(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-25
(45)【発行日】2024-04-02
(54)【発明の名称】有機溶剤の脱水方法および有機溶剤の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 17/38 20060101AFI20240326BHJP
B01D 3/00 20060101ALI20240326BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20240326BHJP
C07C 23/08 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C07C17/38
B01D3/00 B
B01J19/00 B
C07C23/08
(21)【出願番号】P 2021508827
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007412
(87)【国際公開番号】W WO2020195454
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019059227
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】太田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】菅原 充
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭52-004269(JP,B1)
【文献】特開平11-192419(JP,A)
【文献】特開平07-332180(JP,A)
【文献】特開2005-223184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/38
B01D 3/00
B01J 19/00
C07C 23/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水用ガスを準備する工程(A)と、
前記脱水用ガスと、有機溶剤とを接触させる工程(B)と、
を含み、
前記工程(A)が、露点が-30℃以下のガスをガスフィルターに通過させて脱水用ガスを得る工程(a1)、または、ガスフィルターを通過させたガスの露点を-30℃以下に調整して脱水用ガスを得る工程(a2)を含
み、
前記ガスフィルターは、粒子を通過させた時の粒子捕捉率が99.9%以上となる粒子径の最小値が0.03μm以下である、有機溶剤の脱水方法。
【請求項2】
前記有機溶剤が、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル類、ニトリル類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類、パーフルオロカーボン類およびハイドロフルオロオレフィン類からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤を含む、請求項1に記載の有機溶剤の脱水方法。
【請求項3】
前記有機溶剤が1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを含む、請求項1または2に記載の有機溶剤の脱水方法。
【請求項4】
前記有機溶剤が共沸組成物である、請求項1~3の何れかに記載の有機溶剤の脱水方法。
【請求項5】
前記有機溶剤が、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンと、tert-アミルアルコールとの混合物である、請求項1~4の何れかに記載の有機溶剤の脱水方法。
【請求項6】
前記ガスが、水素、空気、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、一酸化炭素および二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1種よりなる、請求項1~5の何れかに記載の有機溶剤の脱水方法。
【請求項7】
有機溶剤をフィルターでろ過する工程(α)と、
請求項1~6の何れかに記載の有機溶剤の脱水方法を用いて有機溶剤を脱水する工程(β)と、
を含む、有機溶剤の精製方法。
【請求項8】
前記工程(β)では、前記工程(α)でろ過された有機溶剤を脱水する、請求項7に記載の有機溶剤の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤の脱水方法および有機溶剤の精製方法に関し、特には、気液接触を用いた有機溶剤の脱水方法および当該脱水方法を用いた有機溶剤の精製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶剤などの液体中に含まれている水分を除去する方法として、モレキュラーシーブなどの水分吸着剤に接触させることにより乾燥させた不活性ガスを液体中に吹き込み、液体中の水分を不活性ガスに帯同させて除去する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば半導体デバイスの製造や洗浄に用いられる有機溶剤などでは、水分や微粒子等の不純物を低減することが求められている。
【0005】
しかし、乾燥させたガスをそのまま吹き込んで液体中の水分を除去する上記従来の脱水方法には、脱水後の液体中に含まれている微粒子の量が増加してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、微粒子数の増加を抑制しつつ有機溶剤を脱水する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、水分量および微粒子数の双方を良好に低減可能な有機溶剤の精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の有機溶剤の脱水方法は、脱水用ガスを準備する工程(A)と、前記脱水用ガスと、有機溶剤とを接触させる工程(B)とを含み、前記工程(A)が、露点が-30℃以下のガスをガスフィルターに通過させて脱水用ガスを得る工程(a1)、または、ガスフィルターを通過させたガスの露点を-30℃以下に調整して脱水用ガスを得る工程(a2)を含むことを特徴とする。このように、露点が-30℃以下のガスをガスフィルターに通過させて得た脱水用ガス、または、ガスフィルターを通過させたガスの露点を-30℃以下に調整して得た脱水用ガスを使用すれば、微粒子数の増加を抑制しつつ有機溶剤を脱水することができる。
なお、本発明において、「露点」とは、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を用いて測定した水分量から求めた大気圧下露点を指す。
【0008】
ここで、前記有機溶剤は、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル類、ニトリル類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類、パーフルオロカーボン類およびハイドロフルオロオレフィン類からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤を含み得る。
【0009】
中でも、前記有機溶剤は、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを含むことが好ましい。1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを含む有機溶剤は、半導体デバイスの製造や洗浄に有利に使用し得る。
【0010】
また、前記有機溶剤は、共沸組成物であってもよい。
【0011】
そして、前記有機溶剤は、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンと、tert-アミルアルコールとの混合物であることが好ましい。1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンと、tert-アミルアルコールとの混合物は、半導体デバイスの製造や洗浄に有利に使用し得る。
【0012】
更に、前記ガスは、水素、空気、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、一酸化炭素および二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1種よりなることが好ましい。これらのガスを使用すれば、副反応の発生を抑制しつつ有機溶剤を良好に脱水することができる。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の有機溶剤の精製方法は、有機溶剤をフィルターでろ過する工程(α)と、上述した有機溶剤の脱水方法の何れかを用いて有機溶剤を脱水する工程(β)とを含むことを特徴とする。工程(α)および工程(β)を実施すれば、有機溶剤から水分および微粒子の双方を良好に除去して水分量および微粒子数が低減された有機溶剤よりなる精製物を得ることができる。
【0014】
ここで、本発明の有機溶剤の精製方法において、前記工程(β)では、前記工程(α)でろ過された有機溶剤を脱水することが好ましい。工程(α)の後に工程(β)を実施すれば、ろ過中に水分が混入するのを抑制することができる。なお、本発明の有機溶剤の精製方法では、工程(β)において上述した本発明の有機溶剤の脱水方法を用いて有機溶剤を脱水しているので、工程(α)の後に工程(β)を実施した場合であっても、微粒子数が十分に低減された精製物を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の有機溶剤の脱水方法によれば、微粒子数の増加を抑制しつつ有機溶剤を脱水することができる。
また、本発明の有機溶剤の精製方法によれば、水分量および微粒子数の双方を良好に低減した精製物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は、本発明の有機溶剤の精製方法の一例のフローを示す図であり、(b)は、本発明の有機溶剤の精製方法の他の例のフローを示す図である。
【
図2】有機溶剤の脱水に使用し得る脱水装置の一例の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の有機溶剤の脱水方法は、有機溶剤を脱水する際に用いることができる。また、本発明の有機溶剤の精製方法は、本発明の有機溶剤の脱水方法を用いて有機溶剤を脱水する工程を含むものであり、有機溶剤から水分および微粒子の双方を除去して水分量および微粒子数が低減された有機溶剤よりなる精製物を得る際に用いることができる。
【0018】
(有機溶剤の精製方法)
本発明の有機溶剤の精製方法は、有機溶剤をフィルターでろ過する工程(α)と、本発明の有機溶剤の脱水方法を用いて有機溶剤を脱水する工程(β)とを含み、任意に、工程(α)の前に前処理工程(γ)を更に含み得る。
【0019】
そして、本発明の有機溶剤の精製方法では、工程(α)において有機溶剤をフィルターでろ過しているので、有機溶剤から微粒子を除去することができる。また、本発明の有機溶剤の精製方法では、工程(β)において本発明の有機溶剤の脱水方法を用いて有機溶剤を脱水しているので、後に詳細に説明するように脱水操作に起因して微粒子数が増加するのを抑制しつつ有機溶剤を脱水することができる。従って、本発明の有機溶剤の精製方法によれば、水分量および微粒子数が良好に低減された有機溶剤よりなる精製物を得ることができる。
【0020】
なお、工程(α)と工程(β)とは、何れを先に実施してもよいが、工程(α)を先に実施することが好ましい。
図1(b)に示すように工程(β)を先に実施した場合、脱水後の有機溶剤をフィルターでろ過する際に周囲雰囲気等から有機溶剤中に水分が混入する可能性がある。しかし、
図1(a)に示すように工程(α)を先に実施し、工程(α)でろ過された有機溶剤を脱水すれば、得られる精製物中の水分量を十分に低減することができる。また、工程(β)では、微粒子数が増加するのを抑制しつつ有機溶剤を脱水することができるので、工程(α)を先に実施した場合であっても、水分量および微粒子数が十分に低減された有機溶剤よりなる精製物を得ることができる。
【0021】
<有機溶剤>
ここで、本発明の有機溶剤の精製方法で精製される有機溶剤としては、特に限定されることなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン等の炭化水素類;ブタノール、イソプロパノール、2-ブタノール、メチルブタノール、プロパノール、ヘプタノール、ヘキサノール、デカノール、ノナノール等の脂肪族アルコール類やベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、エチルベンジルアルコール、メトキシベンジルアルコール、エトキシベンジルアルコール、ヒドロキシベンジルアルコール、3-フェニルプロパノール、クミルアルコール、フルフリルアルコール、フェネチルアルコール、メトキシフェネチルアルコール、エトキシフェネチルアルコール等の芳香族アルコール類等のアルコール類;ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、カプロン酸メチル、カプロン酸ブチル等のエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル類;式:CnHmF2n+2-m〔式中、nは4以上6以下の整数であり、mは1以上の整数である〕で表される化合物(例えば、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)、式:CnHmF2n-m〔式中、nは4以上6以下の整数であり、mは1以上の整数である〕で表される化合物(例えば、1,1,2,2,3-ペンタフルオロシクロブタン、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン、1,1,2,2,3,3,4,4,5-ノナフルオロシクロシクロヘキサン)等のハイドロフルオロカーボン類;メチルパーフルオロブチルエーテル、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロペンチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテル等のハイドロフルオロエーテル類;パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン等のパーフルオロカーボン類;1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等のハイドロフルオロオレフィン類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル類;3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピル等の炭酸エステル類;並びに、γ-ブチルラクトン等のラクトン類が挙げられる。
なお、上述した有機溶剤は、1種単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
中でも、有機溶剤は、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アミド類、エステル類、ニトリル類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類、パーフルオロカーボン類およびハイドロフルオロオレフィン類からなる群より選択される少なくとも1種の溶剤を含むことが好ましく、フッ素原子を含有する溶剤(フッ素系溶剤)を含むことがより好ましく、ハイドロフルオロカーボン類を含むことが更に好ましく、環状のハイドロフルオロカーボン類を含むことが一層好ましく、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを含むことが特に好ましい。ハイドロフルオロカーボン類は、不燃性であり、水存在下での安定性に優れ、低毒性であり、オゾン破壊係数がゼロだからである。また、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンは、溶剤として取り扱うのに適度な沸点を有していると共に、半導体デバイスの製造や洗浄に有利に使用し得るからである。
【0023】
また、有機溶剤は、共沸組成物であってもよい。
そして、半導体デバイスの製造や洗浄に有利に使用することができ、且つ、共沸組成物を形成し易い観点からは、有機溶剤は、フッ素系溶剤と、炭素数5以下のアルコールとの混合物であることが好ましく、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンと、tert-アミルアルコール、ベンジルアルコールおよびフェネチルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種との混合物であることがより好ましく、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンと、tert-アミルアルコールとの混合物であることが更に好ましい。
【0024】
なお、有機溶剤は、フェノール系酸化防止剤や界面活性剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0025】
〔フェノール系酸化防止剤〕
ここで、有機溶剤に任意に含まれ得るフェノール系酸化防止剤としては、特に限定されることなく、例えば、フェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチルヒドロキシルアニソール等を挙げることができる。これらの中でも、本発明の有機溶剤の精製方法によって得られる精製物に高い酸化防止効果を付与できる観点から、フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールが好ましい。
なお、上述したフェノール系酸化防止剤は、1種単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。
そして、有機溶剤中のフェノール系酸化防止剤の濃度は、例えば1質量%以上5質量%以下とすることができる。
【0026】
〔界面活性剤〕
また、有機溶剤に任意に含まれ得る界面活性剤としては、特に限定されないが、本発明の有機溶剤の精製方法によって得られる精製物に優れた洗浄性を容易に付与できるという観点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
なお、有機溶剤中の界面活性剤の濃度は、例えば1質量%以上5質量%以下とすることができる。
【0027】
そして、有機溶剤、並びに、任意成分であるフェノール系酸化防止剤および界面活性剤の割合は、本発明の有機溶剤の精製方法によって得られる精製物の使用目的等に応じて適宜設定し得る。
【0028】
<前処理工程(γ)>
ここで、工程(α)の前に任意に実施し得る前処理工程(γ)では、例えば、工程(α)においてろ過される有機溶剤中に含まれる粗大粒子を除去する。工程(α)の前に前処理工程(γ)を行うことで、工程(α)で使用するフィルターが粗大粒子によって目詰まりしたり、フィルターの寿命が低下したりするのを防ぐことができる。
【0029】
ここで、前処理工程(γ)において有機溶剤中の粗大粒子を除去する方法は、特に限定されず、例えば、任意の目開きを有する前処理用フィルター等のろ過材を用いて有機溶剤をろ過する方法等が挙げられる。その際、任意の圧力下において加圧ろ過、または減圧ろ過を行ってもよい。
【0030】
なお、本発明の有機溶剤の精製方法において工程(β)を工程(α)の前に実施する場合、前処理工程(γ)は、工程(β)の前に実施してもよいし、工程(β)と工程(α)との間に実施してもよい。
【0031】
<工程(α)>
そして、工程(α)では、フィルターを用いて有機溶剤をろ過する。なお、有機溶剤は、空気中でろ過してもよく、例えば、アルゴン雰囲気下、窒素雰囲気下などの不活性ガス雰囲気下でろ過してもよい。また、ろ過は、一般的な液体のろ過装置を用いて行ってもよいし、薬液供給装置などの工業ライン上で薬液としての有機溶剤が通過する箇所にフィルターを設置することにより行ってもよいし、フィルターを容器に詰めてなるユニットを直列接続して多段で行ってもよい。
【0032】
〔フィルター〕
ここで、フィルターでろ過する有機溶剤は、通常、微粒子を含むものである。
そして、工程(α)で使用するフィルターは、少なくとも微粒子を有機溶剤から分離可能なものであれば、特に限定されることなく、有機材料からなるフィルターであっても無機材料からなるフィルターであってもよいが、有機材料からなるフィルターであることが好ましい。
【0033】
中でも、有機溶剤がフッ素系溶剤を含む場合には、微粒子を良好に分離する観点から、フィルターとしては、フッ素原子を含む材料からなるフィルターを用いることが好ましい。
【0034】
そして、フッ素原子を含む材料としては、特に限定されることなく、例えば、テトラフルオロエチレン単位、クロロトリフルオロエチレン単位、フッ化ビニリデン単位、パーフルオロアルキルビニルエーテル単位およびヘキサフルオロプロピレン単位からなる群から選択される少なくとも1種のフッ素含有単量体単位を含む重合体が好ましい。
なお、上記重合体は、任意に、フッ素非含有単量体単位を含み得る。そして、フッ素非含有単量体単位としては、特に限定されることなく、例えば、エチレン単位、プロピレン単位等が挙げられる。
ここで、本明細書において「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
【0035】
なお、上記重合体中、フッ素含有単量体単位の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%、即ち、フッ素原子を含む材料は、フッ素含有単量体の単独重合体であることが更に好ましい。ここで、重合体に含まれる各単量体単位の含有割合は、例えば1H-NMR、19F-NMRを測定することによって求めることができる。
【0036】
そして、上述した重合体としては、特に限定されることなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体等が挙げられる。中でも、重合体は、ポリテトラフルオロエチレンであることが最も好ましい。
【0037】
また、フィルターの孔径は、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましく、また、0.1nm以上であることが好ましく、0.2nm以上であることがより好ましく、0.5nm以上であることが更に好ましい。フィルターの孔径が30nm以下であれば、有機溶剤中に含まれる粒径30nm以上の微粒子がフィルターによって除去されるため、微粒子が低減された精製物を更に効果的に得ることができる。
【0038】
〔ろ過条件〕
そして、工程(α)において、有機溶剤をろ過する際のフィルターの有効ろ過面積あたりの通液速度は、好ましくは0.2mL/分・cm2未満、より好ましくは0.15mL/分・cm2以下、更に好ましくは0.1mL/分・cm2以下とし、また、好ましくは0.001mL/分・cm2以上、より好ましくは0.002mL/分・cm2以上とする。フィルターの有効ろ過面積あたりの有機溶剤の通液速度を0.2mL/分・cm2未満とすることで、精製物中の微粒子を十分に低減することができる。なお、フィルターを容器に詰めてなるユニットを直列接続して多段でろ過する場合には、フィルターの有効ろ過面積は、使用する全フィルターの有効ろ過面積とする。
【0039】
また、工程(α)における圧力は、用いるフィルターの孔径やろ過速度などを考慮して適宜設定すればよいが、ろ過効率を向上させる観点から、加圧下にて行うことが好ましい。その際、加える圧力は、通常0.001MPa以上であり、好ましくは0.01MPa以上であり、また、通常は0.5MPa以下であり、好ましくは0.3MPa以下である。
【0040】
また、工程(α)における温度は、ろ過する有機溶剤の沸点を考慮して適宜設定すればよいが、温度の上限は、通常は、有機溶剤の沸点よりも10℃以上低い温度であり、好ましくは15℃以上低い温度であり、より好ましくは20℃以上低い温度である。また、温度の下限は、特に限定されないが、通常は、有機溶剤の凝固点よりも1℃以上高い温度であり、好ましくは2℃以上高い温度であり、より好ましくは5℃以上高い温度である。
【0041】
〔ろ液の性状〕
工程(α)において有機溶剤をフィルターでろ過して得られるろ液(ろ過後の有機溶剤)は、粒径30nm以上の微粒子数が、通常、100個/mL以下である。具体的には、当該ろ液中に含まれる粒径30nm以上100nm未満の微粒子の数は、通常、95個/mL以下である。また、ろ液中に含まれる粒径100nm以上の微粒子の数は、通常5個/mL以下である。
なお、「微粒子数」は実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0042】
<工程(β)>
工程(β)では、本発明の有機溶剤の脱水方法を用いて有機溶剤を脱水する。具体的には、工程(β)では、脱水用ガスを準備する工程(A)と、工程(A)で準備した脱水用ガスと、有機溶剤とを接触させる工程(B)とを含む有機溶剤の脱水方法を用いて有機溶剤を脱水する。そして、工程(A)は、露点が-30℃以下のガスをガスフィルターに通過させて脱水用ガスを得る工程(a1)、または、ガスフィルターを通過させたガスの露点を-30℃以下に調整して脱水用ガスを得る工程(a2)を含むことを必要とする。なお、工程(β)は、工程(A)および工程(B)以外の工程を含んでいてもよい。また、工程(A)は、工程(a1)および工程(a2)以外の工程を含んでいてもよい。
そして、工程(β)では、露点が-30℃以下のガスをガスフィルターに通過させて得た脱水用ガス、または、ガスフィルターを通過させたガスの露点を-30℃以下に調整して得た脱水用ガスを使用しているので、微粒子数の増加を抑制しつつ有機溶剤を脱水することができる。なお、微粒子数の増加を更に抑制する観点からは、工程(β)では、露点が-30℃以下のガスをガスフィルターに通過させて得た脱水用ガスを用いることが好ましい。予め露点を-30℃以下に調整したガスをガスフィルターに通過させて脱水用ガスとすれば、露点の調整時に混入した微粒子が脱水用ガス中に持ち込まれるのを抑制することができる。
【0043】
〔ガス〕
ここで、工程(a1)においてガスフィルターに通過させる露点が-30℃以下のガス、および、工程(a2)においてガスフィルターに通過させるガスとしては、特に限定されることなく、例えば、水素、空気、酸素、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、一酸化炭素および二酸化炭素からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。これらのガスを使用すれば、副反応の発生を抑制しつつ有機溶剤を良好に脱水することができる。
中でも、入手容易性の観点から、工程(a1)においてガスフィルターに通過させる露点が-30℃以下のガス、および、工程(a2)においてガスフィルターに通過させるガスは、空気、酸素、窒素、ヘリウムまたはアルゴンであることが好ましい。
【0044】
なお、工程(a1)および工程(a2)において、露点が-30℃以下のガスは、例えば、冷却除湿や圧縮除湿等の既知の方法を用いて調製することができる。
そして、有機溶剤を良好に脱水する観点からは、工程(a1)においてガスフィルターに通過させるガスの露点は、-60℃以下であることが好ましい。また、工程(a2)では、ガスフィルターを通過させたガスの露点を-60℃以下に調整することが好ましい。
【0045】
〔ガスフィルター〕
ガスフィルターとしては、特に限定されることなく、ポリプロピレン(PP)製ガスフィルターやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ガスフィルター等の樹脂製フィルターを用いてもよいし、SUS製フィルターやニッケル製フィルター等の金属製フィルターを用いてもよい。
【0046】
そして、ガスフィルターは、粒子を通過させた時の粒子捕捉率が99.9%以上となる粒子径の最小値(捕捉粒子径)が、0.03μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることがより好ましく、0.003μm以下であることが更に好ましい。捕捉粒子径が上記上限値以下であれば、微粒子数の少ない脱水用ガスを得ることができるので、微粒子数の増加を良好に抑制しつつ有機溶剤を脱水することができる。
【0047】
〔通気条件〕
なお、工程(a1)および工程(a2)においてガスをガスフィルターに通過させる際の温度、圧力および流量は、適宜に設定し得る。
【0048】
〔接触〕
工程(B)における、脱水用ガスと、有機溶剤との接触は、特に限定されることなく、例えば、有機溶剤中に脱水用ガスを吹き込む(バブリングする)方法、または、脱水用ガス中に有機溶剤を散布する方法を用いて行うことができる。
【0049】
中でも、作業の容易性の観点から、脱水用ガスと有機溶剤との接触は、有機溶剤中に脱水用ガスを吹き込むことにより行うことが好ましい。
より具体的には、工程(β)では、例えば
図2に示すような脱水装置10を使用し、容器1内に貯留された有機溶剤に対し、ガスフィルター2を通過させた露点が-30℃以下のガスをそのまま散気管3から散気することにより有機溶剤を脱水することが好ましい。
【0050】
〔接触条件〕
ここで、脱水用ガスと有機溶剤とを接触させる際の温度は、有機溶剤の凝固点以上であれば特に限定されないが、有機溶剤の気化熱で有機溶剤が凝固してバブリングが不可能となるのを防止する観点からは、凝固点+5℃以上であることが好ましく、有機溶剤の過度な気化を防止する観点からは、有機溶剤の沸点-20℃以下であることが好ましい。
また、有機溶剤中に脱水用ガスを吹き込む場合、有機溶剤に接触させるガスの体積は、脱水ができれば特に限定されないが、十分な脱水効果を得る観点からは有機溶剤の体積に対して1倍以上であることが好ましく、有機溶剤の過度な気化を防止する観点からは有機溶剤の体積に対して200倍以下であることが好ましい。
【0051】
そして、脱水された有機溶剤中の水分量は、10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましい。
なお、「水分量」は実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0052】
<精製物>
そして、本発明の有機溶剤の精製方法を用いて得られる精製物は、少なくとも有機溶剤を含み、任意に、フェノール系酸化防止剤および界面活性剤等の他の成分を更に含み得る。
【0053】
そして、精製物は、粒径30nm以上の微粒子数が好ましくは100個/mL以下であり、より好ましくは95個/mL以下であり、更に好ましくは60個/mL以下であり、特に好ましくは30個/mL以下である。具体的には、精製物中の粒径30nm以上100nm未満の微粒子数は、好ましくは95個/mL以下であり、より好ましくは60個/mL以下であり、更に好ましくは30個/mL以下である。また、精製物中の粒径100nm以上の微粒子数は、好ましくは5個以下であり、より好ましくは4個以下であり、更に好ましくは3個以下である。
【0054】
また、精製物中の水分量は、10質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下であることがより好ましい。
【0055】
そして、精製物は、精製物中に含まれる微粒子数および水分量が低減されているため、微細な半導体の製造や洗浄に用いられる溶剤として好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
なお、本実施例における評価は、以下の方法によって行った。
(1)水分量
カールフィッシャー水分計(三菱アナリティック社製、CA-200)を用いて3回測定を行い、3回の測定値の平均値を有機溶剤中の水分量とした。
(2)微粒子数
有機溶剤中に含まれる粒径30nm以上の微粒子数について、液中微粒子計測器(RION社製、KS-19F)を用いて、温度23℃にて3回測定を行い、3回の測定値の平均値を有機溶剤中の微粒子数とした。
【0058】
(実施例1)
<ろ過装置の作製>
ろ過装置として、1つのフィルターを1つの容器に詰めてなるユニットを3個準備し、それらのユニットが3段に直列接続されてなる多段ろ過装置を作製した。
なお、各ユニットに詰められたフィルターとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなるフィルターA(インテグリス社製、PFFW15C3S、孔径:15nm、濾過面積:1300cm2)を使用した。
<工程(α)>
1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(粒径30nm以上の微粒子数:40000個/mL、水分量:50質量ppm、沸点:82.5℃)からなる有機溶剤を加圧容器に入れて30℃に加温した後、高純度アルゴン雰囲気下、30℃に加温された1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを、上述したろ過装置を用いて、0.02MPaの加圧下、ろ過速度130mL/分でろ過し、ろ液(ろ過後の有機溶剤)を得た。
なお、フィルターの有効ろ過面積あたりの通液速度(=[濾過速度(mL/分)]/[フィルターの濾過面積(cm2)])は、0.1mL/分・cm2であった。
そして、ろ液の水分量および微粒子数を測定した。結果を表1に示す。
<工程(β)>
クラス100のクリーンルーム内で、上流側から減圧弁、フロート式流量計、ガスフィルター(Entegris製、WGMS02PRU、捕捉粒子径:0.003μm)をステンレス製配管で接続し、さらに配管の末端に1/8インチのPFAチューブを接続してガスラインを作製した。このガスラインの上流側から、コールドエバポレーターで発生させた露点-60℃の窒素ガスを、減圧弁により圧力0.08MPaとし、フロート式流量計の測定値が2L/分となるように調整して30分間流通させた。
次に、脱アルカリ処理および超純水洗浄を行った後に乾燥させた褐色瓶に、工程(α)で得たろ液1.5kgを入れ、30℃に加温した。その後、1/8インチのPFAチューブを褐色瓶に挿入し、温度30℃において底部からガス流量2L/分で露点-60℃の窒素ガスを30分間バブリングした。バブリング後、褐色瓶内から精製物としての1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンをサンプリングし、水分量および微粒子数を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2)
工程(β)において、露点-60℃の窒素ガスに替えてアルゴンボンベに充填されたアルゴンガス(露点:-80℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
工程(β)において、露点-60℃の窒素ガスに替えて露点-30℃に管理された圧縮空気を用いた以外は実施例1と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例4)
工程(β)において、露点-60℃の窒素ガスに替えてヘリウムボンベに充填されたヘリウムガス(露点:-80℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例5)
工程(β)において、露点-60℃の窒素ガスに替えて酸素ボンベに充填された酸素ガス(露点:-80℃)を用いた以外は実施例1と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
工程(β)においてガスラインを作製する際にガスフィルター(Entegris製、WGMS02PRU、捕捉粒子径:0.003μm)を使用しなかった以外は実施例1と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
工程(β)においてガスラインを作製する際にガスフィルター(Entegris製、WGMS02PRU、捕捉粒子径:0.003μm)を使用しなかった以外は実施例2と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
工程(β)において、露点-60℃の窒素ガスに替えて露点0℃に管理された圧縮空気を用いた以外は比較例1と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例4)
工程(β)において、露点-60℃の窒素ガスに替えて露点0℃の窒素ガスを用いた以外は実施例1と同様にして、ろ過装置の作製、工程(α)および工程(β)を行い、精製物を得た。そして、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(参考例1)
<ろ過装置の作製>
実施例1と同様にして多段ろ過装置を作製した。
<工程(α)>
実施例1と同様にして1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(粒径30nm以上の微粒子数:40000個/mL、水分量:50質量ppm、沸点:82.5℃)からなる有機溶剤をろ過し、ろ液(ろ過後の有機溶剤)を得た。
そして、ろ液の水分量および微粒子数を測定したところ、水分量は100質量ppmであり、微粒子数は16個/mLであった。
<工程(β’)>
脱アルカリ処理および超純水洗浄を行った後に乾燥させた褐色瓶に対し、クラス100のクリーンルーム内において、工程(α)で得たろ液と、脱水剤としてのモレキュラーシーブ5Aとをモレキュラーシーブ5Aの濃度が10質量%となるように入れ、温度25℃で24時間振盪した。その後、褐色瓶内から精製物としての1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンをサンプリングし、水分量および微粒子数を測定した。精製物の水分量は1質量ppmであった。また、精製物は、濁っており、微粒子数は測定不能(測定上限超え)であった。
【0068】
(参考例2)
<ろ過装置の作製>
実施例1と同様にして多段ろ過装置を作製した。
<工程(α)>
実施例1と同様にして1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(粒径30nm以上の微粒子数:40000個/mL、水分量:50質量ppm、沸点:82.5℃)からなる有機溶剤をろ過し、ろ液(ろ過後の有機溶剤)を得た。
そして、ろ液の水分量および微粒子数を測定したところ、水分量は60質量ppmであり、微粒子数は16個/mLであった。
<工程(β’)>
脱水剤としてのモレキュラーシーブ5Aを充填した充填塔に対し、クラス100のクリーンルーム内において、工程(α)で得たろ液を、温度25℃、液空間速度(LHSV)5h-1の条件で通液して精製物としての1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタンを得た。そして、精製物の水分量および微粒子数を測定した。精製物の水分量は1質量ppmであり、微粒子数は測定不能(測定上限超え)であった。
【0069】
【0070】
表1より、実施例1~5では、水分量および微粒子数の双方を良好に低減した精製物が得られることが分かる。
一方、表1より、ガスフィルターを使用しなかった比較例1~3では脱水の際に微粒子数の増加を抑制することができず、精製物中の微粒子数が増加してしまうことが分かる。また、露点が0℃のガスを用いた比較例3~4では、有機溶剤を十分に脱水することができないことが分かる。
また、参考例1,2より、モレキュラーシーブ等の固体の脱水剤を有機溶剤に直接接触させて脱水を行った場合にも、脱水の際に微粒子数の増加を抑制することができず、精製物中の微粒子数が増加してしまうことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の有機溶剤の脱水方法によれば、微粒子数の増加を抑制しつつ有機溶剤を脱水することができる。
また、本発明の有機溶剤の精製方法によれば、水分量および微粒子数の双方を良好に低減した精製物を得ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 容器
2 ガスフィルター
3 散気管
10 脱水装置