(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樹脂包埋試料の作製方法および多孔質試料の分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/36 20060101AFI20240326BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01N1/36
G01N1/28 G
G01N1/28 F
(21)【出願番号】P 2020155458
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2019173016
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大典
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-194283(JP,A)
【文献】特開2018-081092(JP,A)
【文献】特開2017-062223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0000903(US,A1)
【文献】特開2017-217646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0090791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
23/00-23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を有する多孔質試料を準備する準備工程と、
前記多孔質試料を樹脂で包埋して固結体を形成する第1包埋工程と、
前記多孔質試料を分断するように前記固結体を切断し、前記多孔質試料の断面が露出する切断片を形成する切断工程と、
前記切断片を樹脂で包埋し、前記多孔質試料の断面に存在する前記空隙を前記樹脂で埋める第2包埋工程と、を有
し、
前記第2包埋工程では、液状樹脂であるエポキシ樹脂に、前記切断片を前記断面が上向きとなるように浸漬させて脱泡処理を行った後、前記液状樹脂中で前記切断片を前記断面が下向きとなるように向きを変えて配置して、前記液状樹脂を硬化させる、
樹脂包埋試料の作製方法。
【請求項2】
前記多孔質試料は、断面積の最大値が2mm
2以上700mm
2以下となるような大きさを有する、
請求項1に記載の樹脂包埋試料の作製方法。
【請求項3】
空隙を有する多孔質試料を準備する準備工程と、
前記多孔質試料を樹脂で包埋して固結体を形成する第1包埋工程と、
前記多孔質試料を分断するように前記固結体を切断し、前記多孔質試料の断面が露出する切断片を形成する切断工程と、
前記切断片を樹脂で包埋し、前記多孔質試料の断面に存在する前記空隙を前記樹脂で埋める第2包埋工程と、
前記第2包埋工程で得られる樹脂包埋試料の前記多孔質試料が露出する面に電子線を照射し、電子像を取得する取得工程と、
前記電子像に基づいて前記多孔質試料を分析する分析工程と、を有
し、
前記第2包埋工程では、液状樹脂であるエポキシ樹脂に、前記切断片を前記断面が上向きとなるように浸漬させて脱泡処理を行った後、前記液状樹脂中で前記切断片を前記断面が下向きとなるように向きを変えて配置して、前記液状樹脂を硬化させる、
多孔質試料の分析方法。
【請求項4】
前記取得工程の後に、前記電子像を二値化する画像処理工程をさらに有し、
前記分析工程では、二値化された画像に基づいて前記空隙を分析する、
請求項3に記載の多孔質試料の分析方法。
【請求項5】
前記
画像処理工程では、前記電子像について、前記多孔質試料に対応する画素と前記樹脂に対応する画素とを区別するための階調を設定し、画素ごとに前記設定した階調を閾値として二値化する、
請求項4に記載の多孔質試料の分析方法。
【請求項6】
前記電子像は、反射電子像である、
請求項3~5のいずれか1項に記載の多孔質試料の分析方法。
【請求項7】
前記取得工程では、全自動鉱物分析装置を用いる、
請求項3~6のいずれか1項に記載の多孔質試料の分析方法。
【請求項8】
前記分析工程では、前記空隙について大きさごとの体積割合を測定する、
請求項3~7のいずれか1項に記載の多孔質試料の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂包埋試料の作製方法および多孔質試料の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば粒状試料などを分析する場合、粉状試料を分析装置に導入して分析しやすくするため、粉状試料を樹脂中に包埋して樹脂包埋試料を作製することが開示されている(例えば特許文献1を参照)。樹脂包埋試料は、例えば研磨や切断により分析対象を断面に露出させて、分析に供される。このような樹脂包埋試料によれば、試料を樹脂で固定できるので、試料を精度よく分析することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分析対象となる試料の中には、表面や内部に空隙を有する多孔質な試料もある。多孔質試料では、試料を構成する元素成分だけでなく、例えば空隙がどの程度の大きさを有し、その比率(体積割合など)がどの程度であるかといったような、空隙の大きさごとの存在比率が分析されることがある。
【0005】
しかし、多孔質試料を樹脂で包埋して例えば光学顕微鏡により空隙を観察しようとしても、空隙に充填された樹脂と試料の構成成分との間で色彩として明確な差が得られないことがある。また一方、電子顕微鏡で空隙を観察する場合には、電子線の照射によりチャージアップが生じ、樹脂が充填されていない空隙をその他の部分と誤認識してしまうことがある。このように多孔質試料を精度よく分析できないことがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、多孔質試料を精度よく分析する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
空隙を有する多孔質試料を準備する準備工程と、
前記多孔質試料を樹脂で包埋して固結体を形成する第1包埋工程と、
前記多孔質試料を分断するように前記固結体を切断し、前記多孔質試料の断面が露出する切断片を形成する切断工程と、
前記切断片を樹脂で包埋し、前記多孔質試料の断面に存在する前記空隙を前記樹脂で埋める第2包埋工程と、を有する、
樹脂包埋試料の作製方法が提供される。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、
前記第2包埋工程では、前記切断片を前記断面が下向きとなるように液状樹脂に浸漬させて前記液状樹脂を硬化させる。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、
前記多孔質試料は、断面積の最大値が2mm2以上、700mm2以下となるような大きさを有する。
【0010】
本発明の第4の態様は、
空隙を有する多孔質試料を準備する準備工程と、
前記多孔質試料を樹脂で包埋して固結体を形成する第1包埋工程と、
前記多孔質試料を分断するように前記固結体を切断し、前記多孔質試料の断面が露出する切断片を形成する切断工程と、
前記切断片を樹脂で包埋し、前記多孔質試料の断面に存在する前記空隙を前記樹脂で埋める第2包埋工程と、
前記第2包埋工程で得られる樹脂包埋試料の前記多孔質試料が露出する面に電子線を照射し、電子像を取得する取得工程と、
前記電子像に基づいて、前記多孔質試料を分析する分析工程と、を有する、多孔質試料の分析方法が提供される。
【0011】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、
前記取得工程の後に、前記電子像を二値化する画像処理工程をさらに有し、
前記分析工程では、二値化された画像に基づいて前記空隙を分析する。
【0012】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、
前記二値化工程では、前記電子像について、前記多孔質試料に対応する画素と前記樹脂に対応する画素とを区別するための階調を設定し、画素ごとに前記設定した階調を閾値として二値化する。
【0013】
本発明の第7の態様は、第4~第6の態様のいずれかにおいて、
前記電子像は、反射電子像である。
【0014】
本発明の第8の態様は、第4~第7の態様のいずれかにおいて、
前記取得工程では、全自動鉱物分析装置を用いる。
【0015】
本発明の第9の態様は、第4~第8の態様のいずれかにおいて、
前記分析工程では、前記空隙について大きさごとの体積割合を測定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、多孔質試料を精度よく分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂包埋試料の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、固結体の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、切断片の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、切断片の容器内への配置方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、樹脂包埋試料の断面についての反射電子像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂包埋試料の概略構成を示す斜視図である。
図2は、固結体の概略構成を示す斜視図である。
図3は、切断片の概略構成を示す斜視図である。
図4は、切断片の容器内への配置方法を説明するための図である。
【0019】
(準備工程)
まず、測定対象となる多孔質試料を準備する。
【0020】
多孔質試料としては、表面や内部に空隙を有するものであれば特に限定されない。例えば、多孔質試料は多孔質な金属化合物であって、金属元素とその酸化物や硫化物を含むものである。
【0021】
多孔質試料の形状は、例えば球形状である。その大きさは、特に限定されないが、断面積の最大値が2mm2~700mm2の範囲内にあることが好ましい。最大直径は、例えば10mm~20mmとなる。多孔質試料が大きくなるほど、断面出しを行ったときに観察する領域が増えるため、多孔質試料を評価する効率が低くなるおそれがある。この点、全自動鉱物分析装置(Mineral Liberation Analyzer、以下単にMLAともいう)を用いることにより、上記のような大きさを有する多孔質試料であっても断面全体の観察を一度で行うことができ、評価効率を高く維持することができる。
【0022】
(第1包埋工程)
続いて、多孔質試料を樹脂で包埋する。具体的には、容器に多孔質試料を配置し、その容器内に液状樹脂を添加し、多孔質試料を液状樹脂に浸漬させる。そして、液状樹脂を硬化させて、固結体を得る。固結体14は、
図2に示すように、硬化した樹脂13中に多孔質試料10が包埋されたものであって、例えば円柱形状を有する。固結体14の大きさは、多孔質試料10を包埋できれば特に限定されず、多孔質試料10の大きさに応じて適宜変更するとよい。
【0023】
液状樹脂としては、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いることができる。この中でも容易に硬化できることから、エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
(切断工程)
続いて、円柱状の固結体14を切断する。このとき、例えば、多孔質試料10を分断するように固結体14を
図2中の点線に沿って切断する。これにより、
図3に示すような切断片15を得る。切断片15においては、その切断面に多孔質試料10の断面11が露出している。多孔質試料10の断面11には空隙12(または空隙に由来する陥没)が存在している。第1包埋工程では多孔質試料10の内部まで液状樹脂が入り込めないので、断面11の空隙12には樹脂13が埋め込まれていないためである。なお、
図3では、円柱状の固結体14を高さ方向に向かって切断しているが、多孔質試料10を断面出しできれば、切断方向は特に限定されない。また、固結体14の切断方法は従来公知の方法を採用するとよい。
【0025】
(第2包埋工程)
切断片15では多孔質試料10の空隙12に樹脂13が埋め込まれていないため、切断片15をそのままの状態で観察しようとすると、空隙12と多孔質試料10を構成する部分とを明確に区別できない。そこで、本実施形態では、多孔質試料10の空隙12に樹脂13を埋め込むため、第1包埋工程とは別に第2包埋工程を設ける。
【0026】
第2包埋工程では、まず、切断片15を容器20内に配置する。このとき、切断片15の切断面(多孔質試料10が露出する面)を上向きとなるように切断片15を配置する。その後、容器20内に液状樹脂を添加し、切断片15を液状樹脂に浸漬させる。続いて、脱泡処理を行う。液状樹脂に浸漬された切断片15では空隙12に液状樹脂が流れ込まず、気泡が残存することがある。脱泡処理によれば、空隙12に液状樹脂をより確実に充填することができる。脱泡処理方法は、特に限定されず、例えば真空脱泡などを採用することができる。
【0027】
続いて、
図4に示すように、脱泡処理を施した後、液状樹脂13´に浸漬する切断片15の向きを変える。具体的には、切断面が上向きで配置される切断片15を、その切断面が下向きとなり、多孔質試料10の断面11が容器20の底面に接するように、液状樹脂13´中で切断片15の向きを変えて配置する。
【0028】
続いて、液状樹脂13´を硬化させ、
図1に示すような樹脂包埋試料1を得る。樹脂包埋試料1では、多孔質試料10の断面11にある空隙12に液状樹脂13´を入り込ませて硬化させることで、空隙12を樹脂13で埋め込むことができる。
【0029】
液状樹脂13´の硬化方法は、多孔質試料10を変質させないようなものであれば特に限定されず、例えば室温乾燥などとするとよい。
【0030】
樹脂包埋試料1においては、観察面となる多孔質試料10の断面11が樹脂13で覆われて平滑でなかったり、覆う樹脂13が厚くなったりすることで、分析が妨げられることがある。そのため、必要に応じて、樹脂包埋試料1における多孔質試料10の断面11がある面側を研磨するとよい。研磨方法としては、例えばバフ研磨機を用いて粗研磨、中間研磨および鏡面研磨を行ってもよい。また例えば、バフ研磨の他にクロスセクションポリッシャーや集束イオンビーム加工等のイオン研磨を行ってもよい。
【0031】
容器20内への切断片15の配置方法は、切断面が上向きとなるように配置してもよいが、下向きとなるように配置することが好ましい。切断片15を切断面が上向きとなるように配置して液状樹脂を添加すると、多孔質試料10の断面11上に樹脂13が厚く形成されることがある。この場合、断面11を露出させるために、厚く形成された樹脂13を研磨する必要があり、作製効率を損ねるおそれがある。この点、下向きとなるように配置することにより、
図1に示すように、断面11を樹脂包埋試料1の表面近傍に配置させて、研磨する樹脂13の厚さを薄くすることができるので、作製効率を向上させることができる。
【0032】
また、樹脂包埋試料1の形状は特に限定されない。好ましくは、後述の取得工程で使用する分析装置に保持しやすい形状とするとよく、例えば
図1に示すような円柱形状が好ましい。
【0033】
なお、樹脂包埋試料1の観察面には、電子線照射によるチャージアップを抑制するために必要に応じてカーボン等の導電性物質を蒸着させて導電膜を設けてもよい。
【0034】
また、第2包埋工程で用いる液状樹脂は、第1包埋工程で用いるものと同じでもよく、異なっていてもよい。また、使用する液状樹脂の粘度は、空隙12に埋め込む観点からは低粘度であることが好ましい。
【0035】
(取得工程)
続いて、樹脂包埋試料1をMLAに導入し、
図1に示すように、MLAにて樹脂包埋試料1の観察面(多孔質試料10の断面11)に電子線を照射することで、観察面の電子像として、反射電子像(以下、BSE像ともいう)を取得する。
【0036】
BSE像では、観察面における組成分布が、複数の階調を有するグレイレベル(白黒の濃淡)で表示される。樹脂包埋試料の観察面のBSE像では、例えば、多孔質試料の構成成分(金属元素など)に対応する画素はグレイレベルの階調が比較的大きな明部(白色)として表示される。一方、樹脂に対応する画素はグレイレベルの階調が比較的小さな暗部(黒色)として表示される。本実施形態のBSE像では、多孔質試料の表面を覆う樹脂と空隙に埋め込まれる樹脂とが黒色として表示される。具体的には、
図5に示すように、白色部分20が多孔質試料10を示す。また、黒色部分(ハッチング箇所)21のうち、多孔質試料10内にある部分21aが空隙12に対応し、多孔質試料10の周囲を覆う部分21bが樹脂13に対応する。
【0037】
なお、BSE像は、MLAに限らず、例えば走査電子顕微鏡(SEM)などを用いて取得することもできる。
【0038】
(画像処理工程)
得られたBSE像によれば、黒色で表示される画素のうち空隙に対応するものを抽出し、その形状から空隙を評価することができるが、より精度よく評価する観点からは、分析工程の前に画像処理工程を設けることが好ましい。画像処理工程としては、BSE画像を二値化処理するとよい。
【0039】
具体的には、まず、
図5に示すBSE像において、多孔質試料10とそれを覆う外側の樹脂13との境界を特定し、画像処理対象から外側の樹脂13に対応する黒色部分21bを除外する。次に、多孔質試料10に対応する白色部分20内において、空隙12を充填する樹脂に対応する黒色部分21aに対し二値化処理を施す。二値化では、黒色部分21aにおける各画素について、その階調と閾値とを比較し、画素の階調が閾値よりも小さければ、樹脂に対応するものと判断して黒色(例えば0階調)に変換する。一方、画素の階調が閾値以上であれば、多孔質試料の構成成分に対応するものと判断して白色(例えば255階調)に変換する。これにより、モノクロ2階調の画像を取得する。この画像によれば、空隙13の形状を正確に把握することができるので、空隙13をより精度よく評価することが可能となる。
【0040】
なお、多孔質試料の構成成分と樹脂とを切り分ける階調の閾値は、特に限定されず、構成成分や使用する樹脂に応じて適宜変更するとよい。
【0041】
(分析工程)
続いて、得られたモノクロ2階調の画像に基づいて空隙を分析する。分析項目としては、空隙の形状や大きさに限らず、例えば空隙について大きさごとの体積割合などをあげることができる。
【0042】
空隙の体積は、例えば以下のように求めることができる。まず、二値化された画像について、画像解析ソフト(例えばImage Jなど)を用いて、各空隙に対応する箇所の面積を求める。次に、各空隙を円とみなしたときの直径を各面積から算出する。そして、各空隙を、算出された直径を有する球とみなして、その体積を求める。
【0043】
空隙について大きさごとの体積割合は、上記で求められた空隙の直径と体積割合との相関から取得することができる。この体積割合によれば、多孔質試料において空隙のサイズ分布を把握することができる。
【0044】
以上により、多孔質試料における空隙を評価することができる。
【0045】
なお、電子像としてはBSE像に限定されず二次電子像を用いることもできる。ただし、電子像において、多孔質試料10に対応する箇所と空隙12に対応する箇所との間で高いコントラスト比を実現し、空隙12をより精度よく分析する観点からは、電子像はBSE像であることが好ましい。
【0046】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0047】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0048】
空隙12を有する多孔質試料10を樹脂13で包埋し樹脂包埋試料1に加工するときに、本実施形態では、まず多孔質試料10を樹脂13で包埋して硬化させて固結体14を形成した後、この固結体14を多孔質試料10を分断するように切断し、得られる切断片15を再度樹脂13で包埋し硬化させている。1回目の樹脂包埋では、多孔質試料10の内部に存在する空隙12に樹脂13を十分に埋め込むことができないものの、切断した後に再度樹脂包埋を行うことにより、1回目では埋められない空隙12に対して樹脂13を埋め込むことができる。これにより、観察面となる多孔質試料10の断面11に対して一面にわたって樹脂13を覆うことができ、その断面11に存在する空隙12に樹脂13を埋め込むことができる。このような工程で得られる樹脂包埋試料1によれば、反射電子像を取得したときに、多孔質試料10を構成する成分と空隙12を埋める樹脂13とを明確に区別することが可能となり、空隙12を精度よく分析することができる。また空隙12の分析から多孔質試料10についても精度よく分析することができる。
【0049】
また本実施形態においては、切断により得られる切断片15を液状樹脂に浸漬させた後、その断面11が下向きとなるように容器20に配置したうえで、液状樹脂を硬化させることが好ましい。このように樹脂13で包埋することにより、観察面となる断面11を樹脂包埋試料1の表面近傍に配置させるとともに、観察面上に堆積する樹脂13の厚みを少なくすることができる。この結果、樹脂13を研磨する厚みを薄くできるので、作業効率を高めることができる。
【0050】
また本実施形態においては、得られるBSE像をそのまま評価するのではなく、BSE像を二値化して画像処理し、その画像に基づいて空隙を評価することが好ましい。二値化された画像によれば、多孔質試料10を構成する成分と空隙12を埋める樹脂13とをより明確に区別することができるので、空隙12をより精度よく評価することができる。
【0051】
また樹脂包埋試料1からBSE像を取得するときに全自動鉱物分析装置(MLA)を用いることが好ましい。MLAによれば、観察領域が大きいので、多孔質試料10が、断面積の最大値が2mm2~700mm2の範囲内となるような大きな塊状形状を有する場合であっても、断面全体の観察を一度で行うことができ、評価効率を高く維持することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 樹脂包埋試料
10 多孔質試料
11 断面
12 空隙
13 樹脂
14 固結体
15 切断片