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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/06 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B01D63/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020527540
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2019025129
(87)【国際公開番号】W WO2020004381
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2018121043
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-033367(JP,A)
【文献】特開平11-262640(JP,A)
【文献】特開平11-267471(JP,A)
【文献】特開平05-007740(JP,A)
【文献】実開昭55-065103(JP,U)
【文献】特開昭52-081078(JP,A)
【文献】特開平10-192661(JP,A)
【文献】特開2010-069361(JP,A)
【文献】国際公開第03/024575(WO,A1)
【文献】特開2006-247438(JP,A)
【文献】特開平11-290660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-58、63/00-16、69/04
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜と
を有し、
被処理流体が該ハウジングの被処理流体室内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、
該管状分離膜の一端部はエンド管の一端部に連結されており、該エンド管の他端部が、前記ハウジングを横断するように設置された支持部材に支持されている分離膜モジュールにおいて、
該支持部材に設けられた、前記管状分離膜内が連通した集合室と、
該集合室内の流体を前記ハウジング外に取り出す取出部材と、
該支持部材とハウジングの端部との間に形成された背圧室と、
該背圧室内と前記被処理流体室とを連通する連通部とを備え、
該支持部材が天面、底面、及び側面を有する支持凾であり、
該支持凾の内部が該集合室であり、
該エンド管の該他端部が、該支持凾の該天面に設置されており、
該支持凾の該底面側に該背圧室が配置されていることを特徴とする分離膜モジュール。
【請求項2】
前記連通部は、前記支持部材の外周面と前記ハウジングの内周面との間の間隙である請求項1に記載の分離膜モジュール。
【請求項3】
前記支持部材及びそれに連なる前記管状分離膜を有した管状分離膜ユニットが複数個前記ハウジング内に配置されており、前記背圧室側に最も近い側に配置された管状分離膜ユニットの前記集合室と、その他の管状分離膜ユニットの集合室内とが接続部材によって連通されていることを特徴とする請求項に記載の分離膜モジュール。
【請求項4】
前記接続部材は、前記支持部材から延設されたノズルであることを特徴とする請求項に記載の分離膜モジュール。
【請求項5】
前記ノズルは、各支持部材からそれぞれ延設され、隣接する管状分離膜ユニットのノズル同士が連結されていることを特徴とする請求項に記載の分離膜モジュール。
【請求項6】
前記ノズルを前記ハウジングの内周面に支承させる支承部材を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載の分離膜モジュール。
【請求項7】
前記支承部材は、前記ハウジングの内周面に当接した、転動自在な転動部材を有することを特徴とする請求項に記載の分離膜モジュール。
【請求項8】
前記転動部材は、弾性部材によって前記ハウジングの内周面に押し付けられていることを特徴とする請求項に記載の分離膜モジュール。
【請求項9】
前記集合室内に、前記支持部材の変形を防止する変形防止部材を備える請求項1~のいずれか1項に記載の分離膜モジュール。
【請求項10】
前記集合室が2つ以上の部材により形成されている請求項1~のいずれか一項に記載の分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液や混合気体等の流体から一部の成分を分離するために用いられる分離膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
溶液又は混合気体中の成分を分離するための機器として分離膜モジュールが知られている。この分離膜モジュールに用いる管状分離膜は、管状の多孔質支持体と、該支持体の外周面に設けられたゼオライト等からなる多孔質の分離膜とを有する。溶液や混合気体等の流体から特定の成分を分離するためには、溶液の流体を分離膜エレメントの一方(外面)に接触させて、もう一方(内面)を減圧することにより、特定の成分を気化させ分離する方法や、溶液を気化させて気体状態で分離膜に接触させて、非接触面側を減圧して特定成分を分離する方法、加圧状態の混合気体を分離膜に接触させて特定の成分を分離する方法などが知られている。
【0003】
特許文献1(特にその図6(a))に、上下方向に配置された筒状のハウジングと、該ハウジング内に上下方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、該管状分離膜の下端部にエンド管が接続され、該エンド管は、前記ハウジングを横断するように設置された支持板の上面から突出しており、該支持板の上面に差込穴が設けられ、前記エンド管が該差込穴に差し込まれている分離膜モジュールが記載されている。
【0004】
管状分離膜を透過した気体は、支持板の下側の流出室に流れ込み、該流出室から流出口を経て取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-155093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
管状分離膜の下端に接続されたエンド管を支持板の差込穴に差し込み、エンド管を支持凾に支持させた特許文献1の構造にあっては、支持板の下側の流出室内の圧力が支持板の上側の被処理気体室内の圧力に比べて低いので、支持板に大きな曲げ荷重が加えられる。
【0007】
また、特許文献1の構造にあっては、支持板の上側の被処理流体室内の気体が支持板の外周面とハウジングの内周面との間を通って流出室へリークすることを防止するために、支持板の外周面とハウジング内周面との間のシールを十分なものとする必要がある。
さらに、特許文献1の構造にあっては、モジュールを複数直列で設置したい場合、モジュール間に配管を介する必要があった。
【0008】
本発明は、管状分離膜の一端を支持する支持部材に加えられる曲げ荷重が軽減されると共に、支持部材の外周面とハウジング内周面との間のシール部材を省略することができ、配管を介さなくとも一つのモジュール内に複数の膜をまとめたバンドルが複数台直列に設置可能となる分離膜モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の分離膜モジュールは、筒状のハウジングと、該ハウジング内に該ハウジングの長手方向に配置された複数の管状分離膜とを有し、被処理流体が該ハウジングの被処理流体室内を一端側から他端側に流れ、管状分離膜を透過した流体が該管状分離膜を通って取り出される分離膜モジュールであって、該管状分離膜の一端部は、前記ハウジングを横断するように設置された支持部材に支持されている分離膜モジュールにおいて、該支持部材に設けられた、前記管状分離膜内が連通した集合室と、該集合室内の流体を前記ハウジング外に取り出す取出部材と、該支持部材とハウジングの端部との間に形成された背圧室と、該背圧室内と前記被処理流体室とを連通する連通部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記連通部は、前記支持部材の外周面と前記ハウジングの内周面との間の間隙である。
【0011】
本発明の一態様では、前記支持部材及びそれに連なる前記管状分離膜を有した管状分離膜ユニットが複数個前記ハウジング内に配置されており、最も前記背圧室側に配置された管状分離膜ユニットの前記集合室と、その他の管状分離膜ユニットの集合室内とが接続部材によって連通されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記接続部材は、前記支持部材から延設されたノズルである。
【0013】
本発明の一態様では、前記ノズルは、各支持部材からそれぞれ延設され、隣接する管状分離膜ユニットのノズル同士が連結されている。
【0014】
本発明の一態様では、前記ノズルを前記ハウジングの内周面に支承させる支承部材を備える。
【0015】
本発明の一態様では、前記支承部材は、前記ハウジングの内周面に当接した、転動自在な転動部材を有する。
【0016】
本発明の一態様では、前記転動部材は、弾性部材によって前記ハウジングの内周面に押し付けられている。
【0017】
本発明の一態様の分離膜モジュールは、前記集合室内に、前記支持部材の変形を防止する変形防止部材を備える。
【0018】
本発明の一態様では、前記集合室が2つ以上の部材により形成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の分離膜モジュールでは、支持部材とハウジング端部との間に背圧室が設けられ、この背圧室が被処理流体室に連通しているので、背圧室内と被処理流体室とが略等圧となる。このため、支持部材に対して加えられる被処理流体圧による曲げ荷重がなくなるか、又は著しく小さくなる。また、本発明では、支持部材の外周面と背圧室の内周面との間にシール部材を設けることが不要となる。また、本発明の分離膜モジュールは、管状分離膜を透過した被処理流体の一部の成分が集合する集合室を備えることで、一つのモジュール内に複数のバンドルを直列に設置することを可能とし、従来必要であった配管を不要とすることで、コストの低減、設置の簡略化、及びメンテナンスを容易とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る分離膜モジュールのハウジング軸心線方向に沿う断面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】エンド管及び支持凾の拡大断面図である。
図5】別の実施の形態に係る分離膜モジュールのハウジング軸心線方向に沿う断面図である。
図6図5の一部の拡大図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8】別の支持機構を示す断面図である。
図9】さらに別の実施の形態に係る分離膜モジュールのハウジング軸心線方向に沿う部分断面図である。
図10図4の一部の別の形態を示す断面図である。
図11図11aは図6,7の別の形態を示す断面図、図11bは図11aのXIb-XIb線断面図である。
図12】変形防止部材を備えた支持凾の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~4を参照して、本発明の一実施の形態に係る分離膜モジュールについて説明する。
【0022】
この分離膜モジュール1は、筒軸心方向を上下方向とした円筒状ハウジング2と、ハウジング2の軸心線と平行方向に配置された複数の管状分離膜3と、ハウジング2内の下部に設けられた支持部材としての支持凾5と、ハウジング2の下端に取り付けられたボトムカバー6A及び上端に取り付けられたトップカバー6Bと、支持凾5と平行にハウジング2内の下部及び上部にそれぞれ配置された第1のバッフル(整流板)7及び第2のバッフル(整流板)8等を有する。第1のバッフル7は支持凾5の上側に配置されている。
【0023】
この実施の形態では、ハウジング2の下端及び上端側とボトムカバー6A及びトップカバー6Bの外周縁にそれぞれ外向きのフランジ2a,2b,6b,6cが設けられ、ボルト(図示略)によってこれらが固定されている。
【0024】
支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間には気体流通可能な間隙があいている。支持凾5は、ハウジング2の内周面から突設された複数の突部2t上に載置されている。支持凾5とボトムカバー6Aとの間は背圧室16となっている。この背圧室16は、支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間の間隙を介して支持凾5の上側の室11に連通している。
【0025】
この実施の形態では、管状分離膜3の下端にエンド管4が連結されている。管状分離膜3の上端にエンドプラグ20が連結されている。なお、図1~3では、管状分離膜は7本のみ示されているが、実際は図4のように多数本設けられている。
【0026】
図1では、管状分離膜3は一本物となっているが、複数本、例えば2本の管状分離膜3がジョイント管を介して連結されてもよい。
【0027】
ハウジング2の下部の外周面に被処理流体の流入口9が設けられ、上部の外周面に被処理流体の流出口10が設けられている。流入口9は、支持凾5と第1のバッフル7との間の室11に臨むように設けられている。流出口10は、第2のバッフル8の上側の室12に臨むように設けられている。バッフル7,8間は被処理流体室13となっている。以下、この被処理流体室を主室ということがある。
【0028】
底部の支持凾5から複数のロッド14が立設され、該ロッド14にバッフル7,8が支持されている。図2,3ではロッド14は4本設けられているが、これに限らず、例えば2~3本又は5本以上でもよい。ロッド14の下端には雄ねじが刻設されており、支持凾5の雌ねじ穴に螺着されている。バッフル7,8はロッド14に外嵌された鞘管14A,14B(図4)によって所定高さに支持されている。鞘管14Aは、支持凾5とバッフル7との間に配置されている。鞘管14Bは、バッフル7,8間に配置されている。バッフル8は、鞘管14Bの上端面に載設され、ロッド14の上端に螺着されたナットによって固定されている。バッフルの固定方法は、これに限られず、図10に示すロッド14’のように、ネジを使用してロッド14A’,14B’を連結し固定してもよい。バッフルの数はこの実施の形態に限定されるものではなく、例えば3以上のバッフルを使用してもよい。
【0029】
バッフル7,8の外周面とハウジング2の内周面との間には、Oリング、Vパッキン、Cリングなどのシール部材が介在され、ハウジング2の外周部を優先的にガスが流れないようにしてもよい。
【0030】
各バッフル7,8には、管状分離膜3を挿通させるための円形の挿通孔7a,8aが設けられており、管状分離膜3、エンド管4及びエンドプラグ20の連結体が各挿通孔7a,8aに挿通されている。挿通孔7a,8aの口径は、管状分離膜3、エンド管4及びエンドプラグ20の直径(外径)よりも大きく、挿通孔7a,8aの内周面と、エンド管4及びエンドプラグ20の外周面との間に全周にわたって間隙があいている。
【0031】
支持凾5は、図1図4に示す通り、天面5t、底面5s及び側面5uを有した凾体よりなり、内部が気体の集合室5vとなっている。底面5sには、集合室5v内の気体を流出させるノズル5nが設けられている。前記ノズル5nにフランジ結合等によって連結された取出部材としての取出ノズル6nがボトムカバー6Aを貫通して設けられている。
【0032】
集合室5vは、その内部に、支持凾5の変形を防止するための変形防止部材を備えていてもよい。変形防止部材は、主室13、室11及び背圧室16と、集合室5vの圧力差が大きい時に、支持凾5の変形を防止することができる。圧力差は、モジュールの大きさや処理量にも依存するが、10倍以上である場合に、前記変形部材を備えていれば、効果的に支持凾5の変形を抑制できる。
【0033】
変形防止部材の形状は、支持凾5の変形を抑制できればどのような形状でも良いが、天面5tと底面5sの変形を防止できるよう、天面5tと底面5sを繋ぐ形状が好ましい。変形防止部材は、柱状部材やばねなどの弾性部材であっても良い。変形防止部材は、一般的に入手容易であることから、柱状部材であることが好ましい。柱状部材の断面は、中実であっても中空であっても良い。中空の変形防止部材は、軽量でありながら圧縮変形を効果的に抑制できる。中実の変形防止部材は、入手容易である。柱状部材の断面形状は、円形であっても良く、方形であっても良い。入手容易であることから、円形であることが好ましい。
【0034】
天面5tの下面と底面5sの上面とにそれぞれ凹穴を設け、変形防止部材の上端を天面5tの凹穴に係合させ、変形防止部材の下端を底面5sの凹穴に係合させるようにして変形防止部材を設けてもよい。凹穴の内周面に雌ねじを設け、棒状又は管状の変形防止部材の端部の外周面に雄ねじを設け、変形防止部材を凹穴に螺合させてもよい。
【0035】
変形防止部材を容易に設置できるようにするために、支持凾5を2つ以上の部材で構成してもよい。例えば、天面5tまたは底面5sが外れるようにしても良く、天面5t側と底面5s側が等分に分割されるようにしてもよい。2つ以上の部材は、溶接により一体化しても良く、フランジを設けて外部から締め付けにより一体化しても良く、側面に天面5t側から底面5s側に向かって雌ねじ穴を設けて螺着しても良い。2つ以上の部材を溶接しない場合は、気密性を保つため、ガスケットやOリングを設けることが好ましい。
【0036】
図12に変形防止部材を備えた支持凾の一例を示す。この支持凾5Rは、上半体5Jと下半体5Lとを連結したものである。上半体5Jの下縁に設けられたフランジ5eと下半体5Lの上縁に設けられたフランジ5fとが重ね合わされて連結されている。
天面5tと底面5sとの間に変形防止部材5rが設けられている。この支持凾5Rのその他の構成は図1に示した支持凾5と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0037】
前述した支持凾5を載置する突部2t、を省略し、例えば支持凾5の強度を上げるため、ボトムカバー6Aから支柱(図示略)を立ち上げ、支持凾5を該支柱で支持するようにしてもよい。この支柱は、天面5tと底面5sの間に大穴5cを完全に覆わないようにすることが好ましく、単数、もしくは複数個設けてもよい。
【0038】
支持凾5の天面5t側には、管状分離膜3に連結されたエンド管4の下端が差し込まれた差込穴5aが設けられている。差込穴5aは、円柱形であり、支持凾5の上面から厚み方向の途中まで延在している。差込穴5aの穴底は、小孔5bと大孔5c(もしくは大孔5cがなく小孔5bのみでもよい)とを介して集合室5vに臨んでいる。
【0039】
エンド管4の下端面と差込穴5aの底面との間にガスケット(図示略)が介在されている。もしくは、エンド管4側面と差し込み穴5aの側面の間にOリング(図示略)が介在されている。
【0040】
図4に示す通り、各エンド管4の管孔4aは、小孔5b及び大孔5cを介して集合室5vに連通している。エンド管4と管状分離膜3の接続部は、ガスケット、Oリング、あるいは熱収縮チューブを用いることでシールされている。
【0041】
管状分離膜3の上端にエンドプラグ20が連結されている。エンドプラグ20は円柱状またはこれの一部を削った形状であり、管状分離膜3の上端を封止している。エンドプラグ20の下端には、管状分離膜3内に差し込まれた小径部が設けられている。エンドプラグ20と管状分離膜3との間はガスケットやOリングによってシールされている。図示は省略するが、エンドプラグ20と管状分離膜3間は、熱収縮チューブを用いることでシールされてもよい。
【0042】
なお、本発明では、エンド管4及び支持凾5を管状分離膜3の上端側に配置し、エンドプラグ20を管状分離膜3の下端側に配置してもよい。
【0043】
この分離膜モジュール1において、被処理流体は流入口9からハウジング2の室11内に導入され、バッフル7の挿通孔7aの内周面とエンド管4の外周面との間の間隙を通って主室13に流入し、主室13を通った後、バッフル8の挿通孔8aとエンドプラグ20との間隙を通って室12に流出する。主室13を流れる間に被処理流体の一部の成分が管状分離膜3を透過して管状分離膜3内から集合室5v及びノズル5n,6nを介して取り出される。透過しなかった流体は、流出口10から分離膜モジュール1外に流出する。
【0044】
この実施の形態では、支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間の間隙を介して背圧室16内と室11内とが連通し、両室内の圧力差がないか又は極く小さなものとなっているので、支持凾5に加えられる曲げ荷重が著しく小さい。また、支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間をシールする部材が不要である。
【0045】
主室13内の流れと管状分離膜3内の流れは並流であっても、向流であっても差し支えなく、被処理流体の流入口9と流出口10とは入れ替えても差し支えない。
【0046】
分離膜モジュール1は、図1のようにトップカバー6B側を上にして使用してもよく、またボトムカバー6A側を上にして使用しても差し支えない。また、ボトムカバー6Aとトップカバー6Bを結ぶ方向が略水平方向となるように、分離膜モジュール1を横置きに設置して使用しても差し支えない。
【0047】
この実施の形態では、管状分離膜3を平行に多数本配列設置しており、膜面積が大きいので、効率良く膜分離が行われる。
【0048】
この実施の形態では、管状分離膜3の上下両端に連結されたエンド管4とエンドプラグ20がそれぞれバッフル7,8の挿通孔7a,8aに差し込まれている。そのため、管状分離膜3が振動ないし揺動してエンド管4及びエンドプラグ20が挿通孔7a,8aの内周面に当接してもゼオライト膜が損傷することがなく、長期にわたって安定して運転を行うことができる。
【0049】
図5を参照して、本発明における他の実施の形態を説明する。
【0050】
この実施の形態の分離膜モジュール1Aでは、ハウジング2内に複数の管状分離膜ユニット30,31が設けられている。管状分離膜ユニット30は、図1~4における支持凾5、エンド管4、管状分離膜3、エンドプラグ20、バッフル7,8及びロッド14よりなるものである。
【0051】
管状分離膜ユニット31は、管状分離膜ユニット30とほぼ同一であるが、支持凾5の天面5tの中央から接続部材としての連通ノズル5iが上方に延設されている点が異なる。該連通ノズル5iの上端は、管状分離膜ユニット31のバッフル8よりも上方に延出しており、その上端が管状分離膜ユニット30のノズル5nの下端にねじ込み式結合やフランジ結合等より連結されている。
【0052】
管状分離膜ユニット30,31の支持凾5の外周面とハウジング2の内周面との間には、各々の上側の室と下側の室とを連通する、気体流通可能な間隙があいている。
【0053】
分離膜モジュール1Aのその他の構成は分離膜モジュール1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。この分離膜モジュール1Aにおいても、被処理流体は流入口9からハウジング2に流入し、特定成分が管状分離膜3を透過し、非透過流体が流出口10から流出する。下側の管状分離膜ユニット31の各管状分離膜3を透過した気体は、該管状分離膜ユニット31の支持凾5内の集合室5vに流入し、ノズル5n,5iを介して取り出される。上側の管状分離膜ユニット30の各管状分離膜3を透過した気体は、該管状分離膜ユニット30の支持凾5の集合室5vに流入し、ノズル5n,5iを介して下側の管状分離膜ユニット31の支持凾5内の集合室5vに流入し、ノズル5n,6nを介して取り出される。
【0054】
この分離膜モジュール1Aにあっては、ハウジング2の長さを大きくし、複数の管状分離膜ユニットをハウジング2内に配置することができる。図5では、管状分離膜ユニット30,31が1個ずつ図示されているが、複数の管状分離膜ユニット31を上下多段に配置して連結し、最上部に管状分離膜ユニット30を連結する構成としてもよい。または、管状分離膜ユニット31を複数上下多段に配置して連結し、最上段のノズル5iをキャップやフランジ等でシールする構造としてもよい。これにより、同一構造のユニットのみで構成することができ、コストの低減を図ることができる。
【0055】
複数の管状分離膜ユニットを上下に設置した場合、上側の管状分離膜ユニットは下側の管状分離膜ユニットによって支持されることになるが、この場合、各管状分離膜ユニットの左右への傾動ないし揺動を防止するための支承部材を設けてもよい。図6,7はその一例を示すものであり、ノズル5n,5iの一方又は双方(図6では双方)からそれぞれ放射方向に支承部材40が延設されている。この支承部材40は、基端側がノズル5n,5iに取り付けられたロッド41と、ロッド41の先端のボールホルダ42と、該ボールホルダ42に転動自在に保持されたボール43などの転動部材とを有する。ロッド41には、バネ(図示略)などの弾性部材が設けられ、ボールホルダ42が放射方向に付勢されている。これにより、ボール43がハウジング2の内周面に押し付けられ、ノズル5n,5iがハウジング2の軸心位置に保持される。管状分離膜ユニット30,31をハウジング2に出し入れする際には、ボール43がハウジング2の内周面に沿って転動する。なお、図7図6のVII-VII線断面を示し、図6図7のVI-VI線断面を示している。
【0056】
図6,7ではボール43が用いられているが、ローラを用いてもよい。
【0057】
図6,7ではロッド41の基端側がノズル5n,5iに直に取り付けられているが、図11a,11bのようにノズル5n(又は5i)に筒状のボス部40Bを取り付け、該ボス部40Bにロッド41を取り付けてもよい。ノズル5n(又は5i)にボス部40Bを固定する方法は、例えば、該ボス部40Bにネジ穴をあけ、該ボス部40B外部よりネジ40Nで固定する方法が挙げられる。また、該ボス部40Bの取り付け・取り外しを容易にするため、ノズル端部に設置してあるフランジ部、ジョイント部は、ねじ込み等の取り外しが可能な構造にすることが望ましい。
【0058】
また、ボトムカバー6Aとトップカバー6Bを結ぶ方向が略水平方向となるように、分離膜モジュール1を横置きにする場合には、ハウジング2に挿入するバンドル(分離膜・エンド管・支持凾等を組み立てたもの)の分散板や支持凾5がハウジング2の内壁と接する場合がある。バンドルが重くなると、接した部分の摩擦力が大きくなり、押し込むことが難しくなる場合がある。
【0059】
そこで、図8のように、ノズル5n(又は5i)にベース板45を取り付け、該ベース板45にロッド41を取り付けてもよい。ロッド41を省略し、ボールホルダ42を直にベース板45に設けてもよい。ロッド41の長さを短くすることで、バンドルの重さを支えるためのロッドの太さを小さくすることができる。また、ボールホルダ42の数を増やすことで、バンドルをハウジング2に挿入する際にバンドルが回転しても、バンドルとハウジング2との間に常にボールを存在させることが可能となり、挿入を容易にすることができる。
【0060】
本発明では、図9の分離膜モジュール1Bのように、ハウジング2の内周面に沿うように、管状分離膜ユニット31を取り巻く筒体50を設け、筒体50の上端にバッフル51を支持させ、該バッフル51の中心孔51aにノズル5iを挿通させ、該バッフル51によってノズル5iの上部を支持してもよい。支持凾5の外周面やバッフル51の外周面はハウジング2の内周面とわずかな隙間を有するか、もしくは当接している。バッフル51には、上下を連通する多数の開口51bが設けられている。支持凾5やバッフル51の外周面には、バンドル挿入時の抵抗を低減するためフッ素樹脂等の摺動性材料層を設けることが好ましい。筒体50の下端はバッフル7の上面に当接している。
【0061】
図9のその他の構成は図5と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0062】
上記実施の形態では、支持部材の外周面とハウジング内周面との間隙によって室11,16を連通させているが、室11,16同士を連通させる配管等の連通部をハウジング2に設けてもよい。あるいは、天面5tと底面5sを単数、もしくは複数のパイプで連結してもよい。
【0063】
以下、本発明の分離膜モジュールを構成するエンド管4、エンドプラグ20及び管状分離膜3の好適な材料等について説明する。
【0064】
エンド管4及びエンドプラグ20の材料としては金属、セラミックスなど、流体を透過させないものが例示されるが、これに限定されない。バッフル7,8,51及びジョイント管17の材質は、通常、ステンレスなどの金属材料であるが、分離条件における耐熱性と供給、透過成分に対する耐性があれば特に限定されず、用途によっては、樹脂材料など他の材質に変更可能である。
【0065】
管状分離膜3は、好ましくは、管状の多孔質支持体と、該多孔質支持体の外周面に形成された無機分離膜としてのゼオライト膜とを有する。この管状の多孔質支持体の材質としては、シリカ、α-アルミナ、γ-アルミナ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化珪素、炭化珪素などを含むセラミックス焼結体や金属焼結体の無機多孔質支持体が挙げられる。その中でもアルミナ、シリカ、ムライトのうち少なくとも1種を含む無機多孔質支持体が好ましい。多孔質支持体表面が有する平均細孔径は特に制限されるものではないが、細孔径が制御されているものが好ましく、通常0.02μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上であり、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下の範囲が好ましい。
【0066】
多孔質支持体の表面においてゼオライトを結晶化させゼオライト膜を形成させる。
ゼオライト膜を構成する主たるゼオライトは、通常、酸素6-10員環構造を有するゼオライトを含み、好ましくは酸素6-8員環構造を有するゼオライトを含む。
【0067】
ここでいう酸素n員環を有するゼオライトのnの値は、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
【0068】
酸素6-10員環構造を有するゼオライトの一例を挙げれば、AEI、AEL、AFG、ANA、BRE、CAS、CDO、CHA、DAC、DDR、DOH、EAB、EPI、ESV、EUO、FAR、FRA、FER、GIS、GIU、GOO、HEU、IMF、ITE、ITH、KFI、LEV、LIO、LOS、LTN、MAR、MEP、MER、MEL、MFI、MFS、MON、MSO、MTF、MTN、MTT、MWW、NAT、NES、NON、PAU、PHI、RHO、RRO、RTE、RTH、RUT、SGT、SOD、STF、STI、STT、TER、TOL、TON、TSC、TUN、UFI、VNI、VSV、WEI、YUG等がある。
【0069】
ゼオライト膜は、ゼオライトが単独で膜となったものでも、前記ゼオライトの粉末をポリマーなどのバインダー中に分散させて膜の形状にしたものでも、各種支持体上にゼオライトを膜状に固着させたゼオライト膜複合体でもよい。ゼオライト膜は、一部アモルファス成分などが含有されていてもよい。
【0070】
ゼオライト膜の厚さとしては、特に制限されるものではないが、通常、0.1μm以上であり、好ましくは0.6μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上である。また通常100μm以下であり、好ましくは60μm以下、さらに好ましくは20μm以下の範囲である。
【0071】
ただし、本発明はゼオライト膜以外の分離膜を有した管状分離膜を用いてもよい。
【0072】
管状分離膜3の外径は、好ましくは3mm以上、より好ましくは6mm以上、さらに好ましくは10mm以上、好ましくは20mm以下、より好ましくは18mm以下、さらに好ましくは16mm以下である。外径が小さすぎると管状分離膜の強度が十分でなく壊れやすくなることがあり、大きすぎるとモジュール当りの膜面積が低下する。
【0073】
管状分離膜3のうちゼオライト膜で覆われた部分の長さは好ましくは20cm以上、好ましくは200cm以下である。
【0074】
本発明の分離膜モジュールにおいて、管状分離膜は、単管式でも多管式でもよく、通常1~3000本、特に50~2000本配置され、管状分離膜同士の最短距離は、1mm~10mmとなるように配置されることが好ましい。ハウジングの大きさ、管状分離膜の本数は処理する流体量によって適宜変更されるものである。なお、管状分離膜はジョイント管17によって連結されなくてもよい。また、図による説明では分離膜モジュール1は縦向きに設置するようになっているが、横向きや傾けて使用してもよい。
【0075】
本発明の分離膜モジュールにおいて、分離または濃縮の対象となる被処理流体としては、分離膜によって分離または濃縮が可能な複数の成分からなる気体または液体の混合物であれば特に制限はなく、如何なる混合物であってもよいが、気体の混合物に使用することが好ましい。
【0076】
分離または濃縮にはパーベーパレーション法(浸透気化法)、ベーパーパーミエーション法(蒸気透過法)と呼ばれる分離または濃縮方法を用いることができる。パーベーパレーション法は、液体の混合物をそのまま分離膜に導入する分離または濃縮方法であるため、分離または濃縮を含むプロセスを簡便なものにすることができる。
【0077】
本発明において、分離または濃縮の対象となる混合物が、複数の成分からなる気体の混合物である場合、気体の混合物としては、例えば、二酸化炭素、酸素、窒素、水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ノルマルブタン、イソブタン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、トルエンなどの芳香族系化合物、六フッ化硫黄、ヘリウム
、一酸化炭素、一酸化窒素、水などから選ばれる少なくとも1種の成分を含むものが挙げられる。これらの気体成分からなる混合物のうち、パーミエンスの高い気体成分は、分離膜を透過し分離され、パーミエンスの低い気体成分は供給ガス側に濃縮される。
【0078】
本発明の分離膜モジュールは、流体量、あるいは目的の分離度、濃縮度によって連結して使用することができる。流体量が多い場合または目的の分離度・濃縮度が高く1つのモジュールでは処理が十分できない場合には出口から出た流体をさらにもう一つのモジュールの入口に入るように配管を接続して使用することが好ましい。また分離度、濃縮度に応じてさらに連結して目的の分離度・濃縮度とすることができる。
【0079】
本発明の分離膜モジュールを並列に設置して流体を分岐してガスを供給してもよい。この時さらに並列したそれぞれのモジュールに直列でモジュールを設置することもできる。並列としたモジュールを直列とする場合、供給ガス量が直列方向に低下し線速が低下するので、適宜線速を保つように並列の設置数を減少させることが好ましい。
【0080】
モジュールを直列に配置する場合の透過した成分はモジュール毎に排出しても良く、モジュール間を連結して集合させて排出してもよい。
【0081】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2018年6月26日付で出願された日本特許出願2018-121043に基づいており、その全体が引用により援用される。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B 分離膜モジュール
2 ハウジング
2a,2b フランジ
2t 突部
3 管状分離膜
4 エンド管
4a 管孔
5,5R 支持凾(支持部材)
5J 上半体
5L 下半体
5a 差込穴
5b 小孔
5c 大孔
5i,5n ノズル
5r 変形防止部材
5s 底面
5t 天面
5u 側面
5v 集合室
6A ボトムカバー
6B トップカバー
6b,6c フランジ
6n ノズル
7,8 バッフル
7a,8a 挿通孔
9 流入口
10 流出口
11,12 室
13 主室(被処理流体室)
14 ロッド
14A、14B 鞘管
16 背圧室
20 エンドプラグ
30,31 管状分離膜ユニット
40 支承部材
41 ロッド
42 ボールホルダ
43 ボール
45 ベース板
17 連結ロッド
50 筒体
51 バッフル
51a 中心孔
51b 開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12