(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ダミー基板、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G11B 5/84 20060101AFI20240326BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G11B5/84 Z
C03C19/00 Z
(21)【出願番号】P 2020143277
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】垣田 順
(72)【発明者】
【氏名】久志野 高宏
(72)【発明者】
【氏名】稲田 秀典
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/062134(WO,A1)
【文献】特開2003-346335(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129633(WO,A1)
【文献】特開2001-266338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/84
C03C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有する円板状のガラス基板と、前記ガラス基板の厚み方向に沿った外周面および前記中心孔の内周面の磁気記録膜とを有し、
前記ガラス基板の一面および他面の表面粗さ(Ra)が0.2nm以上、100nm以下の範囲であることを特徴とするダミー基板。
【請求項2】
前記ガラス基板の外縁部および前記中心孔の内縁部には、前記ガラス基板の一面および他面から、それぞれ前記外周面および前記内周面に向けて、前記ガラス基板の厚みが漸減するように傾斜した傾斜面が形成され、
前記傾斜面には、前記磁気記録膜が更に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のダミー基板。
【請求項3】
前記磁気記録膜は、軟磁性材料を含む軟磁性層と、磁化容易軸が前記磁気記録膜の膜厚方向に沿った垂直磁性層と、前記垂直磁性層の配向を制御する配向制御層と、を少なくとも有する積層膜であることを特徴とする請求項1または2に記載のダミー基板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のダミー基板の製造方法であって、
前記ガラス基板の表面全体を覆う前記磁気記録膜を有する磁気記録ディスクを用いて、前記ガラス基板の一面および他面に形成されている前記磁気記録膜を取り除く除去工程を有することを特徴とするダミー基板の製造方法。
【請求項5】
前記除去工程は、研磨液を前記磁気記録ディスクに向けて流すとともに、前記磁気記録ディスクの一面および他面を研磨パットまたは研磨ブラシによって研磨する工程であることを特徴とする請求項4に記載のダミー基板の製造方法。
【請求項6】
前記研磨液は、平均粒径が0.4μm以上、0.8μm以下の範囲の酸化アルミニウム研磨材を媒体液に分散させたものからなることを特徴とする請求項5に記載のダミー基板の製造方法。
【請求項7】
前記除去工程に用いる前記磁気記録ディスクは、磁気記録ディスクのグライド・サーティファイテストの際に、予め定めた基準を満たさないものを用いることを特徴とする請求項5または6に記載のダミー基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板に磁気記録膜を成膜する際のモニタリングに用いるダミー基板、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に用いられる磁気記録媒体は、記録密度の著しい向上が図られつつある。特に、MR(magneto resistive)ヘッドやPRML(Partial Response Maximum Likelihood)技術が導入されて以来、磁気記録媒体の面記録密度は大幅に高められている。
【0003】
また、近年、ビッグデータの活用の拡大から、データセンターにおけるデータの蓄積量が増大し続けている。そして、データセンターのスペース上の問題から、データセンターにおけるハードディスクドライブの単位体積当たりの記録容量を高める必要性が生じている。すなわち、規格化されたハードディスクドライブの一台当たりの記録容量を高めるため、磁気記録媒体の一枚当たりの記録容量を高めることに加え、ドライブケースの内部に納める磁気記録媒体の枚数を増やすことが試みられている。
【0004】
こうした磁気記録媒体に用いられる基板としては、主に、アルミニウム合金基板とガラス基板が用いられている。このうち、ガラス基板は、アルミニウム合金基板に比べて、剛性が高く、厚みをより薄くすることができる(例えば、特許文献1を参照)。これにより、同じ寸法の筐体内により多くの磁気記録媒体を内蔵して、省スペースで大容量化を図ることができ、データセンターなどに用いられるハードディスクドライブに好ましく用いることができる。
【0005】
ハードディスクドライブの磁気記録媒体は、中心孔のある円板状の基板の表面に、例えばスパッタリングなどの成膜手段によって、磁性層や配向制御層などからなる磁気記録膜を成膜することで製造される。
磁気記録媒体の製造にあたっては、一般的にスパッタ成膜装置が用いられる。こうしたスパッタ成膜装置は、動作開始にあたって、ターゲットの取付、シールドの取付、真空ポンプの調整などが行われた後、動作が安定するまで試運転が行われる。こうした試運転時には、新規の基板を用いる代わりに、所定の基準に達しなかった規格外の磁気記録媒体を再生したダミー基板を用いることにより、磁気記録媒体の製造コストを低減することが行われている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-142084号公報
【文献】特開2011-049432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダミー基板は、一般的に製品用の磁気記録媒体に用いられる基板と同一の材料からなる基板を用いるが、ガラス基板を用いる場合、アルミニウム合金基板と比較してコストが高い。このため、製品にならないガラス製のダミー基板に係るコストによって、ガラス基板を用いた磁気記録媒体の製造コストが高くなるという課題があった。
【0008】
更に、製造された磁気記録媒体の中には、所定の品質基準に達しない不合格品も発生するが、コストの高いガラス基板を用いた磁気記録媒体の不合格品のロスによるコストも、ガラス基板を用いた磁気記録媒体の製造コストを高くする原因となっている。
【0009】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、ガラス基板を用いた磁気記録媒体の不合格品を有効利用し、ガラス基板を用いた磁気記録媒体の製造コストを低減することが可能なダミー基板、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のダミー基板は、中心孔を有する円板状のガラス基板と、前記ガラス基板の厚み方向に沿った外周面および前記中心孔の内周面の磁気記録膜とを有し、前記ガラス基板の一面および他面の表面粗さ(Ra)が0.2nm以上、100nm以下の範囲であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、前記ガラス基板の外縁部および前記中心孔の内縁部には、前記ガラス基板の一面および他面から、それぞれ前記外周面および前記内周面に向けて、前記ガラス基板の厚みが漸減するように傾斜した傾斜面が形成され、前記傾斜面には、前記磁気記録膜が更に形成されていてもよい。
【0012】
また、本発明では、前記磁気記録膜は、軟磁性材料を含む軟磁性層と、磁化容易軸が前記磁気記録膜の膜厚方向に沿った垂直磁性層と、前記垂直磁性層の配向を制御する配向制御層と、を少なくとも有する積層膜であってもよい。
【0013】
本発明のダミー基板の製造方法は、前記各項に記載のダミー基板の製造方法であって、前記ガラス基板の表面全体を覆う前記磁気記録膜を有する磁気記録ディスクを用いて、前記ガラス基板の一面および他面に形成されている前記磁気記録膜を取り除く除去工程を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、前記除去工程は、研磨液を前記磁気記録ディスクに向けて流すとともに、前記磁気記録ディスクの一面および他面を研磨パットまたは研磨ブラシによって研磨する工程であってもよい。
【0015】
また、本発明では、前記研磨液は、平均粒径が0.4μm以上、0.8μm以下の範囲の酸化アルミニウム研磨材を媒体液に分散させたものからなっていてもよい。
【0016】
また、本発明では、前記除去工程に用いる前記磁気記録ディスクは、磁気記録ディスクのグライド・サーティファイテストの際に、予め定めた基準を満たさないものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガラス基板を用いた磁気記録媒体の不合格品を有効利用し、ガラス基板を用いた磁気記録媒体の製造コストを低減することが可能なダミー基板、およびその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態のダミー基板を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態のダミー基板を示す要部拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態のダミー基板の製造方法の概要を示した概略図である。
【
図4】製品として磁気記録ディスク(a)および本実施形態の除去工程(b)を示した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態のダミー基板、およびその製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
(ダミー基板)
図1は、本発明の一実施形態のダミー基板を示す外観斜視図である。また、
図2は本発明の一実施形態のダミー基板を示す要部拡大断面図である。
本実施形態のダミー基板10は、全体が円板状を成し、中央部分に円形の中心孔12が形成されたガラス基板11と、少なくともガラス基板11の厚み方向tに沿った外周面11eおよび中心孔12の内周面12eに形成された磁気記録膜13とを有する。また本実施形態では、磁気記録膜13は、ガラス基板11の外縁部E1および中心孔12の内周面12eにそれぞれ形成された傾斜面14r1,14r2にも形成されている。
【0021】
ガラス基板11は、外縁から中心に向かって所定の幅の領域となる外縁部E1に、ガラス基板11の一面11a(表主表面)および他面(裏主表面)11bから、それぞれ外周面11eに向かってガラス基板11の厚みが漸減するように傾斜した傾斜面(チャンファー面)14r1,14r1が形成されている。なお、本実施形態では、外縁部E1は、こうした傾斜面14r1,14r1が形成された領域であればよい。また、ガラス基板11の一面11a(表主表面)および他面(裏主表面)11bは、ダミー基板10のうち、磁気記録膜13が形成されずにガラス基板11を構成するガラス素材が露呈している部分である。
【0022】
また、ガラス基板11は、中心孔12から外縁に向かって所定の幅の領域となる内縁部E2に、ガラス基板11の一面11a(表主表面)および他面(裏主表面)11bから、それぞれ内周面12eに向かってガラス基板11の厚みが漸減するように傾斜した傾斜面(チャンファー面)14r2,14r2が形成されている。なお、本実施形態では、内縁部E2は、こうした傾斜面14r2,14r2が形成された領域であればよい。
【0023】
このような傾斜面(チャンファー面)14r1,14r2は、円筒形のガラスブロックから円板状にスライスしたガラス素板の外周縁の角部および中心孔の内周縁の角部をチャンファリング加工(面取加工)することにより形成されたものであり、ガラス素板の外周縁の角部や内周縁の角部に割れや欠けが生じることを防止する。
【0024】
そして、ガラス基板11の一面11a(表主表面)および他面(裏主表面)11b、即ち、ダミー基板10のうち、磁気記録膜13が形成されずにガラス基板11を構成するガラス素材が露呈している部分の表面粗さ(Ra)は、0.2nm以上、100nm以下の範囲とされている。
【0025】
ガラス基板11の一面11a(表主表面)および他面(裏主表面)11bの表面粗さ(Ra)が0.2nm未満であると、ダミー基板10として磁気記録膜13を成膜する際に、磁気記録膜13とダミー基板10との密着性が低下する懸念がある。一方、ガラス基板11の一面11a(表主表面)および他面(裏主表面)11bの表面粗さ(Ra)が100nmを超えると、製品としての磁気記録ディスクと同様の表面平滑性が得られず、成膜条件の設定等に用いる際に支障がある。
【0026】
ガラス基板11を構成するガラス素材としては、例えば、一般的なアルミノシリケートガラスが用いられる。アルミノシリケートガラスは、例えば、58質量%~75質量%のSiO2と、5質量%~23質量%のAl2O3と、3質量%~10質量%のLi2Oと、4質量%~13質量%のNa2Oと、を主成分として含有する。なお、ガラス素材は、アルミノシリケートガラスに限られるものではなく、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラスなど、任意の素材であってもよい。
【0027】
ガラス基板11の製造方法としては、溶融したガラス素材を、予め加熱された円筒形の鋳型に鋳込み、徐冷して円筒形のガラスブロックを得る。続いて、このガラスブロックをガラス転移点付近の温度で1~3時間保持された後に、徐冷して歪み除去加工を行う。歪み除去加工を行ったガラスブロックは、円板状にスライスされ、内周および外周を同心円としてコアドリルを用いて切り出される。または、溶融ガラスを下型に流し込んだ後、上型および下型によってプレス成形して、円板状に成形してもよい。このようにして、円板状のガラス素板(ガラスブランク材)が成形される。ガラス素板は、ダウンドロー法またはフロート法によって形成されたシートガラス(板ガラス)を切り出すことによって形成されてもよい。
【0028】
ガラス基板11の外周面11e、内周面12e、および傾斜面14r1,14r2にそれぞれ形成された磁気記録膜13は、製品として用いられる磁気記録媒体(磁気記録ディスク)の磁気記録膜と同一の構成である。例えば、磁気記録膜13は、非磁性基板であるガラス基板11の表面から順に積層された密着層、軟磁性下地層、シード層、配向制御層、磁性層、保護層、潤滑剤層などからなる積層膜である。なお、密着層、軟磁性下地層、シード層、配向制御層は、必要に応じて設けられるものであり、これらのうちの一部または全部は設けられていなくてもよい。
【0029】
そして、本実施形態のダミー基板10は、ガラス基板11の表面全体を覆うよう磁気記録膜13を形成して磁気記録媒体(磁気記録ディスク)を得た後、傾斜面14r1を除いたガラス基板11の一面11aおよび傾斜面14r2を除いた他面11bに成膜されている磁気記録膜13を取り除くことによって形成される。
【0030】
なお、本実施形態のダミー基板10を製造するための磁気記録媒体(磁気記録ディスク)は、磁気記録媒体の製品検査工程、例えば、グライドテスト、サーティファイテストの際に、予め定めた基準を満たさない不合格品を用いる。こうしたダミー基板10の製造方法は後ほど詳述する。
【0031】
以上の様な構成のダミー基板10は、例えば、製品としての磁気記録媒体(磁気記録ディスク)の製造時に用いられるスパッタ成膜装置の試運転時にセットされるダミー基板として用いられる。
【0032】
(ダミー基板の製造方法)
次に、上述した構成のダミー基板の製造方法を説明する。
図3は、本実施形態のダミー基板の製造方法の概要を示した概略図である。また、
図4は、製品として磁気記録ディスク(a)および本実施形態の除去工程(b)を示した要部拡大断面図である。なお、
図4は、磁気記録ディスクの直径方向の半分程度を拡大して示している。
本発明のダミー基板の製造方法は、ガラス基板11の表面全体を覆うように磁気記録膜13を成膜した磁気記録ディスクDのガラス基板11を覆う磁気記録膜13のうち、ガラス基板11の一面11aおよび他面11bに形成されている部分の磁気記録膜13を取り除く除去工程を少なくともを有している。
【0033】
磁気記録ディスクDは、公知の磁気記録ディスクの製造方法によって製造される。即ち、中心孔12および傾斜面(チャンファー面)14r1,14r1が形成された円板状のガラス基板11の表面全体に、成膜装置を用いて磁気記録膜13を成膜する(
図4(a)参照)。磁気記録膜13は、例えば、ガラス基板11側から順に、密着層、軟磁性下地層、シード層、配向制御層、磁性層、保護層、潤滑剤層などを順に成膜した積層膜であればよい。
【0034】
磁気記録ディスクDは、製品として所定の性能を有していることを確認するための検査が行われる。こうした検査の一例として、グライド・サーティファイテストが挙げられる。グライドテストは、グライドテスターにより、磁気記録ディスクDの表面の突起の有無や大小を検出することにより、磁気記録ディスクDの表面の平滑度を検査するものである。一方、サーティファイテストは、磁気記録ディスクDの磁気記録膜13に対してテスト信号の書込み/読み出しを行い、エラーの有無を検出して記録性能がサーティファイ(保証)されているかを検査するものである。
【0035】
こうしたグライド・サーティファイテストによって所定の基準を満たさないものは、テスト不合格品として、製品の製造ラインから分離される。こうしたテスト不合格品の磁気記録ディスクD(
図3(a))は従来は廃棄されていたが、本実施形態では、このテスト不合格品の磁気記録ディスクDをダミー基板の製造材料として用いる(
図3(a))。
集められたテスト不合格品の磁気記録ディスクDは、厚みごとに分別しておく。例えば、厚みが2μmごとに分別しておく(
図3(b))。そして、所定の枚数が溜まったら、後述する除去工程で複数枚纏めて処理を行う。
【0036】
除去工程では、例えば、グライド・サーティファイテストで不合格品となった磁気記録ディスクDを、ディスクの研磨装置にセットする(
図3(c))。そして、磁気記録ディスクDに向けて研磨液を流しつつ、例えばプラテン21で支持された一対の研磨パッドPで磁気記録ディスクDを挟んで、ガラス基板11の一面11a側および他面11b側を研磨することによって行う(
図4(b)参照)。
【0037】
除去工程で用いる研磨液は、例えば、酸化アルミニウム研磨材を媒体液に分散させたスラリーを用いることができる。酸化アルミニウム研磨材は、角のある不定形な酸化アルミニウム粒子であればよく、平均粒径が例えば0.4μm~0.8μm程度のものを用いればよい。なお、研磨液は上述したものに限定されるものではなく、磁気記録膜13を削り取ることが可能なものであれば、どのような成分のものであってもよい。
【0038】
また、除去工程で用いる研磨パッドPは、例えば、エステル系ポリウレタンからなる不織布を用いればよい。
なお、研磨パッドP以外にも、例えば、研磨ブラシ等を磁気記録膜13の除去に用いることもできる。磁気記録膜13の表面を物理的に削り取ることができる研磨体を用いる場合には、研磨液を用いずに、単に水などの洗浄冷却液を流すだけであってもよい。
【0039】
除去工程では、磁気記録ディスクDを挟んで、一面11aおよび他面11bを研磨することによって、磁気記録ディスクDの全体を覆う磁気記録膜13のうち、ガラス基板11の一面11aおよび他面11bに形成されている磁気記録膜13を除去する。
【0040】
即ち、ガラス基板11の一面11aおよび他面11bに対して平行に研磨パッドPを押し当てて、磁気記録ディスクDの厚みが所定量だけ減じるまで研磨を行うことによって、ガラス基板11の一面11aおよび他面11bに形成されている磁気記録膜13が削り取られてガラス基板11が露出する。
【0041】
また、一方で、ガラス基板11の外縁部E1、内縁部E2(
図1を参照)、およびこれに連なる傾斜面(チャンファー面)14r1,14r2に形成されている磁気記録膜13は、研磨パッドPが当接することが無く、磁気記録膜13が削り取られずに残される。
【0042】
この後、スクラブを用いてブラシで擦った後、リンス液による洗浄およびスピンドライによる乾燥(洗浄乾燥工程:
図3(d))を経て、更に目視による検査(目視検査工程:
図3(e))を行い、本実施形態のダミー基板10が得られる(
図2を参照)。製造されたダミー基板10は、所定の枚数ごとに纏められて、磁気記録ディスクDの製造工場へ出荷される(
図4(f))。
【0043】
このようにして得られたダミー基板10は、スパッタ装置等の成膜装置の動作を安定させるための試運転時に用いられるダミー基板として用いることができる。
【0044】
そして、本実施形態のダミー基板10は、従来は廃棄していたテスト不合格品の磁気記録ディスクDの磁気記録膜13の一部を削り取るだけで製造できるので、新規に製造したダミー用のガラス基板と比較して、低コストで提供することができる。また、テスト不合格品の磁気記録ディスクDの廃棄に係るコストを削減することにも寄与する。
【0045】
なお、本実施形態のダミー基板10は、成膜条件のモニタリングのために磁気記録膜を成膜した後、再度、除去工程でガラス基板11の一面11aおよび他面11bに形成されている磁気記録膜13を除去することにより、再びダミー基板10として用いることができる。このように、2回以上、複数回繰り返してダミー基板10として再生利用することによって、ダミー基板に係るコストを大きく低減することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、こうした実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0047】
本発明の実施例として、上述した実施形態のダミー基板、および市販の既製品のガラス基板(ダミー基板)をそれぞれ用いて磁気記録膜を成膜した場合の各種特性を検証した。
本発明例のダミー基板(本発明例):ガラス基板の厚み0.798mm、外縁部、内縁部、および傾斜面に形成されている磁気記録膜の厚み59.4nm、ダミー基板の直径65.06mm。
比較例の市販のガラス基板(比較例):ガラス基板の厚み0.80mm、ダミー基板の直径65.07mm。
スパッタ成膜装置(ML3040:キャノンアネルバ株式会社製)を用いて、ダーゲットの取付、シールドの取付、真空ポンプの整備をそれぞれ行った後、上述した本発明例のダミー基板、および比較例のガラス基板をそれぞれ用いて、キャリアの搬送機構の整備を行った。
その結果、本発明例のダミー基板であっても、市販のガラス基板(比較例)と同様に、支障なくスパッタ成膜装置のキャリアの搬送機構の整備に適用できることが確認された。
【0048】
次に、本発明例のダミー基板(成膜前、ガラス露呈部分)および比較例のダミー基板(成膜前)のそれぞれの表面粗さを測定した。測定には、原子間力顕微鏡(BRUKER社製)を用いた。本発明例のダミー基板および比較例のダミー基板の表面粗さの測定結果(複数回測定)は次の通りである。
本発明例:(Ra)0.465nm~0.703nm
比較例:(Ra)0.21nm
【0049】
以上の結果から、本発明例のダミー基板および比較例のダミー基板の表面粗さは、大きく変わらないことが確認された。本発明例のダミー基板の表面粗さは、0.2nm以上、100nm以下の範囲内であった。
【符号の説明】
【0050】
10…ダミー基板
11…ガラス基板
11a…一面(表主表面)
11b…他面(裏主表面)
11e…外周面
12…中心孔
12e…内周面
13…磁気記録膜
14r1,14r2…傾斜面(チャンファー面)
E1…外縁部
E2…内縁部