(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】可動装置、画像投影装置、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240326BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240326BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240326BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240326BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B81B3/00
G02B27/01
G02B27/02
(21)【出願番号】P 2020045696
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新川 瑞季
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-123116(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101808181(CN,A)
【文献】特開2002-156592(JP,A)
【文献】特開2010-049191(JP,A)
【文献】特開2017-167254(JP,A)
【文献】特開2019-082634(JP,A)
【文献】特開2016-001275(JP,A)
【文献】特開2010-148265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0196179(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0180873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/08
B81B 3/00
G02B 27/01 - 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部と、
前記可動部を揺動させる第1のアクチュエータ部と、
前記第1のアクチュエータ部を固定する固定部と、を有する第1の部材と、
前記第1のアクチュエータ部とは別に設けられた前記可動部を揺動させる2つ以上の他のアクチュエータ部を有する第2の部材と、
を備える可動装置において、
前記第1のアクチュエータ部は、
一端が前記可動部と接続され前記可動部を支持する支持部と、
前記支持部の他端と接続され、前記支持部を変形させて前記可動部を揺動させる駆動部と、を有し、
平面視において
前記駆動部を構成する複数の辺のうち、前記固定部から最も遠い辺が前記可動部側を向
いており、前記可動部の中心上を通り
前記第1のアクチュエータ部のみを駆動したときの前記可動部の回転軸と平行な仮想線により、前記駆動部が含まれる第1の領域と前記駆動部が含まれない第2の領域に2分したときに、
前記支持部と前記可動部は、前記第2の領域で接続される
ことを特徴とする可動装置。
【請求項2】
可動部と、
前記可動部を揺動させる第1のアクチュエータ部と、
前記第1のアクチュエータ部を固定する固定部と、を有する第1の部材と、
前記第1のアクチュエータ部とは別に設けられた前記可動部を揺動させる2つ以上の他のアクチュエータ部を有する第2の部材と、
を備える可動装置において、
前記第1のアクチュエータ部は、
一端が前記可動部と接続され前記可動部を支持する支持部と、
前記支持部の他端と接続され、前記支持部を変形させて前記可動部を揺動させる駆動部と、を有し、
平面視において
前記駆動部を構成する複数の辺のうち、前記固定部から最も遠い辺が前記可動部側を向
いておらず、前記可動部の中心上を通り
前記第1のアクチュエータ部のみを駆動したときの前記可動部の回転軸と垂直な仮想線により、前記駆動部が含まれる第1の領域と前記駆動部が含まれない第2の領域に2分したときに、
前記支持部と前記可動部は、前記第2の領域で接続される
ことを特徴とする可動装置。
【請求項3】
前記仮想線と前記可動部の中心上を通り前記仮想線に垂直な直線とによって仕切られた平面の四つの部分のうち、前記駆動部の側を向く部分を第1象限及び第2象限としたときに、
前記支持部と前記可動部は、
前記支持部の他端から最も遠い第4象限で接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の可動装置。
【請求項4】
前記仮想線と前記可動部の中心上を通り前記仮想線に垂直な直線とによって仕切られた平面の四つの部分のうち、前記駆動部の側を向く部分を第1象限及び第2象限としたときに、
前記支持部と前記可動部は、第1象限と
前記支持部の他端から最も遠い第4象限を跨ぐ位置で接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の可動装置。
【請求項5】
前記支持部の形状は、前記可動部の中心を中心とした円弧を含む形状であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の可動装置。
【請求項6】
前記支持部の前記円弧を含む形状の最内周部と前記可動部の最外周部との間には、前記可動部の最外周部に沿った略一定幅の間隙が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の可動装置。
【請求項7】
前記支持部はミアンダ構造を含むことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の可動装置。
【請求項8】
前記支持部の一部の幅が他部の幅よりも太いことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の可動装置。
【請求項9】
前記可動部は、可動部梁と、
一端が前記可動部梁に接続され、他端がミラー部と接続された梁と、
を有し、
前記梁は、前記ミラー部を共振駆動可能な状態で支持していることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の可動装置。
【請求項10】
一端が前記可動部に接続され、他端がミラー部と接続された2つのミアンダ構造を有し、
前記2つのミアンダ構造は、前記ミラー部を共振駆動可能な状態で両側から支持していることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の可動装置。
【請求項11】
前記駆動部はミアンダ構造であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の可動装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の可動装置と、
光を発する光源と、
を備え、
前記光源から発せられた光を偏向して投影することを特徴とする画像投影装置。
【請求項13】
前記光源は複数設けられており、
前記複数の光源は、異なる波長の光を発するものであって、
前記複数の光源から発した前記
異なる波長の光を合成する合成部を更に備え、
前記合成部において合成された光を偏向して投影することを特徴とする請求項12に記載の画像投影装置。
【請求項14】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の可動装置を備えるヘッドアップディスプレイ。
【請求項15】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の可動装置を備えるレーザヘッドランプ。
【請求項16】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の可動装置を備えるヘッドマウントディスプレイ。
【請求項17】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の可動装置と、
光を発する光源と、
を備え、
前記光源から発せられた光を偏向し、前記光が物体に照射され、前記物体において反射された反射光を検出することにより物体を認識することを特徴とする物体認識装置。
【請求項18】
請求項14に記載のヘッドアップディスプレイ、請求項15に記載のレーザヘッドランプ、及び請求項17に記載の物体認識装置の少なくとも1つを有する移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動装置、画像投影装置、ヘッドアップディスプレイ、レーザヘッドランプ、ヘッドマウントディスプレイ、物体認識装置、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造技術を応用したマイクロマシニング技術の発達に伴い、シリコンやガラスを微細加工して製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの開発が進んでいる。
【0003】
MEMSデバイスとして、例えば、可動部を互いに直交する第1の軸および第2の軸まわりにそれぞれ回動させて光を走査する光偏向器が知られている。この光偏向器は、可動部と、可動部を支持する支持部と、可動部および支持部を連結する4つの連結部とを有し、4つの連結部は、可動部の平面視にて、可動部の外周に周方向に沿って90度間隔で設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に例示した光偏向器の構成では、可動部を揺動させた場合、可動部に接続されている一つの連結部の屈曲変形が、可動部に接続されている他の連結部の影響によって抑制される。そのため、可動部の可動範囲が制限され、その結果、光偏向器による光の走査角が抑制されてしまう懸念がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、大きな走査角を得ることができる可動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一態様に係る可動装置は、可動部と、前記可動部を揺動させる第1のアクチュエータ部と、前記第1のアクチュエータ部を固定する固定部と、を有する第1の部材と、前記第1のアクチュエータ部とは別に設けられた前記可動部を揺動させる2つ以上の他のアクチュエータ部を有する第2の部材と、を備える可動装置において、前記第1のアクチュエータ部は、一端が前記可動部と接続され前記可動部を支持する支持部と、前記支持部の他端と接続され、前記支持部を変形させて前記可動部を揺動させる駆動部と、を有し、平面視において前記駆動部を構成する複数の辺のうち、前記固定部から最も遠い辺が前記可動部側を向いており、前記可動部の中心上を通り前記第1のアクチュエータ部のみを駆動したときの前記可動部の回転軸と平行な仮想線により、前記駆動部が含まれる第1の領域と前記駆動部が含まれない第2の領域に2分したときに、前記支持部と前記可動部は、前記第2の領域で接続される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、大きな走査角を得ることができる可動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図である。
【
図3】支持部と可動部との接続位置について説明する図(その1)である。
【
図4】支持部と可動部との接続位置について説明する図(その2)である。
【
図5】支持部と可動部との接続位置の変形例について説明する図(その1)である。
【
図6】支持部と可動部との接続位置の変形例について説明する図(その2)である。
【
図7】支持部と可動部との接続位置の変形例について説明する図(その3)である。
【
図8】支持部と可動部との接続位置の変形例について説明する図(その4)である。
【
図9】支持部に関する変形例について説明する図(その1)である。
【
図10】支持部に関する変形例について説明する図(その2)である。
【
図11】支持部に関する変形例について説明する図(その3)である。
【
図12】支持部に関する変形例について説明する図(その4)である。
【
図13】支持部に関する変形例について説明する図(その5)である。
【
図14】支持部に関する変形例について説明する図(その6)である。
【
図15】支持部に関する変形例について説明する図(その7)である。
【
図16】支持部に関する変形例について説明する図(その8)である。
【
図17】第2実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図(その1)である。
【
図18】第2実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図(その2)である。
【
図19】第2実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図(その3)である。
【
図20】第2実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図(その4)である。
【
図21】第2実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図(その5)である。
【
図23】光走査システムの一例のハードウェア構成図である。
【
図25】光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
【
図26】ヘッドアップディスプレイ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図27】ヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図である。
【
図28】光書込装置を搭載した画像形成装置の一例の概略図である。
【
図30】ライダ装置を搭載した自動車の一例の概略図である。
【
図32】レーザヘッドランプの構成の一例を説明する概略図である。
【
図33】ヘッドマウントディスプレイの構成の一例を示す概略斜視図である。
【
図34】ヘッドマウントディスプレイの構成の一部の一例を示す図である。
【
図35】パッケージングされた可動装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、以下の実施形態の説明では、回動、揺動、可動は同義であるとする。また、矢印により示した方向のうち、圧電駆動部等における各層の積層方向をZ方向、Z方向に垂直な平面内で互いに直交する方向をX方向及びY方向とする。また、平面視とは、対象物をZ方向から見ることを指す。
【0011】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図である。
図1に示す光偏向器100は、可動部103と、第1のアクチュエータ部104aと、第2のアクチュエータ部104bと、第3のアクチュエータ部104cとを有している。光偏向器100は、可動部103を揺動させて、入射する光を多軸方向に偏向するベクタースキャンに対応可能な3相の光偏向器である。
【0012】
可動部103は、例えば、円形状のミラー部101と、ミラー部101の基体の+Z側の面上に形成されたミラー反射面102等を有している。ミラー部101は、例えば、シリコン層から構成される。ミラー部101は、酸化材や無機材料、有機材料で構成されてもよいし、複数の材料または同じ材料の複数層で構成されてもよい。
【0013】
ミラー反射面102は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜やその多層膜で構成される。また、ミラー部101の基体の-Z側の面にミラー部補強用のリブ構造が形成されていてもよい。リブ構造は、例えば、シリコン支持層及び酸化シリコン層から構成され、可動によって生じるミラー部101及びミラー反射面102の変形歪を抑制する。
【0014】
ミラー部101及びミラー反射面102を含む略円形状の可動部103は、第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、及び第3のアクチュエータ部104cにより、回動可能な状態で支持されている。
【0015】
尚、ミラー部101及び可動部103は、楕円形状、または多角形状で形成されていてもよく、その他どのような形状で形成されていてもよい。
【0016】
第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、及び第3のアクチュエータ部104cは、可動部103を揺動させる部分である。第1のアクチュエータ部104aは、支持部105aと、駆動部106aとを有している。第2のアクチュエータ部104bは、支持部105bと、駆動部106bとを有している。第3のアクチュエータ部104cは、支持部105cと、駆動部106cとを有している。
【0017】
第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、及び第3のアクチュエータ部104cは同様の構造である。そのため、以下では第1のアクチュエータ部104aについて説明を行い、第2のアクチュエータ部104b及び第3のアクチュエータ部104cの説明は省略する。
【0018】
第1のアクチュエータ部104aにおいて、支持部105aは、一端が可動部103と接続され、他端が駆動部106aと接続され、可動部103を支持する。支持部105aは、直線状ではなく、屈曲部を有する構造である。
図1では、一例として、支持部105aは略直角に屈曲する2つの屈曲部を有している。
【0019】
第1のアクチュエータ部104aにおいて、駆動部106aは、支持部105aの他端と接続され、支持部105aを変形させて可動部103を揺動させる。駆動部106aの形状や構成は特に限定されず、例えば、ミアンダ構造等であってもよい。また、駆動部106aに何らかのセンサが形成されていてもよい。センサは特に限定されないが、例えば、変形に応じて信号を出力する変位検出用センサ(圧電式、ひずみ抵抗式等)や温度センサ等が挙げられる。
【0020】
駆動部106aによる支持部105aの駆動方式は、例えば、圧電駆動であるが、電磁界を利用して支持部を変形させる電磁駆動や、支持部に櫛歯電極が形成される静電駆動であってもよい。また、支持部の上にコイルやマグネットアレイが形成されているものであってもよい。また、支持部の駆動方法は、共振駆動または非共振駆動のどちらであってもよい。
【0021】
これらの中でも、圧電駆動部を効果的に配置でき、光偏向器全体のサイズの大型化を抑制できる点では、圧電駆動が好ましい。例えば、静電駆動では駆動部の外周に櫛歯電極を配置するため、光偏向器全体のサイズが大きくなりやすい。また、電磁駆動では複数の駆動部それぞれへの配線レイアウトとそれぞれに磁界がかかるような磁石の配置が難しく、光偏向器全体のサイズが大きくなりやすい。
【0022】
駆動部106aによる支持部105aの駆動方式が圧電駆動である場合には、駆動部106aの断面構造は、例えば、
図2のようになる。
【0023】
図2に示すように、駆動部106aは、厚み方向(Z方向)に複数の層からなる。具体的には、駆動部106aにおいて、弾性部となる基部がシリコン層130により形成されている。シリコン層130の厚みは、例えば、20~60μm程度である。シリコン層130により形成された基部は、剛性を有し、半導体プロセス処理に適用可能な材料であればよく、無機材料または有機材料、金属ガラス等により形成されていてもよく、また、複数の材料を多層化した多層構造であってもよい。
【0024】
駆動部106aにおいて、弾性部となるシリコン層130の+Z側の面の上に、下部電極131、圧電層132、上部電極133が順に積層されている。下部電極131、圧電層132、及び上部電極133は、圧電駆動部となる。
【0025】
下部電極131及び上部電極133は、例えば、金(Au)または白金(Pt)等により形成されている。圧電層132は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により形成されているが、その他の圧電材料であってもよく、種類は問わない。
【0026】
また、圧電駆動部は、圧電層が複数積層され、中間電極を含む構造のものであってもよい。圧電駆動部は、外部制御装置に電気的に接続されており、電圧を印加することで駆動する圧電アクチュエータである。また、圧電駆動部の+Z側は、酸化シリコン等により形成された不図示の絶縁膜で覆われており、その絶縁膜の+Z側の面の上に電気配線が形成されているものであってもよい。
【0027】
図3は、支持部と可動部との接続位置について説明する図であり、
図1から可動部103及び第1のアクチュエータ部104aを抜き出した部分平面図である。
図3において、一点鎖線で示したAは第1のアクチュエータ部104aのみが可動部103に接続された場合の回転軸、矢印Bは駆動部106aの伸長方向(
図3ではY軸に平行な方向)、107aは駆動部106aの固定端(すなわち、駆動部106aと固定部との接続箇所)を示す。
図3では、固定端107aはX軸に平行であり、固定端107aの斜線側が固定部となる。
【0028】
固定部は、第1のアクチュエータ部104aを固定する部分であり、例えば、シリコン支持層、酸化シリコン層、及びシリコン活性層から構成される。固定部には、例えば、電極接続部が形成される。電極接続部は、例えば、駆動部106aの下部電極131及び上部電極133と、アルミニウム(Al)等の電極配線を介して、電気的に接続されている。電極接続部は、例えば、光偏向器100の外部に配置される制御装置等と電気的に接続される。
【0029】
尚、可動部103と、第1のアクチュエータ部104aと、固定部とを有する部分を、第1の部材と称する場合がある。また、第1のアクチュエータ部104aとは別に設けられた可動部103を揺動させる他のアクチュエータ部を有する部分を、第2の部材と称する場合がある。
【0030】
ここで、可動部103の中心上を通り可動部103の回転軸Aと平行な仮想線Cを考える。なお、
図3の例では、回転軸Aが可動部103の中心上を通っているため、仮想線Cは回転軸Aと一致しているが、回転軸Aは可動部103の中心上を通らない場合もあり、その場合には仮想線Cは回転軸Aと一致しない。
【0031】
上述のように可動部103は、略円形状や楕円形状、多角形状等の形状で構成されるが、本明細書及び特許請求の範囲において、可動部が何れの形状で構成される場合についても、可動部の中心とは、可動部を平面視したときの重心の位置である。
【0032】
可動部103及び第1のアクチュエータ部104aは、仮想線Cにより、駆動部106aが含まれる第1の領域R1と駆動部106aが含まれない第2の領域R2に2分することができる。
【0033】
このとき、支持部105aと可動部103は、少なくとも第2の領域R
2で接続される。すなわち、支持部105aと可動部103との接続箇所Dの少なくとも一部は、第2の領域R
2内に入り込む。接続箇所Dの全部が、第2の領域R
2内に配置されてもよい。
図3の例では、接続箇所Dの全部が、第2の領域R
2内に配置されている。
【0034】
このように、光偏向器100では、第1のアクチュエータ部104aの支持部105aと可動部103との接続箇所Dの少なくとも一部が第2の領域R2内に入り込む。第2のアクチュエータ部104bを単体で見た場合の支持部105bと可動部103との接続箇所、及び第3のアクチュエータ部104cを単体で見た場合の支持部105cと可動部103との接続箇所についても同様であることが好ましい。
【0035】
この構造により、従来のように支持部と可動部との接続箇所の全部が第1の領域R1内に配置される場合に比べて、支持部105a、105b、及び105cを長尺化できる。その結果、支持部105a、105b、及び105cが動きやすくなるため、光偏向器100全体の機械的な振動耐性は維持したまま、可動部103の振れ角を増大させることが可能となり、共振周波数の低下抑制と走査角拡大を両立できる。
【0036】
特に、
図1及び
図3に示すように、各支持部が駆動部の伸長方向(
図3では矢印B方向)と垂直な方向(
図3ではX方向)に伸びる部分を有し、仮想線Cを挟んで可動部103の駆動部106aと反対側に回り込んで可動部103と接続される場合、各支持部をより長尺化できる。その結果、一の駆動部による可動部の揺動を他の駆動部を有するアクチュエータ部が抑制しにくくなるため走査角を一層拡大できる。また、
図1のように可動部の外周に駆動部を複数配置する場合でも、支持部の配置が干渉し合わないため、チップサイズ増大を抑制可能となり、光偏向器100を小型化できる。
【0037】
尚、駆動部106aの固定端107aは
図3の位置には限定されず、
図4の位置であってもよい。すなわち、
図3では平面視において可動部103の中心から視た駆動部106aの先端側の辺が可動部103側を向く場合(言い換えれば、平面視において固定端107aから視たとき、駆動部106aの先端側の辺よりも可動部103の中心が固定端107aから遠い場合)の例を示したが、
図4のように、平面視において可動部103の中心から視た駆動部106aの先端側の辺が可動部103側を向かない場合(言い換えれば、平面視において固定端107aから視たとき、駆動部106aの先端側の辺よりも可動部103の中心が固定端107aに近い場合)にも、以下の要件を満たすことで、支持部105a、105b、及び105cを長尺化できる。
【0038】
ここで、可動部103の中心から視た駆動部106aの先端側の辺とは、駆動部106aにおける矢印Bの先端側の辺、すなわち、駆動部106aにおける固定端107aとは反対側の辺である。なお、辺とは、必ずしも直線からなる辺である必要はなく、曲線からなる辺であってもよい。また、
図3では駆動部106の形状を四角形で表したが多角形や曲線を含む形状であってもよい。このとき、先端側の辺とは、固定端107aから最も遠い位置にある辺を意味し、固定端107aから最も遠い位置に複数の辺があれば、その何れを先端側の辺としてもよい。
【0039】
図4では、固定端107aはY軸に平行であり、固定端107aの斜線側が固定部となる。また、矢印Bで示す駆動部106aの伸長方向は、X軸に平行な方向となる。また、第1のアクチュエータ部104aのみが可動部103に接続された場合の回転軸Aは、Y軸に平行な方向となる。
【0040】
ここで、可動部103の中心上を通り可動部103の回転軸Aと垂直な仮想線Cを考える。可動部103及び第1のアクチュエータ部104aは、仮想線Cにより、駆動部106aが含まれる第1の領域R1と駆動部106aが含まれない第2の領域R2に2分することができる。
【0041】
このとき、支持部105aと可動部103は、少なくとも第2の領域R
2で接続される。すなわち、支持部105aと可動部103との接続箇所Dの少なくとも一部は、第2の領域R
2内に入り込む。接続箇所Dの全部が、第2の領域R
2内に配置されてもよい。
図4の例では、接続箇所Dの全部が、第2の領域R
2内に配置されている。
図4の場合も、
図3の場合と同様に支持部を長尺化できるため、
図3の場合と同様の効果を奏する。
【0042】
すなわち、
図3のように平面視において可動部103の中心から視た駆動部106aの先端側の辺が可動部103側を向く場合(言い換えれば、平面視において固定端107aから視たとき、駆動部106aの先端側の辺よりも可動部103の中心が固定端107aから遠い場合)は、可動部103の中心上を通り可動部103の回転軸Aと平行な仮想線Cを引く。そして、仮想線Cにより、駆動部106aが含まれる第1の領域R
1と駆動部106aが含まれない第2の領域R
2に2分したときに、支持部105aと可動部103との接続箇所Dの少なくとも一部が第2の領域R2内に入り込むようにする。これにより、前述のように、共振周波数の低下抑制と走査角拡大を両立できる。
【0043】
一方、
図4のように平面視において可動部103の中心から視た駆動部106aの先端側の辺が可動部103側を向かない場合(言い換えれば、平面視において固定端107aから視たとき、駆動部106aの先端側の辺よりも可動部103の中心が固定端107aに近い場合)は、可動部103の中心上を通り可動部103の回転軸Aと垂直な仮想線Cを引く。そして、仮想線Cにより、駆動部106aが含まれる第1の領域R
1と駆動部106aが含まれない第2の領域R
2に2分したときに、支持部105aと可動部103との接続箇所Dの少なくとも一部が第2の領域R
2内に入り込むようにする。これにより、前述のように、共振周波数の低下抑制と走査角拡大を両立できる。
【0044】
なお、
図1に示す光偏向器100は、平面視において点対称であることが好ましい。線対称の場合には、ミラー部101の中心に対して接続箇所Dが偏るため、安定した揺動を実現できないためである。以降の実施形態に係る光偏向器についても同様である。
【0045】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、支持部と可動部との接続箇所や支持部の形態等に関するバリエーションの例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0046】
図5~
図8は、支持部と可動部との接続位置の変形例について説明する図である。
図5~
図8では、固定端107aの位置が
図4と同一の場合について説明するが、固定端107aの位置が
図3と同一の場合についても、支持部と可動部との接続箇所を
図5~
図8に示す位置にすることができる。
【0047】
図3及び
図4では、接続箇所Dは第3象限と第4象限を跨ぐ位置に配置されていたが、
図5のように、支持部105aが略直角に屈曲する1つの屈曲部を有し、接続箇所Dが第2象限と第3象限を跨ぐ位置に配置されてもよい。
【0048】
ここで、象限とは、
図3に代表して図示するように、仮想線Cと可動部103の中心上を通り仮想線Cに垂直な直線Eとによって仕切られた平面の四つの部分を指す。直線Eの右側で仮想線Cの上側が第1象限、直線Eの左側で仮想線Cの上側が第2象限、直線Eの左側で仮想線Cの下側が第3象限、直線Eの右側で仮想線Cの下側が第4象限である。なお、
図4~
図16の場合、直線Eは回転軸Aと一致する。つまり、
図4~
図16では、回転軸Aの右側で仮想線Cの上側が第1象限、回転軸Aの左側で仮想線Cの上側が第2象限、回転軸Aの左側で仮想線Cの下側が第3象限、回転軸Aの右側で仮想線Cの下側が第4象限である。
【0049】
図6のように、支持部105aが略直角に屈曲する1つの屈曲部を有し、接続箇所Dが第3象限に配置されてもよい。或いは、
図7のように、支持部105aが略直角に屈曲する2つの屈曲部を有し、接続箇所Dが第4象限に配置されてもよい。或いは、
図8のように、支持部105aが略直角に屈曲する3つの屈曲部を有し、接続箇所Dが第1象限と第4象限を跨ぐ位置に配置されてもよい。尚、
図5及び
図8は、接続箇所Dの一部が第2の領域R
2内に入り込む例である。
【0050】
図7のように支持部105aと可動部103が第4象限で接続される場合や、
図8のように支持部105aと可動部103が第1象限と第4象限を跨ぐ位置で接続される場合には、支持部105aを長尺化できるため、走査角拡大に有利である。
図8の場合には、支持部105aを特に長尺化できるため、走査角拡大に一層有利である。
【0051】
図9~
図16は、支持部に関する変形例について説明する図である。
図9~
図16では、固定端107aの位置が
図4と同一の場合について説明するが、固定端107aの位置が
図3と同一の場合についても、支持部を
図9~
図16と同様に変形することができる。また、
図9~
図16において、支持部と可動部との接続箇所を
図5~
図8に示す位置等に変更してもよい。
【0052】
図9のように、支持部105aは、X方向またはY方向に対して斜めに伸びる部分を有してもよい。
【0053】
また、支持部105aと駆動部106aとの接続箇所については、
図4のように駆動部106aの固定端107aと直交する辺の端部ではなく、
図10のように駆動部106aの固定端107aと直交する辺の端部以外としてもよい。或いは、
図11や
図12のように、支持部105aと駆動部106aとの接続箇所は、駆動部106aの先端側の辺の端部や端部以外としてもよい。
【0054】
なお、支持部105aと駆動部106aとの接続箇所を駆動部106aの先端側の辺とした場合、駆動部106aの長さが伸びているのと同じになるため、共振周波数の低下が懸念される。これに対して、駆動部106aの長さ方向(矢印B方向)よりも幅方向のほうが共振周波数の低下には影響しにくい。そのため、支持部105aと駆動部106aとの接続箇所は、駆動部106aの固定端107aと直交する辺の駆動部先端側とすることが特に好ましい。
【0055】
図13のように、支持部105aの幅は一定でなく、支持部105aの一部の幅が支持部105aの他部の幅よりも太くてもよい。特に強度の弱い部分において、支持部105aの幅を太くすることで、第1のアクチュエータ部104aの劣化や破損を抑制できる。特に強度の弱い部分とは、例えば、大きな応力がかかりやすい支持部105aの駆動部106aに近い根元側の部分である。
【0056】
図14のように、支持部105aはミアンダ構造109を含んでもよい。これにより、支持部105aの剛性が下がり、走査角を一層拡大できる。
【0057】
図15のように、支持部105aは湾曲部を有してもよい。このとき、支持部105aの形状は、可動部103の中心を中心とした円弧を含む形状であることが好ましい。
図15の例では、支持部105aの円弧を含む形状の最内周部と可動部103の最外周部との間には、可動部103の最外周部に沿った略一定幅の間隙が形成されている。ここで、略一定幅とは、半導体プロセスにおける製造ばらつき程度の誤差は許容する趣旨である。このように、支持部105aの形状を可動部103の中心を中心とした円弧を含む形状とすることで、デッドスペースを小さくできる。
【0058】
図16のように、支持部105aの円弧を含む形状の部分はミアンダ構造109を含んでもよい。これにより、支持部105aの剛性が下がり、走査角を一層拡大できる。
【0059】
尚、可動部103のミラー反射面102の周辺に光を反射する物体が存在すると、その箇所での反射光が本来欲しい反射光にとっての迷光となりS/N比が低下する。つまり光偏向器100を用いたモジュールの性能が低下する。例えば、画像投影装置であれば画質が劣化し、光検査装置であれば検出精度が低下する。
【0060】
そのため、可動部103のミラー反射面102の周辺は支持部105aと駆動部106aとの接続箇所の近傍を除いて何も存在しない間隙を有することが望ましい。すなわち、可動部103の最外周部と、支持部105aの湾曲部の最内周部との間には、可動部103の最外周部に沿った一定幅の間隙が形成されていることが好ましい。また、迷光の回避のみではなく、製造プロセス誤差の低減という観点からも、両者の形成する間隙は、可動部103の最外周部に沿った一定幅であることが好ましい。
【0061】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、可動装置である光偏向器について第1実施形態とは異なる例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0062】
図17は、第2実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図(その1)である。
図17に示す光偏向器100Aは、可動部103と、第1のアクチュエータ部104aと、第2のアクチュエータ部104bと、第3のアクチュエータ部104cと、第4のアクチュエータ部104dとを有している。光偏向器100は、可動部103を揺動させて、入射する光を多軸方向に偏向するベクタースキャンに対応可能な4相の光偏向器である。
【0063】
光偏向器100Aにおいて、可動部103は、第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、第3のアクチュエータ部104c、及び第4のアクチュエータ部104dにより、回動可能な状態で支持されている。
【0064】
第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、及び第3のアクチュエータ部104c、及び第4のアクチュエータ部104dは、可動部103を揺動させる部分である。第4のアクチュエータ部104dは、第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、及び第3のアクチュエータ部104cと同様の構造であり、支持部105dと、駆動部106dとを有している。
【0065】
光偏向器100Aのように、アクチュエータ部を4つ備えてもよい。この場合にも、各支持部と可動部との接続箇所の位置が第1実施形態で説明した要件を満たすことで、共振周波数の低下抑制と走査角拡大を両立できる。なお、光偏向器100Aにおいて、各支持部と可動部との接続箇所や各支持部の形態等については、第1実施形態で説明したとおりに変形が可能である。
【0066】
図18は、第2実施形態に係る可動装置である光偏向器を例示する平面図(その2)である。4相の光偏向器は、
図18に示す形態とすることもできる。
図18に示す光偏向器100Bでは、ミラー部101及びミラー反射面102を含む可動部153は、第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、第3のアクチュエータ部104c、及び第4のアクチュエータ部104dにより、回動可能な状態で支持されている。
【0067】
枠状の可動部153の内側を橋渡しするように、ミラー部101を挟んで対向する可動部梁157a及び157bが接続されている。可動部梁157a及び157bの各々の略中央から略垂直方向(X方向)にトーション梁156a及び156bが伸び、ミラー部101を支持している。
【0068】
本実施形態においては、ミラー部101は、可動部梁157a及び157bにより共振駆動可能な状態で支持されている。例えば、トーション梁156a及び156bのねじれ共振周波数を約20kHzに設定した場合、トーション梁156a及び156bに接続された可動部梁157a及び157bの+Z側の面に設けられた圧電駆動部に共振周波数近傍の駆動信号を入力する。
【0069】
これにより、可動部梁157a及び157bが振動し、この振動を受けてトーション梁156a及び156bの機械的共振のねじれが生じ、ミラー部101を可動部梁157a及び157bにより、X方向に平行な回転軸を中心に揺動させることができる。このX方向に平行な回転軸を中心とする揺動は、第1のアクチュエータ部104a、第2のアクチュエータ部104b、及び第3のアクチュエータ部104c、及び第4のアクチュエータ部104dによる多軸方向の揺動と組み合わせることができる。
【0070】
図19に示す光偏向器100Cのように、可動部153において、ミラー部101は、可動部梁157c及び157dを用いた片持ち構造により共振駆動可能な状態で支持されてもよい。
【0071】
図20に示す光偏向器100Dのように、可動部153において、ミラー部101は、ミアンダ構造158a及び158bにより支持されてもよい。光偏向器100Dでは、一端が可動部153の内周側に接続され、他端がミラー部101の外周側と接続された2つのミアンダ構造158a及び158bを有している。そして、ミラー部101を挟んで対向する2つのミアンダ構造158a及び158bは、ミラー部101を共振駆動可能な状態で両側から支持している。
【0072】
図21に示す光偏向器100Eのように、各アクチュエータ部において、駆動部をミアンダ構造としてもよい。光偏向器100Eにおいて、可動部153は、第1のアクチュエータ部104e、第2のアクチュエータ部104f、第3のアクチュエータ部104g、及び第4のアクチュエータ部104hにより、回動可能な状態で支持されている。
【0073】
第1のアクチュエータ部104e、第2のアクチュエータ部104f、第3のアクチュエータ部104g、及び第4のアクチュエータ部104hは、可動部153を揺動させる部分である。第1のアクチュエータ部104eは、支持部105eと、駆動部106eとを有している。第2のアクチュエータ部104fは、支持部105fと、駆動部106fとを有している。第3のアクチュエータ部104gは、支持部105gと、駆動部106gとを有している。第4のアクチュエータ部104hは、支持部105hと、駆動部106hとを有している。
【0074】
第1のアクチュエータ部104e、第2のアクチュエータ部104f、第3のアクチュエータ部104g、及び第4のアクチュエータ部104hは同様の構造である。そのため、以下では第1のアクチュエータ部104eについて説明を行い、第2のアクチュエータ部104f、第3のアクチュエータ部104g、及び第4のアクチュエータ部104hの説明は省略する。
【0075】
第1のアクチュエータ部104eにおいて、支持部105eは、一端が可動部153と接続され、他端が駆動部106eと接続され、可動部153を支持する。支持部105eは、直線状ではなく、屈曲部を有する構造である。
図21では、一例として、支持部105eは略直角に屈曲する2つの屈曲部を有している。
【0076】
第1のアクチュエータ部104eにおいて、駆動部106eは、一端が支持部105eの他端に接続され、他端が固定部108に接続され、支持部105eを介して可動部153を揺動させる。駆動部106eはミアンダ構造であり、
図21の例では、駆動部106eによる支持部105eの駆動方式は圧電駆動である。なお、
図21においては、固定部108は枠状に形成されているが、固定部108は枠状でなくてもよい。
【0077】
駆動部106eは、所定間隔をあけて並置された細長状の複数の梁部115と、隣り合う梁部115を接続する接続部116とを有している。隣り合う梁部115同士が接続部116により折り返すように交互に接続されてミアンダ構造を形成している。
【0078】
各々の梁部115の+Z側の面の上には、梁部115ごとに、交互に圧電駆動部郡125Aと圧電駆動部郡125Bが設けられている。圧電駆動部郡125Aと圧電駆動部郡125Bに電圧信号を印加することで、ミラー部101を含む可動部153を揺動させることができる。圧電駆動部郡125Aと圧電駆動部郡125Bの断面構造は、例えば、前述の
図2のようになる。
【0079】
図21に示す光偏向器100Eのように、各駆動部をミアンダ構造とすることで、複数の梁部の変位を効果的に累積可能となるため、走査角を一層拡大できる。
【0080】
なお、
図18~
図21に示す光偏向器において、可動部梁157a及び157bによるミラー部101の回転軸方向は、図示した方向には限定されない。例えば、可動部梁157a及び157bの長手方向をX軸に平行に配置することで、ミラー部101をY方向に平行な回転軸を中心に揺動させることができる。
【0081】
また、
図18~
図21に示す光偏向器において、各支持部と可動部との接続箇所の位置が第1実施形態で説明した要件を満たすことで、共振周波数の低下抑制と走査角拡大を両立できる。また、各支持部と可動部との接続箇所や各支持部の形態等については、第1実施形態で説明したとおりに変形可能である。
【0082】
以上に説明した本実施形態における光偏向器は、光走査システム、光偏向システム、画像投影装置、光書込装置、物体認識装置、レーザヘッドランプ、及びヘッドマウントディスプレイに使用することができる。それぞれについて、以下に順次説明する。
【0083】
[光走査システム]
まず、本実施形態の可動装置を適用した光走査システムについて、
図22~
図25に基づいて詳細に説明する。
【0084】
図22には、光走査システムの一例の概略図が示されている。
図22に示すように、光走査システム10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を可動装置13の有する反射面14により偏向して被走査面15を光走査するシステムである。
【0085】
光走査システム10は、制御装置11,光源装置12、反射面14を有する可動装置13により構成される。
【0086】
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。可動装置13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMS(Micro Electromechanical Systems)デバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
【0087】
制御装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12および可動装置13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12および可動装置13に駆動信号を出力する。
【0088】
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向または2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。
【0089】
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御装置11の制御によって、可動装置13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光をある1軸周りに偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。なお、本実施形態の可動装置の詳細および制御装置による制御の詳細については後述する。
【0090】
次に、光走査システム10一例のハードウェア構成について
図23を用いて説明する。
図23は、光走査システム10の一例のハードウェア構成図である。
図23に示すように、光走査システム10は、制御装置11、光源装置12および可動装置13を備え、それぞれが電気的に接続されている。このうち、制御装置11は、CPU20、RAM21(Random Access Memory)、ROM22(Read Only Memory)、FPGA23、外部I/F24、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26を備えている。
【0091】
CPU20は、ROM22等の記憶装置からプログラムやデータをRAM21上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する演算装置である。
【0092】
RAM21は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0093】
ROM22は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU20が光走査システム10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0094】
FPGA23は、CPU20の処理に従って、光源装置ドライバ25および可動装置ドライバ26に適した制御信号を出力する回路である。
【0095】
外部I/F24は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば自動車のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F24は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F24が用意されてもよい。
【0096】
光源装置ドライバ25は、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0097】
可動装置ドライバ26は、入力された制御信号に従って可動装置13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0098】
制御装置11において、CPU20は、外部I/F24を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU20が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM22やFPGA23に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0099】
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。また、例えば、光走査により光書込みを行う場合は、光走査情報は書込み順や書込み箇所を示した書込みデータである。他にも、例えば、光走査により物体認識を行う場合は、光走査情報は物体認識用の光を照射するタイミングと照射範囲を示す照射データである。
【0100】
制御装置11は、CPU20の命令および
図23に示したハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
【0101】
次に、光走査システム10の制御装置11の機能構成について
図24を用いて説明する。
図24は、光走査システムの制御装置の一例の機能ブロック図である。
【0102】
図24に示すように、制御装置11は、機能として制御部30と駆動信号出力部31とを有する。
【0103】
制御部30は、例えばCPU20、FPGA23等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部31に出力する。例えば、制御部30は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部31に出力する。駆動信号出力部31は、光源装置ドライバ25、可動装置ドライバ26等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または可動装置13に駆動信号を出力する。
【0104】
駆動信号は、光源装置12または可動装置13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、可動装置13においては、可動装置13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。
【0105】
次に、光走査システム10が被走査面15を光走査する処理について
図25を用いて説明する。
図25は、光走査システムに係る処理の一例のフローチャートである。
【0106】
ステップS11において、制御部30は、外部装置等から光走査情報を取得する。
【0107】
ステップS12において、制御部30は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部31に出力する。
【0108】
ステップS13において、駆動信号出力部31は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および可動装置13に出力する。
【0109】
ステップ14において、光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光照射を行う。また、可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う。光源装置12および可動装置13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
【0110】
なお、上記光走査システム10では、1つの制御装置11が光源装置12および可動装置13を制御する装置および機能を有しているが、光源装置用の制御装置および可動装置用の制御装置と、別体に設けてもよい。
【0111】
また、上記光走査システム10では、一つの制御装置11に光源装置12および可動装置13の制御部30の機能および駆動信号出力部31の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部30を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部31を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光走査システム10のうち、反射面14を有した可動装置13と制御装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
【0112】
このように本実施形態に係る可動装置を、光走査システムに用いることにより、走査角の大きい光走査システムを得ることが可能となる。
【0113】
[画像投影装置]
次に、本実施形態の可動装置を適用した画像投影装置について、
図26および
図27を用いて詳細に説明する。
【0114】
図26は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した自動車400の実施形態に係る概略図である。また、
図27はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
【0115】
画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。
【0116】
図26に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、自動車400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、ユーザーである観察者(運転者402)に向かう。これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によってユーザーに虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0117】
図27に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R,501G,501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメートレンズ502,503,504と、2つのダイクロイックミラー505,506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する可動装置13にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R,501G,501B、コリメートレンズ502,503,504、ダイクロイックミラー505,506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
【0118】
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を自動車400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0119】
レーザ光源501R,501G,501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメートレンズ502,503,504で略平行光とされ、合成部となる2つのダイクロイックミラー505,506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する可動装置13によって二次元走査される。可動装置13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0120】
可動装置13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R,501G,501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0121】
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した可動装置13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0122】
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、車両の他に航空機、船舶、移動式ロボット等を含む移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0123】
尚、ヘッドアップディスプレイ装置500は、特許請求の範囲に記載の「ヘッドアップディスプレイ」の一例である。また自動車400は、特許請求の範囲に記載の「移動体」の一例である。
【0124】
このように本実施形態に係る可動装置を、画像投影装置に用いることにより、投影可能領域の大きい画像投影装置を得ることが可能となる。
【0125】
[光書込装置]
次に、本実施形態の可動装置13を適用した光書込装置について
図28および
図29を用いて詳細に説明する。
【0126】
図28は、光書込装置600を組み込んだ画像形成装置の一例である。また、
図29は、光書込装置の一例の概略図である。
【0127】
図28に示すように、上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有するレーザプリンタ650等に代表される画像形成装置の構成部材として使用される。画像形成装置において光書込装置600は、1本または複数本のレーザビームで被走査面15である感光体ドラムを光走査することにより、感光体ドラムに光書込を行う。
【0128】
図29に示すように、光書込装置600において、レーザ素子などの光源装置12からのレーザ光は、コリメートレンズなどの結像光学系601を経た後、反射面14を有する可動装置13により1軸方向または2軸方向に偏向される。そして、可動装置13で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ602aと第二レンズ602b、反射ミラー部602cからなる走査光学系602を経て、被走査面15(例えば感光体ドラムや感光紙)に照射し、光書込みを行う。走査光学系602は、被走査面15にスポット状に光ビームを結像する。また、光源装置12および反射面14を有する可動装置13は、制御装置11の制御に基づき駆動する。
【0129】
このように上記光書込装置600は、レーザ光によるプリンタ機能を有する画像形成装置の構成部材として使用することができる。また、走査光学系を異ならせて1軸方向だけでなく2軸方向に光走査可能にすることで、レーザ光をサーマルメディアに偏向して光走査し、加熱することで印字するレーザラベル装置等の画像形成装置の構成部材として使用することができる。
【0130】
上記光書込装置に適用される反射面14を有した可動装置13は、ポリゴンミラー等を用いた回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、光書込装置の省電力化に有利である。また、可動装置13の振動時における風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、光書込装置の静粛性の改善に有利である。光書込装置は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また可動装置13の発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、よって画像形成装置の小型化に有利である。
【0131】
このように本実施形態に係る可動装置を、光書込装置に用いることにより、書き込み可能領域の広い光書込装置を得ることが可能となる。
【0132】
[物体認識装置]
次に、上記本実施形態の可動装置を適用した物体認識装置について、
図30および
図31を用いて詳細に説明する。
【0133】
図30は、物体認識装置の一例であるライダ(LiDAR;Laser Imaging Detection and Ranging)装置を搭載した自動車の概略図である。また、
図31はライダ装置の一例の概略図である。
【0134】
物体認識装置は、対象方向の物体を認識する装置であり、例えばライダ装置である。
【0135】
図30に示すように、ライダ装置700は、例えば自動車701に搭載され、対象方向を光走査して、対象方向に存在する被対象物702からの反射光を受光することで、被対象物702を認識する。
【0136】
図31に示すように、光源装置12から出射されたレーザ光は、発散光を略平行光とする光学系であるコリメートレンズ703と、平面ミラー704とから構成される入射光学系を経て、反射面14を有する可動装置13で1軸もしくは2軸方向に走査される。そして、投光光学系である投光レンズ705等を経て装置前方の被対象物702に照射される。光源装置12および可動装置13は、制御装置11により駆動を制御される。被対象物702で反射された反射光は、光検出器709により光検出される。すなわち、反射光は入射光検出受光光学系である集光レンズ706等を経て撮像素子707により受光され、撮像素子707は検出信号を信号処理回路708に出力する。信号処理回路708は、入力された検出信号に2値化やノイズ処理等の所定の処理を行い、結果を測距回路710に出力する。
【0137】
測距回路710は、光源装置12がレーザ光を発光したタイミングと、光検出器709でレーザ光を受光したタイミングとの時間差、または受光した撮像素子707の画素ごとの位相差によって、被対象物702の有無を認識し、さらに被対象物702との距離情報を算出する。
【0138】
反射面14を有する可動装置13は多面鏡に比べて破損しづらく、小型であるため、耐久性の高い小型のレーダ装置を提供することができる。このようなライダ装置は、例えば車両、航空機、船舶、ロボット等に取り付けられ、所定範囲を光走査して障害物の有無や障害物までの距離を認識することができる。
【0139】
上記物体認識装置では、一例としてのライダ装置700の説明をしたが、物体認識装置は、反射面14を有した可動装置13を制御装置11で制御することにより光走査を行い、光検出器により反射光を受光することで被対象物702を認識する装置であればよく、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0140】
例えば、手や顔を光走査して得た距離情報から形状等の物体情報を算出し、記録と参照することで対象物を認識する生体認証や、対象範囲への光走査により侵入物を認識するセキュリティセンサ、光走査により得た距離情報から形状等の物体情報を算出して認識し、3次元データとして出力する3次元スキャナの構成部材などにも同様に適用することができる。
【0141】
このように本実施形態に係る可動装置を、物体認識装置に用いることにより、認識可能範囲が広い物体認識装置を得ることが可能となる。
【0142】
[レーザヘッドランプ]
次に、上記本実施形態の可動装置を自動車のヘッドライトに適用したレーザヘッドランプ50について、
図32を用いて説明する。
図32は、レーザヘッドランプ50の構成の一例を説明する概略図である。
【0143】
レーザヘッドランプ50は、制御装置11と、光源装置12bと、反射面14を有する可動装置13と、ミラー51と、透明板52とを有する。
【0144】
光源装置12bは、青色のレーザ光を発する光源である。光源装置12bから発せられた光は、可動装置13に入射し、反射面14にて反射される。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面をXY方向に可動し、光源装置12bからの青色のレーザ光をXY方向に二次元走査する。
【0145】
可動装置13による走査光は、ミラー51で反射され、透明板52に入射する。透明板52は、表面又は裏面を黄色の蛍光体により被覆されている。ミラー51からの青色のレーザ光は、透明板52における黄色の蛍光体の被覆を通過する際に、ヘッドライトの色として法定される範囲の白色に変化する。これにより自動車の前方は、透明板52からの白色光で照明される。
【0146】
可動装置13による走査光は、透明板52の蛍光体を通過する際に所定の散乱をする。これにより自動車前方の照明対象における眩しさは緩和される。
【0147】
可動装置13を自動車のヘッドライトに適用する場合、光源装置12b及び蛍光体の色は、それぞれ青及び黄色に限定されない。例えば、光源装置12bを近紫外線とし、透明板52を、光の三原色の青色、緑色及び赤色の各蛍光体を均一に混ぜたもので被覆してもよい。この場合でも、透明板52を通過する光を白色に変換でき、自動車の前方を白色光で照明することができる。
【0148】
このように本実施形態に係る可動装置を、レーザヘッドランプに用いることにより、照明可能な領域が広いレーザヘッドランプを得ることが可能となる。
【0149】
[ヘッドマウントディスプレイ]
次に、上記本実施形態の可動装置を適用したヘッドマウントディスプレイ60について、
図33~34を用いて説明する。ここでヘッドマウントディスプレイ60は、人間の頭部に装着可能な頭部装着型ディスプレイで、例えば、眼鏡に類する形状とすることができる。ヘッドマウントディスプレイを、以降ではHMDと省略して示す。
【0150】
図33は、HMD60の外観を例示する斜視図である。
図33において、HMD60は、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント60a、及びテンプル60bにより構成されている。フロント60aは、例えば、導光板61により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル60bに内蔵することができる。
【0151】
図34は、HMD60の構成を部分的に例示する図である。なお、
図34では、左眼用の構成を例示しているが、HMD60は右眼用としても同様の構成を有している。
【0152】
HMD60は、制御装置11と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面14を有する可動装置13と、導光板61と、ハーフミラー62とを有している。
【0153】
光源ユニット530は、上述したように、レーザ光源501R、501G、及び501Bと、コリメートレンズ502、503、及び504と、ダイクロイックミラー505、及び506とを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、レーザ光源501R、501G、及び501Bからの三色のレーザ光は、合成部となるダイクロイックミラー505及び506で合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。
【0154】
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置13に入射する。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面14をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われ、走査光によりカラー画像が形成される。
【0155】
可動装置13による走査光は、導光板61に入射する。導光板61は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー62に導光する。導光板61は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
【0156】
ハーフミラー62は、導光板61からの光をHMD60の背面側に反射し、HMD60の装着者63の眼の方向に出射する。ハーフミラー62は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー62での反射により、装着者63の網膜に結像する。或いは、ハーフミラー62での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者63の網膜に結像する。またハーフミラー62での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者63は、XY方向に走査される光で形成される画像を、観察することができる。
【0157】
62はハーフミラーであるため、装着者63には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して観察される。ハーフミラー62に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを観察できる構成としてもよい。
【0158】
このように本実施形態に係る可動装置を、ヘッドマウントディスプレイに用いることにより、画像形成可能な領域が広いヘッドマウントディスプレイを得ることが可能となる。
【0159】
[パッケージング]
次に、本実施形態の可動装置のパッケージングについて
図35を用いて説明する。
【0160】
図35は、パッケージングされた可動装置の一例の概略図である。
【0161】
図35に示すように、可動装置13は、パッケージ部材801の内側に配置される取付部材802に取り付けられ、パッケージ部材801の一部を透過部材803で覆われて、密閉されることでパッケージングされる。さらに、パッケージ内は窒素等の不活性ガスが密封されている。これにより、可動装置13の酸化による劣化が抑制され、さらに温度等の環境の変化に対する耐久性が向上する。
【0162】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0163】
例えば、上記の各実施形態では可動部がミラー部を有しているが、可動部はミラー部の代わりに回折格子、フォトダイオード、ヒータ(例えば、SiNを用いたヒータ)、光源(例えば、面発光型レーザ)等を有してもよい。
【符号の説明】
【0164】
10 光走査システム
11 制御装置
12、12b 光源装置
13 可動装置
14 反射面
15 被走査面
25 光源装置ドライバ
26 可動装置ドライバ
30 制御部
31 駆動信号出力部
50 レーザヘッドランプ
51 ミラー
52 透明板
60 ヘッドマウントディスプレイ
60a フロント
60b テンプル
61 導光板
62 ハーフミラー
63 装着者
100、100A~100E 光偏向器
101 ミラー部
102 ミラー反射面
103、153 可動部
104a 第1のアクチュエータ部
104b 第2のアクチュエータ部
104c 第3のアクチュエータ部
104d 第4のアクチュエータ部
105a~105h 支持部
106a~106h 駆動部
107a 固定端
108 固定部
109 ミアンダ構造
115 梁部
116 接続部
125A、125B 圧電駆動部郡
130 シリコン層
131 下部電極
132 圧電層
133 上部電極
156a、156b トーション梁
157a、157b 可動部梁
【先行技術文献】
【特許文献】
【0165】