作部材を構成する部材の間での吸湿度の相違等によって該化粧造作部材の反りや膨れ等の変形が生じる場合がある。そこで、化粧造作部材の反りや膨れを抑え、耐久性を向上させる目的で、化粧造作部材の内部に防湿層を設けることが検討されており、特に、防湿層と接着剤とを兼ね備える湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を用いることで、防湿シート及び該シート接着工程の削減が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-74826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、初期接着性、防湿性、及び、オープンタイムに優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(a)が、水添無水フタル酸を原料とする、数平均分子量が1,000を超える脂環ポリエステルポリオール(a1)を含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【0007】
また、本発明は、前記湿気硬化型ホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤、及び、該接着剤による接着剤層を有する造作部材、フラッシュパネルを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた期接着性、防湿性、及び、オープンタイムを有するものである。
【0009】
よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、化粧板の貼り合わせに用いる接着剤として好適に用いることができる。また、得られた化粧板、フラッシュパネルは、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板などに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のポリオール(a)、及び、特定のポリイソシアネート(b)の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものである。
【0011】
前記ポリオール(a)は、水添無水フタル酸を原料とする、数平均分子量が1,000を超える脂環ポリエステルポリオール(a1)を含有することが必須である。
【0012】
前記脂環ポリエステルポリオール(a1)は、水添無水フタル酸を原料とし、数平均分子量が1,000を超えるものであることにより、凝集力が向上し、優れた初期接着性及び防湿性が得られ、適度なオープンタイムも持ち合わせる。
【0013】
前記脂環ポリエステルポリオール(a1)としては、具体的には、例えば、前記水添無水フタル酸を含む多塩基酸と、水酸基を2個以上有する化合物との反応物を用いることができる。
【0014】
前記水添無水フタル酸以外に用いることができる多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、シクロノナンジカルボン酸、シクロデカンジカルボン酸、シクロプロパントリカルボン酸、クロブタントリカルボン酸、シロペンタントリカルボン酸、シクロヘプタントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ジシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記多塩基酸中の前記水添無水フタル酸の含有量としては、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0015】
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2-シクロブタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン-ジメタノール、ビシクロ[4.3,0]-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカンジオール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカン-ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5,3,1,1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ-ルA、1,3-アダマンタンジオール等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記脂環ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量は、優れた凝集力を得る点で1,000を超えるものであることが必須であり、好ましくは1,500~50,000の範囲、より好ましくは1,700~10,000の範囲である。なお、前記脂環ポリエステルポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0017】
前記脂環ポリエステルポリオール(a1)の使用量としては、より一層優れた初期接着性、及び、防湿性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中20~70質量%の範囲が好ましく、30~55質量%の範囲がより好ましい。
【0018】
前記ポリオール(a)は、前記脂環ポリエステルポリオール(a1)以外のポリオールを用いることができ、例えば、結晶性ポリエステルポリオール(a2)、ポリカプロラクトンポリオール(a3)、非晶性ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた初期接着性、及び、オープンタイムが得られる点から、結晶性ポリエステルポリオール(a2)、及び/又は、ポリカプロラクトンポリオール(a3)を用いることが好ましく、結晶性ポリエステルポリオール(a2)とポリカプロラクトンポリオール(a3)とを併用することがより好ましい。
【0019】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a2)は、初期接着性、及び、オープンタイム(使用可能時間)をより一層向上できるものであり、例えば、水酸基を有する2個以上有する化合物と多塩基酸との反応物を用いることができる。なお、本発明において、「結晶性」とは、JISK7121:2012に準拠したDSC(示差走査熱量計)測定において、結晶化熱あるいは融解熱のピークを確認できるものを示し、「非晶性」とは、前記ピークを確認できないものを示す。
【0020】
前記水酸基を有する2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、初期接着性及び最終接着性をより一層向上できる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、及びデカンジオールからなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0021】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも結晶性を高め、初期接着性、及び、最終接着性をより一層向上できる点から、アジピン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸からなる群より選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0022】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(a2)としては、初期接着強度とオープンタイムを両立できる点から、炭素原子数が11以上の多塩基酸を原料とする結晶性ポリエステルポリオール(a2-1)と、炭素原子数が11未満の多塩基酸を原料とする結晶性ポリエステルポリオール(a2-2)とを併用することがより好ましい。
【0023】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a2)の使用量としては、より一層優れた初期接着性、及び、最終接着性が得られる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中5~40質量%の範囲が好ましく、10~35質量%の範囲がより好ましい。
【0024】
また、前記結晶性ポリエステルポリオール(a2-1)と前記結晶性ポリエステルポリオール(a2-2)とを併用する場合の質量比[(a2-1)/(a2-2)]としては、80/20~40/60の範囲が好ましく、75/25~50/50の範囲がより好ましい。
【0025】
前記結晶性ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量としては、初期接着性、及び、オープンタイムをより一層向上できる点から、500~100,000の範囲が好ましく、1,000~10,000の範囲がより好ましい。なお、前記結晶性ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0026】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)は、初期接着性、及び、オープンタイム(使用可能時間)をより一層向上できるものであり、例えば、前記結晶性ポリエステルポリオール(a2)の原料に用いることができる前記水酸基を2個以上有する化合物とε-カプロラクトンとの反応物を用いることができる。
【0027】
前記カプロラクトンポリオール(a3)の数平均分子量としては、初期接着性、及び、オープンタイムをより一層向上できる点から、20,000~200,000の範囲が好ましく、30,000~100,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0028】
前記ポリカプロラクトンポリオール(a3)の使用量としては、初期接着性、及び、オープンタイムをより一層向上できる点から、前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の合計質量中1~30質量%の範囲が好ましく、3~20質量%の範囲がより好ましい。
【0029】
前記ポリイソシアネート(b)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ジイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でもより一層優れた反応性及び接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0030】
前記ウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)とを反応させたものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0031】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(b)の入った反応容器に、前記ポリオール(a)の混合物を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(b)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(a)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0032】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際の、前記ポリオール(a)が有する水酸基及び前記ポリイソシアネート(b)が有するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)として、未反応のポリイソシアネートを減らし、より一層優れた接着性が得られる点から、1.5~7の範囲であることが好ましく、1.8~3の範囲がより好ましい。
【0033】
以上の方法によって得られたウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた接着性が得られる点から、1~10質量%の範囲であることが好ましく、2~5質量%の範囲がより好ましく、2.5~4質量%の範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0034】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は前記ウレタンプレポリマーを含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0035】
前記その他の添加剤としては、例えば、硬化触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、光安定剤、充填材、染料、顔料、消泡剤、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
次に、本発明の造作部材について説明する。
【0037】
前記造作部材は、例えば、基材と、シート状又はフィルム状の表面部材と、前記基材および前記表面部材を接着する接着剤層とを有し、前記接着剤層は前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤を硬化して形成されてなるものである。
【0038】
前記造作部材とは、前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を使用して、後述する基材と、シート状又はフィルム状の表面部材とを貼り合わせることによって製造することができ、例えば、床材;下足扉、クローゼット扉、キッチン扉等の扉;枠材、額縁、巾木等の造作材;カウンターテーブル、家具用天板等の天板に使用することができる。
【0039】
前記基材としては、例えば、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材や、アルミ、鉄等の金属基材等を使用することができる。また、前記基材は、溝部、R部、逆R部等の複雑な形状の部位を有していてもよい。
【0040】
前記シート状又はフィルム状の表面部材としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなるシート又はフィルムや、紙、突板、金属箔等を使用することができる。なかでも、ポリ塩化ビニルからなるシートやフィルム、ポリオレフィンからなるシートやフィルム、ポリエチレンテレフタラートからなるシートやフィルム及び紙から選択される少なくともいずれかが特に好ましく使用される。
【0041】
前記表面部材は、無地または多彩な色、模様等の装飾を施された、一般に化粧紙、化粧板用原紙、化粧シートなどと呼称されているようなものであってもよい。また、表面部材の裏面、即ち基材側となる面に、樹脂等によるプライマー処理が施されていてもよい。
【0042】
前記基材と前記表面部材とを貼り合わせて造作部材を形成する方法としては、例えば、本発明の湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を60~150℃の範囲内に加熱することで溶融させ、ロールコーター、スプレコーター、T-ダイコーター、ナイフコーター等を用いて前記湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を基材上に塗布し、塗布面に表面部材を貼り合わせる方法や、上記と同様に溶融させた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を、ロールコーター等を用いて表面部材の上に塗布し、その塗布面に基材を貼り合わせて、ロールプレス、フラットプレス、ベルトプレス等の方法で基材の形状に合わせて適宜、圧着させる方法等が挙げられる。
【0043】
本発明はまた、芯材の両面に上述の造作部材を接着してなるフラッシュパネルに関する。本発明のフラッシュパネルは、ドア材、壁パネル、天井パネル、クローゼット扉、間仕切り、机、棚、収納家具等に使用することができる。
【0044】
表1は、本発明に係るフラッシュパネルの構成の例を示す断面図である。フラッシュパネル200においては、接着剤層12,13を介して基材11の両面に表面部材14,15が貼り合わされてなる造作部材1と、接着剤層22,23を介して基材21の両面にフィルム状またはシート状の表面部材24,25が貼り合わされてなる造作部材2とが、芯材3の両面に接着されている。なお図1においては芯材の両面に本発明の造作部材が形成される場合について示しているが、本発明の造作部材が芯材の片面のみに形成されても構わない。
【0045】
トランドボード、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質材、アルミニウム、マグネシウム、鋼板、SUS等の金属材、紙材、等を用いることができる。フラッシュパネルの軽量化や断熱性の向上が可能な点で、芯材はハニカム構造を有することが特に好ましい。
【0046】
芯材と造作部材とを接着して本発明のフラッシュパネルを形成する方法としては、例えば、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤を、ロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーター等で化粧造作材に塗布し、フラットプレス、ロールプレス、ベルトプレス等の方法により芯材と造作部材とを接着する方法等を用いることができる。
【0047】
【表1】
【実施例
【0048】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0049】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、脂環ポリエステルポリオール(水添無水フタル酸及びネオペンチルグリコールの反応物、数平均分子量;2,200、以下「HHPA/NPG2200」と略記する。)47質量部、結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及び1,12-ドデカンジカルボン酸の反応物、数平均分子量;3,500、以下「HG/DDA」と略記する。)20質量部とポリカプロラクトンポリオール(数平均分子量;80,000、以下「PCL」と略記する。)10質量部を仕込み、減圧条件下で水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度70℃に冷却後、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)23質量部を加え、100℃まで昇温して、NCO%が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。
【0050】
[実施例2~4、比較例1~2]
各原料の使用量を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得た。
【0051】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した値を示す。
【0052】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0053】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0054】
[初期接着性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃で加熱溶融状態にし、溶融した湿気硬化性ポリウレタンホットメルト樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PRT)シート上に50μmの厚さとなるように塗布し、次いで、塗布した接着剤層の上にMDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)を載置し、貼り合わせた。貼り合わせた試験片を3分後に35℃の雰囲気下で、25mm幅に対し100gの荷重を90°方向にかけて、15分後にPETシートの剥離長さを測定し、以下のように評価した。
「T」:剥離長さが5mm未満である。
「F」:剥離長さが5mm以上である。
【0055】
[防湿性の評価方法]
表面温度を100℃に調整したガラス板上に、ポリエチレンテレフタレートからなる離型フィルムを載置した。該離型フィルム上に、120℃で加熱溶融した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を、膜厚が100μmになるようにアプリケーターを用いて塗布し、塗布物を調製した。該塗布物を、温度30℃、相対湿度50%の雰囲気下で1週間養生した後、該湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物から形成されたフィルムを該離型フィルムから剥離し、測定用試料とした。該測定用試料の透湿度を、透湿度カップ法(JIS-Z-0208-B法)に基づいて測定し(単位:g/m・24hr)、以下のように評価した。
「T」:15(g/m・24hr)未満である。
「F」:15(g/m・24hr)以上である。
【0056】
[オープンタイムの評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化性ポリウレタンホットメルト接着剤を120℃で加熱溶融状態にし、基材であるポリプロピレンシート上に50μmの厚みとなるように塗布した。次いで、前記で塗布した接着剤層の上に、表面部材としてクラフト紙を載置し、直ちに23℃の恒温槽へ放置した。恒温層内へ放置した時点を基点(T)とし、前記クラフト紙が前記接着剤層に接着しなくなるまでの時間(即ち、固化時間)(T、単位:秒)を測定して、「23℃でのオープンタイム」とした。オープンタイムを以下のように評価した。
「T」;4分を超える。
「F」;4分以下である。
【0057】
【表2】
【0058】
表1中の略語は以下のものである。
・「HG/SEBA」;結晶性ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール及びセバシン酸の反応物、数平均分子量;3,500)
・「NPG/oPA」:非晶性ポリエステルポリオール(ネオペンチルグリコール及びオルトフタル酸の反応物、数平均分子量;1,000)
・「DEG/NPG/HG/AA」:非晶性ポリエステルポリオール(ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、及び、アジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000)
・「CHDA/NPG」:脂環ポリエステルポリオール(1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及びネオペンチルグリコールの反応物、数平均分子量;1,000)
・「HHPA/NPG1000」:水添無水フタル酸及びネオペンチルグリコールの反応物、数平均分子量;1,000
【0059】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、優れた初期接着性、防湿性及びオープンタイムを有することが分かった。
【0060】
一方、比較例1は、脂環ポリエステルポリオール(a1)の代わりに、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を原料としたポリエステルポリオールを用いた態様であるが、防湿性、及び、オープンタイムが不良であった。
【0061】
比較例2は、脂環式ポリエステルポリオール(a2)の数平均分子量が、本発明で規定する範囲を下回るものを用いた態様であるが、初期接着性、及び、オープンタイムが不良であった。