(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】オートクレーブおよびオートクレーブの操業方法
(51)【国際特許分類】
B01J 3/04 20060101AFI20240326BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20240326BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20240326BHJP
C01G 53/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B01J3/04 D
C22B23/00 102
C22B3/04
B01J3/04 F
B01J3/04 G
C01G53/10
(21)【出願番号】P 2020004875
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉之原 真
(72)【発明者】
【氏名】横川 友彦
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209292(JP,A)
【文献】特開平05-269363(JP,A)
【文献】特開2016-011442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0329933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 3/04
F17D 1/00-5/08
C22B 23/00
C22B 3/04
C01G 53/10
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを滞留させる槽と、
前記槽内に
前記スラリーを昇温する蒸気および
前記スラリーを冷却する冷却水を択一的に供給する共通配管と、を備え
、
前記共通配管の排出端は前記スラリーの液面下に配置されている
ことを特徴とするオートクレーブ。
【請求項2】
前記共通配管の接続端に接続し、
前記蒸気を供給する蒸気配管と、
前記共通配管の前記接続端に接続し、
前記冷却水を供給する冷却水配管と、を備え、
前記共通配管の前記接続端は前記スラリーの液面上に配置されている
ことを特徴とする請求項
1記載のオートクレーブ。
【請求項3】
前記共通配管は、酸化反応開始前は
前記蒸気が流れ、酸化反応開始後は
前記冷却水が流れる
ことを特徴とする請求項1
または2記載のオートクレーブ。
【請求項4】
前記スラリーは金属硫化物を含む原料スラリーであり、前記槽内において加圧酸化浸出される
ことを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載のオートクレーブ。
【請求項5】
金属硫化物を含む原料スラリーをオートクレーブに連続供給し、該金属硫化物を加圧酸化浸出して金属硫酸塩水溶液を得るにあたり、
酸化反応開始前は共通配管を通して前記スラリーに蒸気を吹き込み、
酸化反応開始後は前記共通配管を通して前記スラリーに冷却水を供給する
ことを特徴とするオートクレーブの操業方法。
【請求項6】
前記金属硫化物はニッケル硫化物であり、前記金属硫酸塩水溶液は硫酸ニッケル水溶液である
ことを特徴とする請求項
5記載のオートクレーブの操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートクレーブおよびオートクレーブの操業方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、金属硫化物を加圧酸化浸出するのに用いられるオートクレーブ、およびそのオートクレーブの操業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属硫化物を加圧酸化浸出して金属硫酸塩水溶液を得る方法が知られている。例えば、ニッケル硫化物を含む原料スラリーをオートクレーブに連続供給し、オートクレーブ内のスラリーに高圧空気を吹き込んで加圧酸化浸出する。そうすれば、硫酸ニッケル水溶液を得ることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属硫化物の酸化反応を起こすためには、オートクレーブ内のスラリーを特定の温度に昇温する必要がある。スラリーの昇温は蒸気配管から直接、蒸気を吹き込むことにより行なわれる。酸化反応は発熱反応であるため、酸化反応が始まれば反応熱によりスラリーの温度が上昇する。そのため、酸化反応開始後はスラリーに蒸気を吹き込む必要がない。
【0005】
酸化反応開始後のオートクレーブの運転中、蒸気配管の内部に固形物が付着し、蒸気配管が閉塞することがある。そのため、オートクレーブの停止後、運転を再開する前に、蒸気配管を掃除して閉塞原因物を除去する必要がある。このような閉塞原因物の除去作業には時間と労力を要する。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、蒸気配管の閉塞を抑制できるオートクレーブおよびオートクレーブの操業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のオートクレーブは、スラリーを滞留させる槽と、前記槽内に前記スラリーを昇温する蒸気および前記スラリーを冷却する冷却水を択一的に供給する共通配管と、を備え、前記共通配管の排出端は前記スラリーの液面下に配置されていることを特徴とする。
第2発明のオートクレーブは、第1発明において、前記共通配管の接続端に接続し、前記蒸気を供給する蒸気配管と、前記共通配管の前記接続端に接続し、前記冷却水を供給する冷却水配管と、を備え、前記共通配管の前記接続端は前記スラリーの液面上に配置されていることを特徴とする。
第3発明のオートクレーブは、第1または第2発明において、前記共通配管は、酸化反応開始前は前記蒸気が流れ、酸化反応開始後は前記冷却水が流れることを特徴とする。
第4発明のオートクレーブは、第1~第3発明のいずれかにおいて、前記スラリーは金属硫化物を含む原料スラリーであり、前記槽内において加圧酸化浸出されることを特徴とする。
第5発明のオートクレーブの操業方法は、金属硫化物を含む原料スラリーをオートクレーブに連続供給し、該金属硫化物を加圧酸化浸出して金属硫酸塩水溶液を得るにあたり、酸化反応開始前は共通配管を通して前記スラリーに蒸気を吹き込み、酸化反応開始後は前記共通配管を通して前記スラリーに冷却水を供給することを特徴とする。
第6発明のオートクレーブの操業方法は、第5発明において、前記金属硫化物はニッケル硫化物であり、前記金属硫酸塩水溶液は硫酸ニッケル水溶液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、共通配管が蒸気の供給と冷却水の供給の両方に用いられるので、酸化反応開始後も共通配管に冷却水が流れる。そのため、共通配管の内部に固形物が付着しにくく、閉塞を抑制できる。また、共通配管の排出端がスラリーの液面下に配置されているので、スラリーの内部に蒸気を吹き込むことができ、スラリーを効率よく昇温できる。
第2発明によれば、配管の接続端がスラリーの液面上に配置されているので、蒸気配管と冷却水配管にスラリーが逆流することがなく、配管の閉塞を防止できる。
第3発明によれば、共通配管に蒸気と冷却水を択一的に流し続けるので、共通配管の内部に固形物が付着しにくく、閉塞を抑制できる。
第4発明によれば、金属硫化物を含む原料スラリーを加圧酸化浸出するにあたり、配管の閉塞原因物の除去に要する時間と労力を低減できる。
第5発明によれば、共通配管に蒸気と冷却水を択一的に流し続けるので、共通配管の内部に固形物が付着しにくく、閉塞を抑制できる。
第6発明によれば、ニッケル硫化物を加圧酸化浸出して硫酸ニッケル水溶液を製造するにあたり、配管の閉塞原因物の除去に要する時間と労力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るオートクレーブの縦断面図である。
【
図2】第2実施形態に係るオートクレーブの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係るオートクレーブは、金属硫化物を加圧酸化浸出して金属硫酸塩水溶液を得るのに好適に用いられる。
【0011】
(オートクレーブ)
図1に示すように、オートクレーブ1は液密性、気密性を有する横長の槽10を有している。槽10の一端には原料スラリーを供給する供給口11が設けられている。槽10の他端には浸出液を排出する排出口12が設けられている。槽10の内部にはスラリーが滞留している。
【0012】
槽10の内部には一または複数の隔壁13が立設している。この隔壁13により、槽10の内部は長手方向に並んだ複数の反応室14a~14eに分割されている。反応室14a~14eの数は特に限定されない。本実施形態のオートクレーブ1は5つの反応室14a~14eを有する。5つの反応室14a~14eをそれぞれ第1室14a、第2室14b、第3室14c、第4室14d、第5室14eと称する。なお、槽10の内部は隔壁13で分割されていなくてもよい。すなわち、オートクレーブ1が有する反応室の数は1つでもよい。
【0013】
供給口11は第1室14aに設けられている。原料スラリーは最初に第1室14aに供給される。第1室14a内のスラリーは隔壁13をオーバーフローして第2室14bに供給される。このようなオーバーフローを繰り返して、スラリーは第5室14eに到達する。このように、複数の反応室14a~14eはスラリーが順に流れるように直列に配置されている。排出口12は第5室14eに設けられている。第5室14eに到達したスラリーは浸出液として排出口12から排出される。なお、原料スラリーの供給方式は、上記のような連続式に限らず、バッチ式でもよい。
【0014】
各反応室14a~14eには空気吹込管15が挿入されている。空気吹込管15を通して各反応室14a~14e内のスラリーに高圧空気を吹き込む。各反応室14a~14eへの高圧空気の供給量は個別に調整できる。高圧空気は酸化剤として作用する。原料である金属硫化物と酸素とが接触し、金属硫化物が酸化されることで、金属硫酸塩水溶液が得られる。金属硫化物と酸素との接触を促進し、酸化反応を効率的に行なうために、各反応室14a~14eには撹拌機16が設けられている。
【0015】
槽10の気相部には圧力調整弁17が設けられている。圧力調整弁17によりオートクレーブ1内の圧力が所定の圧力に維持される。また、圧力調整弁17によりオートクレーブ1内の圧力を調整できる。
【0016】
金属硫化物の酸化反応を起こすためには、スラリーを特定の温度(硫化ニッケルの場合140℃)以上に昇温する必要がある。スラリーの昇温は高圧の蒸気を吹き込むことにより行なわれる。
【0017】
金属硫化物の酸化反応は発熱反応である。例えば、硫化ニッケル(II)の酸化反応は下記反応式(1)で示される。
NiS+2O2→NiSO4 ΔH=-0.80MJ/mol ・・・(1)
ここで、ΔHは標準生成エンタルピーである。反応式(1)に示す反応が生じると、硫化ニッケル(II)1molあたり0.80MJの反応熱が生じる。
【0018】
このように金属硫化物の酸化反応は発熱反応であるが、反応速度が非常に遅いため、常温下ではほとんど反応が進行しない。酸化反応を進行させるためには、酸化反応開始時に高圧蒸気を用いてスラリーを特定の温度まで昇温しなければならない。十分な反応速度をもって酸化反応が一度起きれば反応熱によりスラリーの温度が上昇する。そのため、酸化反応開始後はスラリーに蒸気を吹き込む必要がない。むしろ、そのままではスラリーの温度が高くなりすぎる。スラリーを適切な温度に調整するため、冷却水の添加を行なう。
【0019】
このように、酸化反応開始前は蒸気の吹き込みを行ない、酸化反応開始後は冷却水の添加を行なう。ここで、蒸気の吹き込みと冷却水の添加とを別々の配管で行なうと、蒸気を供給する配管が閉塞することがある。蒸気を供給する配管は、酸化反応開始後、すなわちオートクレーブ1の運転期間の大部分にわたって、蒸気が流れない状態でスラリーに浸かっている。そのため、スラリーに含まれる固形分が配管の内部に付着しやすい。また、一般に金属硫化物には鉄が含まれており、酸化反応により生じた酸化鉄が配管の内部に付着しやすい。配管の内部に付着した固形分が堆積すると、配管の閉塞に至る。
【0020】
なお、酸化反応開始時の立上げ操作では、原料スラリーが投入された槽10内に高圧蒸気を導入し、昇圧して高温高圧雰囲気とする。特定の温度に到達した時点で、槽10内に高圧空気を吹き込む。ここで特定の温度は酸化反応開始後の定常運転時の温度よりも低いため、高圧蒸気の圧力は定常運転時の槽10内圧力よりも低い。例えば、ニッケル硫化物の場合、特定の温度は140℃であるが、ゲージ圧で約0.5MPaGの高圧蒸気にて昇温することができる。一方で、定常運転時の圧力はゲージ圧で約1.8MPaGである。この圧力差によりスラリーが蒸気配管内に押し込まれる。蒸気の閉止バルブは、高圧装置である槽10内に設けることができない。蒸気配管のうち槽10外に設置された閉止バルブまでの間は、スラリーが逆流することになる。一方、冷却水は定常運転時の槽10内圧力よりも高い圧力で添加するので、冷却水配管内にスラリーが逆流することはない。
【0021】
配管の閉塞を抑制するため、本実施形態のオートクレーブ1は、蒸気および冷却水を供給する配管が以下のように構成されている。
【0022】
オートクレーブ1は蒸気を供給する蒸気配管21を有する。蒸気配管21はオートクレーブ1が有する反応室14a~14eの数(本実施形態では5)だけ分岐しており、各反応室14a~14eの近傍まで導かれている。また、オートクレーブ1は冷却水を供給する冷却水配管22を有する。冷却水配管22もオートクレーブ1が有する反応室14a~14eの数だけ分岐しており、各反応室14a~14eの近傍まで導かれている。
【0023】
槽10の各反応室14a~14eには共通配管23が挿入されている。各共通配管23の上流側の端部を接続端23a、下流側の端部を排出端23bと称する。蒸気配管21の分岐管および冷却水配管22の分岐管は、いずれかの共通配管23の接続端23aに接続している。したがって、蒸気配管21を流れる蒸気は、共通配管23を通って槽10の内部に供給される。また、冷却水配管22を流れる冷却水は、共通配管23を通って槽10の内部に供給される。
【0024】
蒸気配管21の分岐管には蒸気制御弁24が設けられている。蒸気制御弁24を操作することにより、各共通配管23に流れる蒸気の流量を調整できるとともに、蒸気の供給を停止できる。また、冷却水配管22の分岐管には冷却水制御弁25が設けられている。冷却水制御弁25を操作することにより、各共通配管23に流れる冷却水の流量を調整できるとともに、冷却水の供給を停止できる。なお、蒸気制御弁24および冷却水制御弁25として、流量制御弁、開閉弁などを用いることができる。
【0025】
蒸気制御弁24を開き、冷却水制御弁25を閉じれば、共通配管23を介して槽10内に蒸気を供給できる。逆に、蒸気制御弁24を閉じ、冷却水制御弁25を開けば、共通配管23を介して槽10内に冷却水を供給できる。このように、共通配管23は槽10内に蒸気および冷却水を択一的に供給するのに用いられる。
【0026】
共通配管23の排出端23bは槽10内のスラリーの液面下に配置されることが好ましい。槽10内のスラリーの液面は隔壁13の上端の高さにより決まる。したがって、共通配管23の排出端23bは隔壁13の上端より低い位置に配置されることが好ましい。このようにすれば、スラリーの内部に蒸気を吹き込むことができる。例えばスラリーの液面に蒸気を吹き付ける場合に比べて熱伝達率が高くなるので、スラリーを効率よく昇温できる。
【0027】
共通配管23の接続端23a、すなわち蒸気配管21、冷却水配管22および共通配管23の接続部は槽10内のスラリーの液面上に配置されることが好ましい。配管の接続部は槽10の内部でもよいし、外部でもよい。配管の接続部がスラリーの液面上に配置されているので、蒸気配管21と冷却水配管22にスラリーが逆流することがなく、配管の閉塞を防止できる。
【0028】
(操業方法)
つぎに、オートクレーブ1の操業方法を説明する。
まず、原料をレパルプして原料スラリーを調製する。原料として金属硫化物が用いられる。金属硫化物としてニッケル硫化物、コバルト硫化物、亜鉛硫化物、カドミウム硫化物、銅硫化物などが挙げられる。原料としてこれらの金属硫化物のうちの一つを用いてもよいし、複数を用いてもよい。
【0029】
金属硫化物を含む原料スラリーをオートクレーブ1に連続供給する。オートクレーブ1内において、スラリーが第1室14aから第5室14eまで流れる間に、金属硫化物が加圧酸化浸出され、金属硫酸塩水溶液が生成される。例えば、金属硫化物がニッケル硫化物の場合、金属硫酸塩水溶液として硫酸ニッケル水溶液が生成される。オートクレーブ1から浸出液が連続的に排出される。浸出液は金属硫酸塩水溶液と固形分(浸出残渣)とからなるスラリーである。
【0030】
ここで、オートクレーブ1の運転開始直後、すなわち空の槽10内に新規の原料スラリーを供給した直後は、スラリーの温度が低く酸化反応が生じない。そこで、酸化反応が開始するまで、共通配管23を通してスラリーに蒸気を吹き込んで、スラリーを昇温する。
【0031】
一方、酸化反応開始後は、蒸気の吹き込みを停止し、共通配管23を通してスラリーに冷却水を供給する。これにより、スラリーを冷却する。なお、冷却水の供給は、オートクレーブ1を停止するまで、継続して行なうことが好ましい。
【0032】
このように、共通配管23は蒸気の供給と冷却水の供給の両方に用いられる。そして、共通配管23に蒸気と冷却水を択一的に流し続ける。共通配管23には、酸化反応開始前は蒸気が流れ、酸化反応開始後は冷却水が流れる。酸化反応開始後も共通配管23に冷却水が流れるため、共通配管23の内部に固形物が付着しにくく、閉塞を抑制できる。
【0033】
配管が閉塞すると、配管を掃除して閉塞原因物を除去する必要がある。このような閉塞原因物の除去作業には時間と労力を要する。また、閉塞原因物の除去作業を行なっている間オートクレーブ1を停止する必要があるため、オートクレーブ1の稼働率が低下する。これに対して本実施形態では配管の閉塞を抑制できるため、閉塞原因物の除去に要する時間と労力を低減できるとともに、オートクレーブ1の稼働率を高くできる。
【0034】
共通配管23の内部の固形物の付着を効果的に抑制するには、共通配管23を流れる冷却水がある程度の流速を有することが好ましい。具体的には、共通配管23における冷却水の流速を0.005m/sec以上とすることが好ましい。そうすれば、共通配管23の内部に固形物が付着することを抑制する効果が高い。また、冷却水の流量制御が安定するため、冷却水が一時的に流れなくなることを防止できる。
【0035】
〔第2実施形態〕
蒸気配管21、冷却水配管22および共通配管23の接続位置は特に限定されない。例えば、
図2に示すように、蒸気配管21、冷却水配管22および共通配管23を各反応室14a~14eへの分岐点よりも上流側で接続してもよい。共通配管23はオートクレーブ1が有する反応室14a~14eの数だけ分岐しており、各分岐管が反応室14a~14eのいずれかに挿入されている。
【0036】
蒸気配管21には蒸気制御弁24が設けられている。冷却水配管22には冷却水制御弁25が設けられている。蒸気制御弁24および冷却水制御弁25を開閉することにより、共通配管23に蒸気および冷却水を択一的に流せる。
【0037】
この構成の場合、共通配管23の各分岐管に流量制御弁26を設けることが好ましい。そうすれば、反応室14a~14eごとに、蒸気および冷却水の流量を調整できる。
【実施例】
【0038】
つぎに、実施例を説明する。
(実施例1)
図1に示す構成のオートクレーブを用いて加圧酸化浸出を行なった。運転の条件はつぎの通りである。
原料:ニッケルとコバルトの混合硫化物
原料のニッケル含有率:57.0~58.5重量%(乾燥量基準)
原料のコバルト含有率:4.0~6.0重量%(乾燥量基準)
原料スラリーの固形分濃度:220~270g/L
原料スラリーの供給量:30~85L/分
オートクレーブ内の圧力(ゲージ圧):1.6~1.9MPaG
【0039】
オートクレーブの運転開始後、酸化反応開始前は共通配管を介して蒸気の吹き込みを行なった。また、酸化反応開始後は共通配管を介して冷却水の供給を常時行なった。5ヶ月の運転後、共通配管を確認したところ、閉塞は確認されなかった。
【0040】
(比較例1)
蒸気の吹き込みと冷却水の添加とを別々の配管で行なう構成のオートクレーブを用いて加圧酸化浸出を行なった。運転の条件は実施例と同様である。5ヶ月の運転後、蒸気配管を確認したところ、第1室および第2室に挿入された蒸気配管に閉塞が確認された。
【0041】
以上より、共通配管を介して蒸気と冷却水を択一的に供給する構成とすることで、配管の閉塞を抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0042】
1 オートクレーブ
10 槽
21 蒸気配管
22 冷却水配管
23 共通配管