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特許7459797感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品
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  • 特許-感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240326BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240326BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/027 514
G03F7/031
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020550498
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038900
(87)【国際公開番号】W WO2020071422
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2018188428
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 綾香
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悟志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 範幸
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038664(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/104672(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110982(WO,A1)
【文献】特開2000-066417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体と、
(B)下記式(1)で表される化合物、及び
ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、又はメタクリロイルオキシエチルイソシアヌレートと、
(C)光重合開始剤と、
(D)熱ラジカル発生剤と、
を含む感光性樹脂組成物。
【化36】
(式(1)中、Aは-(2価の芳香族炭化水素基)-(2価の脂肪族炭化水素基)-(2価の芳香族炭化水素基)-であり、アクリル基又はメタアクリル基を含まない。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。n1及びn2は、それぞれ独立に、1~20の整数である。m1及びm2は、それぞれ独立に、0又は1である。)
【請求項2】
前記式(1)におけるn1及びn2が、それぞれ独立に1又は2である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(1)におけるR及びRが水素原子である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記式(1)におけるR及びRが水素原子である請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(1)におけるAが-(炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基)-(炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基)-(炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基)-である請求項1~4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(D)成分が、有機過酸化物である請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(D)成分が、パーオキシエステル又はジアルキルパーオキサイドである請求項1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)成分が、パーオキシエステルである請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(A)成分が、下記式(11)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である請求項1~8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化37】
(式(11)中、Xは1以上の芳香族基を有する4価の基である。Yは2価の芳香族基である。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(12)で表される基又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R11及びR12の少なくとも一方は下記式(12)で表される基である。-COOR11基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR12基と-CO-基とは、互いにオルト位置にある。)
【化38】
(式(12)中、R13~R15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。mは1~10の整数である。)
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
【請求項11】
前記加熱処理の温度が200℃以下である請求項10に記載のパターン硬化膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
【請求項13】
パターン硬化膜である請求項12に記載の硬化膜。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
【請求項15】
請求項14に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜及び層間絶縁膜には、優れた耐熱性と電気特性、機械特性等を併せ持つポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。近年、これらの樹脂自身に感光特性を付与した感光性樹脂組成物が用いられており、これを用いるとパターン硬化膜の製造工程が簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮できる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、近年、コンピュータの高性能化を支えてきたトランジスタの微細化は、スケーリング則の限界に来ており、さらなる高性能化や高速化のために半導体素子を3次元的に積層する積層デバイス構造が注目を集めている。
【0004】
積層デバイス構造の中でも、マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージ(Multi-die Fanout Wafer Level Packaging)は、一つのパッケージの中に複数のダイを一括封止して製造するパッケージであり、従来から提案されているファンアウトウエハレベルパッケージ(一つのパッケージの中に一つのダイを封止して製造する)よりも低コスト化、高性能化が期待できるので、非常に注目を集めている。
【0005】
マルチダイファンアウトウエハレベルパッケージの作製においては、高性能なダイの保護や耐熱性の低い封止材を保護し、歩留まりを向上させる観点から、例えば200℃以下での低温硬化性が強く求められている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、200℃以下の硬化反応では、ポリイミド前駆体が十分にイミド化しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-265520号公報
【文献】国際公開第2008/111470号
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、200℃以下で硬化反応を行った場合でも高いイミド化率を達成し、機械特性に優れる硬化膜を製造可能な感光性樹脂組成物を提供することである。また、当該感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法、硬化膜、当該硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜等、及び当該層間絶縁膜等を含む電子部品を提供することである。
【0008】
通常、感光性樹脂組成物に用いられる重合性モノマー(架橋剤)は、露光による架橋反応でパターンを形成した後は、硬化のための加熱処理工程で揮発することが期待される。しかしながら、200℃以下の低温硬化では架橋剤が十分に揮発せず膜中に残存する場合があり、そのような架橋剤はポリイミド前駆体のイミド化を阻害する要因になると考えられる。
本発明者らは、残存する架橋剤を有効利用してイミド化率を向上する方法を模索した結果、架橋剤として特定の構造を有するものを用い、さらに硬化反応時に架橋を促す熱ラジカル発生剤を併用することにより当該目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明によれば、以下の感光性樹脂組成物等が提供される。
1.(A)重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体と、
(B)下記式(1)で表される化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)熱ラジカル発生剤と、
を含む感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、Aは2価の有機基であり、アクリル基又はメタアクリル基を含まない。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。n1及びn2は、それぞれ独立に、1~20の整数である。m1及びm2は、それぞれ独立に、0又は1である。)
2.前記式(1)におけるn1及びn2が、それぞれ独立に1又は2である1に記載の感光性樹脂組成物。
3.前記式(1)におけるR及びRが水素原子である1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
4.前記式(1)におけるR及びRが水素原子である1~3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
5.前記式(1)におけるAが炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基、酸素原子(-O-)又はこれらのうち2以上が連結して形成される基である1~4のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
6.前記(D)成分が、有機過酸化物である1~5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
7.前記(D)成分が、パーオキシエステル又はジアルキルパーオキサイドである1~6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
8.前記(D)成分が、パーオキシエステルである1~7のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
9.前記(A)成分が、下記式(11)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である1~8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(11)中、Xは1以上の芳香族基を有する4価の基である。Yは2価の芳香族基である。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(12)で表される基又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R11及びR12の少なくとも一方は下記式(12)で表される基である。-COOR11基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR12基と-CO-基とは、互いにオルト位置にある。)
【化3】
(式(12)中、R13~R15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。mは1~10の整数である。)
10.1~9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、
前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、
前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、
を含むパターン硬化膜の製造方法。
11.前記加熱処理の温度が200℃以下である10に記載のパターン硬化膜の製造方法。
12.1~9のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化した硬化膜。
13.パターン硬化膜である12に記載の硬化膜。
14.12又は13に記載の硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜。
15.14に記載の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜を含む電子部品。
【0010】
本発明によれば、200℃以下で硬化反応を行った場合でも高いイミド化率を達成し、機械特性に優れる硬化膜を製造可能な感光性樹脂組成物が提供できる。また、当該感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜の製造方法、硬化膜、当該硬化膜を用いて作製された層間絶縁膜等、及び当該層間絶縁膜等を含む電子部品が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、硬化膜、層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。尚、以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味する。
【0014】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体(以下、「(A)成分」ともいう。)、(B)式(1)で表される化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)、(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)、及び(D)熱ラジカル発生剤(以下、「(D)成分」ともいう。)を含む。本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくはネガ型感光性樹脂組成物である。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、重合性モノマーの一種である(B)成分と、硬化反応時に架橋を促す(D)成分とを含むため、硬化反応(加熱処理工程)時に(B)成分同士が架橋(重合)して架橋構造を形成する。(B)成分はいわゆる2官能アクリレートであり、さらに官能基が一定の長さ以上の鎖状構造を有するため、これらが架橋することで直線状に連なった長いチェーン構造が形成される。当該チェーン構造は膜の柔軟性向上に寄与し、また、未反応の重合性モノマーが残存しないか少ないため、ポリイミド前駆体のイミド化が促進される。これにより、機械特性、特に破断伸び特性に優れる硬化膜が得られる。
また、本発明の感光性樹脂組成物は、硬化反応時に(B)成分同士の架橋反応が促されるため、当該成分の揮発量が少ない。そのため、硬化膜にしたときの膜収縮(シュリンク)が少なく寸法精度に優れる。
以下、各成分について説明する。
【0016】
((A)成分:重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体)
(A)成分は、重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体であれば特に制限はされないが、パターニング時の光源にi線を用いた場合の透過率が高く、200℃以下の低温硬化時にも高い硬化膜特性を示すポリイミド前駆体が好ましい。
重合性の不飽和結合としては、炭素原子間の二重結合等が挙げられる。
【0017】
(A)成分は、好ましくは下記式(11)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体である。これにより、i線の透過率が高く、200℃以下の低温で硬化を行った場合であっても良好な物性を有する硬化膜を形成できる。
【化4】
(式(11)中、Xは1以上の芳香族基を有する4価の基である。Yは2価の芳香族基である。R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、下記式(12)で表される基又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基であり、R11及びR12の少なくとも一方は下記式(12)で表される基である。-COOR11基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR12基と-CO-基とは、互いにオルト位置にある。)
【化5】
(式(12)中、R13~R15は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の脂肪族炭化水素基である。mは1~10の整数(好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~5の整数、さらに好ましくは2又は3)である。)
【0018】
式(11)のXの1以上(好ましくは1~3、より好ましくは1又は2)の芳香族基を有する4価の基は、4価の芳香族炭化水素基(炭素数は例えば6~20)であってもよく、4価の芳香族複素環基(原子数は例えば5~20)であってもよい。Xは4価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0019】
の芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環から形成される2~4価(2価、3価又は4価)の基、ナフタレンから形成される2~4価の基、ペリレンから形成される2~4価の基等が挙げられる。
【0020】
の1以上の芳香族基を有する4価の基としては、例えば下記式に示す4価の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化6】
(式中、Z及びZは、それぞれ独立に、各々が結合するベンゼン環と共役しない2価の基又は単結合である。Zは、エーテル結合(-O-)又はスルフィド結合(-S-)である。)
【0021】
及びZの2価の基は、-O-、-S-、メチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、又はジフルオロメチレン基であることが好ましく、-O-がより好ましい。
は、-O-が好ましい。
【0022】
式(11)のYの2価の芳香族基は、2価の芳香族炭化水素基(炭素数は例えば6~20)であってもよく、2価の芳香族複素環基(原子数は例えば5~20)であってもよい。Yは2価の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0023】
の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば下記式(13)で表される基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化7】
(式(13)中、R21~R28は、それぞれ独立に、水素原子、1価の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を有する1価の有機基である。)
【0024】
21~R28の1価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6)としてはメチル基が好ましい。
【0025】
21~R28のハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)を有する1価の有機基は、ハロゲン原子を有する1価の脂肪族炭化水素基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6)が好ましく、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0026】
式(13)において、例えば、R22及びR23が1価の脂肪族炭化水素基(例えばメチル基)であり、R21及びR24~R28が水素原子であってもよい。
【0027】
式(11)のR11及びR12の炭素数1~4(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0028】
式(11)において、R11及びR12の少なくとも一方が式(12)で表される基であり、好ましくはR11及びR12の両方が式(12)で表される基である。
【0029】
式(12)のR13~R15の炭素数1~3(好ましくは1又は2)の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、2-プロピル基等が挙げられる。メチル基が好ましい。
【0030】
式(11)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体は、例えば、下記式(14)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、下記式(15)で表されるジアミノ化合物とを、N-メチルピロリドン等の有機溶剤中にて反応させてポリアミド酸を製造し、下記式(16)で表される化合物を加え、有機溶剤中で反応させて全体的又は部分的にエステル基を導入することで製造することができる。
【化8】
(式(14)中、Xは式(11)のXに対応する基である。式(15)中、Yは式(11)で定義した通りである。式(16)中、R13~R15及びmは式(12)で定義した通りである。)
【0031】
式(14)で表されるテトラカルボン酸二無水物及び式(15)で表されるジアミノ化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
式(11)で表される構造単位の含有量は、(A)成分の全構造単位に対して、50%モル以上であることが好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されず、100モル%でもよい。
【0033】
(A)成分は、式(11)で表される構造単位以外の構造単位を有してもよい。式(11)で表される構造単位以外の構造単位としては、下記式(17)で表される構造単位等が挙げられる。
【化9】
(式(17)中、X12は1以上の芳香族基を有する4価の基である。Y12は2価の芳香族基である。R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。-COOR31基と-CONH-基とは、互いにオルト位置にあり、-COOR32基と-CO-基とは、互いにオルト位置にある。)
【0034】
式(17)のX12の1以上の芳香族基を有する4価の基としては、式(11)のXの1以上の芳香族基を有する4価の基と同じ基が挙げられる。Y12の2価の芳香族基としては、式(11)のYの2価の芳香族基と同じ基が挙げられる。R31及びR32の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基としては、式(11)のR11及びR12の炭素数1~4の脂肪族炭化水素基と同じ基が挙げられる。
【0035】
式(11)で表される構造単位以外の構造単位の含有量は、(A)成分の全構造単位に対して50モル%未満であることが好ましい。
式(11)で表される構造単位以外の構造単位は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0036】
(A)成分において、ポリイミド前駆体中の全カルボキシ基及び全カルボキシエステルに対して、式(12)で表される基でエステル化されたカルボキシ基の割合が、50モル%以上であることが好ましく、60~100モル%がより好ましく、70~100モル%がより好ましい。
【0037】
(A)成分の分子量に特に制限はないが、数平均分子量で10,000~200,000であることが好ましい。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算することによって求める。具体的な測定条件等は実施例に記載の通りとする。
【0038】
((B)成分:式(1)で表される化合物)
本発明で用いる(B)成分は重合性モノマーの一種であり、(A)成分と架橋し、又は(B)成分同士が重合して架橋構造を形成する。これにより、光反応によりパターン樹脂膜の形成が可能となり、さらに、その後の熱処理反応においても(D)成分により架橋反応が促進されるため、(B)成分同士が重合した長いチェーン構造が形成される。上述したように、当該チェーン構造は膜の柔軟性を向上するため、(B)成分は可塑剤としての機能を有するともいえる。
【化10】
(式(1)中、Aは2価の有機基であり、アクリル基又はメタアクリル基を含まない。R~Rは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4の脂肪族炭化水素基である。n1及びn2は、それぞれ独立に、1~20の整数である。m1及びm2は、それぞれ独立に、0又は1である。)
【0039】
ある化合物が式(1)で表される化合物に該当するか判断する場合であって、A、n1及びn2の選択肢が複数ある場合、式(1)で表される化合物を満たすようにA、n1及びn2を選択できれば、式(1)で表される化合物に該当するものとみなす。
【0040】
式(1)において、n1及びn2は、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、1又は2としてもよい。
【0041】
及びRは、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0042】
及びRは、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0043】
Aはアクリル基又はメタアクリル基を含まない2価の有機基であり、重合性の不飽和結合を含まない2価の有機基としてもよい。
Aの2価の有機基としては、例えば、炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基、酸素原子(-O-)又はこれらのうち(例えば、1以上(好ましくは1又は2つ)の炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基、1以上(好ましくは1又は2つ)の炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基、及び酸素原子(-O-)のうち)2以上(好ましくは2、3又は4、より好ましくは3又は4)が連結して形成される基等が挙げられ、連結して形成される基としては、例えば、-(2価の脂肪族炭化水素基)-O-(2価の脂肪族炭化水素基)-、-(2価の芳香族炭化水素基)-(2価の脂肪族炭化水素基)-(2価の芳香族炭化水素基)-等が挙げられる。
Aの炭素数は特に限定されないが、例えば1~30であり、好ましくは1~20である。
【0044】
炭素数1~20の2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20(例えば炭素数1~10)のアルキレン基(例えば、メチル、エチル又はプロピルに対応する2価の基)又は炭素数3~20の2価のシクロアルキレン基(例えば、トリシクロデカンに由来する2価の基)等が挙げられる。
炭素数6~20の2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基等が挙げられる。
【0045】
(B)成分として、具体的には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのエチレングリコール鎖の数は、例えば5~20である。
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのプロピレングリコール鎖の数は、例えば5~20である。
エトキシ変性化合物は、エチレンオキサイド鎖を分子中に導入した化合物であり、好ましくは、1分子あたりエチレンオキサイド鎖を2~10モル含む。
プロポキシ変性化合物は、プロピレンオキサイド鎖を分子中に導入した化合物であり、好ましくは、1分子あたりプロピレンオキサイド鎖を2~10モル含む。
【0047】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、1~70質量部が好ましく、より好ましくは5~50質量部であり、さらに好ましくは10~50質量部である。
【0048】
((B’)成分:その他の重合性モノマー(架橋剤))
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)成分以外の架橋剤((B’)成分)を含有してもよい。
【0049】
当該成分としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリメタクリレート、アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、メタクリロイルオキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0050】
(B’)成分を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~15質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部である。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物が含む架橋剤のうち、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が(B)成分であってもよい。
【0052】
((C)成分:光重合開始剤)
(C)成分の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体;2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体;1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、下記式で表される化合物等のオキシムエステル類などが好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。光感度の点で、オキシムエステル類が好ましい。
【化11】
【0053】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部であり、さらに好ましくは0.1~8質量部である。上記範囲内の場合、光架橋が膜厚方向で均一となりやすく、実用的なレリーフパターンを得やすくなる。
【0054】
((D)成分:熱ラジカル発生剤)
本発明の感光性樹脂組成物は(D)熱ラジカル発生剤を含有するため、熱処理工程において(B)成分同士の架橋反応が促進される。
【0055】
(D)成分としては有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物としては、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキシド、ケトンパーオキシド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキシド、ジアシルパーオキシド、パーオキシジカーボネート等が挙げられ、パーオキシエステル及びジアルキルパーオキシドが好ましい。
【0056】
パーオキシエステルは下記一般式で表される化合物である。
R-(C=O)-O-O-R’ 又は
R-O-(C=O)-O-O-R’
式中、R及びR’は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基である。置換基としては炭素数6~10のアリール基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、例えば1~20又は1~10である。
【0057】
パーオキシエステルの具体例としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルネオデカノエート、t-ブチルネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-3-メチルベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0058】
市販品としては、商品名「パークミルND」、「パーオクタND」、「パーヘキシルND」、「パーブチルND」、「パーブチルNHP」、「パーヘキシルPV」、「パーブチルPV」、「パーオクタO」、「パーヘキサ25O」、「パーヘキシルO」、「パーブチルO」、「パーヘキシルI」、「パーブチルMA」、「パーブチル355」、「パーブチルL」、「パーブチルI-75」、「パーブチルE」、「パーヘキシルZ」、「パーヘキサ25Z」、「パーブチルA」、「パーブチルZT」、「パーブチルZ」(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0059】
ジアルキルパーオキシドは下記一般式で表される化合物である。
R-O-O-R’
式中、R及びR’は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基である。置換基としては炭素数6~10のアリール基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、例えば1~20又は1~10である。
【0060】
ジアルキルパーオキシドの具体例としては、ジクミルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等が挙げられる。
【0061】
市販品としては、商品名「パークミルD」、「パーブチルP」、「パーヘキサ25B」、「パーブチルC」、「パーヘキシルD」、「パーブチルD」、「パーヘキシン25B」、「パーヘキシン25B-40」(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0062】
(D)成分は、1時間の半減期温度が50℃以上200℃以下の化合物が好ましく、より低温で重合反応を促進する観点から、1時間の半減期温度が50℃以上175℃以下の化合物がより好ましい。
【0063】
1時間半減期温度は以下のようにして測定する。
有機過酸化物をベンゼンに溶解させて0.1mol/Lの溶液を調製し、窒素置換を行ったガラス管中に密封する。これを所定温度にセットした恒温槽に浸して熱分解、時間(t)ln a/(a-x)の関係をプロットし、得られた直線の傾きからkを求め、下記式から半減期(t1/2)を求める。
dx/dt=k(a-x)
ln a/(a-x)=kt
x=a/2
kt1/2=ln2
x:分解有機過酸化物量
k:分解速度定数
t:時間
a:有機過酸化物初期濃度
kは下記式で表されるので、数点の温度についてkを測定し、lnk~1/Tの関係をプロットして得られた直線の傾きから活性化エネルギーΔEを求め、y切片から頻度因子Aを求める。
k=Aexp[-ΔE/RT]
lnk=lnA-ΔE/RT
A:頻度因子(1/h)
ΔE:活性化エネルギー(J/mol)
R:気体定数(8.314J/mol・K)
T:絶対温度(K)
lnkの代わりにlnt1/2~1/Tの関係をプロットして得られた直線から任意の温度における有機過酸化物の半減期が得られ、任意の半減期(1時間)を得る分解温度が得られる。
【0064】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.2~20質量部がより好ましく、0.3~10質量部がさらに好ましい。
【0065】
((E)成分:溶剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、通常、溶剤を含む。
溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(例えばKJケミカルズ株式会社製「KJCMPA-100」)、N-ジメチルモルホリン等の有機溶剤などが挙げられる。
溶剤の含有量は、特に限定されないが、一般的に、(A)成分100質量部に対して、50~1000質量部である。
【0066】
(他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、上記成分以外に、さらに、カップリング剤(接着助剤)、界面活性剤又はレベリング剤、増感剤、防錆剤及び重合禁止剤等を含有してもよい。
【0067】
(カップリング剤)
カップリング剤は、通常、現像後の加熱処理において、(A)成分と反応して架橋するか、又は加熱処理する工程においてカップリング剤自身が重合する。これにより、得られる硬化膜と基板との接着性をより向上させることができる。
【0068】
カップリング剤としてはシランカップリング剤が好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、ウレア結合(-NH-CO-NH-)を有する化合物が挙げられる。これにより、200℃以下の低温下で硬化を行った場合も基板との接着性をさらに高めることができる。
低温での硬化を行った際の接着性の発現に優れる点で、下記式(31)で表される化合物がより好ましい。
【化12】
(式(31)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基である。jは1~10の整数であり、kは1~3の整数である。)
【0069】
式(31)で表される化合物の具体例としては、ウレイドメチルトリメトキシシラン、ウレイドメチルトリエトキシシラン、2-ウレイドエチルトリメトキシシラン、2-ウレイドエチルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、4-ウレイドブチルトリメトキシシラン、4-ウレイドブチルトリエトキシシラン等が挙げられ、好ましくは3-ウレイドプロピルトリエトキシシランである。
【0070】
シランカップリング剤として、ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤、及び分子内にウレア結合を有するシランカップリング剤を併用すると、さらに低温硬化時の硬化膜の基板への接着性を向上することができる。
【0071】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤としては、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n-プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n-ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert-ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n-プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n-ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert-ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn-プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n-ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert-ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n-プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n-ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert-ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4-ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン、及び下記式(32)で表わされる化合物等が挙げられる。中でも、特に、基板との接着性をより向上させるため、式(32)で表される化合物が好ましい。
【化13】
(式(32)中、R53はヒドロキシ基又はグリシジル基を有する1価の有機基であり、R54及びR55は、それぞれ独立に、炭素数1~5のアルキル基である。oは1~10の整数であり、pは1~3の整数である。)
【0072】
式(32)で表される化合物としては、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
ヒドロキシ基又はグリシジル基を有するシランカップリング剤は、さらに、窒素原子を有する基を含むことが好ましく、さらにアミノ基又はアミド結合を有するシランカップリング剤がより好ましい。
さらにアミノ基を有するシランカップリング剤としては、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2-グリシドキシメチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシメチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0074】
さらにアミド結合を有するシランカップリング剤としては、下記式(33)で表される化合物等が挙げられる。
56-(CH-CO-NH-(CH-Si(OR57 (33)
(式(33)中、R56はヒドロキシ基又はグリシジル基であり、q及びrは、それぞれ独立に、1~3の整数であり、R57はメチル基、エチル基又はプロピル基である。)
【0075】
シランカップリング剤を用いる場合、シランカップリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0076】
(界面活性剤又はレベリング剤)
界面活性剤又はレベリング剤を含むことで、塗布性(例えばストリエーション(膜厚のムラ)の抑制)及び現像性を向上させることができる。
【0077】
界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられ、市販品としては、商品名「メガファックF171」、「F173」、「R-08」(以上、DIC株式会社製)、商品名「フロラードFC430」、「FC431」(以上、スリーエム ジャパン株式会社製)、商品名「オルガノシロキサンポリマーKP341」、「KBM303」、「KBM403」、「KBM803」(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0078】
界面活性剤又はレベリング剤を含む場合、界面活性剤又はレベリング剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.05~3質量部がさらに好ましい。
【0079】
(重合禁止剤)
重合禁止剤を含有することで、良好な保存安定性を確保することができる。
重合禁止剤としては、ラジカル重合禁止剤、ラジカル重合抑制剤等が挙げられる。
重合禁止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、ジフェニル-p-ベンゾキノン、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ピロガロール、フェノチアジン、レゾルシノール、オルトジニトロベンゼン、パラジニトロベンゼン、メタジニトロベンゼン、フェナントラキノン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、クペロン、2,5-トルキノン、タンニン酸、パラベンジルアミノフェノール、ニトロソアミン類等が挙げられる。
【0080】
重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量としては、感光性樹脂組成物の保存安定性及び得られる硬化膜の耐熱性の観点から、(A)成分100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.01~10質量部がより好ましく、0.05~5質量部がさらに好ましい。
【0081】
(その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物は、増感剤を含有してもよい。
増感剤としては、例えば、7-N,N-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノ-3-テノニルクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-N,N-ジエチルアミノ)クマリン、3,3’-カルボニルビス(7-N,N-ジメトキシ)クマリン、3-チエニルカルボニル-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-N,N-メトキシクマリン、3-(4’-メトキシベンゾイル)クマリン、3,3’-カルボニルビス-5,7-(ジメトキシ)クマリン、ベンザルアセトフェノン、4’-N,N-ジメチルアミノベンザルアセトフェノン、4’-アセトアミノベンザル-4-メトキシアセトフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(N-エチル,N-メチル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0082】
増感剤を含有する場合、(a)ポリイミド前駆体100質量部に対して、0.1~3.0質量部とすることがより好ましく、0.1~1.0質量部とすることがさらに好ましい。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物は、防錆性をより向上させる観点から防錆剤を含んでもよい。防錆剤としては、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-メチル-5-アミノ-テトラゾール、1-メチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-カルボキシメチル-5-アミノ-テトラゾール、ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらのテトラゾール、トリアゾール化合物は、その水溶性塩であってもよい。
防錆剤を含む場合の含有量は、(a)成分100質量部に対して0.05~5.0質量部が好ましく、0.1~4.0質量部がより好ましい。
【0084】
また、本発明の感光性樹脂組成物は安定剤を含んでもよい。安定剤としては、1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]-ノナ-2-エン-N,N-ジクソイド等公知の化合物を用いることができる。
安定剤を含む場合の含有量は、(a)成分100質量部に対して0.05~5.0質量部が好ましく、0.1~2.0質量部がより好ましい。
【0085】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いて、本質的に、(A)~(D)成分、並びに、(B’)成分、カップリング剤(接着助剤)、界面活性剤、レベリング剤、増感剤、防錆剤及び重合禁止剤からなる群から選択される1以上の成分からなっており、本発明の効果を損なわない範囲で他に不可避不純物を含んでもよい。
本発明の感光性樹脂組成物の、例えば、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上又は100質量%が、溶剤を除いて、
(A)~(D)成分、
(A)~(D)成分及び(B’)成分、
(A)~(D)成分、並びに、(B’)成分、カップリング剤(接着助剤)、界面活性剤、レベリング剤、増感剤、防錆剤及び重合禁止剤からなる群から選択される1以上、又は
(A)~(D)成分、(B’)成分、並びに、カップリング剤(接着助剤)、界面活性剤、レベリング剤、増感剤、防錆剤及び重合禁止剤からなる群から選択される1以上の成分からなっていてもよい。
【0086】
[硬化膜]
本発明の硬化膜は、上述の感光性樹脂組成物の硬化することで得ることができる。本発明の硬化膜は、パターン硬化膜として用いてもよく、パターンがない硬化膜として用いてもよい。本発明の硬化膜の膜厚は、5~20μmが好ましい。
【0087】
本発明の硬化膜は、上述した通り、(A)成分に由来するポリイミドと、(B)成分に由来するチェーン構造の高分子化合物(重合体)を含む。
【0088】
[パターン硬化膜の製造方法]
本発明のパターン硬化膜の製造方法では、上述の感光性樹脂組成物を基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程と、前記感光性樹脂膜をパターン露光して、樹脂膜を得る工程と、前記パターン露光後の樹脂膜を、有機溶剤を用いて現像し、パターン樹脂膜を得る工程と、前記パターン樹脂膜を加熱処理する工程と、を含む。これにより、パターン硬化膜を得ることができる。
【0089】
本発明のパターン硬化膜の製造方法は、上述した本発明の感光性樹脂組成物を用いて、上記の工程を経ることで、加熱処理工程時に(B)重合性モノマー(架橋剤)の架橋反応が促され、(B)成分同士又は(A)成分と(B)成分との間で架橋が進み、高次構造が得られる。これにより、薬液の浸潤が少ない、高い薬液耐性を有するパターン硬化膜を製造することができる。また、加熱処理工程時の(B)重合性モノマー(架橋剤)の揮発量が少ないため、膜収縮(シュリンク)が少なく寸法精度に優れる。
【0090】
パターンがない硬化膜を製造する方法は、例えば、上述の感光性樹脂膜を形成する工程と加熱処理する工程とを備える。さらに、露光する工程を備えてもよい。
【0091】
基板としては、ガラス基板、Si基板(シリコンウエハ)等の半導体基板、TiO基板、SiO基板等の金属酸化物絶縁体基板、窒化ケイ素基板、銅基板、銅合金基板などが挙げられる。
【0092】
塗布方法に特に制限はないが、スピナー等を用いて行うことができる。
【0093】
乾燥は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
乾燥温度は90~150℃が好ましく、溶解コントラスト確保の観点から、(A)成分と(B)成分の反応を抑制するために90~120℃がより好ましい。
乾燥時間は、30秒間~5分間が好ましい。
乾燥は、2回以上行ってもよい。
これにより、上述の感光性樹脂組成物を膜状に形成した感光性樹脂膜を得ることができる。
【0094】
感光性樹脂膜の膜厚は、1~100μmが好ましく、3~50μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。
【0095】
パターン露光は、例えばフォトマスクを介して所定のパターンに露光する。
照射する活性光線は、i線等の紫外線、可視光線、放射線などが挙げられるが、i線であることが好ましい。
露光装置としては、平行露光機、投影露光機、ステッパ、スキャナ露光機等を用いることができる。
【0096】
現像することで、パターン形成された樹脂膜(パターン樹脂膜)を得ることができる。一般的に、ネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合には、未露光部を現像液で除去する。
現像液として用いる有機溶剤は、感光性樹脂膜の良溶媒を単独で、又は良溶媒と貧溶媒を適宜混合して用いることができる。
良溶媒としては、N-メチルピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
貧溶媒としては、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル及び水等が挙げられる。
【0097】
現像液に界面活性剤を添加してもよい。添加量としては、現像液100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。
【0098】
現像時間は、例えば感光性樹脂膜を浸漬して溶解するまでの時間の2倍とすることができる。
現像時間は、用いる(A)成分、(B)成分によっても異なるが、10秒間~15分間が好ましく、10秒間~5分間より好ましく、生産性の観点からは、20秒間~5分間がさらに好ましい。
【0099】
現像後、リンス液により洗浄を行ってもよい。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を単独又は適宜混合して用いてもよく、また段階的に組み合わせて用いてもよい。
【0100】
パターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン硬化膜を得ることができる。(A)成分のポリイミド前駆体は、加熱処理工程によって、脱水閉環反応を起こし、一部又は全部がポリイミドとなる。
【0101】
加熱処理の温度は、250℃以下が好ましく、120~250℃がより好ましく、200℃以下又は150~200℃がさらに好ましい。
上記範囲内であることにより、基板やデバイスへのダメージを小さく抑えることができ、デバイスを歩留り良く生産することが可能となり、プロセスの省エネルギー化を実現することができる。
【0102】
加熱処理の時間は、5時間以下が好ましく、30分間~3時間がより好ましい。上記範囲内であることにより、架橋反応又は脱水閉環反応を充分に進行することができる。
加熱処理の雰囲気は大気中であっても、窒素等の不活性雰囲気中であってもよいが、パターン樹脂膜の酸化を防ぐことができる観点から、窒素雰囲気下が好ましい。
【0103】
加熱処理に用いられる装置としては、石英チューブ炉、オーブン、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等が挙げられる。
【0104】
[層間絶縁膜、カバーコート層、表面保護膜、電子部品]
本発明の硬化膜は、パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等として用いることができる。
上記パッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、カバーコート層及び表面保護膜等からなる群から選択される1以上を用いて、信頼性の高い、半導体装置、多層配線板、各種電子デバイス等の電子部品などを製造することができる。
【0105】
本発明の電子部品である半導体装置の製造工程の一例を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品である多層配線構造の半導体装置の製造工程図である。
図1において、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2などで被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成される。その後、前記半導体基板1上に層間絶縁膜4が形成される。
【0106】
次に、塩化ゴム系、フェノールノボラック系等の感光性樹脂層5が、層間絶縁膜4上に形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる。
【0107】
窓6Aが露出した層間絶縁膜4は、選択的にエッチングされ、窓6Bが設けられる。
次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光性樹脂層5を腐食するようなエッチング溶液を用いて感光性樹脂層5が除去される。
【0108】
さらに公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成し、第1導体層3との電気的接続を行う。
3層以上の多層配線構造を形成する場合には、上述の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。
【0109】
次に、上述の感光性樹脂組成物を用いて、パターン露光により窓6Cを開口し、表面保護膜8を形成する。表面保護膜8は、第2導体層7を外部からの応力、α線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。
尚、前記例において、層間絶縁膜を本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【実施例
【0110】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明について具体的に説明する。尚、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0111】
合成例1(ポリマーA1の合成)
3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(ODPA)7.07g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)0.831g及び触媒量の1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタントリエチレンジアミンをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)30gに溶解し、45℃で1時間撹拌した後25℃まで冷却した。2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(DMAP)4.12gをNMPに溶解した溶液を加えた後、30℃で4時間、その後室温下で一晩撹拌し、ポリアミド酸を得た。この溶液に無水トリフルオロ酢酸を9.45g滴下した後、45℃で3時間撹拌し、触媒量のベンゾキノンを加え、更にメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)7.08gを加え45℃で20時間撹拌した。この反応液を蒸留水に滴下し、沈殿物をろ別して集め、減圧乾燥することによってポリイミド前駆体を得た(以下、ポリマーA1とする)。
【0112】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算により、以下の条件でポリマーA1の数平均分子量を求めた。ポリマーA1の数平均分子量は40,000であった。数平均分子量は、0.5mgのポリマーA1に対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mLの溶液を用いて測定した。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
株式会社島津製作所製C-R4A Chromatopac
測定条件:カラムGelpack GL-S300MDT-5×2本
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/L)、HPO(0.06mol/L)
流速:1.0mL/分、検出器:UV270nm
【0113】
また、ポリマーA1のエステル化率(ODPAに由来するカルボキシ基とHEMAとの反応率)を、以下の条件でNMR測定を行って算出した。エステル化率はポリアミド酸の全カルボキシ基に対し80モル%であった(残り20モル%はカルボキシ基であった)。
測定機器:ブルカー・バイオスピン社製 AV400M
磁場強度:400MHz
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)
溶剤:ジメチルスルホキシド(DMSO)
【0114】
以下の実施例及び比較例で用いた各成分は以下の通りである。
【0115】
((A)成分:重合性の不飽和結合を有するポリイミド前駆体)
ポリマーA1:合成例1で得られたポリマーA1
【0116】
((B)成分:重合性モノマー)
B1:「A-200」(新中村化学工業株式会社製、テトラエチレングリコールジアクリレート、下記式で表される化合物)
【化14】
B2:「FA-324A」(日立化成株式会社製、エトキシ変性ビスフェノールAジアクリレート、下記式で表される化合物、m=2,n=2)
【化15】
B3:「TEGDMA」(新中村化学工業株式会社製、トリエチレングリコールジメタクリレート、下記式で表される化合物)
【化16】
B4:「FA-324M」(日立化成株式会社製、エトキシ変性ビスフェノールAジメタクリレート、下記式で表される化合物、m=2,n=2、下記式で表される化合物)
【化17】
B5:「FA-321A」(日立化成株式会社製、エトキシ変性ビスフェノールAジアクリレート、下記式で表される化合物、m=5,n=5、下記式で表される化合物)
【化18】
B6:「FA-321M」(日立化成株式会社製、エトキシ変性ビスフェノールAジメタクリレート、下記式で表される化合物、m=5,n=5、下記式で表される化合物)
【化19】
B7:「A-400」(新中村化学工業株式会社製、ポリエチレングリコールジアクリレート、下記式で表される化合物)
【化20】
B8:「FAP-324A」(日立化成株式会社製、プロポキシ変性ビスフェノールAジアクリレート、下記式で表される化合物、m=2,n=2、下記式で表される化合物)
【化21】
【0117】
((B’)成分)
B’1:「A-DCP」(新中村化学工業株式会社製、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、下記式で表される化合物)
【化22】
B’2:「ATM-4E」(新中村化学工業株式会社製、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、下記式で表される化合物)
【化23】
B’3:「M-140」(東亜合成株式会社製、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、下記式で表される化合物)
【化24】
B’4:「DPE-6A」(共栄社化学株式会社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、下記式で表される化合物)
【化25】
B’5:「M-215」(東亜合成株式会社製、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、下記式で表される化合物)
【化26】
【0118】
なお、(B’)成分とは、本発明で用いる(B)成分とは異なる成分を意味する。
【0119】
((C)成分:光重合開始剤)
C1:「IRGACURE OXE 02」(BASFジャパン株式会社製、下記式で表される化合物)
【化27】
C2:「G-1820(PDO)」(Lambson社製、下記式で表される化合物)
【化28】
【0120】
((D)成分:熱ラジカル発生剤)
D1:「パークミルD」(日油株式会社製、ジクミルパーオキシド、下記式で表される化合物、1時間半減期温度135.7℃)
【化29】
D2:「パーブチルZ」(日油株式会社製、t-ブチルパーオキシベンゾエート、下記式で表される化合物、1時間半減期温度124.7℃)
【化30】
D3:「パーブチルO」(日油株式会社製、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、下記式で表される化合物、1時間半減期温度92.1℃)
【化31】
【0121】
((E)成分:溶剤)
E1:「KJCMPA-100」(KJケミカルズ株式会社製、下記式で表される化合物)
【化32】
【0122】
(他の成分:重合禁止剤)
「Taobn」(1,4,4-トリメチル-2,3-ジアザビシクロ[3.2.2]-ノナ-2-エン-N,N-ジクソイド、Hampford Research社製)
【0123】
(他の成分:増感剤)
「EMK」(Aldrich社製、下記式で表される化合物、Etはエチル基を表す)
【化33】
【0124】
(他の成分:接着助剤)
「UCT-801」(3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、United Chemical Technologies社製)
【0125】
(他の成分:防錆剤)
「5ATz」(東京化成工業株式会社製、商品名「5-アミノ-1H-テトラゾール」、下記式で表される化合物)
【化34】
【0126】
(他の成分:熱塩基発生剤)
「4HP」(東京化成工業株式会社製、商品名「4-ヒドロキシピリジン」、下記式で表される化合物)
【化35】
【0127】
実施例1~12及び比較例1~7
[感光性樹脂組成物の調製]
表1に示す成分及び配合量にて、実施例1~12及び比較例1~7の感光性樹脂組成物を調製した。表1の配合量は、100質量部の(A)成分に対する各成分の質量部である。
【0128】
[硬化膜の評価]
(イミド化率の測定1)
得られた感光性樹脂組成物を、シリコン基板(支持基板)上にスピンコートし、105℃で2分間、さらに115℃で2分間乾燥し、乾燥後膜厚が12μmの樹脂膜(A)を形成した。この樹脂膜に「マスクアライナーMA-8」(ズース・マイクロテック社製)を用いて700mJ/cmの光照射を行った。その後、樹脂膜付きウエハを縦型拡散炉「μ-TF」(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて窒素雰囲気下で、160℃で2時間加熱して硬化膜(B)を得た。また、上記と同様に製造した樹脂膜付きウエハを375℃で2時間加熱して硬化膜(C)を得た。
これらの樹脂膜(A)、硬化膜(B)及び硬化膜(C)の赤外吸収スペクトルを測定し、1370cm-1付近にあるイミド基のC-N伸縮振動に起因するピークの吸光度を求めた。赤外吸収スペクトルの測定は、測定装置として「IR Affinity-1s」(株式会社島津製作所製)を使用した。樹脂膜(A)のイミド化率を0%、硬化膜(C)のイミド化率を100%として、次の式から硬化膜(B)のイミド化率を算出した。結果を、硬化温度の「160℃」という表示で、表1に示す。
樹脂膜(B)のイミド化率={(樹脂膜(B)吸光度-硬化膜(A)吸光度)/(塗布膜(C)吸光度―硬化膜(A)吸光度)}×100
【0129】
(イミド化率の測定2)
硬化温度を180℃に変更した以外、「イミド化率の測定1」と同様に硬化膜を作製し、イミド化率を算出した。結果を、硬化温度の「180℃」という表示で、表1に示す。
【0130】
(イミド化率の測定3)
硬化温度を200℃に変更した以外、「イミド化率の測定1」と同様に硬化膜を作製し、イミド化率を算出した。結果を、硬化温度の「200℃」という表示で、表1に示す。
【0131】
(機械特性(破断伸び特性)の評価)
実施例2,3及び比較例1,2で得られた感光性樹脂組成物を、それぞれシリコン基板上にスピンコートし、ホットプレート上で、105℃で2分間、115℃で2分間加熱乾燥し、約12μmの感光性樹脂膜を形成した。得られた感光性樹脂膜を、「マスクアライナーMA-8」(ズース・マイクロテック社製)を用いて、広帯域(BB)露光し、露光後の樹脂膜をシクロペンタノンで現像し、10mm幅の短冊状のパターン樹脂膜を得た。得られたパターン付きウエハを縦型拡散炉「μ-TF」(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて窒素雰囲気下、160℃で2時間加熱して厚さ約10umのパターン硬化膜を得た。
得られたパターン硬化膜を、4.9質量%フッ酸水溶液に浸漬して、ウエハから剥離した。剥離した硬化膜について以下のように破断伸び特性を評価した。破断伸びの測定は「オートグラフAGS-100NH」(株式会社島津製作所製)を用いてチャック間距離2cm、引張り速度毎分5mmの条件で測定した。結果を表2に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
表1,2より、本発明の感光性樹脂組成物から得られた硬化膜は、ポリイミドのイミド化率が高く、破断伸び特性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の感光性樹脂組成物は、層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜等に用いることができ、本発明の層間絶縁膜、カバーコート層又は表面保護膜は、電子部品等に用いることができる。
【0136】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。
図1