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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240326BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B65H7/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020087046
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021017052
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019133080
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴晃
(72)【発明者】
【氏名】井上 孔佑
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-076872(JP,A)
【文献】特開2018-177393(JP,A)
【文献】特開2011-201642(JP,A)
【文献】特開2015-009545(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03450184(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B65H 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って搬送される記録媒体の厚さに応じて、前記記録媒体の浮きを判定する閾値を変更する第1制御部と、
前記記録媒体の浮きを検出する検出ビームを出射する投光部と、
前記検出ビームが入射する受光部と、
前記記録媒体が前記検出ビームによって閾値より大きい高さで検出された場合、前記記録媒体の浮きを判定する判定部と、
前記記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記記録媒体の搬送開始タイミングからの時間を測定し、前記記録媒体が前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出される位置に到達するタイミングで、前記第1制御部に変更通知を送信する第2制御部と、を備え、
前記第1制御部は、前記第2制御部から前記変更通知を受信した場合、前記閾値を変更する、
液体吐出装置。
【請求項2】
前記検出ビームは、高さ方向に幅を有するライン状のレーザである、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1制御部は、前記記録媒体の厚さを含む記録媒体情報を受信し、前記記録媒体情報と前記閾値との対応関係を示す対応情報を参照して、前記閾値を変更する、
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記記録媒体の厚さを検出する厚さ検出部を更に備え、
前記第1制御部は、検出された厚さが厚いほど前記閾値を大きくする、
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記記録媒体の搬送位置を検出する搬送位置検出部を更に備え、
前記第1制御部は、前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出される位置の前の搬送位置で前記記録媒体が検出された場合、前記閾値を変更する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第2制御部は、前記記録媒体が前記検出ビームによって閾値より大きい高さで検出された場合、前記記録媒体の搬送動作を停止する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
第1制御部が、搬送経路に沿って搬送される記録媒体の厚さに応じて、前記記録媒体の浮きを判定する閾値を変更するステップと、
投光部が、前記記録媒体の浮きを検出する検出ビームを出射するステップと、
受光部が、前記検出ビームが入射するステップと、
判定部が、前記記録媒体が前記検出ビームによって閾値より大きい高さで検出された場合、前記記録媒体の浮きを判定するステップと、
液体吐出ヘッドが、前記記録媒体に液体を吐出するステップと、
第2制御部が、前記記録媒体の搬送開始タイミングからの時間を測定し、前記記録媒体が前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出される位置に到達するタイミングで、前記第1制御部に変更通知を送信するステップと、を含み、
前記閾値を変更するステップは、前記第1制御部が、前記第2制御部から前記変更通知を受信した場合、前記閾値を変更するステップ、
を含む液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置が知られている。典型的なインクジェット方式の画像形成装置は、液滴を吐出するヘッドを有する。ヘッド下を記録媒体が搬送される。ヘッドから吐出された液滴は、媒体に着弾し、この結果画像形成が行われる。
【0003】
近年、商用の画像形成装置にもインクジェット方式が適用されている。商用の画像形成装置でインクジェット方式を採用する装置では、高画質を実現する必要がある。このためにインクジェットヘッドと記録媒体(例えば用紙)との距離を1mm程度の近距離にする必要がある。そのため、わずかな用紙の浮きが発生した場合でも用紙がヘッドと接触し、ヘッドを傷つけてしまう可能性がある。用紙がヘッドと接触することを、本明細書ではヘッドアタックと称する。
【0004】
ヘッドアタックを防止するためには、まず用紙の浮きを検知する必要がある。そのため、インクジェットヘッドよりも上流に用紙の浮きを検知する検出機構を設ける構成が知られている。この検出機構は、レーザ光を投光する投光部と、レーザ光を受光する受光部とから構成される光学センサ対で実現される。
【0005】
本明細書では光学センサ対を以下用紙浮きセンサと称する。投光部は、用紙の搬送方向と直交する方向に、かつ用紙の上部を用紙と並行に、レーザ光を出射する。用紙が搬送されている際にレーザ光を出射すると、用紙の浮きがある場合にレーザ光が阻害され、受光部で受光する光の強度が変動する。この変動により、用紙の浮きが生じているか否かを判定する。
【0006】
ここで画像形成装置は、複数種類の用紙に対して画像形成することが一般的である。用紙の種類として、たとえば用紙の厚さが考えられる。用紙の厚さが異なる複数種類の用紙を用いる場合には、ヘッドと用紙との距離が異なることになる。そのため、用紙浮きを検知するためのレーザ光も、用紙の厚さに応じて調整する必要がある。
【0007】
例えば特許文献1には、異なる厚みを有する用紙が搬送された時でもヘッドと用紙との距離を同様にし、用紙浮きと判断するための用紙浮き量を一定とする構成が開示されている。
【0008】
すなわち、この技術は、投光部と受光部の間にガラスを設置し、ガラスの回転角を制御することでレーザ光の出射高さを変更し、一定の浮き量で検出するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術では、ガラスの回転角を高精度に制御する必要があり、記録媒体の厚さに応じて、リアルタイムに正しく記録媒体の浮きを判定することが困難だった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、記録媒体の厚さに応じて、リアルタイムに正しく記録媒体の浮きを判定することができる液体吐出装置及び液体吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、搬送経路に沿って搬送される記録媒体の厚さに応じて、前記記録媒体の浮きを判定する閾値を変更する第1制御部と、前記記録媒体の浮きを検出する検出ビームを出射する投光部と、前記検出ビームが入射する受光部と、前記記録媒体が前記検出ビームによって閾値より大きい高さで検出された場合、前記記録媒体の浮きを判定する判定部と、前記記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記記録媒体の搬送開始タイミングからの時間を測定し、前記記録媒体が前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出される位置に到達するタイミングで、前記第1制御部に変更通知を送信する第2制御部と、を備える。前記第1制御部は、前記第2制御部から前記変更通知を受信した場合、前記閾値を変更する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、用紙の厚さに応じて正しく検知高さを変更することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は実施形態の液体吐出装置の例を示す図である。
図2図2は実施形態の液体吐出ヘッドモジュールの例を示す図である。
図3A図3Aは実施形態の光学センサ対の例を示す図である。
図3B図3Bはドラムと光学センサ対、および検出ビームとの関係を示す断面図である。
図3C図3Cは、記録媒体を搬送している状態を示す断面図である。
図3D図3Dは、記録媒体を搬送している状態を示す断面図である。
図3E図3Eは、用紙浮きが生じている状態を示す断面図である。
図4図4は実施形態の液体吐出装置の主要部の機能構成の例を示す図である。
図5A図5Aは実施形態の閾値の例1を示す図である。
図5B図5Bは実施形態の閾値の例2を示す図である。
図6図6は実施形態の液体吐出方法の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、液体吐出装置及び液体吐出方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は実施形態の液体吐出装置100の例を示す図である。図1の例は、液体吐出装置100が、オンデマンド方式のライン走査型インクジェット記録装置である場合を示す。液体吐出装置100は、液体吐出部210と、給紙部220と、レジスト調整部230と、乾燥部240と、記録媒体反転部250と、排紙部290とを備える。液体吐出部210は、実施形態では画像形成部である。
【0016】
印刷中の流れの一例を説明すると、まず給紙部220の給紙スタック221に積載された記録媒体(例えば用紙等)W1が、エアー分離部222によって1枚ずつピックアップされ、液体吐出部210の方向に搬送される。なお図1において、記録媒体W1の搬送方向を矢印400a~iで示す。
【0017】
エアー分離部222は、給紙スタックに積載されている記録媒体W1に対して側面からエアーを吹き付ける機構である。このエアー吹き付けにより、積載されている記録媒体W1間にエアーを吹き入れて、それぞれの記録媒体W1の間に空隙を作り、スタック状に接触している1枚1枚の記録媒体W1を分離し、給紙ピックアップを容易にするものである。
【0018】
給紙部220から搬送された記録媒体W1が、レジスト調整部230に達すると、レジスト調整部230が、記録媒体W1の傾きの補正を行う。レジスト調整部230には、レジストローラ対231が配置されている。このレジストローラ対231が記録媒体W1の傾きを補正する。
【0019】
レジスト調整された記録媒体W1は、液体吐出部210に送られる。液体吐出ヘッドモジュール28の上流には、厚さ検出部47及び光学センサ対300が配置されている。厚さ検出部47は、記録媒体W1の厚さを検出する。検出された記録媒体W1の厚さは、光学センサ対300の閾値の決定に用いられる。
【0020】
記録媒体W1は、円筒形上のドラム10表面に設けた記録媒体グリッパ11によって記録媒体W1先端を挟まれる。図1では記録媒体グリッパ11はドラム上の3か所に設けられている。ドラム10が回転することで、記録媒体W1は回転とともに、液体吐出ヘッドモジュール28K~28Pに対向する位置へ搬送される。
【0021】
液体吐出ヘッドモジュール28K~28Pは、インクジェット方式によりインクを吐出するものである。液体吐出ヘッドモジュール28K~28Pは、円筒形状のドラム10表面に沿って放射状に角度をもって配列されている。それぞれの液体吐出ヘッドモジュール28K~28Pには所定のインクが充填されている。液体吐出ヘッドモジュール28K~28Pは順に、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー(CMYKの基本4色)と、それに加えた特別な色(たとえば金、透明など)のインクを吐出する。
【0022】
液体吐出部210では、複数の液体吐出ヘッドモジュール28K~28Pが、円周の外側からドラム10の表面に保持された記録媒体W1の外周面へインクを吐出することで、記録媒体W1上に画像を形成する。以下、液体吐出ヘッドモジュール28K~28Pを区別しない場合、単に液体吐出ヘッドモジュール28と記載する。
【0023】
円筒形状のドラム10の外周面には、空吐出受け12が設けられている。空吐出受け12は、液体吐出ヘッドモジュール28が記録媒体W1にインクを吐出していないときに、空吐出として吐出されたインクを受け取る。
【0024】
画像が形成された記録媒体W1は、乾燥部240に送られる。乾燥部240には乾燥ユニット241が配置されている。乾燥ユニット241は典型的にはヒータであり、この下を記録媒体W1が通過することによって、記録媒体W1の水分が蒸発する。また、乾燥部240には、記録媒体反転機構251を含む記録媒体反転部250が設けられている。
【0025】
片面印刷時には、記録媒体反転機構251は記録媒体W1を209に送るように搬送路を切り替える。
【0026】
一方、両面印刷時には、記録媒体反転機構251は記録媒体W1を反転搬送部252に送るように搬送路を切り替える。記録媒体W1は、反転搬送部252を経由して再度液体吐出部210の方向へ搬送される。このとき、記録媒体W1はまずレジストローラ253に到達する。このレジストローラ253が記録媒体W1の傾きを補正する。この後、記録媒体W1はドラム10に達する。こうして、記録媒体W1の裏面に対する画像形成が行われる。
【0027】
乾燥部240による乾燥を終えた記録媒体W1は排紙部290に搬送され、揃えられた状態で積載される。
【0028】
図2は実施形態の液体吐出ヘッドモジュール28の例を示す図である。液体吐出ヘッドモジュール28は、主に、駆動制御基板17、液体吐出ヘッド15及びケーブル16から構成される。液体吐出ヘッド15は、実施形態ではインクジェット記録ヘッドである。駆動制御基板17には、駆動制御部26と、駆動波形生成部27と、記憶部18とが搭載されている。ケーブル16は、駆動制御基板コネクタ19と、ヘッド側コネクタ20とが取り付けられている。ケーブル16は、駆動制御基板17と、液体吐出ヘッド15に搭載されているヘッド基板22との間のアナログ信号及びデジタル信号の通信を担う。
【0029】
液体吐出ヘッド15は、主に、残留振動検知モジュール21、ヘッド基板22、ヘッド駆動IC基板24、ヘッド内インクタンク23及び剛性プレート25から構成される。尚、ライン走査型インクジェット記録装置では、液体吐出ヘッド15が、記録媒体W1の搬送方向の垂直方向である本紙面の奥行き方向(若しくは、手前方向)に、同液体吐出ヘッド15を並べたラインヘッド構成である。ただし、実施形態の液体吐出装置100は、1つ若しくは複数の液体吐出ヘッド15を、記録媒体W1の搬送方向の垂直方向である本紙面の奥行方向(若しくは、手前方向)に移動しながら、更に記録媒体W1を搬送方向に搬送し、画像を形成する上記ライン走査型構成(例えばシリアル走査型プリンタや、その他の液体吐出装置等)に限定されない。
【0030】
図3Aは実施形態の光学センサ対300の例を示す図である。この光学センサ対300は、投光部31及び受光部32を有する。図3Aは光学センサ対300を示す斜視図である。図3Bはドラムと光学センサ対300、および検出ビームとの関係を示す断面図である。図3C図3Dは、記録媒体W1を搬送している状態を示す断面図である。さらに図3Eは、用紙浮きが生じている状態を示す断面図である。
【0031】
投光部31及び受光部32を有する光学センサ対300は、前述したとおり液体吐出ヘッドモジュール28よりも上流に設置される。投光部31及び受光部32は、ドラム10の両側面より外側に配置される。これら投光部31および受光部32は、ドラム10の回転とは無関係にたとえばフレーム(図示せず)に固定されている。
【0032】
投光部31から出射される検出ビーム33は、高さ方向に所定の幅を有する。高さ方向は、ドラム10の表面に対して垂直方向である。この検出ビーム33の一部は、ドラム10により遮蔽され、残り部分が受光部32に到達する。
【0033】
投光部31は、光センサの発光手段である。投光部31は、例えば検出ビーム(レーザ光)33を搬送面34に対し平行に出射する。投光部31は、検出ビーム33をほぼ平行で微小な角度を持って出射する。これは、光の特性(回折など)上、微小な角度を持たせて実装したほうが、検知バラつきが小さくなることもあるためである。
【0034】
受光部32は、光センサの受光手段である。受光部32は、検出ビーム33を受光し、その受光量に応じた電圧値を出力する。この電圧値から、検出ビーム33を遮蔽する物体の高さを測定することができる。
【0035】
前述したように、この検出ビーム33の一部は、ドラム10により遮蔽され、残り部分が受光部に到達する。換言すれば何ら用紙を搬送していない状態でも、検出ビーム33の一部はドラム10で阻害され、残余の部分が受光部に到達する。これに加え、用紙を搬送している場合は、さらに用紙の厚さ分だけ検出ビーム33が阻害される。さらに、用紙浮きが発生している場合には、さらに検出ビーム33が阻害される。
【0036】
このような構成により、用紙を搬送していない状態で、まずドラム面の高さを知ることができる。ドラムは円筒形であり、ドラム1周の回転にはドラム軸の偏心や駆動機構のメカ的な問題により変動が生じる場合がある。そこで、用紙を搬送していない状態でドラムを1周回転させる。この回転にともなうドラム自身の高さ変動を1周に渡って把握することにより、用紙搬送時に検知される変動からドラム自身の変動を差し引くことで、用紙搬送にともなう変動のみを求めることができる。
【0037】
図3Cおよび図3Dは用紙を搬送している状態を示す断面図である。
【0038】
図3Cは、紙厚が比較的薄い記録媒体W1を搬送している状態を示す断面図である。検出ビーム33が、ドラム上に搬送されている記録媒体W1の分だけ、さらに遮蔽され、受光部32に届く光量が図3Bに比べて減少している。
【0039】
図3Dは、紙厚が比較的厚い記録媒体W1を搬送している状態を示す断面図である。記録媒体W1の厚さは、図3Cに比べて厚い。このため、検出ビーム33が遮蔽される量がさらに大きい。結果、受光部32に届く光量が図3Cに比べて減少している。
【0040】
図3Eは、用紙浮きが生じている状態を示す断面図である。用紙浮きが生じている場合、用紙がより高い位置まで到達している。図3Eは、用紙の一部が湾曲している状態を示しているが、用紙浮きは他にも、用紙が全体的にドラムから離れてしまっているような状態の場合も意味する。
【0041】
受光部32は、投光部31から出射されるライン状の検出ビーム33の遮光量を高さ方向で検知する。ライン状の検出ビーム33は、高さ方向に幅をもつ検出ビーム33である。この受光部32により、ドラム10や用紙により阻害されずに受光部32まで到達した検出ビーム33の光量が、それぞれの高さで検知される。
【0042】
このように、用紙の厚さおよび用紙浮きの程度によって、受光部に到達する光量が変動する。この受光した光量を検出することにより、用紙の搬送状態を把握することができる。
【0043】
上述したように、用紙を搬送していない状態でビームを投射し、まずドラム面の高さを検知する。その後に実際に用紙を搬送し、その用紙および用紙浮きのために阻害されたビームを受光する。これらの受光量を比較することにより、用紙を搬送した結果、受光部にて受光されるビームがどれほど減少しているかを求められる。
【0044】
このビーム減少量は、搬送されている用紙によりビームが阻害されているものと、用紙浮きが生じている場合には、その用紙浮きによりビームが阻害されているものとの合算によるものである。
【0045】
一方で画像形成装置は、現在どの種類の用紙を搬送しているかについては把握している。したがって、画像形成装置は、実際に受光部により受光されたビームの減少量から、搬送されている用紙による減少量を除けば、どの程度の用紙浮きが生じているかを求めることができる。
【0046】
このように、受光部32が搬送面34上で搬送経路に沿って搬送される記録媒体W1に用紙浮きが生じて検出ビーム33を遮蔽した量に応じて、用紙浮きの有無および大きさが検出される。
【0047】
なお図3A~Eでは、対向する形で投光部31と受光部32とを設置する場合を記載しているが、投光部31と受光部32とは対向する形で設置されていなくてもよい。例えば、投光部31と受光部32とを1つのモジュールにして同じ場所に置いてもよい。この場合は、例えば対向する位置に反射板等の部材を置くことで、検出ビーム33の経路として記録媒体W1を隔てる構成とする。
【0048】
図4は実施形態の液体吐出装置100の主要部の機能構成の例を示す図である。センサ制御ユニット43は制御部44と記憶部45とを有する。このセンサ制御ユニット43は、例えばサブCPU(第1制御部)によって実現される。システム制御ユニット46は、例えばメインCPU(第2制御部)によって実現される。
【0049】
センサユニット40は、前述した投光部31、および受光部32とを含んで構成される機能ブロックである。このセンサユニット40は、さらに通信ユニット41およびアンプユニット42(判定部)を有する。通信ユニット41は例えばRS232CなどのIFを有し、制御部44(第1制御部)から閾値を受信する。アンプユニット42(判定部)は、受光部の検出結果に応じて用紙浮きの有無および大きさを判断する。すなわち、記録媒体W1の浮きが、検出ビーム33の閾値(検出閾値)の高さに到達すると、システム制御ユニット46に対して異常を通知する。システム制御ユニット46は、異常を通知されると記録媒体W1の搬送動作を停止する。
【0050】
記憶部45は、センサ制御ユニット43で情報を保持する記憶装置である。記憶部45は、例えば記録媒体W1の厚さを記憶する。閾値は、制御部44によって記憶媒体の厚さに基づいて決定される。制御部44が、記録媒体W1の厚さを取得する方法には、例えば以下の2つの方法が考えられる。
【0051】
1つ目の方法は、記録媒体W1の厚さを検出する厚さ検出部47(例えばフィラーや測距センサなど)を、例えば図1のように搬送の上流側に用意する方法である。厚さ検出部47は、検出された厚さを含む検出結果を制御部44に入力する。制御部44は、検出された厚さに基づいて閾値を算出し、当該閾値をセンサユニット40に送信する。例えば制御部44は、検出された厚さが厚いほど閾値を大きくする。1つ目の方法では、厚さ検出部47が、実際に記録媒体W1を見るので、厚さの誤差を消去できる。また、1つ目の方法では、印刷ジョブに含まれる記録媒体W1の情報と、実際に搬送される記録媒体W1とが異なった場合にも対応できる。
【0052】
2つ目の方法は、システム制御ユニット46(第2制御部)から、記録媒体W1の厚さを含む記録媒体情報を制御部44に送信する方法である。制御部44は、記憶部45に格納された記録媒体情報と閾値との対応関係を示す対応情報を参照し、当該対応関係から決定された閾値をセンサユニット40に送信する。2つ目の方法では、メインCPUが持っている記録媒体情報を元に閾値を変更できるので、光センサ対300よりも前段に設置される厚さ検出部47が不要となる。
【0053】
また、閾値は、制御部44によって更新される。閾値を変更するタイミングを決定する方法は、例えば以下の2つの方法が考えられる。
【0054】
1つ目の方法は、記録媒体W1の搬送位置を検出する搬送位置検出部48(例えば汎用的なフォトセンサなど)を搬送の上流側に用意する方法である。制御部44は、液体吐出ヘッド15によって液体が吐出される位置の前の搬送位置(例えば液体が吐出される位置の直前)で記録媒体W1が検出された場合、閾値を変更する。液体が吐出される位置の前の搬送位置は、例えば液体吐出ヘッド15によって液体が吐出される位置との距離が距離閾値より小さい搬送位置である。
【0055】
2つ目の方法は、記録媒体W1が液体吐出ヘッド15によってインクが吐出される位置に到達するタイミングで、制御部44に変更通知を送信する方法である。このタイミングは、例えば記録媒体W1の搬送開始タイミングから経過した所定の時間によって定められる。システム制御ユニット46は、記録媒体W1の搬送開始タイミングから経過した時間を測定し、搬送開始タイミングから所定の時間が経過したときに、制御部44に変更通知を送信する。制御部44は、システム制御ユニット46から変更通知を受信した場合、閾値を変更する。これにより異なる厚さの記録媒体W1が連続で搬送された場合も適切なタイミングで閾値の変更が可能になる。
【0056】
図5Aは実施形態の閾値の例1(閾値35A)を示す図である。閾値35Aは、記録媒体W1Aの厚さに基づいて決定される。図5Bは実施形態の閾値の例2(閾値35B)を示す図である。閾値35Aは、記録媒体W1Bの厚さに基づいて決定される。以下、記録媒体W1A及び1Bを区別しない場合は、単に記録媒体W1という。同様に、閾値35A及び閾値35Bを区別しない場合は、単に閾値35という。
【0057】
制御部44は、記録媒体W1の厚さに応じて、閾値35を例えば閾値35Aから閾値35Bに更新する。これにより、厚さが異なる記録媒体W1が搬送されても、リアルタイムに(搬送される記録媒体W1に合わせて)閾値35を変え、閾値35に応じて記録媒体W1からヘッドアレイ下部までの距離を一定にすることができる。すなわち同じ浮き量で浮きを検知することができる。制御部44は、例えば記録媒体W1の厚さが厚いほど、閾値35を高くし、記録媒体W1の厚さが薄いほど閾値35を低くする。
【0058】
なお、センサユニット(図5A及びBでは、投光部31及び受光部32)そのものを上下させることでも同じ浮き量で浮きを検知することは可能である。ただし、この場合はユニットの移動に時間がかかる点や、移動させる機構を追加する分のコスト上昇といったデメリットがある。
【0059】
図6は実施形態の液体吐出方法の例を示すフローチャートである。はじめに、厚さ検出部47が、記録媒体W1の厚さを含む記録媒体情報を検出する(ステップS1)。次に、制御部44が、今回検出された記録媒体情報と、前回検出されていた記録媒体情報とに差異があるか否かを判定する(ステップS2)。差異がない場合(ステップS2,No)、処理はステップS6に進む。
【0060】
差異がある場合(ステップS2,Yes)、制御部44が、ステップS1の処理によって検出された記録媒体情報に応じた閾値35を算出し、当該閾値35を記憶部45に記憶する(ステップS3)。次に、搬送位置検出部48が、印刷対象となる記録媒体W1がセンサユニット40に搬送されてくるタイミングを判定する(ステップS4)。次に、制御部44は、センサユニット40に記録媒体W1が搬送される直前に(ステップS4,Yes)、ステップS3の処理により算出された閾値35を、センサユニット40に送信し、センサユニット40の閾値35を変更する(ステップS5)。
【0061】
次に、制御部44が、印刷ジョブが終了したか否かを判定する(ステップS6)。印刷ジョブが終了していない場合(ステップS6,No)、次の記録媒体W1に対して同様の処理を実施するため、ステップS1に戻る。印刷ジョブが終了した場合(ステップS6,Yes)、処理を終了する。
【0062】
以上説明したように、実施形態の液体吐出装置100では、制御部44(第1制御部)が、搬送経路に沿って搬送される記録媒体W1の厚さに応じて、記録媒体W1の浮きを判定する閾値35を変更する。この閾値変更に次いで、投光部31が、検出ビーム33を出射する。この結果、前述したような構成および動作にて、用紙浮きの有無および大きさが検出される。用紙浮きの大きさが閾値35より大きい場合、記録媒体1の浮き異常と判定される。そして記録媒体W1の搬送動作が停止される。記録媒体W1の浮きがない場合、あるいは記録媒体W1の浮きが閾値よりも小さい場合は、引き続き記録媒体W1の搬送動作が続行され、液体吐出ヘッドモジュール28から液体が吐出される。
【0063】
これにより実施形態の液体吐出装置100によれば、記録媒体W1の厚さに応じて、リアルタイムに正しく記録媒体W1の浮きを判定することができる。例えば高速に用紙が搬送される環境で、搬送される用紙の紙厚が変わった場合でも、リアルタイムかつ高精度に一定の浮き量で用紙の浮きを判定することができる。
【符号の説明】
【0064】
W1 記録媒体
10 ドラム
11 記録媒体グリッパ
12 空吐出受け
15 液体吐出ヘッド
16 ケーブル
17 駆動制御基板
18 記憶部
19 駆動制御基板コネクタ
20 ヘッド側コネクタ
21 残留振動検知モジュール
22 ヘッド基板
23 ヘッド内インクタンク
24 ヘッド駆動IC基板
25 剛性プレート
26 駆動制御部
27 駆動波形生成部
28 液体吐出ヘッドモジュール
31 投光部
32 受光部
33 検出ビーム
34 搬送面
35 閾値
40 センサユニット
41 通信ユニット
42 アンプユニット
43 センサ制御ユニット
44 制御部
45 記憶部
46 システム制御ユニット
47 厚さ検出部
48 搬送位置検出部
210 液体吐出部
220 給紙部
221 給紙スタック
222 エアー分離部
230 レジスト調整部
231 レジストローラ対
240 乾燥部
241 乾燥ユニット
250 記録媒体反転部
251 記録媒体反転機構
252 反転搬送部
253 レジストローラ
290 排紙部
300 光学センサ対
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【文献】特開2015-009545号公報
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5A
図5B
図6